説明

糸重量測定装置、およびそれを備えた糸番手測定装置。

【課題】複数の糸について連続的にかつ各糸について複数回の重量測定を連続的に行うことができる糸重量測定装置およびこの糸重量測定装置を備えた糸番手測定装置を提供する。
【解決手段】糸重量測定装置は、複数の糸を保持可能な保持装置と、保持された糸を特定する特定装置と、特定された糸を所定長さ切出し重量計へ送る切出装置と、切出された糸重量を測定する重量計とを含む。また、特定装置と切出装置と重量計とが保持装置に保持された糸に対しこの順で繰り返し動作でき、切出装置と重量計とがこの順で繰り返し動作できる。こうして、複数本の糸の重量測定と同一の糸に対する複数回の重量測定ができる。このため、測定作業者の作業負担が軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定長の糸重量を測定する糸重量測定装置、およびそれを備えた糸番手を測定する糸番手測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製造会社または繊維機械製造会社にとって、糸番手を把握する作業は、製品としての糸または繊維機械の品質・性能を管理・評価するために必要である。従来は、作業者が、綛枠に糸の先端を固定し、綛を回転させて所定長の糸を綛枠上に巻き掛け、巻き掛けた糸の巻き終りを鋏で切断し、切断後の巻回状態の糸を綛から取り外し、取り外した巻回状態の糸の重量を測定し、得られた重量と所定長とから電子計算機を使って番手を計算していた。作業者によるこれらの一連の手順は、いずれも手作業により行なわれていたため、番手測定回数が増えるに連れて作業負担が甚だ大きく、番手測定装置の自動化が強く求められていた。
【0003】
そこで、このような作業負担を減らすことを目的として、糸番手を自動的に測定する装置が特許文献1(特表平2−501501号公報)に開示されている。この特許文献1の番手測定装置は、作業者が糸端を番手測定装置にセットさえすれば、以下に説明する手順を自動で行なう。つまり、セットされた糸は測長ローラにより所定長を送られた後に切断装置により切断される。そして、糸はサクションノズルにより塊状に丸められ、この糸塊が秤量装置により秤量され、秤量値と所定長とから演算装置が番手を演算する。この番手測定装置では、特に、番手測定装置にセットされた1本の糸に対して複数回を測定可能に構成されている。この特許文献1の番手測定装置により作業者の負担は大きく軽減されたと考えられる。けれども、該番手測定装置は1本の糸について複数回を自動で測定できるが、複数本の糸について連続して自動的に測定できるようには構成されていない。このため、該番手測定装置の利用者は1本の糸の測定が終了する毎に次の糸を装置にセットする必要があり、この作業もまた利用者の大きな負担として残っていた。
【0004】
また、特許文献1と同様に、作業者負担を減らすことを目的とした糸重量を自動的に測定する装置が、特許文献2(特開平5−301678号公報)に開示されている。この特許文献2に記載の糸検尺装置は、以下の通り構成されている。綛枠上に複数の糸が同時に一定長巻き取られ、巻き取られた複数の糸がそれぞれ切断手段によって切断された後、切断後の糸の切端が吸引回収されるとともに重量計上に置かれて、糸重量が測定される。測定された糸重量データに基づいて糸番手が演算される。こうして、複数本の糸が自動的に測定可能とされている。
【0005】
この検尺装置は複数本の糸を連続して測定できるが、綛枠に巻かれた複数本の糸を切断装置により一気に切断した後は、1本の糸について重量を複数回連続して測定する事はできない。作業者が複数の糸を次回の測定の為に綛枠に再び取り付ける構成が採用されているからである。複数回測定した各番手から平均値を出す必要があるときは、結局、作業者が当該検尺装置に張り付いていなければならないと、いう課題があった。
【0006】
また、この検尺装置では、綛枠上に巻き取られた糸が巻き取り区間毎に切断され、吸引装置が複数の糸の切端を吸引回収して重量計上に置く構成になっている。そのため、全ての切端が重量計にきちんと置かれるとは限らず、糸重量が正確に測定できていない場合が容易に想定される。
【0007】
【特許文献1】特表平2−501501号公報
【特許文献2】特開平5−301678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、重量を測定すべき複数本の糸を、糸重量測定装置に一度セットすれば、複数本の糸について連続的にかつ各糸について複数回の重量測定を連続的に行うことができる糸重量測定装置を提供するとともに、この糸重量測定装置を備えた糸番手測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸重量測定装置が提供される。即ち、所定長の糸重量を測定する糸重量測定装置であって、糸を同時に2つ以上保持可能な保持装置と、前記保持装置に保持された糸から重量を測定すべき1つの糸を特定する特定装置と、該特定された糸を巻き取るとともに、巻取長さが前記所定長さに達すると切断し、巻き取った糸を巻回状態で排出する切出装置と、前記所定長の巻回状態の糸重量を測定し、その測定結果を示すデータを出力する重量計と、を含み、前記保持装置に保持された糸の数に対応する回数を前記特定装置、切出装置、および重量計がこの順で繰り返して動作をし、特定された一つの糸に対して前記切出装置および重量計がこの順で複数回動作可能である。前記巻回状態とは、切出装置により巻き取られた状態を指し、少なくとも巻き取られた糸がまとまった状態を指す。また、糸は、繊維に撚りをかけた物のみならず、合成繊維を少なくとも含む概念である。
【0011】
これによれば、糸重量測定装置は、保持装置に保持された1つ以上の糸から重量を測定すべき糸を特定し、特定された糸を巻き取るとともに所定長に達すると切断し、切断した糸を巻取り、巻き取った糸を巻回状態で排出してその巻回状態の糸重量を測定し、その測定データを出力する。つまり、重量測定される糸は巻回状態であるから、その糸端が不慮の要因によって重量計上に正しく載せられないということが極力抑えられ、重量測定の正確性が保証される。
【0012】
そして、重量計による糸重量の測定およびその測定データの出力が完了した後に、未だ重量が測定されていない糸が保持装置に保持されている場合には、上記と同様にして、次に重量を測定すべき糸が特定され、重量の測定処理が実行される。この糸の特定から重量測定までの一連の処理が、保持装置に保持された未測定の糸が無くなるまで繰り返し実行される。さらに、特定された糸を巻き取るとともに所定長に達すると切断しその糸を排出して重量計で測定し重量データを出力する一連の処理を、この順で複数回行うことも可能である。こうして、保持装置にセットされた糸について少なくとも一回ずつ連続的に重量測定が行なわれるから、測定作業者による糸の巻取り、切断、取外しおよび重量測定の作業が省略され、作業効率が向上する。また、1本の糸について複数回測定することができるので、この点においても作業者負担が低減され、作業効率が向上する。
【0013】
糸重量測定装置は、以下の構成が好ましい。つまり、切出装置は、特定装置により特定された糸を切断する切断装置と、特定装置により特定された糸を巻き取り巻回状態で排出する巻取装置と、巻回状態の糸を重量計に案内する案内装置とを含み、巻取装置、案内装置、および重量計が下向きにこの順番で設けられる。
【0014】
これによれば、巻取装置、案内装置および重量計が下向きにこの順番で配設されているため、巻取装置により巻き取られる糸が、所定長に達すると切断され、自重によって巻取装置よりも下方に位置している案内装置に案内されて重量計上に落下する。従って、巻取装置により巻き取られた糸を重量計まで排出するための特別な動力を必要とせず、製造コストの点で有利である。
【0015】
糸重量測定装置は、以下の構成が好ましい。つまり、巻取装置は、上下軸線まわりに回転して、その外周に糸を巻き掛けることにより、糸を巻き取る。
【0016】
こうして、巻取装置が上下軸線まわりに回転し該巻取装置の外周に糸が巻き掛けられるから、1回転あたりに巻き取られる糸長が正確に定まる。従って、巻取装置の回転数をコントロールするだけで、所定長の糸を正確に巻き取ることができる。
【0017】
糸重量測定装置は、以下の構成が好ましい。案内装置は、上下両端に開口した台錘形の中空部を有し、上側の開口面積が下側の開口面積よりも大きく形成されている。
【0018】
これによれば、巻取装置から排出された巻回状態の糸が自重により落下し、案内装置の上側開口から中空部に入り、下側開口から重量計上に排出される。案内装置は上下両端に開口した台錘形の中空形状であるため、糸は案内装置の下方にある重量計に向かって案内されるとともに、巻回状態の糸がより小さい塊に纏められ、重量計による測定が容易になる。
【0019】
糸重量測定装置は、以下の構成が好ましい。中空部において下向きの旋回流を発生させる旋回流発生装置を含む。
【0020】
これによれば、旋回流発生装置は下向きの旋回流を発生させるため、この旋回流により、糸は下向きに回転しながら下側開口まで案内されるから、巻回状態の糸がさらに小さい塊に纏められながら重量計に排出される。従って、塊状の糸状の全長が重量計上に確実に載せられるので、重量測定処理の信頼性が向上する。
【0021】
糸重量測定装置は、以下の構成が好ましい。重量計は、測定される巻回状態の糸が載せられる皿を有する電子天秤であって、巻取装置の鉛直軸線上の視点において、案内装置の下側開口領域が電子天秤の皿上に完全に含まれる。
【0022】
これによれば、巻取装置の鉛直軸線方向から案内装置を見た際に、案内装置の下側開口領域が、電子天秤の皿上よりも狭くなるように構成されている。そのため、巻取装置から排出された糸が、案内装置により案内され下側開口から重量計へ排出されるとき、電子天秤の皿よりも小さい塊として電子天秤の皿上に載せられ、重量測定処理の信頼性が向上する。
【0023】
糸重量測定装置においては、以下の構成であることが好ましい。巻取装置の鉛直軸線上の視点において、巻取装置の外周により定められる領域が案内装置の上側開口領域内に完全に含まれる。
【0024】
これによれば、巻取装置の鉛直軸線方向から案内装置を見た際に、巻取装置の外周により定められる領域が、案内装置の上側開口領域よりも狭くなるように構成されている。そのため、巻取装置により巻き掛けられ排出された巻回状態の糸の全長が案内装置の上側開口に確実に入るから、糸を確実に案内装置に導入できる。
【0025】
糸重量測定装置は、以下の構成が好ましい。前記切断装置は、前記特定装置により特定された糸を切断しこの切断された糸の保持装置側の切断端を保持する切断保持装置と、前記保持状態にある糸の切断端を掴んで前記巻取装置へ送る送出装置とを含み、この送出装置が前記保持状態にある糸の切断端を掴むと同時に、前記切断保持装置の糸の切断端への保持状態が解除される。
【0026】
これによれば、切断保持装置により切断保持された糸が送出装置により掴まれると同時に、切断保持装置による保持状態が解除され、送出装置が糸を掴んで巻取装置に送る。従って、糸の切断時に糸の切断端が遊ぶことがなく保持され、送出装置は、安定して切断保持装置から巻取装置まで糸を受け渡しできる。そのため、糸の切断から巻取までの動作を滑らかに行うことができる。また、送出装置が糸を巻取装置まで送り出すので、従来、作業者が行っていた当該作業が省略され作業者の負担が大きく軽減される。
【0027】
糸重量測定装置は、以下の構成が好ましい。前記保持装置に保持されている各糸端をクランプするクランプ装置をさらに含み、前記切断保持装置が前記クランプ装置と前記保持装置との間において糸を切断し保持するものであって、糸の切断により前記巻取装置が巻き取るための糸の始端が決定される。
【0028】
これによれば、クランプ装置が保持装置に保持された全ての糸端をクランプするので、各糸端が遊ぶことなく保持された状態になる。そのため、送出装置が糸を確実に掴んで巻取装置まで送り出せる。加えて、切断保持装置によって、切断保持装置とクランプ装置の間における糸の始端位置が決定されるから、巻取装置は確実に所定長を巻き取ることができる。
【0029】
糸重量測定装置は、以下の構成が好ましい。巻取装置は、所定の第1の回転速度で糸を巻き取る第1巻取モード、または第1の回転速度よりも低速の第2の回転速度で糸を巻き取る第2巻取モードで動作されるものであって、切断保持装置は、巻取装置が第1の巻取モードで動作していないときに糸を切断し、切断後の未巻取糸が第2の巻取モードで巻取られる。
【0030】
これによれば、切断保持装置が糸を切断した後、糸の未巻取長が切断前よりも低速で巻き取られるため、巻取装置が巻取動作を停止する際に巻取装置の駆動源の負荷が抑えられる。そのため、巻取装置の駆動源の寿命が、第2の巻取りモードが無い場合に比較して長くなる。また、切断保持装置は巻取装置が糸を巻き終える前に切断する構成が採用されることで、切断保持装置と巻取装置との距離を確保できるから、切断保持装置の装置レイアウトの設計自由度が高くなる。そのため、設計者の設計労力の負担を軽減できる。
【0031】
糸重量測定装置は、以下の構成が好ましい。切断保持装置による糸の切断後に巻取装置側の糸の切断端にテンションを付与するテンション付与装置をさらに含む。
【0032】
これによれば、切断保持装置が糸を切断した後、テンション付与装置が糸の切断端にテンションを付与しながら巻取装置で巻き取るため、糸端が暴れず、安定した巻取りができる。また、テンション付与装置が糸にテンションを与えた状態で巻取装置が糸を巻き取るため、巻取り時に糸が縮み良好な巻回状態を得ることができる。
【0033】
糸重量測定装置は、以下の構成が好ましい。保持装置から切断保持装置までの糸道上に設けられたサクションノズルをさらに含み、サクションノズルは、前記糸に対する最終回の切断後に、前記保持装置側の糸の切断端を吸引する。
【0034】
これによれば、最終回の切断がされた後にサクションノズルが糸の切断端を吸引するから、重量測定が終了した糸が糸道上あるいはその近傍に残留しない。つまり、測定が終了した糸が、これから測定される他の糸または糸重量測定装置を構成する各装置に接触することが防がれる。
【0035】
糸重量測定装置においては、以下の構成が好ましい。特定装置は、保持装置に保持された2つ以上の糸を個別に収容する2つ以上の糸収容部と、糸収容部を移動させるスライダと、前記糸収容部の糸の存在を判別する固設された判別装置と、を含む。
【0036】
これによれば、糸収容部をスライダで移動させることにより、固設された判別装置における糸判別位置に糸が送られる。糸収容部を移動させるスライダの移動が制御されて、糸収容部が収容している2本以上の糸を漏れなく判別装置に判別させることができる。
【0037】
糸重量測定装置は、以下の構成が好ましい。重量計から重量測定後の糸を排出する排出装置をさらに含む。
【0038】
これによれば、重量測定後の糸が前記重量計に残留しない。
【0039】
本発明の第2の観点によれば、以下の糸番手測定装置が好ましい。糸重量測定装置と、所定長を示すデータおよび出力された重量データを記憶する記憶装置と、記憶装置に記憶された所定長を示すデータと前記出力された重量データとから糸の番手を演算して演算結果を記憶装置に記憶させる演算装置とを含む。
【0040】
これによれば、糸重量測定装置により測定され出力された重量データが記憶装置に記憶され、記憶装置に記憶された所定長と重量データとから糸番手が演算され、その演算データが記憶装置に記憶される。こうして、糸番手が得られる。さらに、重量データおよび番手データが記憶されるので、後から重量データおよび番手データが確認できる。
【発明の効果】
【0041】
以上により、本発明では、重量を測定すべき複数本の糸を最初に糸重量測定装置にセットさえすれば、複数本の糸について連続的にかつ各糸について複数回の重量測定を連続的に行うことができる。従って、作業者の負担が大幅に軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。糸番手を測定する糸番手測定装置2は、所定長の糸重量を測定する糸重量測定装置1(図1の斜視図で示す)と、評価装置10とを含む。図1の斜視図に示す糸重量測定装置1は、保持装置としてのクリール20と、図2に正面図で示す重量測定装置本体3とを含む。便宜上、図1において後述する支持ブラケット151の内側が見えるように支持ブラケットの一部を取り除き、さらに、図2においても後述するアーム検出センサ320が見えるようにフレーム5の一部を取り除いている。クリール20と重量測定装置本体3とは、例えば紡績工場の製品評価室等において水平な床上に並べて設置される。本実施形態では、糸重量測定装置1を正面から見たときに、左側にクリール20が配置され、右側に重量測定装置本体3が配置される。
【0043】
クリール20は、複数(本実施形態では12個)の中空の紙管に糸が巻き掛けられたパッケージを同時に保持できる。重量測定装置本体3は、クリール20に保持されたパッケージから所定長の糸を切り出してその重量を測定し、測定結果である重量データを評価装置10に送る。評価装置10は、例えばメモリなどの記憶装置と演算装置とを含むコンピュータによって実現される。所定長を示すデータと糸重量測定装置1からの重量データとが記憶装置に記憶される。演算装置が、記憶装置に記憶された所定長データと重量データとを使って糸番手を演算する。演算された番手データは記憶装置に記憶される。
【0044】
重量測定装置本体3は、フレーム5、特定装置40、切出装置100、重量計としての電子天秤70および制御装置300を含む。フレーム5は、上下3段の載置板31,32,33が4本の橋脚34により骨組みされる。上段の載置板31に切出装置100が支持され、中段の載置板32上に電子天秤70が配置され、下段の載置板33上に制御装置300が設置される。また、上段の載置板31の後ろ側から上段の載置板31と中段の載置板32とに支持され立設している背面壁31Aに、特定装置40が設置されている。そして、重量測定装置本体3を正面から見て(図1の白抜矢示1A方向)、特定装置40が左側に配置され、切出装置100が特定装置40の右側に配置され、電子天秤70が切出装置100の下方に配置される。
【0045】
クリール20に、少なくとも1つのパッケージが保持される。パッケージから引き出された糸端がクランプ装置260によりクランプされる。この糸端のクランプ状態において、特定装置40が重量を測定すべき1本の糸を特定する。なお、クランプ装置260は背面壁31Aに支持され、図6に示すように、第3電磁バルブ350を介して空気圧縮機としてのコンプレッサ430に接続されている。第3電磁バルブ350が制御されてコンプレッサ430およびクランプ装置260間の空気の流路が開かれると、クランプ装置260は閉じて糸端をクランプし、空気の流路が大気に開放されるとクランプが解除される。
【0046】
切出装置100は、特定装置40に特定された測定すべき1本の糸を所定長巻き取るとともに、クリール20からクランプ装置260に至る糸道の途中において糸を切断し、巻き取った糸を巻回状態で電子天秤70上に排出する。電子天秤70は、所定長の巻回状態の糸の重量を測定し、その測定結果を示す重量データを評価装置10に出力する。重量測定装置本体3と評価装置10とがデータ通信可能に接続され、詳しくは、電子天秤70と評価装置10としてのPCとがRS232Cケーブルによって接続される。
【0047】
図1を参照して、クリール20は、パッケージを同時に複数保持する。クリール20は、上下に延びる3本の支柱25A,25B,25Cが、その上下両端において、水平フレーム26A,26Bに溶接またはボルト固定されて骨組みされる。重量測定装置3側の支柱25Aを除く残りの支柱25B、25Cに、複数のパッケージ保持部材21が溶接またはボルト固定される。保持部材21は、支柱25Bまたは支柱25Cにネジ固定される取付板23Aと、取付板23Aから突設される2本のシャフト23とを有する。シャフト23にパッケージの紙管が挿通され、パッケージが保持部材21に保持される。そのため、シャフト23の先端側が基端側より僅かに上を向くように、シャフト23が取付板23Aに取り付けられる。
【0048】
支柱25Aに、テンションワッシャ27がボルト固定される。このテンションワッシャ27は、4個のテンサー27Aが階段状に連設されたものであって、各テンサー27Aに錘としてのワッシャ27Bが設けられる。パッケージがクリール20に保持された状態でパッケージに巻かれた糸端がクランプ装置260にクランプされる。クランプされる糸は、対応するテンションワッシャ27および特定装置40を通され、糸上に適正な重量のワッシャ27Bが載せられることにより糸に適当なテンションが与えられる。
【0049】
図1および図3により以下説明する。特定装置40は、リニアスライダ41と、リニアスライダ41により上下移動されるとともに測定すべき糸が収容され案内される糸収容部43と、糸の存在を判別する糸検出センサ45(判別装置)とを含む。糸収容部43は、リニアスライダ41の上下移動する移動体42に固定され、移動体42とともに糸収容部43が上下に移動する。移動体42および糸収容部43がフレーム5の上段の載置板31の上方のスペースから中段の載置板32の上方のスペースにかけて上下移動するように構成されているため、上段の載置板31に矩形開口31Bが穿設される。リニアスライダ41として、パルスモータとボールネジ機構により移動体42をスライド移動させる機構が好適である。この機構により、パルスモータに送るパルス数を制御するだけで、移動体42、つまり糸収容部43の上下位置が正確に制御される。また、糸検出センサ45は、馬蹄形のフォトインタラプタで実現され、糸収容部43の上下移動経路上に検出部45Aが配置され、上段の載置板31に第1センサブラケット46を介して固設される。また、糸検出センサ45の検出出力は制御装置300に入力される(図5参照)。
【0050】
図3は、特定装置40の近傍を拡大して示す斜視図である。糸収容部43は、1枚の板金を直角に折り曲げたガイド支持体51に設けられる。このガイド支持体51の一方の折曲部51Bが移動体42に固定される。他方の折曲部51Aの折曲先端に、複数のスリット溝(本実施形態では、12個)が上下に所定間隔を空けて切欠形成される。各スリット溝には、スリットを有する樹脂製のスリットガイド49(商品名、湯浅糸道工業株式会社製)が嵌め込まれる。
【0051】
一方の折曲部51Bの先端側に、先端にフック状の樹脂ガイドを持つ複数(本実施形態では12個)のドッグテールガイド47(商品名、湯浅糸道工業株式会社製)が、シャフトにより上下に所定間隔を空けて立設された状態で固定されている。スリットガイド49とドッグテールガイド47とは対となるように対応して設けられ、これにより糸収容部43が構成される。ドッグテールガイドのフック中心とこれに対応するスリットガイドのスリット中心とが同一水平面上に位置する。なお、ドッグテールガイドに代えて、先端が円環状のループガイド(商品面、湯浅糸道工業株式会社製)が使用されても良い。
【0052】
切出装置100は、特定装置40により特定された糸を切断する切断装置101と、切断装置101により切断された糸を巻き取って巻回状態で排出する巻取装置150と、巻回状態の糸を電子天秤70まで案内する案内装置180とを、少なくとも含む。切出装置100は電子天秤70の上方に配設され、巻取装置150と案内装置180と電子天秤70とが下向きにこの順番で配設される。
【0053】
切断装置101は、切断保持装置105と送出装置130とを含む。切断保持装置105は、特定装置40により特定された糸を切断し、この切断された糸のクリール20側の糸端を保持する。送出装置130は、切断保持装置105により保持された糸を掴んで巻取装置150まで送り出す。
【0054】
切断保持装置105は、空気圧複動シリンダ106、回転軸108、切断鋏110、保持トング112、固定板115、段付コロ117、連結板119、軸受121およびバネ(不図示)を含む。
【0055】
空気圧複動シリンダ106は、第7電磁バルブ390を介してコンプレッサ430に接続される空気圧による複動シリンダである。第7電磁バルブ390の開路を切り換えることによって、ピストンロッドが上下に伸縮される。この空気圧複動シリンダ106は、支持ブラケット106Aを介して上段の載置板31に支持される。長尺の固定板115の基端部が空気圧複動シリンダ106のピストンロッドの先端に固定され、ピストンロッド106の伸縮に応じて固定板115が上下移動する。固定板115には、長手方向に沿うとともに両端に半円を持つ長孔が形成されており、この長孔内に段付コロ117の大径部が収容される。段付コロ117の小径部に楕円形の連結板119の一端が固定され、連結板119の他端に回転軸108の一端が固定されている。回転軸108は、支持ブラケット106Aに溶接固定された軸受121に回転自在に支持される。
【0056】
回転軸108の他端には、他端側から順番に、抜止部材108A、切断鋏110、保持トング112、バネおよびフランジ123が設けられる。切断鋏110の下側の刃物と保持トング112の下側のトングとが回転不能とされる。具体的には、軸受121の一端にフランジ123が固定され、このフランジ123に回転軸線に平行に延びるピン124が突設される。このピン124に、切断鋏110の下側の刃物と保持トング112の下側のトングとが挿通されて、回転不能とされる。切断鋏110の上側の刃物と保持トング112の上側のトングとが回転軸108にそれらの基端部が固定され、回転軸108の回転とともに揺動する。また、バネが圧縮された状態でフランジ123と保持トング112との間に配設され、これにより保持トング112が切断鋏110側に押し付けられる。切断鋏110の上下刃物は互いに押し付けられて鋏として機能し、保持トング112の上下トングは互いに押し付けられてトングとして機能する。
【0057】
図3は空気圧複動シリンダ106のピストンロッドが延びた状態を示し、この状態で切断鋏110と保持トング112は開いている。ピストンロッドが縮退すると固定板115が下降し、段付コロ117が長孔に沿って移動しながら矢符108Bから見て右方向に平行移動し、回転軸108が矢符108Bから見て反時計方向に回転する。こうして、切断鋏110の上側刃物と保持トングの上側トングとが矢符108Bから見て反時計方向に揺動して、切断鋏110が糸を切断し、保持トング112が糸端を保持する。
【0058】
送出装置130は、パルスモータ131、支持ブラケット130A、送出アーム133および把持部材135を含む。パルスモータ131は、上段の載置板31に支持ブラケット130Aを介して支持され、制御装置300によってその回転が制御される(図5参照)。送出アーム133はL字の部材であって、長尺部の基部にパルスモータ131のモータ軸が周り止めされて取り付けられ、短尺部の遊端に把持部材135が設けられる。送出アーム133はパルスモータ131からの回転動力を受けてモータ軸線周りに揺動可能である。これによって、把持部材135が、一対のスリットガイド49とドッグテールガイド47との間の糸掴み位置と、巻取装置150の巻取開始位置との間で往復揺動される。ここで、巻取開始位置は、巻取装置の固定片164が特定装置40に最も近接した状態であって、送出装置130により保持装置20から張り出された糸を前記固定片164と前記揺動片162とが掴める位置を指す。
【0059】
送出アーム133の揺動軌跡上の所定位置にアーム検出センサ320が配置される。アーム検出センサ320は、検出面を上側に向けて上段の載置板31の下面に固定される(図2参照)。アーム検出センサ320によるアームの検出を妨げないように、上段の載置板31には開口が形成される。アーム検出センサ320のセンサ出力は制御装置300に入力される。制御装置300は、このセンサ出力に基づいて、把持部材135が糸掴み位置または巻取開始位置に、正確に停止するように、パルスモータ131に与えるパルス数を制御する。
【0060】
把持部材135は、保持トング112に保持された糸を掴むものであって、ブラケット135C、上下一対の把持部135A,135B、ソレノイド137および復帰バネ(図示せず)を含む。送出アーム133の短尺部の遊端にブラケット135Cが固定され、このブラケット135Cの平面部に下側の把持部135Bが固定される。下側の把持部135Bに対向して上側の把持部135Aが配置され、把持部135Aはソレノイド137のプランジャの先端に固定される。そして、上側の把持部135Aとソレノイド137との間に、上側の把持部135Aが下側の把持部135Bから離間する方向(上方向)に復帰付勢するための復帰バネが介装される。
【0061】
パルスモータ131が矢符130Bから見て時計方向に回転して把持部材135が糸掴み位置に位置したときに、ソレノイド137に励磁電流が供給され、プランジャが復帰バネのバネ力に抗して縮退し、一対の把持部材135A,135B間に糸が挟まれて把持される。糸が把持されると、保持トング112による糸保持状態が解除される。そして、パルスモータ131が矢符130Bから見て反時計方向に回転して把持部材135が巻取開始位置に位置したときに、ソレノイド137への励磁電流の供給が停止され、復帰バネのバネ力によってプランジャが伸張し、把持部材135は糸をリリースする。加えて、切断保持装置105によって、切断保持装置105とクランプ装置260との間における糸の始端位置が決定される。
【0062】
巻取装置150の正面図を図4に示す。図4では、巻取装置150を支持する支持ブラケット151を省略して示す。巻取装置150は、上下軸線まわりに回転してその外周に糸を巻き掛ける。巻取装置150は、図4では省略する(図5で示している)サーボモータ178、スプライン軸153、上側回転体155、下側回転体158、揺動片162、固定片164、空気圧単動シリンダ168、上側動力伝達手段170および下側動力伝達手段175を含む。
【0063】
支持ブラケット151にサーボモータ178が支持され、このサーボモータ178の回転動力がタイミングベルト(図示せず)を介してスプライン軸153に伝達され、スプライン軸153が回転する。また、図2も合わせて参照すると、支持ブラケット151に、第2センサブラケット314を介して回転検出センサ310が配設され、スプライン軸153の所定位置に被検出部材312が固定される。回転検出センサ310は、スプライン軸153が1回転する度に被検出部材312を検出して検出出力を制御装置300に送出する。制御装置300は、入力された検出出力の数をカウントして、スプライン軸153の回転数つまり巻取装置150の回転数をカウントする。
【0064】
上側回転体155にスプライン軸153が上下に摺動可能に挿通され、上側回転体155はスプライン軸153の回転とともに回転する。下側回転体158は、スプライン軸153の下端部に固設されてスプライン軸153の回転とともに回転するものであって、スプライン軸153の軸線を中心として放射状に延びる6本のアーム158Aを有する。
【0065】
下側回転体158は、アーム158Aと同数の6本の揺動片162を有する。各揺動片162は、揺動片162の下端が揺動片162の上端を中心として揺動可能に各アーム158Aの外端に支持される。任意の1本のアーム158Aの外端に、固定片164が揺動片162よりも外側位置において固設される。固定片164に対応した1本の揺動片162と固定片164は、空気圧単動シリンダ168が最も縮退しているとき、固定片164とこれに対応して設けられた揺動片162とが互いに当接し、この当接状態において、固定片164と揺動片162とで送出装置130により送り出された糸先端を掴む。
【0066】
空気圧単動シリンダ168は、第6電磁バルブ380を介してコンプレッサ430に接続され、第6電磁バルブ380を開閉することによって、ピストンロッドが上下に伸縮される。上側動力伝達手段170は、空気圧単動シリンダ168からの上下動力が伝達されて上下に直動し、上側回転体155に動力を伝達する。上側動力伝達手段170は、空気圧単動シリンダ168のピストンロッドが固定される受板170Aと、受板170Aに接続されたシャフト170Bと、シャフト170Bから上側回転体155に空気圧単動シリンダ168の動力を伝達するための動力伝達部170Cとを含む。空気圧単動シリンダ168が伸張して、上側動力伝達手段170が上側回転体155に当接し、上側回転体155が上方に引き上げられる。空気圧単動シリンダ168が縮退すると、上側動力伝達手段170と上側回転体155との当接が解除され、上側回転体155は自重により下降する。なお、実施例では単動シリンダを用いるが、複動シリンダを使用してもよい。
【0067】
下側動力伝達手段175は6本のリンク175Aにより構成され、各リンク175Aの上端が上側回転体155の下端に揺動可能に支持され、各リンク175Aの下端が揺動片162の下端に同じく揺動可能に支持される。上部回転体155が上側に引き上げられることにより、揺動片162の下端がリンク175を介して上側に引き上げられ、6本の揺動片162によって画定される円外周が縮径する。図4は、この状態を示している。上側回転体155が下側にスライド移動することにより、揺動片162の下端部が自重によって下降し、6本の揺動片162によって画定される円外周が拡径する。図2はこの状態を示している。
【0068】
送出アーム133の遊端の把持部材135が巻取装置150の巻取開始位置に位置すると、巻取装置150の空気圧単動シリンダ168が縮退し、上側回転体158が下降し、6本の揺動片162によって画定される円外周が拡径する。このとき、送出アーム133の遊端の把持部材135に把持された糸の先端が、揺動片162と固定片164とによって掴まれる。そして、把持部材135は糸先端の把持を解除し、サーボモータ178が回転してスプライン軸153が回転し下側回転体158が回転する。下側回転体158の回転により、6本の揺動片162によって画定される外周に糸が巻き掛けられる。下側回転体158が所定回数を回転して所定長の糸が巻き取られると、サーボモータ178が回転数を落とし低速で回転する。この低速回転において、前記した切断鋏110が糸を切断する。切断後、さらにモータを所定数回転させて、下側回転体158に糸を完全に巻き取る。こうして、巻取装置150の回転数をコントロールするだけで、所定長の糸を正確に巻き取ることができる。そして、空気圧単動シリンダ168が伸張し、上側回転体155が引き上げられて、6本の揺動片162によって画定される円外周が縮径し、巻き掛けられた糸がその巻回状態を保持したまま、自重によって、下側の案内装置180に排出される。このように、自重によって糸が落下する構成が採用されているから、糸を排出するための特別な動力を必要としない。
【0069】
案内装置180は、台錘ガイド181と旋回流発生装置190とを備える。台錘ガイド181は、巻取装置150から排出された巻回状態の糸を、より小さい塊に纏めながら電子天秤70へ案内する。旋回流発生装置190は、台錘ガイド181内の巻回状態の糸をさらに小さい塊状にして電子天秤70まで運ぶ。
【0070】
台錘ガイド181は、上下両端が略正方形に開口した中空の台錘形状を有し、上側開口の面積、下側開口の面積、巻取装置および電子天秤の関係は以下の通りとされる。台錘ガイド181の上側開口は、下側開口面積よりも大きくかつ巻取装置150の巻取外周により定められる領域を完全に含むように形成される。したがって、排出された巻回状態の糸は、その全長が案内装置180の上側開口に確実に入る。下側開口面積は、電子天秤70の上皿内に完全に含まれるように形成される。したがって、下側開口から糸が排出されるとき、巻回状態の糸は確実に電子天秤70の上皿に載せられる。台錘ガイド181は、台錘ガイド181の内面上の糸が滑らかに案内されるために、その内面に研磨加工が施されている。また、内面と糸との摩擦を抑えることを目的として、ステンレスのような摩擦係数の低い材質で台錘ガイド181を製造することが好ましい。
【0071】
旋回流発生装置190は4個の噴出ノズル191から構成される。各噴出ノズル191は、台錘ガイド181の上側開口の縁であって、この縁の各辺において各辺の中心点からそれぞれ等距離を偏心させた位置に配設される。そして、案内装置180の下側開口に向けて斜め下向きの圧縮空気を噴出する。各噴出ノズル191は、図示しないマニホールドおよび第5電磁バルブ370を介して、コンプレッサ430に接続され、第5電磁バルブ370が開かれると、全ての噴出ノズル191から圧縮空気が下側開口に向けて斜め下向きに噴出される。以上により、旋回流発生装置190は、案内装置180内で下向きの旋回流を発生させる。
【0072】
糸重量測定装置1は、第1サクションノズル200と、第2サクションノズル210と、テンション付与装置としてのゲートテンサ220と、トラバース装置240と、排出ノズル250とを、さらに含む。
【0073】
第1サクションノズル200は、重量測定の終了後に切断された糸の糸端を吸引する。第1サクションノズル200は、特定装置40の糸収容部43が移動する経路の近傍にあって、第1サクションノズル200の吸引口が糸収容部43の移動する経路に向いて上段の載置台31に配設されている。第1サクションノズル200は、第1電磁バルブ330を介してコンプレッサ430に接続されており、第1電磁バルブ330が開かれると、空気の流路が連通されて糸の吸引が行なわれる。こうして、切断後のクリール側の糸端が吸引されることにより、特定装置40の近傍に測定終了後の糸が残ることがなく、糸検出センサ45によって次に測定される糸の検出および糸収容部43の上下動作の邪魔になることがない。
【0074】
一方、第2サクションノズル210は、クリール20に保持された全ての糸の測定が終了したときに、クランプ装置260により保持されていた糸端を一括して吸引する。第2サクションノズル210は、クランプ装置260の下方の近傍に配設されている。第2サクションノズル210は、第2電磁バルブ340を介して空気圧縮機430に接続されており、第2電磁バルブ340が開かれると、空気の流路が連通されて糸の吸引が行なわれる。第2サクションノズル210により、クランプ装置260に保持された糸束の吸引が行なわれると、クランプ装置260はそのクランプを解除し、吸引された糸束は第2サクションノズル210の下方に設けられたゴミ箱に棄てられる。
【0075】
テンション付与装置としてのゲートテンサ220は切断保持装置105による糸の切断後にクリール20側の糸の切断端にテンションを付与する装置である。ゲートテンサ220は、ロータリーソレノイド221と、ロータリーソレノイド221により揺動される揺動アーム222と、揺動アーム222の先端に接続され揺動アームとともに揺動する上側櫛状体224と、支持ブラケット228に固設されている下側櫛状体226と、これらの部材を支持する支持ブラケット228とを含む。上側櫛状体224と下側櫛状体226とは噛み合うように配列され、その噛合位置が巻取装置150と切断保持装置105の間にある糸道上に設定される。糸が切断保持装置105により切断された後、ゲートテンサ220が噛み合って巻取装置150側にある糸の切断端を押さえてテンションを与える。なお、ゲートテンサは2つの櫛状体の組み合わせに限られず、糸端にテンションを与えることができれば、2枚のプレートの組み合わせであっても構わない。
【0076】
トラバース装置240は、ゲートテンサ220と巻取装置150との間に配設され、巻取装置150により糸が巻き取られる際の巻き太りを防ぐために、上下に揺動して糸を綾振りする。トラバース装置240は、交流モータ241を有する。制御装置300は、交流モータ241の回転を制御してトラバースアーム245を上下に揺動させている。なお、トラバースアーム245の先端は糸ガイドとして機能し、研磨加工あるいは樹脂コートされて糸の摩擦が低減されることが好ましい。
【0077】
排出ノズル250は、電子天秤70上の重量測定が完了した糸を圧縮空気により排出する。電子天秤70を囲むハウジング251の右側面から内向きに排出ノズル250が突設され、この排出ノズルは第4電磁バルブ360を介してコンプレッサ430に接続される。電子天秤70による糸重量の測定が完了すると、制御装置300は第4電磁バルブ360を開き、コンプレッサ430と排出ノズル250との空気の流路が形成される。すると、排出ノズル250は電子天秤70の上皿に圧縮空気を噴出し、上皿の糸を吹き飛ばす。吹き飛ばされた糸は、電子天秤70の隣に設けられたゴミ箱253に棄てられる。
【0078】
糸重量測定装置1の測定動作について、図7〜図9のフローチャートを参照して説明する。なお、以下に説明する糸重量測定装置1の各装置の動作制御は、制御部300によって実行される。測定作業者は、クリール20に測定すべき糸が巻かれた複数のパッケージをセットする。そして、作業者は各パッケージから糸端を引き出し、引き出した糸をドックテールガイド47およびこれに対応したスリットガイド49に通し、クリール20にセットした全てのパッケージの糸端をクランプ装置260にクランプさせる。以上が、作業者の手作業により行なわれる作業であり、作業者が糸重量測定装置1のスタートボタンを押すことにより、制御装置300が以下に説明する制御を作業者の手を煩わせることなく実行する。
【0079】
糸重量測定装置1の動作制御が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1において、稼動装置である特定装置40、巻取装置150および送出装置130の位置がリセットされ、それぞれ予め定めた原点位置に復帰する。具体的には、特定装置40の移動体42が最上段の原点位置に移動する。巻取装置150のサーボモータ178が回転して固定片164が巻取開始位置に移動し、そしてサーボモータ178の回転停止後に空気圧単動シリンダ168が縮退する。送出装置130のパルスモータが回転して、糸掴み位置と巻取開始位置の中間の原点位置に送出アーム133が移動する。そして、ステップS2に移行して、空気圧単動シリンダ168のピストンロッドが上昇し、巻取装置150の外周が縮径する。
【0080】
続いて、ステップS3に進み、原点位置に復帰した特定装置40の移動体42が1ステップ下降する。この1ステップにおける所定距離は、糸収容部43に上下方向に並設された隣り合うスリットガイド47間のピッチ間隔に相当する。つまり、移動体42が1ステップ下降して、スリットガイド47のスリット中心とドッグテールガイド49のフック中心とを結ぶ線分が糸検出センサ45の検出部45Aに位置するまで、移動体42が下降する。
【0081】
ステップS3の処理が完了すると、ステップS4に移行する。ステップS4において、制御装置300は、糸検出センサ45の検出出力から検出部45Aに糸が存在するか否か判断する。ステップS4において検出部45Aに糸が存在していると判断すると、処理はステップS5に移行する。ステップS5では、切断保持装置105を制御して、スリットガイド47およびドックテールガイド49の間で、切断鋏110が糸を切断し、保持トング112がクリール20側の糸端を保持する。ステップS4において、糸検出センサ45の検出部45Aに糸が存在しないと判定すると(ステップS4においてNO)、処理はステップS23に移行する(図9参照)。ステップS23に進み、制御装置300は、糸検出センサ45によって、糸収容部43における12個の収容部が確認されたか否かを判断する。ステップS23で、12個全ての収容部を確認してなければ(ステップ23においてNOの場合)、処理はステップS3に戻って上記した処理を繰り返す。糸検出センサ45によって全ての収容部について、糸の有無を確認すると(ステップ23においてYES)、後述するステップS24に移行する。
【0082】
ステップS6において、制御装置300はパルスモータ131のパルス数を制御して、一対のスリットガイド49とドッグテールガイド47の間の糸掴み位置に、送出装置130の把持部材135を停止させる。糸掴み位置において、把持部材135は、切断保持装置105に保持された糸を掴む。そして、処理はステップS7に移行する。ステップS7において、切断保持装置105による糸保持が解除される。続いて、ステップS8において、送出装置130が巻取装置150に糸を送り出す。詳しく述べると、把持部材135による糸保持状態のまま、送出装置130が巻取開始位置まで揺動し、こうして固定片164とこれに対応する揺動片162との間に糸が通される。そして、ステップS9に処理が移行し、ステップS9において、空気圧単動シリンダ168が縮退し、巻取装置150の外周が拡径して、固定片164と対応する揺動片とによって糸が掴まれる。
【0083】
次に、処理はステップS10に移行し(図8参照)、送出装置130による糸把持状態が解除される。ステップS11において、巻取装置150は、所定の第1の回転速度で糸を巻き取る第1の巻取モードで回転して糸の巻取動作を開始し、かつトラバース装置240が糸の綾振りを開始する。本実施例において、巻取装置150は、糸を巻き取るために100回転したとき停止するように、設定されている。
【0084】
ステップS12に進み、巻取装置150が第1巻取モードで99回転する。さらに詳細に述べると、回転検出センサ310がスプライン軸153の被検出部材312を検出することによって、スプライン軸153の1回転を把握することができ、回転検出センサ310による被検出部材312の検出出力が制御部300に入力され、制御部300が検出出力の入力回数を累計することで、巻取装置150の回転数が制御される。
【0085】
巻取回転が99回転に達すると、処理はステップS13に移行する。ステップS13において、巻取装置150の回転速度が減速されて、より低速の第2の巻取モードに切り替わり、この第2の巻取モードにおいて最後の1回転させて残りの糸を巻き取る。このため、巻取装置150の駆動源の寿命が、第2の巻取モードが無い場合に比較して長くなる。巻取装置150の巻取モードが第2巻取モードに切り替えられた直後に、切断保持装置105によって巻取糸の切断が行われる。このため、切断保持装置105と巻取装置150との距離を確保でき、切断保持装置105の装置レイアウトの設計自由度が高くなる。そのため、設計者の設計労力の負担を軽減できる。このとき、前記した通り、切断保持装置105は巻取糸の切断と同時にクリール20側の糸端を保持する。巻取糸の切断直後、ゲートテンサ220が切断後の巻取糸の糸端を掴み、テンションを付与する。詳しくは、ロータリーソレノイド221の回転により揺動アーム222が揺動し、揺動アーム222の先端に取り付けられた上側櫛状体224が揺動する。すると、上側櫛状体224が、下方の下側櫛状体226と噛み合い、その結果として糸にテンションが与えられる。こうして、ゲートテンサ220によりテンションが未巻取糸に付与された状態で巻取装置150が低速の第2巻取モードで1回転して糸を完全に巻き取る。
【0086】
続いて、処理はステップS14に移行し、ステップS14において、巻取装置150の巻取外周を縮径して、下方の案内装置180に向けて巻回状態の糸を落下させ排出する。次のステップS15において、巻取装置150により排出された巻回状態の糸は台錘ガイド181の上側開口に入り、そして旋回流発生装置190が動作して4個の噴出ノズル191から圧縮空気を噴出し、案内装置180内の糸をさらに小さい塊にして、電子天秤70上に排出する。各噴出ノズル191の噴出タイミングは本実施形態では同時であるが、それぞれ異なっても構わない。
【0087】
案内装置180により案内された糸が電子天秤70の上皿に乗せられると、ステップ16において、電子天秤70により糸の重量測定が開始される。電子天秤70は測定データが安定すると、測定糸の重量データがRS232Cケーブルを経由して評価装置10に送信される。そして、ステップS17において、電子天秤70の測定動作が停止する。続いて、処理はステップS18に移行し、電子天秤70の上皿の測定済の糸が、排出ノズル250によりゴミ箱253に棄てられる。ステップS19において、送出装置130が前述した原点位置に揺動復帰する。
【0088】
ステップS20において、制御装置300は、糸重量測定装置1が同一パッケージの糸に対して作業者によりセットされた測定回数を測定したか否かについて判断する。ステップS20において、セットされた測定回数の測定が完了していないと判断すると(ステップS20がNO)、処理はステップS6に戻り、前述したステップS7〜ステップS20の処理を繰り返す。ステップS20において、セットされた測定回数の測定が完了した判断すると(ステップS20においてYES)、処理がステップS21に移行し、第1サクションノズル200が所定時間吸引動作し、この所定時間内に、S22である切断保持装置105による糸保持の解除がなされて、測定済みの糸の糸端が吸引除去される。
【0089】
続いて、処理はステップS23に移行する。ステップS23において、制御装置300は、糸収容部43における12個全ての収容部について糸検出センサ45が糸検出し終えたか否かを判断する。糸検出センサ45により糸の有無を検出すべき収容部が残っている場合(ステップS23においてNO)、処理はステップS3に戻り、前述の処理を繰り返す。ステップS23において、12個全ての収容部を糸検出センサ45が検出したと判断すると(ステップS23においてYES)、処理はステップS24に進む。ステップS24において、第2サクションノズル210が、クランプ装置260に保持されていた切断保持装置105により切断された全ての糸を一定時間吸引する。この一定時間の吸引動作の間にステップS25に移り、クランプ装置260による糸のクランプ状態が解除され、吸引された糸屑が下方のゴミ箱に棄てられる。その後、ステップS26において巻取装置150が拡径し、ステップS27においてリニアスライダ41の移動体42が前述した原点位置に復帰して、糸重量測定装置1による糸重量測定処理が終了する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】糸重量測定装置1および糸番手測定装置2の外観斜視図である。
【図2】重量測定装置本体3を図1の白抜矢示1A方向から見た図である。
【図3】特定装置40の近傍を拡大して示す斜視図である。
【図4】巻取装置150の拡大正面図である。
【図5】糸重量測定装置1の制御構成を示すブロック図である。
【図6】糸重量測定装置1の各装置と空気圧縮機430との接続構成を示す図である。
【図7】糸重量測定装置1の動作処理を示すフローチャートである。
【図8】糸重量測定装置1の動作処理を示すフローチャートである。
【図9】糸重量測定装置1の動作処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
1 糸重量測定装置
2 糸番手測定装置
3 重量測定装置本体
5 フレーム
10 評価装置
20 保持装置
31 上段の載置板
32 中段の載置板
33 下段の載置板
40 特定装置
41 リニアスライダ
43 糸収容部
45 糸検出センサ
70 電子天秤
100 切出装置
101 切断装置
105 切断保持装置
106 空気圧複動シリンダ
110 切断鋏
112 保持トング
130 送出装置
131 パルスモータ
133 送出アーム
135 把持部材
150 巻取装置
151 支持ブラケット
162 揺動片
164 固定片
180 案内装置
181 台錘ガイド
190 旋回流発生装置
191 噴出ノズル
200 第1サクションノズル
210 第2サクションノズル
220 ゲートテンサ
240 トラバース装置
250 排出ノズル
260 クランプ装置
300 制御部
310 回転検出センサ
312 被検出部材
320 アーム検出センサ
330 第1電磁バルブ
340 第2電磁バルブ
350 第3電磁バルブ
360 第4電磁バルブ
370 第5電磁バルブ
380 第6電磁バルブ
390 第7電磁バルブ
430 空気圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長の糸重量を測定する糸重量測定装置であって、糸を同時に2つ以上保持可能な保持装置と、前記保持装置に保持された糸から重量を測定すべき1つの糸を特定する特定装置と、該特定された糸を巻き取るとともに、巻取長さが前記所定長に達すると切断し、巻き取った糸を巻回状態で排出する切出装置と、前記所定長の巻回状態の糸重量を測定し、その測定結果を示すデータを出力する重量計と、を含み、前記保持装置に保持された糸の数に対応する回数を前記特定装置、切出装置、および重量計がこの順で繰り返して動作をし、特定された1つの糸に対して前記切出装置および重量計がこの順で複数回動作可能である、ことを特徴とする糸重量測定装置。
【請求項2】
前記切出装置は、前記特定装置により特定された糸を切断する切断装置と、前記特定装置により特定された糸を巻き取り巻回状態で排出する巻取装置と、該巻回状態の糸を前記重量計に案内する案内装置とを含み、前記巻取装置、案内装置、および重量計が上下方向の下向きにこの順番で設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の糸重量測定装置。
【請求項3】
前記巻取装置は、上下軸線まわりに回転して、前記巻取装置の外周に糸を巻き掛けることにより巻き取る、ことを特徴とする請求項2に記載の糸重量測定装置。
【請求項4】
前記案内装置は、上下両端に開口した台錘形の中空部を有し、上側の開口面積が下側の開口面積よりも大きく形成されている、ことを特徴とする請求項2または3に記載の糸重量測定装置。
【請求項5】
前記案内装置は、前記中空部において上下下向きの旋回流を発生させる旋回流発生装置を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の糸重量測定装置。
【請求項6】
前記重量計は、測定される巻回状態の糸が載せられる皿を有する電子天秤であって、前記巻取装置の鉛直軸線上の視点において、前記案内装置の下側開口領域が前記電子天秤の皿上に完全に含まれる、ことを特徴とする請求項4または5に記載の糸重量測定装置。
【請求項7】
前記巻取装置の鉛直軸線上の視点において、前記巻取装置の外周により定められる領域が、前記案内装置の上側開口領域内に完全に含まれる、ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載の糸重量測定装置。
【請求項8】
前記切断装置は、前記特定装置により特定された糸を切断しこの切断された糸の保持装置側の切断端を保持する切断保持装置と、前記保持状態にある糸の切断端を掴んで前記巻取装置へ送る送出装置とを含み、この送出装置が前記保持状態にある糸の切断端を掴むと同時に、前記切断保持装置の糸の切断端への保持状態が解除される、ことを特徴とする請求項2に記載の糸重量測定装置。
【請求項9】
前記保持装置に保持されている各糸端をクランプするクランプ装置をさらに含み、前記切断保持装置が前記クランプ装置と前記保持装置との間において糸を切断し保持するものであって、糸の切断により前記巻取装置が巻き取るための糸の始端が決定される、ことを特徴とする請求項8に記載の糸重量測定装置。
【請求項10】
前記巻取装置は、所定の第1の回転速度で糸を巻き取る第1巻取モード、または前記第1の回転速度よりも低速の第2の回転速度で糸を巻き取る第2巻取モードで動作されるものであって、前記切断保持装置は、前記巻取装置が第1の巻取モードで動作していないときに糸を切断し、切断後の未巻取糸が第2の巻取モードで巻取られる、ことを特徴とする請求項8および9のいずれかに記載の糸重量測定装置。
【請求項11】
前記測定する各糸への2回目以降の切断後に巻取装置側の糸の切断端にテンションを付与するテンション付与装置をさらに含む、ことを特徴とする請求項9または10のいずれかに記載の糸重量測定装置。
【請求項12】
前記保持装置から前記切断保持装置までの糸道上に設けられたサクションノズルをさらに含み、前記サクションノズルは、特定された糸に最後の切断がなされたと同時に前記保持装置側の糸の切断端を吸引することを特徴とする請求項9に記載の糸重量測定装置。
【請求項13】
前記特定装置は、前記保持装置に保持された二つ以上の糸を個別に収容する2つ以上の糸収容部と、前記糸収容部を移動させるスライダと、前記糸収容部の糸の存在を判別する判別装置と、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の糸重量測定装置。
【請求項14】
前記重量計から重量測定後の糸を排出する排出装置をさらに含む、ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の糸重量測定装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1つに記載の前記糸重量測定装置と、前記所定長を示すデータおよび出力された重量データを記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記所定長を示すデータと前記出力された重量データとから前記糸番手を演算して演算結果を前記記憶装置に記憶させる演算装置とを含む、糸番手測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−264789(P2009−264789A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111706(P2008−111706)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】