説明

紫外線照射装置

【課題】ランプハウス内に格子状に配置された複数の紫外線照射部のメンテナンス性の向上を図る。
【解決手段】マイクロ波に基づき、紫外線を発光することが可能な放電媒体が封入された無電極ランプ12が収容されたランプハウス11からモジュール化された紫外線照射部100を構成する。紫外線照射部100から放射される紫外線は、リフレクタ211,212を用いて集光または拡散させながら照射室200に配置される被照射体に照射させる。紫外線照射部100と照射室200は、紫外線は通過し、マイクロ波は遮蔽する電磁シールド24が配置される。格子状に配置の紫外線照射部100の何れかのメンテナンスを行う場合、行方向に選択的に紫外線照射部100を取り出すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ波給電式による無電極紫外線ランプを用いて、例えば主に印刷関連でのインク乾燥、半導体関連の微細露光、液晶関連の接着剤硬化等の用途に用いられる紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紫外線照射装置は、産業用として様々な用途で使用されており、主に印刷関連でのインク乾燥、半導体関連の微細露光、液晶関連の接着剤硬化等に用いられている。紫外線装置に搭載されるランプハウスには、ランプ長数十CMのマイクロ波給電式無電極ランプと、マイクロ波を発生するマグネトロンとが内蔵されており、ランプハウス上部に接続された給気ダクトにより冷却されている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−289527公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、ランプの有効発光長が短いため、複数のランプハウスを平行配置して照射エリアの長尺化を図った構成での実用化が検討されている。そのため、ランプハウスのメンテナンスの際、全モジュールを停止する必要があったり、中央部に配置したランプハウスのメンテナンスが困難であったり、といった問題がある。
【0005】
この発明の目的は、格子状に配置されたモジュール化された複数の紫外線照射部におけるメンテナンス性の向上を図ることのできる紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線照射装置は、誘電媒体が封入され、該放電媒体をマイクロ波で励起させることで紫外線を発光させる無電極ランプと、前記無電極ランプを点灯させるマイクロ波を発振させるマグネトロンと、前記無電極ランプおよびマグネトロンを収納し、外部に紫外線を照射可能とするランプハウスから構成される紫外線照射部を、格子状に複数台並べて配置することで大面積の照射を可能とする紫外線照射装置において、格子状に配置される前記紫外線照射部は、各列または行毎に独立してスライド移動できるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、格子状に配置された複数の紫外線照射部のメンテナンス性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の紫外線照射装置に関する第1の実施形態について説明するためのシステム構成図である。
【図2】図1のモジュール化された紫外線照射部について説明するための構成図である。
【図3】図3のIa−Ib線断面図である。
【図4】無電極ランプについて説明するための構成図である。
【図5】不具合の紫外線照射部のメンテナンス手順について説明するための説明図である。
【図6】この発明の紫外線照射装置に関する第2の実施形態について説明するためのシステム構成図である。
【図7】この発明の紫外線照射装置に関する第3の実施形態について説明するためのシステム構成図である。
【図8】この発明のスライダー搬送の他の具体例について説明するための断面図である。
【図9】この紫外線照射装置に関する第4の実施形態について説明するための上面図である。
【図10】図9の要部の断面図である。
【図11】第4の実施形態におけるメンテナンス手順について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、この発明の紫外線照射装置に関する第1の実施形態について説明するためのシステム構成図である。
【0011】
図1において、100はモジュール化された紫外線を放射させる紫外線照射部であり、この場合の紫外線照射部100は、行(横)方向に6台、列(縦)方向に6台の計36台が、水平面上にほぼ等間隔で格子状に配置されている。これら紫外線照射部100から放射される紫外線は、被照射体が設置される照射室200に照射される。
【0012】
ここで、図2〜図4を用いて紫外線照射部100の構成例について説明する。図2は構成図、図3は図2のIa−Ib線断面図、図4は図2で用いる無電極ランプの一例について説明するための構成図である。
【0013】
図2、図3において、11はマイクロ波を遮蔽する機能を有する、例えばステンレス製のランプハウスであり、このランプハウス11の中央下方部には電極を備えない、いわゆる無電極ランプ12を配設してある。131,132は、マイクロ波を発生させるマグネトロンである。14は、マグネトロン131,132を駆動させるための電力を供給するための電源である。151,152は、マグネトロン131,132で発生させアンテナ161,162から送信されるマイクロ波を、無電極ランプ12に伝達させる導波管である。
【0014】
ここで、図4を参照して無電極ランプ12の構成例について説明する。121は紫外線光を透過させる石英ガラス製の長さが240mm程度の円筒形状のバルブである。バルブ121は、中央部122をその両端部123,124よりも細くなるようにテ―パをつけたもので、両端部123,124の外径は例えば17mm程度、中央部122の外径は10mm程度である。
【0015】
バルブ121の発光空間125内には、不活性ガスとそれに水銀と鉄を主成分とするマイクロ波で放電させる放電媒体を封入する。バルブ121の両端にはバルブ121を支持する支持部126,127がバルブ121と一体的に形成される。
【0016】
なお、共通のランプハウス11内に2個のマグネトロン131,132を設置した例としたが、1個であっても構わない。また、無電極ランプ12は、中央部122をその両端部123,124よりも細くなるようにテ―パをつけたが、両端123,124と同径であっても構わない。
【0017】
再び、図2、図3を参照して紫外線照射部100についてさらに説明する。17は、無電極ランプ12から照射された光を受光する、金属線をメッシュ状に編み込んだり、金属板にパンチング加工したりしたカバーで覆われた受光素子、18は受光素子17が受光した光の量を検出する光量検出器である。また、19は光量検出器18により検出された光量が、予め設定された光の量に等しくなるように、電源14の電圧を制御する制御部である。
【0018】
光量検出器18は、受光素子17に対しリード線などで接続され、受光素子17が受光した光の量を例えば受光素子17から供給される電流の値により検出するようになっている。光量検出器18は、制御部19に対しリード線などで接続され、検出された光量を示すアナログ電圧を制御部19へ与えるようになっている。
【0019】
制御部19は、コンピュータプログラムにより動作するコンピュータやこのコンピュータを集積化した集積回路により構成される。制御部19は、所望の光量を示すアナログ電圧、電源14の制御量ならびに制御量を増加または減少させるときの1回の量(単位制御量)が記憶される図示しないメモリを備え、メモリには当初は当該アナログ電圧、制御量の初期値および当該単位制御量が記憶されている。また、制御部19は、光量検出器18から与えられるアナログ電圧と、メモリに記憶したアナログ電圧に基づいて、メモリに記憶された制御量を更新し、電源14に与える制御量を増加または減少させるようになっている。
【0020】
電源14は、制御部19から与えられた制御量に基づいたエネルギー量のマイクロ波を発生させるような電圧値を発生させ、マグネトロン131,132を制御するようになっている。
【0021】
さらに、ランプハウス11の上面部111には、無電極ランプ12とマグネトロン131,132を冷却させるために、例えばブロア装置20からダクト21を通して送風させている。
【0022】
無電極ランプ12の背面側にはリフレクタ221,222がフレームに取り付けて設置される。また、リフレクタ221,222の反射面側と被照射体(図示せず)との間のランプハウス11には、照射窓23が形成される。照射窓23には、マイクロ波がランプハウス11外に放射されることを防止するための網状の電磁シールド24が取り付けられる。電磁シールド24は、例えば、金属線をメッシュ状に編み込んで形成したり、金属板にパンチング加工で形成したりすることで、マイクロ波はシールドし、紫外線は通過させることができる。
【0023】
25は、無電極ランプ12とリフレクタ221,222それに電磁シールド24で構成されるマイクロ波空洞部である。
【0024】
紫外線照射部100の底面には、スライダー26が取り付けられている。スライダー26は、行方向に配置される図1の場合6台の紫外線照射部100に共通に用いる。スライダー26の紫外線照射部100の照射窓23と対向する位置には、照射口261をそれぞれ形成する。
【0025】
紫外線照射状態にある紫外線照射部100の照射窓23と対向する照射室200の上面部27の位置には、紫外線を取り込む取入口271が形成される。行方向の取入口271を挟む上面部27には、スライダー26の両側縁を摺動させながら搬送させるための溝が形成されたレール281,282が対向配置される。
【0026】
ここで、図1の手前から4行目で右から3列目の紫外線照射部100の無電極ランプ12に不具合があるとし、図5を参照し、不具合の紫外線照射部100をメンテナンスする場合の手順について説明する。
【0027】
図5において、手前から4行目の紫外線照射部100に取り付けられているダクト21全てを取り外すとともに、スライダー26に取り付けられた紫外線照射部100全ての電源を落す。手前から4行目のスライダー26を図中白抜きの矢印方向に引きながら搬送する。引き出されたスライダー26に取り付けられた右から3列目の紫外線照射部100の無電極ランプ12を交換する。以下、逆の手順でスライダー26を戻し、電源を入れ再び紫外線照射を開始する。
【0028】
このように、紫外線照射部100が取り付けられたスライダー26を図1の白抜きの矢印方向に引き出しながら搬送することにより、行方向の対象の紫外線照射部を取り出すことで、ランプ交換などのメンテナンス作業が容易となる。また、作業員が照射室200に入って作業する必要性もなくなる。
【0029】
この実施形態では、メンテナンスを必要とする紫外線照射部が取り付けられたスライダーを作業し易い位置まで搬送させるようにしたことにより、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0030】
図6は、この発明の紫外線照射装置に関する第2の実施形態について説明するためのシステム構成図であり、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0031】
この実施形態は、フレキシブルな材料で形成されたダクト211を用いたことで、スライダー26を引き出す方向に搬送する場合に、その都度、紫外線照射部100からダクト211を取り外す手間をなくすことができ、よりメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0032】
図7は、この発明の紫外線照射装置に関する第3の実施形態について説明するためのシステム構成図であり、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0033】
この実施形態は、スライダー26の引き出し方向を列方向に可能としたものである。スライダー26には、列方向に配置される紫外線照射部100が取り付けられる。他の構成やメンテナンスの手順も行方向のスライダーと同様である。
【0034】
図8は、スライダー26を取り出す搬送機構の他の具体例について説明するための断面図である。
【0035】
すなちわ、行方向の取入口271を挟む照射室200の上面部27には、スライダー26の両側縁を摺動させながら搬送させるための逆V形状のレール283,284が対向配置される。また、スライダー26の下面には、レール811,812と係合させながらスライドさせるための逆V形状のレール821,822が取り付けられている。係合されるレール811,812およびレール821,822との間には、摺動性を向上させるためのグリースが塗られている。
【0036】
この場合にも、スライダー26に搭載された紫外線照射部100を通常の照射位置から取り出すことができる。
【0037】
この他にも、スライダー26を摺動させ紫外線照射部をメンテナンスの位置まで搬送させる手段としては、紫外線照射部の下部にキャスターを取り付け、照射室200の上面部27に取り付けられたレールを走行させるようにすることで、よりスムースな搬送も考えられる。
【0038】
図9〜図11は、この紫外線照射装置に関する第4の実施形態について説明するための、図9は図1を上方が見た状態に相当する上面図、図10は、図9の要部の断面図、図11はこの実施形態におけるメンテナンス手順について説明するための説明図である。上記した実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0039】
図9〜図11において、各紫外線照射部100は、下部に個々に取り付けられたスライダー26の走行方向の側面には、移動用のピン91がそれぞれ取り付けられている。スライダー26は、キャリア92に搭載され、行方向に配置される各紫外線照射部100が個別に移動可能となる。スライダー29は、図10に示すように、照射室200の上面部27に対向して配置されたレール931,932を摺動されながら移動する。
【0040】
94は、選択部材であり、スライダー26に取り付けられたピン91に選択部材94の鍵部941を掛け、掛けられた紫外線照射部100とともにキャリア92を移動させることができる。
【0041】
ここで、図9の手前から3行目で右から3列目の紫外線照射部100の無電極ランプ12に不具合があるとし、図11を参照し、不具合の紫外線照射部100をメンテナンスする場合の手順について説明する。
【0042】
図11において、手前から3行目で右から3列目までの全ての紫外線照射部100の紫外線照射部100に取り付けられているダクト21全てを取り外す。選択部材94の鍵部941を右から3列目の紫外線照射部100のピン91に掛ける。図示された鍵部941は3個あることから右から3列目までの全ての紫外線照射部100のピン91に鍵部941が掛かることになる。鍵部941を掛けた状態でキャリア92をレール931,932に沿って摺動させることで、右から3列目までの全ての紫外線照射部100を搬送させることができる。これにより、右から3列目の紫外線照射部100に対するメンテナンスを行うことができる。
【0043】
このように、メンテナンスを必要とする行と列の紫外線照射部100に対して、選択部材94を掛け、キャリア92とともに引き出すことで、ランプ交換などのメンテナンス作業が容易となる。また、作業員が照射室200に入って作業する必要性もなくなる。
【0044】
この実施形態の場合も、メンテナンスを必要とする紫外線照射部が取り付けられたスライダーを作業し易い位置まで搬送させるようにしたことにより、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0045】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、紫外線照射部の冷却にあたってはブロア装置でなくても、紫外線照射部100の上部にファンを主体とする冷却機構をそれぞれ設けても構わない。この場合、紫外線照射部の搬送にダクトが邪魔にならないという利点がある。
【符号の説明】
【0046】
100 紫外線照射部
200 照射室
11 ランプハウス
12 無電極ランプ
131,132 マグネトロン
14 電源
20 ブロア装置
21,221 ダクト
221,222 リフレクタ
23 照射窓
24 電磁シールド
25 マイクロ波空洞部
26 スライダー
27 上面部
281,282,811,812,821,822 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電媒体が封入され、該放電媒体をマイクロ波で励起させることで紫外線を発光させる無電極ランプと、前記無電極ランプを点灯させるマイクロ波を発振させるマグネトロンと、前記無電極ランプおよびマグネトロンを収納し、外部に紫外線を照射可能とするランプハウスから構成される紫外線照射部を、格子状に複数台並べて配置することで大面積の照射を可能とする紫外線照射装置において、
格子状に配置される前記紫外線照射部は、各列または行毎に独立してスライド移動できるようにしたことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
格子状に配置される前記紫外線照射部は、各列または行毎に独立し、選択した個数を搬送できることを特徴としたことを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−206731(P2011−206731A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78788(P2010−78788)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】