説明

粘着テープ

【課題】耐熱性に優れる粘着テープ、すなわち、貼着後にテープ表面が熱融着し難い粘着テープを提供すること。
【解決手段】本発明の粘着テープは、耐熱層と基材層と粘着剤層とをこの順に備え、25℃における弾性率(ヤング率)が150MPa以下であり、該耐熱層がメタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を含み、該ポリプロピレン系樹脂の融点が110℃〜200℃であり、該ポリプロピレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が3以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウム、砒素などからなる半導体ウエハは、大径の状態で製造され、表面にパターンを形成した後、裏面を研削して、通常、ウエハの厚さを100〜600μm程度まで薄くし、さらに素子小片に切断分離(ダイシング)され、さらにマウント工程に移される。
【0003】
半導体ウエハの裏面を研削する工程(裏面研削工程)においては、半導体ウエハのパターン面を保護するために粘着テープが用いられている。当該粘着テープは、最終的に剥離される。このような目的で用いられる粘着テープは、裏面研削工程中に剥離しない程度の粘着力が必要である一方、裏面研削工程後に剥離する際には容易に剥離でき、半導体ウエハを破損しない程度の低い粘着力であることが要求される。
【0004】
また、近年、薄く研削された半導体ウエハのハンドリング性を向上させるために、裏面研削工程からダイシング工程完了までの工程をインラインで完了させる技術が用いられている。このような技術においては、通常、裏面研削工程後、上記粘着テープが貼着された半導体ウエハの裏面(粘着テープの貼着面とは反対側の面)に、ダイシングの際に半導体ウエハを固定する機能とダイシングされた素子小片を基板等に接着する機能とを併せもつダイシングダイアタッチフィルムが貼り付けられる。この貼り付けの際、粘着テープが貼着された半導体ウエハは、粘着テープ側を接触面として、加熱テーブル上に載せられ、100℃程度に加熱される。そのため、上記粘着テープは、耐熱性、具体的には加熱時に加熱テーブルに融着しないことが要求される。
【0005】
従来、粘着テープとして、基材上に粘着剤が塗布された粘着テープが用いられ、例えば、ポリエチレン系樹脂を含む基材上に、アクリル系粘着剤が塗布された粘着剤層を設けた粘着テープが提案されている(特許文献1)。しかし、このような粘着テープの製造においては、基材を成膜する工程や粘着剤溶液の塗工の工程など、多数の工程が必要とされ、製造コストが高い。また、多くのCOを排出するという問題がある。さらに、上記製造方法においては、粘着剤溶液を塗布した後に乾燥によって有機溶剤を除去する必要があるため、有機溶剤の揮散に起因する環境負荷の面で問題がある。
【0006】
このような問題を解決する方法として、基材形成材料と粘着剤形成材料とを共押し出しする方法が挙げられる。しかし、共押し出しに供し得る材料は熱可塑性樹脂であり、粘着剤形成材料として熱可塑性アクリル系樹脂、熱可塑性スチレン系樹脂等を用いた場合、粘着剤由来の不純物が半導体ウエハを汚染するという問題がある。特に、粘着剤を構成する樹脂を重合する際に生じるイオン(例えば、触媒由来のイオン)が粘着剤層に残存し、これがウエハ回路を汚染すると、回路の断線または短絡等の不具合発生原因となる。このような汚染性の問題を解決し、かつ、上記のような耐熱性を満足する粘着テープを製造することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2007/116856号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、耐熱性に優れる粘着テープ、すなわち、貼着後のテープ表面が溶融し難い粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粘着テープは、耐熱層と基材層と粘着剤層とをこの順に備え、25℃における弾性率(ヤング率)が150MPa以下であり、該耐熱層がメタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を含み、該ポリプロピレン系樹脂の融点が110℃〜200℃であり、該ポリプロピレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が3以下である。
好ましい実施形態においては、上記基材層と上記粘着剤層との間に、第2の耐熱層をさらに備える。
好ましい実施形態においては、上記耐熱層が、F、Cl、Br、NO、NO、SO2−、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、NHを実質的に含まない。
好ましい実施形態においては、上記粘着テープは、耐熱層形成材料と基材層形成材料と粘着剤形成材料とを共押し出し成形して得られる。
好ましい実施形態においては、上記粘着テープは、半導体ウエハ加工用である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定のポリプロピレン系樹脂を含む耐熱層を備えることにより、耐熱性に優れる粘着テープを提供することができる。このような粘着テープは、特に、加熱工程に供される半導体ウエハ加工用粘着テープとして好適である。また、本発明によれば、共押し出し成形により製造することにより、有機溶剤を使用することなく、少ない工程数で生産し得る粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好ましい実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
【図2】本発明の別の好ましい実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
【図3】本発明の粘着テープの段差追従性の指標となる「浮き幅」を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.粘着テープの全体構成
【0013】
図1は、本発明の好ましい実施形態による粘着テープの概略断面図である。粘着テープ100は、耐熱層10と基材層20と粘着剤層30とをこの順に備える。耐熱層10は、ポリプロピレン系オレフィン樹脂を含む。耐熱層10と基材層20と粘着剤層30とは、好ましくは、共押し出し成形により形成される。
【0014】
図2は、本発明の別の好ましい実施形態による粘着テープの概略断面図である。粘着テープ200は、基材層20と粘着剤層30との間に、第2の耐熱層40を備える。第2の耐熱層40を備えていれば、粘着テープの耐熱性をさらに高めることができる。また、第2の耐熱層40を備えることにより、粘着テープの弾性率を調整することができる。
【0015】
本発明の粘着テープの厚みは、好ましくは90μm〜285μmであり、さらに好ましくは105μm〜225μmであり、特に好ましくは130μm〜205μmである。
【0016】
本発明の粘着テープが第2の耐熱層を備えない場合、耐熱層の厚みは、好ましくは10μm〜60μmであり、さらに好ましくは15μm〜50μmであり、特に好ましくは15μm〜30μmである。本発明の粘着テープが第2の耐熱層を備える場合、耐熱層の厚みは、好ましくは10μm〜60μmであり、さらに好ましくは15μm〜50μmであり、特に好ましくは15μm〜30μmである。第2の耐熱層の厚みは、好ましくは10μm〜60μmであり、さらに好ましくは15μm〜50μmであり、特に好ましくは15μm〜30μmである。
【0017】
1つの実施形態においては、本発明の粘着テープが第2の耐熱層を備える場合、耐熱層と第2の耐熱層との合計厚みは、好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。耐熱層と第2の耐熱層との合計厚みがこのような範囲であれば、耐熱層および/または第2の耐熱層を形成する材料として、強度の強い樹脂を用いても、柔軟性に優れる粘着テープを得ることができる。
【0018】
上記基材層の厚みは、好ましくは30μm〜185μmであり、さらに好ましくは65μm〜175μmである。
【0019】
上記粘着剤層の厚みは、好ましくは20μm〜100μmであり、さらに好ましくは30μm〜65μmである。
【0020】
本発明の粘着テープが第2の耐熱層を備えない場合、基材層と耐熱層との厚み比(基材層/耐熱層)は、好ましくは0.5〜20であり、さらに好ましくは1〜15であり、特に好ましくは1.5〜10であり、特に好ましくは2〜10である。本発明の粘着テープが第2の耐熱層を備える場合、基材層と耐熱層との厚み比(基材層/耐熱層)は、好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜10であり、特に好ましくは2〜10である。また、本発明の粘着テープが、第2の耐熱層を備える場合、基材層の厚みの、耐熱層と第2の耐熱層との合計厚みに対する比(基材層/(耐熱層+第2の耐熱層))は、好ましくは0.5〜15であり、さらに好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜5である。このような範囲であれば、優れた柔軟性と優れた耐熱性を両立でき、かつ、加工性に優れ外観不良の発生しにくい粘着テープが得られる。このような粘着テープを、例えば、半導体ウエハ加工用粘着テープとして用いた場合、ウエハの裏面研削工程において、当該粘着テープの接触を起因とするウエハの損傷(ウエハエッジ割れ)を防ぐことができる。
【0021】
本発明の粘着テープが、第2の耐熱層を備える場合、耐熱層と第2の耐熱層との厚み比(耐熱層/第2の耐熱層)は、好ましくは0.3〜3であり、さらに好ましくは0.8〜1.5であり、特に好ましくは0.9〜1.1である。このような範囲であれば、柔軟性に優れる粘着テープが得られる。このような粘着テープを、例えば、半導体ウエハ加工用粘着テープとして用いた場合、ウエハの裏面研削工程において、当該粘着テープの接触を起因とするウエハの損傷(ウエハエッジ割れ)を防ぐことができる。
【0022】
本発明の粘着テープの25℃における弾性率(ヤング率)は150MPa以下であり、好ましくは50MPa〜120MPaであり、さらに好ましくは60MPa〜100MPaである。このような範囲であれば、柔軟性に優れる粘着テープが得られる。このような粘着テープを、半導体ウエハ加工用粘着テープとして用いた場合、ウエハの裏面研削工程において、当該粘着テープの接触を起因とするウエハの損傷を防ぐことができる。このように、本発明によれば、耐熱層を形成して耐熱性を付与し、かつ、柔軟性に優れた粘着テープが得られる。なお、本明細書において、弾性率(ヤング率)とは、幅10mmの短冊状の粘着シートを23℃においてチャック間50mm、速度300mm/minで引張り、得られる応力−ひずみ(S−S)曲線において最大接線の傾きより算出される値をいう。
【0023】
本発明の粘着テープは、半導体ミラーウエハ試験板(シリコン製)として、JIS Z 0237(2000)に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定した粘着力が、好ましくは0.3N/20mm〜3.0N/20mmであり、さらに好ましくは0.4N/20mm〜2.5N/20mmであり、特に好ましくは0.4N/20mm〜2.0N/20mmである。このような範囲であれば、粘着力と剥離性が両立でき、例えば、半導体ウエハの裏面研削工程における研削加工中には剥離せず、研削加工後の工程においては容易に剥離することができる粘着テープを得ることができる。このような粘着力の粘着テープは、例えば、粘着剤層に主成分として非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含有させて粘着力を発現させ、さらに結晶性ポリプロピレン系樹脂を添加することにより粘着力を調整することができる。粘着剤層の構成成分の詳細は後述する。
【0024】
本発明の粘着テープを4インチ半導体ウエハのミラー面に貼着し、23℃、相対湿度50%の環境下で1時間経過後に剥離した際の、当該ミラー面上の粒径0.28μm以上のパーティクル数は、好ましくは1個/cm〜500個/cmであり、さらに好ましくは1個/cm〜100個/cmであり、特に好ましくは1個/cm〜50個/cmであり、最も好ましくは0個/cm〜20個/cmである。パーティクル数の測定はパーティクルカウンターを用いて測定することができる。
【0025】
本発明書において、粘着テープの段差追従性の指標として、「浮き幅」を用いる。「浮き幅」とは、図3に示すように、段差xを有する被着体300に粘着テープ100を貼着した際に、当該粘着テープが浮いて被着体300と接さない部分の幅aを意味する。貼着直後における、本発明の粘着テープの段差3.5μmの被着体に対する浮き幅は、好ましくは10μm〜200μmであり、さらに好ましくは20μm〜180μmであり、特に好ましくは30μm〜150μmである。このような範囲の浮き幅を示す粘着テープであれば、凹凸を有する被着体(例えば、半導体ウエハパターンの凹凸)に対して追従性がよく、粘着力に優れる。また、本発明の粘着テープが半導体ウエハ加工用に用いられる場合、裏面研削工程時に半導体ウエハと粘着テープとの界面へ研削水が浸入することを防止することができる。
【0026】
本発明の粘着テープを半導体ミラーウエハ(シリコン製)に貼着した際の段差30μmに対する浮き幅の貼着直後から24時間経過後における増加量は、好ましくは40%以内であり、さらに好ましくは20%以内であり、特に好ましくは10%以内である。このような浮き幅の増加量を示す粘着テープ、すなわち粘着力の経時変化の少ない粘着テープであれば、半導体ウエハ製造中における仕掛品の経時でのテープ浮きが発生しにくいなど保存安定性、製造時の加工安定性に優れる。
【0027】
本発明の粘着テープは、セパレータにより保護されて提供され得る。本発明の粘着テープは、セパレータにより保護された状態で、ロール状に巻き取ることができる。セパレータは、実用に供するまで粘着テープを保護する保護材としての機能を有する。セパレータとしては、例えば、シリコン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン)フィルム、紙または不織布などが挙げられる。
【0028】
本発明の粘着テープは、例えば、セパレータにより保護されていない場合、粘着剤層とは反対側の最外層に、背面処理を行っていても良い。背面処理は、例えば、シリコン系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤を用いて行うことができる。本発明の粘着テープは、背面処理を行うことにより、ロール状に巻き取ることができる。
【0029】
B.耐熱層および第2の耐熱層
上記耐熱層および第2の耐熱層は、ポリプロピレン系樹脂を含む。
【0030】
上記ポリプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒を用いた重合により得られる。より詳細には、ポリプロピレン系樹脂は、例えば、メタロセン触媒を用いてプロピレンを含むモノマー組成物を重合させる重合工程を行い、当該重合工程の後、触媒残さ除去工程、異物除去工程等の後処理工程を行うことにより、得ることができる。ポリプロピレン系樹脂は、このような工程を経て、例えば、パウダー状、ペレット状等の形状で得られる。メタロセン触媒としては、例えば、メタロセン化合物とアルミノキサンとを含むメタロセン均一混合触媒、微粒子状の担体上にメタロセン化合物が担持されたメタロセン担持型触媒等が挙げられる。
【0031】
上記のようにメタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂は、狭い分子量分布を示す。具体的には、上記ポリプロピレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は3以下であり、好ましくは1.1〜3であり、さらに好ましくは1.2〜2.9である。分子量分布が狭いポリプロピレン系樹脂は低分子量成分が少ないので、このようなポリプロピレン系樹脂を用いれば、低分子量成分のブリードを防止して、クリーン性に優れる粘着テープを得ることができる。このような粘着テープは、例えば、半導体ウエハ加工用として好適に用いられる。
【0032】
上記ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は50,000以上であり、好ましくは50,000〜500,000であり、さらに好ましくは50,000〜400,000である。ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)がこのような範囲であれば、低分子量成分のブリードを防止して、クリーン性に優れる粘着テープを得ることができる。このような粘着テープは、例えば、半導体ウエハ加工用粘着テープとして好適に用いられる。
【0033】
上記ポリプロピレン系樹脂の融点は110℃〜200℃であり、さらに好ましくは120℃〜170℃であり、特に好ましくは125℃〜160℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる粘着テープを得ることができる。本発明の粘着テープは、このような範囲の融点を有するポリプロピレン系樹脂を含む耐熱層を備えることにより、耐熱性、具体的には貼着後に加熱されても粘着テープ表面が溶融し難い。このような粘着テープは、接触加熱される場合に特に有用である。例えば、粘着テープが、半導体ウエハ加工用粘着テープとして用いられる場合、粘着テープ表面が半導体製造装置の加熱ステージに融着し難く、加工不良を防ぐことができる。また、本発明の粘着テープは、耐熱性に優れることに加えて、上記のように柔軟性にも優れる。このように耐熱性と柔軟性とのバランスに優れる粘着テープは、例えば、半導体ウエハ加工用粘着テープとして有用である。より具体的には、裏面研削工程からダイシング工程完了までの工程をインラインで行う製造方式(いわゆる、2in1製造方式)に用いられる半導体ウエハ加工用粘着テープとして有用である。このような製造方式においては、粘着テープが連続して裏面研削工程およびダイシング工程に供せられる。本発明の粘着テープを2in1製造方式における半導体ウエハ加工用粘着テープとして用いれば、粘着テープ付き半導体ウエハの裏面にダイシングフィルム(またはダイシングダイアタッチフィルム)を貼り付ける際、粘着テープが加熱テーブル(例えば、100℃)と接触しても、粘着テープ表面が加熱テーブルに融着することを防ぐことができ、かつ、当該粘着テープの接触を起因とする半導体ウエハの損傷を防ぐことができる。
【0034】
上記ポリプロピレン系樹脂の軟化点は、好ましくは100℃〜170℃であり、さらに好ましくは110℃〜160℃であり、さらに好ましくは120℃〜150℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる粘着テープを得ることができる。なお、本明細書において、軟化点とは、環球法(JIS K6863)によって測定される値をいう。
【0035】
上記ポリプロピレン系樹脂の230℃、2.16kgfにおけるメルトフローレートは、好ましくは3g/10min〜30g/10minであり、さらに好ましくは5g/10min〜15g/10minであり、特に好ましくは5g/10min〜10g/10minである。ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートがこのような範囲であれば、共押し出し成形により、加工不良なく厚みの均一な耐熱層を形成することができる。メルトフローレートは、JISK7210に準じた方法により測定することができる。
【0036】
上記ポリプロピレン系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他のモノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、エチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンが挙げられる。その他のモノマー由来の構成単位を含む場合、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0037】
上記ポリプロピレン系樹脂は市販品を用いてもよい。市販品のポリプロピレン系樹脂の具体例としては、日本ポリプロ(株)製の商品名「WINTEC(ウィンテック)」、「WELNEX(ウェルネックス)」シリーズ等が挙げられる。
【0038】
好ましくは、上記耐熱層および第2の耐熱層は、F、Cl、Br、NO、NO、SO2−、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、NHを実質的に含まない。このようなイオンを実質的に含まない耐熱層を備える粘着テープはクリーン性に優れ、例えば、半導体ウエハ加工用に用いられる場合、回路の断線または短絡等を防ぐことができる。なお、本明細書において、「F、Cl、Br、NO、NO、SO2−、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、NHを実質的に含まない」とは、標準的なイオンクロマトグラフ分析(例えば、ダイオネクス社製、商品名「DX−320」、「DX−500」を用いたイオンクロマトグラフ分析)において検出限界未満であることをいう。具体的には、粘着剤層1gに対して、F、Cl、Br、NO、NO、SO2−およびKがそれぞれ0.49μg以下、LiおよびNaがそれぞれ0.20μg以下、Mg2+およびCa2+がそれぞれ0.97μg以下、NHが0.5μg以下である場合をいう。
【0039】
上記耐熱層および第2の耐熱層の弾性率(ヤング率)は、所望とする粘着テープの弾性率(ヤング率)、粘着剤層および基材層の特性(厚さ、弾性率(ヤング率))に応じて、任意の適切な値に設定され得る。上記耐熱層および第2の耐熱層の25℃における弾性率(ヤング率)は、代表的には800MPa以下であり、さらに好ましくは50MPa〜500MPaであり、特に好ましくは50MPa〜250MPaである。このような範囲であれば、半導体ウエハ加工用粘着テープとして本発明の粘着テープを用いた場合、ウエハの裏面研削工程において、研削精度に優れ、かつ、ウエハのエッジ損傷(ウエハエッジ割れ)を防ぐことができる。
【0040】
上記耐熱層および第2の耐熱層は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤等が挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて適切に選択され得る。
【0041】
C.粘着剤層
上記粘着剤層に用いられる粘着剤としては、任意の適切な材料を採用し得る。好ましくは、共押し出し成形が可能な熱可塑性樹脂であり、例えば、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体が挙げられる。本明細書において、「非晶質」とは、結晶質のように明確な融点を有さない性質をいう。
【0042】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、好ましくは、メタロセン触媒を用いて、プロピレンと1−ブテンとを重合することにより得ることができる。メタロセン触媒を用いて重合された非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は狭い分子量分布(例えば、2以下)を示すので、このような非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を用いれば、低分子量成分のブリードによる被着体の汚染を防止し得る粘着テープを得ることができる。このような粘着テープは、例えば、半導体ウエハ加工用として好適に用いられる。
【0043】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体における、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは80モル%〜99モル%、さらに好ましくは85モル%〜99モル%であり、特に好ましくは90モル%〜99モル%である。
【0044】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体における、1−ブテン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは1モル%〜15モル%、さらに好ましくは1モル%〜10モル%である。このような範囲であれば、靭性と柔軟性とのバランスに優れ、上記浮き幅の小さい粘着テープを得ることができる。
【0045】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0046】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200,000以上であり、さらに好ましくは200,000〜500,000であり、特に好ましくは200,000〜300,000である。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の重量平均分子量(Mw)がこのような範囲であれば、共押し出し成形の際、加工不良なく粘着剤層を形成することができ、かつ、適切な粘着力を得ることができる。
【0047】
上記粘着剤層が、上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含む場合、粘着剤層の粘着力(結果として、上記粘着テープの粘着力)を調整するために、結晶性ポリプロピレン系樹脂を含んでいてもよい。結晶性ポリプロピレン系樹脂を含有することにより、上記粘着力を低下させ、後述の貯蔵弾性率を増加させることができる。結晶性ポリプロピレン系樹脂の含有割合は、所望とする粘着力および貯蔵弾性率に応じて任意の適切な割合に設定され得る。結晶性ポリプロピレン系樹脂の含有割合は、好ましくは、上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体と当該結晶性ポリプロピレン系樹脂との合計重量に対して、好ましくは0重量%〜50重量%であり、さらに好ましくは0重量%〜40重量%であり、特に好ましくは0重量%〜30重量%である。
【0048】
上記粘着剤層に用いられる粘着剤の230℃、2.16kgfにおけるメルトフローレートは、好ましくは1g/10min〜50g/10minであり、さらに好ましくは5g/10min〜30g/10minであり、特に好ましくは5g/10min〜20g/10minである。このような範囲であれば、共押し出し成形により、加工不良なく厚みの均一な粘着剤層を形成することができる。
【0049】
好ましくは、上記粘着剤層は、F、Cl、Br、NO、NO、SO2−、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、NHを実質的に含まない。被着体を当該イオンで汚染することを防止することができるからである。このような粘着剤層を備える粘着テープは、例えば、半導体ウエハ加工用に用いられる場合、回路の断線または短絡等を生じさせることがない。上記イオンを含まない粘着剤層は、例えば、当該粘着剤層に含まれる非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を上記のようにメタロセン触媒を用いて溶液重合することにより得ることができる。当該メタロセン触媒を用いた溶液重合においては、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、重合溶媒とは異なる貧溶媒を用いて析出単離(再沈殿法)を繰り返して、精製することができるので、上記イオンを含まない粘着剤層を得ることができる。
【0050】
上記粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)は、好ましくは0.5×10Pa〜1.0×10Paであり、さらに好ましくは0.8×10Pa〜3.0×10Paである。上記粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)がこのような範囲であれば、表面に凹凸を有する被着体に対する十分な粘着力と適度な剥離性とを両立し得る粘着テープを得ることができる。また、このような貯蔵弾性率(G’)の上記粘着剤層を備える粘着テープは、半導体ウエハ加工用に用いられる場合、ウエハの裏面研削における優れた研削精度の達成に寄与し得る。粘着剤層の貯蔵弾性率は、例えば、上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体と上記結晶性ポリプロピレン系樹脂との含有割合を調整して制御することができる。なお、本発明における貯蔵弾性率(G’)とは、動的粘弾性スペクトル測定により、測定することができる。
【0051】
上記粘着剤層の25℃における弾性率(ヤング率)は、好ましくは5MPa〜300MPaであり、さらに好ましくは10MPa〜200MPaであり、特に好ましくは20MPa〜100MPaである。このような範囲であれば、半導体ウエハ加工用粘着テープとして本発明の粘着テープを用いた場合、ウエハの裏面研削工程において、研削精度に優れ、かつ、ウエハのエッジ損傷(ウエハエッジ割れ)を防ぐことができる。
【0052】
上記粘着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、例えば、上記B項で説明した耐熱層に含まれ得るその他の成分と同様の成分が用いられ得る。
【0053】
D.基材層
上記基材層は、任意の適切な樹脂により形成される。好ましくは、共押し出し成形が可能な熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリエチレン系樹脂が挙げられる。ポリエチレン系樹脂の具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0054】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000〜200,000であり、さらに好ましくは30,000〜190,000である。エチレン−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)がこのような範囲であれば、共押し出し成形の際、加工不良なく基材層を形成することができる。
【0055】
上記基材層を形成する樹脂の190℃、2.16kgfにおけるメルトフローレートは、好ましくは2g/10min〜20g/10minであり、さらに好ましくは5g/10min〜15g/10minであり、特に好ましくは7g/10min〜12g/10minである。エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートがこのような範囲であれば、共押し出し成形により、加工不良なく基材層を形成することができる。
【0056】
上記基材層の25℃における弾性率(ヤング率)は、好ましくは30MPa〜300MPaであり、さらに好ましくは40MPa〜200MPaであり、特に好ましくは50MPa〜100MPaである。このような範囲であれば、半導体ウエハ加工用粘着テープとして本発明の粘着テープを用いた場合、ウエハの裏面研削工程において、研削精度に優れ、かつ、ウエハのエッジ損傷(ウエハエッジ割れ)を防ぐことができる。
【0057】
上記基材層は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、例えば、上記B項で説明した耐熱層に含まれ得るその他の成分と同様の成分が用いられ得る。
【0058】
E.粘着テープの製造方法
本発明の粘着テープは、好ましくは、上記耐熱層、上記基材層および上記粘着剤層の形成材料が共押し出し成形されて製造される。共押し出し成形により、層間の接着性が良好な粘着テープを、少ない工程数で、かつ、有機溶剤を使用することなく製造することができる。
【0059】
上記共押し出し成形において、上記耐熱層、上記基材層および上記粘着剤層の形成材料は、上記の各層の成分を任意の適切な方法で混合した材料が用いられ得る。
【0060】
上記共押し出し成形の具体的方法としては、例えば、ダイスに連結した3台の押出し機のうち、1台に耐熱層形成材料を、別の1台に基材層形成材料を、さらに別の1台に粘着剤層形成材料を、それぞれ供給し、溶融後、押出し、タッチロール成形法により引き取り、積層体を成形する方法が挙げられる。なお、本発明の粘着テープが、第2の耐熱層をさらに備える場合は、3台の押出し機の内、耐熱層樹脂を押出される樹脂の流路を2つに分断し、分断された間に基材層用樹脂を合流させる手法3種4層成形や、4台の押し出し機を用い4種4層成形が用いられ得る。押し出しの際、各形成材料が合流する部分は、ダイス出口(ダイスリップ)に近いほど好ましい。ダイス内で各形成材料の合流不良が生じ難いからである。したがって、上記ダイスとしては、マルチマニホールド形式のダイスが好ましく用いられる。なお、合流不良が生じた場合、合流ムラ等の外観不良、具体的には押し出された粘着剤層と基材層との間で波状の外観ムラが発生して好ましくない。また、合流不良は、例えば、異種形成材料のダイス内における流動性(溶融粘度)の差が大きいこと、および各層の形成材料のせん断速度の差が大きいことを原因として生じるので、マルチマニホールド形式のダイスを用いれば、流動性の差がある異種形成材料について、他の形式(例えば、フィードブロック形式)よりも、材料選択の範囲が拡がる。各形成材料の溶融に用いる押出し機のスクリュータイプは単軸または2軸であってもよい。
【0061】
上記共押し出し成形における成形温度は、好ましくは160℃〜220℃であり、さらに好ましくは170℃〜200℃である。このような範囲であれば、成形安定性に優れる。
【0062】
上記耐熱層形成材料または第2の耐熱層形成材料と、上記基材層形成材料との温度180℃、せん断速度100sec−1におけるせん断粘度の差(耐熱層または第2の耐熱層形成材料−基材層形成材料)は、好ましくは−150Pa・s〜600Pa・sであり、さらに好ましくは−100Pa・s〜550Pa・sであり、特に好ましくは−50Pa・s〜500Pa・sである。上記粘着剤層形成材料と上記基材層形成材料との、温度180℃、せん断速度100sec−1におけるせん断粘度の差(粘着剤形成材料−基材層形成材料)は、好ましくは−150Pa・s〜600Pa・sであり、さらに好ましくは−100Pa・s〜550Pa・sであり、特に好ましくは−50Pa・s〜500Pa・sである。このような範囲であれば、上記粘着剤形成材料および基材層形成材料のダイス内での流動性が近く、合流不良の発生を防止することができる。なお、せん断粘度は、ツインキャピラリー型の伸長粘度計により測定することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、部は重量部を意味する。
【0064】
[実施例1]
耐熱層形成材料および第2耐熱層形成材料として、メタロセン触媒により重合したポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「WELNEX:RFGV4A」;融点130℃、軟化点120℃、Mw/Mn=2.9)を用いた。
基材層形成材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポン社製、商品名「P−1007」;融点94℃、軟化点71℃)100部を用いた。
粘着剤層形成材料として、メタロセン触媒により重合した非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体(住友化学社製、商品名「タフセレンH5002」:プロピレン由来の構成単位90モル%/1−ブテン由来の構成単位10モル%、Mw=230,000、Mw/Mn=1.8)を用いた。
上記耐熱層形成材料100部、基材層形成材料100部、第2耐熱層形成材料100部および上記粘着剤形成材料100部をそれぞれの押し出し機に投入し、Tダイ溶融共押し出し(押出温度180℃)により成形して、耐熱層(厚み15μm)/基材層(厚み70μm)/第2の耐熱層(厚み15μm)/粘着剤層(厚み30μm)の4種4層構成の粘着テープを得た。なお、各層の厚みは、Tダイ出口の形状により制御した。
【0065】
[実施例2]
基材層の厚みを145μmとした以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0066】
[実施例3]
耐熱層の厚みを22.5μm、基材層の厚みを55μm、第2耐熱層の厚みを22.5μm、とした以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0067】
[実施例4]
耐熱層の厚みを22.5μm、基材層の厚みを130μm、第2耐熱層の厚みを22.5μmとした以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0068】
[実施例5]
耐熱層の厚みを30μm、基材層の厚みを40μm、第2耐熱層厚みを30μmとした以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0069】
[実施例6]
耐熱層の厚みを30μm、基材層の厚みを115μm、第2耐熱層の厚みを30μmとした以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0070】
[実施例7]
耐熱層形成材料として、メタロセン触媒により重合したポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「WINTEC:WFX4」;融点125℃、軟化点115℃、Mw/Mn=2.8)を用いた。
基材層形成材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポン社製、商品名「P−1007」;融点94℃、軟化点71℃)を用いた。
粘着剤層形成材料として、メタロセン触媒により重合した非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体(住友化学社製、商品名「タフセレンH5002」:プロピレン由来の構成単位90モル%/1−ブテン由来の構成単位10モル%、Mw=230,000、Mw/Mn=1.8)を用いた。
上記耐熱層形成材料100部、基材層形成材料100部および上記粘着剤形成材料100部をそれぞれの押し出し機に投入し、Tダイ溶融共押し出し(押出温度180℃)により成形して、耐熱層(厚み10μm)/基材層(厚み90μm)/粘着剤層(厚み30μm)の3種3層構成の粘着テープを得た。
【0071】
[実施例8]
基材層の厚みを165μmとした以外は実施例7と同様にして粘着テープを得た。
【0072】
[実施例9]
耐熱層の厚みを15μm、基材層の厚みを85μmとした以外は実施例7と同様にして粘着テープを得た。
【0073】
[実施例10]
耐熱層の厚みを15μm、基材層の厚みを160μmとした以外は実施例7と同様にして粘着テープを得た。
【0074】
[実施例11]
耐熱層の厚みを30μm、基材層の厚みを145μmとした以外は実施例7と同様にして粘着テープを得た。
【0075】
[実施例12]
耐熱層形成材料として、メタロセン触媒により重合したポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「WELNEX:RFGV4A」;融点130℃、軟化点120℃、Mw/Mn=2.9)を用いた。
基材層形成材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポン社製、商品名「P−1007」;融点94℃、軟化点71℃)を用いた。
粘着剤層形成材料として、メタロセン触媒により重合した非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体(住友化学社製、商品名「タフセレンH5002」:プロピレン由来の構成単位90モル%/1−ブテン由来の構成単位10モル%、Mw=230,000、Mw/Mn=1.8)を用いた。
上記耐熱層形成材料100部、基材層形成材料100部および上記粘着剤形成材料100部をそれぞれの押し出し機に投入し、Tダイ溶融共押し出し(押出温度180℃)により成形して、耐熱層(厚み10μm)/基材層(厚み90μm)/粘着剤層(厚み30μm)の3種3層構成の粘着テープを得た。
【0076】
[実施例13]
基材層の厚みを165μmとした以外は実施例12と同様にして粘着テープを得た。
【0077】
[実施例14]
耐熱層の厚みを15μm、基材層の厚みを85μmとした以外は実施例12と同様にして粘着テープを得た。
【0078】
[実施例15]
耐熱層の厚みを15μm、基材層の厚みを160μmとした以外は実施例12と同様にして粘着テープを得た。
【0079】
[実施例16]
耐熱層の厚みを30μm、基材層の厚みを70μmとした以外は実施例12と同様にして粘着テープを得た。
【0080】
[実施例17]
耐熱層の厚みを30μm、基材層の厚みを145μmとした以外は実施例12と同様にして粘着テープを得た。
【0081】
[実施例18]
耐熱層の厚みを45μm、基材層の厚みを55μmとした以外は実施例12と同様にして粘着テープを得た。
【0082】
[実施例19]
耐熱層の厚みを45μm、基材層の厚みを130μmとした以外は実施例12と同様にして粘着テープを得た。
【0083】
[実施例20]
耐熱層の厚みを60μm、基材層の厚み40μmとした以外は実施例12と同様にして粘着テープを得た。
【0084】
[実施例21]
耐熱層の厚みを60μm、基材層の厚みを115μmとした以外は実施例12と同様にして粘着テープを得た。
【0085】
[比較例1]
耐熱層を形成させず、基材層の厚みを100μmとした以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0086】
[比較例2]
耐熱層を形成せず、基材層形成材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポン製、商品名「P−1007」;融点94℃、軟化点71℃)に代えて、メタロセン触媒により重合したポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「WINTEC WFX4」:融点125℃、軟化点115℃)を用い、基材層の厚みを100μmとした以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0087】
[評価]
実施例および比較例で得られた粘着テープを以下の評価に供した。結果を表1に示す。
(1)耐熱性
実施例および比較例で得られた粘着テープを半導体ウエハ(8インチミラーウエハ、厚み700μm品)に貼着した後、100℃に加熱したホットプレート(SUS304)上に粘着テープ側を置き、3分間加熱した。このとき、粘着テープの粘着剤層とは反対側の最外層が加熱面に接するようにした。加熱終了後、粘着テープの状態を目視で確認し、以下の基準で耐熱性を評価した。
○・・・粘着テープ最外層に変化なく、耐熱性良好。
△・・・粘着テープ最外層が一部溶融し、耐熱性が悪い。
×・・・粘着テープがホットプレートに融着し、耐熱性が非常に悪い。
(2)弾性率
引張り試験機として3連式引張試験機AG−IS(島津製作所製)を用い、実施例および比較例で得られた粘着テープを幅10mmの短冊状にし、23℃においてチャック間50mm、速度300mm/minで引張り、得られる応力−ひずみ(S−S)曲線において最大接線の傾きより算出した。
(3)半導体ウエハの損傷
高さ10μm段差(10mm×10mm角)をランダムに設けた8インチ半導体ウエハ(厚さ700μm〜750μm)上に実施例および比較例で得られた粘着テープを貼着し、半導体ウエハ側(粘着テープ貼着面とは反対側の面)を研削した。研削はDisco社製バックグラインダーDFG−8560にて8インチSiミラーウエハの厚みが50μmとなるまで研削した。その後、半導体ウエハの外周部における、ヒビ、割れ、目視で確認できる欠けなどの損傷を目視で確認した。10枚の半導体ウエハについて、このように損傷を確認し、以下の基準で評価した。
○・・・ウエハ10枚中損傷が認められた枚数が0枚である。
△・・・ウエハ10枚中損傷が認められた枚数が1枚以上、3枚以下である。
×・・・ウエハ10枚中損傷が認められた枚数が4枚以上である。
(4)汚染性
粘着テープを4インチ半導体ウエハのミラー面に貼着し、23℃、相対湿度50%環境下で1時間経過後に剥離した際の、当該ミラー面上の粒径0.28μm以上のパーティクル数を測定した。パーティクル数の測定は、パーティクルカウンター(テンコール社製、商品名「SURFSCAN6200」)を用いて測定した。
(5)含有イオン量
、Cl、Br、NO、NO、SO2−、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、NHを分析対象として、実施例および比較例で得られた粘着テープ中のこれらのイオン量をイオンクロマトグラフにより、測定した。
具体的には、ポリメチルンペンテン(PMP)製容器に入れた試料片(粘着テープ1g)を秤量し、次に純水50mlを加え、蓋をして乾燥機に120℃にて1時間の加温抽出を行い、その抽出液を試料前処理カートリッジ(DIONEX社製、商品名「OnGuardIIRP」)でろ過し、そのろ液についてイオンクロマトグラフ(アニオン)(DIONEX社製、商品名「DX−320」)、およびイオンクロマトグラフ (カチオン)(DIONEX社製、商品名「DX−500」)を用いて測定した。当該測定方法の検出限界は、粘着テープ1gに対して、F、Cl、Br、NO、NO、SO2−およびKにおいては、0.49μg以下、LiおよびNaにおいては0.20μg以下、Mg2+およびCa2+においては0.97μg以下、NHにおいては0.50μg以下であった。
【0088】
(6)分子量測定
実施例および比較例で用いたメタロセン触媒により重合した非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体(住友化学社製、商品名「タフセレンH5002」)の分子量は、以下のようにして測定した。すなわち、試料を1.0g/lのTHF溶液に調整して一晩静置した後、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、得られたろ液をTOSOH社製のHLC−8120GPCにて、以下の条件で測定し、ポリスチレン換算により算出した。
カラム:TSKgel SuperHZM−H/HZ4000/HZ3000/HZ2000
カラムサイズ:6.0mmI.D.×150mm
カラム温度:40℃
溶離液:THF
流量:0.6ml/min
注入量:20μl
検出器:RI (示差屈折率検出器)

また、実施例7〜11および比較例2で用いたメタロセン触媒により重合した結晶性ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロピレン社製、商品名「WINTEC WFX4」)の分子量は、以下のようにして測定した。すなわち、試料を0.10%(w/w)o−ジクロロベンゼン溶液を調整して、140℃で溶解した後、その溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルターでろ過し、得られたろ液をWaters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC 2000型にて、以下の条件で測定し、ポリスチレン換算により算出した。
カラム:TSKgel GMH−HT,TSKgel GMH−HTL
カラムサイズ:7.5mmI.D.×300mmそれぞれ2本
カラム温度:140℃
溶離液:o−ジクロロベンゼン
流量:1.0ml/min
注入量:0.4ml
検出器:RI (示差屈折率検出器)

【0089】
【表1】

【0090】
実施例と比較例1を比較すれば明らかなように、本願発明によれば、特定のポリプロピレン系樹脂を含む耐熱層を備えることにより、耐熱性に優れる粘着テープを提供することができる。また、実施例と比較例2を比較すれば明らかなように、本発明の粘着テープは、耐熱層と基材層と粘着剤層との3層構造、あるいはさらに第2の耐熱層を有する4層構造であることにより、各層の厚みを調整して、弾性率が制御され得る。その結果、本発明の粘着テープは、優れた柔軟性を示し、半導体ウエハ加工用粘着テープとして用いた場合にウエハの損傷を防ぎ得る。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の粘着テープは、例えば、半導体装置製造の際のワーク(半導体ウエハ等)の保護に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0092】
10 耐熱層
20 基材層
30 粘着剤層
40 第2の耐熱層
100、200 粘着テープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱層と基材層と粘着剤層とをこの順に備え、25℃における弾性率(ヤング率)が150MPa以下であり、
該耐熱層がメタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を含み、該ポリプロピレン系樹脂の融点が110℃〜200℃であり、該ポリプロピレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が3以下である、
粘着テープ。
【請求項2】
前記基材層と前記粘着剤層との間に、第2の耐熱層をさらに備える、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記耐熱層が、F、Cl、Br、NO、NO、SO2−、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、NHを実質的に含まない、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
耐熱層形成材料と基材層形成材料と粘着剤層形成材料とを共押し出し成形して得られる、請求項1から3のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項5】
半導体ウエハ加工用である、請求項1から4のいずれかに記載の粘着テープ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−62405(P2012−62405A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207826(P2010−207826)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】