説明

粉粒体搬送時の発塵抑制方法

【課題】多量の泡を用いることなく、効率的かつ経済的に粉粒体の発塵を抑えることが可能な粉粒体搬送時の発塵抑制方法を提供する。
【解決手段】搬送装置13、14を用いて粉粒体11を搬送するに際し、搬送装置13、14に粉粒体11が積載される前に、搬送装置13、14の積載面25、26上に泡を供給する。ここで、粉粒体11の搬送方向に隣り合う搬送装置13、14の乗り継ぎ部に、水平方向に対して下方へ、粉粒体11の安息角を超え85度以下の範囲内に傾斜した斜面29を備えるシュート15を配置し、また、搬送装置13の上流側に、粉粒体11の搬送方向に向けて下方に傾斜する斜面27を備え、しかもその傾斜角度θ1を、水平方向に対して下方へ、粉粒体11の安息角を超え85度以下の範囲内に設定した貯留ホッパー12を配置して、粉粒体11を斜面29、27に沿って滑落させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置を用いて粉粒体(粉塵を含む)を搬送する際の発塵抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体の搬送系統では、例えば、コンベア(搬送装置)の乗り継ぎ部等で発塵が生じ好ましくない。特に、製鉄所においては、鉄鉱石、石炭、焼結鉱、コークスなどの原料(粉粒体)を、コンベアで多量に搬送しているため、その乗り継ぎ部等で生じる粉塵(微粉)の飛散量も多量となるが、これら飛散する粉塵も有用な原料となる。通常、こうした粉塵の発生箇所には、集塵機が設置され、粉塵を強制的に吸引し捕集している。
しかし、このような粉塵の集塵設備は、原料の搬送経路を網羅する吸引管、集塵機、吸引ブロワ、排気塔などを備え、大掛かりな設備となり、使用にあっては、細かなメンテナンスや調整も欠かせない。このため、簡便な発塵抑制手段として、水の散布も行われているが、原料の水分上昇を招くこととなり、品質やエネルギー面において好ましくない。
このような状況に対し、簡易的に、かつ極力少ない水分で、発塵を抑制したいというニーズがあり、その一手段として、泡沫を用いる技術が、従来から検討され使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、原料を覆うに足る最小限の泡沫を、コンベアの幅全体に渡って供給する方法と装置が開示され、これにより、薬剤を節約しつつ発塵を抑制できることが記載されている。
また、特許文献2には、原料の移送に当たり、粉塵発生箇所を泡沫で遮蔽する方法が開示されている。具体的には、コンベアの乗り継ぎ部での原料の発塵を防止する目的で、乗り継ぎ部に設置されたシュートの下流に対し、原料の上方から泡沫を散布している。また、船積時の船倉内の発塵を防止する目的で、泡沫を、旋回シュートからの原料放流部に向けて上方から投射し、泡沫で原料の積込層上を遮蔽している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−62939号公報
【特許文献2】特開昭48−42969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の方法には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1に記載の方法は、泡沫で発塵箇所を遮蔽することを前提としており、多量の泡沫が必要であった。また、多量の泡沫を、稼動しているコンベア上に確実に供給することも困難が多い。更に、粉粒体の層内部にある粉塵に対しては、泡沫が接触し難く、続く乗り継ぎ部で再度発塵するため、複数の乗り継ぎ部ごとに多量の泡沫を供給しなければならず、例えば、多数の泡供給装置の設置や多量の泡沫の散布が必要であった。
特許文献2に記載のコンベアの乗り継ぎ部の発塵防止方法は、泡沫シュート部をコンベアのシュート上方に配置して、原料を泡沫で覆っているため、特許文献1と同様、多量の泡沫が必要であった。また、船積時の船倉内の発塵防止方法も、泡沫を供給する発泡器を、旋回シュートからの原料放流部よりも上方に配置して、原料放流部に向かって泡沫を投射し原料を泡沫で覆っているため、特許文献1と同様、多量の泡沫が必要であった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、多量の泡を用いることなく、効率的かつ経済的に粉粒体の発塵を抑えることが可能な粉粒体搬送時の発塵抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る粉粒体搬送時の発塵抑制方法は、搬送装置を用いて粉粒体を搬送するに際し、該搬送装置に該粉粒体が積載される前に、該搬送装置の積載面上に泡を供給する。
【0008】
本発明に係る粉粒体搬送時の発塵抑制方法において、前記搬送装置が複数設けられ、前記粉粒体の搬送方向に隣り合う該搬送装置の乗り継ぎ部に、水平方向に対して下方へ、該粉粒体の安息角を超え85度以下の範囲内に傾斜した斜面を備えるシュートを配置して、該粉粒体を該シュートの斜面に沿って滑落させることが好ましい。
【0009】
本発明に係る粉粒体搬送時の発塵抑制方法において、前記搬送装置の上流側に、前記粉粒体の搬送方向に向けて下方に傾斜する斜面を備え、しかも該斜面の傾斜角度を、水平方向に対して下方へ、該粉粒体の安息角を超え85度以下の範囲内に設定した貯留ホッパーを配置し、該粉粒体を該貯留ホッパーの斜面に沿って滑落させることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る粉粒体搬送時の発塵抑制方法は、搬送装置を用いて粉粒体を搬送するに際し、搬送装置に粉粒体が積載される前に、この搬送装置の積載面上に泡を供給するので、少なくとも粉粒体層の下層側を泡に接触させることができる。粉粒体は、例えば、搬送過程で転動し粒度偏析を生じるため、粉粒体層の上面側に比較的粗粒が多く、下層側に発塵源である微粉が多い。
従って、上記したように、少なくとも粉粒体層の下層側を泡に接触させることにより、多くの微粉を泡に接触させることができるため、多量の泡を用いることなく、効率的かつ経済的に粉粒体の発塵を抑えることが可能になる。
【0011】
また、隣り合う搬送装置の乗り継ぎ部に、水平方向に対して下方へ、粉粒体の安息角を超え85度以下の範囲内に傾斜した斜面を備えるシュートを配置して、粉粒体をシュートの斜面に沿って滑落させる場合、シュートを滑落する粉粒体に、更に粒度偏析を生じさせることができる。これにより、粉粒体層の下層側の微粉を更に増やすことができ、その結果、この微粉を泡に接触させることができるため、本発明の効果が更に顕著になる。
【0012】
そして、搬送装置の上流側に、粉粒体の搬送方向に向けて下方に傾斜する斜面を備え、しかも斜面の傾斜角度を、水平方向に対して下方へ、粉粒体の安息角を超え85度以下の範囲内に設定した貯留ホッパーを配置して、粉粒体を貯留ホッパーの斜面に沿って滑落させる場合、貯留ホッパーを滑落する粉粒体に、更に粒度偏析を生じさせることができる。これにより、粉粒体層の下層側の微粉を更に増やすことができ、その結果、この微粉を泡に接触させることができるため、本発明の効果が更に顕著になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る粉粒体搬送時の発塵抑制方法の説明図である。
【図2】従来例に係る粉粒体搬送時の発塵抑制方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る粉粒体搬送時の発塵抑制方法を使用する粉粒体の搬送設備(以下、単に搬送設備ともいう)10について説明する。
搬送設備10は、粉粒体11の貯留ホッパー12と、この貯留ホッパー12から切り出された粉粒体11を水平方向に搬送する複数(ここでは、2台)のベルトコンベア(搬送装置の一例)13、14と、粉粒体11の搬送方向に隣り合うベルトコンベア13、14の乗り継ぎ部に配置されたシュート15とを有している。
【0015】
粉粒体11は、製鉄所で使用する原料(鉄鉱石、石炭、焼結鉱、コークス等)であるが、粉塵が発生するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属やセラミックスの粉、樹脂粉、食品(原料)の粉等でもよい。
また、粉粒体11の搬送には、ベルトコンベア13、14を使用したが、これに限定されるものではなく、搬送する粉粒体の種類や搬送経路(例えば、水平、斜行、垂直)に応じて、例えば、バケットコンベア、スラットコンベア、スチールコンベア、スクリューコンベア等の搬送装置を使用することもできる。なお、搬送装置の設置台数も、搬送経路に応じて、1台でもよく、また3台以上の複数台としてもよい。
【0016】
搬送設備10には、泡製造装置16が設けられている。
この泡製造装置16には、複数(ここでは、2本)のホース17、18が接続され、各ホース17、18の下流側端部にそれぞれ、泡製造装置16で製造された泡を放出する(吹き付ける)ためのノズル(泡放出手段)19、20が取り付けられている。
泡製造装置16は、水に界面活性剤(薬剤)と空気を混合して泡(泡沫)を製造する従来公知の装置(例えば、特許文献1、2に記載の装置)等を使用できる。なお、ここでは、泡製造装置16を1台使用したが、搬送設備の構成に応じて複数台設置してもよい。
【0017】
上記した2本のノズル19、20のうち、上流側のノズル19は、上流側のベルトコンベア13の上流側端部(貯留ホッパー12からの粉粒体11の供給位置よりも上流側)のベルト23上方(直上)に設置されている。また、下流側のノズル20は、下流側のベルトコンベア14の上流側端部(シュート15からの粉粒体11の滑落位置よりも上流側)のベルト24上方(直上)に設置されている。
この各ノズル19、20の泡の放出口(噴出口)21、22は、いずれもベルト23、24上に積載された際に下層側となる落下中の粉粒体11に向けられている。
【0018】
なお、各ノズル19、20の放出口21、22は、粉粒体11を積載するベルト23、24の積載面(載置面、上面、又は表面ともいう)25、26に向けてもよい。
また、泡を放出するノズル19、20を2本使用したが、粉塵の発生範囲や発生箇所数に応じて、3本以上使用することもできる(ホースの本数も同様)。
更に、泡を放出するノズルの構成も、上記した構成に限定されるものではなく、例えば、長手方向に同一又は異なるピッチで形成された放出口を備える配管とし、これを、粉粒体の搬送方向(ベルトの移動方向)と直交する方向に配置することもできる。
【0019】
続いて、本発明の一実施の形態に係る粉粒体搬送時の発塵抑制方法について、前記した粉粒体の搬送設備10を参照しながら説明する。
図1に示すように、粉粒体搬送時の発塵抑制方法は、各ベルトコンベア13、14を用いて粉粒体11を搬送するに際し、各ベルトコンベア13、14に粉粒体11が積載される前に、各ベルトコンベア13、14のベルト23、24の積載面25、26上に泡を供給する方法である。詳細には、貯留ホッパー12から、上流側のベルトコンベア13に粉粒体11が切り出される(落下する)前のベルト23の積載面25上に、泡をノズル19で連続的に供給する。また、上流側のベルトコンベア13から、シュート15を介して下流側のベルトコンベア14に粉粒体11が落下する前のベルト24の積載面26上に、泡をノズル20で連続的に供給する。
【0020】
従って、ベルトコンベア13のベルト23の移動に伴い、このベルト23上に供給される泡が、貯留ホッパー12の下方側へ移動し、落下中の粉粒体11の下方から接触する。また、ベルトコンベア14のベルト24の移動に伴い、このベルト24上に供給される泡が、シュート15の下方側へ移動し、落下中の粉粒体11の下方から接触する。
このとき、各ベルト23、24上に供給される泡は、落下中の粉粒体11に、その側方(積載面25、26上に積載された際に下層側となる方向)からも接触している。なお、泡を、上記した落下中の粉粒体11の側方のみに接触するように放出して(吹き付けて)、粉粒体11と泡を落下させ、各ベルト23、24上に粉粒体11が積載される前に、その積載面25、26上に泡を供給することもできる。
【0021】
以下、本発明者らが鋭意検討し、上記した発明に至った経緯について説明する。
図2に示す従来の粉粒体の搬送設備では、泡製造装置16にホース17、18を介して取り付けられた2本のノズル19、20が、粉粒体11の上面に対して泡を放出できるようにしている。具体的には、上流側のノズル19が、貯留ホッパー12aから切り出される粉粒体11に対して、上方から泡を吹き付けており、貯留ホッパー12aからの落下途中で粉粒体11に泡を吹き付け、その後、粉粒体11が落下回転する過程で、泡を粉粒体11に混合することを狙ったものである。また、下流側のノズル20は、粉粒体11がベルトコンベア13からベルトコンベア14へ乗り継ぐ直前で、粉粒体11の上方から泡を供給して、乗り継ぎの転動過程で泡を粉粒体11に混合することを狙ったものである。
【0022】
このように、従来の搬送設備では、ベルトコンベア13、14の乗り継ぎ部ごとに多量の泡を供給することで、泡で粉粒体11全体を覆うことにより発塵を抑えている。
しかしながら、この搬送設備では、十分な発塵抑制効果を得ることができなかった。その原因は、泡と粉粒体の混合効果が小さく、特に発塵源である微粉に対して泡を十分に接触させることができていないためだと考えられる。
本発明者らが、粉粒体と泡の状態を詳細に観察した結果、粉粒体層の上面側は比較的粗粒が多く、下層側に発塵源である微粉が多いことが判明した。これは、粉粒体が転動する過程で粒度偏析を生じ、粗粒が上方に、また微粉が下方に、それぞれ集まるためである。
【0023】
そこで、本発明者らは、上記した作用を踏まえ、また粉粒体の偏析作用を更に増大し活用するための方法、即ち粉粒体層の下層側に微粉が集まり易いことから粉粒体層の下層を狙って泡を供給する前記した本発明の粉粒体搬送時の発塵抑制方法に想到した。
これにより、粉粒体全体を覆うような多量の泡を用いることなく、効率的かつ経済的に発塵を抑制することが可能となる。
なお、上記したように、粉粒体は、その転動過程において、粉粒体層の下層側に微粉が集まり易いため、貯留ホッパー12とシュート15を、以下の構成とすることが好ましい。
【0024】
図1に示すように、ベルトコンベア13の上流側に配置された貯留ホッパー12は、粉粒体11の搬送方向に向けて下方に傾斜する斜面27と、この斜面27に対峙(対向)する垂直面28(水平方向に対して垂直な面)とを備え、側面視して非対称の形状となっている。なお、貯留ホッパー12の内幅は、下方に向けて縮幅(縮径)しており、その平面視した形状は、長方形や正方形、円形や楕円形、更には卵形でもよい。
このように、貯留ホッパー12の形状を規定し、貯留ホッパー12に貯留された粉粒体11を、斜面27に沿って滑落させることで、斜面27側に微粉が集まり易くなる。
【0025】
これにより、粉粒体11を貯留ホッパー12から切り出した後、ベルトコンベア13のベルト23上の粉粒体11層の下層側に、微粉を更に集中させることができる。従って、粉粒体11がベルトコンベア13のベルト23上に切り出される直前に、ベルト23の積載面25上にノズル19で泡を供給することで、泡による粉粒体11の発塵抑制効果を大きくできる。
ここで、貯留ホッパー12の斜面27の傾斜角度θ1は、水平方向に対して下方へ、粉粒体11の安息角を超え85度以下の範囲内に設定することが好ましい。
【0026】
これにより、粉粒体11が貯留ホッパー12の斜面27に沿って安定に滑落できるが、更には、下限を「粉粒体の安息角+5度」とすることが好ましく、また上限を80度、更には75度とすることが好ましい。
なお、粉粒体の安息角は、粉粒体の種類によっても異なるが、例えば、製鉄所で使用する原料であれば、30〜60度程度である。
また、上記した貯留ホッパーの垂直面(斜面27と対向する面)は、垂直面とすることなく、貯留ホッパーの内幅が、貯留ホッパーの上端から下端へかけて狭まるように(例えば、貯留ホッパー12a)、又は同一となるように、傾斜させてもよい。
【0027】
更に、シュート15も、粉粒体11が滑落するための斜面29を備えている。
ここでは、粉粒体11がシュート15からベルトコンベア14のベルト24上に積載される直前に、ベルト24の積載面26上にノズル20で泡を供給する。これは、粉粒体11がシュート15を滑落する際に粒度偏析が生じ、微粉が下層へ移動することから、乗り継ぎ後のベルトコンベア14のベルト24上では下層側に微粉が更に集中して、泡と微粉の接触確率を高めることができることによる。
このシュート15の斜面29の傾斜角度θ2も、貯留ホッパー12の斜面27と同様、上記した傾斜角度θ1の角度範囲とすることが好ましい。
上記したように、貯留ホッパーとシュートの斜面の傾斜傾斜θ1、θ2を設定することが好ましいが、粉粒体を滑落可能な角度であれば、この傾斜角度に限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、鉱石の造粒物を乾燥したものを粉粒体として使用し、この粉粒体を、前記した図1、図2に示す粉粒体の搬送設備で搬送して発塵量を測定し、発塵状況を比較した。なお、図2の搬送設備の使用にあっては、泡製造装置のみならず、泡製造装置の代わりに水供給装置を設置した場合についても、発塵量を測定した。
【0029】
まず、強制集塵の有無と、水及び泡の散布量と、泡の散布方法が、発塵状況に及ぼす影響を比較した結果について説明する。なお、発塵状況の比較は、通常の強制集塵を行った場合(集塵機を使用)を参考例1とし、集塵を行わない場合(集塵機不使用、水や泡の散布なし)を参考例2とし、集塵を止め図2の搬送設備を使用して水又は泡を散布した場合を比較例1〜10とし、図1の搬送設備を使用して泡のみを散布した場合を実施例1〜3として、行った。
この試験条件と試験結果を、表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1中の散布量は、水分供給量と鉱石搬送量から鉱石の水分上昇代に換算(=(水分)/{(水分)+(鉱石)}×100)して示した。なお、泡には、水に対して0.3質量%相当の界面活性剤(有効成分)を混合し、泡製造装置にて液の20倍の体積のエアーを混入しながら発泡させたものを用いた。このため、泡の散布量は、上記した計算式の水分中に界面活性剤量を含めて求めている。
また、発塵量は、発塵箇所の周囲に複数の容器を設置し、その容器内に降下し蓄積した粉塵を秤量して、単位時間、単位面積当たりの値として求めた。
【0032】
表1に示す参考例1は、通常の強制集塵を行った場合の結果であり、発塵量は5g/m/時間であった。一方、参考例2は、強制集塵を止めた状態であり、粉塵が飛散して発塵量が100g/m/時間となった。
これに対し、比較例1〜5は、図2に示す搬送設備で水噴霧を実施し、そのときの水の散布量を0.2質量%相当から最大4質量%相当まで増加させた結果である。表1から明らかなように、水の散布量の増加に伴い発塵量は低下したが、散布量が最大の4質量%相当でも(15g/m/時間)、強制集塵の場合の発塵抑制効果までには達しなかった。
また、比較例6〜10は、図2に示す搬送設備で泡噴霧を実施し、そのときの泡の散布量(泡を水分相当量にした量)を0.2質量%相当から最大4質量%相当まで増加させた結果である。表1から明らかなように、泡の散布量の増加に伴い発塵量は低減し、また水単味の場合よりも発塵抑制効果は大きくなった。従って、泡により、粉粒体との混合性は改善されたと考えられるが、泡を粉粒体の上方から散布したため、泡を最大4質量%相当まで散布しても、その発塵抑制効果(10g/m/時間)は、集塵機を用いた場合(参考例1)に達しなかった。
【0033】
一方、実施例1〜3は、図1に示す搬送設備を用いて、泡の散布量を0.2質量%から1質量%まで増加させた結果である。なお、粉粒体の安息角は45度であったことから、貯留ホッパー下部のコーン(斜面)の傾斜角度を、水平方向に対して下方へ65度とし、ベルトコンベアの乗り継ぎ部に設置したシュートの傾斜角度を、水平方向に対して下方へ50度とした。
表1の実施例1に示すように、粉粒体がベルトコンベアに載置される前に、その積載面上に泡を散布したため、泡の散布量が0.2質量%と少ない場合でも、図2の搬送設備を用いた比較例1、6と比較して、発塵量を大幅に抑制できた(40g/m/時間)。特に、泡の散布量を0.5質量%以上とすることで、集塵機を使用した参考例1と同程度以上の発塵抑制効果が得られることが判明した。
以上のことから、本発明の粉粒体搬送時の発塵抑制方法を用いることで、多量の泡を用いることなく、効率的かつ経済的に粉粒体の発塵を抑えることが可能であることを確認できた。
【0034】
続いて、前記した実施例2に対し、貯留ホッパー下部のコーンの傾斜角度と、隣り合うベルトコンベアの乗り継ぎ部に配置したシュートの有無の影響を比較した結果について、表2を参照しながら説明する。なお、表2において、シュートを使用する場合は、その斜面の傾斜角度を50度に設定した。
【0035】
【表2】

【0036】
表2に示す実施例4は、実施例2の貯留ホッパー下部のコーンを、水平方向に対して垂直に配置し、かつベルトコンベアの乗り継ぎ部からシュートを外した結果である。これにより、発塵量は50g/m/時間まで増加したが、泡の散布量が同じである比較例7よりも、発塵量を10g/m/時間、低減できた。
また、実施例5は、実施例4において、ベルトコンベアの乗り継ぎ部にシュートを設置した結果であるが、これにより、発塵量は15g/m/時間まで低減した。同様に、実施例6は、実施例4において、貯留ホッパー下部のコーンの傾斜角度を65度に設定した結果であるが、これにより、発塵量を15g/m/時間まで低減できた。
また、実施例7は、実施例5において、貯留ホッパー下部のコーンの傾斜角度を85度に設定した結果であるが、実施例5のコーンを垂直に配置した結果と比較して、発塵量を10g/m/時間まで低減できた。
以上のことから、粉粒体の搬送方向に隣り合う搬送装置の乗り継ぎ部にシュートを配置しなくても(例えば、発塵量の基準や乗り継ぎ高さ等に応じて設置しなくても)、多量の泡を用いることなく、効率的かつ経済的に粉粒体の発塵を抑えることが可能であることを確認できた。
【0037】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の粉粒体搬送時の発塵抑制方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、貯留ホッパーからベルトコンベアへ粉粒体を切り出す部分と、隣り合うベルトコンベアの乗り継ぎ部に、本発明を適用した場合について説明したが、そのいずれか一方のみに適用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
10:粉粒体の搬送設備、11:粉粒体、12、12a:貯留ホッパー、13、14:ベルトコンベア(搬送装置)、15:シュート、16:泡製造装置、17、18:ホース、19、20:ノズル、21、22:放出口、23、24:ベルト、25、26:積載面、27:斜面、28:垂直面、29:斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置を用いて粉粒体を搬送するに際し、該搬送装置に該粉粒体が積載される前に、該搬送装置の積載面上に泡を供給することを特徴とする粉粒体搬送時の発塵抑制方法。
【請求項2】
請求項1記載の粉粒体搬送時の発塵抑制方法において、前記搬送装置が複数設けられ、前記粉粒体の搬送方向に隣り合う該搬送装置の乗り継ぎ部に、水平方向に対して下方へ、該粉粒体の安息角を超え85度以下の範囲内に傾斜した斜面を備えるシュートを配置して、該粉粒体を該シュートの斜面に沿って滑落させることを特徴とする粉粒体搬送時の発塵抑制方法。
【請求項3】
請求項1記載の粉粒体搬送時の発塵抑制方法において、前記搬送装置の上流側に、前記粉粒体の搬送方向に向けて下方に傾斜する斜面を備え、しかも該斜面の傾斜角度を、水平方向に対して下方へ、該粉粒体の安息角を超え85度以下の範囲内に設定した貯留ホッパーを配置し、該粉粒体を該貯留ホッパーの斜面に沿って滑落させることを特徴とする粉粒体搬送時の発塵抑制方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−171764(P2012−171764A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37319(P2011−37319)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】