説明

粘着剤層付き樹脂フィルム、積層フィルムおよびタッチ

【課題】オリゴマー防止層を薄型化した場合においても、オリゴマー防止層に要求される、オリゴマー防止性および耐擦傷性を満足しながら干渉縞の発生を抑えることができ、かつ、粘着剤層との密着性にも良好な粘着剤層付き樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】第一透明樹脂フィルム10、オリゴマー防止層11および粘着剤層13がこの順に積層されている粘着剤層付き樹脂フィルム1であって、前記オリゴマー防止層11は、硬化型化合物および無機酸化物粒子を含有する組成物を硬化することにより形成された硬化層であり、前記オリゴマー防止層11の厚さは120nm以上であり、前記オリゴマー防止層11と前記粘着剤層13との屈折率差が0.04以下であり、かつ、前記オリゴマー防止層11と前記粘着剤層13と間の投錨力が1N/25mm以上ある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一透明樹脂フィルム、オリゴマー防止層および粘着剤層がこの順に積層されている粘着剤層付き樹脂フィルムに関する。当該粘着剤層付き樹脂フィルムには、第一透明樹脂フィルムにさらに機能層を積層したもの用いることができる。これら粘着剤層付き樹脂フィルムは、例えば、該粘着剤層を介して、第二透明樹脂フィルム積層して積層フィルムを形成するために用いられる。当該積層フィルムは、光学用途等の各種用途に用いることができる。
【0002】
例えば、第二透明樹脂フィルムが、透明導電性薄膜を有する場合には、積層フィルムは透明導電性フィルムの積層体として用いることができる。透明導電性フィルムは、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどのディスプレイ方式や光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルなどにおける透明電極に用いられる。その他、透明導電性フィルムは、透明物品の帯電防止や電磁波遮断、液晶調光ガラス、透明ヒーター等に用いられる。
【背景技術】
【0003】
透明導電性フィルムが電極として用いられるタッチパネルは、位置検出の方式により、光学方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがある。抵抗膜方式のタッチパネルでは透明導電性フィルムと透明導電体付きガラスとがスペーサを介して対抗配置されており、透明導電性フィルムに電流を流して透明導電体付きガラスにおける電圧を測定するような構造になっている。
【0004】
前記透明導電性フィルムとしては、押圧操作時の耐擦傷性や打点特性に耐えられるように、透明フィルム基材の一方の面に透明導電性薄膜を設けた導電性フィルムに、さらに粘着剤層を介して、前記透明フィルム基材の他方の面には外表層にハードコート層を有する透明基体を貼りあわせた透明導電性積層フィルムが提案されている(特許文献1)。
【0005】
前記透明導電性積層フィルムは、タッチパネルなどの電子機器に組み込まれる際には、透明導電性膜の端部に銀ペーストからなるリードが設けられる。前記リードは、導電性ペーストを100〜150℃程度で1〜2時間程度、加熱して硬化処理する方法などにより形成される。
【0006】
しかし、透明導電性積層フィルムに用いられる透明フィルム基材として、ポリエチレンテレフタレート等の透明樹脂フィルムが用いられる場合には、透明フィルム基材中に含まれている低分子成分(オリゴマー)が加熱により析出し、透明導電性積層フィルムが白化する問題がある。かかる問題に対しては、透明フィルム基材にオリゴマー防止層を設けることが提案されている(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2667686号明細書
【特許文献2】特開平7−013695号公報
【特許文献3】特開2003−246972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記のように、透明フィルム基材にオリゴマー防止層を設けた場合には、オリゴマー防止層の厚みムラが原因となって、干渉縞が発生する問題があることが分かった。特に、オリゴマー防止層を薄くした場合には、干渉縞の発生が顕著であることが分かった。一方、タッチパネルなどの電子機器は薄型化が進んでおり、透明導電性積層フィルムにも薄型化が求められている。
【0009】
本発明は、第一透明樹脂フィルム、オリゴマー防止層および粘着剤層がこの順に積層されている粘着剤層付き樹脂フィルムであって、オリゴマー防止層を薄型化した場合においても、オリゴマー防止層に要求される、オリゴマー防止性および耐擦傷性を満足しながら干渉縞の発生を抑えることができ、かつ、粘着剤層との密着性にも良好な粘着剤層付き樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、前記粘着剤層付き樹脂フィルムを用いた積層フィルム、さらには、当該積層フィルムを透明導電性フィルムとして用いたタッチパネルを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、第一透明樹脂フィルム、オリゴマー防止層および粘着剤層がこの順に積層されている粘着剤層付き樹脂フィルムであって、
前記オリゴマー防止層は、硬化型化合物および無機酸化物粒子を含有する組成物を硬化することにより形成された硬化層であり、
前記オリゴマー防止層の厚さは120nm以上であり、
前記オリゴマー防止層と前記粘着剤層との屈折率差が0.04以下であり、かつ、
前記オリゴマー防止層と前記粘着剤層と間の投錨力が1N/25mm以上あることを特徴とする粘着剤層付き樹脂フィルム、に関する。
【0013】
前記粘着剤層付き樹脂フィルムにおいて、前記無機酸化物粒子として、無機酸化物粒子に重合性不飽和基を含む有機化合物を結合させてなる粒子を用いることができる。
【0014】
前記粘着剤層付き樹脂フィルムにおいて、前記無機酸化物粒子が、シリカ粒子であることが好ましい。
【0015】
前記粘着剤層付き樹脂フィルムは、前記オリゴマー防止層の厚みが、1μm未満の場合にも好適である。
【0016】
前記粘着剤層付き樹脂フィルムとしては、第一透明樹脂フィルムのオリゴマー防止層が設けられていない側に、さらに機能層が積層されたものを用いることができる。当該粘着剤層付き樹脂フィルムにおいて、前記機能層としては、ハードコート層を含むことができる。
【0017】
前記粘着剤層付き樹脂フィルムにおいて、前記粘着剤層としては、アクリル系粘着剤層が好ましい。
【0018】
前記粘着剤層付き樹脂フィルムにおいて、前記オリゴマー防止層を形成する組成物は、前記硬化型化合物および前記無機酸化物粒子に加えて、無機酸化物粒子以外の平均粒径が300〜2μmの第二粒子を、前記硬化型化合物100重量部に対して、0.01〜10重量部含有することができる。また、前記第二粒子は、当該第二粒子の屈折率と、前記硬化型化合物および前記無機酸化物粒子の平均屈折率との差が0.1以下を満足するものが好ましい。
【0019】
また本発明は、前記粘着剤層付き樹脂フィルムと第二透明樹脂フィルムとが、粘着剤層付き樹脂フィルムの粘着剤層を介して貼り合せられていることを特徴とする積層フィルム、に関する。
【0020】
前記積層フィルムにおいて、前記第二透明樹脂フィルムが、前記粘着剤層に貼り合せない他方の片面に、直接またはアンダーコート層を介して、透明導電性膜を有する透明導電性フィルムを用いることができる。
【0021】
また本発明は、前記透明導電性フィルムを有する積層フィルムを含有するタッチパネル、に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の粘着剤層付き樹脂フィルムにおけるオリゴマー防止層は、無機酸化物粒子および硬化型化合物を含有する組成物を硬化することにより形成された硬化層であり、かつ、当該オリゴマー防止層の厚さは120nm以上であることから、オリゴマー防止層としての機能、即ち、オリゴマー防止性を満足することができる。従って、粘着剤層付き樹脂フィルムに加熱処理が施された場合においても、第一透明樹脂フィルム中のオリゴマーが粘着剤層側に析出することを防ぐことができ、粘着剤層付き樹脂フィルムの白化を抑えて、良好な外観を維持することができる。また前記オリゴマー防止層は前記硬化層であることから、オリゴマー防止層に要求される硬度を有しており耐擦傷性を満足することができる。さらには、前記オリゴマー防止層は前記硬化層(硬化型化合物として有機系材料を用いている)であることから、前記オリゴマー防止層と前記粘着剤層と間の投錨力は1N/25mm以上あり前記層間の密着性が良好であり、加湿密着性にも優れる。
【0023】
また、粘着剤層付き樹脂フィルムに生じていた、オリゴマー防止層の厚みムラに起因する干渉縞は、前記オリゴマー防止層と前記粘着剤層との屈折率差を0.04以下に制御することで低減している。本発明では、前記オリゴマー防止層を前記硬化層により形成していることから、前記オリゴマー防止層の厚みが1μm未満である場合にも、オリゴマー防止層としての機能(オリゴマー防止性、耐擦傷性)を満足しながら、干渉縞の発生を抑えることができる。前記オリゴマー防止層の厚みが1μm未満の場合には、薄型化の観点からも好ましく、さらにはカールの発生を抑える観点からも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】本発明の粘着剤層付き樹脂フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【図1B】本発明の粘着剤層付き樹脂フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【図2A】本発明の積層フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【図2B】本発明の積層フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の粘着剤層付き樹脂フィルムおよび積層フィルムに係る実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1A、Bは、本発明の粘着剤層付き樹脂フィルム1の一例を示す断面図である。図1A、Bに示すように、粘着剤層付き樹脂フィルム1(A)、1(B)では、第一透明樹脂フィルム10、オリゴマー防止層11および粘着剤層13がこの順で積層されている。粘着剤層付き樹脂フィルム1(A)には、さらに機能層12(例えば、ハードコート層)を設けることができる。例えば、図1Bに示されるように、粘着剤層付き樹脂フィルム1(B)は、図1Aの粘着剤層付き樹脂フィルム1(A)において、第一透明樹脂フィルム10のオリゴマー防止層11が積層されていない側に、機能層12を有する場合であり、機能層12、第一透明樹脂フィルム10、オリゴマー防止層11および粘着剤層13がこの順で積層されている。なお、粘着剤層付き樹脂フィルム1(B)において、機能層12は、粘着剤層13とは反対側の最外層に有するが、例えば、機能層12は、オリゴマー防止層11と粘着剤層13との間に設けることもできる。
【0026】
図2は、本発明の積層フィルム2の一例を示す断面図である。図2Aの積層フィルム2(A)は、図1Bに示す粘着剤層付き樹脂フィルム1(B)の粘着剤層13に、第二透明樹脂フィルム20を積層した場合である。図2Bの積層フィルム2(B)は、図2Aにおいて、第二透明樹脂フィルム20の前記粘着剤層13に貼り合せない他方の片面に、アンダーコート層21を介して、透明導電性膜22を有する場合であり、図2Bの積層フィルム2(B)は透明導電性フィルムとして用いることができる。なお、図2Bでは、アンダーコート層21を介して、透明導電性膜22が設けられているが、透明導電性膜22は、アンダーコート層21を介することなく、直接、第二透明樹脂フィルム20に設けることができる。なお、図2A、Bでは、積層フィルム2として、図1Bに示す粘着剤層付き樹脂フィルム1(B)を用いた場合を説明したが、積層フィルム2に適用できる、粘着剤層付き樹脂フィルム1は、図1Bに示す粘着剤層付き樹脂フィルム1(B)には限られず、図1Aに示す粘着剤層付き樹脂フィルム1(A)や、その他の態様のものを用いることができる。
【0027】
まず、本発明の粘着剤層付き樹脂フィルム1(A)について説明する。粘着剤層付き樹脂フィルム1は、第一透明樹脂フィルム10の片面に、オリゴマー防止層11および粘着剤層13をこの順で有する。
【0028】
第一透明樹脂フィルム10の材料としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチック材料があげられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂およびポリエーテルスルホン系樹脂である。
【0029】
また、特開2001−343529号公報(WO10/37007)に記載の、例えば、側鎖に置換及び/又は非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換及び/又は非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物が挙げられる。具体的には、イソブチレン及びN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物を、前記樹脂フィルムの材料として用いることができる。
【0030】
第一透明樹脂フィルム10は、少なくとも一方向に延伸処理されたものを用いることができる。延伸処理は特に限定されることはなく、一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸等の各種の延伸処理があげられる。第一透明樹脂フィルム10としては、機械的な強度の点からは二軸延伸処理された樹脂フィルムが好ましい。
【0031】
前記第一透明樹脂フィルム10は、通常、1層のフィルムにより形成されている。第一透明樹脂フィルム10の厚さは、通常、90〜300μmであるのが好ましく、より好ましくは100〜250μmである。
【0032】
オリゴマー防止層11は、硬化型化合物および無機酸化物粒子を含有する組成物を硬化することにより形成された硬化層である。オリゴマー防止層11は、第一透明樹脂フィルム10中の移行成分、例えば、ポリエステルフィルム中の移行成分であるポリエステルの低分子量オリゴマー成分の移行を防止する等の機能を有する。
【0033】
オリゴマー防止層11の厚さは、オリゴマー防止層11に十分な耐擦傷性とオリゴマー移行機能を付与するには、オリゴマー防止層11の厚さは120nm以上にすることが好ましい。オリゴマー防止層11の厚さは150nm以上であるのが好ましく、さらには300nmであるのが好ましい。一方、オリゴマー防止層11の厚さは、特に制限はされないが、通常、オリゴマー防止層付き樹脂フィルム(第一透明樹脂フィルム10にオリゴマー防止層11と任意の機能層12を設けたもの)のカール抑制やコスト低減の点から、1μm以下であるのが好ましく、さらには500nm以下であるのが好ましい。さらには、本発明では、オリゴマー防止層11が前記硬化層であることから、従来、干渉縞が顕著に認められていた、厚さ1μm未満の場合にも、さらには800nm以下であっても、さらには600nm以下であっても、干渉縞を抑えることができ、耐擦傷性、オリゴマー移行防止機能を付与することができる。
【0034】
硬化型化合物としては、分子中に少なくとも一つの重合性二重結合を有する官能基を有し、樹脂層を形成できる材料が用いられる。重合性二重結合を有する官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等があげられる。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味し、本発明では(メタ)とは同様の意味である。
【0035】
硬化型化合物としては、前記重合性二重結合を有する官能基を有する、硬化型樹脂があげられる。例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
また、硬化型化合物としては、前記活性エネルギー線硬化型樹脂の他に、分子中に少なくとも一つの重合性二重結合を有する官能基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。反応性希釈剤としては、例えば、エチレンオキサイド変性フェノールの(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノールの(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリレート、2−エチルへキシルカルビトール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレートがあげられる。また、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアリルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート;さらには三官能以上の(メタ)アクリレート、があげられる。その他、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸の(メタ)アクリレート等もあげられる。反応性希釈剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
また、オリゴマー防止層11を形成する組成物には、前記硬化型化合物に加えて、無機酸化物粒子を含有する。無機酸化物粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、マイカ、等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
無機酸化物粒子は、重量平均粒径が1nm〜200nmの範囲である、いわゆるナノ粒子であることが好ましい。前記重量平均粒径は、より好ましくは、1nm〜100nmの範囲である。なお無機酸化物粒子の重量平均粒径は、コールターカウント法により、微粒子の重量平均粒径を測定した。具体的には、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、微粒子が細孔を通過する際の微粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、微粒子の数と体積を測定し、重量平均粒径を算出した。
【0039】
前記無機酸化物粒子は、重合性不飽和基を含む有機化合物と結合(表面修飾)されているものを用いることができる。前記重合性不飽和基は、硬化型化合物と反応硬化することで、オリゴマー防止層の硬度を向上させる。前記重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基が好ましい。また、前記重合性不飽和基を含む有機化合物は、分子内にシラノール基を有する化合物あるいは加水分解によってシラノール基を生成する化合物であることが好ましい。前記重合性不飽和基を含む有機化合物は、光感応性基を有するものであることも好ましい。
【0040】
前記無機酸化物粒子を硬化型化合物に配合することにより、オリゴマー防止層(硬化層)11の屈折率が制御される。オリゴマー防止層11の屈折率は、粘着剤層13との屈折率差が0.04以下になるように制御される。当該屈折率差の制御により、オリゴマー防止層に起因する干渉縞の発生を抑えることができる。当該屈折率差は、0.03以下であるがより好ましく、さらには0.02以下であるのが好ましい。
【0041】
前記無機酸化物粒子の配合量は、前記のように硬化型化合物とともに併用することで、前記屈折率差が0.04以下になるような割合で用いられる。粘着剤層13の屈折率は、通常、1.46〜1.49(例えば、アクリル系粘着剤層の屈折率約1.47)であり、オリゴマー防止層11の屈折率と粘着剤層13との屈折率差が0.04以下になるように、硬化型化合物、無機酸化物粒子の屈折率を考慮して、前記無機酸化物粒子の配合量は決定される。かかる観点から、前記無機酸化物粒子(例えば、屈折率が1.43〜1.47の場合)は、硬化型化合物(例えば、屈折率が1.51〜1.55)100重量部に対し、50〜300重量部、好ましくは100〜200重量部の範囲、より好ましくは、100〜150重量部の範囲である。前記配合量は、オリゴマー防止層11に硬度を付与しカールの発生を抑えたり、耐擦傷性を付与したりするうえでも好ましい。
【0042】
また、オリゴマー防止層11を形成する組成物には、前記硬化型化合物および前記無機酸化物粒子に加えて、無機酸化物粒子以外の平均粒径が300〜2μmの第二粒子を含有することができる。前記第二粒子をオリゴマー防止層11に含有させることにより、オリゴマー防止層11に耐ブロッキング性を付与することができる。例えば、オリゴマー防止層11が第二粒子を含有している場合には、長尺状のオリゴマー防止層付き樹脂フィルム(第一透明樹脂フィルム10にオリゴマー防止層11と任意の機能層12を設けたもの)を巻回する際に保護フィルムを用いることなくロール状にすることができる。第二粒子の平均粒径が300nmよりも小さい場合には、耐ブロッキング性の付与が十分ではなく、一方、2μmを超える場合には、へイズが上昇する場合があり好ましくない。第二粒子の平均粒径は400〜1500nmが好ましく、さらには500〜1000nmであるのが好ましい。第二粒子の平均粒径は、レーザー法により測定した値である。
【0043】
また、第二粒子の配合割合は、前記硬化型化合物100重量部に対して、0.01〜10重量部であるのが好ましい。第二粒子の配合割合が0.1重量部よりも小さい場合には、耐ブロッキング性の付与が十分ではなく、一方、10重量部を超える場合には、へイズが上昇する場合があり好ましくない。第二粒子の配合割合は0.03〜5重量部が好ましく、さらには0.05〜1重量部であるのが好ましい。
【0044】
前記第二粒子としては、特に制限されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリル−スチレン共重合体、メラミン樹脂等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系粒子;ガラス、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛等の無機系粒子があげられる。なお、前記第二粒子は、前記無機酸化物粒子以外のものが用いられるが、前記第二粒子と前記無機酸化物粒子とは平均粒径において差別化することができ、前記第二粒子の材料には無機酸化物を含むことができる。前記第二粒子としては、屈折率差がヘイズに影響を及ぼす点から、有機系粒子を用いるのが好ましい。また、前記第二粒子としては、その屈折率と、前記硬化型化合物および前記無機酸化物粒子の平均屈折率との差が0.1以下であるものを用いることが好ましい。前記屈折率差を0.1以下とすることで、第二粒子を配合することによるヘイズの上昇を小さく抑えることができる。前記屈折率差は0.05以下であるのが好ましく、さらには0.03以下であるの好ましい。硬化型化合物および前記無機酸化物粒子の平均屈折率はこれら材料により形成されるオリゴマー防止層の屈折率である。
【0045】
オリゴマー防止層11は、硬化型化合物および無機酸化物粒子を含有する組成物の硬化層として形成される。当該硬化層の形成は、活性エネルギー線硬化または熱硬化により行うことができ、前記組成物には、硬化方法に応じた重合開始剤が配合される。重合開示剤は、活性エネルギー線として電子線を採用する場合には特に必要ではないが、活性エネルギー線として紫外線を採用する場合には、光重合開始剤が用いられる。また、熱硬化型粘着剤組成物の場合には、熱開裂型重合開始剤が用いられる。硬化層の形成は、活性エネルギー線として紫外線を用いるのが好ましい。
【0046】
光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;べンゾインメチルエーテル、べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、べンゾインブチルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、ドデシルチオキサントンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート;2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−メチル−プロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチループロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等などがあげられる。
【0047】
光重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、活性エネルギー線硬化型化合物100重量部に対して0.1〜10重量部であるのが好ましい。前記光重合開始剤の使用量は、1重量部以上であるのが好ましく、さらには2重量部以上であるのが好ましい。一方、前記光重合開始剤の使用量は、8重量部以下であるのが好ましく、さらには5重量部以下であるのが好ましい。
【0048】
また、前記組成物は、適宜に溶媒により希釈した組成物溶液として用いることができる。前記組成物に、溶媒を含有する組成物溶液は、第一透明樹脂フィルム10に塗工して塗工層を形成した後、溶媒を乾燥してから、硬化される。
【0049】
組成物溶液に用いられる溶媒としては、硬化型化合物等を溶解できるものが選択される。溶媒の具体例としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−へキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン等のケトン系;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−ペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル系;アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセチルアセトン系;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロへキサノール等のアルコール系;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系などの各種溶媒を用いることができる。これら溶媒は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物溶液の濃度は、通常、1〜60重量%であり、好ましくは2〜10重量%である。
【0050】
組成物溶液の塗工法としては、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。塗工層の形成は、最終的に得られるオリゴマー防止層11の厚さが120nm以上になるように行われる。
【0051】
次いで、前記塗工層に含まれる溶媒の乾燥を行なった後に、硬化させる。硬化手段は、熱硬化または活性エネルギー線硬化により適宜選択されるが、硬化手段としては、通常、紫外線を照射することにより行なうのが好ましい。紫外線照射には、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。紫外線照射は、紫外線波長365nmでの積算光量で50〜500mJ/cmが好ましい。照射量が、50mJ/cm以上であれば、硬化がより十分となり、形成されるオリゴマー防止層11の硬度もより十分なものとなる。また、500mJ/cm以下であれば、形成されるオリゴマー防止層11の着色を防止することができる。
【0052】
また、粘着剤層付き樹脂フィルム1は、第一透明樹脂フィルム10のオリゴマー防止層11が設けられていない側の面に、機能層12を設けることができる。機能層12は、前述のように、前記第一透明樹脂フィルム10の一方の片面の最外層にオリゴマー防止層11を有し、他の片面の最外層が機能層12を有するように設けることができる。
【0053】
機能層12(オリゴマー防止層以外の機能層)としては、例えば、外表面の保護を目的としたハードコート層を設けることができる。ハードコート層の形成材料としては、例えば、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬化型樹脂からなる硬化被膜が好ましく用いられる。ハードコート層の厚さとしては、0.1〜30μmが好ましい。厚さを0.1μm以上とすることが、硬度を付与するうえで好ましい。一方、厚さが30μmを超えると、ハードコート層にクラックが発生したり、粘着剤層付き樹脂フィルム1(B)全体にカールが発生するおそれがある。
【0054】
また、前記機能層12としては、視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層を設けることができる。また前記ハードコート層上に、防眩処理層や反射防止層を設けることができる。防眩処理層の構成材料としては特に限定されず、例えば電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。防眩処理層の厚みは0.1〜30μmが好ましい。反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。反射防止層は複数層を設けることができる。
【0055】
粘着剤層13としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0056】
また、前記粘着剤層13には、ベースポリマーに応じた架橋剤を含有させることができる。また、粘着剤層13には必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また透明微粒子を含有させて光拡散性が付与された粘着剤層13とすることもできる。
【0057】
なお、前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、酸化カルシウム、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性の無機系微粒子や、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタンの如き適宜なポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子など適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。
【0058】
前記粘着剤層13は、通常、ベースポリマー又はその組成物を溶剤に溶解又は分散させた粘着剤溶液(固形分濃度:10〜50重量%程度)から形成される。前記溶剤としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤や水等の粘着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。
【0059】
粘着剤層13の形成は、前記オリゴマー防止層11に積層することにより行う。形成方法としては、特に制限されず、粘着剤(溶液)を塗工し乾燥する方法、粘着剤層を設けた離型フィルムにより転写する方法等があげられる。塗工法は、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。
【0060】
前記粘着剤層13は、粘着剤層付き樹脂フィルム1と下記に示す第二透明樹脂フィルム20(透明導電性フィルムの場合を含む)を接着した後に得られる積層フィルム2において、そのクッション効果により、例えば、第二透明樹脂フィルム20の一方の面に設けられた透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしての打点特性、いわゆるペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させる機能を有する。この機能をより良く発揮させる観点から、粘着剤層13の弾性係数を1〜100N/cmの範囲、厚さを1μm以上、通常5〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。前記厚さであると上記効果が十分発揮され、第二透明樹脂フィルム20と粘着剤層付き樹脂フィルム1の粘着剤層13との密着力も十分である。上記範囲よりも薄いと上記耐久性や密着性が十分確保できず、また上記範囲よりも厚いと透明性などの外観に不具合が発生してしまうおそれがある。
【0061】
前記の弾性係数が1N/cm未満であると、粘着剤層13は非弾性となるため、加圧により容易に変形して第二透明樹脂フィルム20、さらには第二透明樹脂フィルム20に設けられる透明導電性膜22に凹凸を生じさせる。また、加工切断面からの粘着剤のはみ出しなどが生じやすくなり、そのうえ透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしての打点特性の向上効果が低減する。一方、弾性係数が100N/cmを超えると、粘着剤層13が硬くなり、そのクッション効果が期待できなくなるため、透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしてのペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させることが困難になる傾向がある。
【0062】
また、粘着剤層13の厚さが1μm未満となると、そのクッション効果が期待できないため、透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしてのペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させることが困難になる傾向がある。その一方、厚くしすぎると、透明性を損なったり、粘着剤層13の形成や粘着剤層付き樹脂フィルム1の粘着剤層13と第二透明樹脂フィルム20の貼り合わせ作業性、更にコストの面でも好結果を得にくい。
【0063】
この様な粘着剤層13を介して貼り合わされる積層フィルム2(B)は、良好な機械的強度を付与し、ペン入力耐久性および面圧耐久性の他に、とくに、カールなどの発生防止に寄与するものである。
【0064】
前記オリゴマー防止層と前記粘着剤層と間の投錨力は1N/25mm以上ある。前記投錨力は4N/25mm以上あることが好ましい。投錨力を4N/25mm以上とすることで、例えば、得られる積層フィルム(透明導電性積層フィルム)をタッチパネルに適用した場合に、ペン入力で押圧される際の粘着剤層の変形を抑えることができる。
【0065】
前記粘着剤13は、前記貼り合せに用いられるまで、離型フィルムで保護することができる。離型フィルムとしては、粘着剤層13と接着する面に移行防止層及び/又は離型層が積層されたポリエステルフィルム等を用いるのが好ましい。
【0066】
前記離型フィルムの総厚は、30μm以上であることが好ましく、60〜100μmの範囲内であることがより好ましい。粘着剤層13の形成後、ロール状態にて保管する場合に、ロール間に入り込んだ異物等により発生することが想定される粘着剤層13の変形(打痕)を抑制する為である。
【0067】
前記移行防止層としては、ポリエステルフィルム中の移行成分、特に、ポリエステルの低分子量オリゴマー成分の移行を防止する為の適宜な材料にて形成することができる。移行防止層の形成材料として、無機物若しくは有機物、又はそれらの複合材料を用いることができる。移行防止層の厚さは、0.01〜20μmの範囲で適宜に設定することができる。移行防止層の形成方法としては特に限定されず、例えば、塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法などが用いられる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法等も用いることができる。
【0068】
前記離型層としては、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブテン等の適宜な剥離剤からなるものを形成することができる。離型層の厚さは、離型効果の点から適宜に設定することができる。一般には、柔軟性等の取り扱い性の点から、該厚さは20μm以下であることが好ましく、0.01〜10μmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜5μmの範囲内であることが特に好ましい。離型層の形成方法としては特に制限されず、前記移行防止層の形成方法と同様の方法を採用することができる。
【0069】
前記塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法に於いては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の電離放射線硬化型樹脂や前記樹脂に酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、マイカ等を混合したものを用いることができる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法又は電気メッキ法を用いる場合、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト又はスズやこれらの合金等からなる金属酸化物、ヨウ化鋼等からなる他の金属化合物を用いることができる。
【0070】
本発明の積層フィルム2は、前記粘着剤層付き樹脂フィルム1の粘着剤層13に、第二透明樹脂フィルム20を積層することで形成することができる。
【0071】
第二透明樹脂フィルム20は、前記粘着剤層13に貼り合せない他方の片面に、直接またはアンダーコート層を介して、透明導電性膜22を設けることができる。
【0072】
粘着剤層13の構成材料である粘着剤の種類によっては、適当な粘着用下塗り剤を用いることで投錨力を向上させることが可能なものがある。従って、そのような粘着剤を用いる場合には、粘着用下塗り剤を用いることが好ましい。粘着用下塗り剤は、通常、第二透明樹脂フィルム20の側に設けられる。
【0073】
前記粘着用下塗り剤としては、粘着剤の投錨力を向上できる層であれば特に制限はない。具体的には、例えば、同一分子内にアミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等の反応性官能基と加水分解性のアルコキシシリル基とを有するシラン系カップリング剤、同一分子内にチタンを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するチタネート系カップリング剤、及び同一分子内にアルミニウムを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するアルミネート系カップリング剤等のいわゆるカップリング剤、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、ウレタン系樹脂、エステルウレタン系樹脂等の有機反応性基を有する樹脂を用いることができる。工業的に取扱い易いという観点からは、シラン系カップリング剤を含有する層が特に好ましい。
【0074】
第二透明樹脂フィルム20としては、前記第一透明樹脂フィルム10と同様の樹脂フィルムを例示できる。第二透明樹脂フィルム20は、第一透明樹脂フィルム10と同じ材料を用いることができる。前記第二透明樹脂フィルム20の厚みは、通常、10〜200μmであり、好ましくは20〜100μmである。
【0075】
第二透明樹脂フィルム20は、前記粘着剤層13に貼り合せない他方の片面に、直接またはアンダーコート層を介して、透明導電性膜22を設けることができる。
【0076】
第二透明樹脂フィルム20に透明導電性膜22を設けて透明導電性フィルムを作成する場合には、第二透明樹脂フィルム20の厚さは10〜40μmであることが好ましく、20〜30μmであることがより好ましい。透明導電性フィルムに用いる第二透明樹脂フィルム20の厚みが10μm未満であると、第二透明樹脂フィルム20の機械的強度が不足し、この第二透明樹脂フィルム20をロール状にして、透明導電性膜22を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが40μmを超えると、透明導電性膜22の製膜加工において第二透明樹脂フィルム20の投入量を低減させ、またガスや水分の除去工程に弊害を生じ、生産性を損なうおそれがある。また、透明導電性積層フィルムの薄型化が困難となる。
【0077】
前記第二透明樹脂フィルム10には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる透明導電性膜22またはアンダーコート層21の前記第二透明樹脂フィルム20に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、透明導電性膜22またはアンダーコート層21を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0078】
透明導電性膜22の構成材料としては特に限定されず、例えば酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられる。透明導電性膜22として、前記金属酸化物により形成する場合には、前記材料中の酸化スズを制御する(所定量となるように含有させる)ことにより、透明導電性膜22を非晶質にすることができる。非晶質透明導電性膜を形成する場合、当該金属酸化物は、酸化インジウム90〜99重量%および酸化スズ1〜10重量%を含有することが好ましい。さらには、酸化インジウム95〜98重量%および酸化スズ2〜5重量%を含有することが好ましい。なお、透明導電性膜22を形成した後、必要に応じて、100〜150℃の範囲内でアニール処理を施して結晶化することができる。また、前記非晶質透明導電性薄膜の結晶質化は、本発明の積層フィルムを形成した後に、加熱処理を施すことにより行うことができる。結晶化の加熱温度は、前記アニール処理と同様の温度(100〜150℃)を採用することができる。
【0079】
なお、本発明における「非晶質」とは、電界放出型透過型電子顕微鏡(FE−TEM)により、透明導電性薄膜を表面観察した際に、当該透明導電性薄膜の表面全体において、多角形又は長円形状の結晶が占める面積割合が50%以下(好ましくは0〜30%)であることをいう。
【0080】
透明導電性膜22の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗を1×103Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さ10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。厚さが15nm未満であると表面電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、35nmを超えると透明性の低下などをきたしてしまう。
【0081】
透明導電性膜22の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0082】
アンダーコート層21は、無機物、有機物、または無機物と有機物との混合物により形成することができる。アンダーコート層21は一層または2層以上の複数層で形成することができ、複数層の場合には、これらの各層を組み合わせることができる。
【0083】
例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の括弧内の数値は光の屈折率である〕があげられる。これらのなかでも、SiO2、MgF2、A123などが好ましく用いられる。特に、SiO2が好適である。上記の他、酸化インジウム100重量部に対して、酸化セリウムを10〜40重量部程度、酸化スズを0〜20重量部程度含む複合酸化物を用いることができる。
【0084】
無機物により形成されたアンダーコート層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスとして、またはウェット法(塗工法)などにより形成できる。アンダーコート層を形成する無機物としては、前述の通り、SiOが好ましい。ウェット法では、シリカゾル等を塗工することによりSiO2膜を形成することができる。
【0085】
また有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などがあげられる。これら有機物は、少なくとも1種が用いられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0086】
アンダーコート層21の厚さは、特に制限されるものではないが、光学設計、前記第二透明樹脂フィルム20からのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、1〜300nm程度であり、好ましくは5〜300nmである。なお、アンダーコート層21を2層以上設ける場合、各層の厚さは、5〜250nm程度であり、好ましくは10〜250nmである。
【0087】
また、図2Bに示す積層フィルム2(B)を製造した場合において、当該積層フィルム2(B)の透明導電性膜22が、金属酸化物により形成された非晶質透明導電性薄膜の場合には、前記非晶質透明導電性薄膜を加熱により結晶質化することができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
実施例1
(ハードコート層の形成)
ハードコート層の形成材料として、アクリル・ウレタン系樹脂(大日本インキ化学(株)製のユニディック17−806)100重量部に、光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(イルガキュア184,チバスペシャルティケミカルズ社製)5重量部を加えて、30重量%の濃度に希釈してなるトルエン溶液を調製した。
【0090】
このハードコート層の形成材料を、第一透明樹脂フィルムである、厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルの一方の面に塗工し、100℃で3分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmで紫外線照射を行ない、厚さ7μmのハードコート層を形成した。
【0091】
(オリゴマー防止層形成材料を調製)
無機酸化物粒子と重合性不飽和基を含む有機化合物とを結合させてなるナノシリカ粒子を分散させた、活性エネルギー線硬化型化合物を含むオリゴマー防止層形成材料(JSR(株)製,商品名「オプスターZ7540」,固形分:56重量%,溶媒:酢酸ブチル/メチルエチルケトン(MEK)=76/24(重量比),屈折率1.49)を準備した。前記オリゴマー防止層形成材料は、活性エネルギー線硬化型化合物として、ジペンタエリスリトールおよびイソホロンジイソシアネート系ポリウレタン、表面を有機分子により修飾したシリカ微粒子(重量平均粒径100nm以下)を、前者:後者=2:3の重量比で含有する。このオリゴマー防止層形成材料の活性エネルギー線硬化型化合物の固形分100重量部あたり、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガキュア127」)5重量部を混合した。この混合物に固形分濃度が5重量%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈し、オリゴマー防止層形成材料を調製した。
【0092】
(オリゴマー防止層の形成)
前記第一透明樹脂フィルムのハードコート層が形成された面とは反対側の面に、前記オリゴマー防止層形成材料をコンマコーターを用いて塗工し、塗工層を形成した。次いで、145℃で1分間加熱し、前記塗工層を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmで紫外線照射を行ない、厚さ120nmのオリゴマー防止層を形成して、オリゴマー防止層を有するハードコートフィルムを得た。
【0093】
(粘着剤層付きハードコートフィルムの作成)
上記オリゴマー防止層を有するハードコートフィルムのオリゴマー防止層に粘着剤層を形成して、粘着剤層付きハードコートフィルムを得た。前記粘着剤層は、厚さ25μm、弾性係数10N/cmの透明なアクリル系の粘着剤層(屈折率1.47)を形成した。粘着剤層組成物としては、アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5のアクリル系共重合体100重量部に、イソシアネート系架橋剤を1重量部配合してなるものを用いた。
【0094】
(透明導電性フィルムの作成)
第二透明樹脂フィルムである、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に、アルゴンガス80%と酸素ガス20%とからなる0.4Paの雰囲気中で、ポリエチレンテレフタレートフィルムの温度が100℃の条件下で、放電出力:6.35W/cm、酸化インジウム97重量%、酸化スズ3重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ22nmのITO膜を形成して、透明導電性フィルムを得た。上記ITO膜は、非晶質であった。
【0095】
(透明導電性積層フィルムの作成)
粘着剤層付きハードコートフィルムの粘着剤層に、透明導電性フィルムの透明導電性膜を形成していない側の面を貼り合せて、透明導電性積層フィルムを得た。得られた透明導電性積層フィルムに対して、140℃で90分間の加熱処理を施して、非晶質のITO膜を結晶化した。
【0096】
実施例2〜6、比較例1
実施例1において、オリゴマー防止層の形成にあたり、オリゴマー防止層の厚さを表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、オリゴマー防止層を有するハードコートフィルムを得た。また、当該ハードコートフィルムを用いて、実施例1と同様にして、粘着剤層付きハードコートフィルムを用いて、実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。
【0097】
実施例7
(オリゴマー防止層形成材料を調製)
実施例1において調製したオリゴマー防止層形成材料に、さらに、アクリル−スチレン共重合体の架橋粒子(積水化成品工業(株)製,商品名「XX−160AA」,平均粒径0.8μm,屈折率:1.49)を、オリゴマー防止層形成材料の活性エネルギー線硬化型化合物の固形分100重量部あたり、0.1重量部混合した。この混合物に固形分濃度が7重量%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈して、オリゴマー防止層形成材料を調製した。
【0098】
実施例1において、オリゴマー防止層の形成にあたり、オリゴマー防止層の形成にあたり上記で調製したオリゴマー防止層形成材料を用いたこと、オリゴマー防止層の厚さを表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、オリゴマー防止層を有するハードコートフィルムを得た。また、当該ハードコートフィルムを用いて、実施例1と同様にして、粘着剤層付きハードコートフィルムを用いて、実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。
【0099】
比較例2
実施例1において、オリゴマー防止層の形成を、オリゴマー防止層形成材料として、シロキサンオリゴマー溶液(コロコートN103X,コルコート社製,屈折率1.45)を塗工して塗工層を形成した後、145℃で1分間加熱することにより行なったこと、オリゴマー防止層の厚さを100nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、オリゴマー防止層を有するハードコートフィルムを得た。また、当該ハードコートフィルムを用いて、実施例1と同様にして、粘着剤層付きハードコートフィルムを用いて、実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。
【0100】
比較例3
実施例1において、オリゴマー防止層の形成にあたり、オリゴマー防止層形成材料として、アクリル・ウレタン系樹脂(大日本インキ化学(株)製のユニディック17−806,屈折率1.53)100重量部に、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガキュア127」)5重量部を加え、5重量%の濃度に希釈してなるトルエン溶液を用いたこと、オリゴマー防止層の厚さを200nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、オリゴマー防止層を有するハードコートフィルムを得た。また、当該ハードコートフィルムを用いて、実施例1と同様にして、粘着剤層付きハードコートフィルムを用いて、実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。
【0101】
比較例4
実施例1において、オリゴマー防止層の形成にあたり、オリゴマー防止層形成材料として、アクリル・ウレタン系樹脂(大日本インキ化学(株)製のユニディック17−806,屈折率1.53)100重量部に、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガキュア127」)5重量部を加え、5重量%の濃度に希釈してなるトルエン溶液を用いたこと、オリゴマー防止層の厚さを1000nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、オリゴマー防止層を有するハードコートフィルムを得た。また、当該ハードコートフィルムを用いて、実施例1と同様にして、粘着剤層付きハードコートフィルムを用いて、実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。
【0102】
実施例および比較例で得られた、オリゴマー防止層を有するハードコートフィルムおよび粘着剤層付きハードコートフィルムについて、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
<屈折率の測定>
オリゴマー防止層および粘着剤層の屈折率は、屈折率計(商品名:DR−M2/1550)を用い、中間液としてモノブロモナフタレンを選択し、オリゴマー防止層および粘着剤層の測定面に対して測定光を入射させるようにして、前記装置に示される規定の測定方法により測定を行った。第二粒子の屈折率は、粒子をスライドガラス上に載せ、屈折率標準液を前記粒子上に滴下し、カバーガラスを被せることにより試料を作製した。作製した試料を顕微鏡で観察し、粒子の輪郭が屈折率標準液との界面で最も見え難くなる屈折率標準液の屈折率を第二粒子の屈折率とした。硬化型化合物および前記無機酸化物粒子の平均屈折率は第二粒子を含有していないオリゴマー防止層の屈折率に該当する。
【0104】
<オリゴマー防止層と粘着剤層と間の投錨力>
片面にインジウムスズ酸化物の蒸着処理が施されているポリエチレンテレフタレートフィルム(125テトライトOES,尾池工業(株)製)のその反対面(インジウムスズ酸化物の蒸着処理の施されていない面)に、25mm幅に裁断した粘着剤層付きハードコートフィルムの粘着剤層側を、2kgローラーで1往復して圧着してサンプルを作成した。その後、サンプルを23℃で1時間養生後に、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層ごと180度方向に300/分で引き剥がす際の接着強度(N/25mm)を測定した。
【0105】
<オリゴマー防止性>
粘着剤層付きハードコートフィルムを150℃で1時間の環境下に保存し、保存前後のヘイズ値を測定し、これらのヘイズ値の差(ΔH)を算出し、下記基準で評価した。ヘイズは、25℃の雰囲気下で、(株)村上色彩技術研究所社製の「HAZEMETER HM−150型」を用いて、JIS K−7136に準じて、へイズ値を測定した。
○:ΔH≦0.3
△:0.3<ΔH≦1.0
×:1.0<ΔH
【0106】
<耐久性:加湿密着性>
粘着剤層付きハードコートフィルムの粘着剤層を、ガラス板に貼り合せ、40℃で92%R.H.の加湿環境下に120時間保存した。その後、室温条件(23℃,55%R.H.)に取り出して放置した後、JIS K 5400に準拠して、碁盤目剥離試験を行い、下記基準で評価した。
○:枠内、枠外ともに剥がれがない。
×:枠内、枠外のいずれかで剥がれがある。
【0107】
<オリゴマー防止層の干渉縞>
粘着剤層付きハードコートフィルムの粘着剤層を、黒アクリル板に貼り合せ、暗室内で三波長蛍光管下において、オリゴマー防止層に起因する干渉縞を目視により観察し、下記基準で評価した。
○:オリゴマー防止層起因の概観に影響する干渉縞が無い。
×:オリゴマー防止層起因の概観に影響する干渉縞がある。
【0108】
<オリゴマー防止層表面の耐擦傷性>
オリゴマー防止層を有するハードコートフィルムのオリゴマー防止層に、スチールウールに250g/25mmφの荷重をかけ、オリゴマー防止層表面を10cmの長さで10往復した後、オリゴマー防止層表面の状態を目視により観察し下記基準で評価した。
○:傷がない。
△:全面に薄い傷が確認できる。
×:全面に著しい傷が確認できる。
【0109】
<耐ブロッキング性>
オリゴマー防止層を有するハードコートフィルムを、5cm×15cmの長方形に切断したサンプルをそれぞれ2枚用意した。次いで、前記サンプル2枚をガラス板2枚の間に挟んだ。この際、2枚のサンプルは、オリゴマー防止層とハードコート層がそれぞれ向き合うように配置した。この状態で30g/cmの圧力を掛けながら24時間放置した。その後、サンプルの全体の面積に対する密着面積の割合を目視により観察し下記基準で評価した。
○:密着面積が、透明樹脂フィルム上に形成されたハードコート層全体の面積の5%以下である。
×:密着面積が、透明樹脂フィルム上に形成されたハードコート層全体の面積の5%を超えている。
【0110】
【表1】

【0111】
表1に示すように、実施例の粘着剤層付きハードコートフィルムのオリゴマー防止層は、活性エネルギー線硬化型化合物および無機酸化物粒子を含有する組成物の硬化層であり、かつ、当該オリゴマー防止層と前記粘着剤層との屈折率差が0.04以下に制御されていることから、オリゴマー防止層を薄型化した場合においても、オリゴマー防止層に要求される、オリゴマー防止性、耐擦傷性、密着性を満足しながら、干渉縞の発生を抑えられることが分かる。一方、比較例1のオリゴマー防止層は、厚さが薄すぎるため、オリゴマー防止性、耐擦傷性を満足しない。比較例2のオリゴマー防止層は、粘着剤層との屈折率差が0.04以下に制御されているが、無機系硬化型化合物により形成されており、また厚さが薄すぎるため、加湿密着性、干渉縞の抑制、耐擦傷性を満足しない。比較例3、4のオリゴマー防止層は、粘着剤層との屈折率差が0.04以下に制御されていないため干渉縞を抑制できていない。
【符号の説明】
【0112】
1 粘着剤層付き樹脂フィルム
10 第一透明樹脂フィルム
11 オリゴマー防止層
12 機能層(ハードコート層)
13 粘着剤層
2 積層フィルム
20 第二透明樹脂フィルム
21 アンダーコート層
22 透明導電性膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一透明樹脂フィルム、オリゴマー防止層および粘着剤層がこの順に積層されている粘着剤層付き樹脂フィルムであって、
前記オリゴマー防止層は、硬化型化合物および無機酸化物粒子を含有する組成物を硬化することにより形成された硬化層であり、
前記オリゴマー防止層の厚さは120nm以上であり、
前記オリゴマー防止層と前記粘着剤層との屈折率差が0.04以下であり、かつ、
前記オリゴマー防止層と前記粘着剤層と間の投錨力が1N/25mm以上あることを特徴とする粘着剤層付き樹脂フィルム。
【請求項2】
前記無機酸化物粒子が、無機酸化物粒子に重合性不飽和基を含む有機化合物を結合させてなる粒子であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤層付き樹脂フィルム。
【請求項3】
前記無機酸化物粒子が、シリカ粒子であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤層付き樹脂フィルム。
【請求項4】
前記オリゴマー防止層の厚みが、1μm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤層付き樹脂フィルム。
【請求項5】
第一透明樹脂フィルムにおいてオリゴマー防止層が設けられていない側に、さらに機能層が積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤層付き樹脂フィルム。
【請求項6】
前記機能層が、ハードコート層を含むことを特徴とする請求項5記載の粘着剤層付き樹脂フィルム。
【請求項7】
前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤層であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤層付き樹脂フィルム。
【請求項8】
前記オリゴマー防止層を形成する組成物は、前記硬化型化合物および前記無機酸化物粒子に加えて、無機酸化物粒子以外の平均粒径が300〜2μmの第二粒子を、前記硬化型化合物100重量部に対して、0.01〜10重量部含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤層付き樹脂フィルム。
【請求項9】
前記第二粒子の屈折率と、前記硬化型化合物および前記無機酸化物粒子の平均屈折率との差が0.1以下であることを特徴とする請求項8記載の粘着剤層付き樹脂フィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の粘着剤層付き樹脂フィルムと第二透明樹脂フィルムとが、粘着剤層付き樹脂フィルムの粘着剤層を介して貼り合せられていることを特徴とする積層フィルム。
【請求項11】
前記第二透明樹脂フィルムは、前記粘着剤層に貼り合せない他方の片面に、直接またはアンダーコート層を介して、透明導電性膜を有する透明導電性フィルムであることを特徴とする請求項10記載の積層フィルム。
【請求項12】
請求項11記載の透明導電性フィルムを有する積層フィルムを含有するタッチパネル。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2012−92314(P2012−92314A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210391(P2011−210391)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】