説明

粒子材料の処理方法

本発明は、アルカリ性金属塩を含有する、固体で無機のかつアルカリ性の粒子材料の炭酸化における流動層反応器の使用を表す。また本発明は、アルカリ性金属塩を含有するセメントキルンダスト(CKD)の処理方法も表す。該処理方法は、2つの工程:(a)水和工程;及び(b)炭酸化工程を含み、該炭酸化工程は、流動層反応器において行われる。本発明の好ましい局面において、処理CKDは、硫黄ポリマーコンクリート(SPC)における骨材として使用される。従って、本発明はまた、本発明の処理CKD、元素硫黄及び改質硫黄を加熱及び混合して混合物を製造することを含む、SPCの製造方法も提供する。該SPCは、例えば、有害廃棄物等の物質を保管するための封じ込め建造物のように、物質の透過を制限するための障壁として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、固体、無機及びアルカリ性の粒子材料の炭酸化における流動層反応器の使用に関し、詳しくは、セメントキルンダスト(CKD)の処理方法、より好ましくは、CKDの安定材料への変換方法及びその装置に関する。本発明はまた、耐久性硫黄ポリマーコンクリート(SPC)の製造における通常の骨材としての、処理CKDの使用に関する。さらに本発明は、固形廃棄汚染物質を固定化し、それらを環境に無害な自然な状態に変換する方法を提供する。本発明によって提供されるSPCは、公共事業において多大な有用性を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
固形廃棄物の管理は、健康、環境汚染制御及び経済発展のために国際的に必要とされている重要な領域の一つを表している。種々の廃棄産物又は廃棄材料が、様々な産業によって生み出されている。例えば、ポルトランドセメントの製造では、クリンカー製造の際のキルンダスト回収システムを通じてキルンガスの流れからセメントキルンダスト(CKD)が取り除かれる。CKDは、健康への危害、保管の問題をもたらし、汚染の発生源である可能性がある。このように、潜在的に貴重な材料の廃棄となることに加え、それはまた深刻な大気汚染や投棄の問題も表している。
【0003】
一方で、多量に製造されるその他の廃棄副産物として硫黄がある。このように、現在では、上流に位置する石油及び天然ガスの製造や下流の石油精製工程における硫化水素の浄化によって、大量の副産物硫黄が生成されている。かかる硫黄は、肥料や特定の化学物質の製造に用いられるような、いくつかの用途を有している。しかしながら、増え続ける一次産物の脱硫によって生じる、硫黄の供給過剰への顕著な傾向がある。
以下に、廃棄副産物の簡単な説明について論じる。
【0004】
CKD
CKDは、主に、セメントクリンカーの高温製造の間に電気集塵装置から回収されるミクロン径の粒子によって構成される、粉体である。CKDの化学組成は、クリンカーの製造に用いられる原材料、並びにロータリーキルンでのクリンカーの加熱に用いられる炭素系燃料の型及び由来に依存する。原材料は、石灰石又はチョーク等のような石灰質の岩又は堆積物;及び、粘土又は頁岩等のようなアルミノケイ酸塩材料の組み合わせである。
【0005】
CKDは、工程の種類、キルン構造、原材料、燃料、工程の特性、及び回収のポイントに依存して、実質的に変質していないキルン供給物から、90%を超えるアルカリ硫酸塩及び塩化物まで組成が変化し得る。それは、材料と工程のパラメーターに依存して、非常に幅広い範囲から非常に狭い範囲の粒子径分布で、細粒又は沈泥の粒子径から粘土の粒子径まで変化し得る。特定のキルンから生成されるダストの量は、キルンの内部構造、キルンを通過するガスの量、及び他の操作条件だけでなく、CKDの組成を制御する因子にも依存する。
【0006】
CKDは、多くのセメント製造工場での主要な問題である。ダストは大量に生成され、多くの場合、供給物としてセメント製造工程に直接戻すことは、高濃度のアルカリ金属及び硫酸塩、並びに工程へのダストの不適合性のため、適さない。大量のダストは、直接キルンに戻すことは不可能であるため、安全な方法で処分しなければならない。一般的な処分としては、廃棄物堆積又は埋立て地あるいは採石場へのダストの投入が行われている。そのような処分方法は、処理及び操作についての大幅なコスト及び労力が必要となる材料の廃棄を含むため、本質的に満足いくものではない。環境規制の整備により、処分のコスト及び問題はさらに負担となり、継続してキルンダストを処分することはさらに費用がかかるものとなっている。
【0007】
CKDを水と接触させた場合、酸化物、硫酸塩及び塩化物を含む高濃度の無水相が可溶であり、滲出する。CKD不安定性の主な原因は、親水性の高いアルカリ金属酸化物及び硫酸塩に高く寄与しているため、如何にして、効果的且つ安価な方法を通じて、不要な酸化物を炭酸塩や重炭酸塩のような安定な材料に変換し、溶解性を低減させ、そして結果的に適用耐久性を高めるかということが問題となる。
【0008】
処理CKDは、土壌安定化、廃棄物安定化/固形化、ポルトランドセメント置換、アスファルト舗装、制御された低強度材料(流動性フィル)、ポゾラン活性化剤、軽量骨材、及び建設用フィル等の工学プロジェクトへの使用可能性を有しているが、常に可能であるというわけではない
【0009】
CKDに関する問題は長期間に及んで認識されており、それらを解決するための様々な方法が提案されている。CKDを処理するために、以下の方法が提案されている。それは、水でダストを滲出させ、アルカリを除去することを含む方法である。化学成分を不溶性で固定した形態に変換する、即ち安定化させることによって、CKDの潜在的危険性も低減させることができる。これは、処理した物質中で安定な成分に化学変化させて、不溶性、固定化及び低毒性の化合物を生成することを含む。
【0010】
Nestellは、米国特許第1,307,920号において、キルンダストを水と混合し、二酸化炭素を得られた混合物に通してスラリーを実質的に中和した。しかしながら、その生成物は、元のダストのアルカリ性レベルが非常に低くない限り、キルン供給材料として使用するためにセメントキルンにリサイクルすることはできない。
【0011】
Palonenらは、米国特許第2,871,133号において、アルカリの溶解性をより高めるために、高圧及び高温でCKDを凝集させている。その後、得られた熱処理された凝集物を水で滲出させ、可溶性のアルカリを除去している。残留固形物を、セメントキルンに戻すために、さらに処理して湿度を調整している。この方法は、非常に複雑であるという点で問題を有している。
【0012】
Patziasは、米国特許第2,991,154号において、キルンダストを水と混合し、その後、公知の圧力で加熱している。スラリーをろ過し、アルカリ含有溶液を残留固形物と分離する。それから、分離した溶液を、硫酸での中和、蒸発、遠心分離、又はこれらの組み合わせにより処理し、セメント製造工程にリサイクルするためにアルカリ硫酸塩を回収している。この方法は、アルカリを溶解させるべく、高い水−ダスト比率、高温、及び高圧とするために実用的でない。キルンダスト固体は、キルン供給補正に必要とされる通常のキルン供給物とは組成において著しく異なっている。
【0013】
McCordは、米国特許第4,031,184号において、溶解性を高めるために塩化カリウムを用いて高温で(但し、高圧ではない)CKDを滲出させている。その後、オイルと脂肪酸を用いてCKD固体を凝集させ、沈殿物をパレットで保管している。塩化カリウムの溶解性は、温水及び冷水中で硫酸カリウムよりも2倍以上高いため、あらゆる沈殿物が、塩化カリウムよりはむしろ硫酸カリウムとなる可能性が極めて高い。
【0014】
Helserらは、米国特許第4,219,515号において、製造工程にリサイクルできるように、石灰及びシリカからの含水ケイ酸カルシウムの製造からの廃水に、水からカルシウムを除去すべく二酸化炭素を添加している。その結果得られる炭酸カルシウム沈殿物は、おそらく再生成される石灰であり得る。
【0015】
Kachinskiは、米国特許第4,402,891号において、二酸化炭素雰囲気下でCKDに水を添加している。アルカリは完全に除去されておらず、その材料はセメント製造工程に戻すのには不適である。
【0016】
Neilsenは、米国特許第5,173,044号において、キルンガスから硫黄を取り除き、キルン中にそれらを保持するため、湿式法スラリーを使用している。この方法は、全てのアルカリをキルン中に保持しており、多くの場合、わずかに限られた量のCKDのみが使用できるようになっているため、適用が限定されている。
【0017】
Brentrupは、米国特許第5,264,013号において、CKDを後に徐々に熱処理して低沸点の汚染物質を揮発させ、それらを炭素質ろ過剤で回収するという、通常のダスト回収装置においてCKDを回収している。CKDをセメント製造工程に戻す能力は、強化されてはいない。
【0018】
Huegeは、米国特許第5,792,440号において、石灰キルンからの燃焼排ガス処理のために、高純度の沈降炭酸カルシウムを別個の生成物として生成させるべく、二酸化炭素を用いて、石灰キルンダストからの固体の滲出及び分離後の上清を処理している。この方法は、排出規制としてのみ有用である。
【0019】
Gebhardtは、米国特許第6,331,207号において、CKDの供給物を二酸化炭素にさらし、材料を炭酸塩に変換させている。炭酸化サイクルの間、水酸化物中の水分を除去してスラリーを調製する。可溶性のアルカリ及び硫酸塩が液相中に放出され、固体が液体から分離される。その後、該固体が洗浄され、キルンに有用な供給物が提供されているが、該液体にはアルカリ塩が含まれている。
【0020】
過去に使用されている先行手法は、高い頻度で以下の問題点を抱えている。
1.容易に溶解されるのはわずかな部分のアルカリのみであり、多くの場合、半分又はそれ以下である。
2.典型的な水−ダストの比率は10:1から20:1、又はそれ以上である。
3.pHが高く(>10)、溶解固形物の多い廃液が排出される。
4.溶解固形物が受水中に沈殿する傾向がある。
5.高pHの廃液は生物圏に有害である。
6.回収された固体は水分含量が高く、多くの場合70%を超えている。
7.処理したダストをキルンに戻す場合、キルン供給化学への調整が必要とされ得る。
これらの問題は非常に難解であるため、過去の滲出方法は、大部分が環境保護団体によって禁止されている。
【0021】
硫黄及びSPC
上記内容とは異なって、大量に産生されるその他の廃棄副産物は、硫黄である。このように、現在では、上流に位置する石油及び天然ガスの製造や下流の石油精製工程における硫化水素の浄化によって、大量の副産物硫黄が生成されている。かかる硫黄は、肥料や特定の化学物質の製造に用いられるような、いくつかの用途を有している。しかしながら、増え続ける一次産物の脱硫によって生じる、硫黄の供給過剰への顕著な傾向がある。
【0022】
米国鉱山局は、副産物硫黄を使用して、有毒且つ有害な廃水を安定化させる技術を開発した(Sullivan, T.A. and Mc Bee, W.C., 1976, Development and testing of superior sulfur concretes, BuMines Report No. RI 8160, U.S. Bureau of Mines, Washington, D.C., 30; and Mc Bee, W.C., Sullivan, T.A. and Jong, B.W., 1981, Modified sulfur concrete technology, Proceedings, SULFUR-81 International Conference on Sulfur, Calgary, 367-388)。硫黄ポリマーコンクリート(SPC)における開発は、過剰な元素硫黄のための別の市場を見出すべく現在進行中である。SPCは、一般に、元素硫黄、硫黄ポリマー安定化剤、微細な充填剤材料、並びに、砂、高炉スラグ、及び飛散灰等の廃棄材料を含み得る凝集体からなる(Kalb P.D., Heiser J.H., Colombo P., 1991, Modified sulfur cement encapsulation of mixed waste contaminated incinerator fly ash, Waste Management, pages 11:147; ACI Committee 548, 1993, Guide for mixing and placing sulfur concrete in construction [ACI 548.2R-93], American Concrete Institute, Farmington Hills, Mich., USA; Mohamed, A.M.O. and El Gamal, M.M., 2006, Compositional control on sulfur polymer concrete production for public works, in: “Sustainable Practice of Environmental Scientists and Engineers in Arid Lands, A.M.O. Mohamed [ed.], A. A. Balkema Publishers, 556 pages; Mohamed, A.M.O. and El Gamal, M., 2007a, “Sulfur based hazardous waste solidification”, Environmental Geology, Volume 53, Number 1, pages 159-175; and Mohamed, A.M.O. and El Gamal, M, 2007b, “Development of modified sulfur cement and concrete barriers for containment of hazardous waste in arid lands”, Sustainable Development and Climate Change”, February 5-7, 2007, Doha, Qatar)。
【0023】
SPCは、アスファルトに関していくつか類似している加熱混合手段によって製造することができる。SPCは、独特な性質及び特徴を備えた建設材料である。それは、いくらかの侵食環境において十分に機能することができ、特に、迅速な凝結時間、過度の寒冷又は高温気候での設置、耐侵食性及び不透過性が要求される状況での代替性建設材料として利益をもたらすことができる。
【0024】
CKDに基づくSPC
優れた強度特性を有するSPCは硫黄及びCKDから調製され得るが、特にSPCが高湿条件下にさらされた場合に材料耐久性が問題であり、不具合が内在している。CKDは、地表条件で不安定又は高溶解性である酸化相及び無水相の集合からなる。CKDの好ましくない成分は、CKD含有SPCから周囲環境中に漏出することができ、これが問題を生じ得る。
【発明の概要】
【0025】
発明の要旨
本発明は、アルカリ性金属塩を含有する、固体で無機のかつアルカリ性の粒子材料の炭酸化における流動層反応器の使用を提供する。本発明はまた、アルカリ性金属塩を含有するCKDの処理方法であって、該方法は、(1)水和工程、(2)乾燥工程及び(3)炭酸化工程を含み、該炭酸化工程は、流動層反応器において行われ、工程(2)より得られる水和CKDが、最大径での大きさが10mmより大きい粒子を含有する場合に、該方法はさらに分別工程を工程(2)及び(3)の間に含み、該分別工程は、最大径での大きさが10mmより大きい粒子の除去を含むことを特徴とする方法を提供する。本発明はまた、そのような方法に用いられる流動層反応器装置を提供する。本発明はまた、この処理法方によって入手される、又は入手可能な、処理CKDを提供する。該処理CKDは、さらに以下で説明されるような、未処理CKDに対する様々な利点を有する。特に、アルカリ金属及び硫酸塩が、該処理CKDから周囲環境中に漏出しにくくなる。
【0026】
処理CKDは、様々な用途を有する。例えば、(i)コンクリートにおける骨材として、(ii)酸性鉱山排水又は酸性土壌の中和において、(iii)クリンカー製造過程において、(iv)軟質地盤の安定化において、(v)膨張/膨潤土の処理において、(vi)埋め戻し、(vii)路盤材料として、(viii)ポゾラン活性化剤として、又は(ix)アスファルト舗装において、使用され得る。
【0027】
本発明の好ましい局面において、処理CKDは、SPCにおける骨材として使用される。従って、本発明はまた、本発明の処理CKD、元素硫黄及び改質硫黄を加熱及び混合して混合物を製造することを含む、SPCの製造方法を提供する。該SPCは、物質の透過を制限するための障壁として、例えば、有害廃棄物等の物質を保管するための封じ込め建造物において、用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図面の説明
【図1】図1は、使用した砂及びCKDの粒子径分布である。
【図2】図2は、本発明のCKD処理工程の図を表示する。
【図3】図3は、本発明によるCKDの処理に用いられる炭酸化工程での使用に適合した流動層反応器の図を表示する。
【図4】図4は、本発明の好ましい局面によるCKDの処理方法の図を表示する。
【図5】図5は、HO量に依存する、HSCソフトウェアを用いた水和工程モデルの平衡組成図である。
【図6】図6は、CO量に依存する、HSCソフトウェアを用いた炭酸化工程の平衡組成図である。
【図7】図7は、炭酸化の間の含水率に応じた全蒸発残留物(TDS)のグラフを表示する。
【図8】図8(a)は、未処理CKDから得られたX線回折解析を示す。図8(b)は、水和及び炭酸化後のCKDに対応するX線回折解析結果を示す。
【図9】図9は、20℃/分の加熱範囲での未処理及び処理CKD廃棄物サンプルのTGA(a)及びTGD(b)曲線を示す。
【図10】図10は、(a)乾燥キルン工程から製造され、セメント工場により供給された新鮮なCKD、及び(b)1ヵ月保管していたCKDの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図11】図11は、CaCOの2つの形態構造;(a)菱面体晶構造、及び(b)アラゴナイト構造を示す、炭酸化CKDのSEM像(同スケール)である。
【図12】図12(a、b、c、d、e、及びf)は、異なった溶液;A)は蒸留水、B)は熱湯、C)は海水、D)は酸性広域緩衝溶液、E)は塩基性広域緩衝溶液において、72時間にわたって試験した、未処理及び処理CKDの滲出のグラフを表示する。
【図13】図13は、本発明の一実施態様を示すフローチャートである。
【図14】図14は、本発明の別の実施態様による工程に含まれ得る更なる工程を示すフローチャートの一部である。
【図15】図15は、本発明の別の実施態様による工程に含まれ得る更なる工程を示すフローチャートの一部である。
【図16】図16は、本発明の別の実施態様による工程に含まれ得る更なる工程を示すフローチャートの一部である。
【図17】図17は、本発明の別の実施態様による工程に含まれ得る更なる工程を示すフローチャートの一部である。
【図18】図18は、本発明の別の実施態様による工程に含まれ得る更なる工程を示すフローチャートの一部である。
【図19】図19は、(a)非改質硫黄、(b)改質硫黄のSEM像である。
【図20】図20は、SPCの可能な製造工程を示すフロー図である。原材料は、処理及び改質反応を受ける。
【図21】図21は、CKDに基づくSPCの表面のSEM像である。
【図22】図22は、CKDに基づくSPCの表面から25mmでの硫黄結合剤の結晶化特性を示すSEM像である。
【図23】図23は、ガラスファイバーにより強化された、CKDベースのSPCのSEM像であり、硫黄及び骨材へのガラスファイバーの適合性を示している。
【図24】図24は、(i)改質硫黄の量、(ii)ガラスファイバーの量、及び(iii)硫黄結合剤−骨材の比率に依存して、CKDベースのSPCの圧縮強度がどのように変化するかを示す。
【図25】図25は、異なる環境条件に6ヶ月間さらされた場合、CKDベースのSPCの圧縮強度がどのように変化するかを示す。
【図26】図26は、異なる環境に1年間さらされた場合、CKDベースのSPCの圧縮強度がどのように変化するかを示す。
【図27】図27は、(a)空気中に25℃で、及び(b)水中に60℃で、1ヶ月間処置された、CKDベースのSPCのX線回折の相関である。
【図28】図28は、蒸留水に1年間浸漬させた、CKDベースのSPCのSEM像である。
【図29】図29は、10%硫酸溶液に1年間浸漬させた、CKDベースのSPCのSEM像である。
【図30】図30は、異なる環境において、CKDベースのSPCから滲出した硫酸塩の経時的な累積を示す。
【図31】図31は、異なる環境において、CKDベースのSPCから滲出した金属の経時的な累積を示す。
【図32】図32は、異なる環境において、CKDベースのSPCから滲出した重金属及び遷移金属の経時的な累積を示す。
【図33】図33は、硫黄ポリマー化のメカニズムを示す。
【図34a】図34aは、代表的な有害廃棄物封じ込め建造物の略図を示す。
【図34b】図34bは、乾燥地に用いられる代表的な有害廃棄物封じ込め建造物の略図を示す。
【図34c】図34cは、本発明によって提供される新規な封じ込め建造物の略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、水和した(又はしている)セメントキルンダスト(CKD)のような、アルカリ性金属塩を含有する、固体で無機のかつアルカリ性の粒子材料の炭酸化における流動層反応器の使用を提供する。本発明はさらに、アルカリ性金属塩を含有するCKDの処理方法であって、該方法は、(1)水和工程、(2)乾燥工程及び(3)炭酸化工程を含み、該炭酸化工程は、流動層反応器において行われ、工程(2)より得られる水和CKDが、最大径での大きさが10mmより大きい粒子を含有する場合に、該方法はさらに分別工程を工程(2)及び(3)の間に含み、該分別工程は、最大径での大きさが10mmより大きい粒子の除去を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0030】
アルカリ性金属塩を含有する限りにおいて、あらゆる固体で無機のかつアルカリ性の粒子材料が本発明の炭酸化を受けることができる。通常、粒子材料は、最大点(最大直径)で50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下の粒子からなる。粒子材料は、通常、ダストである。一つの実施態様において、粒子は廃棄材料である。本発明の好ましい局面において、粒子材料は水和CKDである。水和CKDは、通常、酸化物及び硫酸塩を(アルカリ性金属塩とともに)含有しており、さらに以下で説明される。本発明の処理方法は、廃棄CKD;特に、ポルトランドセメント製造の副産物である廃棄CKDに特に有用である。
【0031】
本発明の方法を用いて処理可能なCKDは、一般に1μmより大きく、より一般には2μmより大きく、さらに一般には3μmより大きい平均粒子径を有する。一つの実施態様では、それは10μmまで又は20μmまででさえあるが、通常は8μm未満であり、より一般には5μm未満である。平均粒子径は、好ましくはSEMを用いて測定される。CKDは、一般に、少なくとも10、より一般には少なくとも11、例えば、少なくとも11.5又は少なくとも12のpHを有する。通常、そのpHは13未満、例えば12.5未満である。pHは、好ましくは、APHA et al., 1998; Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater, 20th Ed.; American Public Health Association, (Eds.), Washington, DC Method No. 423のように、Cyper Scan 510 PCにより測定される。CKDの電気伝導度は、一般に少なくとも80μs、より一般には少なくとも90μsである。電気伝導度は、一般には110μs未満、より多くの場合は100μs未満である。電気伝導度は、好ましくは、APHA et al., 1998. Method No. 205のように、Cyper Scan 510 PCにより測定される。CKDは、一般に少なくとも400、より一般には少なくとも500mg/l TDS(全蒸発残留物)を有するが、一般に、TDSは700未満、より多くの場合は600mg/l未満である。TDSは、好ましくは、APHA et al., 1998. Method No. 209のような、Cyper Scan 510 PCにより測定される。CKDは、一般に少なくとも15、より一般には少なくとも20、通常少なくとも23重量%のLOI(強熱減量)を有する。LOIは、一般に35未満、より一般には30未満、通常27未満である。LOIは、好ましくは、TGAの温度範囲(50−1000℃)及び20℃/分の走査速度を適用して、Thermo Gravimetric Analyzer Perkin Elmer TGA7により測定される。CKDの液性限界は、一般に40%未満、より一般には30%未満である。液性限界は、一般には少なくとも10%、より多くの場合は少なくとも20%である。液性限界は、好ましくは、ASTM D4318 - 1984に準じたGeogauge TM user Guide; Humboldt MFGにより測定される。CKDの塑性限界は、一般に40%未満、より一般には30%未満である。塑性限界は、一般には少なくとも10%、より多くの場合は少なくとも20%である。塑性限界は、好ましくは、ASTM D4318 - 1984に準じたGeogauge TM user Guide; Humboldt MFGにより測定される。CKDのCEC(陽イオン交換容量)は、乾燥材料について、一般に少なくとも5、より一般には少なくとも8、最も一般には少なくとも10meq/100gmである。CECは、一般には、乾燥重量について20未満、より多くの場合は15未満、最も多くの場合は13meq/100gm未満である。CECは、好ましくは、Soil Survey Investigations Report No. 42, Soil Survey Laboratory Methods Manual. Version 4, Nov. 2004において説明された方法により測定される。
【0032】
本発明の方法を用いて処理可能なCKDは、2L/kgの水−CKD比率での短時間(6時間)試験(この試験は、特に断りのない限り、以下に示される全ての滲出測定に用いられる)を用いて、British Standard BS EN12457:2002による試験を行った場合、一般に、少なくとも1000mg/lの硫酸塩を、より一般には少なくとも1500mg/lを滲出する。一つの実施態様では、CKDは、例えば2500又は3000mg/lのようなより多くの硫酸塩を滲出するが、一般には2000mg/l未満を滲出する。CKDは、一般に、少なくとも500mg/lのClを、より一般には少なくとも1000mg/lを滲出する。一つの実施態様では、CKDは、例えば2000又は2500mg/lのようなより多くのClを滲出するが、一般には1500mg/l未満を滲出する。CKDは、一般に、少なくとも4mg/lのSrを、より一般には少なくとも6mg/lを滲出する。一つの実施態様では、CKDは、例えば15又は20mg/lのようなより多くのSrを滲出するが、一般には10mg/l未満を滲出する。CKDは、一般に、少なくとも12mg/lのCrを、より一般には少なくとも15mg/lを滲出する。一つの実施態様では、CKDは、例えば25又は30mg/lのようなより多くのCrを滲出するが、一般には20mg/l未満を滲出する。CKDは、一般に、少なくとも1000mg/lのCaを、より一般には少なくとも1200mg/lを滲出する。一つの実施態様では、CKDは、例えば2000又は2500mg/lのようなより多くのCaを滲出するが、一般には1500mg/l未満を滲出する。CKDは、一般に、少なくとも1500mg/lのKを、より一般には少なくとも2000mg/lを滲出する。一つの実施態様では、CKDは、例えば3000mg/lのようなより多くのKを滲出するが、一般には2500mg/l未満を滲出する。CKDは、一般に、少なくとも150mg/lのNaを、より一般には少なくとも200mg/lを滲出する。一つの実施態様では、CKDは、例えば300mg/lのようなより多くのNaを滲出するが、一般には250mg/l未満を滲出する。
【0033】
本発明の方法を用いて処理可能なCKDは、一般に、様々な成分の混合物を含有し、最も豊富に含まれるのは酸化カルシウム(CaO)である。CaOの量は、一般に35から55重量%、より一般には40から50重量%である。他の潜在的な成分(及びそれらの一般的な重量比率)としては、SiO(8から25%、一般に10から20%)、Al(1から10%、一般に2から6%)、Fe(1から10%、一般に2から6%)、MgO(0.2から6%、一般に0.5から4%)、KO(1から10%、一般に1.5から6%)、NaO(0.1から5%、一般に0.2から2%)、SO(1から10%、一般に1.5から6%)及びCl(0.2から6%、一般に0.5から4%)が挙げられる。既に上記に示した通り、CKD強熱減量(LOI)は、一般に15から35重量%、より一般には20から30重量%である。
【0034】
本発明の方法の水和工程は、一般に、CKDと水との混合を含む。25から50℃の温度が、これに好ましく用いられ、より好ましくは30から45℃の温度、一般には35から40℃が用いられる。混合は、通常少なくとも10分間行われ、例えば1時間まで続けられ得る。通常、それは少なくとも20分間行われ、一般に40分間以下、より多くの場合は30分間以下で行われる。混合は、好適には200から1000rpm、一般に400から800rpm、最も好ましくは約600rpmで行われる。一つの実施態様において、CKD−水の重量比は0.1:1から10:1であるが、好ましくは0.5:1から5:1、最も好ましくは1:1から3:1である。一般に、それは、1.1:1から2:1である。
【0035】
水和工程を用いて、水和CKDが作製される。次いで乾燥工程を用いて、水和CKDの水分含量が低減される。乾燥工程は、好ましくは20重量%以下、一般に15重量%以下、より一般には12重量%以下、例えば約10重量%まで、水和CKDの水分含量を減少させる。通常、乾燥後の水分含量は少なくとも2重量%、より多くの場合は少なくとも5重量%、そして一般に少なくとも7重量%である。水分含量は、好ましくは、BS 1377: Part 2:1990を用いて、重量法、オーブン乾燥により測定される。乾燥工程により低減された水分含量は、炭酸化工程において利点を有する。
【0036】
乾燥工程は、好ましくは加熱により、例えばオーブンにおいて行われる。この場合、乾燥温度及び時間は明らかに、水和工程に引き続き存在する水分量に依存し得る。例えば、一般的な乾燥工程は、60から100℃、または70から90℃、例えば約80℃の温度を用いて行われ得る。一つの実施態様において、乾燥工程は、12から48時間、一般に約24時間行われる。
【0037】
また、水和CKDがより大きなサイズの粒子を含有していない場合も、炭酸化工程において利点を有する。従って、乾燥工程後に水和CKDが最大径での大きさが10mmより大きい粒子を含有している場合、炭酸化工程の前に分別工程が行われる。一つの実施態様において、分別は、標準的な方法、例えば、適切な大きさの穴を有する篩を用いることによって行われる。例えば、乾燥工程後、最大径での大きさが10mmより大きい粒子を水和CKDが含有する場合、分別工程は、一般に、10mmの大きさの穴の篩目に粒子を通過させることを含む。本発明の好ましい局面において、分別工程は、8mmより大きなサイズの粒子を水和CKDが含有する場合に行われ、より好ましい態様では、4mmより大きなサイズの粒子を水和CKDが含有する場合に分別工程が行われ、さらにより好ましくは、2mmより大きなサイズの粒子を水和CKDが含有する場合に分別工程が行われる。これらのそれぞれの場合において、当該方法に採用される分別工程は、当然、関連するサイズよりも大きな粒子を除去するために用いられる。このように、本発明の方法は、一般に分別工程を含み、最大径での大きさが8mmよりも大きい粒子を除去する。より一般には、4mmより大きい粒子が全て除去され、最も一般には、2mm又は1/16−インチよりも大きい粒子が全て除去される。好ましくは、分別工程は篩によって行われる。
【0038】
上記の通り、本発明は、アルカリ性金属塩を含有する、固体で無機のかつアルカリ性の粒子材料の炭酸化における流動層反応器の使用を提供する。好ましくは、材料は、上記に説明したとおり水和CKDである。一般に、水和CKDは、上記に説明した、好ましくは乾燥及び分別の工程を含む工程によって入手される、又は入手可能である。例えば、本発明の特に好ましい態様において、水和CKDは、好ましくは7から12重量%の水分含量を有し、また好ましくは最大径で2mmより大きい粒子を有さない。水和CKD以外の、固体で無機のかつアルカリ性の粒子材料が炭酸化される場合は、水和CKDについて上記で示された好ましい水分含量及び最大粒子径がなお適用される。
【0039】
本発明の方法の炭酸化工程のいくつかの好ましい局面、及び本発明の方法を用いて入手される、又は入手可能な処理CKDの好ましい局面は、下記に示される。これらの好ましい局面はまた、上記に明示されている本発明の使用、即ち、アルカリ性金属塩を含有する、固体で無機のかつアルカリ性の粒子材料の炭酸化における流動層反応器の使用に関する。
【0040】
本発明の方法の炭酸化工程は、流動層反応器において行われる。流動層反応器は、より詳細にはさらに下記に説明される。一般に、炭酸化工程は、流動層反応器において水和CKDを二酸化炭素源にさらすことを含む。一般に、二酸化炭素源は、単なる二酸化炭素ガスである。有用な二酸化炭素ガス源は、発電所、再生キルン又は石灰キルンからのガスである。
【0041】
一つの実施態様において、炭酸化工程は20から30℃、例えば約25℃で行われる。一つの実施態様において、それは、5又は10分間から2又は4時間行われるが、好ましくは20から60分間、例えば約40分間行われる。好ましくは、使用されるガスは少なくとも二酸化炭素が50重量%であり、一般には少なくとも70重量%、例えば少なくとも80又は90重量%である。炭酸化を妨げない他の成分(例えば、不活性成分)もガスに存在し得るが、一般には、二酸化炭素のみ、即ち、約100%の二酸化炭素であるガスを使用することが好ましい。流動層反応器に送り込まれるガスの流動速度は、少なくとも最小流動化速度と同じ程度に速いことが重要である。少なくとも1、一般に少なくとも2リットル/分の流動速度が、通常用いられる。5又は10リットル/分のようなより高速な流動速度を用いることができるが、一般には約3リットル/分の流動速度が好ましい。二酸化炭素の圧力は、好ましくは約1から2バールであり、より好ましくは1.3から1.7バール、そして一般には約1.5バールである。一般に、ガスは、リアクターチャンバーの底部における円錐型分配器の周囲に設けられた1以上の注入口を介して、流動層反応器のリアクターチャンバーの底部に注入される。一般に、ガスは、供給管を介して反応器に供給される。好ましくは、円錐型(又は逆円錐型)分配器は、先端が切り取られている。本発明のこの特徴の他の好ましい局面は、下記に説明される。
【0042】
炭酸化工程において、好ましくは、100gの水和CKDそれぞれの炭酸化において少なくとも20gのCOが消費される。より好ましくは少なくとも25g、最も好ましくは少なくとも27gのCOが、100gの水和CKDごとに消費される。炭酸化において消費されるCO量は、一般に、熱重量分析装置(TGA 7 Perkin-Elmer)を用いて測定される;好ましくは50から1000℃の温度範囲が使用され、また加熱速度は、好ましくは20℃/分である。500から900℃での炭酸カルシウムの分解は、試料に含まれる炭酸塩であると考えられる。適切な手順の詳細は、下記の実施例5に示されている。炭酸化において消費されたCO測定量は、好ましくは理論最大量の少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%を表す。これに関して、理論量は、一般に下記の実施例2、特に式(15)を参照、に示されるように計算される。割合(炭酸化効率ともいう)を計算した実施例は、実施例5に示されている。
【0043】
一般に、本発明に使用される流動層反応器は、固気流動層反応器である。使用の際、その主要成分として、固体成分は好ましくは水和CKDを含有し、気体成分は好ましくはCOを含有する。一般に、COガスが(通常、加圧下で)供給管を通して反応器の底部に注入される。
【0044】
本発明に使用される流動層反応器は、当然リアクターチャンバーを含んでおり、また該リアクターチャンバーの底部には、好ましくは円錐型分配器が含まれる。装置底部における円錐型分配器は、一般に、先端が切り取られた逆円錐の形状を有している。図3に表されている通り、該先端は、好ましくは頂点が丸みを帯びるように、即ち、角がないように切り取られている。リアクターチャンバーの底部における円錐型分配器は、一般に、該底部の中心に位置付けられる。
【0045】
ガスは、一般に、リアクターチャンバーの下半分における1以上の注入口を通して、流動層反応器のリアクターチャンバーに入り、該注入口は、リアクターチャンバーの底部における円錐型分配器の周囲に位置付けられる。注入口は、好ましくは2から4mmの直径であり、一般に約3mmである。好ましくは、注入口はリアクターチャンバーの底部に位置付けられる。より好ましくは、リアクターチャンバーはその底部に分配板を有し、該注入口は、該分配板における穴である。より好ましくは、分配板は、多孔性板によって支持されている。分配板は、一般に、多孔性板の上端に直接設置される。好ましくは、流動層反応器は筒状、即ち、円形の頂部と底部を有する形状である。
【0046】
一つの実施態様において、分配板は、図3の場合のように円錐型分配器の一体部分である。いかなる場合においても、好ましくは、分配板における穴は、(穴を除いては)一般にほぼ平坦なリアクターチャンバーの底部の外側周囲に見られる。例えば、分配器は、底部の外側周囲に等間隔に設けられた12個の穴を有し得る。それから、逆円錐形状部分は底部の中心部分に位置付けられ、底部から上方に延び、上方を指す先端を有し、そして、通常、注入口の穴を有する平坦な外側部分によって囲まれている。プレキシガラスカラム反応器を、リアクターチャンバーに用いることができる。適切な装置は図3に表され、さらに下記に説明もされる。
【0047】
上記の通り、本発明はまた、本明細書に明示されている本発明の炭酸化工程における使用に適切な流動層反応器装置を提供し、該流動層反応器はリアクターチャンバーを有し、該反応容器チャンバーの下半分には、該リアクターチャンバーの中にガスを送り込むための一以上の注入口が存在し、該注入口は、該リアクターチャンバーの底部における円錐型分配器の周囲に位置付けられる。本発明の使用のための流動層反応器の上記好ましい局面は、本発明の流動層反応器にも関する。
【0048】
アルカリ金属塩のアルカリ炭酸塩への転換及び硫酸塩の除去によって、本発明の方法により処理されたCKD(以後、「処理CKD」という)は、未処理CKDが適さないであろう様々な用途を有する。
【0049】
従って、一つの局面において、本発明は、本明細書に明示されている本発明のCKD処理方法によって入手される、又は入手可能な処理CKDを提供する。処理CKDの好ましい特性は下記の通りである。特に断りのない限り、未処理CKDについて上記に示した特性の測定と同一の技術を使用することが好ましい。
【0050】
処理CKDは、好ましくは5μm未満、より好ましくは3μm未満又は2μm未満、最も好ましくは1μm未満の平均粒子径を有する。処理CKDのpHは、好ましくは10以下、より好ましくは9.5以下である。一般には、pHは少なくとも8、より多くの場合は少なくとも8.5である。処理CKDの電気伝導度は、好ましくは50μs未満、より好ましくは40μs未満である。電気伝導度は、一般には少なくとも20、より多くの場合は少なくとも25又は少なくとも30μsである。処理CKDのTDSは、好ましくは400mg/l未満、より好ましくは300未満、最も好ましくは250mg/l未満である。該TDSは、一般に少なくとも100、より一般には少なくとも150mg/lである。LOIは、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも30、最も好ましくは少なくとも34重量%である。LOIは、一般には50未満、より一般には40重量%未満である。処理CKDの液性限界は、好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも40、最も好ましくは少なくとも45重量%である。液性限界は、一般には60重量%未満、より一般には50重量%未満である。処理CKDの塑性限界は、好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも40%である。塑性限界は、一般には60未満、より一般には50%未満である。CECは、乾燥材料について、好ましくは少なくとも12、より好ましくは少なくとも15、最も好ましくは少なくとも20meq/100gmである。CECは、一般には、乾燥材料について、30未満、より一般には25meq/100gm未満である。
【0051】
本発明によって処理されているCKDは、好ましくは200mg/l未満、より好ましくは150mg/l未満の硫酸塩を滲出する。それは、好ましくは800未満、より好ましくは700mg/l未満のClを滲出する。それは、好ましくは1未満、より好ましくは0.6mg/l未満のSrを滲出する。それは、好ましくは15未満、より好ましくは12mg/l未満のCrを滲出する。それは、好ましくは300未満、より好ましくは250mg/l未満のCaを滲出する。処理CKDは、好ましくは1000未満、より好ましくは700mg/l未満のKを滲出する。処理CKDは、好ましくは150未満、より好ましくは120mg/l未満のNaを滲出する。このように、一つの実施態様において、本発明は、一以上の上記滲出特性を有する処理CKDを提供する。
【0052】
一般に、処理CKDにおいて滲出した硫酸塩の量は、未処理CKDに比較して少なくとも90%減少している。一般に、Clの滲出量は少なくとも40%、Srの滲出量は少なくとも95%、Crの滲出量は少なくとも30%、Caの滲出量は少なくとも80%、Kの滲出量は少なくとも60%、及び/又はNaの滲出量は少なくとも50%減少している。炭酸化効率(実施例2を参照)は、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、そして一般には少なくとも90%である。好ましくは、CaCOの2つの形態、即ち、(i)明確な菱面体晶方解石粒子、及び(ii)均一な針状アラゴナイト粒子が生成される。2つの形態はいずれも、一般に、約1ミクロンの平均粒子径を有する。
【0053】
上記の通り、処理CKDは様々な利点を有する。例えば、様々な環境において、優れた耐溶解性、耐流動性及び耐滲出性を有する。一つの好ましい実施態様において、処理CKDは、石灰セメントの製造方法に使用される。これに関し、本発明はまた、そのような方法から入手される、又は入手可能な石灰セメントも提供する。
【0054】
CKDベースのSPC
別の好ましい実施態様において、処理CKDは、硫黄ポリマーコンクリート(SPC)における骨材として使用され、該SPCは、本発明の処理CKD、元素硫黄及び改質硫黄、ならびに好ましくはガラスファイバーもまた含有する混合物から入手され、又は入手可能である。本発明のこの実施態様は、2つの産業廃棄産物、即ち、CKD及び硫黄を使い尽くすという利点を提供する。さらに、処理CKDは、骨材として使用される場合に利益をもたらす。従って、結果として得られるSPCは、優れた機械的特性、高い水分流動耐性(即ち、不透過性)、侵食性化学環境に対する優れた耐性、極めて低い吸湿性を有し、設計目的において許容される呼び強度を短時間で構築及び達成できる。それはまた、塩害侵食が問題となる可能性がある状況において特に有用である。これらの特性は、例えば、硫黄に対する化学改質剤及び/又はSPC組成物に対する物理的改質剤等を含むことによって、改質及び改良され得る。本発明により提供されるSPCは、ポルトランドセメントコンクリートよりも耐久性が高く、アルカリに対する耐性が高く、熱可塑性であり、そして将来のリサイクルを可能とする。また、処理CKDを骨材(即ち、良質な物理的充填剤)として使用すれば、SPCの密度及び耐久性は改善される。本発明のSPCから製造される生成物の長期間にわたる耐久性は、継続的な汚染物質隔離の確保に重要な役割を果たすことができる。本発明はまた、SPC調製での処理CKDの使用は、建設材料における方解石の使用をシミュレートするのに利用することができるという利点も提供する(近代建設では、石灰石の状態で方解石を使用してセメント及びコンクリートを製造しており、コンクリートに適用される上質な充填剤としての使用が増加している)。
【0055】
従って、本発明はまた、本発明の処理CKD、元素硫黄及び改質硫黄を加熱及び混合して混合物を製造することを含む、SPCの製造方法も提供する。
【0056】
SPCは、一般に硫黄を主成分とするコンクリートの一種であるが、処理CKD及び改質硫黄が(SPCが形成される前駆混合物において)存在することにより、SPCに重要な特性が付与される。これは、さらに下記に説明される。
【0057】
本発明に使用される元素硫黄としては、任意の特定形態の標準元素硫黄が用いられ得る。元素硫黄は、商用グレード、結晶質又は非晶質であってよい。硫黄は、硫黄セメントの調製の際に融解されるため、粒子の大きさは一般に重要ではなく、また固体又は液体(融解)の状態のいずれで用いられてもよい。
【0058】
硫黄の使用は、現在の市場需要を上回る早さで産生される他の産業副産物に有効利用されるため、有利である。例えば、アラブ首長国連邦(UAE)では、石油や天然ガスの製造における硫化水素の浄化によって大量の副産物硫黄が現在産生されている。この硫黄が、本発明に従って使用され得る。
【0059】
本発明により使用される元素硫黄は、一般に粒子状の形状及び99.9%の純度を有する。それは、例えばAl Ruwais製油所(UAE)より入手することができる。
【0060】
用語「改質硫黄」は、(a)α相(即ち、斜方晶形態)での硫黄の量が、融解した元素硫黄が室温まで自然冷却されたときに観察される量よりも少ない硫黄、又は(b)微結晶の形態で存在するα相での硫黄の量が、融解した元素硫黄が室温まで自然冷却されたときに観察される量よりも少ない硫黄のいずれかをいう。一般に、改質硫黄において、α相に存在しない硫黄の比率は少なくとも5%、例えば少なくとも10%又は少なくとも20%である。その比率は、より一般には少なくとも30%又は少なくとも40%である。好ましくは、本発明においては、改質硫黄は(a)及び(b)の両方を満たし、α相(即ち、斜方晶形態)に存在しない硫黄の比率は、代わりにポリ硫化物として主に存在する。従って、好ましくは、改質硫黄における重合度は少なくとも10%、例えば少なくとも20又は30%である。その重合度は、一般には少なくとも40%である。
【0061】
本発明の使用のための改質硫黄は、必要な改質をもたらす添加剤を元素硫黄に導入することにより作製される。結果として得られる改質硫黄は、一般に少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、一般に98重量%未満の硫黄を含有する。それは、好ましくは95〜97.5重量%の硫黄を含有する。それは、一般に0.01〜0.05重量%、好ましくは0.02〜0.04重量%、例えば0.02〜0.03重量%又は約0.025重量%の非イオン性界面活性剤を含有する。改質硫黄はまた、一般に1〜5重量%、好ましくは2〜4重量%、例えば2〜3重量%又は約2.5重量%のオリゴマー炭化水素の混合物(例えば、ビチューメン)を含有する。
【0062】
好ましくは、本発明の方法のための改質硫黄は、改質硫黄の総重量に基づき、95〜97.5重量%の硫黄、並びに合計として2.5〜5重量%のビチューメン及び非イオン性界面活性剤の成分を含有する。
【0063】
改質硫黄を作製するために基本的に使用する原料の好ましい量は、得られる改質硫黄において好適に存在する量に対応する。例えば、好ましい局面において、改質硫黄は、元素硫黄、ビチューメン及び非イオン性界面活性剤の混合により作製され、元素硫黄は混合物の95〜97.5重量%の割合を占め、ビチューメン及び界面活性剤成分は合計として混合物の2.5〜5重量%の割合を占める。改質硫黄を作製する反応時間は、通常少なくとも30分間であるが、一般に3時間未満であり、より一般には2時間未満である。好ましくは、反応時間は45〜60分間の範囲である。通常、120〜150℃の反応温度、好ましくは130〜140℃が用いられる。一般に、135〜140℃の温度が用いられる。最も好ましくは、約140℃の温度が用いられる。加熱及び混合を行った後、該方法は、好ましくは混合物を冷却することを含む。冷却は、単に混合物を放置して自発的に周囲の温度まで冷ます、或いは何らかの方法で積極的に冷却を引き起こす、及び/又は制御することにより行うことができる。一般に、5℃/分未満、例えば2又は3℃/分未満、好ましくは約1℃/分の冷却速度が採用される。一般に、この冷却速度は、冷却過程全体にわたって使用される。冷却速度を計算するために測定される温度は、コンクリート全体での平均温度である。
【0064】
本発明における使用のための改質硫黄は、好ましくは上記に説明した方法によって入手される、又は入手可能である。
【0065】
好ましくは、非イオン性界面活性剤は改質硫黄の作製において用いられ、結果として得られる改質硫黄は該非イオン性界面活性剤を含有する。そのような界面活性剤は、オリゴマー炭化水素の混合物と組み合わせて使用される場合、SPCの調製に特に有用な改質硫黄の作製を可能とする。従って、そのような改質硫黄を用いて入手される、又は入手可能なSPCは、非常に低い透水係数を含めて、強度、耐久性及び滲出性に関して優れた特性を有していることが明らかとなっている。そのようなSPCの使用は、粘土や他の細粒土等の材料が容易に入手できず、それゆえ遠隔地からの輸送を要するために通常は高価である乾燥地域において特に利点を有する。本発明のSPCの優れた特性はまた、廃棄物封じ込め、例えば、有害な化学又は放射性廃棄物を含む封じ込めにも利点を有する。
【0066】
「非イオン性」とは、界面活性剤が見かけ上の正味荷電の頭部を含まないことを意味する。非イオン性界面活性剤は、好ましくはアルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールである。
【0067】
アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールにおけるアルキル基は、一般に、12個までの炭素原子、例えば2から10、又は4から8の炭素原子を有する。それは直鎖であり得るが、好ましくは分岐鎖である。好ましくは、それは非置換である。一般に、それはオクチルであり、より一般にはiso−オクチルである。
【0068】
アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールにおけるアリール基は、一般に6から10の炭素原子を含む。それは、例えばフェニル等の単環式環であり得、又は特に定めのない限り、例えばナフチル等の2以上の縮合環からなっていてもよい。好ましくは、それは非置換である。一般に、それはフェニルである。
【0069】
アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールにおけるアルコキシ基は、一般に、1から4の炭素原子、例えば2又は3の炭素原子を含む。好ましくは、それはエトキシである。
【0070】
アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールにおける末端のアルコール部位は、一般に、繰り返されるアルコキシ基と同じ数の炭素原子を有する。好ましくは、それは1から4の炭素原子、例えば2又は3の炭素原子を含む。最も好ましくは、それは2つの炭素原子を有する。
【0071】
ポリエトキシ部分は、一般に平均して7から40、好ましくは30未満、より好ましくは20未満、例えば10未満のエトキシ単位を含む。一つの実施態様において、エトキシ単位の平均数は9である。別の実施態様においては、ポリエトキシ部分は平均して5から15のエトキシ単位を含む。
【0072】
一つの実施態様において、アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールは異なる種類のアルコキシ単位を含む共重合体であり、例えば、それはエトキシ及びプロポキシ単位の混合を含み得る。
【0073】
一般に、アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールは、アルキルフェノキシポリエトキシエタノールである。好ましくは、アルキルフェノキシポリエトキシエタノールは、平均式CrH2r+1(C)O(CHCHO)CHCHOHを有し、ここでrは4から12まで、sは7から40までである。rは、好ましくは5から10まで、例えば7から9までである。一つの実施態様において、rは4から8までである。一般に、rは8である。sは、好ましくは30未満、より好ましくは20未満、そして一般には10未満である。一つの実施態様において、sは9である。
【0074】
一つの好ましい実施態様において、界面活性剤はiso−オクチルフェノキシポリエトキシエタノールである。非イオン性界面活性剤は、例えば、Rohm and Haas Company, Philadelphia, PAによって製造されるTriton X-100(RTM)であり得る。
【0075】
好ましくは、オリゴマー炭化水素の混合物は改質硫黄の作製に用いられ、結果として得られる改質硫黄は該オリゴマー炭化水素を含有する。
【0076】
様々な種が、オリゴマー炭化水素として存在し得る。オリゴマー炭化水素の混合物は、一般に、一以上の多環式芳香族炭化水素を含む。従って、一つの実施態様において、オリゴマー炭化水素の混合物は、一以上の多環式芳香族炭化水素を含有する組成物である。
【0077】
本発明に従った使用のための多環式芳香族炭化水素としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、ナフタセン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、ベンゾフルオランテン(benzofluorathene)、ペリレン、ペンタセン、コランニュレン、ベンゾ[a]ピレン、コロネン及びオバレンが挙げられる。一般に、多環式芳香族炭化水素は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、クリセン、ピレン、ベンゾフルオランテン(benzofluorathene)、ペリレン及びベンゾ[a]ピレンから一以上が選択される。一つの実施態様において、フェナントレン及びピレンが用いられる。一般に、フェナントレンが用いられる。
【0078】
本発明に従った使用のための多環式芳香族炭化水素は、非置換であるか又は置換されている。置換基が存在する場合、それらは、一般に炭化水素置換基、例えばアルキル、アルケニル及びアルキニル置換基であるが、一般に、それらはアルキル(akyl)である。炭化水素置換基は、通常1〜10の炭素原子、一般に1〜6又は1〜4の炭素原子を有する。炭化水素置換基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。炭化水素置換基の好ましい例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル及びt−ブチルが挙げられる。より好ましくはメチル及びエチルである。最も好ましくはメチルである。
【0079】
オリゴマー炭化水素の混合物は、一般に一以上のアスファルテンを含有する。従って、オリゴマー炭化水素の混合物は、一以上のアスファルテンを含有する組成物であり得る。
【0080】
本発明に従った使用のためのアスファルテンは、一般にアルキル化縮合芳香族環である。アスファルテンは、一般に、n−ヘプタンには不溶性であるが、トルエンには可溶である。アスファルテンは、一般に、400から1500単位の様々な分子量を有する。最もありふれている分子量は、一般に約750単位である。分子量を確認する適切な方法は、ESI FT-ICR MSである。
【0081】
オリゴマー炭化水素の混合物は、一般に、一以上のアルカンを含有する。従って、オリゴマー炭化水素の混合物は、一以上のアルカンを含有する組成物であり得る。
【0082】
本発明に従った使用のためのアルカンは、様々な数の炭素原子を有し得、例えば20までの炭素原子、20〜35の炭素原子及び/又は35の炭素原子及びそれ以上の炭素原子を有するアルカンである。アルカンは直鎖であり得る。或いは、それらは分岐鎖、例えばiso−アルカンであり得る。
【0083】
一つの実施態様において、アルカンは、シクロアルカン、即ちナフテンであり得、或いはこれを含むことができる。ナフテンは、非環式アルカンの代わりに存在し得るが、一般に両方とも存在する。ナフテンは、例えば3以上、例えば4以上、又は5以上の環を含み得る。本発明の一つの局面において、それらは40未満、例えば30未満、20未満又は10未満の環を含む。ナフテンは、非置換であり得るか又はアルキル基で置換され得、アルキル置換基は、多環式芳香族炭化水素について上記に説明したものと同一である。
【0084】
オリゴマー炭化水素の混合物は、一般に、一以上の樹脂を含有する。従って、オリゴマー炭化水素の混合物は、一以上の樹脂を含有する組成物であり得る。
【0085】
オリゴマー炭化水素の混合物は、鉄、ニッケル及びバナジウム等の微量の金属、及び/又は酸素、窒素、硫黄、リンおよびハロゲン等の微量の非金属元素を含む、又は含まない場合がある。これらの非金属元素が存在する場合、それらはオリゴマー炭化水素の混合物の炭化水素構造内の適切な位置に見られ得る。
【0086】
好ましくは、オリゴマー炭化水素の混合物は、8から12、一般に約10の平均重合度を有する。また、オリゴマー炭化水素の混合物は、多環式芳香族炭化水素、アスファルテン、アルカン(一般に非環式及び環式の両方)及び樹脂の一以上又は全てを含有する組成物であることも好ましい。一般に、オリゴマー炭化水素の混合物は、これらの全てを含有する組成物、例えばビチューメンである。
【0087】
ビチューメンは、分解した有機材料の天然有機副産物である、黒色の、油状の、粘性を有する材料である。それは、原油蒸留物から得られる最底部画分から入手可能である。それは、非常に濃密で、且つ粘ちょうであるために流動性を有さず、二硫化炭素に完全に溶解し、主に高縮合多環式芳香族炭化水素で構成されている。
【0088】
上記非イオン性界面活性剤及びオリゴマー炭化水素の混合物は、これら成分が硫黄の重合を引き起こすことによって硫黄を物理的に改質するため、改質硫黄の製造過程において使用することが好ましい。従って、結果として得られる改質硫黄は重合硫黄を含む。重合硫黄が存在する場合、硫黄相変態(βからα)は冷却の間、常に発生するが、重合硫黄は硫黄結晶の間で柔軟層として作用し、それにより相変態の効果を低減する働きを有する。
【0089】
本発明の好ましい実施態様において、改質硫黄は、硫黄成分の総重量に基づき、45〜65重量%、好ましくは50〜60重量%、一般に約55重量%の単斜硫黄、及び35〜55重量%、好ましくは40〜50重量%、一般に約45重量%のポリ硫化物を含有する。
【0090】
重合度は、二硫化炭素(CS)に不溶な生成物の画分をカラムクロマトグラフィー(HPLC Agilent 1100; column PLgel Mixed C, 300*7.5mm*5μm、クロロホルム中の流速1ml/分、室温24℃)を用いて分析することにより確認することができる。
【0091】
一般に、ポリ硫化物の低分子量及び高分子量の両方の画分が改質硫黄に存在する。ポリ硫化物の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜30,000、一般に15,000〜20,000である。改質硫黄に存在するポリ硫化物の数平均分子量は、一般に200〜500、好ましくは300〜400である。改質硫黄に存在するポリ硫化物の多分散指数は、生成物の分子量分布を反映するものであり、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6、そして一般に約5である。
【0092】
改質硫黄の調製において、元素硫黄を用いた非イオン性界面活性剤とオリゴマー炭化水素の混合物との間の反応(即ち、相互に分散し得る程度)は、如何にそれらが相互作用するかに依存する。相互作用の種類としては:π−π結合、極性又は水素結合(ヘテロ原子の極性相互作用)及びVan Der Waals力がある。好ましくは、非イオン性界面活性剤がビチューメンと組み合わせて使用され、これは、硫黄と組み合わせた場合、相互に溶解又は分散する様々な分子種からなる均質な自己適合性(self-compatible)の混合物の生成を可能にする。一般に、この組み合わせは極性及び非極性材料の連続体を含む。これは、ポリマーの存在量、反応時間、反応温度、及び冷却速度に依存して、改質硫黄におけるポリ硫化物の順序又は構造の分野に通じる。
【0093】
140℃未満の加熱温度で、元素硫黄はポリ硫化物を形成する。この方法を説明すると思われるメカニズムは図33に表されている。基本的に、それは開始及び伝搬ステップを通して行われる。
【0094】
【数1】

【0095】
硫黄は、通常は元素硫黄Sの開環重合として解釈される、液−液転移を受ける。運動の増加によって温度の上昇を伴い、環内での結合は歪み、最終的に切断される。共有結合は二等分に切断し、それによってジラジカルが形成される。開環により、三重項ジラジカル鎖が形成される。その後、重合が行われて長鎖が形成される。
【0096】
本発明のSPCは、処理CKD、元素硫黄及び改質硫黄から製造される。処理CKDは、SPCにおける骨材として使用される。しかしながら、更なる骨材も存在し得る。これは、さらに強度を改善し、改質硫黄セメントの利用を拡大させることができる。従って、一つの実施態様において、骨材は物理的な安定化剤として作用する。更なる骨材は、一般にSPCの20から50、より好ましくは30から40重量%の割合を占める。硫黄結合剤の骨材に対する重量比は、好ましくは0.6から1、より好ましくは0.7から0.9、最も好ましくは約0.8である。これに関して、「硫黄結合剤」は、元素硫黄と改質硫黄の両方に由来する硫黄マトリクスのことをいう。
【0097】
そのような更なる骨材は、一般に強化材料である。SPCの任意の他の成分と不利に反応しない限り、一般に、あらゆる材料が骨材として使用され得る。更なる骨材の適切な大きさは、0.01から1mm、好ましくは0.05から0.5mmである。
【0098】
骨材の一つの可能性のある種類は、廃棄材料である。これが、一般に不要であり、或いは処分が必要であり得る他の産業副産物の有効利用を見出すことの特別な利点をもたらす。例としては、飛散灰、鉄及びスチール製造からのスラグ、非鉄スラグ、家庭ごみ焼却灰、表土材、浚渫沈泥、建設用レンガ、廃水処理汚泥、及び製紙工場汚泥が挙げられる。これらの材料は(様々な環境リスクを引き起こし得る)潜在的汚染物質の微量元素及び/又は重金属を含み得るため、それらを用いて侵入条件において考えられる潜在的危険性を評価する前に、注意を払う必要がある。
【0099】
本発明は、更なる骨材の分類の調整が不要であり得るという利点を有する。従って、廃棄材料等のより安価な原料を用いることができる。また、更なる骨材は粒状構造の形成を促進し得るため、SPCに強度を付与することもできる。
【0100】
一つの実施態様において、飛散灰が更なる骨材として用いられる、即ち、更なる骨材は飛散灰を含有する。飛散灰は、石炭灰としても周知である、燃焼石炭の灰副産物である。原子力産業の廃棄産物である飛散灰上位廃棄物も用いられ得る。物質的に、飛散灰は非常に微細な粉体材料である。それは主に、セノスフェア(ceno-sphere)と呼ばれる微小な中空球状の形態の粒子を有するシリカである。C型の飛散灰が一般に用いられるが、F型等の他の種類も用いられ得る。これらの2種類の飛散灰はポゾラン特性を有するが、水分の存在下で時間とともに固化して強度を獲得するため、C型の飛散灰が好ましい。骨材が飛散灰を含有する場合、飛散灰は、一般に更なる骨材の少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、一般に少なくとも50%の割合を占める。
【0101】
好ましくは、更なる骨材は砂を含有する。砂は、天然の微粉の岩石であり、粒子又は顆粒を含む。砂の最もありふれた成分は、通常は石英の状態であるシリカ(二酸化ケイ素)であり、その化学的不活性及び相当な硬度のために、風化に対して極めて高い耐久性を有する。骨材が砂を含有する場合、砂は、一般に更なる骨材の少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも35重量%、一般に少なくとも45重量%の割合を占める。いくつかの場合、砂は、更なる骨材のより高い比率を占めることができ、例えば少なくとも60%又は少なくとも70、80若しくは90%の割合を占める。
【0102】
上記の説明から明らかなように、SPCの形成過程を妨げない限り、多くの異なる種類の化合物が骨材として使用され得る。この目的を達成するために、本発明は、関連する環境コスト及び経済コストと共に、安価であり、且つ他に処分も必要とされ得る望ましくない材料を使用できるという利点を有する。
【0103】
一つの実施態様において、本発明は、更なる骨材が有害廃棄物を含有するSPCを提供する。従って、SPCは、一度凝結されれば、その中に有害廃棄物を埋め込む、即ち、廃棄物は固形化により含有される。
【0104】
本発明のSPCにおいて、処理CKDを含めた骨材の総量は、得られるSPCの総重量に基づき、一般に少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも60重量%である。骨材の総量は、得られるSPCの総重量に基づき、85重量%まで、又はさらに90若しくは95重量%までであり得る。しかしながら、骨材の総量は、SPCの総重量に基づき、一般に85重量%未満、好ましくは80重量%未満、より好ましくは75重量%未満、さらにより好ましくは70重量%未満である。骨材の総量は、SPCの総重量に基づき、一般に50から85%、より好ましくは60から70%である。
【0105】
好ましくは、本発明のSPCは、さらにガラスファイバーを含有する。ガラスファイバーは、SPCの総重量の、好ましくは0.1から1.5重量%、より好ましくは0.1から1.0重量%、さらにより好ましくは0.2から0.6重量%、そして最も好ましくは約0.3重量%又は0.35重量%の割合を占める。ガラスファイバーの使用は、SPCの構造完全性を改善する。ガラスファイバーは、好ましくは混合工程の間に添加される。或いは、それらは、混合工程の前、例えば、骨材と組み合わせることによって添加されることができる。
【0106】
ガラスファイバーを組み込むことによって、セメントマトリクスに埋め込まれた高強度ガラスファイバーを有する強化複合材料SPCを製造することができる。この形態において、ガラスファイバー及びマトリクスの両方がそれらの物理的及び化学的な同一性を保持し、さらに、いずれかの成分が単独で作用することでは達成し得ない特性の組み合わせを生み出す。一般に、ファイバーは主要な耐荷部材を提供し、一方で、周囲のマトリクスは以下の特性を有する:(a)所望の位置及び方向にファイバーを維持する、(b)ファイバー間の荷重伝達媒体として作用する、及び(c)環境的な破壊からファイバーを保護する。ガラスファイバーの存在は、飽和状態での材料破断の回避の一助となることができる。
【0107】
ガラスファイバーは、連続した長さ、又は不連続な(短い)長さの状態であり得る。後者の方が好ましい。図23及び24(b)に示されるようなガラスファイバーのSPCへの組込みは、SPCの強度向上、並びに破砕及び剥離の防止に通じることが明らかとなった。一つの実施態様において、ガラスファイバーは、0.6から1.4cmの範囲での短鎖ガラスファイバーカナダ(Canada)である。
【0108】
本発明のSPCにおいて、元素硫黄の量は、SPCの総重量に基づき、一般に少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%である。元素硫黄の量は、SPCの総重量に基づき、一般に50重量%未満、好ましくは45重量%未満、より好ましくは40重量%未満である。
【0109】
本発明のSPCの調製における使用のための改質硫黄は、必然的に特定量の「非改質」(即ち、斜方晶系の)硫黄を含有するであろう。しかしながら、SPCにおける元素硫黄の量が本明細書に示される場合、それは、改質硫黄原料由来ではなくむしろ元素硫黄原料由来の硫黄の量であることを示す。
【0110】
本発明のSPCにおいて、改質硫黄の量は、SPCの総重量に基づき、一般に少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.25重量%、より好ましくは少なくとも1重量%である。改質硫黄の量は、SPCの総重量に基づき、一般に3重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満である。
【0111】
一つの好ましい実施態様において、本発明は、30〜40重量%の砂、20〜25重量%の処理CKD、40〜45重量%の元素硫黄及び0.2〜2重量%の改質硫黄を含有するSPCを提供する。
【0112】
当然、本発明のSPC及びその調製方法は、国際標準ACI 548.2R(Guide for Mixing and Placing Sulfur Concrete in Construction)及びC1159-98R03(Specification for Sulfur Polymer Cement and Sulfur Modifier for Use in Chemical-Resistant, Rigid Sulfur Concrete)に準拠すべきである。
【0113】
本発明のSPCの製造方法において、使用される原料の好ましい量は、SPC製造物において好ましく存在する量に基本的に対応する。例えば、SPCの製造方法は、SPCの総重量に基づき、好ましくは40〜45重量%の元素硫黄、30〜40重量%の砂、20〜25重量%の処理CKD及び0.2〜2重量%の改質硫黄の混合を含む。より好ましい局面において、SPCはさらに0から1重量%のガラスファイバーを含有する。
【0114】
本発明のSPCの製造方法において、元素硫黄、改質硫黄、処理CKD及び任意の他の成分の混合物は、好ましくは130〜150℃、一般に約140℃の温度で、30分間から2時間、一般に1から1.5時間加熱される。
【0115】
別の実施態様において、本発明のSPCの製造方法は、(i)170〜180℃、一般に約175℃の温度に予熱している砂、(ii)90〜110℃、より好ましくは95〜105℃、そして一般に約100℃の温度に予熱している処理CKD、及び(iii)130〜150℃、一般に約140℃の温度に予熱している、元素硫黄及び改質硫黄を共に混合し、次いで(i)、(ii)及び(iii)の混合物を、130〜150℃、一般に約140℃の温度に20〜40分間置くことを含む。その後、得られる混合物は、一般に一以上の金型に流し込まれ、冷却される。SPC混合物は一般に119℃で溶融するが、149℃を超えるとその粘度は作業不可能な稠度にまで急速に上昇するため、温度調節が重要である。
【0116】
本発明のSPCの製造方法は、異なる順序で成分を混合することを含むことができる。好ましくは、元素硫黄及び改質硫黄が最初に混合され、処理CKD及び任意の他の骨材が引き続き添加される。砂及び飛散灰が骨材として使用される場合は、飛散灰は、好ましくは砂の前に添加される。
【0117】
本発明のSPCは、好ましくは上記の方法の一つによって入手可能である。1つの好ましい実施態様において、混合物は冷却される前に特定の形状に鋳造され、その形状が障壁の使用に適切なSPCのブロックを形成し、その障壁は物質の透過を制限するために適している。
【0118】
鋳造工程において、金型の温度は、好ましくはその中に置かれる混合物の温度より高い、又はその温度と同じである。一般に、金型の温度は、直近の混合温度より高い、又はその温度と同じである。別の好ましい実施態様において、混合物の振動を用いて高密度SPCを製造することができる。SPCが水分、及び/又は、例えば透過の制限が意図されている任意の廃棄物との接触に適する前に、1日間の硬化時間が一般に必要とされる。
【0119】
本発明のSPCの製造に130〜140℃の調製温度が用いられる場合、これは、廃棄物中に含まれる水分及び他の揮発性化合物が追い出されるという利点を有する。このように、該方法の間に少量の水分を効果的に揮発させることができる。従って、好ましい実施態様において、本発明のSPCは、130〜140℃の調製温度を用いて入手される、又は入手可能なSPCである。
【0120】
本発明のSPCは、高強度で、基本的に不透過性であり、酸及び塩に耐性を有する、非常に侵食的な環境における使用に適切な材料である。それは、極めて侵食的な環境において酸性レンガ、コーティング、ライニング又は他の保護システムによる保護が要求されるポルトランドコンクリートに対する、長期間の、コスト効率の高い代替品を提供する。本発明のSPCの更なる利点は、熱可塑性の特性を有することである。従って、その融点を超えて加熱した場合、液体になり、土又は廃棄物等の他の骨材をその中に混合することができ、次いで冷却すると混合物は再固形化して固体モノリスを形成し、新たに添加された骨材が固定化される。
【0121】
本発明のSPCの別の利点は、(該成分の加熱混合物から)形成された場合、水硬性セメントと比較して数週間というよりもむしろ数時間で十分な強度が得られることである。さらに、水硬性セメントのように凝結のために化学反応は必要とされない。これは、結合剤及び骨材の間の不適合性を最小限にする。蒸散性が非常に高い乾燥地において、(セメントの水和と固体マトリクスの製造に水の使用が必要とされる)水硬性セメントの使用は、水の不足によって妨げられる。その結果として、公共事業は、過度の収縮及び強度低下の被害を受けている。しかしながら、SPCの製造では水は必要とされない。
【0122】
本発明はまた、物質の透過を制限する障壁としての本発明のSPCの使用、及び本発明のSPCを含有する、物質の透過の制限に適した障壁も提供する。
【0123】
本発明はまた、本発明の一以上の障壁を有する、長期間に及ぶ物質の封じ込めに適切な封じ込め建造物も提供する。
【0124】
物質の透過を制限する障壁として、例えば、封じ込め建造物における本発明のSPCの使用は、高温の環境であるため乾燥地において特に利点を有する。それはまた、粘土材料が入手しにくく、乾燥地での地表下の土は高い透水係数(ほぼ10−5m/s程度)を有するという事実を考慮の上でも利点を有する。またそれは、必要とされ得る品質管理、及び汚染滲出液の漏れにつながり得る建設の際の事故(例えば、材料の破裂)の危険性を特に考慮して合成材料は高価であるため、有利である。
【0125】
本発明の封じ込め建造物は、本発明の一以上の障壁を封じ込めユニットにおいて、適当な強度を有する支持体及び基盤で包囲することによって製造され得る。好ましくは、本発明の封じ込め建造物は乾燥地での使用に適している。
【0126】
本発明の障壁は、一般に、有害廃棄物等の物質の長期間に及ぶ封じ込めに適している。これに関して、「長期間」とは、障壁を通しての物質の透過が、障壁の寿命を限定する要因であるとは予期されないという事実を表すことを意図する。それはまた、障壁のその周囲環境への崩壊が、障壁を限定する要因であるとは予期されないという事実を表すことを意図する。言い換えれば、障壁が整備された場合、透過を制限する機能及び周囲環境への最小限の崩壊が、障壁の寿命の間、又はその使用が継続される限りにおいて永久に継続することが予期される。
【0127】
長期間とは、例えば、少なくとも20年間、より好ましくは少なくとも50年間、さらにより好ましくは少なくとも100年間、例えば少なくとも250、500又は1000年間であり得る。一つの好ましい実施態様において、長期間とは基本的に無期限である。従って、本発明の構造物又は建造物は、永久的に透過を制限するのに適切となるように整えられる。
【0128】
本発明の障壁は、有害廃棄物等の物質の封じ込めに適している。用語「物質の封じ込めに適している」とは、障壁の形状及び寸法を反映することを意図する。従って、本発明の障壁は、物質を漏出し、それにより物質を封じ込める目的を無にする穴や間隙を含む形状を有するべきでない。一般に、本発明の障壁は、封じ込められた物質に直接接触する状態となることが予定される障壁の部分における構造に間隙又は穴がない状態をもって、物質を取り囲んで留めるように整えられ、成形されるであろう。例えば、本発明の障壁は、カップ、フラスコ又はボウルのような形状であり得る、即ち、側面及び底部は間隙又は穴を有さず、頂部は、封じ込められる物質の挿入/除去が可能なように開口部を有する。或いは、箱、シリンダー、棒又は平坦なシートのような形状にすることもできる。しかしながら、本発明の障壁は、例えば、別の方向に液状物質を移動させるために一以上の特定の方向に透過を制限することが意図された場合、穴又は間隙をその中に有することがある。
【0129】
本発明の障壁が、それ自体が有害廃棄物である(即ち、コンクリートの外への透過が制限されるべきである)骨材を含有する場合、廃棄骨材がSPC内に効果的に包含されている限り、障壁の形状は重要ではない。当然、本発明の障壁が、障壁自体の部分ではない(即ち、コンクリートの内外の両方への透過が制限されるべきである)物質の透過も制限する場合は、障壁は、好ましくは上記の通り整えられ、成形される。
【0130】
一般に、本発明の障壁は、SPC混合物を所定の形状に形成することを可能にする制御された方法によって入手可能である、又は入手されるSPCである。このように形成された形状は、その後の作業において崩れることなく取り扱うことができる十分な構造完全性を有しなければならない。
【0131】
一般に、本発明の障壁は、本発明のSPCの極めて低い透水係数を考慮して、1m未満の厚さである。障壁は、好ましくは0.3〜0.9m、より好ましくは0.5〜0.7mの厚さである。
【0132】
一般に、本発明の障壁は、モノリス、即ち、単一の固形化したブロックである。本発明の封じ込め建造物は、本発明の一以上の障壁を含み得るが、一般にはちょうど一の障壁を含む。
【0133】
好ましくは、本発明の障壁は、障壁によって封じ込められた物質が障壁を超えて透過することを制限する働きを有する。従って、障壁は、それが封じ込める物質から周囲環境を保護する。しかしながら、これと同様に、又はこれの代わりに、障壁は、障壁を超えて周囲環境から物質が透過することを制限する働きを有し得る。従って、障壁は、それが封じ込める物質を周囲環境から保護することができる。
【0134】
本発明の障壁は、有害廃棄物等の物質の透過を制限することに適している。「有害廃棄物」とは、例えば、毒性、引火性、反応性(例えば、酸化又は還元)、刺激性、発癌性、侵食性、感染性、催奇性、変異性、爆発性、又は放射性であることにより危険をもたらし得る物質をいうことを意味し、或いは有害廃棄物を容易に形成する能力を有する物質をいうこともできる。廃棄物は、例えば2〜13の範囲のpHを有し得る。本発明の障壁はまた、海洋環境にさらすことにも適している。
【0135】
与えられた障壁又は封じ込め建造物は、本発明の改質硫黄コンクリートの能力を有効に活用して透過を制限するという状況から、該障壁又は該建造物は、物質を長期間にわたって封じ込めることに適しているかどうかは明らかであろう。例えば、(使用又は処分についての何らかの他の手段が明らかになり得るまで、或いは明らかになり得る場合を除いて)無期限に有害物質を取り囲むことを意図された封じ込めユニットは、その永久的な存在可能性を反映するように構築されるであろう。例えば、それはおそらく極めて頑丈なものであり、非常に硬い基盤を用いて適切な位置に恒久的に設置され得る。そのような封じ込めユニットは、長期間に及ぶ物質の封じ込めにおける使用に適しているとして分類され得る。
【0136】
一方、化学物質製造工場に採用されるタンク又は反応槽、又は一時的に化学物質を留めておく保存タンクは、例えば、長期間に及ぶ物質の封じ込めに適するものとして分類され得ない。これは、例えば、それらが(ある時期に置き換えられることが予定されているため)恒久的に適切な場所に設置されず、且つ永続するように構築された基盤を有していない(これは、その目的を鑑みれば、不必要に技術を超えている)という事実から明らかであり得る。従って、それらは、無期限に使用される可能性があることを示すように構築され得ず、それゆえ、恒久的な使用には適し得ない。
【0137】
既に上述したとおり、本発明の障壁は、有害廃棄物の封じ込めに使用され得る。図34aは、一般的な有害廃棄物の封じ込め建造物の略図を示す。米国環境保護局(EPA)は、例えば、圧縮粘土ライナーは少なくとも0.9mの厚さであり、透水係数は10−9m/s以下であることを要求している。排水層は、一般に1cm/s以上の透水係数を有すること、及び24時間以内に漏出を検知することのできる漏出検知システムを有することが要求される。柔軟性メンブレンライナー(FML)は、少なくとも0.76mmの厚さでなければならない。
【0138】
図34bは、乾燥地での使用のための一般的な有害廃棄物の封じ込め建造物の略図を示す。ライナーは、2つのジオテキスタイルの間に挟まれた、又はジオメンブレンに接着された粘土の薄層からなる。この材料を説明するために、様々な用語が文献において用いられている。一般的な用語は、二重柔軟性メンブレンライナー(DFML)である。構造としては、乾燥地では、砂基質の下にある地下水を保護するために、2つのDFMLの層を使用しなければならないことが要求される。合成材料は、特に建設の際に要求される全ての品質管理/品質確保のために高価であることは注目する必要がある。また、有害滲出液の漏出、これは、例えば、地下水本体を汚染し得る、につながる材料破裂のリスクもある。
【0139】
図34cは、本発明によって提供される新規な封じ込め建造物の略図を示し、それは乾燥地における有害廃棄物の封じ込めに適している。ライナーは、最小の厚さが0.3mである改質硫黄セメント/コンクリートの一つの層からなる。そのような材料は、ほぼ10−13m/s程度の透水係数を有さなければならず、それは、米国EPAによって指定されている10−9m/sよりもはるかに低い。ライナー(改質硫黄セメント/コンクリート)は、中性、酸性又はアルカリ性の媒体等のような異なる環境において非常に低い滲出速度を有する不活性材料である。それは、化学的及び物理的な劣化に対して優れた耐性を有し、それにより、異なる環境条件においてその強度を保持する。この設計を使用することにより、乾燥地における人間の健康及び環境に対する多くの救済及び保護がもたらされるであろう。従って、本発明は、物質(一般には有害廃棄物)の透過を制限するための一以上のライナー層を含む封じ込め建造物を提供し、該ライナー層は、0.9m未満の厚さ、一般に0.8m未満の厚さ、例えば0.7、0.6又は0.5m未満の厚さである。その最小の厚さは、一般に0.3mである。
【0140】
上記に説明されている通り、本発明のSPCは、乾燥地で使用することに特に利点を有する。これに関して、乾燥地とは、温かい、暖かい又は暑い土地であって、蒸発散位に対する年間降水量の割合が0.65未満である土地をいう。本発明のSPCはまた、記録される平均降水量が年間あたり10日以下である土地で使用することにも利点を有する。
【0141】
CKDの処理方法に戻って、番号が付された以下の条項は、本発明の一つの特定の好ましい実施態様を説明する。
(1)以下の工程を含む、アルカリ性金属塩を含有する廃棄CKDの処理方法:
a.)アルカリ性金属塩を含有する大量のCKD及び大量の水を準備する工程;
b.)キルンダスト及び水を混合して、水酸化カルシウムを含有する混合物を水和過程により形成する工程;
c.)工程bより得られた混合物を乾燥する工程;
d.)工程cより得られた、乾燥された混合物を、篩にかけることにより分別する工程;
e.)流動層反応器を準備する工程;及び
f.)工程dより得られた、乾燥され、分別されかつ水和された混合物を、硫黄、窒素、炭素の酸性酸化物、ハロゲン化合物及びそれらの混合物からなる群より選択される汚染物質を含有するセメントキルン排出ガスで流動層反応器の中で炭酸化して、安定な材料を形成する工程。
(2)CKD/水の重量比が約2から約1.1、水の温度が約35℃から約40℃、及び混合が約600rpmで約30分間行われる、上記(1)に記載のCKDの処理方法。
(3)消石灰の不安定な化合物が形成され、pHが12.3まで上昇し、カルシウムシリケート水和物及びカルシウムアルミネート水和物を含有する安定な化合物が形成される、上記(1)に記載のCKDの処理方法。
(4)乾燥工程cが80℃未満で約24時間行われる、上記(1)に記載のCKDの処理方法。
(5)工程bより得られた混合物を、1/16thインチの篩目を通して篩にかける、上記(1)に記載のCKDの処理方法。
(6)二酸化炭素を水和CKDと反応させる装置及び工程を含む、上記(1)に記載の廃棄CKDの処理方法。
(7)装置及び工程が、ガス供給、燃焼排ガス出口、サンプル抽出機能、温度測定及び圧力計を含む流動層反応器チャンバー内である、上記(6)に記載の廃棄CKDの処理方法。
(8)ガスが供給管を通して、円錐型分配器を通して反応器の底部に注入される、上記(7)に記載の廃棄CKDの処理方法。
(9)ガスを上方に流動させてCKDの固形粒子を浮遊及び回転させ、炭酸化を最大限に高める、上記(8)に記載の廃棄CKDの処理方法。
(10)約25℃のCKDの温度、100%の流動ガス濃度及び3リットル/分の流動速度、1.5バールの注入口でのガス圧力、並びに約20から約60分間の滞留時間において、水和CKDの水分含量がCKDの約7から12重量%の範囲である、上記(1)に記載の廃棄CKDの処理方法。
(11)処理セメントキルンダストの粒子の大きさが、SEMより示されるものとして約5から1μm未満に減少し、pHが12.5から約9に減少し、電気伝導度が約94.1から約33.3μsに減少し、処理セメントキルンダストの溶解した固体の総量が約560から約201mg/lに減少し、処理セメントキルンダストの強熱減量が約25.17から約35.57に増加する、上記(1)に記載の廃棄CKDの処理方法。
(12)炭素取り込みの実測値と計算した理論値との間の比率として定義される炭酸化効率が約91%に到達し、CaCO形態の2つの型;1ミクロンの平均粒子径を有する、明確な菱面体晶方解石粒子及び均一な針状アラゴナイト粒子が明確になり、硫酸塩濃度が短時間及び長時間の実験の間にそれぞれ約1736から約112mg/l及び約576から約150mg/lに減少し、塩化物濃度が短時間及び長時間の実験の間にそれぞれ約1286から約673mg/l及び約376から約338mg/lに減少し、ストロンチウム濃度が短時間及び長時間の実験の間にそれぞれ約7.5から約0.5mg/l及び約12から約0.3mg/lに減少し、クロム濃度が短時間及び長時間の滲出実験の間にそれぞれ約17から約11mg/l及び約11から約5mg/lに減少する、上記(1)に記載の廃棄CKDの処理方法。
(13)上記(1)の方法によりCKDを処理する、処理CKDからの石灰セメントの製造方法。
(14)可溶性アルカリ及び硫酸塩が化学的に固定化及び/又は安定化される、上記(1)に記載のCKDの処理方法。
(15)滲出した金属の廃水排出物における濃度が低減される、上記(1)に記載のCKDの処理方法。
(16)処理CKDが、原材料としてクリンカー製造過程において使用される、上記(1)に記載のCKDの処理方法。
(17)処理CKDが、有害廃棄物の固形化/安定化のために使用される、上記(1)に記載のCKDの処理方法。
(18)得られる生成物が、酸性鉱山排水の中和のために使用される、上記(1)に記載のCKDの処理方法。
(19)二酸化炭素の排出が除去される、上記(1)に記載のCKDの処理方法。
(20)二酸化炭素が、将来的な使用のためにCaCOとして固体の状態で保存される、上記(1)に記載のCKDの処理方法。
(21)上記(1)に記載の方法に従って製造された、安定な材料。
【0142】
以下の説明及びその直後に示される実施例1から9、並びに図3から18も、この特定の実施態様(即ち、上記(1)から(21)の条項に示された実施態様)に特に関連するが、一般に、本発明にも関連する。
【0143】
従って、本発明は、導入される方法に適合するようにダストを条件付けることによって、アルカリ金属及び硫酸塩の溶解性の低減を通じて処理CKDを製造するための新たな技術を提供する。カルシウム、カリウム及びナトリウムの酸化物及び水和物の状態で存在する高アルカリ性廃棄キルンは、弱アルカリ性の炭酸カルシウム、重炭酸カリウム及び重炭酸ナトリウムに転換される。
【0144】
本発明の目的は、処理された処方物の中に重金属を封入して、滲出物の溶解を低減させるだけではなく、安定化を達成することである。この発明の処理は、沈降(又は安定化)を通じての固定化であり、それはCOを安定化剤として使用することに向けられる。しかしながら;安定化又は化学的な固定化は、COと水和形態のCKDとの組み合わせを用いることによって達成され得る。単独で、又は水と組み合わせて使用されるCOは、CKDにおける多くの無機成分の安定化を、様々なメカニズムを通して促進する。これらのメカニズムは、(例えば、沈降による)炭酸塩としての安定化(又は炭酸塩への転換)、その他;ポゾラン反応を通じての廃棄物粒子のマイクロカプセル化;金属炭酸塩又は金属重炭酸塩の形成等を含み、また、さもなければ大気中に放出されるCOガスも利用する。
【0145】
本発明の別の目的は、有害廃棄物を非毒性の廃棄物に転換すること、及び/又は有毒性の材料の環境中への放出を低減することである。本発明の更なる目的は、極めて有効且つ安価な、CKDの高アルカリ度を低減又は緩和させる方法を提供することである。さらに本発明の更なる目的は、液体廃水排出物を発生しない方法を提供することである。
【0146】
本質的に、本発明は、カルシウム、カリウム及びナトリウムの酸化物及び水和物を、弱アルカリ性の炭酸カルシウム、重炭酸カリウム及び重炭酸ナトリウムに転換することによって、アルカリ土類金属塩を含有する廃棄CKDを処理し、キルンダストの高アルカリ度を低減又は緩和する方法を意図する。
【0147】
該方法は、大量のCKD及び大量の水を準備する工程を含み、キルンダストがアルカリ土類金属塩を含有し、CKD/水の重量比が好ましくは約2から約1.1である。水の温度は好ましくは35°から約45℃であり、混合は好ましくは約600rpmで約30分間行われる。次いで、CKD及び水の混合物は、好ましくは80℃以下の温度で約24時間乾燥される。その後、乾燥した混合物は、例えば、1/16thインチの穴を有する篩を通すことによって分別される。該発明はまた、加圧されたCOを用いて、湿潤した分別CKDを炭酸化させる流動層反応器も組み込む。
【0148】
上記に説明している通り、この発明においては、CKDの長期間の安定化を補助するためにガス流動層が用いられる。流動層は、大量の固形粒子物質を流体のように挙動させる(通常、加圧ガスを粒子媒体の到る所に強制的に導入することによって行われる)場合に形成される。これによって、重力下で自由に流動する能力、又は流体タイプの技術を用いて汲み上げられる能力等の、通常の流体が備えた多くの特性及び特徴を有する媒体が得られる。それは、基本的な性質に影響を及ぼすことなく、媒体の密度を低下させる。
【0149】
流体化の原理は簡単であり、以下に説明することができる:固体粒子が、適切な大きさ、形状を有し、また十分に軽い(多孔質)場合は、流動速度の小さい(数cm/s)ガスの流れが粉体を流体化させるであろう。ガス固体系において、最小流動化を超えてガスの流動速度を増加させると、ガスの泡立ち及びチャネリングを伴う不安定性が引き起こされる。流動速度が大きい場合は、流体化はより激しくなり、固体の運動はより活性化される。この種の層は、擬集(aggregative)流動層、不均一流動層、バブリング流動層又は単にガス流動層と呼ばれる。
【0150】
本発明の方法の特定の性質は、以下のために改善がなされ得る:
1.本発明の装置及び方法は、以下に寄与する:
a.経済的な、セメント産業により放出されるCO燃焼排ガスの捕捉、及びこれらの温室効果ガス排出の有益な製造物への転換;
b.安全な地上処分を意図した、炭酸塩化されたダストの安定化;
c.有害廃棄物処理場での汚染物質の固定化;
d.酸性土壌の再生
e.CO排出の最小化;及び
f.人間の健康及び環境の保護。
2.廃棄材料は安価なカルシウム鉱物質を提供し、廃棄物質の環境品質はpH中和及び鉱物の転換を通して改善され得る。
3.CKDの処理後の硫酸塩の高い低減。短時間アニオン滲出試験から得られた未処理CKD及び処理CKDの水溶性硫酸塩の割合は、それぞれ93%及び7%であった。ひいてはこれが、シンゲナイト(syngenite)[KCa(SO・HO]、石膏[CaSO・2HO]、エトリンガイト(ettringite)[カルシウムアルミネート三硫酸塩水和物、[CAS32]、及び一硫酸塩[カルシウムアルミネート一硫酸塩水和物、[CASH18]沈殿物の形成を非常に低減させるであろう。
4.炭酸化方法は、CaCOの沈殿に寄与し、ダストに存在する利用可能なカルシウムを固定する。ダストに元来存在するカルシウムが固定され、炭酸塩の状態で固体として保持されるため、短時間及び長時間の滲出試験のICP解析から示される滲出Ca++は、高い割合が減少する。
5.作製された炭酸カルシウム粒子の多くは、明確且つ微細な形状であり、1μm未満の直径(又は粒子サイズ)を有している。しかしながら、異なる形態のより微細な粒子を作製することができ、工業用途で使用するのに適切な粒子サイズのCaCOを提供する。
【0151】
本発明の他の利点としては、以下のものが挙げられ得る:
1.処理CKDは、特定の形態、構造及び粒子サイズを有する純粋な石灰石(CaCO)を含有する。
2.処理CKDから石灰セメントを製造できる。
3.炭酸化による溶解性アルカリ金属及び硫酸塩の固定化。
4.pH12から約9への低減。
5.廃水排出物が存在しない。
6.クリンカー製造過程において原料として処理CKDを使用できる。
7.有害廃棄物の固形化/安定化、及び酸性鉱山排水の中和のための廃棄物管理において処理CKDを使用できる。
8.軟質地盤の安定化、膨張/膨潤土の処理、埋め戻し、及び路盤材料等の土木工学における処理CKDの使用
9.酸性土壌の中和等の農業実施において処理CKDを使用できる。
10.天然資源の使用を最大限に活かすことができる。
11.CO及びCKD等の廃棄材料を有用な生産物の製造に利用できる。
12.温室効果ガス排出の低減。
【0152】
流動層反応器装置
流動層反応器チャンバー(図3)は、一般にプレキシガラスカラム反応器(20)である。本発明の好ましい実施態様に従った方法のために、約50mmの内径及び約500mmの全高を有する該流動層反応器チャンバーが設計され、構築された。反応器(20)は、ガス供給口、燃焼排ガス出口(22)、熱電対等のサンプル温度測定手段(23)、及び圧力計(図示せず)を含む。二酸化炭素ガスが、特別な供給管(21)を通して注入され、該供給管は、反応器(20)の底部に延び、切り取られた頂部(26)を有する逆円錐形状のガス分配器(25)に接続されている。ガスは、分配板(24)によって分配器(25)に送られる。分配板(24)は、複数の開口部(直径3mmの12個の対称な穴)を有する。通常、流動化ガスは、流動化ガスの上昇気流が通過する反応器の底部に位置付けられた板を介して分配され、反応器が停止された場合、粒子は底部の上に静止する。
【0153】
流動層反応器原理
流動層反応器では、ガスが層を通して上方に流れ、CKDの固体粒子を浮遊させる。ガスは、分配器を通して、固体材料の全体にわたって上方に強制的に送られる。小さいガス速度では、ガスは材料内の空隙を通過するため、固体は所定の位置に留まったままである。ガス速度が増加するにつれて、反応器は、固体に対するガスの力が固体材料の重量の平衡を保つのに十分となる段階に到達する。この段階は、初期流動化として知られており、この最小流動化速度で発生する。この最小速度を超えた場合、反応器層の内容物は、沸騰したポットの水のように膨張及び回転し始める。CKD層の安定した膨張は、最小流動化の点を超えて、COガスの流れの有限区間にわたって発生する。
【0154】
粒子を運動させるのに極めて十分な速度で、粒子を通って上方に向かう空気又はガスの流れを伴う固体粒子の層は、流動層を構築する。膨張層は、ガス又は空気の流れの速度が増加し、粒子が離れる場合に形成される。限定された領域の中で、わずかなものだけが目に見えて振動し、動き回る。空気の流れの速度がさらに速い場合、全ての粒子が浮遊することになる。この時点で、粒子とガスとの間の摩擦力が粒子の重量の平衡を保ち、隣り合う粒子間の圧縮力の垂直方向成分が消失し、層のあらゆる部分を通しての圧力の低下がその部分におけるCOガス及び粒子の重量に近似する。該層は、初期流動層又は最小流動化での層と呼ばれる。ガスの流動速度が最小流動化を超えて速くなった場合、空気の泡立ち及びチャネリングを伴う大きな不安定性により、異なる種類の層が作り出される。
【0155】
CKD処理方法
本発明は、以下の説明において例示される工程の組み合わせ及び整列からなる。個々の処理工程(図4)は、水和(30)(水酸化カルシウムの形成);脱水、即ち、乾燥(31);篩による分別(32);及び炭酸化(33)(水和CKDとCOガスとの流動層反応器内での反応)である。
【実施例】
【0156】
実施例1:CKDの水和
CKDサンプルは、Al Ain、アラブ首長国連邦におけるセメント工場より提供された。サンプルは、風化地域において山積みの状態で屋外保管されたものを用いた。該CKDは、46% CaO、12.63% SiO、2.26% A1、2.08% Fe、0.89% MgO、1.78% KO、0.25% NaO、 1.56% SO、及び0.52% Cl(%は重量%である)より構成されていた。CKDの累積粒子径は(砂の場合と合わせて)図1に表されている。
【0157】
CKDに水が添加される場合、以下の一連の反応が起こる。
1.生石灰が水和され、水に安定でない消石灰[水酸化カルシウム、Ca(OH)]が形成される。化学反応は式1によって表される:
【0158】
【数2】

【0159】
2.水酸化カルシウムのイオン化;式2により示されるようにpHは12.3に上がる。
【0160】
【数3】

【0161】
3.ポゾラン(反応性シリカ)が系において存在する場合、カルシウムシリケート水和物[C]が、石灰と水に安定なポゾランとの反応の結果として形成した。関連する化学反応は、式3のように表され得る:
【0162】
【数4】

【0163】
4.同様に、ポゾラン(反応性アルミナ)が系において存在する場合、カルシウムアルミネート水和物[CAH]が、石灰と水に安定なポゾランとの反応の結果として形成した。関連する化学反応は、式4のように表され得る:
【0164】
【数5】

【0165】
5.式5によって示されるような硫酸塩鉱物の溶解:
【0166】
【数6】

【0167】
6.アルミン酸イオン及び硫酸イオンの溶液中の濃度に依存して、沈殿する結晶生成物は、カルシウムアルミネート三硫酸塩水和物又はカルシウムアルミネート一硫酸塩水和物のいずれかになる。カルシウムイオン及び水酸化物イオンで飽和された溶液において、前者は短い角柱の針のように結晶化し、高硫酸塩、又は鉱物学的名称としてエトリンガイトとも呼ばれる。一硫酸塩は低硫酸塩とも呼ばれ、薄い六角形の板のように結晶化する。関連する化学反応は、式6及び7により表され得る:
【0168】
【数7】

【0169】
【数8】

【0170】
エトリンガイトは、通常、水和開始から1時間の溶液相における硫酸塩/アルミン酸塩の比率が高いため、最初に結晶化する。エトリンガイトの沈殿物は、硬化(稠度の喪失)、固化(ペーストの固形化)、及び初期強度の増進、乾燥による収縮、及び水和による膨張に寄与する。硫酸塩が枯渇した後、エトリンガイトは不安定になり、次第に一硫酸塩相に転換される。
【0171】
CKDの水和過程の理論的範囲
製造物組成物の水分含量の効果を評価するため、HSC−4化学ソフトウェアを用いて水和過程をモデル化した。工業的に生石灰と呼ばれるCaOの水和は、大量の熱を放出する発熱反応である。水酸化カルシウム形成の平衡組成曲線が図5に示される。その結果は、該反応は化学量論であること、即ち、1モルの酸化カルシウムが1モルの水と反応し、1モルの水酸化カルシウムを生成することを示している。それゆえ、56ユニット(1モル)のCaOに18ユニット(1モル)のHOを加えると、74ユニット(1モル)のCa(OH)が形成する。Ca(OH)のCaOに対する比率は74/56=1.32である。これは、1kgのCaO及び0.32kgの水は1.32kgのCa(OH)を生成することを意味し、それは化学反応に必要な最低限の水である。それゆえ、形成されたCa(OH)は、75.7%のCaOと24.3%のHOを含む。
【0172】
CKDの水和に必要な水の量を計算するためには、CKDに存在するCaOの量を知る必要がある。CKDは46%のCaOを含有するため、1KgのCKDの水和に必要な水の量は、0.147Kgの水である。CKDは、アルミナ、シリカ、鉄、カリウム等の状態で更なる量の酸化物を含有するため、そのような量の水はCKDを水和するのに十分ではない。そこで、個々の酸化物の量を測定し、それらの化学反応に従って、必要な水の量を計算した。
【0173】
水和過程を制御する因子
CKDにおける主要な酸化物はCaOであるため、純粋な石灰について水和試験を行い、水に対する石灰の比率、攪拌の程度、水和時間、温度、及び水化学の効果を評価した。水和条件を最適化するため、100gのCaOを用いて、異なる蒸留水比率(1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3)、異なる温度(30、40、及び50℃)、及び異なる攪拌速度(200;400、及び600rpm)で小パッチの実験を行った。
【0174】
酸化カルシウムに水を添加する過程は、水和過程又は石灰消和と呼ばれる。極めて正確な量の水を用いて水和過程が行われる場合、その水和物材料は乾燥粉体であり、その過程は「乾燥水和」と呼ばれる。一方、過剰な水が水和に用いられる場合、結果として得られる水和物はスラリー状であり、その過程は「消和」と呼ばれる。爆発を回避するためには、水に生石灰を添加することがさらに勧められるのであって、その逆ではない。
【0175】
生石灰水和実験の結果から、水和過程は以下の因子に依存することが示された:
1.水に対する石灰の比率:消和温度に影響を与えることによって消和時間に影響を及ぼす。温度は、水温、石灰の反応性、及び水質の変化によって変わる。水に対する石灰の正確な比率を維持するより良い方法は、消和温度を制御することである。
2.消和水の温度:水和過程及び水和物粒子の特定の表面に大きな影響を及ぼす。冷たい消和水を乾燥した石灰に接触させてはならない。冷たい水と石灰を接触させた場合、ドローニング(drowning)と呼ばれる状態が生じる。ドローニングの状態で形成された水和物の粒子は、非常に粗悪であり、極めて反応性が低い。
3.水化学:消和過程において主要な因子である;消和過程は、特定の化学物質が消和水に存在することにより促進又は妨害される。固体が多量に溶解した水は、一般に過度の発泡を引き起こし、操作上の問題をもたらす。海水は、効果的に消和に使用することができる。しかしながら、その建設材料は、塩化物によって生じる侵食を考慮に入れなければならない。
4.消和時間:完全な水和に必要とされる時間である。この時間は、石灰に応じて変化する。反応性の高い石灰は、2から3分間で完全に水和するであろう。反応性が中程度の石灰は、5から10分間で完全に水和するであろう。反応性の低い石灰、硬焼石灰、及びマグネシウム石灰は、15から30分間で水和するであろう。
5.攪拌の程度:消和過程における最終生成物に影響を及ぼす。攪拌が弱すぎると、消和チャンバー内の温度が不均一になり、高温及び低温のスポットが生じるであろう。
【0176】
CKD水和過程の最適操作条件
CKDの水和において最適な操作条件を評価するため、異なる重量の水(0.33、0.50、0.67、0.83、1及び1.17Kg)を、35±2℃で、1kgのCKDに添加し、次いで600rpmで30分間機械的に攪拌した。それから、混合物を、80℃よりも低い温度;24時間で、オーブンで乾燥した。その後、乾燥したCKDを1/16−インチ(2ミリメートル)の網目を通すよう篩にかけて、最初の大きさのダスト粒子を分解した。最適な操作条件を表1に要約する。
【0177】
【表1】

【0178】
実施例2:CKDの炭酸化
炭酸化段階
炭酸カルシウム製造の実現可能性を調べるため、HSC−4化学ソフトウェアを用いて過程をモデル化し、その結果を図6に示す。コンクリートキルンダストの炭酸化は、多くの場合は二段階の反応で説明される。式8及び9により表される2つの反応の熱力学解析に基づけば、両反応は自発且つ発熱性であることが明らかである。
【0179】
【数9】

【0180】
【数10】

【0181】
第一の反応[CO−Ca(OH)]は、第二の反応[CO−CaSiO]よりもマイナスのデルタG(−112.48KJ/mol)を有し、第二の反応のデルタGは−41.84KJ/molである。それゆえ、第一の反応が最初に起こる。第二の反応は、いくらかのCa(OH)が平衡状態にある限り、進行しないであろう。これは、図6に示された結果から明らかに見ることができる。水酸化カルシウムの炭酸化過程が発熱性であるため、温度を高くすればカルシウムシリケートの炭酸化は促進され得る。炭酸化反応が起こると、水酸化物に組み込まれた水が遊離水として放出される。最大限に達成可能な、カルシウムシリケートからカルシウムイオンの転換は、図6に示されるような限定されたCO平衡組成で低下する。これは、COの化学量論的な量を限定することにより、第二の反応の発生が制限され得ることを意味する。
【0182】
金属イオン封鎖の程度
金属イオン封鎖の程度とは、炭酸化された鉱物の質量としての、捕捉されたCOの量を、利用可能な酸化物が全て炭酸化された場合に消費され得るCOの質量と比較したものをいう。この研究においては、金属イオン封鎖の程度は、封鎖されたCOの、熱重量分析(TGA)によって観察された質量を、炭酸化前のCKDの元素組成及び相組成に基づいた理論的に可能な量と比較することによって決定した。純粋な酸化物(例えば、CaO及びCa(OH)において、炭酸化の理論的な程度は、基本的な化学量論の関数である:
【0183】
【数11】

【0184】
従って、1トンのCaOは全て、0.785トンまでのCOを封鎖する可能性を有し得る。CKDにおいて、炭酸化の理論的な程度はさらに、化学量論の関数として計算することができる。しかしながら、その程度はまた、反応に対するこれらの酸化物の利用可能性にも依存する。CKDは、式10に加えて、多くの反応経路をもって、COを捕捉することができる:
【0185】
【数12】

【0186】
【数13】

【0187】
【数14】

【0188】
【数15】

【0189】
酸化カリウム及び酸化ナトリウムは、COと反応して重炭酸塩を形成することもできる。反応に利用可能なるCKD内の遊離酸化物の量は、キルンの種類、原料、使用される燃料の種類、及びその系からCKDが再生された方法に依存する。CKD組成は広範囲であるため、炭酸化の理論的な程度を特定することは困難である。それにもかかわらず、COの消費は、炭酸化前のCKDに存在する方解石の量を、無水石膏内に結合したCaOと併せて考慮することにより見積もることができる。COの概算と同様に、与えられたCKDにおける炭酸化の理論的な程度の概算は、以下の通り計算することができる:
【0190】
【数16】

【0191】
ここで、%COとは、炭酸化反応において消費されたCOの質量を、サンプルの当初の未反応質量と比較したものをいう。式15に示された化学量論的質量因子は、全てのCaO(CaSO及びCaCOにおいて結合されるものは除く、が反応してCaCOを形成し、全てのMgOが反応してMgCOを形成し、全てのNaがNa及びKCOに転換すると仮定する。Na及びKについての質量因子は、炭酸塩の代わりに重炭酸塩を形成する場合は2倍となる。
【0192】
【数17】

【0193】
従って、炭酸化反応において消費されるCOの量は、CKDの重量の29.45%である。
【0194】
実験的評価
実施例1において説明された水和工程の後、CKDを乾燥し、篩にかけた。次いで、最適な水分含量を有するCKDの固体基質材料を、流動層反応器の中に置き、炭酸化を開始するために加圧COに接触させた。Ca(OH)のCa2+への溶解速度は、溶解圧及び水分含量に依存するが、炭酸イオンに結合するカルシウムイオンの反応速度は瞬間的である。それゆえ、カルシウムイオン及び炭酸イオンの形成速度が、全体的な反応速度に対する主要な限定であり、より多くの水酸化カルシウムが溶解してカルシウムイオンの濃度を均一にする。流動層反応器の中に加圧COガスを加え、湿潤した水酸化カルシウムを加えれば、全体の反応は急速に進行するであろう。
【0195】
炭酸化過程の間、7〜15分間の時間にわたって急速な温度が観察された。最大に発生した温度は86℃であった。これは、炭酸化過程の発熱的性質によるものであり得る。また、CKD粉末におけるケイ酸二カルシウムをCO及び水にさらすことによって、顕著な発熱反応が生じた。
【0196】
炭酸化過程の最適化
炭酸化の効果を最適化するために、以下のパラメーターを調査した:
1.水分含量:水分含量は反応の重要なパラメーターである;完全に乾燥したサンプルでは反応は完全には起こらない。COの反応を促進するためには水が必要であるが、過剰な水は固体中の孔を閉塞させるために反応を制限することが知られている。水和およびCOの溶解は、固相からのCa2+イオンの溶解と同様に、水の存在下で起こり、Ca2+イオンはCOと反応して炭酸カルシウムを形成する。水−固体の割合が低い場合、ガス透過性は高く、COは効果的に材料の中に拡散する。しかしながら、水分含量が増加すると、CKDの中の孔は効果的に封鎖される。孔系へのガスの拡散は妨げられ、反応が阻害される。
【0197】
0〜25%の範囲にわたる異なる湿度で水和されたCKD廃棄物を、流動層反応器の中でCOにさらした。生成物を蒸留水の中で72時間振動させた後、全蒸発残留物(TDS)を測定することによって、水分含量を最適化した。図(7)より、7〜10%(w/w)の湿度でのCKDが最も良い条件であると思われることが示される。12%を超えると、炭酸化過程は減少する傾向にある。これは、反応は主に固体マトリクスの孔の中で起こることを示すことができる。
【0198】
炭酸化後のTDSの変化の他に、処理CKDの質量変化もある。固体方解石の形成はサンプルの質量の増加を引き起こし、それは、捕捉した二酸化炭素の量に直接関与し得る。
【0199】
2.篩の影響:篩にかけなかったサンプル及び16−メッシュの篩を通して篩をかけたサンプルを、10%の同一湿度で、炭酸化の精度を評価した。篩にかけなかったCKDサンプルと16−メッシュの篩にかけたサンプルとを比較することにより、交換表面を増加させるためにサンプルは篩にかけた方が良いことが示される。粒子サイズの減少、化学反応にさらされる表面の増加、及び該表面上への帯電の導入を通じて化学的に物質を活性化させるためには、研磨が期待された。
【0200】
3.COの流動速度:COガスの流動速度が、いわゆる最小速度点を超えて十分に速い場合、層が旋回される状態を観察することができる。また、炭酸化反応を完了するために必要とされる時間は、COの流動速度を速くすることで減少することも注目された。
【0201】
4.炭酸化の時間:サンプルを、5〜60分間の範囲の異なる時間にわたって、COにさらした。その結果から、炭酸化反応は基本的に20〜60分間で完了し得ることが示された。しかしながら、空気中では、炭酸化反応は24時間で完了し得、十分な透過性を持たない外部に露出した表面に限定されるであろう。
【0202】
炭酸化過程の最適条件は、表2に要約される。
【0203】
【表2】

【0204】
実施例3:未処理及び炭酸化CKDの物理的性質
セメント製造施設の外部での使用のために回収されるCKDの物理的及び化学的特徴は、該施設で採用されるダスト回収方法に一部依存するであろう。CKDには遊離石灰を見ることができ、その濃度は、一般に、キルンの最も近くで捕捉されたより粗悪な粒子において最も高い。より微細な粒子は、高濃度の硫酸塩とアルカリを示す傾向がある。より粗悪な粒子が分離されず、キルンに戻された場合は、ダスト全体において遊離石灰がより多くなるであろう。
【0205】
通常のCKDと水との混合物のpHは、ポートランダイトの飽和溶液のpHに非常に近似している。それは著しくアルカリを含有しており、侵食性を有すると考えられている。しかしながら炭酸化の後では、酸化カルシウムが炭酸カルシウムに転換されているため、CKDのアルカリ度は減少している。OH-の濃度が低下すると、水酸化物は炭酸塩よりも溶解性が高いため、溶液中のCa++濃度も減少する。表3に、CKDのいくつかの一般的な物理的性質を示す。
【0206】
【表3】

【0207】
強熱減量(LOI)がより高いことは、ダストサンプルが、その化学構造の中に結合水をより高い割合で含有しており、反応に利用できる酸化カルシウムがより少ないことを意味する。LOIがより低いことは、結合水がより少なく、水和反応のための遊離石灰がより多いことを示す。
【0208】
実施例4:未処理及び炭酸化CKDの鉱物学的組成
炭酸化CKDの鉱物組成を調べるため、PhilipsX線回折装置モデルPW/1840を、Niフィルター、Cu−Kα放射線
【0209】
【数18】

【0210】
と併せて用いて、40kV、30mA°及び走査速度0.02°/Sで、CKDのサンプルを分析した。2θ=2°及び2θ=80°の間の回折ピークを記録した。未処理CKDサンプルは、表4に示されるように、主要な成分として主に石灰石(CaO)、石英(SiO、及び実際に原料に存在する方解石(CaCOを、ある程度の消石灰(ポートランダイトCa(OH))、アーカン石(arcanite)(KSO及びカリ岩塩(KCl)、アルカリ硫酸塩(硫酸ナトリウム/カリウム)並びに石膏(CaSO・HO及びシンゲナイト(syngenite)(KCa(SO・HO)等の硫酸塩相と共に含有した。
【0211】
【表4】

【0212】
図8a及びbは、未処理(保管された)及び炭酸化CKDサンプルについてのXRD回折図形を表す。未処理CKDサンプルは、主要な成分として主に石灰石(CaO)、石英(SiO、及び実際に原料に存在する方解石(CaCOを、ある程度の石灰、アーカン石及びカリ岩塩、アルカリ硫酸塩(硫酸ナトリウム/カリウム)並びに石膏及びシンゲナイト等の硫酸塩と共に含有する。
【0213】
炭酸化CKDサンプルのX線回折同定により、方解石の線の絶対強度が増加したことが示された。炭酸カルシウムの形成におけるカルシウムイオンの消費のために、石灰、硫酸カルシウム、アルカリ−カルシウム複塩を含む、炭酸化の後に消失したいくつかの相が存在する。これは、炭酸化が、炭酸カルシウムを沈殿(又は形成)させ、CKDに存在する利用可能なカルシウムを固定し、それにより、そうでなければ残りのCKD固体を不純にし得るシンゲナイト及び石膏の沈殿の形成を大幅に低減することを示す。炭酸化された沈殿固体のX線回折同定は、いくつかのポートランダイトの存在を示し、このことは、CO及びOHの両方が存在し、そのpHが8.5〜9.5の範囲内であったことを示している。pHが低い場合、即ち9を下回る場合、COに加えてHCOが存在していた。
【0214】
実施例5:未処理及び炭酸化CKDの熱的特性
CKDの炭酸化前後の熱重量分析を、熱重量分析計(TGA 7 Perkin-Elmer)で、50〜1000℃の温度範囲において、20℃/分の加熱速度で行い、強熱減量から炭酸塩含有量を計算した。
【0215】
未処理及び炭酸化CKDサンプルについての熱重量分析(TGA)及び微分熱重量(DTG)曲線は、いずれの炭酸化条件であっても良好な再現性を示した。図9a及びbは、水和により200℃未満で炭酸化CKDサンプルの水分喪失が生じたことを示す。また、炭酸化反応が起こるにつれて、式8のように、水酸化物に結合した水も遊離水として放出される。400℃を超えると、式16のように、水酸化カルシウムが酸化カルシウム及び水に分解することに対応する吸熱反応が生じる。
【0216】
【数19】

【0217】
【数20】

【0218】
式17のように、500から900℃での炭酸カルシウムの分解は、サンプルの炭酸塩内容物であると考えられる。TGAより、未処理CKDにおける炭酸化された内容物の重量喪失の割合は17.7%になると測定されるところ、炭酸化CKDは26.77%である。それゆえ、炭酸化過程は、処理CKDにおける炭酸カルシウムの約52%の含有量増加に寄与している。炭酸化効率は、炭素取り込みについての実測値と式15による理論的計算値との比率として定義される。従って、炭酸化効率は26.77/29.45=91%であり、これにより、この発明(即ち、流動層反応器)において使用される処理方法は非常に有用であることが示唆された。
【0219】
実施例6:未処理及び炭酸化CKDの微小構造特性
走査電子顕微鏡を用いて得られた微小構造の結果により、CKD粒子の形態及び粒子サイズ等の特徴が保管条件の下で大きく変化し得ることが示された。新鮮なCKD及び備蓄されたCKDの走査は、図10a及び10bに示されるように、走査電子顕微鏡(化学分析用エネルギー分散型X線検出器を備えたJSM-5600 Joel顕微鏡)を用いて得られる。顕微鏡写真から、新鮮なCKD及び備蓄されたCKDの間で大きな形態の相違があることが示される。新鮮なCKDの粒子は、形状及び大きさにおいて粗悪で不規則でかつ不揃いであり、平均粒子径は約7μmである。備蓄されたCKDは、立方体の形態の反応産物であることの明確な証拠を示す。これらの結果は、化学反応(例えば、吸湿による水和及び表面の炭酸化)の結果として生じる微小構造における変化のためであると考えられる。
【0220】
炭酸化の後のCKD安定化メカニズムは、形成された粒子の形態及び大きさ等の特徴を調べることによって評価することができる。図11a及びbで明らかにされるように、CaCO形態の2つの型:明確な菱面体晶方解石粒子及び均一な針状アラゴナイト粒子が、約1μm未満の平均粒子径で存在することが示された。その形態及び粒子サイズは、炭酸化過程において、以下のような沈殿(又は反応)条件によって大きく変化し得る:
a.COの分散
b.二価カチオンの存在
c.[Ca2+]/[CO−2]のイオン比
d.pH
e.結晶形及び粒子サイズ分布に影響を与える、炭酸化過程の間に上昇した温度
【0221】
CaCOの形態には、菱面体晶方解石、針状アラゴナイト及び球状バテライト等の、沈殿条件によって変化する様々な型が存在する。Ca(OH)スラリーの初期の過飽和及び温度は、方解石、アラゴナイト及びバテライトの形状の粒子の比率を決定したことも観察された。飽和レベル及びイオン比が、結晶形及び粒子サイズ分布に影響を与えることが結論付けられた。CaCOの形態変化に関連するものとしては、他にCa(OH)溶液のpH及び過飽和レベルが挙げられる。炭酸化過程では、通常、紡錘形状で約2μmの粒子サイズを有する沈降CaCO粒子が生成する。
【0222】
実施例7:未処理及び炭酸化CKDダストから滲出されるアニオン及びカチオン
CKDの埋立場への処分又は廃棄物の再使用のための最も重要な基準の一つは、周囲環境への有害化合物の放出である。実験の結果から、CKDは、極めて高いアルカリ含有量と、高い硫酸塩含有量を有することが示された。該アルカリは、アーカン石(KSO)、NaSO等のアルカリ硫酸塩、及びカリ岩塩(KCl)、及び石灰等の酸化生成物の集合物として存在する。これらの生成物は地表条件で不安定であり、又は高溶解性である。CKDが水と接触する場合、これらの生成物は、完全に溶解するか、又はより安定化し、溶解性のより低い第二相が沈殿するであろう。従って、CKD)滲出液におけるいくつかの構成元素の濃度は二次沈殿物の溶解性によって制御されるであろうが、他の元素の濃度は、滲出液に対するそれらの利用可能性、及び第一相の滲出から長時間かけた該溶液中へのそれらの拡散流量によって制御されるであろう。これらの2種類の元素の挙動を区別するためには、少なくとも2つの異なる固体/水の比率で、特定の廃棄物の滲出試験を行うことが望ましい。それから、固体/水の比率が半分となるときに元素の濃度が2倍にならない場合は、溶液中のその濃度に対する固相のコントロールが必要である。
【0223】
【表5】

【0224】
実際の滲出試験は、埋立場での短時間及び長時間の滲出挙動を調べるためにデザインされたBritish Standard BS EN 12457: 2002に従って行われた。それは、10L/kgの液体−固体比率での2段階の滲出試験である。CKDは、2L/kgの液体−固体比率で6時間回転混合させて滲出させ、次いでろ過した。残留物を、さらに8L/kgの液体−固体比率で18時間滲出させた。滲出液を0.45μmのろ紙でろ過し、その後、2つの部分に分けた。第一の部分から、イオン−クロマトグラフィー(DIONEX IC 90)により塩化物及び硫酸塩の含有量を測定した。第二の部分は、金属分析のために硝酸でpH<2に酸性化させた。主要元素としてCa、K、Na、及び微量元素としてSr及びCrの滲出液における濃度を、ICP(誘導結合プラズマ)により分析した。
【0225】
表5に示されたように、硫酸塩及び塩化物の濃度は炭酸化後に明らかに低下した。二酸化炭素がCKDと反応した場合、炭酸カルシウム(CaCO)が形成される。CaCOは、硫酸カルシウムよりも溶解性が2オーダー低いため(2から3g/Lに対して0.01から0.02g/L)、カルシウムが効果的に固定化され、それにより溶液中のアルカリ及び硫酸塩が低減される。未処理CKDサンプルについて、滲出したCa、Na及びKの濃度は非常に高く、これらの元素を有する岩塩及びカリ岩塩等の鉱物の高溶解性によって起こる。Sr及びCr等の他の元素の放出は、より少ない量であることがわかった。表6は、炭酸化後の金属放出の変化を示す。
【0226】
【表6】

【0227】
実施例9:処理CKDの耐久性
CKDの耐久性の試験は、全般的な処理システム性能評価手法の基本的な部分である。CKD廃棄物ダスト内容物の利用可能性は、未処理及び処理CKDを多様な環境試験溶液;蒸留水、沸騰水、海水、酸性及び塩基性広域緩衝溶液に供することによって表された。1gの廃棄CKDを100ml蒸留水に懸濁し、72時間激しく振とうした。金属の滲出をICP分析を用いて測定した。
【0228】
未処理CKDを水と接触させた場合、高濃度の硫酸塩及びアルカリ金属Ca、K、Na及びAlが滲出される。Cr及びSr等の他の構成成分は、より低い程度で滲出される。処理CKDでは、図12に示されたように、放出された硫酸塩及びアルカリ金属の濃度は低下する。滲出された元素は、以下の特徴を示す:
1.処理CKD溶液において滲出された全体のCaは、未処理CKDと比較して明確に減少した。これは、溶解性の水酸化カルシウムが不溶性の沈降CaCOに転換されたためである。
2.沸騰水において滲出されたCa量は、25℃で滲出されたものよりも少ない;この現象は以下のように説明することができる;いくつかの炭酸カルシウムは、式18に示されるように、二酸化炭素で飽和しているHと結合して溶解性の重炭酸カルシウムを形成する。沸騰水は、式19に示されるように重炭酸塩からの炭酸塩の形成を促進し、炭酸カルシウムを溶液外に沈殿させ、これにより、滲出されるカルシウムが低減される。
【0229】
【数21】

【0230】
【数22】

【0231】
3.CKDの処理後は、Kの滲出も減少した。これは、水酸化カリウムが炭酸カリウムに転換して、100gmのKOHは50mlのHOに溶解するところが、112gmのKCOは100mlのHOに溶解するという溶解性の相違が生じたことに起因し得る。
4.異なる環境でのCKD溶出試験の結果から、CKDを水に接触させる場合に高濃度の硫酸塩が滲出されることが示された。炭酸化の後は、放出される硫酸塩はさらに低減することが証明された。その構造が十分に炭酸化されるとで、アルカリ金属は炭酸塩として効果的に固定され、これにより、アルカリ硫酸塩の形成が妨げられる。塩基性媒体における硫酸塩の滲出は、アルカリ性緩衝液の中の硫酸塩と水酸化ナトリウムとの間の強力な相互作用に起因し得る。
5.海水における多量のアルカリ金属及び硫酸塩の滲出は、CKDと海水の塩とが相互作用して水溶性化合物を形成し、それが、その後で滲出されることによる。
6.Cr及びSrに関して、滲出される量は比較的少ない。それらは、これらの元素のアニオン形態が石膏の構造におけるSOの代用となる可能性に加えて、実際に個々の溶液との反応性が非常に低い。炭酸化の結果から、硫酸塩の減少のためにこれらの元素の量が低減されたことが推測される。
【0232】
図13は、工程50において大量のCKD及び大量の水が準備される、本発明の第一の好ましい実施態様に従った方法を示す。キルンダスト及び水は、工程52において、Heidolph mechanical 5 stirrer Model RZR1を用いて約600rpmの最大速度で約30分間混合され、次いで工程54において、約80℃未満の温度で約24時間乾燥させる。乾燥した混合物は、次いで、工程56において、1/16thメッシュの穴が開いた篩を通すことにより分別する。その後、分別された湿潤性CKDを、工程58において、加圧COを用いて7〜12%の範囲の水分含量で、流動層反応器の中で炭酸化させる。
【0233】
図14は、本発明の一つの実施態様に含まれる更なる工程を示す。これらの工程は図13に示された工程に追加され、工程60において、炭酸カルシウムの2つの形態を形成する工程を含む。工程62では、硫酸塩、塩化物、並びにストロンチウム及びクロム等の重金属の濃度が低減される。
【0234】
図15に示されるように、工程64において、アルカリ金属は安定化される。
【0235】
本発明の更なる実施態様は図16に示され、工程66において、図13に示された実施態様からの排出物における金属濃度を低減させる。
【0236】
図13の方法に続く工程が図17に示される。その工程68は、工程58又は62又は64又は66からの処理キルンダストを用いて、酸性鉱山排水を処理する。さらに、図18に示されるように、本発明の方法は、二酸化炭素排出を低減又は除去するための工程70も含み得る。
【0237】
本発明は、その好ましい実施態様に関連して説明されているが、添付の特許請求の範囲を逸脱しない範囲で本明細書に包含される変形及び変更が行われ得ることが認められるべきである。
【0238】
実施例10:CKDの安定化
炭酸化を通じての水和CKDの安定化メカニズムを、処理方法前後の粒子の形態構造、色及び大きさを調べることにより、実験的に評価した。炭酸化後は、色は消失し、粒子サイズは約7から1μmに減少した。未処理CKDの粒子は、形状及び大きさにおいて粗悪で不規則でかつ不揃いであった。炭酸化の後は、図(10a及び11a)に示されたように明確な菱面体晶方解石粒子が形成される。さらに、表7に示されたように、処理CKDの物理化学的性質は炭酸化後に変化した。
【0239】
【表7】

【0240】
また、上記表5及び6に示された結果から、CKDの炭酸化は、塩化物、硫酸塩、Sr及びCr等の滲出される可能性がある汚染物質を低減させたことも示される。観察された結果は、以下のように説明することができる。第一に、任意の可能な滲出についてpHが主要なパラメーターであることから、より低い(中性により近い)pHの処理CKDが、低濃度の硫酸塩及び塩化物、並びに重金属の低溶解性に寄与する。従って、炭酸化が促進された後、処理CKDの自然のpHが最低限の重金属溶解性に閉ざされる。さらに、形成された新たな相における収着により、微量元素の滲出も低減されることが示される。第二に、アーカン石(KSO)及びカリ岩塩(KCl)等の未処理CKDのいくつかの既存の相は地表条件で不安定であり、又は溶解性を有するため、CKDが水及び二酸化炭素と接触された場合、それらは沈殿するであろう。
【0241】
実施例11:改質硫黄の製造
この研究に使用した砂漠砂は、Al Ain地域、UAEにおける砂丘採石場から入手した。砂は、天然の微粉の岩石であり、粒子又は顆粒を含む。砂の最もありふれた成分は、通常は石英の状態であるシリカ(二酸化ケイ素)であり、その化学的不活性及び相当な硬度のために、風化に対して極めて高い耐久性を有する。その累積粒子径分布は図1に表されている。砂の化学的分析から、該砂は、74.4% SiO、0.47% AL、0.676% Fe、16.35% CaO、1.158% MgO及び0.13% KOからなることが示された。
【0242】
採用した硫黄は、Al Ruwais製油所(UAE)より入手した商用グレードの硫黄(約99.9%の純度)であり、そこでは、石油及び天然ガスの製造における硫化水素の浄化によって、現在、大量の副産物硫黄が生成されている。
【0243】
改質硫黄は、元素硫黄、ビチューメン及びTriton X-100(RTM)を約140℃で45〜60分間混合することにより調製した。反応の進行後に混合物の粘度及び均質性が変化した。改質硫黄生成物は硫黄ポリマーを含有し、冷却した場合はガラス様の特性を有する。ビチューメン及びTriton X-100は硫黄が結晶を形成すること、又は結晶に戻ることを阻害し、形成されるあらゆる硫黄結晶の大きさを最小限とする。大きな結晶の成長が制限され得るのは、図19a及び19bに示されたように、ビチューメンの粒子が、数少ない大結晶の代わりに多くの小結晶の形成を引き起こす核形成部位として機能を果たすためであると考えられる。結果として得られる改質硫黄は、本発明の方法における使用に適しており、経済的に製造されることができ、高い圧力を受けておらず良好な耐久性及び侵食耐性を有するSPC製造物に繋げることができる。ビチューメン及びTriton X-100の添加は以下のことに寄与することに注目すべきである:(a)大きな硫黄結晶の成長の抑制、(b)得られる改質硫黄における、ひび割れ形成に対する耐性の増強及び熱安定性の増強につながる均一なポリマー分布、及び(c)硫黄鉱物学の改善。実験の結果により、改質硫黄は、その単斜晶(ベータ)形態を保持し、30か月の試験期間の中ではその当初の斜方晶(アルファ)形態に転換されず、このことは、改質硫黄製造物におけるポリマー化された硫黄の高い安定性を示すことが示された。
【0244】
実施例12:硫黄ポリマーコンクリートの製造
SPC試料を、硫黄コンクリートの混合及び設置のためにACI 548.2R-93に説明された手順によって調製した。図20は、SPCの製造が可能な方法を示す。それは、原料が複数の処理過程を受けることを示すために簡略化されている。SPC物品の調製は、予熱された骨材と融解した元素硫黄及び改質硫黄とを、約120から140℃の間で混合器の中で混合させることによって行われる。より具体的には、処理CKDは約100〜110℃まで加熱された。加熱された砂及び処理CKDを液体混合物(元素硫黄及び改質硫黄の両方を含む)と、実質的に均質な混合物が得られるまで適切な混合器の中で混合し、混合の間、温度を維持した。高温の混合物を、続いて鋳型を用いて円柱および立方体に鋳造成形する。
【0245】
SEMの結果より、SPCの内部構造は、高度な充填を伴って極めて均質であることが示された。硫黄は骨材を被覆して非常によく結合し、図21に示すように、感知し得る空隙がほとんどなくなるように内部空間の充填も行うことが示された。大きな硫黄結晶を観察することはできなかった。図22に示されたように、斜方晶及び単斜晶の両方の結晶化特性がサンプルにおいて観察された。
【0246】
実施例13:強化されたSPC組成物
ガラスファイバーが建設材料を強化する能力は、SPC製造物の張力特性を高めるため、実用的に極めて重要である。ガラスファイバーを使用して建設産業におけるSPCの構造完全性を改善することが以前に報告されている(Jong et al., 1985, Fiber reinforcement of concrete to enhance flexural properties. RI-8956, Bureau of Mines, Department of Interior, Washington, DC、US 5678234 及びUS 4414385も参照)。Owens Coming, N.Y.により製造された測定長さ12.7mmのガラスファイバーが、少量(0.5重量%)、実施例12のSPC混合物に添加された。
【0247】
実施例14:混合プロトコール及び測定順序
SPC混合物に使用された成分の比率は、該混合物の加工性、並びに得られるSPCの強度及び耐久性等の特性にも影響を及ぼす。本発明のSPCは、好ましくは硫黄結合剤(元素硫黄及び改質硫黄)、骨材(処理CKD及び砂)及びガラスファイバーを含有する。SPCの強度は、混合の種類、骨材の性質及び結合剤の骨材に対する比率に依存する。本明細書で使用される「結合剤」とは、元素硫黄及び改質硫黄の両方に由来する硫黄マトリクスをいう。
【0248】
i)結合剤における改質硫黄の比率の効果:改質硫黄の使用効果、即ち、SPC、及び改質硫黄を使用せずに製造した硫黄ベースのコンクリートの性能の相違を評価するための適正な基準を設けるため、異なる比率の改質硫黄を用いてSPC試料を調製した。その結果は図24aに示される:改質硫黄の比率が増加するにつれて、圧縮強度が直線的に低下した。これは、粘度の上昇によるためと考えられ、US 4293463における以前の報告とも一致する;(改質硫黄において)ポリマー化硫黄が存在することによる粘度の上昇は、硫黄結晶化に直接的な影響を与える。より粘度の高い液体では、結晶の成長が阻害され、圧縮強度の部分的な減少が引き起こされる。
【0249】
ii)ガラスファイバーの効果:ガラスファイバーの量を、0.1〜1重量%に変化させた。ガラスファイバーを混合物に添加すると、SPCの圧縮強度が上昇する。最も好ましい比率である、0.35重量%は、ミキサビリティー(mixability)に悪影響を与えることなく、適切な構造完全性を提供する。量が多くなると凝集する傾向があり、図24bに示されたように、混合物の加工性が低減し、強度が低下した。
【0250】
iii)硫黄結合剤の骨材に対する比率の効果:圧縮強度を、異なる比率について測定した。硫黄結合剤の骨材に対する比率が0.8まで上昇するにつれて圧縮強度は増加し、全ての粒子が硫黄の薄い層によって被覆される。硫黄結合剤は、骨材粒子の結合、空隙の充填、吸湿の最小限化によってSPCの侵食耐性を向上させ、混合物における十分な流動性を提供し、加工可能なSPC混合物を提供する。硫黄結合剤は、砂及び処理CKD粒子の間の連結を容易にし、その潤滑効果に基づいて混合物をより小さくする。しかしながら、硫黄結合剤の比率が高くなると、骨材粒子の周囲の硫黄層の厚さが増加して脆い結合が形成されたため、図24cに示されたように圧縮強度は低下した。硫黄結合剤の添加は、混合物のレオロジー特性に非常に大きな影響を及ぼし、これは、結果として得られるSPCの適合性、密度及び空隙率に反映される。
【0251】
上記に説明された実験結果に基づき、SPC物品の調製のための最適な混合設計は以下のとおりである:40〜45重量%の元素硫黄、0.25〜2重量%の改質硫黄、20〜25重量%の処理CKD、30〜40重量%の砂、及び0.1〜0.6重量%のガラスファイバー。
【0252】
【表8】

【0253】
実施例15:SPCの物理化学的性質
固形化/安定化を評価する最もありふれた方法は、密度及び透過性を調べることである。調製されたSPCの計算密度は、2.11〜2.25Mg/mの範囲である。透過性試験を行うため、直径が38mm及び長さが85mmであると測定されるシリンダー形状のSPCサンプルに対して、500psiの圧力で水を透過させる試みを行った。3日間にわたって500psiの圧力を適用し続けたにもかかわらず、流れが見られることはなく、調製されたSPCは水の流れに対して不透過性であることが示された。更なる物理化学的結果は表8に示される。
【0254】
実施例16:SPCの圧縮強度
直径が38mm及び長さが85mmであると測定されるシリンダー形状のSPC試料を鋳造し、空気中で3日間硬化させた。次いで、試料は、(a)25及び60℃の水溶液、(b)25℃の海水、(c)25℃のpH4の酸性広域緩衝液、及び(d)25℃のpH9の塩基性広域緩衝液に浸漬させた。全ての実験は12ヶ月の期間で行われた。シリンダー状の試料は、全ての側面が試験溶液に接触するように置かれた。試験期間中、溶液を覆った状態にし、蒸発を最小限にした。圧縮強度の結果は、溶液に浸漬する前の乾燥したSPC試料の結果と合わせて図25に示される。12か月の試験期間では、外観上の破断や体積変化は観察されなかった。処理CKDベースのSPCは、高い耐吸湿性を示す。全ての試料は、溶液に浸漬してから1年後は、重量及び寸法においてごくわずかな変化しか示さず、それらの圧縮強度も、図26に示されたように、浸漬期間後も維持されていた。その結果より、(a)25及び60℃の水、(b)pH9の塩基性広域溶液、(c)海水、及び(d)pH4の酸性広域溶液に浸漬された処理CKDベースのSPCの圧縮強度に対して、1、2、3、4、5、6及び12か月の浸漬後に、悪影響が及ぼされることはないことが明確に示された。ひいてはこれが、処理CKDで製造されたSPCは幅広い範囲の環境条件に対して高い耐性を有するという見解を支持する。
【0255】
実施例17:SPCの鉱物学的性質及び微小構造
処理CKDベースのSPCの製造の間に形成される鉱物について、X線Philips PW/1840回折分析を、Niフィルター、Cu−Kα放射線
【0256】
【数23】

【0257】
と併せて用いて、40kV、30mA及び走査速度0.02°/Sで試験した。回折ピークが記録され、化学反応により形成された鉱物を評価した。25℃の空気中及び60℃の水中での製造および硬化条件後のSPCの鉱物組成は、図27a及びbに示される。これらの図において示された結果から、処理CKDベースのSPCは、硫黄(S)、石英(SiO)、方解石(CaCO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化カルシウムアルミニウム水和物(CaAlnHO)、斜長石;カルシウムアルミニウムシリケート(CaAlSi)、及び白雲石(CaMg(CO)からなることが示される。これらの優位なピークは、表9に示されたように、湿潤条件で硬化が起こる場合に約1.5%のソーマス石(CaSiO・CaSO・CaCO・14・5HO)が同定されたことを除いて、乾燥及び湿潤硬化条件では変化がなかった。ソーマス石は、エトリンガイトに対して定方位に成長し、エトリンガイトに対して第二世代によって取り囲まれているとして報告されている(Carpenter, A.B., Oriented overgrowths of thaumasite on ettringite, 1963, Am. Miner. 48 11 and 12, pp. 1394-1396)。鉱物学的分析により、製造されたSPCは、エトリンガイトの形成(これは、その水を吸収する、膨張する、及びひび割れを発生する能力により、ポルトランドセメントコンクリートにおける主要な問題を構成する)がほとんどなく、石英、方解石、カルシウムアンモニウムシリケート、酸化アルミニウム水和物、酸化カルシウムアルミニウム水和物、及び白雲石等の安定な鉱物を形成するため、安定であることが示された。
【0258】
【表9】

【0259】
水及び10%硫酸溶液に24℃で1年間浸漬された、処理CKDベースのSPCの顕微鏡的研究は図28及び29に示される。水に1年間浸漬されたSPCは、表面或いは内部のひび割れがなく、強く結合された構造を有していたが(開放空気中に放置された場合と同様)、10%硫酸溶液に浸漬された試料は、わずかな表面浸食を被っていた。この効果は、処理CKDが、酸性溶液によって大きく影響される炭酸カルシウムを含有するためであると考えられる。EDXを使用して行った、水及び酸性溶液におけるCKDベースのSPCの元素分析は表10に表され、カルシウムの平均濃度は、酸性溶液に浸漬された後に減少したことが明らかに示される。
【0260】
【表10】

【0261】
実施例18:SPCの滲出可能性
苛酷な環境条件におけるSPCの耐久性を、滲出試験を用いて評価した。滲出試験は、長さ、幅及び高さが50×50×50mmであると測定されるSPCの立方体試料について行われた。該試料を、25及び60℃の異なる温度の純水に、pH9の塩基性広域緩衝液に、pH4の酸性広域緩衝液に、pH4の異なる酸性溶液(硫酸、酢酸、リン酸、塩酸及び硝酸)に、270日間浸漬させた。該試験では、材料は、純水、酸性溶液、塩基性溶液又は塩の溶液と、所定の期間にわたって接触させ続け、その後、液体中のイオン濃度を測定して規制標準と比較した。
【0262】
セメント系材料の長時間の挙動を特徴付ける応答を生じさせるため、加速試験法を用いた。これらの試験では、(破砕物の代わりに)モノリスの廃棄物形態の滲出を評価した。滲出は、滲出溶液を更新する頻度に依存して、静的又は動的な条件下で発生し得る。静的な滲出試験では、滲出溶液は新鮮な溶液に置換されない;それゆえ、滲出は、静的な水理条件下(モノリスの廃棄物形態における低い滲出速度及び最大滲出濃度)で起こる。動的な滲出試験では、滲出溶液は定期的に新しい溶液に置換される;それゆえ、この試験は、最大飽和限界が得られず且つ滲出速度がより高い非平衡条件下で、モノリスの廃棄物形態の滲出をシミュレートする。静的及び動的は、従って、滲出溶液の化学的特性ではなく、速度のことをいう。
【0263】
滲出されたイオンは、極めて精密な分析技術である誘導結合プラズマICP-OESにより測定した。その結果は図30〜32に示され、以下に要約される。
【0264】
1.滲出された硫酸塩、カルシウム、カリウム及びマグネシウムは検出されるが、アルミニウム、ナトリウム、バリウム及び鉄等の他の材料は、滲出産物の中には検出されなかった。
【0265】
2.図30に示されたように、硫酸塩の滲出速度は水及び塩基性緩衝液では極めて遅いが、酸性緩衝液及び60℃の水ではわずかに速くなった。処理CKDは大部分が炭酸カルシウム(CaCO)からなり、水に不溶性である。しかしながら、酸の添加は、水素イオン(H)の添加を意味し、これは炭酸塩と反応して、水溶性の高い炭酸水素HCOイオンを形成するであろう。酸がより多く存在する場合は、水素イオン(H)は炭酸塩と反応してHCOを形成し、HCOは分解して二酸化炭素COと水を生じる。ひいてはこれが、不安定な硫酸塩の形成を著しく促進する。さらされる時間が増加した場合は、溶液中に滲出する硫酸塩及び金属の量は増加することが考えられ得る。
【0266】
3.温度は、SPCマトリクスから硫酸塩及び金属が滲出する速度に大きな影響を与える重要な因子である。温度が上昇するにつれて金属の溶解性が高まるため、温度が上昇するにつれて滲出量も増加することが観察された。
【0267】
4.処理CKDベースのSPC試料の全てにおいて、カルシウム塩及び酸化カルシウムは非常に安定な炭酸塩を形成する。この生成物の溶解性は非常に低いため、溶解が起こりにくい。270日の曝露後、滲出されたカルシウムは、(最初の重量に基づいて)0.05%から0.20%の範囲であった。
【0268】
5.本発明によって調製された、処理CKDベースのSPC試料は、酸性溶液ではより大きな侵食効果が観察されるところ、塩及び塩基性の環境では特に高い耐侵食性を示す。
【0269】
6.HSO及びHClにおいては、CHCOOH、HNO及びHPOと比較して、カルシウムの滲出速度がより高いことも観察された。図31に示されたように、滲出されたカルシウムの量は時間につれて増加し、初期の金属滲出速度はより長い浸漬期間にわたって一定に維持されなかったことも観察された。滲出された金属の量と初期濃度との間には直線的相関性はない。カリウム及びマグネシウムの滲出は、室温ではごくわずかであった。
【0270】
7.結果より、本発明のSPCから滲出された金属は、硝酸、酢酸及びリン酸溶液によって影響されなかったことが示される。
【0271】
図32に示されたように、鍵となる3つの微量元素−ストロンチウム、カドミウム、及びクロム−を選択的に観察した。これらの金属の累積的滲出は、浸漬時間が長くなった後でもごくわずかであった。カドミウムは、希硝酸と容易に反応し、高温の塩酸とゆっくり反応し、そしてアルカリとは反応しない遷移金属である。金属の溶解性は温度に依存し、温度が上昇するにつれて高まるため、高温は滲出過程を促進した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性金属塩を含有する、固体で無機のかつアルカリ性の粒子材料の炭酸化における流動層反応器の使用。
【請求項2】
材料が水和セメントキルンダスト(CKD)である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
(1)水和工程、(2)乾燥工程及び(3)炭酸化工程を含み、該炭酸化工程は、流動層反応器において行われ、工程(2)より得られる水和CKDが、最大径での大きさが10mmより大きい粒子を含有する場合に、工程(2)及び(3)の間にさらに分別工程を含み、該分別工程は、最大径での大きさが10mmより大きい粒子の除去を含む、アルカリ性金属塩を含有するCKDの処理方法。
【請求項4】
水和工程において、35〜40℃の温度で少なくとも20分間の合計時間でCKDを水と混合し、そのCKDの水に対する重量比が1:1から3:1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水和工程が、CKD及び水を400から800rpmで10から30分間混合することを含む、請求項3又は4に記載のCKDの処理方法。
【請求項6】
乾燥工程において、水和CKDの水分含量が20重量%未満に低減される、請求項3、4又は5に記載の方法。
【請求項7】
乾燥工程が、水和CKDを加熱して、水和CKDの水分含量を7〜12重量%に低減することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
乾燥工程が、70から90℃で12から48時間の期間で行われる、請求項3から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
乾燥工程の後であって炭酸化工程の前に分別工程を含み、該分別工程は、最大径で2mmより大きい粒子を除去することを含み、且つ篩を用いて行われる、請求項3から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
炭酸化工程が、水和CKDを二酸化炭素源にさらすことを含む、請求項3から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(3)において、水和CKDが、1から2バールの圧力で20から60分間二酸化炭素ガスにさらされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
炭酸化工程において、流動層反応器に送り込まれるガスの流動速度が少なくとも2リットル/分である、請求項3から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
炭酸化工程が20から30℃で行われる、請求項3から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
炭酸化工程の間、二酸化炭素ガスが、流動層反応器のリアクターチャンバーの底部に、該リアクターチャンバーの底部における円錐型分配器の周囲に位置付けられた一以上の注入口を介して注入される、請求項10から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
処理されるCKDのpHが12から12.5である、請求項3から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
100gの水和CKDごとの炭酸化において、少なくとも25gのCOが消費される、請求項3から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
100gの水和CKDごとの炭酸化において消費されるCOの量が、熱重量分析装置(TGA 7 Perkin-Elmer)を用いて測定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
炭酸化において消費されたCOの測定量が、理論的最大値の少なくとも90%である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
以下の工程を含む、アルカリ性金属塩を含有する廃棄CKDの処理方法である、請求項3から18のいずれか1項に記載の方法:
a.)アルカリ性金属塩を含有する大量のCKD及び大量の水を準備する工程;
b.)キルンダスト及び水を混合して、水酸化カルシウムを含有する混合物を水和過程により形成する工程;
c.)工程bより得られた混合物を乾燥する工程;
d.)工程cより得られた、乾燥された混合物を、篩にかけることにより分別する工程;
e.)流動層反応器を準備する工程;及び
f.)工程dより得られた、乾燥され、分別されかつ水和された混合物を、硫黄、窒素、炭素の酸性酸化物、ハロゲン化合物及びそれらの混合物からなる群より選択される汚染物質を含有するセメントキルン排出ガスで流動層反応器の中で炭酸化して、安定な材料を形成する工程。
【請求項20】
リアクターチャンバーを有し、該リアクターチャンバーの下半分において、該リアクターチャンバーへのガスの流入のための注入口が一以上存在し、該注入口は、該リアクターチャンバーの底部における円錐型分配器の周囲に位置付けられている、請求項3から19のいずれか1項に記載の炭酸化工程における使用に適切な流動層反応器装置。
【請求項21】
British Standard BS EN12457: 2002により、CKDに対する水の比率を2L/Kgとして短時間(6時間)試験を行った場合、200mg/l未満のSO2−、800mg/l未満のCl、15mg/l未満のCr、1mg/l未満のSr、300mg/l未満のCa、1000mg/l未満のK及び/又は150mg/l未満のNaを滲出する、処理CKD。
【請求項22】
pHが10未満である、請求項21に記載の処理CKD。
【請求項23】
5μm未満の平均粒子径を有する、請求項21又は22に記載の処理CKD。
【請求項24】
請求項3から19のいずれか1項に記載の方法により入手される、又は入手可能である、処理CKD。
【請求項25】
請求項21から24のいずれか1項に記載の処理CKDの、(i)コンクリートにおける骨材としての、(ii)酸性鉱山排水又は酸性土壌の中和における、(iii)クリンカー製造過程における、(iv)軟質地盤の安定化における、(v)膨張/膨潤土の処理における、(vi)埋め戻し、(vii)路盤材料としての、(viii)ポゾラン活性化剤としての、又は(ix)アスファルト舗装における、使用。
【請求項26】
処理CKDが硫黄ポリマーコンクリート(SPC)における骨材として使用され、該SPCが、請求項21から24のいずれか1項に記載の処理CKD、元素硫黄および改質硫黄を含有する混合物から入手される、又は入手可能である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記混合物がさらにガラスファイバーを含有する、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
請求項21から24のいずれか1項に記載の処理CKDから石灰セメントを製造する方法。
【請求項29】
請求項28の方法により入手される、又は入手可能である、石灰セメント。
【請求項30】
請求項21から24のいずれか1項に記載の処理CKD、元素硫黄及び改質硫黄を加熱及び混合して混合物を製造することを含む、SPCの製造方法。
【請求項31】
混合物の製造において、砂及び/又はガラスファイバーをその他の成分と混合することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
40〜45重量%の元素硫黄、0.2〜2重量%の改質硫黄、20〜25重量%の処理CKD、30〜40重量%の砂及び0〜1重量%のガラスファイバーを混合することを含み、該重量%が混合物の総重量に基づく、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
混合物を、130〜150℃の温度に30分間から2時間置くことを含む、請求項30から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
(i)170〜180℃の温度に予熱している砂、(ii)95〜105℃の温度に予熱している処理CKD、及び(iii)元素硫黄及び改質硫黄の混合物を共に混合し、次いで(i)、(ii)及び(iii)の混合物を、130〜150℃の温度に20〜40分間置き、得られた混合物を金型の中に流し込んで冷却することを含む、請求項30から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
改質硫黄、元素硫黄及び請求項21から24のいずれか1項に記載の処理CKDを含有する、硫黄ポリマーコンクリート。
【請求項36】
請求項30から34のいずれか1項に記載の方法により入手される、又は入手可能である、請求項35に記載の硫黄ポリマーコンクリート。
【請求項37】
さらに砂及びガラスファイバーを含有する、請求項35又は36に記載の硫黄ポリマーコンクリート。
【請求項38】
請求項35から37のいずれか1項に記載の硫黄ポリマーコンクリートの、物質の透過を制限するための障壁としての使用。
【請求項39】
請求項35から37のいずれか1項に記載の硫黄ポリマーコンクリートを含有する、物質の透過を制限するために適切な障壁。
【請求項40】
請求項39に記載の障壁を一以上含む、長期間にわたる物質の封じ込めに適切な封じ込め建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34a】
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【図34b】
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【図34c】
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【公表番号】特表2011−522686(P2011−522686A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509033(P2011−509033)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005579
【国際公開番号】WO2009/138857
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510300647)ユナイティッド アラブ エミレーツ ユニヴァーシティ (1)
【Fターム(参考)】