説明

粘着型光学フィルムおよびその製造方法

【課題】特にバックライトの点灯などによる加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れた粘着型光学フィルムおよびその製造方法を提供する。また、上記粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】光学フィルム(16)の片面または両面に粘着剤層(18)が積層されている粘着型光学フィルムであって、前記粘着剤層は、モノマー単位として炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも50重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマー100重量部、および過酸化物0.02〜2重量部含有してなる粘着剤組成物により形成されているものであって、前記粘着剤層の厚みが20μm以上であることを特徴とする粘着型光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムおよびその製造方法に関する。また、本発明は、当該粘着剤層を有する粘着型光学フィルムおよびそれを用いた画像表示装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、携帯電話やパーソナルコンピューターのみならずテレビジョン用途など幅広く用いられ、物量を時々刻々と増加している。これら液晶表示装置などに用いる光学フィルム、たとえば偏光板や位相差板などは、液晶セルに粘着剤を用いて貼り付けられる。これら光学フィルムには、加熱条件下や加湿条件下においても対応できる高い耐久性が要求される。
【0003】
このような光学フィルムに用いられる粘着剤としては、その耐久性や透明性などの利点のためにアクリル系粘着剤が一般的に使用され、適度の凝集力を与えるために架橋処理が施されるのが通常である。このようなアクリル系粘着剤の架橋方法としては、各種架橋剤が選択されて使用されており、(メタ)アクリル系ポリマーの官能基と架橋方法の総説が公表されている(たとえば、非特許文献1を参照)。
【0004】
上記粘着剤の具体的な架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アルデヒド化合物、アミン化合物、金属塩、金属アルコキシド、アンモニウム塩、ヒドラジン化合物などが知られ(たとえば、特許文献1を参照)、グリシジル化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、金属キレートなども知られている(たとえば、特許文献2を参照)。
【0005】
一方、粘着剤の架橋方法として、ゴム系粘着剤およびシリコーン系粘着剤の架橋剤として有機過酸化物が例示されているが、アクリル系粘着剤の架橋剤としては記載されていない(たとえば、非特許文献2参照)。
【0006】
アクリル粘着剤の過酸化物架橋として、アクリル系共重合体と1〜6重量%の範囲の有機過酸化物との加熱反応生成物からなるテープ粘着用組成物が知られている(たとえば、特許文献3を参照)。
【0007】
また、通気性基材にアクリル系粘着剤と60〜100℃では架橋反応が進行しない有機過酸化物0.01〜10重量部を配合したゲル分率40重量%未満の粘着剤層を転写させ、加熱で粘着剤を軟化させ基材に含浸させた後、さらに架橋して通気性の粘着剤を得る方法が開示されている(たとえば、特許文献4を参照)。
【0008】
さらに、オレフィン系ポリマーを側鎖に有するモノマーとアクリレートを共重合したアクリル系ポリマーに、10時間半減期110℃以下の有機過酸化物を用いて架橋することで、オレフィン部も架橋して凝集力を向上させる方法が開示されている(たとえば、特許文献5参照)。
【0009】
しかし、光学フィルムに貼り合わせる粘着剤において、過酸化物による架橋にて特性を安定化し、特に高熱処理による経時劣化を改善させた例は知られていない。
【0010】
【特許文献1】特開平8−199131号公報
【特許文献2】特開2003−49141号公報
【特許文献3】特公昭35−4876号公報
【特許文献4】特開2000−17237号公報
【特許文献5】特開2003−13027号公報
【非特許文献1】粘着ハンドブック(第2版)、粘着テープ工業会編、1995.10.12.第147頁
【非特許文献2】粘着ハンドブック(第2版)、粘着テープ工業会編、1995.10.12.第121頁および第159頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように高い耐久性が要求される光学フィルムであるが、さらにバックライトなどを点灯させて高温の加熱試験をおこなうと、光学フィルムの端部10mm程度の場所に直線的な光抜けが生じ、あたかも窓枠のように光抜けしてしまう不具合が判明した。
【0012】
そこで本発明は、上述の問題に対処すべく、特にバックライトの点灯などによる加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れた粘着型光学フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は、上記粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、下記の粘着型光学フィルムを用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の粘着型光学フィルムは、
光学フィルムの片面または両面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、
前記粘着剤層は、モノマー単位として炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも50重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマー100重量部、および過酸化物0.02〜2重量部含有してなる粘着剤組成物により形成されているものであって、前記粘着剤層の厚みが20μm以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明によると、実施例の結果に示すように、特定のモノマー組成を有する(メタ)アクリル系ポリマーおよび特定量の過酸化物を含む粘着剤組成物を架橋して得られ、その厚みが20μm以上である粘着剤層を有することにより、特にバックライトの点灯などによる加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れた粘着型光学フィルムとなる。
【0017】
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも50重量%含有してなるものである。かかるポリマーを粘着剤組成物のベースポリマーとして用いることにより、粘着性および耐久性をバランスよく並立する粘着剤層を得ることができる。
【0018】
なお、本発明における(メタ)アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマーおよび/またはメタクリル系ポリマーをいう。また(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいう。
【0019】
また、上記(メタ)アクリル系ポリマーがモノマー単位として水酸基含有モノマー0.01〜5重量%含有してなることができる。
【0020】
さらに、本発明においては、上記(メタ)アクリル系ポリマーがイソシアネート基と反応する官能基を有さないものを用いることができる。
【0021】
なお、上記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が100万以上であることが好ましい。
【0022】
また、本発明においては、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、過酸化物0.02〜2重量部含有してなることを特徴とする。
【0023】
さらに、上記粘着剤組成物において、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、さらにイソシアネート系架橋剤0.01〜2重量部含有してなることが好ましい。
【0024】
なお、本発明におけるイソシアネート系架橋剤とは、2以上のイソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤、数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に有するイソシアネート化合物をいう。
【0025】
また、上記粘着剤組成物において、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、さらにシランカップリング剤0.01〜1重量部含有してなることが好ましい。
【0026】
さらに、上記粘着剤層がアンカーコート層を介して光学フィルムに積層されているものを用いることができる。その場合、上記アンカーコート層がポリマーを含有することが好ましい。上記アンカーコート層を設けることにより、光学フィルムと粘着剤層との密着効果をさらに高めることができる。
【0027】
また、上記粘着剤層の厚みが20〜50μmであることが好ましく、25〜40μmであることがより好ましい。
【0028】
さらに、粘着剤層のゲル分率が40〜95重量%であることが好ましい。
【0029】
一方、上記光学フィルムに光学補償フィルムが積層されているものを用いることができる。その場合、上記光学補償フィルムがディスコティック液晶の傾斜配向層を有することが、傾斜配向の制御がよく、また一般的な材料でコストが比較的安価である点からも好ましい。また、上記光学フィルムに液晶ディスプレイ用途の偏光板が積層されているものを用いることができる。
【0030】
また、上記光学フィルムの粘着剤層を形成している面と反対面には、別の粘着剤層やハードコート層、アンチグレア層、低反射層などの加工処理がなされていてもよい。さらに、輝度向上フィルムなどの他の光学フィルムが貼り合わされていてもよい。また、上記フィルムと上記粘着剤層の間には、位相差フィルムなど他の光学フィルムが複数存在していてもよい。
【0031】
さらに、本発明においては、上記光学フィルムのサイズが8インチ以上とすることができる。なおフィルムサイズ表記は縦横比が3:4のときの対角サイズをいうものとする。
【0032】
他方、本発明の粘着型光学フィルムの製造方法は、
光学フィルムの片面または両面に粘着剤組成物からなる層を形成する工程と、前記粘着剤組成物からなる層を過酸化物架橋処理する工程とを含む粘着型光学フィルムの製造方法であって、
前記粘着剤層は、モノマー単位として炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも50重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマー100重量部、および過酸化物0.02〜2重量部含有してなる粘着剤組成物により形成されているものであって、前記粘着剤層の厚みが20μm以上であることを特徴とする。
【0033】
本発明の製造方法を用いることにより、特にバックライトの点灯などによる加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れた粘着型光学フィルムを簡便に得ることができる。
【0034】
なお、本発明において、過酸化物架橋処理とは、過酸化物を熱的または光照射などにより分解してラジカルを発生させてベースポリマーを架橋させる処理のことをいう。また、上記過酸化物架橋処理が上記過酸化物を50重量%以上分解する処理であることが好ましい。
【0035】
さらに、上記製造方法において得られる粘着剤層において、前記粘着剤層のゲル分率が40〜95重量%であることが好ましい。
【0036】
また、本発明の画像表示装置は、上記粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなどであり、特にバックライトの点灯などによる加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0038】
本発明の粘着型光学フィルムは、
光学フィルムの片面または両面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、
前記粘着剤層は、モノマー単位として炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも50重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマー100重量部、および過酸化物0.02〜2重量部含有してなる粘着剤組成物により形成されているものであって、前記粘着剤層の厚みが20μm以上であることを特徴とする。
【0039】
本発明においては、モノマー単位として炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも50重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマーが用いられる。また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は4〜12が好ましく、4〜9のものがより好ましい。また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は直鎖または分岐鎖のいずれも使用できるが、ガラス転移点が低いことから分岐鎖のものが好ましい。
【0040】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、具体的には、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどがあげられる。なかでも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが好適に用いられる。
【0041】
本発明において、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー全体において、50〜99重量%であり、60〜90重量%であることが好ましく、70〜80重量%であることがより好ましい。上記((メタ)アクリル酸アルキルエステルが少なすぎると接着性に乏しくなり好ましくない。
【0042】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーにおいては、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のモノマーとして、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点や剥離性を調整するための重合性モノマーなどを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0043】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられるその他の重合性モノマーとしては、たとえば、カルボキシル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエーテルモノマーなどの接着力向上や架橋化基点として働く官能基を有す成分、ならびに炭素数15以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーなどを適宜用いることができる。これらのモノマー化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
カルボキシル基含有モノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などがあげられる。なかでも、特にアクリル酸、およびメタクリル酸が好ましく用いられる。
【0045】
スルホン酸基含有モノマーとしては、たとえば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などがあげられる。
【0046】
リン酸基含有モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートがあげられる。
【0047】
シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルがあげられる。
【0048】
ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニルピロリドンなどがあげられる。
【0049】
芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレンなどがあげられる。
【0050】
酸無水物基含有モノマーとしては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などがあげられる。
【0051】
水酸基含有モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどがあげられる。
【0052】
アミド基含有モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドンなどがあげられる。
【0053】
アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどがあげられる。
【0054】
イミド基含有モノマーとしては、たとえば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、イタコンイミドなどがあげられる。
【0055】
エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0056】
ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどがあげられる。
【0057】
炭素数1または炭素数15以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0058】
上記その他の重合性モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー全体において、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.3〜8重量%であることがより好ましく、0.5〜5重量%であることがさらに好ましい。
【0059】
なお、上記水酸基含有モノマーを用いる場合には、ヒドロキシアルキル基におけるアルキル基が炭素数2以上である場合が、イソシアネート系架橋剤を用いた場合の反応性が高いため好ましい。水酸基含有モノマーとして、ヒドロキシアルキル基におけるアルキル基が炭素数2以上のものを用いる場合には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が、水酸基含有モノマーのヒドロキシアルキル基におけるアルキル基が炭素数と同数以下のものを用いるのが好ましい。たとえば、水酸基含有モノマーとして、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルを用いる場合には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ブチル(メタ)アクリレートまたはブチル(メタ)アクリレートよりもアルキル基の炭素数の小さいアルキル基を有するものを用いるのが好ましい。
【0060】
特に上記水酸基含有モノマーを用いる場合には、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー全体において、0.01〜4重量%であることが好ましく、0.03〜3重量%であることがより好ましい。
【0061】
水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)の共重合量は、アルキル(メタ)アクリレート(a1)100重量部に対して、0.01〜5重量部である。水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)の共重合量が0.01重量部未満では、イソシアネート架橋剤との架橋点が少なくなり、光学フィルムとの密着性や耐久性の点で好ましくない。一方、5重量部を超える場合には、架橋点が多くなりすぎ、応力緩和性の点で好ましくない。水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)の共重合量は、0.01〜4重量部であるのが好ましく、0.03〜3重量部であるのがより好ましい。また、この場合、イソシアネート系架橋剤と架橋反応する官能基を有さないことが好ましい。
【0062】
さらには、本発明においては、イソシアネート基と反応する官能基を有さない(メタ)アクリル系ポリマーを用いることができる。かかる(メタ)アクリル系ポリマーを用いることにより、(メタ)アクリル系ポリマーの架橋を、過酸化物による熱分解架橋反応のみにより制御し、イソシアネート系架橋剤は(メタ)アクリル系ポリマーの架橋には関与させないものとすることができる。その結果、十分な応力緩和特性を維持しつつ、かつ優れた耐久性を保持するとともに、製造工程面において優れたハンドリング性を保持することができる。
【0063】
この場合、上記の通り、(メタ)アクリル系ポリマーはイソシアネート基と反応する官能基を有しないため、その架橋は過酸化物のみにより行われる。その結果、応力緩和特性を維持できる。一方、イソシアネート系架橋剤は、敢えて、(メタ)アクリル系ポリマーの架橋には作用させないようにし、光学フィルムとの密着性の向上にのみ寄与させている。
【0064】
さらに、上記以外の共重合可能なモノマーとして、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどがあげられる。シラン系モノマーとしては、たとえば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0065】
前記シラン系モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.1〜3重量部であることが好ましく、0.5〜2重量部であることがより好ましい。シラン系モノマーを共重合させることは、耐久性の向上に好ましい。
【0066】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が50万〜300万以上であることが好ましく、100万〜250万であることがより好ましく、120万〜200万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が50万より小さくなると、耐久性に乏しくなる場合がある。一方、作業性の観点より、前記重量平均分子量は300万以下が好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0067】
また、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、上記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)が−20℃以下(通常−100℃以上)、好ましくは−30℃以下であることが望ましい。ガラス転移温度が−20℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく被着体への濡れが不十分となり、層間に発生するフクレの原因となる場合がある。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより上記範囲内に調整することができる。
【0068】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0069】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、たとえば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤として、たとえば、モノマー全量100重量部に対して、アゾビスイソブチロニトリル0.01〜0.2重量部加え、通常、50〜70℃程度で、8〜30時間程度行われる。
【0070】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。
【0071】
本発明に用いられる重合開始剤としては、たとえば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0073】
また、本発明においては、重合において連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、アクリル系ポリマーの分子量を適宜調整することができる。
【0074】
連鎖移動剤としては、たとえば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。
【0075】
これらの連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.01〜0.1重量部程度である。
【0076】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0077】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、たとえば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(旭電化工社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0078】
また、本発明においては、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、過酸化物0.02〜2重量部含有してなることを特徴とする。
【0079】
本発明に用いられる過酸化物としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃〜140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。1分間半減期温度が低すぎると、塗布乾燥する前の保存時に反応が進行し、粘度が高くなり塗布不能となる場合があり、一方、1分間半減期温度が高すぎると、架橋反応時の温度が高くなるため副反応が起こり、また未反応の過酸化物が多く残存して経時での架橋が進行する場合があり、好ましくない。
【0080】
本発明に用いられる過酸化物としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などがあげられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが好ましく用いられる。
【0081】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0082】
前記過酸化物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記過酸化物0.02〜2重量部含有してなることが好ましく、0.04〜1.5重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがさらに好ましい。0.02重量部未満では、架橋形成が不十分となり、耐久性に劣る場合があり、一方、2重量部を越えると、架橋形成が過多となり、接着性に劣る場合がある。
【0083】
上記過酸化物架橋を用いることにより上述の特性を発現する理由の詳細は明らかではないが、以下のように推測している。過酸化物による過酸化物架橋は、まず過酸化物から発生したラジカル(活性種)により、ポリマー骨格の水素引き抜き反応が生じてポリマー骨格にラジカルが発生し、それらポリマー骨格上のラジカルがカップリング等して架橋を形成し、ポリマー骨格全体が架橋構造に取り込まれ、粘着剤全体が均一に架橋されることとなる。その結果、架橋処理後速やかに打ち抜き加工などの加工処理を行っても、切断刃に粘着剤が付着したり、加工後の糊はみだしがないなどの性能が発揮でき、かつ所定の架橋処理することで、経時での架橋反応が起こらないので特性が安定化すると推定している。
【0084】
また、重合開始剤として過酸化物を使用した場合には、重合反応に使用されずに残存した過酸化物を架橋反応に使用することも可能であるが、その場合は残存量を定量し、必要に応じて再添加し、所定の過酸化物量にして使用することができる。
【0085】
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0086】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤組成物を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0087】
さらに、上記粘着剤組成物において、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、さらにイソシアネート系架橋剤0.01〜2重量部含有してなることが好ましい。
【0088】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどがあげられる。
【0089】
より具体的には、たとえば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどをあげることができる。なかでも、光学フィルムとの密着性向上の観点より、キシリレンジイソシアネート(XDI)アダクト系が好ましいものの例としてあげられる。
【0090】
上記イソシアネート系架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記イソシアネート系架橋剤0.01〜2重量部含有してなることが好ましく、0.02〜1.5重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがさらに好ましい。0.01重量部未満では、凝集力が不足する場合があり、一方、2重量部を越えると、密着性はそれだけ向上するが、化強度をコントロールする際のトータルバランス量を考慮したとき、過酸化物架橋を主としたハンドリング性の面で制限が生じてしまう場合がある。
【0091】
上述のイソシアネート系架橋剤を用いることにより上記特性を発現する理由の詳細は明らかではないが、上記(メタ)アクリル系ポリマーを、特定量のイソシアネート系架橋剤および過酸化物により架橋することにより、上記(メタ)アクリル系ポリマーには過酸化物による架橋(過酸化物架橋)と、イソシアネート架橋剤による架橋(イソシアネート架橋)に両方が存在する構造になる。そのため、過酸化物による緩和性に優れる主鎖架橋(過酸化物架橋)と、イソシアネート架橋剤による強固なウレタン結合(イソシアネート架橋)がバランスよく並存するによって、十分な凝集力と粘着剤に加わる応力を緩和できる挙動を示すものと推測される。その結果、特にバックライトの点灯などによる加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れた特性をより確実に発現できるものと推測される。
【0092】
本発明においては、架橋された粘着剤層のゲル分率が、40〜95重量%となるように架橋剤(過酸化物およびイソシアネート系架橋剤)の添加量を調整することが好ましく、45〜90重量%となるように上記架橋剤の添加量を調整することがより好ましく、50〜85重量%となるように上記架橋剤の添加量を調整することがさらに好ましい。ゲル分率が35重量%より小さくなると、凝集力が低下するため耐久性に劣る場合があり、95重量%を超えると、接着性に劣る場合がある。
【0093】
本発明における粘着剤組成物のゲル分率とは、粘着剤層の乾燥重量W(g)を酢酸エチルに浸漬した後、前記粘着剤層の不溶分を酢酸エチル中から取り出し、乾燥後の重量W(g)を測定し、(W/W)×100として計算される値をゲル分率(重量%)とした。
【0094】
より具体的には、たとえば、架橋後の粘着剤層をW(g)(約500mg)採取した。次いで、前記粘着剤層を酢酸エチル中に約23℃下で7日間浸漬し、その後、前記粘着剤層を取り出し、130℃で2時間乾燥し、得られた粘着剤層のW(g)を測定した。このWおよびWを上記の式に当てはめることにより、ゲル分率(重量%)を求めた。
【0095】
所定のゲル分率に調整するためには、過酸化物やイソシアネート系架橋剤の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮する必要がある。
【0096】
架橋処理温度や架橋処理時間の調整は、たとえば、粘着剤組成物に含まれる過酸化物の分解量は50重量%以上になるように設定することが好ましく、60重量%以上になるように設定することがより好ましく、70重量%以上になるように設定することがさらに好ましい。過酸化物の分解量が50重量%より少ないと、粘着剤組成物中に残存する過酸化物の量が多くなり、架橋処理後も経時での架橋反応が起こる場合などがあり、好ましくない。
【0097】
より具体的には、たとえば、架橋処理温度が1分間半減期温度では、1分間で過酸化物の分解量は50重量%であり、2分間で過酸化物の分解量は75重量%であり、1分間以上の架橋処理時間が必要となる。また、たとえば、架橋処理温度における過酸化物の半減期(半減時間)が30秒であれば、30秒以上の架橋処理時間が必要となり、また、たとえば、架橋処理温度における過酸化物の半減期(半減時間)が5分であれば、5分間以上の架橋処理時間が必要となる。
【0098】
このように、使用する過酸化物によって架橋処理温度や架橋処理時間は、過酸化物が一次比例すると仮定して半減期(半減時間)から理論計算により算出することが可能であり、添加量を適宜調節することができる。一方、より高温にするほど、副反応が生じる可能性が高くなることから、架橋処理温度は170℃以下であることが好ましい。
【0099】
また、かかる架橋処理は、粘着剤層の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよい。
【0100】
また、架橋処理時間に関しては、生産性や作業性を考慮して設定することができるが、通常0.2〜20分間程度であり、0.5〜10分間程度であることが好ましい。
【0101】
また、本発明に用いられる粘着剤組成物には接着力、耐久力を上げる目的でシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤としては、公知のものを特に制限なく適宜用いることができる。
【0102】
具体的には、たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのインシアネート基含有シランカップリング剤などがあげられる。このようなシランカップリング剤を使用することは、耐久性の向上に好ましい。
【0103】
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.01〜1重量部含有してなることが好ましく、0.02〜0.6重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜0.3重量部含有してなることがさらに好ましい。0.01重量部未満では、耐久性に劣る場合があり、一方、1重量部を越えると、液晶セル等の光学フィルムへの接着力が増大しすぎてしまう場合がある。
【0104】
さらに本発明に用いられる粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、粘着付与剤、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
【0105】
本発明の粘着型光学フィルムに用いられる粘着剤組成物は、上記のような構成を有するものである。
【0106】
一方、本発明の粘着型光学フィルムに用いられる粘着剤層は、上記のような粘着剤組成物を架橋してなるものである。その際、粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を光学フィルムなどに転写することも可能である。
【0107】
光学フィルム上に粘着剤層を形成する方法は特に問わないが、たとえば、上記粘着剤組成物を剥離処理したセパレーターなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を光学フィルムに転写する方法、または光学フィルムに前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を光学フィルムに形成する方法などにより作製される。また、粘着剤組成物を光学フィルム上に塗布して粘着型光学フィルムなどを作製する際には、光学フィルム上に均一に塗布できるよう、該組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶媒(溶剤)を新たに加えてもよい。
【0108】
本発明において用いられる溶媒としては、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロへキサノン、n−へキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、水などがあげられる。これらの溶剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0109】
また、本発明に用いられる粘着剤層の形成方法としては、粘着シート類の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0110】
また、たとえば、光学フィルム上の片面または両面に上述のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる層を形成する工程と、上記粘着剤組成物からなる層を過酸化物架橋処理するする工程とを含む製造方法を用いることによって本発明に用いる粘着剤層を得ることができる。かかる製造方法を用いることにより、特にバックライトの点灯などによる加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0111】
また、前記粘着剤層の表面にはコロナ処理、プラズマ処理などの易着処理をおこなってもよい。
【0112】
さらに、このような表面に粘着剤が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理した剥離シート(セパレーター、剥離フィルム)で粘着剤層を保護してもよい。
【0113】
セパレーターの構成材料としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0114】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0115】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。
【0116】
前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレーターの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0117】
なお、上記の製造方法において、剥離処理したシートは、そのまま粘着型光学フィルムなどのセパレーターとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0118】
上記粘着剤層は、上記粘着剤組成物を過酸化物にて架橋することにより、これらの特性が塗布、乾燥、架橋、転写の工程を経た後にエージングなどを必要とせず、打ち抜き加工やスリット加工が速やかに行えるという生産性に優れた粘着剤層となる。
【0119】
また、上記粘着剤層において、上記粘着剤層の厚みが20〜50μmであることが好ましく、25〜40μmであることがより好ましく、25〜35μmであることがさらに好ましい。上記の範囲に調製することにより、本発明の粘着型光学フィルムは、特にバックライトの点灯などによる加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れたものとなる。
【0120】
また、本発明の粘着型光学フィルムは、上記の構成を有する粘着剤層を光学フィルムの片面または両面に形成してなるものである。本発明の粘着型光学フィルムは、上記のような作用効果を奏する粘着剤層を備えるため、特にバックライトの点灯などによる加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れたものとなる。
【0121】
光学フィルムとしては、液晶表示装置などの画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。たとえば、光学フィルムとしては偏光板(偏光フィルム)、位相差板(位相差フィルム)、楕円偏光板(楕円偏光フィルム)、反射防止フィルム、輝度向上フィルムなどがあげられるが、なかでも偏光板、位相差板、楕円偏光板を用いる場合、特に上記粘着剤層の応力緩和性が好適に発現するものとなる。偏光板には、偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0122】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フィルムなどがあげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0123】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛などを含んでいてもよいヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴なかでも延伸することができる。
【0124】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。たとえば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0125】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
【0126】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定することができるが、一般には強度や取扱性などの作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。
【0127】
また、保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=(nx−nz)・d(ただし、nxはフィルム平面内の遅相軸方向の屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0128】
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料などからなる保護フィルムを用いてもよい。前記偏光子と保護フィルムとは通常、水系粘着剤などを介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステルなどを例示できる。
【0129】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0130】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、たとえばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性などに優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0131】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止などを目的に施されるものであり、たとえばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、たとえば、平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモンなどからなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋または未架橋のポリマーなどからなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0132】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0133】
また本発明の光学フィルムとしては、たとえば、反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置などの形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で本発明の光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0134】
特に、偏光板にさらに反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板にさらに位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板にさらに視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板にさらに輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0135】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライトなどの光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層などを介して偏光板の片面に金属などからなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0136】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウムなどの反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制することができる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光およびその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制することができる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、たとえば、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式などの蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0137】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板などで被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0138】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラーなどの半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライトなどの内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライトなどの光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0139】
偏光板にさらに位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0140】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青または黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。さらに、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、たとえば、画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0141】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0142】
高分子素材としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、ノルボルネン系樹脂、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これら高分子素材は延伸などにより配向物(延伸フィルム)となる。
【0143】
液晶性ポリマーとしては、たとえば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどがあげられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、たとえば、ネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これら液晶性ポリマーは、たとえば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコールなどの薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化珪素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0144】
位相差板は、たとえば、各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差などの光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0145】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板または反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板などは、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成することができるが、前記の如く予め楕円偏光板などの光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性などに優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させることができる利点がある。
【0146】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、たとえば、位相差板、液晶ポリマーなどの配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマーなどの配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、たとえば、ポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理または/および収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどがあげられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いることができる。
【0147】
また、良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いることができる。
【0148】
ディスコティック液晶化合物を用いる場合、液晶性分子の傾斜配向状態は、その分子構造、配向膜の種類および光学異方性層内に適宜に加えられる添加剤(たとえば、可塑剤、バインダー、界面活性剤)の使用によって制御できる。
【0149】
上記ディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層は、その平均光軸と光学フィルムの法線方向からなす傾斜角度が、5°〜50°の範囲で傾斜配向していることが好ましい。
【0150】
また、上記光学フィルムの上記傾斜角度を5°以上に制御することにより、液晶表示装置等に実装した場合の視野角拡大効果が大きい。一方、上記傾斜角度を50°以下に制御することにより、視野角を上下左右のいずれの方向(4方向)においても視野角が良好となり、方向によって、視野角が良くなったり悪くなったりすることを抑えることができる。かかる観点から、前記傾斜角度は10°〜30°が好ましい。
【0151】
なお、ディスコティック液晶性分子の傾斜配向状態はフィルム面内との距離に伴って変化しない均一な傾斜(チルト)配向でもよく、前記光学材料とフィルム面内との距離に伴って変化していてもよい。
【0152】
上記ディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層には、その表面に三次元屈折率を制御した光学フィルムが配置されていることが、広視野角を実現でき、斜め方向から見た場合の階調反転領域をより効果的に抑えるうえで好ましい。
【0153】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光をさらにその後ろ側に設けられた反射層などを介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部または全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示などに利用することができる光量の増大を図ることにより輝度を向上させることができるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示などに利用することができる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、さらにその後ろ側に設けられた反射層などを介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0154】
輝度向上フィルムと上記反射層などの間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層などに向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層などに向かい、反射層などを介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層などの間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0155】
前記の輝度向上フィルムとしては、たとえば、誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回りまたは右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いることができる。
【0156】
したがって、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を、位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0157】
可視光域などの広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、たとえば、波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、たとえば、1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。したがって、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層または2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0158】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層または3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域などの広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0159】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層または3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。したがって、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0160】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置などの製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業などに優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させることができる利点がある。積層には粘着剤層などの適宜な接着手段を用いることができる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0161】
なお、本発明の粘着型光学フィルムの光学フィルムや粘着剤層などの各層には、たとえば、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などの紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0162】
本発明の粘着型光学フィルムは、液晶表示装置などの各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行うことができる。すなわち、液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着型光学フィルム、および必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じることができる。液晶セルについても、たとえば、TN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いることができる。
【0163】
液晶セルの片側または両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側または両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、たとえば、拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【0164】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、たとえば、トリフェニルアミン誘導体などからなる正孔注入層と、アントラセンなどの蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体などからなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体など、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0165】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0166】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0167】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0168】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0169】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0170】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0171】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0172】
このような光学フィルムは、上述した粘着剤層と貼り合せた場合の投錨力を向上させるため、光学フィルムの表面をコロナ処理、プラズマ処理などの易着処理や下塗り処理を行ってもよい。
【0173】
また、アンカーコート層を設ける場合には、上記光学フィルム上にアンカーコート層を形成した後に、粘着剤層を形成する。
【0174】
たとえば、ポリエチレンイミン水溶液の如きアンカー成分の溶液を、コーティング法、ディッピング法、スプレー法などの塗工法を用いて、塗布、乾燥し、アンカーコート層を形成させる。アンカーコート層の厚みとしては10〜5000nm程度、さらには50〜500nmの範囲にあることが好ましい。
【0175】
アンカーコート層を形成する際に用いるアンカーコート剤としては、たとえば、各種の水溶性の樹脂(水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂など)や水分散性樹脂(エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、(メタ)アクリル系エマルジョンなど)があげられ、さらには親水基を有するポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ならびにイオン高分子錯体なども用いることができる。なかでも、エチレンイミン系樹脂が好ましいものとしてあげることができる。また、特にイソシアネート系架橋剤と良好な反応性を有する官能基を有していることが好ましく、末端に1級アミノ基を有するものがイソシアネート系架橋剤と反応により強固に密着するため好ましく用いられる。
【0176】
エチレンイミン系樹脂としては、ポリエチレンイミンのほかに、アクリル系ポリマーなどのエチレンイミン付加物やポリエチレンイミン付加物などがあげることができる。
【0177】
また、本発明の画像表示装置は、上記粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなどであり、特にバックライトの点灯などによる加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れたものとなる。
【実施例】
【0178】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0179】
<分子量の測定>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・データ処理装置:東ソー社製、GPC−8020
・カラム:東ソー社製、G7000HXL−H+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ;各7.8mmφ×30cm(計90cm)
・流量:0.8ml/min
・注入試料濃度:約0.1重量%
・注入量:100μl
・カラム温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
なお、分子量はポリスチレン換算により算出した。また、分子量10万以下の重量分率(Area%)は、GPC測定結果から上記データ処理装置で算出した。このときモノマー成分は含めなかった。
【0180】
<過酸化物分解量の測定>
熱分解処理後の過酸化物分解量は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定した。具体的には、分解処理前後の粘着剤組成物をそれぞれ約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置した。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、分解処理前後の過酸化物量の減少を過酸化物分解量とした。
・装置:東ソー社製、HPL CCPM/UV8000
・カラム:MACHEREY−NAGEL社製、NUCLEOSIL 7C18(4.6mmφ×250mm)
・流量:1ml/min
・カラム圧力:41kg/cm
・カラム温度:40℃
・溶離液:水/アセトニトリル=30/70
・注入量:10μl
・注入試料濃度:0.01重量%
・検出器:UV検出器(230nm)
【0181】
<ゲル分率の測定>
各実施例・比較例で作製した粘着剤層をWg(約0.1g)取り出し、酢酸エチルに室温(約25℃)下で1週間浸漬した。その後、浸漬処理した粘着剤層(不溶分)を酢酸エチル中から取り出し、130℃で2時間乾燥後の重量Wgを測定し、(W/W)×100として計算される値をゲル分率(重量%)とした。
【0182】
<耐久性(光抜け性)の評価>
実施例、比較例で得られた粘着型偏光板を、厚さ0.7mmの無アルカリガラス板の両面にクロスニコル状態になるように貼着した。次いで、50℃、5atmで15分間オートクレーブ処理を施し、完全に密着させた。当該サンプルを4000cd/mバックライトに載せ、80℃の加熱試験機内で点灯した。その状態で200時間保存した後、図2に示すように暗室内で4000cd/mバックライト上で目視観察し、光抜け性を評価した。なお、評価基準は以下のとおりである。
・窓枠状の光抜けが全く確認できないレベル:◎
・窓枠状の光抜けがほとんど認められないレベル:○
・窓枠状の光抜けがやや目立つが、実用上問題は無いレベル:△
・窓枠状の光抜けが顕著に確認できるレベル(実用上問題がある):×
なお、表1中の併記している数値(時間)は光抜けが顕著に確認できるレベルに達した時間を表す。
【0183】
<(メタ)アクリル系ポリマーの調製>
(アクリル系ポリマー(A))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート99重量部、および重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3重量部を酢酸エチルとともに仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃に保って4間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(A)溶液(固形分濃度:30重量%)を調製した。上記アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は165万であった。
【0184】
(アクリル系ポリマー(B))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート100重量部、および重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3重量部を酢酸エチルとともに仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃に保って4間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(B)溶液(固形分濃度:30重量%)を調製した。上記アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量は165万であった。
【0185】
(アクリル系ポリマー(C))
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート95重量部、アクリル酸5重量部、および重合開始剤としてジベンゾイルパーオキシド0.3重量部を酢酸エチルとともに仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃に保って4間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(C)溶液(固形分濃度:30重量%)を調製した。上記アクリル系ポリマー(C)の重量平均分子量は180万であった。
【0186】
<偏光板の作製>
(偏光子の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを速比の異なるロール間において、30℃で0.3%濃度のヨウ素水溶液中で3倍に延伸した。次いで60℃で4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中で、総延伸倍率6倍まで延伸した。次いで、30℃の1.5%濃度のヨウ化カリウム水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥させて偏光子を得た。
【0187】
(偏光板(a)の作製)
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムの片面に、ディスコチック液晶を配向させたフィルム(富士写真フィルム株式会社製:WV−SA128)をけん化処理した後、ディスコチック液晶が外側になるように上記偏光子の片面に貼り合わせた。上記偏光子の他面には、けん化処理した厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼り合わせて偏光板(a)を作製した。
【0188】
なお、上記WV−SA128は、厚さ:80μm、ディスコティック液晶がトリアセチルセルロースフィルムの表面にコーティングされており、正面位相差:33nm、厚み方向の位相差:160nmであり、傾斜配向している平均光軸の傾斜角度:20°のフィルムであった。
【0189】
〔実施例1〕
(粘着剤溶液の調製)
上記アクリル系ポリマー(A)溶液の固形分100重量部に対して、過酸化物としてジベンゾイルパーオキシド(日本油脂社製、ナイパーBMT40 SV、1分間半減期:130℃)0.2重量部、イソシアネート系架橋剤としてキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井武田ケミカル社製、タケネートD−110N)0.07重量部、およびシランカップリング剤としてオルガノシラン(綜研化学社製、A−100)0.1重量部を配合し、均一に混合撹拌してアクリル系粘着剤溶液(1)を調整した。
【0190】
(粘着型偏光板の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(1)を、シリコーン処理を施したポリエステルフィルムからなるセパレーターの片面に塗布し、155℃で3分間加熱処理をおこない、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層を形成した。ここで、理論計算により算出される過酸化物の分解量は約99重量%であった。なお、粘着剤層のゲル分率は72重量%であった。また、この粘着剤層を60℃に1ヶ月保存してもゲル分率の増加は観察されなかった。
【0191】
次いで、偏光板(a)(日東電工社製、NWF偏光フィルム、ディスコテック液晶の傾斜配向層がトリアセチルセルロースフィルムについていて保護フィルムを兼ねている、フィルムサイズ:8インチ、10インチ、15インチ、なおフィルムサイズ表記は縦横比が3:4のときの対角サイズである)の片面(ディスコテック液晶層側)に上記粘着剤層を形成したセパレーターを移着させ、粘着型偏光板を作製した。
【0192】
〔実施例2〕
(粘着型偏光板の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(1)を、シリコーン処理を施したポリエステルフィルムからなるセパレーターの片面に塗布し、155℃で3分間加熱処理をおこない、乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。なお、粘着剤層のゲル分率は73重量%であった。
【0193】
次いで、偏光板(a)(フィルムサイズ:8インチ、10インチ、15インチ)の片面(ディスコテック液晶層側)に上記粘着剤層を形成したセパレーターを移着させ、粘着型偏光板を作製した。
【0194】
〔実施例3〕
(粘着型偏光板の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(1)を、シリコーン処理を施したポリエステルフィルムからなるセパレーターの片面に塗布し、155℃で3分間加熱処理をおこない、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層を形成した。なお、粘着剤層のゲル分率は72重量%であった。また、この粘着剤層を60℃に1ヶ月保存してもゲル分率の増加は観察されなかった。
【0195】
次いで、偏光板(a)(フィルムサイズ:8インチ、10インチ、15インチ)の片面(ディスコテック液晶層側)に上記粘着剤層を形成したセパレーターを移着させ、粘着型偏光板を作製した。
【0196】
〔実施例4〕
(粘着剤溶液の調製)
上記アクリル系ポリマー(B)溶液の固形分100重量部に対して、過酸化物としてジベンゾイルパーオキシド(日本油脂社製、ナイパーBMT40 SV、1分間半減期:130℃)0.4重量部、およびシランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシノシラン0.1重量部を配合し、均一に混合撹拌してアクリル系粘着剤溶液(2)を調整した。
【0197】
(粘着型偏光板の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(2)を、シリコーン処理を施したポリエステルフィルムからなるセパレーターの片面に塗布し、130℃で3分間加熱処理をおこない、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層を形成した。ここで、理論計算により算出される過酸化物の分解量は約88重量%であった。なお、粘着剤層のゲル分率は71重量%であった。また、この粘着剤層を60℃に1ヶ月保存してもゲル分率の増加は観察されなかった。
【0198】
次いで、偏光板(a)(フィルムサイズ:8インチ、10インチ、15インチ)の片面(ディスコテック液晶層側)に上記粘着剤層を形成したセパレーターを移着させ、粘着型偏光板を作製した。
【0199】
〔実施例5〕
(粘着型偏光板の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(2)を、シリコーン処理を施したポリエステルフィルムからなるセパレーターの片面に塗布し、155℃で3分間加熱処理をおこない、乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。なお、粘着剤層のゲル分率は72重量%であった。また、この粘着剤層を60℃に1ヶ月保存してもゲル分率の増加は観察されなかった。
【0200】
次いで、偏光板(a)(フィルムサイズ:8インチ、10インチ、15インチ)の片面(ディスコテック液晶層側)に上記粘着剤層を形成したセパレーターを移着させ、粘着型偏光板を作製した。
【0201】
〔実施例6〕
(粘着型偏光板の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(2)を、シリコーン処理を施したポリエステルフィルムからなるセパレーターの片面に塗布し、155℃で3分間加熱処理をおこない、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層を形成した。なお、粘着剤層のゲル分率は70重量%であった。また、この粘着剤層を60℃に1ヶ月保存してもゲル分率の増加は観察されなかった。
【0202】
次いで、偏光板(a)(フィルムサイズ:8インチ、10インチ、15インチ)の片面(ディスコテック液晶層側)に上記粘着剤層を形成したセパレーターを移着させ、粘着型偏光板を作製した。
【0203】
〔比較例1〕
(粘着型偏光板の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(1)を、シリコーン処理を施したポリエステルフィルムからなるセパレーターの片面に塗布し、155℃で3分間加熱処理をおこない、乾燥後の厚さが15μmの粘着剤層を形成した。
【0204】
次いで、偏光板(a)(フィルムサイズ:8インチ、10インチ、15インチ)の片面(ディスコテック液晶層側)に上記粘着剤層を形成したセパレーターを移着させ、粘着型偏光板を作製した。
【0205】
〔比較例2〕
(粘着剤溶液の調製)
上記アクリル系ポリマー(C)溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)1.0重量部を配合し、均一に混合撹拌してアクリル系粘着剤溶液(3)を調整した。
【0206】
(粘着型偏光板の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(3)を、シリコーン処理を施したポリエステルフィルムからなるセパレーターの片面に塗布し、155℃で3分間加熱処理をおこない、乾燥後の厚さが15μmの粘着剤層を形成した。なお、粘着剤層のゲル分率は75重量%であった。
【0207】
次いで、偏光板(a)(フィルムサイズ:8インチ、10インチ、15インチ)の片面(ディスコテック液晶層側)に上記粘着剤層を形成したセパレーターを移着させ、粘着型偏光板を作製した。
【0208】
〔比較例3〕
(粘着型偏光板の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(3)を、シリコーン処理を施したポリエステルフィルムからなるセパレーターの片面に塗布し、155℃で3分間加熱処理をおこない、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層を形成した。なお、粘着剤層のゲル分率は75重量%であった。
【0209】
次いで、偏光板(a)(フィルムサイズ:8インチ、10インチ、15インチ)の片面(ディスコテック液晶層側)に上記粘着剤層を形成したセパレーターを移着させ、粘着型偏光板を作製した。
【0210】
〔比較例4〕
(粘着型偏光板の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(3)を、シリコーン処理を施したポリエステルフィルムからなるセパレーターの片面に塗布し、155℃で3分間加熱処理をおこない、乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を形成した。なお、粘着剤層のゲル分率は75重量%であった。
【0211】
次いで、偏光板(a)(フィルムサイズ:8インチ、10インチ、15インチ)の片面(ディスコテック液晶層側)に上記粘着剤層を形成したセパレーターを移着させ、粘着型偏光板を作製した。
【0212】
上記方法にしたがい、作製した積層サンプルの耐久性(光抜け性)の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0213】
【表1】

【0214】
上記表1の結果より、本発明によって作製された粘着型偏光板を用いた場合(実施例1〜6)、いずれの実施例においても、バックライトの点灯による加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れることがわかる。
【0215】
これに対して、本発明の構成を満たさない粘着型偏光板を用いた場合(比較例1〜4)、いずれの比較例においても、バックライトの点灯による加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を十分に抑制できない結果となり、本発明の粘着型偏光板を用いた場合に比較して耐久性に劣ることが明らかとなった。
【0216】
以上により、本発明の粘着型光学フィルムは、特にバックライトの点灯などによる加熱処理という過酷な条件下であっても画像表示部位の劣化を抑制した耐久性に優れたものであることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】本発明の粘着型光学フィルムの断面図の一態様である。
【0218】
【図2】実施例で窓枠状光抜けの評価方法の概略構成図である。
【符号の説明】
【0219】
10 保護フィルム
12 表面処理層
14 偏光板
16 光学フィルム
18 粘着剤層
20 剥離フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの片面または両面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、
前記粘着剤層は、モノマー単位として炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも50重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマー100重量部、および過酸化物0.02〜2重量部含有してなる粘着剤組成物により形成されているものであって、前記粘着剤層の厚みが20μm以上であることを特徴とする粘着型光学フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤組成物が、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、さらにイソシアネート系架橋剤0.01〜2重量部含有してなることを特徴とする請求項1に記載の粘着型光学フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤組成物が、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、さらにシランカップリング剤0.01〜1重量部含有してなることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着型光学フィルム。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系ポリマーがモノマー単位として水酸基含有モノマー0.01〜5重量%含有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系ポリマーがイソシアネート基と反応する官能基を有さないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が100万以上である特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項7】
前記粘着剤層のゲル分率が40〜95重量%である請求項1〜6のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項8】
前記粘着剤層の厚みが25〜40μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項9】
前記光学フィルムに光学補償フィルムが積層されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項10】
前記光学補償フィルムがディスコティック液晶の傾斜配向層を有することを特徴とする請求項9に記載の粘着型光学フィルム。
【請求項11】
前記光学フィルムに偏光板が積層されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項12】
前記光学フィルムのサイズが8インチ以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項13】
光学フィルムの片面または両面に粘着剤組成物からなる層を形成する工程と、前記粘着剤組成物からなる層を過酸化物架橋処理する工程とを含む粘着型光学フィルムの製造方法であって、
前記粘着剤層は、モノマー単位として炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも50重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマー100重量部、および過酸化物0.02〜2重量部含有してなる粘着剤組成物により形成されているものであって、前記粘着剤層の厚みが20μm以上であることを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記粘着剤組成物が、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、さらにイソシアネート系架橋剤0.01〜2重量部含有してなることを特徴とする請求項13に記載の粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記過酸化物架橋処理が前記過酸化物を50重量%以上分解する処理である請求項13または14に記載の粘着剤層の製造方法。
【請求項16】
前記粘着剤層のゲル分率が40〜95重量%である請求項13〜15のいずれかに記載の粘着剤層の製造方法。
【請求項17】
前記光学フィルムに光学補償フィルムが積層されていることを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記光学補償フィルムがディスコティック液晶の傾斜配向層を有することを特徴とする請求項17に記載の粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項19】
請求項1〜12に記載の粘着型光学フィルムが積層されていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−112901(P2007−112901A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305777(P2005−305777)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】