説明

紫外線吸収能を有する有機系化合物複合粉体及びその製造方法並びにそれらを配合した化粧料

【課題】基材となる粉体の表面に紫外線吸収剤、特に有機系紫外線吸収剤を均一にコーティングさせることにより、紫外線吸収性を持たせた複合粉体と、該粉体を配合した安全性の高い化粧料を提供すること。
【解決手段】酸化チタン及び/又は酸化亜鉛から選ばれた微粒子粉末である顔料粉末の表面に媒体への溶解性の低い、ブチルメトキシジベンゾイルメタン及び/又はジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等の有機系紫外線吸収剤を溶解性の高い有機溶剤を使用して一分子膜に近い状態で均一にコーティングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線遮蔽能、特にA波と呼ばれる320〜400nmの波長においても優れた紫外線遮蔽能を有する複合粉体及びそれらを配合した化粧料に関する。
また、本発明は、基材となる粉体表面に、紫外線吸収能を有する有機系化合物を表面コーティングすることを特徴とする複合粉体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚用化粧料,メイクアップ化粧料等の化粧料では、着色及び調色,滑性や光沢の付与等の目的で顔料が用いられるが、特に紫外線による紅斑や日焼けを防止する化粧料が多く開発され、サンスクリーン剤やファンデーション等の化粧料が汎用されている。
これら化粧料に使用される粉体として、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の金属酸化物は紫外線散乱効果を有している粉末もあり、日焼け防止用化粧料によく使用される。紫外線遮蔽能指標であるSPFとPFAの表示方法が世界的に見直され、特に近年、UV−A(A波紫外線)遮蔽のニーズが非常に高まっている。微粒子酸化チタンに限らず、微粒子酸化亜鉛を含めて無機系紫外線遮蔽剤は、UV−A遮蔽能が低いことが知られているので、無機系の紫外線防止剤の使用は限られている。
【0003】
一方、ブチルメトキシジベンゾイルメタン等に代表される有機系化合物からなる紫外線吸収剤は、優れたUV−A遮蔽能を有してはいるが、化粧品で使用する媒体への溶解性が乏しく、高配合が難しく、配合しても再析出して結晶化するなどの問題があり、化粧品処方では使いこなしが難しいという欠点がある。
そこで、化粧品処方で取り扱いが容易なように、有機系紫外線吸収剤を粉末化して化粧料に配合することが試みられているが、溶液タイプに比較して粉末タイプの場合は紫外線吸収の効率が低く、化粧料における同量の使用では紫外線遮蔽能について、粉末タイプは圧倒的に溶液タイプに劣っていた。
例えば、酸化チタン顔料と有機系紫外線吸収剤を併用した化粧品(特許文献1、ロレアル)羅漢果抽出物(モモルディカ グロスベノリイ果実)と有機系紫外線吸収剤を併用した外用剤(特許文献2、コーセー)、ジベンゾイルメタン系有機系紫外線吸収剤とシリコーン化合物で表面処理した粉体を含有する外用剤(特許文献3、資生堂)、有機系紫外線吸収剤に対して特定のビフェニル化合物を併用した外用剤(特許文献4、カネボウ)があるが、これらの技術は化粧品等への配合時に、有機系紫外線吸収剤とその補助的成分を共存させるものであって、有機系紫外線吸収剤自体の分散改善にかかるものではなかった。
【0004】
わずかに粉末タイプの有機系紫外線吸収剤の分散性改善技術として知られるのは、表面に有機系紫外線吸収剤を結合させてなる紫外線吸収性顔料(特許文献5、ノエビア)があるが、有機系紫外線吸収剤処理粉末の分散性が満足できるものではなかった。
【0005】
上述するように、従来、化粧料への配合時の取り扱いの容易性を図る上で、有機系紫外線吸収剤を粉末化しての使用は利用性が高いことは知られているが、粉末タイプで分散性のよい有機系紫外線吸収剤は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−2929号公報
【特許文献2】特開平10−182406号公報
【特許文献3】特開平10−265357号公報
【特許文献4】特許第3632348号
【特許文献5】特開平5−194932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
紫外線吸収剤を含む化粧料は、戸外で、紫外線照射量の多い時期に用いられるため、紫外線吸収剤の光毒性や累積刺激性といった安全性上の問題はあるが、紫外線吸収剤そのものの使用を少量で同じ効果を奏するようにすることは経済上の大きな課題である。
上記状況に鑑み、本発明は、有機系紫外線吸収剤が溶解しない媒体を使用しても、有機系紫外線吸収剤が溶解した場合と同等以上の遮蔽能を有する有機系化合物複合粉末及びそれらを配合した化粧料を提供することを課題とする。
【0008】
一般に紫外線吸収剤は、粉末として使用するよりは適宜の媒体に溶解して使用することが量的面からみると効率的であるが、紫外線吸収剤の中には媒体になかなか溶解し難い場合もしばしばみられる。
紫外線吸収剤として、特にブチルメトキシジベンゾイルメタン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルは、有機系紫外線吸収剤として汎用されているが、これらの有機系紫外線吸収剤は媒体に溶解が難しく、仮に溶解したとしても長期的に安定した状態とはならず、該化合物が析出してくる場合もある。
化粧料に用いる場合、このように媒体に対し溶解し難い場合には、該紫外線吸収剤を粉末として使用せざるを得ない。
また、化粧料に用いられる無機系顔料は、それら自体皮膚表面を被覆し、多少は紫外線の透過を抑制することができるが、酸化チタンや酸化亜鉛等は紫外線散乱効果を有し、日焼け防止用化粧料に用いられているものの、被覆性を高めるため、十分な紫外線散乱効果を得るためには、これら顔料をかなり多量に配合しなければならず、調色がうまくいかなかったり、粉浮きの発生等化粧持ちが悪くなったりという悪影響が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、安定的に溶解し難いこれら有機系紫外線吸収剤と顔料等の粉体とを一体化して複合する手段として、基材となる無機粉体と上記紫外線吸収剤とを複合する場合に、無機粉体の表面に上記有機系紫外線吸収剤をコーティング処理し、粉末として取り扱うことによって、上記有機系紫外線吸収剤を単体で適宜の媒体に溶解して使用する場合と同等以上の紫外線遮蔽能を有する有機系紫外線吸収剤の複合粉末が得られ、また、このようにして得られた有機系紫外線吸収剤複合粉末を化粧料に配合することにより、予期し得る以上の紫外線遮蔽能を有する化粧料とすることを見出し本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明では、一般に無機系紫外線遮蔽剤として使用される微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、さらにはタルク、マイカ、セリサイト等の基材となる粉体に対して、ブチルメトキシジベンゾイルメタン等の化粧品で使用するシリコーン等の媒体への溶解性が低い有機系紫外線吸収剤を、溶解性の高い有機溶剤を使用して表面コーティング処理することにより、有機系紫外線吸収剤複合粉体を得ることができる。
【0011】
後述する実施例においてその根拠を説明するが、本発明では、粉体表面に有機系紫外線吸収剤が一分子膜に近い状態で均一に表面コーティングされていると考えられる。したがって、本発明の有機系紫外線吸収剤複合粉体を化粧品媒体に均一に分散して化粧品に配合することで、有機系紫外線吸収剤が溶解して均一に化粧品に配合されている状態に近くなり、有機系紫外線吸収剤が溶解しない媒体を使用しても、有機系紫外線吸収剤が溶解した場合と同等以上の紫外線遮蔽能を得ることができる。このため、本発明の有機系紫外線吸収剤複合粉体を配合することにより、非常に優れた紫外線遮蔽能を有する化粧料となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ブチルメトキシジベンゾイルメタンやジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等の公知の有機系紫外線吸収剤によって、酸化チタンや酸化亜鉛等の基材となる粉体の表面をコーティングするという、簡便で経済性の高い処理法の採用により、得られる有機系紫外線吸収剤複合粉体が化粧料への分散性がよく、更に有機系紫外線吸収剤が溶解した場合と同等以上の紫外線遮蔽能を得ることが出来るという顕著な効果がある。
また、基材が微粒子粉体の場合には、化粧品媒体への分散も可能であり、またパウダー製品にも配合可能な、適用範囲の広い複合粉体となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1,比較例1及び2の透過率測定結果
【図2】実施例2,比較例3及び4の透過率測定結果
【図3】実施例3,比較例5の透過率測定結果
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明においては、基材となる粉体表面に、特定の有機系紫外線吸収剤をコーティングした処理粉体を、化粧品媒体に均一に分散させた化粧品とすることによって、有機系紫外線吸収剤が溶解した場合と同等以上の紫外線遮蔽能を得ることの出来る有機系紫外線吸収剤複合粉体とすることができるが、その具体的態様について以下に述べる。
【0015】
本発明で用いる、基材となる粉体としては、酸化チタン,酸化亜鉛,酸化アルミニウム,炭酸マグネシウム等の無機系化合物の粉体顔料として汎用されている物質を用いてもよいが、化合物としては酸化チタンや酸化亜鉛を使用するのが最も効果が発揮される。
【0016】
そして、本発明の効果を充分に発揮させるには、基材となる粉体自身が紫外線遮蔽能を有しているのが好ましく、その際の粉体の平均一次粒子径は、10〜90nmであることが好ましい。
つまり、基材となる粉体も紫外線遮蔽能を有していれば、有機系紫外線吸収剤を処理して得られる複合粉体には、その効果について相乗効果が期待できるからである。
なお、基材となる粉体においては、有機系紫外線吸収剤がより均一にコーティングされるように、無機化合物やカップリング剤等で何らかの表面処理が施されていても構わない。
【0017】
本発明において用いる有機系紫外線吸収剤としては、安全性が高く、基材となる粉体表面への導入が容易で、しかも工業的に大量生産されていて低コストで入手できる、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(例えばDSM社製Parsol 1789)又はジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(例えばBASF社製Uvinul A Plus)を用いるのが効果的である。
【0018】
すなわち、本発明では、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物等の基材となる粉体に対して、有機系紫外線吸収剤を表面コーティングすることによって、紫外線吸収能を有する複合粉体とすることができる。これら紫外線吸収性粉体は、複合粉末であって、通常の顔料と同様に化粧料中に配合でき、紫外線の透過を有効に防止する。
粉体表面に紫外線吸収剤が均一にコーティングされているため、水,汗又は皮脂による紫外線吸収剤の溶解,流出に対し抵抗性を示すので、皮膚上から紫外線吸収剤が除去されにくい。
この化粧料を皮膚上に塗布した場合、経皮あるいは経皮脂腺による紫外線吸収剤の皮膚への浸透が起こらず、先に述べた光毒性や累積刺激性といった皮膚への悪影響が緩和され、接触皮膚炎,光接触皮膚炎等の炎症が起こる可能性を低減することができる。
【実施例1】
【0019】
トルエン3,000g中に有機系紫外線吸収剤として、ブチルメトキシジベンゾイルメタンを200g投入し、撹拌混合して溶解した。溶解後、微粒子酸化チタン(テイカ社製MT-100Z:平均一次粒子径15nm)を1,000g投入し、均一に混合した。
混合後のスラリーを、サンドグラインダーミルにより湿式解砕して微粒子酸化チタンの凝集を解し、その後、減圧加熱下でトルエンを留去した。
得られた乾燥物を解砕し、上記ブチルメトキシジベンゾイルメタンを均一にコーティングした複合粉体を得た。
【0020】
透過率、SPF及びUVA ratioの測定:
上記得られた有機系紫外線吸収剤複合粉体を下記の処方で混合し、混合物についてディスパー(プライミクス社製T.K.ロボミックス)を用いて3,000rpm−10分間撹拌混合し、試験液とした。
オイル相
シクロペンタシロキサン:信越化学工業社製KF-995 (45g)、ミネラルオイル(5g) 、ポリエーテル変成シリコーン:信越化学工業社製KF-6017P (5g)、複合粉体(10g)
水相
水(30g)、ブチレングリコール(5g)
【0021】
試験液について、SPFアナライザー(測定機/Labsphere UV1000S、基盤/IMS社製Vitro-Skin、塗布量/2.0mg/cm2)を使用してSPF及びUVA ratioを測定した。また、日立社製U-3300形分光光度計を使用して透過率を測定した。
SPF及びUVA ratioの測定結果を表1に、透過率の測定結果を図1に示す。
〔比較例1〕
【0022】
実施例1で評価を行った試験液と同様の割合となるように配合比率を調整して、微粒子酸化チタンとブチルメトキシジベンゾイルメタンとを複合させず、別々に混合して処方した。撹拌方法は実施例1と同様である。
オイル相
シクロペンタシロキサン:信越化学工業社製KF-995 (45g)、ミネラルオイル(5g)、ポリエーテル変成シリコーン:信越化学工業社製KF-6017P (5g)、微粒子酸化チタン:テイカ社製MT-100Z(8.33g)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(1.67g)
水相
水(30g)、ブチレングリコール(5g)
透過率の測定結果を図1に、SPF及びUVA ratioの測定結果を表1に実施例1の場合と合わせて示す。
〔比較例2〕
【0023】
比較例1のブチルメトキシジベンゾイルメタンを除いて、その減少分を微粒子酸化チタン(テイカ社製MT-100Z)で補う以外は比較例1と同様に処方した。
オイル相
シクロペンタシロキサン:信越化学工業社製KF-995 (45g)、ミネラルオイル(5g)、ポリエーテル変成シリコーン:信越化学工業社製KF-6017P (5g)、微粒子酸化チタン:テイカ社製MT-100Z(10g)、
水相
水(30g)、ブチレングリコール(5g)
測定結果を図1及び表1に、実施例1、比較例1と合わせて示す。
【0024】
【表1】

【0025】
〔結果の総括および考察〕(表1及び図1)
表1の結果から、実施例1の複合粉末を配合した試験液は、比較例1,2と比較してSPF、UVA ratio共に高い値を示し、特にUV−A(A波紫外線)遮蔽能の指標である、UVA ratioが高い値を示していることがわかる。
また、図1に示した透過率曲線における、実施例1と比較例1,2との紫外線遮蔽の差異から、実施例1では、UV−A領域の350〜400nmの波長において高い遮蔽能を発現していることがわかる。
【0026】
実施例1で使用した微粒子酸化チタンは、平均一次粒子径が数十nmという微細な粒子であり、その表面における有機化合物の被覆状態を直視することはできないが、粉体分散後の光学特性を検討することにより、当該粉体における表面状態について、ある程度の概念を構築する事は可能である。
実施例1では、配合する前に、微粒子酸化チタンの粉体表面に対し、有機溶媒を用いて溶解させたブチルメトキシジベンゾイルメタンでもって処理を行っている。
ブチルメトキシジベンゾイルメタンは、当該化合物単独でUV−A領域に遮蔽能を有するが、より短波長であるUV−B領域では遮蔽能が低い。しかも、当該化合物は水やシリコーンオイル、ミネラルオイル等の媒体には溶解性が低いため、分散方法を工夫するか、有機溶媒に溶解させない限り、紫外線遮蔽能を発揮できないという欠点を有している。このことは、単純に物理的混合を行って配合した比較例1の試験液においては、UV−A領域での遮蔽能が発現していないことからも明らかである。
物理混合では有効な結果が得られないことから、実施例1で得られた複合粉体は、基材となる粉体表面に、紫外線吸収能を有する有機化合物が均一にコーティングされているものと考えることができる。不均一であれば、UV−A領域での遮蔽能が充分に発現しないと考えられる。
なお、比較例2では、紫外線吸収能を有する有機化合物を含まず、その代わりに微粒子酸化チタンで補った結果、固形分配合量が多くなり、可視光での透明性が低下し、代わりに比較例1よりもUV−B遮蔽能が向上したと考えられる。このため、実施例1と比較してSPFは若干低い値を示し、UVA ratioは大きく低下している。
【0027】
ところで、実施例で配合したブチルメトキシジベンゾイルメタンの分子量から計算される、当該化合物を一分子膜と仮定した場合の面積と、微粒子酸化チタンの比表面積は、ほぼ同等の値となる。したがって、本発明の複合粉体においては、紫外線遮蔽能を有する有機化合物が、基材となる粉体表面に一分子膜に近い状態でコーティングされているものと推測される。
【実施例2】
【0028】
微粒子酸化チタンを、微粒子酸化亜鉛(テイカ社製MZ-500:平均一次粒子径30nm)に変更した以外は実施例1と同様に処理した。
〔比較例3〕
【0029】
微粒子酸化チタンを、微粒子酸化亜鉛(テイカ社製MZ-500)に変更した以外は比較例1と同様に処理した。
〔比較例4〕
【0030】
微粒子酸化チタンを微粒子酸化亜鉛(テイカ社製MZY-505S:平均一次粒子径30nm)に変更した以外は比較例2と同様に処理した。
【0031】
作成した試験液について、SPFアナライザーを使用して実施例1と同様にSPF及びUVA ratioを測定した結果を表2に示す。また、透過率の測定結果を図2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
〔結果の総括および考察〕(表2及び図2)
表2の結果から、実施例2の複合粉末を配合した試験液は、比較例3,4と比較してSPF、UVA ratio共に高い値を示し、特にUVA ratioが高い値を示していることがわかる。
また、図2に示した透過率曲線における、実施例2と比較例3,4との紫外線遮蔽の差異から、実施例2においても、UV−A領域の波長において大きな遮蔽能が発現していることがわかる。
このことは、基材となる粉体の種類によって得られる効果の状態は異なってくるものの、本発明の本質である紫外線遮蔽における相乗効果は充分発現していることを示している。
【0034】
〔実施例3、4〕、〔比較例5、6〕
表3の配合でW/Oクリームを作成し、SPF、UVA ratio及び透過率を測定した。各特性の測定方法は、上述した実施例と同様である。
なお、表3におけるB相記載の複合粉体とは、実施例3においては、実施例1で作成したブチルメトキシジベンゾイルメタンと微粒子酸化チタンとの複合粉体を示し、実施例4においては、有機系紫外線吸収剤としてジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを用い、基材となる粉体として微粒子酸化チタン(MT-100Z)を用いて実施例1と同様な方法で得た複合粉体を示している。また、A相記載の有機系紫外線吸収剤として、比較例5ではブチルメトキシジベンゾイルメタンを、比較例6ではジエチルアミノヒドロキシペンゾイル安息香酸ヘキシルを用いた。
すなわち、実施例3と比較例5、実施例4と比較例6とはそれぞれ、同じ材料を用いてはいるが配合方法が異なる組み合わせとなる。
【0035】
各相の混合方法:
1.A相を加熱溶解(80℃)後、室温まで冷却する。
2.A相にB相を添加し、ディスパーで均一に混合する(3000回転、5分間)。
3.混合溶解したC相を、2.で混合したAB相へ、撹拌下徐々に加える。
4.ホモミキサーで均一になるまで撹拌(7000回転、5分間)し、製品(W/Oクリーム)を得る。
試験結果を表4に示す。また、実施例3及び比較例5の透過率測定結果を図3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
〔結果の総括〕(表4及び図3)
表4及び図3の結果から、本発明の複合粉末は、化粧料成分として配合した場合にも、単純な物理混合により調製した場合と比較してSPF、UVA ratio共に高い値を示しており、特にUVA ratioが高い値を示していることがわかる。
【0039】
〔実施例5、6〕、〔比較例7、8〕
表5の配合でO/Wクリームを作成し、SPF及びUVA ratioを測定した。各特性の測定方法は、上述した実施例と同様である。
なお、表5におけるB相記載の複合粉体とは、実施例5においては、実施例3で用いたブチルメトキシジベンゾイルメタンと微粒子酸化チタンとの複合粉体を示し、実施例6においては、実施例4で用いた有機系紫外線吸収剤としてジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを用い、基材となる粉体として微粒子酸化チタン(MT-100Z)を用いた複合粉体を示している。また、A相記載の有機系紫外線吸収剤として、比較例7ではブチルメトキシジベンゾイルメタンを、比較例8ではジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを用いた。
すなわち、実施例5と比較例7、実施例6と比較例8とはそれぞれ、同じ材料を用いてはいるが配合方法が異なる組み合わせとなる。
【0040】
各相の混合方法:
1.A相を80℃にて加熱溶解後、当該温度を保ったままA相にB相を添加し、ディスパーで均一に混合する(3000回転、5分間)。
2.C相を80℃にてホモミキサーで撹拌し、均一になるまで混合する。(5000回転、30分間)
3.D相を80℃にて加熱溶解後、これにC相を加え均一に混合する。
4.80℃で撹拌下、3.で作成したC相とD相との混合相に、1.で作成したA相とB相との混合相を徐々に加える。
5.ホモミキサーで均一になるまで撹拌(7000回転、5分間)した後、撹拌下、室温まで冷却し、製品(O/Wクリーム)を得る。
試験結果を表6に示す。
【0041】
【表5】

【0042】
【表6】

【0043】
〔結果の総括〕(表4及び表6)
表4及び表6の結果から、本発明の複合粉末は、化粧料成分として油中水型エマルションに配合しても水中油型エマルションに配合した場合にも、優れた紫外線遮蔽特性を有していることがわかる。
【0044】
上記実施例及び比較例から、有機系紫外線吸収剤であるブチルメトキシジベンゾイルメタン及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを、酸化チタンや酸化亜鉛等の基材となる粉体表面にコーティング処理を行うことによって得られる有機系紫外線吸収剤複合粉体が、化粧料への分散性がよく、有機系紫外線吸収剤を単独で配合した場合よりも優れた紫外線遮蔽能を得ることが出来る。
また、当該有機系紫外線吸収剤複合粉体を配合することで、有機系紫外線吸収剤を単独で配合した場合よりも、優れた紫外線遮蔽能を有する化粧料が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材となる粉体表面に、媒体への溶解性が低い紫外線吸収能を有する有機系化合物を、溶解性の高い有機溶剤を使用してコーティングしてなることを特徴とする複合粉体。
【請求項2】
基材となる粉体表面に、媒体への溶解性が低い紫外線吸収能を有する有機系化合物を、溶解性の高い有機溶剤を使用して一分子膜に近い状態で均一にコーティングしてなることを特徴とする複合粉体。
【請求項3】
上記基材となる粉体の平均一次粒子径が、10〜90nmであることを特徴とする請求項1記載の複合粉体。
【請求項4】
上記基材となる粉体が、酸化チタン及び/又は酸化亜鉛から選ばれた無機粉体であることを特徴とする請求項1記載の複合粉体。
【請求項5】
上記紫外線吸収能を有する有機系化合物が、ブチルメトキシジベンゾイルメタン及び/又はジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルであることを特徴とする請求項1記載の複合粉体。
【請求項6】
上記媒体への溶解性が低い有機系化合物を、当該化合物に対する溶解性の高い有機溶剤を使用して一分子膜に近い状態で均一に表面コーティング処理することによって、紫外線吸収能を有する複合粉体を製造する方法。
【請求項7】
上記請求項1〜5に記載の複合粉体を含んでなることを特徴とする化粧料。
【請求項8】
基材となる粉体表面に、媒体への溶解性が低い紫外線吸収能を有する有機系化合物を、溶解性の高い有機溶剤を使用して均一にコーティング処理することにより得られる、波長350nm〜400nmにおける透過率が50%未満であることを特徴とする複合粉体。
【請求項9】
波長700nmにおける透過率が85%以上となる光学測定系において、請求項6の手法を行なわずに配合した場合と比較して、波長400nmにおける透過率が15%以上低い請求項1の複合粉体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−121810(P2012−121810A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44303(P2009−44303)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【Fターム(参考)】