説明

粉粒体の乾燥方法および粉粒体の乾燥装置

【課題】樹脂成形の材料としての粉粒体を十分に乾燥しつつ、粉粒体の劣化を長時間に亘って防止することのできる粉粒体の乾燥方法、および粉粒体の乾燥装置を提供すること。
【解決手段】樹脂成形装置1は、粉粒体が溜められる乾燥ホッパ2と、乾燥ホッパ2内の粉粒体を乾燥するための乾燥装置5とを備えている。乾燥装置5による乾燥ホッパ2内の粉粒体の処理工程は、乾燥ホッパ2内の粉粒体を一定時間加熱乾燥する加熱乾燥工程と、加熱乾燥工程で加熱乾燥された粉粒体を冷却する冷却工程とを含み、冷却工程では、冷却した不活性ガスを粉粒体に供給することにより、粉粒体を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体の乾燥方法および粉粒体の乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチック成形などでは、原料となるペレットなどの粉粒体を、ヒータが設けられた乾燥ホッパ内を通過させて乾燥させ、乾燥された粉粒体を射出成形機に投入している(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−308928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、携帯電話の部品などの、小型の部品を樹脂成形するシステムでは、単位時間当たりに射出成形機で消費される粉粒体の量が少ない。たとえば、数kgの粉粒体が溜められたホッパから、1時間に数百gだけ射出成形機に粉粒体が供給されるような場合、一部の粉粒体は、数時間という長時間、乾燥ホッパ内にとどまる。
乾燥ホッパ内に長時間とどまった粉粒体は、必要以上に加熱された過乾燥状態となり、酸化などによる劣化が生じてしまう。このような劣化した粉粒体を用いて射出成形を行うと、樹脂成形品の色が黄みがかったものになったりするため、好ましくない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、樹脂成形の材料としての粉粒体を十分に乾燥しつつ、粉粒体の劣化を長時間に亘って防止することのできる粉粒体の乾燥方法、および粉粒体の乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、粉粒体の乾燥方法であって、樹脂成形の材料としての粉粒体を一定時間加熱乾燥する加熱乾燥工程と、前記加熱乾燥工程で加熱乾燥された前記粉粒体を冷却する冷却工程とを含み、前記冷却工程では、冷却した不活性ガスを前記粉粒体に供給することにより、前記粉粒体を冷却することを特徴としている。
【0007】
このような構成によると、加熱乾燥工程において、粉粒体を一定時間加熱乾燥することにより、粉粒体を確実に乾燥することができる。また、加熱乾燥された粉粒体を冷却工程で冷却することにより、粉粒体の過乾燥を防止できる。したがって、粉粒体が乾燥されてから長時間消費されないときでも、粉粒体の十分な乾燥状態を達成しつつ、過乾燥による粉粒体の酸化などの劣化を確実に防止できる。さらに、粉粒体を不活性ガスの雰囲気下で冷却することができるので、粉粒体が酸化により劣化することをより確実に防止できる。しかも、粉粒体は、一定時間乾燥後に冷却されるので、粉粒体に均一な熱履歴を付与することができる。したがって、粉粒体の品質を維持することができる。その結果、乾燥開始から長時間経過した粉粒体を用いて樹脂成形品を成形しても、樹脂成形品が、黄みがかったものとなるなどの不具合が生じることを防止できる。その結果、樹脂成形品の品質にばらつきが生じることを防止できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記加熱乾燥工程では、加熱した不活性ガスを前記粉粒体に供給することにより、前記粉粒体を加熱乾燥することを特徴としている。
このような構成によると、粉粒体を不活性ガスの雰囲気下で加熱することができる。これにより、粉粒体が酸化により劣化することをより確実に防止できる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記冷却工程で冷却された前記粉粒体を、密閉されたホッパ内の空間で保存する保存工程をさらに含むことを特徴としている。
このような構成によると、加熱乾燥され、その後冷却された粉粒体が、吸湿や酸化などにより劣化することを、長時間に亘ってより確実に防止することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記保存工程では、密閉された前記ホッパ内の前記空間が不活性ガスの雰囲気にされていることを特徴としている。
このような構成によると、加熱乾燥され、その後冷却された粉粒体を、不活性ガスの雰囲気下で保存しておくことができる。これにより、乾燥された粉粒体が吸湿や酸化などにより劣化することを、長時間に亘ってより一層確実に防止することができる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の発明において、前記加熱乾燥工程では、前記粉粒体が溜められた乾燥ホッパ内の前記粉粒体を加熱乾燥し、前記冷却工程では、前記乾燥ホッパ内の前記粉粒体を冷却することを特徴としている。
このような構成によると、1つの乾燥ホッパ内で、粉粒体の加熱乾燥および冷却の双方を行うので、加熱乾燥工程と冷却工程とを別々のホッパで行う必要がない。したがって、加熱乾燥工程と冷却工程との間に粉粒体の移し替え工程を設けなくて済み、移送中の吸湿や酸化を防ぐことができ、粉粒体の劣化を抑制することができる。また、加熱乾燥用ホッパと冷却用ホッパとを別々に用意しなくてよく、粉粒体の加熱乾燥および冷却を行うための構成を簡単にできる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の発明において、前記加熱乾燥工程では、前記粉粒体の温度が一定温度以上になると、前記粉粒体の温度が前記一定温度未満のときよりも前記粉粒体を加熱する度合いを弱めることを特徴としている。
このような構成によると、粉粒体の温度が一定温度以上になると、粉粒体の加熱の度合いが弱くなるので、粉粒体の温度が乾燥に必要な温度を超えて過熱されることを確実に防止できる。その結果、粉粒体の劣化をより確実に防止できる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、粉粒体の乾燥装置において、樹脂成形の材料としての粉粒体が溜められるホッパと、前記ホッパに溜められた前記粉粒体を一定時間加熱乾燥するための加熱装置と、前記ホッパに溜められ前記加熱装置によって加熱された前記粉粒体を冷却するための冷却装置とを備え、前記冷却装置は、冷却した不活性ガスを前記粉粒体に供給することにより、前記粉粒体を冷却することを特徴としている。
【0014】
このような構成によると、加熱装置によって、粉粒体を一定時間加熱乾燥することにより、粉粒体を確実に乾燥することができる。また、加熱乾燥された粉粒体を冷却装置で冷却することにより、粉粒体の過乾燥を防止できる。したがって、粉粒体が乾燥されてから長時間消費されないときでも、粉粒体の十分な乾燥状態を達成しつつ、過乾燥による粉粒体の酸化などの劣化を確実に防止できる。さらに、粉粒体を不活性ガスの雰囲気下で冷却することができるので、粉粒体が酸化により劣化することをより確実に防止できる。しかも、粉粒体は、一定時間乾燥後に冷却されるので、粉粒体に均一な熱履歴を付与することができる。したがって、粉粒体の品質を維持することができる。その結果、乾燥開始から長時間経過した粉粒体を用いて樹脂成形品を成形しても、黄みがかったものとなるなどの不具合が生じることを防止できる。その結果、樹脂成形品の品質にばらつきが生じることを防止できる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記加熱装置は、加熱した不活性ガスを前記粉粒体に供給することにより、前記粉粒体を加熱乾燥することを特徴としている。
このような構成によると、粉粒体を不活性ガスの雰囲気下で加熱することができる。これにより、粉粒体が酸化により劣化することをより確実に防止できる。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の発明において、前記冷却装置によって冷却された前記粉粒体が溜められる前記ホッパ内の空間を密閉するための密閉装置をさらに備えることを特徴としている。
このような構成によると、加熱乾燥され、その後冷却された粉粒体が吸湿や酸化などにより劣化することを、長時間に亘ってより確実に防止することができる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、前記密閉装置によって密閉されているときの前記ホッパ内の前記空間は、不活性ガスの雰囲気にされていることを特徴としている。
このような構成によると、加熱乾燥され、その後冷却された粉粒体を、不活性ガスの雰囲気下で保存しておくことができる。これにより、乾燥された粉粒体が吸湿や酸化などにより劣化することを、長時間に亘ってより一層確実に防止することができる。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項7ないし10のいずれかに記載の発明において、前記加熱装置によって加熱乾燥される前記粉粒体が溜められる前記ホッパと、前記冷却装置によって冷却される前記粉粒体が溜められる前記ホッパとは、同一であることを特徴としている。
このような構成によると、1つのホッパ内で、粉粒体の加熱乾燥および冷却の双方を行うので、粉粒体の加熱と冷却とを別々のホッパで行う必要がない。したがって、粉粒体を加熱するときと冷却するときとの間で粉粒体の移し替え作業を設けなくて済み、移送中の吸湿や酸化を防ぐことができ、粉粒体の劣化を抑制することができる。また、加熱乾燥用ホッパと冷却用ホッパとを別々に用意しなくてよく、加熱装置および冷却装置を簡素なものにできる。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項7ないし11のいずれかに記載の発明において、前記加熱装置は、前記粉粒体の温度が一定温度以上になると、前記粉粒体の温度が前記一定温度未満のときよりも前記粉粒体を加熱する度合いを弱めることを特徴としている。
このような構成によると、粉粒体の温度が一定温度以上になると、粉粒体の加熱の度合いが弱くなるので、粉粒体の温度が乾燥に必要な温度を超えて過熱されることを確実に防止できる。その結果、粉粒体の劣化をより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように、請求項1記載の発明によれば、粉粒体が乾燥されてから長時間消費されないときでも、粉粒体の十分な乾燥状態を達成しつつ、過乾燥による粉粒体の酸化などの劣化を確実に防止できる。さらに、粉粒体を不活性ガスの雰囲気下で冷却することができるので、粉粒体が酸化により劣化することをより確実に防止できる。しかも、粉粒体は、一定時間乾燥後に冷却されるので、粉粒体に均一な熱履歴を付与することができる。したがって、粉粒体の品質を維持することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、粉粒体が酸化により劣化することをより確実に防止できる。
請求項3に記載の発明によれば、乾燥された粉粒体が吸湿や酸化などにより劣化することを、長時間に亘ってより確実に防止することができる。
請求項4記載の発明によれば、乾燥された粉粒体が吸湿や酸化などにより劣化することを、長時間に亘ってより一層確実に防止することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、加熱乾燥工程と冷却工程との間に粉粒体の移し替え工程を設けなくて済む。また、加熱乾燥用ホッパと冷却用ホッパとを別々に用意しなくてよく、加熱乾燥および冷却を行うための構成を簡単にできる。
請求項6に記載の発明によれば、粉粒体の温度が乾燥に必要な温度を超えて過熱されることを確実に防止できるので、粉粒体の劣化をより確実に防止できる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、粉粒体が乾燥されてから長時間消費されないときでも、粉粒体の十分な乾燥状態を達成しつつ、過乾燥による粉粒体の酸化などの劣化を確実に防止できる。さらに、粉粒体を不活性ガスの雰囲気下で冷却することができるので、粉粒体が酸化により劣化することをより確実に防止できる。しかも、粉粒体は、一定時間乾燥後に冷却されるので、粉粒体に均一な熱履歴を付与することができる。したがって、粉粒体の品質を維持することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、粉粒体が酸化により劣化することをより確実に防止できる。
請求項9に記載の発明によれば、乾燥された粉粒体が吸湿や酸化などにより劣化することを、長時間に亘ってより確実に防止することができる。
請求項10に記載の発明によれば、乾燥された粉粒体が吸湿や酸化などにより劣化することを、長時間に亘ってより一層確実に防止することができる。
【0025】
請求項11に記載の発明によれば、粉粒体を加熱乾燥するときと冷却するときとの間で粉粒体の移し替え作業を設けなくて済む。また、加熱乾燥用ホッパと冷却用ホッパとを別々に用意しなくてよく、乾燥装置を簡素なものにできる。
請求項12に記載の発明によれば、粉粒体の温度が乾燥に必要な温度を超えて過熱されることを確実に防止できるので、粉粒体の劣化をより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態にかかる乾燥装置の全体構成図である。
【図2】循環ライン内の空気および乾燥ホッパ内の空気を窒素ガスに置換する置換工程、乾燥ホッパ内の粉粒体の加熱乾燥工程、乾燥ホッパ内の粉粒体の冷却工程、および粉粒体を乾燥ホッパ内で保存する保存工程における制御装置の制御の流れを示すフロー図である。
【図3】図2の処理を制御しているときの、時間と、温度センサによって検出される温度(乾燥ホッパ内の粉粒体の温度)との関係を示すグラフ図である。
【図4】本発明の別の実施形態にかかる樹脂成形装置の全体構成図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態の樹脂成形装置の全体構成図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態の樹脂成形装置の全体構成図である。
【図7】本発明のさらに別の実施形態の樹脂成形装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる乾燥装置5の全体構成図である。乾燥装置5は、乾燥ホッパ2に溜められた粉粒体を乾燥するものである。この粉粒体は、たとえば、樹脂ペレット、粉砕材、マスターバッチ、添加剤などの、樹脂成形品の材料である。
乾燥ホッパ2は、上端が開放された箱状に形成されており、下端側は、下方に向かうほど先細りとなる形状とされている。この乾燥ホッパ2は、たとえば、オペレータが持ち運び可能な程度の大きさとされており、1.5kg程度の粉粒体を溜めておくことができる。乾燥ホッパ2内には、予め計量された所定量の粉粒体が溜められている。乾燥ホッパ2の上端の開口は、開閉可能な蓋6によって塞がれている。射出成形機(図示せず)に取り付けられた状態において、乾燥ホッパ2内の粉粒体は、たとえば、1時間に数百g程度の少量消費される。この場合、乾燥ホッパ2に充填された粉粒体が空になるまでには、数時間以上かかることがある。
【0028】
なお、本実施形態では、乾燥ホッパ2を乾燥装置5から取り外して上述の射出成形機に直接取り付けることにより、気力輸送装置を用いずに乾燥ホッパ2内の粉粒体を射出成形機に供給することができる。乾燥ホッパ2を乾燥装置5から取り外してから射出成形機に取り付けるまでの間、乾燥ホッパ2の各開口は、図示しない蓋または弁によって塞がれており、乾燥ホッパ2内が後述する窒素ガス雰囲気下に保たれる。
【0029】
乾燥装置5は、乾燥ホッパ2内の粉粒体を加熱により乾燥させて水分などを除去し、その後、この粉粒体を冷却することで過熱(過乾燥)させないでおくものである。乾燥装置5は、不活性ガスとしての窒素ガスを発生するための窒素発生装置11と、乾燥ホッパ2に溜められた粉粒体を一定時間加熱乾燥するための加熱装置12とを備えている。また、乾燥装置5は、乾燥ホッパ2に溜められ加熱装置12によって加熱された粉粒体を冷却するための冷却装置13と、制御装置14と、密封装置50とを備えている。制御装置14は、窒素発生装置11、加熱装置12、冷却装置13および密封装置50を制御する。密封装置50は、乾燥ホッパ2内の空間Sを密閉するためのものである。
【0030】
窒素発生装置11は、窒素ガスが通過する窒素供給ライン15を有している。この窒素供給ライン15には、圧力安定用のレギュレータ16、電磁弁17、ドライヤ18、窒素発生器19、仕切弁20および流量計21が、窒素供給ライン15の長手方向に沿って順に設けられている。窒素発生器19で発生した窒素ガスは、窒素供給ライン15内に送られ、仕切弁20および流量計21を通って後述する循環ライン22に供給される。
【0031】
乾燥装置5は、乾燥ホッパ2、加熱装置12および冷却装置13を循環する循環ライン22と、循環ライン22の途中に設けられる循環ブロワ26とをさらに含んでいる。循環ライン22には、循環ブロワ26の上流側において、窒素供給ライン15が接続されている。循環ライン22は、窒素発生装置11で発生した窒素ガスを、乾燥ホッパ2、加熱装置12および冷却装置13に循環させる。循環ライン22は、窒素ガスを循環ブロワ26から乾燥ホッパ2へ供給する供給ライン24と、窒素ガスを乾燥ホッパ2から循環ブロワ26へ還流する還流ライン25とを含んでいる。
【0032】
なお、気体(窒素ガス)の流れ方向Aにおける供給ライン24の下流側端部は、乾燥ホッパ2の底壁に接続されている。流れ方向Aにおける還流ライン25の上流側端部は、乾燥ホッパ2の胴部に接続されている。なお、以下では、流れ方向Aにおける上流側を単に「上流側」といい、下流側を単に「下流側」という。供給ライン24における加熱装置12の下流側には、温度センサ30が接続されている。この温度センサ30により検出される供給ライン24内の温度に基づいて、加熱装置12による窒素ガスの加熱量が制御される。
【0033】
還流ライン25の上流側端部には、温度センサ27が接続されている。温度センサ27は、還流ライン25内の気体の温度、すなわち、乾燥ホッパ2内の粉粒体の温度を検出する。そのため、温度センサ27の検出温度が粉粒体の温度とされる。また、還流ライン25の下流側端部には、ラインフィルタ28が設けられており、還流ライン25を通過する気体に含まれる粉塵などが、ラインフィルタ28で除去される。また、還流ライン25におけるラインフィルタ28と循環ブロワ26との間に、窒素発生装置11の窒素供給ライン15が接続されている。
【0034】
加熱装置12は、ヒータ23を含んでいる。ヒータ23は、たとえば、電熱式の加熱装置であり、循環ブロワ26の下流側において、供給ライン24に設けられている。このヒータ23は、循環ブロワ26から吐出された気体を加熱する。
冷却装置13は、クーラ29と、クーラブロワ32とを含んでいる。クーラ29は、還流ライン25において温度センサ27とラインフィルタ28との間に設けられている。クーラブロワ32は、クーラ29に接続されている。クーラブロワ32から吐出された空気は、クーラ29に供給され、クーラ29内において、還流ライン25内の気体の熱を吸収し、その後、クーラ29から吐き出される。これにより還流ライン25内の気体が冷却される。
【0035】
制御装置14は、CPU,RAMおよびROMを含んでいる。この制御装置14は、電磁弁17、窒素発生器19、循環ブロワ26、ヒータ23、クーラブロワ32とそれぞれ接続されており、これら各部を制御する。また、制御装置14は、温度センサ27および温度センサ30に接続されている。制御装置14は、インバータ回路(図示せず)を用いて循環ブロワ26を制御しており、循環ブロワ26の回転数を制御することにより、循環ブロワ26の風量を複数段階に調整する。
【0036】
密閉装置50は、供給ライン24および還流ライン25にそれぞれ設けられた遮断弁51,51を備えている。
供給ライン24に設けられた遮断弁51は、ヒータ23と乾燥ホッパ2との間に配置されている。還流ライン25に設けられた遮断弁51は、温度センサ27とクーラ29との間に配置されている。
【0037】
各遮断弁51,51は、制御装置14に接続されており、制御装置14によって制御される。各遮断弁51,51は、たとえば、ソレノイドに通電されていないときに開かれ、ソレノイドに通電されているときには閉じる。通常は、各遮断弁51,51に通電されておらず、これらの遮断弁51,51は開いている。
図2は、循環ライン22内の気体および乾燥ホッパ2内の気体を窒素ガスに置換する置換工程、乾燥ホッパ2内の粉粒体の加熱乾燥工程、乾燥ホッパ2内の粉粒体の冷却工程、および粉粒体を乾燥ホッパ2内で保存する保存工程における制御装置14の制御の流れを示すフロー図である。
【0038】
次に、粉粒体を乾燥させる処理について述べる。
図2を参照して、乾燥ホッパ2には、予め所定量の粉粒体が溜められている。この状態で、オペレータなどから、制御装置14に、乾燥ホッパ2内の粉粒体を乾燥する指示信号が入力されると、制御装置14は、窒素発生器19を駆動させて窒素ガスを発生させる(S1)。さらに、循環ライン22の循環ブロワ26の運転を開始する(S2)。循環ブロワ26の運転が開始されてからの時間TMが所定の第1時間TM1以上になるまでは(S3:NO)、窒素発生器19および循環ブロワ26が運転されている状態で待機される。
【0039】
窒素発生器19からの窒素ガスは、供給ライン24に入り、気体(窒素ガス)の流れ方向Aに沿って、循環ブロワ26、供給ライン24、乾燥ホッパ2、還流ライン25の順に通過する。これにより、循環ライン22および乾燥ホッパ2内の気体が窒素ガスに置換される(窒素パージ)。循環ライン22内の空気および乾燥ホッパ2内の空気は、加圧により、たとえば、循環ブロワ26のシール部分や、乾燥ホッパ2と蓋6との間の隙間などから、外部に放出される。
【0040】
時間TMが所定の第1時間TM1以上になることにより(S3:YES)、窒素パージが完了したと判定されると、加熱装置12のヒータ23がオンにされて、温度センサ30による温度検出が行われながら、ヒータ23による加熱が開始される(S4)。
すると、供給ライン24を通過する窒素ガスがヒータ23によって加熱される。加熱された窒素ガスは、乾燥ホッパ2に供給される。窒素ガスは、乾燥ホッパ2内の粉粒体を加熱することで粉粒体を乾燥させ、その後、還流ライン25に排出される。還流ライン25に排出された窒素ガスは、循環ブロワ26で再び加圧されて供給ライン24に送られ、ヒータ23で加熱され、再度乾燥ホッパ2に送られる。上記のようにして、乾燥ホッパ2内の粉粒体が一定時間連続的に昇温加熱される。
【0041】
時間TMがたとえば第2時間TM2となることにより、温度センサ27によって検出される温度Hが一定温度としての第1温度H1以上になると(S5:YES)、循環ブロワ26の出力(供給電力)がx%低下される(S6)。
上記x%の範囲は、0%〜100%(但し0%および100%を含まず。0%<x<100%)となる。好ましくは、上記x%の範囲は、0%〜80%(0%<x<80%)である。より好ましくは、上記x%の範囲は、0%〜50%(0%<x<50%)である。
【0042】
循環ブロワ26の出力を低下させる度合いは、乾燥ホッパ2の容量、乾燥ホッパ2に溜められた粉粒体の質量、粉粒体の種類、粉粒体の大きさ、第1温度H1、および乾燥ホッパ2を取り巻く雰囲気の温度によって決定される。
たとえば、乾燥ホッパ2の容量が5リットル、乾燥ホッパ2に溜められた粉粒体の質量が2kg、粉粒体の種類がホットカットされたナイロン、粉粒体の一粒の大きさが2mm×2mm×1mmの板状、第1温度H1が80℃、および乾燥ホッパ2を取り巻く雰囲気の温度が24℃である場合、循環ブロワ26の出力は約33%低下される。
【0043】
循環ブロワ26の出力の低下により、温度Hが第1温度H1未満であったときと比べて、乾燥ホッパ2に供給される単位時間当たりの熱量が低くなり、粉粒体を加熱する度合いが弱められる。その結果、循環ブロワ26の出力低下前と異なり、温度Hは上昇せず、第1温度H1に保たれる。すなわち、温度Hを第1温度H1に保つために、循環ブロワ26の出力を低下する制御が行われる。
【0044】
なお、本実施形態では、温度Hを第1温度H1に保つために、循環ブロワ26の出力を低下する構成としているが、この構成に限定されない。たとえば、循環ブロワ26の出力は変更せず、ヒータ23の温度を低下させることにより、温度Hを第1温度H1に保つようにしてもよい。また、循環ブロワ26の出力を低下させ、かつ、ヒータ23の温度を低下させることにより、温度Hを第1温度H1に保つようにしてもよい。
【0045】
時間TMが所定の第3時間TM3以上になると(S7:YES)、ヒータ23がオフにされ、ヒータ23による窒素ガスの加熱が停止される(S8)。上記のようにして、温度Hが常温H0から第1温度H1に到達するまでの時間と、温度Hが第1温度H1に維持されている時間と、を合わせた一定時間、ヒータ23で加熱された窒素ガスによって、乾燥ホッパ2内の粉粒体が加熱される。第1温度H1は、高温ではあるが粉粒体の酸化などの劣化が生じない程度の温度である。
【0046】
ヒータ23がオフにされた後、クーラブロワ32の運転が開始される(S9)とともに、循環ブロワ26の出力が、出力低下前の状態に復帰される(S10)。クーラブロワ32の駆動により、クーラ29内が送風冷却される。すると、クーラ29内を通過する窒素ガスの熱が吸収されるので、還流ライン25内の窒素ガスが冷却される。クーラ29内で冷却された窒素ガスは、循環ブロワ26で再び加圧されて供給ライン24に送られ、供給ライン24から乾燥ホッパ2内に供給されて粉粒体を冷却する。乾燥ホッパ2内の粉粒体の熱を吸収した窒素ガスは、還流ライン25に排出されクーラ29で再び冷却される。この窒素ガスは、さらに、循環ブロワ26および供給ライン24を通って再度乾燥ホッパ2に供給される。
【0047】
クーラ29で冷却された窒素ガスによる粉粒体の冷却は、温度Hが所定の第2温度H2より高い間(S11:NO)、継続される。
クーラ29で冷却された窒素ガスによって粉粒体が冷却されることにより、温度センサ27によって検出される温度Hが第2温度H2以下(粉粒体の酸化による劣化を十分に抑制できる程度の低温)になると(S11:YES)、クーラブロワ32の運転が停止される(S12)。したがって、クーラ29による窒素ガスの冷却が停止される。
【0048】
次いで、循環ブロワ26の運転が停止される(S13)。その結果、窒素ガスによる乾燥ホッパ2内の粉粒体の冷却が停止される。すると、循環ライン22における窒素ガスの循環が止まる。さらに、供給ライン24の遮断弁51および還流ライン25の遮断弁51にそれぞれ通電され、これらの遮断弁51,51が閉じられる(S14)。すると、乾燥ホッパ2内の空間Sは、各遮断弁51,51によって、窒素ガスの雰囲気の下で密閉され、この空間S内に粉粒体が保存される。次いで、窒素発生器19による窒素ガスの発生が停止される(S15)。
【0049】
図3は、図2の処理を制御しているときの、時間TMと、温度センサ27によって検出される温度H(乾燥ホッパ2内の粉粒体の温度)との関係を示すグラフ図である。図2の処理制御により、図3に示すように、時間TMがゼロから第1時間TM1の間の置換工程(S1〜S3)では、温度Hは常温H0である。
また、時間TMが第1時間TM1〜第3時間TM3までの間は、加熱乾燥工程(S4〜S7)である。加熱乾燥工程のうち、時間TMが第1時間TM1〜第2時間TM2までの、循環ブロワ26の出力が相対的に大きくされることで、乾燥ホッパ2内の粉粒体に与える単位時間当たりの熱量が多いとき(S4,S5)には、温度Hが常温H0から第1温度H1まで上昇する。次に、時間TMが第2時間TM2〜第3時間TM3までの、循環ブロワ26の出力が相対的に小さくされることで乾燥ホッパ2内の粉粒体に与える単位時間当たりの熱量が少ないとき(S6,S7)には、温度Hが第1温度H1に維持される。
【0050】
時間TMが第3時間TM3〜第4時間TM4までの冷却工程(S8〜S11)では、温度Hが、第1温度H1から第2温度H2まで、略一定の割合で低下していく。
時間TMが第4時間TM4以降の保存工程(S12〜S15)では、乾燥ホッパ2からの自然放熱により、温度Hが、冷却工程のときと比べて緩やかな割合で低下していく。
なお、保存工程の後、乾燥ホッパ2のうち、供給ライン24との接続部や、還流ライン25との接続部は、図示しない蓋や弁などによって閉じられる。したがって、乾燥ホッパ2が乾燥装置5から取り外されたときでも、乾燥ホッパ2内の空間Sは、密閉された状態である。したがって、乾燥ホッパ2内の空間Sは密閉され、かつ、窒素ガスの雰囲気である状態が維持される。
【0051】
乾燥装置5から取り外された乾燥ホッパ2は、図示しない射出成形機に取り付けられる。射出成形機では、乾燥ホッパ2内の乾燥した粉粒体を用いて、樹脂成形が行われる。
以上説明したように、本実施形態によれば、加熱乾燥工程において、乾燥ホッパ2内の粉粒体を一定時間加熱乾燥することにより、この粉粒体を確実に乾燥することができる。また、加熱乾燥された粉粒体を冷却工程で冷却することにより、粉粒体の過熱を防止できる。したがって、乾燥ホッパ2内で、粉粒体が加熱されてから長時間消費されないときでも、粉粒体の十分な乾燥状態を達成しつつ、過乾燥による粉粒体の酸化などの劣化を確実に防止できる。さらに、粉粒体を乾燥ホッパ2内の不活性ガスの雰囲気下で冷却することができるので、粉粒体が酸化により劣化することをより確実に防止できる。しかも、粉粒体は、一定時間乾燥後に冷却されるので、粉粒体に均一な熱履歴を付与することができる。したがって、粉粒体の品質を維持することができる。その結果、乾燥開始から長時間経過した粉粒体を用いて樹脂成形品を成形しても、樹脂成形品が、黄みがかったものとなるなどの不具合が生じることを防止できる。その結果、樹脂成形品の品質にばらつきが生じることを防止できる。
【0052】
また、乾燥ホッパ2内の樹脂の劣化を防止できるので、過乾燥に起因する品質低下による粉粒体の廃棄をなくすことができ、樹脂成形品の製造コストを低減できる。また、粉粒体の廃棄物が減るので、地球環境保全の観点からも好ましい。
さらに、乾燥ホッパ2内の粉粒体を窒素ガスの雰囲気下で加熱するので、乾燥ホッパ2内の粉粒体が酸化により劣化することをより確実に防止できる。
【0053】
また、保存工程では、冷却工程で冷却された粉粒体を、密閉装置50によって密閉された乾燥ホッパ2内の空間Sで、窒素ガスの雰囲気の下保存している。これにより、加熱乾燥された後に冷却された粉粒体を、乾燥ホッパ2内の、窒素ガスの雰囲気下で保存しておくことができる。これにより、乾燥された粉粒体が吸湿や酸化などにより劣化することを、長時間に亘ってより確実に防止することができる。
【0054】
また、1つの乾燥ホッパ2内で、粉粒体の加熱乾燥および冷却の双方を行うので、加熱乾燥工程と冷却工程とを別々のホッパで行う必要がない。したがって、加熱乾燥工程と冷却工程との間に粉粒体の移し替え工程を設けなくて済み、移送中の吸湿や酸化を防ぐことができ、粉粒体の劣化を抑制することができる。また、加熱乾燥用ホッパと冷却用ホッパとを別々に用意しなくてよく、粉粒体の加熱乾燥および冷却を行うための構成を簡単にできる。
【0055】
さらに、加熱乾燥工程では、温度Hが第1温度H1以上になると、温度Hが第1温度H1未満のときよりも、乾燥ホッパ2内の粉粒体を加熱する度合いを弱めている。このように、乾燥ホッパ2内の粉粒体の温度が第1温度H1以上になると、粉粒体の加熱の度合いが弱くされるので、乾燥ホッパ2内の粉粒体の温度を第1温度H1に維持できる。これにより、乾燥ホッパ2内の粉粒体の温度が乾燥に必要な温度を超えて過熱されることを確実に防止できる。その結果、粉粒体の劣化をより確実に防止できる。
【0056】
図4は、本発明の別の実施形態にかかる樹脂成形装置1の全体構成図である。なお、本実施形態では、図1〜図3に示す実施形態と異なる点について主に説明し、同様の構成には図に同様の符号を付してその説明を省略する。
樹脂成形装置1は、たとえば、樹脂ペレット、粉砕材、マスターバッチ、添加剤などの粉粒体を材料として樹脂成形品を成形する。この樹脂成形装置1は、特に、大きさが数mm程度の小型の部品の成形に適しており、1時間あたり、数百g程度の粉粒体を消費する。
【0057】
樹脂成形装置1は、粉粒体が溜められる乾燥ホッパ2と、乾燥ホッパ2の粉粒体を気力によって輸送する気力輸送装置3と、気力輸送装置3によって輸送された粉粒体が受け入れられる射出成形機4と、乾燥ホッパ2に溜められた粉粒体を乾燥する乾燥装置5と、乾燥ホッパ2内の空間Sを密閉するための密閉装置500とを備えている。密閉装置500は、乾燥装置5の一部である。
【0058】
なお、本実施形態では、乾燥ホッパ2が乾燥装置5に接続された状態のまま、乾燥ホッパ2内の粉粒体が気力輸送装置3によって射出成形機4に供給される構成である。
気力輸送装置3は、乾燥ホッパ2の下端に接続された吸引輸送管7、ローダホッパ8、フィルタ9および気力源としての吸引式ブロワ10が、その順に配管された構成を含んでいる。吸引式ブロワ10の作動によって、吸引輸送管7から乾燥ホッパ2内の粉粒体が吸引され、吸引された粉粒体が、吸引輸送管7を介してローダホッパ8に気力輸送されて溜められ、このローダホッパ8において気体と分離された後、射出成形機4に供給される。ローダホッパ8において粉粒体と分離された気体は、フィルタ9において粉塵が除去された後、吸引式ブロワ10から戻りライン55に吐出され、乾燥ホッパ2と後述する遮断弁51との間において吸引輸送管7に戻される。
【0059】
射出成形機4は、ローダホッパ8から落下してくる粉粒体を溶融して溶融材料とし、この溶融材料を金型に射出して樹脂成形品を成形する。
密閉装置500は、供給ライン24、還流ライン25、吸引輸送管7および戻りライン55にそれぞれ設けられた遮断弁51,51,51,51を備えている。
供給ライン24に設けられた遮断弁51は、ヒータ23と乾燥ホッパ2との間に配置されている。還流ライン25に設けられた遮断弁51は、温度センサ27とクーラ29との間に配置されている。吸引輸送管7に設けられた遮断弁51は、乾燥ホッパ2とローダホッパ8との間に配置されている。
【0060】
各遮断弁51,51,51,51は、制御装置14に接続されており、制御装置14によって制御される。各遮断弁51,51,51,51は、たとえば、そのソレノイドに通電されていないときに開かれ、ソレノイドに通電されているときには閉じる。通常は、各遮断弁51,51,51,51に通電されておらず、これらの遮断弁51,51,51,51は開いている。
【0061】
この樹脂成形装置1において、粉粒体は、1バッチごとに加熱乾燥、冷却および保存され、その後、射出成形機4に供給される。樹脂成形装置1において、粉粒体を乾燥させる処理は、図2に示すフローと同様である。乾燥ホッパ2内の粉粒体が加熱乾燥、冷却および保存されている間、吸引輸送管7内の遮断弁51と、戻りライン55の遮断弁51とは、閉じられている。
【0062】
保存工程の後、乾燥ホッパ7からローダホッパ8に粉粒体を輸送するときは、吸引輸送管7および戻りライン55の遮断弁51,51への通電が解除されることにより、これらの遮断弁51,51が開かれ、その状態で吸引式ブロワ10が運転される。
すると、乾燥ホッパ2の粉粒体は、吸引輸送管7を介してローダホッパ8に輸送される。乾燥ホッパ2からローダホッパ8への粉粒体の輸送が終了すると、吸引式ブロワ10の運転が停止され、吸引輸送管7および戻りライン55の遮断弁51,51は、再び通電されることにより閉じられる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、乾燥ホッパ2内で加熱乾燥、冷却および保存された粉粒体を気力輸送装置3によって射出成形機4に供給できる。したがって、乾燥ホッパ2から射出成形機4への粉粒体の供給を自動化できる。
本発明は、以上の実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。なお、以下では、図4に示す実施形態と異なる点について主に説明し、同様の構成には図に同様の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
たとえば、クーラブロワ32を省略するとともに、図5に示すように、還流ライン25の一部を蛇腹状にすることで冷却装置13Aを形成してもよい。この場合、還流ライン25を通過する気体は、冷却装置13Aで還流ライン25の外側の空気に熱を放出して冷却される。なお、冷却装置13Aの冷却能力に比べてヒータ23の加熱能力が十分に高くされている。したがって、循環ブロワ26が運転されているときにおいて、ヒータ23がオンにされている間は、ヒータ23によって循環ライン22内の気体が加熱され、冷却装置13Aは実質的に機能しない。また、ヒータ23がオフにされている間は、冷却装置13Aが循環ライン22内の気体を冷却する。
【0065】
また、図4の冷却装置13を廃止し、図6に示すように、ローダホッパ8内の粉粒体を冷却する冷却装置13Bと、ローダホッパ8内の空間S’を密閉する密閉装置53とを設けてもよい。
この場合、乾燥ホッパ2内に溜められた粉粒体は、加熱装置12で加熱乾燥される。また、ローダホッパ8内の空間S’に溜められた粉粒体は、冷却装置13Bで冷却されるとともに、ローダホッパ8の密閉された空間S’内で窒素ガス雰囲気下で保存される。この場合、ローダホッパ8には、もう1つの循環ライン22’が設けられる。
【0066】
もう一つの循環ライン22’は、ローダホッパ8と、冷却装置13Bとに気体を循環させるものである。もう1つの循環ライン22’において、循環ブロワ26’が運転されると、還流ライン25’内の気体は、循環ブロワ26’で再び加圧され、供給ライン24’からローダホッパ8に送られ、再び還流ライン25’に戻される。冷却装置13Bが介在する循環ライン22’内の気体は、ローダホッパ8を循環する。
【0067】
また、窒素発生装置11の窒素供給ライン15には、分岐ライン34が設けられている。分岐ライン34には、仕切弁20’および流量計21’が介装されているとともに、もう1つの循環ライン22’とは、クーラ29’とラインフィルタ28’との間で接続されている。したがって、窒素発生器19で発生した窒素ガスは、もう1つの循環ライン22’の還流ライン25’に供給される。
【0068】
もう1つの循環ライン22’の温度センサ27’、循環ブロワ26’、およびクーラブロワ32’がそれぞれ制御装置14に接続されている。制御装置14は、もう1つの循環ライン22’の温度センサ27’によって検出される、還流ライン25’内の温度、すなわち、ローダホッパ8内の粉粒体の温度に基づいて、これら循環ブロワ26’およびクーラブロワ32’をそれぞれ制御する。
【0069】
密閉装置53は、吸引輸送管7に設けられた遮断弁51と、もう1つの循環ライン22’の供給ライン24’に設けられた遮断弁51と、もう1つの循環ライン22’の還流ライン25’に設けられた遮断弁51と、ローダホッパ8と吸引式ブロワ10との間に設けられた遮断弁51と、ローダホッパ8の排出口に設けられた遮断弁54とを備えている。これらの遮断弁51,51,51,51,54は、それぞれ、制御装置14に接続されており、この制御装置14によって開閉が制御される。遮断弁54は、たとえば、ソレノイドにより駆動されるシリンダを含んでおり、遮断弁51と同様に、そのソレノイドに通電されていないときに遮断弁54が開かれ、ソレノイドに通電されているときには遮断弁54が閉じる。これにより、密閉装置53は、ローダホッパ8を密閉する。冷却された粉粒体は、ローダホッパ8内で、窒素ガスの雰囲気下、密閉保存される。
【0070】
また、図7に示す構成を採用してもよい。この場合、図4に示す構成と対比して、以下の7点が異なっている。すなわち、(1)乾燥ホッパ2が2つ設けられているとともに、各乾燥ホッパ2のそれぞれに乾燥装置5および密閉装置500が設けられている点が大きく異なる。さらに、(2)吸引輸送管7に2つの乾燥ホッパ2が接続されている点が異なる。また、(3)吸引式ブロワ10からの戻りライン55が、一方の(図7の左側)の乾燥ホッパ2に接続される戻りライン55aと他方(図7の右側)の乾燥ホッパ2に接続される戻りライン55bとを含んでおり、かつ、各乾燥ホッパ2と吸引輸送管7との接続部付近のそれぞれにおいて戻りライン55a,55bが吸引輸送管7に接続されている点が異なる。また、(4)1つの窒素発生装置11から各循環ライン22,22の還流ライン25,25のそれぞれに窒素ガスを供給する点が異なる。また、(5)各冷却装置13,13でクーラブロワ32が共用されている点が異なる。また、(6)各乾燥装置5,5で制御装置14が共用されている点が異なる。また、(7)各密閉装置500,500で制御装置14が共用されている点が異なっている。
【0071】
上記(1)において、一方の(図7の左側の)乾燥ホッパ2を密閉するときは、この乾燥ホッパ2に連なる供給ライン24および還流ライン25の遮断弁51,51と、吸引輸送管7のうち一方の乾燥ホッパ2の近傍の遮断弁51と、戻りライン55aの遮断弁51とを閉じる。
また、他方の(図7の右側の)乾燥ホッパ2を密閉するときは、この乾燥ホッパ2に連なる供給ライン24および還流ライン25の遮断弁51,51と、吸引輸送管7のうち他方の乾燥ホッパ2の近傍の遮断弁51と、戻りライン55bの遮断弁51とを閉じる。戻りライン55a,55bのそれぞれに遮断弁51を配置していることにより、一方の乾燥ホッパ2と他方の乾燥ホッパ2を別々に密閉することができる。
【0072】
上記(4)について、窒素発生装置11には、窒素供給ライン15から分岐する分岐ライン35が設けられている。分岐ライン35は、仕切弁20および流量計21が設けられているとともに、一方の循環ライン22の還流ライン25に、ラインフィルタ28と循環ブロワ26との間で接続されている。
上記(5)について、クーラブロワ32は、各冷却装置13,13のクーラ29に接続されている。
【0073】
上記(6)および(7)について、制御装置14には、窒素発生装置11の電磁弁17、窒素発生器19、各循環ブロワ26,26、各ヒータ23,23、クーラブロワ32、各温度センサ27,27,30,30、および各遮断弁51がそれぞれ接続されている。制御装置14は、これらの電磁弁17、窒素発生器19、各循環ブロワ26,26、各ヒータ23,23、クーラブロワ32および各遮断弁51を制御する。
【0074】
本実施形態における、各乾燥ホッパ2についての置換工程、加熱乾燥工程、および冷却工程は、図2に示す処理と同様である。
また、吸引輸送管7の2つの遮断弁51を択一的に開くことで、ローダホッパ8に粉粒体が供給される乾燥ホッパ2を択一的に選択(バッチ切替)できる。
なお、本実施形態では、クーラブロワ32を各冷却装置13,13で共用する構成としたが、各冷却装置13,13のそれぞれにクーラブロワ32を独立して配置し、これらのクーラブロワ32,32を制御装置14で互いに独立して制御してもよい。
【0075】
また、各上記実施形態において、冷却装置13,13A,13Bは、空冷式である構成を説明したが、これらの冷却装置13,13A,13Bは、水冷式などの他の冷却方式を用いてもよい。さらに、蛇腹配管からなる冷却装置13Aと熱交換器とを併用してもよい。
また、窒素パージは、その開始から一定時間(第1時間TM1)経過後に完了する構成を説明したが、これに限らない。たとえば、循環ライン22の還流ライン25にOセンサを設け、Oセンサによって検出される酸素濃度が実質的にゼロになったときに、窒素パージを完了するようにしてもよい。さらに、窒素ガス以外の他の一般の不活性ガスを用いて、粉粒体を加熱乾燥および冷却してもよい。また、乾燥ホッパ2を密閉する密閉装置は、乾燥ホッパ2内の空間Sを密閉できればよく、その構成は図1などで説明したものに限らない。同様に、ローダホッパ8内の空間S’を密閉する密閉装置は、ローダホッパ8内の空間S’を密閉できればよく、その構成は図6で説明したものに限らない。
【0076】
また、加熱および乾燥され、その後冷却された粉粒体は、密閉された容器に保存されていればよく、不活性ガス以外の空気などの気体の雰囲気下で保存されてもよい。また、粉粒体の加熱は、不活性ガスによる加熱に限らず、不活性ガス以外の気体による加熱でもよい。
【符号の説明】
【0077】
2 乾燥ホッパ(ホッパ)
5 乾燥装置
8 ローダホッパ(ホッパ)
12 加熱装置
13,13A,13B 冷却装置
50,53,500 密閉装置
H 粉粒体の温度
H1 第1温度(一定温度)
S,S’ 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形の材料としての粉粒体を一定時間加熱乾燥する加熱乾燥工程と、
前記加熱乾燥工程で加熱乾燥された前記粉粒体を冷却する冷却工程とを含み、
前記冷却工程では、冷却した不活性ガスを前記粉粒体に供給することにより、前記粉粒体を冷却することを特徴とする、粉粒体の乾燥方法。
【請求項2】
前記加熱乾燥工程では、加熱した不活性ガスを前記粉粒体に供給することにより、前記粉粒体を加熱乾燥することを特徴とする、請求項1に記載の粉粒体の乾燥方法。
【請求項3】
前記冷却工程で冷却された前記粉粒体を、密閉されたホッパ内の空間で保存する保存工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の粉粒体の乾燥方法。
【請求項4】
前記保存工程では、密閉された前記ホッパ内の前記空間が不活性ガスの雰囲気にされていることを特徴とする、請求項3に記載の粉粒体の乾燥方法。
【請求項5】
前記加熱乾燥工程では、前記粉粒体が溜められた乾燥ホッパ内の前記粉粒体を加熱乾燥し、
前記冷却工程では、前記乾燥ホッパ内の前記粉粒体を冷却することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の粉粒体の乾燥方法。
【請求項6】
前記加熱乾燥工程では、前記粉粒体の温度が一定温度以上になると、前記粉粒体の温度が前記一定温度未満のときよりも前記粉粒体を加熱する度合いを弱めることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の粉粒体の乾燥方法。
【請求項7】
樹脂成形の材料としての粉粒体が溜められるホッパと、
前記ホッパに溜められた前記粉粒体を一定時間加熱乾燥するための加熱装置と、
前記ホッパに溜められ前記加熱装置によって加熱された前記粉粒体を冷却するための冷却装置とを備え、
前記冷却装置は、冷却した不活性ガスを前記粉粒体に供給することにより、前記粉粒体を冷却することを特徴とする、粉粒体の乾燥装置。
【請求項8】
前記加熱装置は、加熱した不活性ガスを前記粉粒体に供給することにより、前記粉粒体を加熱乾燥することを特徴とする、請求項7に記載の粉粒体の乾燥装置。
【請求項9】
前記冷却装置によって冷却された前記粉粒体が溜められる前記ホッパ内の空間を密閉するための密閉装置をさらに備えることを特徴とする、請求項7または8に記載の粉粒体の乾燥装置。
【請求項10】
前記密閉装置によって密閉されているときの前記ホッパ内の前記空間は、不活性ガスの雰囲気にされていることを特徴とする、請求項9に記載の粉粒体の乾燥装置。
【請求項11】
前記加熱装置によって加熱乾燥される前記粉粒体が溜められる前記ホッパと、前記冷却装置によって冷却される前記粉粒体が溜められる前記ホッパとは、同一であることを特徴とする、請求項7ないし10のいずれかに記載の粉粒体の乾燥装置。
【請求項12】
前記加熱装置は、前記粉粒体の温度が一定温度以上になると、前記粉粒体の温度が前記一定温度未満のときよりも前記粉粒体を加熱する度合いを弱めることを特徴とする、請求項7ないし11のいずれかに記載の粉粒体の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−131986(P2010−131986A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251431(P2009−251431)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000129183)株式会社カワタ (120)
【出願人】(597024681)第一実業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】