説明

粉粒体供給装置

【課題】少量であっても連続的且つ定量的な粉粒体の供給を行うことが可能であり、供給量の調節範囲が広く尚且つ調節が容易な粉粒体供給装置を提供する。
【解決手段】上部に粉粒体流入口を有し、下半部に粉粒体排出スリット15を有する円筒状のケーシング2に、外周面に複数本の粉粒体搬送溝17が形成された円柱状のロータ3を内嵌させ、ロータ3をモータ4によって回転駆動することにより、研磨材を粉粒体排出スリット15から排出させる粉粒体供給装置において、各粉粒体搬送溝17をロータ3の回転軸Pに対して所定のねじれ角度θ2をもって傾斜させ、一方、長方形の粉粒体排出スリット15の前縁15aをロータ3の回転軸Pと平行に延在させ、前縁15aにおける粉粒体搬送溝17の総開口長さL1が、ロータ3の全周にわたって同一となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体供給装置に関し、特に、供給量の調節範囲が広く、少量であっても連続的且つ定量的に粉粒体を供給可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定量の粉粒体を供給するための粉粒体供給装置としては、次のように構成されたものが一般に使用されている。すなわち、粉粒体を貯留したタンクの下端にケーシングを連結させ、このケーシングの下部に排出スリットを形成するとともに、水平軸の周りに複数のブレードを放射状に有するロータをケーシングに回転自在に内嵌させ、このロータをモータにより回転駆動することにより、ブレードによって搬送された粉粒体を排出スリットから排出する粉粒体供給装置である(例えば、特許文献1参照)。このような粉粒体供給装置は一般に、ある程度大量の粉粒体を供給し、且つ供給量に精度の求められない用途に適している。
【0003】
一方、比較的粒径の小さな、あるいは凝集性のある粉粒体であっても微小時間単位で安定的に供給するための粉粒体供給装置として、粉粒体を貯留したタンクの下端にケーシングを連結させ、このケーシングの下部の排出スリット部にチャンバを形成するとともに、外周面に複数の凹部または溝が形成された筒状のロータを回転駆動自在にケーシングに内嵌させ、凹部または溝に充填された粉粒体をロータの回転によって排出スリットに搬送するとともにエゼクターポンプで吸引し、エゼクターポンプの気体流と共に搬送するように構成した装置が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】実公平8−1224号公報
【特許文献2】特開平7−172575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の粉粒体供給装置では、定量の粉粒体を安定的に供給することができない。また、特許文献2に記載の粉粒体供給装置は、エゼクターポンプでチャンバ内を負圧にして粉粒体を吸引し、あるいはロータ表面に圧縮空気を噴射して粉粒体を剥離離脱させて粉粒体を吸引することにより、安定した粉粒体の供給を実現する技術であって、流動性を有し見掛け比重の大きな粉粒体については安定した供給が担保されていない。つまり、微小時間当たりの供給量は比較的一定であるが、凹部または溝の形状および配置についての具体的構成については不明確であるため、ロータを低速回転させたときには精密な定量性が得られず、供給が連続的でなくなったり、供給量にばらつきが生じたりすることがある。凹部または溝を小さくすることによって定量性の向上を図ることはできるが、この場合、供給量を増やすためにロータの回転速度を上げるだけでは、広範な供給量の調節を行うのに限度があった。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、少量であっても連続的且つ定量的な粉粒体の供給を行うことが可能であり、供給量の調節範囲が広く尚且つ調節が容易な粉粒体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、上半部に粉粒体流入口を有し、下半部に粉粒体排出スリットを有した円筒状のケーシングと、前記ケーシングに回転自在に内嵌するとともに、外周面に複数本の粉粒体搬送溝が形成された円柱状のロータと、前記ロータを回転駆動する回転駆動手段とを備え、前記回転駆動手段によって前記ロータを回転させることにより、前記粉粒体流入口から前記粉粒体搬送溝に流入した粉粒体を前記粉粒体排出スリットから排出させる粉粒体供給装置であって、前記粉粒体搬送溝が前記粉粒体排出スリットの前縁に対して所定の角度をもって傾斜するとともに、当該前縁における当該粉粒体搬送溝の総開口長さが前記ロータの全周にわたって略同一となるように構成する。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の粉粒体供給装置において、前記粉粒体排出スリットが前記ロータの回転軸と平行となるように構成する。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の粉粒体供給装置において、前記粉粒体排出スリットは、前記ロータの最下部よりロータ回転方向について後方で開口するように構成する。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の粉粒体供給装置において、前記粉粒体搬送溝の断面が前記ロータの外周に向けて広がる略台形を呈するとともに、当該台形の両斜辺は、前記前縁に位置した際における水平面からの角度が前記粒流体の安息角と略同一となる角度に傾斜するように構成する。
【0010】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の粉粒体供給装置において、前記粉粒体排出スリットが前記ロータの回転軸から概ね前記粉粒体の安息角だけ下方で開口し、前記台形の両斜辺が前記ロータの回転軸の放射線上に延在するように構成する。
【0011】
また、請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の粉粒体供給装置において、前記ロータの両端面と前記ケーシングとの間には、弗素樹脂からなる円板が介装されるように構成する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、粉粒体搬送溝に流入した粉粒体は、ロータが回転して粉粒体搬送溝が粉粒体排出スリットに差しかかった時に落下することによって排出されるが、粉粒体の落下を開始させる排出スリットの前縁に開口する粉粒体搬送溝の総延長、つまり前縁と各溝の両肩部とが交差する点の距離の総和がロータの全周に渡って略同一であるため、ロータを低速回転させても連続的且つ定量的な粉粒体の供給が確保される。また、回転駆動手段を制御してロータの回転速度を変更することによって容易に供給量を変更できるとともに、供給量の調節範囲の大きな粉粒体供給装置が得られる。ロータの回転を停止すると粉粒体の落下も停止するため、粉粒体供給装置をバルブとして機能させることもできる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、ロータ回転運動における粉粒体の落下高さが一定となるため、粉粒体排出スリットにおける排出量が定量となるのみならず、粉粒体供給装置の下方の所定位置(所定の受け部)における供給量も定量となる。また、請求項3の発明によれば、流動性の高い粉粒体を供給する場合に、粉粒体が粉粒体搬送溝内を移動して落下することが防止される。これにより、より定量的な粉粒体の供給が実現される。
【0014】
さらに、請求項4の発明によれば、ロータの回転軸に直角な断面視において、微小時間当たりに粉粒体搬送溝から落下する粉粒体の量が、溝の幅方向の如何なる位置においても同一となり、ロータ低速回転駆動時であっても粉粒体の連続的且つ定量的な供給が可能となる。また、請求項5の発明によれば、排出スリットの位置をロータの最下部から当該位置まで移動することにより、粉粒体搬送溝の断面が左右対称の台形となるため、粉粒体搬送溝の加工が容易となる他、ロータを脱着式あるいは交換式とした場合等には、いずれの向きにも使用できるようになり、ロータの磨耗防止、作業員によるミスセットの防止が図られる。
【0015】
また、請求項6の発明によれば、ケーシングとロータとの間への粉粒体の侵入が可能な限り防止されるとともに、粉粒体が侵入したとしても、ロータの回転摩擦の増大を抑制することができ、ロータの安定した回転速度を得ることができる。したがって、モータの出力負荷を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
≪実施形態に係る粉粒体供給装置の適用例≫
図1は、実施形態に係る粉粒体供給装置を適用したアブレイシブ・ウォーター・ジェット(以下、AWJと記す)加工装置の概略図であり、図2は、図1中のII−II矢視図である。AWJ加工装置51は、研磨材(粉粒体)が貯留された研磨材タンク52、研磨材タンク52の下端に連結され、所定量の研磨材を供給する粉粒体供給装置1、研磨材を超高圧水に混入して被加工物に向けて高速で噴射するノズルヘッド53、ノズルヘッド53に超高圧水を供給する高圧水ユニット54等から構成されている。研磨材としては、例えば、ガーネット、珪砂等の消耗型のものを用いるのが一般的である。研磨材の粒径についても、その用途によって様々な大きさのものが用いられ、構造物解体用には例えば、250μm〜600μm程度のものが使用される。またブラスト等への適用には、非鉄系、ガラス系、セラミック系、樹脂系等、種々の材質の研磨材が利用される。
【0017】
高圧水ユニット54を駆動すると超高圧水が高圧水供給路55を介してノズルヘッド53に供給される。開閉弁56が開弁されることにより、噴射ノズル57から超高圧水が噴射される。ノズルヘッド53には負圧計59が取り付けられた研磨材供給路58が接続されており、高圧水噴出時には、噴射ノズル57内の高速な水流によって研磨材供給路58内が負圧となる。研磨材供給路58の端部は大気開放されているため、粉粒体供給装置1から排出された研磨材は、落下し、研磨材供給路58に連通するロート60によって収集された後、研磨材供給路58内を流れる空気によってノズルヘッド53へ搬送される。
【0018】
AWJ加工装置51は、超高圧水と研磨材との混合液を被加工物に噴射することによって被加工物に切断、研削、穿孔等の加工を施す装置であるが、超高圧水の主な役割は、研磨材を加速させ、被加工物に高速で衝突させることであって、被加工物の加工は、その殆どが超高圧水ではなく研磨材の衝突によるものである。したがって、AWJ加工装置51によって被加工物を加工している最中に、研磨材の供給の途切れや供給量の変化が生じた場合、被加工物の切断が不連続となったり、加工面に斑が生じたりすることとなり望ましくない。一方、研磨材は大量に供給されれば良いというものでもない。連続的的且つ定量的な供給が望ましく、消耗型の研磨材が使用されるのであれば、その使用量を可能な限り削減することも望まれる。本発明の粉粒体供給装置1はこのような用途に最適である。
【0019】
≪実施形態に係る粉粒体供給装置の構成≫
図1,図2に示すように、粉粒体供給装置1は、ロータを内嵌した円筒状のケーシング2と、ロータを回転駆動するモータ4とを備えている。モータ4には、インバータ5が接続されており、周波数を変更することによってモータ回転速度を容易に調節できるようになっている。
【0020】
次に、図3〜図6を参照してケーシングとロータについて説明する。図3は実施形態に係る粉粒体供給装置の軸方向縦断面図であり、図4は図3中のIV−IV矢視図であって、ロータの側面を示す図であり、図5は図4中のV−V矢視図であって、排出スリット正面視におけるロータを示す図であり、図6は実施形態に係る粉粒体供給装置の排出スリット正面図である。
【0021】
まず、図3,図4に示すように、ケーシング2は、一方の端面に円形フランジ11を有する円筒状の外殻部材12と、円形フランジ11に一部が内挿されて円形フランジ11の開口を閉蓋する蓋部材13とから構成されている。円形フランジ11の表面にはスタッドボルトが突設されており、蓋部材13は、このスタッドボルトが挿通されてボルト締めされることによって外殻部材12に接合される。外殻部材12の上部には、横断面が方形の粉粒体流入口14が形成されており、粉粒体流入口14の上端に溶接された方形フランジと研磨材タンク52の下端に溶接された方形フランジとがボルト/ナットで締結されることにより、ケーシング2と研磨材タンク52とが互いに連結されている。一方、外殻部材12の下半部には、粉粒体排出スリット15が形成されており、粉粒体排出スリット15を囲むように、横断面が長方形の粉粒体排出ガイド16が下方へ延設されている。
【0022】
ケーシング2の内部には、円柱状のロータ3が内嵌されている。ロータ3は中央に円柱状の中空部を有し、当該中空部にモータ回転軸20が嵌挿された状態で外郭部材9に嵌装される。ロータ3の中空部とモータ回転軸20とは互いに係合する形状を呈しているため、モータ4の駆動によってロータ3が回転駆動される。ロータ3の両端面と、外殻部材12および蓋部材13との間には、弗素樹脂からなる円板18,19が介装されている。円板18,19は、中央に円形孔が形成されてモータ回転軸20に対して回転自在となっており、ロータ3、外殻部材12および蓋部材13に対して摺動する構造となっている。
【0023】
図4に示すように、粉粒体排出スリット15および粉粒体排出ガイド16は、ロータ3の最下部Uよりも回転方向Dについて後方(すなわち、図面右側)に配置されている。粉粒体排出スリット15の両端縁のうち、ロータ3の回転方向Dについて前方(すなわち、図面左側)を前縁15aと称呼する。ロータ3の外周面には、粉粒体搬送溝17が複数形成されており、粉粒体搬送溝17の断面はロータ3の外周に向けて広がる略台形を呈している。ロータ3の断面は円形なので、粉粒体搬送溝17の断面は台形にはなり得ないが、ここでは、粉粒体搬送溝17の側面17a,17bが平行ではなく、粉粒体搬送溝17の底面17cが、半径r1を有するロータ3と同心となる半径r2の円周上に概ね形成されることを意味する。
【0024】
この台形の斜辺をなす2辺、すなわち粉粒体搬送溝17の両側面17a,17bはともに、粉粒体排出スリット15の前縁15aに位置した際における水平面Hからの角度がθ1となる角度に傾斜している。θ1は、研磨材6の安息角である。安息角とは、粉体層の自由表面が限界応力状態にある場合、その面と水平面との間の角、つまり、粉粒体を積み上げた際に、自発的に崩れることなく安定を保つことができる斜面の角度であり、摩擦係数によるものである。研磨材6の安息角の測定方法には、注入法の他、排出法、傾斜法等、複数の測定方法があること、安息角は粉粒体の乾燥状態等の使用条件によっても変化すること等から、安息角は必ずしも一定とはならないが、θ1はこれらの平均的な値とすればよい。
【0025】
研磨材タンク52から供給された研磨材6は粉粒体流入口14を介して粉粒体搬送溝17に流入し、ロータ3が回転方向Dに回転駆動されることによって下方に搬送され、粉粒体排出スリット15に達した時点で自由落下可能となることによって粉粒体供給装置1から排出される。
【0026】
図5に示すように、各粉粒体搬送溝17はロータ3の回転軸Pに対して所定のねじれ角度θ2をもって傾斜している。一方、粉粒体排出スリット15は長方形を呈するとともに、ロータ3の回転方向について前方、すなわち図面下側の端縁である前縁15aが、ロータ3の回転軸Pと平行に延在している。したがって、粉粒体搬送溝17は、前縁15aに対しても所定のねじれ角度θ2をもって傾斜している。粉粒体搬送溝17によって図面下側から搬送されてきた研磨材6は、前縁15aに達したときに落下する。ここで、粉粒体搬送溝17の両肩部と前縁15aとが交差する点をそれぞれP1,P2とすると、微小単位時間当たりに落下する研磨材6の量は、P1とP2との距離L1(=総開口長さL)と粉粒体搬送溝17の深さ(図5の方向視における)との積となる。
【0027】
図6に示すように、ねじれ角度θ2は、粉粒体搬送溝17Aの図面右側の端面と粉粒体搬送溝17Bの図面左側の端面とが前縁15a上を移動させることにより連続するような角度である。したがって、前縁15aにおける粉粒体搬送溝17の総開口長さL1の位置は、ロータ3の回転に伴って図面右側へ移動し、いずれロータ3の左右に分割され、再び統合されるように変化する。しかし、各粉粒体搬送溝17は、互いに隣接する粉粒体搬送溝17と前縁15a上で連続する配置となっているため、総開口長さL1は、ロータ3の全周にわたって同一となる。なお、ねじれ角度θ2は粉粒体搬送溝17のピッチによって決定される。
【0028】
≪実施形態に係る粉粒体供給装置の作用効果≫
次に図7を参照して、実施形態に係る粉粒体供給装置1の作用について説明する。図7は研磨材の落下状態を示す説明図であり、(a)〜(c)は粉粒体搬送溝17の移動過程を時系列順に表すロータ3の部分拡大側面図である。図7(a)に示すように、ロータ3の回転に伴って粉粒体排出スリット15に最初に差しかかる側面17aは、前縁15aに位置した際に、水平面Hからの角度がθ1をなしており、この時点では、側面17aに面した研磨材6はケーシング2に支持されているために崩れない。
【0029】
次に、図7(b)に示すように、ロータ3の回転が進むと、粉粒体搬送溝17の一部が開口した状態となり、この開口上部の研磨材6が粉粒体排出スリット15から落下する。また、研磨材6は常に角度θ1の斜面を形成するので、前縁15aから角度θ1をなす斜面上部の研磨材6も同時に崩れ落ち、粉粒体排出スリット15から落下する。つまり、粉粒体搬送溝17内の研磨材6全量のうち、台形の底辺長さに対する開口部長さの比に相当する量が落下する。
【0030】
図7(c)に示すように、粉粒体排出スリット15に後から差しかかる側面17bも、前縁15aに位置した際に、水平面Hからの角度がθ1をなしている。したがって、この時点で、粉粒体搬送溝17内の研磨材6が全て排出されることになる。なお、粉粒体搬送溝17内に研磨材6が残存することによって研磨材6の総供給量に誤差が生じるのを防止するために、θ1を研磨材6の安息角より多少大きく設定してもよい。また、上記したように安息角には不定要素もあるが、より正確な定量性を所望する場合には、粉粒体搬送溝17の深さを浅くすることによって安定角のばらつきによる供給量の不安定性を回避することができる。
【0031】
また、上記したようにロータ3は取り外し可能な構造となっているため、粒径の小さな研磨材6や、微小量の研磨材6を供給する際に、モータ4の回転速度の調節だけでは研磨材供給量が不安定となってしまう場合には、深さの浅い粉粒体搬送溝が形成されたロータを用意しておき、供給量に合ったロータに適宜交換するようにしてもよい。更に、安息角の異なる研磨材を用いる場合や、AWJ加工装置以外の用途に用いる場合には、これら各種材料または用途に合った粉粒体搬送溝の形成されたロータを用意しておくことで容易に対応可能である。
【0032】
このように、研磨材6の落下を開始させる粉粒体排出スリット15の前縁15aに開口する粉粒体搬送溝17の総延長Lがロータ3の全周に渡って同一であるため、ロータ3を低速回転させたとしても連続的且つ定量的な研磨材6の供給がなされる。また、モータ4をインバータ5で制御してロータ3の回転速度を変更することによって、容易に研磨材6の供給量を調節できる。また、連続的且つ定量的に供給できる研磨材供給量の調節範囲が大きい。更に、粉粒体供給装置1は、ロータ3の回転を停止させることにより、研磨材6の排出を停止するバルブとしても機能する。
【0033】
また、粉粒体排出スリット15の前縁15aがロータ3の回転軸Pと平行であるため、研磨材6の落下高さが一定となり、粉粒体排出スリット15における排出量が定量となるのみならず、装置下方のロート60における落下量も定量となる。また、粉粒体排出スリット15がロータ3の最下部Uよりも回転方向Dについて後方に配置されているため、例え研磨材6の流動性が高くても、研磨材6が粉粒体搬送溝17内を移動して落下することもない。これにより、研磨材6の定量的供給が担保されている。更に、粉粒体搬送溝17の両側面17a,17bがともに、粉粒体排出スリット15の前縁15aに位置した際における水平面Hからの角度がθ1となる角度に傾斜しているため、微小時間当たりに粉粒体搬送溝17から落下する研磨材6の量が、溝の幅方向の如何なる位置においても同一となり、ロータ低速回転駆動時であっても、研磨材6は連続的且つ定量的に供給される。
【0034】
≪第1変形実施形態≫
次に、図8を参照して第1変形実施形態について説明する。図8は変形第1実施形態に係る粉粒体供給装置の排出スリット正面図である。なお、以下の変形実施形態においては、上記実施形態と同一の部材については同一の符号を用い、上記実施形態と異なる点について重点的に説明する。ロータ23の外周面には、上記実施形態の2倍の本数の粉粒体搬送溝27が形成されている。粉粒体搬送溝27は、上記実施形態と比較して、幅およびピッチは半分に、回転軸Pに対するねじれ角度θ2および深さは同一に形成されている。粉粒体排出スリット25の前縁25aは、上記実施形態同様にロータ3の回転軸Pと平行に延在している。そのため、前縁25aには2本の粉粒体搬送溝27A,27Bが開口している。両粉粒体搬送溝27A,27Bの両肩部と前縁25aとが交差する点をそれぞれP3,P4,P5,P6とすると、総開口長さLは、P3とP4との距離L2と、P4とP5との距離L3との和となり、L=L2+L3=L1となる。したがって、同じ回転速度でロータ23を回転駆動した場合、研磨材6の供給量は上記実施形態を同一である。
【0035】
≪第2変形実施形態≫
次に、図9を参照して第2変形実施形態について説明する。図9は変形第2実施形態に係る粉粒体供給装置の排出スリット正面図である。本実施形態では、ロータ33の外周に形成された複数の粉粒体搬送溝37は回転軸Pと平行に延在し、粉粒体排出スリット35の前縁35aが回転軸Pに対して所定の角度θ3をもって傾斜している。粉粒体搬送溝37Aの両肩部と前縁35aとが交差する点をそれぞれP7,P8とすると、総開口長さLは、P7とP8との距離L4となる(L=L4)。総開口長さLがロータ33の全周に渡って同一であるため、研磨材6は連続的且つ定量的に供給される。
【0036】
≪第3変形実施形態≫
更に、図10を参照して第3変形実施形態について説明する。図10は第3変形実施形態に係る粉粒体供給装置の軸直角方向縦断面図である。本実施形態では、粉粒体排出スリット45が、ロータ43の最下部Uより回転方向Dについて後方(図面右側)で開口するとともに、前縁45aが、回転軸Pから水平面Hに対して角度θ1だけ下方に位置している。そして、粉粒体搬送溝47の両側面47a,47bは、ロータ43の回転軸Pの放射線上に延在する。したがって、両側面47a,47bは、前縁45aに位置した際に、水平面Hからの角度がθ1をもって傾斜する。このように、粉粒体搬送溝47の断面が左右対称の台形となるため、粉粒体搬送溝47の加工が容易となる他、ロータ43反対向きにセットすることも可能である。
【0037】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、粉粒体供給装置はAWJ加工装置に適用されているが、これ以外の装置またはシステム、例えばバラスト装置や、紛体塗装装置、その他装置に適用されてもよく、あるいは粉粒体製品の製造ラインに組み込まれてもよい。また、粉粒体についても研磨材に限定されるものではなく、本粉粒体供給装置は各種粉粒体の供給装置として利用可能である。さらに、上記した各変更実施形態の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態に係る粉粒体供給装置を適用したAWJシステムの概略図
【図2】図1中のII−II矢視図
【図3】実施形態に係る粉粒体供給装置の軸方向縦断面図
【図4】図3中のIV−IV矢視図
【図5】図4中のV−V矢視図
【図6】実施形態に係る粉粒体供給装置の排出スリット正面図
【図7】ガーネットの落下状態を示す説明図
【図8】変形第1実施形態に係る粉粒体供給装置の排出スリット正面図
【図9】変形第2実施形態に係る粉粒体供給装置の排出スリット正面図
【図10】第3変形実施形態に係る粉粒体供給装置の軸直角方向縦断面図
【符号の説明】
【0039】
1 粉粒体供給装置
2 ケーシング
3,23,33,43 ロータ
4 モータ
5 インバータ
6 研磨材(粉粒体)
14 粉粒体流入口
15,25,35,45 粉粒体排出スリット
15a,25a,35a,45a 前縁
17,27,37,47 粉粒体搬送溝
18,19 円板
P ロータの回転軸
H 水平面
L 粉粒体搬送溝の総開口長さ
θ1 研磨材の安息角
θ2,θ3 粉粒体搬送溝と回転軸Pとのねじれ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上半部に粉粒体流入口を有し、下半部に粉粒体排出スリットを有した円筒状のケーシングと、
前記ケーシングに回転自在に内嵌するとともに、外周面に複数本の粉粒体搬送溝が形成された円柱状のロータと、
前記ロータを回転駆動する回転駆動手段と
を備え、
前記回転駆動手段によって前記ロータを回転させることにより、前記粉粒体流入口から前記粉粒体搬送溝に流入した粉粒体を前記粉粒体排出スリットから排出させる粉粒体供給装置であって、
前記粉粒体搬送溝が前記粉粒体排出スリットの前縁に対して所定の角度をもって傾斜するとともに、当該前縁における当該粉粒体搬送溝の総開口長さが前記ロータの全周にわたって略同一であることを特徴とする粉粒体供給装置。
【請求項2】
前記粉粒体排出スリットが前記ロータの回転軸と平行であることを特徴とする、請求項1に記載の粉粒体供給装置。
【請求項3】
前記粉粒体排出スリットは、前記ロータの最下部よりロータ回転方向について後方で開口することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の粉粒体供給装置。
【請求項4】
前記粉粒体搬送溝の断面が前記ロータの外周に向けて広がる略台形を呈するとともに、当該台形の両斜辺は、前記前縁に位置した際における水平面からの角度が前記粒流体の安息角と略同一となる角度に傾斜したことを特徴とする、請求項3に記載の粉粒体供給装置。
【請求項5】
前記粉粒体排出スリットが前記ロータの回転軸から概ね前記粉粒体の安息角だけ下方で開口し、前記台形の両斜辺が前記ロータの回転軸の放射線上に延在することを特徴とする、請求項4に記載の粉粒体供給装置。
【請求項6】
前記ロータの両端面と前記ケーシングとの間には、弗素樹脂からなる円板が介装されたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉粒体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−189415(P2008−189415A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24051(P2007−24051)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(597059292)ジャパン テクノロジ リサーチ株式会社 (2)
【出願人】(390020422)日進機工株式会社 (7)
【Fターム(参考)】