説明

粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法

【課題】本発明は、吸着機構に用いられる粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法に関する。
【解決手段】前記方法は、鋳型にテフロン(登録商標)をコーティングするステップ;テフロン(登録商標)コーティングした鋳型を前処理した吸着パッド上に載せるステップ;粘着性二液型溶液を真空脱泡するステップ;前記二液型溶液を鋳型に注入するステップ;吸着パッド上に載せられた状態で、前記二液型溶液が注入された鋳型を高温乾燥器に入れて、二液型溶液を硬化させるステップ;及び吸着パッドと鋳型とを引き出し、吸着パッドから鋳型を分離するステップを含む。本発明によると、吸着機構の吸着パッドの下面に粘着性軟質樹脂を融着及び硬化させることで、被付着面に対する粘着性軟質樹脂の作用により、吸着機構は強化された吸着力を示し、圧力に変化があるか、吸着パッドが変形されるか、または重い物体が固定される場合にも、吸着機構が被付着面から容易に外れたり滑り落ちたりしない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着機構の吸着パッドに取り付けるために用いられる粘着性軟質樹脂、及び該軟質樹脂を吸着パッドに融着及び硬化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
壁面などに物を固定するために、タイルやガラス面などに取り付けた後、物をかけておく吸着機構が多用されており、このような吸着機構は、最近、車両などでナビゲーション、モニターなどの据置き台を固定するための用途にもその使用が拡大しているのが実状である。
【0003】
しかし、現在、用いられている吸着機構は、吸着機構の内外部の圧力差を用いて吸着力を発揮させるものが大半であり、この場合、温度上昇などによって外部の空気圧が変わるか、または吸着パッドに変形が生じることによって吸着力を失うことになり、これに伴って、吸着機構が被付着面から外れる問題があった。なお、ナビゲーションやモニターなどの多少重い物体を据え置く場合には、吸着力が十分でなく、時間の経過により、吸着機構が被付着面から滑り落ちたり外れたりする問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の問題を解決するために、本出願人は、吸着パッドの下面に粘着性のある物質を取り付けようと試みた。しかし、吸着パッドが弾性のある硬質の樹脂でなめらかな不活性表面を有するため、単に物理的に取り付けられる粘着性物質は簡単に脱落するという問題があり、既存の接着方式では、吸着パッドに粘着性物質が脱落しないように堅く取り付けることが困難であった。すなわち、粘着性物質の粘着力のみでは吸着パッドに対する付着力が不十分であった。本出願人は、これを解決しようと鋭意研究した結果、イソシアネートを希釈した溶液で吸着パッドを前処理した後、粘着性物質を配置して一定温度の高温乾燥器で硬化させることにより、吸着パッドに粘着性物質が堅く融着、結合するという事実を見出し、本発明を完成した。
【0005】
したがって、本発明は、吸着機構の吸着パッドの下面に取り付けるために用いられる粘着性ウレタン軟質樹脂、及び該軟質樹脂を吸着パッドの下面に融着・硬化させる方法を提供することを目的とする。軟質樹脂は、粘着力を有するウレタン軟質樹脂である。本発明の方法にしたがって粘着性軟質樹脂が融着及び硬化された吸着パッドを有する吸着機構は、真空吸着力と粘着力との相互作用により、強化された吸着力を示し、被付着面からの脱落が防止される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的を達成するために、最も重要なことは、粘着力と耐熱性とが優れた低硬度のウレタン軟質樹脂を製造することである。
【0007】
したがって、本発明の第1目的は、粘着力と耐熱性とが優れた低硬度ウレタン軟質樹脂を提供することである。
【0008】
本発明で用いるウレタン軟質樹脂は、主剤と硬化剤とで構成されるが、主剤の組成は、両末端がヒドロキシル基である第1のポリオール化合物60〜90重量部、官能基が3つである第2のポリオール化合物10〜30重量部、硬化剤との反応を促進する触媒化合物0.1〜1.0重量部、耐熱性を向上する酸化防止剤0.2〜1重量部、紫外線による老化を抑制する紫外線安定剤0.1〜1.0重量部、及びその他の添加剤で構成される。さらに、硬化剤は、イソシアネートプレポリマーであり、その組成は、官能基が2つまたはそれ以上であるポリイソシアネート化合物20〜40重量部及び分子量2000〜4000であるポリオール50〜70重量部で構成され、NCO基の含量は、3〜10重量%であることが好ましい。主剤と硬化剤とは、1:1.0〜1:2のモル比で配合されていることが好ましい。
【0009】
前記で得られたウレタン軟質樹脂をディスペンサ、鋳型及び高温乾燥器を用いて吸着パッドの下面に融着及び硬化させると、所望の吸着パッドを得ることができる。
【0010】
したがって、本発明の第2目的は、鋳型及び高温乾燥器を用いて、吸着パッドの下面に粘着性ゲルを融着及び硬化させる方法を提供することである。
【0011】
本発明は、鋳型及び高温乾燥器を用いて、吸着パッドの下面に粘着性軟質樹脂を融着及び硬化させるため、複数の鋳型によって同時に大量生産が可能であり、硬化時間が短縮されて製造時間が短縮される。
【0012】
さらに、本発明は、高温乾燥器を用いて高温で乾燥を行うことにより、吸着パッドと粘着性軟質樹脂とが化学反応によって融着及び結合する。したがって、吸着パッドの表面の性質によって、粘着性軟質樹脂が単に物理的接着方式では堅く取り付けられなかった問題が解決された。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、吸着機構の吸着パッドの下面に粘着性軟質樹脂を堅く融着して硬化させることができる。したがって、本発明の方法によって製造された吸着パッドを有する吸着機構は、真空吸着力と粘着性軟質樹脂との相互作用により、強化された吸着力を示し、圧力の変化があるか、吸着パッドが変形されるか、重い物体が固定される場合にも、吸着機構が被付着面から簡単に外れたり滑り落ちたりしない。したがって、本発明の方法によって粘着性軟質樹脂が融着及び硬化された吸着パッドを有する吸着機構は、車両のガラス面またはダッシュボードなどにナビゲーションやモニターなどの据置き台を固定するための吸着機構として効果的に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、吸着パッドに粘着性軟質樹脂を融着及び硬化させる吸着パッドの製造方法を提供し、前記製造方法は、
鋳型にテフロン(登録商標)をコーティングするステップ;
前処理した吸着パッド上に前記鋳型を載せるステップ;
粘着性二液型溶液を真空脱泡するステップ;
前記二液型溶液を鋳型に注入するステップ;
吸着パッド上に載せられた状態で、前記二液型溶液が注入された鋳型を高温乾燥器に入れて、二液型溶液を硬化させるステップ;及び
吸着パッドと鋳型とを引き出し、吸着パッドから鋳型を分離するステップ
を含む。
【0015】
さらに、前記方法において、吸着パッドは、イソシアネート(NCO反応基を有する)希釈溶液で前処理することが好ましく、高温乾燥器の温度は、40℃乃至80℃であることが好ましい。
【0016】
さらに、具体例において、粘着性二液型樹脂は、ポリウレタンからなる熱硬化性二液型樹脂であり、硬度が20(ショアA型)以下であることが好ましい。
【0017】
他の具体例において、前記方法で用いられる粘着性二液型樹脂の主剤は、分子量が2000〜3000であるポリプロピレングリコールジオール化合物と分子量が3000〜6000であるトリオール化合物からなることが好ましい。
【0018】
さらに他の具体例において、前記方法で用いられる粘着性樹脂の主剤は、分子量が2000〜3000であるポリプロピレングリコールジオール化合物と分子量が3000〜6000であるトリオール化合物にエチレンオキサイドが30〜60重量%付加されることが好ましい。
【0019】
他の具体例において、粘着性二液型溶液の主剤は、吸着パッドの主成分と同一であることが好ましい。
【0020】
他の具体例において、粘着性二液型溶液は、低硬度粘着性ウレタン樹脂、硬化剤及び可塑剤からなることが好ましい。
【0021】
さらに他の具体例において、粘着性二液型溶液の主剤は、両末端がヒドロキシル基である第1のポリオール化合物60〜90重量部、官能基が3つである第2のポリオール化合物10〜30重量部、硬化剤との反応を促進する触媒化合物0.1〜1.0重量部、耐熱性を向上する酸化防止剤0.2〜1重量部、紫外線による老化を抑制する紫外線安定剤0.1〜1.0重量部、及びその他の添加剤で構成されることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明の二液型溶液の硬化剤は、官能基が2つまたはそれ以上であるポリイソシアネート化合物20〜40重量部及び分子量2000〜4000であるポリオール50〜70重量部で構成され、NCO基の含量が3〜10重量%のイソシアネートプレポリマーであることが好ましい。主剤と硬化剤とは、1:1.0〜1:2のモル比で配合されていることが好ましい。
【0023】
本発明において、吸着パッドの下面に粘着性軟質樹脂を効果的に取り付けるために、好ましくはNCO反応基を有するイソシアネート希釈溶液で吸着パッドを前処理した後、特定の組成の粘着性軟質樹脂溶液を配置し、高温乾燥器で軟質樹脂溶液を硬化させることを特徴とする。
【0024】
吸着パッドは、通常、射出成形によって生産され、このように射出成形によって吸着パッドを生産する場合、射出成形工程で粘着性軟質樹脂を吸着パッドに一体化して製造することは実際に不可能であった。粘着性軟質樹脂を吸着パッドに取り付けるための一方法としては、追加ステップで、粘着性軟質樹脂溶液をそれ自体の接着力によって、または接着剤を用いて吸着パッドに取り付けることが考えられる。しかし、これは単に物理的な取り付けに過ぎないため、付着力が弱く、簡単に脱落するという問題が必ず発生する。通常、吸着パッドは、硬質の樹脂でなめらかな不活性表面を有するため、物理的な取り付けのみによっては接着力に限界があるためである。通常、常温で軟質樹脂溶液を硬化させる場合には、表面と軟質樹脂との間に物理的な取り付けのみが生じるため、この問題を解決することができなかった。
【0025】
本発明では、吸着パッドを好ましくはNCO反応基を有するイソシアネート希釈溶液で前処理した後、粘着性軟質樹脂になる二液型溶液を配置し、該吸着パッドを一定温度の高温乾燥器に入れて硬化させるため、二液型軟質樹脂溶液を吸着パッドと融着させながら硬化させることができる。これは単に物理的な取り付けでなく、吸着パッドと二液型溶液との間の化学反応によって起こる結合と考えられる。このような現象は常温硬化では起こらず、また温度が適正な範囲から外れると、硬質の吸着パッドが劣化することになるため、適正な温度で硬化させることが重要である。
【0026】
本発明によると、吸着パッド上に粘着性軟質樹脂が融着及び硬化されて、強い結合力で取り付けられていることが可能である。本発明において、粘着性軟質樹脂は、主に粘着力を示す高分子化合物で構成された二液型溶液を軟質樹脂の形態で硬化させたものである。該粘着性軟質樹脂は、被付着面に対して粘着力を示す。したがって、粘着性軟質樹脂が融着及び硬化されて取り付けられた吸着パッドを吸着機構の吸盤として用いた場合に、真空吸着力と粘着性軟質樹脂との相互作用により、被付着面に対する強い吸着力を期待することができる。なお、吸着パッドに形成しようとする粘着性軟質樹脂の形に沿って鋳型を製造して用いればよい。
【0027】
以下、吸着パッドに粘着性軟質樹脂を融着及び硬化させる方法を詳細に説明する。
【0028】
本発明は、吸着パッドの下面に軟質樹脂を融着及び硬化させる方法に関する。本発明において、「吸着パッドの下面」とは吸着パッドの壁面またはガラス面などに取り付けられる面をいい、「軟質樹脂」とは粘着性高分子化合物からなる二液型溶液が硬化されたものをいう。粘着性軟質樹脂は、吸着パッドの下面に融着及び硬化されて取り付けられる。
【0029】
本発明の方法の第1ステップでは、鋳型にテフロン(登録商標)をコーティングする。
【0030】
本発明においては、二液型溶液を吸着パッドの下面に融着及び硬化させるために鋳型を用いることを特徴とする。鋳型の形は、吸着パッドの形によって変わる。
【0031】
通常、吸着パッドが円形である場合、鋳型は好ましくは環状を有する。具体的に、本発明において、鋳型は高さと幅を有する中空の管状である。鋳型の上面と下面のいずれか一面に、鋳型の内周部に沿って溝が設けられていることもあるが、これは鋳型と吸着パッドとをよく噛み合わせるように機能する。溝は、内周部全体にまたがっていてもよく、一部分にまたがっていてもよい。
【0032】
鋳型の形によって吸着パッドに融着される粘着性軟質樹脂の形が決まる。
【0033】
なお、鋳型の形状及び寸法は、吸着パッドの形状及び大きさにより変わり、必要に応じて、様々な形に変更して用いられることは明らかである。
【0034】
上述した鋳型にテフロン(登録商標)をコーティングする。鋳型にテフロン(登録商標)をコーティングするのは、硬化後の粘着性軟質樹脂の分離を容易にするためである。本発明の第1ステップは、鋳型にテフロン(登録商標)をコーティングすることである。
【0035】
本発明の方法の第2ステップでは、イソシアネートを希釈した溶液で吸着パッドを前処理した後、前処理した吸着パッド上に鋳型を配置する。
【0036】
吸着パッドは、吸着機構で壁面やガラス面などに取り付ける吸盤として用いられるパッドであって、弾性のある高分子化合物を用いて吸着パッドとして成形されたものであり得る。成形された吸着パッドは硬質の樹脂である。吸着パッドをイソシアネートを希釈した溶液で前処理し、その上に鋳型を配置する。
【0037】
本発明の方法の第3ステップでは、二液型溶液を真空脱泡する。
【0038】
本発明において、二液型溶液は、硬化によって粘着性軟質樹脂を形成する溶液をいう。二液型溶液は、主剤、硬化剤及び可塑剤からなる。二液型溶液の主剤としては、粘着性を有する高分子化合物が用いられ、硬化剤及び可塑剤は、高分子化合物の硬化に通常に用いられるものが使用され得る。さらに、硬化された粘着性軟質樹脂は、吸着パッドより軟質でなければならない。
【0039】
本発明において、好ましくは、二液型溶液すなわち粘着性軟質樹脂溶液は、吸着パッドの主成分と同じ主成分を有することもできる。吸着パッドを形成する弾性高分子化合物は、通常に粘着性を有し、硬化剤及び可塑剤の量によって粘着性と硬度とが決まる。吸着パッドをイソシアネートを希釈した溶液で前処理すると、高温乾燥器で二液型溶液が吸着パッドの下面に融着及び硬化される際に、二液型溶液の主剤と吸着パッドの主成分とが化学反応によって互いに溶融、結合することを補助して、二液型溶液が吸着パッドにさらに堅く融着されることができる。二液型溶液の例として、ポリウレタンを主成分として製造された吸着パッドにおいて、二液型溶液は主剤として低硬度粘着性ウレタン樹脂、ポリイソシアネート硬化剤、可塑剤を含むことができる。
【0040】
一具体例において、好ましくは、粘着性二液型樹脂は、ポリウレタンからなる熱硬化性二液型樹脂であり、硬度が20(ショアA型)以下のものである。他の具体例において、粘着性二液型樹脂の主剤は、分子量が2000〜3000であるポリプロピレングリコールジオール化合物と分子量が3000〜6000であるトリオール化合物からなる。さらに他の具体例において、粘着性樹脂の主剤は、分子量が2000〜3000であるポリプロピレングリコールジオール化合物と分子量が3000〜6000であるトリオール化合物にエチレンオキサイドが30〜60重量%付加されたものである。さらなる具体例において、粘着性二液型溶液の主剤は、好ましくは、両末端がヒドロキシル基である第1のポリオール化合物60〜90重量部、官能基が3つである第2のポリオール化合物10〜30重量部、硬化剤との反応を促進する触媒化合物0.1〜1.0重量部、耐熱性を向上する酸化防止剤0.2〜1重量部、紫外線による老化を抑制する紫外線安定剤0.1〜1.0重量部、及びその他の添加剤で構成される。さらに、本発明の二液型溶液の硬化剤は、好ましくは、官能基が2つまたはそれ以上であるポリイソシアネート化合物20〜40重量部及び分子量2000〜4000であるポリオール50〜70重量部で構成され、NCO基の含量が3〜10重量%のイソシアネートプレポリマーである。主剤と硬化剤とは、好ましくは、1:1.0〜1:2のモル比で配合されている。
【0041】
さらに、第3ステップでは、二液型溶液を真空脱泡した後、鋳型に注入するが、これによって鋳型に二液型溶液を注入する際に空気が流入することを遮断することができる。
【0042】
本発明の方法の第4ステップでは、二液型溶液を鋳型に注入する。
【0043】
具体的には、吸着パッド上に配置された鋳型の間に二液型溶液を注入する。
【0044】
本発明の方法の第5ステップでは、吸着パッド上に載せられた状態で、二液型溶液が注入された鋳型を高温乾燥器に入れて、二液型溶液を硬化させる。
【0045】
本発明では、二液型溶液の硬化のために高温乾燥器を用いる。具体的に、鋳型内の二液型溶液を40℃乃至80℃の高温乾燥器で硬化させる。温度が40℃未満であると、吸着パッドと二液型溶液との融着が十分でなく、温度が80℃を超過すると、吸着パッドが劣化し、形状や物性が変わる虞がある。本発明では、このような高温乾燥器硬化により、吸着パッドと二液型溶液とが接触している界面で化学反応が起こり、二液型溶液が吸着パッドに融着しながら硬化されることになる。したがって、吸着パッドに二液型溶液が強く融着、結合され、簡単に脱落することがなくなる。
【0046】
なお、高温乾燥器を用いることにより、常温で軟質樹脂溶液すなわち二液型溶液を硬化させた場合より、硬化時間が非常に短縮される。常温硬化時には、軟質樹脂溶液の硬化に、通常、約48時間がかかったが、高温乾燥器では、30分以内、好ましくは、3分乃至30分の硬化時間で粘着性軟質樹脂の硬化が完了した。
【0047】
最後に、本発明の第6ステップでは、高温乾燥器から吸着パッドと鋳型とを引き出し、吸着パッドから鋳型を分離する。これによって、吸着パッドの下面の外周部に粘着性軟質樹脂が形成される。該粘着性軟質樹脂は、吸着パッドに対する結合力が優れて簡単に脱落することがなく、被付着面に対する粘着力も非常に優れている。さらに、このような優れた粘着力を有しながらも、被付着面には粘着跡などが残らない長所がある。
【0048】
従来は、吸着パッドの射出成形時に粘着性軟質樹脂を吸着パッドに一体化して取り付けることが不可能であり、追加ステップで接着方式で取り付ける場合、付着力が弱かった。しかし、本発明では、吸着パッドをイソシアネート希釈溶液で前処理した後、特定の組成の粘着性樹脂溶液を配置し、高温乾燥器で乾燥することにより、吸着パッドに粘着性軟質樹脂が堅く取り付けられることが可能になった。さらに、粘着性軟質樹脂溶液を高温乾燥器で硬化させることにより、吸着パッドと粘着性軟質樹脂溶液とが界面で融着しながら硬化されるため、吸着パッドに粘着性軟質樹脂が化学的に結合して簡単に脱落することがない。したがって、本発明の方法により、粘着性軟質樹脂が融着及び硬化された吸着パッドを吸着機構に用いると、重い物体を据え置く場合にも、粘着性軟質樹脂と吸着パッドとが分離されることなく、効果的に用いることができ、真空吸着力と粘着力との相互作用により、吸着機構の被付着面に対する吸着力も強化する効果がある。
【0049】
本発明の方法によって製造された粘着性軟質樹脂が融着、硬化された吸着パッドを用いた吸着機構により、自動車のダッシュボードや凹凸のあるタイルなどに両面テープやネジで固定した部分を、このような補助手段がなくても粘着力及び真空吸着力のみによって効果的に取り付けることができる。さらに、本発明の方法によって製造された下面に粘着性軟質樹脂が融着、硬化された吸着パッドは、被付着面に跡を残さず、粘着性軟質樹脂の元の状態を維持する。したがって、本発明の方法によって製造された下面に粘着性軟質樹脂が融着、硬化された吸着パッドは、被付着面に対する傷や跡を残すことがなく、再使用が可能である。
【0050】
さらに、本発明では、鋳型を複数用いることにより、複数の吸着パッドに粘着性軟質樹脂を同時に取り付けることが可能であり、これによって粘着性軟質樹脂が取り付けられた吸着パッドを大量生産することも可能である。
【0051】
さらに、本発明の方法によっては、粘着性軟質樹脂に硬化される二液型溶液を真空脱泡した後、注入することにより、溶液注入時に空気が流入することがないため、硬化後の見掛けの不良のない高級製品と認識されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空吸着力と粘着力とを結合することで、時間の経過後、吸着パッドが変形されて吸着力が低下しても、粘着力によって維持されるようにした、粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法であって、
鋳型にテフロン(登録商標)をコーティングするステップ;
前処理した吸着パッド上に前記鋳型を載せるステップ;
粘着性二液型溶液を真空脱泡するステップ;
前記二液型溶液を鋳型に注入するステップ;
吸着パッド上に載せられた状態で、前記二液型溶液が注入された鋳型を高温乾燥器に入れて、二液型溶液を硬化させ、粘着性二液型樹脂を得るステップ;及び
吸着パッドと鋳型とを引き出し、吸着パッドから鋳型を分離するステップを含み、
前記粘着性二液型樹脂の主剤は、分子量が2000〜3000であるポリプロピレングリコールジオール化合物と分子量が3000〜6000であるトリオール化合物とからなることを特徴とする粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項2】
吸着パッドの前処理のための前処理剤は、イソシアネート(反応基NCO)を希釈した溶液であることを特徴とする請求項1に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項3】
吸着パッドは、弾性高分子化合物を基材とすることを特徴とする請求項1に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項4】
粘着性二液型溶液の主剤は、吸着パッドの主成分と同一であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項5】
粘着性二液型溶液は、低硬度粘着性ウレタン樹脂、硬化剤及び可塑剤からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項6】
粘着性二液型樹脂がポリウレタンからなる熱硬化性二液型樹脂であり、硬度が20(ショアA型)以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項7】
粘着性二液型樹脂の主剤は、さらにエチレンオキサイドを30〜60重量%含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項8】
粘着性二液型溶液の主剤は、両末端がヒドロキシル基である第1のポリオール化合物60〜90重量部、官能基が3つである第2のポリオール化合物10〜30重量部、硬化剤との反応を促進する触媒化合物0.1〜1.0重量部、耐熱性を向上する酸化防止剤0.2〜1重量部、紫外線による老化を抑制する紫外線安定剤0.1〜1.0重量部、及び添加剤で構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項9】
粘着性二液型溶液の硬化剤は、官能基が2つまたはそれ以上であるポリイソシアネート化合物20〜40重量部及び分子量2000〜4000であるポリオール50〜70重量部で構成され、NCO基の含量は3〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項10】
粘着性二液型樹脂は、さらに硬化剤を含み、主剤と硬化剤とは1:1.0〜1:2のモル比で配合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項11】
粘着性二液型溶液が吸着パッド上で粘着性軟質樹脂に融着及び硬化されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項12】
高温乾燥器の温度は、40℃乃至80℃であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項13】
硬化時間は、3分乃至30分であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項14】
粘着性二液型溶液を真空脱泡することにより、粘着性軟質樹脂に空気が流入しないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。
【請求項15】
鋳型にテフロン(登録商標)をコーティングすることで、粘着性鋳型から硬化された軟質樹脂が容易に分離され、硬化された樹脂に傷が生じることがないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着性樹脂が取り付けられた吸着パッドの製造方法。

【公表番号】特表2011−526551(P2011−526551A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516112(P2011−516112)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002717
【国際公開番号】WO2010/002108
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(510073198)
【Fターム(参考)】