説明

精神病性障害を診断およびモニターするための方法およびバイオマーカー

精神病性障害またはその素因を診断またはモニターする方法であって、被験体から採取された試料中において、クラステリン前駆体、インターαトリプシン阻害物質、IgM、アポリポタンパク質A2およびα2 H5糖タンパク質から選択されるバイオマーカーのレベルを測定することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神病性障害、とりわけ統合失調症(および双極性障害)を、例えばバイオマーカーを使用して診断する方法またはモニターする方法に関する。さらに、本発明は、臨床スクリーニング、予後評価、治療の評価、薬物スクリーニングおよび薬物開発におけるバイオマーカーの使用にも関する。バイオマーカーおよびそれを用いた方法は、診断に役立てるため、ならびに、精神病性障害の発症および経過を評価するために使用できる。
【背景技術】
【0002】
統合失調症のバイオマーカーの同定は、診断法と治療計画の一体化を可能にする。現在、有効な治療の決定においては著しい遅延があり、これまでのところ、薬物応答の迅速な評価は実施できていない。伝統的に、抗統合失調症療法の多くは、既知の治療アプローチについての数週間から数カ月続く治療試行を必要としてきた。
【0003】
WO2007/045865(同文献の内容は参照により組み込まれる)には、精神病および他の障害とバイオマーカーの必要性とが記載されている。そこに記載されているバイオマーカーとしては、ApoA1(アポリポタンパク質)ペプチドが挙げられる。
【0004】
Yangら(2006)、Anal.Chem、78、3571〜6頁では、統合失調症患者の血漿中のタンパク質レベルの変化が開示されている。結果は、薬物有効性のマーカーに関する。治療患者および非治療患者との間には、見かけ上は差がない。定量的な結果は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/045865
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yangら(2006)、Anal.Chem、78、3571〜6頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
WO2007/045865に記載されたタイプのアプローチを基に、これまでにApoA1がバイオマーカーとして確認されており、他のものは同定されている。本発明の一態様によれば、精神病性障害またはその素因を診断またはモニターする方法は、被験体から採取された試料中に存在する1つまたは複数のバイオマーカーのレベルをモニターすることを含み、このバイオマーカーとしては、下記に記載の表2および3に明示する少なくとも1つが挙げられる。
【0008】
本発明のさらなる態様は、特許請求の範囲に明示してあり、および/または、WO2007/045865中にバイオマーカーについて記載されたものと同じ手順/生成物である。その中には、被験体における統合失調症の治療の有効性をモニターする方法が含まれる。本発明のモニター方法は、精神病性障害の発症、進行、安定化、改善および/または寛解をモニターするために使用できる。
【0009】
本発明の別の態様は、被験体におけるペプチドバイオマーカーの発生を刺激、促進または活性化することができる物質を同定する方法であって、試験物質を被験動物に投与することと、この被験体の試験試料中に存在するペプチドバイオマーカーのレベルを検出および/または定量化することとを含む方法である。本発明のさらなる態様は、統合失調症またはその素因の治療における、および医薬としての、本発明による物質またはリガンドの使用である。この物質は、本発明によれば、統合失調症またはその素因の治療用の医薬の製造において使用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の使用においては、単独または複数のバイオマーカーを、1つまたは複数の場面において、1つまたは複数の試料に関して使用してよいことは理解されよう。例えば、表2および/または表3に示すような1つまたは複数のバイオマーカーの組合せを、バイオマーカーの「パネル」の全部または一部として使用してよい。タンパク質バイオマーカーに言及することがあるが、場合により、そのようなタンパク質を言うときにはその断片が含まれることは理解されよう。
【0011】
本発明による試験では、正常対照中のレベルと比較した場合、試験生体試料中の血漿タンパク質バイオマーカーのレベルが変化しているか、または低いことは、精神病性障害、とりわけ統合失調症、双極性障害またはその素因が存在することを示す。生体試料中、好ましくは全血、血漿または血清の試料中の血漿タンパク質レベルの経時的な低下は、障害の発症または進行、すなわち悪化を示すことがあり、血漿タンパク質レベルの上昇は、障害の改善または寛解を示すことがある。
【0012】
本発明によるモニター方法および診断方法は、障害またはその素因の存在を確認するため、発症および進行を評価することにより障害の経過をモニターするため、または障害の改善もしくは軽減を評価するために有用である。モニター方法および診断方法は、臨床スクリーニング、予後、療法の選択、治療利益の査定を評価するための、すなわち薬物スクリーニングおよび薬物開発のための方法においても有用である。
【0013】
有効な診断およびモニターの方法は、正しい診断を確立し、最も適切な治療を迅速に同定することを可能にし(これにより、有害な薬物副作用を不必要に被ることが減る)、「ダウンタイム(down−time)」および再発率を低下させることにより、予後が改善する可能性を伴う非常に強力な「患者にとっての解決策」となる。
【0014】
治療の有効性をモニターする方法は、ヒト被験体における、および非ヒト動物における(例えば動物モデルにおける)既存の治療および新しい治療の治療効果をモニターするために使用できる。このようなモニター方法は、新しい薬用物質、および物質の組合せについてのスクリーニングに組み込むことができる。
【0015】
ペプチドバイオマーカーレベルの変調は、統合失調症またはその素因の状態の指標として有用である。ペプチドバイオマーカーのレベルの経時的な低下は、障害の発症または進行、すなわち悪化を示し、ペプチドバイオマーカーのレベルの上昇は、障害の改善または寛解を示す。
【0016】
本発明のペプチドバイオマーカーの検出は、臨床試験への参加に先立ち被験体をスクリーニングするために使用できる。このバイオマーカーは、治療応答、不応答、望ましくない副作用プロファイル、服薬遵守の程度および十分な血清薬物レベルの達成を示すための手段となる。このバイオマーカーは、薬物有害応答、全ての向精神薬療法が直面する主要な問題について警告を行うために使用してよい。応答の評価は、投薬量を微調整し、処方される医薬の数を最小限にし、有効な治療に到達するうえでの遅延を軽減し、および薬物有害反応を回避するために使用できることから、バイオマーカーは、個人に合わせた脳療法の開発において有用である。要するに、本発明のバイオマーカーをモニターすることにより、患者の障害および薬理ゲノミクス上のプロファイルにより決定される必要性に適合するように、患者のケアを、正確にその患者に合ったものとすることができる。したがって、このバイオマーカーは、最適な用量を滴定し、ポジティブな治療応答を予測し、重い副作用のリスクが高い患者を同定するために使用できる。
【0017】
バイオマーカーベースの試験は、「新しい」患者の一次評価を提供し、現在の主観的測定を用いては達成されない正確かつ迅速な診断のための客観的測定値を、一定期間で、かつ正確に提供する。
【0018】
さらに、診断用のバイオマーカー試験は、「前駆期」にある家族または患者、すなわち、顕性の統合失調症を発症するリスクの高い人を同定するために有用である。これにより、適切な治療、例えば低用量の抗精神病薬、または防止手段、例えば、ストレスや、違法薬物の使用またはウイルス感染などのリスク因子の管理を開始することが可能になる。このようなアプローチは結果を改善させることがわかっており、障害の顕性発症を防止すると考えられる。
【0019】
バイオマーカーモニター方法、バイオセンサーおよびキットは、再発が、真の破綻または疾患の悪化、患者の服薬遵守の低さまたは薬物乱用によるものであるかを医師が判断できるようにするための、患者モニターツールとしても必須である。薬理学的治療では不十分であると評価されれば、治療を復活させるか、または増やすことができる。真の破綻による疾患については、適切であれば、治療に変化を付けてよい。このバイオマーカーは障害の状態に敏感であるため、薬物療法の影響であるか、または薬物乱用の影響であるかについての指標となる。
【0020】
本発明のバイオマーカーに基づくハイスループットスクリーニング技術、本発明の使用および方法(例えばアレイ形式で構成される)は、有用な可能性のある治療用化合物、例えば、天然化合物、合成化合物(例えばコンビナトリアルライブラリー由来のもの)、ペプチド、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、またはその断片など、バイオマーカーの発現を変調させることができるリガンドを同定するためのバイオマーカーをモニターするのに適している。
【0021】
「バイオマーカー」という用語は、過程、事象または状態の、特徴的な生物学的指標または生物学的に誘導された指標を意味する。ペプチドバイオマーカーは、診断の方法、例えば、臨床スクリーニングおよび予後評価において、ならびに、治療の結果のモニターにおいて、特定の治療処置に最も応答しやすい患者の同定に、ならびに、薬物のスクリーニングおよび開発において、使用できる。バイオマーカーおよびその使用は、新しい薬物治療の同定および薬物治療の新しい標的の発見にとって有益である。
【0022】
本明細書で使用する場合の「服薬未経験患者」という用語は、いかなる統合失調症治療物質を用いた治療も受けた経験のない個体を意味する。好ましい一実施形態では、本発明は、試験試料が、初めて発症した服薬未経験個体である試験被験体のものであり、その試料が、いかなる抗統合失調症療法もその被験体に施されないうちに採取される方法に関する。対照試料は、好ましくは正常個体の試料である。
【0023】
本明細書で使用する場合の「診断」という用語は、統合失調症またはその素因の同定、確認および/または特徴付けを包含する。本明細書で使用する場合の「素因」という用語は、被験体が、現時点では障害を呈さないが、将来的にその障害に罹患しやすいことを意味する。本発明による診断方法は、障害またはその素因の存在を確認するために有用である。診断方法は、臨床スクリーニング、予後、治療の選択、治療利益の査定の評価のため、すなわち薬物スクリーニングおよび薬物開発のための方法においても有用である。
【0024】
本明細書で使用する場合の「精神病性障害」という用語は、精神病がその症状として認識されている障害を指し、この障害としては、神経精神医学的な障害(精神病性うつ病および他の精神病事象)および神経発達的な障害(特に自閉症スペクトル障害)、神経変性的な障害、うつ病、躁病、および、とりわけ統合失調症(妄想型、緊張型、解体型、鑑別不能型および残遺型の統合失調症)および双極性障害が挙げられる。
【0025】
本発明の方法において試験し得る生体試料としては、全血、血清もしくは血漿、尿、唾液、脳脊髄液(CSF)または他の体液(大便、涙液、滑液、痰)、呼気(例えば濃縮呼気としての)、またはその抽出物もしくは精製物、またはその希釈物が挙げられる。生体試料としてはさらに、生きた被験体の、または死後に採取された、組織ホモジネート、組織切片および生検標本も挙げられる。試料は、例えば、適切な場所で、通常の様式で希釈または濃縮および保管して調製できる。
【0026】
本発明によれば、スペクトルを発生させるためには、NMR分光法および質量分析などいくつかの分光学的な手法を使用できる。好ましい方法では、スペクトル分析は、NMR分光法、好ましくはH NMR分光法により実施する。1つまたは複数のスペクトルを発生させてよく、1つは低分子用、別のものは高分子のプロファイル用など、一連のスペクトルを測定し得る。得られたスペクトルは、スペクトル編集手法に供してよい。一次元または二次元のNMR分光法を実施し得る。
【0027】
複雑な生体混合物を試験するためにNMR分光法を使用する利点は、多くの場合、最小限の試料調製で(通常は5〜10% DOを添加するのみで)測定を行うことができる点、および、生体試料全体の詳細な分析プロファイルを得ることができる点である。
【0028】
試料量は少量で、標準的なプローブの場合は典型的に0.3から0.5ml、マイクロプローブの場合はわずか3μlである。単純なNMRスペクトルの取得は、フローインジェクション技術を用いれば迅速かつ効率的である。通常は水のNMR共鳴を抑制する必要がある。
【0029】
高分解能NMR分光法(中でもH NMR)は、とりわけ適切である。H NMR分光法を使用する主な利点は、この方法のスピード(5から10分でスペクトルが得られる)、試料調製の必要性が最小限であること、および、代謝産物の構造タイプにかかわらず、同法は生体液中の全ての代謝産物についての非選択的な検出法となるという事実であり、条件は、代謝産物がNMR実験の検出限界を超えて存在すること、および、代謝産物が非交換性の水素原子を含有することのみである。
【0030】
体液のNMR試験は、理想的には、最大の分散および感度を得ることが可能な最大磁場で実施すべきであり、大部分のH NMR試験は、400MHz以上、例えば600MHzで実施される。
【0031】
通常、H NMRスペクトルを帰属させるには、標準材料の対照スペクトルを用い、および/または、この試料に信頼できる参照標準を標準添加することにより比較を行う。用いられる対照スペクトルは、正常被験体の生体試料のスペクトル分析により発生した正常対照スペクトル、および/または、精神病性障害を有する被験体の生体試料のスペクトル分析により発生した精神病性障害対照スペクトルであってよい。
【0032】
帰属のさらなる確認は、他のNMR法、例えば、二次元(2D)NMR法、とりわけCOSY(相関分光法)、TOCSY(全相関分光法)、HMBC(異核多重結合相関)、HSQC(異核単一量子コヒーレンス)およびHMQC(異核多量子コヒーレンス)などの逆検出異核相関法、2D J分解法(JRES)、スピンエコー法、緩和編集、拡散編集(例えば、1D NMR、および、拡散編集TOCSYなどの2D NMRの両方)、および多量子フィルタリングなどの適用に通常は求められる。
【0033】
スペクトルを正常対照および/または精神病性障害対照のスペクトルと比較することにより、試験スペクトルを、正常プロファイル、精神病性障害プロファイルまたは精神病性障害素因プロファイルを有するものに分類できる。
【0034】
スペクトルの比較は、スペクトル全体または選択されたスペクトル領域について実施してよい。スペクトルの比較は、正常スペクトルプロファイルからの逸脱の原因であるスペクトル領域における変動の評価、および、とりわけ、そのような領域内の1つまたは複数のバイオマーカーにおける変動の評価を含んでよい。
【0035】
血漿などの生体液の1Dおよび2D両方のNMRスペクトルから生化学情報を理解することを制限する要因は、その複雑さである。このような複雑な多パラメーターデータを比較および調査するための最も効率的な様式は、1Dまたは2DのNMRによるメタボノミクス的アプローチを、コンピューターに基づく「パターン認識」(PR)法およびエキスパートシステムと組み合わせて用いることである。
【0036】
メタボノミクス的アプローチの有用性は十分確立されているものの、その潜在能力は未だ完全に活かされてはいない。代謝的変動は微かなものであることが多く、特にデータ(例えばNMRスペクトル)が非常に複雑である場合は、特定の分析物の検出には強力な分析方法が必要である。
【0037】
試験集団のデータ(例えばNMRスペクトル)を分析するメタボノミクス法(多変量統計分析およびパターン認識(PR)の手法、および、場合によりデータフィルタリング手法を用いる)からは、試験試料または被験体を分類するために、および/または診断において引き続き使用し得る正確な数学的モデルが得られる。
【0038】
スペクトルの比較としては、スペクトルの1つまたは複数の計量化学分析を挙げ得る。「計量化学」という用語は、化学的な数値データに対しパターン認識(PR)法および関連の多変量統計アプローチを用いることを説明するために適用される。したがって、比較は、1つまたは複数のパターン認識分析法を含んでよく、この方法は、1つまたは複数の教師あり法(supervised method)および/または教師なし法(unsupervised method)により実施できる。
【0039】
パターン認識(PR)法は、データセットの複雑さを軽減し、科学的仮説を生み出し、および、仮説を検証するために使用できる。一般に、パターン認識アルゴリズムを使用すると、当該系を規定するパラメーターにおけるノイズまたは不規則変動により不明瞭になる可能性のある複雑な系におけるいくつかの非ランダムな挙動の同定、および、方法によっては、解釈が可能になる。さらに、使用するパラメーターの数が非常に多いことがあり、そのため規則性または不規則性の視覚化(ヒトの脳にとっては三次元以下のものであることが最もよい)が難しい場合がある。
【0040】
通常は、測定される記述子の数は3よりはるかに大きく、試料間の任意の類似性または相違性を視覚化するのに、それほど単純な散布図は使用できない。パターン認識法は、例えば、範囲が言語学、フィンガープリンティング、化学および心理学にわたるような、多くの異なるタイプの問題を特徴付けるために広く用いられている。
【0041】
本明細書に記載の方法に関して言えば、パターン認識は、分光データを分析し、それにより試料を分類し、および、一定範囲の観測された測定値に基づきいくつかの従属変数の値を予測するために、多変量統計(パラメトリックおよびノンパラメトリックの両方)を使用することである。2つの主要なアプローチがある。一方の方法群は「教師なし」と呼ばれ、合理的な様式でデータの複雑さを単純に軽減し、ヒトの眼で読み取ることができる表示プロットも生成する。他方のアプローチは「教師あり」と呼ばれ、それにより、既知のクラスまたは結果を有する試料のトレイニングセットを使用して数学的モデルを生成してから、独立の検証用データセットを用いてこれを評価する。
【0042】
教師なし法は、任意の固有のクラスタリングがデータセット内に存在するかどうかを確定するために用いられ、他の独立知識を一切考慮せず、例えば、試料のクラスの事前知識をもたず、試料の特性によって多くの場合は次元を減らすことにより、試料をマッピングする方法から成る。教師なし法の例としては、主成分分析(PCA)、非線形マッピング(NLM)、および、階層的クラスター分析などのクラスタリング法が挙げられる。
【0043】
最も有用で容易に適用される教師なしPR手法の1つは、主成分分析(PCA)である(例えば、Kowalskiら、1986を参照)。主成分(PC)は、適切な重み付け係数を用いた開始変数の線形結合から作り出される新しい変数である。このようなPCの特性は、以下のようなものである:(i)各PCは、他の全てのPCに対し直交性である(無相関である)、および、(ii)第1PCは、データセット(情報量)の分散の最大部分を有し、それに次ぐPCは、対応して、より小さい量の分散を有する。
【0044】
次元縮小手法であるPCAは、K次元における値(記述子ベクトル)によりそれぞれ説明されるm個のオブジェクトまたは試料を取得し、記述子ベクトルの線形結合である一連の固有ベクトルを抽出する。固有ベクトルおよび固有値は、データの共分散行列の対角化により得られる。固有ベクトルは、主成分(PC)と呼ばれる新しい一連の直交プロット軸と考えることができる。データにおける系統的変動の抽出は、データ行列の分散共分散構造の投影およびモデリングにより達成される。主軸は、データにおける最大の変動を説明する単一の固有ベクトルであり、主成分1(PC1)と呼ばれる。それに次ぐPC(固有値の降順によりランク付けされる)は、連続的に、より小さいばらつきを説明する。PCにより説明されていないデータにおける変動は残差分散と呼ばれ、モデルがデータにどれだけよく適合するかを表す。PC上への記述子ベクトルの投影値はスコアとして定められ、これにより試料またはオブジェクト間の関連性が明らかになる。図式表現(「スコアプロット」または固有ベクトル投影)では、類似の記述子ベクトルを有するオブジェクトまたは試料は、集まってクラスターを形成することになる。別の図式表現はローディングプロットと呼ばれ、これはPCを個々の記述子ベクトルに結び付け、PCの解釈に対する各記述子ベクトルの重要性および当該PCにおける記述子ベクトル間の関連性の両方を示す。実際には、ローディング値は単に、元の記述子ベクトルがPCと成す角の余弦である。
【0045】
起点から離れている(ローディング値の高い)記述子ベクトルは解釈にとって重要であるが、このプロット中の起点近くに収まる記述子ベクトルは、PC中に情報をほとんど有していない。したがって、最初の2ないし3個のPCスコアのプロットからは、情報量という点では、それぞれ二次元または三次元におけるデータセットの「最良の」表現が得られる。最初の2つの主成分スコアのプロットであるPC1およびPC2は、二次元におけるデータの最大情報量を備える。そのようなPCマップは、固有のクラスタリング挙動(例えば、メタボノミック応答、ひいては作用機序の類似度に基づく薬物および毒素についての)を視覚化するために使用できる。当然ながら、クラスタリング情報はそれより下位のPC中にあることもあり、これらも調べることができる。
【0046】
別の教師なしパターン認識法である階層的クラスター分析により、ある多次元空間中で互いに「近い」ということから類似であるデータ点のグループ化が可能になる。個々のデータ点は、例えば、NMRスペクトルにおける特定の帰属ピークに対する信号強度であってよい。「類似度行列」Sは、ssij要素で構成される:ssij=1−rij/rijmax’[式中、rijはi点とj点との間の点間距離(例えば、点間のユークリッド距離)であり、rijmaxは全ての点について最大の点間距離である]。
【0047】
最も離れた点の対のsijは0に等しくなるが、そのときrijはrijmaXと等しいためである。逆に、最も距離が近い点の対のsijは最大となり、1に近付く。類似度行列は、最も距離が近い点の対について精査する。点の対が、その分離距離と共に報告されたら、その2点を消し、併合した単一の点で置き換える。その後、この過程を反復して、1つの点を残すのみとなるまで繰り返す。2つのクラスターがどのように結び付くかを決定するには、最近隣法(単連結法としても知られる)、最遠隣法、重心法(重心連結、インクリメンタル(incremental)連結、メジアン連結、群平均連結およびフレキシブル連結の変形を含む)など、いくつかの異なる方法を用いてよい。
【0048】
次に、報告された結合度を樹形図(クラスタリングの視覚化を可能にする、樹木様のチャート)としてプロットし、分離距離の増加に対する(または、同じことであるが、類似度の低下に対する)試料−試料の結合度を示す。樹形図では、枝の長さは多様なクラスター間の距離に比例しているため、1つの試料を隣の試料に連結している枝の長さは、それらの類似性の尺度である。このようにして、類似するデータ点をアルゴリズムを用いて同定し得る。
【0049】
教師あり分析法は、2つ以上の試料クラス間の分離を最適化するために、試料データのトレイニングセット用に与えられたクラス情報を使用する。この手法としては、SIMCA(soft independent modelling of class analogy)や、PLS判別分析(projection to latent discriminant analysis、PLS DA)などの部分最小二乗(PLS)法、k最近傍分析およびニューラルネットワークが挙げられる。ニューラルネットワークは、データをモデル化する非線形法である。データのトレイニングセットは、データの構造を「学習」し、複雑な関数に対処できるアルゴリズムを構築するために使用される。数種のニューラルネットワークが、スペクトル情報から毒性または疾患を予測することに首尾よく適用されている。
【0050】
データを分析するには、一元配置分散分析(ANOVA)などの統計的手法を用いてもよい。
【0051】
2つ以上の場面で試験被験体から採取された生体試料からスペクトルを得られるようにするために、スペクトル分析を含む本発明の方法を実施してよい。2つ以上の場面で試験被験体から採取された生体試料のスペクトルを比較して、異なる場面で採取された試料のスペクトル間の差を同定することができる。方法としては、生体試料中に存在する1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを定量化して、2つ以上の場面で採取された生体試料中に存在する1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを比較するための、2つ以上の場面で試験被験体から採取された生体試料のスペクトルの分析を挙げ得る。
【0052】
本発明の診断およびモニターの方法は、精神病性障害の予後を評価する方法において、精神病性障害に罹患している、罹患の疑いがある、またはその素因のある被験体における、投与された治療物質の有効性をモニターする方法において、および、抗精神病物質または精神病亢進物質を同定する方法において、有用である。そのような方法は、試験被験体から採取された試験生体試料中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを、当該物質の投与前に試験被験体から採取された1つまたは複数の試料中、および/または、当該物質を用いた治療期間における初期段階で試験被験体から採取された1つまたは複数の試料中に存在するレベルと比較することを含んでよい。加えて、これらの方法は、2つ以上の場面で試験被験体から採取された生体試料中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルの変化を検出することを含んでよい。
【0053】
本発明の方法、とりわけスペクトル分析が用いられる方法において、および、とりわけ、生体試料が血液であるか、または血液に由来する(例えば、血漿または血清)場合においては、適当なバイオマーカーは本明細書に掲載のとおりである。
【0054】
本発明による方法は、試験被験体から採取された生体試料中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを、治療の開始前に試験被験体から採取された1つまたは複数の試料中、および/または、治療における初期段階で試験被験体から採取された1つまたは複数の試料中に存在するレベルと比較することを含んでよい。そのような方法は、2つ以上の場面で採取された試料中の1つまたは複数のバイオマーカーの量の変化を検出することを含んでよい。本発明の方法は、抗精神病療法の評価においてとりわけ有用である。
【0055】
本発明による診断の方法またはモニターの方法は、試験被験体から採取された試験生体試料中の1つまたは複数のバイオマーカーを定量化することと、前記試験試料中に存在する1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを1つまたは複数の対照と比較することとを含んでよい。対照は、正常対照および/または精神病性障害対照から選択できる。本発明の方法において使用する対照は、以下から成る群から選択される1つまたは複数の対照であってよい:正常被験体の正常対照試料中に見出されるバイオマーカーのレベル、正常バイオマーカーレベル;正常バイオマーカー範囲、統合失調症、双極性障害、関連の精神病性障害に罹患している被験体か、またはその素因をもつと診断された被験体の試料中のレベル;統合失調症マーカーレベル、双極性障害マーカーレベル、関連の精神病性障害マーカーレベル、統合失調症マーカー範囲、双極性障害マーカー範囲および関連の精神病性障害マーカー範囲。
【0056】
生体試料は、間隔を置きながら、被験体の生涯またはその一部期間にわたって採取できる。適切には、診断またはモニターを受けている被験体からの試料採取間に経過する時間は、3日、5日、1週間、2週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月または12カ月となろう。試料は、抗統合失調症療法または抗双極性障害療法などの抗精神病療法の前、および/またはその期間中、および/またはその後に採取してよい。
【0057】
バイオマーカーのレベルの測定は、患者から採取された生体試料、またはその試料の精製物もしくは抽出物、またはその希釈物中のバイオマーカーの量を同定するのに適した任意の方法により実施できる。試料中に存在するバイオマーカーのレベルの測定としては、試料中に存在するバイオマーカーの濃度を求めることを挙げ得る。そのような定量化は、試料に対して直接、または、その抽出物もしくはその希釈物に対して間接的に実施してよい。本発明の方法では、生体試料(好ましくは、全血、血漿または血清である)中のバイオマーカーの濃度を測定することに加え、試験被験体から採取された異なる生体試料、例えば、CSF、尿、唾液または他の体液(大便、涙液、滑液、痰)、呼気(例えば濃縮呼気としての)、またはその抽出物もしくは精製物、またはその希釈物中でバイオマーカーの濃度を試験してよい。生体試料としてはさらに、生きた被験体の、または死後に採取された、組織ホモジネート、組織切片および生検標本も挙げられる。試料は、例えば、適切な場所で、通常の様式で希釈または濃縮および保管して調製できる。
【0058】
バイオマーカーレベルは、以下から成る群から選択される1つまたは複数の方法により測定できる:NMR(核磁気共鳴)または質量分析(MS)などの分光学的な方法、SELDI(−TOF)、MALDI(−TOF)、1Dゲルベース分析、2Dゲルベース分析、液体クロマトグラフィー(例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)または低圧液体クロマトグラフィー(LPLC))、薄層クロマトグラフィーおよびLC−MSベースの手法。適切なLC MS手法としては、ICAT(登録商標)(Applied Biosystems、CA、USA)、またはiTRAQ(登録商標)(Applied Biosystems、CA、USA)が挙げられる。
【0059】
バイオマーカーの測定は、直接的または間接的な検出方法により実施してよい。バイオマーカーは、酵素、結合受容体タンパク質もしくは輸送タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマーもしくはオリゴヌクレオチド、または、バイオマーカーを特異的に結合させることができる合成による任意の化学受容体もしくは化合物などのリガンド(単数もしくは複数)との相互作用により、直接的または間接的に検出してよい。リガンドは、発光標識、蛍光標識または放射性標識および/または親和性タグなどの検出可能な標識を有していてよい。
【0060】
本明細書で使用する場合の「抗体」という用語は以下を包含するが、これらに限定されない:ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片およびF(ab’)断片、Fab発現ライブラリーにより作製された断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および、上述のいずれかのエピトープ結合性断片。さらに、本明細書で使用する場合の「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、および、免疫グロブリン分子の免疫学的活性のある部分、すなわち、抗原を特異的に結合させる抗原結合部位を有する分子も指す。本発明の免疫グロブリン分子は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgDおよびIgA)のもの、または、サブクラスの免疫グロブリン分子であってよい。
【0061】
本明細書に記載する場合の代謝産物バイオマーカーは、従来の化学的または酵素的な方法(この方法は直接的なものでもまたは間接的なものでもよく、および/または共役していないこともある)、電気化学法、蛍光測定法、発光測定法、分光光度法、蛍光測定法、発光測定法、分光測定法、偏光測定法、クロマトグラフィー法(例えばHPLC)または同様の手法により適切に測定される。
【0062】
酵素法の場合は、測定の手段として、反応における基質の消費、または反応生成物の発生を、直接的または間接的に検出してよい。
【0063】
本発明のバイオマーカーは、好ましくは、質量分析に基づく手法、クロマトグラフィーに基づく手法、酵素検出システム(直接的または間接的な測定による)を用いて、または、センサーを用いて、例えば、電流測定、電位差測定、電導度測定、インピーダンス、磁気、光、音響または熱変換器を備えたセンサーシステムを用いて、検出および測定する。
【0064】
センサーは、物理的、化学的または生物学的な検出システムを組み込んだものであってよい。センサーの一例は、バイオセンサー、すなわち、例えば、オリゴヌクレオチドプローブもしくはアプタマーなどの核酸、または、酵素、結合タンパク質、受容体タンパク質、輸送タンパク質もしくは抗体などのタンパク質に基づく、生体認識システムを備えたセンサーである。
【0065】
バイオセンサーは、バイオマーカーの免疫学的な検出方法、電気、熱、磁気、光(例えばホログラム)または音響による手法を組み込んだものであってよい。そのようなバイオセンサーを用いると、生体試料中で見られると予測される濃度で標的バイオマーカーを検出することが可能である。
【0066】
本発明の方法は、臨床スクリーニング、予後評価、治療の結果のモニター、特定の治療処置に最も応答しやすい患者の同定に、薬物のスクリーニングおよび開発に、および薬物治療の新しい標的の同定に役立てるために、適している。ある疾患に特異的な、鍵となるバイオマーカーの同定は、診断法と治療計画との統合の中核を成すものである。
【0067】
本発明の方法は、被験体における精神病性障害を診断および/またはモニターするための1つまたは複数の評価をさらに含んでよい。評価は、例えば、全体的機能スコア(GAF)またはSCIDといった一般に認められた評価プロトコールに従って臨床医が行う臨床評価であってもよく、および/または、被験体による自己評価を含んでもよい。評価尺度は、診断および/またはモニターに役立てるために使用し得る。GAFおよびSCIDは、臨床面接に基づいて評価する。全体的機能スコアなどの評価は、被験体からの試験生体試料の採取時点(すなわち採取と同日)またはその前後(すなわち採取から2〜3日以内)に行うことが好ましい。この方法は、VLDLおよびLDLレベルが、全体的機能スコアにより決定された臨床評価と非常に密接な逆相関を有することが見出された雌性の被験体を診断およびモニターするためのツールとしてとりわけ有用である。
【0068】
本明細書に記載のもののような予測用のバイオマーカーを使用すれば、センサーおよびバイオセンサーなどの適切な診断ツールが開発でき、したがって、本発明の方法および使用では、センサーまたはバイオセンサーを用いて1つまたは複数のバイオマーカーの検出および定量化が実施できる。
【0069】
このセンサーまたはバイオセンサーは、バイオマーカーの検出について本明細書に記載の検出の方法およびシステムを組み込んだものであってよい。センサーまたはバイオセンサーは、電気(例えば、電流測定、電位差測定、電導度測定またはインピーダンスによる検出システム)、熱(例えば変換器)、磁気、光(例えばホログラム)または音響の技術を用いてよい。本発明によるセンサーまたはバイオセンサーでは、1、2または3種のバイオマーカーのレベルを、以下から選択される1つまたは複数の方法により検出できる:直接的、間接的または共役的な酵素法、分光光度法、蛍光測定法、発光測定法、分光測定法、偏光測定法およびクロマトグラフィー法。とりわけ好ましいセンサーまたはバイオセンサーは、媒介物を介して直接的もしくは間接的に使用される1つまたは複数の酵素を備え、または、結合タンパク質、受容体タンパク質または輸送タンパク質を使用し、電気、光、音響、磁気または熱変換器と共役している。そのようなバイオセンサーを使用すると、生体試料中で見られると予測される濃度で標的バイオマーカーのレベルを検出することが可能である。
【0070】
本発明のバイオマーカーは、「スマート」ホログラムに基づく技術または高周波音響システムを組み込んであるセンサーまたはバイオセンサーを用いて検出でき、そのようなシステムは、「バーコード」またはアレイ構成にとりわけなじみやすい。スマートホログラムセンサー(Smart Holograms Ltd、Cambridge、UK)では、ホログラフィー画像は、バイオマーカーと特異的に反応するように感光性を付与された薄いポリマーフィルム中に格納される。露出時にバイオマーカーがポリマーと反応する結果、ホログラムにより表示される画像に変化が生じる。試験結果の読出しは、光学的な明るさ、画像、色および/または画像位置の変化であってよい。定性的および半定量的な用途の場合は、センサーホログラムは眼で読むことができるため、検出装置の必要がなくなる。定量的測定が必要な場合は、単純な色センサーを使用して信号を読むことができる。試料の不透明さ、または色は、センサーの動作を妨げない。センサーの形式により、いくつかの物質を同時検出するための多重化が可能になる。異なる要求を満たすように可逆的および不可逆的なセンサーを設計でき、関心のある特定のバイオマーカーを継続的にモニターすることが可能である。
【0071】
適切には、本発明のバイオマーカーの検出用のバイオセンサーは共役されたものであり、すなわち、バイオセンサーは生体分子認識を適切な手段と結び付けて、試料中のバイオマーカーの存在の検出または定量化を信号に変換する。バイオセンサーは、「代替場所」での(例えば、病棟、外来患者部門、診療所、家庭、屋外および職場での)診断試験に適合させることができる。
【0072】
本発明のバイオマーカーを検出するためのバイオセンサーとしては、音響センサー、プラズモン共鳴センサー、ホログラフィックセンサーおよび微小工学により作製されたセンサーが挙げられる。本発明のバイオマーカーの検出用のバイオセンサーには、インプリントされた認識素子、薄膜トランジスター技術、磁気音響共鳴装置および他の新規の音響−電気システムを採用してよい。
【0073】
本発明のバイオマーカーの検出および/または定量化を含む方法は、卓上器具を用いて実施でき、または、検査室以外の環境、例えば医師のオフィス内または患者のベッドサイドにおいて使用できる使い捨ての診断用またはモニター用のプラットフォーム上に組み込むことができる。本発明の方法を実施するための適当なセンサーまたはバイオセンサーとしては、光読取装置または音響読取装置を備えた「クレジット」カードが挙げられる。センサーまたはバイオセンサーは、収集したデータが読取りのために医師に電子的に送信されるように構成でき、それによりe−神経医療の基礎が形成できる。
【0074】
治療の有効性をモニターする方法は、ヒト被験体における、および非ヒト動物における(例えば動物モデルにおける)既存の治療および新しい治療の治療効果をモニターするために使用できる。このようなモニター方法は、新しい薬用物質、および物質の組合せについてのスクリーニングに組み込むことができる。
【0075】
試験試料中のペプチドバイオマーカーのレベルが、同じ試験被験体からより早い時期に採取された以前の試験試料中のレベルと比較して上昇していることは、前記治療が、障害、障害の疑いまたはその素因に対し有益な効果(例えば安定化または改善)を及ぼしていることを示す。
【0076】
適切には、診断またはモニターを受けている被験体からの試料採取間に経過する時間は、3日、5日、1週間、2週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月または12カ月となろう。試料は、抗統合失調症療法の前、および/またはその期間中、および/またはその後に採取してよい。試料は、間隔を置きながら、被験体の生涯またはその一部期間にわたって採取できる。
【0077】
試料中に存在するバイオマーカーの量を定量化することとしては、試料中に存在するペプチドバイオマーカーの濃度を求めることを挙げ得る。検出および/または定量化は、試料に対して直接、または、その抽出物もしくはその希釈物に対して間接的に実施してよい。
【0078】
検出および/または定量化は、患者の生体試料中、または生体試料の抽出物の精製物もしくはその希釈物中の特定のタンパク質の存在および/または量を同定するのに適した任意の方法により実施できる。本発明の方法では、定量化は、試料(単数または複数)中のペプチドバイオマーカーの濃度を測定することにより実施してよい。本発明の方法において試験し得る生体試料としては、脳脊髄液(CSF)、全血、血清、尿、唾液または他の体液(大便、涙液、滑液、痰)、呼気(例えば濃縮呼気としての)、またはその抽出物もしくは精製物、またはその希釈物が挙げられる。生体試料としてはさらに、生きた被験体の、または死後に採取された、組織ホモジネート、組織切片および生検標本も挙げられる。好ましくは、試料はCSFまたは血清である。試料は、例えば、適切な場所で、通常の様式で希釈または濃縮および保管して調製できる。
【0079】
ペプチドバイオマーカーの検出および/または定量化は、ペプチドバイオマーカーの検出、またはその断片、例えば、C末端切断型、および/またはN末端切断型の断片の検出により実施してよい。断片は、適切には長さが4アミノ酸超である。好ましくは、断片の長さは、約6から約50アミノ酸の範囲である。
【0080】
このバイオマーカーは、例えばSELDIまたはMALDI−TOFにより、直接検出してよい。あるいは、バイオマーカーは、抗体、またはバイオマーカーに結合するその断片、または他のペプチドなどのリガンド(単数もしくは複数)との相互作用により、または、例えばアプタマーもしくはオリゴヌクレオチドなど、バイオマーカーを特異的に結合させることができるリガンドとの相互作用により、直接的または間接的に検出してよい。このようなリガンドは、発光標識、蛍光標識または放射性標識および/または親和性タグなどの検出可能な標識を有していてよい。リガンドとしては、例えば以下が挙げられる:
(1)in vivo:T3、T4(甲状腺ホルモン)、ビタミンA(血清レチノール結合タンパク質との相互作用により間接的に)、アポリポタンパク質AI(ApoAI)、ノルアドレナリン酸化生成物およびプテリン。
(2)in vitro(その大部分が薬理学的作用剤):数種の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ポリハロゲン化ビフェニルおよび甲状腺ホルモン様化合物などの環境汚染物質、キサントン誘導体、ならびに天然および合成のフラボノイド。
【0081】
例えば、検出、モニター、診断および/または定量化に関する方法は、以下から成る群から選択される1つまたは複数の方法により実施できる:SELDI(−TOF)、MALDI(−TOF)、1Dゲルベース分析、2Dゲルベース分析、質量分析(MS)、LCおよびLC−MSベースの手法。適切なLC MS手法としては、ICAT(登録商標)(Applied Biosystems、CA、USA)またはiTRAQ(登録商標)(Applied Biosystems、CA、USA)が挙げられる。液体クロマトグラフィー(例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)または低圧液体クロマトグラフィー(LPLC))、薄層クロマトグラフィー、NMR(核磁気共鳴)分光法も使用し得る。
【0082】
本発明による診断またはモニターの方法は、ペプチドバイオマーカーの存在またはレベルを検出するために、SELDI−TOF、MALDI−TOF、および、質量分析を用いる他の方法により生体試料(例えば脳脊髄液(CSF)または血清)を分析することを含んでよい。そのような手法は、相対定量化および絶対定量化のために、さらには、本発明によるバイオマーカーと存在し得る他のバイオマーカーとの比率を評価するためにも使用してよい。このような方法は、臨床スクリーニング、予後、治療の結果のモニター、特定の治療処置に最も応答しやすい患者の同定に、薬物のスクリーニングおよび開発に、ならびに、薬物治療の新しい標的の同定にも適している。
【0083】
表面増強レーザー脱イオン化イオン化(SELDI)質量分析は、例えば薬物治療および疾患といった所与の条件について体液および組織中のタンパク質およびペプチドの特徴的な「フィンガープリント」を同定するための強力なツールである。この技術は、タンパク質/ペプチドを捕捉するためのタンパク質チップと、1,000Da未満の小分子およびペプチドから500kDaのタンパク質までの範囲の化合物の質量を定量化および計算するための飛行時間型質量分析計(tof−MS)とを利用する。タンパク質/ペプチドのパターンにおいて定量化できる差は、生体液スペクトル中で測定された各タンパク質/ペプチドを多次元空間における座標として表現する、自動化されたコンピュータープログラムを用いて統計的に評価できる。このアプローチは、バイオマーカーの素性がわかっていなくても診断ツールとして使用できることから、臨床バイオマーカー発見の分野において最も成功している。SELDIシステムも、1回の実験で数百の試料を処理することができる。加えて、SELDI質量分析からの全ての信号は、自然のままのタンパク質/ペプチドに由来する(プロテアーゼ消化を必要とする他のいくつかのプロテオミクス技術とは異なる)ことから、所与の条件の根底にある生理を直接反映する。
【0084】
ペプチドバイオマーカーの検出および/または定量化は、免疫、ペプチド、アプタマーまたは合成認識に基づく任意の方法を用いて実施してよい。例えば、この方法は、ペプチドバイオマーカーに特異的に結合することができる抗体またはその断片に関連するものであってよい。
【0085】
適当な任意の動物を被験体として使用してよい。動物は、ヒト、または非ヒト動物、例えば非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ゼブラフィッシュ、ヒツジ、イヌ、ネコ、魚類、齧歯動物(例えば、モルモット、ラットまたはマウス)、昆虫(例えばショウジョウバエ)、両生類(例えばアフリカツメガエル)またはC.エレガンスであってよい。
【0086】
同定の方法において使用する際、試験物質は、抗統合失調症治療薬、または合成もしくは天然の化学体などを非限定的に含む、公知の化学物質もしくは医薬物質、または前述の物質の2つ以上の組合せであってよい。
【0087】
被験体においてペプチドバイオマーカーの発生を刺激、促進または活性化することができる物質の同定は、試験細胞を試験物質に曝露させることと、前記試験細胞内にある、または前記試験細胞により分泌されたペプチドバイオマーカーのレベルをモニターすることとを含んでよい。試験細胞は原核細胞であってもよいと考えられるが、細胞ベースの試験方法においては真核細胞を用いることが好ましい。適切には、真核細胞は、酵母細胞、昆虫細胞、ショウジョウバエ細胞、両生類細胞(例えばアフリカツメガエルのもの)、C.エレガンス細胞であるか、または、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、魚類、齧歯動物またはネズミに由来する細胞である。ヒトポリペプチドを発現することができる、非ヒト動物または細胞を使用できる。
【0088】
スクリーニング方法は、結合に適した条件下においてペプチドバイオマーカーの存在下で試験物質をインキュベートすることと、ペプチドと前記試験物質の結合を検出および/または定量化することとを含む、本発明によるペプチドバイオマーカーに結合することができるリガンドを同定する方法も包含する。
【0089】
本発明のバイオマーカー、使用および方法に基づくハイスループットスクリーニング技術(例えば、アレイ、パターンまたはシグネチャーの形式で構成される)は、バイオマーカーを結合させることができる潜在的に有用な治療用化合物、例えば、天然化合物、合成化合物(例えばコンビナトリアルライブラリー由来のもの)、ペプチド、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体またはその断片などのリガンドの同定のためにバイオマーカーのシグネチャーをモニターするのに適している。
【0090】
本発明の方法は、アレイ、パターンまたはシグネチャーの形式で(例えばチップ上で)、またはマルチウエルアレイとして実施できる。上述のように、質量分析など他の手法も使用できる。方法は、単独試験、または複数の同一試験または複数の非同一試験にプラットフォーム中に適合させることができ、また、ハイスループット処理形式において実施できる。本発明の方法は、診断を確定または排除するため、および/または条件をさらに特徴付けるために、1つまたは複数の追加の異なる試験を実施することを含んでよい。
【0091】
本発明は、本発明の同定方法またはスクリーニング方法または使用により同定される、または同定可能な物質、例えばリガンドを、さらに提供する。そのような物質は、ペプチドバイオマーカーの活性を直接的または間接的に刺激、促進または活性化することができるか、または、ペプチドバイオマーカーの発生を刺激、促進または活性化する能力をもっていてよい。物質という用語には、ペプチドバイオマーカーを直接結合させて、直接、ペプチドバイオマーカーの発現を誘導するか、または機能を促進もしくは活性化することはなくても、代わりに、間接的に、ペプチドバイオマーカーの発現を誘導するか、またはペプチドバイオマーカーの機能を促進/活性化する物質が含まれる。物質という用語にはリガンドも含まれ、本発明のリガンド(例えば、天然または合成の化合物、ペプチド、アプタマー、オリゴヌクレオチド、抗体または抗体断片)は、ペプチドバイオマーカーに結合することができ、好ましくは特異的に結合することができる。
【0092】
統合失調症またはその素因を診断またはモニターするためのキットは、ペプチドバイオマーカーに特異的なリガンド、ペプチドバイオマーカー、対照、試薬および消耗品から選択される1つまたは複数の構成要素を有してよく、場合により、キットの使用のための説明書が一緒に入っていてもよい。
【0093】
本発明のバイオマーカーの治療的な使用に関して本明細書中で用いる場合の「治療すること」または「治療」という用語は、疾患と闘うことを目的とした、患者の管理またはケアを説明するものであり、例えば、症状または合併症の発症を防止(すなわち予防)するために無症状の個体へ活性薬剤を投与することを含む。
【0094】
本明細書で使用する場合の「治療物質」という用語は、治療的、すなわち治癒的/有益な特性を有し、統合失調症を治療し、その症状を緩和し、または統合失調症の発症を防止する物質を規定するものである。したがって、この物質は、統合失調症の治療において使用するためのものである。
【0095】
以下の実施例には、本発明の基礎となっている証拠が含まれる。
【実施例1】
【0096】
この実施例は、LC−MS/MSによる無標識での相対定量化を用いて、血清中において統合失調症のタンパク質バイオマーカーを発見するための実験記録およびプロトコールを記載するものである。
【0097】
1.臨床試料
全ての参加者から書面にてインフォームドコンセントを得、ヘルシンキ宣言に述べられた原則により臨床調査が行われた。初回発症の妄想性統合失調症と診断されたか、または、疾病が持続したことによる短期的な精神病性障害があると診断された服薬未経験患者から血清試料を採取した。
【0098】
合計25名分の血清試料を分析した:13名は服薬未経験の統合失調症初回発症患者、12名は健常対照である。試料を−80℃で保管してから、調製前に1回のみ、凍結融解サイクルにかけた。
【0099】
2.試料調製
以下のプロトコールを用いて、盲検的に無作為順で血清試料を調製した:
a)各血清試料は、Sigma ProteoPrep20免疫親和性スピンカラムキットを用いて、最も豊富なタンパク質20種を枯渇処理した。
【0100】
キットに入っていた平衡緩衝液90μlを用いて、血清10μlを希釈した。
【0101】
0.22μmのフィルターを用いて4500rpmで1分間、希釈した血清を濾過した。
【0102】
濾過した希釈血清を免疫親和性カラム上に載せ、室温で15分間インキュベートしてから、4500rpmで1分間、遠心分離した。カラムに平衡緩衝液100μlを加え、4500rpmで1分間回転させた。最後のステップをもう一度繰り返した。合計300μlの流出液を回収し、−80℃で保管した。
【0103】
b)緩衝液交換および試料濃縮:
a.5k MWCOフィルター(Milipore)を、新しく作製した50mM炭酸水素アンモニウム緩衝液(100mL中0.395g、自然pH7.8)により予めすすいでおいてから、12,000rpmで5分間遠心分離した。
【0104】
b.洗浄したフィルター上に、枯渇処理した血清試料を一度に300μL加え、12,000rpmで15分間、または、体積が100μLを下回るまで回転させた。
【0105】
c.濃縮を完了させた後、50mM炭酸水素アンモニウム緩衝液をフィルターに0.5mL注ぎ足し、タンパク質がフィルター上に堆積するのを防止するために試料をピペットで取り、12,000rpmで15分間回転させた。洗浄手順を2回繰り返した。
【0106】
d.残量を調べ、およそ100μLであることを確認した。試料をエッペンドルフ管に移し、−80℃で保管した。
【0107】
c)各試料に対しBio−Rad DCタンパク質アッセイを用いて、タンパク質の総濃度を測定した。
【0108】
a.次に、以下の様式で改変させたトリプシン(Promega)を用いて、各試料を消化させた:100mMの新鮮なDTT溶液(水1mL中15.4mg)を調製した。DTT溶液5μLを各試料に加えた。37℃で1時間ボルテックスにより混合してからインキュベートした。
【0109】
b.試料濃度の測定値に基づき、トリプシン溶液(0.5μg/μL)を各試料中に加えた。効果的な比率は、トリプシン:タンパク質が1:25(質量:質量)であった。
【0110】
c.ボルテックスにより混合し、37℃で14時間インキュベートした。−80℃で保管した。
【0111】
d)トリプシン消化を停止させるために、消化させた各試料に1M酢酸10μLを加えた(濃度およそ100mMの酸を加える)。最初のタンパク質濃度に基づき、最終的なタンパク質濃度を計算した。0.375μgをLC−MSに注入できるように、HO99.9%+ギ酸0.1%を用いて試料を希釈した。25fmol/μlの酵母エノラーゼを各試料に添加した。
【0112】
3.LC−MS/MS分析
ナノスケールのUltra Performance Liquid Chromatography、10kpsiのnanoAcquityをQuadrupole-Time-of-Flight Mass Spectrometer、Qtof Premierと組み合わせて構成される、Waters製のProtein Expression Systemを用いて分析を実施した。
【0113】
分析に先立ち、消化処理したYeast Enolase(Waters)を用いて、十分な感度、解像度、保持時間再現性および強度再現性についてシステムを試験した。これに次いで2種のタンパク質混合物の分析を行った:一方は1モル濃度を有し、他方は調節した濃度を有した。このシステムによりタンパク質を同定したところ、±15%以内に制御された。
【0114】
試料を冷凍庫中で無作為化し、1日に2〜3試料を融解させた。各試料を3回注入し、その間にブランク注入および標準注入のいずれかを行った。
【0115】
a)液体クロマトグラフィー
移動相A:HO99.9%+ギ酸0.1%。
【0116】
移動相A:アセトニトリル99.9%+ギ酸0.1%。
【0117】
弱洗浄液:HO99.9%+ギ酸0.1%。
【0118】
強洗浄液:アセトニトリル99.9%+ギ酸0.1%。
【0119】
オートサンプラー温度:150℃。
【0120】
カラム温度:400℃。
【0121】
a.捕集カラム(180μm×20mm Symetry BEH nanoAcquity(Waters))上に合計2μlを注入した。A100%を用い、15μl/分で1分間、捕集を実施した。
【0122】
b.次に、表1に示す勾配を用い、分析カラム(nanoAcquity 75μm×200mm BEH 1.7μm粒子(Waters))上に試料を載せた。
【0123】
【表1】

【0124】
b)質量分析
Expression(前駆体イオンを単離することなく衝突エネルギーを交互に切り替える)、ポジティブVモードにて、装置を10000FWHM解像度に調整して、データを取得した。
【0125】
30走査ごとに対照走査を取得した。
【0126】
走査時間:0.6秒、質量範囲:50から1990m/z、低衝突エネルギー4ev、高衝突エネルギー20〜43ev。
【0127】
4.データ処理
Waters製のProteinLynx Global Server2.2.5(PLGS)ソフトウェアを用いて、生データに以下の処理を実施した:平滑化、適応背景減算、センタリング、同位体除去および質量補正。
【0128】
処理したデータを、Swissprotデータバンクバージョン50.8のヒトタンパク質配列を用いて、データバンク検索にかけた。
【0129】
PLGSソフトウェアで、相対定量化および単変量分析を実施した。
【0130】
添加エノラーゼの7ペプチドを用いて、データを正規化した。
【0131】
処理したデータは、多変量分析(Partial Least Square−Discriminate Analysis)のために、Simca P+(Umetrics)にもエクスポートした。
【0132】
25名分の血清試料(13名は服薬未経験の統合失調症患者、12名は健常対照)の分析から、以下の結果を得た。
【0133】
最も有意な差で発現したタンパク質:
・Apo A IV(8ペプチド):
平均1.85倍、発現率が低かった。
・インターαトリプシン阻害物質(5ペプチド):
平均1.49倍、発現率が低かった。
・セロトランスフェリン前駆体(3ペプチド):
平均1.78倍、発現率が低かった。
・クラステリン前駆体(2ペプチド):
平均1.58倍、発現率が低かった。
【0134】
【表2】

【実施例2】
【0135】
実施例1と同様の手順、55名分の試料(22名は統合失調症患者、33名は対照)を用いて、表3に示す推定ペプチドバイオマーカーを見出した(は、抗体により枯渇化されていることを示す)。
【0136】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神病性障害またはその素因を診断またはモニターする方法であって、被験体から採取された試料中において、クラステリン前駆体、インターαトリプシン阻害物質、IgM、アポリポタンパク質A2およびα2 H5糖タンパク質から選択されるバイオマーカーのレベルを測定するステップを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法を含む、精神病性障害に罹患している、罹患の疑いがある、またはその素因のある被験体において治療の有効性をモニターする方法。
【請求項3】
2つ以上の場面で前記被験体から採取された試料中に存在する前記バイオマーカーのレベルを測定するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体から採取された試料中の前記バイオマーカーのレベルを、治療の開始前に前記被験体から採取された試料中、および/または、治療における初期段階で前記被験体から採取された試料中に存在する前記レベルと比較するステップを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記治療が抗精神病性障害療法である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
2つ以上の場面で採取された試料中の前記バイオマーカーの量の変化を検出するステップを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
試料中に存在する前記バイオマーカーのレベルを対照中の前記レベルと比較するステップを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記対照が正常対照および/または精神病性障害対照である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記または各レベルがNMRスペクトルの分析により検出される、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記または各レベルが、NMR、SELDI(−TOF)、MALDI(−TOF)、1Dゲルベース分析、2Dゲルベース分析、質量分析(MS)およびLC−MSベースの手法から選択される方法により検出される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記または各レベルが、直接的または間接的な、共役的または非共役的な酵素法、電気化学法、分光光度法、蛍光測定法、発光測定法、分光測定法、偏光測定法およびクロマトグラフィー法、またはELISAなどの免疫学的方法から選択される方法により検出される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
血漿タンパク質のレベルが、紫外吸光度法および比色法から選択される1つまたは複数の方法により検出される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記または各レベルが、前記バイオマーカーの直接的または間接的な検出のための1つまたは複数の酵素、結合タンパク質、受容体タンパク質もしくは輸送タンパク質、抗体、合成受容体または他の選択的な結合分子を含むセンサーまたはバイオセンサーを用いて検出され、前記検出が、電気、光、音響、磁気または熱変換器と共役している(coupled to)、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記試料が、全血、血清、血漿、またはその抽出物もしくは精製物、またはその希釈物から選択される、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記被験体から採取されたさらなる試料中の1つまたは複数のバイオマーカーを定量化するステップを含む、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記さらなる生体試料が、CSF、尿、唾液もしくは他の体液、または呼気、濃縮呼気、またはその抽出物もしくは精製物、またはその希釈物から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記被験体が服薬未経験である、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記精神病性障害が統合失調症である、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記統合失調症が、妄想型、緊張型、解体型、鑑別不能型および残遺型の統合失調症から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記精神病性障害が双極性障害である、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記被験体の臨床評価または自己評価をさらに含む、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記臨床評価が、SCIDの評価、または全体的機能スコアの評価である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記評価が、前記被験体からの前記試料の採取時点または採取前後に行われる、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記被験体が雌性の被験体である、請求項1から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項1から16のいずれかに記載の方法のステップを含む、精神病性障害に罹患している、罹患の疑いがある、またはその素因のある被験体において治療物質の有効性をモニターする方法。
【請求項26】
請求項1から16のいずれかに記載の方法のステップを含む、抗精神病物質を同定する方法。
【請求項27】
請求項1から16のいずれかに記載の方法のステップを含む、精神病亢進物質を同定する方法。
【請求項28】
前記被験体から採取された試料中の前記バイオマーカーのレベルを、前記物質の投与前に前記被験体から採取された1つまたは複数の試料中、および/または、前記物質を用いた治療期間における初期段階で前記被験体から採取された1つまたは複数の試料中に存在する前記レベルと比較するステップを含む、請求項25から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
請求項1に記載のバイオマーカーを定量化することができる精神病性障害センサー。
【請求項30】
前記バイオマーカーが、直接的、間接的または共役的な酵素法、分光光度法、蛍光測定法、発光測定法、分光測定法、偏光測定法およびクロマトグラフィー法から選択される1つまたは複数の方法により定量化可能である、請求項29に記載のセンサー。
【請求項31】
前記1つまたは複数のバイオマーカーの直接的または間接的な検出のための、酵素、結合タンパク質、受容体タンパク質もしくは輸送タンパク質、抗体もしくはその断片、合成受容体または他の選択的な結合分子から選択され、電気、光、音響、磁気または熱変換器と共役している構成要素を含む、請求項29または30に記載のセンサー。
【請求項32】
請求項1に記載の1つまたは複数のペプチドバイオマーカーを検出することができる、アレイまたは複数分析物用パネル。
【請求項33】
精神病性障害を診断および/またはモニターするための、請求項1に記載のバイオマーカーの使用。
【請求項34】
試験物質を被験体に投与するステップと、前記被験体から採取された試料中の請求項1に記載のバイオマーカーのレベルを検出するステップとを含む、精神病性障害を変調することができる物質を同定する方法。
【請求項35】
前記試料が、全血、血清、血漿、またはその抽出物もしくは精製物、またはその希釈物から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項1に記載のバイオマーカーに特異的に結合することができるリガンド。
【請求項37】
ペプチドまたはオプトマーを含む、請求項36に記載のリガンド。
【請求項38】
抗体である、請求項36に記載のリガンド。
【請求項39】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項38に記載のリガンド。
【請求項40】
直接的または間接的に検出可能なマーカーで標識されている、請求項36から39のいずれかに記載のリガンド。
【請求項41】
前記検出可能なマーカーが、発光マーカー、蛍光マーカー、酵素マーカーまたは放射性マーカーである、請求項40に記載のリガンド。
【請求項42】
親和性タグで標識されている、請求項36から41のいずれかに記載のリガンド。
【請求項43】
請求項36から42のいずれかに記載のリガンドを含むセンサー。
【請求項44】
請求項36から42のいずれかに記載のリガンドを含むアレイ。
【請求項45】
請求項1に記載のバイオマーカーの発生を刺激、促進または活性化することができる物質を同定する方法であって、試験物質を被験動物に投与するステップと、前記被験体内に存在する前記バイオマーカーを検出および/または定量化するステップとを含む方法。
【請求項46】
請求項1に記載のバイオマーカーの発生を刺激、促進または活性化することができる物質を同定する方法であって、試験細胞を試験物質に曝露させるステップと、前記試験細胞内にある、または前記試験細胞により分泌された前記バイオマーカーのレベルをモニターするステップとを含む方法。
【請求項47】
前記試験細胞が真核細胞である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記真核細胞が、酵母細胞、昆虫細胞、ショウジョウバエ細胞、両生類細胞(例えばアフリカツメガエルの細胞)またはC.エレガンス細胞であるか、または、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、魚類、齧歯動物またはネズミに由来する細胞である、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記動物または細胞が、前記ペプチドを発現することができるように遺伝的に改変された非ヒト動物または細胞である、請求項46から48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
請求項1に記載のバイオマーカーに結合することができるリガンドを同定する方法であって、結合に適した条件下において前記バイオマーカーの存在下で試験物質をインキュベートするステップと、前記バイオマーカーと前記試験物質の結合を検出および/または定量化するステップとを含む方法。
【請求項51】
請求項1に記載のバイオマーカーに特異的に結合することができるリガンドを同定する方法であって、前記バイオマーカーの存在下で試験物質をインキュベートするステップと、前記バイオマーカーと前記試験物質の特異的な結合を検出および/または定量化するステップとを含む方法。
【請求項52】
精神病性障害またはその素因の治療における、請求項36から42および45から51のいずれかに記載の物質またはリガンドの使用。
【請求項53】
精神病性障害またはその素因の治療用の医薬の製造における、請求項36から42および45から51のいずれかに記載の物質またはリガンドの使用。
【請求項54】
前記バイオマーカーの組合せ、例えば、請求項1に記載のバイオマーカーと本特許請求の範囲に記載の別のバイオマーカーとの組合せが使用される、請求項1から53のいずれかに記載の本発明。

【公表番号】特表2010−517007(P2010−517007A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546000(P2009−546000)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000199
【国際公開番号】WO2008/090319
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509103439)サイノヴァ ニューロテック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】