説明

糖尿病の試験

イヌの糖尿病に対する感受性を診断する方法であって:(a)(i)イヌ由来のサンプル中で、免疫系遺伝子(CTLA-4、IGF-2、IL-1α、IL-4、IL-6、IL-10、IL-12β、IFNγ、PTPN3、PTPN15、PTPN22、TNF、又はRANTESのいずれか1つ)の遺伝子型の存否を検出する;及び/又は(ii)前記サンプル中で表1又は3Aに同定された遺伝子型、又は表1又は3Aに同定された遺伝子型と連鎖不平衡にある遺伝子型が前記イヌのインスリンもしくはIGFの遺伝子中に存在するか否かを決定する;及び/又は(iii)前記サンプル中で、表2又は3Bに同定された遺伝子型、又は表2又は3Bに同定された遺伝子型と連鎖不平衡にある遺伝子型が前記イヌのインスリンもしくはIGFの遺伝子中に非存在であるかを決定する;及び(b)それにより前記イヌが糖尿病に対して感受性であるかを診断する、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、イヌにおける糖尿病の診断及び治療に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
糖尿病は、イヌにおける病的状態の重大な原因である。糖尿病は、イヌの最も一般的な内分泌障害の1つである。英国内でのイヌ糖尿病の有病率はイヌ500匹当たり約1匹であり、この疾患は典型的には5〜12歳の中年動物において見られる。臨床兆候には、多渇症、多尿症及び体重減少が含まれる。
【0003】
イヌの糖尿病は容易には分類されないが、ヒトとイヌの疾患との間には明確な類似性と相違が存在する。肥満はペットドッグでも飼い主におけると同様に極めて大きな問題ではあるが、2型糖尿病に相当するイヌがいるとの証拠はない。この疾患は、大まかにはインスリン欠乏性糖尿病(IDD)とインスリン耐性糖尿病(IRD)に分けることができる。IDDは最も一般的なタイプであるが、膵β細胞消失の基礎にある原因は、現時点では不明である。IRDについての最も一般的な理由は、雌イヌにおける発情間期糖尿病であり、これはヒトの妊娠糖尿病に類似する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[発明の要約]
本発明者らは、糖尿病を診断するために使用できる、イヌにおける一連の遺伝子型マーカーを同定した。従って、本発明は、イヌにおける糖尿病に対する感受性を診断するための方法であって:
(a)(i)前記イヌ由来のサンプル中において、以下の免疫系遺伝子:CTLA−4、IGF−2、IL−1α、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12β、IFNγ、PTPN3、PTPN15、PTPN22、TNF、もしくはRANTESのいずれか1つにおける遺伝子型の存在又は非存在を検出する工程と;及び/又は
(ii)前記イヌ由来のサンプル中において、表1もしくは3Aに同定された遺伝子型、又は表1もしくは3Aに同定された前記遺伝子型と連鎖不平衡にある遺伝子型が、前記イヌのインスリンもしくはIGFの遺伝子中に存在するかどうかを決定する工程と;及び/又は
(iii)前記イヌ由来のサンプル中において、表2もしくは3Bに同定された遺伝子型、又は表2もしくは3Bに同定された前記遺伝子型と連鎖不平衡にある遺伝子型が、前記イヌのインスリンもしくはIGFの遺伝子中に非存在であるかどうかを決定する工程と;及び
(b)それにより前記イヌが糖尿病に対して感受性であるかどうかを診断する工程と、を含む方法を提供する。
【0005】
本発明は:
遺伝子型のいずれかを検出できるプローブもしくはプライマーと;
本発明の方法を実施するための、遺伝子型のいずれかを検出できるプローブもしくはプライマーを含むキットと;
糖尿病に対して感受性であるイヌのためのカスタマイズされた(customised)フードを調製するための方法であって:
(a)前記イヌが糖尿病に対して感受性であるかどうかを本発明の方法によって決定する工程;及び
(b)前記イヌのために適切なフードを調製する工程、を含む方法と;
遺伝子型及び任意でそれらと糖尿病との関連に関する情報を含むデータベースと、をさらに提供する。
【0006】
[配列の簡単な説明]
配列番号1〜108は、表1、2、3、5及び6に記載のSNPを含むポリヌクレオチド配列を示している。残りの配列番号は、表8及び9におけるプライマー及びプローブの配列を示している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】CTLA4;IGF INS;PTPN22;IFNα;IL−4;IL−10;IL−6;IL−12β;TNFα;及びIL−1αの各々についての品種の低、中間(neutral)、中等度(moderate)及び高リスクカテゴリーに階層化された症例及びコントロールについてのハプロタイプ頻度を示している。
【図2】CTLA4;IGF INS;PTPN22;IFNα;IL−4;IL−10;IL−6;IL−12β;TNFα;及びIL−1αの各々についての品種の低、中間、中等度及び高リスクカテゴリーに階層化された症例及びコントロールについてのハプロタイプ頻度を示している。
【図3】CTLA4;IGF INS;PTPN22;IFNα;IL−4;IL−10;IL−6;IL−12β;TNFα;及びIL−1αの各々についての品種の低、中間、中等度及び高リスクカテゴリーに階層化された症例及びコントロールについてのハプロタイプ頻度を示している。
【図4】CTLA4;IGF INS;PTPN22;IFNα;IL−4;IL−10;IL−6;IL−12β;TNFα;及びIL−1αの各々についての品種の低、中間、中等度及び高リスクカテゴリーに階層化された症例及びコントロールについてのハプロタイプ頻度を示している。
【図5】CTLA4;IGF INS;PTPN22;IFNα;IL−4;IL−10;IL−6;IL−12β;TNFα;及びIL−1αの各々についての品種の低、中間、中等度及び高リスクカテゴリーに階層化された症例及びコントロールについてのハプロタイプ頻度を示している。
【図6】CTLA4;IGF INS;PTPN22;IFNα;IL−4;IL−10;IL−6;IL−12β;TNFα;及びIL−1αの各々についての品種の低、中間、中等度及び高リスクカテゴリーに階層化された症例及びコントロールについてのハプロタイプ頻度を示している。
【図7】CTLA4;IGF INS;PTPN22;IFNα;IL−4;IL−10;IL−6;IL−12β;TNFα;及びIL−1αの各々についての品種の低、中間、中等度及び高リスクカテゴリーに階層化された症例及びコントロールについてのハプロタイプ頻度を示している。
【図8】CTLA4;IGF INS;PTPN22;IFNα;IL−4;IL−10;IL−6;IL−12β;TNFα;及びIL−1αの各々についての品種の低、中間、中等度及び高リスクカテゴリーに階層化された症例及びコントロールについてのハプロタイプ頻度を示している。
【図9】CTLA4;IGF INS;PTPN22;IFNα;IL−4;IL−10;IL−6;IL−12β;TNFα;及びIL−1αの各々についての品種の低、中間、中等度及び高リスクカテゴリーに階層化された症例及びコントロールについてのハプロタイプ頻度を示している。
【図10】CTLA4;IGF INS;PTPN22;IFNα;IL−4;IL−10;IL−6;IL−12β;TNFα;及びIL−1αの各々についての品種の低、中間、中等度及び高リスクカテゴリーに階層化された症例及びコントロールについてのハプロタイプ頻度を示している。
【図11】本発明の方法を実施するために配置された機能的成分の実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[発明の詳細な説明]
本発明は、イヌにおける糖尿病に対する感受性を決定するための方法を提供する。糖尿病に対する感受性は、イヌが糖尿病を発生する、又は既に糖尿病を有する可能性が高いことを意味する。その状態に対して感受性である、もしくは素因があるイヌは、その状態に関連する症状を示す60%を超える機会を有する可能性がある。従って、感受性であるイヌは、そのイヌの生涯におけるある段階においてその状態の症状を示す70%、80%又は90%を超える機会を有する可能性がある。例えば、感受性であると診断されるイヌ100匹のサンプル中では、少なくとも60匹、少なくとも70匹、少なくとも80匹、又は少なくとも90匹のイヌがその状態の症状を示す。好ましい実施形態では、アトピー性皮膚炎に対して感受性であると診断されるすべてのイヌがその状態の症状を示す。
【0009】
糖尿病の状態は、通常は、少なくとも一部には、自己免疫機序によって惹起される状態である。1つの実施形態では、試験されるイヌは、何らかの疾患症状を有していない、及び/又は健常なイヌである。
【0010】
試験されるイヌは、典型的にはコンパニオン・ドッグ又はペットである。そのイヌは、任意の品種であってよい、又は雑種もしくは交雑種のイヌ(mixed or crossbred dog)、又は異系交配のイヌ(outbred dog)(雑種犬(mongrel))であってよい。
【0011】
イヌは本明細書で言及した、例えば表1、2又は4に記載の品種のいずれかであってよい。イヌの親の一方又は両方は、表1、2又は4に言及した品種のいずれか、及び/又は同一品種であってよい。イヌの祖父母の1匹、2匹、3匹又は4匹は、表1、2又は4に言及した品種及び/又は同一品種であってよい。好ましくは、試験されるイヌは、純粋種である。しかし、1つの実施形態では、試験されるイヌは、本明細書に言及した品種のいずれかの少なくとも50%を有していてよい。また別の実施形態では、イヌは、その遺伝的品種バックグラウンドにおいて本明細書に言及した品種のいずれかの少なくとも75%を有していてよい。そこで、そのゲノムの少なくとも50%又は少なくとも75%は、本明細書に言及した品種のいずれかに由来してよい。イヌの遺伝的品種バックグラウンドは、そのイヌにおける2つ又はそれ以上の品種特異的SNPマーカーの存在又は非存在を検出することによって決定できる。
【0012】
本発明の方法を用いて試験されるイヌは、表1、2又は4に言及した品種のいずれかの遺伝的品種遺伝形質について試験できる。これは、例えば、イヌ由来のDNAサンプルを分析し、特定品種において継承される遺伝子マーカーの存在又は非存在を検出する工程によって実施できよう。そのようなマーカーは、単独又は組み合わせて試験される、単一ヌクレオチド多型(SNP)もしくはマイクロサテライトであってよい。あるいは、イヌは特定のイヌ品種遺伝子形質について試験される必要はないが、それは例えばそのイヌがイヌの飼い主又は獣医によって特定の品種遺伝形質を有すると疑われているからである。これは、例えば、イヌの祖先についての知識のため、又はその外見のためである。
【0013】
試験されるイヌは、任意の年齢であってよい。好ましくは、イヌは、0〜10歳、例えば0〜5歳、0〜3歳又は0〜2歳である。本発明の方法がイヌ由来のサンプルに対して実施される場合は、サンプルはこれらの年齢範囲のいずれかに含まれるイヌから採取されていてよい。イヌは、糖尿病のいずれかの症状が明白になる前に、本発明の方法によって試験することができる。
【0014】
[遺伝子型の検出]
上述したように、本発明の検出方法では、1つ又は複数の遺伝子型は特定の遺伝子にタイピングすることができる。特定の遺伝子は、以下の免疫系遺伝子:CTLA−4、IGF−2、IL−1α、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12β、IFNγ、PTPN3、PTPN15、PTPN22、TNF、RANTESである。インスリン遺伝子及びIGF遺伝子の遺伝子型もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0015】
本明細書の開示では、表を含めて、インスリン遺伝子及びIGF遺伝子は、一緒に考察される。2つの遺伝子が(例えば表において)一緒に考察される場合は、IGF遺伝子は、インスリン遺伝子の近くに位置するIGF−1である。しかし、IGF−2における遺伝子型のタイピングもまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0016】
本発明は、1つ又は複数の遺伝子型の検出に関する。遺伝子型は、SNP(単一ヌクレオチド多型)であってよい、又は1つより多いSNP(つまり、ハプロタイプ)を含んでいてよく、例えば少なくとも2、3、4、5、6つ又はそれ以上のSNPを(典型的には単一遺伝子を越えて、もしくは相違する遺伝子を越えて)タイピングすることができ、これらのSNPは、好ましくは表1、2、3Aもしくは3Bに開示した特異的SNPである。そこで1つの実施形態では、表3A又は3Bにおけるハプロタイプのいずれかに示した1、2、3、4つ又はそれ以上のSNPがタイピングされているので、これらの表におけるハプロタイプに示したSNPの全部がタイピングされる必要はない。しかし、当然ながら、ハプロタイプのいずれかにおけるSNPの全部をタイピングできよう。これに関連して、用語「タイピングする(type)」は、遺伝子型の存在又は非存在を検出することを意味する。1つより多いSNPがアレル(対立遺伝子)内でタイピングされる場合は、少なくとも2、3、4つ又はそれ以上のSNPは相互に連鎖不平衡にある可能性がある、及び/又は少なくとも2、3、4つ又はそれ以上のSNPは相互に連鎖不平衡にはない可能性がある。
【0017】
本明細書で言及した遺伝子のいずれかの一方又は両方のアレルは、本方法においてタイピングできる。表1及び2に同定されたSNPについては、マイナーアレルは、糖尿病の感受性(表1)又は防御(表2)と関連することが見いだされた。
【0018】
本明細書で言及した遺伝子型は、表(表5〜9)に示したフランキング配列又はプライマー配列を参照して規定することができる。表の一部は多型位置を越える逆相補鎖を示しているが、これらは当然ながら遺伝子型を(詳細には、遺伝子内のその位置に関して)明白に規定するために使用できることに留意されたい。表1及び2における個別SNPをフランキングしている代表的な配列は、表5に提供されている。表3A及び3Bにおけるハプロタイプを作り上げているSNPをフランキングする代表的な配列は、表6に提供されている。表5及び6のどちらにおいても、SNPはボールド体で強調されている。表6は、表3A及び3Bにおけるハプロタイプについての配列マップを提供している。表3A及び3BにおいてSNPを左から右へ取り出すと、表6の上から下へ進むボールド体のSNPに対応する。このため特定の遺伝子型を決定する工程は、表5又は6における配列においてボールド体で指示されたヌクレオチド位置で存在するヌクレオチドを決定する工程を含む。試験されるイヌにおいて表5及び6に提示した正確な配列が必ずしも存在するものではないことは理解される。SNPの配列、及びその位置は、例えばイヌのゲノム内のヌクレオチドの欠失又は付加のために変動しよう。
【0019】
表1及び3Aに示した遺伝子型の保有は、糖尿病に対する感受性を示し、表2及び3Bに示した遺伝子型の保有は糖尿病からの防御を示している。そこで本発明は、糖尿病に対して感受性であるイヌ又は糖尿病から防御されているイヌを同定する方法を提供する。ここでは、本発明者らは本発明を糖尿病に対して感受性であるイヌを同定することに関して説明するが、この状況において開示した全実施形態は、糖尿病から防御されるイヌを同定することにも適用できると理解されている。
【0020】
1つの実施形態では、イヌは、表1に示した遺伝子型を保有すると見いだされた場合、又は表2に示した遺伝子型が欠如すると見いだされた場合に、感受性であるとみなされ、また、イヌがその遺伝子型と同じ行に示されている品種である場合に限って感受性であると見なされる(すなわち、本発明の方法は、表1及び/又は2に規定した所定の品種において所定の遺伝子型を検出することに限定される可能性がある)。さらにまた別の実施形態では、本方法は、同様に表1及び/又は2に規定した品種からの1匹又はそれ以上の親もしくは祖父母を有するイヌに限定される可能性があり、本方法は、表1及び/又は2における遺伝子型と同じ行に示されている品種である親もしくは祖父母を有するイヌにおけるその遺伝子型の存在もしくは非存在を検出するために実施される。
【0021】
本発明による遺伝子型の検出は、イヌのポリヌクレオチドを遺伝子型のための特異的結合物質と接触させる工程と前記物質が前記ポリヌクレオチドへ結合するかどうかを決定する工程とを含んでいてよく、このとき前記物質の結合は前記遺伝子型の存在を示し、前記物質の結合の欠如は前記遺伝子型の非存在を示す。
【0022】
本方法は、一般にイヌ由来のサンプルについてインビトロで実施されるが、このときそのサンプルはそのイヌの核酸(例えばDNA)を含む。サンプルは、典型的には個体の体液及び/又は細胞を含んでおり、例えば、スワブ、例えば口腔スワブを用いて入手できる。サンプルは、血液、尿、唾液、皮膚、頬細胞もしくは毛根サンプルであってよい。サンプルは、典型的には本方法を実施する前に処理されるが、例えばポリヌクレオチド/DNA抽出が実施されてよい。サンプル中のポリヌクレオチドもしくはタンパク質は、物理的又は化学的のいずれかによって、例えば適切な酵素を用いて切断することができる。1つの実施形態では、サンプル中のポリヌクレオチドの一部は、遺伝子型を検出する前に、例えばクローニングによって、又はPCRをベースとする方法を用いて複製もしくは増幅させられる。
【0023】
本発明では、任意の1つ又はそれ以上の方法は、イヌにおける1つ又はそれ以上の遺伝子型の存在又は非存在を決定する工程を含むことができる。遺伝子型は、典型的にはイヌのポリヌクレオチド内の多形配列の存在を直接的に決定する工程によって検出される。そのようなポリヌクレオチドは、典型的にはゲノムDNA、mRNAもしくはcDNAである。遺伝子型は、任意の適切な方法、例えば以下で言及する方法によって検出することができる。
【0024】
特異的結合物質は、その遺伝子型を有するポリヌクレオチドへ優先的に、もしくは高親和性で結合するが、他のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドへは結合しないか、又は低親和性でのみ結合する物質である。特異的結合物質は、プローブもしくはプライマーであってよい。プローブは、オリゴヌクレオチドであってよい。プローブは標識できる、又は間接的に標識することができる。プローブのポリヌクレオチドもしくはタンパク質への結合を使用すると、プローブ又はポリヌクレオチド又はタンパク質のいずれかを固定化することができる。
【0025】
一般に本方法では、物質の遺伝子型への結合の決定は、その物質のイヌのポリヌクレオチドへの結合を決定する工程によって実施できる。しかし1つの実施形態では、物質は対応する野生型配列に、例えば遺伝子型の位置にフランキングするヌクレオチドを結合することによって結合することもできるが、野生型配列への結合方法は、その遺伝子型を含有するポリヌクレオチドの結合とは検出可能に相違する。
【0026】
本方法は、2つのオリゴヌクレオチドプローブが使用されるオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイに基づいてよい。これらのプローブは遺伝子型を含有するポリヌクレオチド上の隣接領域に結合し、結合した後に2つのプローブが適切なリガーゼ酵素によって一緒にライゲートされることを可能にする。しかし1つのプローブ中での単一ミスマッチの存在は、結合及びライゲーションを崩壊させることがある。このようにライゲートされたプローブは遺伝子型を含有するポリヌクレオチドと一緒にのみ発生するから、このためにライゲートされた生成物の検出を使用すると遺伝子型の存在を決定することができる。
【0027】
1つの実施形態では、プローブはヘテロ二本鎖の分析に基づく系において使用される。そのような系では、プローブがその遺伝子型を含有するポリヌクレオチドに結合すると、遺伝子型が発生する部位でヘテロ二本鎖を形成し、従って二本鎖構造を形成しない。そのようなヘテロ二本鎖構造は、一本鎖もしくは二本鎖に特異的な酵素の使用によって検出できる。典型的には、プローブはRNAプローブであり、ヘテロ二本鎖領域はRNAase Hを用いて切断され、遺伝子型は切断産物を検出する工程によって検出される。
【0028】
本方法は、例えば、PCR Methods and Applications 3, 268-71(1994)及びProc. Natl. Acad. Sci. 85, 4397-4401(1998)に記載されている蛍光化学切断ミスマッチ分析に基づいてよい。
【0029】
1つの実施形態では、PCRプライマーが遺伝子型を含有するポリヌクレオチドに結合する場合にのみPCR反応をプライミングするPCRプライマーが使用され(例えば、配列特異的もしくはアレル特異的なPCR系)、その遺伝子型の存在は、PCR産物を検出する工程によって決定することができる。好ましくは、遺伝子型に相補的であるプライマーの領域は、プライマーの3’末端もしくはその近くである。遺伝子型の存在は、蛍光色素及びクエンチング剤に基づくPCRアッセイ(例えば、Taqman PCR検出系)を用いて決定することができる。
【0030】
遺伝子型の存在は、遺伝子型の存在がゲル電気泳動中にポリヌクレオチドもしくはタンパク質の移動度に与える変化に基づいて決定することができる。ポリヌクレオチドの場合には、一本鎖高次構造遺伝子型(SSCP)又は変性勾配ゲル電気泳動法(DDGE)分析を使用できる。
【0031】
多形の存在は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)によって検出できる。詳細には、多形は、二重ハイブリダイゼーションプローブ系によって検出できる。本方法は、相互に近くに位置していて当該の標的ポリヌクレオチドの内部セグメントに相補的である2つのオリゴヌクレオチドプローブの使用を含んでおり、これら2つのプローブの各々は蛍光体で標識される。任意の適切な蛍光標識もしくは色素を蛍光体として使用できるので、1つのプローブ(ドナー)上への蛍光体の発光波長は、第2プローブ(アクセプター)上の蛍光体の励起波長とオーバーラップする。典型的なドナー蛍光体は、フルオレセイン(FAM)であり、典型的なアクセプター蛍光体には、Texas red、ローダミン、LC−640、LC−705及びシアニン5(Cy5)が含まれる。
【0032】
蛍光共鳴エネルギー転移が発生するためには、2つの蛍光体が両方のプローブの標的へのハイブリダイゼーションによりごく近くへ接近する必要がある。ドナー蛍光体が適切な波長の光線で励起されると、発光スペクトルエネルギーはアクセプタープローブ上の蛍光体へ転移し、その蛍光を生じさせる。このため、この光線波長の検出は、ドナー蛍光体のために適切な波長での励起中には、2つのプローブ上での蛍光体のハイブリダイゼーション及び近接結合を示す。各プローブは、上流(5’)に位置するプローブがその3’末端で標識され、下流(3’)に位置するプローブがその5’末端で標識されるように、1つの端で1つの蛍光体を用いて標識できる。標的配列に結合した場合の2つのプローブ間のギャップは、1〜20ヌクレオチド、好ましくは1〜17ヌクレオチド、より好ましくは1〜10ヌクレオチド、例えば1、2、4、6、8もしくは10ヌクレオチドなどのギャップであってよい。
【0033】
2つのプローブの第1は、多形に隣接する遺伝子の保存配列に結合するように設計することができ、第2プローブは1つ又はそれ以上の多形を含む領域に結合するように設計することができる。第2プローブが標的とする遺伝子の配列内の多形は、結果として生じる塩基ミスマッチによって引き起こされる融解温度における変化を測定することによって検出できる。融解温度における変化の程度は、ヌクレオチド多形に関係する数及び塩基のタイプに依存する。
【0034】
多形のタイピングは、プライマー伸長技術を用いても実施することもできる。この技術では、多形部位を取り囲んでいる標的領域は、例えばPCRを用いて複写又は増幅される。次に単一塩基シーケンシング反応が1つの塩基を多形部位からアニーリングするプライマーを用いて実施される(アレル特異的ヌクレオチド取り込み)。プライマー伸長産物は、次に多形部位に存在するヌクレオチドを決定するために検出される。伸長産物を検出できる数種の方法がある。1つの検出法では、例えば、蛍光標識されたジデオキシヌクレオチドターミネーターを使用して多形部位での伸長反応が停止させられる。あるいは、質量修飾ジデオキシヌクレオチドターミネーターが使用され、プライマー伸長産物は質量分析法を使用して検出される。1つ又はそれ以上のターミネーターを特異的に標識することによって、伸長したプライマーの配列、従って多形部位に存在するヌクレオチドを推測することができる。1回の反応毎に1つより多い産物を分析することができ、結果として両方の相同染色体上に存在するヌクレオチドは、1つより多いターミネーターが特異的に標識された場合に決定できる。
【0035】
[ポリヌクレオチド]
本発明は、本明細書に開示した任意の遺伝子型を含むポリヌクレオチドをさらに提供する。そこでポリヌクレオチドは、多形を含有する関連遺伝子のフラグメントを含んでいてよいし、もしくはそれからなってよく、そこで本明細書に開示した特異的配列のいずれかのフラグメントを含んでいてよい、もしくはいずれかのフラグメントからなってよい。より詳細には、ポリヌクレオチドは、表5又は6に記載の配列のいずれかのフラグメントを含んでいてよいし、もしくはそれからなってよい。
【0036】
ポリヌクレオチドは、典型的には、少なくとも10、15、20、30、50、100、200もしくは500塩基長、例えば長さが少なくとも1kb、10kb、100kb、1000kb以上である。ポリヌクレオチドは、典型的には多形の(5’もしくは3’端)片側もしくは両側上でフランキングヌクレオチドを、例えば両側もしくは片側で少なくとも2、5、10、15以上のフランキングヌクレオチドを含む。典型的には、ポリヌクレオチドは、本明細書に開示した特異的配列のいずれかと少なくとも70%、80%、90%もしくは95%、好ましくは少なくとも99%、一層より好ましくは少なくとも99.9%同一である。置換及び/又は挿入及び/又は欠失及び/又は同一性率のそのような数は、ポリヌクレオチドの全長に、又は両側もしくは片側で50、30、15、10以下のフランキングヌクレオチド及んでよい。
【0037】
ポリヌクレオチドは、RNAもしくはDNAであってよく、これらとしては、ゲノムDNA、合成DNAもしくはcDNAが挙げられる。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖であってよい。ポリヌクレオチドは、合成もしくは修飾ヌクレオチド、例えばメチルホスホネート及びホスホロチオエートのバックボーン、又は分子の3’及び/又は5’端でのアクリジンもしくはポリリシン鎖の付加を含んでいてよい。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドは、例えばPCRのためのプライマー又はプローブとして使用できる。本発明のポリヌクレオチドは、明示用標識(revealing label)を有していてよい。適切な標識には、放射性同位体(例えば32Pもしくは35S)、蛍光標識、酵素標識又はその他のタンパク質標識(例えばビオチン)が含まれる。
【0039】
本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子型へ選択的に結合することのできるプローブ又はプライマーとして使用できる。そこで本発明は、本発明による方法において使用するためのプローブもしくはプライマーを提供するが、そのプローブもしくはプライマーは遺伝子型の存在を選択的に検出することができる。好ましくは、プローブは単離されているか、もしくは組換え核酸である。プローブは、アレイ、例えばポリヌクレオチドアレイ上に固定化できる。
【0040】
そのようなプライマー、プローブ及びその他のフラグメントは、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも15もしくは少なくとも20、例えば少なくとも25、少なくとも30もしくは少なくとも40ヌクレオチド長である。それらは、典型的には40、50、60、70、100、もしくは150ヌクレオチド長までである。プローブ及びフラグメントは、150ヌクレオチド長より長く、例えば200、300、400、500、600、700ヌクレオチド長までさえであってよい、又は本発明の全長ヌクレオチド配列より短い数ヌクレオチド長までさえ、例えば5もしくは10ヌクレオチド長であってよい。本発明において有用なプライマー及びプローブの例は、表8及び9に提供されている。このために本発明のポリヌクレオチドは、タイピングされる遺伝子型に依存して、表8もしくは9に提供された配列、又は配列のフラグメントのいずれかを含むことができる、又はそれらからなってよい。
【0041】
本発明のポリヌクレオチド(例、プライマー及びプローブ)は、単離形もしくは実質的精製形で存在してよい。それらは、それらの所定の使用を妨害しない担体もしくは希釈剤と混合することができ、それでも実質的に単離されていると見なすことができる。それらはさらに、実質的精製形にあってよく、その場合にはそれらは一般に少なくとも90%、例えば少なくとも95%、98%もしくは99%のポリヌクレオチド又は製剤の乾燥質量を含む。
【0042】
ホモログ
本明細書ではポリヌクレオチド配列のホモログについて言及する。そのようなホモログは、典型的には、例えば少なくとも15、20、30、100以上の連続するヌクレオチドの領域にわたって少なくとも70%相同性、好ましくは少なくとも80、90%、95%、97%もしくは99%の相同性を有する。相同性は、ヌクレオチド同一性(時には「ハード相同性(hard homology)」と言われる)に基づいて計算できる。
【0043】
例えば、UWGCGパッケージは、相同性を計算するために使用できるBESTFITプログラムを提供する(例えば、そのデフォルト設定で使用される)(Devereux et al., (1984) Nucleic Acids Research 12, p387-395)。PILEUP及びBLASTアルゴリズムを使用すると、相同性を計算できる、又は配列を整列させる(例えばAltschul S.F.(1993) J Mol Evol 36:290-300;Altschul, S.F. et al., (1990) J Mol Biol 215:403-10に記載されているように、(典型的にはそれらのデフォルト設定で)同等もしくは対応する配列を同定する)ことができる。
【0044】
BLAST分析を実施するためのソフトウエアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公的に入手できる。このアルゴリズムは、クエリー配列内で、データベース配列内で同一長さのワードが整列させられると一部の陽性値閾値スコアTに適合する、もしくは満足させるいずれかである長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列対(HSP)を最初に同定する工程を含む。Tは、隣接ワードスコア閾値と呼ばれている(Altschul et al., supra)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含有するHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして作用する。このワードヒットは、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り各配列に沿って両方向に伸長させられる。各方向におけるワードヒットのための伸長は:累積アラインメントスコアがその最高到達値から量Xだけ低下する場合;累積スコアが、1つ又はそれ以上のマイナスのスコアリング残留アラインメントの累積に起因してゼロ以下になる場合;又はどちらかの配列の末端に到達した場合に停止させられる。BLASTアルゴリズムパラメータであるW、T及びXは、アラインメントの感受性及び速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして11のワード長(W)、50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919を参照されたい)アラインメント(B)、10の予測値(E)、M=5、N=4の、及び両方のストランドの比較を使用する。
【0045】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性についての統計的解析を実施する;例えば、Karlin and Altschul(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787を参照されたい。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの指標は、最小合計確率(P(N))であり、これはそれによって2つのポリヌクレオチド配列間の一致が偶然に発生する確率の指標を提供する。例えば、配列は、第1配列の第2配列に対する比較における最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、及び最も好ましくは約0.001未満である場合に他の配列と類似であると見なされる。
【0046】
[連鎖不平衡]
本発明の方法では、特異的遺伝子型の存在は、特異的遺伝子型と連鎖不平衡にある多形をタイピングすることによって推論できる。集団内で相互に連鎖不平衡にある遺伝子型(SNPもしくはハプロタイプ)は、同一染色体上で一緒に見いだされる傾向がある。典型的には、1つは、少なくとも30%の場合に、例えば他方が集団内の個体において特定染色体上で見いだされる少なくとも40%、50%、70%もしくは90%の場合に見いだされる。機能的多形ではないが、機能的多形と連鎖不平衡にある多形は、機能的多形の存在を示すマーカーとして機能できることがある。本明細書に言及した遺伝子型のいずれかと連鎖不平衡にある遺伝子型は、典型的には500kb以内、好ましくは400kb、200kb、100kb、50kb、10kb、5kbもしくは1kb以内の遺伝子型である。
【0047】
[検出キット]
本発明は、イヌにおける1つ又はそれ以上の遺伝子型、例えば本発明の方法を実施するためにタイピングできる遺伝子型のいずれかなどの存在又は非存在を決定するための手段を含むキットもまた提供する。詳細には、本明細書で規定したような遺伝子型を検出できる、又は検出を支援できるそのような手段は、特異的結合物質、プローブ、プライマー、プライマーのペアもしくは組み合わせを含むことができる。プライマー又はプライマーのペアもしくは組み合わせは、本明細書で考察するように、検出すべき遺伝子型を含むポリヌクレオチド配列のPCR増幅だけを誘発する配列特異的プライマーであってよい。本キットは、遺伝子型の非存在を検出することができる、特異的結合物質、プローブ、プライマー、プライマーのペアもしくは組み合わせをさらに含むことができる。本キットは、バッファーもしくは水溶液をさらに含むことができる。
【0048】
本キットは追加して、実施すべき上記に言及した方法の実施形態のいずれかを可能にする1つ又はそれ以上の他の試薬もしくは機器を含むことができる。そのような試薬もしくは機器は以下ののうちの1つ又はそれ以上を含むことができる:遺伝子型への物質の結合を検出するための手段、検出可能な標識、例えば蛍光標識、ポリヌクレオチドに作用することのできる酵素、典型的にはポリメラーゼ、制限酵素、リガーゼRNAse Hもしくはポリヌクレオチドへ標識を付着させることのできる酵素、酵素試薬のために適切なバッファーもしくは水溶液、本明細書で考察した遺伝子型にフランキングする領域に結合するPCRプライマー、陽性及び/又は陰性のコントロール、ゲル電気泳動法装置、サンプルからDNAを単離するための手段、個体からサンプルを入手するための手段、例えばスワブ、もしくはニードルを含む機器、又は検出反応を実施できるウエルを含む支持体。本キットは、本発明のアレイ、例えば特異的結合物質、好ましくはプローブを含むポリヌクレオチドアレイであってよいし、又はこれらを含んでいてもよい。本キットは、典型的には、本キットを使用するための1組の取扱説明書を含む。
【0049】
[治療薬についてのスクリーニング]
本発明は、糖尿病を治療するための治療薬を同定するためのスクリーニング標的としての多形ポリヌクレオチド配列の使用(つまり、本明細書に開示した遺伝子型のいずれかを含むポリヌクレオチドを使用する)にさらに関する。1つの実施形態では、本発明は、糖尿病を治療するために有用な物質を同定するための方法であって、ポリヌクレオチドを試験物質と接触させる工程と、その物質がポリヌクレオチド、例えばポリペプチドからの発現を変調させることができるどうかを決定する工程と、を含む方法を提供する。
【0050】
本方法は、インビトロで、細胞の内側もしくは外側で、又はインビボで実施できる。1つの実施形態では、本方法は、細胞、細胞培養物もしくは細胞抽出物に対して実施される。
【0051】
本方法は、例えば本明細書に規定したような遺伝子型に対してトランスジェニックである非ヒト動物においてインビボで実施することもできる。トランスジェニック非ヒト動物は、典型的には生化学的研究において一般に使用される種であり、好ましくは実験用系統である。適切な動物には、齧歯類、特に、マウス、ラット、モルモット、フェレット、アレチネズミもしくはハムスターが含まれる。最も好ましくは、動物はマウスである。
【0052】
上記のスクリーニング法において使用できる適切な候補物質には、抗体物質、例えばモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体及びCDRグラフト化抗体が含まれる。さらに、コンビナトリアルライブラリー、規定化学実体(defined chemical identities)、ペプチド及びペプチドミメティック、オリゴヌクレオチドならびに天然物質ライブラリー、例えばディスプレイライブラリーもまた試験できる。試験物質は、典型的には本明細書に言及した物質の特性のいずれかを有し得る小分子を中心とした合成に由来する化学化合物であってよい。初期スクリーニングでは数バッチの候補物質、例えば反応1回に付き10種ずつの物質を使用し、そして変調を示すバッチの物質を個別に試験することができる。用語「物質」は、単一物質及び2、3又はそれ以上の物質の組み合わせを含むことが意図されている。例えば、用語「物質(agent)」は、単一ペプチド、2つ又はそれ以上のペプチドの混合物又はペプチド及び規定化学実体の混合物を意味することができる。本発明の1つの態様では、試験物質は、フード成分、例えば本明細書に言及したフード成分のタイプのいずれかである。
【0053】
1つの実施形態では、同定されている治療薬は、スクリーニングのために使用されたポリヌクレオチド内に存在したものと同一遺伝子型をそのゲノム内に含むイヌを治療するために使用される。
【0054】
[糖尿病の治療]
本発明は、イヌを糖尿病について治療する方法を提供する。1つの実施形態では、本発明の方法によって糖尿病に感受性であるイヌを同定する工程、及びそのイヌに糖尿病を治療する有効量の治療薬を投与する工程、を含む。治療薬は、糖尿病を治療するために使用できる当分野において公知の任意の薬物、例えばインスリンであってもよいし、又は以前に考察したようにスクリーニング法によって同定された物質であってよい。
【0055】
治療薬は、様々な方法で、例えば経口、頭蓋内、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、皮内、及び皮下で投与することができる。治療薬を含有する医薬組成物は、通常は、使用される特定の投与様式に依存して適切な医薬上許容される担体又は希釈剤を用いて処方される。例えば、非経口処方物は、通常は、医薬上及び生理学上許容される流体、例えば生理学的食塩液、平衡食塩液、又はビヒクルなどを使用する注射液である。経口処方物は、他方、固体、例えば錠剤もしくはカプセル剤、又は液体溶液もしくは懸濁液であってよい。
【0056】
イヌに与えられる治療薬の量は、治療される条件、治療下のイヌの性質及び治療下の状態の重症度を含む様々な因子に依存する。典型的な1日量は、特異的阻害剤の活性、治療されるイヌの年齢、体重及び状態、疾患のタイプ及び重症度ならびに投与の頻度及び経路によって、約0.1〜50mg/kg、好ましくは約0.1mg/kg〜10mg/kg(体重)である。好ましくは、1日量のレベルは、5mg〜2gである。
【0057】
[カスタマイズされたフード]
1つの態様では、本発明は、糖尿病に感受性であるイヌのためのカスタマイズされた食物に関する。好ましい実施形態では、カスタマイズされたフードは、コンパニオンドッグもしくはペット、例えばイヌのためである。そのようなフードは、例えば、ウェット・ペットフード、セミモイスト・ペットフード、ドライ・ペットフード及びペットトリート(pet treat)の形状にあってよい。ウェット・ペットフードは、一般に65%を超える含水率を有する。セミモイスト・ペットフードは、典型的には20〜65%の含水率を有しており、微生物増殖を防止するために保湿剤及びその他の成分を含むことができる。ドライ・ペットフードは、キブル(kibble)(細片)とも呼ばれ、一般には20%未満の含水量を有し、その加工処理工程は、典型的には抽出、乾燥及び/又は加熱による焼成を含む。ドライ・ペットフードの成分は、一般に、シリアル、穀類、肉類、家禽、脂肪、ビタミン類及びミネラル類が含まれる。成分は、典型的には混合され、抽出機/調理器具を通過させられる。生成物は、次に典型的には成形及び乾燥させられ、乾燥させた後に、乾燥生成物にフレーバー及び脂肪をコーティング又はスプレーすることができる。
【0058】
従って、本発明は、糖尿病に対して感受性であるイヌのために適合するカスタマイズされたフードの調製を可能にするが、このときカスタマイズされたドッグフードの処方は、糖尿病を予防もしくは緩和する成分を含む、及び/又は糖尿病の一因となる、もしくは悪化させる成分を含んでいない。当該の成分は、糖尿病を予防もしくは緩和することが当分野において公知である成分のいずれかであってよい。あるいは、本明細書に考察したスクリーニング法は、当該の成分を同定することができる。カスタマイズされたドッグフードは、適切なレベルの単炭水化物(simple carbohydrate)(例、単糖類及び二糖類)を含むように処方できる。カスタマイズされたドッグフードの調製は、電子的手段によって、例えばコンピュータシステムを使用することによって実施できる。
【0059】
また別の実施形態では、カスタマイズされたフードは、糖尿病を予防もしくは緩和することに役立つ機能的成分もしくは有効成分を含むように処方できる。
【0060】
本発明は、カスタマイズされたドッグフードを提供する方法であって、糖尿病に対して感受性であるイヌに対して適切なフードを、イヌ、イヌの飼い主もしくはイヌにえさを与える責任者へ提供する工程を含み、このときそのイヌは本発明の方法によって糖尿病に対して感受性であると決定されている方法にさらに関する。本発明の1つの態様では、カスタマイズされたフードは、在庫品目にされ、在庫品目から供給される。つまり、カスタマイズされたフードは、注文されるのではなく事前に製造されている。このために、本発明のこの態様によると、カスタマイズされたフードは1匹の特定のイヌのために特別設計されるのではなく、1匹より多いイヌのために適合する。例えば、カスタマイズされたフードは、糖尿病に対して感受性であるあらゆるイヌのために適合する可能性がある。あるいは、カスタマイズされたフードは、糖尿病に対して感受性であるイヌのサブグループ、例えば特定の品種、サイズもしくはライフステージのイヌのために適合する可能性がある。また別の実施形態では、フードは、個別のイヌの栄養要件を満たすようにカスタマイズすることができる。
【0061】
[バイオインフォマティクス]
遺伝子型の配列は、電子フォーマットで、例えばコンピュータデータベースに保存することができる。従って、本発明は、遺伝子型の配列に関する情報を含むデータベースを提供する。データベースは、遺伝子型についてのさらなる情報、例えば遺伝子型と糖尿病との関連のレベル又は集団内での遺伝子型の頻度をさらに含むことができる。本発明の1つの態様では、本データベースは、特定の遺伝子型を保有するイヌのために適合するフード成分及び適合しないフード成分に関する情報をさらに含む。
【0062】
本明細書に記載したデータベースは、糖尿病に対するイヌの感受性を決定するために使用できる。そのような決定は、電子手段によって、例えばコンピュータシステム(例、PC)を使用することによって実施できる。典型的には、この決定はイヌからの遺伝データをコンピュータシステムに入力する工程;遺伝データを遺伝子型に関する情報を含むデータベースと比較する工程;及びこの比較に基づいて、糖尿病に対するイヌの感受性を決定する工程によって実施される。
【0063】
本発明は、前記プログラムがコンピュータ上で実行される場合に本発明の方法の全行程を実施するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムもまた提供する。さらに前記プログラムがコンピュータ上で実行される場合に本発明の方法を実施するための、コンピュータ可読媒体上に保存されたプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品もまた提供される。コンピュータシステム上で実行されると本発明の方法を実施するようにコンピュータシステムに指示する、搬送波上にプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品が追加して提供される。
【0064】
本発明は、本発明による方法を実施するために配置された装置をさらに提供する。本装置は、典型的にはコンピュータシステム、例えばPCを含む。1つの実施形態では、コンピュータシステムは:イヌから遺伝データを受信するための手段20;データを遺伝子型に関する情報を含むデータベース10と比較するためのモジュール30;及び前記比較に基づいて糖尿病に対するイヌの感受性を決定するための手段40、を含む。
【0065】
[フードの製造]
本発明の1つの実施形態では、カスタマイズされたドッグフードの製造は電子的に制御できる。典型的には、イヌに存在する遺伝子型に関する情報は、カスタマイズされたドッグフード処方を作成するために電子的に処理することができる。カスタマイズされたドッグフード処方は、次にフード製造装置の操作を制御するための電子的製造指示を作成するために使用できる。これらの工程を実施するために使用される装置は、典型的にはコンピュータシステム、例えばPCを含むが、これはカスタマイズされたドッグフード処方を作成するために栄養情報を処理するための手段50;フード製造装置の作動を制御するための電子製造指示を作成するための手段60;及びフード製造装置70、を含む。
【0066】
本発明において使用されるフード製品製造装置は、典型的には1つ又はそれ以上の以下の構成要素:ドライ・ペットフード成分のための容器;液体のための容器;ミキサー;成形機もしくは抽出機;カットオフ装置;調理手段(例、オーブン);冷却装置;包装手段;及びラベリング手段、を含む。乾燥成分容器は、典型的には底部に開口部を有する。この開口部は、容量調節エレメント、例えばロータリーロックによって被覆されてよい。容量調節エレメントは、ペットフードへの乾燥成分の添加を調節するために、電子製造指示に従って開閉することができる。
【0067】
ペットフードの製造において典型的に使用される乾燥成分には、コーン、コムギ、肉及び/又は家禽ミールが含まれる。ペットフードの製造において典型的に使用される液体成分には、脂肪、獣脂及び水が含まれる。液体容器は、ペットフードに計量した量の液体を添加するために、例えば電子製造指示によって制御できるポンプを備えることができる。
【0068】
1つの実施形態では、乾燥成分容器及び液体容器はミキサーに結合されており、ミキサーへ規定された量の乾燥成分及び液体を送達する。ミキサーは、電子製造指示によって制御することができる。例えば、混合の持続時間又は速度を制御できる。混合された成分は、典型的には次に成形機又は抽出機へ送達される。成形機/抽出機は、混合した成分を必要な形状に成形するために使用できる、当分野において公知の任意の成形機又は抽出機であってよい。典型的には、混合した成分は、連続ストランドを形成するために圧力下で限定された開口部に通して押し進められる。ストランドが抽出されるにつれて、それはカットオフデバイス、例えばナイフによってキブルに切り刻むことができる。キブルは、典型的には、例えばオーブン内で調理される。調理時間及び温度は、電子製造指示によって制御することができる。調理時間は、フードのための所望の含水量を生成するために変更することができる。調理されたキブルは、次に冷却装置へ、例えば1つ又はそれ以上のファンを備えるチャンバへ移動させることができる。
【0069】
フード製造装置は、包装装置を含むことができる。包装装置は、典型的にはフードを容器内、例えばプラスチックもしくは紙の袋もしくは箱の中に包装する。本装置は、典型的にはフードが包装された後に、フードをラベル付けするための手段をさらに含むことができる。ラベルは:成分リスト;栄養情報;製造年月日;賞味期限;重量;ならびにフードが適合する種及び/又は品種などの情報を提供できる。
【0070】
[繁殖ツール]
同系交配に関連する疾患の問題を回避するために、所定の疾患、例えば糖尿病に対して遺伝的に素因がない繁殖のために品種内のイヌを選択することが有益である。従って、本発明は、糖尿病に対して感受性ではないイヌを選択する方法であって、本発明の方法を用いてそのイヌが糖尿病に対して感受性であるかどうかを決定する工程と、任意で選択されたイヌを繁殖させる工程と、を含む方法を提供する。より詳細には、本発明は、対象イヌとともに繁殖させるための1匹又はそれ以上のイヌを選択する方法であって:
(a)対象イヌならびに同一品種及び対象イヌとは反対の性別の2匹又はそれ以上のイヌからなる試験群における各イヌの糖尿病に対する感受性を決定する工程;及び
(b)対象イヌとともに繁殖させるために試験群から1匹又はそれ以上のイヌを選択する工程であって、選択されたイヌは糖尿病に対して感受性ではない工程、を含む方法を提供する。
【0071】
以下では、本発明を実施例によって例示する。
【実施例】
【0072】
本発明者らは、20匹の系統育種及び交雑種を含むイヌ糖尿病コホート(n=489)を候補遺伝子における単一ヌクレオチド多形(SNP)について遺伝子タイピングした。症例を1,000匹のイヌのコントロールデータセットから選択した品種対応コントロールと比較した。コントロール集団については、ハーディ・ワインベルク(Hardy-Weinberg)コンプライアンスに関してチェックした。アレル頻度は、χ2を用いてコントロールおよび症例間で比較し、ハプロタイプ分析は関連スコア試験を用いて実施した。
【0073】
[材料及び方法]
CTLA4、Rantes、IFNg、IGF、インスリン及び一部のTNF SNPはTaqmanによって分析し、その他はSequenomによって分析した。Sequenomは、単一反応において複数のSNPを正確に遺伝子タイピングする、単純かつ堅固な方法である。Sequenomは、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析法(MALDI−TOF MS)を使用する。このアッセイは、SNPに隣接してアニーリングするプローブに基づいている。DNAポリメラーゼ及びターミネーターヌクレオチドは、多形部位を通してプライマーを伸長させ、各々が固有の分子量を備えるアレル特異的伸長産物を生成する。これらの質量をMALDI−TOF MSによって分析すると、質量に基づいて遺伝子型が指定される。プライマー及びプローブは、Assay Designソフトウエアのバージョン3を用いて設計し、Metabion(ドイツ国)によって合成された。使用したTaqmanプライマー及びプローブ配列は、表8に提供する。Sequenomプライマーは、表9に提供する。
【0074】
プライマーを100μMへ希釈し、500nmの各フォワードプライマー及びリバースプライマーを含有するプレックス(plexes)をプールした。プローブは400μMへ希釈し、プローブプールは50%高質量及び50%低質量プローブへ分割した。プローブプールは、最終容量1.5mL中に26μLの各低質量プローブ及び52μLの各高質量プローブを含有していた。
【0075】
各PCR反応のために、15ngのDNAを384ウエルプレート内でプレーティングし、室温で一晩乾燥させた。PCRは、PTC−225 MJ Tetradサイクラー(384ウエル)上の5μL容量中で実施した。各反応液は、1.25×HotStarTaq PCRバッファー、1.625mM MgCl2、500μMの各dNTP、0.5UのHotStarTaq及び100nmプライマープールを含有しており、以下のように増幅させた:95℃で15分間;95℃で20秒間、56℃で30秒間、72℃で1分間を35サイクル;72℃で3分間。この反応液を4℃で維持した。
【0076】
PCR後、反応液を0.3Uのエビアルカリホスファターゼ(SAP)により処理して反応液からの任意のdNTP残留物を不活性化した。反応液は37℃で20分間にわたりインキュベートし、80℃で5分間にわたり変性させた。iPLEXプライマー伸長は、ダイアドPCRエンジン上で実施した。反応液は0.22×iPLEXバッファー、1×iLPEXターミネーションミックス、0.625(m低質量プライマー、1.25(m高質量プライマー及び1×iPLEX酵素を含有しており、以下の通りに増幅させた:94℃で30秒間、94℃で5分間を40サイクル、52℃で5秒間を5サイクル、80℃で5秒間、及び72℃で3分間にわたる最終伸長。サンプルは25μLの水で希釈し、6mgの樹脂を用いて脱塩し、その後にJouan CR4遠心分離器で4,000rpmで5分間にわたり遠心分離し、Sequenom質量アレイナノディスペンサ(Samsung社)を用いてSpectroCHIP上にスポッティングした。
【0077】
[統計学試験]
マイナーアレル頻度は、BCgeneの‘高速関連’分析用ツールを用いて症例及びコントロール間で比較した。各SNPについて品種毎にχ二乗値、p値、オッズ比(OR)及び信頼区間(CI)を計算した。χ二乗値が3.84より大きい場合に詳細な分析のためにデータを採取したが、p値は0.05未満であり、コントロール集団はHWE内に含まれた。糖尿病集団がHWE内に含まれなかったSNPは、これは疾患の結果から、分析に含めた。これらのデータの有意性は、プログラムCLUMP(Sham and Curtis, 1995)を用いてチェックした。CLUMPは、Monte Carloアプローチを使用して2xn分割表におけるχ二乗値及びp値を生成する。データの反復シミュレーションを実施し(本試験のためには1,000回)、そして観察されたデータに関連する模擬データ内のχ二乗値の頻度を計数すると、不偏有意性レベルが得られる。CLUMPは4つのχ二乗統計量(T1〜T4)を生成するが、本試験のためには標準χ二乗統計量(T1)を使用した。これは、1より大きいOR及びCI(感受性アレル;表1)又は1未満のOR及びCI(防御的アレル;表2)を備える有意性SNPの最終セットを生じさせた。これらの感受性及び防御的SNPの配列マップは、表5に記載した。表1における各SNPに対するマイナーアレルは、感受性アレルである。同様に、表2における各SNPに対するマイナーアレルは、防御的アレルである。フランキング配列を参照した各SNPの位置は、表5における各配列においてボールド体で表示されている。
【0078】
各遺伝子に対するハプロタイプは、Helix Treeバージョン4.10(www.goldenhelix.com)を用いてデータセットから推定した。
【0079】
観察された遺伝子座ハプロタイプ頻度には相当に大きな品種間変動性が見られたので、相違する品種によって共有されるハプロタイプが相違するリスク群で分けられるかどうかを決定する試みで、それらの糖尿病リスク状態によって品種を階層化することによってさらに詳細な分析を実施した。イヌ糖尿病集団の品種プロファイルは、サモエード(Samoyed)(17.3のオッズ比を備える)からボクサー(Boxer)(0.07のオッズ比を備える)までの糖尿病リスクにおける顕著な差を示している。品種を超えるこの範囲の糖尿病リスクは、限定された遺伝子プールを起源とする一部の人種群において疾患罹病率が極めて高い可能性がある、相違するヒト集団において所見される糖尿病リスクを連想させる。詳細には、糖尿病及びその他の自己免疫状態は、高リスクアレル及びハプロタイプの顕著に高い頻度が存在する、多数の個別のヒト集団、例えば北米先住民において極めて一般的である。
【0080】
分析における品種特異的バイアスを最小限に抑えるために、本発明者らは高リスク品種群(例、サモエード、チベタンテリア(Tibetan terrier)、及びケアーン・テリア(Cain terriers))から明白な防御を示す品種群(例、ボクサー、ジャーマンシェパードドッグ(German shepherd dog)及びゴールデンレトリーバー(Golden Retriever)−表4及び図1〜10を参照されたい)までの範囲内の糖尿病リスク群に階層化された品種群においてデータを分析することを選択した。
【0081】
疑わしい感受性ハプロタイプ及び防御的ハプロタイプを有するイヌの頻度を各リスク群において症例及びコントロールについて試験し、特別には高リスク品種群において、ハプロタイプが一般にコントロールに比較して症例における方がより頻回に観察されるかどうかを決定した(図1〜10における個別候補ハプロタイプについてのハプロタイプ頻度グラフを参照されたい)。この方法で階層化すると、2つの観察を行うことができた。第1に、感受性ハプロタイプの頻度は、一般により高いリスクカテゴリーへ指定された品種における方が高かった。第2に、防御的ハプロタイプについては一般に逆のことが観察された。
【0082】
表3A及び3Bは、高、低及び中間リスク品種にわたるグラフの形状及び分布から推定された感受性ハプロタイプ及び防御的ハプロタイプを示している。(図1〜10)。防御的であるとタイピングされたハプロタイプについては、そのハプロタイプの頻度はリスクカテゴリーが増加するにつれて減少するが、感受性ハプロタイプについてはその逆が当てはまる。つまり、ハプロタイプの頻度はリスクカテゴリーが増加するにつれて増加する。表3A及び3Bにおいてハプロタイプを構成するSNPは、表6におけるフランキング配列を参照しながらマッピングされている。SNPは、表6における配列内でボールド体で強調されている。表3のハプロタイプにおけるSNPを左から右へ取り出すと、表6の上から下へ進むボールド体のSNPに対応する。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5−1】

【表5−2】

【表6−1】

【表6−2】

【表6−3】

【表6−4】

【表6−5】

【表6−6】

【表7】

【表8−1】

【表8−2】

【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌにおける糖尿病に対する感受性を診断するための方法であって:
(a)(i)前記イヌ由来のサンプル中において、以下の免疫系遺伝子:CTLA−4、IGF−2、IL−1α、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12β、IFNγ、PTPN3、PTPN15、PTPN22、TNF、もしくはRANTESのいずれか1つにおける遺伝子型の存在又は非存在を検出する工程;及び/又は
(ii)前記イヌ由来のサンプル中において、表1もしくは3Aに同定された遺伝子型、又は表1もしくは3Aに同定された前記遺伝子型と連鎖不平衡にある遺伝子型が前記イヌのインスリンもしくはIGFの遺伝子中に存在するかどうかを決定する工程;及び/又は
(iii)前記イヌ由来のサンプル中において、表2もしくは3Bに同定された遺伝子型、又は表2もしくは3Bに同定された前記遺伝子型と連鎖不平衡にある遺伝子型が前記イヌのインスリンもしくはIGFの遺伝子中に非存在であるかどうかを決定する工程;及び
(b)それにより前記イヌが糖尿病に対して感受性であるかどうかを診断する工程、を含む方法。
【請求項2】
工程(a)(i)は:
前記イヌ由来のサンプル中において、表1もしくは3Aに同定された遺伝子型、又は表1もしくは3Aに同定された前記遺伝子型と連鎖不平衡にある遺伝子型が前記イヌの免疫系遺伝子中に存在するかどうかを決定する工程;及び/又は
−前記イヌ由来のサンプル中において、表2もしくは3Bに同定された遺伝子型、又は表2もしくは3Bに同定された前記遺伝子型と連鎖不平衡にある遺伝子型が前記イヌの免疫系遺伝子中に非存在であるかどうかを決定する工程、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)は:
前記イヌ由来のサンプル中において表3Aに同定されたハプロタイプにおける2つ又はそれ以上のSNP、又は2つ又はそれ以上の前記SNPと連鎖不平衡にある遺伝子型が前記イヌの免疫系遺伝子、インスリン遺伝子及び/又はIGF遺伝子中に存在するかどうかを決定する工程、及び/又は
前記イヌ由来のサンプル中において表3Bに同定されたハプロタイプにおける2つ又はそれ以上のSNP、又は2つ又はそれ以上の前記SNPと連鎖不平衡にある遺伝子型が前記イヌの免疫系遺伝子、インスリン遺伝子及び/又はIGF遺伝子中に非存在であるかどうかを決定する工程、を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)では、
任意で相互に連鎖不平衡にはない少なくとも3つの相違する遺伝子型がタイピングされる、及び/又は
前記イヌは、表1、2又は4に挙げた品種である、及び/又は
少なくとも3つのSNPを含む少なくとも1つのハプロタイプがタイピングされる、及び/又は
工程(b)では、前記イヌが糖尿病に対して感受性であると同定されると、前記イヌはさらに試験されてその血液中に異常なグルコースレベルを有するかどうかを決定する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)は、前記イヌのポリヌクレオチドを前記遺伝子型に対して特異的な結合物質と接触させる工程、及び、前記物質が前記ポリヌクレオチドに結合するかどうかを決定する工程を含み、前記物質の前記ポリヌクレオチドへの結合は前記遺伝子型の存在を示し、任意で前記物質は前記遺伝子型を含むポリヌクレオチドに結合することができるが前記遺伝子型を含まないポリヌクレオチドへは結合しないポリヌクレオチドである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
表1、2、3Aもしくは3Bに同定された遺伝子型を含む、又は
前記遺伝子型を検出できるプローブもしくはプライマーである、単離されたポリヌクレオチド
【請求項7】
請求項6に記載のプローブもしくはプライマーを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキット。
【請求項8】
糖尿病に対して感受性であるイヌのためのカスタマイズされたフードを調製する方法であって:
(a)前記イヌが糖尿病に対して感受性であるかどうかを請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって決定する工程;及び
(b)前記イヌに対して適切なフードを調製する工程、を含む方法。
【請求項9】
前記カスタマイズされたドッグフードは、糖尿病を予防もしくは緩和する成分を含む、及び/又は糖尿病の一因となる、もしくは悪化させる成分を含んでいない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カスタマイズされたドッグフードは、適切なレベルの単炭水化物を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記イヌ、前記イヌの飼い主又は前記イヌにえさを与える責任者に前記フードを提供する工程をさらに含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
カスタマイズされたドッグフードを提供する方法であって:
(a)前記イヌが糖尿病に対して感受性であるかどうかを請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって決定する工程;及び
(b)請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって糖尿病に対して感受性であると診断されているイヌに適合するフードを前記イヌ、前記イヌの飼い主又は前記イヌへえさを与える責任者へ提供する工程、を含む方法。
【請求項13】
イヌにおける糖尿病を治療するための物質を同定するための方法であって:
(a)表1、2、3Aもしくは3Bに規定された遺伝子型もしくはSNPを含むポリヌクレオチドを候補物質と接触させる工程;及び
(b)前記候補物質が前記ポリヌクレオチドからの発現を変調させることができるかどうかを決定する工程、を含む方法。
【請求項14】
イヌにおける糖尿病の予防もしくは治療において使用するための化合物であって、前記イヌのゲノムが表1もしくは3Aに同定された遺伝子型もしくはSNPを含み、及び/又は表2もしくは3Bに同定された遺伝子型もしくはSNPもしくはハプロタイプを含んでおらず、前記イヌは請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって糖尿病に対して感受性であると診断されており、そして前記化合物は任意でインスリンである化合物。
【請求項15】
イヌを糖尿病について治療する方法であって、前記イヌへ糖尿病を予防もしくは治療する有効量の治療用化合物を投与する工程を含み、前記イヌのゲノムが表1もしくは3Aに同定された遺伝子型もしくはSNPを含み、及び/又は表2もしくは3Bに同定された遺伝子型もしくはSNPを含んでおらず、前記イヌは請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって糖尿病に対して感受性であると診断されており、そして前記化合物は任意でインスリンである方法。
【請求項16】
表1、2、3Aもしくは3Bに同定された1つ又はそれ以上の遺伝子型もしくはSNP及び/又は表1、2、3Aもしくは3Bに同定された遺伝子型もしくはSNPと連鎖不平衡にある1つ又はそれ以上の遺伝子型、ならびに任意でさらに糖尿病とのそれらの関連に関する情報を含むデータベース。
【請求項17】
イヌが糖尿病に対して感受性であるかどうかを決定するための方法であって:
(a)前記イヌの1つ又はそれ以上の遺伝子型のデータをコンピュータシステムへ入力する工程;
(b)前記データをコンピュータデータベースと比較する工程であって、データベースは、表1、2、3Aもしくは3Bに同定された1つ又はそれ以上の遺伝子型もしくはSNP及び/又は表1、2、3Aもしくは3Bに同定された遺伝子型もしくはSNPと連鎖不平衡にある1つ又はそれ以上の遺伝子型、ならびに任意でさらに糖尿病とのそれらの関連に関する情報を含む、工程;及び
(c)前記比較に基づいて前記イヌが糖尿病に対して感受性であるかどうかを決定する工程、を含む方法。
【請求項18】
前記プログラムがコンピュータ上で実行される場合に請求項17の全行程を実施するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム。
【請求項19】
前記プログラム製品がコンピュータ上で実行される場合に請求項17の方法を実施するための、コンピュータ可読媒体上に保存されたプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
搬送波上にプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコード手段は、コンピュータシステム上で実行されるとコンピュータシステムに請求項17に記載の方法を実施するように指示する、コンピュータプログラム製品。
【請求項21】
請求項17に記載の方法を実施するために配列されたコンピュータシステムであって:
(a)前記イヌに存在する1つ又はそれ以上の遺伝子型のデータを受信するための手段;
(b)前記データを、表1、2、3Aもしくは3Bに同定された1つ又はそれ以上の遺伝子型もしくはSNP及び/又は表1、2、3Aもしくは3Bに同定された1つ又はそれ以上の遺伝子型もしくはSNPと連鎖不平衡にある1つ又はそれ以上の遺伝子型、ならびに任意でさらに糖尿病とのそれらの関連に関する情報を含むデータベースと比較するためのモジュール;及び
(c)前記比較に基づいて前記イヌが糖尿病に対して感受性であるかどうかを決定するための手段、を含むコンピュータシステム。
【請求項22】
糖尿病に対して感受性であるイヌのためのカスタマイズされたフードを調製する方法であって:
(a)前記イヌが糖尿病に対して感受性であるかどうかを請求項1〜5又は17のいずれか一項に記載の方法によって決定する工程;及び
(b)前記イヌに適合するカスタマイズされたドッグフード処方を電子的に作成する工程;
(c)前記カスタマイズされたドッグフード処方に従ってフード製造装置の作動を制御するために電子製造指示を作成する工程と;及び
(d)前記電子製造指示に従ってカスタマイズされたドッグフードを製造する工程、を含む方法。
【請求項23】
(d)前記イヌに適合するカスタマイズされたドッグフード処方を電子的に作成するための手段;
(e)前記カスタマイズされたドッグフード処方に従ってフード製造装置の作動を制御するために電子製造指示を作成するための手段;及び
(f)フード製品製造装置、をさらに含む、請求項21に記載のコンピュータシステム。
【請求項24】
請求項23に記載のコンピュータシステムを作動させ、それにより前記カスタマイズされたドッグフードを製造する工程を含む、カスタマイズされたドッグフード処方を製造する方法。
【請求項25】
カスタマイズされたドッグフード製品を製造するための請求項23に記載のコンピュータシステムの使用。
【請求項26】
糖尿病に対して感受性ではないイヌを選択する方法であって、請求項1〜5もしくは17のいずれか一項に記載の方法を用いて前記イヌが糖尿病に対して感受性であるかどうかを決定する工程、及び任意で前記選択されたイヌを繁殖させる工程、を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−545303(P2009−545303A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522334(P2009−522334)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002934
【国際公開番号】WO2008/015436
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】