説明

紫外線ダメージからのリカバーに好適な皮膚外用剤

【課題】 紫外線の照射などによって、低下した皮膚バリア機能を、補完する技術を提供する。
【解決手段】 1)N−アシルグルタミン酸ジエステルと、2)ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンとを、皮膚外用剤に含有させる。前記N−アシルグルタミン酸ジエステルのエステル部分を構成する基として、フィトステロール残基を有することことが好ましく、更に、ヒアルロン酸及び/又はその塩を含有することが好ましく、夏用の化粧料であることが好ましい。本発明の化粧料は、紫外線に起因する皮膚バリア機能の補完作用を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚外用剤に関し、更に好適には、紫外線などで損なわれた、皮膚バリア機能を補完する化粧料に好適な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の重要な機能の一つに、外界からの異物の侵入を防ぎ、生体からの水分の散逸を防ぐ、いわゆる「バリア機能」が存する。一般的に、「バリア機能」の低下は肌荒れなどを発現するといわれるし、肌荒れにおいては経皮的散逸水分量の増加など、「皮膚バリア機能」の低下が必ず観察される。アトピー性皮膚炎などの慢性皮膚炎症においては、経皮的散逸水分量の増加のみならず、異物侵入防護作用の低下も見られ、皮膚の「バリア機能」の低下が症状と良く一致していることが知られている。この様な皮膚バリア機能の低下を抑制する手段としては、保水性高分子を利用する方法が知られており、この様な保水性高分子の利用により、刺激物質からの防護には有効な手段となっている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。しかしながら、これらの物質は、バリア機能の低下した角層の、水分の経皮的散逸抑制などの、バリア機能の低下で失われた機能を補完するものではなかった。従って、この様な物質の存在下でも、肌荒れなどからの回復は促進される可能性は低かった。これは厳然として、バリア機能の低下した状態が存続し、水分の経皮的散逸が抑制されていないためである。
【0003】
一方、N−アシルグルタミン酸ジエステルは保湿作用を有する油剤として、化粧料に含有させることが既に知られている(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5を参照)し、ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンは、抱水性のある油剤として、ラノリンに代替として油性化粧料に含有させる技術が既に知られている(例えば、特許文献6、特許文献7を参照)。しかしながら、この両者を組み合わせて化粧料に含有させる技術も、この様な組み合わせにより、低下した皮膚バリア機能の補完する作用を発揮することも全く知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開平10−17433号公報
【特許文献2】特開平9−315935号公報
【特許文献3】特開2004−346045号公報
【特許文献4】特開2005−104899号公報
【特許文献5】特開2004−292371号公報
【特許文献6】特開2003−261415号公報
【特許文献7】特開2003−238334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこの様な状況下為されたものであり、紫外線の照射などによって、低下した皮膚バリア機能を、補完する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、紫外線の照射などによって、低下した皮膚バリア機能を、補完する技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1)N−アシルグルタミン酸ジエステルと、2)ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンとを含有する皮膚外用剤で、この様な皮膚を処理することにより、低下した皮膚バリア機能の機能補完がなし得ることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)1)N−アシルグルタミン酸ジエステルと、2)ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
(2)前記N−アシルグルタミン酸ジエステルのエステル部分を構成する基として、フィトステロール残基を有することを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
(3)更に、ヒアルロン酸及び/又はその塩を含有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4)夏用の化粧料であることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(5)紫外線に起因する皮膚バリア機能の補完作用を有することを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紫外線の照射などによって、低下した皮膚バリア機能を、補完する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるN−アシルグルタミン酸ジエステル
本発明の皮膚外用剤は、N−アシルグルタミン酸ジエステルを必須成分として含有することを特徴とする。前記N−アシルグルタミン酸ジエステルにおけるアシル基の炭素数としては10〜30が好ましく、かかる成分を構成するアシル基としては、飽和でも、不飽和でも良く、例えば、2−エチルヘキサノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、オレオイル基、イソステアロイル基、リノレノイル基などが好適に例示でき、特に好ましいものはラウロイル基である。又、ジアルキルエステルを構成するアルキル基としては、分岐でも、直鎖でも、環状構造を有するものでも良く、例えば、オクチル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基、イソステアリル基、ベヘニル基、オクチルドデシル基、カンペステリル基やシトステリル基等のフィトステリル基、コレステリル基などが好適に例示できる。具体的な化合物例としては、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)等が好適に例示でき、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)が特に好適に例示できる。かかるN−アシル化グルタミン酸ジエステルは、グルタミン酸とアシルクロリドをアルカリ存在下縮合させ、N−アシルグルタミン酸と為し、しかる後、塩基又は酸の存在下、所望により溶剤を存在させ、対応するアルコールと脱水縮合せしめ製造することが出来る。N−アシル化グルタミン酸のジエステルはこの様に合成したものを使用することも出来るが、既に化粧料原料などとして市販されているものも存し、この様な市販品を購入し利用することも出来る。特に好ましい市販品としては味の素株式会社より販売されている「エルデュウPS203」(N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルデシル))、「エルデュウCL−301」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))、「エルデュウCl−202」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル))、「エルデュウPS−304」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))などが例示でき、中でも、「エルデュウPS203」が特に好ましい。が例示できる。かかる成分は唯一種含有させることも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。好ましい含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対し、0.005〜5質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%である。かかる成分は、この様な量範囲において、後記ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンとともに働いて、紫外線照射などで低下した皮膚バリア機能、例えば、経皮的水分散逸の亢進などを抑制する機能を、補完する。
【0009】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサン
本発明の皮膚外用剤は、ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンを必須成分として含有することを特徴とする。かかる成分は、ジメチルポリシロキサン骨格の一部にピロリドンカルボン酸残基を導入したものであり、既に化粧料原料として使用されており、化粧料原料としての市販品も存在する。この様な市販品の内、特に好適なものとしては、ユニケマ社から販売されている「モナシルPCA」が例示できる。かかる成分は、前記N−アシルグルタミン酸ジエステルとともに働いて、紫外線照射などで低下した皮膚バリア機能、例えば、経皮的水分散逸の亢進などを抑制する機能を、補完する作用を発揮する。この様な効果を奏するためには、本発明の皮膚外用剤においては、ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンを0.1〜10質量%含有することが好ましく、0.5〜5質量%含有することが特に好ましい。これは少なすぎるとこの様な効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、場合によっては、前記N−アシルグルタミン酸ジエステルの効果を損なう場合も存するからである。
【0010】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有することを特徴とし、低下した皮膚バリア機能を、補完する作用を有する。前記皮膚バリア機能の低下要因としては、紫外線の照射、化学的刺激の反復付与による皮膚バリア層の強度の損傷、生体の過剰反応に伴う、自分自身の炎症因子の暴走などが考えられるが、本発明の皮膚外用剤はこれらの何れにも対応する。本発明の皮膚外用剤としては、この様な皮膚バリア機能が低下した状態において使用されることが好ましいが、健常肌において、この様な損傷を予防する目的で使用することもできるし、この様な角層バリア機能と関係なく、肌を健やかに保つ目的で使用することもできる。本発明の皮膚外用剤としては、皮膚に外用で投与されるものであれば特段の限定なく適用することができ、例えば、医薬部外品を含む化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨などが好適に例示できる。これらの中では、本発明の皮膚外用剤の特性を特に生かすことができる、化粧料に適用することが好ましく、化粧料の中でも、この様な皮膚バリア機能が損なわれる蓋然性の高い状況で使用される化粧料に適用することが好ましく、具体的には、紫外線による影響を受ける蓋然性の高い夏用(サマー用)化粧料に適用することが好ましい。
【0011】
本発明の皮膚外用剤の製剤としては、特段の限定がなく、化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨で使用されている製剤であれば適用でき、例えば、ローション、乳液、エッセンス、クリーム、軟膏などの基礎化粧料や皮膚外用医薬で使用される剤形、アンダーメークアップ、ファンデーション、プレストパウダー、パウダーファンデーション、リップカラー、サンブロックなどのオイルゲルファンデーションなどのような粉体を含有する剤形等が好適に例示できる。
【0012】
本発明の皮膚外用剤には、前記の必須成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することができる。本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のPCA変性ジメチルポリシロキサンに分類されないシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0013】
この様な任意成分の内、特に好ましいものとしては、本発明の皮膚外用剤の構成の効果とは独立に、刺激誘発物質と、皮膚との接触を防ぎ、刺激抑制効果を発現するので、ヒアルロン酸及び/又はその塩を含有させることが好ましい。この様な効果を発現させるための、ヒアルロン酸及びその塩の含有量としては、皮膚外用剤全量に対して、0.001〜0.5質量%が好ましく、0.01〜0.2質量%がより好ましい。本発明の皮膚外用剤の内、粉体を含有するものについては、ヒアルロン酸及び/又はその塩を予め、粉体に被覆させた上で含有させることもできる。
【0014】
又、前記必須成分の作用を更に高めることから、ダイマー酸のジエステルを含有させることも好ましい。ダイマー酸は、炭素数18の不飽和脂肪酸を2量化して得られる炭素数36の(二重結合を持った)脂肪族2塩基酸である。炭素数18の不飽和脂肪酸は、大豆等の植物から得られるオレイン酸、リノール酸を主体とするものが好ましく、ダイマー酸の構造としては、ダイマージオレイン酸、ダイマージリノール酸である。ダイマー酸は、「ダイマー酸」として市販されており、本発明では市販品を用いることができるが、市販品はかなり多くの化合物の混合物であるが、分子構造中に1個の環状構造を有した炭素数36の脂肪族2塩基酸を主成分としている。かかるダイマー酸は、そのままジエステルへ誘導することも出来るし、不飽和結合を一部乃至は全部の水素添加で飽和結合へ部分的或いは完全に誘導して水素添加物に変えた形で使用することも出来る。ダイマー酸のジエステルを構成するアルコール部分としては、通常化粧料で使用されている高級アルコール、ダイマー酸を還元して得られるダイマーアルコールなどが好適に例示できる。前記高級アルコールにはコレステロールや、フィトステロールなどの脂肪族環状アルコールも包含する。ダイマー酸とアルコールを縮合しジエステルへ誘導する方法としては、ダイマー酸を塩化チオニルなどでハロゲン化し、しかる後にアルカリ存在下縮合することにより製造できる。この様なダイマー酸のジエステルの内、好ましいものを例示すれば、例えば、ダイマージリノール酸ジイソステアリル、水添ダイマージリノール酸ジイソステアリル、ダイマージリノール酸ジフィトステリル、水添ダイマージリノール酸ジフィトステリル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、水添ダイマージリノール酸ジベヘニル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、水添ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル等が例示できるし、混合アルコールエステル、例えば、ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)の様な形態を取ることも好ましい。この様なダイマー酸のジエステルには市販品も存し、かかる市販品を購入して使用することも出来る。この様な市販品としては、例えば、ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)である、「プランドゥール」(日本精化社製;Plandool−S、Plandool−H)、水添ダイマージリノール酸イソステアリル/フィトステリルである「ラスプランPI−DA」(LUSPLAN PI−DA;日本精化株式会社製)、水添ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルである「ラスプランDD−DA5」(LUSPLAN DD−DA5;日本精化株式会社製)、水添ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルである、「ラスプランDD−DA7」(LUSPLANDD−DA7;日本精化株式会社製)等が好適に例示できる。中でも、「ラスプランDD−DA5」が特に好ましい。かかる成分の好ましい含有量は、0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0015】
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分と、これら任意の成分とを、常法に従って処理することにより、製造することができる。
【0016】
以下に、本発明について、実施例をあげて更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことはいうまでもない。
【実施例1】
【0017】
以下に示す処方に従って、本発明の外用剤である乳液(乳液)を作成した。即ち、イ、ロ、ハの成分をそれぞれ80℃に加熱し、攪拌下徐々にイにロを加え乳化し、これに、更に、ハを徐々に加え中和して、攪拌冷却し、本発明の皮膚外用剤である乳液1を得た。この乳液は、疎水化処理を施した粉体を含有するパウダー状のファンデーションを皮膚上に美しく乗せる効果に優れ、パウダー状のファンデーション用のアンダーメークとして好適であった。
【0018】
【表1】

【0019】
<試験例1>
乳液1、及び、乳液1と同様の製法で、乳液1の「エルデュウPS203」を「モナシルPCA」に置換して作成した比較例1並びに乳液1の「モナシルPCA」を「エルデュウPS203」に置換して作成した比較例2について、前腕内側部に設けた2cm×4cmの部位にMEDの1.2倍の紫外線を連日14日間照射して作成した肌荒れモデル部位に対する作用を調べた。(n=1)検体は、損傷終了24時間後より投与を開始し、1日1回40μlを部位に投与し、これを1週間続けた。最初の投与直前と、投与終了後24時間にテヴァメーターにてTEWL(経皮的水分散逸量)を計測した。損傷対照として、紫外線損傷は行い、検体投与は行わないコン取るロール部位と、検体投与も損傷も行わない無処置部位も設けた。結果を表2に示す。これより、本発明の皮膚外用剤は必須成分の組み合わせ効果により、損傷部位のバリア機能の回復促進作用を発現していることがわかる。
【0020】
【表2】

【0021】
<試験例2>
試験例1と同様に部位を設け、同様に検体を1週間投与した後に、紫外線照射を14日間行い、投与前と紫外線照射終了後24時間のTEWLを調べた。結果を表3に示す。本発明の皮膚外用剤は紫外線照射により肌荒れが起こるのを防ぐ作用を有することがわかる。
【0022】
【表3】

【実施例2】
【0023】
実施例1と同様に下記の処方に従って、本発明の皮膚外用剤である乳液2を作成した。このものは試験例2の評価で、投与直前のTEWLが19.2であったものに対し、照射後も22.9に上昇を抑制する作用を有した。この値は実施例1の乳液1に比すると若干低い値と思われ、ダイマー酸のジエステルを含有することが好ましいことがわかる。
【0024】
【表4】

【実施例3】
【0025】
実施例1と同様に下記の処方に従って、本発明の皮膚外用剤である乳液3を作成した。このものと乳液1とを試験例1の手技でその効果を調べた。更に、試験例1の試験過程の1回目の投与直後に、37℃に温度調整した、希塩酸の10倍希釈列を用意し、綿棒に含浸させて部位にタッチしスティギングを起こす閾値を調べた。これらの結果を表6に示す。これよりヒアルロン酸ナトリウムは、N−アシルグルタミン酸ジエステルとピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンの組み合わせ効果とは独立に、スティギングを抑制する作用を有することがわかった。
【0026】
【表5】

【0027】
【表6】

【実施例4】
【0028】
<製造例1>
セリサイト(アスペクト比38.5)70質量部を水1000質量部に分散させ、これに塩化チタン140質量部を加えて、攪拌し、しかる後に、攪拌下水酸化カリウム10質量%水溶液を徐々に加え、沈殿が生じなくなったところでデカンテーションし、2回水洗して、気流下800℃で12時間焼成して二酸化チタン被覆セリサイト(セリサイト:二酸化チタン=73:27)を得た。
【0029】
下記に示す処方に従って、コーティングを行い、化粧料用の粉体1を得た。即ち、ヘンシェルミキサーにイの成分を秤込み、混合しながらロの成分を噴霧し、これを40℃の温風下12時間乾燥させ、0.9mm丸穴スクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、化粧料用の粉体1を得た。
【0030】
【表7】

【0031】
前記化粧料用の粉体1を用いて、本発明の皮膚外用剤であるパウダーファンデーションを作成した。即ち、イの成分をヘンシェルミキサーで混合し、0.9mm丸穴スクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、ヘンシェルミキサーで混合しながらロの成分をコーティングし、1mmヘリングボーンスクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、金皿に充填し、加圧成形しファンデーション1を得た。このものは、日本化粧品技術者会の規定したSPFの測定法に従ってSPFを測定した場合、22.3の値を示し、優れた紫外線からの防護効果があることがわかった。
【0032】
【表8】

【0033】
このものについて、試験例1の手技でその効果を調べた。更に、試験例1の試験過程の1回目の投与直後に、37℃に温度調整した、希塩酸の10倍希釈列を用意し、綿棒に含浸させて部位にタッチしスティギングを起こす閾値を調べた。結果を表9に示す。これより、本発明の皮膚外用剤である、ファンデーション1は、損傷した皮膚バリア機能の回復を促進するとともに、刺激物質からの防護作用も有するので、紫外線の影響から皮膚を守りながら、紫外線による肌荒れを改善する効果を奏する。この為、サマー用の化粧料として、取り分け、紫外線防護用の化粧料として好適であることがわかる。
【0034】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)N−アシルグルタミン酸ジエステルと、2)ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項2】
前記N−アシルグルタミン酸ジエステルのエステル部分を構成する基として、フィトステロール残基を有することを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
更に、ヒアルロン酸及び/又はその塩を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
夏用の化粧料であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
紫外線に起因する皮膚バリア機能の補完作用を有することを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−210892(P2007−210892A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29151(P2006−29151)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】