説明

糖尿病の治療

本発明は、糖尿病患者の治療のための薬物を製造するための、2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬、又はその互変異性体、医薬として許容できる塩、溶媒和化合物、又は生理的機能を有する誘導体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病の治療のための薬物を製造するための、2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬、又はその互変異性体、医薬として許容できる塩、溶媒和化合物、又は生理的機能を有する誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の発生、及び同様に糖尿病に起因する疾患の発生は、常に増加している。この増加の理由が議論の対象とされているが、欧米型ライフスタイル並びに高齢化人口統計における変化が寄与していると考えられている。糖尿病、2型糖尿病、真性糖尿病はそれぞれ、正常被験者の範囲を超える血中グルコースレベルの増加を伴う代謝疾患である。この疾患は、生体内におけるインスリンの量的不足又は機能不全がある場合に進展する。疾患の重篤な結果の中で、腎臓、網膜、神経及び動脈硬化症等の大血管疾患における微小血管障害は、罹患した組織及び器官の機能を事実上、徐々に破壊するものとして名前が挙がるものである。この疾患を特徴付ける高血糖性状態は、ほとんどの場合、食後、食間又は空腹時にさえも発生する。
【0003】
このような糖尿病性の破壊を抑制し、又は少なくとも遅らせるために、異なる作用機序に基づくいくつかの薬剤が開発されてきた。抗糖尿病薬は、ほとんどの場合血糖降下薬であるが、インスリン、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善薬及びα−グルコシダーゼ阻害薬を含む。これら薬剤の最も顕著な目的は、ほぼ一定の血中グルコースレベルを作り出すことである。有用であるにもかかわらず、これらの化合物は疾患がさらに進行すると、効果を失うことがある。さらに、治療には副作用がないわけではない。したがって、糖尿病における治療の選択肢を補完又は補充し、或いはよりよくは、より優れた有効性−安全性プロフィールを有する薬剤又は薬剤の組合せを見出す必要がある。
【0004】
国際特許出願WO93/09814及びWO97/30997は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬であるトロパン誘導体を開示している。このような化合物は、パーキンソン症、うつ病、ナルコレプシー、薬物乱用、注意欠陥多動性障害、老年認知症及び認知機能障害の治療に有用であることが開示されている。WO05/070427は、前述のモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬は、代謝疾患の罹患者においてと同様、健常者においても持続効果を伴って体重を減少させるために使用することができることを教示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によれば、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬、特に2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬は、糖尿病の治療に有用である。さらに、前記化合物は、糖尿病の結果として発現し、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害活性に対して感受性のある随伴性疾患に使用することができる。
【0006】
したがって、糖尿病のための新規な治療選択肢を開発することは本発明の目的である。
【0007】
別の目的は、先行技術の治療選択肢に対する補完的治療選択肢を開発することである。
【0008】
さらに別の目的は、先行技術の治療選択肢に対する補充的(追加的)治療選択肢を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
原則として、本発明の文脈において重要である好ましいモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬は、2,3−二置換トロパン部分を含み、国際特許出願WO93/09814、EP604355、EP604352、US5444070、EP604354、WO95/28401及びWO97/30997により開示されている。特に重要であるのは、WO93/09814及びWO97/30997である。
【0010】
明確化のために、開示された本化合物が互変異性型を有する可能性があり、或いはその医薬として許容できる塩、溶媒和化合物、又は生理的機能を有する誘導体の形態で応用されるであろうことが当業読者に対して明らかにされるであろう。このような形態のあらゆるものが、それらが名称を挙げて言及されることがない場合でも、含まれるものとする。
【0011】
本発明に基づき意図される使用に関して、一般式(I)の化合物又はこれらの医薬として許容できる付加塩若しくはこれらのN−酸化物が好ましい。
【化1】


式中、
(A)
(i)Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又は2−ヒドロキシエチルであり;或いは
(ii)Rは、水素原子又はC1〜6アルキル基、好ましくは、水素原子、メチル又はエチル基を表し;或いは
(iii)Rは、水素、メチル、エチル又はプロピルであり;或いは
(iv)RはH又は
(v)Rはメチルである。
(B)
(i)Rは、−CH−X−R’であり、式中、Xは、O、S又はNR”であり;式中
R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又は−CO−アルキルであり;好ましくは
XはOであり、
R”は、水素又はアルキルであり;
アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルにより1又は複数回置換されていてよいヘテロアリール;
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいフェニル;
フェニルフェニル;
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいピリジル;
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいチエニル;又は
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいベンジル;又は
−(CHCO11、COR11又はCH12であり、式中、
11は、アルキル、シクロアルキル、又はシクロアルキルアルキル;ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいフェニル;フェニルフェニル;ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいピリジル;又はハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいチエニル;又はベンジルであり;
nは、0又は1であり;
12は、ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいO−フェニル;又は
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいO−CO−フェニル;又は
CH=NOR’;式中、R’は、水素;又は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであって、これらはすべて−COOH;−COO−アルキル;−COO−シクロアルキルにより置換されていてよい;又は、ハロゲン、CF、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ及びニトロからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいフェニルであり;或いは
(ii)Rは、−CH−X−R’であり、式中、Xは、O、S又はNR”であり;式中
R”は、水素又はアルキルであり;
R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又は−CO−アルキルであり;或いは
(iii)Rは、−CH−X−R’であり、式中、Xは、O又はSであり、
R’は、メチル、エチル、プロピル又はシクロプロピルメチルであり;或いは
(iv)Rは、−CH−X−R’であり、式中、Xは、Oであり、R’は、水素原子又はC1〜6アルキル又はC3〜6シクロアルキル−C1〜3−アルキル基、好ましくはメチル、エチル又はn−プロピル基を表し;或いは
(v)Rは、XがOであり、R’がメチルである、−CH−X−R’であり;或いは
(vi)Rは、XがOであり、R’がエチルである、−CH−X−R’であり;或いは
(vii)Rは、−CH=NOR’であり;式中
R’は、水素;アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであって、これらはすべて−COOH;−COO−アルキル;−COO−シクロアルキルにより置換されていてよい;又は、ハロゲン、CF、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ及びニトロからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいフェニルであり;或いは
(viii)Rは、−CH=NOR’であり;式中、R’は、水素又はアリール、又は3位においてアルキルで置換されていてよい1,2,4−オキサジアゾール−5−イルである。
(C)
(i)Rは、フェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、ベンジル、ナフチル又はヘテロアリールであって、これらはすべてハロゲン、CF、CN、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよく;或いは
(ii)Rは、フェニルであって、ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよく;或いは
(iii)Rは、ハロゲン原子又はCF又はシアノ基、好ましくはフッ素、塩素又は臭素原子によりm回置換されていてよいフェニルであり;mは0又は1から3の整数、好ましくは1又は2であり;或いは
(iv)Rは、塩素により1又は2回置換されているフェニルであり;或いは
(v)3,4−ジクロロフェニルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、ドパミン再取り込み阻害活性を有するトロパン誘導体は、式Iの(1R,2R,3S)−2,3−二置換トロパン誘導体である。
【0013】
好ましい実施形態には、下記の置換基パターンが含まれるが、これらに限定されるものではない:
【表1】

【0014】
好ましくはこれらの2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬は、式(II)の化合物
【化2】


[式中、
はそれぞれ独立して、ハロゲン原子又はCF又はシアノ基、好ましくはフッ素、塩素又は臭素原子を表し;
R’は、水素原子又はC1〜6アルキル又はC3〜6シクロアルキル−C1〜3−アルキル基、好ましくはメチル、エチル又はn−プロピル基を表し;
mは0又は1から3の整数、好ましくは1又は2である]
又はこれらの互変異性体、医薬として許容できる塩、溶媒和化合物、又は生理的機能を有する誘導体である。
【0015】
本明細書において使用される、表現「アルキル」は、好ましくは、メチル及びエチル基、及び直鎖及び分枝状プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル基を含む「C1〜6アルキル」を意味する。特に好ましいアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル及びtert−ブチルである。
【0016】
本明細書において使用される表現「シクロアルキル」は、好ましくは、シクロプロピル及びシクロヘキシル等の環状プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル基を含む「C3〜6シクロアルキル」を意味する。
【0017】
本明細書において使用される用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を含み、中でもフッ素及び塩素が好ましい。
【0018】
更なる略語:
Hは水素を、Meはメチルを、Etはエチルを、Prはプロピルを、Buはブチルを、Phはフェニルを、Bnはベンジル(PhCH−である)を、Fはフッ素を、Clは塩素を、Brは臭素を、Oxは1,2,4−オキサジアゾール−5−イルを、Cyはシクロプロピルを、Fuはフラニルを、Pyはピリジルを、Thはチエニルを表す。
例えば、4−F−Phは、4−フルオロフェニル基を表し、略語3,4−Cl−Phは、3,4−ジクロロフェニル基を表す。
他の略語が使用されている場合、それらは当技術分野でよく知られたものである。
【0019】
本明細書において使用される用語「生理的機能を有する誘導体」は、生理学的条件下で式(I)の化合物から得られる誘導体を含み、これらは例えば、酸化条件下で形成されるN−酸化物である。
【0020】
本明細書において使用される用語「医薬として許容できる酸付加塩」は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、により形成される酸付加塩、特に好ましくは塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸及び酢酸から得られる塩の中から選択される塩を含む。クエン酸の塩は、特に有意である。
【0021】
特別な一実施形態において、ドパミン再取り込み阻害活性を有するトロパン誘導体は、下記から選択される一般式(II)
【化3】


ここで、
【表2−1】


【表2−2】


【表2−3】


並びに
(1R,2R,3S)−2−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−3−(2−ナフチル)−トロパン(No.69);
(1R,2R,3S)−2−カルボメトキシ−3−(2−ナフチル)−トロパン(No.70);
(1R,2R,3S)−2−カルボメトキシ−3−ベンジル−トロパン(No.71);
(1R,2R,3S)−2−カルボメトキシ−3−(1−ナフチル)−トロパン(No.72)である、
の化合物である。
【0022】
明確化のために、化合物68は(1R,2R,3S)−2−カルボメトキシ−3−(4−t−ブチル−フェニル)−トロパンを表し、化合物6は(1R,2R,3S)−2−(4−フルオロ−ベンゾイル)−3−(4−フルオロフェニル)−トロパンを表す等である。
【0023】
これらの化合物のいずれもが、好ましくは(1R,2R,3S)−立体配置の化合物である。これらの化合物のいずれもが、これらの医薬として許容できる酸付加塩を含む。
【0024】
最も好ましいものは、式(IA)及び(IB)の化合物であり
【化4】


これらは、化合物IA及び化合物IBとコードされる。
【0025】
本発明の化合物は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害効果を有し、2,3−二置換トロパン部分を含む。これらは糖尿病、特にII型糖尿病の治療のための医薬用組成物を調製するために使用することができる。化合物の特異的作用は、HbAlc(糖化されたヘモグロビン)値を、6カ月以内に、好ましくは少なくとも0.3%、より好ましくは少なくとも0.4%、より好ましくは少なくとも0.5%低下させることである。値は、起始点に対して、又はプラセボ群に対して決定してよい。
【0026】
HbAlc値の低下に関する効果に加えて、本発明の特異な効果は、過体重を伴う糖尿病患者に前記化合物を適用することにより、体重を正常な値に調節することができるということである。
【0027】
この文脈において、「正常」は、患者がその年齢、性別及び糖尿病のステージに対して、平均的なボディマスインデックスを有することを意味する。したがって、「過体重」は、この患者のボディマスインデックスが正常よりも高いということを意味する。
【0028】
糖尿病患者におけるこの体重減少効果により、化合物はまた、糖尿病患者の体重を、医師による患者に対する治療効果とみなされるレベルに調節するために使用されてもよい。
【0029】
好ましくは、患者はあらゆる人種の男性又は女性成人である。
【0030】
前述の2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬を、2型糖尿病の治療又は補充的治療(補助治療)のために継続投与するための医薬用組成物を調製するために使用することは、特に好ましい。
【0031】
本発明の範囲において使用されることが好ましい式IA及びIBのモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬は、任意選択でそれらの医薬として許容できる酸付加塩の形態で、且つ任意選択で水和物及び溶媒和化合物の形態で、使用されてもよい。
【0032】
式Iのモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬に関して「医薬として許容できる酸付加塩」は、本発明によれば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸及びマレイン酸の塩、特に好ましくは塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸及び酢酸の塩から選択される塩を意味する。例えば式IA及びIBの化合物に関して、クエン酸の塩は、特に有意である。経皮投与に関して、式Iの塩基を使用することが好ましい。
【0033】
本発明に基づき使用されてよい2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬、好ましくは式Iの化合物、最も好ましくは式IA及びIBの化合物は、任意選択で他の活性物質、特に抗糖尿病薬と組み合わせて使用されてよい。このような活性成分は下記である:
インスリン模倣薬;生理的インスリン作用、即ち、インスリン(インスリン誘導体を除く)とは事実上、無関係な方法で細胞へのグルコース取り込みを促進する作用により血糖降下作用を発揮する化合物を意味し、例えば、インスリン受容体活性化薬(例えば、CLX−0901及びL−783281)及びバナジウムを含む。
【0034】
α−グルコシダーゼ阻害薬;グルコースの生体への吸収抑制、主として腸管におけるα−グルコシダーゼの阻害により、血糖降下作用を発揮する化合物を意味し、例えば、アカルボース、ボグリボース及びミグリトールを含む。
【0035】
グルコース生成阻害薬;主としてグルコース生成の阻害により血糖降下作用を発揮する化合物を意味し、例えば、グルカゴン分泌抑制因子(例えば、M&B−39890A及びオクトレオチド)、脂肪酸分解阻害薬(例えば、ニコチン酸誘導体及びカルチニンパルミトイルトランスフェラーゼ−1阻害薬)及びグルコース−6−ホスファターゼ阻害薬を含む。
【0036】
他の組合せパートナーは、腎グルコース再吸収の阻害薬であり、抗高脂血症剤(例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬及びLDL受容体誘導物質)、血圧降下剤(例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、β受容体拮抗薬、α−1又は2拮抗薬及びカルシウム拮抗薬)等も、血中グルコースレベルを低下させる目的で、真性糖尿病の予防及び治療薬として、腎グルコース再吸収の阻害薬との組合せで使用することができるのであれば、また、本発明の範囲に包含される。
【0037】
さらに、他の組合せパートナーは、チアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)、PPAR−γ−作動薬(例えば、GI262570)、DPPIV阻害薬(例えば、LAF237、MK−431)、拮抗薬、PPAR−γ/α−修飾薬(例えば、KRP297)、プロテインチロシンホスファターゼ1、肝臓における調節解除されたグルコース産生に影響を及ぼす物質、例えば、グルコース−6−ホスファターゼ、又はフルクトース−1,6−ビホスファターゼ、グリコーゲンフォスフォリラーゼの阻害薬、グルカゴン受容体拮抗薬及びフォスフォエノールピルベートカルボキシキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ又はピルベートデヒドロキナーゼの阻害薬等、脂質低下剤、例えばHMG−CoA−レダクターゼ阻害薬(例えば、シムバスタチン、アトロバスタチン)、フィブラート(例えば、ベンザフィブラート、フェノフィブラート)、ニコチン酸及びこれらの誘導体、PPAR−α作動薬、PPAR−δ作動薬、ACAT阻害薬(例えば、アバシミベ)又はコレステロール吸収阻害薬、例えば、エゼチミベ等、胆汁酸結合物質、例えばコレスチラミン等、回腸胆汁酸輸送阻害薬、HDL−上昇化合物、例えばCETP阻害薬又はABC1調節剤等、又は肥満を治療するための活性物質、例えばシブトラミン又はテトラヒドロリポスタチン、デックスフェンフルラミン、アクソキン、カンナビノイド1受容体の拮抗薬、MCH−1受容体拮抗薬、MC4受容体作動薬、NPY5又はNPY2拮抗薬、又はSB−418790若しくはAD−9677等のβ3−作動薬、及び5HT2c受容体の作動薬、GLP−1及びGLP−1類似体(例えば、エクセンジン−4)又はアミリンである。
【0038】
GABA−受容体拮抗薬、Na−チャンネルブロッカー、トピラマット、プロテインキナーゼC阻害薬、改良型終末糖化産物阻害薬又はアルドースレダクターゼ阻害薬との組合せもまた、糖尿病合併症の治療又は予防に使用することができる。
【0039】
本発明によれば、好ましくは、血糖降下剤は少なくとも、スルホニル尿素(例えば、グリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド、クロロプロパミド、グリピジド、グリクラジド)、メグリチニド類似体及びビグアニド(例えば、メトホルミン、フェンホルミン及びブホルミン)から選択されたものである。本発明の一実施形態において、さらに、血糖降下剤は好ましくは、少なくともスルホニル尿素及びビグアニドから選択されたものである。
【0040】
本発明の別の実施形態において、組合せの観点から、抗糖尿病薬は、好ましくはメグリチニド類似体である。
【0041】
本発明の組合せの別の実施形態において、抗糖尿病薬は、好ましくはナテグリニド、レパグリニド等のグリニドである。
【0042】
これらの抗糖尿病成分に加えて、他の組合せパートナーは、D−、D−、D−又はD−作動薬及び/又は食欲低下薬及び/又はリパーゼ阻害薬及び/又は交感神経作動薬であってよい。中でも好ましい組合せパートナーは:リモナバント、アドロゴリド、A−86929、ロチゴチン、NeurVex、ノロミロール、プラミペキソール、タリペキソール、CHF1512、(−)−ステフォリジン、DAR−201、ジアクリン/ゲンザイム、ブロモクリプチン、ブプロピオン、LEK−8829、BAM−1110、AIT−203、テルグリド、アリピプラゾール、OPC−4392、GMC−1111、PD−148903、アポモルフィンHCl、PD−89211、PD−158771、カベルゴリン、スマニロール、PNU−14277E、POL−255、ジヒドレキシジン、GBR−12783、キナゴリドHCl、(R)−ブプロピオン、S−32504、S−33592、SKF−80723、SKF−83959、フェノルドパム、ロピニロール、SKF−82958、SKF−77434、DU127090、SLV−308、SLV318、NeuroCRIB、SP−1037C、スフェラミン、ガロトランク、プレクラモール、DAB−452、YM−435、BP−897、ProSavin、エチレボドパ、P63、A68930、A77636、アラプチド、アレンテモール、CI1007;PD143188、BLSI、JA116a;JA116、メレボドパ;レボドパメチル;CHF1301;NSC295453;レボメト、MR708、PD128483、RD211、SKF38393、SKF81297、U86170F、U91356A、WAY124486、Z15040、シブトラミン、オルリスタット、アンフェプラモンHCl及びエフェドリンである。
【0043】
前述の組合せから、本発明の化合物とリモナバントとの組合せは、特に過体重の人達、特に糖尿病に罹っている人達の治療に関して、好ましい。
【0044】
本発明の化合物、又はその医薬として許容できる塩、及びそれに組み合わせる追加的な活性物質は、1つの製剤中に一緒に存在(固定された組合せ)してもよいし(例えば錠剤又はカプセル)、又は2つの同一又は異なる製剤中に別々に存在(固定されない組合せ)してもよい(例えばいわゆるキットオブパーツ)。
【0045】
本発明の2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬の投与量は、当然のことながら、一方では治療しようとする症状の重篤度に、及び他方では活性物質の選択に大きく依存する。例えば、本発明の課題事項をそれに限定することなく、本発明に基づき特に好ましい式IA及びIBの化合物に関して、特にいくつかの投与量の可能性をここに示すことになる。
【0046】
この化合物は、1日当たり約0.05から10mg、好ましくは約0.1から2.0mg、特に約0.25から2.0mgの投与量で使用してよい。これらの投与量は、その遊離の塩基形態の式IAの化合物に基づいている。使用するのが好ましい塩、即ちクエン酸塩の形態の基づけば、前述の投与量は、1日当たり約0.08から16mg、好ましくは0.16から3.2mg、特に約0.4から3.2の式IAの化合物のクエン酸塩に相当する。
【0047】
2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬は、本発明の目的のために、経口、直腸、経皮、髄腔内、吸入、鼻又は非経口経路、好ましくは、経口又は経皮、最も好ましくは経口経路により投与されてよい。適切な製剤には、例えば、錠剤、カプセル、座薬、溶液、シロップ、エマルション、分散性パウダー、埋込み薬又は貼付薬、最も好ましくは錠剤、が含まれる。錠剤は、例えば活性物質を既知の賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はラクトースト等の不活性希釈剤、メイズスターチ又はアルギン酸等の崩壊剤、デンプン又はゼラチン等の結合剤、ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤、及び/又はカルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、又はポリビニル酢酸等の遅延放出を得るための薬剤、と混合することにより得られてよい。錠剤はまた、いくつかの層からなっていてもよい。
【0048】
化合物の糖尿病患者における明白な治療的効果により、化合物はまた、網膜症、腎障害又は神経障害、糖尿病性疼痛、特に糖尿病性神経性疼痛、特に末梢性糖尿病性神経性疼痛、糖尿病性足病変、潰瘍、大血管障害のような糖尿病の結果として発現する疾患にも使用されてよい。このような随伴性疾患の中で、末梢性糖尿病性神経性疼痛、網膜症及び/又は腎障害の治療が好ましい。最も好ましいのは、網膜症及び/又は腎障害の治療である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病患者の治療のための薬物を製造するための、2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬、又はその互変異性体、医薬として許容できる塩、溶媒和化合物、又は生理的機能を有する誘導体の使用。
【請求項2】
前記2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬が、式(I)の化合物、又はその医薬として許容できる付加塩若しくはそのN−酸化物である、請求項1に記載の使用
【化1】


[式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又は2−ヒドロキシエチルであり;
は、
CH−X−R’であり、式中、
Xは、O、S又はNR”であり;式中
R”は、水素又はアルキルであり;
R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又は−CO−アルキル;
アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルにより1又は複数回置換されていてよいヘテロアリール;
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいフェニル;
フェニルフェニル;
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいピリジル;
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいチエニル;又は
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいベンジル;又は
(CHCO11、COR11又はCH12であり、
式中、R11は、
アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル;
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいフェニル;
フェニルフェニル;
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいピリジル;
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいチエニル;又は
ベンジルであり;
nは、0又は1であり;
12は、
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいO−フェニル;又は
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいO−CO−フェニル;又は
CH=NOR’;式中、R’は、水素;又は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであって、これらはすべて−COOH;−COO−アルキル;−COO−シクロアルキルにより置換されていてよい;又は、ハロゲン、CF、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ及びニトロからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいフェニルであり;
は、
3,4−メチレンジオキシフェニル又は
ハロゲン、CF、CN、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、ニトロ及びヘテロアリールからなる群から選択される置換基により1又は複数回置換されていてよいフェニル、ベンジル、ナフチル又はヘテルアリールである]。
【請求項3】
前記2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬が、式(I1)の化合物、又はその互変異性体、医薬として許容できる塩、溶媒和物若しくは生理的機能を有する誘導体である、請求項1又は2に記載の使用
【化2】


[式中、
Rは、水素原子又はC1〜6アルキル基を表し;
は、ハロゲン原子又はCF又はシアノ基を表し;
R’は、水素原子又はC1〜6アルキル又はC3〜6シクロアルキル−C1〜3−アルキル基を表し;
mは、0又は1から3の整数である]。
【請求項4】
前記2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬が、式(IA)又は(IB)の化合物である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の使用。
【化3】

【請求項5】
前記2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬の投与量が、1日当たり0.05から10mgである、請求項1から4までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬が、経口、注射、経皮又は直腸経路による投与を意図されている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
糖尿病患者においてHbAlc値を低下させるための、請求項1から6までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
少なくとも1つの抗糖尿病薬との固定された又は固定されない組合せにおける、請求項1から7までのいずれか一項に記載のモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬の使用。
【請求項9】
リモナバントとの組合せにおける、請求項1から8までのいずれか一項に記載のモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬の使用。
【請求項10】
糖尿病、特に2型糖尿病の治療のための、請求項1から9までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
網膜症、腎障害、神経障害、糖尿病性疼痛、特に糖尿病性神経性疼痛、末梢性糖尿病性神経性疼痛、糖尿病性足病変、潰瘍及び/又は大血管障害の群から選択される疾患の治療のための、好ましくは、腎障害及び/又は網膜症の治療のための、請求項1から10までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
糖尿病患者の治療のための方法であって、請求項1から11までのいずれか一項に記載の、2,3−二置換トロパン部分を含むモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬、又はその互変異性体、医薬として許容できる塩、溶媒和物、又は生理的機能を有する誘導体有効量を、これらを必要とする患者に投与することを含む方法。
【請求項13】
糖尿病、真性糖尿病、好ましくは2型糖尿病の治療のための方法である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
糖尿病患者においてHbAlc値を低下させるための方法である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
網膜症、腎障害、神経障害、糖尿病性疼痛、特に糖尿病性神経性疼痛、末梢性糖尿病性神経性疼痛、糖尿病性足病変、潰瘍及び/又は大血管障害の治療のため、好ましくは、腎障害及び/又は網膜症の治療のための方法である、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2009−513593(P2009−513593A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537020(P2008−537020)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010476
【国際公開番号】WO2007/051594
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】