説明

細径ワイヤのコーティング方法とそのための硬化可能な組成物

半導体デバイスの製造中のワイヤ押し流し及び短絡を低減させる方法には、ワイヤ結合に硬化可能な組成物をスプレーすることと、その硬化可能な組成物をフリーラジカル重合によりBステージにすることと、次にCステージに熱硬化させることとが含まれる。スプレー可能な硬化可能組成物も開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ワイヤ結合は、半導体を相互に接続するための低コストかつ順応性のある方法である。この技法では、半導体ダイが細径の導電性ワイヤによって基材上の回路に電気的に接続される。集積回路パッケージング分野においては、パッケージにより多くのワイヤを収め、ワイヤ間隔をより狭くする傾向にある。
【0002】
半導体及びワイヤを物理的及び環境的破損から保護するためには、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で全体が封入される。一般的な技法には、グロブ・トップ(glob-top)法及びダム・アンド・フィル(dam and fill)法が挙げられる。グロブ・トップ封入では、大量の封入剤を構成要素の上に付着させる。この材料が下に流れて、構成要素を包み込む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ワイヤ密度の影響は、特に封入プロセス中の封入剤の流れパターンと、ワイヤの押し流しの程度(すなわちワイヤの物理的な移動)に対して、ますます明らかになってきている。幅広く利用されているこの相互接続技術において、ワイヤ密度を制限する主な要因はワイヤ押し流しであり、これは、封入プロセス中に短絡を起こし得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様において、本開示は、半導体デバイスのパッケージング中にワイヤを保護する方法を提供し、この方法は:
少なくとも1つのエポキシモノマーと、少なくとも1つのフリーラジカル重合可能なモノマーと、そのフリーラジカル重合可能なモノマーのための有効量の光開始剤と、その少なくとも1つのエポキシモノマーのための有効量の熱硬化剤とを含み、電気的に非導電性でありかつ本質的に溶媒を含有しない、硬化可能な組成物を提供することと、
複数の導電性ワイヤで基材に電気的に接続されている半導体ダイが接合されている基材を含むチップアセンブリを提供することと、
少なくともその複数の導電性ワイヤに、硬化可能な組成物をスプレーすることと、
少なくとも1つのフリーラジカル重合可能なモノマーの少なくとも一部をフリーラジカル重合させることにより、その硬化可能な組成物をBステージの硬化可能な組成物に変換することと、少なくとも1つのフリーラジカル重合可能な該モノマーの少なくとも一部をフリーラジカル重合させることにより、
少なくとも1つのエポキシモノマーの少なくとも一部分を熱硬化させることと、を含む。
【0005】
特定の実施形態において、この方法は更に、半導体ダイを封入することを含む。特定の実施形態において、この硬化可能な組成物は本質的に微粒子を含有しない。特定の実施形態において、この硬化可能な組成物は更に、流動添加剤(flow additive)(例えばアクリルポリマー)を含む。特定の実施形態において、この少なくとも1つのエポキシモノマーは、モノエポキシド及びポリエポキシドを含む。特定の実施形態において、この少なくとも1つのフリーラジカル硬化可能なモノマーは、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1つのN−ビニルラクタムとを含む。この少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーは、ポリ(メタ)アクリレートモノマーと、モノ(メタ)アクリレートモノマーとを含み得る。
【0006】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つのエポキシモノマーと、少なくとも1つのフリーラジカル重合可能な(メタ)アクリレートと、少なくとも1つのフリーラジカル重合可能なN−ビニルラクタムと、アクリルポリマーを含む流動添加剤と、有効量の光開始剤と、少なくとも1つのエポキシモノマーのための有効量の熱硬化剤とを含む、硬化可能な組成物を提供し、ここにおいてこの硬化可能な組成物は、1000ミリパスカル・秒未満の粘性を有し、本質的に微粒子を含有せず、本質的に溶媒を含有しない。
【0007】
有利なこととして、本開示による硬化可能な組成物は、溶媒をほとんど又は全く含有せず、スプレー可能である。いったんスプレーされると、この硬化可能な組成物はBステージとなって流動を防ぎ、ワイヤに保護的絶縁及び剛性向上を提供し、これによりワイヤ押し流しによって起こる短絡を減少又は排除することができる。更に所望により、Bステージになった硬化可能な組成物におけるエポキシモノマーは、エポキシ封入剤と共重合することにより、封入剤中にワイヤを固定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示で使用するのに好適な、硬化可能な組成物は少なくとも1つのエポキシモノマーと、そのエポキシモノマーのための有効量の熱硬化剤と、少なくとも1つのフリーラジカル重合可能なモノマーと、そのフリーラジカル重合可能なモノマーのための有効量の光開始剤とを含む。
【0009】
有用なエポキシモノマーには例えば、脂環式及び芳香族モノエポキシド類及びポリエポキシド類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0010】
有用なモノエポキシド類には、スチレンオキシド、アリルグリシジルエーテル、及びカルダノールのグリシジルエーテル類(例えばCardolite Corp.(ニュージャージー州ニューアーク)から市販されている「CARDOLITE 2513HP」など)が挙げられる。
【0011】
有用な脂環式ポリエポキシド類には、モノマー脂環式ポリエポキシド類、オリゴマー脂環式ポリエポキシド類、及びポリマー脂環式ポリエポキシド類が挙げられる。本発明の実施に有用な、例示的な脂環式ポリエポキシドモノマー類には、例えば3,4−エポキシシクロへキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えばDow Chemical Co.(ミシガン州ミッドランド)の「ERL−4221」)、及び3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレートなどのエポキシシクロヘキサンカルボキシレート類;シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals(オハイオ州コロンバス)の「HELOXY 107」);及び、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicalsの「EPONEX 1510」として入手可能)が挙げられる。
【0012】
有用な芳香族ポリエポキシド類には、例えば、モノマー芳香属ポリエポキシド類、オリゴマー芳香族ポリエポキシド類、及びポリマー芳香族ポリエポキシド類が挙げられる。代表的な芳香族ポリエポキシドには、多価フェノールのポリグリシジルエーテル類(ビスフェノールAタイプ樹脂及びその誘導体);エポキシクレゾールノボラック樹脂;ビスフェノールF樹脂及びその誘導体;エポキシフェノールノボラック樹脂;並びに芳香族カルボン酸のグリシジルエステル類(例えばフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、及びピロメリット酸テトラグリシジルエステル)、並びにこれらの混合物が挙げられる。市販されている芳香族ポリエポキシド類には、例えば、商品名「EPON」(例えば「EPON 828」、「EPON 862」、「EPON 1001F」、「EPON DPL−862」、及び「EPON HPT−1079」)として入手可能な芳香族ポリエポキシド類(例えばHexion Specialty Chemicalsから販売);並びに、商品名「DER」、「DEN」(例えば「DEN 438」及び「DEN 439」)並びに「QUATREX」として入手可能な芳香族ポリエポキシド類(例えばDow Chemical Co.から販売)が挙げられる。
【0013】
この少なくとも1つのエポキシモノマーは、典型的には、硬化可能な組成物の合計重量に対し、20〜50重量パーセント、より典型的には30〜50重量パーセント、及び更に典型的には35〜45重量パーセントの量で存在するが、ただしこれは必須ではない。
【0014】
この少なくとも1つのエポキシモノマーのための有効量の熱硬化剤は、Cステージへと十分に硬化させることができるよう、硬化可能な組成物中に含まれる。よって、用語「有効量の熱硬化剤」は、少なくとも最小限量を意味する。この正確な量は、配合処方及び硬化変数によって必然的に変化するが、典型的には、硬化可能な組成物の合計重量に対し、10パーセント以下である。
【0015】
ポリエポキシド類のための有用な熱硬化剤には、酸硬化剤及び塩基硬化剤がある。有用な硬化剤の例には、例えばBF3・EtO及びBFNCOHなどの三フッ化ホウ素錯体;例えばビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、及び2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパンなどのポリアミン類;例えばジメチルアミノプロピルアミンなどの脂肪族及び芳香族第三級アミン類;フルオレンジアミン類;及びAir Products and Chemicals(ペンシルバニア州アレンタウン)から商品名「ANCAMINE」(例えば「ANCAMINE 2337S」、「ANCAMINE 2014」、及び「ANCAMINE 2441」)として市販されているもの、Ajinimoto(日本)から「AJICURE」(例えば「AJICURE PN23」及び「AJICURE M353」)として市販されているものなどの変性アミン硬化剤;例えばメチルイミダゾール及び2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジンヘキサキス(イミダゾール)ニッケルフタレート)などのイミダゾール類;例えばアジポヒドラジンなどのヒドラジン類;例えばテトラメチルグアニジン及びジシアンジアミド(シアノグアニジン、一般にDiCyとして知られる)などのグアニジン類;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
フリーラジカル重合可能なモノマー類の例には、モノ(メタ)アクリレートモノマー類、ポリ(メタ)アクリレートモノマー類(すなわち複数のアクリル基を有する)、スチレン、ブタジエン、マレイミド、無水マレイン酸、及びN−ビニルアミド類(N−ビニルラクタムを含む)が挙げられる。本書で使用される用語「(メタ)アクリル」は、メタクリル及び/又はアクリルの両方を包含する。例えば、ポリ(メタ)アクリレートモノマーは、アクリレート基のみ、メタクリレート基のみ、又はアクリレート基とメタクリレート基の組み合わせのいずれをも有し得る。
【0017】
有用な、フリーラジカル重合可能なモノ(メタ)アクリレートには、例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び、アルコール部分に約4〜約12個の炭素原子を有する非三級アルコールの(メタ)アクリルエステル類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。後者の(メタ)アクリルエステル類に含まれるのは、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートである。
【0018】
有用な、フリーラジカル重合可能なポリ(メタ)アクリレートモノマーには、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、並びに商品名「EBECRYL」(例えば「EBECRYL 230」、「EBECRYL 3605」、及び「EBECRYL 8804」)としてUCB Radcure(ジョージア州スマーナ)から販売されている、及び商品名「CN」(例えば「CN 104」)としてSartomer Co.(ペンシルバニア州エクストン)から販売されている、ウレタン及びエポキシジ(メタ)アクリレートオリゴマー類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
N−ビニルアミド類の例には、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びN−ビニルホルムアミドが挙げられる。
【0020】
典型的には、1つ以上のフリーラジカル重合可能なモノマーの組み合わせが使用される。この少なくとも1つのフリーラジカル重合可能なモノマーは、典型的には、硬化可能な組成物の合計重量に対し、30〜70重量パーセント、より典型的には40〜65重量パーセント、及び更に典型的には50〜60重量パーセントの量で存在するが、ただしこれは必須ではない。
【0021】
少なくとも1つのフリーラジカル硬化可能なモノマーのための有効量の光開始剤は、光重合によってその硬化可能な組成物が十分に硬化されてBステージ(すなわち、加熱されると軟らかくはなるが融解しないよう十分に硬化)になり得るよう、この硬化可能な組成物に含まれる。よって、用語「有効量の光開始剤」は、少なくとも最小限量を意味する。この正確な量は、配合処方及び硬化変数によって必然的に変化するが、典型的には、硬化可能な組成物の合計重量に対し、10パーセント以下である。典型的には、低分子量の光開始剤は、硬化可能な組成物の合計重量に対し、合計約0.001〜約4重量パーセント使用され、高分子量の光開始剤は、硬化可能な組成物の合計重量に対し、合計約0.1〜約8重量パーセント使用される。
【0022】
有用な光開始剤には、例えば、置換アセトフェノン類(例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン);ベンゾインエーテル類(例えばベンゾインメチルエーテル)及び置換ベンゾインエーテル類(例えばアニソインメチルエーテル);置換α−ケトン類(例えば2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン);ベンゾフェノン及びその誘導体;ホスフィンオキシド類;ポリマー光開始剤;及びこれらの組み合わせが挙げられる。多くの有用な光開始剤はさまざまな供給元から市販されており、例えばCiba Specialty Chemicals(ニューヨーク州タリータウン)から商品名「IRGACURE」(例えば「IRGACURE 184」、「IRGACURE 651」、「IRGACURE 369」、及び「IRGACURE 907」)として、並びに「DAROCUR」(例えば「DAROCUR 1173」、「DAROCUR MBF」、「DAROCUR TPO」、及び「DAROCUR 4265」)として、並びにSartomer Co.(ペンシルバニア州エクストン)から商品名「ESCACURE」として市販されている。
【0023】
電気的絶縁体として活用するため、硬化可能な組成物は電気的に非導電性である。
【0024】
必須ではないが、この硬化可能な組成物には更に、少量の1つ以上の添加剤が含まれていてもよく、これには例えば、界面活性剤、流動添加剤、染料、顔料、阻害物質、及び/又は結合剤が挙げられる。
【0025】
所望による任意の流動添加剤を、例えばワイヤに対する均一なコーティングを促進するために、硬化可能な組成物に含めることができる。典型的には、このような流動添加剤は、硬化可能な組成物の合計重量に対して、3パーセント未満、より典型的には1パーセント未満の量である。代表的な有用な流動添加剤の1つは、Tego Chemie Service GmbH(ドイツ・エッセン)から市販されている「TEGO ZFS 460」として利用可能な溶液中のアクリルポリマーである。
【0026】
有利なこととして、この硬化可能な組成物は、本質的に溶媒を含有せず、又は溶媒を全く含有せずに、配合される。本明細書で使用される用語「本質的に溶媒を含有しない」とは、この硬化可能な組成物の合計重量に対して、含まれる溶媒の合計重量が約1パーセント未満であることを意味する。用語「溶媒」は集合的に、組成物の他の構成成分の少なくとも一部を溶解させる目的で加えられる揮発性有機化合物(存在する他の構成成分と反応性でないもの)を指す。例としては、トルエン、ヘプタン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
実施において、この硬化可能な組成物は典型的に、穏やかなローリング、ローラーミリング、又はボールミリングなどの従来の混合技法を使用して、構成成分部分から調製される。いくつかの場合において、混合を促進するため、ポリエポキシド及び/又はフリーラジカル重合可能なモノマーを加熱すると(例えば約80℃まで)、有用な場合がある。
【0028】
流動を促進するため、及びスプレーノズルの詰まる可能性を減らすため、この硬化可能な組成物は典型的に、本質的に微粒子を含有せず(すなわち、硬化可能な組成物の重量に対して含まれるのが1パーセント未満)、又は微粒子を全く含有しないが、ただしこれは必須ではない。更に、この硬化可能な組成物の粘性は、典型的には1000ミリパスカル・秒(1000センチポアズ)未満であり、より典型的には500ミリパスカル・秒未満であるが、ただしこれは必須ではない。
【0029】
チップアセンブリは、半導体ダイが接合されている基材である。半導体ダイは典型的に、複数の導電性ワイヤ(典型的には金ワイヤであるが、他の導電性金属及び合金も使用され得る)によって基材の接触パッドに電気的に接続されている。このようなアセンブリの例は、集積回路パッケージングの技術分野において既知であり、例えば米国特許第6,750,533 B2号(Yu−Po et al.)col.1、line 12〜col.2、line 34に記載されている。
【0030】
硬化可能な組成物は、導電性ワイヤ、並びに所望により基材及び/又は半導体ダイの少なくとも一部に対し、スプレーによって適用される。有用なスプレー技法の例には、スプレージェット及びエアブラシスプレーが挙げられる。
【0031】
この硬化可能な組成物を、チップアセンブリに適用し、次に化学線(例えば紫外線及び/又は可視光)にさらすことによって光開始剤の少なくとも一部が分解し、これにより少なくとも1つのフリーラジカル重合可能なモノマーが、Bステージ(すなわち、加熱されると軟らかくはなるが融解しないよう十分に硬化)の硬化可能な組成物を生じさせるのに十分なフリーラジカル重合を起こす。化学線(例えば紫外線(UV))源には、例えば、低圧、中圧、又は高圧の水銀ランプ、レーザー、及びキセノンフラッシュランプが挙げられる。
【0032】
所望によりこの時点で、Bステージになった硬化可能な組成物をある条件下(例えば時間及び温度)で加熱して(例えばオーブン内で)、エポキシモノマーがCステージに達するまで十分に硬化させることができる(ここにおいてこの硬化可能な組成物は比較的不溶性かつ不溶解性となる)。このような場合、封入剤(例えばエポキシ樹脂グロブ・トップ)をチップアセンブリに適用して、半導体ダイ及び導電性ワイヤを封入することができる。
【0033】
あるいは、硬化可能な組成物がBステージにあるときにこの封入剤をチップアセンブリに適用し、次にこの組み合わせを加熱してCステージ硬化を達成することができる。このような場合、この硬化可能な組成物は典型的に、エポキシ封入剤に化学的に結合し、これにより後に層間剥離が(例えば熱サイクルにより)起こる可能性を低減させることができる。
【0034】
前者の場合、すなわちBステージになった硬化可能な組成物をCステージまで硬化してからエポキシ封入剤を適用する場合であっても、典型的には、エポキシ封入剤に接合することができる残留エポキシド基がある程度存在し得る。
【0035】
本発明の目的及び利点は、下記の非限定的な実施例によって更に説明されるが、これらの実施例に記述されている特定の材料及びその量、並びに他の条件、及び詳細は、本発明を不当に制限しないものと解釈されるべきである。
【実施例】
【0036】
別途記載のない限り、実施例及び仕様書の他の部分に記載されている割合、パーセンテージ、比などはすべて重量比である。
【0037】
(実施例1)
組成物Aは、次のものを合わせることにより調製された:エポキシモノマー(ジシクロペンタジエン濃縮物、フェノール及びエピクロロヒドリンのポリマー、Huntsman Advanced Materials Americas(ニューヨーク州ブリュースター)から市販されている「TACTIX 756」)が42.5;フェノキシエチルアクリレート(Ciba Specialty Chemicals(ニューヨーク州タリータウン)から市販されている「AGEFLEX PEA」)が44.2;N−ビニルカプロラクタムが10.8;1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール(Shikoku Chemicals Corp.(日本・香川)から市販されている「MEZCN」)が1.2;光開始剤(CAS No.119313−12−1、Ciba Specialty Chemicalsから市販されている「IRGACURE 369」)が0.9;及び溶液中アクリルポリマー(流動添加剤)(Tego Chemie Service GmbH(ドイツ・エッセン)から市販されている「TEGO ZFS 460」)が0.4の割合。この組成物の粘性は1000ミリパスカル・秒未満であった。
【0038】
組成物Aの第一部分を、スプレー器(Precision Valve Corp.(ニューヨーク州ヨンカーズ)から市販されている「PREVAL SPRAYER」)で、第一の金めっき金属クーポンにスプレーした。
【0039】
組成物Aの第二部分を、第一部分と同様に第二の金めっき金属クーポンにスプレーし、コンベア速度6.1m/分(20ft/分)で操作して「Hタイプ」のマイクロ波無電極ランプであるModel F300S(Fusion UV Systems(メリーランド州ゲーサーズバーグから市販)を使用して照射を行い、組成物をBステージにした。紫外線照射量は、エネルギーメーター(「UV POWER PUCK」、EIT(バージニア州スターリング)から市販)を使用して、485mJ/cmUV−A及び448mJ/cmUV−Bで測定された。
【0040】
両方の場合において、組成物Aは金めっき金属クーポンを完全に覆い、滑らかで連続したコーティングをもたらした。
【0041】
(実施例2)
組成物Aは、次のものを合わせることにより調製された:エポキシモノマー(ジシクロペンタジエン濃縮物、フェノール及びエピクロロヒドリンのポリマー、Huntsman Advanced Materials Americasから市販されている「TACTIX 756」)が38.9;エポキシモノマー(エポキシ化されたカルダノール希釈剤、Cardolite Corp.(ニュージャージー州ニューアーク)から市販されている「CARDOLITE 2513HP」)が4.3;フェノキシエチルアクリレート(Ciba Specialty Chemicalsから市販されている「AGEFLEX PEA」)が43.1;N−ビニルカプロラクタムが10.6;1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール(Shikoku Chemicals Corp.から市販されている「MEZCN」)が1.8;光開始剤(CAS No.119313−12−1、Ciba Specialty Chemicalsから市販されている「IRGACURE 369」)が0.9;及び溶液中アクリルポリマー(流動添加剤)(Tego Chemie Service GmbHから市販されている「TEGO ZFS 460」)が0.4の割合。この組成物の粘性は1000ミリパスカル・秒未満であった。
【0042】
組成物Bの第一部分を、スプレー器(Precision Valve Corp.から市販されている「PREVAL SPRAYER」)で、第三の金めっき金属クーポンにスプレーした。
【0043】
組成物Bの第二部分を、第一部分と同様に第四の金めっき金属クーポンにスプレーし、実施例1と同様に照射を行った。
【0044】
両方の場合において、組成物Bは金めっき金属クーポンを完全に覆い、滑らかで連続したコーティングをもたらした。
【0045】
実施例1及び2から結果として得られた4つのコーティング済み金めっき金属クーポンを、ラック上に平行に配置し、これらプレートが水平面から45度を超える傾きになるようにした。このラックを120℃に設定したオーブンに1時間入れた。照射によってBステージに硬化したコーティングは、熱硬化中も元のコーティング形状を保持した。照射によってBステージに硬化されなかったサンプルは、熱硬化中に金クーポンから流れ落ちて下に滴った。
【0046】
当業者には、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な修正及び改変を行うことができ、本発明が、本明細書に記述されている説明のための実施形態に不当に制限されないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエポキシモノマーと、少なくとも1つのフリーラジカル重合可能なモノマーと、そのフリーラジカル重合可能なモノマーのための有効量の光開始剤と、その少なくとも1つのエポキシモノマーのための有効量の熱硬化剤とを含み、電気的に非導電性でありかつ本質的に溶媒を含有しない、硬化可能な組成物を提供することと、
複数の導電性ワイヤで基材に電気的に接続されている半導体ダイが接合されている基材を含むチップアセンブリを提供することと、
少なくとも複数の該導電性ワイヤに、硬化可能な該組成物をスプレーすることと、
少なくとも1つのフリーラジカル重合可能な該モノマーの少なくとも一部をフリーラジカル重合させることにより、硬化可能な該組成物をBステージの硬化可能な組成物に変換することと、
少なくとも1つの該エポキシモノマーの少なくとも一部分を熱硬化させることと、を含む、半導体デバイスのパッケージング中にワイヤを保護する方法。
【請求項2】
前記硬化可能な組成物が本質的に微粒子を含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硬化可能な組成物が更に、流動添加剤を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのフリーラジカル硬化可能なモノマーが、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー及び少なくとも1つのN−ビニルラクタムを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーが、ポリ(メタ)アクリレートモノマー及びモノ(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのエポキシモノマーが、モノエポキシド及びポリエポキシドを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記半導体ダイを封入することを更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−508966(P2011−508966A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539557(P2010−539557)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/083323
【国際公開番号】WO2009/079122
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】