説明

粒子分散液の製造方法およびシリコーン系組成物

【課題】貯蔵安定性に優れたシリコーン系重合体粒子を含有するシリコーン系組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】シリコーン系重合体粒子を含有する水系ラテックスに、有機溶媒を加えることでシリコーン系重合体粒子を凝集させて洗浄した後、シリコーン系重合体粒子に親和性を示す有機溶媒に再分散させ、該粒子分散溶液にエポキシ化合物を添加することで、得られるシリコーン系重合体粒子を含有するシリコーン系組成物が、その粘度に大きな系時変化が起こらないなどの、貯蔵安定性に優れることを特徴とするシリコーン系重合体粒子分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン系粒子分散液の製造方法および貯蔵安定性に優れたシリコーン系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白色LEDの開発が進展し、その中でも青色から紫外光までを発光する半導体素子に蛍光体を組み合わせたものが主流と成りつつある。こうした白色LEDの封止材料としては従来からエポキシ系樹脂が使用されてきた。しかし、LEDの高輝度化による発熱量の増加や、また半導体素子から発せられる光の短波長化が進行したことにより、エポキシ系樹脂では発光ダイオードチップの周囲から次第に黄変して着色現象が生じ、発光装置の寿命が限定されるなど、その対応は難しくなっている。
【0003】
そこで、LEDの封止樹脂としては耐熱、耐UV性に優れ、さらに透明性にも優れた材料として、シリコーン系化合物が使われるようになってきた。
【0004】
このようなシリコーン系化合物のうち、シリコーンレジンは、硬度は高いものの、機械的強度が十分ではなく、また熱硬化時に割れや歪みが発生する等の問題があった。これを改善したものとして、高硬度で機械的強度が高く、なおかつ透明性に優れたシリコーン系組成物である、シリコーン系重合体粒子を含有するシリコーン系組成物が知られている(特許文献1)。しかし、シリコーン系重合体粒子を含有するシリコーン系組成物の粘度が増加する場合があった。
【特許文献1】特開2007−131758
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、貯蔵安定性に優れたシリコーン系重合体粒子分散液の製造方法と、該分散液を含有するシリコーン系組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成によるものである。
【0007】
1). シリコーン系重合体粒子(A)を含有する水系ラテックスを、有機溶媒(B)を加えることで凝集させて洗浄した後、前記(A)に親和性を示す有機溶媒(B’)に再分散させ、該分散液にエポキシ化合物(C)を添加することを特徴とする粒子分散液の製造方法。
【0008】
2). (C)成分がアルコキシシリル基を有するエポキシシランであることを特徴とする1)に記載の粒子分散液の製造方法。
【0009】
3). (B)成分が20℃における水に対する溶解度が5〜40重量%である有機溶媒(B−1)を含有することを特徴とする1)または2)のいずれかに記載の粒子分散液の製造方法。
【0010】
4). (B−1)成分がエステル類、ケトン類、エーテル類であることを特徴とする3)に記載の粒子分散液の製造方法。
【0011】
5). (B−1)成分が酢酸エチルまたはメチルエチルケトンであることを特徴とする3)または4)のいずれかに記載の粒子分散液の製造方法。
【0012】
6). (B)成分が20℃における水に対する溶解度が5〜40重量%である有機溶媒(B−1)と脂肪族アルコール(B−2)を含有することを特徴とする1)〜5)のいずれかに記載の粒子分散液の製造方法。
【0013】
7). (B−2)成分がメタノールであることを特徴とする6)に記載の粒子分散液の製造方法。
【0014】
8). (B)成分の混合比率((B−1)/(B−2))が重量比で95/5〜40/60であることを特徴とする6)または7)のいずれかに記載の粒子分散液の製造方法。
【0015】
9). (A)成分がコアシェル構造を有するシリコーン系重合体粒子であることを特徴とする1)〜8)のいずれか一に記載の粒子分散液の製造方法。
【0016】
10). (A)成分がシリコーン粒子(A−1)をコアとし、アルコキシシラン縮合物(A−2)をシェルとするシリコーン系重合体粒子であることを特徴とする1)〜9)のいずれか一に記載の粒子分散液の製造方法。
【0017】
11). (A−1)成分が、一般式(1)
amSiO(4-m)/2(1)
(式中、Raは置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。mは0〜3の整数を示す。)で表される構造単位からなり、上記一般式(1)でm=2の構造単位が(A−1)成分全体の70モル%以上を占めているオルガノシロキサンであることを特徴とする、請求項10に記載の粒子分散液の製造方法。
【0018】
12). (A)成分が、(A−1)成分であるシリコーン粒子40〜97重量%、および、(A−2)成分であるアルコキシシラン縮合物3〜60重量%(ただし、(A−1)成分と(A−2)成分を合わせて100重量%)を主成分として構成されることを特徴とする10)または11)のいずれかに記載の粒子分散液の製造方法。
【0019】
13). (A−2)成分であるアルコキシシラン縮合物が、下記(a)成分、下記(b)成分、下記(c)成分から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする、10)〜12)のいずれか一に記載の粒子分散液の製造方法。
(a)成分:一般式(2)
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(b)成分:一般式(3)
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(4)
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、R42、R43、R44、R45、は同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【0026】
14). 1)〜13)のいずれか一項に記載された製造方法によって得られた粒子分散液に、(D)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび/または(E)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサンを加え、揮発成分を留去することにより得られることを特徴とするシリコーン系組成物。
【0027】
15). (D)成分が、一般式(5)
SiO4/2(5)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その構造の末端を、一般式(6)、(7)
HRb2SiO1/2(6)
b3SiO1/2(7)
(式中、Rbは水素原子、またはアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その構造の末端が一般式(6)で少なくとも2つ封鎖された重合体であることを特徴とする14)に記載のシリコーン系組成物。
【0028】
16). (E)成分が、一般式(8)
SiO4/2(8)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その構造の末端を、一般式(9)、(10)
cd2SiO1/2(9)
d3SiO1/2(10)
(式中、Rcはアルケニル基、Rdはアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その構造の末端が一般式(9)で少なくとも2つ封鎖された重合体であることを特徴とする14)または15)のいずれかに記載のシリコーン系組成物。
【0029】
17). ヒドロシリル化触媒(F)を含有することを特徴とする14)〜16)のいずれか一に記載のシリコーン系組成物。
【0030】
18). 接着性付与剤(G)を含有することを特徴とする14)〜17)のいずれか一に記載のシリコーン系組成物。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れたシリコーン系組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明は、シリコーン系重合体粒子(A)を含有する水系ラテックスを、有機溶媒(B)を加えることで凝集させて洗浄した後、前記(A)に親和性を示す有機溶媒(B’)に再分散させ、その分散液にさらにエポキシ化合物(C)を添加することを特徴とする。
【0033】
<シリコーン系重合体粒子(A)>
シリコーン系重合体粒子(A)としてはオルガノシロキサンの重合により得ることができる粒子であればよいが、後述するコアシェル粒子であることが好ましい。
【0034】
コアシェル粒子は、組成等に特に限定はないが、コア成分40〜97重量%の存在下に、シェル成分3〜60重量%を縮合反応させた粒子であることが好ましい(ただし、コア成分とシェル成分を合わせて100重量%)。さらには、コア成分60〜95重量%の存在下に、シェル成分5〜40重量%を縮合反応させることが好ましい。コア成分が少ないと、コアシェル粒子の屈折率が、マトリクスの屈折率と大きく相違して組成物の透明性が損なわれることがあり、またシェル成分が少ないとマトリクスとの親和性・相溶性が不十分になることがある。
【0035】
本発明に用いるコア成分の製造方法には、特に限定はないが、通常の乳化重合、分散重合、溶液重合などでも得ることが可能であり、粒径の制御が可能である点や、操作の簡便性等の点を考慮すると、乳化重合で得ることが好ましい。
【0036】
本発明に用いるコア成分は、通常の乳化重合でも得られるが、より粒子径の小さい粒子を得ることができ、さらにラテックス状態での粒子径分布が狭くできる利点などからもシード重合を利用することが好ましい。シード重合に用いるシードポリマーは特に限定は無いが、アクリル酸ブチルゴム、ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンやブタジエン−アクリロニトリルゴム等のゴム成分、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体やスチレン−アクリロニトリル共重合体等の重合体を用いることができる。
【0037】
シードポリマーの体積平均粒子径は0.001〜1μmの範囲であることが好ましく、更には0.002〜0.5μmの範囲であることがより好ましい。小さいものを得ることは可能であるが、安定的に得ることは難しい傾向があり、また、大きいものでは組成物としたときの透明性が損なわれる場合がある。なお、体積平均粒径の測定は、例えば、ナノトラック粒度分析計UPA150(日機装株式会社製)を用いて行うことができる。
【0038】
コア成分は、一般式(1)
amSiO(4-m)/2(1)
(式中、Raは置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。mは0〜3の整数を示す。)で表される構造単位を有するオルガノシロキサンであることが好ましい。
【0039】
またコア成分は、上記一般式(1)でm=2の構造単位が、コア成分の70モル%以上を占めていることが好ましく、さらに好ましくは80モル%以上を占めていることが好ましい。m=2の構造単位が少ないとコア成分の柔軟性が損なわれるため、硬化組成物全体の耐熱衝撃性が低下したりする場合がある。
【0040】
コア成分はオルガノシロキサンの重合により得ることができるが、そのオルガノシロキサンは、直鎖状、分岐状および環状構造のいずれであってもよいが、入手の容易さやコストの観点から、環状構造を有するオルガノシロキサンを用いるのが好ましい。
【0041】
オルガノシロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサンなどの環状化合物のほかに、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。これらオルガノシロキサンは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
このオルガノシロキサンの有する置換または非置換の一価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、およびそれらをシアノ基などで置換した置換炭化水素基などをあげることができる。
【0043】
またコア成分の分子の末端がシラノール基であることが好ましい。分子の末端にシラノール基を有していることで、後述のシェル成分との間で縮合反応により結合を形成するため、安定的なコアシェル構造を有する粒子を得ることができる。
【0044】
コア成分は、例えば、酸性もしくは塩基性条件下で行われる通常の乳化重合方法により製造することができるが、酸性条件下で反応させる方が、アルカリ性条件下で反応させるよりも、アルコキシシランの縮合反応が速く進行するため有利である。たとえば上記のオルガノシロキサンを含んだ各種原料を、乳化剤および水とともにホモミキサー、コロイドミル、ホモジナイザーなどを用いてエマルジョンとし、ついで、系のpHを酸成分で5以下、好ましくは4以下に調整し、加熱して重合させればよい。
【0045】
この際に用いる酸成分としては、安定して乳化重合を進行させることができ、またそれ自身も乳化能を併せ持つものが好ましく、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホコハク酸などが例示されうる。
【0046】
なお、原料の全部を一括添加したのち、一定時間撹拌してからpHを任意の値に調整してもよく、また原料の一部を仕込んでpHを任意の値に調整したエマルジョンに残りの原料を逐次追加してもよい。重合時のpHについては特に制限されるものではないが、重合が十分に進行することから、pH=5以下、特にpH=4以下に調整するのが好ましい。逐次追加する場合、そのままの状態、または水および乳化剤と混合して乳化液とした状態のいずれで添加してもよいが、重合速度を速くすることができるので、乳化状態で追加する方法を用いることが好ましい。
【0047】
反応温度、時間に特に制限はないが、反応制御の容易さから反応温度は0〜100℃が好ましく、50〜95℃がさらに好ましい。反応時間は、好ましくは1〜100時間であり、さらに好ましくは3〜50時間である。
【0048】
酸性条件下で重合を行う場合、通常、コア成分の骨格を形成しているSi−O−Si結合は、切断と結合生成の平衡状態にある。この平衡は温度によって変化し、低温になるほど高分子量のコア成分が生成しやすくなる。したがって、高分子量のコア成分を得るためには、加熱により重合した後、重合温度以下に冷却して熟成を行うことが好ましい。具体的には、50℃以上で重合を行い重合転化率が75〜90%、さらに好ましくは82〜89%に達した時点で加熱を止め、10〜50℃、好ましくは20〜45℃に冷却して5〜100時間程度熟成を行うことができる。なお、ここで言う重合転化率は原料中の低揮発分のオルガノシロキサンのコア成分への転化率を意味する。
【0049】
乳化重合に用いる水の量についてはとくに制限は無く、各種原料を乳化分散させるために必要な量であれば良く、通常原料の合計量に対して1〜20倍の重量を用いれば良い。
【0050】
乳化重合に用いる乳化剤は、反応を行うpH領域において乳化能を失わないものであれば特に限定なく公知のものを使用することができる。かかる乳化剤の例としては、たとえばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。この中でもアルキルベンゼンスルホン酸がシリコーン粒子を安定して得やすいので好ましい。
【0051】
また、該乳化剤の使用量にはとくに限定がなく、目的とするコア成分の粒子径などに応じて適宜調整すればよい。充分な乳化能が得られ、かつ得られるコア成分と、それから得られる、前記(A)成分であるシリコーン系重合体粒子の物性に悪影響を与えないという点から、エマルジョン中に0.005〜20重量%用いるのが好ましく、特には0.05〜15重量%用いるのが好ましい。
【0052】
コア成分の粒子径は、乳化剤の使用量の増減など、通常の乳化重合技術を用いて制御することが可能である。コア成分の体積平均粒径は、0.005μm〜3.0μmが好ましく、0.01μm〜2.0μmがさらに好ましく、0.050μm〜0.120μmが特に好ましい。体積平均粒径が小さいものを安定的に得ることは難しく、大きいと硬化組成物の透明性が悪くなる場合がある。
【0053】
本発明に用いるコア成分の合成の際に、必要によっては架橋剤、グラフト交叉剤と言われるものを添加することもできる。
【0054】
本発明のコア成分の合成に用いることができる架橋剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランなどの縮合反応に関与できる官能基を3個含むいわゆる3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン、1,3ビス〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1−〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕−3−〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1−〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕−4−〔2−ジメトキシメチルシリル〕エチル〕ベンゼンなどの縮合反応に関与できる官能基を4個含むいわゆる4官能性架橋剤、さらにはこれら架橋剤のアルコキシ基を縮合させた部分縮合物を挙げることができる。
【0055】
これら架橋剤は、必要に応じ、1種若しくは2種以上組み合わせて用いることができる。この架橋剤の添加量は、コア成分に用いるオルガノシロキサン100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。架橋剤の添加量が10重量部より多いと、コア成分の柔軟性が損なわれるため、シリコーン系組成物の低温での耐熱衝撃性が低下する場合がある。また架橋剤の添加量を調節することで、架橋度を変化させることによりコア成分の弾性を任意に調節することができる。
【0056】
本発明に用いることができるグラフト交叉剤は、例えば、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルエチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、テトラビニルテトラメチルシクロシロキサン、アリルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等があげられる。
【0057】
コア成分にさらにアルコキシシラン縮合物(A−2)をシェル成分として用いることで、後述の(D)成分や(E)成分との相溶性を確保して、コアシェル粒子をシリコーン系組成物中に均一に分散させる、あるいはシリコーン系組成物の強度向上が可能となる。
【0058】
本発明に用いるアルコキシシラン縮合物は、以下の一般式(2)で表される2官能性アルコキシシラン化合物、一般式(3)で表される3官能性アルコキシシラン化合物、一般式(4)で表される4官能性アルコキシシラン化合物、およびそれらの部分縮合物(アルコキシ基を縮合させた部分縮合物)等を用いて得ることができる。これらは単独でも2種類以上でも用いることができるが、少なくとも2種用いることが好ましい。
【0059】
【化4】

【0060】
(一般式(2)において、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)
【0061】
【化5】

【0062】
(一般式(3)において、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)
【0063】
【化6】

【0064】
(一般式(4)において、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)。
【0065】
また上記の特徴を妨げない範囲で、一般式(5)で表される1官能性アルコキシシラン化合物を用いることができる。これらは1種類でも2種類以上でも用いることができる。
【0066】
【化7】

【0067】
一般式(5)において、R12はアルキル基を示し、R13、R14、R15は同一または異なる一価の有機基を示す。
【0068】
上記一般式(2)、(3)、(4)および(5)において挙げられるアルコキシ基としては、たとえばメトキシ、エトキシ、ノルマルプロポキシ、イソプロポキシ、ノルマルブトキシ、イソブトキシ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の、炭素数1〜6のアルコキシ基である。またアルコキシ基以外の一価の有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アリル基、アラルキル基等があげられる。
【0069】
本発明に用いるアルコキシシラン化合物(A−2)の具体的な化合物としては、前記の架橋剤、グラフト交叉剤と同じもの、あるいはそのアルコキシ基を縮合させた部分縮合物が挙げられる。
【0070】
アルコキシシラン化合物を用いてシェル成分を得る重合方法は、乳化重合を用いることができる。乳化重合の条件は一般的な条件が適用できるが、特に重合温度に注意を払うことが好ましい。重合の際の温度は、20〜85℃を適用することが好ましい。また、重合時間は1〜50時間が適用できる。
【0071】
またシェル成分は、酸性もしくは塩基性条件下で行われる通常の乳化重合方法により製造することができるが、酸性条件下で反応させる方が、アルカリ条件下で反応させるよりも、アルコキシシランの縮合反応の際にゲル化を抑制しやすい等の理由により有利である。
【0072】
本発明でいうコアシェル構造とは、具体的に例えば、コアとなる粒子の存在下、コアを形成するモノマー成分とは異なる組成や成分から構成されるモノマー成分を重合させることによって得られる構造を指す。さらには、コア粒子との反応性を有するシェル成分を用い、コア粒子の外側にシェル成分を形成したような構造を有する粒子が好ましいものとして例示される。また、シェル成分をコア粒子に吸収させながら、コアシェル構造を形成したり、コア部からシェル部への傾斜構造等を形成することも可能である。
【0073】
組成等は特に限定はないが、コア成分40〜97重量%の存在下に、シェル成分3〜60重量%を縮合反応させた重合体であることが好ましい(ただし、コア成分とシェル成分を合わせて100重量%)。さらには、コア成分50〜95重量%の存在下に、シェル成分5〜50重量%を縮合反応させることが好ましい。コア成分が少ないと組成物にしたときの耐冷熱衝撃性が低下する傾向があり、またシェル成分が少ないとマトリクスとの相溶性が不十分になることがある。
【0074】
コアシェル粒子の体積平均粒径は、コア成分の粒子径にも依るが、0.005μm〜3.0μmが好ましく、0.01μm〜2.0μmがさらに好ましく、0.050μm〜0.120μmが特に好ましい。体積平均粒径が小さいものを安定的に得ることは難しく、大きいと硬化組成物の透明性が悪くなる場合がある。
【0075】
<シリコーン系重合体粒子(A)の緩凝集、洗浄、分散方法>
本発明は、シリコーン系重合体粒子(A)を含有する水系ラテックスを、有機溶媒(B)を加えることで凝集させて洗浄した後、(A)成分に親和性を示す有機溶媒(B’)に再分散させ、さらにエポキシ化合物(C)を添加することを特徴とする。
【0076】
ラテックスの凝集に用いる(B)成分は、その水に対する溶解度が5〜40重量%である有機溶媒(B−1)を含有する混合溶媒を用いることが好ましい。(B−1)成分の20℃における水に対する溶解度が40重量%を越えると、(A)成分の水性ラテックスが一部凝固を生じて円滑な混合操作に支障をきたす場合がある。また、(B−1)成分の20℃における水に対する溶解度が5重量%未満では、前記(A)の水性ラテックスとの混合性が不十分となり、円滑な混合が困難になる傾向がある。
【0077】
このような(B−1)成分としては低分子量のエステル類、ケトン類、エーテル類などが例示され、具体的に例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどが例示され、(A)成分との親和性の観点からは酢酸エチルまたはメチルエチルケトンが好ましい。
【0078】
さらには、(B)成分は、(B−1)成分と脂肪族アルコール(B−2)との混合溶媒を用いることが好ましい。(B−2)成分としては、具体的に例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどが例示され、容易に留去が可能な点からメタノールが好ましい。
【0079】
ラテックスの凝集に用いる(B)成分中の(B−1)成分と(B−2)成分との混合比率((B−1)/(B−2))は重量比で95/5〜40/60であることが好ましく、さらには90/10〜50/50であることが好ましい。これらの範囲の中でも(B−1)成分が50を越える割合が好ましい。(B)成分中の(B−1)成分の割合をこの範囲より多くすると、(B)成分の(A)成分に対する親和性が上がり、しっかりした凝集体を形成出来なくなるか、または、凝集体を形成しなくなる傾向がある。逆に、(B)成分中の(B−1)成分の割合を少なくすると、(B)成分に水系ラテックスの乳化状態を解く能力がなくなり、凝集体を形成しなくなる傾向がある。
【0080】
(A)成分の水系ラテックスに加える、(B)成分の使用量は、(A)成分の水系ラテックス中での固形分濃度によっても変化しうるが、(A)成分の水系ラテックス100重量部に対して50〜400重量部用いることが好ましく、より好ましくは70〜300重量部である。(B)成分の量が(A)成分の水系ラテックスに対して、少ないとシリコーン系重合体粒子(A)の凝集が不十分となる傾向がある。逆に多いと後の除去を考えた場合に不経済である。
【0081】
得られた凝集体の洗浄に用いる溶媒には、ラテックスの凝集を行った時と同じく、(B−1)成分と(B−2)成分の混合溶媒を用いることが好ましい。その混合比率((B−1)/(B−2))は重量比で90/10〜10/90であることが好ましく、より好ましくは80/20〜20/80特には60/40〜20/80が特に好ましい。これらの範囲の中でも(B−1)成分が50以下が好ましい。
【0082】
洗浄に用いる溶媒中の(B−1)/(B−2)の混合比率を(B−1)成分の割合を多くすると、凝集体が洗浄溶媒に溶け出してしまい、洗浄後の(A)成分の収量が少なくなる傾向がある。逆に、洗浄に用いる溶媒中の(B−1)/(B−2)の混合比率を(B−1)成分の割合を少なくすると、(A)成分製造の際に使用したアルコキシシラン由来の副生成物(単量体〜部分縮合体)の洗浄が不十分となり、最終のシリコーン系組成物の性能に悪影響を及ぼす傾向がある。
【0083】
(A)成分の洗浄後に(A)成分を再分散させる、(A)成分に親和性を示す有機溶媒(B’)の具体例としては、(A)成分を再分散可能なものであれば特に制限はないが、(B−1)成分として上に例示したものに加えて、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルム等の疎水性の有機溶媒であってもよい。
【0084】
(C)成分により本発明によって得られる粒子分散液あるいはシリコーン系組成物の粘度の増加を抑制することが可能であり、その結果、貯蔵安定性を改良することが可能である。例えば(A)成分の洗浄で洗浄しきれなかった(A)成分製造時に使用した酸が残っている場合、その酸をトラップして最終組成物の粘度の増加を抑制することが可能である。
【0085】
(A)成分の分散液に加える(C)成分としては、エポキシ基を含有する化合物であれば特に制限はないが、エポキシ樹脂、多価アルコールのグリシジルエーテル、エポキシシラン等があげられ、特にエポキシシランが、組成物にした時の接着性がさらに向上する点から好ましい。
【0086】
エポキシシランの具体例としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシメチルシランなどが挙げられる。
【0087】
(C)成分は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。(C)成分の添加量としては、(A)成分100重量部あたり、0.1〜100重量部、好ましくは1〜30重量部である。少ないと、組成物にしたときの粘度の増加を抑えることができない場合があり、多いと、最終組成物の耐水性、耐候性が低下する場合がある。
【0088】
<(D)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン>
一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(D)と、後述の一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン(E)は、ヒドロシリル化反応により硬化するので、これら成分を用いるとシリコーン樹脂マトリクスを形成するものである。このため、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、特に限定は無く、広く公知のものを使用することができる。またその構造も直鎖状、分岐鎖状、環状および三次元架橋構造を有するもののいずれであってもよい。
【0089】
直鎖状の(D)成分の例としては具体的に例えば、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体などが例示される。
【0090】
また環状の(D)成分の例としては具体的に例えば、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示される。
【0091】
また三次元架橋構造を有する(D)成分の例としては、特に限定はしないが、一般式(6)
SiO4/2(6)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その構造の末端を、一般式(7)、(8)
HRb2SiO1/2(7)
b3SiO1/2(8)
(式中、Rbは水素原子、またはアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)。
【0092】
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その構造の末端が一般式(7)で少なくとも2つ封鎖された重合体が、(E)成分との相溶性が良好で、硬度が高い硬化物を得られることから好ましいものとして例示される。
【0093】
上記一般式(7)の水素原子、またはアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換の一価の炭化水素基である。中でも、耐熱性や耐光性の観点からはメチル基が好ましい。
【0094】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、(E)成分のアルケニル基に対して(D)成分のヒドロシリル基が50〜500モル%、好ましくは100〜200モル%となる割合であることが望ましい。
【0095】
更に(D)成分は、取り扱いが容易であることから、室温において液状であることが好ましく、その室温における粘度が1,000Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0096】
<(E)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン>
本発明における一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン(E)は、一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(D)と共に硬質シリコーン樹脂マトリクスを形成するものであり、ヒドロシリル化反応により硬化する。硬化後は硬度が高く、透明性に優れたものが好ましい。
【0097】
また(E)成分の例としては、特に限定しないが、一般式(9)
SiO4/2(9)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その構造の末端を、一般式(10)、(11)
cd2SiO1/2(10)
d3SiO1/2(11)
(式中、Rcはアルケニル基、Rdはアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)。
【0098】
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その構造の末端が一般式(10)で少なくとも2つ封鎖された重合体が挙げられる。
【0099】
主構造に一般式(9)で表される4官能性の構造単位を用いると、高い架橋密度の主骨格が得られるため、硬化後の強度および硬度を高くすることができて有利である。その主構造の末端を一般式(10)で表されるアルケニル基を有する一官能性の構造単位で封鎖すると、ヒドロシリル化反応による組成物の架橋点となるアルケニル基を簡便な方法で導入する事ができて有利であり、また(10)と(11)の比率を調節することで、シリコーン系組成物中のアルケニル基の量を調節する事ができるため、任意の架橋密度が簡便な方法で得られるので優れている。
【0100】
前記アルケニル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等であり、入手性、また、耐熱性・耐光性の観点からビニル基が好ましい。
【0101】
またアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換の一価の炭化水素基である。中でも、耐熱性や耐光性の観点からメチル基が好ましい。
【0102】
この(E)成分は、一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有していれば良いが、(E)成分中のアルケニル基の含有量は0.1〜10モル/kg、特に0.5〜9モル/kgであることが好ましい。0.1モル/kg以下では硬化組成物が十分な硬度が得られず、10モル/kg以上では架橋密度が高すぎて耐熱衝撃性が低下する。
【0103】
更に上記(E)成分は、取り扱いが容易であることから、室温において液状であることが好ましく、その室温における粘度が1,000Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0104】
また本発明に用いる(E)成分の他に、硬化物の硬度を低下させない範囲で、アルケニル基を有する直鎖状、分岐鎖状、環状のポリシロキサンを添加することもできる。
【0105】
<(F)ヒドロシリル化触媒>
本発明におけるヒドロシリル化触媒(F)としては、例えば白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒を添加することができる。前記白金系触媒としては公知のものが使用でき、具体的には白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類とのコンプレックスなどが例示される。例えば白金系触媒を用いた場合の添加量は、(E)成分に対し、白金原子として0.01〜1000ppmの範囲とすることが望ましい。
【0106】
<(G)接着性付与剤>
本発明における接着性付与剤(G)は、シリコーン系組成物から得られる硬化物に接着性を付与する成分である。
【0107】
本発明における(G)成分としては、シランカップリング剤、ほう素系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を好適に使用することが可能である。
【0108】
前記、シランカップリング剤の例としては、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基と、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。前記官能基については、中でも、硬化性及び接着性の点から、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。エポキシ官能基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、エポキシ化合物(C)として上に例示したものが使用できるが、これらに限定されるわけではない。
【0109】
また、メタクリル基あるいはアクリル基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0110】
前記、ほう素系カップリング剤としては例えば、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイド等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0111】
前記、チタン系カップリング剤としては例えば、テトラ(n−ブトキシ)チタン,テトラ(i−プロポキシ)チタン,テトラ(ステアロキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)チタン,i−プロポキシ(2−エチルヘキサンジオラート)チタン,ジ−i−プロポキシ−ジエチルアセトアセテートチタン,ヒドロキシ−ビス(ラクテト)チタン、i−プロピルトリイソステアロイルチタネート,i−プロピル−トリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート,テトラ−i−プロピル)−ビス(ジオクチルホスファイト)チタネート,テトラオクチル−ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート,i−プロピルトリオクタノイルチタネート,i−プロピルジメタクリル−i−ステアロイルチタネート等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0112】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、例えばアルミニウムブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセトナート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0113】
本発明における(G)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加量は、(A)成分および(D)成分、(E)成分の総量の0.1〜100重量%であることが好ましい。また、接着性付与剤の種類あるいは添加量によっては、ヒドロシリル化反応を阻害するものがあるため、ヒドロシリル化反応に対する影響を考慮しなければならない。
【0114】
<シリコーン系組成物>
本発明の製造方法によって得られた粒子分散液に、(D)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび/または(E)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサンを加え、揮発成分を留去することにより、本発明のシリコーン系組成物を得ることが出来る。
【0115】
混合方法は、特に限定されないが、例えば粒子分散液に(D)成分、(E)成分を加えた後に揮発成分を除去する方法や、粒子分散液に(D)成分を加えた後に揮発成分を除去し(E)成分を加える方法や、粒子分散液に(E)成分を加えた後に揮発成分を除去し(D)成分を加える方法などが挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、また、任意の段階でヒドロシリル化触媒(F)や接着性付与剤(G)を加えてもよい。
【0116】
なお、本発明において、シリコーン系組成物の粘度の増加は、溶媒を留去した後の組成物を、容器を開放した状態で室温20℃/湿度55%の条件下で12時間放置した場合に、溶媒を留去した直後の粘度の10%以下の増加に抑えられることが好ましく、さらには、48時間放置した場合に、溶媒を留去した直後の粘度の15%以下の増加に抑えられることが好ましい。
【0117】
本発明のシリコーン系組成物の貯蔵安定性を改良する目的、あるいは硬化反応過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示されうる。
【0119】
有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示されうる。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示されうる。
【0120】
スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示されうる。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。
【0121】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、マレイン酸ジメチル、3、5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
【0122】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、(F)成分1モルに対して10-1〜103モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜500モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0123】
本発明のシリコーン系組成物の特性を改質する目的で、各種樹脂を添加してもよい。当該樹脂としては具体的に例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
また、本発明のシリコーン系組成物には、必要に応じて各種フィラーを添加してもよい。フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上などに効果がある。フィラーとしては、微粒子状のものが好ましく、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカなどの各種シリカ、タルク、硫酸バリウム等を挙げることができる。その他、粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンブラック、二酸化チタン、炭酸マンガン、Fe23、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどのフィラーも使用することができる。
【0125】
フィラーを添加する方法としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマー又はオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド又はハロゲン化物等を、本発明のシリコーン系組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法等も挙げることができる。
【0126】
本発明のシリコーン系組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0127】
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0128】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
【0129】
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0130】
本発明のシリコーン系組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0131】
本発明のシリコーン系組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0132】
本発明のシリコーン系組成物には、その他、難燃剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、加工安定剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等を、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0133】
本発明のシリコーン系組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られ易いという観点から、加熱して反応させる方法が好ましい。
【0134】
反応温度としては種々設定できるが、下限25℃、上限300℃の温度範囲が好ましく、下限40℃、上限280℃がより好ましく、下限50℃、上限260℃がさらに好ましい。反応温度が25℃より低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が300℃より高いと製品の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
【0135】
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。
【0136】
反応時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
【0137】
本発明のシリコーン系組成物は、成形体として使用することができる。成型方法としては、既存の液状樹脂に用いられる方法であれば特に限定されない。例えば、押出成型、圧縮成型、ブロー成型、真空成型、射出成型、液状射出成型、注型成型などがある。
【0138】
本発明のシリコーン系組成物を硬化してなる硬化物を光学用途に適用する場合には、透明性を有することが好ましい。より具体的には、透明性について、可視光域で十分に光を通すという意味では、2mm厚硬化物の400nmにおける透過率が45%以上であること好ましい。当該透過率が45%を超えないと十分な視野が確保できない。さらに、色目が変わるという意味では、50%以上あることが好ましく、60%以上あることがさらに好ましい。
【0139】
また、光や熱に対する環境試験後の変色、着色の度合いが低い場合、試験前後での透過率の変化が小さく、長期間の使用に耐えうることを示す。具体的には、後述の耐光性試験後、2mm厚みの硬化物の400nmにおける透過率が45%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0140】
硬化物の接着力は、長期間使用していくことにより、光や熱がかかり、樹脂自体が劣化して低下していく傾向にある。本発明の硬化物は、メタルハライドランプによる1平方メートルあたり50MJ照射後(耐光性試験)における硬化物(厚みが10〜40μm)の接着力が、上記照射前における硬化物の接着力(初期状態の接着力)に比べて70%以上であることが好ましく、80%以上あることがより好ましい。このような接着力を示すことは、紫外線を長時間当てても接着力が低下しないことを明示し、長期間にわたって良好な接着性を維持することを実現できるような、優れた接着性を有することが示される。
【0141】
本発明における接着力の評価は、耐久性の指標として、初期状態と一定の条件下で保存したものの接着力の差を提示する方法(米国 MIL STD−883)を参考にしておこなっている。ここでの接着力としては、具体的に、例えば、ダイシェア接着強度を用いる。
【0142】
本発明でいうシリコーン系組成物とは、光学材料として用いるのに適した物性を有するシリコーン系組成物を意味する。ここで言う光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。
【0143】
本発明のシリコーン系組成物は、様々な用途に用いることができる。用途の具体例としては、液晶ディスプレイ分野では、基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料が例示される。
【0144】
また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が例示される。
【0145】
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤が例示される。
【0146】
光学機器分野では、カメラの撮影レンズ、レンズ用材料、ファインダー、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部が例示される。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などが例示される。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどが例示される。
【0147】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などが例示される。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などが例示される。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LED素子の封止剤、接着剤などが例示される。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0148】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーが例示される。
【0149】
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料が例示される。
【0150】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品、自動車の窓ガラス中間膜が例示される。また、鉄道車輌用の複層ガラス中間膜が例示される。また、航空機用途においては、構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コート、窓ガラス中間膜が例示される。
【0151】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料が例示される。農業用では、ハウス被覆用フィルムが例示される。
【0152】
次世代の光・電子機能有機材料としては、次世代DVD、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【実施例】
【0153】
次に本発明の方法で得られる組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0154】
<試験方法>
(粘度測定)
組成物の粘度を、組成物の配合直後と、そのまま容器を開放した状態で室温20℃/湿度55%の条件下に12h放置後、および、48h放置後に、東機産業株式会社製TV−20形粘度計に1°34’×R24コーンを取り付け、23℃、0.5rpmの回転速度で計測し、粘度の変化を観た。
【0155】
(冷熱試験)
株式会社エノモト製LEDパッケージ(品名:TOP LED 1−IN−1)に組成物を注入し、下記の所定時間熱硬化させて試料を作成した。この試料を熱衝撃試験機(エスペック製 TSA−71H−W)によって、高温さらし100℃×5分間、低温さらし−40℃×5分間のサイクルを100サイクル行った後、試料を目視で観察した。試験後、変化が無ければ○、クラックが入ったり、パッケージとの間に剥離が起きた場合は×とした。
【0156】
(合成例1)
撹拌機、還流冷却機、チッ素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに純水400重量部および10重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液12重量部(固形分)を混合したのち窒素雰囲気下で50℃に昇温した。その後アクリル酸ブチル(BA)10重量部、t−ドデシルメルカプタン3重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.01重量部(固形分)を加えた。
【0157】
30分後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.18部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.019重量部、硫酸第一鉄0.019重量部を添加し、1時間攪拌した。BA90重量部、t−ドデシルメルカプタン27重量部、および、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.18重量部(固形分)の混合液を3時間かけて連続追加した。さらに1時間の後重合を行い、シードポリマー(体積平均粒径0.008μm)を含むラテックスを得た。
【0158】
次に、撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに、上述のシードポリマーを2.0重量部(固形分)、10重量%ドデシルベンゼンスルホン酸1.5重量部(固形分)および純水300重量部(シードポリマーを含むラテックスからの持ち込み分を含む)を仕込んだ後、15分間攪拌してから、窒素雰囲気下で系を80℃に昇温させた。
【0159】
これとは別に純水150重量部、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5重量部(固形分)、オクタメチルシクロテトラシロキサン97重量部、トリメトキシメチルシラン3重量部からなる混合物をホモミキサーにて、7000rpmで5分間強制乳化した後に、この混合液を5時間かけて連続追加した。さらに2時間の後重合を行い、25℃に冷却して20時間放置して重合を終了し、シリコーンコア粒子(体積平均粒径0.090μm)を含むラテックスを得た。
【0160】
撹拌機、還流冷却機、窒素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに、上述のシリコーンコア粒子90重量部(固形分)を仕込み、窒素雰囲気下で40℃に昇温させた。
【0161】
これとは別に、純水50重量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを5重量%水溶液で0.6重量部(固形分)、エチルシリケート縮合物(多摩化学工業社製、商品名エチルシリケート40、SiO2含有量:39.0〜42.0重量%)12.4重量部(SiO2で表される構造単位の完全縮合物に換算して5重量部に相当)、ジメトキシジメチルシラン10.1重量部(CH3SiO3/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して5重量部に相当)からなる混合物をホモミキサーにて7000rpmで5分間強制乳化した後に、30分間かけて滴下して加えた。この溶液を40℃に保ったまま24時間攪拌することでシリコーン系重合体粒子(体積平均粒径0.097μm)を含むラテックスを得た。
【0162】
(実施例1)
合成例1で得られたシリコーン系重合体粒子を含むラテックス(樹脂固形分濃度14重量%)100重量部に対して、酢酸エチル/メタノール=6/4(vol/vol)の混合溶媒95重量部を、撹拌しながら加え、10分間の撹拌後、得られた凝集体を濾別した。得られた凝集体に酢酸エチル/メタノール=4/6(vol/vol)の混合溶媒130重量部を加え、10分撹拌後、再び濾別する方法での凝集体の洗浄を4度繰り返した。洗浄後の凝集体に、酢酸エチル180重量部を加えて、シリコーン系重合体粒子の酢酸エチル分散液を得た。
【0163】
得られた粒子分散液の樹脂固形分35重量部に対して、三次元構造を有するヒドロシリル基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしてクラリアント社製MQH−5(ヒドロシリル基含有量2.3モル/kg)を58.0重量部、同じくクラリアント社製MQH−8、ヒドロシリル基含有量7.6モル/kg)を5.8重量部、三次元構造を有するビニル基含有オルガノポリシロキサンとしてクラリアント社製MQV−7(ビニル基含有量3.5モル/kg)を36.2重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.0重量部を加えて溶解させた。
【0164】
得られた溶液の揮発成分をロータリーエバポレータ−で留去することにより、液状のシリコーン系組成物を得た。得られたシリコーン系組成物について、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行った後、粘度の測定を行った(12h後、48h後にも同様に粘度の測定を行った)。また、得られた組成物を一部抜き取り、組成物100重量部に対して、ほう酸トリメチル0.71重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.00072重量部、N、N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.0067重量部、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.00014重量部、をこの順番で加えてはよく撹拌を行った。
【0165】
得られた組成物について、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行った後、LEDパッケージに流し込み、60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で20分、150℃で10分、180℃で30分加熱して硬化させることで、評価用硬化物を作成し、耐冷熱試験を行った。各種評価結果を表1に示す。
【0166】
(比較例1)
実施例1と同様の操作で得られたシリコーン系重合体粒子の酢酸エチル分散液に、三次元構造を有するヒドロシリル基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしてクラリアント社製MQH−5(ヒドロシリル基含有量2.3モル/kg)を58.0重量部、同じくクラリアント社製MQH−8、ヒドロシリル基含有量7.6モル/kg)を5.8重量部、三次元構造を有するビニル基含有オルガノポリシロキサンとしてクラリアント社製MQV−7(ビニル基含有量3.5モル/kg)を36.2重量部加えて溶解させた。
【0167】
得られた溶液の揮発成分をロータリーエバポレータ−で留去することにより、液状のシリコーン系組成物を得た。得られたシリコーン系組成物に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.0重量部を加えてよく混合させた。続いて、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行った後、粘度の測定を行った(12h後、48h後にも同様に粘度の測定を行った)。
【0168】
また、得られた組成物を一部抜き取り、組成物100重量部に対して、ほう酸トリメチル0.71重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.00072重量部、N、N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.0067重量部、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.00014重量部、をこの順番で加えてはよく撹拌を行った。
【0169】
得られた組成物について、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行った後、LEDパッケージに流し込み、60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で20分、150℃で10分、180℃で30分加熱して硬化させることで、評価用硬化物を作成し、耐冷熱試験を行った。
【0170】
各種評価結果を表1に示す。
【0171】
(比較例2)
実施例1と同様の操作で得られたシリコーン系重合体粒子の酢酸エチル分散液に、三次元構造を有するヒドロシリル基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしてクラリアント社製MQH−5(ヒドロシリル基含有量2.3モル/kg)を58.0重量部、同じくクラリアント社製MQH−8、ヒドロシリル基含有量7.6モル/kg)を5.8重量部、三次元構造を有するビニル基含有オルガノポリシロキサンとしてクラリアント社製MQV−7(ビニル基含有量3.5モル/kg)を36.2重量部加えて溶解させた。
【0172】
得られた溶液の揮発成分をロータリーエバポレータ−で留去することにより、液状のシリコーン系組成物を得た。得られたシリコーン系組成物について、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行った後、粘度の測定を行った(12h後、48h後にも同様に粘度の測定を行った)。
【0173】
また、得られた組成物を一部抜き取り、組成物100重量部に、ほう酸トリメチル0.74重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.00075重量部、N、N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.0069重量部、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.00015重量部、をこの順番で加えてはよく撹拌を行った。得られた組成物について遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行った後、LEDパッケージに流し込み、60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で20分、150℃で10分、180℃で30分加熱して硬化させることで、評価用硬化物を作成し、耐冷熱試験を行った。
各種評価結果を表1に示す。
【0174】
【表1】

【0175】
表1に示される、実施例1と比較例1、2のシリコーン系組成物を比較してわかるように、エポキシ化合物を粒子分散液に配合しておくと、得られる組成物の貯蔵安定性に優れた効果があることが確認された。また、エポキシ化合物を配合しておくことで、優れた耐冷熱衝撃性を示すことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系重合体粒子(A)を含有する水系ラテックスを、有機溶媒(B)を加えることで凝集させて洗浄した後、前記(A)に親和性を示す有機溶媒(B’)に再分散させ、該分散液にエポキシ化合物(C)を添加することを特徴とする粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
(C)成分がアルコキシシリル基を有するエポキシシランであることを特徴とする請求項1に記載の粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
(B)成分が20℃における水に対する溶解度が5〜40重量%である有機溶媒(B−1)を含有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
(B−1)成分がエステル類、ケトン類、エーテル類であることを特徴とする請求項3に記載の粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
(B−1)成分が酢酸エチルまたはメチルエチルケトンであることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
(B)成分が20℃における水に対する溶解度が5〜40重量%である有機溶媒(B−1)と脂肪族アルコール(B−2)を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
(B−2)成分がメタノールであることを特徴とする請求項6に記載の粒子分散液の製造方法。
【請求項8】
(B)成分の混合比率((B−1)/(B−2))が重量比で95/5〜40/60であることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の粒子分散液の製造方法。
【請求項9】
(A)成分がコアシェル構造を有するシリコーン系重合体粒子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の粒子分散液の製造方法。
【請求項10】
(A)成分がシリコーン粒子(A−1)をコアとし、アルコキシシラン縮合物(A−2)をシェルとするシリコーン系重合体粒子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の粒子分散液の製造方法。
【請求項11】
(A−1)成分が、一般式(1)
amSiO(4-m)/2(1)
(式中、Raは置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。mは0〜3の整数を示す。)で表される構造単位からなり、上記一般式(1)でm=2の構造単位が(A−1)成分全体の70モル%以上を占めているオルガノシロキサンであることを特徴とする、請求項10に記載の粒子分散液の製造方法。
【請求項12】
(A)成分が、(A−1)成分であるシリコーン粒子40〜97重量%、および、(A−2)成分であるアルコキシシラン縮合物3〜60重量%(ただし、(A−1)成分と(A−2)成分を合わせて100重量%)を主成分として構成されることを特徴とする請求項10または11のいずれかに記載の粒子分散液の製造方法。
【請求項13】
(A−2)成分であるアルコキシシラン縮合物が、下記(a)成分、下記(b)成分、下記(c)成分から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の粒子分散液の製造方法。
(a)成分:一般式(2)
【化1】

(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(b)成分:一般式(3)
【化2】

(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(4)
【化3】

(式中、R42、R43、R44、R45、は同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載された製造方法によって得られた粒子分散液に、(D)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび/または(E)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサンを加え、揮発成分を留去することにより得られることを特徴とするシリコーン系組成物。
【請求項15】
(D)成分が、一般式(5)
SiO4/2(5)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その構造の末端を、一般式(6)、(7)
HRb2SiO1/2(6)
b3SiO1/2(7)
(式中、Rbは水素原子、またはアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その構造の末端が一般式(6)で少なくとも2つ封鎖された重合体であることを特徴とする請求項14に記載のシリコーン系組成物。
【請求項16】
(E)成分が、一般式(8)
SiO4/2(8)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その構造の末端を、一般式(9)、(10)
cd2SiO1/2(9)
d3SiO1/2(10)
(式中、Rcはアルケニル基、Rdはアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その構造の末端が一般式(9)で少なくとも2つ封鎖された重合体であることを特徴とする請求項14または15のいずれかに記載のシリコーン系組成物。
【請求項17】
ヒドロシリル化触媒(F)を含有することを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載のシリコーン系組成物。
【請求項18】
接着性付与剤(G)を含有することを特徴とする請求項14〜17のいずれか一項に記載のシリコーン系組成物。

【公開番号】特開2010−116497(P2010−116497A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291207(P2008−291207)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】