説明

精製された酢酸ナトリウム無水物及びその製法

静菌効果を十分発揮できる添加量で加工食品に使用することができる、酸臭のない酢酸ナトリウム無水物を提供する。 酢酸ナトリウム無水物を有機溶剤または含水有機溶媒で処理し、その後該有機溶媒または含水有機溶媒を除くことを特徴とする、精製された酢酸ナトリウム無水物の製造方法、該精製された酢酸ナトリウム無水物を配合した食品用製剤、および該製剤を添加した食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸臭を可及的に低減した、精製された酢酸ナトリウム無水物およびその製法、該酢酸ナトリウム無水物を含有する食品用製剤、並びに該酢酸ナトリウム無水物または該食品用製剤を含有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸ナトリウムは、かびやネト菌の生育を抑制する効果があることから、日持ち向上剤として用いられるほか、酸味料、pH調整剤或いは調味料として、惣菜、ハム・ソーセージ、水産練り製品、漬物など広範囲の食品に用いられている。酢酸ナトリウムは単独で用いられるほか、多くの場合、有機酸および/またはその塩、アミノ酸またはグリセリン脂肪酸エステルなどの食品用乳化剤などと配合され、粉末製剤の形で用いられる。そのような場合、酢酸ナトリウムとしては酢酸ナトリウム無水物が配合されることが多い(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
酢酸ナトリウムには結晶物(3水塩)と無水物があり、無水物は結晶物(3水塩)を120℃以上で脱水することにより得られる。即ち、結晶物(3水塩)を加熱すると約58℃でその結晶水に酢酸ナトリウムが溶解し、次いで約120℃で結晶水を失って白色の乾燥塊となる(例えば、非特許文献2参照)。この塊を粉砕することにより、粉末状の酢酸ナトリウム無水物が得られる。
【0004】
酢酸ナトリウム無水物を得る方法としては、前記方法以外に、酢酸ナトリウム水溶液を200mmHg以下の減圧下で脱水する方法(例えば、特許文献1参照)、酢酸ナトリウム水溶液を噴霧乾燥する方法(例えば、特許文献2参照)、塩素化飽和脂肪族炭化水素の存在下ナトリウム化合物と酢酸とを反応させ、生成する水を塩素化飽和脂肪族炭化水素と共沸させて除去する方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0005】
しかし、酢酸ナトリウム中の遊離酸の規格値は、CH・COOHとして0.05%以下である(例えば、非特許文献2参照)ことからも明らかなように、従来の酢酸ナトリウム無水物には特有の刺激臭があり、それを加工食品に添加した場合、添加量が多すぎると酸臭が強くなり食品の風味を損ねていた。そこで、酢酸ナトリウムの静菌効果を低下させずにこれらの問題点を改善する方法として、スクラロースを添加配合してマスキングする方法(例えば、特許文献4参照)などが提示されている。
【特許文献1】特開平05−320090号公報
【特許文献2】特開昭55−007236号公報
【特許文献3】特公昭49−011369号公報
【特許文献4】特開2000−175668号公報
【非特許文献1】「保存料・日持ち向上剤製剤一覧表」,月刊フードケミカル,株式会社食品科学新聞社,平成13年7月1日、第17巻、第8号、p.52−53
【非特許文献2】「第7版食品添加物公定書解説書」、株式会社廣川書店、平成11年6月9日、D−514−D−516
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の酢酸ナトリウム無水物は酸臭が強く、加工食品への添加量が制限されるのを免れなかった。
本発明の目的は、酸臭を可及的に低減した酢酸ナトリウム無水物およびその製法を提供することである。本発明の他の目的は、該酢酸ナトリウム無水物を含有する食品用製剤を提供することである。本発明のさらに他の目的は、該酢酸ナトリウム無水物または該食品用製剤を含有する食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酢酸ナトリウム無水物の酸臭の原因と考えられる酢酸を可及的に低減させうる方法を見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)酢酸ナトリウム無水物を有機溶剤または含水有機溶剤で処理し、その後該有機溶剤または含水有機溶剤を除くことを特徴とする、精製された酢酸ナトリウム無水物の製造方法、
(2)有機溶剤が低級アルコール、アセトンおよびヘキサンから選ばれた1種或いは2種以上の混合液であることを特徴とする、前記(1)記載の製造方法、
(3)含水有機溶剤が低級アルコール−水混合液またはアセトン−水混合液であることを特徴とする、前記(1)記載の製造方法、
(4)1.0kPa以下の高真空条件で有機溶剤または含水有機溶剤を除くことを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法、
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法で製造された、精製された酢酸ナトリウム無水物、
(6)遊離の酢酸含有量が3.0ppm以下であることを特徴とする、精製された酢酸ナトリウム無水物、
(7)遊離の酢酸含有量が1.0ppm以下であることを特徴とする、精製された酢酸ナトリウム無水物、
(8)前記(5)〜(7)のいずれかに記載の精製された酢酸ナトリウム無水物を配合したことを特徴とする食品用製剤、
(9)前記(5)〜(7)のいずれかに記載の精製された酢酸ナトリウム無水物を添加したことを特徴とする食品、および
(10)前記(8)記載の食品用製剤を添加したことを特徴とする食品、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の精製された酢酸ナトリウム無水物は、無臭或いは極わずかに酸臭がするだけなので、加工食品に対して、酢酸ナトリウム無水物として従来の約1.5〜5倍量の添加が可能となり、その結果、加工食品の日持ちを著しく向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一側面は、酢酸ナトリウム無水物を有機溶剤または含水有機溶剤で処理し、その後該有機溶剤または含水有機溶剤を除くことを特徴とする、精製された酢酸ナトリウム無水物の製造方法である。
【0011】
本発明で、有機溶剤または含水有機溶剤で処理される酢酸ナトリウム無水物としては、食品添加物として規定された品質規格を満たすものであれば特に制限はなく、例えば、酢酸ナトリウム結晶物(3水塩)を加熱し、約120〜250℃で結晶水を失わせることにより得られる、白色粉末ないし塊状の酢酸ナトリウム無水物が挙げられる。ここで、該酢酸ナトリウム結晶物(3水塩)は、通常、酢酸を結晶炭酸ナトリウムで中和した後、ろ過し、ろ液から溶媒を留去し、得られる結晶を常温で乾燥することにより得られる。
【0012】
酢酸ナトリウム無水物を処理する為の有機溶剤としては、酢酸に対して溶解度を有する溶剤であれば特に制限はないが、本発明により得られる精製された酢酸ナトリウム無水物は食品添加物として使用されることなどを勘案すると、塩素系以外の溶剤が好ましく、例えば、低級アルコール、アセトン、ヘキサンなどが挙げられる。
【0013】
ここで低級アルコールとしては、炭素数1〜4のアルコールが好適に挙げられ、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールまたはこれらの混合物などが挙げられる。これら低級アルコールのうち、とりわけエタノールが好ましい。
【0014】
エタノールとしては、試薬用、医薬品用、食品工業用などいずれも好ましく用いることができる。例えば「含水特級」および「含水一級」として規格が定められている、エチルアルコール濃度95.0容量%以上の食品工業用アルコールなどが好ましく挙げられる。食品工業用アルコールは、飲用への転用を防止するため食品用フレーバーなどの変性剤が混和された変性アルコールであってもよい。
【0015】
また本発明では、酢酸ナトリウム無水物を処理するための溶剤として、有機溶剤の代わりに、含水有機溶剤、すなわち有機溶剤と水の混合液を用いることができる。かかる混合液の具体例としては、例えば低級アルコール−水混合液およびアセトン−水混合液などが挙げられる。
【0016】
酢酸ナトリウム無水物を有機溶剤または含水有機溶剤で処理する方法としては、特に制限はなく、例えば酢酸ナトリウム無水物と有機溶剤または含水有機溶剤を、その溶剤の沸点以下の温度で混合後、デカンテーション或いはろ過により該溶剤を除く方法、或いは酢酸ナトリウム無水物をカラムなどに充填後該溶剤を流す方法などが挙げられる。
【0017】
ここで、有機溶剤または含水有機溶剤の使用量は、酢酸ナトリウム無水物1質量部に対して、約0.5〜2000容量部、好ましくは約0.5〜250容量部、更に好ましくは約1〜100容量部である。
【0018】
有機溶剤または含水有機溶剤で処理された酢酸ナトリウム無水物は、真空乾燥機を使用し、約50〜60℃で減圧下、好ましくは約1.0kPa以下の高真空条件で残留する溶剤が除かれ、精製された酢酸ナトリウム無水物が得られる。
【0019】
なお、含水有機溶剤、すなわち有機溶剤と水の混合溶媒を用いる場合、その水の割合が大きいと、酢酸ナトリウム無水物が溶解し、溶液となるが、そのような場合は、溶液を例えば約3〜4kPaの低真空度下で濃縮し、その後約120〜250℃の通風乾燥機で乾燥することにより、精製された酢酸ナトリウム無水物が得られる。
【0020】
本発明で得られる精製された酢酸ナトリウム無水物は、無臭或いは微臭で、処理前の強い酸臭は消失している。酸臭の主成分である酢酸を指標として、その含有量を測定した結果、処理前の酢酸ナトリウム無水物中の酢酸含有量はおおむね約5〜10ppm以上であるのに対して、本発明の精製された酢酸ナトリウム無水物中の酢酸含有量はおおむね約3ppm以下、好ましくは約1ppm以下である。
【0021】
本発明の他の側面は、前記で得られた、精製された酢酸ナトリウム無水物を配合したことを特徴とする、食品用製剤である。すなわち、本発明で得られる精製された酢酸ナトリウム無水物は、日持ち向上剤として用いられるほか、酸味料、pH調整剤或いは調味料などとして、広範囲の加工食品に用いられる。
【0022】
日持ち向上剤としては、精製された酢酸ナトリウム無水物が単独で用いられるほか、多くの場合無機酸および/またはその塩、有機酸および/またはその塩、アミノ酸、グリセリン脂肪酸エステルなどの食品用乳化剤、リゾチームまたはチアミンラウリル硫酸塩などと配合されて用いられ、更にポリリジンまたはしらこ蛋白などが配合されることもある。
【0023】
ここで配合される無機酸および/またはその塩としては、例えばピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムなどが挙げられる。これら無機酸および/またはその塩は、単独で用いるか、または2種以上の混合物として用いることができる。
【0024】
ここで配合される有機酸としては、例えばアジピン酸、クエン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸またはコハク酸などが挙げられる。また本発明において用いられる有機酸の塩としては、食品添加物として認可されている前記有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩などが挙げられる。これら有機酸および/またはその塩は、単独で用いるか、または2種以上の混合物として用いることができる。
ここで配合されるアミノ酸としては、例えばグリシン、アラニン、シスチン、スレオニン、バリン、リジンまたはアルギニンなどが挙げられるが、好ましくはグリシンまたはアラニンである。これらアミノ酸は、単独で用いるか、または2種以上の混合物として用いることができる。
【0025】
ここで配合される食品用乳化剤としては、例えば炭素数8〜14の飽和脂肪酸をその構成脂肪酸とするグリセリン脂肪酸モノエステル、ジグリセリン脂肪酸モノエステルまたはトリグリセリン脂肪酸モノエステルなどが挙げられる。
またリゾチーム、ポリリジンまたはしらこ蛋白などは、商業的製品として容易に入手できるものが適当である。
【0026】
本発明の食品用製剤の形状は特に限定されないが、好ましくは粉末である。また製剤化に際しては、賦形剤として、例えばブドウ糖または果糖などの単糖類、ショ糖、乳糖または麦芽糖などのオリゴ糖類、デキストリンまたは粉末水飴などのでん粉分解物、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオースまたはマルトヘキサオースなどのマルトオリゴ糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトールまたは粉末還元水飴などの糖アルコール類などを用いることができる。
【0027】
本発明の食品用製剤の例としては、該製剤の成分の構成比率が、精製された酢酸ナトリウム無水物約1〜100質量部、好ましくは約5〜75質量部、無機酸および/またはその塩、有機酸および/またはその塩、アミノ酸、食品用乳化剤、リゾチーム、チアミンラウリル硫酸塩、ポリリジンおよびしらこ蛋白などの群から選ばれる1種または2種以上の成分を約99〜0質量部、好ましくは約95〜25質量部が例示できる。
【0028】
また、前記賦形剤を配合する場合は、精製された酢酸ナトリウム無水物と無機酸および/またはその塩、有機酸および/またはその塩、アミノ酸、食品用乳化剤、リゾチーム、チアミンラウリル硫酸塩、ポリリジンおよびしらこ蛋白などの群から選ばれる1種または2種以上の成分の混合物を約40〜99質量部、好ましくは約55〜95質量部、賦形剤を約60〜1質量部、好ましくは約45〜5質量部が例示できる。
【0029】
本発明の他の側面は、前記食品用製剤を添加したことを特徴とする食品である。本発明の食品は、前記食品用製剤を、製剤の剤形のまま、あるいは少量の水に溶かして、食品に添加することにより得られる。添加時期は、特に限定されないが好ましくは原料配合時に添加される。食品に対する添加量は、通常食品の全体量に対して通常約0.01〜10質量%、好ましくは約0.1〜5質量%、より好ましくは約0.3〜3質量%である。
【0030】
以下、実施例、試験例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
ガラス製カラム(直径:5cm、長さ:20cm)に酢酸ナトリウム無水物(食品添加物;日本合成化学工業社)100gを詰め、n−ヘキサン1Lを1ml/分の速度で滴下した。全量を流し終えた後、内容物をトレーに広げて真空乾燥器に入れ、60℃、1.0kPaの高真空条件で残留する溶剤を除去し、精製された酢酸ナトリウム無水物(以下、本発明品1という)100gを得た。
【実施例2】
【0032】
500mlナスフラスコに酢酸ナトリウム無水物(食品添加物;日本合成化学工業社)100gとエタノール−水(7:3)混液100mlを入れ、ロータリーエバポレーターを用いて、約60〜80℃、約20〜30mmHg(約2.7〜4.0kPa)で濃縮した。留出液が出なくなったら、再びエタノール−水(7:3)混液100mlを入れ、同様の操作を計10回繰り返した。
【0033】
次にエタノール100mlを入れ、前記条件で濃縮した。留出液が出なくなったら、再びエタノール100mlを入れ、同様の操作を計3回繰り返した。
濃縮物をフラスコから掻きだしてトレーに広げ、180℃の通風乾燥機で6時間乾燥し、精製された酢酸ナトリウム無水物(以下、本発明品2という)100gを得た。
試験例1
【0034】
前記本発明品1および本発明品2の酸臭の強さを判定する指標として、酢酸の濃度をガスクロマトグラフで測定した。対照として、精製処理を施していない酢酸ナトリウム無水物(以下、未処理品という)についても、同時に測定した。
【0035】
[試験溶液の調製]
試料2.50gを精密に量り、20ml容の共栓遠心沈殿管に入れる。o−キシレン(試薬特級)5mlを加えて往復振とう機で30分間振り混ぜ、遠心分離し、上澄み液を分取する。残留物に更にo−キシレン(試薬特級)5mlを加え、同様に操作する。全抽出液を合わせ、o−キシレンを加えて正確に10mlとし、試験溶液とする。
【0036】
[GC測定条件]
装 置:SHIMAZU GAS CHROMATOGRAPH GC−18
カ ラ ム:HITACHI ULTRA ALLOY−8H(0.25mm×30m)
温度 条件:注入口 100℃
検出器 130℃
カラム温度 60℃(5分)→100℃
昇温 5℃/分
スプリット比:50:1
検液注入量:1μl
【0037】
[結果]
予め作成された検量線から、試料中の酢酸の含量(ppm)を求めた。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【実施例3】
【0039】
酢酸ナトリウム無水物を配合した食品用製剤を作製し、次にそれらを添加して『里芋の含め煮』を調理し、その風味と保存性を試験した。
【0040】
[食品用製剤の配合組成]
【表2】

【0041】
[食品用製剤の作り方]
表2に記載の成分をポリ袋に入れ、ポリ袋の口を封じて8の字を描くように振り、均一になるまで混合した。
【0042】
[『里芋の含め煮』の作り方]
1)里芋はきれいに水洗いをして水気をふき取り、上下を切り落とし、縦に厚めに皮を剥く。
2)小鍋に1)の里芋250gを入れ、出し汁をひたひたにはり、調味料(酒1/4カップ、砂糖大匙1、醤油大匙1、塩少々)を加えて落し蓋をし、弱火でゆっくりと煮含める。
3)里芋に串が通るくらいに軟らかくなったら、所定量(里芋に対し0.5質量%、1.0質量%または1.5質量%)の表2の製剤を少量の水に溶かした液とみりん大匙1を煮汁に加え、煮汁を里芋全体にからめるようにして煮上げる。
【0043】
[試験方法]
1)煮上げた里芋を室温まで冷まし、風味(酸臭の有無)を5人のパネルで官能検査した。結果は、○:酸臭なし、△:どちらともいえない、×:酸臭あり、として表した。
2)風味の点で問題なかった里芋を、無菌ポリ袋に小分けして25℃の恒温器に保管した。対照として、製剤無添加のものを調理し同時に試験した。24時間毎にネトの発生および腐敗臭の有無を観察し、賞味可能な期間を求めた。
【0044】
[結果]
【表3】

【実施例4】
【0045】
酢酸ナトリウム無水物を配合した食品用製剤を作製し、次にそれらを添加してハンバーグを調理し、その風味と保存性を試験した。
【0046】
[食品用製剤の配合組成]
【表4】

【0047】
[食品用製剤の作り方]
表4に記載の成分をポリ袋に入れ、ポリ袋の口を封じて8の字を描くように振り、均一になるまで混合した。
【0048】
[ハンバーグの作り方]
材料の配合量を表5に示す。
【表5】

【0049】
1)パン粉を水に浸した後、よく絞る。
2)1)のパン粉と残りの材料をボウルに入れ、更に表4の製剤を所定量(ハンバーグの全材料に対し0.8質量%または1.5質量%)添加し、手のひらで全体に混ざるよう良く捏ねる。
3)1個約50gに分割し、空気抜きをした後、楕円形に形を整え、中心にくぼみを入れる。
4)成形したハンバーグを、ジェットオーブン(FUJIMAK SUPER JET;フジマック社)を用いて、200℃、8分間の条件で焼き上げる。
【0050】
[試験方法]
1)焼き上げたハンバーグの風味(酸臭の有無)を5人のパネルで官能検査した。結果は、○:酸臭なし、△:どちらともいえない、×:酸臭あり、として表した。
2)風味の点で問題なかったハンバーグを無菌ポリ袋に小分けし、25℃の恒温器に保管した。対照として、製剤無添加のものを調理し同時に試験した。24および48時間後にハンバーグの中心部を無菌的に採取し、その一般生菌数を、標準寒天培地による希釈平板培養(37℃、3日間)により、計数した。
【0051】
[結果]
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の、精製された酢酸ナトリウム無水物、或いは該酢酸ナトリウム無水物を含有する食品用製剤の対象となる食品は、特に限定されないが、例えば
はんぺん、蒲鉾、竹輪または魚肉ソーセージなどの魚肉練り製品;
ハム、ソーセージ、ハンバーグまたは肉団子などの畜肉・挽肉加工品;
コロッケ、厚焼き玉子、その他和え物、煮物または焼き物などの惣菜類;
生麺、茹で麺または蒸し麺などの麺類;
ポテトサラダまたはマカロニサラダなどのサラダ類;
フラワーペーストまたはカスタードクリームなどのクリーム類;
小豆餡、いも餡または栗餡などの餡類;
大福餅、麩饅頭またはスポンジケーキなどの和・洋菓子類;
蒸しパン、中華饅頭、餃子またはシュウマイなどの小麦粉加工品;
弁当(米飯)、ちまきまたはおにぎりなどの米飯類;
もち類;
タレ、麺つゆまたはソースなどの調味料類;
味噌漬け、醤油漬け、たくあん、浅漬けまたはキムチなどの漬物類;
魚介類の塩蔵、干物またはくん製品、珍味類;
いくら、明太子または数の子などの魚卵加工品;
もずくまたは生のりなどの海藻類;
前記食品を瓶詰または缶詰した食品、レトルトパウチ、含気レトルトパウチまたは各種プラスチックフィルムにより包装した食品、ケーシング、チルドまたはレトルトした密封包装食品などが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ナトリウム無水物を有機溶剤またまたは含水有機溶剤で処理し、その後該有機溶剤または含水有機溶剤を除くことを特徴とする、精製された酢酸ナトリウム無水物の製造方法。
【請求項2】
有機溶剤が低級アルコール、アセトンおよびヘキサンから選ばれた1種または2種以上の混合液であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項3】
含水有機溶剤が低級アルコール−水混合液またはアセトン−水混合液であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項4】
1.0kPa以下の高真空条件で有機溶剤または含水有機溶剤を除くことを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項記載の製造方法。
【請求項5】
請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の製造方法で製造された、精製された酢酸ナトリウム無水物。
【請求項6】
遊離の酢酸含有量が3.0ppm以下であることを特徴とする、精製された酢酸ナトリウム無水物。
【請求項7】
遊離の酢酸含有量が1.0ppm以下であることを特徴とする、精製された酢酸ナトリウム無水物。
【請求項8】
請求の範囲第5項〜第7項のいずれかに記載の精製された酢酸ナトリウム無水物を配合したことを特徴とする食品用製剤。
【請求項9】
請求の範囲第5項〜第7項のいずれかに記載の精製された酢酸ナトリウム無水物を添加したことを特徴とする食品。
【請求項10】
請求の範囲第8項記載の食品用製剤を添加したことを特徴とする食品。

【国際公開番号】WO2005/019150
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513263(P2005−513263)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011227
【国際出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】