説明

紙管の円筒度測定装置

【課題】 芯材となる紙管に紙を巻き取らせて形成された小巻取を印刷機等に供した場合に、紙が巻き解かれる速度変動で印刷ずれが生じないよう、円筒度が所定の許容範囲内に収まっている紙管のみを選定する円筒度測定装置を提供する。
【解決手段】 紙管製造機で製造された紙管Cの面間長さを所定の大きさとするために紙管Cの両端部を切断する紙管仕上装置1の仕上切断工程10に供されている紙管Cの中間部であって、最上部にある被測定位置Tにレーザー光を入射させる測距装置4を配設する。仕上切断のために回転する紙管Cにレーザー光を入射して被測定位置Tまでの距離の変化を捕捉し、紙管Cの円筒度が所定の許容範囲に収まっているか否かを判断する。収まっていない紙管Cにはマーキング装置7によりマーキングして、作業者が当該紙管Cを排除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、巻取紙をワインダー等によって巻き直す際に、巻き直しされる紙のコアとなる紙管の円筒度が所定の許容範囲内に収まっているかを測定する紙管の円筒度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工場で抄紙機により製造された紙は、マシンリールに巻き取られて巻取として完成される。製造された巻取は幅員が大きく、特に近年では生産性の向上を図るためにますます大きくなる傾向がある。一方、新聞社や印刷会社、包装資材会社等の需要者では、広幅で大きな径の巻取を扱う機械装置を所有しておらず、製紙工場としても出荷の際には広幅な巻取は扱いにくい。このため、製紙工場では、抄紙機のマシンリールで巻き取られた巻取を需要者が所有する印刷機等の機械能力に応じて、適当な幅員及び径の巻取に加工したり、所定の寸法の平判紙に裁断して出荷している。
【0003】
マシンリールに巻き取られた巻取をワインダー装置に供して小幅の小巻取に成形し直す場合に、スリッターナイフで小幅に切断された紙は円筒状のコアである紙管に巻き取られる。ワインダー装置には、切断された紙を巻き取るために適宜数の紙管がその軸方向に並べられてセットされており、紙は、それぞれ各別に紙管に巻き取られる。
【0004】
このとき、紙管の面間の長さと円筒度とが、それぞれ一定の範囲内に収まる精度になければならない。面間長さが長い場合や短い場合にはいずれであっても、印刷機等に供する場合に紙管を適切に保持できない。また、円筒度が許容範囲内に収まっていない場合には、印刷機から繰り出される紙の速度に変動が生じてしまうおそれがある。これらの場合には、いずれも適切な位置への印刷が行えなくなってしまい、印刷ずれ等生じてしまうおそれがある。なお、円筒度は、加工された円筒状物の外径寸法が、同軸の二つの円筒の間の空間内に収まっているか否かを示す指標である(JIS B 0021)。
【0005】
この紙管は、例えば特許文献1に記載されているように、帯状のクラフト紙等の素材を芯軸に螺旋状に、且つ、多重に巻き付けて徐々に肉厚が大きくなるようにして徐々に前進させながら製造され、適宜な肉厚となった位置で順次切断される。このときに切断される長さのままでは、面間長さが十分な精度を備えていないため、及び、紙管の両端部に印刷機等にチャックされるための口金を装填する必要があることから、製造された紙管を所定の長さに切断する工程と、両端部に口金を装填する工程とが配されている。これらの工程を経ることによって紙管の面間長さが所定の許容範囲に収まる長さに形成され、口金が装填される。
【0006】
製造された紙管を所定の長さとするために紙管の端部を切断するものとして、例えば、紙管の両端切り落とし装置等がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−288980
【特許文献2】特開2002−144283
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記紙管の円筒度は紙管の製造機によって決定されるもので、例えば、素材に付与する張力や重ね合わせて貼着させる接着剤の量、素材に付与する締め付け力などの、それぞれの変動により巻き状態に強弱が生じて円筒度が変動する。また、紙管製造機により製造された紙管の円筒度を修正することは行われていない。従前では、製造された紙管について円筒度が問題となることはなかったが、近年の印刷機等の高精度化や高速化によって、円筒度が許容範囲内に収まっていない場合には小巻取の円筒度も所定の範囲内に収まらない場合があり、小巻取の外径寸法が一定でなく、紙の繰り出し時に偏芯して回転すると同様な状態となってしまい、繰り出し速度が変動して、印刷ずれ等が生じるおそれのあることが指摘されている。現時点では円筒度の修正を行うことが能わないため、少なくとも、円筒度が所定の許容範囲内に収まっていない紙管を出荷する製品には使用することがないようにしている。しかも、円筒度を定量的に測定することが行われていないため、不適な紙管か否かは作業員の熟練に頼っているもので、円筒度に対する要望が厳しくなっている現状では出荷製品に使用するのに適した紙管か否かの判断に正確性が要求されるようになってきている。
【0009】
そこで、この発明は、出荷製品に係る小巻取の紙の巻き状態が適性になるように、小巻取の紙管の円筒度を測定することができる、紙管の円筒度測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る紙管の円筒度測定装置は、巻取紙を巻回するための芯材となる紙管の円筒度を測定する紙管の円筒度測定装置において、紙管の面間長さを所定の大きさとするために、紙管を回転させながら該紙管の両端部を切断する仕上切断装置と、前記仕上切断装置に供された状態の紙管の中間部の上部に位置している被測定位置の高さを測定する測距装置とからなり、前記紙管が回転している状態で、被測定位置の高さ変動により該紙管の円筒度を測定することを特徴としている。
【0011】
紙管製造機で製造された紙管の面間長さは所定の大きさにないため、両端部を切断して面間長さを所定のものとする必要がある。このとき、紙管を回転させながら切断するから、この回転を利用して、紙管の外周面の位置の変動を測定することにより円筒度を測定するものである。すなわち、前記測距装置で、該測定装置から紙管の被測定位置までの距離を測定し、紙管の回転によるこの距離の変動を捕捉することにより円筒度を測定する。
【0012】
また、請求項2の発明に係る紙管の円筒度測定装置は、前記測距装置を、レーザー光を前記被測定位置に照射して、該レーザー光の投光部から被測定位置までの距離の変動を測定することを特徴としている。
【0013】
前記測距装置にレーザー式のものを用いたものである。測距装置としては、紙管の被測定位置に接触させた接触子が紙管の回転により変位することで被測定位置の高さの変化を捕捉できるが、紙管の回転が高速である場合には、非接触のものが好ましく、しかも、迅速に測定できるレーザー式の測距装置が好ましい。すなわち、投光部から発せられたレーザー光が被測定位置で反射して受光部に入射することにより、このレーザー式測距装置の基準位置から被測定位置までの距離を測定し、この距離の変化を捕捉して円筒度を測定するようにしたものである。
【0014】
また、請求項3の発明に係る紙管の円筒度測定装置は、前記測距装置により測定された被測定位置までの距離に基づいて、円筒度が許容範囲に収まっていない紙管に目印を付するマーキング装置を備えていることを特徴としている。
【0015】
測定された円筒度が許容範囲内に収まっていない不良な紙管は、これに製品となる紙を巻き取ることは不都合であるから、切断後の口金を装填する工程に送られないように排除する。あるいは、紙管の切断から口金の装填までが連続している工程である場合には、口金装填工程を通過した後に排除する。排除すべき紙管を確認できるように、この不良な紙管に目印を付すようにしたものであり、目印が付された紙管は作業員により排除される。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る紙管の円筒度測定装置によれば、製造された紙管の円筒度を測定することにより、当該紙管が紙を巻き取って小巻取の製品とするのに適しているものか否かを確実に判断できる。このため、印刷機に供した場合に、印刷ずれ等を生じない良好な小巻取を出荷することができる。しかも、作業者の熟練によることがないから、確実に紙管の良否を判断することができる。
【0017】
また、紙管の面間長さを所定の大きさにするために両端部を切断する工程に設置することにより、円筒度の測定のための大掛かりな機器や装置を必要とせず、既存の仕上切断装置に設置することができる。
【0018】
また、請求項2の発明に係る紙管の円筒度測定装置によれば、非接触で被測定位置の変動を捕捉できるから、確実に測定することができ、レーザー光によるため、迅速に測定することができる。
【0019】
また、請求項3の発明に係る紙管の円筒度測定装置によれば、作業員により不良な紙管を確実に排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る円筒度測定装置の概略の構成を説明する図であり、紙管仕上装置に設置したものを示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る紙管の円筒度測定装置を具体的に説明する。
【0022】
図1は、既存の紙管仕上装置1を利用してこの円筒度測定装置を設置する場合を示している。この紙管仕上装置1は、紙管製造装置により製造された紙管Cが供給され、該紙管Cの面間長さを所定の大きさとするために両端部を切断する仕上切断工程10と、切断された両端部に口金を挿入して紙管Cの端面に圧着させる口金圧着工程20と、端面に圧着された口金の内周面を外側に向けて突き出させて紙管Cの内周面に固着させる口金ポンチ工程30と、口金が装着された紙管Cに必要な情報を印字する印字工程40とを、順次実行する。また、紙管Cはこれらの工程10〜40の間を、該紙管Cの両端部が載置される搬送装置2、2により、図上矢票Pで示す方向に順次給送される。
【0023】
前記仕上切断工程10では、紙管Cの両端部に回転軸11が挿入され、この回転軸11の回転により紙管Cが回転させられる。この仕上切断工程10に臨んで丸鋸12が配されており、回転する紙管Cをこの丸鋸12で切断するようにしてある。
【0024】
口金圧着工程20では、仕上切断工程10を経て面間長さが調整された紙管Cの両端部に口金3を挿入し、外側から圧着治具21を口金3に挿入して該口金3を紙管Cの端面に圧着させる。
【0025】
前記口金ポンチ工程30では、紙管Cの端部に圧着されて口金3の内側にポンチ31を挿入し、口金3の内側から加圧して口金3の壁部を外側に突出させるようカシメることにより、口金3を紙管Cに固定する。
【0026】
そして、口金3が端部に固定された紙管Cに、当該紙管Cにいずれの仕様の紙を巻き取るための小巻取用のものであるか等の必要な情報が、前記印字工程40で印字される。
【0027】
前記仕上切断工程10に供されている紙管Cの長手方向の中央部に臨んで測距装置としてのレーザー式の測距装置4が設けられており、この測距装置4が発するレーザー光が、紙管Cの最上部に位置する母線上の被測定位置Tに入射するようにしてある。また、この測距装置4の出力信号が制御装置5に接続されており、制御装置5においてこの出力信号に基づいて、前記被測定位置Tまでの距離が許容範囲外にある場合には当該紙管Cを不良品と判断して、その旨の信号を警報装置6とマーキング装置7とのそれぞれに送出する。
【0028】
前記マーキング装置7は、前記仕上切断工程10に供されている紙管Cに臨ませて配されており、紙管Cの径方向に移動可能なマーキング手段7aを備えている。前記制御装置5から提供された不良品である旨の信号を受信すると、例えば、マーキング手段7aが前進して該当する紙管Cに接触し、紙管Cにマーキングするようにしてある。マーキングが完了したならばマーキング手段7aが後退して紙管Cから離隔するようにしてある。なお、このマーキング手段は、前記印字工程40に設置されている印字装置に兼ねさせて、この印字装置により不良な紙管Cを示すマーキングをするようにしても構わない。
【0029】
以上により構成されたこの発明に係る紙管の円筒度測定装置では、前記仕上切断工程10に供給された紙管Cに対して測距装置4からレーザー光を被測定位置Tに照射し、被測定位置Tで反射したレーザー光を受光部で受光し、測距装置4の基準位置から被測定位置Tまでの距離が測定される。このとき、紙管Cは前記丸鋸12によって端部が切断されために、前記回転軸11により回転させられているから、前記被測定位置Tとなる部位が紙管Cの周方向に変位することになる。このため、紙管Cの円筒度が0でない場合には、測距装置4で得られる距離が変化することになる。この変化の範囲が、前記制御装置5において、予め設定された許容範囲に有るか否かで紙管Cの円筒度が判断される。
【0030】
前記測距装置4で得られた距離が許容範囲内にない場合には、その紙管Cの円筒度が許容範囲内になく、この紙管Cは不良品と判断される。したがって、この紙管Cを製品に使用することを回避すべきと判断して、制御装置5は前記警報装置6とマーキング装置7にその旨の警告信号を送出する。
【0031】
警報装置6では、前記警告信号を受信したならば、警告音を吹鳴したり、警告灯を点灯あるいは点滅させて、紙管Cが不良のものであることを作業者に警告する。また、前記マーキング装置7はこの警告信号を受信したならば、警告に係る紙管Cに不良品である旨をマーキング手段7aによってマーキングする。そして、作業者は、マーキングされている紙管Cを排除する。なお、紙管Cは紙管仕上装置1に供されているため、印字工程40まで順次給送されるから、この印字工程40を通過した後に排除することになる。
【0032】
以上説明した実施形態では、紙管仕上装置1に測距装置4を設けた場合について説明したが、紙管Cを回転させる工程に測距装置4を設けるものであれば、例えば、単独の仕上切断装置に設けるものであっても構わない。この場合には、不良な紙管Cは仕上切断装置から次の口金装着装置へ給送する際に排除することができ、不良な紙管Cに口金を装着することがなく、無駄な口金の利用をなくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明に係る紙管の円筒度測定装置によれば、小巻取に供した場合に印刷ずれ等を生じるおそれがある紙管を確実に排除できるから、小巻取に形成された製品の信頼性の向上に寄与する。
【符号の説明】
【0034】
C 紙管
1 紙管仕上装置
2 搬送装置
3 口金
4 測距装置
5 制御装置
6 警報装置
7 マーキング装置
10 仕上切断工程
12 丸鋸
20 口金圧着工程
30 口金ポンチ工程
40 印字工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取紙を巻回するための芯材となる紙管の円筒度を測定する紙管の円筒度測定装置において、
紙管の面間長さを所定の大きさとするために、紙管を回転させながら該紙管の両端部を切断する仕上切断装置と、
前記仕上切断装置に供された状態の紙管の中間部の上部に位置している被測定位置の高さを測定する測距装置とからなり、
前記紙管が回転している状態で、被測定位置の高さ変動により該紙管の円筒度を測定することを特徴とする紙管の円筒度測定装置。
【請求項2】
前記測距装置を、レーザー光を前記被測定位置に照射して、該レーザー光の投光部から被測定位置までの距離の変動を測定することを特徴とする請求項1に記載の紙管の円筒度測定装置。
【請求項3】
前記測距装置により測定された被測定位置までの距離に基づいて、円筒度が許容範囲に収まっていない紙管に目印を付するマーキング装置を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紙管の円筒度測定装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−230555(P2010−230555A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79637(P2009−79637)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】