説明

糖残基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法

【課題】
酸無水物変性オルガノポリシロキサンと一級又は二級のアミノ基を有する糖アミンとの反応でアミド結合を介して糖類とオルガノポリシロキサンが結合した、新規のオルガノポリシロキサンを提供し、さらに水を含有する極性溶剤中で前記の反応を行うことにより、糖類に対するオルガノポリシロキサンの導入率を高められる製造方法を提供する。
【解決手段】
一級、又は二級のアミノ基を有する糖アミン化合物と酸無水物変性オルガノポリシロキサンとの酸無水物開環反応によって、アミド結合を介して糖残基とオルガノポリシロキサンが結合していることを特徴とする糖残基を含有するオルガノポリシロキサン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖残基を有するオルガノポリシロキサン及びその製造方法に関し、詳細には、酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンとアミノ糖化合物を反応させて、糖残基がアミド結合を介してオルガノポリシロキサンに結合されたオルガノポリシロキサンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖残基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法としては、1)一級アミノ基を有するオルガノポリシロキサンとアルドン酸またはウロン酸の脱水環化したラクトン化合物を開環反応させる方法(特許文献1)、2)イソシアネート基含有シロキサンとプルランの水酸基を反応させる方法(特許文献2)、3)エポキシ官能性シロキサンとアミノ官能性糖誘導体を反応させる方法(特許文献3)、4)無水カルボン酸基を有するオルガノポリシロキサンと多糖類を非プロトン性有機溶媒の存在下で反応させてハーフエステルを形成する方法(特許文献4)が知られている。
【0003】
上記1)の方法は、ラクトン化合物を開環させるので、環状の糖残基を結合させることができない。2)〜4)の方法によれば、環状の糖残基を結合させることができる。しかしながら、2)、3)に関しては、未反応イソシアネート基又はエポキシ基が、化粧料等の人体に適用する用途等で問題となる。上記4)の方法によれば、カルボキシル基と糖残基との双方をオルガノポリシロキサンに導入することができる。カルボキシル基は、乳化剤、表面処理等に有用であることから、種々の酸無水物変性オルガノポリシロキサンが提案されている(特許文献5、6、7)。しかし、4)の方法ではエステルへの置換度が10−2〜10−3オーダーと非常に低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−68820号公報
【特許文献2】特開平8−134103号公報
【特許文献3】特開平10−330489号公報
【特許文献4】特開2004−156004号公報
【特許文献5】特開平5−331291号公報
【特許文献6】特開平3−109428号公報
【特許文献7】特開平4−089492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンを用いて、より高い収率で糖残基を有するオルガノポリシロキサンを得ることができる方法及び該方法により得られるオルガノポリシロキサンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、下記方法である。
一級又は二級のアミノ基を有するアミノ糖化合物と、酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンを反応させてアミド結合を形成する工程を含む、糖残基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
また、本発明は、下記式(4)で表される、糖残基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0007】
【化1】


[式(4)において、Rは、互いに独立に、水素原子、C1−30アルキル基、C1−30フロロアルキル基、C6−30アリール基、及びC6−30アラルキル基から選択される基であり、
10は下記式(5)で表される基、又は下記式(6)で表される基であり、
【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

(式(5)及び(6)において、RはC2−202価炭化水素基であり、Rは水素原子、C1−6アルキル基、C1−6ヒドロキシアルキル基、及びC1−6カルボキシアルキル基から選択される基であり、R11は糖残基であり、R12は水素原子又はC1−6アルキル基である)
Aは下記式(7)で表される基であり、
【0010】
【化4】


(式(7)において、R及びR10は上記のとおりであり、Qは酸素原子又はC1−5アルキレン基である)
a、b及びcは、互いに独立に、0〜3の整数であり、
eは0〜20の整数であり、
fは0〜2000の整数であり、
gは0〜10の整数であり、
hは0〜10の整数であり、
iは0〜20の整数であり、
jは0〜500の整数であり、但し、1≦a+b+c+e+iである]
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の方法は、酸無水物とアミノ基の反応を利用しているので、糖残基を有するオルガノポリシロキサンを高収率で得ることができる。得られるオルガノポリシロキサンは、カルボキシル基と糖残基を有し、化粧料、粉体表面処理、繊維処理、塗料等に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法で使用される、アミノ糖化合物は、単糖、オリゴ糖、または多糖のアルコール性水酸基が一級または二級のアミノ基で置換された誘導体である。例えば、グルコサミン、グルコピラノシルアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、イソマルタミン、ガラクトサミン、マンノサミン、オリゴキトサン、及びキトサンが挙げられる。また、これらの塩、例えばグルコサミン塩酸塩、に強塩基を反応させてアミノ糖化合物を遊離させた後に、そのまま続けて、即ち、アミノ糖化合物を単離することなく、酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンと反応させてもよい。
【0013】
酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンは、直鎖状、分岐状、環状の何れでもよい。直鎖状及び分岐状のオルガノポリシロキサンとしては、下記式(1)で表されるものが例示される。
【0014】
【化5】


式(1)において、Rは、互いに独立に、水素原子、C1−30アルキル基、C1−30フロロアルキル基、C6−30アリール基、及びC6−30アラルキル基から選択される基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、トリフロロプロピル基、ヘプタデカフロロデシル基等のフロロアルキル基を挙げることができる。これらのうち、炭素数1〜15のアルキル基及びフェニル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。
【0015】
は下記式(2)で表される酸無水物基を含む基である。
【0016】
【化6】

式(2)において、RはC2−20、好ましくはC2−12、2価炭化水素基である。例えば、エチレン、プロピレン、ヘキサメチレン、デカメチレン、ヘキサデカメチレン等のアルキレン基が挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレン基である。Rは水素原子、C1−6アルキル基、C1−6ヒドロキシアルキル基、C1−6カルボキシアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基が例示される。また、RとRが結合されてC6−12の環状炭化水素基、例えば、シクロへキシル基、シクロへキセニル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、を形成していてもよい。好ましくは、Rは水素原子またはメチル基である。該酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンは、上記特許文献5、6、又は7に記載された方法により調製することができる。
【0017】
式(1)において、Aは下記式(3)で表される基である。
【0018】
【化7】


式(3)において、RおよびRは上記のとおりである。Qは酸素原子またはC1−5アルキレン基、好ましくはエチレン基またはプロピレン基である。
【0019】
式(1)及び(3)において、a、b及びcは、互いに独立に、0〜3の整数である。eは0〜20、好ましくは1〜5、の整数であり、fは0〜2000、好ましくは10〜100、の整数であり、gは0〜10、好ましくは0〜3、の整数であり、hは0〜10、好ましくは0〜3、の整数である。iは0〜20、好ましくは0〜3、の整数であり、jは0〜500、好ましくは1〜100、の整数である。但し、1≦a+b+c+e+iであり、反応性の点で、好ましくは、1≦a+b+e≦5、c=0、i=0である。
【0020】
該酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンは、下記式(20)で表される低分子量の分岐オルガノポリシロキサンであってもよい。
【0021】
【化8】


式(20)において、R、Rについては上記のとおりであり、aは1〜3の整数であり、dは1〜4の整数である。
【0022】
該酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンは、環状オルガノポリシロキサンであってもよく、例えば下記式(30)で表されるものを使用することができる。
【0023】
【化9】


式(30)において、R、R、Aについては上記のとおりである。kは1〜20、好ましくは1〜5、の整数であり、mは0〜100、好ましくは1〜10、の整数であり、nは0〜10、好ましくは0〜3、の整数であり、2≦k+m+n≦130である。これらのオルガノポリシロキサンのうち、式(1)で表されるオルガノポリシロキサンが好適に使用される。
【0024】
酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンとアミノ糖化合物を反応させてアミド結合を形成する工程は、水と有機溶剤を含む溶媒中で行う。水は、精製水、蒸留水及びイオン交換水等を用いることができる。該溶媒中の水の含有量は1〜70質量%であり、好ましくは20〜50質量%である。なお、該溶媒は、アミノ糖化合物が塩になっている場合に、アミノ糖化合物を遊離させるために用いた塩基を含んでいてよい。
【0025】
有機溶剤としては水溶性であるものが好ましく、より好ましくは任意の濃度で水に溶解するものが使用される。該溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤が挙げられ、これらの混合物であってもよい。
【0026】
酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンとアミノ糖化合物との反応は、穏やかな条件で行う。即ち、高温下では酸無水物変性オルガノポリシロキサンと、水または有機溶剤、例えばアルコール、との反応による副生成物が多くなるので、温度20〜80℃が好ましく、より好ましくは、25〜40℃である。反応時間は特に限定されないが、2〜20時間が好ましく、より好ましくは2〜10時間である。
【0027】
上記反応により、例えば下記式(4)で表されるオルガノポリシロキサンが得られる。
【0028】
【化10】

式(4)において、R、a、b、e、f、g、hについては上記のとおりである。Aは下記式(7)で表される基である。
【0029】
【化11】


式(7)において、i、j、cについては上記のとおりである。式(4)及び(7)において、R10は下記式(5)または下記式(6)で表されるアミド結合を含む基である。
【0030】
【化12】

【0031】
【化13】


式(5)および(6)において、R、Rについては式(2)に関して述べたとおりである。R11は糖残基であり、例えば下記式(8)で表されるグルコース残基である。
【0032】
【化14】


12は水素原子またはC1−6アルキル基、例えばメチル基、エチル基である。
【0033】
上記本発明の糖残基を含有するオルガノポリシロキサンは、水系の組成物、例えば化粧料、粉体表面処理、繊維処理、塗料等の用途に使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明を実施例によってさらに詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0035】
実施例1
反応器に下記式(9)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン384質量部、
【0036】
【化15】


下記式(10)で表される無水アリルコハク酸150質量部、
【0037】
【化16】


及び、トルエン30質量部を入れ、ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体(白金0.5 質量%)のトルエン溶液0.2質量部を加えた後、110℃で2時間反応させた。反応混合物を減圧下で加熱して溶剤を溜去し、下記式(11)で表され、無色の液体であるオルガノポリシロキサンを収率94%で得た。
【0038】
【化17】

【0039】
反応器にD−グルコサミン塩酸塩50質量部を入れ、5%水酸化ナトリウム水溶液180質量部を添加し、D−グルコサミンを遊離させた。この反応混合物にアセトン500質量部、上記式(11)で表される酸無水物変性オルガノポリシロキサン124質量部を加え、室温で8時間反応させた。溶剤を減圧下で除去し、水で数回洗浄後、減圧乾燥した結果、85%収率で淡黄色固体を得た。この淡黄色固体をIRにより分析したところ、酸無水物由来の1867cm−1、1790cm−1のピークが消失し、1712cm−1、1649cm−1に新たなピークが観察され、式(12)、又は(13)に示されるアミド結合が生成されていることが確認された。また、H−NMRを測定した結果、目的の糖残基を含有するオルガノポリシロキサンが得られていることが確認された。
【0040】
【化18】

【0041】
【表1】

【0042】
実施例2
反応器に下記式(14)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン256質量部、
【0043】
【化19】


上記式(10)で表される無水アリルコハク酸220質量部、及び、トルエン40質量部を入れ、ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体(白金0.5 質量%)のトルエン溶液0.2質量部を加えた後、110℃で4時間反応させた。反応混合物を減圧下で加熱して溶剤を溜去し、下記式(15)で表され、無色の液体であるオルガノポリシロキサンを収率88%で得た。
【0044】
【化20】

【0045】
反応器にキトサン20質量部を入れ、精製水150質量部、テトラヒドロフラン350質量部、上記式(15)で表される酸無水物変性オルガノポリシロキサン100質量部を加え、40℃で5時間反応させた。得られた反応混合物を濾過し、テトラヒドロフラン、精製水でよく洗浄した後、減圧乾燥した結果、42質量部の淡黄色粉体を得た。この淡黄色固体をIRにより分析したところ、酸無水物由来の1867cm−1、1790cm−1のピークが消失し、1712cm−1、1650cm−1に新たなピークが生成していたことから、上記式(12)、又は(13)に示されるアミド結合によってオルガノポリシロキサンと糖残基が結合しているのが確認され、さらに、原子吸光法分析の結果、この固体のケイ素含有量は13%であった。
【0046】
実施例3
反応器に下記式(16)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン228質量部、
【0047】
【化21】


上記式(10)で表される無水アリルコハク酸30質量部、及び、トルエン50質量部を入れ、ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体(白金0.5 質量%)のトルエン溶液0.2質量部を加えた後、110℃で2時間反応させた。反応混合物を減圧下で加熱して溶剤を溜去し、下記式(17)で表され、無色の液体であるオルガノポリシロキサンを収率94%で得た。
【0048】
【化22】

【0049】
反応器にN−メチルグルカミン80質量部を入れ、精製水200質量部、イソプロパノール800質量部、上記式(17)で表される酸無水物変性オルガノポリシロキサン1140質量部を加え、室温で8時間反応させた。溶剤を減圧下で除去し、水で数回洗浄後、減圧乾燥した結果、95%収率で白色固体を得た。この淡黄色固体をIRにより分析したところ、酸無水物由来の1867cm−1、1790cm−1のピークが消失し、1712cm−1、1649cm−1に新たなピークが観察され、上記式(12)、又は(13)に示されるアミド結合が生成されていることが確認された。また、1H−NMRを測定した結果、目的の糖残基を含有するオルガノポリシロキサンが得られていることが確認された。
【0050】
【表2】

【0051】
実施例4
反応器に下記式(18)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン300質量部、
【0052】
【化23】


上記式(10)で表される無水アリルコハク酸10質量部、下記式(19)で表されるオルガノポリシロキサン110質量部、
【0053】
【化24】


及び、トルエン100質量部を入れ、ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体(白金0.5 質量%)のトルエン溶液0.2質量部を加えた後、110℃で3時間反応させた。反応混合物を減圧下で加熱して溶剤を溜去し、下記式(20)で表され、無色の液体であるオルガノポリシロキサンを収率92%で得た。
【0054】
【化25】

【0055】
反応器にN−メチルグルカミン20質量部を入れ、精製水50質量部、テトラヒドロフラン400質量部、上記式(20)で表される酸無水物変性オルガノポリシロキサン640質量部を加え、40℃で8時間反応させた。溶剤を減圧下で除去し、水で数回洗浄後、減圧乾燥した結果、96%収率で白色固体を得た。この白色固体をIRにより分析したところ、酸無水物由来の1867cm−1、1790cm−1のピークが消失し、1712cm−1、1649cm−1に新たなピークが観察され、上記式(12)、又は(13)に示されるアミド結合が生成されていることが確認された。また、1H−NMRを測定した結果、目的の糖残基を含有するオルガノポリシロキサンが得られていることが確認された。
【0056】
【表3】

【0057】
実施例5
反応器に下記式(21)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン250質量部、
【0058】
【化26】


上記式(10)で表される無水アリルコハク酸80質量部、及び、トルエン100質量部を入れ、ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体(白金0.5 質量%)のトルエン溶液0.2質量部を加えた後、110℃で4時間反応させた。反応混合物を減圧下で加熱して溶剤を溜去し、下記式(22)で表され、無色の液体であるオルガノポリシロキサンを収率92%で得た。
【0059】
【化27】

【0060】
反応器にD−グルコサミン塩酸塩50質量部を入れ、5%水酸化ナトリウム水溶液368質量部を添加し、中和を完了した。この反応混合物に1,4−ジオキサン1000質量部、上記式(22)で表される酸無水物変性オルガノポリシロキサン1145質量部を加え、室温で5時間反応させた。溶剤を減圧下で除去し、水で数回洗浄後、減圧乾燥した結果、96%収率で淡黄色固体を得た。この淡黄色固体をIRにより分析したところ、酸無水物由来の1867cm−1、1790cm−1のピークが消失し、1712cm−1、1649cm−1に新たなピークが観察され、上記式(12)、又は(13)に示されるアミド結合が生成されていることが確認された。また、1H−NMRを測定した結果、目的の糖残基を含有するオルガノポリシロキサンが得られていることが確認された。
【0061】
【表4】

【0062】
比較例1
反応器にキトサン20質量部、N,N−ジメチルアセトアミド350質量部、実施例2で合成した下記式(15)で表される酸無水物変性オルガノポリシロキサン100質量部を加え、40℃で5時間反応させた。得られた反応混合物を濾過し、N,N−ジメチルアセトアミド、及び精製水でよく洗浄した後、減圧乾燥した結果、19.5gの淡黄色粉体を得た。この淡黄色固体をIRにより分析したところ、1712cm−1、1650cm−1にピークが生成しておらず、アミド結合の生成は確認できなかった。
【0063】
【化28】

【0064】
比較例2
反応器にヒドロキシエチルセルロース50質量部、ジメチルスルホキシド350質量部、実施例1で合成した式(11)で表されるオルガノポリシロキサン80質量部を加え、40℃で5時間反応させた。得られた反応混合物から、減圧下で溶剤を除去しテトラヒドロフランで洗浄した後、減圧乾燥した結果、49.8重量部の褐色粉体を得た。この褐色粉体は原子吸光法分析の結果、ケイ素の含有量は0.6質量%であり、収率が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の方法は、糖残基を有するオルガノポリシロキサンを高い収率で得るのに有用である。また、本発明の糖残基を有するオルガノポリシロキサンは、化粧料、粉体表面処理、繊維処理、塗料等へ応用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一級又は二級のアミノ基を有するアミノ糖化合物と、酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンを反応させてアミド結合を形成する工程を含む、糖残基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項2】
前記アミド結合を形成する工程が、水と有機溶剤を含む溶媒中で行われる、請求項1に係る方法。
【請求項3】
前記有機溶剤が水溶性である、請求項2に係る方法。
【請求項4】
前記アミド結合を形成する工程が、25〜40℃の温度で行われる、請求項1〜3のいずれか1項に係る方法。
【請求項5】
前記アミド結合を形成する工程の前に、アミノ糖化合物の塩と強塩基を反応させて前記アミノ糖化合物を遊離させる工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に係る方法。
【請求項6】
前記酸無水物基を有するオルガノポリシロキサンが、下記式(1)で表される、請求項1〜5のいずれか1項に係る方法。



[式(1)において、Rは、互いに独立に、水素原子、C1−30アルキル基、C1−30フロロアルキル基、C6−30アリール基、及びC6−30アラルキル基から選択される基であり、
は下記式(2)で表される基であり、


(式(2)において、RはC2−202価炭化水素基であり、Rは水素原子、C1−6アルキル基、C1−6ヒドロキシアルキル基、及びC1−6カルボキシアルキル基から選択される基である)
Aは下記式(3)で表される基であり、



(式(3)において、R及びRは上記のとおりであり、Qは酸素原子又はC1−5アルキレン基である)
a、b及びcは、互いに独立に、0〜3の整数であり、
eは0〜20の整数であり、
fは0〜2000の整数であり、
gは0〜10の整数であり、
hは0〜10の整数であり、
iは0〜20の整数であり、
jは0〜500の整数であり、但し、1≦a+b+c+e+iである]
【請求項7】
前記アミノ糖化合物が、単糖、オリゴ糖、または多糖のアミノ誘導体である請求項1〜6のいずれか1項に係る方法。
【請求項8】
下記式(4)で表される、糖残基を有するオルガノポリシロキサン。




[式(4)において、Rは、互いに独立に、水素原子、C1−30アルキル基、C1−30フロロアルキル基、C6−30アリール基、及びC6−30アラルキル基から選択される基であり、
10は下記式(5)で表される基、又は下記式(6)で表される基であり、



(式(5)及び(6)において、RはC2−202価炭化水素基であり、Rは水素原子、C1−6アルキル基、C1−6ヒドロキシアルキル基、及びC1−6カルボキシアルキル基から選択される基であり、R11は糖残基であり、R12は水素原子又はC1−6アルキル基である)
Aは下記式(7)で表される基であり、


(式(7)において、R及びR10は上記のとおりであり、Qは酸素原子又はC1−5アルキレン基である)
a、b及びcは、互いに独立に、0〜3の整数であり、
eは0〜20の整数であり、
fは0〜2000の整数であり、
gは0〜10の整数であり、
hは0〜10の整数であり、
iは0〜20の整数であり、
jは0〜500の整数であり、但し、1≦a+b+c+e+iである]
【請求項9】
11が下記式(8)で表されるグルコース残基である、請求項8に係るオルガノポリシロキサン。



【公開番号】特開2010−280741(P2010−280741A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132626(P2009−132626)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】