説明

純アミノ酸キレート錯体の製造方法及びその用途

【課題】アミノ酸を金属塩化合物に直接反応して純度の高いアミノ酸キレート錯体を製造する方法を提供すること。
【解決手段】純度の高いアミノ酸キレート錯体を二つのステップにより生産することからなる。第一ステップは金属イオン化合物をアミノ酸と直接接触させて金属ヒドロキシルアミノアセテート塩を生成する。第二ステップは第一ステップで生成した金属ヒドロキシルアミノアセテート塩を再び少なくとも1つ、或いは異なるいくつかのアミノ基を含んだ化合物と反応させ、これらアミノ基を含んだ化合物が金属イオンと反応して、アミノ酸キレート錯体を生成する。即ち一つの金属イオンとアミノ酸配位子が結合して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純アミノ酸キレート錯体の製造及びその用途に関するものである。更に詳しくは、広いpH範囲内での溶解性と溶液の安定性が非常に良く、かつその安定性の持続時間も非常に長い、純アミノ酸キレート錯体の製造方法及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日常、飲食物中に適切な鉱物質を補充することは人の健康を維持する非常に重要なことである。例えばカルシウム欠乏の場合、骨質の鬆化、免疫上の高血圧、関節炎、腸癌、糖尿病及び肥満症等を引き起こし、亜鉛欠乏の時は、傷口の治りがのび、成熟生長を妨げ、疲労及び感染されやすいものである。
【0003】
アミノ酸キレート金属化合物は人、動物及び植物の栄養上必要な鉱物質である。これを補給することは健康上好ましいことで、多くの医学臨床試験において証明されている。
【0004】
アミノ酸キレート化合物が粘膜細胞に摂取されたのち、そのアミノ酸輸送体はアミノ酸キレート金属錯体を単一のアミノ酸とみなして輸送するため、生物の有效吸収率が非常に高く、もしそれが金属無機塩であるときは有機塩の様にたやすく人体に吸収消化されない。
【0005】
本発明のアミノ酸キレート化合物は自然界のアミノ酸と金属イオンを反応して一つ或いは多くの5つのリングをもつ構造で金属原子、カルボキシル基酸素、カルボキシル基カーボン、αカーボンとαアミノ酸窒素組成から構成される。
アミノ酸キレート錯体の製造は、先に水溶性金属塩を水に溶解したのち、アミノ酸配位子(Ligand)を加え、その金属塩対配位子のモル比を1:1から1:4として合成されてきた。
【0006】
アミノ酸キレート錯体を製造するときの反応起始剤は、通常硫酸塩イオン又は塩化物イオンである。これらマイナスイオンであるアニオンイオンは金属イオンと結合と同時にアミノ酸キレート化合物とも結合して錯体(complex)を形成する。
【0007】
多くの従来技術はすでにアミノ酸キレートの生産中、これら余分なアニオンイオンを除去する方法を提示してはいる。しかし、実質上尚多くのアニオンイオンがアミノ酸キレート化合物内に留まっており、或いは直接的にアミノ酸キレート化合物中の金属(カチオン)イオンと連結している。即ち金属塩として生産されたアミノ酸キレート化合物中にはアニオンイオンとカチオンイオンが結合している不利な要因を有している。これら不利な要因はアニオンイオンがアミノ酸キレート化合物の金属のカチオンイオンに摂取されていることに関わりがあり、例えば長期このようなアミノ酸キレート化合物を人体が摂取すれば硫酸塩アニオン或いは塩化物アニオンが人体内に累積し、身体の健康に悪影響をもたらすものである。
【0008】
多量のアニオンイオンを含んだアミノ酸キレート化合物は強酸又はアルカリ或いはその他のイオン、例えば燐酸塩などの存在下においては常にその溶解度と安定性が非常に悪い。また、食品又は飲み物中に使用した時、アミノ酸キレートの硫酸塩イオン又は塩化物イオンは嫌なにおいとよくない口感をまねくものである。
【0009】
既に公知である多くの発明は色々な方法を考えてアミノ酸キレート化合物に混雑してあるアニオンイオンによる不利な要因を改良してきた、アメリカ特許5504055号と6299914号は、アミノ酸キレート化合物の合成反応中にpH値調整剤と懸濁剤を加えて溶解度と安定性を改善し、アメリカ特許6458981号は金属硫酸塩と水酸化カルシウムを利用してアミノ酸キレート化合物を合成したもので、反応中の硫酸根はカルシウムと反応して硫酸カルシウムとなって沈殿し、フリー硫酸イオンはアミノ酸キレート化合物から分離している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は前記に鑑み、第一の目的は新規なアミノ酸キレート化合物を生産する方法、更に詳しくはアミノ酸と金属塩化合物とを直接反応してより良い純度の高いアミノ酸キレート錯体を生産する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を解決するため、本発明の純アミノ酸キレート錯体の生産方法は2つのステップで行われる。第1ステップは金属イオン化合物をアミノ酸と直接接触させて金属ヒドロキシルアミノアセテート塩を生成する。この金属イオン化合物は金属酸化物又は金属水酸化物から選ばれたものである。
第2ステップは、第1ステップで生成された金属ヒドロキシルアミノアセテート塩を少なくとも一つの多量のアミノ基を含んだ化合物と反応させて、この多量のアミノ基を含んだ化合物が金属イオンと反応し、アミノ酸キレート錯体が生成される。生成されたアミノ酸キレート錯体は一つの金属と多くのアミノ酸配位子とを結合して構成され、そのアミノ酸配位子の数と金属イオンの配位数は同じであり、アミノ基を含んだ化合物(配位子)はアミノ酸、又はジペプチド、トリペブチド又はポリペプチドである。
【0012】
また、本発明の第2ステップは連続的に幾つかのステップに別れて行うことができる。
第1ステップで生成された金属ヒドロキシルアミノアセテート塩を多くの異なるアミノ基化合物と接触反応してアミノ酸キレート錯体を生産する。生産された錯体は一つの金属と多くの異なるアミノ酸配位子が結合して構成されたもので、アミノ酸配位子の数と金属イオンの配位数は同じである。第2ステップのアミノ酸配位子がアスパラギン酸或いはグルタミン酸を含み、かつ少なくとも二つの異なるアミノ酸を含んだものであれば更によい。ここで言うアミノ基化合物(配位子)とは、アミノ酸、ジペプチド、トリペブチド又はポリペプチド、或いはこれらの混合物である。
【0013】
即ち、前記第1ステップにて生成した金属ヒドロキシルアミノアセテート塩とアミノ基を含んだ化合物と反応させて生成した反応液を、そのアミノ基と異なるアミノ基を含んだ化合物と反応させて、さらに生成した反応液をそれまでのいずれのアミノ基とも異なるアミノ基を含んだ化合物と反応させて生成することからなる。
【0014】
以下、本願に記載されている用語を解り易すく詳細に説明する
【0015】
"アミノ酸キレート"は、金属イオンとアミノ酸配位子とを結合してなるヘテロ環リング(heterocyclic ring)であり、
【0016】
"純アミノ酸キレート"とは、外からのカチオンイオン、或いはアニオンイオン、例えば水酸根、硫酸根、塩化物イオン等がアミノ酸キレート化合物と結合していない。つまりヘテロ環リング構造中の中心金属イオン配位数は完全にアミノ酸配位子の電子とのみ結合していることを意味するもので、その結合はイオン、原子価、又は配位共有結合で、"中心"金属イオンと結合しているものである。
【0017】
特定の金属原子の"配位数"とは、キレート反応中、金属原子と直接に連結できるその他の原子の総数である、
【0018】
"純アミノ酸配位子"とは、すべてのアミノ酸を指し、例えばアラニン、アルギニン(略称Arg)、アスパラギン、アスパラギン酸(略称Asp)、システイン、シスチン、グルタミン酸(略称Glu)、グルタミン、グリシン(略称Gly)、ヒスチジン(略称His)、イソロイシン、ロイシン?リシン(略称Lys)、メチオニン(略称Met)、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン(略称Ser)、トレオニン(略称Thr)、トリプトファン、チロシン、バリン、セレノミステイン、ビロリシン及びジペプチド、トリペプチド或いはポリペプチド等である。
【0019】
"金属"は人、動物、或いは植物の栄養供需に必要な鉱物元素で、銅、亜鉛、鉄、コバルト、マグネシウム、マンガン、セレン、ホウ酸及びその他金属水酸化物或いは酸化物である。
【0020】
"高溶解度"とは本発明の純アミノ酸キレートの溶解性が非常に良く、その溶液の安定性、持続時間も非常に長いこと指す。例えて言えば、(1)広いpH値範囲内(pH2〜11)の溶液中、(2)燐酸とあるいはレモン酸を含む溶液の内、あるいは(3)ジュースのような飲料とあるいは牛乳(等)において、本発明で生産した純アミノ酸キレートはあらゆる助溶剤を加えて溶解度をあげる必要がない。
【0021】
本発明の純アミノ酸キレート錯体の製造方法は二つのステップからなる、その第1ステップは先に金属水酸化物或いは酸化物をアミノ酸と反応して金属ヒドロキシルアミノアセテート塩を生成、第2ステップは一般的に三つの段階に別れて(1)金属と配位子のモル比を1:4とし、(2)金属とアミノ酸配位子の結合数が中心金属イオンの配位数と同じとなる純アミノ酸キレートを生成する。特に強調することは本発明の方法は常温10〜35℃の温度範囲内にても満足に生成を完成するもので、温度を35〜80℃に上げれば、その反応完成時間を減少することが出来ることである。
【0022】
本発明の純アミノ酸キレート錯体を生産する反応式は次の通りである。
【0023】
ステップ1: 金属ヒドロキシルアミノアセテート塩の生成
Me(OH)+ HA1 →A1MeOH....(1)
式中HA1は総べてのL−グルタミン酸、又はジペプチド、トリペプチド、或いはポリペプチドで、Me(OH)2は金属酸化物、A1MeOHはヒドロキシルアミノアセテート金属塩である。
【0024】
ステップ2:ヒドロキシルアミノアセテート金属塩をアミノ酸キレートに転化する
A1MeOH+ HA2 →MeA1A2....(2)
式中のHA2は総べてのL−グルタミン酸、ジペプチド、トリペプチド、或いはポリペプチドである。MeA1 A2は二つのアミノ基化合物を含んだアミノ酸キレート錯体である。
HA4+MeA1A2 →MeA1A2A3....(3)
式中のHA3は総べてのL−グルタミン酸、ジペプチド、トリペプチド、或いはポリペプチドである。MeA1A2A3は三つのアミノ基化合物を含んだアミノ酸キレート錯体である。
HA4+MeA123 →MeA1A2A3A4....(4)
式中のHA4は総べてのL−グルタミン酸、或いはジペプチド、トリペプチド、又はポリペプチドである。
MeA1A2A3A4は四つのアミノ基化合物を含んだアミノ酸キレート錯体である。
【0025】
上記第2ステップの反応式(4)、即ち生成された純アミノ酸キレート成品のpH値は第1ステップと第2ステップ中のアミノ酸に影響されることはこの技術分野の通常な知識を有するものは、誰でも知っていることである。この反応式(4)によって生産された透明な溶液は先に濾過した方がよく、そののち乾燥して固体の粉末に形成して純アミノ酸キレート成品となす。乾燥は様々な乾燥設備ですることが出来る。例えば噴霧乾燥機、液床乾燥機、回転式蒸発器、真空乾燥機、運盤式乾燥機、フラッシュドライヤー等である。
【0026】
前記HA1、HA2、HA3、HA4の式中、その1つが少なくともアスパラギン酸又はグルタミン酸であり、或いは少なくとも随意に2つの異なるアミノ酸を含むもので、これらアスパラギン酸又はグルタミン酸配位子は合成中、pH値の調整剤又は安定剤となるだけでなく、更に純アミノ酸キレートの溶解度をも促進するものである。
【発明の効果】
【0027】
よって本発明の方法にて生産された純アミノ酸キレート錯体は以下の物理化学特性を有する。
【0028】
1)本発明の純アミノ酸キレート錯体のpHは特定の値にコントロールることが出来る。
これは異なるアミノ酸の選択と変更混合で、金属イオンと反応して達成することが出来る、故にpH調整剤を加える必要がなく、人と動物にふさわしい吸収条件を与えることが出来る。
【0029】
2)本発明のアミノ酸キレート錯体は非常に容易に水に溶ける。濃縮すれば非常に濃いシロップとなる。
【0030】
3)本発明の純アミノ酸キレート錯体は非常に低いpH値、例えばpH値が2の溶液中に溶解し、高いpH値11の溶液にも溶解することが出来且長い時間の貯蔵でも尚非常に安定している。又酸性飲料、ジュースと牛乳に加えても非常に安定であるので、多くの医薬品、保健食品に広く使われている。
【0031】
4)純アミノ酸キレート錯体は硫酸塩或いは塩化物イオン等の外来アニオンイオンを含まないため、本質上味気のないものである。
だが本発明の方法で生産した純アミノ酸キレート錯体は、驚くべき事に甘い感じのあるものであることを発見したものである。
【0032】
以前、アミノ酸キレート錯体中の金属が占める比率は金属イオンと配位子のモル比によって計算されていた。これらのアミノ酸キレート錯体は、特にpH値調整剤又は溶剤、或いは安定剤を加えているときはアミノ酸キレート錯体中に含まれているその他のアニオンイオン、例えば硫酸塩或いは塩化物イオン等が金属と結合する可能性があった。だが本発明のアミノ酸キレート錯体ではただ金属酸化物或いは金属水酸化物をアミノ酸配位子とのみ反応し、且その金属とアミノ酸配位子との結合数は金属イオンの配位数と同じであるので、本発明の方法で生産したアミノ酸キレート錯体の金属含有量の計算は金属イオンと配位子のモル比に基づき、配位子の実際数と金属イオンとの結合に基づいて計算したものであるため、本発明のアミノ酸キレート錯体の金属含有量は前記従来の計算よりやや低いものである。
【0033】
本発明にて生産したアミノ酸キレート錯体は不純物例えば硫酸塩或いは塩化物イオンなどの外来イオンがないため変な匂いがない。広いpH値の範囲内の溶解度が非常に好く、溶液の安定性も非常によいのみならず持続時間も非常に長い。又常温下で非常に溶け易すく、pH値調整剤、溶解剤及び懸濁安定剤を加える必要がない。
【0034】
本発明のアミノ酸キレートは、前記の如く、あらゆるジュース、飲料水、牛乳製品、食料品、栄養補助品、又は医薬品の中に混入することが出来る。特にアミノ酸キレート亜鉛錯体は免疫に弱い20日鼠の免疫強化に非常な効果をもたらすものである。
【0035】
上記アミノ酸キレート錯体は広いpH値範囲内(pH2〜11)の溶解性が非常に良いのみならず、広い範囲の貯蔵温度下或いは非常に反応しやすいアニオンイオンをもつ燐酸塩中に暴露してもその溶液の安定性は非常に良く、持続性も長い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明のアミノ酸キレート錯体の合成方法を実施例にて詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
3,7923gのアスパラギン酸を200mlの蒸留水中に溶解し、2,110gのCa(OH)2を加え20分間攪拌する。pH値が10,30の時、4,3433gのグリシンを加え、30分攪拌後のpHは8.75で、最後に又3.9098gのアスパラギン酸を反応溶液中に混合投入して40分攪拌反応せしめて、pH6.83の透明溶液を得る。この溶液を回転蒸発器(Tokyo Rikakikai Co., Ltd. Eyela Digital Water Bath SB-1000)で水分を蒸発させ、真空ポンプ(Gardner Denver Welch Vacuum Technology Inc, Skokie, IL, USA, Welch 1400)を通して乾燥固化する。本合成法で生産された純アミノ酸キレートをテストした結果、カルシウム対アミノ酸の比率は1:4(Ca:2ASP:2Gly)で、その4つのアミノ酸配位子(ASPとGly)は赤外線分光計と核磁共振機分析で完全に金属カルシウムと結合し、その他のアミノ酸残留物を含んでいないことを確認した。
【実施例2】
【0038】
3,7912gのアスバラギン酸を2,1092gのCa(OH)2を含んでいる溶液の水中に溶解し反応を20分間行わせ、pHが10、30になり、安定の後5,9866gのセリンを加え、pHが8.52に下がるまで(後30分)攪拌し、最後にアスパラギン酸3,7862gを加え、その反応溶液がpH6.89の透明溶液になるまで約100分間攪拌反応した。生成した溶液は実施例1と同じく回転蒸発器で除水し、真空ポンプにて乾燥固化する。カルシウム対アミノ酸の比率は1:4(Ca:2Asp、2Ser)である。
【実施例3】
【0039】
2,1135gのCa(OH)2と200mlの水を3.7985gのアスパラギン酸を含んだ反応溶液中に投入し、連続的に攪拌反応を20分間行わせ、反応溶液のpHが10.301に達した。安定後6.7999gのトレオニンを加えて30分攪拌し、pHが8.50に下がったとき透明な溶液はpH6.90のアミノ酸キレート溶液で、実施例1と同じく回転蒸発器で除水し、真空ポンプにて乾燥固化する。カルシウムとアミノ酸の比率は1:4(Ca:2Asp:2Thr)である。
【実施例4】
【0040】
3.8101gのアスパラギン酸を200mlの蒸留水中に溶解したのち、2.1199gのCa(OH)2を加え連続攪拌反応を20分間行い、反応液のpHが10.40になったとき8.3634gのリシンを加え、30分間攪拌する。その溶液のpHが9.91に下がるまで、最後にアスパラギン酸3.8091gを加え、70分内反応してpH9.09の透明溶液を得る。回転蒸発器で除水し、真空ポンプにて乾燥固化する。カルシウムとアミノ酸の比率は1:4(Ca:2Asp:2Lys)である。
【実施例5】
【0041】
3.6938gのアスパラギン酸と2.0707のCa(OH)2とを含んだ200mlの水溶液を連続攪拌反応48分間してその溶液のpH値が10.80に達したとき、2.0978gのグリシンを加え、30分間攪拌してpHが9.60に下がったときにメチオニン4.1663gを加え連続攪拌して反応を35分し続け、溶液のpHが9.12のとき又アスパラギン酸3.7495gを反応液中に加え130分反応を行わせる。このときのpHが6.71でその生成液は回転蒸発器で除水し、真空ポンプにて乾燥固化する。カルシウムとアミノ酸の比率は1:4(Ca:2Asp:Gly:Met)でFT-1R,NMR分析による4つのアミノ酸配位子は完全に金属カルシウムと結合している。
【実施例6】
【0042】
4.248gのグルタミン酸を先に200mlの水の中に溶解し、そののち2.1407gのCa(OH)2をグルタミン酸溶液の中に加え、攪拌反応を20分間ほど行い、溶液のpHが約10.44になったとき、3.4476gのトレオニンを加え、30分攪拌しpHが9.08gに下がったあと、3.0383gのセニンを加え、20分攪拌後、pHが8.72のとき、3.4630gのアスパラギン酸を加え、約190分攪拌反応をして、pHが7.00の透明液を生成する。回転蒸発器で除水し、真空ポンプにて乾燥固化する。カルシウムとアミノ酸の比率は1:4(Ca:Glu:Thr:Asp)である。
【実施例7】
【0043】
先に3.7117gのアスパラギン酸を200mlの水に溶かしたのち、1.7043gのMg(OH)2と反応させ、約30分後溶液のpHが9.26になったとき、3.3213gのトレオニンを加え100分攪拌してpHが約8.79に下がる。2.9309gのセリンを加え攪拌(約35分)してpH8.54に下がったとき、4.0622gのグルタミン酸を加え、大体190分攪拌反応してpH6.80の透明液を得る。回転蒸発器で除水し、真空ポンプにて乾燥固化する、マグネシウムとアミノ酸の比率は1:4(Mg:Asp:Thr:Ser:Glu)である。
【実施例8】
【0044】
3.7086gのアスパラギン酸を200mlの水の中に溶解したのち、2.5539gの水酸化コバルトをアスパラギン酸の水溶液内に加え攪拌し反応を約45分間せしめて、pH値が約5.99になったとき、4.8528gのアルギンを加え、約120分間攪拌しpH値を8.45迄にする。このとき、2.0093gのグリシンを加え150分間攪拌し、pHが7.68になったとき、4.0973gのグルタミン酸で加え約12時間反応して、pH5.99の溶液を得る。溶液をろ過して回転蒸発器で除水し真空ポンプにて乾燥する。得た純アミノ酸キレートのコバルトとアミノ酸の比率は1:4(Co:ASP:Arg:Gly:Glu)である。
【実施例9】
【0045】
アスパラギン酸3.7539gを200mlの水に溶かし、2.6258gの水酸化コバルトをアスパラギン酸の水溶液中に加え、攪拌反応を約45分して、溶液のpH値を約6.27にする。
トレオニン3.3595gを加え60分間攪拌し、pH値を5.86gに下がらせ安定したのち、アルギニン4.9131gを加え約50分間pHを7.66迄に上がらせてグリシン2.1154gを加え、約2時間攪拌反応させてpH7.56の溶液を得る。回転蒸発器で除水し、真空ポンプで乾燥する最後に得た純コバルトアミノ酸キレートのコバルトとアミノ酸の比率は1:4(Co:ASP:Thr:Arg:Gly)である。
【実施例10】
【0046】
3.81639gのアスパラギン酸を200mlの水に溶かし、2.352gの酸化亜鉛をアスパラギン酸溶液中に加え、攪拌反応を約2.5時間して、その溶液のpHを約6.73にする。アルギニン9.9882gを加え約1時間攪拌し、pH値が9.51に上がったとき、3.8150gのアスパラギン酸を加えて約4時間攪拌して溶液のpHが7.40になったとき、その溶液をろ過し回転蒸発器で除水し、真空ポンプにて乾燥して得た純亜鉛化アミノ酸キレートの金属とアミノ酸の比率は1:4(Zn:2ASP:2Arg)である。
【実施例11】
【0047】
3.7482gのアスパラギン酸を200mlの水に溶かし、2.2833gの酸化亜鉛をアスパラギン酸溶液中に加え、約2時間攪拌反応させる。このときpH値は6.66で8.299gのリシンを加え、攪拌反応を約1時間させて溶液のpHを9.35に上らせ最後にアスパラギン酸3.7490gを加えて約12時間反応してpH7.64の溶液を得る。ろ過し回転蒸発器で除水、真空ポンプ1:2乾燥し得た純アミノ酸キレートの金属とアミノ酸の比率は1:4(Zn:2ASP:2Lys)である。
【実施例12】
【0048】
3.7036gのアスパラギン酸を200mlの水に溶かし2.7186gの水酸化銅を加え30分間攪拌反応をする。このときのpHは4.11である。8.154gのリシンを溶液中に加え続けて溶液を60分間攪拌反応せしめてpHを9.74迄に上らせる。最後に3.7041gのアスパラギン酸を加え90分間反応させる。このときに得た溶液のpH値は5.8迄下がっており、ろ過して回転蒸発器で除水、真空ポンプにて乾燥して出来た純アミノ酸キレートの金属とアミノ酸の比率は1:4(Cu:2ASP:2Lys)である。
【実施例13】
【0049】
1.0081gの水酸化銅と3.2103gのヒスチジンを混合し、200mlの水の中に溶解して3時間反応させる。このときのpH値は9.31である。1.3802gのアスパラギン酸を反応溶液中に加え、約45分間反応し、pH値が6.49になったとき0.7817gのグリシンを加え、約30分反応してpH6.52の透明溶液を得る。ろ過して回転蒸発器で除水し、真空ポンプにて乾燥して得たこの純アミノ酸キレートの金属とアミノ酸の比率は1:4(Cu:ASP:2His:Gly)である。
【0050】
実験例1 前記実施例の異なる11種のアミノ酸キレートの4つの異なる酸性及び異なる二種類のアルカリ性溶液に於ける溶解度と安定性の測定
下記表1は前記実施例の異なる11種のアミノ酸キレートの4つの異なる酸性及び異なる二種類のアルカリ性溶液に於ける溶解度と安定性の測定結果である。測定に使った4つの酸性溶液は(1)蒸留水にて希釈したpH3.5の塩酸溶液、(2)塩酸溶液pHが2、(3)燐酸溶液pHが3.5、(4)燐酸溶液pHが2で、二種のアルカリ性溶液は(1)pH11の水酸化ナトリウムと、(2)pHが9の水酸化ナトリウムである。これらと同時にオレンジジュース(pH3.76)と牛乳(pH6.66)の溶解度と安定性を測定した。毎5mlの測試溶液中には0.2gのアミノ酸キレートのサンプルを検視した。酸性及びアルカリ性溶液は22℃、オレンジジュースと牛乳は4℃にて貯蔵し、4週間後に沈殿物の存在を確かめたが、沈殿物を発見しなかった。本発明で生産されたアミノ酸キレートは各種の清涼飲料、果汁、牛乳製品及び保健食品等の中に使えるものであることを証明している。
【0051】

【0052】
実験例2 アミノ酸キレート亜鉛錯体が免疫低下組の20日鼠に及ぼす実験
体重が18〜20gの雄―雌20日鼠各々10匹を7組に分け、実験室に4日間適合させる。この7組は空白組、ホスフィニルアミンによる免疫機能低下組(略称CTX)、硫酸亜鉛17mg/kgを与えたCTX組、アミノ酸キレート亜鉛錯体57mg/kgを与えたCTX組、アミノ酸キレート亜鉛錯体114mg/kgを与えたCTX組、アミノ酸キレート亜鉛錯体228mg/kgを与えたCTX組及びαアミノ酸キレート亜鉛錯体456mg/kgを与えたCTX組である。給薬後10日目から空白組除外の6組にホスフィニルアミン(50mg/kg)10ml/kgを毎日一回連続4日注射する。
空白組とホスフィニルアミン組ともに等量の蒸留水を与え、第16日の最後の注射60分後に尾静脈を生理食塩水で3倍に稀釈した印度インク10ml/kgを注射し、注射後1分と11分に別かれて目玉の後の静脈から40μlの血をとり、4ml、0.1%の炭酸ソーダ溶液に溶かして均一にゆり動ごかし0.1%の炭酸ソーダで校正されている721分光光度計(波長600nm)に置いて光密度(略称OD)を比色測定し、最後にそれらの20日鼠を殺し、体重と肝臓、脾臓の重さを計り、次式によりKとα値を求める。

式中のKはカーボンクリアランス係数(index of carbon clearance test)、αは食菌細胞係数(Phagocytic index)で、logは対数、OD1とOD2は異なる時間に採血した血液の光密度、t2−t1は採血の時間差である。
【0053】

【0054】
表2から本臨床実験でのホスフィニルアミンによる組と空白組との比較でそのα係数は明らかに下がって居り、ホスフィニルアミンによる組は免疫に成功していること示している。アミノ酸キレート(薬剤量114mg/kgと228mg/kg)はK係数を高め、114mg/kg、228mg/kgと456mg/kgは明らかにα係数を上げていることが解る。即ちアミノ酸キレート錯体は免疫低下の20日鼠の免疫増強に有益である。
【0055】
実験例3 アミノ酸キレート亜鉛錯体が免疫低下の20日鼠に及ぼす溶血実験
実験例2と同じく7組に分けて実験したホスフィニルアミンによる免疫機能低下組の20日鼠を連続的に16日間投薬(10ml/kg)し、空白組とホスフライニルアミン組は同等の蒸留水を与え、薬を与えたのち、9日から総べての鼠の腹部に20%の赤血球細胞混濁液の0.2ml生理食塩水を注射して免疫にした。注射後10日過ぎてから空白組を除きその他の6組の20日鼠の腹部に50mg/kgのホスフィニルアミンを毎日一回10ml/kgを4日続いて注射し、第16日の最後の注射60分後に目玉の血液を取り、遠心分離機(2000回転/分、5分間)にかけて血清を取って500倍に稀釈し、その1mlの稀釈血清を5%の赤血球細胞混濁液0.5ml生理食塩水、1ml 10%の補体(CONTENT)と混合して37℃の恒温槽内に保温10分間、その後0℃の冷蔵庫にて反応を中止する。遠心分離して上清液1mlをとり、3mlのドラブキン(Drabkin)試液を加えて均一に揺り動かしたのち、10分間放置して540nmの721比色分光計にて光密度(OD)を測定した。
又、別に血清を加えていないブランクテストとして、その上清液を比色のゼロアジャスト基準計算の半数溶血素(Hemolyrsin)値とする。

【0056】

【0057】
表3より、明らかにホスフィニルアミンによる免疫機能低下組は空白組の溶血素レベルより低く、アミノ酸キレート亜鉛錯体(57mg/kg、114mg/kg、228mg/kgと456mg/kg)を与えているホスフィニルアミンによる免疫機能低下組の20日鼠の溶血素レベルも明らかに良くなっている。
これはホスフィニルアミンの免疫作用が成功していることを表しているものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物又は金属水酸化物から選ばれた金属イオンをアミノ酸と直接反応させて、金属ヒドロキシルアミノアセテート塩を生成する第1ステップと、第1ステップで生成した金属ヒドロキシルアミノアセテート塩を少なくとも一つのアミノ基を含んだ化合物と反応させて、前記アミノ基を含んだ化合物が前記金属イオンと反応してなる第2ステップとから生成することを特徴とするアミノ酸キレート錯体の製造方法。
【請求項2】
前記金属イオンはホウ酸、カルシウム、クロム、コバルト、銅、鉄、マグネシュム、マンガン、セレン又は亜鉛等の酸化物或いは金属水酸化物から選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸キレート錯体の製造方法。
【請求項3】
前記第1ステップのアミノ酸は、アスパラギン酸とグルタミン酸であることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸キレート錯体の製造方法。
【請求項4】
前記第2ステップのアミノ基を含んだ化合物は、アミノ酸のアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ミステイン、シスチン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシンリシン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリブトファン、チロシン、バリン、セレノミステイン、ピロリシン、及びジペプチド、トリペプチド又はポリペプチドから選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸キレート錯体の製造方法。
【請求項5】
前記第2ステップは幾つかの方法に別れ、その方法は、前記第1ステップにて生成した金属ヒドロキシルアミノアセテート塩とアミノ基を含んだ化合物と反応させて生成した反応液を、そのアミノ基と異なるアミノ基を含んだ化合物と反応させて、さらに生成した反応液をそれまでのいずれのアミノ基とも異なるアミノ基を含んだ化合物と反応させて生成することを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸キレート錯体の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のアミノ酸キレート錯体を含有してなる飲み物、食品、栄養補充品及び薬剤。
【請求項7】
免疫の強化に顕著な効果をもたらすものであることを特徴とする請求項6に記載のアミノ酸キレート亜鉛錯体を含有してなる薬剤。


【公開番号】特開2010−90064(P2010−90064A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261840(P2008−261840)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(508302844)ヴィヴァ ファーマシューティカル インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】