説明

粘度指数向上剤および潤滑油組成物

【課題】 剪断安定性と粘度指数向上能に優れた粘度指数向上剤を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で示される単量体(a)を必須構成単量体とし、Z平均分子量が10,000〜1,000,000である共重合体(A)からなる粘度指数向上剤である。
CH2=C(R1)−COO(A−O)n−(CH2)p−CH(R2)−R3 (1)
式中、R1は水素原子またはメチル基、R2およびR3は炭素数1〜16の直鎖アルキル基または炭素数3〜34の分岐アルキル基であり、R2およびR3は同一でも異なっていてもよく、該分岐アルキル基中の連続するメチレン基の数は16個以下であり、R2、R3およびp個のCH2基の合計炭素数は18〜36個であり、Aは炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは0または1〜20の整数、pは0または1〜15の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘度指数向上剤およびそれを含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の気運が高まり、自動車の省燃費性がより一層要求されてきている。省燃費化の1つの手段として潤滑油の低粘度化による粘性抵抗の低減が挙げられる。しかしながら、単に低粘度化すると液漏れや焼き付きといった問題が生じてくる。この問題を解決するには、一般に粘度指数を上げることが必要とされ、従来から各種の粘度指数向上剤が提案され、特にポリメタクリレート系の共重合体からなる粘度指数向上剤が多く提案されている(例えば特許文献−1〜4)
【特許文献−1】特開平7−48421号公報
【特許文献−2】特開平7−70247号公報
【特許文献−3】特開平7−509023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のポリメタクリレート系粘度指数向上剤は、粘度指数向上効果において不十分であり、また共重合体の剪断安定性においても不十分であり、効果が長期間にわたって安定しないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のZ平均分子量を有し、特定の単量体から構成される共重合体が、剪断安定性と粘度指数向上能に優れていることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は、一般式(1)で示される単量体(a)を必須構成単量体とし、Z平均分子量が10,000〜1,000,000である共重合体(A)を含有する粘度指数向上剤;並びに、該粘度指数向上剤および基油を含有し、基油が2〜6mm2/sの100℃での動粘度と160℃以上の引火点を有し、潤滑油組成物の重量に基づいて共重合体(A)を0.1〜30重量%含むことを特徴とする潤滑油組成物;である。
【0005】
【化2】

【0006】
式中、R1は水素原子またはメチル基、R2およびR3は炭素数1〜16の直鎖アルキル基または炭素数3〜34の分岐アルキル基であり、R2およびR3は同一でも異なっていてもよく、該分岐アルキル基中の連続するメチレン基の数は16個以下であり、R2、R3およびp個のCH2基の合計炭素数は18〜36であり、Aは炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは0または1〜20の整数、pは0または1〜15の整数である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粘度指数向上剤は、剪断安定性と粘度指数向上能に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の粘度指数向上剤は共重合体(A)を含有し、(A)は一般式(1)で示される単量体(a)を必須構成単量体とする。
一般式(1)においてR1は好ましくはメチル基である。
また、一般式(1)における分岐アルキル基−(CH2)p−CH(R2)−R3の合計の炭素数は粘度指数と低温粘度の観点から好ましくは通常18〜36、好ましくは20〜32、更に好ましくは20〜28、特に好ましくは20〜24である。
2およびR3は16以下、粘度指数および低温粘度の観点から好ましくは2〜14、さらに好ましくは4〜14、特に好ましくは6〜14の炭素数のポリメチレン基を有する。なお、ポリメチレン基における炭素数には末端のメチル基の炭素原子も含まれる。
また、R2およびR3における分岐の数は0〜16個、好ましくは0〜11個、特に0〜5個、とりわけ0個であり、R2およびR3はいずれも直鎖であることが好ましい。
nは好ましくは0または1〜10、さらに好ましくは0または1〜5、特に0である。
pは好ましくは0または1〜5、さらに好ましくは0または1、特に1である。
【0009】
−(CH2)p−CH(R2)−R3の具体例としては、以下の基が挙げられる。
1)C15-16(炭素数15〜16を表す場合C15-16と表し、以下同様の表現を用いる。)のポリメチレン基を有する基:
例えば、1−C1-18アルキル−ヘキサデシル基(例えば1−オクチルヘキサデシル基)および2−C1-16アルキル−オクタデシル基(例えば2−エチルオクタデシル、2−テトラデシルオクタデシルおよび2−ヘキサデシルオクタデシル基);
2)C13-14のポリメチレン基を有する基:
例えば、1−C1-20アルキル−テトラデシル基(例えば1−ヘキシルテトラデシル、1−デシルテトラデシル、1−ウンデシルトリデシル基)および2−C1-18アルキル−ヘキサデシル基(例えば2−エチルヘキサデシルおよび2−ドデシルヘキサデシル基);
3)C10-12のポリメチレン基を有する基:
例えば1−C1-22アルキル−ドデシル基(例えば1−オクチルドデシル基)、2−C1-22アルキル−ドデシル基(例えば2−ヘキシルドデシルおよび2−オクチルドデシル基)および2−C1-20アルキル−テトラデシル基(例えば2−ヘキシルテトラデシルおよび2−デシルテトラデシル基);
4)C6-9のポリメチレン基を有する基:
例えば、2−C1-24アルキル−デシル基(例えば2−オクチルデシル基)および2,4−ジC1-23アルキル−デシル基(例えば2−エチル−4−ブチル−デシル基);
5)C1-5のポリメチレン基を有する基:
例えば、2−(3−メチルヘキシル)−7−メチル−デシルおよび2−(1,4,4−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチル−オクチル基;
6)分岐アルキル基の2個またはそれ以上の混合物:
例えば、プロピレンオリゴマー(6量体〜11量体)、エチレン/プロピレンオリゴマー(モル比16/1〜1/11)、イソブテンオリゴマー(5〜8量体)、およびC5-17のα−オレフィンオリゴマー(2〜6量体)などに対応するオキソアルコールのアルキル残基。2−イソオクチルイソドデシル基(『日産化学工業製:ファインオキソコール2000』の水酸基を除いた残基)、2−イソウンデシルイソペンタデシル基(『日産化学工業製:ファインオキソコール2600』の水酸基を除いた残基)。
【0010】
これらのうちで好ましいのはpが0または1(とりわけ1)、R2およびR3が直鎖C6-16(特にC8-14)アルキル基および分岐C6-18(特にC8-14)アルキル基が好ましい。最も好ましいのは、pが1でR2とR3が直鎖C8-14アルキルである。とりわけ好ましくは、低温粘度と粘度指数の観点から、pが1でR2とR3が直鎖C8-10アルキルと直鎖C10-12アルキル基の組み合わせであり、−(CH2)p−CH(R2)−R3としては、2−直鎖C8-10アルキル−直鎖C12-14アルキル基である。
【0011】
好ましい(a)の具体例としては、2−オクチルドデシルメタクリレート、2−デシルテトラデシルメタクリレート;1−オクチルドデシル、2−ヘキシルドデシル、2−ヘキシルテトラデシル、1−ヘキシルテトラデシル、1−デシルテトラデシル、1−ウンデシルトリデシル、2−エチルヘキサデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−オクチルドデシルオキシエチルおよび2−デシルテトラデシルオキシエチルメタクリレート;並びに、これらに対応するアクリレート(例えば2−オクチルドデシルアクリレート、2−デシルテトラデシルアクリレートなど)が挙げられる。
これらのうちで好ましいのは2−オクチルドデシルおよび2−デシルテトラデシルアクリレート、2−オクチルドデシルメタクリレートおよび2−デシルテトラデシルメタクリレート、特に好ましくは、2−オクチルドデシルメタクリレートおよび2−デシルテトラデシルアクリレート、とりわけ好ましくは2−デシルテトラデシルアクリレートである。
【0012】
一般式(1)におけるAは炭素数2〜4のアルキレン基であり、具体的にはエチレン基、1,2−および1,3−プロピレン基、1,2−、1,3−および1,4−ブチレン基が挙げられる。これらのうち好ましいのはエチレン基、1,2−プロピレン基およびこれらの併用である。
【0013】
共重合体(A)は必須構成単量体(a)以外に、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)、炭素数8〜17のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートおよび炭素数18〜24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の単量体(b2)、並びにその他の単量体(c)〜(m)からなる群から選ばれる1種以上の単量体から構成される。
【0014】
(b1)には、メチル、エチル、n−およびイソ−プロピル、並びにn−、イソ−、sec−およびtert−ブチル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0015】
(b2)には、炭素数8〜17の直鎖もしくは分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b21)および炭素数18〜24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b22)が含まれる。
【0016】
(b21)には、直鎖C8-17アルキル(メタ)アクリレート(b211)および分岐C8-17アルキル(メタ)アクリレート(b212)が含まれる。
(b211)としては、例えばn−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルおよびn−オクタデシルメタクリレート、並びにn−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−トリデシルおよびn-ペンタデシルメタクリレートなどが挙げられ、さらにこれらに対応するアクリレート、例えばn−ドデシルアクリレートなど、およびチーグラーアルコールの(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(b212)としては、例えばi−オクチル、2−エチルヘキシル、i−ノニル、i−デシル、i−ドデシル、2−メチルウンデシル、i−トリデシル、2−メチルドデシル、i−テトラデシル、2−メチルトリデシル、i−ペンタデシルおよび2−メチルテトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(b21)としてはさらに、直鎖C8-17アルコールおよび分岐C8-17アルコールの混合物の(メタ)アクリレート(b213)が挙げられる。
(b211)と(b212)の混合物としては、例えばオキソアルコールの(メタ)アクリレートが挙げられ、オキソアルコールとしては、「ネオドール23」および「ネオドール45」(シェル化学株式会社製)、並びに「オキソコール1213」および「オキソコール1415」(日産化学株式会社製)などが挙げられる。
(b21)のうちで好ましいのは、粘度指数および低温粘度の観点から、C12-17(さらにC12-15)アルキル(メタ)アクリレート、特に直鎖C12-17(さらにC12-15)アルキル(メタ)アクリレートである。
【0017】
(b22)には直鎖C18-24アルキル(メタ)アクリレート、例えばn−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−ノナデシル(メタ)アクリレート、n−エイコシルメタクリレート、n−エイコシルアクリレート、n−ドコシル(メタ)アクリレートおよびn−テトラコシル(メタ)アクリレートが含まれる。(b22)のうち、粘度指数および低温粘度の観点から好ましいのはn−オクタデシル(メタ)アクリレートである。
【0018】
単量体(c)には、水酸基含有単量体(c1)、アミド基含有単量体(c2)およびカルボキシル基含有単量体(c3)が含まれる。
単量体(c1)としては以下の(c11)〜(c16)が挙げられる。
(c11)水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル:
(c111)一般式(6)で示される(メタ)アクリレート;
CH2=C(R1)−COO−(A−O)m−H (6)
式中、R1およびAは一般式(1)におけると同じ、mは1〜20(好ましくは1)の整数である。(c111)としては、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略記)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシエトキシエチル(メタ)アクリレートなどのC2-4ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど。
(c112)3〜8個の水酸基を含有する多価アルコールの(メタ)アクリレート;
多価アルコールとしては、例えばC3-12のアルカンポリオール、その分子内もしくは分子間脱水物および糖類など(例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、蔗糖、メチルグルコシドなど)が挙げられ、それらの(メタ)アクリレートとしてはグリセリンモノ−およびジ−(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ−およびジ−(メタ)アクリレート並びに蔗糖(メタ)アクリレートなど。
(c12)C2-12のアルケノール;:
ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)、及びC3-12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、(イソ)プロペニルアルコール、クロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、1−ブテン−4−オール、1−オクテノール、1−ウンデセノールおよび1−ドデセノールなど]。
(c13)C4-12のアルケンジオール;
2−ブテン−1,4−ジオールなど。
(c14)炭素数3〜12のアルケニル基を有する水酸基含有アルケニルエーテル;
例えばC1-6ヒドロキシアルキルC3-12アルケニルエーテル[例えば2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、並びに(c112)で挙げた多価アルコールのC3−12アルケニルエーテル{トリメチロールプロパンモノ−およびジ−(メタ)アリルエーテルおよび蔗糖(メタ)アリルエーテルなど}]。
(c15)水酸基含有芳香族単量体;
o−、m−またはp−ヒドロキシスチレンなど。
(c16)単量体(c11)〜(c15)の(ポリ)オキシアルキレンエーテル;
(c11)〜(c15)の水酸基のうちの少なくとも1個が−O−(A−O)n−A−OHで置換された単量体[但し、Aおよびnは一般式(1)と同じ]。
【0019】
(c1)のうちで好ましいのは(c12)、(c14)、(c15)、(c16)および(c11)、特に(c111)である。とりわけ好ましいのはヒドロキシエチルアクリレート、特にヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0020】
単量体(c2)としては以下の(c21)および(c22)が挙げられる。
(c21)下記一般式(7)で示される(メタ)アクリルアミド類:
CH2=C(R1)−CO−N(R')−R” (7)
【0021】
式中、R1は水素原子またはメチル基、R’およびR”はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基および炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。具体例としてはは以下の(c211)〜(212)が挙げられる。
(c211)非置換およびアルキル置換アクリルアミド;
例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−モノ−C1-4アルキルおよびN,N−ジ−C1-4アルキル−置換(メタ)アクリルアミド[(ジ)メチル、(ジ)エチル、(ジ)i−プロピル、(ジ)n−ブチルおよび(ジ)i−ブチル(メタ)アクリルアミドなど]。
(c212)ヒドロキシアルキル置換アクリルアミド;
例えばN−モノ−C1-4ヒドロキシアルキルおよびN,N−ジ−C1-4ヒドロキシアルキル置換(メタ)アクリルアミド[N−ヒドロキシメチル、N,N−ジヒドロキシメチル、N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル、N,N−ジ−4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミドなど]。
【0022】
(c22)N−ビニルカルボン酸アミド:
例えばアシル系N−ビニルカルボン酸アミド[N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルn−およびi−プロピオンアミド並びにN−ビニルヒドロキシアセトアミドなど]およびN−ビニルラクタム[N−ビニルピロリドンなど]。
【0023】
(c2)のうちで好ましいのは(c211)、特に(メタ)アクリルアミド、とりわけアクリルアミドである。
【0024】
単量体(c3)としては以下の(c31)〜(c33)が挙げられる。
(c31)不飽和モノカルボン酸[メタクリル酸、アクリル酸、(イソ)クロトン酸およびシンナミック酸など]。
(c32)不飽和ジカルボン酸[マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸など]、および(c33)不飽和ジカルボン酸のモノC1-8アルキルエステル[モノアルキルマレート、モノアルキルフマレートおよびモノアルキルイタコネートなど]。
【0025】
単量体(c)のうちで、粘度指数および剪断安定性の観点から好ましいのは(c2)、特に(c1)である。
【0026】
単量体(d):(a)、(b1)および(b2)以外のアルキル(メタ)アクリレート、
(d1)C5-7アルキル(メタ)アクリレート[n−、ネオ−およびイソ−ペンチル、並びにn−およびイソ−ヘキシル(メタ)アクリレートなど];
(d2)17個以上の炭素数のポリメチレン基を有する分岐C18-36アルキル(メタ)アクリレート[2−メチル−ノナデシルメタクリレート(以下、M−NMと略記)など]。
【0027】
単量体(e):炭素数2〜20の不飽和炭化水素、
(e1)不飽和脂肪族C2-20炭化水素[C2-20アルケン(エチレン、プロピレン、イソブテン、ブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセンおよびオクタデセン)、C4-12アルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘプタジエンおよび1,7−オクタジエン)];
(e2)不飽和脂環式C5-20炭化水素[シクロアルケン(シクロヘキセンなど)、ジシクロアルカジエン(シクロペンタジエンおよびジシクロペンタジエンなど)、環式テルペン(ピネンおよびリモネンなど)、ビニル(ジ)シクロアルケン(ビニルシクロヘキセンなど)、エチリデン(ジ)シクロアルケン(エチリデンビシクロヘプテンおよびエチリデンノルボルネンなど)および芳香環含有シクロアルケン(インデンなど)];
(e3)不飽和芳香族炭化水素[スチレンおよびその誘導体、例えばC1-20ハイドロカルビル置換スチレン(α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ベンジルスチレンおよび4−クロチルベンゼンなど)およびC2-10アルケニルナフタレン(2−ビニルナフタレンなど)]。
【0028】
単量体(f):ビニルケトン[C1-10アルキルまたはC6-8アリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトンおよびフェニルビニルケトンなど]。
【0029】
単量体(g):エポキシ基含有不飽和単量体[エポキシ基含有アクリル系単量体{グリシジル(メタ)アクリレートなど}およびエポキシ基含有C2-10アルケニル(好ましくはC3-6アルケニル)エーテル{グリシジル(メタ)アリルエーテルなど}]。
【0030】
単量体(h):ハロゲン原子含有不飽和単量体[ビニルまたはビニリデンハロゲン化物(塩化ビニル、臭化ビニルおよび塩化ビニリデン)、C3-6アルケニルハロゲン化物{塩化(メタ)アリル}およびハロゲン置換スチレン{(ジ)クロロスチレン}など]。
【0031】
単量体(i):アルキルアルケニルエーテル、
1-10アルキルC2-10アルケニルエーテル[アルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテルおよびエチルビニルエーテル)並びにアルキル(メタ)アリルエーテルおよび(イソ)プロペニルエーテル(メチルアリルエーテルおよびエチルアリルエーテル)など];
【0032】
単量体(j):アルケニルカルボキシレート、
2-10アルケニルC1-20カルボキシレート[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニルおよびn−オクタン酸ビニルなど]。(j)のうちで好ましいのは酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルである。
【0033】
単量体(k):(c2)以外の窒素原子含有不飽和単量体、
(k1)少なくとも1個の1級、2級および3級アミノ基を含むアミノ基含有単量体、
(k11)アミノ基含有脂肪族単量体、
(k111)一般式D−NHD1で示されるモノ−およびジ−アルケニルアミン(但し、式中D1は水素原子またはD、DはC2-10、好ましくはC3-6のアルケニル基)[例えば(ジ)(メタ)アリルアミンおよび(イソ)クロチルアミン];
(k112)アミノ基含有アクリル系単量体、
アミノ基含有(メタ)アクリレート[(モノ−C1-4アルキル)アミノC2-6アルキル(メタ)アクリレート{アミノエチル、アミノプロピル、メチルアミノエチル、エチルアミノエチル、ブチルアミノエチルおよびメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート}、ジ−C1-4アルキルアミノC2-6アルキル(メタ)アクリレート{ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート}]およびこれらの(メタ)アクリレートに対応するアミノ基含有(メタ)アクリルアミドなど;
(k12)アミノ基含有複素環式単量体、
アミノ基含有複素環式アクリル系単量体[モルホリノ−C2-4アルキル(メタ)アクリレート{モルホリノエチル(メタ)アクリレート}]、ビニル置換複素環式アミン[ビニルピリジン(4−および2−ビニルピリジン)]、N−ビニルピロールおよびN−ビニルピロリジンなど;。
(k13)アミノ基含有芳香族単量体、
アミノスチレン類[アミノスチレンおよび(ジ)メチルアミノスチレンなど]。
(k14)(k11)〜(k13)の塩[塩酸塩、リン酸塩およびC1-8のカルボン酸塩];
【0034】
(k2)第4級アンモニウム塩基含有単量体、
(k11)〜(k13)の4級化によって得られる第4級アンモニウム塩であって、4級化剤としてはC1-8アルキルハロゲン化物(メチルクロライドなど)、ベンジルハライド(塩化ベンジルなど)、ジC1-2アルキルサルフェート(ジメチルサルフェートおよびジエチルサルフェート)およびジC1-2アルキルカーボネート(ジメチルカーボネートなど)が使用できる。
また、(k2)には、1種または2種以上のC2-4アルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド)で(k14)を4級化することにより得られ第4級アンモニウム塩も含まれる。
【0035】
(k3)ニトリルまたはニトロ基含有単量体[(メタ)アクリロニトリルおよびニトロスチレンなど]。
【0036】
単量体(m):不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル、
不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびシトラコン酸など)ジC1-40(好ましくはC1-20)ハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキルおよびアラルキル)エステル[ジメチル、ジエチルおよびジオクチルマレート、並びに対応するフマレートおよびイタコネートなど]。
【0037】
共重合体(A)は、粘度指数、剪断安定性および低温粘度の観点から、単量体の全重量に基づいて、下記表1に示した重量%の単量体の単位を含有する。
【0038】
【表1】

【0039】
(A)が清浄性を必要とされる場合は、単量体(k)[特に(k112)および(k121)、とりわけジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびモルホリノエチル(メタ)アクリレート]を0.1〜10重量%(以下において、特に限定しない限り、%は重量%を表す)、特に、0.2〜5%使用することが好ましい。
【0040】
共重合体(A)は、通常、25℃の鉱物油100部に、少なくとも0.5部、好ましくは少なくとも2部、更に好ましくは少なくとも30部、特に好ましくは少なくとも70部溶解する。
【0041】
共重合体(A)のZ平均分子量は(以下Mzと略す)通常10,000〜1,000,000である。
Mzが10,000未満では、粘度指数向上能に乏しい。1,000,000を越えると剪断安定性に乏しくなる。なお、Mzは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによって測定されるものであり、ポリスチレンに換算して求めたものである。
基油の種類および(A)の添加の目的によって異なるが、粘度指数向上能と剪断安定性の観点から、(A)のMzは好ましくは下記表2に記載の範囲である。(A)のMzは、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量または連鎖移動剤量などにより調整できる。
【0042】
【表2】

【0043】
(A)は通常8.6〜11、基油への溶解性と粘度指数向上効果の観点から好ましくは9.2〜10.5、特に9.4〜9.8のSP値を有する。SP値はFedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]によって計算できる。
(A)のSP値は、構成単位のそれぞれのSP値を計算し、目的のSP値になるように単量体の種類とモル比を採択することにより調整できる。
例えば、アルキル(メタ)アクリレートの場合、アルキル基の長さによりSP値を調整することができる。
【0044】
(A)は、抗乳化性の観点から好ましくは0.5〜7、さらに好ましくは1〜6.5、特に1.5〜6のHLBを有する。本発明におけるHLBは小田法のHLBであり、有機化合物の有機性と無機性の概念(「新.界面活性剤入門」藤本武彦著、三洋化成工業株式会社発行、p197−201)に基づいて定義されるものである。
【0045】
(A)は、公知の製造方法によって得ることができる。例えば前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下にラジカル重合することにより得られる。
【0046】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンまたはC9-10のアルキルベンゼンなどの芳香族溶剤、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンおよびオクタンなどの脂肪族C6-18炭化水素、2−プロパノール、1−ブタノールまたは2−ブタノールなどのC3-8のアルコール系溶剤、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤および鉱物油などが使用できる。好ましいのは鉱物油である。
重合触媒としては、アゾ系触媒[例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、ADVNと略記)、ジメチル2,2−アゾビスイソブチレートなど]、過酸化物系触媒[例えば、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド、ラウリルパーオキシドなど]が使用できる。
さらに、必要により連鎖移動剤[例えば、C2-20のアルキルメルカプタンなど]を使用することもできる。反応温度としては、50〜140℃、好ましくは60〜120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合または懸濁重合により得ることもできる。さらに、共重合体の重合様式としては、ランダム付加重合または交互共重合のいずれでもよく、また、グラフト共重合またはブロック共重合のいずれでもよい。
【0047】
本発明の粘度指数向上剤は、共重合体(A)の他に、稀釈溶剤を含有していてもよい。
共重合体(A)のみでは粘稠であっても、稀釈溶剤を含有させることによって、基油に添加する際に容易に溶解できる点で好ましい。
稀釈溶剤の含有量は、粘度指数向上剤の重量に基づいて90重量%以下、好ましくは80%以下(以下において、特に限定しない限り%は重量%を表す)、さらに好ましくは10〜60%である。
希釈溶剤の比率が高いほうが基油に容易に溶解する点で好ましいが、あまり多いのは経済的ではない。
稀釈溶剤としては、前述の重合工程で使用できる溶剤をそのまま使用してもよく、新たに加えてもよい。
希釈溶剤としては、脂肪族溶剤[炭素数6〜18の脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカリン、灯油など)];芳香族溶剤{炭素数7〜15の芳香族溶剤[トルエン、キシレン、エチルベンゼン、炭素数9の芳香族混合溶剤(トリメチルベンゼン、エチルトルエンなどの混合物)、炭素数10〜11の芳香族混合溶剤など]、鉱物油[例えば、溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有するおよびまたは水素化分解による高粘度指数油、ナフテン油]、合成潤滑油[炭化水素契合性潤滑油(ポリαオレフィン系合成潤滑油)、エステル系合成潤滑油]などであり、これらのうち好ましいものは鉱物油である。
【0048】
稀釈溶剤として好ましいのは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは150℃以上、とりわけ好ましくは160℃以上の引火点を有する稀釈溶剤である。 稀釈溶剤の引火点が120℃以上であると、稀釈溶剤を含む粘度指数向上剤を高温でも安全に取り扱うことができる。
引火点が120℃以上の稀釈溶剤としては、 『SK Corporation製;YUBASE 2』(引火点:160℃)、『SK Corporation製;YUBASE 3』(引火点:194℃)などが挙げられる。
【0049】
本発明の潤滑油組成物は、上記の粘度指数向上剤と基油からなり、基油が2〜10mm2/sの100℃での動粘度と160℃以上の引火点を有し、潤滑油組成物の重量に基づいて共重合体(A)を0.1〜30%含む。
【0050】
基油としては前述の鉱物油および合成潤滑油などが挙げられる。
これらのうち好ましくは、イソパラフィンを含有するおよびまたは水素化分解による高粘度指数油およびポリαオレフィン系合成潤滑油、エステル系合成潤滑油である。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0051】
基油の100℃での動粘度は、潤滑油組成物の用途に応じて表3に示した好ましい範囲がある。
基油の動粘度が2mm2/s未満であると油膜切れを生じて焼きつけを起こし易い。また10mm2/sを超えると粘度指数が低下する。
また、基油の引火点は、通常160℃以上、好ましくは180℃以上、さらに好ましくは190℃以上、特に好ましくは200℃以上である。引火点が160℃未満の基油を使用すると、潤滑油組成物の引火点が低くなり、火災の危険性が高く、安全に使用できない。
【0052】
また、基油の粘度指数は好ましくは80以上、さらに好ましくは100以上、特に好ましくは105〜180である。このような基油を使用すると、粘度指数がさらに高くなり省燃費性がさらに良好となる。
【0053】
また、基油の曇点(JIS K2269−1993年)は−5℃以下が好ましい。さらに好ましくは−15℃〜−60℃である。基油の曇点がこの範囲であるとワックスの析出量が少なく低温粘度が良好である。
【0054】
潤滑油組成物の重量に基づく共重合体(A)の含量は通常0.1〜30%であり、潤滑油組成物の用途に応じて表3に示した好ましい範囲がある。
【0055】
【表3】

【0056】
本発明の潤滑油組成物は、さらに一般式(2)〜(5)のいずれかで示される有機燐化合物(P)の1種以上を含有していてもよい。
O=P(OR4a(OH)3-a (2)
式中、aは1〜3の整数;R4は各々炭素数4〜24でアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアルキル置換アリール基であり、a個のR4は同一でも異なっていてもよい。
具体的にはモノアルキルホスフェート、ジアルキルホスフェート、トリアルキルホスフェートまたはこれらに相当するアリールエステルなどが挙げられる。
【0057】
O=P(OR5b(OH)3-b・NHc63-c (3)
式中、bおよびcは各々1または2の整数;R5およびR6は各々炭素数4以上でアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアルキル置換アリール基であり、R5およびR6は同一でも相異なったものでもよい。
例えばモノアルキルホスフェート、モノアリールホスフェート、ジアルキルホスフェート、ジアリールホスフェートなどと、モノアルキルアミンまたはジアルキルアミンとの塩が挙げられる。
【0058】
P(OR7)a(OH)3-a (4)
式中、aは1〜3の整数;R7は各々炭素数4以上でアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアルキル置換アリール基である。
例えばモノアルキルホスファイト、ジアルキルホスファイト、トリアルキルホスファイト、またはこれらに相当するアリールホスファイトなどがある。
【0059】
P(OR8b(OH)3-b・NHc93-c (5)
式中、bおよびcは各々1または2の整数;R8およびR9は各々炭素数4以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアルキル置換アリール基であり、R8およびR9は同一でも相異なったものでもよい。
例えばモノアルキルホスファイト、モノアリールホスファイト、ジアルキルホスファイト、ジアリルアリールホスファイトなどと、モノアルキルアミンまたはジアルキルアミンとの塩が挙げられる。
【0060】
一般式(2)〜(5)におけるR4〜R9で各々示される基の具体例としては、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル基、オレイル基などの炭素数4〜30もしくはそれ以上、好ましくは4〜20のアルキル基もしくはアルケニル基;フェニルなどのアリール基;並びに、トルイル基などのアルキル置換アリール基が挙げられる。
有機燐化合物(P)として例示したもののうちで好ましいものは一般式(2)で示されるもののうちのアルキル基の炭素数4〜18のアルキルホスフェートである。
【0061】
これらの有機燐化合物(P)は、潤滑油組成物の重量に基づいて、好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.1〜3%含有する。
【0062】
本発明の潤滑油組成物は、さらに、前述の(A)以外のアルキル(メタ)アクリレート系共重合体(B)を含有してもよい。
(B)は前述の(a)以外の単量体、すなわち(b1)、(b2)、および(c)〜(m)からなる群から選ばれる2種またはそれ以上からなる共重合体である。
【0063】
(B)のうち、好ましいのは(b1)と(b2)の共重合体[共重合モル比(b1)/(b2)=0.01〜40/60〜99.99]、および(b2)のうちの2種以上の共重合体であり、さらに好ましいのは(b2)のうちの2種以上からなる共重合体である。
特に好ましいのは使用される2種以上の(b2)のアルキル基の平均炭素数(モル平均、以下、Cavと略記)が12.0以上13.0未満である共重合体(B1)、および2種以上の(b2)のアルキル基のCavが13.0〜15.0である共重合体(B2)であり、とりわけ好ましい(B1)および(B2)はアルキル基がいずれも直鎖アルキル基のものであり、分岐アルキル基は30%以下、特に10%以下である。
(B)としては(B1)と(B2)の併用、または(B1)もしくは(B2)の単独使用のいずれでもよいが、好ましいのは併用である。
(B1)と(B2)の具体例としては、n−ドデシルメタクリレート/n−オクタデシルメタクリレート(60〜90%/10〜40%、Cav=12.5〜14.0)、n−ドデシルメタクリレート/n−ヘキサデシルメタクリレート(50〜90%/10〜50%、Cav=12.3〜13.8)、n−ドデシルメタクリレート/n−テトラデシルメタクリレート(30〜90%/10〜70%、Cav=12.2〜13.4)およびn−ドデシルアクリレート/n−ドデシルメタクリレート(10〜40%/90〜60%、Cav=12)の共重合体などが挙げられる。
【0064】
(B)のMzは、好ましくは10,000〜1,000,000、さらに好ましくは15,000〜370,000である。
【0065】
(B)の添加量は潤滑油組成物の重量に基づいて、好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0.1〜5%、特に好ましくは0.1〜1%である。
また、(B)が(B1)と(B2)の併用の場合の重量比率は、通常1/99〜99/1、好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは30/70〜70/30である。
(B)は上記の(A)と同様の方法で製造できる。
【0066】
本発明の潤滑油組成物はさらに従来から公知の添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、以下のものが使用できる。
分散剤(D):ポリアルケニルコハク酸イミド(ビス−およびモノ−ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物およびボレート類;
清浄剤(E):塩基性、過塩基性または中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート、アルキルナフタレンスルフォネートなど)の過塩基性またはアルカリ土類金属塩]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類およびこれらの混合物;
酸化防止剤(F):ヒンダードフェノール類および芳香族2級アミン類;
消泡剤(G):シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステルおよびフォスフェート化合物など;
油性向上剤(H):長鎖脂肪酸およびそれらのエステル(オレイン酸およびオレイン酸エステルなど)、長鎖アミンおよびそれらのアミド(オレイルアミンおよびオレイルアミドなど);
摩擦摩耗調整剤(I):モリブデン系および亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメートおよびジンクジアルキルジチオフォスフェートなど);
極圧剤(J):硫黄系化合物(モノ−およびジ−スルフィド、スルフォキシドおよび硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物および塩素系化合物(塩素化パラフィン)など;
抗乳化剤(K):第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩)、硫酸化油、フォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート)など;
腐食防止剤(L):窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾールおよび1,3,4−チオジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート)など。
【0067】
これらの添加剤は、以下の表4記載の量(重量%、但し消泡剤はppm)を潤滑油組成物の重量に基づいて使用することができる。
【0068】
【表4】

【0069】
添加剤合計の添加量は潤滑油組成物の重量に基づいて、30%以下、好ましくは10〜20%である。
【0070】
本発明の潤滑油組成物の100℃での動粘度は、好ましくは2〜16mm2/sであり、潤滑油組成物の用途に応じて表5に示した好ましい範囲がある。潤滑油組成物の動粘度が2mm2/s以上であれば、漏れや焼き付きを起こしにくくなり、16mm2/s以下であれば、粘性抵抗が少なくなり、エネルギーロスを起こしにくい。
本発明の潤滑油組成物は従来の潤滑油組成物に比べ、低い動粘度であるため、省燃費性に優れる。
【0071】
【表5】

【0072】
本発明の潤滑油組成物は、デファレンシャル油および工業用ギヤ油などのギヤ油、マニュアルトランスミッション油(以下、MTFと略記)、オートマチックトランスミッション油(以下、ATFと略記)およびベルト−CVTFなどの変速機油、トロイダル−CVT油などのトラクション油、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、建設機械用作動油および工業用作動油などの作動油、並びにエンジン油などに好適に用いられる。これらのうち好ましいのはデファレンシャル油、ATF、ベルト−CVT油、エンジン油およびMTFでる。さらに好ましくはATF、ベルト−CVT油およびMTFである。特に好ましくはATFである。
【0073】
本発明の潤滑油組成物は剪断安定性が良好であり、CEC L45−45−A−99で規定された方法に従い試験時間を20時間として試験した場合、粘度低下率は好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは6%以下である。
【0074】
<実施例>
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、製造例、実施例、比較例中の部は重量部を表す。
(GPCによる重量平均分子量の測定法)
装置 : 東洋曹達製 HLC−802A
カラム : TSK gel GMH6 2本
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.5重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
標準 : ポリスチレン
【0075】
(低温粘度の試験方法)
JPI−5S−26−85の方法で−40℃の粘度を測定した。
(粘度指数の試験方法)
JIS−K−2283の方法で行った。
(剪断安定性の試験方法)
CEC L45−45−A−99の方法に従い試験時間を20時間とした。
(ペンタン不溶解分の試験法)
JIS K2514の試験時間96時間、温度150℃とし、JPI−5S−18−80のペンタン不溶解分A法、B法によりスラッジ量を求めた。
(引火点の試験法)
JIS K2265のクリーブランド開放式で行った。
(SAE No2試験法)
JASO M348−95により2000サイクル目のμdを測定した。(標準油T2の2000サイクル目μd=0.128)
【0076】
製造例1〜5、および比較製造例1、2;
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、および窒素吹き込み管を備えた反応容器に、鉱物油(高粘度指数油:引火点=164℃)25部を仕込み、別のガラス製ビーカーに、表6に記載の単量体を合計100部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン(DMと略記)を表6に記載の量、およびラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル:ADVNと略記)0.5部仕込み、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに仕込んだ。反応容器の気相部の窒素置換を行った後に密閉下85℃で4時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、得られたポリマーを130℃、3時間、減圧下で揮発性モノマーを除去し鉱物油(高粘度指数油:引火点=164℃)41.7部加え、さらに1時間撹拌して均一に溶解後、濃度60%の共重合体溶液(A−1)〜(A−3)、(B−1)、(B−2)、(X−1)および(X−2)を得た。得られた重合体のMzは表6に示す。
(B−1);平均炭素数12.2
(B−2);平均炭素数13.9
【0077】
【表6】

【0078】
DTM:2−デシルテトラデシルメタクリレート
DOM:2−ドデシルオクチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
nHM:n-ヘキサデシルメタクリレート
nOM:n-オクタデシルメタクリレート
nDM:n-ドデシルメタクリレート
nTM:n-テトラデシルメタクリレート
DAE:ジメチルアミノエチルメタクリレート
【0079】
実施例1〜3、比較例1、2
下記潤滑油組成物を各々作成し、粘度指数、低温粘度、せん断安定性、引火点、μdおよびISOT後のペンタン不溶解分の測定行った。その結果、表7の結果を得た。表7中において、A法とはISOT後のペンタン不溶解分であり、B法とは凝集剤を加えたときのペンタン不溶解分である。従って、A法とB法の差がスラッジ分散能力を示すこととなる。また、A法、B法でのスラッジ量は抗酸化性を示し、少ない方が性能良好なことを示す。
〔潤滑油組成物〕
(A−1)〜(A−3)の各共重合体溶液(実施例1〜3)、または(X−1)、(X−2)の比較の共重合体溶液(比較例1、2) ;10%
ジラウリルフォスフェートのオレイルアミン塩[(P)に相当] ; 1%
ポリブテニルコハク酸イミド[(D)に相当] ; 3%
(エチルクーパー社製「Hitec E638」)
過塩基性Caスルフォネート[(E)に相当] ; 1%
(エチルクーパー社製「Hitec E611」)
ジアルキルジチオリン酸亜鉛[(I)に相当] ; 0.3%
(アモコ社製 「Amoco 194」)
2,6−ジ−tertブチル−p−クレゾール[(F)に相当] ; 0.2%
(ルブリゾール社製 「Lubrizol 817」)
高粘度指数油(100℃動粘度:3mm2/s、粘度指数:115、引火点:200℃) ;84.5%
【0080】
実施例4
下記組成物を各々作成し、実施例1と同様の試験を行った結果を表7に示す。
〔潤滑油組成物〕(実施例4)
(A−1) ;9.7%
(B−1) ;0.15
(B−2) ;0.15
ジラウリルフォスフェートのオレイルアミン塩 ;1%
ポリブテニルコハク酸イミド ;3%
(エチルクーパー社製「Hitec E638」)
過塩基性Caスルフォネート ;1%
(エチルクーパー社製「Hitec E611」)
ジアルキルジチオリン酸亜鉛 ;0.3%
(アモコ社製 「Amoco 194」)
2,6−ジ−tertブチル−p−クレゾール ;0.2%
(ルブリゾール社製 「Lubrizol 817」)
高粘度指数油(100℃動粘度:3mm2/s、粘度指数:115、引火点:200℃) ;84.5%
【0081】
比較例3
下記組成物を各々作成し、実施例1と同様の試験を行った結果を表6に示す。
〔潤滑油組成物〕(比較例3)
(X−1) ;19.7%
ジラウリルフォスフェートのオレイルアミン塩 ;1%
ポリブテニルコハク酸イミド ;3%
(エチルクーパー社製「Hitec E638」)
過塩基性Caスルフォネート ;1%
(エチルクーパー社製「Hitec E611」)
ジアルキルジチオリン酸亜鉛 ;0.3%
(アモコ社製 「Amoco 194」)
2,6−ジ−tertブチル−p−クレゾール ;0.2%
(ルブリゾール社製 「Lubrizol 817」)
溶剤精製油(100℃動粘度:1.9mm2/s、引火点:152℃) ;74.5%
【0082】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の潤滑油組成物は、輸送用機器用および各種工作機器用などの駆動系潤滑油[ギア油(マニュアルトランスミッション油、デファレンシャル油等)、自動変速機油(オートマチックトランスミッション油、ベルトCVT油、トロイダルCVT油など)]、作動油[機械の作動油、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油など]、エンジン油[ガソリン用、ディーゼル用等]に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される単量体(a)を必須構成単量体とし、Z平均分子量が10,000〜1,000,000である共重合体(A)を含有する粘度指数向上剤。
【化1】

[式中、R1は水素原子またはメチル基;R2およびR3は炭素数1〜16の直鎖アルキル基または炭素数3〜34の分岐アルキル基であり、R2およびR3は同一でも異なっていてもよく、該分岐アルキル基中の連続するメチレン基の数は16個以下であり、R2、R3およびp個のCH2基の合計炭素数は17〜35であり;Aは炭素数2〜4のアルキレン基であり;nは0または1〜20の整数、pは0または1〜15の整数である。]
【請求項2】
(A)が、(A)の重量に基づいて、5〜90重量%の単量体(a)、10〜60重量%の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)、並びに0〜85重量%の炭素数8〜17のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートおよび炭素数18〜24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の単量体(b2)から構成されてなる共重合体である請求項1記載の粘度指数向上剤。
【請求項3】
(A)が、さらに、アミノ基含有単量体、第4級アンモニウム塩基含有単量体、ニトリル基含有単量体およびニトロ基含有単量体からなる群から選ばれる1種以上の単量体(k)から構成される単位を(A)の重量に基づいて0.1〜10重量%含有してなる共重合体である請求項1または2記載の粘度指数向上剤。
【請求項4】
さらに希釈溶剤を含有してなる請求項1〜3のいずれか記載の粘度指数向上剤。
【請求項5】
稀釈溶剤が、120℃以上の引火点を有する稀釈溶剤である請求項4記載の粘度指数向上剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の粘度指数向上剤および基油を含有し、基油が2〜10mm2/sの100℃での動粘度と160℃以上の引火点を有し、潤滑油組成物の重量に基づいて共重合体(A)を0.1〜30重量%含むことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項7】
さらに、下記一般式(2)〜(5)のいずれかで示される有機燐化合物(P)の1種以上を含有する請求項6記載の潤滑油組成物。
O=P(OR4a(OH)3-a (2)
O=P(OR5b(OH)3-b・NHc63-c (3)
P(OR7a(OH)3-a (4)
P(OR8b(OH)3-b・NHc93-c (5)
(式中、aは1〜3の整数;bおよびcは各々1または2の整数;R4〜R9は各々炭素数4〜24のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアルキル置換アリール基であり、R4〜R9は同一でも相異なったものでもよい。)
【請求項8】
さらに、炭素数8〜17のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートおよび炭素数18〜24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる単量体(b2)の2種以上から構成され、該(b2)のアルキル基の平均炭素数が12.0〜13.0である共重合体(B1)および/または該(b2)の2種以上から構成され該(b2)のアルキル基の平均炭素数が13.1〜15.0である共重合体(B2)を含有する請求項6または7記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
さらに分散剤(D)、清浄剤(E)、酸化防止剤(F)、消泡剤(G)、油性向上剤(H)、摩擦摩耗調整剤(I)、極圧剤(J)、抗乳化剤(K)および腐食防止剤(L)からなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項6〜8のいずれか記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2007−2009(P2007−2009A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180670(P2005−180670)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】