説明

粘着シートおよびその製造方法

【課題】電子機器の内部において使用される粘着シートであって、非接触の金属を腐食させる性質が抑えられた粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明により提供される粘着シート54は、水性媒体中に粘着成分および防腐剤を含む水性粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する。その粘着シート54は、容積50mLの容器52に該粘着シート1gと銀板56とを収容し、該容器52を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、銀板56を腐食させないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の内部で使用される粘着(感圧接着ともいう。以下同じ。)シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性媒体中に粘着成分を含む形態の水性粘着剤組成物(例えば、粘着成分が水性媒体に分散したエマルション型の粘着剤組成物)は、粘着成分が有機溶剤に溶解した形態の粘着剤組成物(溶剤型粘着剤組成物)に比べて環境衛生の観点から望ましい。このため、水性粘着剤組成物を用いてなる粘着シートは、両面テープその他の形態で、種々の分野に利用されるようになってきている。かかる利用分野の一例として、家電やOA機器等の各種電子機器が挙げられる。水性エマルション型の粘着剤に関する技術文献として特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−12775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水性粘着剤組成物から形成された粘着シートは、使用の態様によっては、該粘着シートに直接接触しない金属(例えば銀)を腐食させることがある。例えば、電子機器の筐体内部のように限られた空間内で粘着シートと金属材料が共存する状況において、上記非接触の金属材料に腐食が生じる場合がある。かかる事象は、電子機器の基板や配線等を構成する金属の腐食による接触不良を引き起こす要因となり得る。したがって、電子機器の内部で使用するための粘着シートには、金属を腐食させない性質が特に望まれる。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題を解決すべくなされたものであり、水性粘着剤組成物を用いてなる粘着剤層を備えた電子機器内部用粘着シートであって上記非接触金属の腐食が抑えられた粘着シートを提供することを目的とする。本発明の他の目的は、かかる粘着シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、粘着シートが非接触の金属を腐食させる事象は、該粘着シートから金属腐食性の物質が放散することにより引き起こされるのではないかと考えた。そして、かかる金属腐食性物質の発生源につき種々検討を行った。その結果、水系粘着剤組成物の腐敗を防止するため必要に応じて添加される防腐剤が、通常はその添加量がごく微量であるにも拘らず、意外にも、上記金属腐食の主要な要因となり得ることを突き止めた。そして、金属を腐食させる性質を有しないか或いはその性質が極めて弱い防腐剤を用いることにより上記課題を解決し得ることを見出して、本発明を完成した。
【0007】
本発明によると、電子機器の内部において使用される粘着シートであって、水性粘着剤組成物を用いてなる粘着剤層を備える粘着シートを製造する方法が提供される。その方法は、水性媒体中に粘着成分および防腐剤を含む水性粘着剤組成物を調製することと、前記粘着剤組成物を乾燥させて前記粘着剤層を形成することとを包含する。ここで、前記防腐剤としては、容積50mLの容器に該防腐剤1.7×10−5gと銀板とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させない防腐剤を使用する。
【0008】
かかる方法では、粘着剤層形成用の水性粘着剤組成物に配合される防腐剤として、上記金属腐食性試験に合格する(すなわち、銀板を腐食させない)防腐剤を使用する。かかる水性粘着剤組成物を用いることにより、金属(特に銀)腐食性を有しないか或いはその性質が極めて弱く、したがって電子機器の内部での使用に好適な粘着シートを製造することができる。また、上記粘着剤組成物は防腐剤を含むので、該組成物の製造、移送、貯蔵等の際において腐敗を生じにくい。このように保存性のよい粘着剤組成物は、生産管理が容易であること等から、生産コストの低減に寄与し得るので好ましい。
【0009】
本発明者は、チオシアネート骨格を有する化合物や、チオアセタール骨格を有する化合物は、上記金属腐食性試験において銀板を腐食させやすいことを見出した。したがって、前記防腐剤としては、チオシアネート骨格を有さず、且つチオアセタール骨格を有しない化合物から選択される一種または二種以上を使用することが好ましい。このことによって、金属腐食性の低い粘着シートを効率よく設計および製造することができる。
【0010】
前記粘着剤組成物は、前記防腐剤を1ppm以上の濃度で含むことが好ましい。かかる粘着剤組成物は、該組成物の製造、移送、貯蔵等の際における腐敗がよりよく防止されたものとなり得る。このように保存性のよい粘着剤組成物は、生産管理が容易であること等から、生産コストの低減に寄与し得るので好ましい。
【0011】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記粘着剤組成物が、大気中において容積50mLの容器に該組成物20gを収容し、その容器を密閉して30℃に一週間保持する腐敗防止性試験において腐敗が認められない組成物である。このように腐敗防止性に優れた(換言すれば、保存性のよい)粘着剤組成物は、生産管理が容易であること等から、生産コストの低減に寄与し得るので好ましい。
【0012】
前記粘着剤組成物としては、前記粘着成分におけるベースポリマー(典型的には、ポリマー成分のなかの主成分)がアクリル系重合体であり、該アクリル系重合体が水に分散したエマルション型の組成物(アクリル系エマルション型粘着剤組成物)を好ましく使用し得る。
【0013】
本発明によると、また、電子機器の内部において使用される粘着シートが提供される。その粘着シートは、水性媒体中に粘着成分および防腐剤を含む水性粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する。そして、前記粘着シートは、容積50mLの容器に該粘着シート1gと銀板とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させないことを特徴とする。かかる粘着シートは、金属(特に銀)を腐食させる性質を有しないか或いはその性質が極めて弱いことから、電子機器の内部において使用される粘着シートとして好適である。前記防腐剤は、チオシアネート骨格を有さず、且つチオアセタール骨格を有しない化合物であることが好ましい。
【0014】
ここに開示される技術の好ましい適用対象として、基材の両面に前記粘着剤層を備えた両面粘着シートが例示される。かかる構成の粘着シートは、一般に、単位質量の粘着シートに含まれる粘着剤の量が多く、したがって防腐剤の量も多くなりがちである。このように単位質量当たりに多くの防腐剤を含む粘着シートでは、ここに開示される発明を適用することが特に有意義である。
【0015】
ここに開示される技術により提供される粘着シート(ここに開示されるいずれかの方法により製造された粘着シートであり得る。)は、上述のように金属を腐食させる性質を示さないか或いはその性質が極めて弱いことから、電子機器の内部で用いられる粘着シートとして好適である。例えば、回路基板、配線等の金属材料と共存する内部空間において、接合のために使用される粘着シート(典型的には両面粘着シート)として好ましく使用され得る。したがって本発明は、他の側面として、上記粘着シートによる接合箇所を内部に有する電子機器を提供する。
【0016】
なお、本明細書により開示される内容には、以下のものが含まれる。
(1)ここに開示されるいずれかの方法により製造された粘着シートであって、容積50mLの容器に該粘着シート1gと銀板とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させないことを特徴とする、粘着シート。
(2)電子機器の内部における接合に用いられる粘着シートを製造するための水性粘着剤組成物であって、
水性媒体と、該水性媒体に溶解または分散した粘着成分と、防腐剤とを含み、
ここで、前記防腐剤は、容積50mLの容器に該防腐剤1.7×10−5gと銀板とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させない防腐剤である、粘着剤組成物。
(3)電子機器の内部における接合に用いられる粘着シートを製造するための水性粘着剤組成物を製造する方法であって:
容積50mLの容器に該防腐剤1.7×10−5gと銀板とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させない防腐剤を選択すること;および、
粘着成分および前記防腐剤を水性媒体中に含む水性粘着剤組成物を調製すること;
を包含する、粘着剤組成物製造方法。
(4)水性粘着剤組成物を用いてなる粘着剤層を備え、電子機器の内部において使用される粘着シートを製造する方法であって:
容積50mLの容器に該防腐剤1.7×10−5gと銀板とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させない防腐剤を選択すること;
粘着成分および前記防腐剤を水性媒体中に含む水性粘着剤組成物を調製すること;および、
前記粘着剤組成物を乾燥させて前記粘着剤層を形成すること;
を包含する、粘着シート製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明に係る粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明に係る粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明に係る粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明に係る粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図7】金属腐食性試験を行う方法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の説明において、同様の作用を奏する部材または部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0019】
本発明により提供される粘着シートは、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備える。かかる粘着剤層を基材(支持体)の片面または両面に有する形態の基材付き粘着シートであってもよく、上記粘着剤層が剥離ライナー(剥離面を備える基材としても把握され得る。)に保持された形態等の基材レスの粘着シートであってもよい。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、上記粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、本発明により提供される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0020】
ここに開示される粘着シートは、例えば、図1〜図6に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。このうち図1,図2は、両面粘着タイプの基材付き粘着シートの構成例である。図1に示す粘着シート1は、基材10の両面(いずれも非剥離性)に粘着剤層21,22が設けられ、それらの粘着剤層が、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有している。図2に示す粘着シート2は、基材10の両面(いずれも非剥離性)に粘着剤層21,22が設けられ、それらのうち一方の粘着剤層21が、両面が剥離面となっている剥離ライナー31により保護された構成を有している。この種の粘着シート2は、該粘着シートを巻回して他方の粘着剤層22を剥離ライナー31の裏面に当接させることにより、粘着剤層22もまた剥離ライナー31によって保護された構成とすることができる。
【0021】
図3,図4は、基材レスの両面粘着シートの構成例である。図3に示す粘着シート3は、基材レスの粘着剤層21の両面21A,21Bが、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有する。図4に示す粘着シート4は、基材レスの粘着剤層21の一面21Aが、両面が剥離面となっている剥離ライナー31により保護された構成を有し、これを巻回すると、粘着剤層21の他面21Bが剥離ライナー31の背面に当接することにより、他面21Bもまた剥離ライナー31で保護された構成とできるようになっている。
【0022】
図5,図6は、片面粘着タイプの基材付き粘着シートの構成例である。図5に示す粘着シート5は、基材10の一面10A(非剥離性)に粘着剤層21が設けられ、その粘着剤層21の表面(接着面)21Aが、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31で保護された構成を有する。図6に示す粘着シート6は、基材10の一面10A(非剥離性)に粘着剤層21が設けられた構成を有する。基材10の他面10Bは剥離面となっており、粘着シート6を巻回すると該他面10Bに粘着剤層21が当接して、該粘着剤層の表面(接着面)21Bが基材の他面10Bで保護されるようになっている。
【0023】
上記粘着剤層の形成に使用される粘着剤組成物は、粘着成分が水性媒体に溶解または分散した形態の水性粘着剤組成物である。ここで水性媒体とは、該媒体を構成する溶媒が水または水を主成分とする混合溶媒(水性溶媒)であるものをいう。上記水性粘着剤組成物の概念には、一般に水分散型(典型的にはエマルション型)粘着剤と称されるもの、および、水溶性粘着剤と称されるものが包含される。ここに開示される技術における水性粘着剤組成物の典型例は、水性エマルション型粘着剤組成物である。
【0024】
このような水性粘着剤組成物は、溶剤型粘着剤組成物に比べて環境衛生上の利点を有する一方、溶剤型粘着剤組成物とは異なり、該組成物中で微生物が繁殖し得ることから、通常の保存条件では腐敗しやすい。ここに開示される水性粘着剤組成物には、このような事態を防いで粘着剤組成物の保存性を高めるための防腐剤が添加されている。すなわち、水性媒体中に粘着成分および防腐剤を含む水性粘着剤組成物である。
【0025】
ここに開示される技術により提供される粘着シートは、容積50mLの容器に該粘着シート1gと銀板(例えば、99.95%を超える純度の銀からなり、サイズが1mm×10mm×10mmの銀板を使用する。)とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させないことによって特徴付けられる。したがって、電子機器の内部において使用される粘着シートとして好適である。なお、上記試験に使用する粘着シート1gの質量は、図1,2,5,6に例示されるような基材付き粘着シートについては、粘着剤層および基材を含む全体の質量とする(ただし、剥離ライナーは含まない)。また、図3,4に例示されるような基材レスの粘着シートについては、粘着剤層自体の質量とする。
【0026】
上記粘着シートは、防腐剤が添加された水性粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備える。したがって、上記粘着シートは、使用した粘着剤組成物に由来する防腐剤を有する。上記防腐剤は、容積50mLの容器に該防腐剤1.7×10−5gと銀板(例えば、99.95%を超える純度の銀からなり、サイズが1mm×10mm×10mmの銀版を使用する。)とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させない防腐剤であることが好ましい。ここに開示される技術において使用する防腐剤としては、上記金属腐食性試験に合格する(すなわち、当該試験において銀板を腐食させない)各種の公知材料から選択される防腐剤を、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。なお、本発明において「銀板を腐食させない」とは、上記金属腐食性試験後(一週間経過後)の銀板と未使用(試験前)の銀板とを目視観察により比較して、外観変化(金属光沢の消失、着色等)が認められないことをいうものとする。
【0027】
本発明者は、チオシアネート骨格を有する化合物や、チオアセタール骨格を有する化合物は、上記金属腐食性試験において銀板を腐食させやすいことを見出した。これは、例えばチオアセタール骨格を有する化合物は、粘着剤組成物を乾燥させて粘着剤層を形成する際や粘着シートの保存または使用時等の熱履歴により、熱分解物として、メルカプタン、ジスルフィド等のように硫黄(S)を構成原子として含む揮発性化合物(すなわち、硫黄を構成原子として含むガス)を生じやすいことによるものと考えられる。かかる硫黄含有ガスが粘着シートから放散すると、非接触の金属(例えば銀)を腐食させる要因となり得る。ここに開示される技術において使用する防腐剤としては、このような揮発性金属腐食物質の放散が極めて少ない材料を選択することが好ましい。したがって、上記防腐剤の選択に当たっては、チオシアネート骨格を有する化合物やチオアセタール骨格を有する化合物(メチレンジチオイソシアネート、2−(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール等)を避けることが好ましい。
【0028】
ここに開示される技術において好ましく使用し得る防腐剤の具体例としては、チアゾリン系防腐剤(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等)、シアノアセトアミド系防腐剤(例えば、2,2−ジブロモ−2−シアノアセトアミド等のハロシアノアセトアミド類)、フェノール系及びフェニルエステル系防腐剤(ペンタクロロフェニルラウレート、2,4,6−トリブロモフェノール等)、等が挙げられる。
【0029】
防腐剤の使用量は、粘着剤組成物の用途や使用態様に応じて所望の防腐性能が付与される量であればよく、特に限定されない。例えば、水性粘着剤組成物1質量部に対する防腐剤の使用量を凡そ1×10−7質量部(すなわち、質量基準で0.1ppm)以上、典型的には0.1ppm〜1000ppm程度とすることができる。通常は、水性粘着剤組成物1質量部に対する防腐剤の使用量を1×10−6質量部(すなわち、質量基準で1ppm)以上、典型的には1ppm〜500ppm程度とすることが適当である。防腐剤の使用量が少なすぎると、粘着剤組成物の防腐性が不足しがちとなることがあり得る。防腐剤の使用量が多すぎると、粘着性能が低下傾向となることがあり得る。
【0030】
ここに開示される技術における粘着剤組成物は、大気中において容積50mLの容器に該組成物20gを収容し、その容器を密閉して30℃に一週間保持する腐敗防止性試験において、腐敗が認められない程度の防腐性を備えた組成物であることが好ましい。このように腐敗防止性に優れた(換言すれば、保存性のよい)粘着剤組成物は、生産管理が容易であること等から、生産コストの低減に寄与し得る。したがって、かかる粘着剤組成物によると、金属腐食性が高度に抑制された粘着シートを低コストで提供することができる。なお、本発明において「腐敗が認められない」とは、上記腐敗防止性試験後(一週間経過後)に瓶の蓋を開けて腐敗臭の有無を官能評価し(臭いを嗅ぎ)、そこで腐敗臭が感じられないことをいうものとする。
【0031】
上記粘着成分は、粘着剤を構成し得るアクリル系、ゴム系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の公知の各種ポリマーをベースポリマーとするものであり得る。ここでベースポリマーとは、粘着剤の基本成分をなすポリマーをいい、典型的には、該粘着剤に含まれるポリマー成分のなかの主成分である。ここに開示される技術における粘着剤組成物の好適例として、粘着剤に含まれるポリマー成分のなかの主成分がアクリル系重合体である水性粘着剤組成物が挙げられる。なかでも、上記アクリル系重合体が水に分散したエマルション型の組成物(アクリル系エマルション型粘着剤組成物)が好適である。
【0032】
以下、主として上記水性粘着剤組成物がアクリル系エマルション型粘着剤組成物である場合を例として、本発明をより詳しく説明する。
【0033】
上記アクリル系エマルション型粘着剤組成物は、水分散型アクリル系重合体を含む。この水分散型アクリル系重合体は、アクリル系重合体が水に分散しているエマルション形態の組成物である。ここに開示される技術において、上記アクリル系重合体は、粘着剤層を構成する粘着剤のベースポリマー(粘着剤の基本成分)として用いられる。例えば、該粘着剤の50質量%以上が上記アクリル系重合体であることが好ましい。かかるアクリル系重合体としては、アルキル(メタ)アクリレートを主構成単量体成分(モノマー主成分、すなわちアクリル系重合体を構成するモノマーの総量のうち50質量%以上を占める成分)とするものを好ましく採用し得る。
【0034】
なお、本明細書中において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタクリロイルを、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0035】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1〜20のアルキル基である。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基が挙げられる。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、これらのうちRが炭素原子数2〜14(以下、このような炭素原子数の範囲を「C2−14」と表すことがある。)のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、RがC2−10のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。特に好ましいRとして、ブチル基および2−エチルヘキシル基が例示される。
【0036】
好ましい一つの態様では、アクリル系重合体の合成に使用するアルキル(メタ)アクリレートの総量のうち凡そ50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、例えば凡そ90質量%以上)が、上記式(1)におけるRがC2−14(好ましくはC2−10、より好ましくはC4−8)のアルキル(メタ)アクリレートである。このようなモノマー組成によると、常温付近における貯蔵弾性率が粘着剤として好適な範囲となるアクリル系重合体が得られやすい。使用するアルキル(メタ)アクリレートの実質的に全部がC2−14アルキル(メタ)アクリレートであってもよい。
【0037】
ここに開示される技術におけるアクリル系重合体を構成するアルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレート(BA)単独であってもよく、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)単独であってもよく、BAと2EHAとの二種であってもよい。アルキル(メタ)アクリレートとしてBAおよび2EHAを組み合わせて用いる場合、それらの使用比率は特に制限されない。
【0038】
アクリル系重合体を構成するモノマー成分としては、アルキル(メタ)アクリレートが主成分となる範囲で、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマー(「共重合性モノマー成分」と称する場合がある。)が用いられていてもよい。アクリル系重合体を構成するモノマー成分の総量に対するアルキル(メタ)アクリレートの割合は、凡そ80質量%以上(典型的には80〜99.8質量%)とすることができ、好ましくは85質量%以上(例えば85〜99.5質量%)である。アルキル(メタ)アクリレートの割合が90質量以上(例えば90〜99質量%)であってもよい。
【0039】
上記共重合性モノマー成分は、アクリル系重合体に架橋点を導入したり、アクリル系重合体の凝集力を高めたりするために役立ち得る。かかる共重合性モノマーは、単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
より具体的には、アクリル系重合体に架橋点を導入するための共重合性モノマー成分として、各種の官能基含有モノマー成分(典型的には、熱により架橋する架橋点をアクリル系重合体に導入するための、熱架橋性官能基含有モノマー成分)を用いることができる。かかる官能基含有モノマー成分を用いることにより、被着体に対する接着力を向上させ得る。このような官能基含有モノマー成分は、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能であり、且つ架橋点となる官能基を提供し得るモノマー成分であればよく、特に制限されない。例えば、以下のような官能基含有モノマー成分を、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
カルボキシル基含有モノマー:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の、エチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の、エチレン性不飽和ジカルボン酸およびその無水物(無水マレイン酸、無水イコタン酸等)。
水酸基含有モノマー:例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の、不飽和アルコール類。
【0042】
アミド基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
アミノ基含有モノマー:例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート。
【0043】
エポキシ基を有するモノマー:例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル。
シアノ基含有モノマー:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル。
ケト基含有モノマー:例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート。
【0044】
窒素原子含有環を有するモノマー:例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン。
【0045】
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン。
【0046】
このような官能基含有モノマー成分のうち、カルボキシル基含有モノマーまたはその酸無水物から選択される一種または二種以上を好ましく用いることができる。官能基含有モノマー成分の実質的に全部がカルボキシル基含有モノマーであってもよい。なかでも好ましいカルボキシル基含有モノマーとして、アクリル酸およびメタクリル酸が例示される。これらの一方を単独で用いてもよく、アクリル酸とメタクリル酸とを任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記官能基含有モノマー成分は、例えば、アルキル(メタ)アクリレート100質量部に対して凡そ12質量部以下(例えば凡そ0.5〜12質量部、好ましくは凡そ1〜8質量部)の範囲で用いることが好ましい。官能基含有モノマー成分の使用量が多すぎると、凝集力が高くなりすぎて粘着特性(例えば接着力)が低下傾向となることがあり得る。
【0048】
また、アクリル系重合体の凝集力を高めるために、上述した官能基含有モノマー以外の他の共重合成分を用いることができる。かかる共重合成分としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の、ビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の、芳香族ビニル化合物;シクロアルキル(メタ)アクリレート[シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチルジ(メタ)アクリレート等]、イソボルニル(メタ)アクリレート等の、非芳香族性環含有(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート[例えばフェニル(メタ)アクリレート]、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート[例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート]、アリールアルキル(メタ)アクリレート[例えばベンジル(メタ)アクリレート]等の、芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等の、オレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等の、イソシアネート基含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等の、アルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等の、ビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。
【0049】
共重合性モノマー成分の他の例として、一分子内に複数の官能基を有するモノマーが挙げられる。かかる多官能モノマーの例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0050】
このようなモノマーを重合させて水分散型アクリル系重合体を得る方法としては、公知乃至慣用の重合方法を採用することができ、エマルション重合法を好ましく用いることができる。エマルション重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。モノマーの一部または全部(典型的には全部)をあらかじめ水(典型的には、後述するような乳化剤の適当量を水とともに使用する。)と混合して乳化し、その乳化液(モノマーエマルション)を反応容器内に一括、連続あるいは分割して供給してもよい。重合温度は、使用するモノマーの種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃〜100℃(典型的には40℃〜80℃)程度とすることができる。
【0051】
重合時に用いる重合開始剤としては、重合方法の種類に応じて、公知乃至慣用の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、エマルション重合法において、アゾ系重合開始剤を好ましく使用し得る。アゾ系重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
【0052】
重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、過酸化水素等の、過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の、置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。かかるレドックス系開始剤の例としては、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、等が挙げられる。
【0053】
このような重合開始剤は、単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100質量部に対して0.005〜1質量部(典型的には0.01〜1質量部)程度の範囲から選択することができる。重合開始剤の使用量が多すぎるか或いは少なすぎると、所望の粘着性能が得られ難くなる場合があり得る。
【0054】
重合の際には、必要に応じて連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。連鎖移動剤としては、公知または慣用の連鎖移動剤を用いることができ、例えば、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等のメルカプタン類の他、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。このような連鎖移動剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、例えば凡そ0.001〜5質量部(典型的には凡そ0.005〜2質量部、例えば凡そ0.001〜1質量部)程度とすることができる。例えば、両面粘着シート用の水分散型アクリル系重合体の合成において、上記範囲の使用量を好ましく採用し得る。連鎖移動剤の使用量が多すぎると、重合率が低下しがちとなる場合があり得る。
【0055】
なお、上記連鎖移動剤は、その種類および使用態様(使用量等)によっては、硫黄を構成原子として含む金属腐食性ガス(HS,SO等)の発生要因となり得る。ここに開示される技術は、上記重合において連鎖移動剤を使用しない態様で好ましく実施され得る。このことによって、連鎖移動剤に起因する金属の腐食を未然に防止することができる。
【0056】
ここに開示される技術の他の好ましい一態様では、上記重合において、硫黄を構成原子として含まない化合物からなる連鎖移動剤を使用する。典型的には、連鎖移動剤として、硫黄を構成原子として含まない化合物のみを使用する(換言すれば、硫黄を構成原子として含む化合物を実質的に使用しない)。かかる態様によると、連鎖移動剤に由来して上記硫黄含有金属腐食性ガスが発生することがないので、連鎖移動剤に起因する金属の腐食を未然に防止することができる。硫黄を構成原子として含まない化合物からなる連鎖移動剤の具体例としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の、アニリン類;α−ピネン、ターピノーレン等の、テルペノイド類;α−メチルスチレン、α―メチルスチレンダイマー等の、スチレン類;ジベンジリデンアセトン、シンナミルアルコール、シンナミルアルデヒド等の、ベンジリデニル基を有する化合物;ヒドロキノン、ナフトヒドロキノン等の、ヒドロキノン類;ベンゾキノン、ナフトキノン等の、キノン類;2,3−ジメチル−2−ブテン、1,5−シクロオクタジエン、ソルビン酸等の、オレフィン類;フェノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール等の、アルコール類;ジフェニルベンゼン、トリフェニルベンゼン等の、ベンジル水素類;等が挙げられる。
【0057】
ここに開示される技術の他の好ましい一態様では、上記重合において、硫黄を構成原子として含むが、上記硫黄含有金属腐食性ガスを発生し難い連鎖移動剤を使用する。かかる連鎖移動剤として、メルカプト基(−SH)の結合している炭素原子(C)に結合する水素原子(H)が一つのみであるメルカプタン(例えば、メルカプト基が2級炭素原子に結合しているメルカプタン、すなわち2級メルカプタン)、上記炭素原子に水素原子が結合していないメルカプタン(例えば、メルカプト基が3級炭素原子に結合しているメルカプタン、すなわち3級メルカプタン)、上記炭素原子が共鳴構造をとるメルカプタン(芳香族メルカプタン等)、等を例示することができる。1級メルカプト基を有するメルカプタンを実質的に使用しないことが好ましい。
【0058】
3級メルカプタンの具体例としては、ターシャリーブチルメルカプタン、ターシャリーオクチルメルカプタン、ターシャリーノニルメルカプタン、ターシャリーラウリルメルカプタン、ターシャリーテトラデシルメルカプタン、ターシャリーヘキサデシルメルカプタン等が挙げられる。炭素原子数が4以上の3級アルキルメルカプタンを好ましく用いることができる。粘着剤組成物および粘着シートの臭気低減の観点からは、炭素原子数が6以上(より好ましくは8以上)の3級アルキルメルカプタンを選択することが有利である。炭素原子数の上限は特に限定されないが、典型的には20以下である。例えば、ターシャリーラウリルメルカプタンを好ましく使用し得る。
【0059】
上記芳香族メルカプタンは、芳香族性をもつ構造部分(典型的には芳香環)とメルカプト基との結合を骨格の少なくとも一部に有する化合物、その異性体、またはメルカプト基をもつ誘導体であり得る。芳香族メルカプタンの具体例としては、フェニルメルカプタン、4−トリルメルカプタン、4−メトキシフェニルメルカプタン、4−フルオロベンゼンチオール、2,4−ジメチルベンゼンチオール、4−アミノベンゼンチオール、4−フルオロベンゼンチオール、4−クロロベンゼンチオール、4−ブロモベンゼンチオール、4−ヨードベンゼンチオール、4−t−ブチルフェニルメルカプタン、1−ナフチルメルカプタン、1−アズレンチオール、1−アントラセンチオール、4,4’チオベンゼンチオール、等が挙げられる。炭素原子数が6〜20程度の芳香族メルカプタンが好ましい。例えば、フェニルメルカプタンを好ましく使用し得る。
【0060】
かかるエマルション重合によると、アクリル系重合体が水に分散したエマルション形態の重合液(アクリル系重合体エマルション)を調製することができる。ここに開示される技術における水性粘着剤組成物は、上記重合液または該重合液に適当な後処理を施したものを用いて好ましく製造され得る。あるいは、エマルション重合方法以外の重合方法(例えば、溶液重合、光重合、バルク重合等)を利用してアクリル系重合体を合成し、該重合体を水に分散させてアクリル系重合体エマルションを調製してもよい。
【0061】
アクリル系重合体エマルションの調製に当たっては、必要に応じて乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系のいずれも使用可能である。通常は、アニオン系またはノニオン系の乳化剤の使用が好ましい。このような乳化剤は、例えば、モノマー成分をエマルション重合させる際や、他の方法で得られたアクリル系重合体を水に分散させる際等に好ましく使用することができる。
【0062】
アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム等の、アルキル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の、スルホン酸塩型アニオン系乳化剤;スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等の、スルホコハク酸型アニオン系乳化剤;等が挙げられる。
【0063】
また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル型ノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー;等が挙げられる。上記のようなアニオン系またはノニオン系乳化剤にラジカル重合性基(プロペニル基等)が導入された構造のラジカル重合性乳化剤(反応性乳化剤)を用いてもよい。
【0064】
このような乳化剤は、一種を単独で用いてもよく、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。乳化剤の使用量は、アクリル系重合体をエマルションの形態に調製することが可能な使用量であればよく、特に制限されない。例えば、アクリル系共重合体100質量部当たり、固形分基準で例えば凡そ0.2〜10質量部(好ましくは凡そ0.5〜5質量部)程度の範囲から選択することが適当である。乳化剤の使用量が少なすぎると、所望の分散性が得られ難くなる場合がある。乳化剤の使用量が多すぎると、粘着性能が低下傾向となることがあり得る。
【0065】
ここに開示される技術における水性粘着剤組成物は、アクリル系重合体の他に、少なくとも防腐剤を含有する。防腐剤の配合方法は特に限定されない。例えば、アクリル系重合体エマルションに防腐剤を添加(単独で添加してもよく、他の添加剤と防腐剤との混合物の形態として添加してもよい。)して混合する方法を好ましく採用することができる。
【0066】
ここに開示される技術における粘着剤組成物は、上記アクリル系重合体に加えて、さらに粘着付与樹脂を含有し得る。粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系、テルペン系、炭化水素系、エポキシ系、ポリアミド系、エラストマー系、フェノール系、ケトン系等、の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
具体的には、ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)をアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
【0068】
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂;これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン系樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂としては、テルペン−フェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂等が例示される。
【0069】
炭化水素系粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。脂肪族系炭化水素樹脂としては、炭素数4〜5程度のオレフィンおよびジエンから選択される一種または二種以上の脂肪族炭化水素の重合体等が例示される。上記オレフィンの例としては、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン等が挙げられる。上記ジエンの例としては、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン等が挙げられる。芳香族系炭化水素樹脂としては、炭素数8〜10程度のビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、メチルインデン等)の重合体等が例示される。脂肪族系環状炭化水素樹脂としては、いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後に重合させた脂環式炭化水素系樹脂;環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン等)の重合体またはその水素添加物;芳香族系炭化水素樹脂または脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂;等が例示される。
【0070】
ここに開示される技術では、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上(好ましくは凡そ100℃以上)である粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。かかる粘着付与樹脂によると、より高性能な(例えば、接着性の高い)粘着シートが実現され得る。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ170℃以下(典型的には凡そ160℃以下)とすることができる。軟化点が170℃よりも高すぎる粘着付与樹脂では、アクリル系重合体との相溶性が低下傾向となることがあり得る。
【0071】
なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902およびJIS K 2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、泡ができないように注意して満たす。冷えたのち、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。つぎに、径85mm以上、高さ127mm以上のガラス容器(加熱浴)の中に支持器(環台)を入れ、グリセリンを深さ90mm以上となるまで注ぐ。つぎに、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにしてグリセリン中に浸し、グリセリンの温度を20℃プラスマイナス5℃に15分間保つ。つぎに、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。つぎに、環の上端からグリセリン面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの浴温の上昇する割合は、毎分5.0プラスマイナス0.5℃でなければならない。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とする。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用する。
【0072】
このような粘着付与樹脂は、該樹脂を水に分散させたエマルションの形態で好ましく使用され得る。上記粘着付与樹脂エマルションは、必要に応じて乳化剤を用いて調製されたものであり得る。乳化剤としては、アクリル系重合体エマルションの調製に使用し得る乳化剤と同様のものから、一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。通常は、アニオン系乳化剤またはノニオン系乳化剤の使用が好ましい。なお、アクリル系重合体エマルションの調製に用いる乳化剤と、粘着付与樹脂エマルションの調製に用いる乳化剤とは、同一でもよく異なってもよい。例えば、いずれのエマルションの調製にもアニオン系乳化剤を用いる態様、いずれにもノニオン系乳化剤を用いる態様、一方にはアニオン系、他方にはノニオン系の乳化剤を用いる態様、等を好ましく採用し得る。乳化剤の使用量は、粘着付与樹脂をエマルションの形態に調製可能な量であれば特に制限されず、例えば、粘着付与樹脂100質量部(固形分基準)に対して0.2〜10質量部(好ましくは0.5〜5質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0073】
上記粘着付与樹脂エマルションには防腐剤が配合されていてもよい。この防腐剤としては、上述した金属腐食性試験において銀板を腐食させないものを好ましく採用し得る。すなわち、ここに開示される粘着剤組成物にとり好ましい防腐剤を、該組成物の調製に用いる粘着付与樹脂エマルションの防腐剤としても好ましく用いることができる。ここに開示される技術における水性粘着剤組成物は、アクリル系重合体エマルションと、防腐剤を含む粘着付与樹脂エマルションと、を混合して調製されたものであり得る。上記水性粘着剤組成物は、粘着付与樹脂エマルションに含まれる防腐剤に加えて、該防腐剤と同一のまたは異なる種類の防腐剤を含有するものであり得る。
【0074】
粘着付与樹脂の使用量は特に制限されず、目的とする粘着性能(接着力等)に応じて適宜設定することができる。例えば、固形分基準で、アクリル系重合体100質量部に対して、粘着付与樹脂を凡そ10〜100質量部(より好ましくは15〜80質量部、さらに好ましくは20〜60質量部)の割合で使用することが好ましい。
【0075】
上記粘着剤組成物には、必要に応じて架橋剤が用いられていてもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、公知乃至慣用の架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等)から適宜選択して用いることができる。ここで使用する架橋剤としては、油溶性および水溶性のいずれも使用可能である。架橋剤は、単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は特に制限されず、例えば、アクリル系重合体100質量部に対して凡そ10質量部以下(例えば凡そ0.005〜10質量部、好ましくは凡そ0.01〜5質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0076】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、pH調整等の目的で使用される酸または塩基(アンモニア水等)を含有するものであり得る。該組成物に配合され得る他の任意成分としては、粘度調整剤(増粘剤等)、レベリング剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、界面活性剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、水性粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤が例示される。
【0077】
ここに開示される技術における粘着剤層は、上述のような水性粘着剤組成物を所定の面上に付与して乾燥または硬化させることにより好適に形成することができる。粘着剤組成物の付与(典型的には塗布)に際しては、慣用のコーター(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等)を用いることができる。粘着剤層の厚みは特に限定されず、例えば凡そ2μm〜200μm(好ましくは凡そ5μm〜100μm)程度であり得る。
【0078】
かかる粘着剤層を備える粘着シートは種々の方法で作製され得る。例えば、基材付き粘着シートの場合、基材に粘着剤組成物を直接付与して乾燥または硬化させることで該基材上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層に剥離ライナーを積層する方法;剥離ライナー上に形成した粘着剤層を基材に貼り合わせ、該粘着剤層を基材に転写するとともに上記剥離ライナーをそのまま粘着剤層の保護に利用する方法;等を採用することができる。
【0079】
ここに開示される粘着シートにおいて、粘着剤層を支持(裏打ち)する基材としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等)製フィルム、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)製フィルム、塩化ビニル系樹脂製フィルム、酢酸ビニル系樹脂製フィルム、ポリイミド系樹脂製フィルム、ポリアミド系樹脂製フィルム、フッ素系樹脂製フィルム、その他セロハン類等のプラスチックフィルム類;和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等の紙類;各種の繊維状物質(天然繊維、半合成繊維または合成繊維のいずれでもよい。例えば、綿繊維、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等)の、単独または混紡等による織布や不織布等の布類;天然ゴム、ブチルゴム等からなるゴムシート類;発泡ポリウレタン、発泡ポリクロロプレンゴム等の発泡体からなる発泡体シート類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体;等を用いることができる。前記プラスチックフィルム類は、無延伸タイプであってもよく、延伸タイプ(一軸延伸タイプまたは二軸延伸タイプ)であってもよい。基材は、単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0080】
上記基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤など)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料など)等の各種添加剤が配合されていてもよい。基材の表面(特に、粘着剤層が設けられる側の表面)には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、例えば、粘着剤層の基材投錨性を高めるための処理であり得る。基材の厚さは目的に応じて適宜選択できるが、一般には凡そ10μm〜500μm(好ましくは凡そ10μm〜200μm)程度である。基材の厚さが小さすぎると、該基材または粘着シートの強度が弱くなり、製造時または使用時における取扱性(加工性)が低下しがちとなる場合がある。また、基材の厚さが大きすぎると、粘着シートの強度が高くなりすぎて、被着体の表面形状(段差等)への追従性が低下傾向となることがあり得る。
【0081】
粘着剤層を保護または支持する剥離ライナー(保護および支持の機能を兼ね備えるものであり得る。)としては、その材質や構成に特に制限はなく、公知の剥離ライナーから適当なものを選択して用いることができる。例えば、基材の少なくとも一方の表面に剥離処理が施された(典型的には、剥離処理剤による剥離処理層が設けられた)構成の剥離ライナーを好適に用いることができる。この種の剥離ライナーを構成する基材(剥離処理対象)としては、粘着シートを構成する基材として上述したものと同様の基材(各種プラスチックフィルム類、紙類、布類、ゴムシート類、発泡体シート類、金属箔、これらの複合体等)を適宜選択して用いることができる。上記剥離処理層を形成する剥離処理剤としては、公知または慣用の剥離処理剤(例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤)を用いることができる。また、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等)または低極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等)からなる低接着性の基材を、該基材の表面に剥離処理を施すことなく剥離ライナーとして用いてもよい。あるいは、かかる低接着性基材の表面に剥離処理を施したものを剥離ライナーとして用いてもよい。
【0082】
剥離ライナーを構成する基材や剥離処理層の厚みは特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。剥離ライナーの総厚み(基材表面に剥離処理層を有する構成の剥離ライナーでは、基材および剥離処理層を含む全体の厚さ)は、例えば凡そ15μm以上(典型的には凡そ15μm〜500μm)であることが好ましく、凡そ25μm〜500μmであることがより好ましい。
【0083】
また、粘着剤層を形成する際に架橋を行う場合、架橋剤の種類(例えば、加熱により架橋する熱架橋タイプの架橋剤、紫外線照射により架橋する光架橋タイプの架橋剤など)に応じて、所定の製造過程で、公知乃至慣用の架橋方法により架橋を行うことができる。例えば、用いられている架橋剤が熱架橋タイプの架橋剤である場合、粘着剤組成物を塗布した後、乾燥させる際に、この乾燥と並行して又は同時に、熱架橋反応を進行させて架橋を行うことができる。具体的には、熱架橋タイプの架橋剤の種類に応じて、架橋反応が進行する温度以上の温度に加熱することにより、乾燥とともに架橋を行うことができる。
【0084】
ここに開示される技術では、粘着剤層を構成する粘着剤の溶剤不溶分(アクリル系重合体の架橋体)の割合は特に制限されないが、通常は、例えば粘着剤層全体の凡そ15〜70質量%程度であることが望ましい。上記溶剤不溶分とは、架橋後の粘着剤を酢酸エチルで抽出して残った不溶分の質量割合を指す。また、この場合、上記粘着剤の溶剤可溶分(該粘着剤をテトラヒドロフランで抽出して得られたアクリル系重合体)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法におけるポリスチレン換算の値として、例えば凡そ10万〜200万(好ましくは凡そ20万〜160万)の範囲にあることが望ましい。この質量平均分子量は、一般的なGPC装置(例えば、TOSOH社製のGPC装置、型式「HLC−8120GPC」、使用カラム「TSKgel GMH−H(S)」)により測定することができる。なお、上記溶剤不溶分の割合や、溶剤可溶分の質量平均分子量は、例えば、モノマー成分全量に対する官能基含有モノマー成分の割合、連鎖移動剤の種類やその割合、架橋剤の種類やその割合などを適宜調整することにより、任意に設定することができる。
【0085】
ここに開示される粘着シートの構成材料およびその製造過程で使用される材料としては、防腐剤に限らず他の材料についても、金属を腐食させるような揮発性化合物(例えば、HS、SO等の硫黄含有ガス)の発生源となり得る材料の使用を避けるかその使用量を抑えることが望ましい。例えば、上述のような連鎖移動剤、アクリル系重合体の合成に用いられる連鎖移動剤以外の材料(乳化剤、重合開始剤等)、粘着付与樹脂、粘着付与樹脂エマルションに含有され得る乳化剤その他の各種添加剤、架橋剤、粘着剤組成物に配合し得る各種添加剤、粘着シートの基材およびその添加剤等について、金属腐食性ガスを発生し難いものを選定することが好ましい。
【0086】
ここに開示される粘着シートによると、金属の腐食およびそれに伴う不具合(接触不良、外観品質の低下等)を確実に防止または抑制することができる。そのため、上記粘着シートは、例えば、テレビ(液晶テレビ、プラズマテレビ、ブラウン管テレビ等)、コンピュータ(ディスプレイ、本体等)、音響機器、その他の各種家電製品、OA機器等の筐体内部において、部品の接合、表面保護、情報の表示、孔や隙間の封止(シーリング)または充填、振動や衝撃の緩衝、等の目的に好ましく使用することができる。特に、電子機器の使用により筐体内の温度が上がりやすく、このため防腐剤に由来する金属腐食性ガスの発生や金属の腐食が促進されやすい環境(液晶テレビの筐体内等)で使用される粘着シートとして好適である。ここに開示される粘着シートによると、かかる使用態様においても高い金属腐食防止性が発揮され得る。
【0087】
ここに開示される技術は、例えば、シート状基材(典型的には、不織布その他の多孔質基材)の両面に粘着剤層を備える両面粘着シートに好ましく適用され得る。かかる構成の粘着シートは、一般に、単位質量の粘着シートに含まれる粘着剤の量が多く、したがって防腐剤の量も多くなりがちである。ここに開示される技術によると、このように単位質量当たりに多くの防腐剤を含む粘着シートであっても、上述のように金属腐食性の低い防腐剤を使用することにより、金属の腐食を高度に抑制し得る粘着シートとなり得る。特に限定するものではないが、両面粘着シートを構成する粘着剤層の厚みは、片面当たり、例えば凡そ20μm〜150μm程度であり得る。
【0088】
本明細書によると、また、ここに開示されるいずれかの水性粘着剤組成物であって、容積50mLの容器に粘着剤1gと銀板とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させない粘着剤を与える(典型的には、乾燥または硬化により該粘着剤を形成する)粘着剤組成物が提供される。かかる粘着剤組成物は、例えば、ここに開示されるいずれかの粘着シートの製造に好適に利用され得る。また、上記粘着剤組成物は、上記のように金属腐食性の低い粘着剤を形成し得ることから、電子機器の筐体内部その他の箇所において、シーリング、充填、緩衝等の機能を果たす粘着剤(シート状に限定されず、塊状その他種々の形状であり得る。)を形成する用途に好適である。
【0089】
なお、水性粘着剤組成物に用いられる防腐剤は、耐性菌の発生等への対策または予防のために、その種類を変更することが望まれる場合があり得る。ここに開示される技術は、上記のように防腐剤の種類の変更につき検討する際に、金属を腐食させない防腐剤を選択し、あるいは金属を腐食させない粘着シートおよび該粘着シートの製造に適した粘着剤組成物を設計するために役立ち得る。
【0090】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」、「%」および「ppm」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0091】
<例1>
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、イオン交換水40部を入れ、窒素ガスを導入しながら60℃で1時間以上攪拌して窒素置換を行った。この反応容器に、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド(重合開始剤)0.2部を加えた。系を60℃に保ちつつ、ここにモノマーエマルションを3時間かけて徐々に滴下して乳化重合反応を進行させた。モノマーエマルションとしては、ブチルアクリレート60部、2−エチルヘキシルアクリレート40部、アクリル酸メチル2部、アクリル酸3部、およびポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)1.5部を、イオン交換水30部に加えて乳化したものを使用した。モノマーエマルションの滴下終了後、さらに3時間60℃に保持し、次いで過酸化水素水0.15部およびアスコルビン酸0.2部を添加した。系を室温まで冷却した後、10%アンモニア水を添加してpHを7に調整した。このようにして、アクリル系重合体の水分散液(水分散型アクリル系重合体)を得た。
【0092】
この水分散液に防腐剤を添加して、本例に係る水分散型粘着剤組成物を調製した。防腐剤としては、2,2−ジブロモ−2−シアノアセトアミド(東京化成工業株式会社製)を使用した。該防腐剤の使用量は、上記アクリル系重合体水分散液1部に対し、2.0×10−5部(すなわち20ppm)とした。
【0093】
上記粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤による剥離処理層を有する剥離ライナー(商品名「75EPS(M) クリーム(改)」、王子製紙株式会社製)に塗布し、100℃で2分乾燥して、厚み約60μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層付き剥離ライナーを2枚用意し、それらの粘着剤層を不織布基材(商品名「SP原紙−14」、大福製紙株式会社製、坪量14g/m)の両面にそれぞれ貼り合わせて両面粘着シートを作製した。この両面粘着シートの両粘着面は、該粘着シートの作製に使用した剥離ライナーによってそのまま保護されている。
【0094】
<例2>
本例では、防腐剤として、例1で用いた2,2−ジブロモ−2−シアノアセトアミドに代えて、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(9.5%水溶液、商品名:ProCline950、シグマアルドリッチ社製)を使用した。その使用量は、上記アクリル系重合体水分散液1部に対して2.1×10−4部(すなわち20ppm)とした。その他の点については例1と同様にして水分散型粘着剤組成物を得、この組成物を用いて例1と同様に両面粘着シートを作製した。
【0095】
<例3>
本例では、防腐剤として、例1で用いた2,2−ジブロモ−2−シアノアセトアミドに代えて、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとを3:1の質量比で含む混合物(1.5%水溶液、商品名「ProCline200」、シグマアルドリッチ社製)を使用した。その使用量は、上記アクリル系重合体水分散液1部に対して1.3×10−3部(すなわち20ppm)とした。その他の点については例1と同様にして水分散型粘着剤組成物を得、この組成物を用いて例1と同様に両面粘着シートを作製した。
【0096】
<例4>
本例では、防腐剤として、例1で用いた2,2−ジブロモ−2−シアノアセトアミドに代えて、メチレンジチオイソシアネート(東京化成工業株式会社製)を使用した。その使用量は、上記アクリル系重合体水分散液1部に対して2.0×10−5部(すなわち20ppm)とした。その他の点については例1と同様にして水分散型粘着剤組成物を得、この組成物を用いて例1と同様に両面粘着シートを作製した。
【0097】
<例5>
メチレンジチオイソシアネートを使用しない点を除いては例4と同様にして水分散型粘着剤組成物を得、この組成物を用いて例1と同様に両面粘着シートを作製した。
【0098】
上記の各例に係る粘着剤組成物または粘着シートについて、以下の測定または評価を行った。それらの結果を表1に示す。この表には、各例において使用した防腐剤の種類と含有量(濃度)を合わせて示している。
【0099】
<腐敗防止性試験>
容積50mLのスクリュー管瓶に、水分散型系粘着剤組成物20gを加え、蓋をして密閉した。この瓶を密閉して30℃に1週間加温した後、瓶の蓋を開けて、腐敗臭の有無を官能評価することにより腐敗防止性を評価した。その結果を、腐敗臭が感じられなかった場合には腐敗防止性「良」、腐敗臭が感じられた場合には腐食防止性「不良」として、表1に示した。
【0100】
<粘着力測定>
両面粘着シートの一方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットしたものを測定用サンプルとした。上記サンプルの他方の粘着面から剥離ライナーを剥がし、2kgのローラを1往復させてステンレス(SUS:BA304)板に圧着した。これを23℃に30分間保持した後、引張試験機を用い、JIS Z 0237に準拠して、温度23℃、RH50%の測定環境にて引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力を測定した。
【0101】
<金属腐食性試験>
両粘着面から剥離ライナーを剥がした各粘着シート(不織布基材およびその両面に設けられた粘着剤層からなる。)1.0gと、研磨した銀板(銀純度>99.95%、サイズ1mm×10mm×10mm)とを用意し、図7に示す金属腐食性試験器50を使用して粘着シートの金属腐食性を評価した。すなわち、容積50mLの透明ガラス製スクリュー管瓶52内に、上記粘着シート54と上記銀板56とを、直接接触しないように入れて密閉した。より具体的には、スクリュー管瓶52の底面上に銀板56を配置し、スクリュー管瓶蓋53の裏に粘着シート54を貼り付け、蓋53を閉めてスクリュー管瓶52を密閉した。これを85℃に1週間保持した。試験後(一週間経過後)の銀板を未使用(試験前)の銀板と比較して、腐食発生(金属光沢の消失、着色等の外観変化により判断した。)の有無を目視で確認することにより金属腐食性を評価した。その結果を、腐食が認められた場合には金属腐食性「有」、腐食が認められなかった場合には金属腐食性「無」として表1に示した。
【0102】
【表1】

【0103】
上記表に示されるように、チオシアネート骨格を有さず、且つチオアセタール骨格を有しない防腐剤AまたはBを含む粘着剤組成物を用いてなる例1〜3の粘着シートは、いずれも上記金属腐食性試験において金属を腐食させないことが確認された。また、これら例1〜3に係る粘着剤組成物は、いずれも実用上十分な腐敗防止性を示すものであった。
【0104】
これに対して、チオシアネート骨格を有する防腐剤Cを含む粘着剤組成物を用いてなる例4の粘着シートでは金属が腐食した。また、例4の処方から防腐剤を除いた例5では、金属の腐食は回避されたものの、粘着剤組成物の腐敗が発生した。なお、例1〜5に係る粘着シートは、防腐剤の種類および添加の有無によらず、いずれも良好な粘着力を示すものであった。
【0105】
なお、例1〜4の各例に係る粘着シート1gには、防腐剤約3.3×10−5gが含まれている。したがって、上記金属腐食性試験の結果は、容積50mLの容器に防腐剤3.3×10−5gと銀板とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持した結果と同視し得る。この結果から、防腐剤A,Bは、いずれも、容積50mLの容器に防腐剤1.7×10−5gと銀板とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させない防腐剤に該当することがわかる。
【0106】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0107】
1,2,3,4,5,6:粘着シート
10:基材
21,22:粘着剤層
31,32:剥離ライナー
50 金属腐食性試験器
52 スクリュー管瓶(容器)
53 蓋
54 粘着シート
56 銀板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性粘着剤組成物を用いてなる粘着剤層を備え、電子機器の内部において使用される粘着シートを製造する方法であって:
水性媒体中に粘着成分および防腐剤を含む水性粘着剤組成物を調製すること、ここで、前記防腐剤としては、容積50mLの容器に該防腐剤1.7×10−5gと銀板とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させない防腐剤を使用する;および、
前記粘着剤組成物を乾燥させて前記粘着剤層を形成すること;
を包含する、粘着シート製造方法。
【請求項2】
前記粘着剤組成物は、前記防腐剤を1ppm以上の濃度で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粘着剤組成物は、大気中において容積50mLの容器に該組成物20gを収容し、その容器を密閉して30℃に一週間保持する腐敗防止性試験において、腐敗が認められない組成物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記粘着剤組成物は、前記粘着成分におけるベースポリマーがアクリル系重合体であり、該アクリル系重合体が水に分散したエマルション型の組成物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記防腐剤は、チオシアネート骨格を有さず、且つチオアセタール骨格を有しない化合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
電子機器の内部において使用される粘着シートであって、
前記粘着シートは、水性媒体中に粘着成分および防腐剤を含む水性粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有し、
容積50mLの容器に該粘着シート1gと銀板とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験において、前記銀板を腐食させないことを特徴とする、粘着シート。
【請求項7】
基材の両面に前記粘着剤層を備える両面粘着シートとして構成された、請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
電子機器の内部における接合に使用される、請求項6または7に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記防腐剤は、チオシアネート骨格を有さず、且つチオアセタール骨格を有しない化合物である、請求項6から8のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法により製造された、電子機器の内部における接合に使用するための粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−241980(P2010−241980A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93110(P2009−93110)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】