説明

粒子線照射装置とその運転方法

【課題】
複数の治療室有する粒子線照射装置において、治療室のコース切替時の初期化励磁に掛かる時間を短縮し、高い治療スループットの粒子線照射装置を提供する。
【解決手段】
荷電粒子ビームを入射,加速,出射する加速器11と、複数の治療室2A,2B,2Cのそれぞれに設置する照射装置24A,24B,24Cと、加速器から出射した荷電粒子ビームを照射装置に輸送するビーム輸送装置3とを備え、ビーム輸送装置3がいずれか一つの照射装置に荷電粒子ビームを輸送するように、荷電粒子ビームのビーム軌道を切り替える切替電磁石7A,7Bを有し、加速器が荷電粒子ビームを出射しているときに、荷電粒子ビームを第1照射装置に輸送するように切替電磁石を制御し、加速器が荷電粒子ビームを入射及び加速しているときに、他の照射装置につながる他の切替電磁石を励磁し、その後に減磁する制御を行う制御装置40を備えることで、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線治療装置に係り、特に、陽子及び炭素イオンなどのイオンビームを出射する粒子線照射装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんなどの患者の患部に陽子及び炭素イオン等の荷電粒子ビーム(イオンビーム)を照射する治療方法が知られている。この治療方法に用いる粒子線照射装置は、イオンビーム発生装置,ビーム輸送装置、及び照射装置を備える治療室を有する。
【0003】
粒子線照射装置では、イオンビーム発生装置で加速したイオンビームを照射装置で患者の患部形状に合わせて照射野を形成する。照射野形成は、患者の患部深さ方向を照射するイオンビームのエネルギーにより制御し、患部形状に合わせたビーム形状をコリメータなどで形成することで実現する。また、患者の患部へイオンビームを適切に照射するため、患者は照射治療開始前に治療室の治療ベッドに固定され、患部位置をビーム照射軸に合わせる位置決め作業を実施する。
【0004】
粒子線照射装置で主に用いられているイオンビーム発生装置として、シンクロトロンが挙げられる。シンクロトロンは、低エネルギーのイオンビームを前段加速器から入射し、患部深さに対応したエネルギーまで加速する。シンクロトロンの加速では、シンクロトロン内を周回するイオンビームに高周波電圧によりエネルギーを付与し、イオンビームのエネルギーの増加に同期してシンクロトロンを構成する電磁石(偏向電磁石や四極電磁石等)の磁場強度を高める制御を実施する。所望のエネルギーまでイオンビームのエネルギーを加速後、シンクロトロンはイオンビームをシンクロトロン内に設けた出射装置によってビーム輸送装置に出射する。出射制御終了後、シンクロトロンを構成する電磁石の磁場強度は前段加速器からの入射ビームのエネルギーに対応した強度まで減少させる減速制御を実施する。このように、シンクロトロンは入射,加速,出射,減速といった運転制御を繰り返し、この繰り返し周期のうち、出射制御時のみ、ビームがシンクロトロン外に出射される。
【0005】
特許文献1では、一台のシンクロトロンと複数の治療室を備える粒子線照射装置を記載している。ビーム輸送装置は、複数箇所で分岐してシンクロトロンと複数の照射装置とを接続している。ビーム輸送装置の各分岐点には、ビームの輸送コースを切り替えるコース切替装置を備える。コース切替装置は、ビーム輸送装置を構成するコース切替電磁石,コース切替電磁石電源装置及びコース切替電磁石にコース切り替えを指示するコース切替制御装置を有する。
【0006】
ビーム輸送装置を構成する電磁石は、治療室に輸送するイオンビームのエネルギーに対応した磁場強度に励磁する必要がある。そのため、散乱体を用いた照射法での治療の場合、ビーム輸送装置の電磁石は照射治療中一定の磁場強度で運転し、照射装置で患部深さ方向へのエネルギーを広げる制御を実施する。また、細径のビームを走査して照射するスキャニング照射法での治療の場合、ビームの深さ方向制御はイオンビーム発生装置から供給されるイオンビームのエネルギーで制御するため、ビーム輸送装置を構成する電磁石の励磁量もイオンビーム発生装置から供給されるエネルギーに対応して変化させる必要がある。
【0007】
複数の治療室を有する粒子線照射装置では、照射治療が行われている治療室(第1治療室)と、第1治療室の照射治療の終了後に治療を開始する他の治療室(第2治療室)がある。第1治療室での照射治療が行われている間、第2治療室では次に治療を行う患者の治療準備(患者の位置決め作業等)を並行して実施する。第1治療室の患者に対して目標線量のイオンビームが照射されると、イオンビーム発生装置は、イオンビームの出射を停止し、第1治療室での照射治療を完了する。その後、イオンビーム発生装置は、第2治療室の患者の照射条件に合わせたエネルギーに加速する運転条件を読み込み、ビーム加速運転準備を開始する。また、ビーム輸送装置は、第1治療室での照射治療の完了後に、第1治療室から次の治療患者が固定されている第2治療室へのビーム輸送コースの切り替え作業を実施する。この際、第2治療室につながるビーム輸送コースに設けられる電磁石を初期化励磁することが必要となる。
【0008】
各患者によって患部の位置(照射対象の深さ方向に位置)が異なるため、必要となるイオンビームのエネルギーも異なる。イオンビームのエネルギーが変化する場合、すなわち、シンクロトロンの電磁石及びビーム輸送装置の電磁石の励磁量を変化させる場合、電磁石の磁気履歴(ヒステリシス)が生じ、電磁石の初期化励磁が必要となる。しかし、初期化励磁を実施すると、シンクロトロンからイオンビームを出射できない期間が生じ、粒子線照射装置のスループットが低下する課題が生じる。特許文献2では、イオンビームの出射後に、シンクロトロン及びビーム輸送コースに備えられる電磁石の磁場強度を、電磁石の最大磁場強度まで高めた上で減速制御を実施する二段階励磁法を記載している。これにより、電磁石の初期化励磁が不要とる。
【0009】
【特許文献1】特開2007−105356号公報
【特許文献2】特開平8−298200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の粒子線照射装置では、次の照射治療を行う第2治療室へイオンビームが輸送されるよう、照射治療の開始前に、所望のビーム輸送コース上にある電磁石の磁場強度を照射ビームのエネルギーに合わせて設定する。この作業をコース切り替えと言う。このようなコース切り替えは、第1治療室での照射治療の後に実施されていた。なお、コース切り替えの際には、第2治療室につながるビーム輸送装置の電磁石に対して初期化励磁を実施する必要がある。
【0011】
ビーム輸送装置を構成する電磁石は、鉄などの磁性体からなる磁極と、磁極を励磁するためのコイルで構成される。磁性体は磁気履歴(ヒステリシス)特性を持つため、高精度で所望の励磁量を得るためには、磁気履歴を消す初期化運転が必要である。初期化運転とは、コイルの磁場を励磁および減磁する運転(初期化励磁)を繰り返すことである。この初期化運転には数十秒から数分の時間を要する。この初期化運転を実施せずにビーム輸送条件を変更すると、ビーム輸送装置を構成する電磁石の磁場強度が所望の磁場強度からずれを生じてしまうため、適切なビーム輸送が実現できない。
【0012】
複数の治療室を備える場合、ビーム輸送装置の各分岐点にコース切替電磁石がそれぞれ設置される。このコース切替電磁石についても、照射治療を開始する前に、初期化運転することが必要となる。しかしながら、他の治療室で照射治療している間に、他のコース切替電磁石の初期励磁を実施すると照射治療をしている治療室へ適切にビーム供給が出来ない可能性や、準備作業中の他の治療室にビームを供給する可能性が生じる。このため、従来の粒子線照射装置では、治療室での照射治療が完了した後に、他の治療室につながるコース切替電磁石の初期化運転を実施しなければならず、ビーム輸送コースの切り替え作業に時間が掛かってしまう。
【0013】
本発明の目的は、治療室へのビーム輸送コース切り替えの際に要する時間を短縮でき、かつコース切り替え電磁石の磁場強度を所望の制御値に安定して励磁ができる粒子線照射装置及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の特徴は、荷電粒子ビームを入射,加速及び出射する加速器と、複数の治療室のそれぞれに設置され、荷電粒子ビームを照射対象に出射する照射装置と、加速器から出射された荷電粒子ビームを照射装置に輸送するビーム輸送装置とを備え、ビーム輸送装置は、第1の照射装置に荷電粒子ビームを輸送するように、荷電粒子ビームのビーム軌道を切り替える複数の切替電磁石を有し、加速器が荷電粒子ビームを出射しているときに、荷電粒子ビームを第1照射装置に輸送するように切替電磁石を制御し、加速器が荷電粒子ビームを入射及び加速しているときに、他の照射装置につながる他の切替電磁石を励磁し、その後に減磁する制御を行う制御装置を備えることにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コース切り替えに要する時間を短縮でき、照射治療のスループットを向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施例1)
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施例である粒子線照射装置を説明する。
【0017】
本実施例の粒子線照射装置は、図1に示すように、イオンビーム発生装置1,複数の治療室2A,2B及び2C,各治療室に設置された照射装置24A,24B及び24C,ビーム輸送装置3および、それらの装置を制御する制御装置40を備える。イオンビーム発生装置は、イオン源(図示せず)、前段加速器(図示せず)及びシンクロトロン11を備える。シンクロトロン11は、出射用高周波電極12及び電磁石(偏向電磁石や四極電磁石等)を有する。出射電極電源装置51が出射用高周波電極12に高周波電場を印加する。ビーム輸送装置は、イオンビーム発生装置1から供給されるエネルギーに応じて制御される加速器ビーム輸送装置(第1ビーム輸送装置)30A,30Bと、各治療室で照射するビームエネルギーに応じて制御される治療室ビーム輸送装置(第2ビーム輸送装置)31A,31B,31Cに分けられる。ビーム輸送装置3は、ビーム軌道を制御する偏向電磁石及びステアリング電磁石(図示せず),ビーム形状を制御する四極電磁石(図示せず)および、コース切替電磁石7A,7Bを有する。コース切替電磁石7A,7Bは偏向電磁石であり、励磁及び非励磁を制御してビーム軌道を切替える。加速器ビーム輸送装置30Aがシンクロトロン11に接続される。コース切替電磁石7Aは、加速器ビーム輸送装置30Aの下流側であって、加速器ビーム輸送装置30Bと治療室ビーム輸送装置31Aの分岐点に設置される。コース切替電磁石7Bは、加速器ビーム輸送装置30Bの下流側であって、治療室ビーム輸送装置31Bと治療室ビーム輸送装置31Cの分岐点に設置される。治療室ビーム輸送装置31Aが照射装置24Aにつながり、治療室ビーム輸送装置31Bが照射装置24Bにつながり、治療室ビーム輸送装置31Cが照射装置24Cにつながる。制御装置40からのコース切り替えの指令信号に基づいて、電磁石電源装置52Aがコース切替電磁石7Aを励磁し、電磁石電源装置52Bがコース切替電磁石7Bを励磁する。制御装置40は、出射電極電源装置51,電磁石電源装置52A,52Bを制御する。なお、治療室ビーム輸送装置31A,31B,31Cには、それぞれシャッター(図示せず)が設けられる。このシャッターは、コース切替電磁石7Aと照射装置24Aの間、コース切替電磁石7Bと照射装置24Bの間、コース切替電磁石7Bと照射装置24Cの間にそれぞれ設けられ、不要なビームを遮断する機能を有する。
【0018】
イオンビーム発生装置1から出射されたイオンビーム(以下、ビームという)は、ビーム輸送装置3を経て所望の治療室に輸送される。本実施例では、コース切替電磁石7Aが励磁(励磁電流がON)されている場合、加速器ビーム輸送装置30Aを通過したビームは、治療室ビーム輸送装置31Aに輸送され、照射装置24Aに入射する。コース切替電磁石7Aが励磁されていない(励磁電流がOFF)場合、ビームは、加速器ビーム輸送装置30Bに輸送される。コース切替電磁石7Bが励磁されている場合、加速器ビーム輸送装置30Bを通過したビームは、治療室ビーム輸送装置31Bに輸送され、照射装置24Bに入射する。コース切替電磁石7Bが励磁されていない場合、ビームは治療室ビーム輸送装置31Cに輸送され、照射装置24Cに入射する。制御装置40が、コース切替電磁石7A及び7Bの励磁電流を制御(例えば、励磁及び非励磁を制御)することで、いずれか一つの照射装置にビームが輸送されるように切替制御している。制御装置40は、コース切替制御装置としての機能も有する。照射装置に入射されたビームは、各治療室2内の治療ベッド(図示せず)に固定された患者(図示せず)に出射される。
【0019】
本実施例では、イオンビーム発生装置1としてシンクロトロン11を備える。シンクロトロン11に設置される出射用高周波電極12の電極間に高周波電場を印加することで、シンクロトロン11を周回するビームを加速器ビーム輸送装置30Aに出射する。
【0020】
シンクロトロン11は、ビームの入射,加速,出射,減速という一連の運転を周期的に行っている。一般に、シンクロトロンの運転周期は2秒から3秒で運転している。周回ビームの加速,出射,減速という一連の運転は、制御装置40(具体的には、タイミングシステム(図示せず))から出射されるタイミング信号に基づき制御される。このタイミング信号に基づいた制御を実施することで、複数の構成機器からなるシンクロトロン11での同期制御を可能としている。また、シンクロトロン11に設けられる偏向電磁石(図示せず)は、図2に示すように、加速中に励磁量を増加させ、出射中は一定の励磁量を維持し、減速中に励磁量を低下させる。すなわち、この偏向電磁石は、静定,励磁,静定,減磁というパターンで運転されている。図2にシンクロトロンの一運転周期中の偏向磁石の磁場強度(図2(A))と出射用高周波電圧の変化(図2(B))を示す。図2において、シンクロトロンの一運転周期をTpとし、同様にシンクロトロン11へのビーム入射制御時間をTinj、加速制御時間をTacc、出射制御時間をText、減速制御時間をTdeaと示す。また、シンクロトロン11にビームを入射する際の偏向磁場強度をBi、ビーム出射制御時の偏向磁場強度をBe1とする。入射制御では、偏向磁場強度をBiで時間Tinjだけ保持する。この間に前段加速器からシンクロトロン11にビームが入射される。その後、偏向電磁石の偏向磁場強度をBiからBeまで時間Taccで増加させ、ビームを所望のエネルギーまで加速する。加速制御の終了後、偏向電磁石の偏向磁場強度をBeとして出射制御時間Textだけ保持する。出射制御区間で出射用高周波電極12に高周波電圧を印加する。出射用高周波電圧を印加している間、シンクロトロン11からビームが出射される。出射制御が終了後、偏向電磁石の偏向磁場強度をBeからBiまで時間Tdeaで減磁する。
【0021】
初期励磁を行わずに電磁石を使用した場合について、図4,図5を参照しつつ説明する。
【0022】
一般に電磁石は、鉄板等の磁性体を積層した磁極と励磁用のコイルで構成される。磁極を構成する磁性体は励磁に伴い、図4に示すようなヒステリシス環線(磁気履歴曲線)を描く。まず、電磁石が無励磁状態(励磁電流が0Aの場合)では磁性体は磁化されていない(磁場強度Bがゼロ)。そこから電磁石の励磁電流を高めるに従い磁界Hが増加し、これに伴い磁性体が飽和するa点に向かって励磁される(図4の線O−a)。その後、励磁電流を下げるとa点からb点に向かって減磁される。この際、励磁電流を0A(磁界Hをゼロ)に戻しても磁場は0とはならず、磁性体により決まるある値Brを持つ。これを残留磁化あるいは残留磁束密度と呼ぶ。例えば、図5に示すように、電磁石を磁界H1まで励磁し、その後、磁界H2まで減磁する制御をした場合を考える。このように、二つの磁界H1,H2を往復させるような運転を行うと、先に示した履歴特性によって、磁場の状態は点d→点e→点f→点gの順に遷移する。すると、同じ磁界H1に電磁石を励磁したとしても、磁場強度が異なる値(点dと点f)を示し、発生する磁場がΔB1だけ異なってしまう。また、磁界H2に対しても異なる磁場強度(点eと点g)を示し、磁場がΔB2だけ異なる。このように電磁石に同じ励磁電流を流したとしても、異なる磁場強度を示すことになり、適切なビーム輸送が困難となる。
【0023】
そこで、図6に示すように、例えば飽和磁束密度まで励磁される点aと、磁界Hが0となる点bの間を往復するように電磁石の励磁と減磁を繰り返す制御をする。これにより、それまでの磁性体の磁気履歴を消去し、履歴曲線を定めることで所定の電流で所望の磁場を励磁できる。このような励磁運転を初期化励磁という。初期化励磁を実施することで所定の磁界で所定の磁場が励磁されることになり電磁石電流の制御によって正確に磁場を励磁できることになる。
【0024】
本実施例でのコース切替電磁石の初期化励磁パターンの一例を図7に示す。磁場の静定,励磁,静定,減磁という処理をそれぞれ時間Tl,Tinc,Th,Tdecで行う。この1サイクルの運転にかかる時間はTiとなる。コース切替電磁石7,加速器ビーム輸送装置30A,30B又は治療室ビーム輸送装置31A,31B,31Cに設置された電磁石を初期化励磁制御する場合、励磁電流の最小値が0となるように制御する。
【0025】
次に本実施例の粒子線照射装置の制御について図8を参照しつつ説明する。粒子線照射装置の制御装置40は、医師用端末401,治療計画システム402,スケジューラ403,全系サーバ410,インターロックシステム411,タイミングシステム412,呼吸同期システム413,記憶装置414,運転員用端末415,各サブシステムからなる。治療計画システム402は医師による患者の診断結果に基づき、治療計画を立案する。治療計画には患者の識別情報,患者に照射するビームのエネルギー,照射方向,照射野の大きさ,照射方法(呼吸同期照射の有無)等の情報が含まれている。治療計画システム402が立案した治療計画は記憶装置414に治療計画情報414Aとして記憶される。蓄積された治療計画情報414Aは、該当する治療が実施される際に、全系サーバ410によって読み込まれ、運転制御に反映される。また、スケジューラ403には、患者の照射プランに合わせて照射スケジュールを登録する。スケジューラ403は、治療スケジュール情報414Bを参照して、当該照射治療を含めたその日に行う照射治療の順序を決める。治療スケジュール情報414Bは治療室ごとに用意されており、治療スケジュールに基づく順序でそれぞれの治療室で照射治療が行われる。
【0026】
記憶装置414は、前述の治療計画情報414Aと治療スケジュール414Bに加え、運転パターン・設定値情報414Cを蓄積している。運転パターン情報には、照射するビームのエネルギーと照射条件に応じた、シンクロトロン11とコース切替電磁石などの時間的に設定値を変化させる機器の運転パターンデータと、初期化励磁時に参照される初期化励磁パターンデータが収納されている。設定値情報には、照射治療中に時間的に設定値が変化しない機器の固定の設定値が収納されている。これらの運転パターンデータと設定値が全系サーバ410を介して各サブシステムに送信される。各サブシステムを構成する制御装置は、これらの運転パターンデータと設定値に従った機器の運転を行う。
【0027】
治療室2は患者の入室状況や照射治療の実行状況に応じた複数の制御モードを持つ。治療室2の制御モードは常時、全系サーバ410が制御モードの監視している。本実施例では、治療室の制御モードとして、「待機モード」「準備モード」「照射モード」の三つを設けて説明する。待機モードは、当該治療室に患者が入室できる状態である。準備モードは、当該治療室で治療する患者の入室および認証が完了し、治療照射前の患者位置決め作業,治療室ビーム輸送装置31の初期化励磁等の治療準備が可能な状態および、照射治療が完了後、患者が退室可能な状態である。照射モードは、位置決め作業の完了した患者が治療室内におり、治療照射が可能な状態である。シンクロトロン11でのビームの加速,出射といった運転制御は、複数ある治療室2のいずれかが照射モードに遷移した状態でのみ行える。また、本実施例に示した粒子線照射装置では、一度に複数の治療室での治療照射はできないため、同時に二つの治療室が「照射モード」となることはない。以上に示した各治療室の制御モードは、加速器スケジューラ(図示せず)に伝送され、イオンビームを供給する治療室の順序を管理する。この加速器スケジューラに蓄積される治療室の順序管理情報は、全系サーバ410により逐次監視されている。仮に、複数の治療室で準備モードに移行されている場合、照射準備が完了した順に照射モードに移行する制御を実施する。
【0028】
インターロックシステム411は、各治療室の制御モードに応じて、照射モード以外の治療室2に誤ってビームが輸送されないように、各機器の状態を監視する。例えば、照射モードが選択されていない治療室に通じる治療室ビーム輸送装置31を構成する電磁石機器に対しては、シンクロトロン11の出射制御周期と同期して出射ビームに相当する励磁電流が供給されないように、励磁位相検出装置(図示せず)を備える。なお、インターロックシステム411は、治療室ビーム輸送装置31A,31B,31Cのそれぞれに設けられるシャッターの開閉を制御する。具体的には、照射モードの治療室につながる治療室ビーム輸送装置のシャッターを開き、照射モードでない他の治療室(待機モード又は準備モードの治療室)につながる治療室ビーム輸送装置のシャッターを閉じる。
【0029】
タイミングシステム412は、粒子線照射装置を構成する機器の連携制御の基準となるタイミング信号を出力する。本実施例においては、シンクロトロン11を構成する機器の運転制御と各治療室にビームを供給する治療室ビーム輸送装置31A,31B,31Cを構成する機器の連携制御を実現するための制御信号の一つである。
【0030】
全系サーバ410は運転員用端末415からの入力を受け、それに基づき、治療室2の制御モードの指定や、各サブシステム機器の運転指令を出力する。全系サーバ410は常に、記憶装置内の治療計画情報414Aと治療スケジュール414Bを参照しながら、運転員からの入力が適切かを判断し、誤った入力にはエラーを出力するなどのフェイルセーフ機能を持つ。
【0031】
シンクロトロン制御システム421やコース切替電磁石制御システム422A,422Bなどの各サブシステムは、タイミングシステム412からのタイミング信号と、全系サーバ410からの指令に応じて、全系サーバから送られてくる運転パターンや設定値に応じて、各機器の電源を制御する。シンクロトロン制御システム421はシンクロトロン11内の出射電極12に高周波電圧を印加し、電磁石電源装置52A,52Bはそれぞれ、コース切替電磁石7A,7Bを所定の運転制御タイミングで励磁する。
【0032】
治療室の制御モードとインターロックシステム411の関係について述べる。インターロックシステム411は各治療室の制御モードに応じて、粒子線照射装置を構成する機器の動作を管理する。
【0033】
まず、治療室2A,2B,2Cのいずれもが「待機モード」の場合を説明する。この場合、シンクロトロン11からビームを出射しないよう、シンクロトロン制御システム421に高周波電圧を印加せず、コース切替電磁石7A,7Bは励磁されない。治療室2A,2B,2Cのいずれか一つの治療室の制御モードが「準備モード」の場合、例えば、治療室2A,2Cが待機モードであり、治療室2Bが準備モードの場合、治療室2Bに通じる治療室ビーム輸送装置31Bのコース切替電磁石7Bの初期化励磁を許可し、もう一方の治療室ビーム輸送装置31Aのコース切替電磁石7Aに対しては、初期化励磁を禁止する。同様に、加速器ビーム輸送装置30を構成する電磁石に対しても初期化励磁を許可する。「準備モード」にある治療室2Bの治療室ビーム輸送装置31Bは初期化励磁を行う。初期化励磁は図9に示す手順で行われる。初期化励磁開始時には、治療計画情報414Aで指定された患者に照射するビームのエネルギーから、適切な初期化励磁パターンを運転パターン情報414Cから呼び出して、治療室ビーム輸送装置の電磁石の制御システムに読み込ませる。そして、読み込んだ初期化励磁パターンとタイミングシステム412からのタイミング信号をもとに適切なタイミングで初期化励磁が必要回数行われる。
【0034】
治療室2A,2Bのいずれか一方の制御モードが「照射モード」である場合を説明する。この場合、照射モードの治療室に対して、患者の治療計画情報に基づき、所望のエネルギーのビームを輸送する必要がある。そのため、照射前にシンクロトロン11と加速器ビーム輸送装置30の電磁石の初期化励磁を実施する。その後、出射用電極電源装置41の動作が許可される。そして、シンクロトロン11,加速器ビーム輸送装置30,対応する治療室ビーム輸送装置31の各機器が記憶装置内の運転パラメータ・設定値情報414Cを基に全系サーバから与えられる設定値に制御される。
【0035】
ここで、治療室の各制御モード間の遷移処理について述べる。治療室の制御モードは、図11に示す状態遷移のように「待機モードから準備モード」,「準備モードから照射モード」,「照射モードから待機モード」,「準備モードから待機モード」の4通りである。それぞれの各制御モード間の状態遷移時の制御フローを図12〜図15に示す。
【0036】
図12に治療室の制御モードが待機モードから準備モードへの遷移処理を示す。例えば、患者が治療室2Aへ入室するにあたり、治療スケジューラが指定する患者情報と入室前の患者情報を照合する。照合の結果、同一と判定できた場合、患者は治療室2Aに入室することができ、治療室2Aは準備モードに遷移する。患者情報が整合できなかった場合は、患者の治療室2Aへの入室は許可されず、治療室の制御モードは待機モードを維持する。
【0037】
準備モードでは、患者が治療室2Aに入室後、患者の位置決め作業等の照射準備作業とともに、治療室ビーム輸送装置31の初期化励磁を開始する。この際、初期化励磁周期は、シンクロトロン11の運転周期と逆相、つまり、シンクロトロン11が出射制御運転中に治療室ビーム輸送装置31は磁場強度を0にする制御が実施されている。このような制御を実施することで、治療準備中の治療室2Aの照射装置24Aへのビーム輸送がされない運転を担保する。
【0038】
図13に準備モードから照射モードへの遷移処理を示す。照射準備作業が完了後、全系サーバ410に対して照射準備完了が伝送される。全系サーバ410は、治療室2Aからの照射準備完了信号が伝送された際、他の治療室2B,2Cの制御モードを確認する。この際、他の治療室2B,2Cが照射モードでない場合には、照射準備完了信号を伝送してきた治療室2Aを照射モードに遷移させる。たとえば、治療室2Bが既に照射モードであった場合、治療室2Bの治療照射が完了し治療室2Bの制御モードが照射モードから準備モードに遷移した後、治療室2Aを照射モードに遷移する。全系サーバ410は各治療室の制御モードを逐次確認し、現在実施している照射治療が完了後、治療準備が完了した照射室の運転条件を読み込むことで、イオンビーム発生装置と加速器ビーム輸送装置30の速やかな運転条件の切り替えを実現する。
【0039】
患者位置決め作業および、治療室ビーム輸送装置31の初期化励磁の完了を確認後、放射線技師の退室を確認した上で照射モードに遷移できる。この際、一連の条件を満足できなかった場合は、治療室2Aは準備モードから照射モードへ遷移できない。
【0040】
図14に照射モードから準備モードへの遷移する際の遷移処理を示す。照射モードから準備モードへの遷移条件として、患部への照射線量満了時、患者への照射治療の完了時および、照射治療中の機器異常発生時が挙げられる。まず、照射モードから準備モードへの遷移条件が生じた際、全系サーバ410は患部への照射線量,ビームエネルギー等の情報を照射記録として治療計画情報と関連付けて記憶装置414に保存する。その後、全系サーバは照射治療が完了した治療室(例えば、治療室2A)の制御モードを照射モードから準備モードに遷移させる。全系サーバ410は、イオンビーム発生装置1と加速器ビーム輸送装置30の運転条件を次に予定されている治療室(例えば、治療室2B)の運転条件を治療計画情報から取り込み、初期化励磁を開始する。準備モードから待機モードの遷移は、照射治療の完了した患者が治療室2Bから退出する際に行われる。患者の退室を確認した後に、治療室2Aの制御モードを準備モードから待機モードに遷移させる。以上4通りのモード遷移の手順のみによってモードを変えることができる。
【0041】
ここで、本実施例の特徴である、治療室の切り替え方法について図16を用いて説明する。
【0042】
本実施例では、エネルギーEbのビームを用いて治療室2Bで照射治療を実施し、その照射終了後に、同一のエネルギーEbのビームを用いて治療室2Aで照射治療を実施する場合について説明する。つまり、治療室2Bで照射治療を実施中に並行して治療室2Aで位置決め作業を進めている状態から、治療室2Bの治療の完了に伴い治療室2Aへコースを切り替え、治療室2Aでの照射治療を開始するという制御を想定して説明する。
【0043】
治療室2Bが照射モードであり、治療装置2A,2Cが待機モードである場合、シンクロトロン11から出射されたビームは、治療室2Bの照射装置24Bに輸送される。治療室2BはエネルギーEbのイオンビームでの照射治療を実施している。シンクロトロン11内の偏向電磁石は、図2に示すような励磁パターンで運転している。加速器ビーム輸送装置30A,治療室ビーム輸送装置31Bは、エネルギーEbのイオンビームを輸送できる設定値でそれぞれ励磁されている。他の治療室2Aにつながるコース切替電磁石7Aは、図16(c)に示すように、励磁量がゼロ(励磁電流がOFF)である。このため、加速器ビーム輸送装置30Aを通過したビームは、治療室ビーム輸送装置31Bに輸送される。コース切替電磁石7Bは、エネルギーEbのイオンビームを治療室24Bに輸送できる設定値で励磁される(図16(d))。
【0044】
治療室2Aが待機モードから準備モードにかわると、コース切替電磁石7Aの初期化運転が開始される。つまり、シンクロトロン11がビームを入射,加速及び減速している間に、他の治療室につながるコース切替電磁石7Aを飽和磁場強度まで励磁し、その後、ゼロまで減磁する。初期化運転では、コース切替電磁石7Aの励磁及び減磁(初期化励磁)を繰り返し実施する。コース切替電磁石7Aの初期化励磁は、磁場強度を飽和磁場強度まで増加させ、その後にゼロまで減磁すると良い。なお、シンクロトロン11がビームを出射している間、コース切替電磁石7Aの励磁量はゼロ(励磁電流がOFF)になるように制御される。さらに、治療室2Aでの患者の位置決め作業と治療室ビーム輸送装置31Aの初期化運転が行われている。これら治療室ビーム輸送装置31Aおよびコース切替電磁石7Aは、シンクロトロン11がイオンビームを入射,加速及び減速しているときに、初期励磁される。シンクロトロン11の出射励磁タイミング(シンクロトロン11からイオンビームが出射されている間)は、治療室ビーム輸送装置31Aおよびコース切替電磁石7Aの励磁量が0となるように制御されている。このように、コース切替電磁石7Aの励磁パターンとシンクロトロン11の電磁石の励磁パターンがずれて励磁されることで、コース切替電磁石7Aの励磁量に依らず、エネルギーEbのイオンビームを治療室Bへ適切に輸送が可能となる。
【0045】
治療室Bでの患者患部への照射線量が治療計画線量に到達すると、図16(b)に示すように、シンクロトロン11から出射するビームを停止し、患者へのビーム照射を停止する。停止後、治療室Bの制御モードは照射モードから準備モードに遷移し、当該患者への照射が全て完了したならば患者は治療室Bから退出する。また、当該患者へ他方向からの照射治療を実施する場合は、引き続き、治療計画情報に基づいた位置決め作業を実施し、ビームエネルギーや照射角度および、患者固有具の設定を進める。
【0046】
治療室Bの制御モードが待機モードに遷移したのに伴い、治療室Aでの位置決め作業が完了すると、治療室Aは準備モードから照射モードに遷移する。照射モードに遷移したのに伴い、全系サーバ410は、シンクロトロン11および加速器ビーム輸送装置30Aの運転条件を治療室Aの治療計画情報に基づいたエネルギーEbに対応する制御指示値に設定する。
【0047】
本実施例によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0048】
(1)本実施例の粒子線照射装置は、複数の治療室のそれぞれに設置される照射装置と、シンクロトロン11から出射されたビームを照射装置に輸送するビーム輸送装置3を備え、このビーム輸送装置3はいずれか一つの照射装置(第1照射装置)にビームを輸送するようにビーム軌道を切替る複数のコース切替電磁石を有する。シンクロトロン11がビームを出射しているときはこのビームを第1照射装置に輸送し、シンクロトロン11がビームを入射及び加速しているときは、第1照射装置以外の照射装置につながるコース切替電磁石を初期化励磁するように制御する制御装置40を備えている。このような構成により、照射モードである第1照射装置での照射治療中に、他の照射装置につながる切替電磁石を初期化運転できるため、第1照射装置でのビーム照射が完了して、他の照射装置でのビーム照射を開始するまでの時間を短縮できる。これにより、ビーム切り替えに要する時間が短縮され、スループットが向上する。なお、シンクロトロン11からビームが出射されていない間に、他の治療室につがなるビーム切替電磁石を初期化運転することで、誤って他の治療室(照射モードでない治療室)にビームが輸送されることを防止できる。
【0049】
(2)本実施例では、制御装置40は、他の治療室(照射モードでない治療室)につながるビーム切替電磁石の磁場強度を飽和磁場強度まで励磁し、その後にゼロまで減磁するように制御して初期化運転している。このように制御することによって、所望のエネルギーのビームを照射装置に適切に輸送することができる。なお、本実施例では、飽和磁場強度まで励磁し、その後にゼロまで減磁する初期化励磁を実施しているが、電磁石の使用最高磁場又はそれ以上のある一定値に励磁し、その後にゼロまで減磁する初期化励磁を実施しても同様の効果を得ることができる。
【0050】
(3)照射治療中のイオンビーム発生装置1,加速器ビーム輸送装置30および治療室ビーム輸送装置31の励磁パターンに対して、治療準備中の治療室ビーム輸送装置31の励磁パターンの励磁位相をずらすことにより、照射治療中であっても加速器ビーム輸送装置30経路にあるコース切替電磁石7および治療準備中の治療室ビーム輸送装置31の初期化励磁が可能となるため、コース切り替えに要する時間を短縮することが可能となり、粒子線照射装置の治療スループットを向上できる。
【0051】
(4)粒子線照射装置に加速器スケジューラを設け、全系サーバ410は加速器スケジューラに蓄積される治療室の順序管理情報をもとに治療室2の制御モードを管理する。加速器スケジューラに蓄積される治療室の順序管理情報から全系サーバ410は現在照射治療中の治療室の次に照射治療を実施する治療室の情報を読み込む。全系サーバ410は、次に照射治療を実施する治療室のコース切替電磁石7と治療室ビーム輸送装置31を初期化励磁することで、コース切り替えに要する時間を短縮することが可能となり、粒子線照射装置の治療スループットを向上できる。
【0052】
(5)照射治療を実施している治療室以外の治療室で患者の位置決め作業などの照射準備作業と並行して、治療室ビーム輸送装置を構成する電磁石と当該治療室に輸送コースを切り替えるコース切り替え電磁石の初期化励磁を実施し、かつ、照射準備作業を実施中の治療室に接続される治療室ビーム輸送装置とコース切替電磁石の初期化励磁パターンをシンクロトロンの偏向磁場強度の運転パターンに対して位相をずらして励磁する。具体的には、シンクロトロンからのビーム出射制御区間に照射準備作業を実施中の治療室にビーム輸送コースを切り替えるコース切替電磁石の励磁されなければ、治療中のビーム輸送に影響を及ぼすことがない。また、シンクロトロンが減速から加速の制御区間において初期化励磁を実施すれば、シンクロトロンと治療室を接続するビーム輸送装置にはイオンビームが存在しないため、初期化励磁の実施により照射準備作業を実施している治療室にイオンビームが輸送されることもない。
【0053】
本実施例では、コース切替電磁石の初期化励磁は、電磁石を励磁した後、すぐに減磁する制御を行った。しかし、シンクロトロン11がビームを入射,加速及び減速している間に照射治療していない治療室につながるコース切替電磁石の初期化励磁制御をする際は、図10に示すように、シンクロトロン11の偏向電磁石と初期化励磁制御する電磁石を互いに逆相で運転する制御を行っても良い。この場合、図7に示す時間Tl,Tinc,Th,Tdecは、それぞれ、図2に示す、Text,Tdea,Tinj,Taccに等しくなるように制御する。なお、シンクロトロン11の電磁石を励磁するときは、治療室ビーム輸送装置の電磁石は減磁しており、逆にシンクロトロン11の電磁石が減磁するときは、治療室ビーム輸送装置の電磁石は励磁されることになる。このような運転制御によって、誤って準備モードである治療室にビームが輸送されることを防ぐ。
【0054】
本実施例では、シンクロトロン11の一運転周期の間に、コース切替電磁石7Aは一回の励磁及び減磁を実施しているが、シンクロトロン11の入射,加速及び減速の間であれば、複数回の励磁及び減磁を繰り返す制御をしても良い。これにより、さらに初期化励磁に要する時間を短縮でき、スループットを向上できる。
【0055】
本実施例では、エネルギーEbのイオンビームを用いて治療室2Bの照射治療を実施した後、同一のエネルギーEbで治療室2Aでの照射治療を実施する例を示した。しかし、治療室2Bの照射治療を実施した後、異なるエネルギーEaのイオンビームで治療室2Aでの照射治療を実施する場合にも、本実施例に記載の発明は適用できる。このとき、シンクロトロン11に設置される電磁石と加速器ビーム輸送装置30の初期化が必要となる場合がある。
【0056】
(実施例2)
以下に、本発明の他の実施形態である粒子線照射装置を、図17を用いて説明する。
【0057】
本実施例の粒子線照射装置は、実施例1の粒子線照射装置と同じ構成を有する。実施例1では、ある治療室で一人の患者に対してイオンビームを出射する間、シンクロトロン11から出射するイオンビームのエネルギーが一定値Ebであったが、本実施例では、一人の患者にイオンビームを照射治療する間に、シンクロトロン11から出射するイオンビームのエネルギーを段階的に変化させる。例えば、患者の患部をビーム進行方向に複数の層に分割し、各層毎にイオンビームを照射するスキャニング照射法の場合に本実施例の照射法を用いることができる。以下に、実施例1と異なる制御について説明する。
【0058】
治療室2Bが照射モードであり、治療室2A,2Cが待機モードである場合、シンクロトロン11から出射されたイオンビームは、治療室2Bの照射装置24Bに輸送される。図17では、シンクロトロン11は、シンクロトロンの運転サイクル(入射,加速,出射及び減速の一周期)毎に異なるエネルギー(例えば、エネルギーE1,E2,E3‥と変化)のイオンビームを出射している。
【0059】
シンクロトロン11の偏向電磁石は、図17(a)に示すように、まず、イオンビームをエネルギーE1に加速する磁場強度B11(第1磁場強度)に励磁される。励磁量がB11に達した時点でその励磁量を固定する。シンクロトロン11からイオンビームを出射した後、再び偏向電磁石の励磁量をB11からB1max(第2磁場強度)まで再励磁し、偏向電磁石が生成する磁場が飽和磁場となった後に、減磁する。シンクロトロン11の偏向電磁石は、次に入射されるイオンビームをエネルギーE2に加速する磁場強度B12に励磁し、励磁量がB12に達した時点で、その励磁量に固定する。イオンビームを出射完了した後、再び励磁量をB12からB1maxまで再励磁し、その後に減磁する。このように、シンクロトロン11に設置された偏向電磁石の磁場強度を第1磁場強度まで増加し、イオンビームをシンクロトン11から出射した後、この偏向電磁石の磁場強度をさらに第2磁場強度まで増加し、その後に減磁することによって、イオンビームの出射エネルギーによらず、偏向電磁石の残留磁場を一定にできる。これにより、シンクロトロン11に設置される電磁石の初期化励磁が不要となる。
【0060】
照射治療中である治療室2Bにつながるビーム輸送装置3の電磁石は、シンクロトロン11の一周期毎に、このエネルギーに応じた励磁量で励磁される。具体的には、加速器ビーム輸送装置30A,30B及び治療室ビーム輸送装置31Bの電磁石は、シンクロトロン11から出射されるイオンビームのエネルギーに合わせて、段階的にその励磁量を変化させる。
【0061】
コース切替電磁石7Bは、図17(d)に示すように、シンクロトロン11がイオンビームを出射開始するまで(入射及び加速の間)に、エネルギーE1のイオンビームを輸送する磁場強度B21に励磁される。励磁量がB21に達した時点でその励磁量に固定する。シンクロトロン11からのイオンビームの出射が完了した後に、再び電磁石の励磁量をB21から飽和磁場B2maxまで再励磁し、電磁石の発生する磁場が飽和磁場となった後に減磁する。その後、コース切替電磁石7Bは、次のイオンビームのエネルギーE2に合わせて、磁場強度B22に励磁し、励磁量がB22に達した時点でその励磁量に固定する。イオンビームの出射が完了した後、再び電磁石の励磁量をB22から飽和磁場Bmaxまで再励磁し、電磁石の発生する磁場が飽和磁場となった後に減磁する。シンクロトロン11がイオンビームを出射しているときに、イオンビームを治療室2Bの照射装置24Bに輸送するように、制御装置がコース切替電磁石7Bを制御している。
【0062】
他の治療室2Aにつながるコース切替電磁石7Aは、図17(c)に示すように、待機モードであるため、励磁量はゼロ(励磁電流がOFF)である。
【0063】
治療室2Aが待機モードから準備モードにかわると、コース切替電磁石7Aの初期化運転が開始される。つまり、シンクロトロン11がイオンビームを入射,加速及び減速している間に、コース切替電磁石7Aは飽和磁場強度まで励磁され、その後にゼロまで減磁される。シンクロトロン11がイオンビームを出射している間、コース切替電磁石7Aの励磁量はゼロ(励磁電流がゼロ)とする。このように、シンクロトロン11がイオンビームを入射,加速及び減速しているとき(イオンビームを出射していない間)に、コース切替電磁石7Aの初期化励磁を実施し、シンクロトロン11がイオンビームを出射しているときにコース切替電磁石7Aの励磁量をゼロと制御することによって、他の治療室2Bで照射治療中であっても、初期化励磁が可能となる。
【0064】
本実施例でも、実施例1と同様の効果を得ることができる。さらに、以下に示す効果を得ることができる。
【0065】
(6)本実施例の粒子線照射装置は、シンクロトロン11に設置された偏向電磁石の磁場強度を第1磁場強度まで増加し、ビームをシンクロトン11から出射した後、この偏向電磁石の磁場強度をさらに第2磁場強度まで増加し、その後に減磁する制御装置40を備える。このような構成により、ビームの出射エネルギーによらず、偏向電磁石の残留磁場を一定にでき、シンクロトロン11に設置される電磁石の初期化励磁が不要となる。これにより、照射モードの第1照射装置でのビーム照射が完了して、他の照射装置でのビーム照射を開始するまでの時間を短縮できてビーム切り替えに要する時間が短縮され、スループットが向上する。
【0066】
なお、本実施例では、シンクロトロン11の一運転周期の間に、コース切替電磁石7Aは一回の励磁及び減磁を実施しているが、シンクロトロン11の入射,加速及び減速の間であれば、複数回の励磁及び減磁を繰り返す制御をしても良い。これにより、さらに初期化励磁に要する時間を短縮でき、スループットを向上できる。
【0067】
(実施例3)
以下に、本発明の他の実施形態である粒子線照射装置を、図3,図15及び図18を用いて説明する。
【0068】
本実施例の粒子線照射装置は、実施例1の粒子線照射装置において、呼吸検出器(図示せず)及び呼吸同期システム413を備えた構成を有する。以下、実施例1と異なる構成及び制御について説明する。
【0069】
呼吸検出器は、各治療室2A,2B及び2C内に設置され、患者の体表の動きを計測する。呼吸検出器は、呼吸によって変化する体表の位置を測定し、図3(a)に示すような、計測結果(呼吸検出信号)を呼吸同期システム413に出力する。呼吸同期制御システム413は、呼吸検出信号に基づいて、図3(b)に示す、呼吸ゲート信号(ビーム出射許可信号)を生成する。この呼吸ゲート信号は、加速器制御システム421,コース切替電磁石制御システム422A及びコース切替電磁石制御システム422Bに入力される。加速器制御システム421は、呼吸ゲート信号に基づいて、シンクロトロン11の運転周期(入射,加速,待機,出射,減速及び待機)を制御する。図3(c)に示すように、シンクロトロン11の運転周期は、患者の呼吸に同期して変化する。呼吸同期照射法では、治療室からの呼吸ゲート信号がONになっており、かつシンクロトロン11内のビームが出射可能な状態(所定のエネルギーに加速されている状態)であるときにビームが出射される。シンクロトロン11は、ビーム加速後呼吸ゲート信号がONになるまで加速したビームをシンクロトロン11内に蓄える(待機)ことができる。従って、図3(e)に示すように、シンクロトロン11の偏向電磁石の磁場をBeで保持し、加速したビームを出射せずシンクロトロン11内に蓄えている時間Twとビームの出射制御時間Text運転の1サイクルにかかる時間Tpは可変となる。そのほかの運転は、実施例1のパターンと同様で、入射,加速,減速をそれぞれ時間Tinj,Tacc,Tdeaで行う。
【0070】
呼吸同期照射法の場合の切替電磁石の初期化励磁については、実施例1または実施例2を採用できる。本実施例でも、治療室2Bで照射治療を実施中に、治療室2Aにつながるコース切替電磁石7Aの初期化励磁を行う。
【0071】
また、シンクロトロン11が運転中に電磁石の初期化励磁制御をする際は、シンクロトロン11の偏向電磁石と初期化励磁制御する電磁石を互いに逆相となるように制御しても良い。この場合、図7に示す時間Tl,Tinc,Th,Tdecが、それぞれ、図3に示す、TwとTextの和、Tdea,Tinj,Taccに等しくなるように制御することとなる。呼吸同期照射法を適用したシンクロトロン11の制御を実施しているときに、治療室ビーム輸送装置31の電磁石に初期化励磁制御を実施する場合は、TlならびにTiは可変となる。
【0072】
本実施例でも、実施例1及び2と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施例では、シンクロトロン11の一運転周期の間に、コース切替電磁石7Aは一回の励磁及び減磁を実施しているが、シンクロトロン11の入射,加速及び減速の間であれば、複数回の励磁及び減磁を繰り返す制御をしても良い。これにより、さらに初期化励磁に要する時間を短縮でき、スループットを向上できる。
実施例1乃至3では、2つの治療室及び3つのコース切替電磁石を備える粒子線照射装置としたが、複数の治療室及び複数のコース切替電磁石を備える粒子線照射装置であれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の粒子線照射装置の構成図である。
【図2】(a)シンクロトロン11の偏向電磁石の磁場強度の時間変化を示し、(b)出射用高周波電圧の時間変化を示す図である。
【図3】呼吸同期照射の適用時の(a)呼吸検出信号、(b)呼吸ゲート信号、(c)シンクロトロン11の偏向電磁石の磁場強度変化と、(d)出射ビーム電流値の時間変化を示す図である。
【図4】磁性体における、磁束密度と磁界の関係を表す図である。
【図5】初期化励磁制御を実施しない磁性体における、磁界変化に対する磁束密度の応答を示した図である。
【図6】初期化励磁制御を実施した磁性体における、磁界変化に対する磁束密度の応答を示した図である。
【図7】初期化励磁制御実施時の切替電磁石の磁場強度の時間変化を示す図でである。
【図8】実施例1の粒子線照射装置の制御システムの構成を示す図である。
【図9】治療室ビーム輸送系31の初期化励磁制御開始時の処理を示すフロー図である。
【図10】(a)シンクロトロン11の偏向電磁石の磁場強度の時間変化を示し、(b)治療室ビーム輸送系31の初期化励磁制御時の磁場強度の時間変化を示す図である。
【図11】治療室2の制御モード間の状態遷移図を示す。
【図12】治療室2が待機モードから準備モードに遷移する時の処理を示すフロー図である。
【図13】治療室2が準備モードから照射モードに遷移する時の処理を示すフロー図である。
【図14】治療室2が照射モードから準備モードに遷移する時の処理を示すフロー図である。
【図15】本発明の他の実施例である粒子線照射装置の構成図である。
【図16】本発明の好適な一実施例である実施例1における(a)シンクロトロンの偏向電磁石の励磁量、(b)シンクロトロンからの出射ビーム、(c)コース切替電磁石7Aの励磁量、(d)コース切替電磁石7Bの励磁量の時間変化を示す図である。
【図17】本発明の他の実施例における(a)シンクロトロンの偏向電磁石の励磁量、(b)シンクロトロンからの出射ビーム、(c)コース切替電磁石7Aの励磁量、(d)コース切替電磁石7Bの励磁量の時間変化を示す図である。
【図18】本発明の他の実施例における(a)シンクロトロンの偏向電磁石の励磁量、(b)シンクロトロンからの出射ビーム、(c)コース切替電磁石7Aの励磁量、(d)コース切替電磁石7Bの励磁量、(e)呼吸同期信号の時間変化を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 イオンビーム発生装置
2A,2B,2C 治療室
11 シンクロトロン
12 出射用高周波電極
24A,24B、24C 照射装置
30 加速器ビーム輸送装置
31A,31B,31C 治療室ビーム輸送装置
40 制御装置
51 出射電極電源装置
52A,52B 電磁石電源装置
401 医師用端末
402 治療計画システム
403 スケジューラ
410 全系サーバ
411 インターロックシステム
412 タイミングシステム
413 呼吸同期システム
414 記憶装置
421 シンクロトロン制御システム
422A,422B コース切替電磁石制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを入射,加速及び出射する加速器と、
複数の治療室のそれぞれに設置され、前記荷電粒子ビームを照射対象に出射する照射装置と、
前記加速器から出射された前記荷電粒子ビームを前記照射装置に輸送するビーム輸送装置とを備え、
前記ビーム輸送装置は、第1の前記照射装置に前記荷電粒子ビームを輸送するように、前記荷電粒子ビームのビーム軌道を切り替える複数の切替電磁石を有し、
前記加速器が前記荷電粒子ビームを出射しているときに、前記荷電粒子ビームを前記第1照射装置に輸送するように前記切替電磁石を制御し、
前記加速器が前記荷電粒子ビームを入射及び加速しているときに、他の前記照射装置につながる他の前記切替電磁石を励磁し、その後に減磁する制御を行う制御装置を備えることを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記加速器が前記荷電粒子ビームを入射及び加速しているときに、前記他の切替電磁石を飽和磁場強度まで励磁し、その後に減磁することを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記励磁及び前記減磁を繰り返すように前記他の切替電磁石を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子線照射装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記加速する際に前記加速器に用いられる偏向電磁石の磁場強度を第1磁場強度まで増加し、前記荷電粒子ビームを前記加速器から出射した後に、前記偏向電磁石の磁場強度をさらに第2磁場強度まで増加し、その後に前記偏向電磁石の減磁を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粒子線治療装置。
【請求項5】
前記ビーム輸送装置は、
前記加速器に接続される第1ビーム輸送装置と、
前記第1ビーム輸送装置から分岐し、それぞれの前記照射装置に接続される複数の第2ビーム輸送装置を有し、
前記制御装置は、
前記加速器が前記荷電粒子ビームを入射及び加速しているときに、前記他の照射装置に接続される前記第2ビーム輸送装置の電磁石を励磁し、その後に減磁する制御を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粒子線治療装置。
【請求項6】
前記複数の治療室毎に、入室する患者の順番を管理する第1スケジューラと、
前記荷電粒子ビームを輸送する前記治療室の順番を管理する第2スケジューラとを有し、
前記第1スケジューラは、入室する患者の患者情報を前記制御装置に送信し、
前記第2スケジューラは、次に前記荷電粒子ビームを輸送する前記治療室の情報を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、受信した前記患者情報及び前記治療室の情報に基づいて、この治療室につながる前記切替電磁石及びこの治療室につながる第2ビーム輸送装置に備えられる電磁石を励磁し、その後に減磁する制御を行うことを特徴とする請求項5に記載の粒子線照射装置。
【請求項7】
荷電粒子ビームを入射,加速及び出射する加速器から出射した前記荷電粒子ビームを、切替電磁石を用いて複数の照射装置のうちいずれか一つの第1照射装置に輸送する粒子線照射装置の運転方法であって、
前記加速器が前記荷電粒子ビームを出射しているときに、前記荷電粒子ビームを前記第1照射装置に輸送するように前記切替電磁石を制御し、
前記加速器が前記荷電粒子ビームを入射,加速しているときに、他の前記照射装置につながる他の前記切替電磁石を励磁し、その後に減磁することを特徴とする粒子線照射装置の運転方法。
【請求項8】
前記加速器が前記荷電粒子ビームを入射及び加速しているときに、前記他の切替電磁石を飽和磁場強度まで励磁し、その後にゼロまで減磁することを特徴とする請求項7に記載の粒子線照射装置の運転方法。
【請求項9】
前記切替電磁石の励磁及び減磁を、複数回繰り返すことを特徴とする請求項7又は8に記載の粒子線照射装置の運転方法。
【請求項10】
前記加速器に用いられる偏向電磁石の磁場強度を、前記荷電粒子ビームを前記加速器から出射した後に、前記偏向電磁石の飽和磁場強度まで増加させ、その後に減磁することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の粒子線照射装置の運転方法。
【請求項11】
荷電粒子ビームを入射,加速及び出射する加速器から出射した前記荷電粒子ビームを、切替電磁石を用いて複数の照射装置のうち、照射モードの第1照射装置に輸送する粒子線照射装置の運転方法であって、
前記加速器が前記荷電粒子ビームを出射しているときに、前記荷電粒子ビームを前記第1照射装置に輸送するように前記切替電磁石を制御し、
前記加速器が前記荷電粒子ビームを入射,加速しているときに、他の前記照射装置につながる他の前記切替電磁石を励磁し、その後に減磁して初期化励磁することを特徴とする粒子線照射装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−63725(P2010−63725A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234171(P2008−234171)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】