紙葉類の厚さ判別装置
【課題】紙幣の厚みが部分的に異なっている場合でも、また、紙幣の搬送状態が異なる場合でも確実にその厚みの良否を判別できるようにする。
【解決手段】予め、紙葉類の種類毎、搬送状態毎に厚みデータを収集し、この収集された厚みデータに一定の演算を施して作成された閾値を記憶する記憶部16と、第1及び第2のラインセンサ2,3によって読み取られた紙幣の読取情報に基づいてその種類、搬送状態を検出し、この検出情報に対応する紙幣の厚さデータの閾値を記憶部16から選択し、この選択した閾値を用いて厚さセンサ4によって検出された紙葉類の厚さが正常であるか否かを判別する制御部13とを具備する。
【解決手段】予め、紙葉類の種類毎、搬送状態毎に厚みデータを収集し、この収集された厚みデータに一定の演算を施して作成された閾値を記憶する記憶部16と、第1及び第2のラインセンサ2,3によって読み取られた紙幣の読取情報に基づいてその種類、搬送状態を検出し、この検出情報に対応する紙幣の厚さデータの閾値を記憶部16から選択し、この選択した閾値を用いて厚さセンサ4によって検出された紙葉類の厚さが正常であるか否かを判別する制御部13とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紙幣などの紙葉類の厚さを判別する紙葉類の厚さ判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の厚さ判別装置には、変位ローラと、この変位ローラに紙葉類の搬送路を介して対向配置される固定ローラを備えてなるものがある。紙葉類は変位ローラと固定ローラとの間に搬送され、この搬送により変位ローラが変位する事で厚みデータが得られるようになっている。この厚みデータは紙葉類の搬送方向先端から後端に亘って一定の間隔でサンプリングされてセンサ毎に記憶部に保持される。
【0003】
一方、厚み判定用の閾値は、記憶部に格納されている。この閾値は、紙葉類の種別毎に予め収集した紙葉データを紙葉類の種別毎に統計処理により平滑化し、紙葉類の厚み分布に対する平均値から1種別に1つ作成される。
【0004】
厚み判別装置は、搬送される紙葉類の特徴から判別された判別情報を受け、この判別情報に対応する厚み判別閾値を記憶部から選択する。そして、この選択した閾値と紙葉類の厚みデータとを比較することにより紙葉類の厚みが正常か、否か(重ね取りや異物付着等)かを判別している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平4−284591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、厚み判別装置が用いる厚さ判別閾値は、予め収集した種別毎の紙葉類の厚みデータから各々統計計算した平均値を基本にして作成されている。これら閾値を用いた場合、紙葉類全体の厚みが均一であれば、安定した厚み判定結果を得る事ができる。
【0006】
しかしながら、印刷形態やセキュリティアイテムの搭載により紙葉類の厚み平均値に対して部分的に厚みが異なる紙葉類を判別する場合には、均一な厚みを持つ紙葉類に比べて安定した厚み判別結果が得られない事があった。
【0007】
例えば、紙葉類の厚い部分を考慮した判定閾値を設定した場合、厚い部分以外に付着した異物の検出性能が低下したり、特定の厚い部分以外の厚みデータで判定閾値を作成した場合には、紙葉類の製造ばらつき等により、特定の厚い部分のデータで厚さ異常と判別する事があった。
【0008】
また、紙葉類が搬送中のどの位置を搬送されるかによって、厚さセンサが特定厚み部分をスキャンする場合とスキャンしない場合があり、判別結果に再現性が得られない場合があった。
【0009】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、紙葉類の厚みが部分的に異なっている場合でも、また、紙葉類の搬送が異なる場合であっても確実に厚みの良否を判別できるようにした紙葉類の厚さ判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1記載のものは、紙葉類を搬送する搬送手段と、この搬送手段によって搬送される紙葉類の射影データを読み取る第1の読取部と、前記紙葉類の画像情報を読み取る第2の読取部と、前記搬送手段によって搬送される紙葉類の厚みを検出する厚み検出手段と、予め、前記紙葉類の種類毎、搬送状態毎に前記紙葉類の厚みデータを収集し、この収集した厚みデータに一定の演算を施して作成した閾値を記憶する記憶手段と、前記第1及び第2の読取部によって読み取られた紙葉類の読取情報に基づいて前記紙葉類の種類、搬送状態を検出し、この検出情報に対応する紙葉類の厚みデータの閾値を前記記憶手段から選択し、この選択した閾値を用いて前記厚み検出手段によって検出された紙葉類の厚みが正常であるか否かを判別する判別手段とを具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙葉類の厚みが部分的に異なっている場合でも、また、紙葉類の搬送状態が異なる場合であっても、確実に厚みの良否を判別できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態である紙葉類の厚み判別装置を示す構成図である。
【0014】
この厚み判別装置は装置本体Hを備え、この装置本体H内には紙葉類としての紙幣を搬送する搬送手段としての搬送路1が設けられている。また、装置本体H内には紙幣の搬送方向に亘って第1の読取部としての第1のラインセンサ2、第2の読取部としての第2のラインセンサ3、及び厚み検出手段としての厚みセンサ4が配設されている。第1のラインセンサ2は搬送される紙幣の全面の射影情報を読み出すもので、第2のラインセンサ3は搬送される紙幣の絵柄や文字を読み出すものである。
【0015】
図2は、厚み判別装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
第1及び第2のラインセンサ2,3、さらに、厚みセンサ4は、アナログ・デジタル変換器9〜11を介して判別手段としての制御部13に接続されている。制御部13には辞書手段としての辞書部15及び記憶部16が接続されている。
【0017】
辞書部15は、予め、準備した紙幣の金種、表裏、正逆、判別用の辞書データを格納するものである。
【0018】
記憶部16は、厚みセンサ4によって検出された紙葉類の厚みデータを格納するとともに、取り扱う全ての紙幣について、その金種,表裏、正逆方向,搬送角度毎に予め収集したデータに一定の演算を施して作成された図4に示すような判別閾値を格納するものである。
【0019】
図3は、厚みセンサ4を示すものである。
【0020】
厚みセンサ4は、紙幣Pの搬送方向に対し直交する方向に所定間隔を存して配設される第1乃至第6のセンサ部4a〜4fを有している。第1乃至第6のセンサ部4a〜4fは、図1に示すように固定された基準ローラ6と、この基準ローラ6に搬送路1を介して対向配置され紙幣の厚みに応じた量だけ変位する可動ローラ7とによって構成されている。
【0021】
次に、紙幣の厚さ判別動作について説明する。
【0022】
図1に矢印で示すように紙幣が厚み判別装置内に挿入されて搬送路1に沿って搬送されると、まず、第1のラインセンサ2によってその射影情報が検出される。この検出情報は、制御部13に送信され、射影データとしてライン毎に収集格納される。制御部13は、格納した搬送紙幣の射影データに基づいて例えば、図2に示すように搬送される紙幣のセンター位置CPと傾斜角θを算出する。
【0023】
第1のラインセンサ2を通過した紙幣は第2のラインセンサ3に搬送され、その絵柄や文字データが読み出される。この紙幣表面の特徴データは制御部13に送信されてライン毎に収集格納される。
【0024】
紙幣が第2のラインセンサ3を通過してその全面のデータ読み込みが終了すると、制御部13は格納したデータと、予め辞書部15に準備した金種、表裏、正逆判別用の辞書データとを比較処理して紙幣の金種,表裏、正逆を判別する。
【0025】
第2のラインセンサ3を通過した紙幣は、厚みセンサ4に搬送されてその厚さが検出される。この検出された厚さデータは制御部13に送信される。制御部13は送信された厚さデータを紙幣の厚み変化が十分に識別可能な分解能でサンプルする。
【0026】
例えば、図6に示すように、厚さセンサ4のセンサ部4a〜4f毎に1mm単位でセンサ部4a〜4fからの出力をサンプルし記憶部16に格納する。
【0027】
紙幣が厚みセンサ4を通過した事を確認すると、制御部13は記憶部16に保持した厚みセンサデータから搬送紙幣の厚み判定を実施する。
【0028】
厚み判定処理には紙幣の厚みデータが正常か異常かを識別する閾値を用いる。判定処理で用いる閾値と処理の関係は以下の通りとする。
【0029】
厚み下限閾値>搬送券厚みデータの場合には、厚さが下限以下として厚さ異常とする。
【0030】
厚み上限閾値<搬送券厚みデータの場合には、厚さが上限以上として厚さ異常とする。
【0031】
次に、厚み判定を行う際の判定閾値の作成基準について説明する。
【0032】
例えば、図3に示すように印刷や真偽アイテムの搭載により部分的に厚い紙幣Pが搬送されてきた場合、紙幣P上に存在する部分的な厚い特徴は、搬送位置によって以下のように変化する。即ち、紙幣が位置Aに沿って搬送されてくる場合には、図7に示すようにセンサ部4aの出力が変化し、位置Bに沿って搬送されてくる場合には、図8に示す様にセンサ部4aの出力が変化する。
【0033】
また、紙幣が角度を持って搬送された場合も同様で、位置Aでは図9に示すようセンサ部4aの出力が変化する。
【0034】
さらに、紙幣がその厚い部分が反対になる状態で位置Aに沿って搬送された場合には、紙幣の厚い部分は、センサ部4aではなくセンサ部4fによって検出される。
【0035】
従って、紙幣の厚い部分を正確に読み取って厚み判定処理を行うには、紙幣の金種、搬送方向,搬送角度により変化する厚みデータに対してそれぞれ判定閾値を設定する必要がある。
【0036】
そこで、紙幣処理装置が取り扱う全ての紙幣について、その金種,表裏、正逆方向,搬送角度毎に予め収集したデータに一定の演算を施して厚み判定閾値を作成し、この作成した閾値を記憶部16に格納する。
【0037】
例えば、図3の位置Aに沿って搬送される紙幣の厚みセンサ4aから得られた図7に示す厚みデータは、その大きさに応じて紙幣Pの搬送方向先端から後端に向かって区間a、区間b、区間cの3種類に分割する事ができる。
【0038】
同様に角度θで搬送される紙幣Pについても図9に示すように厚みの大きさに応じて3つの区間a、区間b、区間cに分割する事ができる。
【0039】
判定閾値は、各金種,表裏正逆,搬送位置,搬送角度に応じて収集した大量の紙幣厚みデータから、厚み変動点と各区間の平均値を算出し、重ね取りの判別閾値は定数K1、紙幣の厚みよりも薄い異物付着検出用の判別閾値は定数K2により算出される。
【0040】
この厚みセンサ4から得られた紙幣の厚みデータと判別閾値との関係は図10に示すようになる。
【0041】
厚み判定閾値は前述のように紙幣の金種、表裏、正逆,搬送位置、搬送角度毎に例えば、図4に示すように記憶部16に格納される。この格納された厚み判定閾値は、制御部13が厚みを判定する際に参照される。
【0042】
本判定閾値を厚み判別装置に搭載した場合には、例えば、図11で示すテープ貼り紙幣について異物判定する際、紙幣の厚い部分、及び薄い部分に応じた異物検出閾値が設定される。
【0043】
従って、テープが付着している区間bでは元々の紙幣の厚み量が大きいため異物検出閾値も高くなり、区間cでは元々の紙幣の厚み量が小さいため閾値も低くなる。
【0044】
即ち、紙幣自体の厚み量に対してどちらの区間も同じ基準の閾値が設定されるため、紙幣特有の厚み変動に影響を受けずに、上述の判定論理において、厚みが紙幣厚み上限閾値を超える事で、紙幣上に付着したテープの検出処理を行う事ができる。
【0045】
上記したように、取り扱う全ての紙葉類について、予め、その種類毎、搬送状態毎に厚みデータを収集し、この収集された厚みデータに一定の演算を施して作成された閾値を記憶部16に格納し、第1及び第2のラインセンサ2,3の読取情報に基づいて検出した紙幣の検出情報に対応する閾値を記憶部16から選択し、この選択した閾値に基づいて紙幣の厚さの良否を判別する。従って、紙幣自体の厚みが薄い部分に異物が付着した場合でも、また、ラインセンサ2,3がスキャンする紙幣の位置や角度が変わった場合でも、その厚さの良否を良好に判別することができる。
【0046】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態である紙幣の厚さ判別装置を示す構成図。
【図2】同紙幣の厚さ判別装置の構成を示すブロック図。
【図3】同厚さ判別装置の搬送路に沿って搬送される紙幣の状態を示す平面図。
【図4】同記憶部に格納される閾値を示す図。
【図5】同厚さセンサによって厚さが検出される紙幣を示す平面図。
【図6】同記憶部に記憶される厚みデータを示すグラフ図。
【図7】同厚さセンサによって検出される厚さデータの変化を示す図。
【図8】同厚さセンサによって検出される厚さデータの変化を示す図。
【図9】同厚さセンサによって検出される厚さデータの変化を示す図。
【図10】同重ね取り判定閾値、及び異物判定閾値を示すグラフ図。
【図11】同異物判定閾値によってテープ貼りの紙幣が判定された状態を示す図。
【符号の説明】
【0048】
P…紙幣(紙葉類)、1…搬送路(搬送手段)、2…第1のラインセンサ(第1の読取部/読取手段)、3…第2のラインセンサ(第2の読取部/読取手段)、4…厚みセンサ(厚み検出手段)、13…制御部(判別手段)、15…辞書部、16…記憶部(記憶手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紙幣などの紙葉類の厚さを判別する紙葉類の厚さ判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の厚さ判別装置には、変位ローラと、この変位ローラに紙葉類の搬送路を介して対向配置される固定ローラを備えてなるものがある。紙葉類は変位ローラと固定ローラとの間に搬送され、この搬送により変位ローラが変位する事で厚みデータが得られるようになっている。この厚みデータは紙葉類の搬送方向先端から後端に亘って一定の間隔でサンプリングされてセンサ毎に記憶部に保持される。
【0003】
一方、厚み判定用の閾値は、記憶部に格納されている。この閾値は、紙葉類の種別毎に予め収集した紙葉データを紙葉類の種別毎に統計処理により平滑化し、紙葉類の厚み分布に対する平均値から1種別に1つ作成される。
【0004】
厚み判別装置は、搬送される紙葉類の特徴から判別された判別情報を受け、この判別情報に対応する厚み判別閾値を記憶部から選択する。そして、この選択した閾値と紙葉類の厚みデータとを比較することにより紙葉類の厚みが正常か、否か(重ね取りや異物付着等)かを判別している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平4−284591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、厚み判別装置が用いる厚さ判別閾値は、予め収集した種別毎の紙葉類の厚みデータから各々統計計算した平均値を基本にして作成されている。これら閾値を用いた場合、紙葉類全体の厚みが均一であれば、安定した厚み判定結果を得る事ができる。
【0006】
しかしながら、印刷形態やセキュリティアイテムの搭載により紙葉類の厚み平均値に対して部分的に厚みが異なる紙葉類を判別する場合には、均一な厚みを持つ紙葉類に比べて安定した厚み判別結果が得られない事があった。
【0007】
例えば、紙葉類の厚い部分を考慮した判定閾値を設定した場合、厚い部分以外に付着した異物の検出性能が低下したり、特定の厚い部分以外の厚みデータで判定閾値を作成した場合には、紙葉類の製造ばらつき等により、特定の厚い部分のデータで厚さ異常と判別する事があった。
【0008】
また、紙葉類が搬送中のどの位置を搬送されるかによって、厚さセンサが特定厚み部分をスキャンする場合とスキャンしない場合があり、判別結果に再現性が得られない場合があった。
【0009】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、紙葉類の厚みが部分的に異なっている場合でも、また、紙葉類の搬送が異なる場合であっても確実に厚みの良否を判別できるようにした紙葉類の厚さ判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1記載のものは、紙葉類を搬送する搬送手段と、この搬送手段によって搬送される紙葉類の射影データを読み取る第1の読取部と、前記紙葉類の画像情報を読み取る第2の読取部と、前記搬送手段によって搬送される紙葉類の厚みを検出する厚み検出手段と、予め、前記紙葉類の種類毎、搬送状態毎に前記紙葉類の厚みデータを収集し、この収集した厚みデータに一定の演算を施して作成した閾値を記憶する記憶手段と、前記第1及び第2の読取部によって読み取られた紙葉類の読取情報に基づいて前記紙葉類の種類、搬送状態を検出し、この検出情報に対応する紙葉類の厚みデータの閾値を前記記憶手段から選択し、この選択した閾値を用いて前記厚み検出手段によって検出された紙葉類の厚みが正常であるか否かを判別する判別手段とを具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙葉類の厚みが部分的に異なっている場合でも、また、紙葉類の搬送状態が異なる場合であっても、確実に厚みの良否を判別できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態である紙葉類の厚み判別装置を示す構成図である。
【0014】
この厚み判別装置は装置本体Hを備え、この装置本体H内には紙葉類としての紙幣を搬送する搬送手段としての搬送路1が設けられている。また、装置本体H内には紙幣の搬送方向に亘って第1の読取部としての第1のラインセンサ2、第2の読取部としての第2のラインセンサ3、及び厚み検出手段としての厚みセンサ4が配設されている。第1のラインセンサ2は搬送される紙幣の全面の射影情報を読み出すもので、第2のラインセンサ3は搬送される紙幣の絵柄や文字を読み出すものである。
【0015】
図2は、厚み判別装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
第1及び第2のラインセンサ2,3、さらに、厚みセンサ4は、アナログ・デジタル変換器9〜11を介して判別手段としての制御部13に接続されている。制御部13には辞書手段としての辞書部15及び記憶部16が接続されている。
【0017】
辞書部15は、予め、準備した紙幣の金種、表裏、正逆、判別用の辞書データを格納するものである。
【0018】
記憶部16は、厚みセンサ4によって検出された紙葉類の厚みデータを格納するとともに、取り扱う全ての紙幣について、その金種,表裏、正逆方向,搬送角度毎に予め収集したデータに一定の演算を施して作成された図4に示すような判別閾値を格納するものである。
【0019】
図3は、厚みセンサ4を示すものである。
【0020】
厚みセンサ4は、紙幣Pの搬送方向に対し直交する方向に所定間隔を存して配設される第1乃至第6のセンサ部4a〜4fを有している。第1乃至第6のセンサ部4a〜4fは、図1に示すように固定された基準ローラ6と、この基準ローラ6に搬送路1を介して対向配置され紙幣の厚みに応じた量だけ変位する可動ローラ7とによって構成されている。
【0021】
次に、紙幣の厚さ判別動作について説明する。
【0022】
図1に矢印で示すように紙幣が厚み判別装置内に挿入されて搬送路1に沿って搬送されると、まず、第1のラインセンサ2によってその射影情報が検出される。この検出情報は、制御部13に送信され、射影データとしてライン毎に収集格納される。制御部13は、格納した搬送紙幣の射影データに基づいて例えば、図2に示すように搬送される紙幣のセンター位置CPと傾斜角θを算出する。
【0023】
第1のラインセンサ2を通過した紙幣は第2のラインセンサ3に搬送され、その絵柄や文字データが読み出される。この紙幣表面の特徴データは制御部13に送信されてライン毎に収集格納される。
【0024】
紙幣が第2のラインセンサ3を通過してその全面のデータ読み込みが終了すると、制御部13は格納したデータと、予め辞書部15に準備した金種、表裏、正逆判別用の辞書データとを比較処理して紙幣の金種,表裏、正逆を判別する。
【0025】
第2のラインセンサ3を通過した紙幣は、厚みセンサ4に搬送されてその厚さが検出される。この検出された厚さデータは制御部13に送信される。制御部13は送信された厚さデータを紙幣の厚み変化が十分に識別可能な分解能でサンプルする。
【0026】
例えば、図6に示すように、厚さセンサ4のセンサ部4a〜4f毎に1mm単位でセンサ部4a〜4fからの出力をサンプルし記憶部16に格納する。
【0027】
紙幣が厚みセンサ4を通過した事を確認すると、制御部13は記憶部16に保持した厚みセンサデータから搬送紙幣の厚み判定を実施する。
【0028】
厚み判定処理には紙幣の厚みデータが正常か異常かを識別する閾値を用いる。判定処理で用いる閾値と処理の関係は以下の通りとする。
【0029】
厚み下限閾値>搬送券厚みデータの場合には、厚さが下限以下として厚さ異常とする。
【0030】
厚み上限閾値<搬送券厚みデータの場合には、厚さが上限以上として厚さ異常とする。
【0031】
次に、厚み判定を行う際の判定閾値の作成基準について説明する。
【0032】
例えば、図3に示すように印刷や真偽アイテムの搭載により部分的に厚い紙幣Pが搬送されてきた場合、紙幣P上に存在する部分的な厚い特徴は、搬送位置によって以下のように変化する。即ち、紙幣が位置Aに沿って搬送されてくる場合には、図7に示すようにセンサ部4aの出力が変化し、位置Bに沿って搬送されてくる場合には、図8に示す様にセンサ部4aの出力が変化する。
【0033】
また、紙幣が角度を持って搬送された場合も同様で、位置Aでは図9に示すようセンサ部4aの出力が変化する。
【0034】
さらに、紙幣がその厚い部分が反対になる状態で位置Aに沿って搬送された場合には、紙幣の厚い部分は、センサ部4aではなくセンサ部4fによって検出される。
【0035】
従って、紙幣の厚い部分を正確に読み取って厚み判定処理を行うには、紙幣の金種、搬送方向,搬送角度により変化する厚みデータに対してそれぞれ判定閾値を設定する必要がある。
【0036】
そこで、紙幣処理装置が取り扱う全ての紙幣について、その金種,表裏、正逆方向,搬送角度毎に予め収集したデータに一定の演算を施して厚み判定閾値を作成し、この作成した閾値を記憶部16に格納する。
【0037】
例えば、図3の位置Aに沿って搬送される紙幣の厚みセンサ4aから得られた図7に示す厚みデータは、その大きさに応じて紙幣Pの搬送方向先端から後端に向かって区間a、区間b、区間cの3種類に分割する事ができる。
【0038】
同様に角度θで搬送される紙幣Pについても図9に示すように厚みの大きさに応じて3つの区間a、区間b、区間cに分割する事ができる。
【0039】
判定閾値は、各金種,表裏正逆,搬送位置,搬送角度に応じて収集した大量の紙幣厚みデータから、厚み変動点と各区間の平均値を算出し、重ね取りの判別閾値は定数K1、紙幣の厚みよりも薄い異物付着検出用の判別閾値は定数K2により算出される。
【0040】
この厚みセンサ4から得られた紙幣の厚みデータと判別閾値との関係は図10に示すようになる。
【0041】
厚み判定閾値は前述のように紙幣の金種、表裏、正逆,搬送位置、搬送角度毎に例えば、図4に示すように記憶部16に格納される。この格納された厚み判定閾値は、制御部13が厚みを判定する際に参照される。
【0042】
本判定閾値を厚み判別装置に搭載した場合には、例えば、図11で示すテープ貼り紙幣について異物判定する際、紙幣の厚い部分、及び薄い部分に応じた異物検出閾値が設定される。
【0043】
従って、テープが付着している区間bでは元々の紙幣の厚み量が大きいため異物検出閾値も高くなり、区間cでは元々の紙幣の厚み量が小さいため閾値も低くなる。
【0044】
即ち、紙幣自体の厚み量に対してどちらの区間も同じ基準の閾値が設定されるため、紙幣特有の厚み変動に影響を受けずに、上述の判定論理において、厚みが紙幣厚み上限閾値を超える事で、紙幣上に付着したテープの検出処理を行う事ができる。
【0045】
上記したように、取り扱う全ての紙葉類について、予め、その種類毎、搬送状態毎に厚みデータを収集し、この収集された厚みデータに一定の演算を施して作成された閾値を記憶部16に格納し、第1及び第2のラインセンサ2,3の読取情報に基づいて検出した紙幣の検出情報に対応する閾値を記憶部16から選択し、この選択した閾値に基づいて紙幣の厚さの良否を判別する。従って、紙幣自体の厚みが薄い部分に異物が付着した場合でも、また、ラインセンサ2,3がスキャンする紙幣の位置や角度が変わった場合でも、その厚さの良否を良好に判別することができる。
【0046】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態である紙幣の厚さ判別装置を示す構成図。
【図2】同紙幣の厚さ判別装置の構成を示すブロック図。
【図3】同厚さ判別装置の搬送路に沿って搬送される紙幣の状態を示す平面図。
【図4】同記憶部に格納される閾値を示す図。
【図5】同厚さセンサによって厚さが検出される紙幣を示す平面図。
【図6】同記憶部に記憶される厚みデータを示すグラフ図。
【図7】同厚さセンサによって検出される厚さデータの変化を示す図。
【図8】同厚さセンサによって検出される厚さデータの変化を示す図。
【図9】同厚さセンサによって検出される厚さデータの変化を示す図。
【図10】同重ね取り判定閾値、及び異物判定閾値を示すグラフ図。
【図11】同異物判定閾値によってテープ貼りの紙幣が判定された状態を示す図。
【符号の説明】
【0048】
P…紙幣(紙葉類)、1…搬送路(搬送手段)、2…第1のラインセンサ(第1の読取部/読取手段)、3…第2のラインセンサ(第2の読取部/読取手段)、4…厚みセンサ(厚み検出手段)、13…制御部(判別手段)、15…辞書部、16…記憶部(記憶手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を搬送する搬送手段と、
この搬送手段によって搬送される紙葉類の射影データを読み取る第1の読取部と、
前記紙葉類の画像情報を読み取る第2の読取部と、
前記搬送手段によって搬送される紙葉類の厚みを検出する厚み検出手段と、
予め、前記紙葉類の種類毎、搬送状態毎に前記紙葉類の厚みデータを収集し、この収集した厚みデータに一定の演算を施して作成した閾値を記憶する記憶手段と、
前記第1及び第2の読取部によって読み取られた紙葉類の読取情報に基づいて前記紙葉類の種類、搬送状態を検出し、この検出情報に対応する紙葉類の厚みデータの閾値を前記記憶手段から選択し、この選択した閾値を用いて前記厚み検出手段によって検出された紙葉類の厚みが正常であるか否かを判別する判別手段と
を具備することを特徴とする紙葉類の厚さ判別装置。
【請求項2】
前記第1の読取部は、第1のラインセンサで、
前記判別手段は、前記第1のラインセンサが読み取ったデータをライン毎に格納し、この格納したデータに基づいて紙葉類の搬送状態を検出することを特徴とする請求項1記載の紙葉類の厚さ判別装置。
【請求項3】
前記紙葉類の種類、表裏、及び正逆を判別するための辞書データを記憶する辞書部を有し、
前記第2の読取部は、第2のラインセンサで、
前記判別手段は、前記第2のラインセンサが読み取ったデータをライン毎に格納し、この格納したデータを前記辞書部の辞書データと比較して紙葉類の種類、表裏、及び正逆を判別することを特徴とする請求項1記載の紙葉類の厚さ判別装置。
【請求項4】
前記厚み検出センサによって検出された厚みデータを記憶する記憶部を有し、
前記判別手段は、前記記憶部に記憶された厚みデータから紙葉類の厚みを判別することを特徴とする請求項1記載の紙葉類の厚さ判別装置。
【請求項5】
前記収集された厚みデータから厚み変動点と、紙葉類の搬送方向に沿って複数に分割された前記厚みデータの各区間の平均値を算出し、この算出値に定数K1を加算した値を紙葉類の重ね取り判別用の閾値とし、前記算出値に定数K2を加算した値を、異物付着判別用の閾値とすることを特徴とする請求項1記載の紙葉類の厚さ判別装置。
【請求項1】
紙葉類を搬送する搬送手段と、
この搬送手段によって搬送される紙葉類の射影データを読み取る第1の読取部と、
前記紙葉類の画像情報を読み取る第2の読取部と、
前記搬送手段によって搬送される紙葉類の厚みを検出する厚み検出手段と、
予め、前記紙葉類の種類毎、搬送状態毎に前記紙葉類の厚みデータを収集し、この収集した厚みデータに一定の演算を施して作成した閾値を記憶する記憶手段と、
前記第1及び第2の読取部によって読み取られた紙葉類の読取情報に基づいて前記紙葉類の種類、搬送状態を検出し、この検出情報に対応する紙葉類の厚みデータの閾値を前記記憶手段から選択し、この選択した閾値を用いて前記厚み検出手段によって検出された紙葉類の厚みが正常であるか否かを判別する判別手段と
を具備することを特徴とする紙葉類の厚さ判別装置。
【請求項2】
前記第1の読取部は、第1のラインセンサで、
前記判別手段は、前記第1のラインセンサが読み取ったデータをライン毎に格納し、この格納したデータに基づいて紙葉類の搬送状態を検出することを特徴とする請求項1記載の紙葉類の厚さ判別装置。
【請求項3】
前記紙葉類の種類、表裏、及び正逆を判別するための辞書データを記憶する辞書部を有し、
前記第2の読取部は、第2のラインセンサで、
前記判別手段は、前記第2のラインセンサが読み取ったデータをライン毎に格納し、この格納したデータを前記辞書部の辞書データと比較して紙葉類の種類、表裏、及び正逆を判別することを特徴とする請求項1記載の紙葉類の厚さ判別装置。
【請求項4】
前記厚み検出センサによって検出された厚みデータを記憶する記憶部を有し、
前記判別手段は、前記記憶部に記憶された厚みデータから紙葉類の厚みを判別することを特徴とする請求項1記載の紙葉類の厚さ判別装置。
【請求項5】
前記収集された厚みデータから厚み変動点と、紙葉類の搬送方向に沿って複数に分割された前記厚みデータの各区間の平均値を算出し、この算出値に定数K1を加算した値を紙葉類の重ね取り判別用の閾値とし、前記算出値に定数K2を加算した値を、異物付着判別用の閾値とすることを特徴とする請求項1記載の紙葉類の厚さ判別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−72885(P2007−72885A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260959(P2005−260959)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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