説明

紙葉類処理装置

【課題】 紙葉類に付着する小さな異物、あるいは紙葉類に生じた小さな欠損を感度よく検知、判別することが可能となる。
【解決手段】 搬送される紙葉類10に対して超音波を照射する超音波発生源16と、前記紙葉類10の搬送方向を横切る方向に配列され、前記紙葉類を通過した前記超音波の音圧を検出する複数の検出素子18−1〜18−nを有する検出アレイ18とを有し、
所定の標準値と前記音圧とを比較し、前記紙葉類の状態を判定する紙葉類処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類に付着する異物を検出するための紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の加工・印刷が施された紙葉類において、破損・補修のためにテープが貼られた紙葉類や、破れて欠損部ができた紙葉類は流通に適さないものとして分別する必要があり、紙葉類の監査機や分類集計機には、テープのような異物の有無、あるいは欠損部の有無を検知・判定して分別する機構・方法が求められている。これに対し、例えば特開2008−207885号広報では、紙葉類に超音波を照射し、通過した超音波の減衰量を測定することで、紙葉類に付着する異物の有無を確認する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−207885号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、紙葉類に付着する異物の検出方法が提案されているが、従来の検出方法では検出感度が十分ではなく、サイズの小さな異物の検出、あるいはサイズの小さな欠損の検出を正確に行うことが困難であった。
【0005】
本発明は、紙葉類に付着する小さな異物、あるいは紙葉類に生じた小さな欠損を感度よく検知、判別できる紙葉類処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の紙葉類処理装置は、搬送される紙葉類に対して超音波を照射する超音波発生源と、前記紙葉類の搬送方向を横切る方向に配列され、前記紙葉類を通過した前記超音波の音圧を検出する複数の検出素子を有する検出アレイと、所定の標準値と前記音圧とを比較し、前記紙葉類の状態を判定する判定部とを有することを特徴とする。
【0007】
このように、複数の検出素子を用いることで個々の検出素子を小型化でき、個々の検出素子の検出面積に対する紙葉類に付着する異物の付着面積(、あるいは欠損面積)の比率を大きくすることが可能になるため、検出精度が高まり、サイズの小さな異物を検出/判定することが可能になる。
【0008】
また、前記超音波発生源と前記検出アレイとは、非接触で配置することができる。さらに、前記超音波発生源と前記検出アレイとが正対する状態で、紙葉類に対する角度を変えて配置しても良い。
【0009】
また、前記搬送方向の上流側に、前記検出アレイと並列して配列され、前記超音波の音圧を検出する複数の検出素子を有し、前記紙葉類を検知してからの時間を測定して前記検出アレイによる前記紙葉類の検出位置を検出することが可能となる。
【0010】
また、前記検出アレイは前記紙葉類を横断する幅を有すると共に、前記検出アレイ中央部の前記検出素子の幅は、アレイ端部の前記検出素子の幅よりも大きくすることが好ましい。
【0011】
このようにすることで、紙葉類端部に付着する異物、紙葉類端部の欠損をより正確に検出することが可能になる。
【0012】
本発明の紙葉類処理装置は、搬送される紙葉類に対して超音波を照射する超音波発生源と、前記紙葉類の搬送方向を横切る方向に配列され、前記紙葉類を通過した前記超音波の音圧を検出する複数の検出素子を有する検出アレイとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
紙葉類に付着する小さな異物、あるいは紙葉類に生じた小さな欠損を感度よく検知、判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る紙葉類処理装置を概略的に示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る超音波発生源と検出アレイを示す斜視図である。
【図3】検出アレイの変形例を示す概念図である。
【図4】第1の実施の形態に係る検出アレイの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る紙葉類処理装置を説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る紙葉類の異物の付着を検出する紙葉類処理装置の概略構成を示している。この紙葉類処理装置は、図1に示されるように、搬送される紙葉類10に超音波を照射する音源16を備えている。この音源16は、パルス信号発生部24から送られてくる信号に応じた超音波を発生し、複数の搬送ローラ6から構成される搬送機構によって平坦性を維持するように矢印方向に搬送される紙葉類10に超音波を照射する。音源16は、例えば、圧電振動子等の超音波トランスデューサ等を使用すればよい。
【0017】
紙葉類処理装置は、紙葉類10を通過した超音波の音圧を検出する検出アレイ18を備えている。この検出アレイ18は、紙葉類10を搬送する搬送路(点線で示す)を介して音源16に対向配置されている。検出センサ18として、例えば超音波トランスデューサを用いることができ、超音波トランスデューサは受信した超音波の音圧に応じた大きさの電気信号に変換する。超音波トランスデューサの他にも、マイクロフォンを用いたり、検出アレイ18が干渉光を利用して振動を変位として計測する変位計で構成され振動音の音圧の代わりに紙葉類10の厚み方向の振幅が検出してもよい。
【0018】
なお、紙葉類10には予め所定の加工・印刷が為されているため、標準(未使用)の紙葉類10であっても、検出される音圧等は検出部位によって異なる。
【0019】
紙葉類10の搬送方向に対し、付着物検出アレイ18の上流側には、位置検出アレイ22が配置されている。例えば、位置検出アレイ22は、付着物検出アレイ18と同様な構成のものが使用できる。位置検出アレイ22では、紙葉類10が検出部に進入すると同時に音源16から発生した超音波の受信音圧が急激に減少する。この情報は演算部に送られ、演算部30では受信音圧が減少してからの時間を算出することができ、紙葉類10の付着物検出アレイ18による検出部位を把握することができる。
【0020】
また、検出アレイ18によって検出された超音波は増幅器32によって増幅され、演算部30によって演算処理が為される。演算部30には、予め未使用の紙葉類10の各部位で検出されるべき標準音圧情報が記憶されており、記憶された標準音圧情報に対する付着物検出アレイ18によって検出された音圧情報との差分を各部位毎に算出する。判定部34では、送られてきた算出結果に基づいて、付着物や欠損の有無、さらには流通に適するか否かの判定を行う。
【0021】
図2は、測定位置における拡大図であり、図面を用いて本実施形態をより詳細に説明する。
【0022】
音源16と、位置検出付着物検出アレイ18とは非接触で対向して配置されており、それぞれ紙葉類10の搬送方向に対して垂直方向に長尺で、紙葉類10の幅よりも幅広のものが使用されている。
【0023】
音源16は、一体型の超音波トランスデューサが使用されており、同位相の超音波が付着物検出アレイに向けて発振される。
【0024】
本実施形態の付着物検出アレイ18は、位置検出アレイと一体型したものが用いられている。
【0025】
紙葉類10の搬送方向上流側(1列目)に配列されたn個の超音波トランスデューサ22-1・・・22-nによって位置検出アレイは構成されている。位置検出アレイは紙葉類10の幅よりも広く配列されており、紙葉類10が測定領域に進入する前は、直接音源からの超音波が受信する。この時検出される超音波の音圧を初期の音圧とする。紙葉類10が測定領域に侵入し超音波が照射されると受信する超音波の音圧が初期の音圧と比較して大幅に減衰し、測定領域に紙葉類10が進入したことを検知することができる。
【0026】
また、位置検出アレイの中央部では、紙葉類10を通過することによって減衰した超音波を検出するが、端部では紙葉類10を通過せずに初期の音圧を検出する。そのため、減衰した超音波を受信した超音波トランスデューサ数をカウントすることで、紙葉類10のサイズを算出することが可能になり、ひいては紙葉類10のサイズを判定することができる。
【0027】
さらに、紙葉類10の搬送速度と、進入してからの時間とから、付着物検出アレイ18と、紙葉類10との相対位置を判断することが可能になる。加えて、減衰した超音波を受信した超音波トランスデューサが、再び初期の音圧を測定するまでの時間を測定することで、紙葉類10のサイズを特定し、紙葉類10の種別を判定することも可能になる。
【0028】
なお、位置検出アレイ(超音波トランスデューサ22-1・・・22-n)をなくし、付着物検出アレイ(超音波トランスデューサ18-1・・・18-n)を位置検出アレイとして兼用させることも可能である。
【0029】
紙葉類10が測定領域に侵入している間、下流側に配列された複数の超音波トランスデューサ18-1・・・18-nは、それぞれが対応する領域の通過超音波音圧を測定する。ここで、紙葉類10に付着物が存在する場合には、超音波はこの付着物を通過することによって減衰する。そのため、演算処理部で算出される、(標準音圧−測定音圧)の算出結果はプラスの値となり、その結果に基づいて、判定部では、付着物が存在すると判定し、なお且つその値が所定の基準値を超える場合には、その紙葉類10が流通に適さないものと判定する。一方、紙葉類に欠損が存在する場合には、紙葉類10による減衰が生ぜず初期の音圧が検出されるため、算出結果はマイナスの値となり、欠損部が存在すると判定し、なお且つその値(絶対値)が所定の基準値を超える場合には、その紙葉類10が流通に適さないものと判定する。
【0030】
本実施形態において、付着物検出手段が分割され、紙葉類10の幅方向に複数の超音波トランスデューサ18Aを複数個並べた点が特徴的である。
【0031】
付着物は、例えば紙葉類10が破れた時に、破れた箇所を補修するための補修用テープ等が挙げられるが、補修用テープは通常紙葉類10の極一部にしか付着していない。また、欠損に関しても、部分的な欠損が生じることもある。超音波トランスデューサの超音波受信面の大きさに対し、付着物の付着面積、あるいは欠損の面積が小さいと、付着物に起因する受信音圧の減衰率が低下し、付着物の検出感度が低下してしまう。
【0032】
これに対し、本実施形態に示すように、複数の超音波トランスデューサを配列することで、個々の超音波トランスデューサを超音波受信面の面積を小さくすることが可能になり、各超音波トランスデューサの受信面の大きさに対する付着物の付着面積の比率を大きくすることが可能になる。その結果、付着物の検出感度を向上させることが可能になる。具体的には、各超音波トランスデューサの、配列方向の幅を10mm程度以下、より好ましくは2mm程度以下とすることが好ましい。
【0033】
(第1の実施の形態の変形例)
異物が紙葉類の端部周辺に付着している場合、付着物の検出感度は低下するため、付着物のサイズが小さくなると正確な判定がなされない恐れがある。この変形例は紙葉類10の端部周辺の付着物の検出感度を向上させる手法であり、この変形例について図面を用いて説明する。
【0034】
図3、4は、付着物検出アレイの超音波トランスデューサと紙葉類10とを超音波トランスデューサ側から見た概念図であり、図3は本変形例を示し、図4は比較のため第1の実施形態のタイプを示す。
【0035】
図3に示す付着物検出アレイは、複数の超音波トランスデューサのうち、端部の超音波トランスデューサ(18-1A〜18-4Aと18-9A〜18-12A)の超音波受信面が小さく、中央部の超音波トランスデューサ(18-5A〜18-8A)の超音波受信面が小さくなっているのに対し、図4に示す付着物検出アレイは第1の実施の形態に示したものと同様に超音波トランスデューサは超音波受信面が全て同一の大きさになっている。
【0036】
図示するように、搬送される紙葉類10は、超音波トランスデューサの配列方向にずれが生じるため、紙葉類10端部と超音波トランスデューサとを合わせることができず、図3では紙葉類10の左端部が超音波トランスデューサ18-2Aの中央部を、図4では紙葉類10の左端部が超音波トランスデューサ18-2の中央部を通過するケースを図示している。
【0037】
超音波トランスデューサ18-2、18-2Aにおいては、受信面の半分は紙葉類10を通過し、減衰した超音波を受信するが、残りの半面は紙葉類10を通過しない初期の音圧の超音波を受信してしまう。そのため、紙葉類10の端部にかかる超音波トランスデューサ18-2、18-2Aでは紙葉類10による超音波の減衰量を検出することが困難になる。すなわち、斜線で示す領域の付着物を検出することが困難になる。
【0038】
図4に示すように、付着物検出アレイの端部の超音波トランスデューサのサイズを小さくすれば、それに伴って超音波の減衰量の測定が困難な領域が狭くなり、より小さな付着物の検出を正確に検出することが可能になる。
【0039】
欠損は、紙葉類10の端部に生じるケースが多く、特にこの変形例に示す付着物検出アレイを使用することが有効である。
【符号の説明】
【0040】
6・・・搬送ローラ
10・・・紙葉類
16・・・音源
18・・・付着物検出アレイ
18−1〜18−n・・・超音波トランスデューサ
22・・・位置検出アレイ
22−1〜22−n・・・超音波トランスデューサ
30・・・演算処理部
32・・・増幅器
34・・・判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される紙葉類に対して超音波を照射する超音波発生源と、
前記紙葉類の搬送方向を横切る方向に配列され、前記紙葉類を通過した前記超音波の音圧を検出する複数の検出素子を有する検出アレイと、
所定の標準値と前記音圧とを比較し、前記紙葉類の状態を判定することを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記超音波発生源と前記検出アレイとは、非接触で配置されることを特徴とする請求項1記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記搬送方向の上流側に、前記検出アレイと並列して配列され、前記超音波の音圧を検出する複数の検出素子を有し、前記紙葉類を検知してからの時間を測定して前記検出アレイによる前記紙葉類の検出位置を検出することを特徴とする請求項2記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記検出アレイは前記紙葉類を横断する幅を有すると共に、前記検出アレイ中央部の前記検出素子の幅は、アレイ端部の前記検出素子の幅よりも大きくすることを特徴とする請求項2記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
搬送される紙葉類に対して超音波を照射する超音波発生源と、前記紙葉類の搬送方向を横切る方向に配列され、前記紙葉類を通過した前記超音波の音圧を検出する複数の検出素子を有する検出アレイとを有することを特徴とする紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−196782(P2011−196782A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62864(P2010−62864)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】