説明

糖鎖転移方法および糖鎖転移酵素

【課題】糖鎖は生体内などで極めて重要な役割を果たしており、また糖鎖の研究、所望の糖鎖の製造、および糖タンパク質の製造などには様々な種類の糖鎖転移酵素が求められる。本発明は、新規な糖鎖転移酵素および糖鎖転移方法を提供することを課題とするものである。
【解決手段】エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質の存在下で、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニルα-基を含有する糖鎖供与体から、糖鎖受容体にガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニルα-基を転移する反応を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖鎖転移方法、糖鎖転移酵素およびそれらの応用に関する。
【背景技術】
【0002】
エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(endo-α-N-acetylgalactosaminidase、以下EndoαまたはEndo-α-GalNAc-aseともいう)は、糖タンパク質におけるO-結合型糖鎖のコア1構造である、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミン(以下、Galβ1-3GlaNAcとも示す)の二糖がセリンまたはスレオニンにα結合した構造を認識し、加水分解によって二糖単位で遊離させる酵素である。なお、O-結合型糖鎖はムチン型糖鎖とも呼ばれ、動物の消化管や器官の表面を覆うムチンに多く含まれている。
【0003】
これまでにEndoα生産菌としては、例えば肺炎双球菌やクロストリジウム属細菌などの培養液から見出されているという報告がある(例えば非特許文献1など)。また、これまでに研究されたいくつかのEndoαにおいては、加水分解する時に水分子の代わりに入り込んだ適当な受容体に対し、二糖を転移付加する糖鎖転移活性が報告されていた(例えば非特許文献2など)。また、Endoα生産菌として知られている微生物の中には、その全ゲノムの配列が明らかになっているものもある。
【0004】
しかし、Endoα生産菌の存在は知られているものの、Endoα活性を有する酵素遺伝子のクローニングについては報告例がない。すなわち、Endoαのアミノ酸配列については明らかにされておらず、また、どの遺伝子がEndoαをコードする遺伝子であるかについて特定されていなかった。
【0005】
【非特許文献1】Bhavanandan, V.P. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 70, 738-745 (1976)
【非特許文献2】Bardales, R.M. and Bhavanandan, V.P., J. Biol. Chem., 264, 19893-19897 (1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
糖鎖は生体内などで極めて重要な役割を果たしており、また糖鎖の研究、所望の糖鎖の製造、および糖タンパク質の製造などには様々な種類の糖鎖を転移付加することができる酵素が求められる。以上のような状況の下、本発明は、新規な糖鎖を転移付加することができる酵素および糖鎖を転移する方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
Endoαは一般的に加水分解酵素であるところ、本発明者らはEndoαのうちから極めて高い糖鎖転移活性を有する酵素を見出し、さらにその遺伝子の特定にも成功し、本発明を完成させた。本発明は下記の糖鎖転移方法および糖鎖転移反応を触媒するタンパク質などを提供するものである。
【0008】
〔1〕エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質の存在下で、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基がα-結合した糖鎖を含有する糖鎖供与体から、糖鎖受容体にガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基を転移する反応を行う糖鎖転移方法。
〔2〕前記タンパク質が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する微生物に由来する上記〔1〕に記載の糖鎖転移方法。
〔3〕前記タンパク質が、下記(A)または(B)のタンパク質である上記〔1〕に記載の糖鎖転移方法。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
〔4〕下記(A)または(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞を培地中で培養し、培地中および/または形質転換細胞中に、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を蓄積させて前記タンパク質を供給することを特徴とする上記〔1〕に記載の糖鎖転移方法。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
〔5〕前記糖鎖受容体が、単糖、オリゴ糖、アルコール(1−アルカノール)、アミノ酸およびポリペプチドからなる群より選ばれる上記〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の糖鎖転移方法。
〔6〕食品を改質する方法であって、
改質前の食品が、単糖、オリゴ糖、アルコール(1−アルカノール)、アミノ酸およびポリペプチドからなる群より選ばれる糖鎖受容体を含み、
エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質の存在下で、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基がα-結合した糖鎖を含有する糖鎖供与体から、前記糖鎖受容体にガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基を転移する反応を行う、食品の改質方法。
〔7〕医薬を改質する方法であって、
改質前の医薬が、単糖、オリゴ糖、アルコール(1−アルカノール)、アミノ酸およびポリペプチドからなる群より選ばれる糖鎖受容体を含み、
エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質の存在下で、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基がα-結合した糖鎖を含有する糖鎖供与体から、前記糖鎖受容体にガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基を転移する反応を行う、医薬の改質方法。
〔8〕ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する微生物に由来し、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質。
〔9〕下記(A)または(B)のタンパク質。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
〔10〕下記(A)または(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
〔11〕下記(a)または(b)のポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
〔12〕上記〔10〕あるいは〔11〕に記載のポリヌクレオチドを含む組換えポリヌクレオチド。
〔13〕上記〔12〕に記載の組換えポリヌクレオチドを含む形質転換細胞。
〔14〕上記〔13〕に記載の形質転換細胞を培地中で培養し、培地中および/または形質転換細胞中に、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を蓄積させることを特徴とする、タンパク質の製造方法。
〔15〕エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質の存在下で、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基がα-結合した糖鎖を含有する糖鎖供与体から、糖鎖受容体にガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基を転移する反応を行うことにより生成する糖鎖、糖アルコール又は糖タンパク質の製造方法。
〔16〕前記タンパク質が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する微生物に由来する前記〔15〕に記載の製造方法。
〔17〕前記タンパク質が、下記(A)または(B)のタンパク質である前記〔15〕に記載の製造方法。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
〔18〕 エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞を培地中で培養し、培地中および/または形質転換細胞中に、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を蓄積させて前記タンパク質を供給することを特徴とする前記〔15〕に記載の製造方法。
〔19〕 エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有し、かつビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する微生物に由来するタンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞を培地中で培養し、培地中および/または形質転換細胞中に、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を蓄積させて前記タンパク質を供給することを特徴とする前記〔15〕に記載の製造方法。
〔20〕下記(A)または(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞を培地中で培養し、培地中および/または形質転換細胞中に、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を蓄積させて前記タンパク質を供給することを特徴とする前記〔15〕に記載の製造方法。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
〔21〕前記糖鎖受容体が、単糖、オリゴ糖、アルコール(1-アルカノール)、アミノ酸およびポリペプチドからなる群より選ばれる前記〔15〕から〔20〕のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により新規な糖鎖転移方法および糖鎖転移反応を触媒するタンパク質等が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説する。なお、本発明における生物化学的なあるいは遺伝子工学的な手法を実施するにあたっては、例えば、Molecular Cloning: A LABORATORY MANUAL, 第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, New York (2001)、新遺伝子工学ハンドブック(村松正實ら編、羊土社、実験医学別冊、第3版、1999年)、タンパク質実験の進め方(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、第1版、1998年)タンパク質実験ノート(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、第2版、1999年)などのような種々の実験マニュアルの記載が参照される。
【0011】
本発明の糖鎖転移方法では、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を触媒として用い、糖鎖を糖鎖供与体から糖鎖受容体へと転移させる。糖鎖供与体は転移される糖鎖を転移反応系に供給し、糖鎖受容体は糖鎖供与体から提供される糖鎖を受け取る。糖鎖供与体は、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニルα-基を含有する。ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミンは、ガラクトースとN−アセチルガラクトサミンとがβ(1→3)結合した二糖である。以下、本明細書においてはガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミンをGalβ1-3GalNAcと、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニルα-基をGalβ1-3GalNAcα-基とも記す。
【0012】
本発明の糖鎖転移方法で反応を触媒するために用いられるタンパク質は、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性の少なくとも2つの活性を有する。エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、糖タンパク質におけるO結合型糖鎖のコア1構造である、Galβ1-3GalNAcの二糖がセリンまたはスレオニンにα結合した構造を認識し、加水分解によって二糖単位で遊離させる反応を触媒する活性を少なくとも有する酵素である。O結合型糖鎖は、ムチン型糖鎖とも呼ばれ、動物の消化管や器官の表面を覆うムチンに多く含まれている。また、本発明で用いられるタンパク質は糖鎖転移活性をも有する。図1に例示するように、本発明の糖鎖転移方法における糖鎖転移反応を触媒するタンパク質は、少なくとも、糖タンパク質(ペプチド1)におけるGalβ1-3GalNAc基の糖鎖部20がセリンまたはスレオニンにα結合した構造を認識し、Galβ1-3GalNAc基を受容体30に転移させる活性を有していればよい。本発明で用いられるタンパク質の糖鎖転移活性は高く、概要として下記実施例に示す方法により求められる糖転移率(%)が、少なくとも2%、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上を示すタンパク質が用いられる。
【0013】
「タンパク質の存在下で」とは、このタンパク質の触媒作用により糖鎖転移反応を行うことができる条件下におくことを意味する。タンパク質は例えば微生物および/または酵素を反応系に添加することにより供給することができる。すなわち、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニルα-基を含有する糖鎖供与体から糖鎖受容体にガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基を転移する反応をする限りいかなる形態で微生物および/または酵素を反応系に存在させてもよい。微生物および酵素はいずれか一方を単独で用いてもよいし、双方が混在してもよい。
【0014】
「微生物および/または酵素」としては次のような形態をとり得る。具体的形態としては、上記微生物の培養物、当該培養物から分離された微生物菌体、菌体処理物などが含まれる。微生物の培養物とは、微生物を培養して得られる物のことであり、より具体的には、微生物菌体、その微生物の培養に用いた培地および培養された微生物により生成された物質の混合物などのことをいう。また、微生物菌体は洗浄し、洗浄菌体として用いてもよい。また、菌体処理物には、菌体を破砕、溶菌、凍結乾燥したものなどが含まれ、さらに菌体などを処理して回収される粗精製酵素、さらに精製した精製酵素なども含まれる。精製処理された酵素としては、各種精製法によって得られる部分精製酵素等を使用してもよいし、これらを共有結合法、吸着法、包括法等によって固定化した固定化酵素を使用してもよい。また、使用する微生物によっては、培養中に一部、溶菌するものもあるので、この場合には培養液上清も糖鎖転移活性を有するタンパク質含有物として利用できる。
【0015】
微生物および/または酵素を用いる反応系の条件は、用いる微生物、酵素および原材料の具体的な種類などによって適宜調整してよい。微生物および/または酵素の使用量は、目的とする効果を発揮する量(有効量)であればよく、この有効量は当業者であれば簡単な予備実験により容易に求められるが、例えば酵素を用いる場合には、0.01から100ユニット(U)程度、洗浄菌体を用いる場合は0.1〜500g/L程度が好適である。反応温度については、通常、利用する酵素が活性を有する範囲内、即ち好ましくは10〜70℃で行われるが、より好ましくは20〜65℃、更に好ましくは25〜60℃の範囲で行われる。酵素反応液のpH値については、通常、2〜12、好ましくは4〜10、より好ましくは5〜6の範囲で調節される。
【0016】
上記のような反応を触媒するタンパク質は、例えばビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する微生物など、より好ましくはビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)など、さらに好ましくはビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)JCM1217株などから取得することができる。なお、JCM番号の付与された菌株は、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室(住所:〒351-0198 埼玉県和光市広沢2−1)に寄託されており、所定の手続により分譲を受けることができる。
【0017】
糖鎖転移反応を触媒するタンパク質として、より具体的な例を示すと、下記(A)または(B)のタンパク質が挙げられる。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
【0018】
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質は、Bifidobacterium longum JCM1217株から、本発明者らが新規に単離し、上記の反応を触媒するタンパク質のアミノ酸配列を特定したものである。
【0019】
また、本発明の製造方法では、上記(A)に示すタンパク質と実質的に同じタンパク質も用い得る。具体的には、(B)に示すタンパク質が提供される。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造や活性を大きく損なわない範囲のものであり、具体的には、2〜100個、好ましくは2〜50個、さらに好ましくは2〜30個、さらに好ましくは2〜10個である。ただし、(B)タンパク質のアミノ酸配列において1または数個の置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列の場合には、50℃、pH8の条件下で、(A)のタンパク質の半分程度以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の酵素活性を保持していることが望ましい。
【0020】
上記(B)に示されるようなアミノ酸の変異は、例えば部位特異的変異法によって、本タンパク質をコードする遺伝子の特定の部位のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加、逆位などされるように塩基配列を改変することによって得られる。また、上記のような改変された塩基配列を有するポリペプチドは、従来知られている突然変異処理によっても取得され得る。突然変異処理としては、(A)をコードするDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及び(A)をコードするDNAを保持するエシェリヒア属細菌を、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常人工突然変異に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。
【0021】
また、上記のような塩基改変に伴うアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、および逆位等の変異には、微生物の種あるいは菌株による差等、天然に生じる変異も含まれる。上記のような変異を有するDNAを適当な細胞で発現させ、発現産物の本酵素活性を調べることにより、配列番号2に記載のタンパク質と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAは得られる。
【0022】
本発明の糖鎖転移方法で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。コドンの縮重により、1つのアミノ酸配列を規定する塩基配列は複数あり得る。すなわち、本発明のポリヌクレオチドには下記のタンパク質をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
【0023】
配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列として配列番号1に記載の塩基配列が例示される。さらに、配列番号1に示す塩基配列を有するDNAと実質的に同一のポリヌクレオチドとして次のようなポリヌクレオチドが挙げられる。配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはこれを保持する細胞などから、配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくは同塩基配列から調製されるプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを単離することによって、配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドと実質的に同一のポリヌクレオチドが得られる。
【0024】
本発明のポリヌクレオチドとして好ましくは、具体例として下記(a)または(b)に示すポリヌクレオチドが挙げられる。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド
(b)配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【0025】
プローブは、例えば配列番号1に記載の塩基配列に基づいて定法により作製することができる。また、プローブを用いてこれとハイブリダイズするポリヌクレオチドをつり上げ、目的とするポリヌクレオチドを単離する方法も、定法に従って行えばよい。例えば、DNAプローブはプラスミドやファージベクターにクローニングされた塩基配列を増幅し、プローブとして用いたい塩基配列を制限酵素により切り出し、抽出して調製することができる。切り出す箇所は、目的とするDNAに応じて調節することができる。
【0026】
ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば50%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。このような条件でハイブリダイズする遺伝子の中には途中にストップコドンが発生したものや、活性中心の変異により活性を失ったものも含まれるが、それらについては、市販の発現ベクターにつなぎ、適当な宿主で発現させて、発現産物の酵素活性を下記実施例に記載の方法で測定することによって容易に取り除くことができる。
【0027】
なお、上記のように、(B)のタンパク質をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドおよび上記(b)のポリヌクレオチドの場合には、50℃、pH8の条件下で、配列番号1の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質の半分程度以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の糖鎖転移活性を保持していることが望ましい。
【0028】
配列番号1の塩基配列を有するDNAは、Bifidobacterium longum JCM1217株の染色体DNA、もしくはDNAライブラリーから、PCR(polymerase chain reaction、White,T.J. et al ;Trends Genet., 5, 185(1989)参照)またはハイブリダイゼーションによって取得することができる。PCRに用いるプライマーは、例えばペプチド生成活性を有する精製タンパク質に基づいて決定された内部アミノ酸配列に基づいて設計することができる。PCR用のプライマーとして、5'非翻訳領域及び3'非翻訳領域に対応する配列を有するプライマーを用いると、本タンパク質のコード領域全長を増幅することができる。
【0029】
プライマーの合成は、例えば、Applied Biosystems社製DNA合成機 model 380Bを使用し、ホスホアミダイト法を用いて(Tetrahedron Letters(1981),22,1859参照)常法に従って合成できる。PCR反応は、例えばGene Amp PCR System 9600(PERKIN ELMER社製)及びTaKaRa LA PCR in vitro Cloning Kit(宝酒造社製)を用い、各メーカーなど供給者により指定された方法に従って行うことができる。
【0030】
なお、Bifidobacterium longum JCM1217株由来の糖鎖転移活性を有するタンパク質のホモログとしては、本発明者らにより下記の実施例(8−4)に示すタンパク質の塩基配列が特定された。
【0031】
本発明の糖鎖転移方法で用いられる糖鎖供与体としては、糖鎖としてGalβ1-3GalNAc基を有する化合物であればよく、例えば、ムチン、Galβ1-3GalNAc基を糖鎖として有するタンパク質、より具体的にはGalβ1-3GalNAcの二糖がセリンまたはスレオニンにα結合した構造を有するタンパク質、或いはGalβ1-3GalNAc基を有するパラニトロフェノール(以下、Galβ1-3GalNAcα1-pNPとも記す。またパラニトロフェノールについてpNPとも記す。)などが挙げられる。
【0032】
また、本発明の糖鎖転移方法で用いられる糖鎖受容体としては、例えば単糖、オリゴ糖、アルコール(1-アルカノール)、アミノ酸およびポリペプチドなどが挙げられ、好ましくは単糖およびオリゴ糖などの糖類が挙げられ、より好ましくはグルコース、ガラクトース、マンノース、アラビノースなどが挙げられる。
【0033】
本発明の糖鎖転移方法の好ましい一形態としては、上記のタンパク質を発現する形質転換体を作製し、これを用いる糖鎖転移方法が挙げられる。すなわち、上記(A)または(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、あるいは、上記(a)または(b)のポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞を培地中で培養し、培地中および/または形質転換細胞中に、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を蓄積させて、糖鎖転移を行う反応系に前記タンパク質を供給する形態が挙げられる。
【0034】
配列番号1の塩基配列を有するポリヌクレオチドにより特定されるタンパク質を発現させるための宿主としては、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア属細菌、エンペドバクター属細菌、スフィンゴバクテリウム属細菌、フラボバクテリウム属細菌、及びバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)をはじめとする種々の原核細胞、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピヒア・スティピティス(Pichia stipitis)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)をはじめとする種々の真核細胞を用いることができる。
【0035】
配列番号1の塩基配列を有するDNAを宿主に導入するために用いる組換えDNAは、発現させようとする宿主の種類に応じたベクターに、これらのDNAを、該DNAがコードするタンパク質が発現可能な形態で挿入することで調製可能である。タンパク質を発現させるためのプロモータとしては、ビフィドバクテリウム・ロンガム由来の上記タンパク質をコードする遺伝子固有のプロモータが宿主細胞で機能する場合には、そのプロモータを使用することができる。また、必要に応じて宿主細胞で働く他のプロモータを、配列番号1のDNAに連結し、そのプロモータ制御下で発現させるようにしてもよい。
【0036】
発現ベクターなどの組換え体を宿主細胞に導入するための形質転換法としては、D.M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology 68, 326 (1979))あるいは受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M. and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))等が挙げられる。
【0037】
本発明の糖鎖転移方法は、食品、医薬、および様々な生理活性物質などの改質に好適に用いられる。食品、医薬などの改質方法の好ましい一形態としては、食品または医薬品に配合される成分の一部または全部に糖鎖を転移付加し、糖鎖が付加された成分を含む食品または医薬に改質する。ここで糖鎖が付加される成分が糖鎖受容体に該当する。好ましい糖鎖受容体および糖鎖供与体としては、上記に示したものが例示される。
また、本発明の糖鎖転移方法により、所望の糖鎖、糖アルコール、糖タンパク質(糖−アミノ酸、糖−ポリペプチド)を製造することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0039】
(1)TLC(薄層クロマトグラフィー)による糖鎖の分析
プレートは Silica gel 60 (MERCK社製) を用い、展開溶媒組成はクロロホルム:メタノール:水=3:3:1とし、発色試薬は下記表1に示す組成で作製した。
【0040】
【表1】

【0041】
(2)HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による反応生成物の分析
反応液を HPLC (Hitachi D-7420 UV-VIS Detector, D-7100 Pump, D-7500 Integrator) に供して反応生成物の分析を行った。分析は、装置に添付の使用説明書に従い、以下に示す条件に従って行った。順相カラムで溶媒はSolvent A:Solvent B=25:75で行った。
【0042】
Column; TSK-gel amide-80
Solvent A; 100% H2O
Solvent B; 100% CH3CN
Column temp; 40℃
Flow rate; 1 mL / min
Wavelength; 214 nm
【0043】
(3)酵素活性の測定
(3−1)加水分解活性の測定
Galβ1-3GalNAcα1-pNPを基質とし、遊離するpNP(パラニトロフェノール)をアルカリ条件下で比色定量する方法により測定した。すなわち、37℃で一定時間反応させ、Na2CO3 を添加して反応を停止させた後、400nm における吸光度を測定した。反応液組成を以下に示す(表2)。なお、基質特異性を調べるため他の基質を用いる時も、Galβ1-3GalNAcα1-pNP と同じ濃度にして反応させた。
【0044】
【表2】

【0045】
1ユニット(unit)は37℃で1分間に1μmol のpNP を遊離させるのに必要な酵素量と定義し、活性を次式(I)に従って求めた。
units / ml = A / (18.3TV) ・・・(I)
式(I)において、
A = 吸光度 (nm)、
T = 反応時間 (min)、
V = 停止液を含めた全量における酵素量 (ml)、
18.3 = pNP の pH 10 以上のミリモル吸光係数、
である。
【0046】
さまざまなビフィズス菌について、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニルα1−パラニトロフェノール(Galβ1-3GalNAcα1-pNP)を基質に用い、本酵素活性の有無を調べた。ビフィズス菌の培養は、嫌気条件下、GAMブイヨン培地(日水製薬)を用いて、37℃で24h静置培養にて行った。反応液をTLCに供したところ、図2に示すように、多くの株において基質を単糖単位ではなく、二糖単位で分解する本酵素活性が確認された。図2中、左から4つめのレーンのGalβ1-3GalNAcは、Endo-α-N-acetylgalactosaminidase生産菌として知られているバチルス属細菌由来の酵素で同じ基質を切った、二糖のコントロールである。
【0047】
この反応生成物とGalNAcに関してスポットが二つに分かれているように見えるが、これはアノマーの違いによるものと推測される。上記とは異なる展開溶媒、発色試薬を用いた時には、スポットがまとまっていることを本発明者らは別途確認した。
【0048】
(3−2)糖鎖転移活性の測定
Bifidobacterium longum JCM1217株由来の本酵素について、下記のようにしてその糖鎖転移活性を調べた。糖鎖転移活性を測定する反応系においてはすべてpNP基質を糖鎖供与体に用いた。糖鎖供与体fin. (最終濃度)2mM、アクセプターfin. 1M, 酵素(Recombinant Endo-α-GalNAc-ase)fin. 61units/L, 10mM 酢酸バッファー(pH5.0)中で行った。37℃で20分反応後、3分ボイルして酵素を失活、4℃でフィルターを通してHPLCにアプライした。転移率は、下記式(II)によって求めた。
【0049】
【数1】

【0050】
グルコースを受容体に、Galβ1-3GalNAcα1-pNPを糖鎖供与体に用いて反応させ、その反応液をHPLCに供した。結果を図3に示す。左側のクロマトグラフ(-Glc)はグルコースを入れないコントロールで、右側(+Glc)が反応液をアプライしたものである。右側(+Glc)のクロマトグラフにおいて、囲った部分として示す通り新たなピークが検出されたため、その部分を単離し、MALDI-TOF-MSにより解析した(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法、Matrix Assisted Laser Desorption Ionization(MALDI);飛行時間型、Time Of Flight(TOF);質量分析計、MS)。
【0051】
その結果、糖鎖供与体から遊離したGal-GalNAcにGlcが結合した三糖を示すピークが得られたことから、単離した酵素が糖鎖転移活性を有することが明らかになった。また、同様のHPLC解析により、ガラクトース、マンノース、アラビノースにも転移することを見出した。一定反応条件での各アクセプターへの転移率とともに示す(表3)。グルコースに比べてガラクトース、特にマンノースでは低い値であった。これは転移反応で、二位や四位のヒドロキシル基が関与するためと推察される。
【0052】
【表3】

【0053】
(4)大腸菌の培養方法
使用培地として、液体培地LB broth(DIFCO社製)を使用し、寒天培地とする場合は同液体培地に寒天(agar)を終濃度で2%添加して作製した。アンピシリンを添加する場合は、終濃度150μg/mlとなるようにした。
【0054】
(5)発現プラスミドの構築
Bifidobacterium longum NCC2705株においてEndo-α-GalNAc-ase と推定した機能未知タンパク質BL0464をコードするORFの塩基配列を元に、それをPCRで増幅させることのできるプライマーを設計した(表4)。プライマーには、クローニングしやすいように制限酵素サイトを組み込んでおいた。Bifidobacterium longum JCM1217株のゲノムを鋳型としてTaKaRa Ex TaqTM DNA Polymerase (TaKaRa社製) により次のような組成、条件でPCR反応を行った。
【0055】
反応液組成;template DNA 0.01-0.1 μg, 2.5 units TaKaRa Ex TaqTM DNA Polymerase, 10 μL 10X Ex TaqTMBuffer (TaKaRa社製), 0.2 mM dNTP Mixture (TaKaRa社製), 1 μM primers。
反応条件;94℃, 30秒-(94℃, 30秒- 60℃, 30秒-72℃, 6分) x 30 cycles-72℃, 6 分。
【0056】
【表4】

【0057】
PCR増幅断片 (約 6 kbp) についてTA クローニングを行い、さらに制限酵素Nco I (TOYOBO社製)とNot I (TOYOBO社製)で同時に切断し、得られた断片 (約 6 kbp) を大腸菌用発現vector pET-23d (+) (Novagen社製) のNco I/Not I間に挿入した。ライゲーションはLigation High (TaKaRa社製) を用いて行った。
【0058】
(6)大腸菌の形質転換
大腸菌の形質転換は、コンピテントセル (100〜200 μL)にライゲーション反応液 (約20 μL)を加え、42℃、45秒のヒートショックを与えた後、800〜900 μLのSOC培地を添加し37℃で1時間培養することによって行った。これを適宜希釈して抗生物質を含むLBアガープレートに塗布し、生えてきた大腸菌をcolony PCR、またはプラスミド抽出後の制限酵素処理によって形質転換の成否を確認した。プラスミド抽出にはWizard plus SV Minipreps (Promega社製) を用いた。大腸菌コンピテントセルは井上法によって作製し、-80℃で保存した。
【0059】
(7)Recombinant Endo-α-GalNAc-aseの発現及び精製
大腸菌BL21(DE3)/pET-23d-Endo-α-GalNAc-ase を LB-Ampicillin 培地で37℃振とう培養しOD600 = 0.4 に達した後 IPTG を fin. 0.4 mM になるように添加し 3時間振とう培養を続けることで、目的の Endo-α-GalNAc-ase を大量発現させた。菌体を集菌し、Bug Buster reagent (Novagen社製) を用いて無細胞抽出画分を調製し、活性を確認した。
【0060】
精製する際は、5 mM imidazoleを含むバッファー (2 mM Tris-HCl buffer (pH 8.0), 0.5 M NaCl) で平衡化したニッケルカラム HiTrapTM Chelating HP (amersham社製) に無細胞抽出液を添加し、同じく5 mM imidazoleを含むバッファーでカラム内の余分なタンパク質を洗い流した後、FPLCに接続した。FPLC では10 cv (column volume) の20 mM imidazoleを含むバッファーを流した後、5 cv の 1 M imidazoleを含むバッファーで目的の Endo-α-GalNAc-ase を溶出させた。溶出画分は 10 mM KPB buffer (pH 7.0) に対して透析した後、活性測定及びSDS-PAGE により、目的の Endo-α-GalNAc-ase であることを確認した。
【0061】
(8)DNA シークエンス解析
遺伝子操作は主にSambrook らの方法に従った。DNA シークエンス解析は Sanger らの方法に従い、BigDye terminator v3.0 cycle sequencing ready reaction kit 及び ABI prismTM 310 NT genetic analyzer (Applied Biosystems社製) を用いて行った。
Bifidobacterium longum JCM1217 のゲノムにおける Endo-α-GalNAc-ase をコードする ORF 全長の塩基配列を決定した。
【0062】
(8−1)ベクターに組み込んだ遺伝子断片のシークエンス
まずベクターに組み込んだ目的の遺伝子断片の全領域についてシークエンスを行う為、ベクター内のプライマー結合領域を利用しT7 promotor primer 及び M13 reverse primer により、遺伝子断片の両端部分の配列を解読した。次いで明らかになった配列を元に遺伝子断片内側へ向かうプライマーを設計し、解読を進めた。これを繰り返すことで、ベクターに組み込まれた遺伝子断片の全領域について塩基配列を決定した。ベクターに組み込まれた状態では PCR での増幅の際のプライマー配列から始まるため、Bifidobacterium longum JCM1217株由来の Endo-α-GalNAc-ase をコードする ORF 全長のN末端領域、C 末端領域の配列を完全に決定することができなかった。
【0063】
(8−2)C末端領域のシークエンス
そこでさらにもう一度Bifidobacterium longum種間の相同性を利用すべく Bifidobacterium longum NCC2705株の塩基配列の情報を元に、ORF のC末端の少し外側から 内向きプライマー(BL0464-C152 reverse primer : 5'-TGCGATTCATCGCCTAGCAG-3'(配列番号15)を設計した。このプライマーと、ベクターに組み込んでいるEndo-α-GalNAc-ase 遺伝子断片内のプライマーとを用いてBifidobacterium longum JCM1217株のゲノムを鋳型に PCR を行いC末端領域を含む遺伝子断片を増幅させ、T easy ベクターを用いて TA クローニングを行った。シークエンスにより、Bifidobacterium longum JCM1217株由来の Endo-α-GalNAc-ase をコードする ORF における完全なC末端領域の塩基配列を決定した。
【0064】
(8−3)N末端領域のシークエンス
N末端の外側は repeat region となっており適したプライマーが設計できなかったため、サザンブロッティングを利用しBifidobacterium longum JCM1217株のゲノムから制限酵素処理によってN 末端領域を含む遺伝子断片群を取得した。これらをつないだベクターを、コンピテントセルに形質転換させた。生えてきた大腸菌からcolony PCR により陽性クローンを選別した。シークエンスにより、Bifidobacterium longum JCM1217株由来の Endo-α-GalNAc-ase をコードする ORF における完全なN 末端領域の塩基配列を決定した。
【0065】
(8−4)
Bifidobacterium longum JCM1217株から特定された上記タンパク質の塩基配列またはアミノ酸配列の情報に基づき、下記菌株からホモログの配列を特定した。各菌株名およびその塩基配列の配列番号を示す。また各配列は各アクセッション番号等によりDDBJ(DNA Data Bank of Japan)などのデータベースから検索可能である。
ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)R6(アクセッション番号:AE008413);配列番号3
ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)NCC2705(アクセッション番号:AE014666);配列番号5
コロストリヂウム・パーフリンゲンズ(Clostridium perfringens)str.13(アクセッション番号:AP003187);配列番号7
ストレプトミセス・コエリコラー(Streptomyces coelicolor)A3(2)(アクセッション番号:AL939127);配列番号9
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)V583(アクセッション番号:AE016952);配列番号11
【0066】
(9)1−アルカノールへの糖鎖転移
実施例(3−2)に記載した糖鎖転移実験を、種々1−アルカノールを受容体として行った。糖鎖転移活性を測定する反応系は、糖鎖供与体Galβ1-3GalNAcα1-pNPをfin.(最終濃度)2mM、受容体1−アルカノールfin. 15% (v/v)、精製酵素(Recombinant Endo-α-GalNAc-ase)fin. 6.8units/L、50mM リン酸カリウムバッファー (pH 7.0)中で行った。37℃で60分反応後、反応液3μlをTLCプレートにスポットし、クロロホルム:メタノール:水=7:6.2:2から成る溶媒で展開した後、ナフトレゾルシノール硫酸液(0.2% (w/v) ナフトレゾルシノール in 硫酸−エタノール (5:95 (v/v))にて発色させた。結果を図4−1に示す。結果、1−アルカノールを受容体として加えた場合、糖鎖供与体の加水分解産物であるGalβ1-3GalNAcの他に新たなスポットが検出され、またこれらスポットは加えた1−アルカノールの種類により異なる移動度に検出されたことから、Galβ1-3GalNAcの各アルカノールへ転移した物質のスポットであると考えられた。
【0067】
次に、これらの物質の酵素反応による生成が、転移反応によって生成したものであるか加水分解反応の逆反応によって生成したものであるかを確認するため、メタノールを糖鎖受容体とした場合に、Galβ1-3GalNAcとの反応と、Galβ1-3GalNAcα1-pNPとの反応をそれぞれ行った。反応条件は上記と同様だが、Galβ1-3GalNAc とGalβ1-3GalNAcα1-pNPは、それぞれfin. 1.2mMで反応を行った。結果を図4−2に示す。結果、図4−1で生成したスポットは、Galβ1-3GalNAcとメタノールとの反応では生成せず、Galβ1-3GalNAcα1-pNPとメタノールとの反応の場合にのみ生成したことから、加水分解反応の逆反応ではなく転移反応によって生成したものであることが判明した。
【0068】
(10)ポリペプチドへの糖鎖転移
種々のポリペプチドを糖鎖受容体とした場合の、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ(Endo-α-GalNAc-ase)による糖鎖転移活性を調べた。
【0069】
(10−1)酵素反応
まず、糖鎖供与体としてのGalβ1-3GalNAcα1-pNP、糖鎖受容体としてのPeptide-T(配列表の配列番号16参照)、PAMP-12(配列表の配列番号17記載のアミノ酸配列のC末端にアミノ基が付加したもの)及びBradykinin(配列表の配列番号18参照)に対する(7)で精製されたRecombinant Endo-α-GalNAc-aseの酵素反応を行った。
すなわち、Galβ1-3GalNAcα1-pNP 10μl、受容体としての各ポリペプチド溶液6μl及びNaP(リン酸ナトリウム)バッファー(500mM, pH6)1.5μlを混合した。ここで、糖鎖供与体Galβ1-3GalNAcα1-pNPは10mMのものを、ペプチド溶液は、Peptide-T及びBradykininについては50mM、PAMP-12については10mMのものを使用した。混合して得られる溶液を37℃に温めた後、Endo-α-GalNAc-ase(1.55Unit/ml)2.5μlを加え、37℃の湯浴で1時間インキュベートした。その後、3〜5分間boilさせて酵素を失活させた。
【0070】
(10−2)HPLCによる分析と分取
前記酵素反応にて得られた各反応液をHPLCに供して、反応生成物の分析及び分取を行った。分析及び分取共に、HPLC装置としてHITACHI製Pump L-7100、UV-VIS Detector L-7240、Integrator D-7500を用い、カラムとしてCOSMOSIL 5C18-AR-IIカラム(nakalai tesque): 10x250mmを用いた。溶離は、温度40℃の条件下、溶媒として0%-25%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸)を用いて行った。検出は、UV(波長214nm)スペクトルにより行った。
Peptide-T、PAMP-12及びBradykininの各反応液の検出結果を、それぞれ図5−1、5−2及び5−3に示す。尚、図5−1、5−2及び5−3のそれぞれにおいて、下段は上記の通り酵素反応にて得られた各反応液についての実験区(With enzyme)の結果であり、上段は、前記(10−1)において、酵素の代わりに、酵素を反応前に5分間の煮沸処理によって失活させた失活酵素を添加して酵素反応を行った各反応液についての対照区(With enzyme denatured)の結果である。
図5−1、5−2及び5−3から明らかなように、糖鎖転移産物のピーク(各図中の「Product」部分)が観察されたことから、各ペプチドに糖鎖が転移したことが明らかとなった。そこで、このピーク部分(画分)を分取し、以下の分析に供した。
【0071】
(10−3)質量分析法(MS)による分析
前記HPLCにおいて分取した画分を、MALDI−TOF−MSにより分析した。MALDI−TOF−MS装置としてBRUKER Daltons Autofex-G MALDI-TOF Mass spectrometerを用いた。
Peptide-T、PAMP-12及びBradykininの反応液において分取された画分のMSスペクトル検出結果を、それぞれ図6−1、6−2及び6−3に示す。図6−1、6−2及び6−3から明らかなように、いずれのペプチドについても二糖(Gal-GalNAc)が転移したものに相当するピークが得られた。それぞれのピークは次の通りであった。Peptide-T:1245.54 (M+Na)+, 1261.62 (M+K)+; PAMP-12: 1984.68 (M+H) + ;Bradykinin: 1425.79 (M+H) +
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は糖鎖工学を利用する産業において有用であり、例えば糖類、糖タンパク質の製造などにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は糖鎖転移反応を模式的に示す図である。
【図2】図2は加水分解活性の測定結果を示す図である。
【図3】図3は糖鎖転移活性の測定結果を示す図である。
【図4−1】図4−1は1−アルカノールへの糖鎖転移活性の測定結果を示す図である。
【図4−2】図4−2は、図4−1に示される結果が転移反応によって生成したものであることを確認する実験の結果を示す図である。
【図5−1】図5−1はPeptide-Tへの糖鎖転移活性のHPLCによる測定結果を示す図である。
【図5−2】図5−2はPAMP-12への糖鎖転移活性のHPLCによる測定結果を示す図である。
【図5−3】図5−3はBradykininへの糖鎖転移活性のHPLCによる測定結果を示す図である。
【図6−1】図6−1はPeptide-Tへの糖鎖転移活性のMALDI−TOF−MSによる測定結果を示す図である。
【図6−2】図6−2はPAMP-12への糖鎖転移活性のMALDI−TOF−MSによる測定結果を示す図である。
【図6−3】図6−3はBradykininへの糖鎖転移活性のMALDI−TOF−MSによる測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 ペプチド
10 アミノ酸残基
20 糖鎖部
30 受容体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質の存在下で、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基がα-結合した糖鎖を含有する糖鎖供与体から、糖鎖受容体にガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基を転移する反応を行う糖鎖転移方法。
【請求項2】
前記タンパク質が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する微生物に由来する請求項1に記載の糖鎖転移方法。
【請求項3】
前記タンパク質が、下記(A)または(B)のタンパク質である請求項1に記載の糖鎖転移方法。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
【請求項4】
下記(A)または(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞を培地中で培養し、培地中および/または形質転換細胞中に、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を蓄積させて前記タンパク質を供給することを特徴とする請求項1に記載の糖鎖転移方法。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
【請求項5】
前記糖鎖受容体が、単糖、オリゴ糖、アルコール(1-アルカノール)、アミノ酸およびポリペプチドからなる群より選ばれる請求項1から4のいずれか一項に記載の糖鎖転移方法。
【請求項6】
食品を改質する方法であって、
改質前の食品が、単糖、オリゴ糖、アルコール(1−アルカノール)、アミノ酸およびポリペプチドからなる群より選ばれる糖鎖受容体を含み、
エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質の存在下で、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基がα-結合した糖鎖を含有する糖鎖供与体から、前記糖鎖受容体にガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基を転移する反応を行う、食品の改質方法。
【請求項7】
医薬を改質する方法であって、
改質前の医薬が、単糖、オリゴ糖、アルコール(1−アルカノール)、アミノ酸およびポリペプチドからなる群より選ばれる糖鎖受容体を含み、
エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質の存在下で、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基がα-結合した糖鎖を含有する糖鎖供与体から、前記糖鎖受容体にガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基を転移する反応を行う、医薬の改質方法。
【請求項8】
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する微生物に由来し、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質。
【請求項9】
下記(A)または(B)のタンパク質。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
【請求項10】
下記(A)または(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
【請求項11】
下記(a)または(b)のポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項12】
請求項10あるいは請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む組換えポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12に記載の組換えポリヌクレオチドを含む形質転換細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の形質転換細胞を培地中で培養し、培地中および/または形質転換細胞中に、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を蓄積させることを特徴とする、タンパク質の製造方法。
【請求項15】
エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質の存在下で、ガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基がα-結合した糖鎖を含有する糖鎖供与体から、糖鎖受容体にガラクトシルβ1→3N−アセチルガラクトサミニル基を転移する反応を行うことにより生成する糖鎖、糖アルコール又は糖タンパク質の製造方法。
【請求項16】
前記タンパク質が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する微生物に由来する請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記タンパク質が、下記(A)または(B)のタンパク質である請求項15に記載の製造方法。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
【請求項18】
エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞を培地中で培養し、培地中および/または形質転換細胞中に、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を蓄積させて前記タンパク質を供給することを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項19】
エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有し、かつビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する微生物に由来するタンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞を培地中で培養し、培地中および/または形質転換細胞中に、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を蓄積させて前記タンパク質を供給することを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項20】
下記(A)または(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞を培地中で培養し、培地中および/または形質転換細胞中に、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質を蓄積させて前記タンパク質を供給することを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、エンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ活性および糖鎖転移活性を有するタンパク質
【請求項21】
前記糖鎖受容体が、単糖、オリゴ糖、アルコール(1-アルカノール)、アミノ酸およびポリペプチドからなる群より選ばれる請求項15から20のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【公開番号】特開2006−296412(P2006−296412A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272770(P2005−272770)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年(平成16年)3月30日 社団法人日本農芸化学会主催の「日本農芸化学会2004年度(平成16年度)大会」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年(平成16年)5月29日 日本糖質学会主催の「第5回 関西グライコサイエンスフォーラム」において文書をもって発表
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【出願人】(591105993)東京化成工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】