説明

純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートおよびそれの製造方法ならびにその使用

(要約)
本発明は、一般式:Li1+xTi2−xAl(PO (xは0.4以下である)で表されるリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートの製造方法、ならびにリチウムイオン二次電池の固体電解質への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェート、それの製造方法、その使用、ならびに純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートを含むリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石原料の不足が高まっているために、電池式モーター車両は、研究および開発の大きな焦点となってきた。
【0003】
特に、リチウムイオン蓄電池(リチウムイオン二次電池とも呼ばれる)が、このような適用の電池モデルとしてもっとも有用であることが証明された。
【0004】
これらのいわゆる「リチウムイオン電池」は、電動具、コンピューター、携帯等のような分野においても広く用いられている。特に、カソードおよび電解質だけでなく、アノードにおいても、リチウム含量材料から構成される。
【0005】
たとえばLiMnおよびLiCoOは、これまでカソード材料として用いられてきた。近年では、特に、Goodenough et al.(米国特許第5,910,382号)の研究以来は、ドープされた(doped)またはドープされていない(non−doped)混合リチウム遷移金属ホスフェート、特に、LiFePOが用いられてきた。
【0006】
一般的には、例えば、黒鉛、また、上述したチタン酸リチウムのようなリチウム化合物は、特に大容量の電池のアノード材料として用いられる。
【0007】
チタン酸リチウムとは、本明細書中、Fd3mの空間群(space group)のLi1+xTi2−x型(0≦x≦1/3)のドープされたまたはドープされていないリチウムチタニウムスピネル、および一般式:LiTiO(0≦x,y≦1)の全て混合されたチタニウム酸化物を意味する。
【0008】
一般的に、リチウム塩またはそれらの溶液は、リチウムイオン二次電池において、固体電解質として用いられる。
【0009】
例えば、エボニックデグサ(Evonik Degussa)社から市販されているSeparion(登録商標)などのセラミックセパレーターもまた提案されている(独国特許出願公開第196 53 484号明細書)。しかしながら、Separionは、固体状態の電解質ではなく、ナノスケールのAlおよびSiOなどのセラミック充填剤を含む。
【0010】
リチウムチタニウムホスフェートは、これまで、固体電解質として言及されてきた(特開1990(平2)−225310号公報)。リチウムチタニウムホスフェートは、構造およびドーピングに応じて、向上したリチウムイオン導電率(lithium ion conductivity)および低い電気伝導度(electrical conductivity)を有し、さらにはそれらの優れた硬度により、リチウム二次電池における固体電解質として非常に好適なものとする。
【0011】
Aono et al.により、ドープされたまたはドープされていないリチウムチタニウムホスフェートのイオン性(リチウム)導電性が検討されている(J. Electrochem. Soc., Vol. 137, No. 4, 1990, pp. 1023−1027, J. Electrochem. Soc., Vol. 136, No. 2, 1989, pp. 590−591)。
【0012】
アルミニウム、スカンジウム、イットリウムおよびランタンにドープされた系は、特に検討されていた。特にアルミニウムでドープされたものは、良好な結果をもたらすことが分かった。これは、ドーピングの程度に依存しており、アルミニウムは、結晶中でのそのカチオン半径(Ti4+よりも小さい)により、その空間にチタニウムが占めることができ、それにより他のドーピング金属と比較すると、高いリチウムイオン導電性を有しているためである。
【0013】
Kosova et al.(Chemistry for Sustainable Development 13 (2005) 253−260)により、再充電可能なリチウムイオン電池のためのカソード、アノードおよび電解質としての好適なドープされたリチウムチタニウムホスフェートが提案されている。
【0014】
欧州特許第1 570 113号明細書には、「活性な」セパレーターフィルムにおける、電気化学成分としてさらなるイオン導電性を有するセラミック充填剤としてLi1.3Al0.3Ti1.7(PO)が提案されている。
【0015】
さらに同様にして、ドープされたリチウムチタニウムホスフェート、特に鉄、アルミニウムおよび希土類にドープされたものが、米国特許第4,985,317号明細書に開示されている。
【0016】
しかしながら、固体のリン酸塩から開始する固体状態の反応は非常に高価な合成であり、上述のリチウムチタニウムホスフェートの全てに共通であるが、そのようにして得られた対応するリチウムチタニウムホスフェートは、通常、AlPOまたはTiPのようなさらなる異質な相(foreign phase)によって汚染されている。純粋相リチウムチタニウムホスフェートまたはドープされたリチウムチタニウムホスフェートはこれまで知られていない。
【発明の概要】
【0017】
それゆえに、本発明の目的は、純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートを提供することであり、純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートは、高いリチウムイオン導電率(lithium ion conductivity)と低い電気伝導度(electrical conductivity)との特性を併せ持つ。異質の相がないことから、従来の純粋相でないリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートと比較すると、さらに良好なイオン導電率もまた得られるべきである。
【0018】
この目的は、一般式:Li1+xTi2−xAl(PO (xは0.4以下(≦0.4)である)で表され、元素Fe、CrおよびNiの磁性金属および磁性金属化合物の量(level)は1ppm以下(≦1ppm)である、純粋相(Phase−pure)リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートを提供することにより達成した。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートの構造である。
【図2】本発明のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートのXRDスペクトルである。
【図3】一般的に製造されたリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートのX線粉末回折(XRD)である。
【図4】本発明のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートの粒子サイズ分布である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、「純粋相(Phase−pure)」との語は、異質な相がX線紛体回折分析(XRD)において認識されないことを意味する。本発明のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートにおいて、異質な相がない場合、後述の図2の実施例の方法により示されるように、例えば、AlPOおよびTiPのような異質な相の最大比率の1%に相当する。
【0021】
上述したように、異質な相は、本質的なイオン導電率を減少させ、結果として、異質な相を含んでいた従来の全てリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートと比べると、本発明のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートは高い本質的なイオン導電率を有する。
【0022】
驚くことに、本発明のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートにおけるFe、CrおよびNiの磁性金属および磁性化合物の総量(ΣFe+Cr+Ni)は1ppm以下(≦1ppm)である。また、2.3〜3.3ppmである上述の従来のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートに比べると、多少の崩壊性亜鉛(disruptive zinc)を考慮にいれても、合計の含量ΣFe+Cr+Ni+Znは1.1ppm以下(≦1.1ppm)である。
【0023】
特に、本発明のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートは、0.5ppm未満という、金属または磁鉄および磁鉄化合物(例えばFe)による極めて小さい汚染を示す。磁性金属または金属化合物の濃度の測定は、後述の実験の項で詳細に述べる。
【0024】
これまでに知られているリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートにおける磁鉄または磁鉄化合物の常用値(Customary values)は、約1〜1000ppmである。金属鉄または磁鉄化合物による混入の結果、電流の低下に関連した樹枝状結晶の生成に加えて、リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートを固体電解質として用いている電気化学セル内において短絡の危険が顕著に増加する。これは、産業スケールでそのような電池を製造するリスクを意味する。このような短所が、この純粋相(Phase−pure)リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートにより回避できる。
【0025】
同様に驚くことに、本発明の純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートは、3.5m/g未満(<3.5m/g)という相対的に高いBET表面積を有する。典型的な数値は、合成の持続に依存して、たとえば、2.7〜3.1m/gである。一方、文献により知られているリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートは、2m/g以下、特に1.5m/g以下のBET表面積を有する。
【0026】
本発明のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートは、好ましくは、d90が6μm未満(d90<6μm)、d50が2.1μm未満(d50<2.1μm)およびd10が1μm未満(d10<1μm)の粒子サイズ分布を有し、これにより、粒子の大部分が特に小さくなり、その結果、非常に高いイオン導電率が達成されうる。このことは、上述の未審査の日本特許出願による類似の研究結果を裏付けるものであり、該出願では、種々の紛体化プロセスを用いて、より小さい粒子サイズを得る試みがされた。しかしながら、リチウムアルミニウムチタニウムホスフェート(Mohs硬度が7より大きい(>7)、すなわち、ダイアモンドに近い)は極めて硬度が高いため、通常の紛体化プロセスでこれを得るのは困難である。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態は、リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートは、実験に基づいた一般式:Li1.2Ti1.8Al0.2(POを有し、これは、298Kで約5×10−4S/cmという非常に良好なトータルイオン導電率を有し、特に純粋相形態 Li1.3Ti1.7Al0.3(POでは、293Kで7×10−4S/cmという特に高いトータルイオン導電率を有する。
【0028】
本発明の目的は、本発明の純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートを製造する方法をさらに提供することである。この目的は、以下の工程を含む方法によって達成される。
【0029】
a)リン酸を準備する工程
b)二酸化チタンを添加する工程
c)混合物を、100℃を超える温度で改質(convert)する工程
d)酸素含有アルミニウム化合物およびリチウム化合物を添加する工程
e)工程d)で得られた懸濁した反応生成物を焼成する工程
驚いたことに、従来知られていた合成と異なり、液体リン酸(a liquid phosphoric acid)、すなわち、典型的には水性リン酸(an aqueous phosphoric acid)が、固体リン酸塩の代わりに用いられうる。本発明の方法は、「熱水方法(hydrothermal method)」とも称される。リン酸の使用により、その方法の実施をより簡便にすることができ、よって、溶液または溶液中の懸濁中の不純物の除去の選択も可能であり、その結果、より高い相純度を有する生成物が得られる。特に、水溶液中の希釈リン酸が本発明では用いられる。
【0030】
本発明の方法における最初の反応工程c)は、他の不活性TiOを溶解させ、そして、中間体生成物TiO(PO(本発明の方法の構成においては分離することは必ずしも必要でない)を経由して、続く工程d)の反応をより速くより良好なものとし、より良好に分離された最終生成物とする。
【0031】
中間体生成物TiO(POは、本発明の方法は、「ワン−ポット方法(one−pot method)」として実施されるのが好ましいため、必ずしも分離される必要はない。しかしながら、本発明のさらなる展開として好ましいわけでなはいが、分離することも可能であり、沈殿、スプレードライなどの当業者に知られる方法によってTiO(POを精製してもよく、その後に工程d)およびe)のさらなる方法を実施する。この方法は、特にオルトリン酸以外のリン酸を用いた場合に実施するのが推奨される。しかしながら、TiO(POの分離後、リン酸または代用のリン酸塩は、最終生成物が正しい立体化学を有するように再び添加されるべきである。
【0032】
上述したように、本発明のさらなる実施形態において、好ましくは、たとえばメタリン酸などの他のリン酸が用いられうるが、30%〜50%溶液のような形態の希釈オルトリン酸は、リン酸としてより好ましく用いられる。カテナリーポリリン酸(catenary polyphosphoric acids)(ジリン酸(diphosphoric acid)、トリリン酸(triphosphoric acid)、オリゴリン酸(oligophosphoric acids)など)、環状メタリン酸(annular metaphosphoric acids)(トリ−、テトラメタリン酸(tri−,tetrametaphosphoric acid))からリン酸の無水物P至るまでのようなオルトリン酸の全濃縮生成物は、本発明に用いられうる。本発明によれば、上述のリン酸全てが、溶液中、特に好ましくは水溶液中、希釈形態で用いられることだけが重要である。
【0033】
本発明によれば、LiCO、LiOH、LiO、LiNOなどのリチウム化合物が好適なリチウム化合物として用いられ、特に産業スケールで用いられる際には、コスト的にもっとも有利であるためリチウム炭酸塩が特に好ましい。一般的には、本発明によれば、アルミニウム化合物は、工程d)まで添加されず、リチウム化合物は30分〜1時間後である。この反応プロセスはまた、今回の場合において「カスケードリン酸塩処理(cascade phosphating)」とも称される。
【0034】
実際には、酸素含有アルミニウム化合物として、アルミニウムの酸化物もしくは水酸化物または混合酸化物/水酸化物が用いられうる。アルミニウム酸化物Alは、その入手のしやすさから従来においても好ましく用いられる。しかしながら、本発明は、Al(OH)を用いた場合に最も良い結果が達成されることがわかった。Al(OH)は、Alと比較すると、さらにコスト的に有利であり、特に、焼成工程において、Alよりもより反応性である。もちろん、Alは、好ましい形態ではないが、本発明の方法でも用いることができ、Al(OH)を用いた場合に比べると、特に焼成が長く持続する。
【0035】
リン酸および二酸化チタンの混合物の加熱工程(リン酸塩処理)は、100℃を超える温度で実施され、特に、140〜200℃で、好ましくは140〜180℃で実施される。穏やかな改質が、さらに制御されうるが、それにより均一な生成物が保障される。
【0036】
本発明の工程d)により得られた反応生成物は、その後、例えば減圧またはスプレードライなどの通常の方法により分離される。スプレードライは、特に好ましい。
【0037】
焼成は、好ましくは850〜950℃、特に好ましくは880〜900℃で実施される。850℃より低いと、異質な相の発生する危険性が特に大きくなる。
【0038】
典型的には、化合物Li1+xTi2−xAl(PO中のリチウムの蒸気圧は、950℃を超える(>950℃)温度で増加する。すなわち、950℃を超える(>950℃)温度で形成された化合物は、大気中で、炉壁において、LiOおよびLiCOとして定着(settle)し、より多くのリチウムを失う。これは、たとえば、後述のように、リチウム過剰により埋め合わせされる。しかしながら、化学量論的な厳密な設定は、より複雑になりうる。それゆえに、低い温度が好ましく、驚くことに、従来と比較すると、上述の方法の実施により可能である。この結果は、従来の固体リン酸塩と比較すると、希釈リン酸の使用によるものと考えられる。
【0039】
さらに、1000℃を超える(>1000℃)温度は、炉およびるつぼ材料(crucible material)への要求がより大きくなる。
【0040】
焼成は、5〜24時間の時間をかけて実施され、好ましくは10〜18時間、特に好ましくは12〜15時間である。驚いたことに、これまでの方法とは異なり、純粋相生成物を得るのに、単焼成工程(single calcining step)で十分である。
【0041】
本発明の方法の実施が熱水であるため、従来においては、工程d)において、量論化学的にリチウム出発化合物の過剰量は通常必要ではなかった。リチウム化合物は、本発明で用いられる反応温度で揮発性ではない。さらに、方法の実施が熱水であるため、量論化学的なモニタリングは、固体状態の方法と比較すると、特に容易である。
【0042】
本発明の主題は、一般式Li1−xTi2−xAl(PO(xは0.4以下である)で表される純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートであり、これは、本発明の方法により得られ、また熱水処理により上記で定義された意味における特に相純度なものが得られうる。固相合成方法により得られうるこれまでに公知の全ての生成物は、すでに上述したように、異質な相を有するが、本発明の方法の熱水処理によりこれは回避される。さらに、固相合成方法により得られうるこれまでに公知の生成物は、より多くの量の破壊的磁性不純物を有する。
【0043】
本発明の主題は、リチウムイオン二次電池における固体電解質としての、本発明の純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートの使用である。
【0044】
本発明の主題は、特に固体電解質として、本発明の純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートを含む、改善されたリチウムイオン二次電池を提供することにより達成される。その高いリチウムイオン導電率により、固体電解質は、特に好適であり、その相純度および低い鉄含量により、特に安定で、また短絡への耐性を示す。
【0045】
本発明の好ましい展開においては、本発明のリチウムイオン二次電池のカソードは、カソードとして、ドープされたまたはドープされていないリチウム遷移金属ホスフェートを含み、リチウム遷移金属ホスフェートの遷移金属は、Fe、Co、Ni、Mn、CrおよびCuから選択される。ドープされたまたはドープされていないリチウム鉄ホスフェートLiFePOは、特に好ましい。
【0046】
本発明のさらに好ましい展開においては、カソード材料は、用いられたリチウム遷移金属ホスフェートとは異なる、ドープされたまたはドープされていない混合リチウム遷移金属オキソ化合物をさらに含む。本発明に好適なリチウム遷移金属オキソ化合物としては、例えば、LiMn、LiNiO、LiCoO、NCA(LiNi1−x−yCoAl、例えば、LiNi0.8Co0.15Al0.05)またはNCM(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)等が挙げられる。そのような組み合わせにおけるリチウム遷移金属ホスフェートの比率は、1〜60重量%の範囲にある。好ましい比率は、たとえば、6〜25重量%であり、好ましくはLiCoO/LiFePO混合物において8〜12重量%であり、LiNiO/LiFePO混合物において25〜60重量%である。
【0047】
好ましい展開において、アノード材料は、例えば、黒鉛などの炭素を排他的に含む。本発明のさらに好ましい展開においては、本発明の2次リチウムイオン電池のアノード材料は、ドープされたまたはドープされていないチタン酸リチウムを含む。上述した好ましい展開におけるチタン酸リチウムは、典型的にはドープされたまたはドープされていないLiTi12であり、例えば、リチウム遷移金属ホスフェートの好ましいカソードに対して、2ボルトの電位という結果が達成されうる。
【0048】
すでに述べたように、好ましい実施形態におけるカソード材料のリチウム遷移金属ホスフェートおよびアノード材料のチタン酸リチウムの両方は、ドープされているか、またはドープされていないか、のどちらかである。ドーピングは、少なくともひとつのさらなる金属または数種の金属と共に行い、それは特に、カソードまたはアノードとして用いられた場合には、ドープされた材料の安定性およびサイクル安定性を高めることとなる。Al、B、Mg、Ga、Fe、Co、Sc、Y、Mn、Ni、Cr、V、Sb、Bi、Nbの金属イオンまたはこれらのイオンの数種は、カソードまたはアノード材料の格子構造に組み込まれうるが、ドーピング材料として好ましい。Mg、NbおよびAlは、特に好ましい。チタン酸リチウムは、通常、ルチルフリーが好ましく、よってそれと同様に純粋相である。
【0049】
ドーピング金属カチオンは、上述したリチウム遷移金属ホスフェートまたはチタン酸リチウムの中に、混合したリチウム遷移金属ホスフェートまたはチタン酸リチウムの総量に対して、0.05〜3重量%、好ましくは1〜3重量%の量で存在する。遷移金属(原子%(at%)での数値)に対して、または、チタン酸リチウムの場合は、リチウムおよび/またはチタニウムに対して、ドーピング金属カチオンは、20原子%までであり、好ましくは5〜10原子%である。
【0050】
ドーピング金属カチオンは、金属またはリチウムの格子配置のどちらかを占める。これの例外は、混合Fe、Co、Mn、Ni、Cr、Cu、リチウム遷移金属ホスフェートであり、これらは、上述の元素を少なくとも2つ以上含み、存在するドーピング金属カチオンの量が大きく、極端な場合は50重量%までである。
【0051】
本発明の2次リチウムイオン電池の電極の典型的な構成としては、リチウム遷移金属ホスフェートまたはチタン酸リチウムの活性材料に加えて、バインダーおよび黒鉛である。
【0052】
当業者に公知のバインダーとしては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンジフロライド(PVDF)、ポリビニリデンジフロライドヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、エチレン−プロピレン−ジエン三元重合体(EPDM)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエイチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリルメタクリレート(PMMA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ならびにこれらの誘導体および混合物が挙げられる。
【0053】
本発明の構成には、電極材料の個々の構成の典型的な比率として、好ましくは活性材料電極材料の重量に対して、80〜90部であり、導電性炭素の重量に対して10〜1部であり、バインダーの重量に対して10〜1部である。
【0054】
本発明の構成には、好ましいカソード/固体電解質/アノードの組み合わせとして、例えば、リード−酸電池(lead−acid cells)の代用として好適な約2ボルトの単セル電圧を伴うLiFePO/Li1.3Ti1.7Al0.3(PO/LiTiO、またはLiCoMnFePO/Li1.3Ti1.7Al0.3(PO/LiTiOが挙げられ、この際、x、yおよびzは上述のように定義され、これらは、増大したセル電圧および改善されたエネルギー密度を有する。
【0055】
本発明は図面および実施例を参照してより詳細に説明されるが、本発明の範囲はこれに制限されないことは理解されうる。これらを以下に示す。
【0056】
図1 本発明の純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートの構造である。
【0057】
図2 本発明のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートのXRDスペクトルである。
【0058】
図3 一般的に製造されたリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートのX線粉末回折(XRD)である。
【0059】
図4 本発明のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートの粒子サイズ分布である。
【0060】
1.測定方法
BET表面積はDIN 66131 (DIN−ISO 9277)により測定した。
【0061】
粒子サイズ分布はDIN 66133に準拠し、Malvern Mastersizer 2000を用いてレーザー粒度分布法により測定した。
【0062】
X線粉末回折はX’Pert PRO回折計、PANalytical:角度計(Goniometer) Theta/Theta, Cu アノード PW 3376 (最大出力 2.2kW)、検出器 X’Celerator、X’Pert ソフトウエアを用いて測定した。
【0063】
本発明のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートの磁性成分の量は、磁石により分離し、続いて酸により分解し、次いで、形成された溶液に行うICP分析により測定した。
【0064】
分析するためのリチウムアルミニウムチタニウムホスフェート粉末を、特定のサイズの磁石(直径1.7cm、長さ5.5cm 6000ガウス未満(<6000ガウス))と一緒にエタノールに懸濁した。エタノール懸濁液は、超音波バス内で、振動数135kHzで30分間磁石にさらした。磁石は、懸濁液または粉末から磁性粒子を引き付けた。その後、磁性粒子を付着した磁石を、懸濁液から除去した。磁性不純物は、酸による分解に助けられて溶解し、これを、磁性不純物の組成と正確な量とを測定するために、IPC(イオンクロマトグラフィ)分析により測定した。ICP分析機器は、ICP−EOS、Varian Vista Pro 720−ESであった。
【実施例】
【0065】
実施例1
Li1.3Al0.3Ti1.7(POの製造
29.65kgのオルトリン酸(80%)を反応器(Thale容器 200L容量)に導入し、脱イオン水で希釈して100Lの液体量とし、2.2Mオルトリン酸とした。次いで10.97kg TiO(アナターゼ型)をゆっくりと添加し、同時にテフロンでコートされたアンカースターラーで激しく撹拌し、撹拌を160℃で16時間継続した。反応混合物は、80℃に冷却され、1.89kg Al(OH)(Gibbsite)を加えて、撹拌を30分間継続した。次いで、23Lの脱イオン水に溶解させた4.65kg LiOHを加えた。添加の最後で、無色の懸濁液がより粘性が高くなった。その後、懸濁液をスプレードライし、得られた非吸湿性の粗生成物を、50μm未満(<50μm)の粒子サイズを得るために、6時間かけて細かく粉砕した。
【0066】
細かく粉砕された混合物前駆体(premixture)を、2℃/分の昇温で、200〜900℃で6時間以内の時間で加熱し、そうでない場合、アモルファスな異質な相をX線回折(XRDスペクトル)で検出した。生成物は、その後900℃で6時間焼成し、次いで磁器製の球体を用いて、ボールミルで細かく粉砕した。
【0067】
異質な相の形跡は、生成物中に見られなかった(図2)。磁性Fe、CrおよびNiならびに/またはそれらの化合物の総量は0.73ppmだった。当該実施例のFeおよび/またはそれの磁性化合物の量は、0.22ppmだった。特開1990(平2)−225310号公報に従って製造した比較例は、2.79ppmおよび磁鉄または鉄化合物1.52ppmを含んでいたい。
【0068】
本発明により得られた生成物Li1.3Al0.3Ti1.7(POの構造を図1に示すが、これは、いわゆるNASiCON(Na超イオン伝導体)構造(Nuspl et al. J. Appl. Phys. Vol. 06, No. 10, p. 5484 et seq. (1999)を参照)と同様である。
【0069】
結晶構造の3次元的なLiチャネルおよび同時に生じるこれらのチャネルにおけるLi移動のための0.30eVという低活性エネルギーにより、本質的なLiイオン導電率を高める。Alドーピングは、この本質的なLi導電率にはほとんど影響しないが、粒子境界でのLiイオン導電率を減少させる。
【0070】
Li3xLa2/3−xTiO化合物に加えて、Li1.3Al0.3Ti1.7(POは、文献で知られている、最も高いLiイオン導電率を有する固相電解質である。
【0071】
図2の生成物のX線粉末回折(XRD)からわかるように、特に、純粋相生成物は、本発明の反応プロセスの結果である。
【0072】
これに対して、図3は、特開1990(平2)−225310号公報に従って製造された従来のTiPおよびのAlPOような異質な相を有するリチウムアルミニウムチタニウムホスフェートのX線粉末回折である。同様の異質な相は、Kosova et al.に記載の材料においても見られている(上記参照)。
【0073】
実施例1の生成物の粒子サイズ分布を、図4に示すが、d90が6μm未満(<6μm)、d50が2.1μm未満(<2.1μm)およびd10が1μm未満(<1μm)という数値であり、きれいな単峰性(purely monomodal)の粒子サイズ分布を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式 Li1+xTi2−xAl(PO (xは0.4以下である)で表され、
元素Fe、CrおよびNiの磁性金属および磁性金属化合物の量は1ppm以下である、リチウムアルミニウムチタニウムホスフェート。
【請求項2】
粒子サイズ分布d90が、6μm未満である、請求項1に記載のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェート。
【請求項3】
金属鉄および磁鉄化合物の含量が0.5ppm未満である、請求項1または2に記載のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェート。
【請求項4】
前記xの数値が、0.2または0.3である、請求項3に記載のリチウムアルミニウムチタニウムホスフェート。
【請求項5】
a)リン酸を準備する工程、
b)二酸化チタンを添加する工程、
c)混合物を、100℃を超える温度で改質する工程、
d)酸素含有アルミニウム化合物およびリチウム化合物を添加する工程、
e)工程d)で得られた懸濁した反応生成物を焼成する工程、
を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の Li1+xTi2−xAl(PO (xは0.4以下である)を製造する方法。
【請求項6】
液体リン酸、水性リン酸および/もしくはリン酸溶液からなる群より選択されたリン酸がリン酸として用いられ;ならびに/または希釈オルトリン酸がリン酸として用いられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
リチウムカーボネートが、リチウム化合物として用いられる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸素含有アルミニウム化合物として、Al(OH)が用いられる、請求項5〜7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程c)が、140℃〜200℃の温度で実施される、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程d)の後に、前記懸濁した反応生成物をスプレードライする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記焼成が、850℃〜950℃の温度で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記焼成が、5〜24時間をかけて行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項6〜12のいずれか1項に記載の方法で得られる、一般式:Li1+xTi2−xAl(PO (xは0.4以下である)で表される純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェート。
【請求項14】
リチウムイオン二次電池の固体電解質とする、請求項1〜4または13のいずれか1項に記載の純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートの使用。
【請求項15】
請求項1〜4または13のいずれか1項に記載の純粋相リチウムアルミニウムチタニウムホスフェートを含むリチウムイオン二次電池。
【請求項16】
ドープされたまたはドープされていないリチウム遷移金属ホスフェートを、カソード材料としてさらに含む、請求項15に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項17】
前記リチウム遷移金属ホスフェートの遷移金属が、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Crからなる群より選択される、請求項16に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項18】
前記遷移金属が、Feである、請求項17に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項19】
前記カソード材料が、ドープされたまたはドープされていないリチウム遷移金属オキソ化合物をさらに含む、請求項18に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項20】
アノード材料が、ドープされたまたはドープされていないチタン酸リチウムを含む、請求項15〜19のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−507317(P2013−507317A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533525(P2012−533525)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006267
【国際公開番号】WO2011/045050
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508372560)ズード−ケミー アクチェンゲゼルシャフト (8)
【Fターム(参考)】