説明

粒子光学装置及び荷電粒子ビーム操作方法

【課題】高密度の荷電粒子小ビームを用い、高精度で荷電粒子小ビームを操作することのできる粒子光学システムを提供する。
【解決手段】粒子光学装置であって、荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源301と、複数の開孔を有し、その下流側で荷電粒子ビーム309から複数の荷電粒子小ビーム3が形成され、その集束領域に荷電粒子小ビームのそれぞれが焦点323を有する少なくとも1つの多孔プレート313と、荷電粒子小ビームの焦点が形成される多孔プレートの集束領域で視野レンズの効果を有する焦点レンズ装置307と、粒子光学装置の物体面内に位置決め可能な物体上に多孔プレートの集束領域をおおむね結像させるための対物レンズ102とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡装置及び電子リソグラフィ装置などの、荷電粒子の複数の小ビー
ム(beamlet)を用いる粒子光学システムに関する。
【0002】
本発明はさらに、荷電粒子の複数の小ビームを使用する粒子光学システムに使用される
粒子光学部品及び装置に関する。但し、前記粒子光学部品は、複数の小ビームを使用する
システムへの適用に限定されるものではない。かかる粒子光学部品は、荷電粒子の1つの
ビームのみを使用する粒子光学システムや、荷電粒子の複数のビーム又は小ビームを使用
する粒子光学システムに使用することもできる。
【0003】
本発明は、電子、陽電子、ミュー粒子(myon)、イオン等の、いかなるタイプの荷電粒
子にも適用することができる。
【背景技術】
【0004】
従来の粒子光学システムは、米国特許第6,252,412号明細書(特許文献1)に
より公知である。そこに開示されている電子顕微鏡装置は、半導体ウェハなどの物体を検
査するために使用される。複数の一次電子ビームが互いに平行に物体に集束され、複数の
一次電子ビームスポットがその物体上に形成される。一次電子によって生成され各一次電
子ビームスポットから発する二次電子が検出される。それぞれの一次電子ビームのために
、独立した電子ビームカラム(electron beam column)が設けられている。複数の独立し
た電子ビームカラムは、近接して束ねられている。物体上に形成される一次電子ビームス
ポットの密度は、電子顕微鏡装置を形成する電子ビームカラムの残りの脚部サイズ(rema
ining foot step)によって制限される。このように、物体上に同時に見出される一次電
子ビームスポットの数は、実際上は制限されており、そのため、高い解像度で広い表面領
域の半導体ウェハを検査する場合の前記装置による処理数には限界があった。
【0005】
米国特許第5,892,224号明細書(特許文献2)、米国特許出願公開第2002
/0148961号明細書(特許文献3)、米国特許出願公開第2002/014249
6号明細書(特許文献4)、米国特許出願公開第2002/0130262号明細書(特
許文献5)、米国特許出願公開第2002/0109090号明細書(特許文献6)、米
国特許出願公開第2002/0033449号明細書(特許文献7)、米国特許出願公開
第2002/0028399号明細書(特許文献8)により、検査対象である物体の表面
に集束された複数の一次電子小ビームを使用する電子顕微鏡装置が知られている。小ビー
ムは複数の開孔が形成された多孔プレートによって生成され、前記開孔を照射するために
、前記多孔プレートの上流側に、単一の電子ビームを生成する電子源が設けられている。
前記多孔プレートの下流側においては、前記開孔を通過した電子ビームの電子により、複
数の電子小ビームが生成される。複数の一次電子小ビームは、その一次電子小ビームのす
べてが通過するような口径を有する対物レンズによって物体上に集束される。このように
して、一次電子小ビームスポットのアレイが物体上に形成される。各一次電子小ビームス
ポットから発する二次電子は、各二次電子小ビームを形成するので、前記複数の一次電子
小ビームスポットに対応する複数の二次電子小ビームが生成される。前記複数の二次電子
小ビームは、前記対物レンズを通過し、前記装置は、各二次電子小ビームがCCD電子検
出器の複数の検出画素のそれぞれに供給されるような二次電子ビーム経路を与える。二次
電子ビーム経路を一次電子小ビームのビーム経路から分離するために、ウィーンフィルタ
が使用される。
【0006】
前記複数の一次電子小ビームを有する1つの共通の一次電子ビーム経路と、前記複数の
二次電子小ビームを有する1つの共通の二次電子ビーム経路とが使用されるため、電子光
学カラムを1つだけ用いればよく、また、物体上に形成される一次電子ビームスポットの
密度が、電子光学カラムの脚部サイズによって制限されることはない。
【特許文献1】米国特許第6,252,412号明細書
【特許文献2】米国特許第5,892,224号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0148961号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0142496号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0130262号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2002/0109090号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2002/0033449号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2002/0028399号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記文献の実施の形態に開示された一次電子ビームスポットの数は、数十個程度である
。物体上に一度に形成される一次電子ビームスポットの数は、処理数を制限するので、大
きい処理数を達成するために一次電子ビームスポットの数を増やすことは有利である。し
かし、電子顕微鏡装置の所望の結像解像度を維持しながら、上記文献に開示された技術を
使用して、一度に形成される一次電子ビームスポットの数を増やすことや、一次電子ビー
ムスポットの密度を高めることは、困難であると考えられていた。
【0008】
従って、本発明は、高密度の荷電粒子小ビームを用い、高精度で荷電粒子小ビームを操
作することのできる粒子光学システムを提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、高精度で荷電粒子のビーム及び小ビームを操作するための粒子光学
部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に詳細に述べるように、本発明の粒子光学部品、粒子光学装置及び粒子光学システ
ムは、複数の荷電粒子小ビームを用い、それを高精度で操作することができる。
【0011】
本発明の一実施の形態によれば、高い規則性を有するアレイパターン状に配置される複
数の荷電粒子小ビームを形成するための粒子光学装置が提供される。前記高い規則性を有
するアレイパターンは、前記荷電粒子小ビームのビーム経路に沿った所望の位置に前記荷
電粒子小ビームによって形成される。例えば、前記高い規則性を有するアレイパターンは
、各荷電粒子小ビームが焦点を形成する像平面又は中間像平面に形成されてもよい。
【0012】
前記粒子光学装置は、少なくとも1つの荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの
荷電粒子源を備える。前記荷電粒子小ビームは、前記多孔プレートに形成された開孔を通
過する前記荷電粒子ビームの粒子によって形成される。前記荷電粒子小ビームのビーム経
路中に1つ又は複数のさらに別の多孔プレートが配置され、前記1つ又は複数のさらに別
の多孔プレートに形成された開孔を前記荷電粒子小ビームが通過する。
【0013】
前記粒子光学装置はさらに、前記少なくとも1つの荷電粒子ビーム及び/又は前記複数
の荷電粒子小ビームを操作するための少なくとも1つの集束レンズ又はその他の粒子光学
素子を備える。かかる粒子光学素子は、通常、前記粒子光学装置の光学的なゆがみに寄与
する。かかるゆがみは、前記荷電粒子小ビームを操作する際に達成可能な精度を低下させ
、前記荷電粒子小ビームのビーム経路の所望の位置に前記荷電粒子小ビームの所望の高い
規則性を有するアレイパターンを形成することを妨げる。
【0014】
前記高い規則性を有するアレイパターンは、前記少なくとも1つの多孔プレートに形成
された開孔のアレイパターンと粒子光学的に対応している。前記多孔プレートの開孔の位
置は、おおむね前記荷電粒子小ビームの所望の高い規則性を有するアレイパターンが前記
少なくとも1つの多孔プレートの下流側に形成されるように決定される。前記多孔プレー
トの開孔のアレイパターンは、前記高い規則性を有するアレイパターンの規則性と比較し
て、低い規則性を有する。
【0015】
但し、前記開孔の位置を高い規則性を有するパターンの位置から変移させて、低い規則
性を有するパターンを形成することは、何らかの粒子光学素子によってもたらされるゆが
みを補償する目的のみに限られるものではなく、他の目的のために行われてもよい。
【0016】
規則性はパターンの全方向について高める必要はない。装置の対物レンズに対する物体
の動きに対して交差する方向など、1つの特定の方向のみについて規則性を高めれば十分
である。さらに、所定の方向のある一部の小ビームをある面に投射することにより、前記
所定の方向に電子光学的に対応する方向に投射された、対応する一部の開孔によって決定
される対応する規則性に比べて高い規則性を有するパターンを形成すれば十分である。
【0017】
高い規則性を有する前記荷電粒子小ビームのアレイパターンの規則性と、それよりも低
い規則性を有する前記開孔パターンの規則性とは、例えば、開孔間の空間的相関関係を決
定する方法や、前記各荷電粒子小ビーム及び各開孔の中心位置に適用される一次元又は二
次元のフーリエ解析などの適切な数学的手法によって決定することができる。
【0018】
前記少なくとも1つの粒子光学素子は、前記粒子光学装置の像平面に位置決め可能な物
体上に前記荷電粒子小ビームを集束させるための、対物レンズなどの集束レンズを備えて
いてもよい。
【0019】
集束レンズの一般的なゆがみを補償するためには、前記多孔プレートの開孔によって形
成されるアレイパターンの中心から各開孔への距離が長くなるにつれて、前記多孔プレー
トの隣接する開孔間の距離は連続的に減少しているのが好ましい。
【0020】
本発明の別の実施の形態によれば、前記の装置と同様に、少なくとも1つの荷電粒子源
と、少なくとも1つの多孔プレートとを有する粒子光学装置が提供される。前記装置は、
前記荷電粒子源によって生成される少なくとも1つ荷電粒子ビームを操作するための、又
は、複数の荷電粒子小ビームを操作するための、少なくとも1つの粒子光学素子をさらに
備えている。
【0021】
かかる粒子光学素子は、一般的に、前記粒子光学装置の光学的な非点収差に寄与する。
かかる非点収差を補償するために、前記少なくとも1つの多孔プレートに形成された開孔
は、完全な円形状よりもむしろ楕円形状を有している。
【0022】
但し、前記楕円形状の開孔を設けることは、何らかの粒子光学素子によってもたらされ
る非点収差を補償する目的のみに限られるものではなく、他の目的のために行われてもよ
い。
【0023】
一実施の形態によれば、通常集束レンズによって引き起こされる非点収差を補償するた
めには、開孔パターンの中心から離れるにつれて前記開孔の楕円形状の楕円率が大きくな
るのが好ましい。
【0024】
前記楕円形状の長軸は、前記開孔パターンの中心に対して放射状に方向づけされていて
もよく、又は、前記長軸は、半径方向に対してある角度で方向づけされていてもよい。前
記長軸が半径方向に対してある角度で方向づけされている場合、かかる角度は、前記開孔
パターンの中心から離れるにつれて大きくなってもよい。
【0025】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記の装置と同様に、少なくとも1つの荷電
粒子源と、少なくとも1つの多孔プレートとを備えた粒子光学装置が提供される。前記装
置は、前記荷電粒子源によって生成される少なくとも1つの荷電粒子ビームを操作するた
めの、又は、複数の荷電粒子小ビームを操作するための、少なくとも1つの粒子光学素子
をさらに備えていてもよい。
【0026】
前記粒子光学素子は、前記装置の光学的な像面湾曲に寄与する。
【0027】
かかる像面湾曲を補償するために、前記多孔プレートに形成される開孔の直径は、前記
開孔パターンの中心から離れるにつれて変化する。前記直径の変化は、前記開孔の直径が
前記開孔パターンの中心から離れるにつれて大きくなるようなものでも、又は、小さくな
るようなものでもよい。
【0028】
但し、前記開孔の直径を変えることは、何らかの粒子光学素子によってもたらされる像
面湾曲を補償する目的のみに限られるものではなく、他の目的のために行われてもよい。
【0029】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、複数の荷電粒子小ビームを使用する粒子光学
システムに有利に使用され得る粒子光学部品が提供される。前記粒子光学部品は、前記粒
子光学システムの何らかの粒子光学素子によってもたらされる像面湾曲を補償するために
、かかる粒子光学システムに使用されてもよく、又は、他の適当な目的のためにかかる粒
子光学システムに使用されてもよい。
【0030】
前記粒子光学部品は、通過する荷電粒子小ビームの粒子を操作するために、複数の開孔
を有する少なくとも1つの多孔プレートを備える。前記多孔プレートには、ほぼ単一の面
に配置された複数の層部分が形成され、前記複数の層部分のそれぞれに複数の開孔が形成
される。所望の用途に応じた十分な精度をもって、所定の電位で各開孔を規定する前記層
部分が維持されるように、前記層部分は、電気的に十分な導電性を有する材料で形成され
る。隣接する導電層部分は、互いに直接接続されていない。隣接する導電層部分を互いに
電気的に分離するためには、かかる隣接する導電層部分間に電気的に十分な抵抗性を有す
るギャップを形成するのが有利である。前記ギャップは、隣接する導電性層部分に異なる
電位が十分な精度をもって印加されることを可能とするように、十分な抵抗性を有する。
【0031】
前記隣接する導電層部分が互いに直接接続されなくても、前記導電層部分を所望の電位
に維持するために、隣接する導電層部分同士を、又は、隣接していない導電層部分同士を
接続する所定の抵抗器が設けられていてもよい。
【0032】
好適な実施の形態によれば、少なくとも2つのリング状部分が設けられてもよく、一方
のリング状部分は、他方のリング状部分の内側に配置される。
【0033】
前記リング状導電層部分の半径方向の幅は、前記多孔プレートに形成された開孔パター
ンの中心から離れるにつれて小さくなるのが好ましい。
【0034】
前述した前記多孔プレートは、そこに形成された開孔それぞれを通過する前記荷電粒子
小ビームの荷電粒子を操作するために設けられてもよい。かかる荷電粒子小ビームの操作
は、前記各開孔を規定する前記多孔プレートを適切な電位に維持することによって達成さ
れてもよい。前記荷電粒子小ビームの操作は、前記荷電粒子小ビームに対する集束、デフ
ォーカス、偏向効果、又はその他の効果、及びそれら効果の組み合わせを提供する工程を
含む。複数の開孔を規定する前記多孔プレートが前記電位に維持されることにより、その
電位が、前記多孔プレートから前記荷電粒子小ビームの上流側又は下流側の方向に延びる
電界を生成する。前記多孔プレートに複数の開孔が存在するため、かかる電界は、開孔が
形成されていないプレートによって生成される均一な電界から逸脱する。均一な電界から
の逸脱は、各開孔によって前記荷電粒子小ビームを操作する所望のタイプのものに対して
不利な効果をもたらす。 本発明のさらに別の実施の形態によれば、絶縁基板で形成され
貫通した複数の開孔を有する第1の多孔プレートを備えた粒子光学部品が提供される。前
記絶縁基板に形成された前記開孔の内部は導電層で覆われている。前記開孔の内部に設け
られたかかる導電層の利点は、前記層が隣接の、又は少し離れた開孔から発せられる漏電
界を遮蔽することに寄与することである。前記層の導電率は、十分な遮蔽機能が達成され
るように設計されていればよい。
【0035】
簡略化されたデザイン・ルールによれば、前記多孔プレートの両主平面間の総抵抗は、
約250Ω〜8MΩの範囲、約250Ω〜4MΩの範囲、約4MΩ〜8MΩの範囲、約2
50Ω〜800Ωの範囲、約800Ω〜1.5MΩの範囲、約1.5MΩ〜3MΩの範囲
、約3MΩ〜5MΩの範囲及び/又は約5MΩ〜8MΩの範囲内である。
【0036】
前記第1の多孔プレートの片側又は両側に密着してさらに別の多孔プレートが設けられ
てもよい。
【0037】
一実施の形態によれば、前記導電層はまた、前記第1の多孔プレートの片側主面又は両
側主面を被覆する。前記導電層は、前記第1の多孔プレートとの一体化部分を形成し、従
って、もし前記さらに別の多孔プレートが設けられるのであれば、それは前記導電層に接
して形成される。
【0038】
前記さらに別の多孔プレートは、前記第1の多孔プレートの前記開孔内に設けられる導
電層の導電率よりも高い導電率を有する導電材料で形成されるのが好ましい。
【0039】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、複数の開孔が形成された少なくとも1つの多
孔プレートを有する粒子光学部品が提供され、前記多孔プレートは、前記第1の多孔プレ
ートの両主平面間の電気抵抗が約250Ω〜8MΩの範囲、約250Ω〜4MΩの範囲、
約4MΩ〜8MΩの範囲、約250Ω〜800Ωの範囲、約800Ω〜1.5MΩの範囲
、約1.5MΩ〜3MΩの範囲、約3MΩ〜5MΩの範囲及び/又は約5MΩ〜8MΩの
範囲内となるような導電材料で形成される。前記基板材料の導電率は、前記開孔で生成さ
れる電界の遮蔽に寄与する。
【0040】
前記基板を製造するための適切な材料は、イメージ・アンプリファイア用のマルチチャ
ンネルプレートの製造に使用されるような、ガラス材料から選択されてもよい。
【0041】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、通過する荷電粒子小ビームを操作するための
複数のビーム操作開孔が形成された少なくとも1つの多孔プレートを備えた粒子光学部品
が提供され、前記複数のビーム操作開孔は所定のアレイパターン状に配置される。
【0042】
さらに、前記多孔プレートによって生成される電界のゆがみを補正するために、前記多
孔プレートに電界補正開孔が形成される。前記ビーム操作開孔のアレイパターン中の電界
補正開孔の位置、及び、前記電界補正開孔のサイズや形状は、前記多孔プレートによって
生成される電界が前記多孔プレートの上流側及び/又は下流側の所望の電界にほぼ対応す
るように選択されればよい。
【0043】
前記粒子光学部品が複数の荷電粒子小ビームを用いる粒子光学システムに使用される場
合、これらの荷電粒子小ビームは前記電界補正開孔ではなく前記ビーム操作開孔を通過す
る。但し、これは、中間小ビームが前記電界補正開孔を通過し、前記粒子光学システムが
使用しようとする荷電粒子小ビームの束から何らかの手段によって前記中間小ビームが除
去されるという構成を排除するものではない。前記電界補正開孔を通過する中間小ビーム
のかかる除去手段には、所望の荷電粒子小ビームの束を横切って適切な位置に配置される
ビーム絞りが含まれる。かかる絞りは、所望の小ビームを通過させる複数の開孔が形成さ
れ、中間小ビームのビーム経路に対応する位置に開孔が形成されていない別の多孔プレー
トによって形成されると有利である。
【0044】
さらに、前記粒子光学部品自体において前記中間小ビームを遮断することが可能である

【0045】
ここで、前記絞りは、前記多孔プレートの貫通孔ではない開孔の底部によって形成され
ると有利である。
【0046】
前記ビーム操作開孔が前記多孔プレートに高密度で形成される場合、前記電界補正開孔
は、隣接した位置の前記ビーム操作開孔よりもサイズが小さいのが好ましい。
【0047】
さらに、任意のビーム操作開孔の中心に関して周方向から見たときに、前記電界補正開
孔は、前記任意のビーム操作開孔とそれに隣接する他のビーム操作開孔との周方向の中間
位置に位置する。
【0048】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前述した粒子光学部品と同様に、複数のビー
ム操作開孔が形成された少なくとも1つの多孔プレートを備えた粒子光学部品が提供され
る。前記多孔プレートによって生成される電界の、所望の電界からのずれを補償するため
に、前記電界操作開孔の基本形状に対して付加的な形状特徴が付与されるように前記ビー
ム操作開孔の形状が設計されてもよい。前記基本形状は、前記開孔を通過する小ビームに
対して所望のビーム操作効果がもたらされるように、電子光学デザイン・ルールに基づい
て設計される。例えば、前記基本形状は、円形レンズの効果をもたらす円形であってもよ
く、又は、非点収差レンズの効果をもたらす楕円形であってもよい。
【0049】
前記形状特徴は、前記基本形状における半径方向の凹部又は凸部として設けられる。任
意の開孔の形状特徴は、前記基本形状の周囲に、前記任意のビーム操作開孔の周囲のビー
ム操作開孔の配置のた多重性又は対称性に対応する多重性又は対称性を有するように設け
られる。
【0050】
例えば、任意のビーム操作開孔に対してそれに最も近接したビーム操作開孔が4つある
場合には、前記任意のビーム操作開孔の形状特徴は、前記任意のビーム操作開孔の上流側
又は下流側で非回転対称の電界構成を補償するために、前記任意のビーム操作開孔の中心
に関して四重の対称性を有する。かかる非回転対称の電界構成は、前記任意のビーム操作
開孔の周囲に位置するビーム操作開孔の対称性によってもたらされる。
【0051】
任意の開孔に関して最も近接した開孔は、別の技術分野の技術として公知の方法によっ
て決定されてもよい。ある方法によれば、任意の開孔に最も近接した開孔は、まず前記任
意の開孔と異なるすべての開孔のうち、前記任意の開孔から最小距離の位置に配置されて
いる開孔を、最も近接した開孔として認定することによって決定される。その後、前記任
意の開孔と異なるすべての開孔のうち、前記任意の開孔からの距離が最短距離の約1.2
〜1.3倍よりも小さい距離の位置に配置されているものすべてを、近接した開孔として
認定する。
【0052】
前記形状特徴の対称性を決定するために、例えば前記任意の開孔の周囲の第1のアレイ
パターンについてフーリエ解析を行うことにより、任意の開孔に関してより広い範囲の周
囲の対称性を検証することも可能である。前記任意の開孔は、前記任意のビーム操作開孔
の周囲の前記第1のアレイパターンの対称性に対応する少なくとも1つの対称要素を持つ
形状を有する。この方法によれば、開孔パターンの周囲近辺の開孔の境界効果も考慮に入
れられ、例えば、前記任意の開孔の周囲の半分のスペースが他の開孔によって占拠されて
いなくてもよい。
【0053】
限定的なアレイパターンとして複数のビーム操作開孔が形成された多孔プレートにおい
て、前記多孔プレートは、前記ビーム操作開孔の前記アレイパターンを超えて広がってい
る。従って、前記多孔プレートの、開孔が形成されていない領域によって生成される電界
は、開孔パターンが形成されている領域から広がる電界とは異なり、均一な電界や、特に
パターンの周辺近傍の領域での所望の電界などから逸脱した電界になる。周辺では、通過
する各ビームに対し開孔によってもたらされる光学特性が、パターンの中央に位置する開
孔によってもたらされる光学特性と比較して劣っている。
【0054】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前述した装置と同様に、複数の荷電粒子小ビ
ームを操作するための複数のビーム操作開孔を有する多孔プレートを備えた粒子光学装置
が提供される。前記ビーム操作開孔は、第1のアレイパターン状に配置され、前記多孔プ
レートの前記第1のアレイパターンに隣接した領域には電界補正開孔が形成されている。
【0055】
前記電界補正開孔は、前記ビーム操作開孔の前記アレイパターンの拡張部を形成するア
レイ状に配置されてもよい。
【0056】
前記粒子光学装置が提供しようとしている小ビームは、前記電界補正開孔を通過しない
。但し、これは、上記のように、前記電界補正開孔の下流側や前記電界補正開孔内で何ら
かの他の手段によって前記電界補正開孔を通過する前記中間小ビームが遮断される構成を
排除するものではない。
【0057】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前述した粒子光学装置と同様に、少なくとも
1つの荷電粒子源と、複数の開孔が形成された少なくとも1つの多孔プレートと、前記複
数の開孔に所定の第1の電圧を供給する第1の電圧源と、前記多孔プレートの上流側又は
下流側に離間して配置された第1の単孔プレートと、前記第1の単孔プレートに所定の第
2の電圧を供給する第2の電圧源とを備えた粒子光学装置が提供される。
【0058】
前記多孔プレートの前記開孔は、通過する荷電粒子小ビームを操作するために設けられ
ている。前記開孔の操作効果は、とりわけ、前記多孔プレートによってその上流側及び/
又は下流側に生成される電界により決定される。前記単孔プレートは、前記多孔プレート
の上流側と下流側のそれぞれに設けられ、前記電界を、前記開孔の操作効果が所望の依存
性に応じて前記開孔パターン中で変化するような所望の形状にする。
【0059】
一実施の形態によれば、前記単孔プレートは、前記多孔プレートから75mmよりも小
さい距離、好適には25mmよりも小さい距離、さらに好適には10mm又は5mmより
も小さい距離の位置に配置される。
【0060】
さらに別の実施の形態によれば、前記単孔プレートは、前記多孔プレートの前記開孔の
レンズ機能が通過する前記小ビームに与える焦点距離の半分よりも小さい距離、特に4分
の1よりも小さい距離の位置に配置される。
【0061】
さらに別の実施の形態によれば、前記単孔プレートは、前記多孔プレート表面の電界が
100V/mmよりも高くなるような距離の位置、200V/mmよりも高くなるような
距離の位置、300V/mmよりも高くなるような距離の位置、500V/mmよりも高
くなるような距離の位置又は1kV/mmよりも高くなるような距離の位置に配置される

【0062】
さらに別の実施の形態によれば、前記多孔プレートと前記第1の単孔プレートとの間の
距離は、単孔の直径の5倍よりも小さい、単孔の直径の3倍よりも小さい、前記直径の2
倍よりも小さい、又は単孔の直径よりも小さい。
【0063】
前記開孔アレイ全体での前記複数の開孔のビーム操作効果に対する強い依存性を与える
ために、前記多孔プレートと前記第1の単孔プレートとの間に第2の単孔プレートを設け
るのが好ましい。前記第2の単孔プレートに所定の第3の電圧を供給するために第3の電
圧源が設けられる。前記第3の電圧は、ほぼ前記第1の電圧の平均値以下となるように選
択されるか、又は、前記第2の電圧と前記第1の電圧の平均値との間の値となるように選
択される。
【0064】
第1の単孔プレートは、前記多孔プレートの両面に設けられてもよい。
【0065】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前述した装置と同様に、荷電粒子ビームを発
生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、複数の開孔が形成された少なくとも1つの多孔
プレートとを備えた粒子光学装置が提供される。
【0066】
前記荷電粒子源と前記多孔プレートとの間の、前記荷電粒子のビームのビーム経路中に
、第1の集束レンズが配置される。前記第1の集束レンズは、荷電粒子を前記多孔プレー
トに形成された前記複数の開孔に照射するために、前記荷電粒子源によって生成される前
記荷電粒子ビームの発散を低減する効果を有する。前記第1の集束レンズの下流側の前記
荷電粒子ビームは、発散ビーム又は平行ビームである。但し、前記荷電粒子ビームの発散
性又は平行性は、所望の発散性又は平行性に高精度に対応していなければならない。
【0067】
実際には、開口誤差や色誤差などのレンズ誤差は、前記所望の発散性又は平行性からの
逸脱に寄与する。
【0068】
前記第1の集束レンズと前記多孔プレートとの間の領域に減速電界を設けるための減速
電極が、前記第1の集束レンズを通過した後の前記荷電粒子を前記多孔プレートを通過す
るための所望の運動エネルギーまで減速させるために設けられている。このように、集束
電界を通過する前記荷電粒子の運動エネルギーは、前記多孔プレートを通過する前記荷電
粒子の所望の運動エネルギーよりも高い。
【0069】
かかる装置の利点は、運動エネルギーが増大したときの前記第1の集束レンズの色誤差
への寄与が小さいことである。
【0070】
本発明者らは、複数の開孔が形成された多孔プレートの集束効果を良好に制御すること
が可能であり、前記多孔プレートを通り抜ける電子の運動エネルギーが高い場合でも比較
的正確に調整されることを見出した。これにより、各開孔を横切る荷電粒子小ビームの色
収差を低減することができる。
【0071】
このように、本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記多孔プレートに衝突し又は
前記多孔プレートを通過する電子の運動エネルギーは、5keVよりも高いてもよく、1
0keVよりも高くてもよく、20keVよりも高くてもよく、又は30keVよりも高
くてもよい。
【0072】
さらに別の実施の形態によれば、本発明は、前述の装置と同様に、少なくとも1つの荷
電粒子源と、少なくとも1つの多孔プレートと、前記多孔プレートの上流側及び/又は下
流側の領域に集束電界を与える第1の集束レンズとを備えた粒子光学装置を提供する。前
記粒子光学装置は、前記多孔プレートの上流側及び/又は下流側の第2の領域で前記荷電
粒子ビームの荷電粒子の運動エネルギーを変更するエネルギー変更電極をさらに備えてい
る。前記第1の集束レンズによって誘発される誤差を低減するために、前記集束電界が設
けられる前記第1の領域と、前記エネルギー変更電界が設けられる前記第2の領域とは重
なり合っている。
【0073】
一実施の形態によれば、前記エネルギー変更電界は、前記ビームの荷電粒子の運動エネ
ルギーを減少させる減速電界であり、前記重なり合った領域は、前記多孔プレートのほぼ
上流側に位置している。
【0074】
さらに別の実施の形態によれば、前記エネルギー変更電界は、前記ビームの荷電粒子の
運動エネルギーを増加させる加速電界であり、前記重なり合った領域は、前記多孔プレー
トのほぼ下流側に位置している。
【0075】
前記重なり合った領域における、前記エネルギー変更電界と前記集束電界との重なりは
、1%よりも大きくてもよく、5%よりも大きくてもよく、又は10%よりも大きくても
よい。
【0076】
前記エネルギー変更電界と前記集束電界との重なりは、前記集束電界の強さと前記エネ
ルギー変更電界の強さの両方を、それぞれ任意の単位の曲線とし両曲線のピーク値が同じ
レベルとなるように規格化してビーム軸に沿ってグラフ化することにより決定してもよい
。両曲線下の重なり合った領域を一方又は他方の曲線下の全面積で割ったものが、重なり
の測定値とされる。
【0077】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前述の装置と同様に、少なくとも1つの荷電
粒子源と、少なくとも1つの多孔プレートと、前記荷電粒子源と前記多孔プレートとの間
の領域に集束電界を与える第1の集束レンズとを備えた粒子光学装置が提供される。
【0078】
前記第1の集束レンズは、前記多孔プレートの上流側直近のビームが残留発散性を有す
るように、前記多孔プレートの上流側で前記荷電粒子源によって生成される前記荷電粒子
ビームの発散性を減少させるために設けられる。言い換えれば、前記多孔プレートに衝突
するときのビームの断面よりも、前記第1の集束レンズを通過するときのビームの断面の
方が小さい。
【0079】
かかる装置により、前記第1の集束レンズを通過するときのビームの断面よりも大きい
所定の断面を有するビームによって多孔プレートの開孔を照射することが可能となる。そ
して、これにより、前記第1の集束レンズの開口誤差が、前記所定の断面を照射するため
にビームを平行化し、ほぼ平行なビームを形成する集束レンズの場合に比べて低減される
という利点が得られる。いくつかの実施の形態によれば、前記多孔プレートの上流側直近
でのビームの発散性は、0.5mradよりも高くてもよく、1.0mradよりも高く
てもよく、又は、2mrad、5mrad、又は10mradよりも高くてもよい。
【0080】
但し、いくつかの実施の形態によれば、前記多孔プレートの集束照射が有利である。か
かる集束照射は、特に電子リソグラフィの分野で使用される。実際には、前記多孔プレー
トに形成された開孔の隣接する中心間の距離は、さらに小さくすることのできない限定さ
れた距離である。かかる多孔プレートが平行ビームによって照射される場合、前記多孔プ
レートの下流側の小ビームの隣接する焦点間の距離は、前記多孔プレートの隣接する開孔
間の距離に対応する。但し、前記多孔プレートを集束ビームによって照射することにより
、前記多孔プレートの隣接する開孔間の距離を維持したまま、前記小ビームの隣接する焦
点間の距離を減少させることができる。そして、これにより、ビームスポット間の距離が
小さい、ビームスポット同士が接している、又は互いに重なり合っているようなビームス
ポットパターンを装置の物体平面に形成することができる。
【0081】
照射ビームの集束性もまた、0.5mradよりも高い範囲、1mradよりも高い範
囲、又は、2mradよりも高い範囲にあればよい。
【0082】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前述の装置と同様に、荷電粒子ビームを発生
させる少なくとも1つの荷電粒子源と、複数の開孔が形成された少なくとも1つの多孔プ
レートと、前記荷電粒子源と前記多孔プレートとの間の領域に集束電界部分を与える第1
の集束レンズとを備えた粒子光学装置が提供される。前記第1の集束レンズは磁界を与え
、前記荷電粒子源は前記第1の集束レンズによって与えられる磁界の中に配置される。前
記荷電粒子源が磁界中に浸漬されている構成により、前記集束電界部分によってもたらさ
れるレンズ誤差が低減される。
【0083】
好適な実施の形態によれば、前記荷電粒子源が設けられた磁界部分は、ほぼ均一な磁界
を有する部分である。
【0084】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前述の装置と同様に、荷電粒子ビームを発生
させる少なくとも1つの荷電粒子源と、複数の開孔を有し、その下流側で複数の荷電粒子
小ビームが形成され、その下流側の集束領域に前記荷電粒子小ビームのそれぞれが焦点を
有する少なくとも1つの多孔プレートとを備える粒子光学装置が提供される。
【0085】
第2の集束レンズは、前記集束領域に集束電界を与え、前記集束電界は荷電粒子小ビー
ムの束に対して集束効果を有する。前記第2の集束電界の集束電界領域の位置を前記多孔
プレートの焦点領域と一致させることにより、前記集束領域の像が形成される前記第2の
集束レンズの下流領域で、例えば焦点における色誤差など、各小ビームの焦点における角
度誤差の小ビームへの影響が小さくなるという利点がある。
【0086】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前述の装置と同様に、少なくとも1つの荷電
粒子源と、その下流側の集束領域に荷電粒子小ビームのそれぞれが焦点を有する少なくと
も1つの多孔プレートとを備えた粒子光学装置が提供される。
【0087】
前記集束領域又はその中間像を装置の物体平面に位置決め可能な物体上に結像させるた
めに、対物レンズが設けられる。前記荷電粒子小ビームの焦点を前記物体上に結像させる
ことにより、比較的小さな直径のビームスポットを前記物体上に得ることができる。
【0088】
さらに、前記少なくとも1つの多孔プレートの前記開孔は、焦点領域の前記小ビームの
直径よりもかなり大きい直径を有していてもよい。このように、比較的大きな開孔直径に
より、前記小ビームの小さな焦点を形成することができる。従って、前記開孔パターンの
全面積に対する前記開孔の全面積の比もまた比較的高い。この比が、小ビーム生成の効率
、すなわち、前記多孔プレートを照射するビームの流れの総量に対する全ての小ビームの
流れの総量の比を決定する。前記多孔プレートに形成された前記開孔の直径が大きいため
、かかる効率は比較的高い。
【0089】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、ビーム経路スプリッタとビーム経路コンバイ
ナの機能をそれぞれ備えた電子光学装置が提供される。前記装置は、一次電子源から装置
の物体平面に位置決め可能な物体へ向けられた一次電子ビーム用の一次電子ビーム経路と
、前記物体から発する二次電子用の二次電子ビーム経路とを備えていてもよい。前記一次
及び二次電子ビーム経路は、単一又は複数の電子ビーム用のビーム経路であってもよい。
但し、前述のように使用するためには、前記一次及び二次電子ビーム経路は、複数の電子
小ビーム用のビーム経路であるのが好ましい。
【0090】
前記装置は、第1、第2及び第3の磁界領域を有するマグネット装置を備えている。前
記第1の磁界領域は、一次及び二次電子ビーム経路の両方が通過し、これらの電子ビーム
経路を互いに分離させる機能を果たす。前記第2の磁界領域は、前記第1の磁界領域の上
流側の、一次電子ビーム経路中に配置され、二次電子ビーム経路はこれを通過しない。前
記第3の磁界領域は、前記第1の磁界領域の下流側の、二次電子ビーム経路中に配置され
、一次電子ビーム経路はこれを通過しない。
【0091】
前記第1及び第2の磁界領域は、前記一次電子ビームをそれぞれ互いにほぼ反対の方向
に偏向し、前記第1及び第3の磁界領域は、前記二次電子ビーム経路をほぼ同じ方向に偏
向する。
【0092】
前記装置は、3つという少ない数の磁界領域のみを必要とするが、一次電子の所定の運
動エネルギーと二次電子の所定の運動エネルギーのために、前記装置は、一次の非点収差
がほとんど無く、及び/又は、一次の歪みがほとんど無いような電子光学特性を与える。
【0093】
好適な実施の形態によれば、一次電子ビーム経路用の第2の磁界領域の偏向角は、一次
電子ビーム経路用の第1の磁界領域の偏向角よりも大きい。ここでは、さらに、前記第1
の磁界領域と前記第2の磁界領域との間の前記一次電子ビーム経路中に中間像が形成され
ないのが好ましい。
【0094】
さらに好適な実施の形態によれば、磁界の影響をおおむね受けない第1のドリフト領域
が、前記第2の磁界領域と前記第1の磁界領域との間の前記一次電子ビーム経路中に設け
られる。
【0095】
さらに好適な実施の形態によれば、磁界の影響をおおむね受けない第2のドリフト領域
が、前記第1磁界領域と前記第3の磁界領域との間の前記二次電子ビーム経路中に設けら
れる。但し、前記第1の磁界領域と前記第3の磁界領域との間の前記二次電子ビーム経路
中に第2のドリフト領域がほとんど設けられない構成も可能である。前記第1及び第2の
ドリフト領域の両方が設けられる場合には、前記第2のドリフト領域は前記第1のドリフ
ト領域よりもかなり短いのが好ましい。
【0096】
さらに好適な実施の形態によれば、前記第1の磁界領域と前記物体平面との間に集束レ
ンズが設けられ、前記一次及び二次電子ビーム経路が前記集束レンズを通過する。電子顕
微鏡の用途においては、前記集束レンズとして対物レンズが用いられる。
【0097】
ここでは、少なくとも1つの電極が前記一次及び二次電子ビーム経路中に設けられ、前
記一次電子が前記物体に衝突する前に減速し、前記二次電子が物体から発した後に加速す
るのがさらに好ましい。かかる電極により、前記マグネット装置を通過する前記一次電子
の運動エネルギーが同じ値に維持される一方で、前記物体に衝突するときの前記一次電子
の運動エネルギーを変化させることが可能である。従って、前記ビーム経路スプリッタ/
コンバイナの電子光学特性をほぼ同じ電子光学特性に維持することが可能であり、また、
前記物体に衝突する前記一次電子の運動エネルギーを変化させることも可能である。よっ
て、前記物体に前記一次電子が衝突するときの当該一次電子の運動エネルギーの比較的広
い範囲にわたって、前記一次電子を前記物体に集束させる際の精度を高くすることができ
る。
【0098】
ここでは、さらに、前記マグネット装置が、前記第3の磁界領域の下流側の、前記二次
電子ビーム経路中に第4の磁界領域を備え、前記第3の磁界領域の磁界の強さが、前記第
1の磁界領域の磁界の強さに対して調整可能であるのが好ましい。前記第4の磁界領域の
磁界の強さは、前記一対の電極に供給される電圧に応じて調整することができる。前記一
対の電極に供給される電圧の変化は前記マグネット装置に入る前記二次電子の運動エネル
ギーを変化させるので、前記二次電子ビーム経路用の前記第1の磁界領域の偏向角も変化
する。前記第3及び第4の磁界領域の磁界の強さを調整することが可能であれば、前記一
対の電極に供給される電圧の変化によって引き起こされる前記二次電子ビーム経路につい
てのかかる変化を補償することが可能である。実際、前記第4の磁界領域は、補償偏向器
の機能を果たす。
【0099】
さらに、前記マグネット装置に入る前記二次電子の運動エネルギーが変化すれば、前記
第1及び第3の磁界領域によって引き起こされる、前記二次電子ビーム経路に対する四重
極効果の変化が起こる。四重極効果のかかる変化を補償するための少なくとも1つの電子
光学部品も、前記二次電子ビーム経路中に設けられるのが好ましい。かかる補償部品は、
前記二次電子ビーム経路中に設けられた1つ又は2つの付加的な磁界領域、あるいは前記
二次電子ビーム経路中に設けられた1つ又は2つの四重極レンズ、あるいは前記二次電子
ビーム経路中に設けられた付加的な磁界領域と四重極レンズとの組み合わせによって提供
される。
【0100】
好適な実施の形態によれば、前記第4の磁界領域の下流側の、前記二次電子ビーム経路
中に第5の磁界領域が設けられ、前記第5の磁界領域の下流側に四重極レンズが設けられ
る。前記四重極レンズ及び/又は前記第5の磁界領域によって与えられる磁界の強さは、
前記少なくとも1つの電極に供給される電圧に応じて調整可能であるのが好ましい。
【0101】
さらに好適な実施の形態によれば、前記物体平面の中間像が、前記第1、第3、第4及
び第5の磁界領域を備えた領域に前記二次電子によって形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0102】
本発明の上記の、また他の有利な特徴は、添付の図面を参照した下記の本発明の好適な
実施の形態の詳細な説明からより明らかになる。
【0103】
図1は、本発明の一実施の形態に係る電子顕微鏡システムの基本的な特徴と機能を概略
的に示している。
【0104】
図2a〜2dは、図1の電子顕微鏡システムに使用される多孔装置の変形例の断面を概
略的に示している。
【0105】
図3は、多孔装置を照射し、多孔装置によって生成された電子の小ビームを操作するた
めの電子光学部品を示す概略図である。
【0106】
図4は、図1の電子顕微鏡システムに使用される一次電子小ビーム発生装置の一例を示
している。
【0107】
図5は、図4に示されるような装置によって与えられるビーム経路の複数の物理的特性
を示している。
【0108】
図6は、図1の電子顕微鏡システムに使用される一次電子小ビーム発生装置の一例を示
している。
【0109】
図7は、多孔プレートに形成される開孔のアレイパターンを示している。
【0110】
図8は、図7に示されるような開孔のパターン配列によって引き起こされる多重極効果
を補償するための付加的な形状的特徴を有する開孔の形状の詳細図である。
【0111】
図9は、多孔プレートに設けられた、開孔及び電界補正開孔の配列(aperture arrange
ment)を示している。
【0112】
図10は、図9に示されるようなプレートの、図9に示される線X−Xに沿った断面図
である。
【0113】
図11は、開孔の六角形のアレイパターンを示している。
【0114】
図12は、一次電子ビームスポットのゆがんだパターンを示している。
【0115】
図13は、図12に示されるようなゆがみを補償するための開孔配列を示している。
【0116】
図14は、非点収差によってゆがめられた一次電子ビームスポットパターンを示してい
る。
【0117】
図15は、図14に示されるような非点収差によるゆがみを補償するための開孔パター
ンの平面図である。
【0118】
図16は、物体に焦点面を結像する際に使用される電子光学部品によって引き起こされ
る像面湾曲の影響を示している。
【0119】
図17は、図16に示されるような像面湾曲を補償するために適した多孔装置を示して
いる。
【0120】
図18は、像面湾曲を補償するための多孔パターンの立面図である。
【0121】
図19は、像面湾曲を補償するための、さらに別の多孔装置を示している。
【0122】
図20a〜20eは、像面湾曲を補償するための、さらに別の多孔装置を示している。
【0123】
図21は、一次電子ビーム経路の概略図である。
【0124】
図22は、図1に示されるような電子顕微鏡システムに対物装置と共に使用されるビー
ムスプリッタ/コンバイナ装置を概略的に示している。
【0125】
図23は、本発明の一実施の形態に係る電子リソグラフィシステムを示している。
【0126】
以下の典型的な実施の形態においては、同様の機能及び構造を有する部品には可能な限
り同様の参照符号が付される。従って、特定の実施の形態の個々の部品の特徴を理解する
ためには、別の実施の形態の説明及び「課題を解決するための手段」に記載された説明を
参照されたい。
【0127】
図1は、電子顕微鏡システム1の基本的な機能及び特徴を象徴的に示す概略図である。
電子顕微鏡システム1は、一次電子ビームスポット5を検査対象である物体7の表面に生
成するために複数の一次電子小ビーム3を用いる走査型電子顕微鏡(SEM)タイプのも
のである。物体7の表面は、対物装置100の対物レンズ102の物体平面101に配置
されている。
【0128】
図1の挿入図I1は、一次電子ビームスポット5の正方形アレイ103が形成された物
体平面101の立面図を示している。図1においては、5×5アレイ103状に配置され
た25個の一次電子ビームスポット5が示されている。この25という一次電子ビームス
ポットの数は、電子顕微鏡システム1の原理を説明し易くするために、小さく設定した数
である。実際には、一次電子ビームスポットの数は、30×30、100×100など、
かなり大きな数値に設定される。
【0129】
図示された実施の形態において、一次電子ビームスポット5のアレイ103は、1μm
〜10μmのほぼ一定のピッチP1を有するほぼ正方形のアレイである。但し、アレイ1
03は、ゆがめられた規則的配列構造(regular array)でも、不規則的配列構造(irreg
ular array)でもよく、また、六角形配列構造などの別の対称形の配列構造とすることも
できる。
【0130】
物体平面101に形成された一次電子ビームスポットの直径は、5nm〜200nmの
範囲にあればよい。一次電子ビームスポット5を形成するための一次電子小ビーム3の集
束は、対物装置100によってなされる。
【0131】
物体7に入射する一次電子のビームスポット5は、物体7の表面から発する二次電子を
生成する。二次電子は、対物レンズ102に入射する二次電子小ビーム9を形成する。
【0132】
電子顕微鏡システム1は、複数の二次電子小ビーム9を検出装置200に供給するため
の二次電子ビーム経路11を与える。検出装置200は、検出器装置209の電子感度(
electron sensitive)検出器207の表面平面211に二次電子小ビーム9を投射するた
めの投射レンズ装置205を備えている。検出器207としては、固体CCD又はCMO
S、シンチレータ装置、マイクロチャネルプレート、PINダイオードアレイ等から選択
された1つ又は複数とすることができる。
【0133】
図1の挿入図I2は、像平面211と二次電子ビームスポット213がアレイ217と
して形成される検出器207の表面の立面図を示している。アレイのピッチP2は10μ
m〜200μmの範囲にあればよい。検出器207は、複数の検出画素215を備えた位
置感度(position sensitive)検出器である。画素215は、各画素215がそれに対応
する二次電子小ビーム9の強度を検出できるように、二次電子ビームスポット213によ
って形成されるアレイ217に対応するアレイ状に配置されている。
【0134】
一次電子小ビーム3は、電子源装置301、コリメータレンズ303、多孔装置305
及び視野レンズ307を備えた小ビーム発生装置300によって生成される。
【0135】
電子源装置301は、発散電子ビーム309を発生させ、発散電子ビーム309は、コ
リメータレンズ303によって平行にされ、多孔装置305を照射するためのビーム31
1となる。
【0136】
図1の挿入図I3は、多孔装置305の立面図を示している。多孔装置305は、複数
の開孔315が形成された多孔プレート313を備えている。開孔315の中心317は
、物体平面101に形成される一次電子ビームスポット5のパターン103に電子光学的
に対応するパターン319状に配置されている。
【0137】
アレイ319のピッチP3は5μm〜200μmの範囲にあればよい。開孔315の直
径Dは、0.2×P3〜0.5×P3の範囲、0.3×P3〜0.6×P3の範囲、0.4×
3〜0.7×P3の範囲、0.5×P3〜0.7×P3の範囲、0.5×P3〜0.6×P3
の範囲、0.6×P3〜0.7×P3の範囲、0.7×P3〜0.8×P3の範囲及び/又は
0.8×P3〜0.9×P3の範囲にあればよい。
【0138】
開孔315を通過した照射ビーム311の電子は、一次電子小ビーム3を形成する。多
孔プレート313に衝突した照射ビーム311の電子は、そこで遮断されて一次電子ビー
ム経路13に到達せず、一次電子小ビーム3の形成に寄与しない。
【0139】
前記のように、照射ビーム311から複数の一次電子小ビーム3を形成することは、多
孔装置305の機能の1つである。多孔装置305の別の機能は、焦点323が焦点領域
すなわち焦点面325に生成されるように各一次電子小ビーム3を集束することである。
【0140】
図1の挿入図I4は、パターン327状に配置された焦点323を有する焦点面325
の立面図を示している。当該パターン327のピッチP4は、下記の記載からも理解でき
るように、多孔プレート313のパターン319のピッチP3と同じでもよいし、異なっ
ていてもよい。焦点323の直径は、10nm〜1μmの範囲にあればよい。
【0141】
視野レンズ307及び対物レンズ102は共に、焦点面325を物体平面101に結像
させる機能を果たし、物体7上に径の小さい一次電子ビームスポット5のアレイ103を
形成する。そして、検出器装置209によって二次電子小ビーム9の強度を検出すること
により、高解像度の二次電子像を生成することができる。
【0142】
ビームスプリッタ/コンバイナ装置400は、小ビーム発生装置300と対物装置10
0との間の一次電子ビーム経路13中、並びに、対物装置100と検出装置200との間
の二次電子ビーム経路11中に設けられている。
【0143】
図2は、多孔装置305の複数の実施の形態のうちのいくつかの断面を示している。
【0144】
図2aは、複数の開孔315が形成された単一の多孔プレート313を備えた多孔装置
305を示している。かかる単一の多孔プレート313は、照射ビーム311から一次電
子小ビーム3を生成する機能と、多孔プレート313の下流側で一次電子小ビーム3を集
束する機能との、両方の機能を果たしてもよい。各開孔315による焦点距離fは、Uを
多孔プレート313を通過する電子の運動エネルギー、ΔEを多孔プレート313の上流
側と下流側での電界強度の差として、下記の式により推定できる。

f=−4U/ΔE

図2bは、一次電子ビーム経路13の方向にそれぞれ離間して配置された4つの多孔プ
レート3131、3132、3133、3134を備えた多孔装置305を示している。各多
孔プレート3131、・・・、3134には複数の開孔315が形成されている。開孔31
5は、一次電子ビーム経路13の方向に延びた共通の中心軸317を中心とするように配
置されている。
【0145】
多孔プレート3131は、照射ビーム311によって照射され、そこに形成された開孔
315は、照射ビーム311から一次電子小ビームを選択し生成するための直径を有して
いる。多孔プレート3131には、照射ビーム311の電子の位置エネルギー又は運動エ
ネルギーにほぼ等しい電圧が供給されてもよい。
【0146】
多孔プレート3132、3133、3134の各々に形成された開孔315の直径は、互
いに等しく、かつ、照射される多孔プレート3131に形成された開孔315の直径より
も大きい。多孔プレート3132、3134は薄いプレートであり、多孔プレート3133
は多孔プレート3132、3134よりも厚みが大きい。多孔プレート3132、3134
は等しい電圧が供給され、多孔プレート3133にはそれと異なる電圧が供給されてもよ
く、これにより、照射された多孔プレート3131によって選択される各一次電子小ビー
ムに対してアインツェルレンズとしての機能が働く。
【0147】
図2cは、形成される一次電子小ビームを選択するための、径の小さい開孔315を有
する、照射される多孔プレート3131を備えた多孔装置305を示している。照射され
る多孔プレート3131よりも厚みの大きい2つの多孔プレート3132、3133は、各
一次電子小ビームに対して油浸レンズとして機能するように、照射される多孔プレート3
131の下流側に設けられている。操作中に、多孔装置305に集束機能を発揮させるた
めに、異なる電圧が多孔プレート3132、3133に供給される。
【0148】
図2dは、図2cに示された油浸レンズ型の多孔装置の変形例を示している。図2cに
示された装置は、多孔プレート3132、3133に異なる電圧が印加されるために所定の
軸317に沿って生成される電界が、近接した又は離間した軸317に沿って生成される
電界に対応する漏電界によって影響されるという欠点を有する。これら漏電界は、通常、
油浸レンズ装置によって与えられる円形のレンズの機能に悪影響を及ぼすような、所定の
軸317に対する回転対称性を有さない。
【0149】
図2dの多孔装置305は、多孔プレート3132と多孔プレート3133との間に挟ま
れた絶縁スペーサ331を有し、導電層333が絶縁スペーサ331中の開孔315の内
部を覆っている。
【0150】
導電層315は、漏電界を生成し、かつ、隣接した開孔によって生成される他の漏電界
を遮蔽するための遮蔽機能を果たすのに十分な導電性を有している。
【0151】
一実施の形態によれば、図2dの多孔装置305は、以下のように製造されてもよい。
すなわち、プレート状のシリコン基板が絶縁スペーサ331として設けられる;酸化シリ
コン層が前記プレート状のシリコン基板の上面及び下面にそれぞれ形成される;上部金属
層3132及び下部金属層3133が上部及び下部の酸化シリコン層上にそれぞれ形成され
る;開孔315を規定するレジストパターンが上部金属層3132上に設けられる;従来
のエッチング剤を使用した金属エッチングによって開孔315が上部金属層3132に形
成される;従来のエッチング剤を使用した酸化シリコンエッチングによって対応する開孔
が上部の酸化シリコン層に形成される;従来のエッチング剤を使用したシリコンエッチン
グによって開孔315がシリコン基板に形成される;酸化シリコンエッチングによって対
応する開孔が下部の酸化シリコン層に形成される;金属エッチングによって開孔315が
下部金属層3133に形成され、その結果、シリコン基板とその上に形成された酸化シリ
コン及び金属層の構造体を貫通する貫通孔が形成される。その後、酸化処理がなされ、上
部金属層3132及び下部金属層3133の表面に酸化被膜が形成され、かつ、前記貫通孔
の内面壁に酸化被膜が形成される。最後に、前記貫通孔の内面壁に形成された酸化被膜上
に抵抗層が形成される。前記抵抗層の形成には、スパッタリング法が使用されてもよい。
前記抵抗層は、上部金属層3132と下部金属層3133との間の抵抗が250Ω〜8MΩ
の範囲となるように形成される。酸化被膜の形成には急熱酸化反応(RTO)法又は電気
化学酸化法を使用してもよい。
【0152】
図3は、小ビーム発生装置300の一実施の形態の別の概略図である。
【0153】
図3に示すように、電子源装置301は、仮想線源(virtual source)329から発せ
られる発散性の大きい発散電子ビーム309を発生させる。図示された実施の形態におい
て、電子源は、1〜3mA/srの角強度(angular intensity)と100mradの発
散半角を有する熱電界放出(TFE)型である。
【0154】
コリメータレンズ303は、発散電子ビーム309のビーム経路に配置され、発散性の
大きい発散電子ビーム309を発散性の小さい照射ビーム311に変換するような集束力
を有している。発散照射ビーム311は、その後、多孔装置305の多孔プレート313
の照射領域F1を照射する。多孔プレート313を発散照射ビーム311で照射すること
は、照射領域F1を平行ビームで照射することに比べて、次のような利点がある。
【0155】
コリメータレンズ303においてビーム309、311によって横断される断面F2
、照射領域F1よりもかなり小さい。平行ビームによる照射の場合に比べて小さい径を有
するコリメータレンズが使用されてもよく、それにより、コリメータレンズ303によっ
て生じる開口誤差(opening errors)を低減することができる。さらに、コリメータレン
ズ303の集束力は、同じくコリメータレンズ303によって生じる誤差を低減すること
に寄与する、発散電子ビーム309を平行ビームに変換するための集束レンズに比べて、
小さくてもよい。
【0156】
さらに、図3に交差斜線によって示されている減速電界(decelerating electrical fi
eld)領域321は、多孔プレート313の上流側に設けられている。照射ビーム311
の電子は、減速電界領域321で、一次電子小ビーム3の焦点が多孔装置305の下流側
の焦点面325で形成されるように設定された所望の運動エネルギーに減速される。その
結果、一次電子はコリメータレンズ303を通るときに大きな運動エネルギーを有し、コ
リメータレンズ303の色誤差(chromatic error)(ΔE/E)も低減される。
【0157】
視野レンズ307は、その集束効果の位置が、焦点面325、すなわち、一次電子小ビ
ーム3の焦点323が多孔装置305によって形成される焦点領域に一致するように配置
される。これには、視野レンズ307の色誤差等のレンズ誤差の、物体平面101に配置
された物体7に形成される一次電子ビームスポット5に対する影響を減少させる、という
利点がある。かかる視野レンズ307の色誤差は、焦点323を出発点とする電子ビーム
の角度誤差(angular error)となる。但し、焦点323は物体7上に結像されるため、
かかる角度誤差は影響せず、また、角度誤差を伴って焦点323から発する電子ビームは
、おおむね各焦点323の位置に対応する正しい像の位置で物体平面101に衝突する。
視野レンズ307によって生じる角度誤差は、物体7上に形成される一次電子ビームスポ
ット5での一次電子小ビーム3の入射角(landing angle)にのみ影響を及ぼす。ビーム
スポットの位置は、かかる誤差の影響を受けない。
【0158】
図4は、一次電子小ビーム発生装置300のさらに別の構造を概略的に示している。仮
想線源319は、下流端フランジ電極340を備えたビームライナーチューブ339内の
Z軸上に配置される。カップ状の電極341の中央には、多孔プレート313が搭載され
る。電子は、30kVの電圧で仮想線源319から抽出され、多孔プレート313の上流
側の、下流端フランジ電極340と電極341との間に約350V/mmの減速電界(re
tarding field)が生成される。
【0159】
図5は、z軸に沿って作図された図4の一次電子小ビーム発生装置300の任意単位の
物理的性質を示している。曲線342は、電極340と電極341との間に生じた減速電
界を示している。図5においては、z=0mmの位置に仮想線源319が置かれ、z=2
70mmの位置に多孔プレートが置かれている。
【0160】
仮想線源319は、コリメータレンズ303の磁界中に浸漬されている。図5中の曲線
343は、コリメータレンズ303によってz軸方向に生成される磁界の強さを、z軸に
沿った位置について示している。図5から分かるように、仮想線源319は、コリメータ
レンズ303によって生成される磁界の、Bzがほぼ一定となる位置に置かれている。か
かる一定の磁界は、仮想線源319から発せられる電子に対する集束効果が小さく、前記
電子を逸脱させる効果(aberration)も非常に小さい。主な集束効果は、磁界Bzがかな
りの勾配を有する部分で得られる。図5から、コリメータレンズ303の集束機能は約2
00mm〜300mmのz位置で得られるように思われる。コリメータレンズ303の集
束力は、電極340、341によって生成される減速電界342と一致する。集束磁界と
減速電界がこのように一致することにより、一次電子ビームに対する集束機能を与えつつ
、そこに生ずる光学誤差を低く維持することが可能となる。このことは、光学装置の色誤
差Csのz軸に沿った発生(development)を表わす、図5に示された線344から明ら
かである。Csはz=0でゼロとなり、zの値が大きくなるにつれて増加する。z=約2
30mmの位置345では、磁界領域と電界領域との重なりにより、Csをゼロに近い値
まで減少させることができる。位置345の下流側では、Csは再び連続的に増加する。
【0161】
図6は、コリメータレンズ303の磁界の値が一定の部分であって、下流端フランジ電
極340を有するビームライナーチューブ339中に浸漬された電子源319を有する一
次電子小ビーム発生装置300のさらに別の例を示している。電極340は、さらに別の
ビームライナーチューブ348の上流側フランジとして設けられた電極341と対向して
いる。多孔装置305は、その下流側に近接したビームライナーチューブ348内に設け
られている。電極340と電極341との間には減速電界が生じており、これは、コリメ
ータレンズ303によって生成された集束勾配磁界と重なっている。
【0162】
多孔装置の表面では、残留している電界は比較的小さい。
【0163】
多孔装置305は、それぞれ焦点面325に焦点を有する複数の一次電子小ビーム(図
6には詳細を図示せず)を生成する。
【0164】
図7は、図1の挿入図I3と同様に、多孔プレート313に形成された開孔315のパ
ターン319を示している。周辺に位置していない開孔“a”のそれぞれには、4つの開
孔“b”、“c”、“d”及び“e”が直接隣接し、また、4つの開孔“f”、“g”、
“h”及び“i”がその次に近接している。図7は、最も近く隣接している開孔のピッチ
で開孔315が配列された基本アレイベクトル[10]を示し、図7はまた、その次に近
く隣接している開孔のピッチで開孔315が配列された基本アレイベクトル[11]を示
している。図7から、所定の開孔“a”に隣接した開孔“b”〜“i”によって生成され
る漏電界は、前記所定の開孔の中心317について四重の対称性を有することが分かる。
これらの漏電界には、所定の開孔“a”を通る小ビームに対する集束をゆがませる効果が
ある。
【0165】
図8は、所定の開孔“a”に隣接した開孔によって生成されるこのような多重極漏電界
を補正するための実施の形態を示している。開孔“a”はほぼ円形であり、所定の開孔“
a”の中心317について四重の対称性を有する付加的な特徴が、開孔“a”の周辺に設
けられている。前記付加的な特徴は、開孔の突出部351として多孔プレート313に形
成されている。付加的な特徴351は、それが設けられた開孔によって生成される漏電界
に影響を及ぼす。付加的な特徴は、それが開孔“a”〜“i”のそれぞれに設けられた場
合に所定の開孔“a”に対して生成される漏電界の多重極成分が低減されるように設計さ
れる。
【0166】
所定の開孔に最も近接した開孔と同じ対称性を有する付加的な特徴は、どのような基本
形状の開孔にも設けられる。例えば、前記基本形状は円形でも、楕円形でも、それ以外の
形状でもよい。
【0167】
図9は、多重極特性を有する漏電界の効果を低減するさらに別の実施の形態を示してい
る。ここでも、開孔315は正方形アレイパターン319状に配置されている。開孔31
5(図9の例では5×5個の開孔)が設けられ、そこを通過する電子小ビームが制御され
る。開孔315の間の位置には、より小さい電界補正開孔353が形成されている。電界
補正開孔353もまた、格子319と同じピッチの正方形格子を形成する。電界補正開孔
353の格子は、ピッチの半分だけ、前記開孔の格子319からずれている。
【0168】
電界補正開孔353の直径は、電界補正開孔353が設けられていない図7に示される
場合と比べて、開孔315と電界補正開孔353の双方によって生成される漏電界の多重
極特性が低減されるように決定される。
【0169】
図10は、図9に示す多孔装置305の断面を示している。多孔装置305は、2つの
多孔プレート3131、3132間に挟まれた絶縁スペーサ331を備えている。開孔31
5は、多孔プレート3131、3132及び絶縁スペーサ331のすべてを貫通する貫通孔
として形成されているが、電界補正開孔353は、照射電子ビーム311に照射される上
部の多孔プレート3131及び絶縁スペーサ331にのみ形成される。多孔プレート31
2の、上部の多孔プレート3131及び絶縁スペーサ331に形成される開孔353の位
置に対応する位置には開孔は形成されていない。
【0170】
一実施の形態によれば、図10に示された多孔装置305は、リソグラフィ法などの方
法によって作製することができる。前記方法においては、単結晶シリコン基板など、基板
の(110)格子面に配向した面を有する基板によって絶縁スペーサ331が構成され、
その両面に、多孔プレート3131、3132となる金属層がそれぞれ設けられる。開孔3
15を規定するレジストパターンが金属層3131上に設けられ、金属をエッチングする
従来の第1のエッチング剤を使用して第1のエッチング工程が行われる。また、シリコン
をエッチングする従来の第2のエッチング剤を使用して第2のエッチング工程が行われ、
第1のエッチング剤を使用して第3のエッチング工程が行われ、全ての層3131、33
1及び3132を貫通する開孔の貫通孔が形成される。その後、電界補正開孔353のパ
ターンに対応したレジストパターンが多孔プレート3131上に設けられ、上部の層31
1を通して第1のエッチング剤を使用してエッチングが行われる。その後、シリコンの
みをエッチングし金属はエッチングしない第2のエッチング剤を使用してエッチングが継
続される。このように、開孔353はシリコン基板331を貫通して形成され、エッチン
グはシリコン基板331の開孔353の底部で終了する。すなわち、下部金属層3132
は、エッチング停止の機能を有している。
【0171】
図2a、2b、2c、2dの1つ、及び図10に示されるような多孔部材は、例えば、
ドイツの企業、Team Nanotec GmbH(住所:78052 Villin
gen−Schwenningen、Germany)製のものであってもよい。
【0172】
再度図7を参照する。
【0173】
開孔アレイ319の中央の開孔は、上下左右に隣接する開孔の2つの列に囲まれている
。それに対し、中段端部の開孔“g”には、右側に隣接する開孔が無く、また、上段端部
の開孔“f”には、上側と右側に隣接する開孔が無い。周囲の電界は、中央の開孔“h”
と、中段端部の開孔“g”と、上段端部の開孔“f”とでは異なったものになる。このよ
うに、開孔“h”、“g”、及び“f”は、そこを通過する小ビームのそれぞれに対し、
異なったビーム操作効果を有している。ビーム制御開孔のパターン319の周辺に近い開
孔ほど、このような相異がある。
【0174】
図9は、周辺ビーム操作開孔に対するかかる影響を低減する本発明の実施の形態を示し
ている。アレイパターン319(図示された例では5×5個の開孔を有する)は、付加開
孔354によって囲まれている。図9においては、付加開孔354が一列、アレイパター
ン319の周辺に形成されている。但し、付加開孔354はアレイパターン319の周囲
に二列以上設けることもできる。付加開孔354は、アレイパターン319の周辺開孔“
i”、“b”、“f”、“c”、“g”が上下左右すべてに隣接する開孔を備えるように
し、これにより、上記した周辺の効果を低減する、という効果を有する。
【0175】
付加開孔354は、アレイパターン319に対して連続的に配置されていてもよく、す
なわち、アレイパターン319と同じピッチで設けられていてもよく、アレイパターン3
19の周辺に位置する開孔“i”、“b”、“f”、“c”、“g”、・・・と同じ直径
を有していてもよい。但し、開孔315のアレイパターン319の周囲に、他のパターン
や直径で付加開孔354を設けることも可能である。
【0176】
付加開孔354は、電界補正開孔353と同じ方法で形成することができる。すなわち
、図10に示されているような多孔装置305を貫通する貫通孔として形成されなくても
よい。従って、一次電子小ビームが付加開孔354から発せられることはない。但し、付
加開孔354を開孔装置305を貫通する貫通孔として形成し、付加開孔354がその下
流側に一次電子小ビームを生成するものとすることも可能である。付加開孔354によっ
て生成される小ビームは、多孔装置305の下流側に設けられる適切な停止部材などの他
の手段によって遮断されてもよい。また、開孔315のアレイパターン319のみが照射
ビーム311によって照射され、付加開孔354は照射ビーム311によって照射されな
いように、照射ビーム311を生成することも可能である。
【0177】
図11は、図7と同様に、複数のビーム操作開孔315が形成された多孔プレート31
3の立面図である。開孔315は、正六角形アレイ(蜂の巣のような)であるアレイ31
9状に配置されている。所定の開孔“a”は、6つの最も近接した開孔315によって囲
まれ、周囲の開孔315によって所定の開孔“a”の位置に生成される漏電界は、六重の
対称性を有している。図7の四重の対称性を有する正方形アレイと比較すると、六重の対
称性は高次であるため、正六角形アレイによって生成される漏電界の多重極効果は正方形
アレイの場合に比べてかなり低減される。
【0178】
再度図1を参照する。
【0179】
図1は、電子顕微鏡システム1の主な機能を説明するための概略概念図である。
【0180】
図1の挿入図I3は、一定のピッチの正方形パターン319状に配置された、多孔装置
305の開孔315を示しており、従って、一次電子ビームスポット5も一定のピッチの
正方形パターン103状に配置される。一次電子ビーム経路13が、パターン319に従
って生成された一次電子小ビーム3を電子光学部品によって基板7に供給し、物体上にパ
ターン103を形成するという意味において、パターン319とパターン103は、電子
光学的に互いに対応している。そこに関わる電子光学部品は、電子源装置301、コリメ
ータレンズ303、多孔装置305、視野レンズ307、ビームスプリッタ/コンバイナ
装置400及び対物装置100を備えている。実際のところ、これら電子光学部品は、正
方形パターンが正確な正方形パターン103とならないような結像誤差を生じさせる。
【0181】
図12は、説明のために、図1の挿入図I3における正方形パターン319から実際に
生成される一次電子ビームスポットの極端にゆがんだパターン103の例を示している。
ビームスポット5は、正方形状には配置されず、パターン103の格子線107は、隣接
するビームスポット5間のピッチがパターン103の中心109から離れるにつれて大き
くなるような曲線となっている。このように、図1の挿入図I3におけるパターン319
と比較すると、パターン103は、各開孔がアレイ中心から離間するにつれて「低くなる
規則性」、すなわち、累進的に増大する開孔変位誤差を有している。
【0182】
図13は、図12に示されるビームスポット5のパターン103のゆがみを補正するた
めに使用され得る、多孔プレート313の開孔315のアレイ配列(array arrangement
)319の変形例を示している。多孔プレート313の開孔315は、図12に示される
パターン103の格子線107の曲線と対向する曲線を有する格子線357に沿って配置
される。開孔315は、隣接する開孔から或るピッチ距離だけ離れて位置決めされる。当
該実施例において、ピッチ距離はパターン319の中心358から離れるにつれて減少す
る。
【0183】
パターン319は、このように生成された一次電子小ビームが、図1の挿入図I1に示
されるように、物体平面101に形成されたビームスポット5の正方形パターン103と
なるように設計される。
【0184】
しかし、図1に示される電子顕微鏡システム1の一実施の形態において、ビームスポッ
トパターン103の規則性は、当該パターン103が完全な正方形アレイにならなくとも
、当該パターン103のゆがみが減少するか規則性が良くなる程度に改善されるようなも
のであれば十分である。例えば、水平方向のみや、それ以外の適切な方向のみなどの、パ
ターンの一方向のみ、規則性を改善してもよい。かかる方向の規則性は、例えば、当技術
分野で公知の、フーリエ解析などの数学的手法によって決定することができる。
【0185】
図14は、物体平面101に形成されたビームスポット5のパターン103の別の例(
これも説明のために誇張されている)を示している。この例においては、パターン103
を形成する際に使用される電子光学部品は、小ビーム又はビームスポットがパターン10
3の一次電子ビームスポット5それぞれについて小さな円形スポットとして形成されない
ような、非点収差(field astigmatis)をもたらす。さらに、ビームスポット5は、パタ
ーン103の中心109から離れるにつれて長軸が長くなるような楕円形状である。
【0186】
図1に示される電子顕微鏡システム1の望ましい高解像度は、ゆがんだビームスポット
では得られない。
【0187】
図15は、非点収差のかかる影響を補償するために使用できる多孔プレート313の開
孔315のパターン319の変形例を示している。開孔315は、パターン319の中心
358から離れるにつれて長軸が長くなるような楕円形状であり、中心358に対する長
軸lの方向は、図14に示されるようにビームスポット5の長軸lの方向と交差する。か
かる補償型の楕円形状により、電子光学部品によってもたらされる非点収差の影響を低減
し、物体平面101に形成されるビームスポット5の楕円率を小さくすることができる。
【0188】
図1に示されるように、電子顕微鏡システム1の特徴の1つは、一次電子小ビームの焦
点323が多孔装置305によって形成されるスポット面325が、検査対象の物体7の
表面が位置する物体平面101に結像することである。物体平面101は、物体7の表面
に一致するのが好ましい。
【0189】
実際には、図16にMという略号で示される電子光学部品は、電子光学システムの像面
湾曲に寄与し、焦点323の平面325が物体表面7に近接した曲面101に結像される
。そのため、曲面状の物体平面101が物体7の平坦な表面に一致することは不可能であ
り、従って、焦点323は、物体7の表面に完全に結像することはない。
【0190】
図17は、焦点面325を物体表面7に結像する際に使用される電子光学部品Mの像面
湾曲の問題に対する1つの解決策を示している。多孔装置305は、一次電子小ビーム3
の焦点323が結ばれる面325が曲面であるように設計されている。物体平面7が平坦
な像平面101に一致するように位置決めできるように、電子光学部品Mが面325を平
坦な像平面101に結像させるように、焦点面325の曲率が選択される。
【0191】
図18は、図17に示されるように、湾曲した焦点面325上に小ビーム3の焦点32
3を結ばせることによって像面湾曲を補償するための、多孔装置305の多孔プレート3
13の一変形例を示している。かかる目的のために、開孔315の直径“d”は、開孔パ
ターン319の中心358から離れるにつれて大きくなる。開孔の直径が大きくなること
により、各開孔315の集束力が減少し、各開孔315によって与えられるレンズ機能の
焦点距離が長くなる。従って、パターン319の中央の開孔による焦点距離は、パターン
319の周辺部の開孔315による焦点距離よりも短くなり、図17に示されるように、
焦点323の位置する面325が湾曲した状態となる。
【0192】
尚、図17及び図18に示される例においては、像面湾曲の影響は、パターン319の
中心358から離れるにつれて大きくなる開孔の直径によって補償される。しかし、物体
平面101に焦点面325を結像させる際に使用される電子光学部品Mの光学特性によっ
ては、中心358から離れるにつれて小さくなる開孔直径“d”を有するのが有利である
。また、中心358から離れるにつれて前記中心からの所定の距離までは直径が大きくな
り、それ以降は小さくなるようにするのも有利である。さらに、パターン319の中心3
58に対して対称的に直径が変化する必要はない。また、パターン319の左から右へ行
くにつれて、又は上から下へ行くにつれて、又はその逆、又はそれらの組み合わせで、直
径を変化させることも可能である。
【0193】
さらに、開孔315の直径の変更は、照射ビーム311での電子密度のばらつきを補償
するために使用することもできる。例えば、もし照射ビーム311が中心部で最も密度が
高い非均一のビームであれば、図18に示すような構成により、一次電子小ビーム3がす
べてほぼ同じビーム強度又はビーム電流を有するように、周辺の小ビーム3のビーム強度
を中央のビームに比べて増強する。
【0194】
図19は、図17に示されるような湾曲した焦点面325を与えるために使用される多
孔装置305のさらなる変形例である。多孔プレート313は、中央の円形プレート部分
3620と、複数の同心のリング状、すなわち環状のプレート部分3621、3622、・
・・とに分割されている。隣接するプレート部分362は互いに電気的に絶縁され、各プ
レート部分362には複数の開孔315が形成されている。電圧源361が、各プレート
部分3620、3621、3622、・・・に所定の電圧U0、U1、U2、・・・を供給する
ために設けられる。一実施の形態によれば、電圧源361は、定電流源363と、複数の
抵抗R1、R2、R3、・・・と、固定電圧点364とを備え、電圧U0、U1、U2が互いに
異なるようになっている。定電流Iと抵抗R1、R2、・・・は、各開孔315によって与
えられるレンズ機能の焦点距離が開孔パターン319の中心358から離れるにつれて大
きくなるように選択される。別の実施の形態によれば、電圧U0、U1、U2、・・・をプ
レート部分3621、3622、・・・に供給するために別々の電圧源が設けられてもよい

【0195】
リング状のプレート部分3621、3622、・・・は、図19の挿入図Iに示される絶
縁ギャップ365によって互いに電気的に絶縁されている。絶縁ギャップ365は、隣接
する開孔315の間をジグザグ線状に延設されている。
【0196】
尚、多孔プレートの開孔の形状及び設計の上記特徴は、互いに組み合わせられてもよい
。例えば、開孔は、図15に示されたような楕円形状であって、かつ、図8に示されたよ
うな付加的な形状特徴を有していてもよい。さらに、開孔のアレイ配列は、より高い規則
性を有するスポットパターンがウェハ上に形成され、図18に示されるようにかかるアレ
イの各開孔が楕円形状であるか又は異なる開孔径を有し、かつ、図8に示されるように付
加的な形状特徴を有するように、開孔の位置が選択されていてもよい。上記したような特
性を有する多孔プレートは、当業者に公知であるMEMS技術によって作製することがで
きる。かかる技術は、反応性イオンエッチングを含む。本発明の一実施の形態による多孔
プレートは、例えば、Team Nanotec GmbH(住所:78052 Vil
lingen−Schwenningen、Germany)製のものであってもよい。
【0197】
図20a〜20eは、湾曲した焦点面325で電子小ビーム3が焦点を結ぶようにする
多孔装置305のさらなる変形例を示している。
【0198】
図20aに示される多孔装置305は、複数の開孔305を有し、電子小ビーム3を生
成して、曲面である焦点面325上の焦点323に前記電子小ビームを集束させる多孔プ
レート313を備えている。多孔プレート313を通過するときの照射ビーム311の電
子の運動エネルギーをUとし、かつ、E1が多孔プレート313の上流側直近の各開孔の
位置での電界強度であり、E2が多孔プレート313の下流側直近の同じ位置での電界強
度であるときにE1−E2と書き表される値をΔEとすると、開孔305の焦点距離は、下
記のように算出される。

f=−4U/ΔE

照射ビーム311の断面全体で運動エネルギーUはほぼ一定であるので、多孔プレート
313に近接する電界E1及びE2は、各開孔315によってもたらされる焦点距離fが照
射ビーム311における開孔の位置に依存するように形成される。かかる電界E1と電界
2の形成は、多孔プレート313から上流側又は下流側に離間して位置する1つ又は複
数の単孔プレート367によって可能となる。図20aにおいては、1つの単孔プレート
367が多孔プレート313の上流側に離間して配置され、単孔プレート3671に形成
された開孔368は、照射ビーム311が開孔368を通過して多孔プレート313に形
成された開孔315を照射するように選択される。
【0199】
別の単孔プレート3672が多孔プレート313の下流側に離間して配置され、さらに
別の単孔プレート3673が単孔プレート3672の下流側に離間して配置されている。単
孔プレート3672、3673に形成される開孔368は、多孔プレート313によって生
成される小ビーム3が開孔368を通過するように設計されている。
【0200】
30kVの電圧を単孔プレート3671に供給し、9kVの電圧を多孔プレート313
に供給し、9kVの電圧を単孔プレート3672に供給し、30kVの電圧を単孔プレー
ト3673に供給するために、電圧源(図20には図示せず)が設けられている。この例
においては、前記のような電圧を単孔プレート及び多孔プレートに供給したが、適当な別
の値の電圧であってもよい。多孔プレート313とその上流側の単孔プレート3671
よって生成される電界E1の電気力線、及び多孔プレート313とその下流側の単孔プレ
ート3672、3673によって生成される電界E2の電気力線が図20aに示されている
。電界E1は、多孔プレート313に近接した位置では照射ビーム311の断面全体でほ
ぼ一定である。電界E2は、単孔プレート3672と単孔プレート3673との間の領域か
ら多孔プレート313と単孔プレート3672との間の領域に入り込む湾曲した形状の電
気力線369によって示されるように、多孔プレート313上の水平位置についての依存
性が大きい。開孔パターンの中心に位置する開孔305は、開孔パターンの周辺に位置す
る開孔305よりも短い焦点距離fを有するので、図20aの一点鎖線で示されるように
、小ビーム3の焦点323が湾曲した焦点面325上に結ばれることになる。
【0201】
図20bは、図20aに示された構造と同じ構造の多孔装置305を示している。異な
るのは、単孔プレート3671には多孔プレート313と同じ9kVの電圧が供給され、
多孔プレート313の上流側の電界E1がほぼゼロである点である。多孔プレート313
の下流側の不均一な電界E2により、開孔315の焦点距離は図20bに示されるように
変化し、焦点面325が曲面となる。
【0202】
図20cに示された多孔装置305は、1つの多孔プレート313と、多孔プレート3
13の上流側に位置する2つの単孔プレート3671、3672とを備えている。1つの単
孔プレート3673が多孔プレート313の下流側に設けられている。
【0203】
30kVの電圧が単孔プレート3671、3673に供給され、9kVの電圧が単孔プレ
ート3672と多孔プレート313に供給される。上流側の電界E1は、多孔プレート31
3に近接した位置では非常に不均一であり、各開孔315の焦点距離は照射ビーム311
中では水平位置についての依存性が大きく、従って、焦点面325は、図17に示される
ように、像面湾曲を補正するために適宜湾曲されたものとなる。
【0204】
図20dに示された多孔装置305は、図20cに示された装置と同様の構造を有する
。但し、下流側の単孔プレート3673には9kVの電圧が供給され、ほとんど消えそう
な電界E2が多孔プレート313の下流側に生成される。さらに、多孔プレート313の
上流側に生成される不均一な電界E1により、照射ビーム断面中で各開孔の焦点距離が所
望のばらつきとなる。
【0205】
図20a〜図20dにおいて、多孔プレート313は、外側の単孔プレート3671
3673それぞれ(30kV)と比べて低い電位(9kV)である。これにより、開孔3
15は、実焦点323が多孔プレート313の下流に生成されるという集束効果を呈する

【0206】
これに対し、図20eに示された多孔装置305は、30kVの電圧が供給される多孔
プレート313を備え、多孔プレート313の上流側の単孔プレート3671と下流側の
単孔プレート3673には、それよりも低い電位である9kVが供給される。その結果、
多孔プレートの上流側の湾曲した焦点面325上で、照射ビーム311のビーム経路内に
位置する虚焦点323が生成されるという、多孔プレート313に形成された開孔315
のデフォーカス効果(defocusing effect)が得られる。図20eに示された焦点323
が虚焦点であったとしても、これらの虚焦点323を検査対象である物体上に結像させる
ことは可能であり、このとき、図17に示されるように、焦点面325の曲率は、像面湾
曲が補償されるように設計される。
【0207】
図20に示す上記変形例において、9kVと30kVの電圧は単なる例示であり、それ
とは別の電圧をプレート313、367に供給することも可能である。例えば、多孔プレ
ート313に供給される電圧は、図20aや図20cではプレート3671、3673に供
給され、図20a、20b、20cではプレート3673に供給される高電圧よりも低い
が、その多孔プレート313に供給される電圧よりもさらに僅かに低い電圧が単孔プレー
ト3672に供給されてもよい。
【0208】
図21は、焦点面325と物体表面7が位置する物体平面101との間の一次電子ビー
ム経路13の概略図であり、ビームスプリッタ中のビーム経路は、図示を簡便にするため
に、折り曲げないで示されている。焦点面325と重なる視野レンズ307の下流側では
、一次電子ビーム経路13は、対物レンズ102の上流側で、かつ、ビームスプリッタ/
コンバイナ装置400の下流側である中間平面111で交差する集束ビーム経路であり、
前記ビーム経路は下記に示すように上流磁界部分403と下流磁界部分407とを通過す
る。
【0209】
図22は、ビームスプリッタ/コンバイナ装置400と対物レンズ102の概略図であ
る。複数の一次電子小ビームを備えた一次電子ビーム経路13がビームスプリッタ/コン
バイナ装置400の第1の磁界部分403に入る。第1の磁界部分403には、一次電子
ビーム経路13を左へ角度αだけ偏向させる均一な磁界がある。その後、一次電子ビーム
経路13は、ドリフト領域405を通り、当該ドリフト領域405では一次電子ビーム経
路13は磁界からほとんど影響を受けず、従って、直線状に進む。その後、一次電子ビー
ム経路13は、磁界部分407に入る。磁界部分407には、一次電子ビーム経路13を
右へ角度βだけ偏向させる均一な磁界がある。その後、一次電子ビーム経路13は、物体
平面101に位置する物体7の表面に一次電子小ビームを集束させるための対物レンズ1
02に入る。
【0210】
対物装置100は、磁界集束機能を有する磁界レンズ群と、一次電子小ビームに対する
電界集束機能を有する電界レンズ群115とを備えている。さらに、電界レンズ群115
は、上部電極117と下部電極119とを備え、一次電子が物体表面7に衝突する前に一
次電子を減速させるための、上部電極117と下部電極119との間に生ずる電界により
、一次電子に対して減速機能を働かせる。
【0211】
コントローラ121は、下部電極119に供給される電圧を変更して、一次電子が物体
に衝突する運動エネルギー、すなわち、入射エネルギー(landing energy)が約0.3k
eV〜2.0keVの範囲に調整されるようにするために設けられている。一次電子がビ
ームスプリッタ/コンバイナ装置400を通る際の運動エネルギーは、物体表面に一次電
子が衝突するときの入射エネルギーに依存せず一定であり、この例においては、その数値
は30keVである。
【0212】
磁界部分403は、長さL1にわたって延び、ドリフト領域405は長さL2にわたって
延び、第2の磁界部分407は長さL3にわたって延び、第2の磁界部分407の下縁と
物体平面101との間の距離は、この例においてはL4である。L1は約75mm、L2
約90mm、L3は約60mm、L4は約80mmである。
【0213】
当業者であれば、上記のような複数の磁界部分を備えたビームスプリッタ/コンバイナ
装置400を設計し構成するための技術に精通しているであろう。米国特許第6,040
,576号明細書、又は、“SMART:A Planned Ultrahigh−R
esolution Spectromicroscope For BESSY II
”by R. Fink et al, Journal of Electron S
pectroscopy and Related Phenomena 84, 19
87, pages 231 to 250(「BESSY用超高解像分光顕微鏡」、R
.Fink et al著、電子分光学及び関連現象ジャーナル84号、1987年、2
31〜250頁)、又は、“A Beam Separator With Small
Aberrations” by H. Muller et al, Journa
l of Electron Microscopy 48 (3), 1999, p
ages 191 to 204(「収差の小さいビーム分割器」、H. Muller
et al著、電子顕微鏡ジャーナル48号(3)、1999年、191〜204頁)
を参照されたい。
【0214】
磁界部分403、407の磁界の強さの絶対値はほぼ等しく、磁界部分403、407
の長さL1、L3は、左へ角度αだけ偏向させ、さらに右へ角度βだけ偏向させることによ
って誘発される空間分散がほとんどゼロとなるように選択される。さらに、ビームスプリ
ッタ/コンバイナ装置400によって一次電子ビーム経路13に対して誘発される偏向が
、一次の非点収差(stigmatic)がほとんど無く、かつ、一次の歪み(distortion)がほ
とんど無い状態となるように、磁界部分403、407及びドリフト領域405が選択さ
れる。このため、多孔装置305によって生成される焦点323のパターン327は、物
体平面101に質の高い状態で結像される。この結像の質は、物体7上の一次電子の入射
エネルギーとはほぼ無関係に維持される。
【0215】
複数の二次電子小ビーム9を備えた二次電子ビーム経路11は、二次電子ビーム経路1
1を右へ角度γだけ偏向させる磁界領域407によって一次電子ビーム経路13から離間
される。
【0216】
約0eV〜100eVの幅の運動エネルギーを有する物体7から発せられる二次電子は
、上部電極117及び下部電極119によって生成される電界により加速され、一次電子
の入射エネルギーを調整するためにコントローラ121によって与えられる設定に応じた
運動エネルギーを有するようになる。このように、磁界領域407に入る二次電子の運動
エネルギーは、一次電子の入射エネルギーに応じて変化する。
【0217】
電界を生成するための上部電極117及び下部電極119を使用する代わりに、下部電
極119を省略し、電界の主要部分を生じさせるための下部電極として物体7を使用する
こともできる。この場合、対応する電圧が物体7に印加される。
【0218】
磁界領域407によってもたらされる二次電子ビーム経路11の偏向角γは、適宜変化
する。磁界領域407を出ると、二次電子ビーム経路11は、二次電子ビーム経路11を
さらに右に偏向する均一な磁界をもたらす別の磁界領域411に入る前に、磁界の影響を
ほとんど受けないドリフト領域409を通過する。磁界領域411の磁界の強さは、コン
トローラ413によって調整することができる。磁界領域411を出るとすぐに、二次電
子ビーム経路11は、均一な磁界をもたらす別の磁界領域415に入る。この磁界領域4
15の磁界の強さもまた、コントローラ413によって調整することができる。コントロ
ーラ413は、一次電子ビームの入射エネルギーの設定に応じて作動し、一次電子の入射
エネルギーと偏向角γのそれぞれから独立した所定の位置と所定の方向で一次電子ビーム
経路13が磁界領域415を出るように、磁界領域411、415における磁界の強さを
調整する。このように、2つの磁界領域411、415は、二次電子ビームが磁界領域4
15を出るときに所定の二次電子ビーム経路11に一致するように調整することを可能に
する、2つの連続したビーム偏向器の機能を果たす。
【0219】
コントローラ413によって引き起こされる、磁界領域411、415の磁界の強さの
変化は、これらの電子光学素子411、415が二次電子にもたらす四重極効果の変化を
引き起こす。かかる四重極効果の変化を補償するため、別の磁界領域419が磁界領域4
15のすぐ下流に設けられている。磁界領域419においては、均一な磁界がもたらされ
、その磁界の強さは、コントローラ413によって制御される。さらに、磁界領域419
の下流側には、四重極レンズ421が設けられている。四重極レンズ421は、一次電子
の異なる入射エネルギーについてビーム経路を補償する際に、磁界領域419と共に、磁
界部分411、415によって誘発される残留四重極効果を補償するように、コントロー
ラ413によって制御される。
【0220】
二次電子ビーム経路11に設けられた電子光学部品407、409、411、415、
419及び421は、一次電子の入射エネルギーの特定の設定について、ビームスプリッ
タ/コンバイナ装置400を通過した二次電子ビーム経路11が一次の非点収差がほとん
ど無く、一次の歪みがほとんど無く、一次の分散が補正されるように構成される。2kV
以外の入射エネルギーの設定については、結像の質は維持されるが、分散補正は限定され
た量に低減される。
【0221】
尚、物体平面101の中間像は、磁界部分407、411、415及び419の領域に
形成される。従って、中間像の位置は、一次電子の入射エネルギーと二次電子の運動エネ
ルギーの設定に応じて、ビーム軸に沿って変化する。
【0222】
また、磁界領域403、407から離れると、電子顕微鏡システム1の一次電子ビーム
経路13には、これ以外のビーム偏向磁界領域は設けられていない。「これ以外のビーム
偏向磁界領域」という用語は、一次電子ビームに実質的な偏向角を与える磁界領域を備え
るが、単に他の目的で存在する磁界、例えば、一次電子ビーム経路の微調整を可能にする
ための磁界を備えていなくてもよいことを意味する。従って、実質的な偏向角を与えるビ
ーム偏向磁界領域は、5°よりも大きい、又は10°よりも大きい偏向角を与える磁界領
域であってもよい。すでに述べたとおり、かかる「これ以外のビーム偏向磁界領域」は、
一次電子ビーム経路には存在せず、ビームスプリッタ/コンバイナ装置400は、そこを
通る複数の一次電子小ビームに好適な設定の光学特性を与えるように構成され、質の高い
一次電子ビームスポットパターン103が物体平面101に形成されるようになっている
。特に、一次電子ビーム経路には、一次の非点収差も歪みも無い。
【0223】
図23を参照しながら、電子リソグラフィ装置について説明する。
【0224】
図23に示される電子リソグラフィシステムは、小ビーム発生装置300と、対物装置
100とを備えている。小ビーム発生装置300は、複数の書き込み電子小ビーム3を生
成し、それらは対物装置100によって物体7に向けられる。半導体ウェハ等の物体は、
書き込み電子小ビーム3によって露光される荷電粒子感受性のレジストにより被覆されて
いる。レジストを現像した後、書き込み電子小ビーム3による露光に応じて基板にエッチ
ング構造が形成されてよい。
【0225】
書き込み電子小ビーム3は、電子顕微鏡システムについて示されたような一次電子小ビ
ームの生成と同様に、小ビーム生成装置300で生成される。電子源装置301は、発散
電子ビーム309を発生させ、発散電子ビーム309は、コリメータレンズ303によっ
て平行にされ、多孔装置305を照射するためのビーム311となる。多孔装置305の
下流には、書き込み電子小ビーム3の焦点323のアレイが形成される。
【0226】
焦点323が形成される焦点面325には、複数の書き込みビームを選択的にON/O
FFに切り替えるためのビーム遮断(blanking)装置340が設けられている。ビーム遮
断装置340は、さらに別の多孔プレート(図23にはす図示せず)を備えており、当該
多孔プレートは、各焦点323が各開孔に形成されるように配置されている。各開孔は、
開孔の両側の2つの電極によって形成されるようなビーム偏向器の機能を与える。電極に
は、コンピュータによって制御される電圧が供給される。開孔の電極に電圧が印加されな
い場合には、そこを通過する小ビームは直線に沿って通過する。すなわち、小ビームは偏
向されない。適当な電圧が電極に供給されると、開孔に電界が生じ、各小ビームは適当な
角度だけ偏向する。
【0227】
一実施の形態によれば、ビーム遮断装置340は、「A Multi−Blanker
For Parallel Electron Beam Lithography(
平行電子ビームリソグラフィ用多孔遮断装置)」G. I. Winograd博士号論
文、スタンフォード大学 2001年に示されたタイプのものであってもよい。当該文献
をここに参照することにより本明細書に包含するものとする。
【0228】
焦点323が形成される焦点面325の下流には、複数の開孔を有するさらに別の多孔
プレート(図23には図示せず)が設けられている。開孔は、偏向装置によって各書き込
み電子小ビームが偏向されない場合には書き込み電子小ビームが開孔を通過し、各書き込
み電子小ビームが偏向される場合には書き込み電子小ビームがほとんど開孔を通過しない
ように、位置決めされている。
【0229】
従って、当該多孔プレートの下流側では、各偏向器が電圧を供給されるか否かに応じて
、書き込み電子小ビームが選択的にON/OFFに切り替えられる。図23に示された状
態では、書き込みビームが1つだけビーム遮断装置340を通過している。すなわち、1
つのビームのみがONに切り替えられている。
【0230】
ビーム遮断装置340の下流側には、ビーム偏向器451、452が順次設けられてお
り、ビーム偏向器451、452は、当該ビーム偏向器451、452を横断する前のビ
ーム経路に対して書き込み電子小ビーム3を距離dだけ変移させる。
【0231】
対物装置100は、米国特許出願公開第2003/0066961号明細書に開示され
ているような、「櫛型レンズ(comb lens)」と呼ばれるタイプの対物レンズ102を備
えている。
【0232】
対物レンズ102は、一次電子ビーム経路を横切る方向に延びた電界源部材の2つの列
113を備えている。電界源部材の2つの列113の間の空間の所望の位置に所望の電界
構成が与えられるように、電界源部材115が励起される。従って、複数の一次電子小ビ
ームが物体上に集束するように構成された正確なビーム操作電界が、変移された書き込み
小ビーム3が対物装置100に入射する領域に与えられる。櫛型レンズを対物レンズ10
2として使用することにより、集束レンズ機能の他に、ビーム偏向器451、452によ
ってもたらされる走査偏向の機能をも有するようにすることができるので、精度良く焦点
が合った書き込み電子ビームスポットが基板の表面に形成される。
【0233】
各書き込み電子小ビームをON/OFFに切り替え、基板の表面で書き込み電子ビーム
スポット5を走査することにより、制御コンピュータに記憶された所定の露光パターンに
従って、物体上に設けられたレジストを露光することができる。
【0234】
以上説明したように、本願の開示は特に以下の項目(1)〜(106)を含むことが分
かる。
【0235】
(1)少なくとも1つの荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、
前記少なくとも1つの荷電粒子ビームのビーム経路中に配置された少なくとも1つの多
孔プレートとを備え、
前記少なくとも1つの多孔プレートは、所定の第1のアレイパターン状に形成された複
数の開孔を有し、
前記少なくとも1つの多孔プレートの下流側で前記少なくとも1つの荷電粒子ビームか
ら複数の荷電粒子小ビームが形成され、
前記複数の荷電粒子小ビームにより、第2のアレイパターン状に配置された複数のビー
ムスポットが粒子光学装置の像平面に形成される粒子光学装置であって、
前記粒子光学装置は、さらに、前記少なくとも1つの荷電粒子ビーム及び/又は前記複
数の荷電粒子小ビームを操作するための少なくとも1つの粒子光学素子を備え、
前記第1のアレイパターンは、第1の方向に少なくとも1つの第1のパターン規則性を
有し、前記第2のアレイパターンは、前記第1の方向に電子光学的に対応する第2の方向
に少なくとも1つの第2のパターン規則性を有し、前記第2のパターン規則性は、前記第
1のパターン規則性よりも高いことを特徴とする、粒子光学装置。
【0236】
(2)前記少なくとも1つの粒子光学素子のゆがみを補償するために、前記第1のアレ
イパターンの前記第1のパターン規則性が前記第2のアレイパターンの前記第2のパター
ン規則性に比べて小さくされている、項目(1)に記載の粒子光学装置。
【0237】
(3)前記少なくとも1つの粒子光学素子が、前記像平面に位置決め可能な物体に前記
荷電粒子小ビームを集束させるための対物レンズを備える、項目(2)に記載の粒子光学
装置。
【0238】
(4)前記多孔プレートの前記第1の方向に隣り合う開孔間の距離は、前記第1のアレ
イパターンの中心からの距離に応じて連続的に減少している、項目(1)〜(3)のいず
れかに記載の粒子光学装置。
【0239】
(5)単一の第1の方向のみにおいて、前記第2のアレイパターンが前記第1のパター
ン規則性よりも高い第2のパターン規則性を有する、項目(1)〜(4)のいずれかに記
載の粒子光学装置。
【0240】
(6)単一の第1の方向において、前記第2のパターンがほぼ一定のピッチのパターン
である、項目(5)に記載の粒子光学装置。
【0241】
(7)相互に交差し合う2つの第1の方向において、前記第2のアレイパターンが前記
第1のパターン規則性よりも高い前記第2のパターン規則性を有する、項目(1)〜(6
)のいずれかに記載の粒子光学装置。
【0242】
(8)少なくとも1つの荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、
前記少なくとも1つの荷電粒子ビームのビーム経路中に配置された少なくとも1つの多
孔プレートとを備え、
前記少なくとも1つの多孔プレートは、所定の第1のアレイパターン状に形成された複
数の開孔を有し、
前記多孔プレートの下流側で前記少なくとも1つの荷電粒子ビームから複数の荷電粒子
小ビームが形成され、
前記複数の荷電粒子小ビームにより、複数のビームスポットが粒子光学装置の像平面に
形成される粒子光学装置であって、
前記粒子光学装置は、さらに、前記少なくとも1つの荷電粒子ビーム及び/又は前記複
数の荷電粒子小ビームを操作するための少なくとも1つの粒子光学素子を備え、
前記多孔プレートの前記開孔の直径が前記第1のアレイパターンの中心から離れるにつ
れて変化することを特徴とする、特に項目(1)〜(7)のいずれかに記載の粒子光学装
置と組み合わされる粒子光学装置。
【0243】
(9)前記少なくとも1つの粒子光学素子の像面湾曲を補償するために、前記多孔プレ
ートの前記開孔の直径が前記第1のアレイパターンの中心から離れるにつれて大きくなる
か又は小さくなる、項目(8)に記載の粒子光学装置。
【0244】
(10)前記少なくとも1つの荷電粒子ビームの断面における電流の不均一性を補償す
るために、前記多孔プレートの前記開孔の直径が前記第1のアレイパターンの中心から離
れるにつれて大きくなる、項目(8)又は(9)に記載の粒子光学装置。
【0245】
(11)前記多孔プレートの前記開孔の直径が前記第1のアレイパターンの中心から離
れるにつれて大きくなる、項目(8)又は(10)に記載の粒子光学装置。
【0246】
(12)少なくとも1つの荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と

前記少なくとも1つの荷電粒子ビームのビーム経路中に配置された少なくとも1つの多
孔プレートとを備え、
前記少なくとも1つの多孔プレートは、所定の第1のアレイパターン状に形成された複
数の開孔を有し、
前記多孔プレートの下流側で前記少なくとも1つの荷電粒子ビームから複数の荷電粒子
小ビームが形成され、
前記複数の荷電粒子小ビームにより、複数のビームスポットが粒子光学装置の像平面に
形成される粒子光学装置であって、
前記粒子光学装置は、さらに、前記少なくとも1つの荷電粒子ビーム及び/又は前記複
数の荷電粒子小ビームを操作するための少なくとも1つの粒子光学素子を備え、
前記複数の開孔の少なくとも1つの群の開孔形状が楕円形状であることを特徴とする、
特に項目(1)〜(11)のいずれかに記載の粒子光学装置と組み合わされる粒子光学装
置。
【0247】
(13)少なくとも1つの集束レンズの非点収差を補償するために、前記複数の開孔の
少なくとも1つの群の開孔形状が楕円形状にされている、項目(12)に記載の粒子光学
装置。
【0248】
(14)前記開孔の楕円形状の楕円率は、前記開孔の前記第1のアレイパターンの中心
からの距離に応じて大きくなる、項目(11)又は(13)に記載の粒子光学装置。
【0249】
(15)前記開孔の楕円形状の長軸は、前記第1のアレイパターンの中心に対して放射
状に方向づけされている、項目(12)〜(14)のいずれかに記載の粒子光学装置。
【0250】
(16)前記開孔の楕円形状の長軸は、前記第1のアレイパターンの中心からの半径方
向に対する角度で方向づけされている、項目(12)〜(15)のいずれかに記載の粒子
光学装置。
【0251】
(17)前記角度は、前記各開孔の前記第1のアレイパターンの中心からの距離に応じ
て大きくなる、項目(16)に記載の粒子光学装置。
【0252】
(18)前記少なくとも1つの多孔プレートに少なくとも1つの電圧を供給するための
少なくとも1つの電圧源をさらに備えた、項目(1)〜(17)のいずれかに記載の粒子
光学装置。
【0253】
(19)通過する荷電粒子小ビームの粒子を操作するための開孔を複数有する少なくと
も1つの多孔プレートを備えた粒子光学部品であって、
前記多孔プレートは、ほぼ単一の面に配置された複数の導電層部分を備え、前記複数の
導電層部分のそれぞれに複数の開孔が形成され、隣接した前記導電層部分間に抵抗性ギャ
ップ(resistant gap)、特に非導電性ギャップ(non-conductive gap)が形成されてい
ることを特徴とする、粒子光学部品。
【0254】
(20)前記隣接した導電層部分が異なる電位であるように構成された、項目(19)
に記載の粒子光学部品。
【0255】
(21)複数の導電層部分に所定の電圧を供給するための少なくとも1つの電圧源をさ
らに備えた、項目(19)〜(20)のいずれかに記載の粒子光学部品。
【0256】
(22)異なる導電層部分を電気的に結合する少なくとも1つの抵抗器をさらに備えた
、項目(19)〜(21)のいずれかに記載の粒子光学部品。
【0257】
(23)前記少なくとも1つの多孔プレートに形成された前記複数の開孔の第1のパタ
ーンの中心から第1の距離の位置にある隣接した導電層部分の第1の対を接続する第1の
抵抗器の抵抗は、前記第1のパターンの中心からの前記第1の距離よりも小さい第2の距
離の位置にある隣接した導電層部分の第2の対を接続する第2の抵抗器の抵抗よりも高い
、項目(22)に記載の粒子光学部品。
【0258】
(24)前記複数の導電層部分は、第2の導電層部分をおおむね取り囲む第1の導電層
部分を備える、項目(19)〜(23)のいずれかに記載の粒子光学部品。
【0259】
(25)前記複数の導電層部分は、第1のパターンの中心に対して対称に配置された複
数のリング状部分を備える、項目(19)〜(24)のいずれかに記載の粒子光学部品。
【0260】
(26)前記リング状導電層部分の半径方向の幅は、前記第1のパターンの中心から離
れるにつれて小さくなる、項目(25)に記載の粒子光学部品。
【0261】
(27)少なくとも1つの荷電粒子ビーム又は複数の荷電粒子小ビームを発生させる少
なくとも1つの荷電粒子源と、
項目(19)〜(26)のいずれかに記載の少なくとも1つの粒子光学部品とを備えた
、特に項目(1)〜(18)のいずれかに記載の粒子光学装置と組み合わされる粒子光学
装置。
【0262】
(28)前記多孔プレートの下流側で前記少なくとも1つの荷電粒子ビームから複数の
荷電粒子小ビームが形成され、前記複数の荷電粒子小ビームによって複数のビームスポッ
トが前記粒子光学装置の物体平面に形成される粒子光学装置であって、
前記装置はさらに、前記多孔プレートの上流側の、前記少なくとも1つの荷電粒子ビー
ムのビーム経路中、及び/又は、前記多孔プレートの下流側の、前記複数の荷電粒子小ビ
ームのビーム経路中に配置された少なくとも1つの集束レンズとを備え、
前記隣接した導電層部分が、前記少なくとも1つの集束レンズの像面湾曲を補償するた
めに、異なる電位であるように構成された、項目(27)に記載の粒子光学装置。
【0263】
(29)各小ビームに対する前記開孔による集束効果は、第1のパターンの中心から離
れるにつれて小さくなる、項目(27)〜(28)のいずれかに記載の粒子光学装置。
【0264】
(30)貫通した複数の開孔を有する絶縁基板で形成された第1の多孔プレートを備え
た粒子光学部品であって、
前記絶縁基板に形成された前記開孔の少なくとも内部が導電層で覆われていることを特
徴とする、特に項目(19)〜(26)のいずれかに記載の粒子光学部品。
【0265】
(31)前記第1の多孔プレートの少なくとも1つの主平面上に、前記導電層がさらに
形成されている、項目(30)に記載の粒子光学部品。
【0266】
(32)前記第1の多孔プレートの主平面上に少なくとも1つの第2の多孔プレートが
設けられ、前記第1の多孔プレートに形成された開孔と、前記第2の多孔プレートに形成
された開孔とが、前記第1及び第2の多孔プレートによる構造を貫通する共通の貫通孔を
形成する、項目(30)又は(31)に記載の粒子光学部品。
【0267】
(33)前記導電層の導電率が前記第2の多孔プレートの導電率よりも小さい、項目(
32)に記載の粒子光学部品。
【0268】
(34)前記第1の多孔プレートの両主平面間の電気抵抗が、約250Ω〜8MΩの範
囲、約250Ω〜4MΩの範囲、約4MΩ〜8MΩの範囲、約250Ω〜800Ωの範囲
、約800Ω〜1.5MΩの範囲、約1.5MΩ〜3MΩの範囲、約3MΩ〜5MΩの範
囲、及び/又は約5MΩ〜8MΩの範囲にある、項目(30)〜(33)のいずれかに記
載の粒子光学部品。
【0269】
(35)第1及び第2の主平面と、貫通した複数の開孔とを有する第1の多孔プレート
を備えた粒子光学部品であって、
前記多孔プレートは、その両主平面間の電気抵抗が約250Ω〜8MΩの範囲、約25
0Ω〜4MΩの範囲、約4MΩ〜8MΩの範囲、約250Ω〜800Ωの範囲、約800
Ω〜1.5MΩの範囲、約1.5MΩ〜3MΩの範囲、約3MΩ〜5MΩの範囲、及び/
又は約5MΩ〜8MΩの範囲となるような導電率を有する材料で形成されたことを特徴と
する、特に項目(19)〜(34)のいずれかに記載の粒子光学部品。
【0270】
(36)少なくとも1つの荷電粒子ビーム、又は、複数の荷電粒子小ビームを発生させ
る少なくとも1つの荷電粒子源と、項目(30)〜(35)のいずれかに記載の少なくと
も1つの粒子光学部品とを備えたことを特徴とする、特に項目(1)〜(29)のいずれ
かに記載の粒子光学装置と組み合わされる粒子光学装置。
【0271】
(37)通過する荷電粒子小ビームを操作するためのビーム操作開孔が複数形成された
少なくとも1つの多孔プレートを備えた粒子光学部品であって、
前記複数のビーム操作開孔は、所定の第1のアレイパターン状に配置され、
前記ビーム操作開孔の少なくとも1つは、前記多孔プレートに形成された複数の電界補
正開孔と対応していることを特徴とする、特に項目(19)〜(35)のいずれかに記載
の粒子光学部品と組み合わされる粒子光学部品。
【0272】
(38)各ビーム操作開孔と対応する前記電界補正開孔の各々は、前記各ビーム操作開
孔よりもサイズが小さい、項目(37)に記載の粒子光学部品。
【0273】
(39)前記電界補正開孔は、前記多孔プレートを貫通する貫通孔として形成されてい
る、項目(37)又は(38)に記載の粒子光学部品。
【0274】
(40)前記電界補正開孔は、前記多孔プレートに形成された底面を有する止り孔とし
て形成されている、項目(37)又は(38)に記載の粒子光学部品。
【0275】
(41)前記対応する前記複数の電界補正開孔を有する前記少なくとも1つのビーム操
作開孔の特定の1つには、その周りに数個の最も近接したビーム操作開孔が周方向に離間
して設けられ、前記電界補正開孔の少なくとも1つは、周方向から見たときに、周方向に
隣接し、かつ、最も近接した2つのビーム操作開孔の間に位置している、項目(37)〜
(40)のいずれかに記載の粒子光学部品。
【0276】
(42)少なくとも1つの荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と
、項目(35)〜(37)のいずれかに記載の少なくとも1つの粒子光学部品とを備えた
ことを特徴とする、特に項目(1)〜(36)のいずれかに記載の粒子光学装置と組み合
わされる粒子光学装置。
【0277】
(43)前記電界補正開孔に荷電粒子があたらないように前記複数の荷電粒子小ビーム
を前記荷電粒子ビームから生成するための多孔絞り(multi-aperture stop)をさらに備
え、前記多孔絞りは前記粒子光学部品の上流側に位置している、項目(42)に記載の粒
子光学装置。
【0278】
(44)前記電界補正開孔を通過した荷電粒子を遮断するための多孔絞りをさらに備え
、前記多孔絞りは前記粒子光学部品の下流側に位置している、項目(42)に記載の粒子
光学装置。
【0279】
(45)通過する荷電粒子小ビームの粒子を操作するためのビーム操作開孔が複数形成
された少なくとも1つの多孔プレートを備えた粒子光学部品であって、
前記複数のビーム操作開孔は、所定の第1のアレイパターン状に配置され、
前記ビーム操作開孔の少なくとも1つには、その周りにN個の最も近接したビーム操作
開孔が周方向に離間して設けられ、前記少なくとも1つのビーム操作開孔の形状の対称性
はN重の対称性であることを特徴とする、特に項目(19)〜(41)のいずれかに記載
の粒子光学部品と組み合わされる粒子光学部品。
【0280】
(46)通過する荷電粒子小ビームの粒子を操作するためのビーム操作開孔が複数形成
された少なくとも1つの多孔プレートを備えた粒子光学部品であって、
前記複数のビーム操作開孔は、所定の第1のアレイパターン状に配置され、
前記ビーム操作開孔の少なくとも1つは、前記少なくとも1つのビーム操作開孔の周囲
の前記第1のアレイパターンの対称性に対応した少なくとも1つの対称要素を有する形状
を有していることを特徴とする、特に項目(19)〜(41)のいずれかに記載の粒子光
学部品と組み合わされる粒子光学部品。
【0281】
(47)前記第1のアレイパターンはほぼ四角形のアレイパターンであり、前記対称性
は四重の対称性である、項目(45)又は(46)に記載の粒子光学部品。
【0282】
(48)前記第1のアレイパターンはほぼ六角形のアレイパターンであり、前記対称性
は六重の対称性である、項目(45)又は(46)に記載の粒子光学部品。
【0283】
(49)少なくとも1つの荷電粒子ビーム又は複数の荷電粒子小ビームを発生させる少
なくとも1つの荷電粒子源と、項目(45)〜(48)のいずれかに記載の少なくとも1
つの粒子光学部品とを備えたことを特徴とする、特に項目(1)〜(40)のいずれかに
記載の粒子光学装置と組み合わされる粒子光学装置。
【0284】
(50)少なくとも1つの荷電粒子ビーム又は複数の荷電粒子小ビームを発生させる少
なくとも1つの荷電粒子源と、
前記少なくとも1つの荷電粒子ビーム及び前記複数の荷電粒子小ビームのビーム経路中
に配置された少なくとも1つの多孔プレートとを備え、
前記少なくとも1つの多孔プレートは、所定の第1のアレイパターン状に形成された複
数の開孔を有し、
前記多孔プレートの下流側の物体平面に、第2のアレイパターン状に配置された複数の
ビームスポットが形成される粒子光学装置であって、
前記ビームスポットの数は、前記多孔プレートに形成された前記開孔の数よりも少ない
ことを特徴とする、特に項目(1)〜(49)のいずれかに記載の粒子光学装置と組み合
わされる粒子光学装置。
【0285】
(51)前記ビームスポットの形成に寄与しない開孔が、前記多孔プレートの止り孔と
して形成されている、項目(50)に記載の粒子光学装置。
【0286】
(52)前記ビームスポットを形成する小ビームが前記第1のアレイパターンの中心領
域の前記開孔を通過し、
前記第1のアレイパターンの周辺領域の前記開孔は、前記ビームスポットの形成に寄与
しない、項目(50)又は(51)に記載の粒子光学装置。
【0287】
(53)前記周辺領域の前記開孔に荷電粒子があたらないように前記複数の荷電粒子小
ビームを前記荷電粒子ビームから生成するための多孔絞りをさらに備え、前記多孔絞りは
前記粒子光学部品の上流側に位置している、項目(50)〜(52)のいずれかに記載の
粒子光学装置。
【0288】
(54)前記周辺領域の前記開孔を通過した荷電粒子を遮断するための多孔絞りをさら
に備え、前記多孔絞りは前記粒子光学部品の下流側に位置している、項目(50)〜(5
3)のいずれかに記載の粒子光学装置。
【0289】
(55)荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、
複数の開孔が第1のパターン状に形成され、その下流側で前記荷電粒子ビームから複数
の荷電粒子小ビームが形成される少なくとも1つの多孔プレートと、
前記複数の開孔に所定の第1の電圧を供給する第1の電圧源と、
前記多孔プレートの上流側又は下流側に離間して配置され、前記荷電粒子ビーム又は前
記複数の荷電粒子小ビームを通過させる、単一の開孔を有する第1の単孔プレートと、
前記第1の単孔プレートに所定の第2の電圧を供給する第2の電圧源とを備えた粒子光
学装置であって、
前記多孔プレートと前記第1の単孔プレートとの間の距離が、前記第1の単孔プレート
の前記単一の開孔の直径の5倍よりも小さく、好適には前記直径の4倍よりも小さく、好
適には前記直径の2倍よりも小さく、さらに好適には前記直径よりも小さいことを特徴と
する、特に項目(1)〜(54)のいずれかに記載の粒子光学装置と組み合わされる粒子
光学装置。
【0290】
(56)荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、
複数の開孔が第1のパターン状に形成され、その下流側で前記荷電粒子ビームから複数
の荷電粒子小ビームが形成される少なくとも1つの多孔プレートと、
前記複数の開孔に所定の第1の電圧を供給する第1の電圧源と、
前記多孔プレートの上流側又は下流側に離間して配置され、前記荷電粒子ビーム又は前
記複数の荷電粒子小ビームを通過させる、単一の開孔を有する第1の単孔プレートと、
前記第1の単孔プレートに所定の第2の電圧を供給する第2の電圧源とを備えた粒子光
学装置であって、
前記多孔プレートと前記第1の単孔プレートとの間の距離が、75mmよりも小さく、
好適には50mmよりも小さく、さらに好適には25mmよりも小さく、さらに好適には
10mmよりも小さく、さらに好適には5mmよりも小さいことを特徴とする、特に項目
(1)〜(55)のいずれかに記載の粒子光学装置と組み合わされる粒子光学装置。
【0291】
(57)少なくとも1つの荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と

複数の開孔が第1のパターン状に形成され、その下流側で前記少なくとも1つの荷電粒
子ビームから複数の荷電粒子小ビームが形成される少なくとも1つの多孔プレートと、
前記複数の開孔に所定の第1の電圧を供給する第1の電圧源と、
前記多孔プレートの上流側又は下流側に離間して配置され、前記荷電粒子ビーム又は前
記複数の荷電粒子小ビームを通過させる、単一の開孔を有する第1の単孔プレートと、
前記第1の単孔プレートに所定の第2の電圧を供給する第2の電圧源とを備えた粒子光
学装置であって、
前記多孔プレートと前記第1の単孔プレートとの間の距離が、前記多孔プレートの前記
開孔の平均焦点距離の半分よりも小さくなるように選択されることを特徴とする、特に項
目(1)〜(56)のいずれかに記載の粒子光学装置と組み合わされる粒子光学装置。
【0292】
(58)荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、
複数の開孔が第1のパターン状に形成され、その下流側で前記荷電粒子ビームから複数
の荷電粒子小ビームが形成される少なくとも1つの多孔プレートと、
前記複数の開孔に所定の第1の電圧を供給する第1の電圧源と、
前記多孔プレートの上流側又は下流側に離間して配置され、前記荷電粒子ビーム又は前
記複数の荷電粒子小ビームを通過させる、単一の開孔を有する第1の単孔プレートと、
前記第1の単孔プレートに所定の第2の電圧を供給する第2の電圧源とを備えた粒子光
学装置であって、
前記多孔プレートと前記第1の単孔プレートとの間の距離は、前記多孔プレートの中心
の表面における平均電界が100V/mm、又は200V/mm、又は300V/mm、
又は500V/mm、又は1kV/mmよりも高くなるように選択されることを特徴とす
る、特に項目(1)〜(57)のいずれかに記載の粒子光学装置と組み合わされる粒子光
学装置。
【0293】
(59)前記多孔プレートと前記第1の単孔プレートとの間に、それらにほぼ平行に配
置された第2の単孔プレートと、
前記第2の単孔プレートに所定の第3の電圧を供給する第3の電圧源とをさらに備えた
粒子光学装置であって、
前記第3の電圧は、前記第1の電圧の平均値以下であるか、又は、前記第2の電圧と前
記第1の電圧の平均値との間の値である、項目(48)〜(58)のいずれかに記載の粒
子光学装置。
【0294】
(60)荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、
複数の開孔が第1のパターン状に形成され、その下流側で前記荷電粒子ビームから複数
の荷電粒子小ビームが形成される少なくとも1つの多孔プレートと、
前記複数の開孔に所定の第1の電圧を供給する第1の電圧源と、
前記多孔プレートの上流側又は下流側に離間して配置され、前記荷電粒子ビーム又は前
記複数の荷電粒子小ビームを通過させる、単一の開孔を有する第1の単孔プレートと、
前記第1の単孔プレートに所定の第2の電圧を供給する第2の電圧源と、
前記多孔プレートと前記第1の単孔プレートとの間に配置された第2の単孔プレートと

前記第2の単孔プレートに、前記所定の第2の電圧とは異なる所定の第3の電圧を供給
する第3の電圧源とを備えた粒子光学装置であって、
前記多孔プレートと前記第1及び第2の単孔プレートの配置、及び前記第1、第2及び
第3の電圧の設定は、前記多孔プレートの表面に電界が発生し、前記第3の電圧が前記第
1の単孔プレートに供給されるような前記第1の単孔プレートに供給される電圧の変化に
よって、前記電界の強さに1%、5%、又は10%よりも大きい変化が起こるように決め
られていることを特徴とする、特に項目(1)〜(59)のいずれかに記載の粒子光学装
置と組み合わされる粒子光学装置。
【0295】
(61)前記多孔プレートから離間して平行に配置された第3の単孔プレートと、
前記第3の単孔プレートに所定の第4の電圧を供給する第4の電圧源とをさらに備え、
前記多孔プレートは、前記第1の単孔プレートと前記第3の単孔プレートとの間に位置
し、前記第3の単孔プレートは前記荷電粒子ビーム又は前記複数の荷電粒子小ビームを通
過させる単一の開孔を有し、
前記多孔プレートと前記第3の単孔プレートとの間の距離は、前記第3の単孔プレート
の前記単一の開孔の直径の5倍よりも小さく、好適には前記直径の4倍よりも小さく、好
適には前記直径の2倍よりも小さく、さらに好適には前記第3の単孔プレートの前記単一
の開孔の直径よりも小さい、項目(55)〜(60)のいずれかに記載の粒子光学装置。
【0296】
(62)少なくとも1つの荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と

第1のアレイパターン状に配置された複数の開孔を有し、その下流側で前記少なくとも
1つの荷電粒子ビームから複数の荷電粒子小ビームが形成される少なくとも1つの多孔プ
レートと、
前記荷電粒子源と前記多孔プレートとの間の第1の領域に集束電界(focusing field)
を与える第1の集束レンズと、
前記第1の集束レンズを通過する荷電粒子の運動エネルギーが前記多孔プレートを通過
する荷電粒子の運動エネルギーよりも高くなるように、前記第1の集束レンズと前記多孔
プレートとの間の第2の領域に減速電界(decelerating field)を与える減速電極とを備
えたことを特徴とする、特に項目(1)〜(61)のいずれかに記載の粒子光学装置と組
み合わされる粒子光学装置。
【0297】
(63)荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、
第1のパターン状に配置された複数の開孔を有し、その下流側で前記荷電粒子ビームか
ら複数の荷電粒子小ビームが形成される少なくとも1つの多孔プレートとを備えた粒子光
学装置であって、
前記多孔プレートの上流側直近での前記荷電粒子ビームの運動エネルギーが5keVよ
りも高い、特に10keVよりも高い、特に20keVよりも高い、又は特に30keV
よりも高いことを特徴とする、特に項目(1)〜(62)のいずれかに記載の粒子光学装
置と組み合わされる粒子光学装置。
【0298】
(64)少なくとも1つの荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と

複数の開孔を有し、その下流側で前記荷電粒子ビームから複数の荷電粒子小ビームが形
成される少なくとも1つの多孔プレートと、
前記少なくとも1つの荷電粒子ビームの方向の前記多孔プレートに隣接した第1の領域
に集束電界を与える第1の集束レンズと、
前記多孔プレートの上流側及び/又は下流側の第2の領域に、前記ビームの荷電粒子の
運動エネルギーを変更する電界を与えるエネルギー変更電極とを備え、
前記集束電界が与えられる前記第1の領域と、前記エネルギー変更電界が与えられる第
2の領域とは、重なり合っている領域であることを特徴とする、特に項目(1)〜(63
)のいずれかに記載の粒子光学装置と組み合わされる粒子光学装置。
【0299】
(65)前記重なり合っている領域は、前記多孔プレートのほぼ上流側に位置している
、項目(64)に記載の粒子光学装置。
【0300】
(66)前記重なり合っている領域は、前記多孔プレートのほぼ下流側に位置している
、項目(64)に記載の粒子光学装置。
【0301】
(67)前記エネルギー変更電界は、前記ビームの荷電粒子の運動エネルギーを減少さ
せる減速電界である、項目(64)〜(66)のいずれかに記載の粒子光学装置。
【0302】
(68)前記エネルギー変更電界は、前記ビームの荷電粒子の運動エネルギーを増加さ
せる加速電界である、項目(64)〜(66)のいずれかに記載の粒子光学装置。
【0303】
(69)前記エネルギー変更電界と前記集束電界との重なりは1%、特に5%、又は1
0%よりも大きい、項目(64)〜(66)のいずれかに記載の粒子光学装置。
【0304】
(70) 少なくとも1つの荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源
と、
第1のパターン状に配置された複数の開孔を有し、その下流側で前記荷電粒子ビームか
ら複数の荷電粒子小ビームが形成される少なくとも1つの多孔プレートと、
前記荷電粒子源と前記多孔プレートとの間の領域に集束電界を与える第1の集束レンズ
とを備えた粒子光学装置であって、
前記荷電粒子ビームが、前記多孔プレートの上流側直近の領域で発散ビーム又は集束ビ
ームであることを特徴とする、特に項目(1)〜(69)のいずれかに記載の粒子光学装
置と組み合わされる粒子光学装置。
【0305】
(71)少なくとも1つの荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と

第1のパターン状に配置された複数の開孔を有し、その下流側で前記荷電粒子ビームか
ら複数の荷電粒子小ビームが形成される少なくとも1つの多孔プレートと、
前記荷電粒子源と前記多孔プレートとの間の領域に集束電界部分を有する磁界を与える
第1の集束レンズとを備えた粒子光学装置であって、
前記第1の集束レンズによって与えられる前記磁界内に、前記少なくとも1つの荷電粒
子源が配置されていることを特徴とする、特に項目(1)〜(70)のいずれかに記載の
粒子光学装置と組み合わされる粒子光学装置。
【0306】
(72)前記少なくとも1つの荷電粒子源が配置される前記磁界は、ほぼ均一な磁界で
ある、項目(71)に記載の粒子光学装置。
【0307】
(73)荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、
第1のパターン状に配置された複数の開孔を有し、その下流側で前記荷電粒子ビームか
ら複数の荷電粒子小ビームが形成され、その下流側の集束領域に前記荷電粒子小ビームの
それぞれが焦点を有する少なくとも1つの多孔プレートと、
前記集束領域に集束電界を与える第2の集束レンズとを備えたことを特徴とする、特に
項目(1)〜(72)のいずれかに記載の粒子光学装置と組み合わされる粒子光学装置。
【0308】
(74)荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、
第1のパターン状に配置された複数の開孔を有し、その下流側で前記荷電粒子ビームか
ら複数の荷電粒子小ビームが形成され、その下流側の集束領域に前記荷電粒子小ビームの
それぞれが焦点を有する少なくとも1つの多孔プレートと、
その物体平面に位置決め可能な物体上に前記集束領域をおおむね結像させるための対物
レンズとを備えたことを特徴とする、特に項目(1)〜(73)のいずれかに記載の粒子
光学装置と組み合わされる粒子光学装置。
【0309】
(75)2つの多孔プレートが絶縁スペーサの両側に設けられ、前記2つの多孔プレー
トの開孔と前記絶縁スペーサの開孔とで複数の貫通孔を形成する、項目(1)〜(74)
のいずれかに記載の粒子光学装置。
【0310】
(76)中央の多孔プレートが2つの絶縁スペーサに挟まれ、2つの外側の多孔プレー
トにはそれぞれ絶縁スペーサが設けられ、前記中央及び外側の多孔プレートの開孔と前記
絶縁スペーサの開孔とで複数の貫通孔を形成する、項目(1)〜(74)のいずれかに記
載の粒子光学装置。
【0311】
(77)前記多孔プレートの前記開孔はほぼ四角形のパターン状に配置されている、項
目(1)〜(76)のいずれかに記載の粒子光学装置。
【0312】
(78)前記多孔プレートの前記開孔はほぼ六角形のパターン状に配置されている、項
目(1)〜(76)のいずれかに記載の粒子光学装置。
【0313】
(79)一次電子源から装置の物体平面に位置決め可能な物体へ向かう方向に向けられ
た一次電子ビームの一次電子ビーム経路と、前記物体から発する二次電子の二次電子ビー
ム経路とを与える電子顕微鏡装置であって、
前記電子顕微鏡装置は、
前記一次電子ビーム経路と前記二次電子ビーム経路とが互いに分離されるように、前記
一次電子ビーム経路と前記二次電子ビーム経路とが通過する第1の磁界領域と、
前記第1の磁界領域の上流側の、前記一次電子ビーム経路に配置され、前記二次電子ビ
ーム経路が通過せず、前記第1の磁界領域とほぼ反対の方向に前記一次電子ビームを偏向
する第2の磁界領域と、
前記第1の磁界領域の下流側の、前記二次電子ビーム経路に配置され、前記一次電子ビ
ーム経路が通過せず、前記第1の磁界領域とほぼ同じ方向に前記二次電子ビーム経路を偏
向する第3の磁界領域とを有するマグネット装置を備えていることを特徴とする、特に項
目(1)〜(78)のいずれかに記載の粒子光学装置と組み合わされる電子顕微鏡装置。
【0314】
(80)前記第1及び第2の磁界領域以外には、前記一次電子ビーム経路に前記一次電
子ビームを5(よりも、とりわけ10°よりも大きい角度で偏向する磁界領域が設けられ
ていない、項目(79)に記載の電子顕微鏡装置。
【0315】
(81)前記第2の磁界領域の前記一次電子ビーム経路に対する偏向角は、前記第1の
磁界領域の前記一次電子ビーム経路に対する偏向角よりも大きい、項目(79)又は(8
0)に記載の電子顕微鏡装置。
【0316】
(82)前記第1の磁界領域の前記二次電子ビーム経路に対する偏向角は、前記第2の
磁界領域の前記一次電子ビーム経路に対する偏向角よりも小さい、項目(79)〜(81
)のいずれかに記載の電子顕微鏡装置。
【0317】
(83)磁界の影響をおおむね受けない第1のドリフト領域が、前記第2の磁界領域と
前記第1の磁界領域との間の前記一次電子ビーム経路に設けられた、項目(79)〜(8
2)のいずれかに記載の電子顕微鏡装置。
【0318】
(84)磁界の影響をおおむね受けない第2のドリフト領域が、前記第1の磁界領域と
前記第3の磁界領域との間の前記二次電子ビーム経路に設けられた、項目(79)〜(8
3)のいずれかに記載の電子顕微鏡装置。
【0319】
(85)前記第1の磁界領域と前記物体平面との間に設けられた対物レンズをさらに備
え、前記一次及び二次電子ビーム経路が前記対物レンズを通過する、項目(79)〜(8
4)のいずれかに記載の電子顕微鏡装置。
【0320】
(86)前記第1の磁界領域と前記物体平面との間に設けられた少なくとも1つの電極
をさらに備え、前記物体に衝突する前に前記一次電子を減速するために前記一次電子ビー
ム経路が前記少なくとも1つの電極を横断し、前記物体から発した後の前記二次電子を加
速するために前記二次電子ビーム経路が前記少なくとも1つの電極を通過する、項目(7
9)〜(85)のいずれかに記載の電子顕微鏡装置。
【0321】
(87)前記少なくとも1つの電極に調整可能な電圧を供給するための駆動装置をさら
に備えた、項目(86)に記載の電子顕微鏡装置。
【0322】
(88)前記少なくとも1つの電極に供給される電圧に応じて、前記第1の磁界領域の
磁界の強さに対して第3の磁界領域の磁界の強さを変更するためのコントローラをさらに
備えた、項目(87)に記載の電子顕微鏡装置。
【0323】
(89)前記マグネット装置は、前記第3の磁界領域の下流側の、前記二次電子ビーム
経路中に第4の磁界領域をさらに備え、前記第4の磁界領域の磁界の強さは、前記第3の
磁界領域の磁界の強さに対して調整可能である、項目(88)に記載の電子顕微鏡装置。
【0324】
(90)前記少なくとも1つの電極に供給される電圧に応じて、前記第3の磁界領域の
磁界の強さに対して第4の磁界領域の磁界の強さを変更するためのコントローラをさらに
備えた、項目(89)に記載の電子顕微鏡装置。
【0325】
(91)前記第3及び第4の磁界領域は、前記二次電子ビーム経路中でおおむね相互に
直接隣接して配置されている、項目(89)又は(90)に記載の電子顕微鏡装置。
【0326】
(92)前記第3の磁界領域の下流側の、前記二次電子ビーム経路中に配置された少な
くとも1つの四重極レンズをさらに備えた、項目(87)〜(91)のいずれかに記載の
電子顕微鏡装置。
【0327】
(93)前記少なくとも1つの電極に供給される電圧に応じて、前記四重極レンズの電
界の強さ(field strength)を変更するためのコントローラをさらに備えた、項目(92
)に記載の電子顕微鏡装置。
【0328】
(94)前記第4の磁界領域と前記四重極レンズとの間の前記二次電子ビーム経路中に
配置された第5の磁界領域をさらに備えた、項目(89)〜(93)のいずれかに記載の
電子顕微鏡装置。
【0329】
(95)前記少なくとも1つの電極に供給される電圧に応じて、前記第3の磁界領域の
磁界の強さに対して前記第5の磁界領域の磁界の強さを変更するためのコントローラをさ
らに備えた、項目(94)に記載の電子顕微鏡装置。
【0330】
(96)前記第4及び第5の磁界領域は、前記二次電子ビーム経路中でおおむね相互に
直接隣接して配置されている、項目(94)又は(95)に記載の電子顕微鏡装置。
【0331】
(97)前記第1、第3、第4及び第5の磁界領域を含む領域に、前記二次電子によっ
て前記物体平面の中間像が形成される、項目(79)〜(96)のいずれかに記載の電子
顕微鏡装置。
【0332】
(98)前記第3の磁界領域の下流側の、前記二次電子ビーム経路中に配置された検出
器をさらに備えた、項目(79)〜(97)のいずれかに記載の電子顕微鏡装置。
【0333】
(99)前記検出器の上流側の、前記二次電子ビーム経路中に配置された転写レンズ(
transfer lens)装置をさらに備えた、項目(79)〜(98)のいずれかに記載の電子
顕微鏡装置。
【0334】
(100)前記第1及び/又は第2及び/又は第3及び/又は第4及び/又は第5の磁
界領域にそれぞれ、ほぼ均一な磁界が与えられている、項目(79)〜(99)のいずれ
かに記載の電子顕微鏡装置。
【0335】
(101)一列に配置された複数の電界源部材を有する櫛型レンズ装置と、前記櫛型レ
ンズ装置によってもたらされる電子光学特性が前記列に沿って変移可能であるように前記
電界源部材を励起するコントローラとをさらに備えた、項目(1)〜(100)のいずれ
かに記載の電子光学装置。
【0336】
(102)前記装置の物体平面に位置決め可能な物体を検査するための電子顕微鏡シス
テムであって、
前記電子顕微鏡システムは、
前記物体上に集束される複数の一次電子小ビームを発生させる、項目(1)〜(101
)のいずれかに記載の粒子光学装置と、
前記物体から発する二次電子を検出するための検出器とを備えていることを特徴とする
、電子顕微鏡システム。
【0337】
(103)複数の二次電子小ビームが、前記物体から発する前記二次電子から形成され
る、項目(102)に記載の電子顕微鏡システム。
【0338】
(104)前記検出器によって検出される二次電子小ビームの数は、前記物体上に集束
される一次電子小ビームの数よりも少ない、項目(103)に記載の電子顕微鏡システム

【0339】
(105)電子感受性基板(electron sensitive substrate)に電子を当てる電子リソ
グラフィシステムであって、
前記基板上に集束される複数の書き込み電子小ビームを発生させる、項目(1)〜(1
01)のいずれかに記載の粒子光学装置を備えていることを特徴とする、電子リソグラフ
ィシステム。
【0340】
(106)前記物体から発する二次電子を検出するための検出器をさらに備えた、項目
(105)に記載の電子リソグラフィシステム。
【0341】
従って、最も実施可能及び好適であると考えられる実施の形態によって本発明を示し、
記載したが、本発明の範囲内で発展させることができ、それらは、開示された詳細に限定
されるべきものではなく、同等の方法や装置を全て包含するような特許請求の範囲の全範
囲に適合させて解釈すべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0342】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る電子顕微鏡システムの基本的な特徴と機能を概略的に示している。
【図2a】図2aは、図1の電子顕微鏡システムに使用される単一の多孔プレートを備えた多孔装置の断面を概略的に示している。
【図2b】図2bは、図1の電子顕微鏡システムに使用される4つの多孔プレートを備えた多孔装置の断面を概略的に示している。
【図2c】図2cは、図1の電子顕微鏡システムに使用される3つの多孔プレートを備えた多孔装置の断面を概略的に示している。
【図2d】図2dは、図1の電子顕微鏡システムに使用される、図2cに示される多孔装置の変形例を示している。
【図3】図3は、多孔装置を照射し、多孔装置によって生成された電子の小ビームを操作するための電子光学部品を示す概略図である。
【図4】図4は、図1の電子顕微鏡システムに使用される一次電子小ビーム発生装置の一例を示している。
【図5】図5は、図4に示されるような装置によって与えられるビーム経路の複数の物理的特性を示している。
【図6】図6は、図1の電子顕微鏡システムに使用される一次電子小ビーム発生装置の一例を示している。
【図7】図7は、多孔プレートに形成される開孔のアレイパターンを示している。
【図8】図8は、図7に示されるような開孔のパターン配列によって引き起こされる多重極効果を補償するための付加的な形状的特徴を有する開孔の形状の詳細図である。
【図9】図9は、多孔プレートに設けられた、開孔及び電界補正開孔の配列を示している。
【図10】図10は、図9に示されるようなプレートの、図9に示される線X−Xに沿った断面である。
【図11】図11は、開孔の六角形のアレイパターンを示している。
【図12】図12は、一次電子ビームスポットのゆがんだパターンを示している。
【図13】図13は、図12に示されるようなゆがみを補償するための開孔配列を示している。
【図14】図14は、非点収差によってゆがめられた一次電子ビームスポットパターンを示している。
【図15】図15は、図14に示されるような非点収差によるゆがみを補償するための開孔パターンの平面図である。
【図16】図16は、物体に焦点面を結像する際に使用される電子光学部品によって引き起こされる像面湾曲の効果を示している。
【図17】図17は、図16に示されるような像面湾曲を補償するために適した多孔装置を示している。
【図18】図18は、像面湾曲を補償するための多孔パターンの立面図である。
【図19】図19は、像面湾曲を補償するための、さらに別の多孔装置を示している。
【図20a】図20aは、像面湾曲を補償するための、さらに別の多孔装置を示している。
【図20b】図20bは、図20aの多孔装置において、多孔プレートの上流側の電界がほぼゼロである場合を示している。
【図20c】図20cは、像面湾曲を補償するための、さらに別の多孔装置を示している。
【図20d】図20dは、図20cの多孔装置において、多孔プレートの下流側にほとんど消えそうな電界が生成される場合を示している。
【図20e】図20eは、像面湾曲を補償するための、さらに別の多孔装置を示している。
【図21】図21は、一次電子ビーム経路の概略図である。
【図22】図22は、図1に示されるような電子顕微鏡システムに対物装置と共に使用されるビームスプリッタ/コンバイナ装置を概略的に示している。
【図23】図23は、本発明の一実施の形態に係る電子リソグラフィシステムを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子光学装置であって、
荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、
複数の開孔を有し、その下流側で前記荷電粒子ビームから複数の荷電粒子小ビームが形成され、その集束領域に前記荷電粒子小ビームのそれぞれが焦点を有する少なくとも1つの多孔プレートと、
前記荷電粒子小ビームの焦点が形成される前記多孔プレートの前記集束領域で視野レンズの効果を有する焦点レンズ装置と、
前記粒子光学装置の物体面内に位置決め可能な物体上に前記多孔プレートの前記集束領域をおおむね結像させるための対物レンズとを備えたことを特徴とする、粒子光学装置。
【請求項2】
前記多孔プレートに形成された前記複数の開孔がパターン状に配置され、前記複数の開孔のパターンは、前記粒子光学装置の光学的なゆがみによる前記荷電粒子小ビームのアレイの質の低下を低減するように配置されている、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項3】
前記多孔プレートに形成された前記複数の開孔がパターン状に配置され、前記多孔プレートの前記開孔の直径が前記複数の開孔のパターンの中心から離れるにつれて変化する、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項4】
前記複数の開孔の少なくとも1つの群の開孔の形状が楕円形状である、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項5】
前記多孔プレートは、ほぼ単一の面に配置された複数の導電層部分を備え、前記複数の導電層部分のそれぞれに複数の開孔が形成され、隣接した前記導電層部分間に抵抗性ギャップが形成されている、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項6】
前記多孔プレートは、貫通して形成された前記複数の開孔を有する絶縁基板によって形成され、前記絶縁基板に形成された前記開孔の少なくとも内部が導電層で覆われている、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項7】
前記多孔プレートは、導電性を有する材料によって形成され、前記多孔プレートの両主平面間の電気抵抗が、250Ω〜8MΩ、250Ω〜4MΩ、4MΩ〜8MΩ、250Ω〜800Ω、800Ω〜1.5MΩ、1.5MΩ〜3MΩ、3MΩ〜5MΩ、及び5MΩ〜8MΩの範囲のうちの少なくとも1つの範囲内にある、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項8】
前記多孔プレートに形成された前記複数の開孔がパターン状に配置され、前記多孔プレートは、前記パターンの各開孔に対応した少なくとも1つの電界補正開孔を備え、前記物体に入射する前記荷電粒子小ビームは前記電界補正開孔を横断しない、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項9】
前記開孔の少なくとも1つは、前記少なくとも1つの開孔の周囲のアレイパターンの対称性に対応した少なくとも1つの対称要素を有する非円形である、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項10】
前記荷電粒子源と前記多孔プレートとの間の第1の領域に集束磁界を与える第1の集束レンズと、
前記第1の集束レンズを通過する前記荷電粒子ビームの運動エネルギーが前記多孔プレートを通過する前記荷電粒子ビームの運動エネルギーよりも高くなるように、前記第1の集束レンズと前記多孔プレートとの間の第2の領域に減速電界を与える減速電極とをさらに備えた、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項11】
前記多孔プレートの上流側直近での前記荷電粒子ビームの運動エネルギーが10keVよりも高い、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの荷電粒子ビームの方向の前記多孔プレートに隣接した第2の領域に集束磁界を与える第2の集束レンズと、
前記少なくとも1つの荷電粒子ビームの方向の前記多孔プレートに隣接した第3の領域に、前記荷電粒子ビームの運動エネルギーを変更するエネルギー変更電界を与えるエネルギー変更電極とをさらに備え、
前記集束磁界が与えられる前記第2の領域と、前記エネルギー変更電界が与えられる前記第3の領域とは、重なり合っている領域である、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項13】
検査対象となる物体を載せるための載置台と、
少なくとも1つの電子ビームを発生させる少なくとも1つの電子源と、
複数の開孔を有し、その下流側で前記少なくとも1つの電子ビームから電子小ビームのアレイが形成され、その集束領域に前記電子小ビームのそれぞれが焦点を有する少なくとも1つの多孔プレートと、
前記電子小ビームの焦点が形成される前記多孔プレートの前記集束領域で視野レンズの効果を有する焦点レンズ装置と、
前記物体上に前記多孔プレートの前記集束領域をおおむね結像させるための対物レンズと、
前記電子小ビームのアレイによって生成された前記物体からの二次電子を検出し、前記電子小ビームのアレイ中のほぼ単一の電子小ビームによって生成された前記二次電子に対応する信号のアレイを生成する検出器装置とを備えたことを特徴とする、マルチ電子小ビーム検査システム。
【請求項14】
前記物体に集束された前記電子小ビームの数、及び前記生成された信号の数の少なくとも1つは、前記多孔プレートのパターン状に形成された前記開孔の数よりも少ない、請求項13に記載のマルチ電子小ビーム検査システム。
【請求項15】
レジスト被覆物体を載せるための載置台と、
少なくとも1つの荷電粒子ビームを発生させる少なくとも1つの荷電粒子源と、
複数の開孔を有し、その下流側で前記少なくとも1つの荷電粒子ビームから荷電粒子小ビームのアレイが形成され、その集束領域に前記荷電粒子小ビームのそれぞれが焦点を有する少なくとも1つの多孔プレートと、
前記荷電粒子小ビームの焦点が形成される前記多孔プレートの前記集束領域で視野レンズの効果を有する焦点レンズ装置と、
前記レジスト被覆物体上に前記集束領域を結像させて、荷電粒子ビームスポットのアレイを形成するための対物レンズとを備えたことを特徴とする、レジスト被覆物体上にパターンを書き込むための荷電粒子マルチ小ビームリソグラフィシステム。
【請求項16】
前記荷電粒子ビームスポットの数が、前記多孔プレートのパターン状に形成された前記開孔の数よりも少ない、請求項15に記載の荷電粒子マルチ小ビームリソグラフィシステム。
【請求項17】
少なくとも1つの電子ビームを発生させる工程と、
前記少なくとも1つの電子ビームから電子小ビームのアレイを生成する工程と、
各電子小ビームを集束し、電子小ビームの焦点のアレイを集束領域に形成する工程と、
前記集束領域に配置された焦点レンズ装置を用いて、前記電子小ビームの焦点のアレイを基板上に結像する工程とを含むことを特徴とする、基板のマルチ電子小ビーム検査の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの電子ビームを発生させる工程と、
前記少なくとも1つの電子ビームから電子小ビームのアレイを生成する工程と、
各電子小ビームを集束し、電子小ビームの焦点のアレイを集束領域に形成する工程と、
前記集束領域に配置された焦点レンズ装置を用いて、前記電子小ビームの焦点のアレイをレジスト被覆物体上に結像する工程とを含むことを特徴とする、レジスト被覆物体にパターンを書き込む方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20a】
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【図20b】
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【図20c】
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【図20d】
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【図20e】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−80720(P2013−80720A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−285348(P2012−285348)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2008−99010(P2008−99010)の分割
【原出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【出願人】(506075218)
【Fターム(参考)】