説明

素子の保護処理装置

【課題】パワーMOSFETなどの発熱素子の内部温度を高精度に推定し、適切な保護処理を実行する「素子の保護処理装置」を提供する。
【解決手段】パワーMOSFETなどの発熱素子12近傍に設けられたサーミスター14と、発熱素子12における電力の損失値を算出し、サーミスター14により検出される温度と、損失値に応じた推定補完値とを用いて、発熱素子の内部温度の推定値を算出するとともに、その推定値に基づいて、発熱素子に対する保護処理が必要か否かを判断して、保護処理が必要と判断された場合に、保護処理を実行するマイコン50と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は素子の保護処理装置に関し、特に温度検出対象素子近傍に設けられた温度検出素子による温度検出値を用いて素子を保護する、素子の保護処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FET(Field effect transistor(電界効果トランジスタ))などの素子(以下、「発熱素子」と呼ぶ)の温度を検出する場合には、発熱素子が固定されているヒートシンクや基板上に設けられた温度検出素子(サーミスターなど)を用いて、発熱素子の温度を間接的に検出することとしていた(例えば、特許文献1、2等参照)。
【0003】
この方法において、高精度な温度検出を実現するためには、温度検出素子を発熱素子に極力近接させて配置するのが好ましい。しかしながら、発熱素子から温度検出素子(サーミスターなど)までの間の距離には物理的限界があり、取り付け位置や方法によっては、温度差や熱が伝わるまでの時間差などが発生するおそれがある。このように温度差や時間差が発生する場合、短時間で発生する急激な温度変化を検出するのには不向きであり、このことが発熱素子の破損を招く原因となりかねない。
【0004】
かかる理由から、発熱素子の性能のうち検出温度に関する性能については、マージンを大きく設けておく必要があり、これにより、製品の安全性確保のためのコストアップが必要となる。
【0005】
これに対し、前述した特許文献2には、パワートランジスタが破損する温度を考慮した温度を設定温度とし、その設定温度よりも温度センサにより検出される温度が高くなったときに、音量調整装置により出力音声信号レベルを下げるという技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−237144号公報
【特許文献2】特開2004−112707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者による鋭意研究の結果、発熱素子の温度上昇の仕方(温度が急激に上昇したか緩やかに上昇したかなど)が異なると、発熱素子の実際の内部温度が異なるにもかかわらず、検出素子による検出結果が同一の値となることがあることが分かってきた。
【0008】
しかるに、上記特許文献2に記載の発明では、温度の上昇の仕方については一切考慮されていないことから、発熱素子の正確な温度検出ができないことが予想される。このように温度検出が正確にできない場合、発熱素子の温度上昇を抑制するために行う保護処理のタイミングが早くなりすぎたり、逆に遅くなりすぎて発熱素子を破損してしまったりするおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、適切なタイミングで素子の保護処理を実行することが可能な素子の保護処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の素子の保護処理装置は、温度検出対象素子近傍に設けられた温度検出素子と、前記温度検出対象素子における電力の損失値を算出する損失値算出手段と、前記温度検出素子により検出される温度と、前記損失値に応じた推定補完値とを用いて、前記温度検出対象素子の内部温度の推定値を算出する推定値算出手段と、前記推定値に基づいて、前記温度検出対象素子に対する保護処理が必要か否かを判断する判断手段と、前記保護処理が必要と判断された場合に、保護処理を実行する保護処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
これによれば、温度検出対象素子における電力の損失値(すなわち、発熱量に関する値)を算出し、温度検出素子により検出される温度と、損失値に応じた推定補完値とにより、温度検出対象素子の内部温度の推定値を算出するので、温度検出結果の上昇度に応じて、温度検出対象素子の内部温度を高精度に推定することができる。また、温度検出装置で高精度に推定された推定値に基づいて、保護処理を行うか否かを判断し、保護処理を実行するので、適切なタイミングで保護処理を実行することが可能となる。
【0012】
この場合において、前記損失値算出手段は、電源電圧と出力電流の積と前記温度検出対象素子における出力電力との差に基づいて、前記損失値を算出するようにすることができる。
【0013】
また、前記推定値算出手段は、前記損失値に基づいて、前記温度検出対象素子の実際の内部温度と前記温度検出素子により検出される検出結果との単位時間当たりの乖離度を決定し、当該単位時間当たりの乖離度の積算値を前記推定補完値とするようにすることができる。
【0014】
この場合において、前記推定値算出手段は、前記損失値と前記単位時間当たりの乖離度との関係を示すテーブルに基づいて、前記乖離度を決定するようにすることができる。かかる場合には、乖離度の決定を簡易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、適切なタイミングで保護処理を実行することが可能な素子の保護処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るプリント基板10の一部を示す。この図1に示すように、プリント基板10には、ディスクリート部品であるパワーMOSFET12が設けられている。
【0018】
プリント基板10の一方の面10aには、パワーMOSFET12を取り付けるためのスルーホール9a,9b,9cがそれぞれ貫通形成され、それらの周囲には、ランド7a,7b,7cがそれぞれ形成されている。また、プリント基板10の面10aには、チップ部品であるサーミスター14を取り付けるためのランド8a,8bが形成されている。本実施形態では、ランド7bとランド8aとが共用ランド6として、一体的にプリント基板10上に形成されている。すなわち、共用ランド6は、パワーMOSFET12のドレイン端子と、サーミスター14の一方の外部電極をともに取り付けることが可能な形状に設定されている。この共用ランド6は、サーミスター14の一方の外部電極を取り付ける部分(ランド8a)が例えば矩形形状とされ、それ以外の部分が略楕円形状に形成されている。
【0019】
図1に示すように、部品実装や半田付けなどアッセンブリが終了したプリント基板10では、ディスクリート部品であるパワーMOSFET12の各端子13a、13b、13cが、プリント基板10の一方の面10aから、スルーホール9a、9b,9cに挿入された状態となっている。そして、各端子13a〜13cは、スルーホール9a〜9c及びランド7a〜7cに半田付けされ、固定されている。また、サーミスター14は、プリント基板10の一方の面10aのランド8a、8b部分に半田付けされ、固定されている。
【0020】
なお、図1では図示を省略しているが、パワーMOSFET12の紙面奥側の面にはヒートシンクが設けられ、そのヒートシンクに対して、パワーMOSFET12が丸穴12aを介して、ネジ止め固定される。
【0021】
本実施形態では、パワーMOSFET12が動作を開始すると発熱するが、この熱はパワーMOSFET12の端子13bから、端子13bとランド7bを溶着する半田、共用ランド6(ランド7b,8a)、ランド8aとサーミスター14とを溶着する半田及びサーミスター14の外部電極を介してサーミスター14に熱が伝導する。このように、本実施形態では、プリント基板10に対して、動作中に発熱するパワーMOSFET12の端子と、サーミスター14の外部電極とを、半田付けするためのランドを形成することで、サーミスター14により、パワーMOSFET12の発熱により変化する温度を間接的に検出することが可能である。
【0022】
図2は、パワーMOSFET12を含む増幅回路の概略図を示す。この図2に示すように、パワーMOSFET12と電源(図3では、電源22として示している)との間には抵抗16が設けられ、この抵抗16と並列に電流計測部32が設けられている。この電流計測部32の出力(抵抗16の抵抗値R’と電圧から算出される電流値I)と、サーミスター14の出力(検出温度)は、マイコン50に入力されるようになっている。
【0023】
図3は、本実施形態のパワーMOSFET12を温度上昇から保護するための保護処理を実行する制御系の構成をブロック図にて示す。この図3に示すように、本実施形態の制御系は、CPU30を含むマイコン50を中心に構成されている。マイコン50はCPU30のほか、メモリ28を含んでいる。
【0024】
CPU30は、本発明の損失値算出手段、推定値算出手段、判断手段、保護処理手段を構成し、パワーMOSFET12における電力の損失値を算出したり、その損失値とサーミスター14において検出された温度とに基づいてパワーMOSFET12内部の温度を推定したり、その推定結果に基づいて電源22を制御する。また、メモリ28は、損失値の履歴や、損失値とサーミスター14の検出結果を推定するための温度(推定用温度)との関係を示すテーブルなどを保持する。
【0025】
次に、図3のCPU30が実行する保護処理の流れについて、図4及び図5に基づいて説明する。図4は、CPU30の処理シーケンスを示すフローチャートである。
【0026】
まず、図4のステップS10では、CPU30の指示の下、サーミスター14を用いた温度計測を開始する。次いで、ステップS12では、CPU30は、パワーMOSFET12への電流供給開始から、サーミスター14による計測時点までの間に急激な温度上昇があったか否かを判断する。ここで、急激な温度上昇があったか否かは、電力の損失値が所定の閾値TLを超えているか否かにより判断する。この場合の判断を、次式(1)のように表すことができる。
損失値=電源電圧(V)×出力電流(A)−出力電力(W)≧TL
…(1)
【0027】
この場合、電源電圧をEとし、出力電流をI、パワーMOSFET12の負荷抵抗値をRとすると、式(1)は、次式(2)のように表すことができる。
E・I−I2・R≧TL …(2)
【0028】
したがって、CPU30は、上記(E・I−I2・R)の値を常時モニタリングしておき、パワーMOSFET12への電流供給開始から、サーミスター14による計測時点までの間に、式(2)が成立した時点があったか否かを判断する。
【0029】
具体的には、例えば、閾値を70Wと仮定し、実際の電源電圧E=30V、出力電流I=4Aで、負荷抵抗R=2Ωであった場合には、式(2)は、
30×4−42×2=88(W)≧70 …(2)’
となり、不等式が成立するので、急激な温度上昇があったと判断することができる。このようにして、図4のステップS12における判断が肯定された場合には、ステップS14に移行して、メモリ28が保持する図6のテーブル(損失値と推定用温度との関係を規定しているテーブル)から推定用温度1を読み込むとともに、急激な温度上昇が生じた時間t1を読み出した後、ステップS16に移行する。ここで、推定用温度1はパワーMOSFET12の内部温度と検出値との時間当たりの乖離度を意味し、例えば、+8(℃)であるものとする。なお、この推定用温度1は部品の配置や熱抵抗に応じて変化するので、装置(回路)の種類毎に実験を行って求めておく必要がある。また、上記のような急激な温度上昇が継続した場合におけるサーミスター14の検出温度とパワーMOSFET12の内部温度との関係が図5(b)にグラフにて示されている。
【0030】
一方、ステップS12における判断が否定された場合には、ステップS16に直接移行する。
【0031】
次いで、ステップS16では、パワーMOSFET12への電流供給開始から、サーミスター14による計測時点までの間に緩やかな温度上昇があったか否かを判断する。ここで、緩やかな温度上昇があったか否かは、電力の損失値が所定の閾値TL未満であるか否かにより判断する。この場合、次式(3)のように表すことができる。
損失値=電源電圧(V)×出力電流(A)−出力電力(W)<TL
…(3)
【0032】
また、式(3)は、次式(4)のように表すことができる。
E・I−I2・R<TL …(4)
【0033】
したがって、CPU30は、パワーMOSFET12への電流供給開始から、サーミスター14による計測時点までの間に、式(4)が成立した時点があったか否かを判断する。
【0034】
具体的には、例えば、閾値を70Wと仮定し、実際の電源電圧E=30V、出力電流I=4Aで、負荷抵抗R=4Ωであった場合には、式(4)は、
30×4−42×4=56(W)<70 …(4)’
となり、不等式が成立するので、緩やかな温度上昇があったと判断することができる。このようにして、図4のステップS16における判断が肯定された場合には、ステップS18に移行して、メモリ28が保持する図6のテーブル(損失値と推定用温度との関係を規定しているテーブル)から推定用温度2を読み込むとともに、緩やかな温度上昇が生じた時間t2を読み出した後、ステップS20に移行する。ここで、推定用温度2は、例えば、+2(℃)であるものとする。なお、この推定用温度2の値も推定用温度1と同様、部品の配置や熱抵抗に応じて変化するので、装置(回路)の種類ごとに実験を行って求めておく必要がある。また、上記のような緩やかな温度上昇が継続した場合における、サーミスター14の検出温度とパワーMOSFET12の内部温度との関係が図5(a)にグラフにて示されている。
【0035】
一方、ステップS16における判断が否定された場合には、ステップS20に直接移行する。
【0036】
次いで、ステップS20では、CPU30が、パワーMOSFET12の内部温度を推定する。具体的には、次式(5)に基づいて、推定内部温度の算出を行う。
(推定内部温度)=(サーミスター14による計測結果)
+(推定用温度1×急激な温度上昇の時間t1)
+(推定用温度2×緩やかな温度上昇の時間t2) …(5)
【0037】
そして、ステップS22に移行し、推定内部温度が設定温度(ここでは120℃とする)に達した時点で、CPU30は、電源22のオンオフを制御する保護処理(ステップS24)を実行する。
【0038】
(i)ここで、緩やかな温度上昇が継続的に生じた場合には、式(5)より、
(サーミスターによる計測結果)+(2(℃)×時間)≧120(℃)
…(5)’
となったときに、保護処理(ステップS24)が実行される。
具体的には、パワーMOSFET12への電流供給開始から約23分後(図5(a)では、「15:17:23」と表示されている時点「A」)に、サーミスター14により74.4℃と計測され、式(5)’の不等式が以下のように成立する。
74.4+2×23=120.4≧120 …(5)’
したがって、CPU30は、これ以降、電源22のオンオフ(オフの場合、マイコン以外の回路全体がオフされる)を制御する保護処理を実行することにより、パワーMOSFET12の温度上昇を抑制する(ステップS24)。
【0039】
(ii)一方、急激な温度上昇が継続的に生じた場合には、式(5)より、
(サーミスターによる計測結果)+(8(℃)×時間)≧120(℃)
…(5)”
となったときに、保護処理(ステップS24)が実行される。
具体的には、パワーMOSFET12への電流供給開始から約8分後(図5(b)では、「11:47:35」と表示される時点「B」)に、サーミスター14により56℃と計測され、式(5)”の不等式が以下のように成立する。
56+8×8=122≧120 …(5)”
したがって、CPU30は、これ以降、電源22のオンオフを制御する保護処理を実行することにより、パワーMOSFET12の温度上昇を抑制する(ステップS24)。
【0040】
(iii)更に、緩やかな温度上昇と急激な温度上昇の両方があった場合には、式(5)より、
(サーミスターによる計測結果)+(8℃×急激な温度上昇の時間)
+(2℃×緩やかな温度上昇の時間)≧120 …(5)”’
が成立した場合に、保護処理(ステップS24)が実行される。
例えば、15分間だけ緩やかに温度上昇した場合において、その後、急激に温度上昇したと仮定する。この場合に、急激な温度上昇がその後約3.7分間続き、サーミスター14の計測結果が61℃になったとすると、
61+(8×3.7)+(2×15)≧120
120.6≧120 …(5)”’
となり、不等式が成立するので、CPU30は、これ以降、電源22のオンオフを制御する保護処理を実行することにより、パワーMOSFET12の温度上昇を抑制する(ステップS24)。
【0041】
ところで、前述した従来の方法では、保護処理の実行開始を、サーミスターの検出温度が設定温度に達したか否かにより判断していたため、例えば、設定温度を56℃とした場合、図5(b)に示すように、急激な温度上昇が行われた場合には、パワーMOSFET12の内部温度がほぼ120℃になったときに保護処理を実行することができる一方で、図5(a)に示すように、緩やかな温度上昇が行われた場合には、パワーMOSFET12の内部温度がほぼ93℃のとき(すなわち実際に保護処理を開始すべき時間(A点)よりも12分以上早い時点(C点))で保護処理が開始されてしまうため、増幅回路の稼働時間が短くなってしまうという事態が発生していた。これに対し、本実施形態では、パワーMOSFET12による損失値を算出し、サーミスター14により検出される温度と、損失値に基づく推定用温度とにより、パワーMOSFET12の内部温度の推定値を算出することとしているので、パワーMOSFET12の温度上昇の仕方(急激か緩やかか)を考慮した内部温度の推定を行うことができ、これにより、パワーMOSFET12の内部温度の高精度な推定が可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように高精度に推定されたパワーMOSFET12の内部温度の推定値を用いて、保護処理を実行するか否かの判断を行うため、的確なタイミングで保護処理を実行することが可能となる。
【0043】
なお、上記実施形態においては、説明の便宜上、パワーMOSFET12及びサーミスター14の周囲の温度については考慮していないが、実際には周囲温度を考慮した制御を行うことが望ましい。例えば、保護処理を実行するパワーMOSFET12の温度が120℃である場合に、仮に周囲温度が−20℃であるならば、120−(−20)=140℃まで温度上昇を許容するような制御を行うこととする。また、例えば、周囲温度が25℃であるならば、120−45=75℃まで温度上昇を許容するような制御を行うこととする。このように、周囲温度を考慮した制御を行うことで、保護処理を的確なタイミングで実行することが可能となる。
【0044】
また、例えば、損失が一定ではなく常に変化するような場合には、以前に測定した損失を、次に測定した損失から減算して、損失の増大が急激か、緩やかか、あるいは下がり気味かどうかを判断するとともに、前に測定した温度と次に測定した温度を常に比較することで、全体の上昇度(温度上昇の傾き)を判断することとすることができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、サーミスター14により検出される温度を推定するための値を、損失値から決定される推定用温度と時間との積により求めることとしたが、これに限らず、損失値の検出開始からの積算値に基づいて推定するための値を決定することとしても良い。また、上記実施形態においては、温度が急激に上昇した場合と、緩やかに上昇した場合を判断して、各場合に割り振られた推定用温度(+8℃又は+2℃)と時間との積を推定に用いることとしたが、例えば、3以上に区分された損失値の範囲と、各範囲に対応する推定用温度との関係を示すテーブルを用意しておき、このテーブルに示す推定用温度と時間との積の和を補正値とすることとしても良い。
【0046】
なお、上記実施形態では、動作中に発熱する電子部品として、パワーMOSFETを代表的に採り上げて説明したが、これに限らず、例えば、動作中に発熱する電子部品として、パワートランジスタやブリッジダイオードを採用することとしても良い。また、サーミスター14がプリント基板上に設けられる場合について説明したが、これに限らず、電子部品に設けられるヒートシンクに、サーミスター14を固定することとしても良い。
【0047】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】一実施形態に係るプリント基板の一部を拡大して示す斜視図である。
【図2】図1のパワーMOSFET及びサーミスターを含む回路図である。
【図3】保護回路を制御する制御系を示すブロック図である。
【図4】図3の制御系の処理シーケンスを示すフローチャートである。
【図5】パワーMOSFETの内部温度とサーミスターの検出温度との関係を示すグラフである。
【図6】損失値と推定用温度との関係を示すテーブルである。
【符号の説明】
【0049】
12 パワーMOSFET(温度検出対象素子)
14 サーミスター(温度検出素子)
30 CPU(損失値算出手段、保護処理手段、判断手段、推定値算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検出対象素子近傍に設けられた温度検出素子と、
前記温度検出対象素子における電力の損失値を算出する損失値算出手段と、
前記温度検出素子により検出される温度と、前記損失値に応じた推定補完値とを用いて、前記温度検出対象素子の内部温度の推定値を算出する推定値算出手段と、
前記推定値に基づいて、前記温度検出対象素子に対する保護処理が必要か否かを判断する判断手段と、
前記保護処理が必要と判断された場合に、保護処理を実行する保護処理手段と、を備える素子の保護処理装置。
【請求項2】
前記損失値算出手段は、電源電圧と出力電流の積と前記温度検出対象素子における出力電力との差に基づいて、前記損失値を算出することを特徴とする請求項1に記載の素子の保護処理装置。
【請求項3】
前記推定値算出手段は、前記損失値に基づいて、前記温度検出対象素子の実際の内部温度と前記温度検出素子により検出される検出結果との単位時間当たりの乖離度を決定し、当該単位時間当たりの乖離度の積算値を前記推定補完値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の素子の保護処理装置。
【請求項4】
前記推定値算出手段は、前記損失値と前記単位時間当たりの乖離度との関係を示すテーブルに基づいて、前記乖離度を決定することを特徴とする請求項3に記載の素子の保護処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−159538(P2009−159538A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338299(P2007−338299)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】