系統連系インバータ装置
【課題】スイッチング素子のゲート電源をブートストラップ回路によって構成した系統連系インバータ装置において、更なる省スペース化・省コスト化を可能とすること。
【解決手段】インバータ5は、下アームのスイッチング素子(Q2,Q4)の駆動用電源として動作するゲート電源回路11−2と、上アームのスイッチング素子(Q1,Q4)の駆動用電源として動作するゲート電源用コンデンサ(C1,C3)を具備するブートストラップ回路と、を有し、同期動作可能な2組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化(S1,S2)され、ゲートパルス発生回路8は、1回のON/OFF制御によってゲート電源用コンデンサ(C1,C3)の充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子(Q2,Q4)を制御する。
【解決手段】インバータ5は、下アームのスイッチング素子(Q2,Q4)の駆動用電源として動作するゲート電源回路11−2と、上アームのスイッチング素子(Q1,Q4)の駆動用電源として動作するゲート電源用コンデンサ(C1,C3)を具備するブートストラップ回路と、を有し、同期動作可能な2組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化(S1,S2)され、ゲートパルス発生回路8は、1回のON/OFF制御によってゲート電源用コンデンサ(C1,C3)の充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子(Q2,Q4)を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統(以下単に「系統」という)に連系可能な系統連系インバータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブートストラップ方式によってスイッチング素子の駆動電源(ゲート電源)を得るときに、スイッチング素子に熱損失や熱損失による損傷等を生じさせることなく、安定した動作が可能となるインバータ回路が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に示されるインバータ回路によれば、上アームの各スイッチング素子を制御するゲート電源がブートストラップ回路で構成されており、ゲート電源回路の個数を削減しつつ、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の損傷防止を可能としている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−84762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気機器の省スペース化・省コスト化は、昨今のトレンドでもあり、インバータ回路を含むインバータ装置においても、さらなる省スペース化・省コスト化が求められている。
【0006】
例えば、系統連系インバータ装置において、上アームを構成する一のスイッチング素子に印加するゲート信号と、下アームを構成するスイッチング素子であり、当該一のスイッチング素子に同期して動作する他のスイッチング素子に印加するゲート信号の双方を共通化することが考えられる。このような構成にすれば、1つのゲート信号で複数(例えば2つ)のアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化を図ることが可能となる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に代表されるようなブートストラップ方式のインバータ装置において、同期して動作するスイッチング素子に印加するゲート信号を共通化した場合、ゲート電源が充分に充電されていない状態でスイッチング制御することになりスイッチング素子の損傷につながるという問題点がある。このため、従来のインバータ装置では、ゲート信号の共通化による省スペース化・省コスト化の効果を得ることができないという課題が存在していた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、スイッチング素子のゲート電源をブートストラップ回路によって得る構成において、更なる省スペース化・省コスト化を可能とする系統連系インバータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる系統連系インバータ装置は、電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、複数のスイッチング素子を有し、入力された直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータと、前記インバータの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、前記インバータおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、を備え、前記インバータは、前記複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、を有するとともに、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、前記制御部は、前記インバータと前記電力系統とが連系していないときに、1回のON/OFF制御によって前記ゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる系統連系インバータ装置によれば、インバータに具備される複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、が設けられるとともに、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、インバータと電力系統とが連系していないときに、1回のON/OFF制御によってゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子を制御するようにしているので、スイッチング素子のゲート電源をブートストラップ回路によって構成することによる省スペース化・省コスト化の効果に加え、同期して動作するスイッチング素子に印加するゲート信号を共通化することによる省スペース化・省コスト化の効果をも得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる系統連系インバータ装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
<実施の形態1>
(太陽光発電システムの構成)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる系統連系インバータ装置を太陽光発電システムに適用した場合の一例を示す図である。
【0013】
図1において、系統連系インバータ装置2の入力端には、太陽電池モジュール1が接続され、出力端には、例えば50Hzあるいは60Hzの電力を供給する系統3が接続されている。このように構成された太陽光発電システムでは、太陽電池モジュール1によって発電された直流電力は、系統連系インバータ装置2によって交流電力に変換されて系統3に供給される。
【0014】
(系統連系インバータ装置の構成)
つぎに、実施の形態1にかかる系統連系インバータ装置の構成について説明する。図1において、系統連系インバータ装置2は、コンバータ4、インバータ5、制御部6、出力フィルタ回路7、および開閉器8を備えている。
【0015】
コンバータ4は、太陽電池モジュール1の出力電圧(直流電圧)を電圧変換してインバータ5に印加する。インバータ5は、コンバータ4から供給される直流電圧を交流電圧に変換して出力する。
【0016】
出力フィルタ回路7は、インバータ5の出力端に接続され、インバータ5による交流出力を平滑して出力する。開閉器8は、出力フィルタ回路7と系統3との間に挿入され、出力フィルタ回路7を介したインバータ5の出力を系統3に出力するか否かの切り換え動作を実行する。電圧検出器30は、系統連系インバータ装置2の出力端(開閉器8と系統3との接続端)に接続され、系統3の出力電圧を検出する。制御部6は、コンバータ4、インバータ5および開閉器8を制御する。
【0017】
つぎに、系統連系インバータ装置におけるインバータ回路の省スペース化、省コスト化の概念について図2および図3を用いて説明する。ここで、図2は、スイッチング素子に対するゲート信号を共通化したインバータ回路の構成例を示す図であり、図3は、ブートストラップ回路を用いることによりゲート電源回路数を削減したインバータ回路の構成例を示す図である。なお、図2および図3では、インバータ5から系統3までの回路構成を示すとともに、インバータ5のより詳細な構成を示している。
【0018】
図2において、インバータ5は、ダイオードを逆並列に接続した複数個の、自己消弧型の半導体スイッチング素子(例えばIGBT)であるスイッチング素子9−1(Q1)〜9−4(Q4)、スイッチング素子9−1〜9−4にゲートパルスを印加するゲート駆動回路10−1〜10−4、ゲート駆動回路10−1〜10−4にゲート電源を供給するゲート電源回路11−1〜11−3、ならびに直流電力を蓄積する母線コンデンサCx,およびゲート電源用コンデンサC1〜C4を備えている。
【0019】
スイッチング素子9−1,9−2およびスイッチング素子9−3,9−4は、それぞれが直列に接続され、コンバータ4の出力端に繋がるインバータ母線28,29間に接続される。なお、母線コンデンサCxも、インバータ母線28,29間に接続される。また、スイッチング素子9−1,9−2およびスイッチング素子9−3,9−4の各接続点は交流出力端として引き出され、出力フィルタ回路7に接続される。
【0020】
なお、下アームを構成するスイッチング素子9−2,9−4に対するゲート電源(ゲート電源回路11−2:第1のゲート電源)は同電位となるため共通化することが可能である。一方、上アームを構成するスイッチング素子9−1,9−3に対するゲート電源(ゲート電源回路11−1,11−3:第2のゲート電源)は、共通化することができないため、スイッチング素子9−1,9−3毎に個別に設けられている。このため、ゲート電源用コンデンサC1,C3は、それぞれゲート電源回路11−1,11−3の各両端に接続されている。一方、ゲート電源用コンデンサC2,C4は、共通的に設けられたゲート電源回路11−2の両端に接続される。
【0021】
また、制御部6は、ゲートパルス発生回路12を備えている。ゲートパルス発生回路12は、スイッチング素子9−1〜9−4を駆動するゲート駆動回路10−1〜10−4に対するゲート信号(ゲートパルス)を生成する。なお、図2の構成では、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対に付与するゲートパルスを共通化している。すなわち、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)を共通化(S1=S4)するとともに、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)を共通化(S2=S3)している。
【0022】
図2の構成によれば、ゲートパルスを共通化してはいるものの、ゲート電源回路は各スイッチング素子毎に設けるようにしているので(互いに同電位となる下アーム側のゲート電源を除く)、ゲートパルスの共通化による省スペース化・省コスト化の効果は得られても、ゲート電源回路の削減による省スペース化・省コスト化の効果を得ることはできない。
【0023】
これに対し、図3に示す構成では、図2における上アームのゲート電源回路11−1,11−3を、それぞれゲート電源用コンデンサC1、抵抗R1およびダイオードD1、ならびにゲート電源用コンデンサC3、抵抗R3およびダイオードD3によるブートストラップ回路で構成している。なお、図3の構成では、スイッチング素子9−1〜9−4に対するゲートパルス(S1〜S4)の共通化は行っていない。
【0024】
図3において、下アームのスイッチング素子9−2をONすると、同図の太破線で示す経路の電流が流れ、スイッチング素子9−1を駆動するゲート駆動回路10−1に対する電源(以下「スイッチング素子9−1のゲート電源(他のスイッチング素子に対しても同様に表現)」という)としてのゲート電源用コンデンサC1を充電する。
【0025】
一方、IGBTなどのスイッチング素子の性質として、ゲート電源が充分に充電されていない状態でスイッチング素子のゲートを駆動すると、スイッチング素子が故障に至る虞がある。したがって、図2のようにゲート駆動信号を共通化する構成を採用すると、例えばスイッチング素子9−2をONするときに、スイッチング素子9−3も同時にONとなるため、スイッチング素子9−3のゲート電源であるゲート電源用コンデンサC3が充分に充電されていない状態でスイッチング素子9−3のゲートが駆動されることになり、スイッチング素子9−3の故障が懸念される。このため、図3のインバータ回路では、ゲート信号は共通化せず、分離するように構成している。
【0026】
図3の構成によれば、ブートストラップ回路を用いてゲート電源回路を削減してはいるものの、ゲートパルスを共通化することはできていないので、ゲート電源回路の削減による省スペース化・省コスト化の効果は得られても、ゲートパルスの共通化による省スペース化・省コスト化の効果を得ることはできない。
【0027】
図4は、図3に示したゲート電源用コンデンサの充電時における両端電圧の変化を示す図であり、各記号の意味はつぎのとおりである。
Vg:ゲート電源電圧
R:充電回路の抵抗
C:ゲート電源用コンデンサの容量
V(t):ゲート電源用コンデンサの両端電圧
t:コンデンサの充電時間
【0028】
充電経路にあるスイッチング素子がONすると、ゲート電源用コンデンサの両端電圧は、図4に示すような波形となる。また、この波形は、次式を用いて表すことができる。
V(t)=Vg(1−e-(1/CR)t) …(1)
【0029】
なお、ゲート電源用コンデンサC1は、スイッチング素子9−2がONすることによって充電され、ゲート電源用コンデンサC2は、スイッチング素子9−4がONすることによって充電される。
【0030】
図5は、系統3が負の半サイクルのときにスイッチング素子9−1,9−4をONしたときの電流の流れを示す図であり、図6は、系統3が正の半サイクルのときにスイッチング素子9−2,9−3をONしたときの電流の流れを示す図である。なお、図5に示す構成では、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)を共通化(S1=S4)している。また、図6に示す構成では、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)を共通化(S2=S3)している。
【0031】
図5において、インバータ5が停止している状態であり、かつ、系統3が負の半サイクルのとき、系統3に連系したまま上アームのゲート電源用コンデンサC3を充電するためにスイッチング素子9−4をONすると、ゲート信号が共通のためスイッチング素子9−1もONとなる。この場合、図5の太破線で示すように、系統3の上端側→スイッチング素子9−4→母線コンデンサCx→スイッチング素子9−1→系統3の下端側、という経路の電流が流れる(これ以降、簡潔な説明とするため、電流の流れを示す際には、図中の記号を用いて表記する)。
【0032】
また、図6において、インバータ5が停止している状態であり、かつ、系統が正の半サイクルのとき、系統3に連系したまま上アームのゲート電源用コンデンサC1を充電するためにスイッチング素子9−2をONすると、ゲート信号が共通のためスイッチング素子9−3もONとなる。この場合、図6の太破線で示すように、系統3の下端側→Q2Tr→Cx→Q3Tr→系統3の上端側、という経路の電流が流れる。なお、例えば「Q2Tr」の表記は、Q2のトランジスタ側を流れるという意味である。
【0033】
図5および図6に示す電流経路は、インバータ5が停止した状態で、系統3からインバータ5側に向かう電流経路である。例えば、図5において、系統3が負の半サイクルのときに、系統3がインバータ5に供給する電流は、下側の端子から流れ出し、上側の端子に戻るような電流であり、図示の経路とは逆向きの経路となる。なお、系統3の電圧をVkとし、母線コンデンサCxの電圧をVoとすれば、太陽電池モジュールが発電を行っている場合には、Vo>Vkの関係があるので、系統3からスイッチング素子9−3のダイオードを通じて母線コンデンサCxに向かう経路は遮断される。
【0034】
また、図6において、系統3が正の半サイクルのときに、系統3がインバータ5に供給する電流は、上側の端子から流れ出し、下側の端子に戻るような電流であり、この場合にも、図示の経路とは逆向きの経路となる。
【0035】
したがって、インバータ5の停止状態において、ゲート電源用コンデンサC1,C3を充電する際には、上記のような逆向きの電流(以下「逆流電流」という)が流れないように、開閉器8を切り離し、系統連系インバータ装置2が系統3と連系していない状態で充電を行う必要がある。
【0036】
図7は、ブートストラップ回路を構成するゲート電源用コンデンサの両端電圧の変化の一例を示す図である。ここで、スイッチング素子の駆動に必要な最小電圧について説明する。
【0037】
ゲート駆動に必要な電源電圧をVgminとすると、上記(1)式より、
V(t)=Vg(1−e-(1/CR)t)>Vgmin …(2)
という関係式が導かれ、スイッチング素子の確実な駆動に必要な充電を行うための、スイッチング素子のON時間は、
t>−CR*Ln(1−Vgmin/Vg) …(3)
で与えられる。
【0038】
ここで、C=100μF、R=23.5Ω、Vg=15V、Vgmin=7.2Vとすると、(3)式より、
t>1.54msec …(4)
という関係が得られる。
【0039】
すなわち、ゲート電源用コンデンサC1,C3に対し、1回のON/OFFで1.54msec以上の充電を行えば、スイッチング素子9−1,9−3を故障に至らせることなく確実に駆動することが可能となる。
【0040】
図8は、本発明の実施の形態1にかかる系統連系インバータ装置の主要部の構成を示す図であり、図1に示した系統連系インバータ装置2を具現化する構成を示す図である。基本的な構成は、図3に示したものと同等であるが、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)、およびスイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)は、それぞれ共通化(S2=S3)されている。また、ゲート電源用コンデンサC1,C3の充電時には、開閉器8を開放させておく必要がある。
【0041】
ここで、インバータ5の起動時に、ゲート電源用コンデンサC1,C3を通常のスイッチング周波数でパルス的に充電した場合の動作について考える。
【0042】
(1)まず、スイッチング素子9−2がONになると、図8の太破線で示すような充電電流が流れ、ゲート電源用コンデンサC1が充電される。このとき、スイッチング素子9−3は、ゲート電源用コンデンサC3が未充電のため動作しない。
(2)つぎに、スイッチング周波数が切り替わり、スイッチング素子9−4がONになると、ゲート電源用コンデンサC3が充電される。このとき、スイッチング素子9−1は、上記(1)の充電時にゲート電源用コンデンサC1の電圧がスイッチング素子9−1の駆動電圧に達した時点でONとなる。
(3)さらに、スイッチング周波数が切り替わり、スイッチング素子9−2がONになると、ゲート電源用コンデンサC1が充電される。このとき、スイッチング素子9−3は、上記(2)の充電時にゲート電源用コンデンサC3の電圧がスイッチング素子9−3の駆動電圧に達した時点でONとなる。
(4)以降、上記(2)、(3)の動作が繰り返される。
【0043】
上記のような充電動作が繰り返されるとき、つぎの問題点が生ずる。
(a)例えば(2)の状態でゲート電源用コンデンサC1の電圧が充分に充電されていない場合、スイッチング素子9−1が損傷してしまう虞がある。
(b)また、例えば(3)の状態でゲート電源用コンデンサC3の電圧が充分に充電されていない場合、スイッチング素子9−3が損傷してしまう虞がある。
したがって、インバータ5の起動時に、通常のスイッチング周波数でゲート電源用コンデンサC1,C3の充電を行う場合には、ゲートパルスを共通化することはできず、単独で動作する必要がある。
【0044】
一方、本実施の形態では、1回のON/OFF制御によってゲート電源用コンデンサC1,C3の充電電圧が所定値以上となるように、それぞれスイッチング素子9−1,9−3を制御する。すなわち、通常のスイッチング周波数と異なるスイッチング周波数で、ゲート電源用コンデンサC1,C3の充電電圧が、上記(2)式で示されるVgmin以上となるようにスイッチング素子9−1,9−3を制御する。
【0045】
なお、図7の説明のところでも示したように、C=100μF、R=23.5Ω、Vg=15V、Vgmin=7.2Vの場合には、ゲート電源用コンデンサC1,C3に対し、1回のON/OFFで1.54msec以上の充電を行えば、スイッチング素子9−1,9−3を故障に至らせることなく確実に駆動することが可能となる。
【0046】
以上説明したように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0047】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0048】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の故障を確実に防止することが可能となる。
【0049】
<実施の形態2>
図9は、本発明の実施の形態2にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。図8に示す実施の形態1との装置構成に関する相違点は、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成した点にある。例えば、図9に示す構成では、スイッチング素子9−1,9−4のゲート信号の共通化は行っているが、スイッチング素子9−2,9−3のゲート信号の共通化は行っていない。なお、その他については、実施の形態1の構成と同一または同等であり、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
図9において、系統連系インバータ装置が一度停止し、出力フィルタ回路7のコンデンサ(フィルタコンデンサ)に電荷が溜まっている状態で、ゲート電源用コンデンサC1を充電するためにスイッチング素子9−2をONすると、同図の太実線で示すように、フィルタコンデンサの下端側(系統3の下端側)→Q2Tr→Q4D→フィルタコンデンサの上端側(系統3の上端側)、という経路の電流が流れるため、インバータ5が出力過電流を誤検出して停止してしまう虞がある。なお、上記における「Q2Tr」および「Q4D」の表記は、それぞれQ2のトランジスタ側およびQ4のダイオード側を流れるという意味である。
【0051】
そこで、本実施の形態の系統連系インバータ装置では、共通化されていないスイッチング素子9−2を複数回のスイッチング制御でON/OFFし、ゲート電源用コンデンサC1をパルス的に充電するようにする。このとき、出力フィルタ回路7のコンデンサは、スイッチング素子9−2のスイッチング周波数に合わせて、パルス的に電流を出力するが、出力フィルタ回路7にはリアクトル成分があるため、パルス的に流れる電流は平均化される。この作用により、インバータ5の内部に短絡電流が流れることがなくなる。
【0052】
なお、この実施の形態では、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲート信号を共通化する一方で、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲート信号を共通化せず、上記のような制御を行うようにしているが、この構成とは逆に、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲート信号を共通化せずに、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲート信号を共通化するように構成してもよい。この場合には、共通化されていないスイッチング素子9−4を複数回のスイッチング制御でON/OFFし、ゲート電源用コンデンサC3をパルス的に充電するようにすればよい。
【0053】
以上説明したように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0054】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0055】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の故障を確実に防止することが可能となる。
【0056】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、出力フィルタ回路のコンデンサに充電された電荷の放電を待つことなしに、ゲート電源用コンデンサの充電を開始することが可能となる。
【0057】
<実施の形態3>
(太陽光発電システムの構成)
図10は、本発明の実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置を太陽光発電システムに適用した場合の一例を示す図である。
【0058】
図10において、系統連系インバータ装置2Aの入力端には、太陽電池モジュール1が接続され、出力端には、例えば50Hzあるいは60Hzの電力を供給する系統3が接続されている。このように構成された太陽光発電システムでは、太陽電池モジュール1によって発電された直流電力は、系統連系インバータ装置2Aによって交流電力に変換されて系統3に供給される。
【0059】
(系統連系インバータ装置の構成)
つぎに、実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置2Aの構成について説明する。図10において、系統連系インバータ装置2Aは、コンバータ4、インバータユニット20、制御部6、出力フィルタ回路7、開閉器8、および電圧検出器30を備えている。
【0060】
コンバータ4は、太陽電池モジュール1の出力電圧(直流電圧)を電圧変換してインバータユニット20に印加する。インバータユニット20は、交流側端子が直列に接続された複数台の単相インバータを有して成り、コンバータ4から供給される直流電圧を交流電圧に変換する各単相インバータの発生電圧による総和電圧を出力する。なお、インバータユニット20に関する詳細な構成については、後述する。
【0061】
出力フィルタ回路7は、インバータユニット20の出力端に接続され、インバータユニット20による交流出力を平滑して出力する。開閉器8は、出力フィルタ回路7と系統3との間に挿入され、出力フィルタ回路7の出力を系統3に伝達するか否かの切り換え動作を実行する。電圧検出器30は、系統連系インバータ装置2の出力端(開閉器8と系統3との接続端)に接続され、系統3の出力電圧を検出する。制御部6は、電圧検出器30の検出電圧に基づき、コンバータ4、インバータユニット20および開閉器8を制御する。なお、本実施の形態の要旨の中心となる部分は、制御部6が電圧検出器30の出力に基づいて、インバータユニット20を制御するところにあり、その詳細については後述する。
【0062】
つぎに、複数台の単相インバータを有する系統連系インバータ装置2Aのインバータユニット20における省スペース化、省コスト化の概念について図11および図12を用いて説明する。ここで、図11は、スイッチング素子に対するゲート信号を共通化したインバータユニット20の構成例を示す図であり、図12は、ブートストラップ回路を用いることによりゲート電源回路数を削減したインバータユニット20の構成例を示す図である。なお、図11および図12では、インバータユニット20から系統3までの回路構成を示すとともに、インバータユニット20のより詳細な構成を示している。
【0063】
図11において、インバータユニット20を構成する複数の単相インバータ(同図では3台を例示)である単相インバータ20a〜20cは、ダイオードを逆並列に接続した複数個の、自己消弧型の半導体スイッチング素子(例えばIGBT)であるスイッチング素子9−1(Q1)〜9−12(Q12)、スイッチング素子9−1〜9−12にゲートパルスを印加するゲート駆動回路10−1〜10−12、ゲート駆動回路10−1〜10−12にゲート電源を供給するゲート電源回路11−1〜11−3,11−5〜11−7,11−9〜11−11、ならびに直流電力を蓄積する母線コンデンサCa〜Cc,およびゲート電源用コンデンサC1〜C12を備えている。また、制御部6は、ゲートパルス発生回路12を備えている。
【0064】
単相インバータ20aでは、スイッチング素子9−1,9−2、およびスイッチング素子9−3,9−4が、それぞれ直列に接続され、コンバータ4の出力端に繋がるインバータ母線28,29間に接続される。また、母線コンデンサCaも、インバータ母線28,29間に接続される。一方、スイッチング素子9−1,9−2およびスイッチング素子9−3,9−4の各接続点は交流出力端として引き出され、スイッチ回路22に接続されている。なお、単相インバータ20b,20cについても、単相インバータ20aと同様な構成が採られており、ここでの詳細な説明は省略する。
【0065】
スイッチ回路22は、単相インバータ20aの交流側端子間を短絡させる短絡用スイッチであり、ダイオードを逆並列に接続した2個の自己消弧型半導体スイッチング素子(例えばIGBT)が互いに逆極性に直列接続され、単相インバータ20aに並列に接続されるように設けられている。
【0066】
また、スイッチ回路22の一方側の端子であり、単相インバータ20aの交流側端子の一方に接続されている端子は、単相インバータ20bの交流側端子の一方に接続されるとともに、スイッチ回路22の他方側の端子であり、単相インバータ20aの交流側端子の他方に接続されている端子は、単相インバータ20cの交流側端子の一方に接続されている。
【0067】
さらに、単相インバータ20bの交流側端子の他方および単相インバータ20cの交流側端子の他方は、インバータユニット20の出力端を成し、出力フィルタ回路7に接続される。
【0068】
なお、インバータユニット20は、スイッチ回路22の作用により、出力電圧として、非零または零の電圧を出力することができる。
【0069】
ここで、母線コンデンサCa〜Ccの各電圧について言及しておく。単相インバータ20aの直流入力源となる母線コンデンサCaの電圧は、他の単相インバータ20b,20cの各直流入力源となる母線コンデンサCb,Ccの電圧よりも通常大きい。一方、母線コンデンサCbの電圧と、母線コンデンサCcの電圧とについては、何れが大きくてもよいし、両者の電圧が等しくてもよい。つまり、インバータユニット20が動作しているときの母線コンデンサCa〜Ccの各電圧(各インバータにおける母線電圧に等しい)をV1,V2,V3とすると、これらの電圧間には、V1>V2およびV1>V3の関係がある。
【0070】
これらの単相インバータ20a〜20cは、出力として正、負および零の電圧を発生することができ、インバータユニット20は、これらの発生電圧を組み合わせた総和としての電圧を階調制御により出力する。この出力電圧は、例えばリアクトルおよびコンデンサを組み合わせた出力フィルタ回路7によって平滑され、所望の交流電圧が系統3に供給される。
【0071】
つぎに、図11に示すインバータユニット20の構成について着目する。単相インバータ20aにおいて、下アームを構成するスイッチング素子9−2,9−4に対するゲート電源は同電位となるため共通化することが可能である。一方、上アームを構成するスイッチング素子9−1,9−3に対するゲート電源は、共通化することができないため、スイッチング素子9−1,9−3毎に個別に設けられている。このため、ゲート電源用コンデンサC1,C3は、それぞれゲート電源回路11−1,11−3の各両端に接続されている。一方、ゲート電源用コンデンサC2,C4は、共通的に設けられたゲート電源回路11−2の両端に接続される。
【0072】
なお、単相インバータ20b,20cについても同様であり、各単相インバータ毎に、各スイッチング素子駆動する4つのゲート駆動回路と、それらのゲート駆動回路に電源を供給する3つのゲート電源回路とが設けられている。
【0073】
また、ゲートパルス発生回路12は、スイッチング素子9−1〜9−12を駆動するゲート駆動回路10−1〜10−12に対するゲート信号(ゲートパルス)を生成する。なお、図11の構成では、単相インバータ20aにおいて、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)およびスイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)が共通化されている。また、単相インバータ20b,20cでは、スイッチング素子9−5,9−12に対するゲートパルス(S5,S12)、スイッチング素子9−6,9−11に対するゲートパルス(S6,S11)、スイッチング素子9−7,9−10に対するゲートパルス(S7,S10)、およびスイッチング素子9−8,9−9に対するゲートパルス(S8,S9)が共通化されている。
【0074】
図11の構成によれば、ゲートパルスを共通化してはいるものの、ゲート電源回路は各スイッチング素子毎に設けるようにしているので(互いに同電位となる下アーム側のゲート電源を除く)、ゲートパルスの共通化による省スペース化・省コスト化の効果は得られても、ゲート電源回路の削減による省スペース化・省コスト化の効果を得ることはできない。
【0075】
これに対し、図12に示す構成では、単相インバータ20aにおいて、上アームのゲート電源回路11−1,11−3を、それぞれゲート電源用コンデンサC1、抵抗R1およびダイオードD1、ならびにゲート電源用コンデンサC3、抵抗R3およびダイオードD3によるブートストラップ回路で構成している。なお、図3の構成では、スイッチング素子9−1〜9−4に対するゲートパルス(S1〜S4)の共通化は行っていない。
【0076】
また、単相インバータ20bでは、上アームのゲート電源回路11−5,11−7を、それぞれゲート電源用コンデンサC5、抵抗R5およびダイオードD5、ならびにゲート電源用コンデンサC7、抵抗R7およびダイオードD7によるブートストラップ回路で構成している。同様に、単相インバータ20cでは、上アームのゲート電源回路11−9,11−11を、それぞれゲート電源用コンデンサC9、抵抗R9およびダイオードD9、ならびにゲート電源用コンデンサC11、抵抗R11およびダイオードD11によるブートストラップ回路で構成している。なお、図12の構成では、スイッチング素子9−5〜9−12に対するゲートパルス(S5〜S12)の共通化は行っていない。
【0077】
図12において、下アームのスイッチング素子9−2をONすると、同図の太破線で示す経路の電流が流れ、スイッチング素子9−1のゲート電源としてのゲート電源用コンデンサC1を充電する。
【0078】
一方、ゲート電源が充分に充電されていない状態でスイッチング素子のゲートを駆動すると、スイッチング素子が故障に至る虞がある。したがって、図11のようにゲート駆動信号を共通化する構成を採用すると、例えばスイッチング素子9−2をONするときに、スイッチング素子9−3も同時にONとなるため、スイッチング素子9−3のゲート電源であるゲート電源用コンデンサC3が充分に充電されていない状態でスイッチング素子9−3のゲートが駆動されることになり、スイッチング素子9−3の故障が懸念される。このため、図12のインバータ回路では、ゲート信号は共通化せず、分離するように構成している。この点は、単相インバータ20b,20cに関しても同様であり、ゲート信号は共通化されていない。
【0079】
図12の構成によれば、ブートストラップ回路を用いてゲート電源回路を削減してはいるものの、ゲートパルスを共通化することはできていないので、ゲート電源回路の削減による省スペース化・省コスト化の効果は得られても、ゲートパルスの共通化による省スペース化・省コスト化の効果を得ることはできない。
【0080】
図13は、複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、系統が同図のVkに付された矢印の向きを正としたときに、正の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。より詳細に説明すると、図13は、系統3が負の半サイクルのときにスイッチング素子9−1,9−4をONしたときの電流の流れを示す図である。なお、図13に示す構成では、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)を共通化(S1=S4)している。
【0081】
図13において、インバータユニット20が停止している状態であり、かつ、系統が正の半サイクルであり、かつ、系統電圧の絶対値が所定値以下のとき、系統3に連系したまま上アームのゲート電源用コンデンサC3を充電するためにスイッチング素子9−4をONすると(同図の一点鎖線で示す経路にて充電)、ゲート信号が共通のためスイッチング素子9−1もONとなる。この場合、図13の太破線で示すように、系統3の下端側→Q11D→Cc→Q10D→Q4Tr→Ca→Q1Tr→Q7D→Cb→Q6D→系統3の上端側、という経路の電流が流れる。
【0082】
また、図14は、複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、系統が同図のVkに付された矢印の向きを正としたときに、系統が負の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。より詳細に説明すると、図14は、系統3が正の半サイクルのときにスイッチング素子9−2,9−3をONしたときの電流の流れを示す図である。なお、図14に示す構成では、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)を共通化(S2=S3)している。
【0083】
図14において、インバータユニット20が停止している状態であり、かつ、系統が負の半サイクルであり、かつ、系統電圧の絶対値が所定値以下のとき、系統3に連系したまま上アームのゲート電源用コンデンサC1を充電するためにスイッチング素子9−2をONすると(同図の一点鎖線で示す経路にて充電)、ゲート信号が共通のためスイッチング素子9−3もONとなる。この場合、図14の太破線で示すように、系統3の上端側→Q5D→Cb→Q8D→Q2Tr→Ca→Q3Tr→Q9D→Cb→Q12D→系統3の下端側、という経路の電流が流れる。
【0084】
図13および図14に示す電流経路は、インバータが停止した状態で、系統3からインバータ側に出力される電流経路である。
【0085】
例えば、図13において、系統3が正の半サイクルときに、系統3がインバータユニット20に供給する電流は、上側の端子から流れ出し、下側の端子に戻るような電流であり、図示の経路とは異なる。また、系統3の電圧をVkとし、各単相インバータの母線電圧をV1,V2,V3とし、インバータユニット20の出力電圧をVoとするときに、VkとVoとの間に、|Vk|<|Vo|=|V1−(V2+V3)|の関係がある場合には、インバータユニット20の出力電圧の方が大きく、インバータユニット20が停止しているのにも関わらず系統3への出力が生じてしまう。
【0086】
また、図14において、系統3が負の半サイクルときに、系統3がインバータユニット20に供給する電流は、下側の端子から流れ出し、上側の端子に戻るような電流であり、図示の経路とは逆向きの経路となる。このとき、VkとVoとの間に、|Vk|<|Vo|=|V1−(V2+V3)|の関係がある場合には、上記した系統3への出力が生じてします。なお、条件こそ異なるものの、他のゲート電源用コンデンサC5,C7,C9,C11についても同様である。
【0087】
したがって、インバータユニット20の停止状態において、ゲート電源用コンデンサC1,C3,C5,C7,C9,C11を充電する際には、逆流電流が流れないように、開閉器8を切り離し、系統連系インバータ装置2が系統3と連系していない状態で充電を行う必要がある。すなわち、図13および図14に示すような構成では、ゲート電源用コンデンサを充電する毎に開閉器8の開閉制御を行う必要があり、開閉器8の接点寿命が短くなるという課題が生ずる。
【0088】
このように、図13および図14の構成では、ゲート電源回路の削減による省スペース化・省コスト化の効果と、一部のゲートパルスの共通化による省スペース化・省コスト化の効果を得ることはできても、開閉器の設定寿命が短くなるという新たな問題点を生起させてしまう。
【0089】
図15は、本発明の実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置の主要部の構成を示す図であり、図10に示した系統連系インバータ装置2を具現化する構成を示す図である。なお、基本的な構成は、図13または図14に示したものと同様であるが、これらの図との相違点は、出力電圧のモニタ機能として、系統連系インバータ装置2の出力端に電圧検出器30を設け、制御部6が電圧検出器30の検出電圧に基づいて、インバータユニット20を制御するところにある。
【0090】
つぎに、実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置の動作について、図15〜図18の図面を参照して説明する。なお、図16は、系統電圧の波形に対応させたゲート電源用コンデンサの充電可能期間を示す図であり、図17は、インバータユニット内に生ずる複数の電流経路を示す図であり、図18は、充電可能なゲート電源用コンデンサと、系統のサイクル、充電可能期間、および電流経路との間の対応関係をより詳細に示した図である。
【0091】
まず、図15において、同図の構成では、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)、スイッチング素子9−5,9−12に対するゲートパルス(S5,S12)、スイッチング素子9−6,9−11に対するゲートパルス(S6,S11)、スイッチング素子9−7,9−10に対するゲートパルス(S7,S10)、およびスイッチング素子9−8,9−9に対するゲートパルス(S8,S9)が共通化されている。したがって、インバータユニット20では、スイッチング素子9−1,9−4、スイッチング素子9−2,9−3、スイッチング素子9−5,9−12、スイッチング素子9−6,9−11、スイッチング素子9−7,9−10、スイッチング素子9−8,9−9がそれぞれ同期してスイッチングを行うことになる。
【0092】
つぎに、ゲート電源用コンデンサC3を充電する場合を一例として説明する。図16には、ゲート電源用コンデンサC3の充電可能期間として、系統電圧波形の1サイクル中の期間T2が示されているが、ゲート電源用コンデンサC3の充電は、この条件に加え、さらにつぎの条件式を満足するときに行う。
Vk>V1−(V2+V3) …(5)
なお、V1,V2,V3は,予め設定されている電圧であり既知である。
【0093】
例えば、V1=240V、V2=V3=70Vとすると、上記(5)式で示される期間では、Vk>240−(70+70)=100V以上のときである。この条件を満足するときに、スイッチング素子9−1,9−4をONした場合、インバータユニット20から系統3側に向かう出力の流れ(電流経路)は、
「Q11D→Cc(−V3)→Q10D→Q4Tr→Ca(+V1)→Q1Tr→Q7D→Cb(−V2)→Q6D」(図17中の記号Aの電流経路)
となる。
【0094】
上記の電流経路と考えたとき、出力電圧Voは、
Vo=V1−(V2+V3)<Vk …(6)
となり、系統電圧の方が大きくなるので、系統3には出力されない。
【0095】
また、系統3からインバータユニット20側に向かう出力の流れ(電流経路)は、
「Q5D→Cb(−V2)→Q8D→Q1D→Ca(−V1)→Q4D→Q9D→Cc(−V3)→Q12D」(図17中の記号Bの電流経路)
となる。
【0096】
上記の電流経路を考えたとき、出力電圧Voは、
Vo=V1+V2+V3>Vk …(7)
となり、インバータユニット20の出力電圧の方が大きくなるので、インバータユニット20には出力されない。
【0097】
したがって、Vk>V1−(V2+V3)を満足する期間に、スイッチング素子9−1,9−4をONするようにすれば、系統3とインバータユニット20との間に電流がながれることはないので、開閉器8を接続したまま、つまり系統3と連系した状態で、ゲート電源用コンデンサの充電が可能となる。
【0098】
なお、図16〜図18には、ゲート電源用コンデンサC3以外の充電可能期間、電流経路等の関係を示している。例えば、ゲート電源用コンデンサC5の充電期間は、期間T2を除く期間が充電可能期間であり、この充電可能期間において、スイッチング素子9−6,9−7,9−10,9−11(Q6,Q11は共通化され、Q7,Q10は共通化されているので、S6,S7が出力される)をONする。なお、逆流電流が流れないように、つぎの条件式を満足する期間に、当該スイッチング素子を制御すればよい。
Vo=−(V1+V2+V3)<Vk …(8)
Vo=(V2+V3)−V1>Vk …(9)
【0099】
以上説明したように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、系統に連系した状態で、ゲート電源を充電することができるので、開閉器の接点寿命の延伸化が可能となる。
【0100】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0101】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0102】
<実施の形態4>
図19は、実施の形態4にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。図15に示す実施の形態3との相違点は、母線コンデンサCa〜Ccの各電圧をモニタするための電圧検出器32a〜32cを備えるように構成した点にある。なお、その他の構成部については、実施の形態3と同一または同等であり、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0103】
実施の形態3の系統連系インバータ装置では、各単相インバータの母線電圧V1,V2,V3は、既知であるものとして、上記(5)式などの判定を行っていた。一方、仮に、インバータ母線電圧V1が、200V〜240Vの範囲で変動した場合、ゲート電源用コンデンサC3を充電するときの出力電圧Voは、図18の図表にも示されているように、次式で示される値を取り得ることになる。
Vo=V1−(V2+V3) …(10)(図表中の電流経路A)
Vo=V1+V2+V3 …(11)(図表中の電流経路B)
【0104】
V2=V3=70Vのとき、仮に、V1=200〜240Vの範囲で変動したとすると、出力電圧Voは、上記(10),(11)式より、60〜100V<Vo<340〜380V、の範囲で変動することになる。したがって、V1の変動に合わせてスイッチング素子をONするようにすれば、インバータ母線電圧の変動に応じたスイッチング制御が可能となり、逆流現象を生じさせない確実なスイッチング制御が可能となる。
【0105】
なお、上記では、V1の電圧変動について説明したが、V2,V3の電圧変動に対しても効果が得られることは無論である。
【0106】
以上説明したように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、実施の形態3の効果に加え、系統連系インバータ装置と系統との間で、逆流現象を生じさせない確実なスイッチング制御が可能となる。
【0107】
<実施の形態5>
実施の形態5は、複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、上アームを構成するスイッチング素子の故障を確実に防止するための実施の形態を示すものである。なお、実施の形態5の基本的な構成は、図15に示したものと同等である。また、本実施の形態においては、系統3の電圧をモニタする機能は不要である。ただし、ゲート電源用コンデンサの充電(初期充電)時には、開閉器8を開放させておく必要がある。
【0108】
ゲート駆動に必要な電源電圧Vgminについては、実施の形態2と同様である。すなわち、スイッチング素子の確実な駆動に必要な充電を行うための、スイッチング素子のON時間は、実施の形態2のところで示した(3)式で与えられる。
t>−CR*Ln(1−Vgmin/Vg) …(3)(再掲)
【0109】
ここで、C=100μF、R=23.5Ω、Vg=15V、Vgmin=7.2Vとすると、実施の形態2のところで示した、下記関係式が得られる。
t>1.54msec …(4)(再掲)
【0110】
すなわち、インバータユニット20の各単相インバータに具備される各ゲート電源用コンデンサに対し、1回のON/OFFで1.54msec以上の充電を行えば、駆動対象の各スイッチング素子を故障に至らせることなく確実に駆動することができる。
【0111】
上記のように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0112】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0113】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の故障を確実に防止することが可能となる。
【0114】
<実施の形態6>
実施の形態6は、複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、上アームを構成するスイッチング素子の故障を確実に防止するための実施の形態を示すものであるが、実施の形態5との相違点は、系統3と連系した状態で充電制御を行うことができる点にある。なお、実施の形態6の基本的な構成は、図15に示したものと同等である。また、本実施の形態においては、系統3の電圧をモニタする機能は必要である。
【0115】
具体的に、実施の形態6では、図18の図表に示した条件下において、1回のON/OFFで1.54msec以上の充電を行えばよい(C=100μF、R=23.5Ω、Vg=15V、Vgmin=7.2Vの場合)。例えば、ゲート電源用コンデンサC1を充電する際には、系統の負の半サイクルにおいて、Vk<V1−(V2+V3)、かつ、Vk>−(V1+V2+V3)のときに行えばよい。
【0116】
上記のような制御を行えば、上アームを構成するスイッチング素子を故障に至らせることなく確実に駆動することができる。
【0117】
上記のように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、系統に連系した状態で、ゲート電源を充電することができるので、開閉器の接点寿命の延伸化が可能となる。
【0118】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0119】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0120】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の故障を確実に防止することが可能となる。
【0121】
<実施の形態7>
図20は、実施の形態7にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。図19に示す実施の形態6との装置構成に関する相違点は、単相インバータ20aにおいて、スイッチング素子9−1と、スイッチング素子9−4との共通化を行っていない点にある。なお、その他の構成部については、実施の形態6と同一または同等であり、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0122】
図20において、母線電圧V1は、太陽電池モジュールの出力に基づくコンバータ4の出力である。このため、母線コンデンサCaは、一部の例外的な場合(例えば起動時等)を除き、常時充電されている。一方、系統連系インバータ装置が一度停止し、出力フィルタ回路7のコンデンサ(フィルタコンデンサ)に電荷が溜まっており、母線コンデンサCb,Ccが未充電状態のとき、ゲート電源用コンデンサC1を充電するためにスイッチング素子9−2をONすると、同図の太波線で示すように、フィルタコンデンサの上端側(系統3の上端側)→Q5D→Cb→Q8D→Q2Tr→Q4D→Q9D→Cc→Q12D→フィルタコンデンサの下端側(系統3の下端側)、という経路の電流が流れ、母線コンデンサCb,Ccに短絡電流が流れる。このとき、母線コンデンサCb,Ccに通常設けられている短絡電流検出回路が誤動作する虞がある。
【0123】
そこで、本実施の形態の系統連系インバータ装置では、スイッチング素子9−4をONしてゲート電源用コンデンサC3を十分に充電した後に、共通化されているスイッチング素子9−2,9−3を1〜複数回のスイッチング制御で充電するようにする。このとき、出力フィルタ回路7のコンデンサは、スイッチング素子9−2,9−3のスイッチング周波数に合わせて、パルス的に電流を出力するが、出力フィルタ回路7にはリアクトル成分があるため、パルス的に流れる電流は平均化される。この作用により、母線コンデンサCb,Ccに短絡電流が流れることがなくなる。
【0124】
なお、この実施の形態では、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)を共通化する一方で、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)を共通化せず、上記のような制御を行うようにしているが、この構成とは逆に、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)を共通化せずに、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)を共通化するように構成してもよい。この場合には、スイッチング素子9−2をONしてゲート電源用コンデンサC1を十分に充電した後に、共通化されているスイッチング素子9−1,9−4を複数回のスイッチング制御で充電するようにすればよい。
【0125】
また、この実施の形態では、図19に示す実施の形態6の構成に対し、上記制御を適用するようにしているが、図15、図19などに基づく実施の形態3〜5に適用することも可能であることは無論である。
【0126】
以上説明したように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、起動時等において、未充電のゲート電源用コンデンサに対する充電を簡易に行うことが可能となる。
【0127】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0128】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0129】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の故障を確実に防止することが可能となる。
【0130】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの充電時に母線コンデンサに短絡電流が流れるのを防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
以上のように、本発明にかかる系統連系インバータ装置は、開閉器の接点寿命を延ばし、省スペース化・省コスト化を可能とする発明として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】実施の形態1にかかる系統連系インバータ装置を太陽光発電システムに適用した場合の一例を示す図である。
【図2】スイッチング素子に対するゲート信号を共通化したインバータ回路の構成例を示す図である。
【図3】ブートストラップ回路を用いることによりゲート電源回路数を削減したインバータ回路の構成例を示す図である。
【図4】図3に示したゲート電源用コンデンサの充電時における両端電圧の変化を示す図である。
【図5】系統が負の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。
【図6】系統が正の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。
【図7】ブートストラップ回路を構成するゲート電源用コンデンサの両端電圧の変化の一例を示す図である。
【図8】実施の形態1にかかる系統連系インバータ装置の主要部の構成を示す図である。
【図9】実施の形態2にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。
【図10】実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置を太陽光発電システムに適用した場合の一例を示す図である。
【図11】スイッチング素子に対するゲート信号を共通化したインバータユニットの構成例を示す図である。
【図12】ブートストラップ回路を用いることによりゲート電源回路数を削減したインバータユニットの構成例を示す図である。
【図13】複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、系統が正の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。
【図14】複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、系統が負の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。
【図15】実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置の主要部の構成を示す図である。
【図16】系統電圧の波形に対応させたゲート電源用コンデンサの充電可能期間を示す図である。
【図17】インバータユニット内に生ずる複数の電流経路を示す図である。
【図18】充電可能なゲート電源用コンデンサと、系統のサイクル、充電可能期間、および電流経路との間の対応関係をより詳細に示した図である。
【図19】実施の形態4にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。
【図20】実施の形態7にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0133】
1 太陽電池モジュール
2,2A 系統連系インバータ装置
3 系統
4 コンバータ
5 インバータ
6 制御部
7 開閉器
7 出力フィルタ回路
8 開閉器
9−1〜9−12 スイッチング素子
10−1〜10−12 ゲート駆動回路
11−1〜11−3,11−5〜11−7,11−9〜11−11 ゲート電源回路
12 ゲートパルス発生回路
20 インバータユニット
20a,20b,20c 単相インバータ
22 スイッチ回路
28,29 インバータ母線
30 電圧検出器
32a,32b,32c 電圧検出器
C1〜C12 ゲート電源用コンデンサ
Ca,Cb,Cc,Cx 母線コンデンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統(以下単に「系統」という)に連系可能な系統連系インバータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブートストラップ方式によってスイッチング素子の駆動電源(ゲート電源)を得るときに、スイッチング素子に熱損失や熱損失による損傷等を生じさせることなく、安定した動作が可能となるインバータ回路が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に示されるインバータ回路によれば、上アームの各スイッチング素子を制御するゲート電源がブートストラップ回路で構成されており、ゲート電源回路の個数を削減しつつ、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の損傷防止を可能としている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−84762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気機器の省スペース化・省コスト化は、昨今のトレンドでもあり、インバータ回路を含むインバータ装置においても、さらなる省スペース化・省コスト化が求められている。
【0006】
例えば、系統連系インバータ装置において、上アームを構成する一のスイッチング素子に印加するゲート信号と、下アームを構成するスイッチング素子であり、当該一のスイッチング素子に同期して動作する他のスイッチング素子に印加するゲート信号の双方を共通化することが考えられる。このような構成にすれば、1つのゲート信号で複数(例えば2つ)のアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化を図ることが可能となる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に代表されるようなブートストラップ方式のインバータ装置において、同期して動作するスイッチング素子に印加するゲート信号を共通化した場合、ゲート電源が充分に充電されていない状態でスイッチング制御することになりスイッチング素子の損傷につながるという問題点がある。このため、従来のインバータ装置では、ゲート信号の共通化による省スペース化・省コスト化の効果を得ることができないという課題が存在していた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、スイッチング素子のゲート電源をブートストラップ回路によって得る構成において、更なる省スペース化・省コスト化を可能とする系統連系インバータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる系統連系インバータ装置は、電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、複数のスイッチング素子を有し、入力された直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータと、前記インバータの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、前記インバータおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、を備え、前記インバータは、前記複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、を有するとともに、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、前記制御部は、前記インバータと前記電力系統とが連系していないときに、1回のON/OFF制御によって前記ゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる系統連系インバータ装置によれば、インバータに具備される複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、が設けられるとともに、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、インバータと電力系統とが連系していないときに、1回のON/OFF制御によってゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子を制御するようにしているので、スイッチング素子のゲート電源をブートストラップ回路によって構成することによる省スペース化・省コスト化の効果に加え、同期して動作するスイッチング素子に印加するゲート信号を共通化することによる省スペース化・省コスト化の効果をも得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる系統連系インバータ装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
<実施の形態1>
(太陽光発電システムの構成)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる系統連系インバータ装置を太陽光発電システムに適用した場合の一例を示す図である。
【0013】
図1において、系統連系インバータ装置2の入力端には、太陽電池モジュール1が接続され、出力端には、例えば50Hzあるいは60Hzの電力を供給する系統3が接続されている。このように構成された太陽光発電システムでは、太陽電池モジュール1によって発電された直流電力は、系統連系インバータ装置2によって交流電力に変換されて系統3に供給される。
【0014】
(系統連系インバータ装置の構成)
つぎに、実施の形態1にかかる系統連系インバータ装置の構成について説明する。図1において、系統連系インバータ装置2は、コンバータ4、インバータ5、制御部6、出力フィルタ回路7、および開閉器8を備えている。
【0015】
コンバータ4は、太陽電池モジュール1の出力電圧(直流電圧)を電圧変換してインバータ5に印加する。インバータ5は、コンバータ4から供給される直流電圧を交流電圧に変換して出力する。
【0016】
出力フィルタ回路7は、インバータ5の出力端に接続され、インバータ5による交流出力を平滑して出力する。開閉器8は、出力フィルタ回路7と系統3との間に挿入され、出力フィルタ回路7を介したインバータ5の出力を系統3に出力するか否かの切り換え動作を実行する。電圧検出器30は、系統連系インバータ装置2の出力端(開閉器8と系統3との接続端)に接続され、系統3の出力電圧を検出する。制御部6は、コンバータ4、インバータ5および開閉器8を制御する。
【0017】
つぎに、系統連系インバータ装置におけるインバータ回路の省スペース化、省コスト化の概念について図2および図3を用いて説明する。ここで、図2は、スイッチング素子に対するゲート信号を共通化したインバータ回路の構成例を示す図であり、図3は、ブートストラップ回路を用いることによりゲート電源回路数を削減したインバータ回路の構成例を示す図である。なお、図2および図3では、インバータ5から系統3までの回路構成を示すとともに、インバータ5のより詳細な構成を示している。
【0018】
図2において、インバータ5は、ダイオードを逆並列に接続した複数個の、自己消弧型の半導体スイッチング素子(例えばIGBT)であるスイッチング素子9−1(Q1)〜9−4(Q4)、スイッチング素子9−1〜9−4にゲートパルスを印加するゲート駆動回路10−1〜10−4、ゲート駆動回路10−1〜10−4にゲート電源を供給するゲート電源回路11−1〜11−3、ならびに直流電力を蓄積する母線コンデンサCx,およびゲート電源用コンデンサC1〜C4を備えている。
【0019】
スイッチング素子9−1,9−2およびスイッチング素子9−3,9−4は、それぞれが直列に接続され、コンバータ4の出力端に繋がるインバータ母線28,29間に接続される。なお、母線コンデンサCxも、インバータ母線28,29間に接続される。また、スイッチング素子9−1,9−2およびスイッチング素子9−3,9−4の各接続点は交流出力端として引き出され、出力フィルタ回路7に接続される。
【0020】
なお、下アームを構成するスイッチング素子9−2,9−4に対するゲート電源(ゲート電源回路11−2:第1のゲート電源)は同電位となるため共通化することが可能である。一方、上アームを構成するスイッチング素子9−1,9−3に対するゲート電源(ゲート電源回路11−1,11−3:第2のゲート電源)は、共通化することができないため、スイッチング素子9−1,9−3毎に個別に設けられている。このため、ゲート電源用コンデンサC1,C3は、それぞれゲート電源回路11−1,11−3の各両端に接続されている。一方、ゲート電源用コンデンサC2,C4は、共通的に設けられたゲート電源回路11−2の両端に接続される。
【0021】
また、制御部6は、ゲートパルス発生回路12を備えている。ゲートパルス発生回路12は、スイッチング素子9−1〜9−4を駆動するゲート駆動回路10−1〜10−4に対するゲート信号(ゲートパルス)を生成する。なお、図2の構成では、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対に付与するゲートパルスを共通化している。すなわち、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)を共通化(S1=S4)するとともに、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)を共通化(S2=S3)している。
【0022】
図2の構成によれば、ゲートパルスを共通化してはいるものの、ゲート電源回路は各スイッチング素子毎に設けるようにしているので(互いに同電位となる下アーム側のゲート電源を除く)、ゲートパルスの共通化による省スペース化・省コスト化の効果は得られても、ゲート電源回路の削減による省スペース化・省コスト化の効果を得ることはできない。
【0023】
これに対し、図3に示す構成では、図2における上アームのゲート電源回路11−1,11−3を、それぞれゲート電源用コンデンサC1、抵抗R1およびダイオードD1、ならびにゲート電源用コンデンサC3、抵抗R3およびダイオードD3によるブートストラップ回路で構成している。なお、図3の構成では、スイッチング素子9−1〜9−4に対するゲートパルス(S1〜S4)の共通化は行っていない。
【0024】
図3において、下アームのスイッチング素子9−2をONすると、同図の太破線で示す経路の電流が流れ、スイッチング素子9−1を駆動するゲート駆動回路10−1に対する電源(以下「スイッチング素子9−1のゲート電源(他のスイッチング素子に対しても同様に表現)」という)としてのゲート電源用コンデンサC1を充電する。
【0025】
一方、IGBTなどのスイッチング素子の性質として、ゲート電源が充分に充電されていない状態でスイッチング素子のゲートを駆動すると、スイッチング素子が故障に至る虞がある。したがって、図2のようにゲート駆動信号を共通化する構成を採用すると、例えばスイッチング素子9−2をONするときに、スイッチング素子9−3も同時にONとなるため、スイッチング素子9−3のゲート電源であるゲート電源用コンデンサC3が充分に充電されていない状態でスイッチング素子9−3のゲートが駆動されることになり、スイッチング素子9−3の故障が懸念される。このため、図3のインバータ回路では、ゲート信号は共通化せず、分離するように構成している。
【0026】
図3の構成によれば、ブートストラップ回路を用いてゲート電源回路を削減してはいるものの、ゲートパルスを共通化することはできていないので、ゲート電源回路の削減による省スペース化・省コスト化の効果は得られても、ゲートパルスの共通化による省スペース化・省コスト化の効果を得ることはできない。
【0027】
図4は、図3に示したゲート電源用コンデンサの充電時における両端電圧の変化を示す図であり、各記号の意味はつぎのとおりである。
Vg:ゲート電源電圧
R:充電回路の抵抗
C:ゲート電源用コンデンサの容量
V(t):ゲート電源用コンデンサの両端電圧
t:コンデンサの充電時間
【0028】
充電経路にあるスイッチング素子がONすると、ゲート電源用コンデンサの両端電圧は、図4に示すような波形となる。また、この波形は、次式を用いて表すことができる。
V(t)=Vg(1−e-(1/CR)t) …(1)
【0029】
なお、ゲート電源用コンデンサC1は、スイッチング素子9−2がONすることによって充電され、ゲート電源用コンデンサC2は、スイッチング素子9−4がONすることによって充電される。
【0030】
図5は、系統3が負の半サイクルのときにスイッチング素子9−1,9−4をONしたときの電流の流れを示す図であり、図6は、系統3が正の半サイクルのときにスイッチング素子9−2,9−3をONしたときの電流の流れを示す図である。なお、図5に示す構成では、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)を共通化(S1=S4)している。また、図6に示す構成では、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)を共通化(S2=S3)している。
【0031】
図5において、インバータ5が停止している状態であり、かつ、系統3が負の半サイクルのとき、系統3に連系したまま上アームのゲート電源用コンデンサC3を充電するためにスイッチング素子9−4をONすると、ゲート信号が共通のためスイッチング素子9−1もONとなる。この場合、図5の太破線で示すように、系統3の上端側→スイッチング素子9−4→母線コンデンサCx→スイッチング素子9−1→系統3の下端側、という経路の電流が流れる(これ以降、簡潔な説明とするため、電流の流れを示す際には、図中の記号を用いて表記する)。
【0032】
また、図6において、インバータ5が停止している状態であり、かつ、系統が正の半サイクルのとき、系統3に連系したまま上アームのゲート電源用コンデンサC1を充電するためにスイッチング素子9−2をONすると、ゲート信号が共通のためスイッチング素子9−3もONとなる。この場合、図6の太破線で示すように、系統3の下端側→Q2Tr→Cx→Q3Tr→系統3の上端側、という経路の電流が流れる。なお、例えば「Q2Tr」の表記は、Q2のトランジスタ側を流れるという意味である。
【0033】
図5および図6に示す電流経路は、インバータ5が停止した状態で、系統3からインバータ5側に向かう電流経路である。例えば、図5において、系統3が負の半サイクルのときに、系統3がインバータ5に供給する電流は、下側の端子から流れ出し、上側の端子に戻るような電流であり、図示の経路とは逆向きの経路となる。なお、系統3の電圧をVkとし、母線コンデンサCxの電圧をVoとすれば、太陽電池モジュールが発電を行っている場合には、Vo>Vkの関係があるので、系統3からスイッチング素子9−3のダイオードを通じて母線コンデンサCxに向かう経路は遮断される。
【0034】
また、図6において、系統3が正の半サイクルのときに、系統3がインバータ5に供給する電流は、上側の端子から流れ出し、下側の端子に戻るような電流であり、この場合にも、図示の経路とは逆向きの経路となる。
【0035】
したがって、インバータ5の停止状態において、ゲート電源用コンデンサC1,C3を充電する際には、上記のような逆向きの電流(以下「逆流電流」という)が流れないように、開閉器8を切り離し、系統連系インバータ装置2が系統3と連系していない状態で充電を行う必要がある。
【0036】
図7は、ブートストラップ回路を構成するゲート電源用コンデンサの両端電圧の変化の一例を示す図である。ここで、スイッチング素子の駆動に必要な最小電圧について説明する。
【0037】
ゲート駆動に必要な電源電圧をVgminとすると、上記(1)式より、
V(t)=Vg(1−e-(1/CR)t)>Vgmin …(2)
という関係式が導かれ、スイッチング素子の確実な駆動に必要な充電を行うための、スイッチング素子のON時間は、
t>−CR*Ln(1−Vgmin/Vg) …(3)
で与えられる。
【0038】
ここで、C=100μF、R=23.5Ω、Vg=15V、Vgmin=7.2Vとすると、(3)式より、
t>1.54msec …(4)
という関係が得られる。
【0039】
すなわち、ゲート電源用コンデンサC1,C3に対し、1回のON/OFFで1.54msec以上の充電を行えば、スイッチング素子9−1,9−3を故障に至らせることなく確実に駆動することが可能となる。
【0040】
図8は、本発明の実施の形態1にかかる系統連系インバータ装置の主要部の構成を示す図であり、図1に示した系統連系インバータ装置2を具現化する構成を示す図である。基本的な構成は、図3に示したものと同等であるが、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)、およびスイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)は、それぞれ共通化(S2=S3)されている。また、ゲート電源用コンデンサC1,C3の充電時には、開閉器8を開放させておく必要がある。
【0041】
ここで、インバータ5の起動時に、ゲート電源用コンデンサC1,C3を通常のスイッチング周波数でパルス的に充電した場合の動作について考える。
【0042】
(1)まず、スイッチング素子9−2がONになると、図8の太破線で示すような充電電流が流れ、ゲート電源用コンデンサC1が充電される。このとき、スイッチング素子9−3は、ゲート電源用コンデンサC3が未充電のため動作しない。
(2)つぎに、スイッチング周波数が切り替わり、スイッチング素子9−4がONになると、ゲート電源用コンデンサC3が充電される。このとき、スイッチング素子9−1は、上記(1)の充電時にゲート電源用コンデンサC1の電圧がスイッチング素子9−1の駆動電圧に達した時点でONとなる。
(3)さらに、スイッチング周波数が切り替わり、スイッチング素子9−2がONになると、ゲート電源用コンデンサC1が充電される。このとき、スイッチング素子9−3は、上記(2)の充電時にゲート電源用コンデンサC3の電圧がスイッチング素子9−3の駆動電圧に達した時点でONとなる。
(4)以降、上記(2)、(3)の動作が繰り返される。
【0043】
上記のような充電動作が繰り返されるとき、つぎの問題点が生ずる。
(a)例えば(2)の状態でゲート電源用コンデンサC1の電圧が充分に充電されていない場合、スイッチング素子9−1が損傷してしまう虞がある。
(b)また、例えば(3)の状態でゲート電源用コンデンサC3の電圧が充分に充電されていない場合、スイッチング素子9−3が損傷してしまう虞がある。
したがって、インバータ5の起動時に、通常のスイッチング周波数でゲート電源用コンデンサC1,C3の充電を行う場合には、ゲートパルスを共通化することはできず、単独で動作する必要がある。
【0044】
一方、本実施の形態では、1回のON/OFF制御によってゲート電源用コンデンサC1,C3の充電電圧が所定値以上となるように、それぞれスイッチング素子9−1,9−3を制御する。すなわち、通常のスイッチング周波数と異なるスイッチング周波数で、ゲート電源用コンデンサC1,C3の充電電圧が、上記(2)式で示されるVgmin以上となるようにスイッチング素子9−1,9−3を制御する。
【0045】
なお、図7の説明のところでも示したように、C=100μF、R=23.5Ω、Vg=15V、Vgmin=7.2Vの場合には、ゲート電源用コンデンサC1,C3に対し、1回のON/OFFで1.54msec以上の充電を行えば、スイッチング素子9−1,9−3を故障に至らせることなく確実に駆動することが可能となる。
【0046】
以上説明したように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0047】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0048】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の故障を確実に防止することが可能となる。
【0049】
<実施の形態2>
図9は、本発明の実施の形態2にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。図8に示す実施の形態1との装置構成に関する相違点は、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成した点にある。例えば、図9に示す構成では、スイッチング素子9−1,9−4のゲート信号の共通化は行っているが、スイッチング素子9−2,9−3のゲート信号の共通化は行っていない。なお、その他については、実施の形態1の構成と同一または同等であり、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
図9において、系統連系インバータ装置が一度停止し、出力フィルタ回路7のコンデンサ(フィルタコンデンサ)に電荷が溜まっている状態で、ゲート電源用コンデンサC1を充電するためにスイッチング素子9−2をONすると、同図の太実線で示すように、フィルタコンデンサの下端側(系統3の下端側)→Q2Tr→Q4D→フィルタコンデンサの上端側(系統3の上端側)、という経路の電流が流れるため、インバータ5が出力過電流を誤検出して停止してしまう虞がある。なお、上記における「Q2Tr」および「Q4D」の表記は、それぞれQ2のトランジスタ側およびQ4のダイオード側を流れるという意味である。
【0051】
そこで、本実施の形態の系統連系インバータ装置では、共通化されていないスイッチング素子9−2を複数回のスイッチング制御でON/OFFし、ゲート電源用コンデンサC1をパルス的に充電するようにする。このとき、出力フィルタ回路7のコンデンサは、スイッチング素子9−2のスイッチング周波数に合わせて、パルス的に電流を出力するが、出力フィルタ回路7にはリアクトル成分があるため、パルス的に流れる電流は平均化される。この作用により、インバータ5の内部に短絡電流が流れることがなくなる。
【0052】
なお、この実施の形態では、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲート信号を共通化する一方で、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲート信号を共通化せず、上記のような制御を行うようにしているが、この構成とは逆に、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲート信号を共通化せずに、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲート信号を共通化するように構成してもよい。この場合には、共通化されていないスイッチング素子9−4を複数回のスイッチング制御でON/OFFし、ゲート電源用コンデンサC3をパルス的に充電するようにすればよい。
【0053】
以上説明したように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0054】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0055】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の故障を確実に防止することが可能となる。
【0056】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、出力フィルタ回路のコンデンサに充電された電荷の放電を待つことなしに、ゲート電源用コンデンサの充電を開始することが可能となる。
【0057】
<実施の形態3>
(太陽光発電システムの構成)
図10は、本発明の実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置を太陽光発電システムに適用した場合の一例を示す図である。
【0058】
図10において、系統連系インバータ装置2Aの入力端には、太陽電池モジュール1が接続され、出力端には、例えば50Hzあるいは60Hzの電力を供給する系統3が接続されている。このように構成された太陽光発電システムでは、太陽電池モジュール1によって発電された直流電力は、系統連系インバータ装置2Aによって交流電力に変換されて系統3に供給される。
【0059】
(系統連系インバータ装置の構成)
つぎに、実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置2Aの構成について説明する。図10において、系統連系インバータ装置2Aは、コンバータ4、インバータユニット20、制御部6、出力フィルタ回路7、開閉器8、および電圧検出器30を備えている。
【0060】
コンバータ4は、太陽電池モジュール1の出力電圧(直流電圧)を電圧変換してインバータユニット20に印加する。インバータユニット20は、交流側端子が直列に接続された複数台の単相インバータを有して成り、コンバータ4から供給される直流電圧を交流電圧に変換する各単相インバータの発生電圧による総和電圧を出力する。なお、インバータユニット20に関する詳細な構成については、後述する。
【0061】
出力フィルタ回路7は、インバータユニット20の出力端に接続され、インバータユニット20による交流出力を平滑して出力する。開閉器8は、出力フィルタ回路7と系統3との間に挿入され、出力フィルタ回路7の出力を系統3に伝達するか否かの切り換え動作を実行する。電圧検出器30は、系統連系インバータ装置2の出力端(開閉器8と系統3との接続端)に接続され、系統3の出力電圧を検出する。制御部6は、電圧検出器30の検出電圧に基づき、コンバータ4、インバータユニット20および開閉器8を制御する。なお、本実施の形態の要旨の中心となる部分は、制御部6が電圧検出器30の出力に基づいて、インバータユニット20を制御するところにあり、その詳細については後述する。
【0062】
つぎに、複数台の単相インバータを有する系統連系インバータ装置2Aのインバータユニット20における省スペース化、省コスト化の概念について図11および図12を用いて説明する。ここで、図11は、スイッチング素子に対するゲート信号を共通化したインバータユニット20の構成例を示す図であり、図12は、ブートストラップ回路を用いることによりゲート電源回路数を削減したインバータユニット20の構成例を示す図である。なお、図11および図12では、インバータユニット20から系統3までの回路構成を示すとともに、インバータユニット20のより詳細な構成を示している。
【0063】
図11において、インバータユニット20を構成する複数の単相インバータ(同図では3台を例示)である単相インバータ20a〜20cは、ダイオードを逆並列に接続した複数個の、自己消弧型の半導体スイッチング素子(例えばIGBT)であるスイッチング素子9−1(Q1)〜9−12(Q12)、スイッチング素子9−1〜9−12にゲートパルスを印加するゲート駆動回路10−1〜10−12、ゲート駆動回路10−1〜10−12にゲート電源を供給するゲート電源回路11−1〜11−3,11−5〜11−7,11−9〜11−11、ならびに直流電力を蓄積する母線コンデンサCa〜Cc,およびゲート電源用コンデンサC1〜C12を備えている。また、制御部6は、ゲートパルス発生回路12を備えている。
【0064】
単相インバータ20aでは、スイッチング素子9−1,9−2、およびスイッチング素子9−3,9−4が、それぞれ直列に接続され、コンバータ4の出力端に繋がるインバータ母線28,29間に接続される。また、母線コンデンサCaも、インバータ母線28,29間に接続される。一方、スイッチング素子9−1,9−2およびスイッチング素子9−3,9−4の各接続点は交流出力端として引き出され、スイッチ回路22に接続されている。なお、単相インバータ20b,20cについても、単相インバータ20aと同様な構成が採られており、ここでの詳細な説明は省略する。
【0065】
スイッチ回路22は、単相インバータ20aの交流側端子間を短絡させる短絡用スイッチであり、ダイオードを逆並列に接続した2個の自己消弧型半導体スイッチング素子(例えばIGBT)が互いに逆極性に直列接続され、単相インバータ20aに並列に接続されるように設けられている。
【0066】
また、スイッチ回路22の一方側の端子であり、単相インバータ20aの交流側端子の一方に接続されている端子は、単相インバータ20bの交流側端子の一方に接続されるとともに、スイッチ回路22の他方側の端子であり、単相インバータ20aの交流側端子の他方に接続されている端子は、単相インバータ20cの交流側端子の一方に接続されている。
【0067】
さらに、単相インバータ20bの交流側端子の他方および単相インバータ20cの交流側端子の他方は、インバータユニット20の出力端を成し、出力フィルタ回路7に接続される。
【0068】
なお、インバータユニット20は、スイッチ回路22の作用により、出力電圧として、非零または零の電圧を出力することができる。
【0069】
ここで、母線コンデンサCa〜Ccの各電圧について言及しておく。単相インバータ20aの直流入力源となる母線コンデンサCaの電圧は、他の単相インバータ20b,20cの各直流入力源となる母線コンデンサCb,Ccの電圧よりも通常大きい。一方、母線コンデンサCbの電圧と、母線コンデンサCcの電圧とについては、何れが大きくてもよいし、両者の電圧が等しくてもよい。つまり、インバータユニット20が動作しているときの母線コンデンサCa〜Ccの各電圧(各インバータにおける母線電圧に等しい)をV1,V2,V3とすると、これらの電圧間には、V1>V2およびV1>V3の関係がある。
【0070】
これらの単相インバータ20a〜20cは、出力として正、負および零の電圧を発生することができ、インバータユニット20は、これらの発生電圧を組み合わせた総和としての電圧を階調制御により出力する。この出力電圧は、例えばリアクトルおよびコンデンサを組み合わせた出力フィルタ回路7によって平滑され、所望の交流電圧が系統3に供給される。
【0071】
つぎに、図11に示すインバータユニット20の構成について着目する。単相インバータ20aにおいて、下アームを構成するスイッチング素子9−2,9−4に対するゲート電源は同電位となるため共通化することが可能である。一方、上アームを構成するスイッチング素子9−1,9−3に対するゲート電源は、共通化することができないため、スイッチング素子9−1,9−3毎に個別に設けられている。このため、ゲート電源用コンデンサC1,C3は、それぞれゲート電源回路11−1,11−3の各両端に接続されている。一方、ゲート電源用コンデンサC2,C4は、共通的に設けられたゲート電源回路11−2の両端に接続される。
【0072】
なお、単相インバータ20b,20cについても同様であり、各単相インバータ毎に、各スイッチング素子駆動する4つのゲート駆動回路と、それらのゲート駆動回路に電源を供給する3つのゲート電源回路とが設けられている。
【0073】
また、ゲートパルス発生回路12は、スイッチング素子9−1〜9−12を駆動するゲート駆動回路10−1〜10−12に対するゲート信号(ゲートパルス)を生成する。なお、図11の構成では、単相インバータ20aにおいて、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)およびスイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)が共通化されている。また、単相インバータ20b,20cでは、スイッチング素子9−5,9−12に対するゲートパルス(S5,S12)、スイッチング素子9−6,9−11に対するゲートパルス(S6,S11)、スイッチング素子9−7,9−10に対するゲートパルス(S7,S10)、およびスイッチング素子9−8,9−9に対するゲートパルス(S8,S9)が共通化されている。
【0074】
図11の構成によれば、ゲートパルスを共通化してはいるものの、ゲート電源回路は各スイッチング素子毎に設けるようにしているので(互いに同電位となる下アーム側のゲート電源を除く)、ゲートパルスの共通化による省スペース化・省コスト化の効果は得られても、ゲート電源回路の削減による省スペース化・省コスト化の効果を得ることはできない。
【0075】
これに対し、図12に示す構成では、単相インバータ20aにおいて、上アームのゲート電源回路11−1,11−3を、それぞれゲート電源用コンデンサC1、抵抗R1およびダイオードD1、ならびにゲート電源用コンデンサC3、抵抗R3およびダイオードD3によるブートストラップ回路で構成している。なお、図3の構成では、スイッチング素子9−1〜9−4に対するゲートパルス(S1〜S4)の共通化は行っていない。
【0076】
また、単相インバータ20bでは、上アームのゲート電源回路11−5,11−7を、それぞれゲート電源用コンデンサC5、抵抗R5およびダイオードD5、ならびにゲート電源用コンデンサC7、抵抗R7およびダイオードD7によるブートストラップ回路で構成している。同様に、単相インバータ20cでは、上アームのゲート電源回路11−9,11−11を、それぞれゲート電源用コンデンサC9、抵抗R9およびダイオードD9、ならびにゲート電源用コンデンサC11、抵抗R11およびダイオードD11によるブートストラップ回路で構成している。なお、図12の構成では、スイッチング素子9−5〜9−12に対するゲートパルス(S5〜S12)の共通化は行っていない。
【0077】
図12において、下アームのスイッチング素子9−2をONすると、同図の太破線で示す経路の電流が流れ、スイッチング素子9−1のゲート電源としてのゲート電源用コンデンサC1を充電する。
【0078】
一方、ゲート電源が充分に充電されていない状態でスイッチング素子のゲートを駆動すると、スイッチング素子が故障に至る虞がある。したがって、図11のようにゲート駆動信号を共通化する構成を採用すると、例えばスイッチング素子9−2をONするときに、スイッチング素子9−3も同時にONとなるため、スイッチング素子9−3のゲート電源であるゲート電源用コンデンサC3が充分に充電されていない状態でスイッチング素子9−3のゲートが駆動されることになり、スイッチング素子9−3の故障が懸念される。このため、図12のインバータ回路では、ゲート信号は共通化せず、分離するように構成している。この点は、単相インバータ20b,20cに関しても同様であり、ゲート信号は共通化されていない。
【0079】
図12の構成によれば、ブートストラップ回路を用いてゲート電源回路を削減してはいるものの、ゲートパルスを共通化することはできていないので、ゲート電源回路の削減による省スペース化・省コスト化の効果は得られても、ゲートパルスの共通化による省スペース化・省コスト化の効果を得ることはできない。
【0080】
図13は、複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、系統が同図のVkに付された矢印の向きを正としたときに、正の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。より詳細に説明すると、図13は、系統3が負の半サイクルのときにスイッチング素子9−1,9−4をONしたときの電流の流れを示す図である。なお、図13に示す構成では、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)を共通化(S1=S4)している。
【0081】
図13において、インバータユニット20が停止している状態であり、かつ、系統が正の半サイクルであり、かつ、系統電圧の絶対値が所定値以下のとき、系統3に連系したまま上アームのゲート電源用コンデンサC3を充電するためにスイッチング素子9−4をONすると(同図の一点鎖線で示す経路にて充電)、ゲート信号が共通のためスイッチング素子9−1もONとなる。この場合、図13の太破線で示すように、系統3の下端側→Q11D→Cc→Q10D→Q4Tr→Ca→Q1Tr→Q7D→Cb→Q6D→系統3の上端側、という経路の電流が流れる。
【0082】
また、図14は、複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、系統が同図のVkに付された矢印の向きを正としたときに、系統が負の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。より詳細に説明すると、図14は、系統3が正の半サイクルのときにスイッチング素子9−2,9−3をONしたときの電流の流れを示す図である。なお、図14に示す構成では、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)を共通化(S2=S3)している。
【0083】
図14において、インバータユニット20が停止している状態であり、かつ、系統が負の半サイクルであり、かつ、系統電圧の絶対値が所定値以下のとき、系統3に連系したまま上アームのゲート電源用コンデンサC1を充電するためにスイッチング素子9−2をONすると(同図の一点鎖線で示す経路にて充電)、ゲート信号が共通のためスイッチング素子9−3もONとなる。この場合、図14の太破線で示すように、系統3の上端側→Q5D→Cb→Q8D→Q2Tr→Ca→Q3Tr→Q9D→Cb→Q12D→系統3の下端側、という経路の電流が流れる。
【0084】
図13および図14に示す電流経路は、インバータが停止した状態で、系統3からインバータ側に出力される電流経路である。
【0085】
例えば、図13において、系統3が正の半サイクルときに、系統3がインバータユニット20に供給する電流は、上側の端子から流れ出し、下側の端子に戻るような電流であり、図示の経路とは異なる。また、系統3の電圧をVkとし、各単相インバータの母線電圧をV1,V2,V3とし、インバータユニット20の出力電圧をVoとするときに、VkとVoとの間に、|Vk|<|Vo|=|V1−(V2+V3)|の関係がある場合には、インバータユニット20の出力電圧の方が大きく、インバータユニット20が停止しているのにも関わらず系統3への出力が生じてしまう。
【0086】
また、図14において、系統3が負の半サイクルときに、系統3がインバータユニット20に供給する電流は、下側の端子から流れ出し、上側の端子に戻るような電流であり、図示の経路とは逆向きの経路となる。このとき、VkとVoとの間に、|Vk|<|Vo|=|V1−(V2+V3)|の関係がある場合には、上記した系統3への出力が生じてします。なお、条件こそ異なるものの、他のゲート電源用コンデンサC5,C7,C9,C11についても同様である。
【0087】
したがって、インバータユニット20の停止状態において、ゲート電源用コンデンサC1,C3,C5,C7,C9,C11を充電する際には、逆流電流が流れないように、開閉器8を切り離し、系統連系インバータ装置2が系統3と連系していない状態で充電を行う必要がある。すなわち、図13および図14に示すような構成では、ゲート電源用コンデンサを充電する毎に開閉器8の開閉制御を行う必要があり、開閉器8の接点寿命が短くなるという課題が生ずる。
【0088】
このように、図13および図14の構成では、ゲート電源回路の削減による省スペース化・省コスト化の効果と、一部のゲートパルスの共通化による省スペース化・省コスト化の効果を得ることはできても、開閉器の設定寿命が短くなるという新たな問題点を生起させてしまう。
【0089】
図15は、本発明の実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置の主要部の構成を示す図であり、図10に示した系統連系インバータ装置2を具現化する構成を示す図である。なお、基本的な構成は、図13または図14に示したものと同様であるが、これらの図との相違点は、出力電圧のモニタ機能として、系統連系インバータ装置2の出力端に電圧検出器30を設け、制御部6が電圧検出器30の検出電圧に基づいて、インバータユニット20を制御するところにある。
【0090】
つぎに、実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置の動作について、図15〜図18の図面を参照して説明する。なお、図16は、系統電圧の波形に対応させたゲート電源用コンデンサの充電可能期間を示す図であり、図17は、インバータユニット内に生ずる複数の電流経路を示す図であり、図18は、充電可能なゲート電源用コンデンサと、系統のサイクル、充電可能期間、および電流経路との間の対応関係をより詳細に示した図である。
【0091】
まず、図15において、同図の構成では、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)、スイッチング素子9−5,9−12に対するゲートパルス(S5,S12)、スイッチング素子9−6,9−11に対するゲートパルス(S6,S11)、スイッチング素子9−7,9−10に対するゲートパルス(S7,S10)、およびスイッチング素子9−8,9−9に対するゲートパルス(S8,S9)が共通化されている。したがって、インバータユニット20では、スイッチング素子9−1,9−4、スイッチング素子9−2,9−3、スイッチング素子9−5,9−12、スイッチング素子9−6,9−11、スイッチング素子9−7,9−10、スイッチング素子9−8,9−9がそれぞれ同期してスイッチングを行うことになる。
【0092】
つぎに、ゲート電源用コンデンサC3を充電する場合を一例として説明する。図16には、ゲート電源用コンデンサC3の充電可能期間として、系統電圧波形の1サイクル中の期間T2が示されているが、ゲート電源用コンデンサC3の充電は、この条件に加え、さらにつぎの条件式を満足するときに行う。
Vk>V1−(V2+V3) …(5)
なお、V1,V2,V3は,予め設定されている電圧であり既知である。
【0093】
例えば、V1=240V、V2=V3=70Vとすると、上記(5)式で示される期間では、Vk>240−(70+70)=100V以上のときである。この条件を満足するときに、スイッチング素子9−1,9−4をONした場合、インバータユニット20から系統3側に向かう出力の流れ(電流経路)は、
「Q11D→Cc(−V3)→Q10D→Q4Tr→Ca(+V1)→Q1Tr→Q7D→Cb(−V2)→Q6D」(図17中の記号Aの電流経路)
となる。
【0094】
上記の電流経路と考えたとき、出力電圧Voは、
Vo=V1−(V2+V3)<Vk …(6)
となり、系統電圧の方が大きくなるので、系統3には出力されない。
【0095】
また、系統3からインバータユニット20側に向かう出力の流れ(電流経路)は、
「Q5D→Cb(−V2)→Q8D→Q1D→Ca(−V1)→Q4D→Q9D→Cc(−V3)→Q12D」(図17中の記号Bの電流経路)
となる。
【0096】
上記の電流経路を考えたとき、出力電圧Voは、
Vo=V1+V2+V3>Vk …(7)
となり、インバータユニット20の出力電圧の方が大きくなるので、インバータユニット20には出力されない。
【0097】
したがって、Vk>V1−(V2+V3)を満足する期間に、スイッチング素子9−1,9−4をONするようにすれば、系統3とインバータユニット20との間に電流がながれることはないので、開閉器8を接続したまま、つまり系統3と連系した状態で、ゲート電源用コンデンサの充電が可能となる。
【0098】
なお、図16〜図18には、ゲート電源用コンデンサC3以外の充電可能期間、電流経路等の関係を示している。例えば、ゲート電源用コンデンサC5の充電期間は、期間T2を除く期間が充電可能期間であり、この充電可能期間において、スイッチング素子9−6,9−7,9−10,9−11(Q6,Q11は共通化され、Q7,Q10は共通化されているので、S6,S7が出力される)をONする。なお、逆流電流が流れないように、つぎの条件式を満足する期間に、当該スイッチング素子を制御すればよい。
Vo=−(V1+V2+V3)<Vk …(8)
Vo=(V2+V3)−V1>Vk …(9)
【0099】
以上説明したように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、系統に連系した状態で、ゲート電源を充電することができるので、開閉器の接点寿命の延伸化が可能となる。
【0100】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0101】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0102】
<実施の形態4>
図19は、実施の形態4にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。図15に示す実施の形態3との相違点は、母線コンデンサCa〜Ccの各電圧をモニタするための電圧検出器32a〜32cを備えるように構成した点にある。なお、その他の構成部については、実施の形態3と同一または同等であり、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0103】
実施の形態3の系統連系インバータ装置では、各単相インバータの母線電圧V1,V2,V3は、既知であるものとして、上記(5)式などの判定を行っていた。一方、仮に、インバータ母線電圧V1が、200V〜240Vの範囲で変動した場合、ゲート電源用コンデンサC3を充電するときの出力電圧Voは、図18の図表にも示されているように、次式で示される値を取り得ることになる。
Vo=V1−(V2+V3) …(10)(図表中の電流経路A)
Vo=V1+V2+V3 …(11)(図表中の電流経路B)
【0104】
V2=V3=70Vのとき、仮に、V1=200〜240Vの範囲で変動したとすると、出力電圧Voは、上記(10),(11)式より、60〜100V<Vo<340〜380V、の範囲で変動することになる。したがって、V1の変動に合わせてスイッチング素子をONするようにすれば、インバータ母線電圧の変動に応じたスイッチング制御が可能となり、逆流現象を生じさせない確実なスイッチング制御が可能となる。
【0105】
なお、上記では、V1の電圧変動について説明したが、V2,V3の電圧変動に対しても効果が得られることは無論である。
【0106】
以上説明したように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、実施の形態3の効果に加え、系統連系インバータ装置と系統との間で、逆流現象を生じさせない確実なスイッチング制御が可能となる。
【0107】
<実施の形態5>
実施の形態5は、複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、上アームを構成するスイッチング素子の故障を確実に防止するための実施の形態を示すものである。なお、実施の形態5の基本的な構成は、図15に示したものと同等である。また、本実施の形態においては、系統3の電圧をモニタする機能は不要である。ただし、ゲート電源用コンデンサの充電(初期充電)時には、開閉器8を開放させておく必要がある。
【0108】
ゲート駆動に必要な電源電圧Vgminについては、実施の形態2と同様である。すなわち、スイッチング素子の確実な駆動に必要な充電を行うための、スイッチング素子のON時間は、実施の形態2のところで示した(3)式で与えられる。
t>−CR*Ln(1−Vgmin/Vg) …(3)(再掲)
【0109】
ここで、C=100μF、R=23.5Ω、Vg=15V、Vgmin=7.2Vとすると、実施の形態2のところで示した、下記関係式が得られる。
t>1.54msec …(4)(再掲)
【0110】
すなわち、インバータユニット20の各単相インバータに具備される各ゲート電源用コンデンサに対し、1回のON/OFFで1.54msec以上の充電を行えば、駆動対象の各スイッチング素子を故障に至らせることなく確実に駆動することができる。
【0111】
上記のように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0112】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0113】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の故障を確実に防止することが可能となる。
【0114】
<実施の形態6>
実施の形態6は、複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、上アームを構成するスイッチング素子の故障を確実に防止するための実施の形態を示すものであるが、実施の形態5との相違点は、系統3と連系した状態で充電制御を行うことができる点にある。なお、実施の形態6の基本的な構成は、図15に示したものと同等である。また、本実施の形態においては、系統3の電圧をモニタする機能は必要である。
【0115】
具体的に、実施の形態6では、図18の図表に示した条件下において、1回のON/OFFで1.54msec以上の充電を行えばよい(C=100μF、R=23.5Ω、Vg=15V、Vgmin=7.2Vの場合)。例えば、ゲート電源用コンデンサC1を充電する際には、系統の負の半サイクルにおいて、Vk<V1−(V2+V3)、かつ、Vk>−(V1+V2+V3)のときに行えばよい。
【0116】
上記のような制御を行えば、上アームを構成するスイッチング素子を故障に至らせることなく確実に駆動することができる。
【0117】
上記のように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、系統に連系した状態で、ゲート電源を充電することができるので、開閉器の接点寿命の延伸化が可能となる。
【0118】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0119】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0120】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の故障を確実に防止することが可能となる。
【0121】
<実施の形態7>
図20は、実施の形態7にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。図19に示す実施の形態6との装置構成に関する相違点は、単相インバータ20aにおいて、スイッチング素子9−1と、スイッチング素子9−4との共通化を行っていない点にある。なお、その他の構成部については、実施の形態6と同一または同等であり、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0122】
図20において、母線電圧V1は、太陽電池モジュールの出力に基づくコンバータ4の出力である。このため、母線コンデンサCaは、一部の例外的な場合(例えば起動時等)を除き、常時充電されている。一方、系統連系インバータ装置が一度停止し、出力フィルタ回路7のコンデンサ(フィルタコンデンサ)に電荷が溜まっており、母線コンデンサCb,Ccが未充電状態のとき、ゲート電源用コンデンサC1を充電するためにスイッチング素子9−2をONすると、同図の太波線で示すように、フィルタコンデンサの上端側(系統3の上端側)→Q5D→Cb→Q8D→Q2Tr→Q4D→Q9D→Cc→Q12D→フィルタコンデンサの下端側(系統3の下端側)、という経路の電流が流れ、母線コンデンサCb,Ccに短絡電流が流れる。このとき、母線コンデンサCb,Ccに通常設けられている短絡電流検出回路が誤動作する虞がある。
【0123】
そこで、本実施の形態の系統連系インバータ装置では、スイッチング素子9−4をONしてゲート電源用コンデンサC3を十分に充電した後に、共通化されているスイッチング素子9−2,9−3を1〜複数回のスイッチング制御で充電するようにする。このとき、出力フィルタ回路7のコンデンサは、スイッチング素子9−2,9−3のスイッチング周波数に合わせて、パルス的に電流を出力するが、出力フィルタ回路7にはリアクトル成分があるため、パルス的に流れる電流は平均化される。この作用により、母線コンデンサCb,Ccに短絡電流が流れることがなくなる。
【0124】
なお、この実施の形態では、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)を共通化する一方で、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)を共通化せず、上記のような制御を行うようにしているが、この構成とは逆に、スイッチング素子9−2,9−3に対するゲートパルス(S2,S3)を共通化せずに、スイッチング素子9−1,9−4に対するゲートパルス(S1,S4)を共通化するように構成してもよい。この場合には、スイッチング素子9−2をONしてゲート電源用コンデンサC1を十分に充電した後に、共通化されているスイッチング素子9−1,9−4を複数回のスイッチング制御で充電するようにすればよい。
【0125】
また、この実施の形態では、図19に示す実施の形態6の構成に対し、上記制御を適用するようにしているが、図15、図19などに基づく実施の形態3〜5に適用することも可能であることは無論である。
【0126】
以上説明したように、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、起動時等において、未充電のゲート電源用コンデンサに対する充電を簡易に行うことが可能となる。
【0127】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源の数を少なくすることができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0128】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、1つのゲート信号で2つのアームを制御することができるので、省スペース化・省コスト化が可能となる。
【0129】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの未充電に起因するスイッチング素子の故障を確実に防止することが可能となる。
【0130】
また、この実施の形態の系統連系インバータ装置によれば、ゲート電源用コンデンサの充電時に母線コンデンサに短絡電流が流れるのを防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
以上のように、本発明にかかる系統連系インバータ装置は、開閉器の接点寿命を延ばし、省スペース化・省コスト化を可能とする発明として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】実施の形態1にかかる系統連系インバータ装置を太陽光発電システムに適用した場合の一例を示す図である。
【図2】スイッチング素子に対するゲート信号を共通化したインバータ回路の構成例を示す図である。
【図3】ブートストラップ回路を用いることによりゲート電源回路数を削減したインバータ回路の構成例を示す図である。
【図4】図3に示したゲート電源用コンデンサの充電時における両端電圧の変化を示す図である。
【図5】系統が負の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。
【図6】系統が正の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。
【図7】ブートストラップ回路を構成するゲート電源用コンデンサの両端電圧の変化の一例を示す図である。
【図8】実施の形態1にかかる系統連系インバータ装置の主要部の構成を示す図である。
【図9】実施の形態2にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。
【図10】実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置を太陽光発電システムに適用した場合の一例を示す図である。
【図11】スイッチング素子に対するゲート信号を共通化したインバータユニットの構成例を示す図である。
【図12】ブートストラップ回路を用いることによりゲート電源回路数を削減したインバータユニットの構成例を示す図である。
【図13】複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、系統が正の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。
【図14】複数台の単相インバータを直列に接続したインバータユニットにおいて、系統が負の半サイクルのときの逆流現象を説明する図である。
【図15】実施の形態3にかかる系統連系インバータ装置の主要部の構成を示す図である。
【図16】系統電圧の波形に対応させたゲート電源用コンデンサの充電可能期間を示す図である。
【図17】インバータユニット内に生ずる複数の電流経路を示す図である。
【図18】充電可能なゲート電源用コンデンサと、系統のサイクル、充電可能期間、および電流経路との間の対応関係をより詳細に示した図である。
【図19】実施の形態4にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。
【図20】実施の形態7にかかる系統連系インバータ装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0133】
1 太陽電池モジュール
2,2A 系統連系インバータ装置
3 系統
4 コンバータ
5 インバータ
6 制御部
7 開閉器
7 出力フィルタ回路
8 開閉器
9−1〜9−12 スイッチング素子
10−1〜10−12 ゲート駆動回路
11−1〜11−3,11−5〜11−7,11−9〜11−11 ゲート電源回路
12 ゲートパルス発生回路
20 インバータユニット
20a,20b,20c 単相インバータ
22 スイッチ回路
28,29 インバータ母線
30 電圧検出器
32a,32b,32c 電圧検出器
C1〜C12 ゲート電源用コンデンサ
Ca,Cb,Cc,Cx 母線コンデンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、
複数のスイッチング素子を有し、入力された直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータと、
前記インバータの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、
前記インバータおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記インバータは、
前記複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、
前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、
を有するとともに、
同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、
前記制御部は、前記インバータと前記電力系統とが連系していないときに、1回のON/OFF制御によって前記ゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子を制御することを特徴とする系統連系インバータ装置。
【請求項2】
電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、
複数のスイッチング素子を有し、入力された直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータと、
前記インバータの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、
前記インバータおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記インバータは、
前記複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、
前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、
を有するとともに、
同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、
前記制御部は、前記インバータと前記電力系統とが連系していないときに、ゲート信号が共通化されていない下アームのスイッチング素子をONすることによって充電されるゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該下アームのスイッチング素子を複数回ON/OFF制御することを特徴とする系統連系インバータ装置。
【請求項3】
電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、
入力された直流電圧を電圧変換して出力するコンバータと、
前記コンバータから出力された直流電圧を交流電圧に変換して出力する複数の単相インバータを有し、交流側端子が直列に接続された当該複数の単相インバータの各発生電圧による総和電圧を出力するインバータユニットと、
前記インバータユニットの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、
前記インバータユニットおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、
前記電力系統の電圧を検出する第1の電圧検出器と、
を備え、
前記インバータユニットは、
前記各単相インバータを構成する複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、
前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、
を有するとともに、
同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、
前記制御部は、前記インバータユニットと前記電力系統とが連系状態にあり、かつ、前記インバータユニットが停止状態のときに、前記第1の電圧検出器の検出電圧に基づいて、前記インバータユニットと前記電力系統との間で相互に逆流電流が流れないように前記スイッチング素子のON/OFF制御を行って前記ゲート電源用コンデンサを充電することを特徴とする系統連系インバータ装置。
【請求項4】
前記各単相インバータの母線電圧を検出する第2の電圧検出器をさらに備え、
前記制御部は、前記ゲート電源用コンデンサに対する充電を前記第1の電圧検出器および前記第2の電圧検出器の各検出電圧に基づいて実行することを特徴とする請求項3に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項5】
前記制御部は、1回のON/OFF制御によって前記ゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項3または4に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項6】
電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、
入力された直流電圧を電圧変換して出力するコンバータと、
前記コンバータから出力された直流電圧を交流電圧に変換して出力する複数の単相インバータを有し、交流側端子が直列に接続された当該複数の単相インバータの各発生電圧による総和電圧を出力するインバータユニットと、
前記インバータユニットの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、
前記インバータユニットおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記インバータユニットは、
前記各単相インバータを構成する複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、
前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、
を有するとともに、
同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、
前記制御部は、前記インバータユニットと前記電力系統とが連系していないときに、1回のON/OFF制御によって前記ゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子を制御することを特徴とする系統連系インバータ装置。
【請求項7】
電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、
入力された直流電圧を電圧変換して出力するコンバータと、
前記コンバータから出力された直流電圧を交流電圧に変換して出力する複数の単相インバータを有し、交流側端子が直列に接続された当該複数の単相インバータの各発生電圧による総和電圧を出力するインバータユニットと、
前記インバータユニットの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、
前記インバータユニットおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、
前記電力系統の電圧を検出する第1の電圧検出器と、
前記各単相インバータの母線電圧を検出する第2の電圧検出器と、
を備え、
前記インバータユニットは、
前記各単相インバータを構成する複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、
前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、
を有するとともに、
前記インバータユニットを構成する単相インバータのうち、前記コンバータの出力端にインバータ母線が接続される第1の単相インバータにおいては、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成される一方で、
前記インバータユニットを構成する単相インバータのうち、前記第1の単相インバータ以外の単相インバータにおいては、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されており、
前記制御部は、前記第1の単相インバータ以外の単相インバータに未充電のインバータ母線用コンデンサが1以上存在し、かつ、前記第1の単相インバータのゲート電源用コンデンサを充電する場合に、当該充電対象であるゲート電源用コンデンサの充電時に、スイッチング素子を複数回ON/OFF制御することを特徴とする系統連系インバータ装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記インバータと前記電力系統とが連系状態にあり、かつ、前記インバータが停止状態のときに、前記第1の電圧検出器の検出電圧に基づいて、前記インバータと前記電力系統との間で相互に逆流電流が流れないように前記スイッチング素子のON/OFF制御を行って前記ゲート電源用コンデンサを充電することを特徴とする請求項7に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ゲート電源用コンデンサに対する充電を前記第1の電圧検出器および前記第2の電圧検出器の各検出電圧に基づいて実行することを特徴とする請求項7に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項1】
電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、
複数のスイッチング素子を有し、入力された直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータと、
前記インバータの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、
前記インバータおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記インバータは、
前記複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、
前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、
を有するとともに、
同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、
前記制御部は、前記インバータと前記電力系統とが連系していないときに、1回のON/OFF制御によって前記ゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子を制御することを特徴とする系統連系インバータ装置。
【請求項2】
電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、
複数のスイッチング素子を有し、入力された直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータと、
前記インバータの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、
前記インバータおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記インバータは、
前記複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、
前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、
を有するとともに、
同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、
前記制御部は、前記インバータと前記電力系統とが連系していないときに、ゲート信号が共通化されていない下アームのスイッチング素子をONすることによって充電されるゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該下アームのスイッチング素子を複数回ON/OFF制御することを特徴とする系統連系インバータ装置。
【請求項3】
電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、
入力された直流電圧を電圧変換して出力するコンバータと、
前記コンバータから出力された直流電圧を交流電圧に変換して出力する複数の単相インバータを有し、交流側端子が直列に接続された当該複数の単相インバータの各発生電圧による総和電圧を出力するインバータユニットと、
前記インバータユニットの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、
前記インバータユニットおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、
前記電力系統の電圧を検出する第1の電圧検出器と、
を備え、
前記インバータユニットは、
前記各単相インバータを構成する複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、
前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、
を有するとともに、
同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、
前記制御部は、前記インバータユニットと前記電力系統とが連系状態にあり、かつ、前記インバータユニットが停止状態のときに、前記第1の電圧検出器の検出電圧に基づいて、前記インバータユニットと前記電力系統との間で相互に逆流電流が流れないように前記スイッチング素子のON/OFF制御を行って前記ゲート電源用コンデンサを充電することを特徴とする系統連系インバータ装置。
【請求項4】
前記各単相インバータの母線電圧を検出する第2の電圧検出器をさらに備え、
前記制御部は、前記ゲート電源用コンデンサに対する充電を前記第1の電圧検出器および前記第2の電圧検出器の各検出電圧に基づいて実行することを特徴とする請求項3に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項5】
前記制御部は、1回のON/OFF制御によって前記ゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項3または4に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項6】
電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、
入力された直流電圧を電圧変換して出力するコンバータと、
前記コンバータから出力された直流電圧を交流電圧に変換して出力する複数の単相インバータを有し、交流側端子が直列に接続された当該複数の単相インバータの各発生電圧による総和電圧を出力するインバータユニットと、
前記インバータユニットの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、
前記インバータユニットおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記インバータユニットは、
前記各単相インバータを構成する複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、
前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、
を有するとともに、
同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されるとき、
前記制御部は、前記インバータユニットと前記電力系統とが連系していないときに、1回のON/OFF制御によって前記ゲート電源用コンデンサの充電電圧が所定値以上となるように、当該ゲート電源用コンデンサの充電に寄与するスイッチング素子を制御することを特徴とする系統連系インバータ装置。
【請求項7】
電力系統と連系する系統連系インバータ装置において、
入力された直流電圧を電圧変換して出力するコンバータと、
前記コンバータから出力された直流電圧を交流電圧に変換して出力する複数の単相インバータを有し、交流側端子が直列に接続された当該複数の単相インバータの各発生電圧による総和電圧を出力するインバータユニットと、
前記インバータユニットの出力を電力系統に出力するか否かを切り替える開閉器と、
前記インバータユニットおよび前記開閉器の動作を制御する制御部と、
前記電力系統の電圧を検出する第1の電圧検出器と、
前記各単相インバータの母線電圧を検出する第2の電圧検出器と、
を備え、
前記インバータユニットは、
前記各単相インバータを構成する複数のスイッチング素子のうちの下アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作する第1のゲート電源と、
前記複数のスイッチング素子のうちの上アームのスイッチング素子の駆動用電源として動作し、前記第1のゲート電源による直流電力が供給されるゲート電源用コンデンサを具備するブートストラップ回路によって構成された第2のゲート電源と、
を有するとともに、
前記インバータユニットを構成する単相インバータのうち、前記コンバータの出力端にインバータ母線が接続される第1の単相インバータにおいては、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対のうち、1組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成される一方で、
前記インバータユニットを構成する単相インバータのうち、前記第1の単相インバータ以外の単相インバータにおいては、同期して動作することが可能な2組のスイッチング素子対を駆動するゲート信号が共通化されるように構成されており、
前記制御部は、前記第1の単相インバータ以外の単相インバータに未充電のインバータ母線用コンデンサが1以上存在し、かつ、前記第1の単相インバータのゲート電源用コンデンサを充電する場合に、当該充電対象であるゲート電源用コンデンサの充電時に、スイッチング素子を複数回ON/OFF制御することを特徴とする系統連系インバータ装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記インバータと前記電力系統とが連系状態にあり、かつ、前記インバータが停止状態のときに、前記第1の電圧検出器の検出電圧に基づいて、前記インバータと前記電力系統との間で相互に逆流電流が流れないように前記スイッチング素子のON/OFF制御を行って前記ゲート電源用コンデンサを充電することを特徴とする請求項7に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ゲート電源用コンデンサに対する充電を前記第1の電圧検出器および前記第2の電圧検出器の各検出電圧に基づいて実行することを特徴とする請求項7に記載の系統連系インバータ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−57337(P2010−57337A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222390(P2008−222390)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]