説明

紙葉類識別方法及び紙葉類識別装置

紙幣の透過画像の各画素の濃度を一次微分する(図5,S21)。次に、微分結果を所定のしきい値と比較して単純二値化し、紙幣の輪郭線を抽出する(S22)。次に、二値化した輪郭線をハフ変換し、ハフ平面の同じ点を通る輪郭線を同一直線として抽出する(S23)。次に、ハフ変換により得られた点に対応する直線で囲まれる矩形を抽出する(S24)。矩形の重なりなし部分のドット数が所定のしきい値未満でなければ、重なりなし部分を紙幣の画像として切り出す(S26)。そして、切り出した画像と基準となる画像を比較し、紙幣の金種を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、紙幣等の紙葉類を識別する識別方法及びその識別装置に関する。
【背景技術】
銀行等で使用される入金機や自動預け払い機(ATM)においては、入金時や出金時に紙幣のダブルフィード、折れ曲がり等が検出された場合に、それらの紙幣に対する鑑別処理は行わず、リジェクトボックスに収納するようになっている。
しかしながら、リジェクトボックスに収納された紙幣は、リジェクトボックスを人間が取り出して紙幣を数えない限り、収納されている紙幣の種類及び枚数を把握することができない。
例えば、特開平10−302112号公報(特許文献1)に、紙幣鑑別部でリジェクトされた紙幣を再使用できるように、リジェクトされた紙幣を入金部に戻し、紙幣を低速で再搬送して再度鑑別することで紙幣のリジェクトを減らすことが記載されている。
また、特許第3320386号(特許文献2)には、搬送される紙幣の金種及び枚数を追跡できるようにし、紙幣の重送が発生した場合にも金種と枚数を特定できるようにすることが記載されている。
しかしながら、特許文献1の方法は、搬送速度を低速にして鑑別精度を上げているにすぎず、重なりのある紙幣を鑑別するものではない。
また、特許文献2の方法は、紙幣の厚さと、紙幣がどの金種ボックスから搬送されてきたかにより紙幣の金種と枚数を推定しているにすぎない。
【特許文献1】 特開平10−302112号(図1,段落0008)
【特許文献2】 特許第3320386号(図6,段落0035、0036)
【発明の開示】
本発明の課題は、重なりのある媒体の種類を識別できるようにすることである。
本発明の紙葉類識別方法は、紙葉類からなる媒体の透過画像を読み取り、読み取った画像を記憶部に記憶し、前記記憶部に記憶された画像の輪郭線を抽出し、抽出した輪郭線に基づいて領域を抽出し、抽出した領域の透過画像または反射画像の重なり部分または重なっていない部分を切り出し、切り出した画像と基準となる画像を比較して媒体の種類を識別する。
この発明によれば、重なりのある画像から切り出した重なっていない部分の画像、あるいは重なり部分の画像と、基準となる画像を比較することで重なりのある媒体の種類を識別することができる。
本発明の他の紙葉類識別方法は、媒体の透過画像を読み取り、読み取った画像を記憶部に記憶し、前記記憶部に記憶された画像の輪郭線を抽出し、抽出した輪郭線に基づいて領域を抽出し、抽出した領域の画素の濃度を算出し、算出した濃度が所定値以上か否かにより、重なりのある複数の領域の画像が同一の媒体の画像か否かを判定し、画像の重なり部分または重なっていない部分の大きさに基づいて、透過画像または反射画像の重なり部分または重なっていない部分の画像を切り出し、切り出した画像と基準となる画像を比較して媒体の種類を識別する。
この発明によれば、重なりのある画像から切り出した重なっていない部分の画像、あるいは重なり部分の画像と、基準となる画像を比較することで重なりのある媒体の種類を識別することができる。また、画像の濃度を算出することで、同一の媒体の画像か、異なる媒体の画像かを判定できる。
上記の紙葉類識別方法において、抽出した輪郭線をハフ変換して同一の直線を抽出し、抽出した直線により囲まれる矩形領域を抽出する。
ハフ変換を利用することで媒体の画像から抽出された複数の輪郭線から同一の直線を簡易に抽出することができ、媒体の輪郭を正確に抽出できる。
上記の紙葉類識別方法において、媒体の重なっていない部分の大きさが所定値未満か否かを判定し、所定値未満のときには、重なり部分の画像を切り出し、重なっていない部分の大きさが所定値以上のときには、重なっていない部分の画像を切り出す。
このように構成することで、重なりのある媒体から照合のための適切な画像を切り出すことができる。
上記の紙葉類識別方法において、重なり部分を有する複数の領域の対角線の交点を求め、対角線の交点の座標が所定の範囲内にある複数の領域を1つのグループにまとめ、それぞれのグループの1つの画像から照合のための画像を切り出す。
このように構成することで、1つの媒体から複数の領域が抽出された場合にも、それらを1つのグループにまとめ、1つの媒体から1つの領域を抽出することができる。なお、2枚の媒体がほぼ重なっている場合、それらの画像が1つのグループにまとめられてしまう可能性があるが、透過画像の濃度によりそれらの画像が異なる媒体の画像であると判定することができる。
上記の紙葉類識別方法において、切り出された画像に対してニブラック二値化処理を行い、二値化処理後の画像とニブラック二値化された基準となる画像と比較することで紙幣の種類を識別する。
このようにニブラック二値化した画像により照合を行うことで、照合処理の処理時間を短縮でき、照合精度も向上させることができる。
図1は、本発明の紙葉類識別装置の原理説明図である。
本発明の紙葉類識別装置は、紙葉類からなる媒体の透過画像を読み取る画像読み取り手段1と、読み取られた画像を記憶する記憶手段2と、前記記憶手段2に記憶された画像の輪郭線を抽出する輪郭抽出手段3と、抽出された輪郭線に基づいて領域を抽出する領域抽出手段4と、抽出された領域の透過画像または反射画像の重なり部分または重なっていない部分を切り出す切り出し手段5と、切り出された画像と基準となる画像と比較して媒体の種類を識別する識別手段6とを備える。
この発明によれば、重なりのある画像から切り出した重なっていない部分の画像、あるいは重なり部分の画像と、基準となる画像を比較することで重なりのある媒体の種類を識別することができる。
本発明の他の紙葉類識別装置は、紙葉類からなる媒体の透過画像を読み取る画像読み取り手段1と、読み取られた画像を記憶する記憶手段2と、前記記憶手段2に記憶された画像の輪郭線を抽出する輪郭抽出手段3と、抽出された輪郭線に基づいて領域を抽出する領域抽出手段4と、抽出された領域の画素の濃度を算出する濃度算出手段7と、算出された画素の濃度が所定値以上か否かにより、重なり部分を有する複数の領域の画像が同一の媒体の画像か否かを判定する判定手段8と、重なり部分または重なっていない部分の大きさに基づいて画像の重なり部分または重なっていない部分を切り出す切り出し手段5と、切り出された画像と基準となる画像と比較して媒体の種類を識別する識別手段6とを備える。
この発明によれば、重なりのある画像から切り出した重なっていない部分の画像、あるいは重なり部分の画像と、基準となる画像を比較することで重なりのある媒体の種類を識別することができる。また、画像の濃度を算出することで、同一の媒体の画像か、異なる媒体の画像かを判定できる。
上記の発明において、前記読み取り手段は、前記媒体の透過画像及び反射画像を読み取り、前記切り出し手段は、前記透過画像の重なり部分に対応する前記反射画像の重なり部分を特定し、前記反射画像の重なり部分または重なっていない部分の画像を切り出す。
このように構成することで、透過画像の重なり部分を特定し、さらに透過画像の重なり部分に対応する反射画像の重なり部分を特定し、重なりのある媒体の反射画像から照合のための適切な画像を切り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の原理説明図である。
図2は、実施の形態の現金自動預け払い機の搬送系と紙幣収納部の構成を示す図である。
図3は、制御部の構成を示す図である。
図4は、紙幣識別処理のフローチャートである。
図5は、媒体切り出し処理のフローチャートである。
図6は、ニブラック二値化処理のフローチャートである。
図7は、画像の濃度としきい値を示す図である。
図8は、マトリックス照合処理のフローチャートである。
図9(A)〜(C)は、反射画像、透過画像及び抽出した画像の輪郭を示す図である。
図10(A)、(B)は、抽出した輪郭線から作成した矩形を示す図である。
図11(A)、(B)は、作成された矩形に対応する反射画像を示す図である。
図12(A)、(B)は、重なり部分を削除した画像を示す図である。
図13(A)、(B)は、抽出した矩形を回転させ、原点に移動させた状態を示す図であり、(C)、(D)は、二値化した画像を示す図である。
図14は、登録されている紙幣の二値化された画像を示す図である。
発明の実施をするための最良の形態
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図2は、実施の形態の現金自動預け払い機(ATM)11の搬送系及び紙幣収納部の構成を示す図である。本発明に係る紙葉類識別装置は、ATM等に組み込まれる装置、あるいは紙幣鑑別機等として実現できる。紙葉類とは、紙幣、小切手、証書等の紙状の媒体を指す。
入出金部12から入金された紙幣は、繰り出しローラ13により内部の搬送路に送り出され、紙幣鑑別部14おいてダブルフィードの有無、紙幣の種類の識別及び紙幣の真偽の鑑別が行われる。リジェクトすべきと判定された紙幣はリジェクトボックス15に格納される。
紙幣鑑別部14で正常な状態(ダブルフィード等がない状態)の紙幣と判定され、真札と鑑別された紙幣は一時保留部16に格納される。一時保留部16に格納された紙幣は、顧客が入金金額の確認操作を行った後、再度紙幣鑑別部14を通り、千円札を収納するスタッカ17、あるいは一万円札を収納するスタッカ18に送られる。また、入金した後、顧客が入金の取り消し操作を行った場合には、一時保留部16に格納されている紙幣を入出金部12に戻す。
顧客により出金操作が行われた場合には、紙幣カセット19,20に格納されている紙幣が搬送路を経て入出金部12から出金される。
次に、図3は、紙幣の搬送制御及び紙幣鑑別部14におけるリジェクト紙幣の種類の識別及び紙幣の真偽の鑑別を行う制御部の構成を示す図である。
CPU31は、ROM32に格納されているプログラムに従って搬送系の制御、リジェクト紙幣の金種の識別及び紙幣の真偽の鑑別処理等を実行し、輪郭の抽出及び画像の照合等を画像処理用プロセッサ34に行わせ、処理結果のデータをRAM33に格納する。
画像処理用プロセッサ34は、紙幣鑑別部14内に設けられる透過型ラインセンサ35及び反射型ラインセンサ36で読み取った紙幣の画像データに対して輪郭抽出処理及び領域抽出処理等を行い、処理結果の画像データをマルチプレクサ37を介してRAM38に格納する。RAM38に格納された画像データは、マルチプレクサ37を介してCPU31から読み出すことができる。
次に、図4は、紙幣鑑別部14における処理内容を示すフローチャートである。以下の処理は、CPU31及び画像処理用プロセッサ34により実行される。
最初に、紙幣の画像データを透過型ラインセンサ35及び反射型ラインセンサ36で読み取り、読み取った画像データをRAM38に格納する(図4,S11)。
次に、媒体の切り出し処理を実行する(図4,S12)。この媒体切り出し処理においては、画像の輪郭抽出及び矩形抽出を行い、重なりのある媒体の切り出しを行う。
図5は、図4のステップS12の媒体切り出し処理のフローチャートである。
透過型ラインセンサ35により読み取られた紙幣の透過画像の各画素の濃度を一次微分する(図5,S21)。
次に、微分結果を所定のしきい値値と比較して単純二値化し、紙幣の輪郭線を抽出する(図5,S22)。この実施の形態においては、紙幣の透過画像の読み取りは、背景が白の状態で透過型ラインセンサ35で紙幣を読み取っている。従って、背景との境界、例えば、紙幣の輪郭部分において濃度差が最大となるので、濃度の傾きが最大となる点を結んだ線を輪郭線として抽出できる。
次に、二値化した輪郭線をハフ変換し、ハフ平面の同じ点を通る輪郭線を同一直線として抽出する(図5,S23)。ハフ変換とは、直線を基準点からの距離ρと角度θで表した点に変換することであり、任意の直線は、横軸に角度θ、縦軸に距離ρを表したハフ平面(ρ−θ平面)の上の点(ρ,θ)で表すことができる。
次に、ステップS24の矩形抽出処理を実行する。この矩形抽出処理では、ハフ変換により得られた点に対応する直線と、その直線の長さにより、縦、横の2グループに分け、縦、横の2グループに分けたそれぞれの直線により囲まれるx,y座標上の矩形を作成する。
透過型ラインセンサ35による読み取り誤差、あるいは紙幣の端部の凹凸などにより、1枚の紙幣に対して複数の輪郭線が抽出され、同一の媒体(紙幣)に対して複数の矩形が作成される可能性がある。そこで、矩形の対角線の交点の座標により矩形をグループ分けし、対角線の交点の座標が所定範囲内にある複数の矩形を同じグループを代表する1つの矩形にまとめる。そして、矩形の重なり部分の画素の平均濃度を算出し、平均濃度が所定のしきい値以上か否かを判別する。なお、この実施の形態では、画像の階調データの中で白の濃度が最も高く、黒に近づくほど濃度が低くなるように定めている。
画素の平均濃度が所定のしきい値未満のとき、つまり画素の濃度が黒に近いときには、複数の媒体が重なった状態で画像を読み取ったものと判断し、それらの画像を異なる媒体の画像として処理する。他方、画素の平均濃度がしきい値以上のときには、1枚の媒体の画像を読み取ったものと判断し、同じグループの画像として処理する。
矩形の抽出が終了し、矩形に重なりがある場合には、重なっていない部分(以下、重なりなし部分という)の画素数(ドット数)をカウントし、重なりなし部分の画素数が所定のしきい値未満か否かを判別する(図5,S25)。
矩形の重なりなし部分の画素数が所定のしきい値未満ではないとき(S25,NO)、すなわち、重なりなし部分の画素数がしきい値以上のときには、ステップS26に進み、重なりなし部分を媒体の画像として切り出す。
他方、重なりなし部分の画素数がしきいち未満の場合には(S25,YES)、ステップS27に進み、重なり部分を媒体の画像として切り出す。
上記のステップS21〜S27の処理により、媒体の輪郭を抽出し、その輪郭から矩形(領域)を抽出し、識別対象の紙幣の重なりなし部分、あるいは重なり部分の画像を切り出すことができる。
媒体の切り出し処理が終了したなら、図4のステップS13のラベリング処理を実行し、切り出した媒体に番号をつける。
次に、媒体の長さが、予め定められている紙幣の長辺の長さの許容範囲内に入るか否かにより、判定可能な範囲の紙幣か否かを判別する(図4,S14)。
媒体の長辺の長さが紙幣の許容範囲内であるときには(S14,YES)、ステップS15に進み、ニブラック二値化処理を実行する。このニブラック二値化(W.Niblack:″An Introduction to Digital Image Processing″参照)は、反射型ラインセンサ36により読み取られる紙幣の反射画像から切り出した画像に対して行う。
図6は、ニブラック二値化処理のフローチャートであり、図7は、ニブラック二値化における白しきい値、中間しきい値、黒しきい値と、画素の濃度の分布を示す図である。
ニブラック二値化とは、図7に示すように、画素の濃度を二値化する際に、白しきい値(濃度の高い方のしきい値)と、黒しきい値(濃度の低い方のしきい値)の他に両者の間の中間しきい値を設け、白しきい値及び黒しきい値を基準にして白画素と黒画素の判定を行った後、中間しきい値を基準にして白画素と黒画素の判定を行うものである。ニブラック二値化を行うことで、後述するパターンマッチングによる紙幣の金種の識別精度を向上させることができることを確認できた。
図6のフローチャートにおいて、最初に、上述した媒体切り出し処理により透過画像から切り出した領域(重なりなし部分または重なり部分)に対応する紙幣の反射画像の画像データ(紙幣データ)を、RAM38から読み出す(図6,S30)。
次に、予め定められている白しきい値及ぶ黒しきい値を読み込む(図6,S31)。
次に、切り出した媒体の画素の濃度が白しきい値以上か否かを判別する(図6,S32)。画素の濃度が白しきい値以上であれば(S32,YES)、ステップS33に進み、その画素を白に確定する。
他方、画素の濃度が白しきい値未満のときには(S32,NO)、ステップS34に進み、画素の濃度が黒しきい値以下か否かを判別する。
画素の濃度が黒しきい値以下であれば(S34,YES)、ステップS35に進み、その画素を黒に確定する。
ステップS34において画素の濃度が黒しきい値以下ではないと判別されたときには(S34,NO)、ステップS36に進み、画素濃度が中間しきい値以下か否かを判別する。
画素濃度が中間しきい値以下のときには(S36,YES)、上述したステップS35に進み、その画素を黒に確定する。また、画素濃度が中間しきい値を超えているときには(S36,NO)、ステップS33に進み、その画素を白に確定する。
ステップS33またはS35において、画素を確定したなら、確定した画素値を照合用二値データとしてRAM38に格納する(図6,S37)。
上述したニブラック二値化処理を、反射画像から切り出した画像(透過画像の切り出し部分に対応する画像)の各画素に対して行うことで紙幣から読み取った画像を二値化することができる。
図4のステップS15のニブラック二値化処理が終了したなら、次に図4のステップS16のマトリックス照合(パターンマッチング)処理を実行する。
図8は、上記ステップS16のマトリックス照合処理の詳細なフローチャートである。
最初に、パターンマッチングの対象となる反射画像の二値データ(照合用二値データ)をRAM38から読み出す(図8,S41)。
次に、パターンマッチングの基準となる紙幣の各金種の二値データ(登録用二値データ)を、ROM32等の不揮発性メモリからから読み出す(図8,S42)。
次に、紙幣から読み取った照合用二値データと、ROM32に格納されている基準となる登録用二値データとの一致率(ドット照合率)を計算する(図8,S43)。
上記のステップS41〜S43の二値化された画像の読み込みとドット照合率の計算を、ROM32に格納されている全て金種の表、裏、上下逆の画像を基準にして行い、照合率の高い金種を特定する。なお、ROM32には、図14に示すような、紙幣の各金種の表、裏、上下逆の画像のニブラック二値化データが格納されている。
マトリックス照合が終了したなら、図4のステップS17に進み、ドット照合率が1番高い金種の照合率と、2番目に照合率が高い金種のドット照合率の差が所定のしきい値以上か否かを判別する。
ドット照合率の差がしきい値以上のときは(S17,YES)、特定の金種の照合結果が他の金種の照合結果と有意な差がある場合であるので、ステップS17に進み対象となる紙幣の金種を確定し、その結果を識別結果として出力する。
他方、1番目のドット照合率と2番目のドット照合率との間に所定のしきい値以上の差がないときには(S17,NO)、照合結果に有意な差がなく、金種を特定することが難しいので、ステップS19に進み、エラー処理を実行する。
上述した実施の形態によれば、ダブルフィード、紙幣の折れ曲がり等による重なりのある紙幣の金種を識別できる。そして、識別した紙幣の金種及び枚数をRAM33に記憶しておくことで、ATMのリジェクトボックスを人間が回収しなくとも、リジェクトボックスに収納されている紙幣の金種及び枚数を、離れた位置にあるコントロールセンタ等で把握することができる。
次に、上述した輪郭の抽出、矩形の抽出及びニブラック二値化処理による紙幣の金種の識別方法を、図9〜図14の画像を参照して具体的に説明する。
図9(A)、(B)は、紙幣鑑別部14の反射型ラインセンサ35及び透過型ラインセンサ36により読み取られる反射画像及び透過画像の一例を示す図であり、図9(C)は、透過画像から得られる輪郭を示す図である。なお、図9(C)は、輪郭が凹凸のない直線となっているが、実際には同一の媒体から複数の輪郭線が抽出される場合がある。
次に、抽出した輪郭線をハフ変換し、得られた直線を組み合わせて、図10(A)、(B)に示すような矩形を抽出する。さらに、抽出した矩形の重なりなし部分の大きさ(ドット数)が所定値以上か否かを判定し、所定値以上であれば重なりなし部分を抽出し、所定値未満であれば、重なり部分を抽出する。
次に、抽出した矩形の直線の交点の座標を算出し、図11に示すように、反射画像の対応する座標の点で囲まれる領域を特定し、重なり部分の領域も特定する。そして、それらの画像データをRAM38から読み出す。
次に、読み出した画像から重なり部分を削除する。図12(A)、(B)は、反射画像から重なり部分を削除した画像(階調データ)を示す図である。
次に、重なり部分を削除した画像の左隅上の点がx、y座標の原点となるように画像を回転及び移動させて、図13(A)、(B)に示すような位置に移動させる。そして、移動させた画像をニブラック二値化処理により二値化する。図13(C)、(D)は、重なり部分を削除した画像を二値化したものを示す図である。
重なり部分を削除した二値化画像が得られたなら、ROM32に格納されている登録用二値データを読み出す。ROM32には、図14に示すような紙幣の各金種の表の画像、裏の画像、表の上下が逆の画像及び裏の上下が逆の画像の4種類のニブラック二値化データが格納されている。
従って、図13(A)、(B)に示すように重なり部分を削除した画像をx、y座標の原点に移動させ、その画像をニブラック二値化した画像と、登録されている各金種の二値化画像データとを比較し、一致度の高い金種を選び出す。そして、1番目に一致度の高い金種と、2番目に一致度の高い金種の一致度の差が所定のしきい値以上か否かを判別し、一致度の差がしきい値以上のときには、その金種を読み取った紙幣の金種と判定する。なお、画像を比較する場合は、例えば、削除した部分の画像データに対応する登録用二値データをマスクして比較を行わないようにしても良いし、切り出した部分に対応する登録用データのみを読み出すようにしても良い。
本発明は、上述した構成に限らず、以下のように構成しても良い。
(a)実施の形態では、透過画像により重なり部分を切り出し、切り出し部分に対応する反射画像と基準となる画像を比較しているが、透過画像から切り出した画像と基準となる画像を比較しても良い。
(b)本発明は、紙幣識別装置に限らず、小切手、証書、その他の紙媒体を重なりのある状態で識別する必要のあるものであれば、どのような装置にも適用できる。
本発明によれば、重なりのある紙葉類の種類を識別することができる。例えば、現金自動預け払い機等において、リジェクトされた紙幣の金種及び枚数を特定できるので、現金自動預け払い機の設置されている場所まで行ってリジェクトボックスに収納されている紙幣を確認しなくとも、離れた位置にあるコントロールセンタ等でリジェクトされた紙幣の金種及び枚数を把握できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類からなる媒体の透過画像を読み取り、読み取った画像を記憶部に記憶し、
前記記憶部に記憶された画像の輪郭線を抽出し、
抽出した輪郭線に基づいて領域を抽出し、
抽出した領域の透過画像または反射画像の重なり部分または重なっていない部分を切り出し、
切り出した画像と基準となる画像を比較して媒体の種類を識別する紙葉類識別方法。
【請求項2】
紙葉類からなる媒体の透過画像を読み取り、読み取った画像を記憶部に記憶し、
前記記憶部に記憶された画像の輪郭線を抽出し、
抽出した輪郭線に基づいて領域を抽出し、
抽出した領域の画素の濃度を算出し、
算出した濃度に基づいて重なりのある複数の領域の画像が同一の媒体の画像か否かを判定し、
重なり部分または重なっていない部分の画像の大きさに基づいて透過画像または反射画像の重なり部分または重なっていない部分を切り出し、
切り出した画像と基準となる画像を比較して媒体の種類を識別する紙葉類識別方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の紙葉類識別方法において、
抽出した輪郭線をハフ変換して同一の直線を抽出し、抽出した直線により囲まれる矩形領域を抽出する。
【請求項4】
請求項1,2または3記載の紙葉類識別方法において、
画像の重なっていない部分の大きさが所定値未満か否かを判定し、所定値未満のときには、重なり部分の画像を切り出し、所定値以上のときには、重なっていない部分の画像を切り出す。
【請求項5】
請求項1,2,3または4記載の紙葉類識別方法において、
重なり部分を有する複数の矩形領域の対角線の交点を求め、対角線の交点の座標が所定の範囲にある矩形を1つのグループにまとめ、各グループの1つの画像と基準となる紙幣の画像を比較して紙幣の種類を識別する。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1つに記載の紙葉類識別方法において、
切り出された画像に対してニブラック二値化処理を行い、二値化処理後の画像とニブラック二値化された基準となる画像と比較することで紙幣の種類を識別する。
【請求項7】
紙葉類からなる媒体の透過画像を読み取る画像読み取り手段と、
読み取られた画像を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された画像の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、
抽出された輪郭に基づいて領域を抽出する領域抽出手段と、
抽出された領域の透過画像または反射画像の重なり部分または重なっていない部分を切り出す切り出し手段と、
前記切り出し手段により切り出された画像と基準となる画像と比較して媒体の種類を識別する識別手段とを備える紙葉類識別装置。
【請求項8】
紙葉類からなる媒体の透過画像を読み取る画像読み取り手段と、
前記画像読み取り手段により読み取られた画像を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された画像の輪郭線を抽出する輪郭抽出手段と、
抽出された輪郭線に基づいて領域を抽出する領域抽出手段と、
抽出された領域の画素の濃度を算出する濃度算出手段と、
算出された画素の濃度が所定値以上か否かにより、重なりのある複数の領域の画像が同一の媒体の画像か否かを判定する判定手段と、
抽出された領域の透過画像または反射画像の重なり部分または重なっていない部分を切り出す切り出し手段と、
切り出された画像と基準となる画像と比較して媒体の種類を識別する識別手段とを備える紙葉類識別装置。
【請求項9】
請求項7または8記載の紙葉類識別装置において、
前記輪郭抽出手段は、ハフ変換によりして同一の直線を抽出し、
前記領域抽出手段は、前記直線に囲まれる矩形領域を抽出する。
【請求項10】
請求項7,8または9記載の紙葉類識別装置において、
前記切り出し手段は、重なっていない部分の領域の大きさが所定値未満か否かを判定し、大きさが所定値未満のときには、重なり部分の画像を切り出し、所定値以上のときには、重なっていない部分の画像を切り出す。
【請求項11】
請求項7,8,9または10記載の紙葉類識別装置において、
前記読み取り手段は、前記媒体の透過画像及び反射画像を読み取り、
前記切り出し手段は、前記透過画像の重なり部分に対応する前記反射画像の重なり部分を特定し、前記反射画像の重なり部分または重なっていない部分の画像を切り出す。

【国際公開番号】WO2004/081887
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【発行日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569362(P2004−569362)
【国際出願番号】PCT/JP2003/003104
【国際出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】