説明

粘着剤付き樹脂フィルム及びそれを用いた光学積層体

【課題】帯電防止性が付与されるとともに、ガラスに貼合したときに車載用途などを想定した過酷な環境下での試験においても剥れを生じず、耐久性に優れる粘着剤層を樹脂フィルムの表面に設けた粘着剤付き樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】光学フィルムや表面保護フィルム等の樹脂フィルムに粘着剤層を形成して、粘着剤付き樹脂フィルムとする。その粘着剤層は、下式(I)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とするアクリル樹脂(A)100重量部、下式(II)のピリジニウム塩(B)0.2〜8重量部及び架橋剤(C)0.1〜5重量部を含有する粘着剤組成物から形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層が形成された樹脂フィルムに関するものである。本発明で対象とする樹脂フィルムとして、例えば、偏光フィルム及び/又は位相差フィルムを含む光学フィルムや、当該光学フィルムの粘着剤層とは反対側の面に貼合され、使用時までその表面を保護する表面保護フィルムを挙げることができる。本発明はまた、この粘着剤層が形成された樹脂フィルムを用いた液晶表示用の光学積層体にも関係している。
【背景技術】
【0002】
偏光フィルムは、液晶表示装置に装着され、広く使用されており、偏光子の両面に透明保護フィルムが積層され、少なくとも一方の保護フィルムの表面に粘着剤層が形成され、その粘着剤層の上に剥離フィルムが貼着された状態で流通している。また、偏光子の両面に保護フィルムが貼合された状態の偏光フィルムに位相差フィルムを積層して楕円偏光フィルムとし、その位相差フィルム側に粘着剤層/剥離フィルムがこの順で貼着されることや、偏光子の片面に保護フィルムを貼合し、もう一方の面には直接位相差フィルムを貼合して楕円偏光フィルムとし、その位相差フィルム側に粘着剤層/剥離フィルムがこの順で貼着されることもある。さらに、位相差フィルムの表面に粘着剤層/剥離フィルムがこの順で貼着されることもある。液晶セルへの貼合前に、これらの偏光フィルム、楕円偏光フィルム、位相差フィルムなどから剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を介して液晶セルに貼合することになる。このような偏光フィルム、楕円偏光フィルム又は位相差フィルムは、剥離フィルムを剥離して液晶セルに貼合する際、静電気が発生するため、その防止対策の開発が切望されている。
【0003】
その対策の一つとして、特許第 3012860号公報(特許文献1)には、偏光子フィルムの表面に保護フィルムが積層され、保護フィルムの表面に粘着剤層が設けられた偏光フィルムにおいて、粘着剤として、電解質塩とオルガノポリシロキサンからなるイオン導電性組成物及びアクリル系共重合体を含む組成物を用いることが提案されている。このようなイオン導電性組成物が配合された粘着剤を用いることにより、帯電防止性が発現されるものの、その性能は必ずしも十分とはいえず、また粘着耐久性においても十分な性能とはいえなかった。
【0004】
そこで、特表 2004-536940号公報(特許文献2)には、感圧接着剤(粘着剤)に有機塩系の帯電防止剤を配合して、その粘着剤に帯電防止性を付与することが開示されている。また、特開 2004-114665号公報(特許文献3)には、総炭素数が4〜20の4級アンモニウムカチオンとフッ素原子含有アニオンとからなる塩を接着剤等に含有させ、制電性を付与することが記載されている。特開 2006-307238号公報(特許文献4)には、室温(25℃)において液体になるイオン性液体を粘着剤に含有させ、帯電防止を図ることが記載されている。さらに、特開 2009-79205 号公報(特許文献5)には、室温(25℃)において固体になる特定のイオン性化合物を粘着剤に含有させることで、粘着剤を塗工した偏光フィルムを長時間放置しても、経時変化を起こさず、帯電防止性と耐久性に優れた粘着剤付き樹脂フィルムが得られることが記載されている。
【0005】
一方で、上記したような粘着剤付き光学フィルムは、その粘着剤層側で液晶セルに貼合して液晶表示装置とされるが、この状態で高温又は高温高湿条件に置かれたり、加熱と冷却が繰り返されたりした場合、光学フィルムの寸法変化に伴って、粘着剤層に発泡を生じたり、光学フィルムと粘着剤層の間、又は粘着剤層と液晶セルガラスの間に浮きや剥れなどを生じたりすることがあるため、このような不具合を生じず、耐久性に優れることも求められる。
【0006】
液晶表示装置がさらされる高温条件は、その液晶表示装置の用途に応じて異なる。上記したようなイオン性化合物を帯電防止剤として含有する粘着剤付き光学フィルムは、テレビやモニターなどを想定した一般的な温度範囲での試験においては十分な耐久性を示すものであっても、車載用途などを想定したより過酷な環境下での試験においては、粘着剤層と液晶セルガラスの間に浮きや剥れが発生することがままあった。特に、粘着剤層が貼合される樹脂フィルムの透湿度が低い場合、この傾向が顕著であった。
【0007】
他にも、高温にさらされた場合に、光学フィルムに作用する残留応力の分布が不均一となり、光学フィルムの外周部に応力集中が起こる結果、黒表示時に外周部が白っぽくなる白ヌケと呼ばれる現象を生じたり、色ムラを生じたりすることがあるため、このような白ヌケや色ムラの抑制も求められる。さらにまた、粘着剤付き光学フィルムを液晶セルに貼合する際、不具合があった場合には、その光学フィルムを一旦剥がしてから、再度新しいフィルムを貼り直すことになるが、その剥離のときに粘着剤層が光学フィルムに伴って引き剥がされ、セルガラス上に粘着剤が残らず、曇り等も生じないような、いわゆるリワーク性も求められる。
【0008】
一方、表面保護フィルムは、一般にその片面に形成された粘着剤を介して被保護体である光学フィルムなどに貼り合わされ、被保護体の加工や搬送時に生じる傷や汚れなどを防止するために用いられる。例えば、液晶表示装置に適用するための偏光フィルムや位相差フィルムなどの光学フィルムは、傷や汚れなどを防止する目的で、上記した液晶セルへの貼合用の粘着剤層とは反対側の面に、かかる表面保護フィルムが貼り合わされた状態で流通している。この表面保護フィルムは、光学フィルムが液晶セルに貼り合わされた後、剥離除去されるが、その剥離の際、静電気を発生し、その静電気が残った状態で液晶セルに電圧を印加すると、液晶分子の配向が損なわれたり、パネルの欠損が生じたりする問題があることから、表面保護フィルムには、各種の帯電防止処理が施されている。
【0009】
【特許文献1】特許第3012860号公報(=特開平6−313807号公報)
【特許文献2】特表2004−536940号公報(=WO 2003/011958)
【特許文献3】特開2004−114665号公報
【特許文献4】特開2006−307238号公報
【特許文献5】特開2009−79205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、帯電防止性が付与されるとともに、ガラスに貼合したときに車載用途などを想定した過酷な環境下での試験においても剥れが発生しない、耐久性に優れる粘着剤層を樹脂フィルムの表面に設けた粘着剤付き樹脂フィルムを提供することにある。本発明者らは、かかる課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、アクリル樹脂を主要な成分とする粘着剤に対して、アルキルピリジニウム骨格を有するイオン性化合物、中でもそのアルキル基の炭素原子数が一定の範囲内にあるピリジニウム塩を配合し、この組成物を樹脂フィルムの表面に粘着剤層として設けることにより、帯電防止性を有しながら、より過酷な条件での耐久性に優れた粘着剤付き樹脂フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明によれば、樹脂フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなり、その粘着剤層は、次の成分(A)、(B)及び(C)を含有する粘着剤組成物から形成されている粘着剤付き樹脂フィルムが提供される。
【0012】
(A)下式(I)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は、それぞれ炭素数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基又はアラルキル基を表す)
で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とするアクリル樹脂100重量部、
(B)下式(II)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R3は炭素数12〜16の直鎖状アルキル基を表し、R4は水素原子又はメチル基を表し、X-はフッ素原子を有するイオンを表す)
で示されるピリジニウム塩0.2〜8重量部、及び
(C)架橋剤0.1〜5重量部。
【0017】
このように本発明では、アクリル樹脂(A)と架橋剤(C)とを含有する組成物から形成される粘着剤層に帯電防止性を付与するとともに、その粘着剤層が設けられた樹脂フィルムをガラス等の他の部材に貼合し、車載用途などを想定した過酷な環境下での試験を行った場合でも耐久性に優れる帯電防止剤として、イオン性であって、特定のアルキル鎖を有するピリジニウム塩(B)が特に有効であることが見出された。
【0018】
上記の粘着剤付き樹脂フィルムにおいて、アクリル樹脂(A)は、上記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位に加え、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する不飽和単量体に由来する構造単位をさらに有することができる。
【0019】
上記の如き粘着剤層が付与される樹脂フィルムは、偏光フィルム及び/又は位相差フィルムを含む光学フィルムであることができる。特に、樹脂フィルムが位相差フィルムを含み、その位相差フィルムは、40℃の温度及び90%の相対湿度における透湿度が300g/(m2・24hr)以下である場合、例えば、その位相差フィルムがシクロオレフィン系樹脂で構成される場合に、有利である。
【0020】
また、上記の粘着剤層が付与される樹脂フィルムは、光学フィルムの粘着剤層と反対側の面に貼合され、使用時までその表面を保護する表面保護フィルムであることもできる。
【0021】
樹脂フィルムが光学フィルムである場合、その粘着剤層側でガラス基板に積層し、液晶表示用の光学積層体とすることができる。そこで本発明によれば、光学フィルムに上記の粘着剤層が形成された粘着剤付き光学フィルムが、その粘着剤層側でガラス基板に積層されてなる光学積層体も提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、その粘着剤層を介してガラスに貼合された場合、車載用途などを想定した過酷な環境下での耐久性に優れる。この粘着剤付き樹脂フィルムは、表面保護フィルムとして用いる場合であっても、光学フィルムとして用いる場合であっても、光学部材の帯電を有効に抑制することができる。
【0023】
この粘着剤付き樹脂フィルムは、例えば、樹脂フィルムを光学フィルムで構成し、液晶セルのガラス基板に積層することで、液晶表示用の光学積層体を与える。この光学積層体は、湿熱条件下、光学フィルム及びガラス基板の寸法変化に起因する応力を粘着剤層が吸収・緩和するため、局部的な応力集中が軽減され、ガラス基板に対する粘着剤層の浮きや剥れなどが抑制される。また、不均一な応力分布に起因する光学的欠陥が防止されることから、白ヌケが抑制される。さらに、粘着剤付き樹脂フィルムを一度ガラス基板に積層した後、なんらかの不具合があった場合に、その樹脂フィルムを粘着剤とともにガラス基板から剥離しても、剥離後のガラス基板の表面に糊残りや曇りが発生することが少なく、再び、ガラス基板として用いることができ、リワーク性に優れるものとなる。
【0024】
また、この粘着剤付き樹脂フィルムは、光学フィルムの表面に貼合し、使用時までその表面を保護する表面保護フィルムとすることもできる。この場合も、優れた帯電防止効果を与え、例えば、光学フィルムを表面保護フィルムとは反対側の粘着剤層を介して液晶セルに貼合した後、その表面保護フィルムを剥がしたときに、発生する静電気を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されたものであり、その粘着剤層は、
(A)前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とするアクリル樹脂、
(B)アルキルピリジニウム骨格を有し、前記式(II)で示されるピリジニウム塩、及び
(C)架橋剤
を含有する粘着剤組成物から形成される。まず、粘着剤組成物を構成する各成分について説明する。
【0026】
[アクリル樹脂(A)]
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムにおいて、粘着剤層を形成する粘着剤組成物に用いられるアクリル樹脂(A)は、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とする重合体であるが、一般にはさらに他の構造単位、特に極性官能基を有する単量体、好ましくは極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を含む共重合体で構成される。極性官能基としては、遊離カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ環をはじめとする複素環基などを挙げることができる。さらには、極性官能基を有しない式(I)以外の単量体を共重合させることもできる。好適に用いられうる共重合成分として、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する単量体、好ましくは芳香環を有する(メタ)アクリル酸系化合物を挙げることができる。なお本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれでもよいことを意味し、他に、(メタ)アクリレートなどというときの「(メタ)」も同様の趣旨である。
【0027】
アクリル樹脂(A)の主要な構造単位となる前記式(I)において、R1 は水素原子又はメチル基であり、R2 は炭素数1〜14のアルキル基又はアラルキル基、好ましくはアルキル基である。R2 で表されるアルキル基又はアラルキル基は、それぞれの基中の水素原子が炭素数1〜10のアルコキシ基によって置換されていてもよい。
【0028】
式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ラウリルの如き、直鎖状のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチルの如き、分枝状のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ラウリルの如き、直鎖状のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチルの如き、分枝状のメタクリル酸アルキルエステルなどが例示される。
【0029】
2 がアルコキシ基で置換されたアルキル基である場合、すなわち、R2 がアルコキシアルキル基である場合の、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチルなどが例示される。R2 がアラルキル基である場合の式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸ベンジルやメタクリル酸ベンジルなどが例示される。
【0030】
これらの(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いることができるほか、異なる複数のものを用いてもよい。中でも、アクリル酸n−ブチルが好ましく用いられ、具体的には、アクリル樹脂(A)を構成する全単量体のうち、アクリル酸n−ブチルが50重量%以上となるようにするのが好ましい。もちろん、アクリル酸n−ブチルに加えて、それ以外の式(I)に相当する(メタ)アクリル酸エステルを併用することもできる。
【0031】
前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに加えて、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する式(I)以外の単量体、例えば、芳香環を有する(メタ)アクリル酸系化合物を共重合させる場合、かかる芳香環を有する(メタ)アクリル酸系化合物の好適な例を挙げると、下式(III) で示されるフェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルがある。
【0032】
【化3】

【0033】
式中、R5は水素原子又はメチル基を表し、nは1〜8の整数を表し、R6は水素原子、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。R6 がアルキル基である場合、その炭素数は1〜9程度であることができ、同じくアラルキル基である場合、その炭素数は7〜11程度、またアリール基である場合、その炭素数は6〜10程度であることができる。
【0034】
式(III)中のR6を構成する炭素数1〜9のアルキル基としては、メチル、ブチル、ノニルなどが、炭素数7〜11のアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチルなどが、そして炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル、トリル、ナフチルなどが、それぞれ挙げられる。
【0035】
式(III) で示されるフェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルの具体例を挙げると、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−フェノキシエトキシ)エチル、エチレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2−(o−フェニルフェノキシ)エチルなどがある。これらのフェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数のものを組み合せて用いてもよい。
【0036】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(o−フェニルフェノキシ)エチル又は(メタ)アクリル酸2−(2−フェノキシエトキシ)エチルを、アクリル樹脂(A)を構成する芳香環含有単量体の一つとして用いるのが好ましい。これらの単量体は併用するのも有効である。
【0037】
極性官能基を有する単量体の例を挙げると、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレートの如き、遊離カルボキシル基を有する単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートの如き、水酸基を有する単量体;アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,5−ジヒドロフランの如き、複素環基を有する単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き、複素環とは異なるアミノ基を有する単量体などがある。これらの極性官能基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数のものを用いてもよい。
【0038】
これらの中でも、水酸基を有する単量体を、アクリル樹脂(A)を構成する極性官能基含有単量体の一つとして用いるのが好ましい。また、水酸基を有する単量体に加えて、他の極性官能基を有する単量体、例えば、遊離カルボキシル基を有する単量体を併用するのも有効である。
【0039】
粘着剤組成物に用いられるアクリル樹脂(A)は、その固形分全体の量を基準にして、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を、通常60〜99.9重量%、好ましくは80〜99.6重量%の割合で含有しており、芳香環を有する式(I)以外の単量体に由来する構造単位を、通常0〜40重量%、好ましくは6〜12重量%の割合で含有しており、また極性官能基を有する単量体に由来する構造単位を、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.4〜10重量%の割合で含有している。
【0040】
本発明に使用されるアクリル樹脂(A)は、上で説明した式(I)の(メタ)アクリル酸エステル、芳香環を有する式(I)以外の単量体及び極性官能基を有する単量体のほかに、それら以外の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。これらの例としては、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、スチレン系単量体に由来する構造単位、ビニル系単量体に由来する構造単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構造単位、(メタ)アクリルアミド誘導体などを挙げることができる。
【0041】
脂環式構造とは、炭素数が、通常5以上、好ましくは5〜7程度のシクロパラフィン構造である。脂環式構造を有するアクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロドデシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、α−エトキシアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルフェニルなどが挙げられ、脂環式構造を有するメタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸シクロドデシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルフェニルなどが挙げられる。
【0042】
スチレン系単量体としては、スチレンのほか、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレンの如きアルキルスチレン;フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレンの如きハロゲン化スチレン;さらに、ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
【0043】
ビニル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニルの如き脂肪酸ビニルエステル;塩化ビニルや臭化ビニルの如きハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンの如きハロゲン化ビニリデン;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾールの如き含窒素芳香族ビニル;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンの如き共役ジエン単量体;さらには、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0044】
分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、 テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートの如き、分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの如き、分子内に3個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体などを挙げることができる。
【0045】
(メタ)アクリルアミド誘導体としては、 N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリルアミド、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N, N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N, N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3オキソブチル)(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチル〕(メタ)アクリルアミド、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−1−プロパンスルホン酸などを挙げることができる。
【0046】
式(I)の(メタ)アクリル酸エステル、芳香環を有する式(I)以外の単量体及び極性官能基を有する単量体以外の単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。粘着剤に使用されるアクリル樹脂(A)において、式(I)の(メタ)アクリル酸エステル、芳香環を有する式(I)以外の単量体及び極性官能基を有する単量体以外の単量体に由来する構造単位は、その樹脂の固形分全体の量を基準に、通常0〜20重量部、好ましくは0〜10重量部の割合で含有される。
【0047】
粘着剤組成物の樹脂成分は、以上のような、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、極性官能基を有する単量体に由来する構造単位を含み、任意にさらに芳香環を有する式(I)以外の単量体に由来する構造単位を含むアクリル樹脂を2種類以上含むものであってもよい。さらに、前記アクリル樹脂に、それとは異なるアクリル樹脂、具体的には例えば、式(I)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有し、極性官能基を有しないアクリル樹脂などを混合したものであってもよい。式(I)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、極性官能基を有する単量体に由来する構造単位を含むアクリル樹脂は、アクリル樹脂全体のうち、60重量%以上、さらには80重量%以上とするのが好ましい。
【0048】
式(I)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、極性官能基を有する単量体に由来する構造単位を含むアクリル樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw )が100万〜200万の範囲にあることが好ましい。その標準ポリスチレン換算重量平均分子量が100万以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。また、この重量平均分子量が200万以下であると、その粘着剤層を光学フィルムに貼合した場合に、光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。重量平均分子量(Mw )と数平均分子量(Mn )の比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、通常2〜10程度の範囲にある。
【0049】
このアクリル樹脂は、上記のような比較的高分子量のものだけで構成することもできるし、かかるアクリル樹脂に加えて、それとは異なるアクリル樹脂との混合物で構成することもできる。混合して用いうるアクリル樹脂としては、例えば、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、重量平均分子量が5万〜30万の範囲にあるものを挙げることができる。
【0050】
アクリル樹脂(2種類以上を組み合わせる場合はそれらの混合物)は、それを酢酸エチルに溶かして固形分濃度20重量%に調整した溶液が、25℃において20Pa・s 以下、さらには0.1〜7Pa・sの粘度を示すことが好ましい。このときの粘度が20Pa・s 以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。粘度は、ブルックフィールド粘度計によって測定することができる。
【0051】
粘着剤組成物を構成するアクリル樹脂は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法など、公知の各種方法によって製造することができる。このアクリル樹脂の製造においては、通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、アクリル樹脂の製造に用いられる全ての単量体の合計100重量部に対して、 0.001〜5重量部程度使用される。
【0052】
重合開始剤としては、熱重合開始剤や光重合開始剤などが用いられる。光重合開始剤として、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンなどを挙げることができる。熱重合開始剤として、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)の如きアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドの如き有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素の如き無機過酸化物などを挙げることができる。また、過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤なども、重合開始剤として使用しうる。
【0053】
アクリル樹脂の製造方法としては、上に示した方法の中でも、溶液重合法が好ましい。溶液重合法の具体例を挙げて説明すると、所望の単量体及び有機溶媒を混合し、窒素雰囲気下にて、熱重合開始剤を添加して、40〜90℃程度、好ましくは60〜80℃程度にて3〜10時間程度攪拌する方法などを挙げることができる。また、反応を制御するために、単量体や熱重合開始剤を重合中に連続的又は間歇的に添加したり、有機溶媒に溶解した状態で添加したりしてもよい。ここで、有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンの如き芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルの如きエステル類;プロピルアルコール、イソプロピルアルコールの如き脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの如きケトン類などを用いることができる。
【0054】
[ピリジニウム塩(B)]
本発明では、以上のようなアクリル樹脂(A)に加え、帯電防止剤として、アルキルピリジニウム骨格を有する前記式(II)で示されるピリジニウム塩(B)を用いる。
【0055】
式(II)のピリジニウム塩(B)を構成するカチオン成分は、N−アルキルピリジニウムカチオンであり、粘着剤層を介してガラスに貼合された場合の耐久性から、式(II)中のR3 で表される直鎖状アルキル基の炭素数が12〜16であるものを用いる。このカチオン成分は、具体的には以下に掲げるもののいずれかである。
【0056】
N−ドデシルピリジニウムイオン、
N−トリデシルピリジニウムイオン、
N−テトラデシルピリジニウムイオン、
N−ペンタデシルピリジニウムイオン、
N−ヘキサデシルピリジニウムイオン、
N−ドデシル−4−メチルピリジニウムイオン、
N−トリデシル−4−メチルピリジニウムイオン、
N−テトラデシル−4−メチルピリジニウムイオン、
N−ペンタデシル−4−メチルピリジニウムイオン、
N−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムイオン。
【0057】
一方、式(II)のピリジニウム塩(B)を構成するアニオン成分X- は、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから、フッ素原子を有するイオンとする。このアニオン成分は、具体的には例えば、次のようなものであることができる。
【0058】
フッ素イオン〔F-〕、
テトラフルオロボレートイオン〔BF4-〕、
ヘキサフルオロホスフェートイオン〔PF6-〕、
トリフルオロアセテートイオン〔CF3COO-〕、
トリフルオロメタンスルホネートイオン〔CF3SO3-〕、
ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン〔(FSO22-〕、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン〔(CF3SO22-〕、
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドイオン〔(CF3SO23-〕、
ヘキサフルオロアーセネートイオン〔AsF6-〕、
ヘキサフルオロアンチモネートイオン〔SbF6-〕、
ヘキサフルオロニオベートイオン〔NbF6-〕、
ヘキサフルオロタンタレートイオン〔TaF6-〕、
(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドイオン〔F(HF)n-〕(nは1〜3程度)、
パーフルオロブタンスルホネートイオン〔C49SO3-〕、
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン〔(C25SO22-〕、
パーフルオロブタノエートイオン〔C37COO-〕、
(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドイオン
〔(CF3SO2)(CF3CO)N-〕など。
【0059】
本発明に用いられるピリジニウム塩(B)の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分の組合せから適宜選択することができる。具体的なカチオン成分とアニオン成分の組合せである化合物として、次のようなものが挙げられる。
【0060】
N−ドデシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−テトラデシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ヘキサデシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ドデシル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−テトラデシル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ドデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−テトラデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ヘキサデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ドデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−テトラデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ドデシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−テトラデシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−ヘキサデシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−ドデシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−テトラデシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなど。
【0061】
式(II)のピリジニウム塩は、R3 で表されるアルキル基が長鎖である点に特徴を有するが、その製造自体は一般のピリジニウム塩に準じて行うことができる。例えば、下式:
【0062】
【化4】

【0063】
(式中、R3及びR4は先に式(II)で定義したとおりである)に相当するアルキルピリジニウムブロマイドと、式:LiX-(式中、X-は先に式(II)で定義したとおりである)に相当するリチウム塩とをイオン交換反応させ、次に水で洗って、生成した臭化リチウムを水相に移し、有機相を回収する方法によって、式(II)のピリジニウム塩を製造することができる。これらのピリジニウム塩(B)は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。ピリジニウム塩(B)の例は、もちろん上に列挙した化合物に限られるものではない。
【0064】
式(II)のピリジニウム塩(B)は、前記したアクリル樹脂(A)の固形分100重量部(2種類以上用いる場合はそれらの合計)に対して、 0.2〜8重量部の割合で含有させる。アクリル樹脂(A)の固形分100重量部に対し、ピリジニウム塩(B)を 0.2重量部以上含有させると、帯電防止性能が向上することから好ましく、またその量が8重量部以下であると、耐久性を保つのが容易であることから好ましい。アクリル樹脂(A)の固形分100重量部に対するピリジニウム塩(B)の量は、 0.2〜6重量部の範囲とすることもでき、好ましくは 0.5重量部以上、また3重量部以下である。
【0065】
[架橋剤(C)]
以上のようなアクリル樹脂(A)及びピリジニウム塩(B)に、架橋剤(C)を配合して、粘着剤組成物とする。架橋剤(C)は、アクリル樹脂(A)中の特に極性官能基含有単量体に由来する構造単位と反応し、アクリル樹脂を架橋させる化合物である。具体的には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物などが例示される。これらのうち、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物及びアジリジン系化合物は、アクリル樹脂(A)中の極性官能基と反応しうる官能基を分子内に少なくとも2個有する。
【0066】
イソシアネート系化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(−NCO)を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのイソシアネート化合物に、グリセロールやトリメチロールプロパンなどのポリオールを反応せしめたアダクト体や、イソシアネート化合物を二量体、三量体等にしたものも、粘着剤に用いられる架橋剤となりうる。2種以上のイソシアネート系化合物を混合して用いることもできる。
【0067】
エポキシ系化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N′−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。2種以上のエポキシ系化合物を混合して用いることもできる。
【0068】
アジリジン系化合物は、エチレンイミンとも呼ばれる1個の窒素原子と2個の炭素原子からなる3員環の骨格を分子内に少なくとも2個有する化合物であり、例えば、ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、イソフタロイルビス−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートなどが挙げられる。
【0069】
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム及びジルコニウムなどの多価金属に、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルが配位した化合物などが挙げられる。
【0070】
これらの架橋剤の中でも、イソシアネート系化合物、とりわけ、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート若しくはヘキサメチレンジイソシアネート、又はこれらのイソシアネート化合物を、グリセロールやトリメチロールプロパンなどのポリオールに反応せしめたアダクト体や、イソシアネート化合物を二量体、三量体等にしたものの混合物、これらのイソシアネート系化合物を混合したものなどが、好ましく用いられる。好適なイソシアネート系化合物として、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、トリレンジイソシアネートの二量体、及びトリレンジイソシアネートの三量体、また、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートの二量体、及びヘキサメチレンジイソシアネートの三量体が挙げられる。
【0071】
架橋剤(C)は、アクリル樹脂(A)100重量部(2種類以上用いる場合はそれらの合計)に対し、 0.1〜5重量部の割合で配合される。アクリル樹脂(A)100重量部に対する架橋剤(C)の量が 0.1重量部以上であると、粘着剤層の耐久性が向上する傾向にあることから好ましく、また5重量部以下であると、粘着剤付き光学フィルムを液晶表示装置に適用したときの白ヌケが目立たなくなることから好ましい。
【0072】
[シラン系化合物(D)]
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムが、その粘着剤層側でガラス基板に貼り合わされる場合、その粘着剤層を形成するための粘着剤には、粘着剤層とガラス基板との密着性を向上させるために、シラン系化合物(D)を含有させることが好ましく、とりわけ、架橋剤を配合する前のアクリル樹脂にシラン系化合物を含有させておくことが好ましい。
【0073】
シラン系化合物(D)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランなどが挙げられる。2種以上のシラン系化合物を使用してもよい。
【0074】
シラン系化合物は、シリコーンオリゴマータイプのものであってもよい。シリコーンオリゴマーを(単量体)オリゴマーの形式で示すと、例えば、次のようなものを挙げることができる。
【0075】
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、メルカプトプロピル基含有のコポリマー;
【0076】
メルカプトメチルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
メルカプトメチルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
メルカプトメチルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
メルカプトメチルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、メルカプトメチル基含有のコポリマー;
【0077】
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロキシイルオプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、メタクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
【0078】
3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、アクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
【0079】
ビニルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
ビニルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、ビニル基含有のコポリマー;
【0080】
3−アミノプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、アミノ基含有のコポリマーなど。
【0081】
これらのシラン系化合物は、多くの場合、液体である。粘着剤におけるシラン系化合物の配合量は、アクリル樹脂(A)の固形分100重量部(2種類以上用いる場合はそれらの合計)に対して、通常0.01〜10重量部程度であり、好ましくは0.05〜5重量部の割合で使用される。アクリル樹脂の固形分100重量部に対するシラン系化合物の量が0.01重量部以上であると、 粘着剤層とガラス基板との密着性が向上することから好ましい。また、その量が10重量部以下であると、粘着剤層からシラン系化合物がブリードアウトすることが抑制される傾向にあることから好ましい。
【0082】
[粘着剤組成物を構成するその他の成分]
以上説明した粘着剤組成物にはさらに、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、アクリル樹脂(A)以外の樹脂などを配合してもよい。また、粘着剤組成物に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層形成後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とするのも有用である。中でも、粘着剤組成物に架橋剤とともに架橋触媒を配合すれば、粘着剤層を短時間の熟成で調製することができ、得られる粘着剤付き樹脂フィルムにおいて、樹脂フィルムと粘着剤層との間に浮きや剥れが発生したり粘着剤層内で発泡が起こったりすることを抑制でき、またリワーク性も一層良好になることがある。架橋触媒としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、トリメチレンジアミン、ポリアミノ樹脂、メラミン樹脂の如きアミン系化合物などを挙げることができる。粘着剤組成物に架橋触媒としてアミン系化合物を配合する場合、架橋剤としてはイソシアネート系化合物が好適である。
【0083】
粘着剤を構成するこれらの各成分は、溶剤に溶かした状態で粘着剤組成物とされ、適当な基材上に塗布し、乾燥させて、粘着剤層とされる。
【0084】
[粘着剤付き樹脂フィルム]
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、以上のような粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設けたものである。ここで用いる樹脂フィルムは、偏光フィルムや位相差フィルムを包含する光学フィルムや、被保護体である光学フィルムなどに貼り合わされ、その表面を傷や汚れなどから保護する目的で用いられる表面保護フィルムなどが挙げられる。
【0085】
偏光フィルムとは、自然光などの入射光に対して、偏光を出射する機能を持つ光学フィルムである。偏光フィルムには、フィルム面に入射するある方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それと直交する振動面を有する直線偏光を透過する性質を有する直線偏光フィルム、フィルム面に入射するある方向の振動面を有する直線偏光を反射し、それと直交する振動面を有する直線偏光を透過する性質を有する偏光分離フィルム、偏光フィルムと後述する位相差フィルムを積層した楕円偏光フィルムなどがある。偏光フィルム、特に直線偏光フィルム(偏光子とか、偏光子フィルムとか呼ばれることもある)の好適な具体例として、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料などの二色性色素が吸着配向されているものが挙げられる。
【0086】
位相差フィルムとは、光学異方性を示す光学フィルムであって、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリビニリデンフルオライド/ポリメチルメタクリレート、液晶ポリエステル、アセチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニルなどからなる高分子フィルムを 1.01〜6倍程度に延伸することにより得られる延伸フィルムなどが挙げられる。中でも、ポリカーボネートフィルムやシクロオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸又は二軸延伸した高分子フィルムが好ましい。一軸性位相差フィルム、広視野角位相差フィルム、低光弾性率位相差フィルムなどと称されるものがあるが、いずれに対しても適用可能である。
【0087】
シクロオレフィン系樹脂は、例えば、ノルボルネンやテトラシクロドデセン(別名ジメタノオクタヒドロナフタレン)又はそれらの誘導体を代表例とするシクロオレフィンの単量体単位を有する熱可塑性の樹脂であり、上記シクロオレフィンの開環重合体や2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であることができるほか、シクロオレフィンと鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との付加共重合体であってもよい。また、極性基が導入されていてもよい。
【0088】
市販の熱可塑性シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、ドイツの TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH にて生産され、日本ではポリプラスチックス(株)から販売されている
“TOPAS”、JSR(株)から販売されている“アートン”(ARTON)、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオネックス”(ZEONEX)及び“ゼオノア”(ZEONOR)、三井化学(株)から販売されている“アペル”など(いずれも商品名)がある。
【0089】
このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとするにあたり、製膜には、溶剤キャスト法や溶融押出法など、公知の製膜手法が適宜用いられる。製膜されたシクロオレフィン系樹脂フィルムや、さらに延伸して位相差が付与されたシクロオレフィン系樹脂フィルムも市販されている。例えば、JSR(株)から販売されている“アートンフィルム”、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノアフィルム”、積水化学工業(株)から販売されている“エスシーナ”及び“SCA40” など(いずれも商品名)があり、これらを好適に用いることができる。
【0090】
位相差フィルムを含む光学フィルムに粘着剤層を形成し、その粘着剤層を介してガラスに貼合する場合、その位相差フィルムの透湿度が小さいと、粘着剤層から水分が抜けにくく、特に高温条件下での耐久性において不利になることが多かった。これに対し、本発明に係る粘着剤付き樹脂フィルムにおいて、樹脂フィルムとして位相差フィルムを含む光学フィルムを用いる場合、その位相差フィルムが、 JIS Z 0208 に規定されるカップ法により、40℃の温度及び90%の相対湿度で測定される透湿度が300g/(m2・24hr)以下と小さい場合であっても、優れた耐久性を示す。
【0091】
透湿度の低い位相差のフィルムの例としては、上に掲げたようなシクロオレフィン系樹脂からなるフィルムが挙げられる。これらのシクロオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムは、40℃の温度及び90%の相対湿度において概ね300g/(m2・24hr)以下の透湿度を有する。
【0092】
また、液晶性化合物の塗布・配向によって光学異方性を発現させたフィルムや、無機層状化合物の塗布によって光学異方性を発現させたフィルムも、位相差フィルムとして用いることができる。このような位相差フィルムには、温度補償型位相差フィルムと称されるもの、また、新日本石油(株)から“LCフィルム”の商品名で販売されている、棒状液晶がねじれ配向したフィルム、同じく新日本石油(株)から“NHフィルム”の商品名で販売されている棒状液晶が傾斜配向したフィルム、富士フイルム(株)から“WVフィルム”の商品名で販売されている円盤状液晶が傾斜配向したフィルム、住友化学(株)から“VACフィルム”の商品名で販売されている完全二軸配向型のフィルム、同じく住友化学(株)から“new VAC フィルム”の商品名で販売されている二軸配向型のフィルムなどがある。
【0093】
さらに、これら光学フィルムに保護フィルムが貼着されたものも、光学フィルムとして用いることができる。保護フィルムとしては、透明な樹脂フィルムが用いられ、その透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースに代表されるアセチルセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレートに代表されるメタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂などが挙げられる。保護フィルムを構成する樹脂には、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などの紫外線吸収剤が配合されていてもよい。保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルムなどのアセチルセルロース系樹脂フィルムが好適に用いられる。
【0094】
上で説明した光学フィルムの中でも、直線偏光フィルムは、それを構成する偏光子、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子フィルムの片面又は両面に、保護フィルムが貼着された状態で用いられることが多い。また、前述した楕円偏光フィルムは、直線偏光フィルムと位相差フィルムを積層したものであるが、その偏光フィルムも、偏光子フィルムの片面又は両面に、保護フィルムが貼着された状態であることが多い。このような楕円偏光フィルムに、本発明による粘着剤層を形成する場合は、通常、その位相差フィルム側に粘着剤層が形成される。
【0095】
一方、表面保護フィルムとは、被保護体である光学フィルムなどの表面を傷や汚れから保護する目的で用いられるフィルであって、例えば、液晶表示装置の生産に用いられる偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散シート、反射シートなどの各種光学フィルムは、その表面(片面に粘着剤層を有する場合は、その粘着剤層と反対側の面)に表面保護フィルムを貼合した状態で流通し、液晶セルなどに貼り合わせた後、その表面保護フィルムを剥離除去するのが通例である。表面保護フィルムの基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンの如きポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレンの如きフッ素化ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体の如きポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6の如きポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンの如きビニル重合体、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、セロハンの如きセルロース系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルの如きアクリル系樹脂、その他に、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミドなどが挙げられる。
【0096】
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムを表面保護フィルムとして用いる場合、上記のような基材フィルムに、上で説明した粘着剤層を設ければよい。
【0097】
また、本発明の粘着剤付き樹脂フィルムにおいて、その粘着剤層表面には、剥離フィルムを貼着し、使用時まで仮着保護するのが好ましい。ここで用いる剥離フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレートの如き各種樹脂からなるフィルムを基材とし、この基材の粘着剤層との接合面に、シリコーン処理の如き離型処理が施されたものなどであることができる。
【0098】
粘着剤付き樹脂フィルムは、例えば、上記の如き剥離フィルムの上に、先に説明した粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層にさらに樹脂フィルムを積層する方法、樹脂フィルムの上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、その粘着剤面に剥離フィルムを貼り合わせて保護し、粘着剤付き樹脂フィルムとする方法などにより、製造できる。
【0099】
粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常は30μm 以下であるのが好ましく、また10μm 以上であるのが好ましく、さらに好ましくは10〜20μm である。粘着剤層の厚みが30μm 以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましく、またその厚みが10μm 以上であると、そこに貼合されている光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。従来から一般に、液晶セルガラスに貼着される粘着剤層の厚みは、25μm が標準とされていたが、本発明においては、その厚みを20μm 以下としても、粘着剤層として十分な性能を発揮する。
【0100】
[光学積層体]
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムを光学フィルムで構成し、その粘着剤層でガラス基板に積層して、光学積層体とすることができる。粘着剤付き光学フィルムをガラス基板に積層して光学積層体とするには、例えば、上記のようにして得られる粘着剤付き樹脂フィルムから剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層をガラス基板の表面に貼り合わせればよい。ここで、ガラス基板としては、例えば、液晶セルのガラス基板、防眩用ガラス、サングラス用ガラスなどを挙げることができる。中でも、液晶セルの前面側(視認側)のガラス基板に粘着剤付き光学フィルム(上偏光フィルム)を積層し、液晶セルの背面側のガラス基板に別の粘着剤付き光学フィルム(下偏光フィルム)を積層してなる光学積層体は、液晶表示装置として使用しうることから好ましい。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラスなどが挙げられる。
【0101】
このように粘着剤付き光学フィルムをガラス基板に貼着して光学積層体とした後、なんらかの不具合があった場合には、その光学フィルムをガラス基板から剥離し、新しい粘着剤付き光学フィルムを貼り直す、いわゆるリワーク作業が必要になることがある。本発明の粘着剤付き光学フィルムは、このようなリワーク作業を行う場合に、粘着剤層は光学フィルムに伴って剥離され、粘着剤層と接していたガラス基板の表面に、曇りや糊残りなどがほとんど発生しないことから、剥離後のガラス基板に再び、粘着剤付き光学フィルムを貼り直すことが容易である。すなわち、いわゆるリワーク性に優れている。
【0102】
本発明の光学積層体は、液晶表示装置の液晶セルとして用いることができる。本発明の光学積層体から形成される液晶表示装置は、例えば、ノート型、デスクトップ型、PDA(Personal Digital Assistance )などを包含するパーソナルコンピュータ用液晶ディスプレイ、テレビ、車載用ディスプレイ、電子辞書、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子卓上計算機、時計などに用いることができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、使用量ないし含有量を表す部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0104】
以下の例において、重量平均分子量は、GPC装置にカラムとして、東ソー(株)製の“TSKgel XL”を4本と、昭和電工(株)製で昭光通商(株)が販売する“Shodex GPC KF
-802”を1本、計5本を直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて、試料濃度5mg/mL、試料導入量100μL 、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により測定した値である。
【0105】
まず、アクリル樹脂の製造例を示す。
【0106】
[重合例1]
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル 81.8部、アクリル酸ブチル70.4部、アクリル酸メチル20.0部、アクリル酸2−フェノキシエチル8.0部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0部、及びアクリル酸 0.6部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら、内温を55℃に上げた。その後、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル 0.14部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後に、アクリル樹脂の濃度が35%になるよう、添加速度17.3部/hr で酢酸エチルを連続的に反応容器内へ加えながら、内温54〜56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチルを加えて、アクリル樹脂の濃度が20%となるように調節した。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が142万、Mw/Mn が5.2であった。これをアクリル樹脂Aとする。
【0107】
[重合例2]
単量体組成を、アクリル酸ブチル70.4部、アクリル酸メチル20.0部、アクリル酸2−(2−フェノキシエトキシ)エチル8.0部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0部、及びアクリル酸 0.6部に変更した以外は、重合例1と同様にしてアクリル樹脂を製造した。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が142万、Mw/Mn が3.0であった。これをアクリル樹脂Bとする。
【0108】
[重合例3]
単量体組成を、 アクリル酸ブチル88.6部、アクリル酸2−メトキシエチル10.0部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0部、及びアクリル酸 0.4部に変更した以外は、重合例1と同様にしてアクリル樹脂を製造した。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が176万、Mw/Mn が4.9であった。これをアクリル樹脂Cとする。
【0109】
[重合例4]
単量体組成を、 アクリル酸ブチル98.6部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0部、及びアクリル酸 0.4部に変更した以外は、重合例1と同様にしてアクリル樹脂を製造した。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が123万、Mw/Mn が3.9であった。これをアクリル樹脂Dとする。
【0110】
以上の重合例1〜4における単量体組成、得られたアクリル樹脂の重量平均分子量及びMw/Mnの一覧を表1に示す。表中、単量体組成の欄にある符号は、それぞれ次の単量体を意味する。
BA :アクリル酸ブチル、
MA :アクリル酸メチル、
MEA :アクリル酸2−メトキシエチル、
PEA :アクリル酸2−フェノキシエチル、
PEA2:アクリル酸2−(2−フェノキシエトキシ)エチル、
HEA :アクリル酸2−ヒドロキシエチル、
AA :アクリル酸。
【0111】
【表1】

【0112】
次に、上で製造したアクリル樹脂を用いて粘着剤を調製し、光学フィルムに適用した実施例及び比較例を示す。以下の例では、ピリジニウム塩として下記6種類の化合物を用いた。各化合物の記号は、後で参照するために付したものである。
【0113】
ピリジニウム塩1: N−ドデシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(下式の構造を有する)
【0114】
【化5】

【0115】
ピリジニウム塩2: N−ヘキサデシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(下式の構造を有する)
【0116】
【化6】

【0117】
ピリジニウム塩3: N−ドデシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート(下式の構造を有する)
【0118】
【化7】

【0119】
ピリジニウム塩4: N−ヘキサデシルピリジニウム へキサフルオロホスフェート
(下式の構造を有する)
【0120】
【化8】

【0121】
ピリジニウム塩5: N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート(下式の構造を有する)
【0122】
【化9】

【0123】
ピリジニウム塩6: N−ブチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート(下式の構造を有する)
【0124】
【化10】

【0125】
また、架橋剤及びシラン系化合物として、それぞれ次のものを用いた(いずれも商品名である)。
【0126】
〈架橋剤〉
コロネート L: トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、日本ポリウレタン(株)から入手。後掲の表2においては「Cor-L」と略記する。
タケネート D160N: ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、日本ポリウレタン(株)から入手。後掲の表2においては「D160N」と略記する。
【0127】
〈シラン系化合物〉
KBM-403 : グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(液体)、信越化学工業(株)から入手。
KBE-402 : グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン(液体)、信越化学工業
(株)から入手。
【0128】
[実施例1〜4及び比較例1、2]
(a)粘着剤組成物の調製
重合例1〜4で製造したアクリル樹脂A〜Dの固形分100部に対し、表2に示すピリジニウム塩、架橋剤及びシラン系化合物をそれぞれそこに示す量混合し、さらに固形分濃度が13%となるように酢酸エチルを添加して、粘着剤組成物とした。
【0129】
(b)粘着剤付き樹脂フィルムの作製
上の各粘着剤組成物を、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名“PET 3811”、リンテック(株)から入手;セパレーターと呼ぶ)の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが20μm となるように塗布し、100℃で1分間乾燥して、シート状の粘着剤を得た。次いで、ヨウ素が吸着配向したポリビニルアルコール偏光子の片面をトリアセチルセルロースからなる厚さ80μm の保護フィルム、もう一方の面をシクロオレフィン系樹脂からなる厚さ70μm の位相差フィルム〔40℃の温度及び90%の相対湿度における透湿度は42g/(m2・24hr)〕で挟んだ3層構造の偏光フィルムのシクロオレフィン系樹脂からなる位相差フィルム面に、上で得たシート状粘着剤のセパレーターと反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼り合わせたのち、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤付き偏光フィルムを得た。
【0130】
(c)粘着剤付き樹脂フィルムの帯電防止性評価
得られた粘着剤付き偏光フィルムのセパレーターを剥離したときに、粘着剤の表面抵抗値を表面固有抵抗測定装置〔三菱化学(株)製の“Hirest-up MCP-HT450 ”(商品名)〕にて測定し、帯電防止性を評価した。表面抵抗値が1011Ω/□オーダー又はそれ以下であれば、良好な帯電防止性が得られる。帯電防止性の評価は、粘着剤付き偏光フィルムの養生が完了した後、直ちに行った。結果を表2にまとめた。
【0131】
(d)光学積層体の作製及び評価
上記(b)で作製した粘着剤付き偏光フィルムからセパレーターを剥がした後、その粘着剤面を液晶セル用ガラス基板〔コーニング社製の“Eagle XG”(商品名)〕の片面に貼着して光学積層体を作製した。この光学積層体に対し、温度80℃の乾燥条件下で300時間保管する耐熱試験を行った場合、温度60℃、相対湿度90%で300時間保管する耐湿熱試験を行った場合、70℃に加熱した状態から−30℃に降温し、次いで70℃に昇温する過程を1サイクル(1時間)として、これを100サイクル繰り返す耐ヒートショック試験を行った場合、及び、温度100℃の乾燥条件下で300時間保管する耐高熱試験を行った場合のそれぞれについて、試験後の光学積層体を目視で観察した。結果を以下の基準で分類し、表2にまとめた。
【0132】
〈耐熱試験、耐湿熱試験、耐ヒートショック試験、及び耐高熱試験の評価基準〉
◎:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著に認められる。
【0133】
(e)粘着剤付き光学フィルムのリワーク性評価
リワーク性の評価は次のように行った。まず、前記(b)で作製した粘着剤付き偏光フィルムを25mm×150mmの大きさの試験片に裁断した。次に、この試験片をその粘着剤側で、貼付装置〔フジプラ(株)製の“ラミパッカー”(商品名)〕を用いて液晶セル用ガラス基板に貼り付け、温度50℃、圧力5kg/cm2(490.3kPa )で20分間オートクレーブ処理を行った。次に70℃で2時間加熱処理し、引き続き50℃のオーブン中にて48時間保管した後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中にて、この貼着試験片から偏光板を粘着剤層とともに300mm/分の速度で180°方向(偏光板を剥がして裏返しとなった状態でガラス面に平行な方向)に剥離し、ガラス板表面の状態を観察して、以下の基準で分類した。結果を、併せて表2に示した。
【0134】
〈リワーク性の評価基準〉
◎:ガラス板表面に曇り等が全く認められない。
○:ガラス板表面に曇り等がほとんど認められない。
△:ガラス板表面に曇り等が認められる。
×:ガラス板表面に粘着剤の残りが認められる。
【0135】
【表2】

【0136】
表1及び表2からわかるように、アクリル樹脂に対し、本発明で規定するピリジニウム塩を所定量配合した粘着剤組成物を用いた実施例1〜4は、アルキル鎖の短いピリジニウム塩5を配合した比較例1及び同じくアルキル鎖の短いピリジニウム塩6を配合した比較例2に比べ、100℃の高熱環境下における耐久性に優れ、また、通常の耐熱性、耐湿熱性及び耐ヒートショック性においても、ほぼ満足できる結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、帯電防止性が付与されるとともに、粘着剤層を介してガラスに貼合された場合、車載用途などを想定した過酷な環境下での耐久性に優れている。この粘着剤付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムを光学フィルムで構成して、液晶表示装置に好適に用いられる。またこの粘着剤付き樹脂フィルムは、光学フィルムの表面を保護する表面保護フィルムとしても好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなる粘着剤付き樹脂フィルムであって、該粘着剤層は、
(A)下式(I)
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は、それぞれ炭素数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基又はアラルキル基を表す)
で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とするアクリル樹脂100重量部、
(B)下式(II)
【化2】

(式中、R3は炭素数12〜16の直鎖状アルキル基を表し、R4は水素原子又はメチル基を表し、X-はフッ素原子を有するイオンを表す)
で示されるピリジニウム塩0.2〜8重量部、及び
(C)架橋剤0.1〜5重量部
を含有する粘着剤組成物から形成されていることを特徴とする粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項2】
アクリル樹脂(A)は、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位に加え、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する不飽和単量体に由来する構造単位をさらに有する請求項1に記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項3】
ピリジニウム塩(B)中のX- は、フッ素イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロアセテートイオン、トリフルオロメタンスルホネートイオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドイオン、ヘキサフルオロアーセネートイオン、ヘキサフルオロアンチモネートイオン、ヘキサフルオロニオベートイオン、ヘキサフルオロタンタレートイオン、(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドイオン、パーフルオロブタンスルホネートイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、パーフルオロブタノエートイオン、又は(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドイオンである請求項1又は2に記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項4】
架橋剤(C)は、イソシアネート系化合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項5】
粘着剤組成物はさらに、(D)シラン系化合物 0.03〜2重量部を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項6】
樹脂フィルムは、偏光フィルム及び位相差フィルムから選ばれるフィルムを含む光学フィルムである請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項7】
樹脂フィルムが位相差フィルムを含み、該位相差フィルムは、40℃の温度及び90%の相対湿度における透湿度が300g/(m2・24hr)以下である請求項6に記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項8】
位相差フィルムは、シクロオレフィン系樹脂で構成される請求項7に記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項9】
樹脂フィルムは、光学フィルムに貼合して用いられる表面保護フィルムである請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項10】
粘着剤層の表面に剥離フィルムが貼着されている請求項1〜9のいずれかに記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれかに記載の粘着剤付き樹脂フィルムが、その粘着剤層側でガラス基板に積層されてなることを特徴とする光学積層体。

【公開番号】特開2011−225764(P2011−225764A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98579(P2010−98579)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】