説明

糖及びその類似体を骨格とする分子輸送体並びにその製造方法

本発明による分子輸送体化合物は、細胞膜、核膜及び血液脳関門といった生体膜に対して、有意に高い透過性を示し、従って、様々な生理活性分子の送達に有効に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のグアニジン残基及び糖骨格またはその類似体からなる、改善された生体膜透過性を有する分子輸送体、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の細胞膜(plasma membrane)は、細胞の細胞質(cytoplasm)を外部環境から分離しており、これは、主に、リン脂質二重層と、この二重層の内部に埋め込まれ又は表面に結合するタンパク質から成っている。一般的に細胞膜は必須物質の細胞内外への出入りを制御する門番役(gate keeper)としての役目をする。しかし、この細胞膜は、透過性障壁としても作用し、様々な有用な治療製剤の通過を遮断する。一般的に、親水性分子、高電荷分子、核酸または遺伝子のような巨大分子などは細胞膜を通り難い。従って、薬物及び巨大分子を細胞内に輸送するための確かな手段が求められている。
【0003】
従来、数多くの輸送体分子、例えば脂質、重合体及びデンドリマーが、生体膜を通して物質を輸送するために提案されたが、これらはしばしば、細胞内で不溶性を示すかまたは生分解されず、そのため沈殿を形成して毒性を誘発する問題点があった。
【0004】
タンパク質の細胞膜透過を可能とするタンパク質導入ドメイン(PTD,protein transduction domain)を有するタンパク質としては、表1に示すように、HIV−1 Tatペプチド、アンテナペディアホメオドメインタンパク質(Antennapedia(Antp) homeodomain protein)、単純ヘルペスウイルスタンパク質VP22、NLS(nuclear localization signal sequence)配列などが含まれる。
【表1】

【0005】
前記タンパク質は、細胞に結合する何れかの特定の輸送体または受容体に頼ることなく、生体膜を透過できるようである。さらに、これらはアルギニン及びリジンのような塩基性アミノ酸を高い比率で含有する。HIVウイルス再生産に必要なTat(transacting transcriptional activator)タンパク質の塩基性領域(つまり、49−57アミノ酸)は、タンパク質の細胞膜の透過過程において重要な役割を持つことが報告された。多数のアルギニンのユニットを有する多様なオリゴペプチドを合成し、これらを分子輸送体として活用するための多くの研究が報告されてきた。
【0006】
これらの研究から、8〜9個のアルギニン残基を有するオリゴマーが最も高い透過性を示し、またそれに結合した分子の生体膜を介す輸送の機能の向上において最も効果的であることが分かった。このことは、アルギニンのグアニジン基が、それに結合した分子の生体膜を介す輸送に重要な役割をすることを示唆する。
【0007】
ウェンダー(Wender)らは、ペプチドの生体膜透過性がペプチド内におけるグアニジン基の個数、リンカー鎖(linker chain)の長さ及びキラリティー等に依存するという事実に基づいて、ペプトイド(peptoid)分子輸送体を作製した。Jurkat細胞に対するFACS分析によって、L−アルギニン9量体がTatタンパク質(49−57アミノ酸)よりも生体膜透過輸送において20倍効果的であり、D−アルギニン9量体もまた、一層効果的な透過輸送効率を示すことが確認された(P.A.Wender,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:13003,2000)。これらの結果は、特定数のグアニジン基を有するペプチドの透過性が、アミノ酸のキラリティーによりあまり影響を受けないことを示唆する(米国特許第6,495,663号、韓国公開特許公報第2001−12809号)。
【0008】
しかし、このようなポリアルギニンペプチドまたは関連するペプトイド分子は生体内で毒性を示すのみならず、早い速度で代謝された後に肝臓と腎臓で速やかに除去されるという問題点がある。さらに、多数のグアニジン基を有するペプチドまたはペプトイドが塩基性環境でのみ螺旋構造を有するということは、これらの細胞膜透過性が、その2次元または3次元構造よりも、陽性に荷電したグアニジン基に主に影響を受けることを示す。
【0009】
本発明者らは、陽性荷電されたグアニジン基を糖または糖類似体に導入することで高密度の官能性を有した直鎖状または分枝状の分子輸送体を開発し、そのような分子輸送体が、これらに共有的またはイオン的に結合した様々な生理活性分子の生体膜輸送を顕著に向上させることを確認することによって本発明を完成するに至った。
【特許文献1】米国特許第6,495,663号
【特許文献2】韓国公開特許第2001−12809号
【非特許文献1】P.A.Wender,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:13003,2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、改善された生体膜透過性を有し、生理活性分子の生体膜輸送に効果的な糖またはその類似体を骨格とする分子輸送体、ならびにその製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、前記糖またはその類似体を骨格とする分子輸送体を含む、細胞内へ生理活性分子を送達するための組成物を提供する。
【0012】
本発明のまた他の目的は、前記糖またはその類似体を骨格とする分子輸送体を用いて細胞内へ生理活性分子を送達する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面に関して、下記の式1から5で表される、直鎖状または分枝状のグアニジン基を有する、糖または糖類似体を骨格とする分子輸送体化合物が提供される。
【化43】

【0014】
式中、
及びRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、−(CHNHR’、−(CHCOR’’、−COR’’’、−SOR’’’’または生理活性分子であり;R’、R’’、R’’’及びR’’’’はそれぞれ独立に、水素、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキルまたは生理活性分子であり;mは2から5の整数;およびlは1から5の整数であり;
は、
【化44】

【0015】
であり、nは1から12の整数である。
【化45】

【0016】
式中、
及びRはそれぞれ独立に、水素、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、−(CHNHR’、−(CHCOR’’、−COR’’’、−SOR’’’’または生理活性分子であり;R’、R’’、R’’’及びR’’’’は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキルまたは生理活性分子であり;mは2から5の整数;およびlは1から5の整数であり;
は、
【化46】

【0017】
であり、ここで、nは1から12の整数である。
【化47】

【0018】
式中、
Xは、
【化48】

【0019】
であり、
は−(CHNHR’であり、ここで、mは2から9の整数であり、R’は水素、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキルまたは生理活性分子であり;
は、
【化49】

【0020】
であり、ここで、nは1から12の整数である。
【化50】

【0021】
式中、
は、
【化51】

【0022】
であり、ここでnは1から12の整数である。
【化52】

【0023】
前記式中、
は、
【化53】

【0024】
であり、ここでnは1から12の整数である。
【0025】
本発明による式1及び2の化合物は、糖誘導体のヒドロキシル末端に8つのグアニジン基が導入された分子輸送体であり、これは、ここに分枝鎖が導入される場合、骨格中の標的官能基を高い密度に維持することが可能なものである。式1の化合物は、ソルビトール、マンニトールまたはガラクチトールの骨格を有するアルジトール(alditol)誘導体及びその塩を含み、例えば、下式6のソルビトール誘導体が挙げられる。また、式2の化合物は、myo−イノシトール(inositol)またはscyllo−イノシトールの骨格を有するイノシトール誘導体及びその塩を含み、例えば、下式7から9の化合物が挙げられる。
【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

【0026】
式中、R、R及びRは式1及び2にて定義される通りである。
【0027】
さらに、式3の分子輸送体化合物は、側鎖に7つのグアニジン基を有した二糖類(disaccharide)骨格を有し、その好適な例として下式10及び11の化合物並びにこれらの塩が挙げられる。
【化58】

【化59】

【0028】
式中、R及びRは式3に定義される通りである。
【0029】
式10及び11の化合物は二糖類誘導体であり、ここにおいて、式10の化合物はスクロースの骨格を、式11の化合物はα−ラクトース、β−ラクトースまたはマルトースの骨格を有する。
【0030】
前記式4及び5の化合物は、糖誘導体に6つのグアニジン基が導入された分子輸送体である。前記式4の化合物は、ソルビトール、マンニトール、またはガラクチトールの骨格を有するアルジトール誘導体及びその塩を含み、例えば、式12の化合物であるソルビトール誘導体及びその塩が挙げられる。さらに、前記式5の化合物は、myo−イノシトールまたはscyllo−イノシトールの骨格を有するイノシトール誘導体及びその塩を含み、例えば、下式13及び14の化合物並びにこれらの塩が挙げられる。
【化60】

【化61】

【化62】

【0031】
式中、Rは前記式4及び5に定義される通りである。
【0032】
前記式1から5、さらに具体的には式6から14の分子輸送体化合物は、生理活性分子に結合できる官能基を有しており、これにより、そこに結合した標的分子の生体膜を通した輸送を容易に行うことができる。ここで、生理活性分子とは、生物体における好ましくない既存の症状の診断、予防または治療のために生理的過程の調節に利用できるものであって、当該分野で公知である天然の、合成のまたは遺伝子操作による化学的または生物学的化合物をいう。好ましくは、本発明による分子輸送体化合物に結合することで細胞内に送達される生理活性分子には、分子量が100〜1,500g/molの有機化合物、高分子化合物(例えば、ペプチド及び核酸)および診断試薬などが含まれる。本発明による分子輸送体化合物は、前記式6から14に示したように、様々な鎖長の直鎖または分枝鎖を介してグアニジン基を保持した糖または糖類似体の骨格を有し、これによって優れた水溶性及び生体膜透過性を示す。従って、本発明による分子輸送体化合物は、医薬品、診断試薬または蛍光物質のような生理活性分子に共有結合またはイオン結合によって結合することができ、生体膜、例えば細胞膜、核膜または血液脳関門(blood−brain barrier)を容易に通過することができる。
【0033】
また、本発明は、以下の段階を含む、本発明に関する分子輸送体化合物を製造する方法を提供する:
1)ヒドロキシル基のアシル化反応を通じてアミノ酸側鎖を導入して中間体化合物を得る段階;
2)段階1)で得た化合物のアミノ酸側鎖の末端アミノ基に、保護されたグアニジン基を導入する段階;及び
3)段階2)で得た化合物からグアニジン基の保護基を除去し、分子輸送体化合物を提供する段階。
【0034】
この時、前記製造方法において段階1)及び2)の代りに、最初に、保護されたグアニジン基を有した末端アミノ酸側鎖を作製し、その後、アシル化反応により、保護された中間体化合物のヒドロキシ基に予め作製した側鎖を導入することも可能である。
【0035】
より具体的には、本発明による分子輸送体の製造方法は、糖またはその類似体の骨格の種類に応じて、以下のように説明され得る。
【0036】
式1及び2、好ましくは式6から9の分子輸送体化合物は、それぞれ、下式15から18の中間体化合物を出発原料として用いて、以下の段階によって作製される:
1)保護された中間体のヒドロキシル基にアシル化反応によってアミノ酸側鎖を導入する段階;
2)前記末端アミノ酸側鎖から保護基を除去する段階;
3)前記アミノ酸側鎖の末端アミノ基にグアニジン基を導入する段階;
4)前記段階3)で得た化合物のヒドロキシル基から保護基を除去し、生理活性分子に結合させる段階;及び
5)前記段階4)で得た化合物のグアニジン基からアミノ保護基を除去する段階。
【化63】

【化64】

【化65】

【化66】

【0037】
式中、R及びRは式1及び2に定義される通りである。
【0038】
前記式6の化合物を製造するための鍵となる中間体である式15の化合物は、D−グルコースといったD−アルドヘキソース(aldohexose)の1,6−OH位に位置選択的に保護基が導入されたアルジトール誘導体であって、下記反応式1で表される過程により製造することができる。
【化67】

【0039】
例としてD−グルコースを出発原料として用いた前記反応式1によれば、まず、D−グルコースの6−OHに選択的にトリチル(Tr)保護基を導入し;還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)による還元反応を通じて直鎖の形態であるD−ソルビトールを製造し;および、その1−OHに選択的にt−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基を導入することで、式15(R=TBDPS,R=Tr)の中間体を製造することができる。
【0040】
また、式7の化合物の製造のための式16の中間体は、myo−イノシトールを出発原料として2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトールを合成し;その1−OHまたは4−OHに位置選択的に、異なる保護基、例えば、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)またはベンジル(Bn)保護基を導入することで製造することができる。
【0041】
式8の化合物の製造のための式17の中間体は、myo−イノシトールを出発原料として1,6:3,4−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトールを製造し;その2−OHまたは5−OHに位置選択的に、異なる保護基、例えばp−メトキシベンジル(PMB)またはベンジル(Bn)保護基を導入することで製造することができる。
【0042】
また、式9の化合物の製造のための式18の中間体は、ミツノブ反応(Mitsunobu reaction)を用いてmyo−イノシトールの2−OHの立体化学を反転させ;それをもとに1,6:2,4−ジ−O−イソプロピレン−scyllo−イノシトールを製造し;及び、その2−OHまたは5−OHに位置選択的に、異なる保護基、例えばPMB、ベンゾイル(Bz)またはBn保護基を導入することで製造することができる。
【0043】
段階1)において、前述のように、様々な長さのアミノ酸側鎖が、アシル化反応によって保護された中間体に導入される。式16から18の中間体(式15の中間体を除く)は、アシル化反応の前に、アセトニド保護基の脱保護に供される。アシル化反応は、各中間体化合物を、縮合剤(condensing agent)、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−エチルカルボジイミド塩酸塩の存在下で、アミノ保護基、例えば、カルボベンゾキシ(carbobenzoxy)(Cbz)基で保護された様々な側鎖長を有するアミノ酸と反応させることで行われる。本発明に用いられる様々な側鎖長を有するアミノ酸は、市販のω(omega)−アミノ酸から得ることができ、例えば末端のアミノ基が適切な保護基で保護されたN,N−ジ−アミノプロピルアミノカプロン酸(aminocaproic acid)の誘導体が好ましい。
【0044】
前記アシル化反応は、それぞれの中間体の官能基1当量当たり、様々な側鎖長を有するアミノ酸を1.5から2.5当量を加えて25から40℃の温度で16から72時間行うことができる。
【0045】
段階2)において、アミノ保護基は、側鎖の末端アミノ基から除去される。脱保護は、触媒(例えばパラジウム(Pd)、ニッケル、または白金)を段階1)で得られる化合物に添加し、水素雰囲気下で混合物を撹拌後、濾過して行うことができる。
【0046】
段階3)において、前記段階2)で得られた化合物の脱保護されたアミノ基は、有機溶媒中、塩基存在下で、前記化合物とN,N’−ジ−Boc−N’’−トリフリルグアニジン(N,N’−di−Boc−N’’−triflylguanidine)またはN,N’−ジ−Boc−S−メチルイソチオ尿素(N,N’−di−Boc−S−methylisothiourea)とを反応させ、グアニジン基に変換される(T.T.Baker,et al.,J.Org.Chem.65:9054,2000;A.E.Miller及びJ.J.Bischoff,Synthesis 777,1986)。この時、側鎖の末端アミン残基にグアニジン基を導入し、その後、グアニジン基を有した側鎖を、アシル化反応によって中間体骨格に直接導入することができる。前記段階で用いられる有機溶媒の例は、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、酢酸エチル、1,4−ジオキサンなどが挙げられ、塩基としては、トリエチルアミンなどが挙げられる。前記反応は、25〜40℃の温度で16〜72時間行うことができる。
【0047】
段階4)において、前記段階3)で得た化合物から保護基を除去し、露出したヒドロキシル基を、生理活性分子またはその誘導体との結合に使用してよい。また、グアニジン基を有する化合物から保護基の1つを選択的に除去し、蛍光物質、例えばダンシル(dansyl;5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホニル)、FITC(フルオレセイン)、ローダミン(Rhodamine)を前記化合物に結合させることで導入することができる。
【0048】
最後に、前記段階4)で得た化合物のグアニジン基から保護基を除去して、本発明による式6から9の分子輸送体化合物が得られる。
【0049】
下記反応式2は式15の中間体から式6の分子輸送体化合物を製造する過程を例示したものである。
【化68】

【0050】
また、二糖類骨格を有する分子輸送体の代表的な例として用いられた式10及び11の化合物は、それぞれ下式19及び20の中間体から、前記反応式2に示される方法と同様に製造することができる。
【化69】

【化70】

【0051】
式19及び20の中間体は、それぞれスクロースおよびラクトースの1’−OHまたは1−OH位に位置選択的に側鎖を導入することで、式10及び11の化合物の製造に使用してよい。より具体的には、式19の中間体は、プロテイナーゼN(proteinase N)といった酵素を用いて、スクロースの1’−OH位に予め作製した側鎖を選択的に導入することによって製造され;式20の中間体は、ラクトースのベンゾイル化反応を行い、その1−OH位からベンゾエート保護基を選択的に除去し、その後、側鎖アルコールを有する糖誘導体のグリコシル化(glycosylation)によって製造される。
【0052】
式10の化合物は、式19の中間体に、N−Boc(N−tert−ブチルロキシカルボニル)で保護された多様な側鎖長を有するオメガアミノ酸(ω−amino acid)、例えば4−アミノブタン酸、6−アミノカプロン酸または8−アミノカプリル酸とアシル化反応させ;そのアミン末端残基から保護基を除去し;そこにグアニジン基を導入することで製造される。このように製造された式10の化合物のアジド官能基を、パラジウム触媒および水素雰囲気下で、アミンに還元させれば、医薬品、蛍光物質及び診断試薬のような生理活性分子をアミノ基に結合させることができる。
【0053】
式11の化合物は、上述する式10の化合物の製造と同様な方法によって、式20の中間体からベンゾエート保護基を除去し;そこに、アシル化反応によって様々な側鎖長のωアミノ酸を導入し;その末端アミン残基から保護基を除去し;および、そこにグアニジン基を導入して製造することができる。
【0054】
下記の反応式3は、式19の中間体から式10の化合物を製造する過程を例示したものである。
【化71】

【0055】
また、6つのグアニジン基を有する式4及び5の化合物、より具体的には式12〜14の化合物は、下記の式21のD−ソルビトールを含むアルジトール類(J.S.Brimacombe,及びJ.M.Webber in「The Carbohydrate:Chemistry and Biochemistry」,Ed.W.Pigman,D.Horton,2nd Ed.1A,Academic Press,1972)、および式22及び23のmyo−及びscyllo−イノシトールを含む何れかのイノシトールの立体異性体(Y.U.Kwon,et al.,J.Org.Chem.67:3327,2002)を中間体として用いて製造することができる。
【化72】

【化73】

【化74】

【0056】
下記の反応式4に示すように、式22のmyo−イノシトールの全てのヒドロキシ基それぞれに、アシル化反応によって、N−Bocで保護された多様な鎖長のアミノ酸側鎖を導入する。N−Boc保護基を除去し、グアニジン基を導入した後、保護基をTFA(トリフルオロ酢酸)またはHClガスで除去して式13の化合物を合成する。式12及び14の化合物も、前記の方法と同様に、それぞれ式21及び23の中間体から製造される。
【化75】

【0057】
本発明による分子輸送体化合物は、6から8つのグアニジン基を有する糖または糖類似体の誘導体であり、および、医薬品または診断試薬といった生理活性分子と共有結合またはイオン結合により結合してよい。このように作製した結合体は、細胞への取り込みが有意に増強されており、このことは、細胞膜、核膜及び血液脳関門といった生物学的障壁を克服したことを示している。
【0058】
これにより、本発明による分子輸送体化合物は、医薬品及び診断試薬のような多様な治療用分子のみならず、ペプチド及び核酸のような高分子を細胞内に輸送するのに有用である。
【0059】
従って、本発明は、前記式1から5の分子輸送体化合物の1つを含む、生体膜を透過して細胞内に生理活性分子を送達するための組成物を提供する。さらに、本発明は、前記式1から5の分子輸送体化合物の1つを用いて、生体膜を通して生理活性分子を細胞内に送達させる方法を提供する。
【0060】
本発明による分子輸送体に結合し細胞内へ送達され得る生理活性分子としては、分子量が100〜1500g/molである有機化合物、ならびにペプチド及び核酸といった高分子化合物が含まれる。式1から5の分子輸送体化合物は、イオン結合によってイオン複合体(ionic complex)を形成することにより生理活性物質を細胞内に送達し、特に、式1から3の分子輸送体化合物はそれぞれ、共有結合ならびにイオン結合により、生理活性分子との結合体(conjugate)を形成することができる。
【発明の効果】
【0061】
本発明による分子輸送体化合物は、糖または糖類似体の骨格構造にグアニジン基を導入して製造されたものであって、例えば細胞膜、核膜、血液脳関門などの生体膜を容易に透過でき、これにより、従来生体膜通過が困難であるため医薬品として開発し難かった治療用または診断用化合物や遺伝子またはタンパク質などのような巨大分子を対象細胞、組職または臓器内へ輸送するのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施例により制限されることはない。
【0063】
製造例1:保護基を有するソルビトールの製造
<1−1>α−D−グルコースへのトリチル保護基の導入
【化76】

【0064】
α−D−グルコース(10g、55.5mg)を無水ピリジン(120ml)に溶解し、そこにトリエチルアミン(triethylamine)(38.7ml、277.5mmol)を添加した。前記混合物にトリチルクロリド(tritylchloride)(18.3g、65.5mmol)を滴加し、室温で1日間撹拌した。反応終了後、前記反応物をジクロロメタン(CHCl)(250ml)で希釈し、飽和NaHCO水溶液(300ml)で洗浄した。得られた有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:3→1:1→3:2)で精製して茶色固体状の標題化合物(16.87g)を得た。
H−NMR(CDOD):δ3.25−3.38(m,4H),3.59(t,J=9.2Hz,1H),3.94(m,1H),5.13(d,J=3.7Hz,2H),7.11−7.30(m,9H),7.42(d,J=9.4Hz,6H)
MS(FAB)m/z445.22(M+Na)。
【0065】
<1−2>保護されたα−D−グルコースからのソルビトールの製造
【化77】

【0066】
製造例1−1で得られた化合物(10g、23.66mmol)をメタノール(200ml)に溶解し、そこに水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)(2.18g、59.18mmol)を滴加した後、室温で7時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した後、水とメタノールの混合溶媒で再結晶して白色固体状の標題化合物(6.68g)を得た。
H−NMR(CDOD):δ3.25−3.33(m,4H),3.47−3.51(m,2H),3.85−3.87(m,2H),7.14−7.26(m,9H),7.42(d,J=8.8Hz,6H)
MS(FAB)m/z447.29(M+Na)。
【0067】
<1−3>t−ブチルジフェニルシリル保護基の導入
【化78】

【0068】
前記製造例1−2で得られた化合物(5g、11.77mmol)、トリエチルアミン(4.9ml、35.33mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(4−(dimethylamino)pyridine)(287.8mg、0.235mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−dimethylformamide)(50ml)に溶解した。前記混合物にt−ブチルクロロジフェニルシラン(tert−Butylchlorodiphenylsilane)(6.12ml、23.55mmol)を1時間にわたって滴加し、室温で1日間撹拌した。反応終了後、前記反応物を酢酸エチル(200ml)で希釈し、水(150ml)と飽和NaCl水溶液(25ml)で数回洗浄した。得られた水層を、酢酸エチル(50ml)で二回抽出し、有機層を合わせてNaSOで乾燥し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:へキサン=1:1→3:2)に供して、白色の泡状(foamy)固体の標題化合物(5.5g)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.06(s,9H),2.72(brs,1H),3.01(brs,1H),3.21(brs,1H),3.35(d,J=5.5Hz,2H),3.73−3.83(m,6H),7.22−7.65(m,25H)
MS(FAB)m/z686.24(M+Na)。
【0069】
製造例2:カルボベンゾキシ保護基を有するアミノカプロン酸の誘導体の製造I
<2−1>N−ジ−シアノエチル化 6−アミノカプロン酸の製造
【化79】

【0070】
6−アミノカプロン酸(6−aminocaproic acid)(2.5g、0.019mol)に過量のアクリロニトリル(acrylonitrile)(94.1ml、1.43mol)及び氷酢酸(21.8ml、0.381mol)を滴加し、30時間還流した。反応に用いられて残った過量のアクリロニトリルは、減圧蒸発させて除去し、酢酸はトルエンと共に減圧蒸発させて除去した。得られた反応物を酢酸エチル(200ml)で希釈し、水で数回洗浄した。得られた有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:へキサン=4:1)で精製して粘着性のある茶色シロップ(brownish syrup)の標題化合物(3.5g)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.35−1.49(m,4H),1.65(t,J=7.5Hz,2H),2.36(t,J=7.3Hz,2H),2.46−2.84(m,6H),2.86(t,J=6.7Hz,4H),10.35(brs,1H)
MS(FAB)m/z238.08(M+H)。
【0071】
<2−2>シアノ基のアミノ基への変換
【化80】

【0072】
前記製造例2−1で得た化合物(2.2g、1.05mmol)を95%のエタノール(45ml)に溶解し、そこに1M水酸化ナトリウム水溶液(15ml)及びラネーニッケル(Raney nickel)触媒(4g)を加えた後、H(50psi)雰囲気下で24時間反応させた。反応終了後、セライトで前記反応物から触媒を除去し、95%のエタノールで洗浄した。得られた濾液を減圧濃縮し粘着性のある白色固体状の標題化合物(2.25g)を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.31−1.68(m,6H),1.89(m,4H),2.22(t,J=7.2Hz,2H),2.71−2.76(m,6H),2.98(t,J=7.5Hz,4H)
MS(FAB)m/z246.15(M+H)。
【0073】
<2−3>カルボベンゾキシ(Cbz)基によるアミノ基の保護
【化81】

【0074】
前記製造例2−2で得た化合物(1.1g、6.11mmol)を1,4−ジオキサン(1,4−dioxane)と水との混合液(2:1)(45ml)に溶解し、重炭酸ナトリウム(2.56g、30.57mmol)を添加した後、カルボベンゾキシクロリド(Cbz−Cl)(2.7ml、18.34mmol)を0℃で30分かけてゆっくりと滴加した。室温で15時間撹拌した後、反応物を濃縮し、水(20ml)を添加した。そこに10%のHClを加えてpHを2に調節し、その後酢酸エチルで抽出した。得られた有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=9:1)で精製して白色泡状固体の標題化合物(1.4g)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.33−1.61(m,6H),1.94(brs,4H),2.27(t,J=6.8Hz,2H),2.93(brs,6H),3.20−3.22(m,4H),5.01(s,4H),5.65(brs,2H),7.31(brs,10H)
MS(FAB)m/z514.21(M+H)。
【0075】
製造例3:カルボベンゾキシ保護基を有するアミノカプロン酸誘導体の製造II
<3−1>N−ジ−メチルアクリル化6−アミノカプロン酸の製造
【化82】

【0076】
6−アミノカプロン酸(1.5g、0.0114mol)に、過量のメチルアクリレート(methylacrylate)(77.3ml、0.857mol)及び氷酢酸(13.1ml、0.228mol)を滴加し、30時間還流した。反応に用いられて残った過量のメチルアクリレートおよび酢酸は、減圧蒸発して除去した。得られた反応物を酢酸エチル(200ml)で希釈し、水で数回洗浄した。得られた有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:へキサン=4:1)で精製して粘着性の茶色シロップの標題化合物(1.85g)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.30−1.62(m,6H),2.30(t,J=7.4Hz,2H),2.50(t,J=6.8Hz,6H),2.80−2.86(m,4H),3.66(s,6H)
MS(FAB)m/z304.18(M+H)。
【0077】
<3−2>メチルアクリレートとエチレンジアミンとの反応
【化83】

【0078】
前記製造例3−1で得られた化合物(1.2g、3.95mmol)及びエチレンジアミン(ethylenediamine)(16ml、237.3mmol)をメタノール(20ml)に溶解し、室温で72時間撹拌した。反応後に残った過量のエチレンジアミンを減圧蒸発して除去した後、明るい茶色シロップ状の標題化合物(1.4g)を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.26−1.64(m,6H),2.16−2.22(m,2H),2.27−2.56(m,6H),2.71−2.88(m,8H),3.29−3.31(m,4H)
MS(FAB)m/z382.19(M+Na)。
【0079】
<3−3>カルボベンゾキシ(Cbz)基によるアミノ基の保護
【化84】

【0080】
前記製造例3−2で得た化合物(930mg、2.58mmol)を1,4−ジオキサンと水との混合液(2.5:1)(20ml)に溶解し、そこに重炭酸ナトリウム(1.52g、18.11mmol)を添加した後、徐々にカルボベンゾキシクロリド(1.4ml、10.34mmol)を0℃で30分間滴加した。室温で15時間撹拌した後、反応物を濃縮し、水(20ml)で希釈し、10%のHClを添加してpHを2に調節した後、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層をNaSOで乾燥した後に減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=9:1)で精製して白色固体状の化合物(1.2g)を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.23−1.71(m,6H),2.13(t,J=6.8Hz,2H),2.30−2.48(m,6H),2.69(brs,4H),3.21−3.26(m,8H),5.04(s,4H),7.31−7.32(m,10H)
MS(FAB)m/z650.19(M+Na)。
【0081】
<3−4>アミノ基のN,N’−ジ−Boc−グアニジン基への変換
【化85】

【0082】
前記製造例3−2で得た化合物(500mg、1.39mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(6ml)に溶解し、トリエチルアミン(0.7ml、4.86mmol)及びN,N’−ジ−Boc−N’’−トリフリルグアニジン(1.36g、3.47mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。反応終了後、前記反応混合物をジクロロメタン(100ml)で希釈し、飽和NaCl水溶液及び水で数回洗浄した。得られた有機層をNaSOで乾燥した後に減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=9:1)で精製して白色泡状固体の標題化合物(800mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.45−1.66(m,42H),2.41−2.44(m,6H),2.84(brs,4H),3.40−3.54(m,10H),8.18(brs,2H),8.64(brs,2H),11.44(brs,2H)
MS(FAB)m/z844.33(M+H)。
【0083】
製造例4:2,2,2−トリフルオロエチル−3−アジドプロピン酸の製造
<4−1>2,2,2−トリフルオロエチル−3−ブロモプロピオン酸の製造
【化86】

【0084】
2,2,2−トリフルオロエタノール(15ml、0.15mol)およびトリエチルアミン(4.5ml、32.12mmol)をジクロロメタン(30ml)に加え、温度を0℃に下げた。10分後、3−ブロモプロピオニルクロリド(2.94ml、29.2mmol)を徐々に滴加した。前記混合液を室温まで温め、5時間撹拌した。水を加えて反応を停止し、混合物を酢酸エチルで抽出し、溶媒を減圧蒸発した。固体状の不純物を濾過して液体状の標題化合物(3.53g)を得た。
H−NMR(CDCl):δ3.05(t,J=6.7Hz,2H),3.60(t,J=6.7Hz,2H),4.54(q,J=8.4Hz,2H)。
【0085】
<4−2>2,2,2−トリフルオロエチル−3−アジドプロピン酸の製造
【化87】

【0086】
前記製造例4−1で得た化合物(3.71g、15.8mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(15ml)に溶解し、アジ化ナトリウム(2.72g、63.2mmol)およびヨウ化テトラブチルアンモニウム(0.69g、3.2mmol)を添加し、室温で12時間撹拌した。水を加えることで反応を停止させ、反応混合物を塩水で洗浄した後、溶媒を減圧蒸発した。固体状の不純物を濾過して黄色の液体状の標題化合物(2.76g)を得た。
H−NMR(CDCl):δ2.70(t,J=6.4Hz,2H),3.63(t,J=6.4Hz,2H),4.54(q,J=8.4Hz,2H)。
【0087】
製造例5:ラクトース誘導体の製造
<5−1>オクタ−O−ベンゾイル−α−ラクトースの製造
【化88】

【0088】
α−ラクトース(2.3g、6.38mmol)を無水ピリジン(30ml)に溶解し、0℃でベンゾイルクロリド(benzoyl chloride)(8.9ml、76.6mmol)を添加して撹拌した。その後、室温に昇温してさらに8時間撹拌した。反応終了後、前記反応混合物を酢酸エチルで抽出し、1N HCl、飽和NaHCO及び塩水で洗浄した。前記抽出物をさらにMgSOで乾燥させ、減圧濃縮させた後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)で精製して白色固体状の化合物(7.19g)を得た。
m.p=124〜126℃
[α]=+113(c0.8、クロロホルム)
H−NMR(CDCl):δ3.73−3.86(m,2H,H−4&H−5’),3.94(t,J=6.7Hz,1H,H−5),4.32−4.47(m,2H,H−6’),4.60(s,2H,H−6),4.99(d,J=7.9Hz,1H,H−1’),5.42(dd,J=10.3Hz,3.3Hz,1H,H−3’),5.66(dd,J=10.3Hz,3.7Hz,1H,H−2),5.78−5.84(m,2H,H−2’&H−4’),6.25(t,J=9.9Hz,1H,H−3),6.79(d,J=3.7Hz,1H,H−1),7.20−8.16(m,40H,arom)。
【0089】
<5−2>2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−ベンゾイルラクトースの製造
【化89】

【0090】
前記製造例5−1で得た化合物(1g、0.85mmol)をメタノール:テトラヒドロフラン(3:7)(10ml)に溶解させ、0℃でアンモニアガスを10分間流した。反応混合液を室温まで温め、12時間撹拌した。反応終了後、前記反応物を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製して白色泡状固体の標題化合物(685.8mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ3.73−3.86(m,2H,H−4&H−5’),4.07−4.11(m,H−5’α&H−5’β),4.23−4.37(m,H−6’),4.44−4.56(m,H−6),4.90(d,J=8.0Hz,H−1’β),4.94(d,J=7.9Hz,1H,H−1’α),5.26(dd,J=10.2Hz,3.5Hz,H−3’α&H−3’β),5.34(d,J=1.7Hz,H−1β),5.41(dd,J=10.3Hz,3.1Hz,H−2α&H−2β),5.64(d,J=2.5Hz,1H,H−1α),5.70−5.76(m,H−4’α and H−2’α),5.81(t,J=9.0Hz,H−3β),6.18(t,J=9.5Hz,1H,H−3α),7.16−7.98(m,35H,arom)
MS(FAB)m/z1093.27(M+Na)。
【0091】
製造例6:N,N’−ジ−Boc−グアニジン基を有するアミノカプロン酸の製造
【化90】

【0092】
6−アミノカプロン酸(0.53g、4.08mmol)をジクロロメタン(20ml)に溶解し、トリエチルアミン(1.14ml、8.16mmol)およびN,N’−ジ−Boc−N’’−トリフリルグアニジン(1.23g、3.14mmol)を添加して、室温で24時間撹拌した。2M NaHSOおよび水で洗浄し、得られた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体状の標題化合物(0.82g)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.48(s、24H)、2.35(t、J=7.4Hz、2H)、3.38(brs、2H)、8.36(brs、1H、NH)、8.6−10.7(brs、2H、NH、OH)。
【0093】
実施例1:8つのグアニジン基を有するアルジトール誘導体の製造I
<1−1>アシル化によるソルビトールへの側鎖の導入
【化91】

【0094】
前記製造例1で得た1,6−OHが保護されたソルビトール化合物(100mg、0.15mmol)、前記製造例2で得た化合物(757.5mg、1.2mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(27.6mg、0.226mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(5ml)に溶解し、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−エチルカルボジイミド塩酸塩(231.3mg、1.2mmol)を加えて、室温で1日間撹拌した。反応終了後、前記反応混合物をジクロロメタン(50ml)で抽出し、抽出物を、飽和NaHCO水溶液(30ml)と水で数回洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=9:1)で精製して、骨格構造に4つの側鎖が導入された白色泡状固体の標題化合物(263mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.01(s,9H),1.17−1.51(m,40H),1.86−2.32(m,32H),3.31(brs,16H),3.60−3.88(m,2H),3.93−4.12(m,2H),4.79−4.92(m,2H),4.98(s,16H),5.59(brs,8H),5.61−5.88(m,2H),7.13−7.59(m,65H)
MS(MALDI−TOF)m/z2668.40(M+Na)。
【0095】
<1−2>側鎖の末端アミノ残基からカルボベンゾキシ基の除去
【化92】

【0096】
前記実施例1−1で得た化合物(150mg、0.056mmol)をメタノール(4ml)に溶解し、Pd/C(100mg)を添加した。前記混合物を室温で15時間に亘ってH(50psi)ガス雰囲気下で撹拌し、その後、セライトで濾過してPd/Cを除去した。得られた濾液を減圧濃縮して粘着性のある白色固体状の標題化合物(87mg)を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.02(s,9H),1.16−1.82(m,24H),2.07−2.38(m,24H),3.03−3.28(m,40H),3.56−3.80(m,2H),3.91−4.13(m,2H),4.87−5.13(m,2H,merged with CD3OD peak),5.88(dd,J=14.2Hz,1.9Hz,2H),7.24−7.68(m,25H)
MS(MALDI−TOF)m/z1593.89(M+Na)。
【0097】
<1−3>アミノ基のN,N’−ジ−Boc−グアニジン基への変換
【化93】

【0098】
前記実施例1−2で得た化合物(75mg、0.0047mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(6ml)に溶解し、トリエチルアミン(0.24ml、0.166mmol)とN,N’−ジ−Boc−N’’−トリフリルグアニジン(410mg、0.105mmol)を加えて、室温で2日間撹拌した。反応終了後、前記反応混合物をジクロロメタン(60ml)で希釈し、塩水と水で数回洗浄した。得られた有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)で精製し、8つのグアニジン基が導入された白色泡状固体の標題化合物(104mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.03(s,9H),1.18−1.54(m,168H),2.28−2.64(m,24H),2.78−3.28(m,24H),3.59(brs,16H),3.89−4.21(m,4H),4.82(brs,1H),5.11(brs,1H),5.63(brs,1H),5.89(brs,1H),7.26−7.67(m,25H),8.39(brs,8H),11.35(brs,8H)
MS(MALDI−TOF)m/z3533.34(M+Na)。
【0099】
<1−4>6−O−トリチル保護基の除去
【化94】

【0100】
前記実施例1−3で得た化合物(100mg、0.0028mmol)をメタノール:ジクロロメタンの混合液(3:1)(5ml)に溶解し、触媒量の塩化アセチルを滴加した後、室温で4時間撹拌した。反応終了後、過量の酸を中和させるためにNaHCO(60mg)を添加し、30分間撹拌した。反応物を濃縮させてジクロロメタン(30ml)で希釈した後、水で数回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=9:1)で精製して粘着性のある白色固体状の標題化合物(80mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.01(s,9H),1.12−1.59(m,168H),2.22−2.60(m,24H),2.77−3.33(m,24H),3.57(brs,16H),3.88−4.21(m,4H),4.80(brs,1H),5.13(brs,1H),5.66(brs,1H),5.88(brs,1H),7.25−7.68(m,10H),8.33(brs,8H),11.42(brs,8H)
MS(MALDI−TOF)m/z3291.13(M+Na)。
【0101】
<1−5>蛍光物質の導入
【化95】

【0102】
前記実施例1−4で得た化合物(80mg、0.024mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(7.5mg、0.0061mmol)をアセトニトリル(3ml)に溶解し、5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホニルクロリド(8.5mg、0.0032mmol)を加えて、室温で15時間撹拌した。反応終了後、前記反応混合物に飽和NHCl水溶液(10ml)を加えて中和させ、酢酸エチルで抽出し、塩水及び水で洗浄した。得られた有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=15:1〜10:1)で精製し、蛍光物質が導入された粘着性のある黄色固体状の標題化合物(80mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.02(s,9H),1.13−1.61(m,168H),2.11−2.45(m,24H),2.88(brs,6H),3.06−3.36(m,24H),3.57(brs,16H),3.88−4.21(m,4H),4.80(brs,1H),5.13(brs,1H),5.66(brs,1H),5.80(brs,1H),7.14(d,J=7.4Hz,1H),7.22−7.78(m,27H),8.16−8.19(m,2H),8.39(brs,8H),11.45(brs,8H)
MS(MALDI−TOF)m/z3523.44(M+Na)。
【0103】
<1−6>N,N’−ジ−Boc−グアニジン基からN−Boc保護基の除去
【化96】

【0104】
前記実施例1−5で得た化合物(55mg、0.0015mmol)をトリフルオロ酢酸:ジクロロメタンの混合液(1:1)(2ml)に溶解し、室温で4時間撹拌した。反応終了後、前記反応物をトルエン(3ml)と共に二回減圧蒸発してトリフルオロ酢酸(TFA)を除去した。これを再び2時間に亘って高真空下で蒸発させた後、水(2ml)に溶解して凍結乾燥させ、末端グアニジン基のN−Boc保護基が除去された白色泡状固体の標題化合物(43mg)
【化97】

【0105】
を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.01(s,9H),1.23−1.81(m,40H),1.98(brs,16H),2.27(brs,8H),2.81(s,6H),3.19−3.25(m,24H),3.88−4.21(m,4H),4.84(brs,1H),5.18(brs,1H),5.60(brs,1H),5.81(brs,1H),7.13−7.78(m,13H),8.16(brs,2H),8.44(brs,1H)
MS(MALDI−TOF)m/z1922.52(M+Na)
UVλmax(HO,25℃)334nm。
【0106】
実施例2:8つのグアニジン基を有するアルジトール誘導体の製造II
<2−1>アシル化によるソルビトールへの側鎖の導入
【化98】

【0107】
前記製造例1で得た1,6−OH位置が保護されたソルビトール化合物(75mg、0.113mmol)、製造例3で得た化合物(763mg、0.905mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(20.7mg、0.169mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(6ml)に溶解し、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−エチルカルボジイミド塩酸塩(173.5mg、0.905mmol)を加えて、室温で1日間撹拌した。反応終了後、前記反応混合物をジクロロメタン(60ml)で抽出し、飽和NaHCO水溶液と水で数回洗浄した。得られた有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=9:1)で精製し、骨格構造に4つの側鎖が導入された白色泡状固体の標題化合物(278mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.01(s,9H),1.40−1.53(m,168H),2.19−2.27(m,32H),2.66(brs.,16H),3.31−3.58(m,32H),3.63−3.92(m,2H),4.01(brs.,2H),4.23(brs.,1H),4.88−5.12(m,2H),5.48(brs,1H),5.73(brs,1H)7.16−7.58(m,25H),7.94(brs.,8H),8.51(brs.,8H),11.35(brs.,8H)
MS(MALDI−TOF)m/z3989.84(M+Na)。
【0108】
<2−2>6−O−トリチル保護基の除去
【化99】

【0109】
前記実施例2−1で得た化合物(150mg、0.0037mmol)をメタノール:ジクロロメタンの混合液(3:1)(5ml)に溶解し、触媒量の塩化アセチルを滴加した後、室温で4時間撹拌した。過量の酸を中和させるためにNaHCO(70mg)を添加して30分間撹拌した。反応物を濃縮させてジクロロメタン(30ml)で希釈した後、水で数回洗浄した。得られた有機層をNaSOで乾燥した後に減圧濃縮してカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=9:1)で精製し、粘着性のある白色固体状の標題化合物(107mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.02(s,9H),1.33−1.55(m,168H),2.10−2.23(m,32H),2.68(brs,16H),3.28−3.55(m,32H),3.60−3.82(m,2H),3.97(brs,1H),4.20(brs,1H),4.77−5.09(m,2H),5.33(brs,1H),5.78(brs,1H),7.26−7.62(m,10H),7.92(brs,8H),8.36(brs,8H),11.45(brs,8H)。
【0110】
<2−3>蛍光物質の導入
【化100】

【0111】
前記実施例2−2で得た化合物(100mg、0.0026mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(8.2mg、0.0067mmol)をアセトニトリル(3ml)に溶解し、5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホニルクロリド(9.4mg、0.0035mmol)を加えて、室温で16時間撹拌した。反応終了後、飽和NHCl水溶液(10ml)を加えて反応物を中和させた後に酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄した。得られた有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮した後にカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1〜10:1)で精製し、蛍光物質が導入された粘着性のある黄色固体状の標題化合物(68mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.09(s,9H),1.44−1.56(m,168H),2.23(brs,32H),2.71(brs,16H),2.86(s,6H),3.37−3.52(m,32H),3.60−3.84(m,2H),4.01(brs,1H),4.23(brs,1H),4.77−5.11(m,2H),5.40(brs,1H),5.88(brs,1H),7.15(d,J=7.5Hz,1H),7.22−7.73(m,12H),7.89−8.14(m,10H),8.36(brs,9H),11.42(brs,8H)
MS(MALDI−TOF)m/z1483.99(M+Na)。
【0112】
<2−4>N,N’−ジ−Boc−グアニジン基からN−Boc保護基の除去
【化101】

【0113】
前記実施例2−3で得た化合物(50mg、0.0012mmol)をトリフルオロ酢酸:ジクロロメタンの混合液(1:1)(2ml)に溶解し、室温で4時間撹拌した。反応終了後、前記反応混合物をトルエンと共に二回減圧蒸発してトリフルオロ酢酸を除去した。2時間に亘って高真空下で蒸発させた後、水(2ml)に溶解して凍結乾燥させ、末端グアニジン基のN−Boc保護基が除去された白色泡状固体の標題化合物(41mg)
【化102】

【0114】
を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.01(s,9H),1.26−1.88(m,32H),2.11−2.32(m,16H),2.72(brs,16H),2.88(s,6H),3.27(brs,40H),3.66−3.93(m,4H),4.89−5.11(m,2H),5.56(brs,1H),5.88(brs,1H),7.15−7.74(m,13H),8.18(brs,2H),8.48(brs,1H)
MS(MALDI−TOF)m/z2145.35((M−C1212NOS)+Na)
UVλmax(HO,25℃)336nm。
【0115】
実施例3:8つのグアニジン基を有するイノシトール誘導体の製造I
式16の中間体myo−イノシトールからアセトニド保護基を除去した後、前記実施例1−1〜1−6に記載された方法と同様に、脱保護した中間体をアシル化反応に供し、そこに側鎖を導入し、導入された側鎖のアミノ基をグアニジン基に変換させることによって8つのグアニジン基を有するイノシトール誘導体化合物(式7)を製造した。
【0116】
実施例4:8つのグアニジン基を有するイノシトール誘導体の製造II
式17の中間体myo−イノシトールからアセトニド保護基を除去した後、前記実施例1−1〜1−6に記載された方法と同様に、脱保護した中間体をアシル化反応に供し、そこに側鎖を導入し、導入された側鎖のアミノ基をグアニジン基に変換させ、8つのグアニジン基を有するイノシトール誘導体化合物(式8)を製造した。
【0117】
実施例5:8つのグアニジン基を有するイノシトール誘導体の製造III
式18の中間体myo−イノシトールからアセトニド保護基を除去した後、前記実施例1−1〜1−6に記載された方法と同様に、脱保護した中間体をアシル化反応に供し、そこに側鎖を導入し、導入された側鎖のアミノ基をグアニジン基に変換させ、8つのグアニジン基を有するイノシトール誘導体化合物(式9)を製造した。
【0118】
実施例6:7つのグアニジン基を有する二糖類誘導体の製造I
<6−1>1’−O−(3−アジドプロピオニル)スクロースの製造
【化103】

【0119】
プロテイナーゼN(Proteinase N)(1.00g、5.6U/mg、Fluka社製)を3次蒸留水(200ml)に5mg/mlの濃度で溶解し、0.1M KOHで酵素溶液のpHを7.8に合わせた。液体窒素で酵素溶液を急速冷却した後、48時間凍結乾燥させた。N,N−ジメチルホルムアミド:水の混合液(93:7)(11.6ml)にスクロース(4.7g、3.73mmol)を溶解し、そこに活性化されたプロテイナーゼN(691mg)を添加した。製造例4で得た化合物(0.90g、4.56mmol)を添加して45℃で3日間撹拌した。反応終了後、N,N−ジメチルホルムアミドで反応物を洗浄して濾過した。得られた濾液を減圧蒸発した後にカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン:メタノール:水=14:5:5:1)で精製して黄色泡状固体の標題化合物(1.25g)を得た。
H−NMR(CDOD):δ2.65(t,J=6.3Hz,2H,H),3.30−3.43(m,2H,H2,H4),3.59(t,J=6.3Hz,2H,Hα),3.65−3.83(m,7H,H5,H6α,H6’α,H’5,H6β,H3,H6’β),4.02−4.09(m,2H,H3’,H4’),4.21(d,J=12.0Hz,1H,H1’β),4.41(d,J=12.0Hz,H1’α),5.40(d,J=3.8Hz,1H,H1)
MS(FAB)m/z462.09(M+Na)。
【0120】
<6−2>アシル化による側鎖の導入
【化104】

【0121】
前記実施例6−1で得た化合物(200mg、0.46mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(84mg、0.68mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(5ml)に溶解し、6−(Boc−アミノ)カプロン酸(6−Boc−aminocaproic acid)(2.05g、10.1mmol)および1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−エチルカルボジイミド塩酸塩(1.75g、9.1mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。反応終了後、前記反応物をジクロロメタンで抽出し、飽和NaHCOと水で数回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮した後にカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:へキサン=1:1)で精製して無色泡状固体の標題化合物(459mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.43(s,63H,7xt−Bu),1.72−1.87(m,14H),2.28−2.49(m,14H),2.66(t,J=6.3Hz,2H,Hβ),3.11−3.15(m,14H),3.62(t,J=6.3Hz,2H,Hα),4.16−4.34(m,8H),5.02−5.14(m,2H),5.37−5.46(m,3H),5.65(brs,1H)
MS(FAB)m/z1954.58(M+Na)。
【0122】
<6−3>側鎖の末端アミノ基からN−Boc保護基の除去
【化105】

【0123】
前記実施例<6−2>で得た化合物(50.6mg、28.98μmol)を、HClガスを飽和させた酢酸エチル(1.5ml)に溶解し、室温で30分間撹拌した。混合物を減圧蒸発して白色固体状の標題化合物(45mg)を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.44−1.72(m,42H),2.44(brs,14H),2.70(brs,2H),2.96(brs,14H),3.62(m,2H),4.23−4.33(m,9H),5.12(brs,1H),5.38 5.61(m,3H),5.72(s,1H)
MS(FAB)m/z1231.94(M+H)。
【0124】
<6−4>アミノ基のN,N’−ジ−Boc−グアニジン基への変換
【化106】

【0125】
前記実施例6−3で得た化合物(20mg、0.013mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(1.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(0.056ml、0.40mmol)およびN,N’−ジ−Boc−N’’−トリフリルグアニジン(0.11g、0.28mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。反応終了後、有機層を2M NaHSO及び塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧濃縮した後にカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)で精製し、白色泡状固体の標題化合物(24.2mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.49(m,168H),2.23−2.42(m,14H),2.63−2.67(t,J=6.4Hz,2H),3.40−3.41(m,14H),3.59−3.63(t,J=6.4Hz,2H),4.22−4.33(m,6H),4.91(m,1H),5.08(m,1H),5.33−5.47(m,3H),5.62−5.63(m,1H),8.31(s,7H),11.50(s,7H)
MS(FAB)m/z2948.75(M+Na)。
【0126】
<6−5>アシル化によるN,N’−ジ−Boc−グアニジン基含有側鎖の導入
【化107】

【0127】
前記実施例6−1で得た化合物(46.9mg、0.107mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(20mg、0.16mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(4ml)に溶解し、製造例6で得た化合物(0.74g、1.98mmol)および1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.41g、2.14mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。反応終了後、前記反応物をジクロロメタンで抽出し、2N NaHSO及び塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)で精製して、実施例6−4と同様の白色泡状固体の標題化合物(229.1mg)を得た。
【0128】
<6−6>アジド基のアミノ官能基への変換
【化108】

【0129】
前記実施例6−4または6−5で得た化合物(39.1mg、0.0134mmol)をエタノールに溶解し、Pd/C触媒(60mg)を添加して室温でH(30psi)ガス雰囲気下で2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物をセライトで濾過してPd/C触媒を除去し、減圧濃縮して白色固体状の標題化合物(36.2mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.38−1.70(m,168H),2.23−2.36(m,14H),2.75−2.89(m,4H),3.04(brs,2H),3.40(s,14H),4.17−4.32(m,6H),4.92(d,1H),5.04−5.11(t,J=9.6Hz,1H),5.34−5.46(m,3H),5.62(s,1H),8.31(s,7H),11.50(s,7H)。
【0130】
<6−7>蛍光物質の導入
【化109】

【0131】
前記実施例6−6で得た化合物(13.5mg、0.005mmol)およびトリエチルアミン(1.4μl、0.009mmol)をジクロロメタン(2ml)に溶解し、10℃に冷却した。その混合物に、5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホニルクロリド(1.7mg、0.006mmol)を加え、0℃で1日間撹拌した。反応終了後、反応混合物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=150:1)に供し、黄色のシロップ状の化合物(12.8mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.45−1.59(m,168H),2.29−2.38(m,14H),2.60−2.70(brs,2H),2.89(s,6H),3.30−3.50(brs,14H),3.60−3.70(brs,2H),4.21−4.31(m,6H),5.00−5.15(brs,2H),5.35−5.48(m,4H),5.64(s,1H),7.18−7.20(d,J=7.0Hz,1H),7.52−7.55(m,2H),8.228.55(m,2H),8.31(s,7H),8.53−8.55(d,J=8.1Hz,1H),11.50(s,7H)。
【0132】
<6−8>N,N’−ジ−Boc−グアニジン基からN−Boc保護基の除去
【化110】

【0133】
前記実施例6−7で得た化合物(6.5mg、0.0021mmol)をジクロロメタン(1.3ml)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.6ml)を加えて室温で5時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にトルエンを数回繰り返して添加して減圧蒸発した。その後、3次蒸留水に溶解し、水層を濾過して凍結乾燥させ、白色泡状固体の標題化合物(4.7mg)(式10、スクロース骨格)を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.27−1.55(m,42H),2.24−2.44(m,16H),2.80(s,6H),3.07(brs,14H),3.40(brs,1H),3.55(brs,2H),4.12−4.24(m,6H),5.31−5.41(m,3H),5.58−5.63(m,1H),7.18−7.20(d,J=7.6Hz,1H),7.47−7.53(t,J=8.6Hz,2H),8.10−8.13(d,J=7.2Hz,1H),8.19−8.22(d,J=7.2Hz,1H),8.47−8.50(d,J=8.2Hz,1H)
MS(FAB)m/z1733.07(M+H)
UVλmax(HO,25℃)318nm。
【0134】
実施例7:7つのグアニジン基を有する二糖類誘導体の製造II
前記実施例6に記載された方法と同様に、製造例5で得た化合物にアシル化反応によってアミノ酸側鎖を導入し、側鎖のN末端にグアニジン基を導入し、7つのグアニジン基を有する二糖類誘導体化合物(式11、ラクトース骨格)を得た。
【0135】
実施例8:6つのグアニジン基を有するアルジトール誘導体の製造I
<8−1>アシル化によるD−ソルビトールへの側鎖の導入
【化111】

【0136】
D−ソルビトール(75mg、0.411mmol)、6−(Boc−アミノ)カプロン酸(952mg、4.11mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(110mg、0.905mmol)及び1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−エチルカルボジイミド塩酸塩(789mg、4.11mmol)をジクロロメタン(2ml)に溶解し、16時間還流させた。反応終了後、反応混合物をCHCl(50ml)で希釈し、飽和NaHCO水溶液と水で数回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=2:3〜1:1)で精製してD−ソルビトールに6つの側鎖が導入された白色固体状の標題化合物(547mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.28−1.60(m,90H),2.20−2.32(m,12H),3.02(brs,12H),4.04−4.11(m,2H),4.02(dd,J=14.6Hz,2.1Hz,1H),4.34(dd,J=14.8Hz,2.0Hz,1H),4.66(brs,6H),4.93(brs,1H),5.16(brs,1H),5.31−5.42(m,2H)
MS(MALDI−TOF)m/z1483.99(M+Na)。
【0137】
<8−2>側鎖の末端アミノ基からN−Boc保護基の除去
【化112】

【0138】
前記実施例8−1で得た化合物(250mg、0.171mmol)をHClガスで飽和させた酢酸エチル(12ml)に溶解し、室温で3時間撹拌し、反応混合物を減圧濃縮して、側鎖の末端アミノ基のN−Boc保護基が除去された白色固体状の標題化合物(184mg)を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.38−1.40(m,12H),1.59−1.63(m,24H),2.33(brs,12H),2.86(brs,12H),4.02−4.14(m,2),4.33−4.48(m,2H),5.11(brs,1H),5.23(brs,1H),5.44(brs,2H)
MS(MALDI−TOF)m/z861.80(M+H)。
【0139】
<8−3>アミノ基のN,N’−ジ−Boc−グアニジン基への変換
【化113】

【0140】
前記実施例8−2で得た化合物(180mg、0.166mmol)を1、4−ジオキサン:水の混合液(5:1)(5ml)に溶解し、トリエチルアミン(0.42ml、3.0mmol)を添加して10分間撹拌した。N,N’−ジ−Boc−N’’−トリフリルグアニジン(1.17mg、3.0mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、水と飽和NaCl水溶液で洗浄した後、NaSOで乾燥させた。これをさらに減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=2:3〜1:1)で精製して6つのグアニジン基が導入された白色泡状固体の標題化合物(310mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.13−1.55(m,90H),2.23−2.26(m,12H),3.31−3.38(m,12H),4.04−4.06(m,2H),4.24(dd,J=2.3Hz,J=14.8Hz,2H),4.95(brs,1H),5.15(brs,1H),5.33−5.35(m,2H),8.26(brs,6H),11.45(brs,6H)
MS(MALDI−TOF)m/z2336.52(M+Na)。
【0141】
<8−4>N,N’−ジ−Boc−グアニジン基からのN−Boc保護基の除去
【化114】

【0142】
前記実施例<8−3>で得た化合物(255mg、0.110mmol)をHClガスで飽和させた酢酸エチル(16ml)に溶解し、室温で20時間撹拌した。反応混合物を減圧蒸発し、メタノールに溶解し蒸発させる操作を3回繰り返し、末端グアニジン基のN−Boc保護基が除去された白色泡状固体の標題化合物(146mg)(化12)を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.57(brs,36H),2.26(brs,12H),3.27(brs,12H),4.02−4.34(m,4H),5.09−5.33(m,4H)
MS(MALDI−TOF)m/z1113.77(M+H)。
【0143】
実施例9:6つのグアニジン基を有するイノシトール誘導体の製造I
<9−1>アシル化によるmyo−イノシトールへの側鎖の導入
【化115】

【0144】
myo−イノシトール(33.3mg、0.185mmol)、6−(Boc−アミノ)カプロン酸(362mg、1.56mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(67.7mg、0.554mmol)をCHCl(4ml)に溶解し、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−エチルカルボジイミド塩酸塩(260.8mg、1.36mmol)を加えて、21時間還流させた。反応混合物を室温に冷却した後、過量の酢酸エチルで希釈させ、飽和NaHCO水溶液で洗浄した。得られた有機層をMgSOで乾燥した後、濃縮させてカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=2:3〜1:1)で精製してmyo−イノシトールに6つの側鎖が導入された無色オイル状の標題化合物(206mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.1−1.7(m,90H),2.17(app q,J=6.9Hz,10H),2.42(t,J=7.2Hz,2H),3.04(m,12H),4.81(broad s,6H,6 x NH),5.08(dd,J=10.4Hz,2.5Hz,2H),5.16(t,J=9.7Hz,1H),5.44(t,J=10.1Hz,2H),5.54(t,J=2.4Hz,1H)
MS(FAB)m/z1481.98(M+Na)。
【0145】
<9−2>側鎖の末端アミノ基からN−Boc保護基の除去
【化116】

【0146】
前記実施例9−1で得た化合物(150mg、0.103mmol)をHClガスで飽和させた酢酸エチル(7ml)に溶解し、室温で17時間撹拌した。反応混合物を減圧蒸発し、トルエンに溶解し濃縮する工程を3回繰り返して、末端アミノ基のN−Boc保護基が除去された淡黄色泡状固体の標題化合物(117mg)を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.3−1.9(m,36H),2.21(brs,10H),2.57(brs,2H),2.94(brs,12H),5.3−5.6(m,5H),5.68(s,1H)
MS(FAB)m/z881.53(M+Na)。
【0147】
<9−3>アミノ基のN,N’−ジ−Boc−グアニジン基への変換
【化117】

【0148】
前記実施例9−2で得た化合物(99.2mg、0.092mmol)を1,4−ジオキサン:水の混合液(5:1)(6ml)に溶解し、トリエチルアミン(0.237ml、1.7mmol)及びN,N’−ジ−Boc−N’’−トリフリルグアニジン(663mg、1.7mmol)を加えて室温で3日間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、酢酸エチルで希釈させた後、飽和NaHCO水溶液で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮してカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:4〜1:1)で精製してmyo−イノシトールに6つのグアニジン基が導入された泡状の標題化合物(158mg)を得た。
H−NMR(CDCl):δ1.1−1.7(m,144H),2.21(app dd,J=11.4,J=6.8Hz,10H),2.48(t,J=7.4Hz,2H),3.04(app q,J=6.2Hz,12H),5.09(dd,J=10.4,J=2.4Hz,2H),5.18(t,J=9.7Hz,1H),5.47(t,J=10.1Hz,2H),5.57(s,1H),8.3(s,6H,NH),11.5(s,6H,NHBoc)
MS(FAB)m/z2312.34(M+H)。
【0149】
<9−4>N,N’−ジ−Boc−グアニジン基からN−Boc保護基の除去
【化118】

【0150】
前記実施例9−3で得た化合物(100mg)をHClガスで飽和させた酢酸エチル(15ml)に溶解し、室温で2日間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、メタノールに溶解して蒸発させる操作を3回繰り返し、末端グアニジン基からN−Boc保護基が除去された白色泡状固体の標題化合物(57mg)(式13)を得た。
H−NMR(CDOD):δ1.1−2.8(m,48H),3.0(m,12H),5.23(m,6H)
MS(FAB)m/z1111.58(M+H)。
【0151】
実施例10:6つのグアニジン基を有するアルジトール及びイノシトール誘導体の製造II
中間体としてD−アルジトール及びmyo−イノシトール異性体をそれぞれ適用することを除いて、製造例6に記載の側鎖化合物を用いて、実施例6−5と同様の方法によって、実施例8−3及び実施例9−3で得たものと同様の6つのグアニジン基を有するアルジトール及びイノシトール誘導体化合物(式12及び13)を製造した。
【0152】
実施例11:6つのグアニジン基を有するイノシトール誘導体の製造III
【化119】

【0153】
実施例6−5および9−1〜9−4に記載された方法と同様に、scyllo−イノシトールを中間体として用いて、白色固体状の標題化合物(45.2mg)(式14)を製造した。
H−NMR(CDOD):δ1.31−1.56(m,36H),2.34(s,12H),3.15(s,12H),5.62(s,6H)
MS(MALDI−TOF)m/z1111.77(M+H)。
【0154】
試験例1:膜透過性の測定
前記実施例で製造された、ダンシル(dansyl)蛍光物質を有するそれぞれの化合物に対する細胞膜及び核膜の透過性を測定し、効率的に生体膜を透過することが知られるアルギニン9量体(d−Arg、dansyl−Arg;Peptron社製)と、またグアニジン基を有しない中間体と比較した。
【0155】
培養皿(dish plate)にカバーグラスを置き、でマウスマクロファージRAW264.7(ATCCT1B−71)をその上で培養した。細胞を、10%FBSを添加したDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)で24時間安定化させた後、無血清培地(serum free medium)で24時間培養し、細胞を飢餓(starve)状態にさせた。その後、前記細胞を、d−Arg、製造例1−2で製造された中間体、ならびに実施例1、2及び6で製造された化合物のいずれかで、7μMの濃度、一定温度(23〜25℃)で3分間処理した。細胞をRNase(100μg/ml)で処理した後、一定温度(23〜25℃)で5分間、ヨウ化プロピジウム(2μg/ml)で処理して核を染色した後、PBS(phosphate buffer Solution)で3回洗浄した。細胞をエタノールで1日固定し、Arレーザー(波長458nm)を用いて共焦点顕微鏡(confocal microscope)で収束面の断面を観察し、400倍の倍率で蛍光シグナルを検出した。その結果を図1に示す。
【0156】
図1において、(1)は、d−Argで処理したRAW264.7細胞の蛍光イメージであり;(2)は、グアニジン基がない製造例1−2の中間体化合物で処理した蛍光イメージであり;(3)及び(4)は、本発明による、それぞれ8つ及び7つのグアニジン基を有する実施例1及び6の化合物で処理した蛍光イメージである。カラムAの緑色は、細胞内部で輸送体化合物によって放出された蛍光の強さを示し、カラムBの赤色は、ヨウ化プロピジウムで染色した核を示し、カラムCは、赤色および緑色の重ね合わせを示しており、黄色が強いほど、輸送体化合物が核内に存在することを意味する。
【0157】
図1から明らかなように、実施例1及び6の化合物が、d−Argよりも、および細胞内に透過しそこなったグアニジン基を含まない中間体よりも、優れた核内への取り込みを示すことが示される。
【0158】
これらの結果から、本発明による高い膜透過性を示す化合物が、生理活性分子を細胞内に送達するための分子輸送体として有効に利用可能であることが明らかである。
【0159】
試験例2:イオン複合体の生体膜透過性の測定
実施例9または10の化合物と、蛍光標識されたcAMPまたはオリゴヌクレオチドとのイオン複合体(電荷基準の組成比1:1〜10:1)を製造し、試験例1と同様な方法で細胞膜透過性の実験を行った。共焦点顕微鏡で観察し、結果を図2に示した。
【0160】
図2において、(1)は、蛍光標識された陰イオン物質のみで処理したRAW264.7細胞の蛍光イメージであり;(2)は、蛍光標識された陰イオン物質と輸送体化合物とのイオン複合体(電荷基準の組成比1:1)で処理した蛍光イメージであり;(3)は、蛍光標識された陰イオン物質と輸送体化合物とのイオン複合体(電荷基準の組成比1:5)で処理した蛍光イメージである。カラムA、B及びCの意味は図1と同様である。
【0161】
図2から、蛍光標識された陰イオン物質と実施例9または10の化合物とのイオン複合体(電荷基準の組成比1:5)が優れた細胞膜透過性を示すことが分かる。
【0162】
これらの結果から、本発明による化合物が、イオン複合体の形態にて細胞膜透過性が増大し、これによって、それらが、生理活性分子の送達のための分子輸送体として有用であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】図1は、様々な化合物の細胞膜及び核膜透過性の比較を示す:(1)はダンシル−Arg;(2)はグアニジン基がない製造例1で製造された中間体化合物;(3)及び(4)は、本発明による、それぞれ8つ及び7つのグアニジン基を有する実施例1及び6の輸送体化合物。
【図2】図2は、様々な化合物の細胞膜及び核膜透過性の比較を示す:(1)は蛍光標識された陰イオン物質のみ;(2)は陰イオン物質と輸送体化合物とのイオン複合体(電荷基準の組成比1:1);(3)は陰イオン物質と輸送体化合物とのイオン複合体(電荷基準の組成比1:5)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表される糖アルコール誘導体:
【化1】

式中、
及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、−(CHNHR’、−(CHCOR’’、−COR’’’、−SOR’’’’または生理活性分子であり;ここで、R’、R’’、R’’’及びR’’’’は、それぞれ独立に、H、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキルまたは生理活性分子であり;mは2から5の整数であり;lは1から5の整数であり;
は、
【化2】

であり、nは1から12の整数である。
【請求項2】
ソルビトール、マンニトールまたはガラクチトールの骨格を有するアルジトール誘導体である、請求項1に記載の糖アルコール誘導体、及びその塩。
【請求項3】
式2で表される糖アルコール誘導体、及びその塩:
【化3】

式中、
及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、−(CHNHR’、−(CHCOR’’、−COR’’’、−SOR’’’’または生理活性分子であり;ここで、R’、R’’、R’’’及びR’’’’は、それぞれ独立に、H、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキルまたは生理活性分子であり;mは2から5の整数であり;および、lは1から5の整数であり;
は、
【化4】

であり、ここで、nは1から12の整数である。
【請求項4】
式7、8または9で表される、請求項3に記載の糖アルコール誘導体、及びその塩:
【化5】

【化6】

【化7】

式中、R、R及びRは請求項3に定義される通りである。
【請求項5】
前記式7から9の化合物が、myo−またはscyllo−イノシトール異性体の骨格を有する、請求項4に記載の糖アルコール誘導体、及びその塩。
【請求項6】
式3で表される二糖類誘導体、及びその塩:
【化8】

式中、
Xは、
【化9】

であり、ここで、Rは−(CHNHR’であり、mは2から9の整数であり;R’は、H、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキルまたは生理活性分子であり;
は、
【化10】

であり、ここで、nは1から12の整数である。
【請求項7】
式10または11で表される、請求項6に記載の二糖類誘導体、及びその塩:
【化11】

【化12】

式中、R及びRは請求項6に定義される通りである。
【請求項8】
前記式10の化合物がスクロースの骨格を有する、請求項7に記載の二糖類誘導体、及びその塩。
【請求項9】
前記式11の化合物がα−ラクトース、β−ラクトースまたはマルトースの骨格を有する、請求項7に記載の二糖類誘導体、及びその塩。
【請求項10】
式4で表される糖アルコール誘導体:
【化13】

式中、

【化14】

であって、ここでnは1から12の整数である。
【請求項11】
ソルビトール、マンニトールまたはガラクチトールの骨格を有するアルジトール誘導体である、請求項10に記載の糖アルコール誘導体、及びその塩。
【請求項12】
式5で表される糖アルコール誘導体、及びその塩:
【化15】

式中、

【化16】

であって、ここで、nは1から12の整数である。
【請求項13】
式13または14で表される、請求項12に記載の糖アルコール誘導体、及びその塩:
【化17】

【化18】

式中、Rは請求項12に定義される通りである。
【請求項14】
前記式13または14の化合物が、myo−またはscyllo−イノシトール異性体の骨格を有する、請求項13に記載の糖アルコール誘導体、及びその塩。
【請求項15】
以下の段階を含む、式1で表される糖アルコール誘導体の製造方法:
1)保護されたアルジトール中間体のヒドロキシル基に、アシル化反応によりアミノ酸側鎖を導入する段階;
2)段階1)で得られた化合物のアミノ酸側鎖の末端アミノ基に、保護されたグアニジン基を導入する段階;及び
3)段階2)で得られた化合物のグアニジン基から保護基を除去する段階;
【化19】

式中、R、R及びRは請求項1に定義される通りである。
【請求項16】
前記段階1)の中間体が式15の化合物である、請求項15に記載の方法:
【化20】

式中、R及びRは請求項1に定義される通りである。
【請求項17】
以下の段階を含む、式2で表される糖アルコール誘導体の製造方法:
1)保護されたイノシトール中間体のヒドロキシル基に、アシル化反応によりアミノ酸側鎖を導入する段階;
2)段階1)で得られた化合物のアミノ酸側鎖の末端アミノ基に、保護されたグアニジン基を導入する段階;及び
3)段階2)で得られた化合物のグアニジン基から保護基を除去する段階;
【化21】

式中、R、R2、及びRは請求項3に定義される通りである。
【請求項18】
前記段階1)の中間体が式16から18の化合物から成る群から選択される、請求項17に記載の方法:
【化22】

【化23】

【化24】

式中、R及びRは請求項3に定義される通りである。
【請求項19】
以下の段階を含む、式3で表される糖アルコール誘導体の製造方法:
1)保護された二糖類中間体のヒドロキシル基に、アシル化反応によりアミノ酸側鎖を導入する段階;
2)段階1)で得られた化合物のアミノ酸側鎖の末端アミノ基に、保護されたグアニジン基を導入する段階;及び
3)段階2)で得られた化合物のグアニジン基から保護基を除去する段階;
【化25】

式中、X及びRは請求項6に定義される通りである。
【請求項20】
前記段階1)の中間体が、式19または20の化合物である、請求項19に記載の方法。
【化26】

【化27】

【請求項21】
以下の段階を含む、式4で表される糖アルコール誘導体の製造方法:
1)保護されたアルジトール中間体のヒドロキシル基に、アシル化反応によりアミノ酸側鎖を導入する段階;
2)段階1)で得られた化合物のアミノ酸側鎖の末端アミノ基に、保護されたグアニジン基を導入する段階;及び
3)段階2)で得られた化合物のグアニジン基から保護基を除去する段階;
【化28】

式中、Rは請求項10に定義される通りである。
【請求項22】
請求項1の中間体が式21の化合物である、請求項21に記載の方法。
【化29】

【請求項23】
以下の段階を含む、式5で表される糖アルコール誘導体の製造方法:
1)保護されたイノシトール中間体のヒドロキシル基に、アシル化反応によりアミノ酸側鎖を導入する段階;
2)段階1)で得られた化合物のアミノ酸側鎖の末端アミノ基に、保護されたグアニジン基を導入する段階;及び
3)段階2)で得られた化合物のグアニジン基から保護基を除去する段階;
【化30】

式中、Rは請求項12に定義される通りである。
【請求項24】
前記段階1)の中間体が式22または23の化合物である、請求項23に記載の方法。
【化31】

【化32】

【請求項25】
前記段階1)及び2)が、末端アミノ酸側鎖に保護されたグアニジン基を導入し、および、アシル化反応によって、保護された中間体のヒドロキシル基にグアニジン基を有する側鎖を導入する段階に置き換えられる、請求項15、17、19、21または23に記載の方法。
【請求項26】
式1から5から成る群から選択される化合物を含む、生体膜を通して細胞内または核内に生理活性分子を送達するための組成物:
【化33】

式中、R、R及びRは請求項1に定義される通りである;
【化34】

式中、R、R及びRは請求項3に定義される通りである;
【化35】

式中、X及びRは請求項6に定義される通りである;
【化36】

式中、Rは請求項10に定義される通りである;
【化37】

式中、Rは請求項12に定義される通りである。
【請求項27】
前記生理活性分子が、分子量100から1500g/molの有機化合物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記生理活性分子がペプチドおよび核酸である、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記式1、2または3の化合物が、共有結合により前記生理活性分子と共有結合体(conjugate)を形成する、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
前記式1、2または3の化合物が、イオン結合により前記生理活性分子とイオン複合体(ionic complex)を形成する、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
式1から5の化合物から成る群から選択される化合物を分子輸送体として用いる段階を含む、生体膜を通して細胞内または核内に生理活性分子を送達する方法:
【化38】

式中、R、R及びRは請求項1に定義される通りである;
【化39】

式中、R、R及びRは請求項3に定義される通りである;
【化40】

式中、X及びRは請求項6に定義される通りである;
【化41】

式中、Rは請求項10に定義される通りである;
【化42】

式中、Rは請求項12に定義される通りである。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−539226(P2008−539226A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508732(P2008−508732)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/KR2005/002040
【国際公開番号】WO2006/115312
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(500345478)ポステック・ファウンデーション (25)
【出願人】(505282042)ポステック・アカデミー‐インダストリー・ファウンデーション (34)
【Fターム(参考)】