説明

粒子製造方法

【課題】所望サイズの単分散な粒子、例えば顔料粒子を製造することができる。
【解決手段】一方向の流れを有する分散媒中L2に、粒子形成のための溶質を含有する多数の液滴40を略均一な微小サイズになるように形成する液滴形成工程S−1と、形成された多数の液滴40を分散媒L2に流しつつ、該液滴40内において溶質の粒子核の生成と成長とを行う粒子形成工程S−2と、で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子製造方法に係り、特に塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットプリンタ用インク、カラーフィルター、無機EL等に用いられる顔料粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料は、鮮明な色調と高い着色力とを示し、多くの分野で広く使用されている。例えば、塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットプリンタ用インク、カラーフィルター、無機EL等を用途として挙げることができ、今や、生活上欠くことができない重要な化合物である。
【0003】
顔料の一般的な性質、及び用途別分類等は、例えば、非特許文献1等に記載されている。前記用途の中でも高性能が要求され、実用上特に重要なものとしては、インクジェットプリンタ用インク顔料およびカラーフィルター用顔料、無機EL用顔料が挙げられる。
【0004】
従来からインクジェットプリンタ用インクの色材には染料が用いられてきたが、耐水性や耐光性の面で難点があり、それを改良するために色材として有機顔料が用いられるようになってきている。顔料系のインクにより得られた画像は、染料系のインクによる画像に較べて耐光性、耐水性に優れるという特筆すべき利点を有する。しかし、顔料インクは紙表面の空隙に染み込むことが可能なナノメートルサイズに均一に微細化(すなわち単分散化)することは難しく、紙への密着性に劣るという問題があった。
【0005】
また、デジタルカメラの高画素化に伴い、CCDセンサーに用いるカラーフィルターの薄層化が望まれている。カラーフィルターには有機顔料が用いられているが、フィルターの厚さは有機顔料の粒子径に大きく依存するため、ナノメートルサイズレベルでの単分散で安定な微粒子の製造が望まれている。
【0006】
一方、無機ELに用いられる無機顔料(例えばZnS)は、インク顔料やカラーフィルター用顔料とは逆に粒子サイズが小さすぎると輝度が低くなる問題があり、単分散で所望の大きさの粒子サイズのものが要望されている。
【0007】
このように、顔料の粒子化においては、用途に応じて適切な粒子サイズが要望されており、所望サイズの粒子を単分散性良く製造する技術が必要になるが、顔料のように難溶解性の物質を所望の粒子サイズに単分散性良く製造することは困難である。
【0008】
粒子製造に関する一般的な技術としては、非特許文献2等に示されるようにバルク物質から粉砕などにより製造するブレイクダウン法、気相中または液相中からの粒子成長により製造するビルドアップ法に大別される。ブレイクダウン法による粉砕法は、従来から多用されており実用性が高い微粒子製造法であるが、ナノメートルサイズの粒子を製造するには、極めて生産性が低いことや適用できる物質が限定されるなどの種々の問題点がある。このことから、ナノメートルサイズの微粒子を製造する方法としてビルドアップ法が採用されている。
【0009】
ところで、近年、粒子製造においてエマルジョン技術が利用されており、例えば特許文献1には、多重同軸管構造の液滴製造装置を用いて、連続相内において単分散な液滴が均一に分散した混合液を迅速に生産することが開示され、例えば内部に気泡を有する液滴を重合することにより単分散で微小な中空カプセルを製造することができる。また、特許文献2には、クロスフロー型のマイクロチャンネルを利用することで、食品工業、医薬あるいは化粧品製造等に利用されるエマルジョン(液滴)を生成して分離(分級)することにより、例えば単分散で微小な微粒子、例えばアルギン酸カルシウムビーズを製造することが開示されている。また、特許文献3には、マイクロチャンネルを利用して2つの色相の異なる流体を1つのマイクロチャンネルに層流で流し、この層流を液滴にすることで2色に色分けされた着色球状粒子を製造し、この着色球状粒子をキャラクタ、グラフィック、画像表示等に利用することが開示されている。また、特許文献4には、種々のダブルエマルジョン・マイクロカプセルを容易に生成するための装置が開示されている。更に、特許文献5には、分散相と連続相を所定の角度を有して接触させて、分散相を連続相で剪断することにより単分散な微小液滴を連続して生成する液滴の生成技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−255367号公報
【特許文献2】特開2000−015070号公報
【特許文献3】特開2004−197083号公報
【特許文献4】特開2004−237177号公報
【特許文献5】特開2004−202476号公報
【非特許文献1】顔料分散安定化と表面処理技術・評価」2001年、123〜224頁、(株)技術情報協会
【非特許文献2】日本化学会編「第4版実験化学講座」第12巻、年、411〜488頁、(株)丸善
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜5に開示される粒子製造に関するエマルジョン技術は、単分散な微小サイズの液滴を生成する技術、あるいは生成された液滴を重合してカプセル化する技術により粒子を製造するもので、いわゆる液滴自体を製品化するための技術である。従って、本発明が目的としている例えば顔料のように難溶解性の物質を所望サイズに単分散性良く製造するためにはエマルジョン技術の更なる改良が必要である。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、従来のエマルジョン技術を更に改良することにより、所望サイズの単分散な粒子を安定的に製造することができる粒子製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、一方向の流れを有する分散媒中に、粒子形成のための溶質を含有する多数の液滴を略均一な液滴サイズになるように形成する液滴形成工程と、前記形成された多数の液滴を前記分散媒に流しつつ、該液滴内において前記溶質の粒子核の生成と成長とを行う粒子形成工程と、を備えたことを特徴とする粒子製造方法を提供する。
【0013】
本発明の請求項1によれば、液滴内を粒子製造のためのマイクロ空間な反応場とし、液滴内において粒子核を生成して成長させるようにしたので、生成された多数の液滴において、それぞれの液滴内の溶質量が一定であれば何れの液滴内においても成長する粒子の大きさは一定になり、極めて均一な粒子サイズの粒子を製造することができる。この場合、液滴内の溶質量が少なければ小さな粒子サイズまでしか成長せず、液滴内の溶質量が多ければ大きな粒子サイズまで成長する。従って、液滴内の溶質量を制御すれば容易に所望サイズの粒子を製造することができる。これにより、所望サイズの単分散な粒子を安定的に製造することができる。また、分散媒が一定方向の流れを有するフロー系において液滴が形成されるので、液滴同士が凝集して合体することを抑制する。これにより、液滴同士が凝集合体することで液滴サイズがバラツクことや液滴内の溶質量がバラツクことを防止できるので、より均一なサイズの粒子を製造できる。尚、分散媒中への液滴の形成は、公知の技術を使用することができる。
【0014】
請求項2は請求項1において、前記粒子形成工程では、前記液滴と前記分散媒とのエマルジョンを構成する水と油の相が拡散により相互に作用し合う相互作用により前記液滴内において前記溶質の粒子核の生成と成長を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項2によれば、液滴と分散媒とのエマルジョンにおいて、水と油の相が拡散により相互に作用し合うことにより、粒子核の生成及び成長が開始され、液滴が生成される前の段階では粒子核は生成されない。従って、粒子サイズは液滴内の溶質量のみに依存するので粒子サイズを精度良く制御することができる。
【0016】
請求項3は請求項2において、前記相互作用は、前記エマルジョンの水の水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH−)が、前記液滴内の水素イオン指数(pH)を変化させて前記液滴内の溶質を析出させる析出作用と、前記分散媒が前記液滴内の溶媒を抽出することにより、前記液滴内の溶媒を液滴外に排出して液滴内の溶質濃度を上昇させる抽出作用と、の少なくとも1つの作用を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項3によれば、析出作用により液滴内のpH調整を行うことで溶質の溶媒に対する溶解性を低下させて粒子核を析出させる。また、抽出作用により液滴内の溶媒を分散媒に抽出し、液滴内の溶質濃度を上昇させて粒子核の生成と成長を促進する。これにより、液滴内では粒子核の生成と成長とが速やかに行われる。尚、相互作用としては析出作用と抽出作用の少なくとも1つが行われればよく、更には、液滴内において粒子核を生成して成長させる作用が含まれ、例えば拡散による熱の移動等が含まれてもよい。
【0018】
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記分散媒に分散剤を含有させることを特徴とする。
【0019】
分散媒に分散剤を含有させることで、液滴形成を助けると共に、形成された液滴を安定化することができる。
【0020】
請求項5は請求項1〜4の何れか1において、前記粒子形成工程では、1つの液滴から1つの粒子を形成することを特徴とする。
【0021】
本発明は、溶質の種類により、1つの液滴内で生成する粒子が1つの一次粒子だけが形成される場合や、複数の一次粒子が形成される場合もあるが、最終的に取り出すときには複数の粒子核を凝集合一させて1つの凝集粒子(二次粒子)とすることが好ましい。このように、1つの液滴から1つの粒子を製造することで粒子サイズを均一化でき、しかも液滴内の溶質量を変えるだけで所望の粒子サイズを単分散性良く製造することができる。
【0022】
請求項6は請求項1〜5の何れか1において、前記分散媒及び/又は前記液滴を形成する液に重合性化合物を含有させると共に、前記粒子形成工程後の液滴を前記分散媒に流しつつ重合エネルギーを付与して該液滴の外周に皮膜を形成するカプセル化工程、を備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項6によれば、分散媒のフロー系内において、粒子形成工程後の液滴を重合して液滴の外周に皮膜が形成させてカプセル化するので、分散媒から粒子を回収した後でも粒子同士が固着して粒子が粗大化することがない。
【0024】
請求項7は請求項1〜6の何れか1において、前記粒子形成のための溶質は顔料であることを特徴とする。
【0025】
顔料のように難溶解性の粒子を均一な粒子サイズに成長させることは従来困難であったが、本発明のようにマイクロ空間である液滴内で粒子を成長させることで、均一な粒子サイズに成長させることでき、本発明は顔料微粒子の製造において特に有効である。
【0026】
請求項8は請求項1〜7の何れか1において、前記分散媒は層流の流れを形成することを特徴とする。
【0027】
分散媒は層流の流れを形成することが好ましく、その液条件(液粘度、液流速、液密度等)に対して層流を形成できる流路径であればよい。但し、液滴形成のための内側流路から分散媒中に吐出される液滴形成液を液滴状にするのに十分な分散媒の流速であることが必要である。
【0028】
請求項9は請求項1〜8の何れか1において、前記液滴形成工程において形成する液滴サイズを変えることにより前記粒子形成工程で形成される粒子サイズを制御することを特徴とする。
【0029】
請求項9は粒子形成工程で形成される粒子サイズを制御する1つの好ましい方法を示したもので、形成する液滴サイズを変えることにより液滴内の溶質量を変化させて、これにより製造する粒子サイズを制御するようにしたものである。
【0030】
請求項10は請求項9において、前記液滴のサイズを1〜1000μmの範囲に制御することを特徴とする。
【0031】
液滴サイズが1000μmを超えると、分散媒との間で行われる前述の相互作用の効率が悪くなる。また、1μm未満の液滴を均一に形成するのは難しい。
【0032】
請求項11は請求項1〜10の何れか1において、前記液滴形成工程において形成する液滴中の溶質濃度を変えることにより前記粒子形成工程で形成される粒子サイズを制御することを特徴とする。
【0033】
請求項11は粒子形成工程で形成される粒子サイズを制御するもう一つの方法を示したもので、形成する液滴中の溶質濃度を変えることにより液滴内の溶質量を変化させて、これにより製造する粒子サイズを制御するようにしたものである。
【0034】
請求項12は請求項1〜11の何れか1において、前記粒子形成工程において製造される粒子サイズは0.01〜100μmであることを特徴とする。
【0035】
請求項12は本発明によって製造する好ましい粒子サイズの範囲を示したもので、ナノメートルサイズ〜ミクロンメートルサイズまで幅広い粒子サイズの製造が可能である。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明の粒子製造方法によれば、所望サイズの単分散な粒子、例えば顔料粒子を安定的に製造することができ、難溶解性の顔料の粒子製造において特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、添付図面に従って、本発明に係る粒子製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0038】
図1は本発明の粒子製造方法を実施するための装置を概念的に示したものであり、分散媒がW(水相)、液滴がO(油相)の2液系のO/Wエマルジョン構造により有機顔料粒子を製造する一例である。しかし、2液系に限定するものではなく、例えば液滴が多層のマルチエマルジョン構造(例えばW/O/Wなど)の3液系以上であってもよい。図2はA−A線に沿った装置本体の断面図である。
【0039】
図1に示すように、本発明を実施する粒子製造装置10は、装置本体12の外殻を形成する外管14の基端部(液の供給側)内に、該外管14と同芯円状に内管16が設けられる。これにより、装置本体12の基端部は外管14と内管16との2重管構造に形成されると共に、内管16の先端16Aから装置本体12の先端12Aまでは外管14のみによって流路が形成される。この内管16の先端16Aから装置本体12の先端12Aまでの流路を粒子形成路21ということにする。
【0040】
内管16には、第1ポンプ18を介して攪拌機20と温調手段22(例えば温調ジャケット)を備えた第1タンク24が配管26により接続されると共に、第1タンク24内には有機顔料を良溶媒に溶解した有機顔料溶液L1(例えばジメチルスルホキシド(DMSO)に有機顔料を溶解した溶液)が貯留される。
【0041】
また、内管16と外管14との間の環状流路28には第2ポンプ30を介して攪拌機32と温調手段34(例えば温調ジャケット)を備えた第2タンク36が配管38により接続されると共に、第2タンク36内には有機顔料に対して溶解性の小さな貧溶媒である分散媒L2(例えば水)が貯留される。この分散媒L2は、使用する有機顔料がアルカリ性で溶解性がある場合には弱酸性にし、酸性で溶解性がある場合には弱アルカリ性にしておくことが顔料微粒子の析出を促進する上で好ましい。これら有機顔料溶液L1と分散媒L2とは、互いに混和性であっても非混和性であってもよいが、混和性であることがより好ましい。
【0042】
また、粒子形成路21を流れる分散媒L2は、層流の流れを形成することが好ましく、分散媒L2の液条件(液粘度、液流速、液密度等)に対して層流を形成できる流路径であればよい。但し、内管16の先端16Aから粒子形成路21に吐出される有機顔料溶液L1を液滴として分散媒L2中に分散するためには、有機顔料溶液L1と分散媒L2で作る界面張力に代表される液組成に依存する物理力と、内管先端16Aに形成された液滴40を先端16Aから分散媒L2中に剥離するために、流速又は流れによる剪断力に代表される物理力などが必要である。また、粒子形成路21の流路長(L)は、後述する液滴形成工程、粒子形成工程、カプセル化工程を行うに足る長さであることが必要である。
【0043】
上記の粒子製造装置10の装置本体12は、半導体加工技術、特にエッチング(例えばフォトリソエッチング)加工、超微細放電加工、光造形法、鏡面加工仕上げ技術、拡散接合技術等の精密機械加工技術を利用して製造することができる。また、汎用的な旋盤、ボール盤を用いる機械加工技術も利用できる。
【0044】
装置本体12の材料としては、特に限定されるものではなく、上述の加工技術を適用できるものであればよい。具体的には、金属材料(鉄、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、各種の金属等)、樹脂材料(フッ素樹脂、アクリル樹脂等)、ガラス(シリコン、石英等)を用いることができる。
【0045】
また、装置本体12内を流れる液の温度制御(反応温度制御)を行う場合には、装置本体12の全体を温度制御された容器中に入れることにより制御してもよいし、金属抵抗線やポリシリコンなどのヒーター構造を装置本体12内に作り込み、加熱についてはこれを使用し、冷却については自然冷却でサーマルサイクルを行つてもよい。温度のセンシングは、金属抵抗線を使用する場合はヒーターと同じ抵抗線をもう一つ作り込んでおき、その抵抗値の変化に基づいて温度検出を行うのが好ましく、ポリシリコンを使用する場合は熱電対を用いて検出を行うのが好ましい。また、ペルチェ素子を流路に接触させることによって外部から加熱、冷却を行ってもよい。どの方法を用いるかは用途や装置本体12の材料などに合わせて選択される。
【0046】
また、分散媒L2には、液滴形成を助けると共に、形成された液滴の安定化を図るために分散剤(界面活性剤)を含有することが好ましい。図1等には、分散剤を模式的に短い波線(符号15)で示した。更に、本実施のように液滴40をカプセル化する場合には、有機顔料溶液L1に重合性化合物を含有することが好ましい。この場合、分散機能と重合機能を兼ね備えた重合性界面活性を使用することもできる。重合性界面活性を単独で用いる場合には、分散媒L2に含有させることが好ましいが、有機顔料溶液L1に含有させることも可能である。
【0047】
本発明の粒子製造方法においては、分散剤として、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性もしくは顔料性の、低分子または高分子分散剤を使用することができる。これらの分散剤は、単独あるいは併用して使用することができる。顔料の分散に用いる分散剤に関しては、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」(化学情報協会、2001年12月発行)の29〜46頁に詳しく記載されている。
【0048】
アニオン性分散剤としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
カチオン性分散剤には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
両イオン性分散剤は、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
【0051】
ノニオン性分散剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
顔料性分散剤とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料性分散剤と定義する。例えば、糖含有顔料分散剤、ピペリジル含有顔料分散剤、ナフタレンまたはペリレン誘導顔料分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料親構造、スルホン酸基を有する顔料分散剤、スルホンアミド基を有する顔料分散剤、エーテル基を有する顔料分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボキサミド基を有する顔料分散剤などがある。
【0053】
重合性化合物としては、水溶性および非水溶性重合性化合物の何れかも用いることができ、有機顔料と共に分散可能なものであれば特に限定はないが、エチレン性不飽和単量体が好ましい。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、γ−ヒドロキシアクリル酸プロピル、δ−ヒドロキシアクリル酸ブチル、β−ヒドロキシメタクリル酸エチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ジエチレングリコールメタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリル酸エチル、テトラエチレングリコールジメタクリル酸メチル等、およびその誘導体)、ビニル芳香族単量体(例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−ヘキシルスチレン、p−オクチルスチレン、p−ノニルスチレン、p−デシルスチレン、p−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等、およびその誘導体)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等、およびその誘導体)、(メタ)アクリル酸アミド類、アルキル置換(メタ)アクリルアミド類、メタクリルアミド類、N−置換マレイミド類、ビニルエーテル類(ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ジビニルエーテル等、およびその誘導体)、オレフィン類(エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等、およびその誘導体)フタル酸ジアリル、無水マレイン酸、(メタ)アクリロニトリル、メチルビニルケトン、塩化ビニリデン、等が使用できる。
【0054】
さらに、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基等のアニオン性基を有する水溶性単量体も用いられ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、p−ビニル安息香酸などのカルボキシル基を有する単量体、もしくはそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。さらには、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシメチルメタクリロイルホスフェート、2−ヒドロキシエチルメタクリロイルホスフェート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリロイルホスフェートも具体例として挙げられる。これらは単独で用いても、互いに併用して用いてもよい。
【0055】
重合性化合物のうち、その分子に親疎水性の機能を分離して持たせたものは重合性界面活性剤、反応性界面活性剤、あるいは反応性乳化剤とよばれ、本発明の粒子製造方法に好ましく用いることができる。例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、(メタ)アクリロイル基などのα,β−エチレン性不飽和基とスルホン酸基またはその塩などのイオン解離可能な基やアルキレンオキシ基などの親水性基を有しているものが挙げられる。これらは一般に乳化重合に用いられ、分子内にラジカル重合可能な不飽和結合を少なくとも1つ以上有するアニオン性、またはノニオン性の界面活性剤である。
【0056】
本発明の粒子製造方法において、重合性界面活性剤は、単独で用いても、異なるものを併用しても、または重合性界面活性剤以外の重合性化合物と共に用いてもよい。好ましい重合性界面活性剤としては、例えば、花王(株)社、三洋化成(株)社、第一工業製薬(株)社、旭電化工業(株)社、日本乳化剤(株)社、日本油脂(株)社等より市販されているものが挙げられ、「微粒子・粉体の最先端技術、第1章3反応乳化剤を用いる微粒子設計、pp23−31」、2000年(株)シーエムシーに記載されたものなどが挙げられる。
【0057】
重合性界面活性剤の具体例を以下に記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】





本発明の粒子製造方法に用いられる重合性化合物の重合方法は、分散媒L2中で重合できるものであれば特に限定されないが、重合開始剤を用いてラジカルを発生させて重合させる方法が好ましい。重合を開始するきっかけは種々あるが、熱、光、超音波、マイクロ波等を用いることが好ましい。重合開始剤としては、水溶性、または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾ系化合物等を使用することができる。具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキシド、2,2‘−アゾビスイソブチロにトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2‘−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾ椅[2−N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノプロパン]二塩酸塩等を挙げることができ、例えば、和光純薬工業(株)社のホームページ(www.wako−chem.co.jp)には、各種水溶性アゾ重合開始剤、油溶性アゾ重合開始剤、高分子アゾ重合開始剤が10時間半減期温度とその構造式と共に記載され入手可能であるが。重合開始剤の添加量は特に限定されないが、全モノマー成分に対して0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは2〜10重量%である。
【0059】
本発明の粒子製造方法においては、有機顔料溶液L1又は分散媒L2中に重合性化合物と共重合するモノマーとを共存させて共重合させてもよい。共重合モノマーを含有させる時期は特に限定されないが、有機顔料溶液L1又は分散媒L2の少なくとも一方に、少なくとも1つの共重合モノマーを含有させることが好ましい。共重合モノマーは、微粒子析出や分散液の安定化を妨げなければ特に限定されず、例えば、先に挙げた重合性化合物等が挙げられる。
【0060】
本発明の粒子製造方法においては、液滴内で有機顔料を微粒子として析出し、そのまま液滴中の重合性化合物を重合させるため、勝れて凝集粒子(二次粒子)を安定化することができる。この作用効果は以下のように考えられる。溶解状態の顔料を析出させて微粒子化する過程に重合性化合物が存在するため、重合性化合物が析出微粒子と一体となって吸着し、その微粒子は隙間なく効率よく重合性化合物に取り囲まれる。このため、単に顔料微粒子と重合性化合物中とを混合したのでは得られない、重合性化合物の吸着状態が得られる。これを、そのまま重合反応させることで、重合性化合物が顔料微粒子表面全体を緻密に包み込むよう確実に重合させることができ、強固かつ均一に固定化し、離脱しないようにすることができる。とくに重合性化合物が重合性界面活性剤の場合には、微粒子表面に、より強く吸着し微粒子を取り囲むため、安定化効果は一層高まる。このように本発明では重合性化合物を用いることで、顔料粒子をそのままカプセル化することができ、粒径の揃った、高い分散安定性、保存安定性を有する凝集粒子(二次粒子)を得ることができる。
【0061】
本発明の粒子製造方法において、重合性化合物は、有機顔料溶液L1および分散媒L2の少なくとも1つに含まれるが、有機顔料溶液L1に含まれることが好ましい。他の重合性化合物や分散剤を併用する場合、その態様は特に限定されないが、例えば、それらを液有機顔料溶液L1および分散媒L2のいずれに溶解させてもよい。
【0062】
重合反応温度は、重合開始剤の種類に応じて選択でき、40℃〜100℃が好ましく、より好ましくは50℃〜90℃、特に好ましくは50℃〜80℃で行うことができる。
【0063】
重合反応時間は、用いる重合性化合物とその濃度、重合開始剤の反応温度にもよるが、1〜12時間で行うことができる。
【0064】
顔料の堅牢性等を上げる目的で、紫外線吸収剤や酸化防止剤、香料、防カビ剤、表面張力調整剤、水溶性樹脂、殺菌剤、pH調整剤、尿素などの添加剤を併用してもよい。これらは重合処理前後のいずれの段階で添加してもよい。
【0065】
重合の程度(分子量)を調製するために、各種の連鎖移動剤(例えばカテコール類、アルコール類、チオール類、メルカプタン類)を用いてもよい。
【0066】
重合性化合物および/または分散剤の含有量は、顔料の均一分散性および保存安定性をより一層向上させるために、顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、特に好ましくは10〜250質量部の範囲である。0.1質量部未満であると有機顔料微粒子の分散安定性の向上が見られない場合がある。
【0067】
次に、上記の如く構成された粒子製造装置10を用いて本発明の粒子製造方法を実施することにより有機顔料微粒子を製造する方法を説明する。
【0068】
上記の如く構成された図1の粒子製造装置10によって、所望サイズの有機顔料微粒子を製造するには、主として、液滴形成工程S−1、粒子形成工程S−2、カプセル化工程S−3の3つの工程を経て有機顔料微粒子を製造する。
【0069】
即ち、液滴形成工程S−1では、第1及び第2ポンプ18、30の回転数を制御して、内管16内を流れる有機顔料溶液L1の流速よりも外管14内を流れる分散媒L2の流速を速くする。これにより、内管16の先端16Aから粒子形成路21に排出された有機顔料溶液L1は分散媒L2の剪断力により一定間隔で剪断されるので、略サイズが一定な有機顔料溶液L1の液滴40が形成される。この液滴形成において、分散媒L2に含有される分散剤の界面活性機能により液滴形成が促進されると共に形成された液滴40が安定化する。また、内管16の配管径、及び有機顔料溶液L1と分散媒L2の流速並びに物性値等の液滴形成条件を適切に設定することにより、形成される液滴40のサイズを制御することができるので、予め予備試験等により液滴形成条件と形成される液滴サイズとの関係を把握しておくとよい。
【0070】
尚、本実施の形態では、分散媒L2の剪断力により、液滴40を形成するようにしたが、有機顔料溶液L1を間欠送液して内管16内にプラグフローを形成することで液滴40を形成する方法、分散媒L2に含有させる分散媒の種類や含有量により界面張力を上げることで液滴40を形成する方法、内管16の先端16A領域に超音波等の振動を与えることで液滴40を形成する方法等を採用することができ、液滴40のサイズを精度良く制御できれば如何なる方法でもよい。液滴40のサイズとしては、1〜1000μmの範囲が好ましい。
【0071】
また、分散媒L2の剪断力により液滴を形成する場合、図3のように、粒子形成路21に流入する外管14を、内管16に対して所定角度αを有して交差させるように形成すると剪断力が大きくなり液滴40が形成され易くなる。
液滴形成工程S−1で形成された多数の液滴40は、分散媒L2の流れに乗って装置本体12の先端12A方向に流れながら次の粒子形成工程S−2において、液滴40を形成する有機顔料溶液L1(油相)と分散媒L2(水相)との間で拡散が生じ、有機顔料溶液L1と分散媒L2とが相互に作用し合うことにより、液滴40内において有機顔料の粒子核の生成と成長とを行う。即ち、図4に示すように、分散媒L2の水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH−)が液滴40内に実線矢印で示すように進入して有機顔料溶液L2の水素イオン指数(pH)を変化させて液滴40内の溶質を析出させる(析出作用S−2a)。更には、水と混和性を有する液滴40内の溶媒(DMSO)が分散媒L2によって破線矢印で示すように抽出され、液滴40内の溶媒(DMSO)を液滴40外に排出して液滴40内の溶質濃度を上昇させる(抽出作用S−2b)。
【0072】
析出作用S−2aにおいて、液滴40内の粒子核の生成に水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH−)の何れが寄与するかは、有機顔料が酸性とアルカリ性とのどちらの条件で均一に溶解し易いかで選択される。即ち、アルカリ性で溶解し易い有機顔料の場合には水素イオン(H+)により液滴40内のpHがアルカリ性側から中性側にシフトすることで有機顔料の粒子核が析出される。逆に、酸性で溶解し易い有機顔料の場合には水酸化物イオン(OH−)により液滴40内のpHが酸性側から中性側にシフトすることで有機顔料の粒子核が析出される。
【0073】
また、抽出作用S−2bでは、液滴40を形成する有機顔料溶液L1の溶媒(DMSO)が、分散媒L2により抽出され、液滴40内の溶質濃度が上昇して粒子核の生成と成長が促進される。この析出作用S−2aと抽出作用S−2bとの少なくとも1つの作用により、1つの液滴40内で生成した複数の粒子核(一次粒子)を凝集合一させて1つの凝集粒子(二次粒子)とすることができる。このように、1つの液滴40から1つの粒子43を製造することで粒子サイズを均一化できるので、液滴40内の溶質量を変えるだけで所望の粒子サイズを単分散性良く製造することができる。液滴40内の溶質量を変えるには、液滴形成工程S−1において形成する液滴40のサイズを変えるか及び/又は液滴40を形成する有機顔料溶液L1中の溶質濃度を変えることが好ましい。これにより、液滴40内の溶質量を容易に変えることができるので、粒子形成工程S−2で形成される粒子サイズを精度良く制御することができる。
【0074】
従って、有機顔料のように難溶解性の粒子を均一なサイズに成長させることは従来困難であったが、本発明の粒子形成工程S−2により1つの液滴40から1つの粒子43を製造することにより可能となる。
【0075】
次に、カプセル化工程S−3では、抽出工程S−2bで溶媒が排出されて微小化した液滴40に、重合エネルギー発生手段42から重合エネルギーを付与して、液滴40内の重合性化合物、又は液滴40と分散媒L2の界面の重合性界面活性剤を重合させることにより、液滴40をカプセル化してカプセル粒子44にする。これにより、分散媒L2から製造したカプセル粒子44を回収した後でも粒子同士が固着して粗大化することがない。
製造する有機顔料粒子は、サイズが0.01〜100μmの範囲で製造することが好ましいが、この範囲には限定されない。
【0076】
尚、上記の実施の形態では、2液系のO/Wエマルジョン構造により有機顔料粒子を製造する一例で説明したが、図5に示すように、分散媒L2がW(水に分散剤を含有させた水相)、2重液滴の外層を構成する液滴外層液L1がO(DMSO溶媒に有機顔料を溶解した有機顔料溶液の油相)で内層を構成する液滴内層液L3がW(水のみの水相)の3液系のO/W/Oエマルジョン構造により有機顔料粒子を製造することもできる。
3液系のO/W/Oエマルジョン構造により有機顔料粒子を製造する場合、液滴形成工程S−1で形成された多数の液滴46は、分散媒L2の流れに乗って装置本体12の先端12A方向に流れながら次の粒子形成工程S−2において、液滴46を形成する液滴内層液L3(水相)と液滴外層液L1(油相)との間、及び液滴外層液L1(油相)と分散媒L2(水相)との間で拡散が生じ、それぞれの液L1〜L3が相互に作用し合うことにより、液滴46内において有機顔料の粒子核の生成と成長とを行う。即ち、図6に示すように、分散媒L2及び液滴内層液L3の水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH−)が液滴外層液L1に実線矢印のように進入して、液滴46内の水素イオン指数(pH)を変化させて液滴46内の溶質を析出させる(析出作用S−2a)。更には、液滴46内の液滴外層液L1が分散媒L2によって抽出され、液滴46内の溶媒(DMSO)を液滴46外に排出して液滴46内の溶質濃度を上昇させる(抽出作用S−2b)。
この析出作用S−2aと抽出作用S−2bとの少なくとも1つの作用により、1つの液滴46内で生成した複数の粒子核(一次粒子)を凝集合一させて1つの凝集粒子(二次粒子)とすることができる。このように、1つの液滴46から1つの粒子43を製造することで粒子サイズを均一化できるので、液滴46内の溶質量を変えるだけで所望の粒子サイズを単分散性良く製造することができる。液滴46内の溶質量を変えるには、上述した2液系の場合と同様に、液滴46のサイズを変えるか及び/又は液滴46の液滴外層液L1を形成する有機顔料溶液L1中の溶質濃度を変えることが好ましい。
【0077】
次に、カプセル化工程S−3では、抽出工程S−2bで溶媒が排出されて微小化した液滴46に、重合エネルギー発生手段42から重合エネルギーを付与して、液滴46内の重合性化合物、又は液滴46と分散媒L2の界面の重合性界面活性剤を重合させることにより、液滴46をカプセル化してカプセル粒子44にする。これにより、分散媒L2から製造したカプセル粒子44を回収した後でも粒子同士が固着して粗大化することがない。
【0078】
尚、3液系のエマルジョン構造の場合、2重液滴46の液滴内層液L3としてDMSOに有機顔料を溶解した溶液、外層液L1として水、分散媒L2としてDMSO及び水を抽出する溶媒(例えばDMSOや酢酸エチル)と重合性界面活性剤との組み合わせを採用することができる。
【0079】
また、本実施の形態では、有機顔料微粒子を形成する一例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば無機ELに用いられる無機顔料(ZnS)やその他の粒子を製造する場合にも適用できる。
【0080】
本発明の実施の形態で用いられる有機顔料は、色相的に限定されるものではなく、マゼンタ顔料、イエロー顔料、またはシアン顔料であることができる。詳しくは、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロンまたはイソビオラントロン系顔料またはそれらの混合物などのマゼンタ顔料、イエロー顔料、またはシアン顔料である。更に詳しくは、例えば、C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメントイエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメントブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメントバイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメントイエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメントイエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメントオレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメントレッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメントイエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメントイエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメントイエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメントイエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメントオレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメントオレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメントオレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメントレッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメントレッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメントレッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、C.I.ピグメントイエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメントイエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメントイエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメントレッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメントイエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメントレッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメントレッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメントオレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメントレッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、ピグメントブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメントブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメントブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメントレッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料である。
【0081】
好ましい顔料は、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、ジスアゾ縮合系、アゾ系、またはフタロシアニン系顔料であり、特に好ましくはキナクリドン系、ジスアゾ縮合系、アゾ系、またはフタロシアニン系顔料である。
【0082】
本発明において、2種類以上の有機顔料または有機顔料の固溶体または有機顔料と無機顔料の組み合わせも使用することができる。有機顔料は、アルカリ性または酸性の水性媒体に均一に溶解されなければならないが、酸性で溶解するかアルカリ性で溶解するかは対象とする顔料がどちらの条件で均一に溶解し易いかで選択される。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性が用いられる。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合系顔料はアルカリ性で、フタロシアニン系顔料は酸性で溶解される。
【0083】
アルカリ性で溶解させる場合に用いられる塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化バリウムなどの無機塩基、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシドなどの有機塩基であるが、好ましくは無機塩基である。使用される塩基の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、無機塩基の場合、好ましくは顔料に対して1.0〜30モル当量であり、より好ましくは2.0〜25モル当量であり、さらに好ましくは3〜20モル当量である。有機塩基の場合は好ましくは顔料に対して1.0〜100モル当量であり、より好ましくは5.0〜100モル当量であり、さらに好ましくは20〜100モル当量である。
【0084】
酸性で溶解させる場合に用いられる酸は、硫酸、塩酸、もしくは燐酸などの無機酸、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸であるが好ましくは無機酸である。特に好ましくは硫酸である。使用される酸の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、好ましくは顔料に対して3〜500モル当量であり、より好ましくは10〜500モル当量であり、さらに好ましくは30〜200モル当量である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の粒子製造方法で2液系のエマルジョンにより有機顔料粒子を製造するための装置を説明する概念図
【図2】粒子製造装置の装置本体を図1のA−A線に沿って切断した断面図
【図3】図1の粒子製造装置の別の態様図
【図4】本発明における析出作用と抽出作用を説明する説明図
【図5】本発明の粒子製造方法で3液系のエマルジョンにより有機顔料粒子を製造するための工程を説明する説明図
【図6】3液系のエマルジョンにより有機顔料粒子を製造する際の析出作用と抽出作用を説明する説明図
【符号の説明】
【0086】
10、10‘…粒子製造装置、12…装置本体、14…外管、16…内管、18…第1ポンプ、20…攪拌機、21…粒子形成路、22…温調手段、24…第1タンク、26…配管、28…環状流路、30…第2ポンプ、32…攪拌機、34…温調手段、36…第2タンク、38…配管、40…液滴、42…重合エネルギー照射手段、43…二次粒子、44…カプセル粒子、L1…有機顔料溶液(又は液滴外層液)、L2…分散媒、L3…液滴内層液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向の流れを有する分散媒中に、粒子形成のための溶質を含有する多数の液滴を略均一な液滴サイズになるように形成する液滴形成工程と、
前記形成された多数の液滴を前記分散媒に流しつつ、該液滴内において前記溶質の粒子核の生成と成長とを行う粒子形成工程と、を備えたことを特徴とする粒子製造方法。
【請求項2】
前記粒子形成工程では、前記液滴と前記分散媒とのエマルジョンを構成する水と油の相が拡散により相互に作用し合う相互作用により前記液滴内において前記溶質の粒子核の生成と成長を行うことを特徴とする請求項1に記載の粒子製造方法。
【請求項3】
前記相互作用は、
前記エマルジョンの水の水素イオン(H)又は水酸化物イオン(OH)が、前記液滴内の水素イオン指数(pH)を変化させて前記液滴内の溶質を析出させる析出作用と、
前記分散媒が前記液滴内の溶媒を抽出することにより、前記液滴内の溶媒を液滴外に排出して液滴内の溶質濃度を上昇させる抽出作用と、の少なくとも1つの作用を行うことを特徴とする請求項2に記載の粒子製造方法。
【請求項4】
前記分散媒に分散剤を含有させることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の粒子製造方法。
【請求項5】
前記粒子形成工程では、1つの液滴から1つの粒子を形成することを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載の粒子製造方法。
【請求項6】
前記分散媒及び/又は前記液滴を形成する液に重合性化合物を含有させると共に、前記粒子形成工程後の液滴を前記分散媒に流しつつ重合エネルギーを付与して該液滴の外周に皮膜を形成するカプセル化工程、を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載の粒子製造方法。
【請求項7】
前記粒子形成のための溶質は顔料であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載の粒子製造方法。
【請求項8】
前記分散媒が層流の流れを形成することを特徴とする請求項1〜7何れか1に記載の粒子製造方法。
【請求項9】
前記液滴形成工程において形成する液滴サイズを変えることにより前記粒子形成工程で形成される粒子サイズを制御することを特徴とする請求項1〜8何れか1に記載の粒子製造方法。
【請求項10】
前記液滴のサイズを1〜1000μmの範囲に制御することを特徴とする請求項1〜9の何れか1に記載の粒子製造方法。
【請求項11】
前記液滴形成工程において形成する液滴中の溶質濃度を変えることにより前記粒子形成工程で形成される粒子サイズを制御することを特徴とする1〜10何れか1に記載の粒子製造方法。
【請求項12】
前記粒子形成工程において製造される粒子サイズは0.01〜100μmであることを特徴とする請求項1〜11の何れか1に記載の粒子製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−38117(P2007−38117A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224545(P2005−224545)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】