説明

紙葉類搬送装置、紙葉類搬送方法

【課題】紙葉類がランダムなタイミングで案内された場合でも、この紙葉類をスタッカへ搬送できる紙葉類搬送装置および紙葉類搬送方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る紙葉類搬送装置は、搬送された帳票を振り分ける振り分け部と、回転軸と、この回転軸に対して渦巻き状に延出し、帳票の先端を間に把持して搬送する複数の把持爪部と、を有し、振り分けられた帳票を回転搬送してスタッカ部に載置するための回転搬送部と、帳票の先端が把持爪部の間に把持されるように、回転搬送部の回転速度を可変制御する制御部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種帳票や各種用紙などの紙葉類(以下、統一して帳票と呼ぶ)をスタッカ部に搬送する紙葉類搬送装置および紙葉類搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の搬送装置では、多種多様な帳票を搬送しスタッカ部に振り分けて載置する。この搬送装置では、搬送されてきた帳票の端部を渦巻歯板材の挟持爪部で挟持して、回転搬送し反転させてスタッカ部に載置する。この搬送装置は、帳票を渦巻歯板材へ案内するタイミングを一定、つまり帳票を取り込む間隔を一定とすることにより、帳票の端部が渦巻歯板材の挟持爪部に挟持されるようにしている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−263453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の搬送装置は、渦巻歯板材の回転速度を、帳票が渦巻歯板材の挟持爪部へ案内されるタイミングに合わせて制御していない。このため、帳票が渦巻歯板材へランダムなタイミングで案内された場合、帳票を渦巻歯板材の挟持爪部で挟持することができない。このため従来の搬送装置は、帳票が渦巻歯板材へ所定の間隔で案内されない場合は、帳票の搬送を中断するか、帳票を搬送に失敗した帳票を回収するリジェクトスタッカへ排出している。
本発明は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、帳票がランダムなタイミングで案内された場合でも、この帳票をスタッカへ搬送できる紙葉類搬送装置および紙葉類搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る紙葉類搬送装置は、帳票を搬送しスタッカ部に載置する紙葉類搬送装置であって、搬送された帳票を振り分ける振り分け部と、回転軸とこの回転軸に対して渦巻き状に延出し帳票の先端を間に把持して搬送する複数の把持爪部とを有し、振り分けられた帳票を回転搬送してスタッカ部に載置するための回転搬送部と、帳票の先端が把持爪部の間に把持されるように、回転搬送部の回転速度を可変制御する制御部と、を具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、帳票がランダムなタイミングで案内された場合でも、この帳票をスタッカへ搬送できる紙葉類搬送装置および紙葉類搬送方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】紙葉類搬送装置を表す側面図である。
【図2】紙葉類搬送装置の側面の一部を拡大した拡大側面図である。
【図3】紙葉類搬送装置の駆動系の構成を表すブロック図である。
【図4】羽根車とステージの配置関係を表す側面図である。
【図5】帳票と羽根車との位置関係(正常搬送時)を表す図である。
【図6】帳票と羽根車との位置関係(異常搬送時)を表す図である。
【図7】帳票と羽根車との位置関係(異常搬送時)を表す図である。
【図8】制御部の機能構成を表わすブロック図である。
【図9】減速時間の算出方法を説明するための図である。
【図10】減速時間の算出方法を説明するための図である。
【図11】回転速度の算出方法を説明するための図である。
【図12】帳票の搬送動作を表す図である。
【図13】紙葉類搬送装置の動作を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、紙葉類搬送装置を表す側面図である。図2は、紙葉類搬送装置の側面の一部を拡大した拡大側面図である。図3は、紙葉類搬送装置の駆動系の構成を表すブロック図である。図4は、羽根車とステージの配置関係を表す側面図である。以下、図1から図4を参照して、第1の実施形態に係る紙葉類搬送装置10の構成について説明する。
【0009】
紙葉類搬送装置10は、水平搬送路11、搬送ベルト12、垂直搬送路13、搬送ローラ14、分岐ゲート15、帳票検出部16、排出ローラ17、羽根車18、抜き取り板19、ステージ20、ストッパ21、スタッカ部23、制御部25、および図示しない各部の駆動部等を備え、図示しない給紙部から取り込まれた帳票をスタッカ部23に搬送する。図1に示す紙葉類搬送装置10は、スタッカ部23を縦方向に複数段有している。なお、この紙葉類搬送装置10は、互いの水平搬送路11を接続して増設可能であり、これにより、スタッカ部23を増設できる構成となっている。
【0010】
紙葉類搬送装置10は、図示しない外部の装置や給紙機構により矢印A方向に搬送されてくる帳票を取り込む。この取り込まれた帳票は分岐ゲート15の搬送方向の切り替え動作により、水平搬送路11または垂直搬送路13のいずれかの方向に搬送方向が切り替えられて搬送される。搬送方向が水平搬送路11方向に切り替えられた場合には、帳票は搬送ベルト12により水平搬送路11を搬送され、図示しない増設された次の紙葉類搬送装置10に搬送される。搬送方向が垂直搬送路13方向に切り替えられた場合には、帳票は搬送ローラ14により垂直搬送路13を搬送される。
【0011】
搬送ローラ14は、垂直搬送路13上に複数配置されている。搬送ローラ14は、一方向(図2では時計方向)に回転し、帳票を上方へと搬送する。搬送ローラ14は、帳票を順次指定されたスタッカ部23に搬送する。どのスタッカ部23に排出するかは、例えば図示しない帳票読取部で読み取られた画像の認識処理結果に基づいて決定される。なお、搬送ローラ14同士の用紙搬送速度、および搬送ローラ14と排出ローラ17の用紙搬送速度とは、ほぼ等しく設定する。搬送ローラ14は、ドライバ32によって回転制御されるモータ33の回転動作に伴って、回転する。ドライバ32は、制御部25によって動作制御される。
【0012】
分岐ゲート15は、帳票の搬送方向を切り替えるために水平搬送路11と垂直搬送路13との分岐位置、垂直搬送路13と各スタッカ部23との分岐位置に設けられている。分岐ゲート15は駆動機構としてロータリーソレノイドを持ち、ソレノイドに流す電流をドライバ38で制御することにより、軸を中心にその先端部が2点の位置間で可動する構造になっている。分岐ゲート15は、先端部が移動した位置に応じて搬送されてくる帳票の搬送方向を切り替えるためのゲート機能を持つ。ドライバ38は、制御部25の制御により動作する。
【0013】
帳票検出部16は、搬送路11,13上および分岐ゲート15と排出ローラ17との間にそれぞれ配置され、帳票を検出する。帳票検出部16は、発光部および受光部を有する透過型または反射型の帳票検出器(例えば光センサ)である。発光部から受光部に出力される光が搬送された帳票によって遮断されると、帳票が搬送路を通過し、帳票の先端がスタッカ部23への排出位置に到ったことを検出する。制御部25は、帳票検出部16が帳票を検出すると、指定されたスタッカ部に設けられた羽根車18の回転位置を読出し、読出した回転位置に基づいて羽根車18の回転速度を制御する(詳細は、図8を参照して説明する)。なお、帳票検出部16は、帳票の先端がスタッカ部23への排出位置に到ったことを検出できればよく、透過型の光センサに限られない。
【0014】
排出ローラ17は、帳票検出部16と羽根車18との間に設けられる。この排出ローラ17は、一方向(図2では時計方向)に回転し、供給された帳票を指定されたスタッカ部23に搬送する。排出ローラ17の用紙搬送速度は、羽根車18の用紙搬送速度より速く設定する。そのため、帳票の先端が羽根車18の把持爪部18bの根元まで挿入されて挟持されることが可能となる。排出ローラ17は、ドライバ34によって回転制御されるモータ35の回転動作に伴って、回転する。ドライバ34は、制御部25によって動作制御される。
【0015】
羽根車18は、回転軸18aと、この回転軸18aを中心に所定間隔(等間隔)で配置される複数の把持爪部18bと、を有する。回転軸18aは、帳票を巻き取る方向(図2では反時計方向)に回転する。複数の把持爪部18bは、回転軸18aを中心に所定間隔でインボリュート曲線状に延出し、かつ帳票の一端をこれらの間に形成される隙間18cに把持して回転搬送する。この隙間18cは、帳票を把持可能な幅に形成されている。この羽根車18は、ドライバ36によって回転制御されるモータ37の回転動作に伴って、回転する。ドライバ36は、制御部25によって動作制御される。モータ37は、ステッピングモータであり、ドライバ36から出力されるパルスにより動作を制御される。羽根車18は、回転軸と、この回転軸に対して渦巻き状に延出し、かつ帳票の先端をこれらの間に把持して回転搬送する複数の把持爪部と、を有する回転搬送部として機能する。
【0016】
抜き取り板19は、回転軸18aから外周方向に延出し、羽根車18の間に配置されている。抜き取り板19には、回転する羽根車18の把持爪部18bの間(隙間18c)に挟持された帳票の先端が当接する。この帳票が抜き取り板19に当接した後も、羽根車18は、回転するので、帳票は羽根車18から抜き取られる。帳票は、先端が抜き取り板19に当接した状態でこの抜き取り板19の上方から下方に移動する。抜き取り板19は、把持されている用紙を把持爪部18bから取り外す取り外し部として機能する。
【0017】
ステージ20は、羽根車18の外周に対向し、凹形状を成し、羽根車18とスタッカ部23との間に配置されている。羽根車1つに対し、ステージ1つが対向する。ステージ20は、羽根車18から抜き取られた帳票の先端部を羽根車18との間に保持する。すなわち、ステージ20は、回転可能な羽根車18(把持爪部18bの先端部)と溝部20aで符合し凹形状により帳票を湾曲させて羽根車18との間で保持する。なお、ステージ20の長さは、例えばこの紙葉類搬送装置10で搬送可能な帳票のうち、帳票の送り長さの最小値に構成する。
【0018】
羽根車18およびステージ20は一対で構成され、これらは紙葉類搬送装置10が搬送する帳票の用紙サイズに対応して複数対配置する。ステージ20の各々は独立して、保持された帳票の重さ・厚さに応じて昇降する(図2参照)。ステージ20は、例えば伸縮するばね機構を有する(図示せず)。保持する帳票の枚数が多くなると、その重さ・厚さに応じて徐々にそれぞれのばねが縮んで下降する。すなわち、異なる用紙サイズの帳票を複数枚保持した場合、羽根車18およびステージ20のそれぞれの対に保持される帳票の重さが異なるので、その重さ・厚さに応じてそれぞれのばねの伸縮量は異なる。また、ステージ20は、オペレータ等によって保持していた帳票が取り除かれると、ばねが伸長して上昇する。なお、このステージ20の昇降動作は、羽根車18の外周面との間で、帳票の先端部を保持できるものであれば、ガス圧等の圧力を利用して行なってもよいし、モータ等を利用して機械的に行なってもよい。
【0019】
ストッパ21は、抜き取り板19の一端の下、略垂直方向に設置され、ステージ20上に保持された帳票の先端がそれぞれ当接する。抜き取り板19に当接した帳票は羽根車18の回転に伴い、抜き取り板19の上方から下方に移動し、ストッパ21に当接する。そして、帳票の先端がストッパ21に当接した状態で、ステージ20上に積み重なって、帳票の先端が揃えられた状態で保持される。
【0020】
スタッカ部23は、ステージ20の下方に配置され、ステージ20よりも長い帳票の他端(後端)を保持する。スタッカ部23は、複数(図1では、縦方向に8段)設置される。
【0021】
エンコーダ24は、複数のスリット24bを有する回転板24aと、回転板24aを挟むようにして配置された透過型光センサ24c(図示せず)とから構成される。回転板24aは、羽根車18の回転軸18aの一端側に取り付けられ、回転軸18aと共に回転する。透過型光センサ24cは、光を照射する発光素子と、この発光素子からの光を受光して信号を出力する受光素子とを備える。
【0022】
発光素子からの光が回転板24aにより遮光されている間は、受光素子から信号は出力されない。羽根車18と共に回転板24aが回転し、回転板24aのスリット24bを光が通過すると、光が受光素子に受光され信号が出力される。
【0023】
回転板24aのスリット24bは、所定間隔で配置される把持爪部18bにより形成される隙間18cと同数でかつ、同一間隔で設けられている。同一の間隔でスリット24bを設ける理由は、把持爪部18bが同一間隔で回転軸18aに配置されていることによる。
【0024】
制御部25は、制御ホスト200からの指示に基づいて、紙葉類搬送装置10内の各種ドライバの動作制御を行い、帳票の搬送制御を行なう。制御部25は、CPU(Central Processing Unit)25a、ROM(Read Only Memory)25b、RAM(Random Access Memory)25c、NVRAM(Non Volatile RAM)25dなどを具備する。ROM25bは、CPU25aの動作コードを格納する。RAM25cは、CPU25aの作業領域として使用される。NVRAM25dは、紙葉類搬送装置10の制御に必要なプログラム(ファームウェア)を保持する。このファームウェアは書換え可能である。CPU25aは、NVRAM25dに保持されているファームウェアをRAM25cにロードして実行することにより帳票の搬送を制御する。
【0025】
制御ホスト200は、文字認識のアプリケーションソフトウェアプログラムを実装する。そして、帳票から読み取られた画像の文字認識処理結果に基づいて、帳票の排出先のスタッカ指定が、読み取り処理された帳票毎に行われるように、制御部25に指示を与える。この指示に基づいて、制御部25が各種ドライバの動作制御を行なう。なお、制御部25が、この文字認識のアプリケーションソフトウェアプログラムを実装して、上述した画像の認識処理を行なうようにすることも可能である。
【0026】
(帳票Aと羽根車18との位置関係)
図5は、正常搬送時における帳票Aと羽根車18との位置関係を表す図である。図6および図7は、異常搬送時おける帳票Aと羽根車18との位置関係を表す図である。以下、図5から図7を参照して、帳票Aと羽根車18との位置関係について説明する。
【0027】
図5は、帳票Aと羽根車18との位置関係(正常搬送時)を表す図である。帳票Aの先端部の案内位置が、図5に示す斜線部(領域B)内にある場合、帳票Aは羽根車18の挟持爪部18bに正常に挟持される。この領域Bは、帳票の先端から所定の距離離れた所定の範囲であり、予め実験等により決定される。帳票Aの先端部が領域Bの範囲内に案内されている場合には正常搬送された状態であり、帳票Aの先端部が領域Bの範囲外に案内されている場合には異常搬送状態となる。
【0028】
図6および図7は、帳票Aと羽根車18との位置関係(異常搬送時)を表す図である。図6は、帳票Aの先端部の案内位置が領域Bに対して紙面右側にある場合、つまり帳票Aの先端部が羽根車18の回転に対して遅れて案内された場合を示している。図7は、帳票Aの先端部の案内位置が領域Bに対して紙面左側にある場合、つまり帳票Aの先端部が羽根車18の回転に対して早く案内された場合を示している。図6または図7に示す状態となった場合、帳票Aは羽根車18の挟持爪部18bに正常に挟持されず、帳票Aが正しくスタッカに載置されない。なお、図5から図7では、一つの挟持爪部18bの領域Bを示しているが、実際には、各挟持爪部18bが領域Bを有している。
【0029】
図8は、制御部25の機能構成を表わすブロック図である。制御部25は、カウンタ101、読出部102、記憶部103、算出部104、指示部105の機能構成を有する。図8に示されたこれらの機能構成は、CPU25aが、NVRAM25dに保持されているファームウェアをRAM25cにロードして実行することにより実現される。
【0030】
カウンタ101は、羽根車18を回転させるモータ37のドライバ36のパルス(Pulse)数を積算(カウント)する。カウンタ101は、エンコーダ24から信号が出力される度にリセットされる。つまり、カウンタ101は、羽根車18が有する複数の挟持爪部18bそれぞれについて、相対的な角度を検出する。
【0031】
読出部102は、帳票検出部16からの信号を受信すると、カウンタ101で積算されているパルス数を読出し、算出部104へ出力する。記憶部103は、予め実験等により測定された目標位置がモータ37のパルスに換算された状態で記憶されている。ここで、目標位置とは、帳票Aの先端が羽根車18の領域Bに案内される際の羽根車18の回転位置である(図5参照)。
【0032】
算出部104は、読出部102から出力されたパルス数および記憶部103から読み出したパルス数に基づいて、羽根車18の減速時間または減速時の回転速度を算出する(算出方法については後述する)。指示部105は、算出部104で算出された減速時間または減速時の回転速度に基づいてドライバ36へ動作を指示する。また、指示部105は、各ドライバ30から38へ動作を指示する。
【0033】
(羽根車18の制御方法)
ここでは、羽根車18の制御方法について説明する。
この第1の実施形態では、羽根車18の制御方法として第1ないし第4の制御方法について説明する。以下、第1ないし第4の制御方法について説明するが、各制御方法で必要となるパラメータを以下のように規定しておく。
【0034】
t:帳票検出部16が帳票Aの先端を検出してから、帳票Aの先端が羽根車18の領域Bに達するまでの時間[s](帳票検出部16から羽根車18の領域Bまでの距離L[m]および帳票Aの搬送速度S[m/s]から算出できる)。
θ:目標位置のパルス数[pulse]。
θ:現在位置のパルス数[pulse]。
なお、羽根車18は、1pulseにつき1°回転するものとする。
【0035】
(第1の制御方法)
初めに、第1の制御方法について説明する。第1の制御方法では、減速時における羽根車18の回転速度αを固定とし、減速時間tを調整する。
初めに算出部104は、下記(1)式を計算して、通常時の回転速度βで時間tだけ回転させた場合のパルス数X[pulse]を算出する。
X=βt…(1)
次に、算出部104は、下記(2)式を満たし、かつXに最も近いn(n=0、1、2、・・・)を算出する。
これにより、帳票Aの先端が案内される挟持爪部18bが決定される。
X>θ+(360n)/m…(2)
m:羽根車18が有する挟持爪部18bの数。
【0036】
図9は、減速時間tの算出方法を説明するための図である。図9は、縦軸に回転速度[Pulse/s]、横軸に時間を示している。図9に示すように、減速時の回転速度αで時間tだけ回転させたときのパルス数(区間Aにおけるパルス数)と、通常時の回転速度βで時間時間t−tだけ回転させたときのパルス数(区間Bにおけるパルス数)との合計のパルス数が、(θ+(360n)/m−θ)と同一となればよいので、下記(3)式が成り立つ。
αt+β(t−t)=(θ+(360n)/m−θ)…(3)
α:羽根車18の減速時の回転速度[pulse/s]。
β:羽根車18の通常時の回転速度[pulse/s]。
【0037】
算出部104は、上記(3)式により減速時間tを算出する
例えば、t=0.032[s]、θ=36[pulse]、θ=4[pulse]、α=400[pulse/s]、β=2000[pulse/s]、m=10とする。
(1)式よりパルス数Xは、64[Pulse]となる。
次に、(2)式にX=64を代入すると、nの値は“0”となる。
次に、(3)式にn=0を代入すると、減速時間tは、20[ms]となる。
【0038】
この場合、算出部104は、減速時間tが20[ms]であることを指示部105へ出力する。指示部105は、帳票検出部16が帳票Aの先端を検出してから、帳票Aの先端が羽根車18の領域Bに達するまでの時間32[ms]のうち、20[ms]を減速した回転速度400[pulse/s]で羽根車18を回転させ、残りの20[ms]を通常の回転速度2000[pulse/s]で羽根車18を回転させるようドライバ36へ指示する。
【0039】
(第2の制御方法)
次に、第2の制御方法について説明する。第2の制御方法では、減速時における羽根車18の回転速度γを調整する。
算出部104は、第1の制御方法の場合と同様に、(1)式、(2)式を用いてnの値を算出する。この第2の制御方法では、時間tで(θ+(360n)/m−θ)だけパルスを出力すればよいので、下記(4)式が成り立つ。
γt=(θ+(360n)/m−θ)…(4)
【0040】
算出部104は、上記(4)式により回転速度γを算出する。
例えば、t=0.032[s]、θ=36[pulse]、θ=4[pulse]とすると、第1の制御方法の場合と同様に、nの値は“0”となる。
次に、(4)式にn=0を代入すると、回転速度γは、1000[pulse/s]となる。
【0041】
この場合、算出部104は、回転速度γが1000[pulse/s]であることを指示部105へ出力する。指示部105は、帳票検出部16が帳票Aの先端を検出してから、帳票Aの先端が羽根車18の領域Bに達するまでの時間32[ms]の間、羽根車18を回転速度1000[pulse/s]で羽根車18を回転させるようドライバ36へ指示する。
【0042】
なお、ステッピングモータ37の回転速度を急激に変化させると、モータ37に入力されたパルス数と、実際に回転したパルス数とが整合しなくなる脱調が発生する可能性がある。この場合、加速または減速をスムーズに行うために、漸次的に目的の回転速度へ回転数を変化させる制御(スロープ制御)が必要となる。ここでは、スロープ制御を用いた第3、第4の制御方法について説明する。
【0043】
(第3の制御方法)
図10は、減速時間の算出方法を説明するための図である。図10は、縦軸に回転速度[Pulse/s]、横軸に時間を示している。図12に示すように、回転速度βからαへ加速度aで減速しながら時間tだけ回転させたときのパルス数(区間Aにおけるパルス数)、減速時の回転速度αで時間tだけ回転させたときのパルス数(区間Bにおけるパルス数)、回転速度αからβへ加速度aで加速しながら時間t(加速度aが同じであるため、区間Cの時間は区間Aの時間と同じになる)だけ回転させたときのパルス数(区間Cにおけるパルス数)、通常時の回転速度βで時間時間tだけ回転させたときのパルス数(区間Dにおけるパルス数)と合計のパルス数が、(θ+(360n)/m−θ)と同一となればよいので、下記(5)式が成り立つ。
(α+β)t+αt+βt=(θ+(360n)/m−θ)…(5)
【0044】
さらに、時間tは、時間tから時間tおよび時間tを引いた値であるから、下記(6)式が成り立つ。
=t−(2t+t)…(6)
算出部104は、上記(5)式へ、(6)式を代入し回転速度αで羽根車18を回転させる時間tを算出して出力する。なお、加速度aは、定数(固定値)とした。
【0045】
(第4の制御方法)
図11は、加速度aの算出方法を説明するための図である。
図11は、縦軸に回転速度[Pulse/s]、横軸に時間を示している。図11に示すように、羽根車18の回転速度をスロープ制御する場合、通常時の回転速度βからt/2時間だけ加速度aで減速したのち(区間A)、t/2時間だけ加速度aで加速して通常時の回転速度βに戻す(区間B)制御を行うことになる。このため、下記(7)式が成り立つ。
βt−a(t/2)=(θ+(360n)/m−θ)…(7)
算出部104は、上記(7)式により、加速度aを算出して出力する。
【0046】
なお上記第1から第4の制御方法では、羽根車18の回転速度を減速する場合について説明したが、羽根車18の回転を加速制御するようにしても良い。この場合でも、加速時間を調整する制御方法と、加速時の回転速度を調整する制御方法とを実施可能である。
加速制御する場合は、上記(2)式の代わりに、下記(8)を満たし、かつXに最も近いn(n=0、1、2、・・・)を算出する。そして、この式(8)により算出されたnの値を用いて、上記(3)式ないし(7)式を計算すればよい。
X<θ+(360n)/m…(8)
【0047】
(紙葉類搬送装置10の動作)
図12は、帳票の搬送動作を表す図である。図13は、第1の実施形態に係る紙葉類搬送装置10の動作を示したフローチャートである。以下、図12および図13を参照して、紙葉類搬送装置10による帳票の搬送動作を説明する。
【0048】
制御部25は、水平搬送路11上の搬送ベルト12、垂直搬送路13上の搬送ローラ14および分岐ゲート15を駆動制御し、制御ホスト200から入力する用紙搬送制御の実行指示に基づいて帳票Aの搬送を行なう。この際、制御部25は、スタッカ部23の羽根車18を一定速度で回転させ、待機状態とする(ステップS101)。
【0049】
搬送路11,13上および指定されたスタッカ部23の近傍に配置された帳票検出部16が、搬送されてきた帳票Aを検出すると(ステップS102のYes)、制御部25は指定されたスタッカ部23の羽根車18の回転位置を検出する(ステップS103)。
【0050】
制御部25は、検出した羽根車18の回転位置に基づいて、帳票Aの端部が羽根車18の領域Bに案内されるよう羽根車18の回転速度を制御する(ステップS104)。この結果、帳票Aは、羽根車18の隙間18cに挿入されて把持爪部18bに把持される。羽根車18は、この把持された状態で、帳票Aをステージ20の配置位置に回転搬送する(図12の上段の用紙搬送を参照)。
【0051】
次に、この把持された帳票Aの先端が抜き取り板19に当接すると、この抜き取り板19は羽根車18の回転に伴う帳票Aの搬送を停止させる。なお、帳票Aの搬送が停止した後も、羽根車18は搬送方向(図12では、反時計方向)に回転する。この結果、帳票Aは、回転する羽根車18から抜き取られ、帳票Aの先端は抜き取り板19に沿って上方から下方に移動し、ストッパ21に当接する。
【0052】
抜き取られた帳票Aの先端部は、ステージ20上に載置される。この帳票Aの先端部は、羽根車18の回転が可能な状態でステージ20と羽根車18の外周(把持爪部18bの先端部分)とで抑えられ、このステージ20上に保持される。そして、次の帳票が搬送されると、上記と同様の搬送動作を行い、ステージ20上で順次帳票を重ねて保持する。このように、複数の帳票が保持されると、ステージ20はその重さに応じて下降し、ステージ20と把持爪部18bとの間で先端が揃えられた複数の帳票を保持することができる。
【0053】
帳票Aはストッパ21に当接し、先端部はステージ20と羽根車18の外周との間に保持される。この結果、帳票Aは、先端部がストッパ21によって揃えられステージ20に保持され、後端部がスタッカ部23によって保持される。帳票検出部16で帳票Aが検出されない場合(ステップS102のNo)、および羽根車18の回転速度の制御(ステップS104の制御)が終了した場合、ステップS101の処理へ戻り、次の帳票の搬送に備える。
【0054】
以上のように、この第1の実施形態に係る紙葉類搬送装置は、帳票が羽根車18の把持爪部18bへ案内されるタイミングに応じて、羽根車18の回転速度を制御している。このため、帳票がランダムなタイミングで案内された場合でも、この帳票をスタッカへ搬送できる。
【0055】
また、羽根車によって搬送された帳票の先端部を、ステージと羽根車の外周の間に保持するとともに、ストッパによる帳票の先端揃えを行なう。これにより、帳票の先端揃えを的確に行なうことができる。さらに、本実施形態に係る紙葉類搬送装置は、ステージと羽根車の外周の間に先端部を保持するので、帳票の順番の入り繰りを防止できる。
【符号の説明】
【0056】
10…紙葉類搬送装置、11…水平搬送路、12…搬送ベルト、13…垂直搬送路、14…搬送ローラ、15…分岐ゲート、16…帳票検出部、17…排出ローラ、18…羽根車、18a…回転軸、18b…把持爪部、18c,20b…隙間、19…抜き取り板、20…ステージ、20a…溝部、20b…隙間、21…ストッパ、23…スタッカ部、24…エンコーダ、25…制御部、30,32,34,36…ドライバ、31,33,35,37,38…モータ、200…制御ホスト、A…帳票。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帳票を搬送しスタッカ部に載置する紙葉類搬送装置であって、
前記搬送された帳票を振り分ける振り分け部と、
回転軸と、この回転軸に対して渦巻き状に延出し、帳票の先端を間に把持して搬送する複数の把持爪部と、を有し、前記振り分けられた帳票を回転搬送して前記スタッカ部に載置するための回転搬送部と、
前記帳票の先端が前記把持爪部の間に把持されるように、前記回転搬送部の回転速度を可変制御する制御部と、
を具備することを特徴とする紙葉類搬送装置。
【請求項2】
前記回転搬送部へ振り分けられた前記帳票を検出する検出部をさらに具備し、
前記制御部は、
前記帳票の一端が前記把持爪部の間に把持される際の前記回転搬送部の目標角度が記憶された記憶部と、
前記検出部が帳票を検出すると、前記回転搬送部の回転角度を読み出す読出部と、
前記読み出された回転角度と、前記記憶部に記憶されている目標角度とに基づいて、前記回転搬送部の回転速度または回転時間を算出する算出部と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項3】
帳票を搬送しスタッカ部に載置する紙葉類搬送装置であって、
搬送されてきた帳票の先端を検出する帳票検出部と、
回転軸と、この回転軸に対して渦巻き状に延出し、帳票の先端を間に挟持する複数の把持爪部とを有し、先端を挟持した帳票を回転搬送して前記スタッカ部に載置するための羽根車と、
前記帳票検出手段が前記帳票の先端を検出したことに基づいて、先端が検出された帳票が更に搬送されて前記羽根車まで搬送されたときに、前記搬送された帳票の先端が前記羽根車の把持爪部の先端から所定の距離離れた所定の範囲内の位置に案内されるように前記羽根車の回転を制御する回転制御手段と、
を具備することを特徴とする紙葉類搬送装置。
【請求項4】
帳票を搬送しスタッカ部に載置する紙葉類搬送方法であって、
前記帳票を搬送するステップと、
前記搬送された帳票を振り分けるステップと、
回転軸と、この回転軸に対して渦巻き状に延出し、帳票の先端を間に把持して搬送する複数の把持爪部と、を有する回転搬送部へ前記振り分けられた帳票を案内するステップと、
前記用紙の先端が前記把持爪部の間に把持されるように前記回転搬送部の回転速度を可変制御するステップと、
を具備することを特徴とする紙葉類搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−275083(P2010−275083A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130642(P2009−130642)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】