細胞洗浄遠心機およびそれに用いられる細胞洗浄ロータ
【課題】血球等の生体細胞を洗浄するための細胞洗浄遠心機において、洗浄液注入工程で多数の試験管内に供給される洗浄液量のばらつきを抑制し、また上澄液排出工程で多数の試験管から排出される上澄液の排出量を均等にして輸血検査等の検査の信頼性を向上させる。
【解決手段】
ロータ2と、円形列に回動自在に装着され、かつロータ2の回転による遠心力によって円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダ3と、ロータ2と同時に回転し、複数の試験管ホルダ3にそれぞれ保持される複数の試験管4内に洗浄液5aを供給する洗浄液分配素子5とからなる細胞洗浄ロータ25を有し、試験管ホルダ3は、保持する試験管4の中心軸4aが、ロータ2の回転軸8aに沿う垂直線方向4yから試験管ホルダ3の円形列が作る円の接線に沿う水平線方向4xに傾斜角度θで傾斜するように、試験管4を垂直状態4yより傾斜させた状態に保持する。
【解決手段】
ロータ2と、円形列に回動自在に装着され、かつロータ2の回転による遠心力によって円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダ3と、ロータ2と同時に回転し、複数の試験管ホルダ3にそれぞれ保持される複数の試験管4内に洗浄液5aを供給する洗浄液分配素子5とからなる細胞洗浄ロータ25を有し、試験管ホルダ3は、保持する試験管4の中心軸4aが、ロータ2の回転軸8aに沿う垂直線方向4yから試験管ホルダ3の円形列が作る円の接線に沿う水平線方向4xに傾斜角度θで傾斜するように、試験管4を垂直状態4yより傾斜させた状態に保持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力を利用して赤血球等の生体細胞を洗浄するための細胞洗浄遠心機に関し、特に、洗浄効果が大きく、洗浄の信頼性を高いものとするために好適な細胞洗浄遠心機およびそれに用いられる細胞洗浄ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸血検査時の抗グロブリン試験、交差適合試験、不規則抗体スクリーニング等において、赤血球を生理食塩水等の洗浄液で洗浄し、懸濁液中の余分な抗体等を除去するために用いられる細胞洗浄遠心機(血球洗浄遠心機)が知られている。
【0003】
周知の細胞洗浄遠心機は、駆動軸を有するモータと、該モータの駆動軸に連結され、モータで回転されるロータと、該ロータ上に円形列に回動自在に装着され、かつロータの回転による遠心力によって円形列の外側水平方向に回動し、かつ磁性体部材より成る複数の試験管ホルダと、ロータに装着され、ロータと同時に回転し、複数の試験管ホルダにそれぞれ保持された複数の試験管内に洗浄液を供給する洗浄液分配素子と、磁気コイルへの通電に基づいて発生する磁気吸引力によって前記試験管ホルダを垂直または垂直に近い角度に吸着する磁気素子(保持手段)とを備えている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、洗浄遠心機の洗浄液の分配素子が開示され、分配素子は内面が円錐形状容器の底面外周から放射状に設置されたノズルを有し、ロータと共に回転する洗浄液分配素子の中央から遠心力で注入された洗浄液を等分に分配し、ノズルより試験管ホルダによって保持された多数の試験管内に洗浄液を供給することを特徴としている。
【0005】
また、下記特許文献2には、ロータと共に回転する洗浄液分配素子に穿孔された穴からロータに回動自在に支持された試験管ホルダ内の試験管に洗浄液を供給することが開示されている。また、同特許文献には、磁気素子を使用して試験管ホルダをロータに保持させることも開示されている。
【0006】
さらに、下記特許文献3及び下記特許文献4には、試験管ホルダを、ロータにリムや回転部材を用いて、垂直方向から小さな角度に保持したまま低速で回転し、試験管から洗浄液の上澄液を排出する技術が開示されている。さらに、下記特許文献5には、ロータに試験管ホルダを磁気素子によって垂直方向より小さな角度で傾いた状態に保持し、該ロータを低速で回転しつつ、試験管ホルダに保持された試験管から洗浄液の上澄液を排出することが開示されている。
【0007】
一方、細胞洗浄遠心機において、洗浄液注入工程、遠心工程、上澄液排出工程、および揺動工程を含む洗浄プロセスを、順次、自動的に実行する自動血球洗浄遠心機が周知である。例えば、下記非特許文献1に示されているように、本願出願人によって製品名「himacMC450」として販売している自動血球洗浄遠心機が周知である。図8は、かかる従来の自動細胞洗浄遠心機において、輸血検査等を行う洗浄プロセスを実行するためのロータ駆動用モータの回転、洗浄液分配素子のポンプの運転、および試験管ホルダを固定する磁気素子の磁気コイルへの通電に関するタイムチャートを示している。従来の自動血球洗浄遠心機を用いた洗浄プロセスは次のように実行される。
【0008】
(1)先ず、図8に示す時間(1)の洗浄液注入工程において、血球等の生体細胞を入れた試験管をロータの試験管ホルダにセットし、ロータを駆動するモータを加速回転させ、その遠心力によって試験管ホルダ内の試験管下部を外方に回動させ、試験管を垂直方向から水平方向に一定の角度に傾けた状態で、ロータ(モータ)を回転させる。このとき、図8に示したように、時間(1)においてポンプ動作をオン(ON)状態(ポンプに給電した状態)にすることにより、ロータの回転と共に回転する洗浄液分配素子を介して試験管へ洗浄液を注入する。血球は洗浄液注入の勢いにより攪拌され、洗浄される。
【0009】
(2)次に、図8に示す時間(2)の遠心工程において、例えばロータ(モータ)を3000rpm、45秒間、遠心する。これによって、血球は試験管の底部に沈殿し、血清等の不要物質は上澄状態で残る。
【0010】
(3)さらに、図8に示す時間(3)の上澄液排出工程において、図8に示すような磁気コイルへの通電をオン(ON)状態として磁気素子動作をオン(ON)とし、該磁気素子に発生する吸引力によって、試験管ホルダをほぼ垂直状態に吸着し、固定する。この状態で再度、ロータを低速、例えば400rpmで回転すると、試験管4の上部は小さな角度で開いた状態又は垂直状態となるために、上澄液は遠心力により試験管の壁面を上昇し、外部へ排出される。直ちに回転を停止すると沈殿した血球のみが残る。
【0011】
(4)次に、図8に示す時間(4)の揺動工程において、ロータの回転と停止を交互に小刻みに繰り返すか、又は正回転と逆回転を交互に小刻みに繰り返すことにより、ロータの試験管ホルダ内の試験管に揺動を与え、試験管の底に沈殿させ、固着した血球を解す。
【0012】
以上の4つの工程を洗浄サイクルの1サイクルとして、通常、このサイクルを3〜4回繰り返すことで洗浄を実行している。
【0013】
下記特許文献6には、上述した洗浄プロセスを実行するための細胞洗浄遠心機に使用される洗浄液分配素子と、該洗浄液分配素子から洗浄液が供給される多数の試験管を保持するための試験管ホルダを円形列に装着したロータとからなる細胞洗浄ロータが開示されている。特許文献6に開示され、一般的に使用されている洗浄液分配素子およびロータからなる細胞洗浄ロータの構造を図9、図10および図11に示す。
【0014】
図9に示すように、細胞洗浄ロータ25は、ロータ2と、ロータ2上に円形列に、回動軸3aを回転中心として回動自在に装着され、かつロータ2の回転による遠心力によって円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダ3と、ロータ2に装着され該ロータと同時に回転し、複数の試験管ホルダ3にそれぞれ保持される複数の試験管4に洗浄液を供給する洗浄液分配素子5と、からなる。図10および図11に示すように、試験管ホルダ3は、保持する試験管4の中心軸4aが、ロータ2の回転軸8aに沿う垂直線方向4yと一致するように、試験管4を垂直状態に保持することを特徴としている。
【0015】
このような細胞洗浄ロータ25を用いて上述したような洗浄液注入工程を実施すると、図12に示すように、試験管ホルダ3は、細胞洗浄ロータ25の回転による遠心力で、回転方向または円形列の接線方向には回動することなく、円形列の外側水平方向に回動し、洗浄液5aが試験管4内に注入され、細胞を洗浄する。また上述した洗浄液注入工程後の上澄液排出工程では、図13に示すように、試験管ホルダ3を垂直状態または垂直状態に近い状態に磁気素子で固定し、試験管ホルダ3が、ロータ2の回転軸8aに沿う垂直線方向4yと一致するように、試験管4を垂直状態に保持して上澄液の排出を行っている。
【0016】
【特許文献1】特開昭50−22693号公報
【特許文献2】実開平2−81640号公報
【特許文献3】特公昭48-27267
【特許文献4】公開昭60−150857
【特許文献5】実開昭54−167860号公報
【特許文献6】特開2003−337088号公報
【非特許文献1】日立工機株式会社ホームページ「日立自動血球洗浄機 himac MC450」、[平成19年5月31日検索]、インターネット<URL:http://www.hitachi−koki.co.jp/himac/products/centrifuges/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記したような従来の細胞洗浄ロータを装着する細胞洗浄遠心機では、洗浄液注入工程での洗浄液注入量のばらつき、および上澄液排出工程での上澄液残量のばらつきを抑制することが不充分であった。
【0018】
細胞洗浄の自動化を目的とした遠心機により良好な輸血検査等を行うためには、(1)洗浄液注入工程において洗浄液分配素子により試験管ホルダに保持された多数の試験管内に供給される洗浄液量が等量であること、(2)上澄液排出工程において試験管から洗浄液の上澄液排出が十分に、多数の試験管で均等に行なわれることが望ましい。
【0019】
すなわち、多数の試験管内に供給された洗浄液量にばらつきがある場合、例えば、洗浄液供給量の少ないときでは、懸濁液中に他の試験管よりも多量の抗体などの異物が残留する試料となる。逆に、洗浄液供給量の多い試験管内では懸濁液中の抗体などの残留異物が少なくなる。この差が、細胞洗浄遠心機を用いた洗浄処理工程の後に行われる試薬反応検査において検査結果の差として表れ、結果として輸血検査等の判定に重大な誤りを生ずる原因となる。
【0020】
また、洗浄液量の供給量が少なくてよいと思われる試験管を基準に洗浄液分配素子から洗浄液を供給すると、注入量のばらつきによって、洗浄液分配素子から洗浄液量が比較的多く注入される試験管では洗浄液量が試験管から溢れ、貴重な細胞試料が失われてしまうという問題を招く。さらに、洗浄液量の少ないものに合わせて洗浄回数を決定すると洗浄工程が長時間におよぶ不具合を招くことになる。
【0021】
本願発明者は、上述したような従来の細胞洗浄ロータを検討したところ、洗浄液量が不均一となる一つの原因として、従来の洗浄液分配素子の洗浄液出口と試験管口の距離が離れているため、洗浄液分配素子の洗浄液出口穴の加工精度誤差により洗浄液分配素子から注入される洗浄液の一部が試験管に入らない場合があることが分かった。
【0022】
一方、洗浄液注入工程後に続く上澄液排出工程において、洗浄液の上澄液を多数の試験管内から排出する場合、上澄液の排出量にばらつきがある場合も、検査結果に誤差を与える原因となる。例えば、上澄液排出量の少ない試験管内では、上澄液排出工程後に試験管中に他の試験管よりも抗体などの異物が多く残留する。逆に、上澄液排出量の多い試験管内では抗体などの残留異物が少なくなる。この差も、細胞洗浄遠心機を用いた後工程で行われる試薬反応による検査結果に誤差を生ずる原因となり、結果として輸血検査等の判定に誤りを生ずる原因となる。
【0023】
さらに、上澄液排出量の少ないものを基準に、上澄液排出工程の処理時間を長くしたり、上澄液排出工程の回転数を高くすると、上澄液排出量の多いものは、分離した細胞も試験管から排出し、貴重な細胞試料が失われてしまうという不具合を生ずる場合もある。
【0024】
本願発明者は、上述したような従来の細胞洗浄ロータを検討したところ、上澄液排出工程の処理時間も短くできることを見出した。
【0025】
従って、本発明の目的は、上述した従来技術における問題点に鑑み、洗浄液注入工程において多数の試験管について均等な洗浄液量を供給でき、また上澄液排出工程において多数の試験管について洗浄液の上澄液の排出を均等に行なうことが可能な細胞洗浄遠心機および細胞洗浄ロータを提供することにある。
【0026】
さらに、本発明の他の目的は、細胞洗浄効果を向上させ、信頼性の高い細胞検査結果を得ることが可能な細胞洗浄遠心機および細胞洗浄ロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記本発明の目的を達成するために、本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次のとおりである。
【0028】
本発明の一つの特徴によれば、駆動軸を有するモータと、該モータの駆動軸に連結され、前記モータで回転されるロータと、該ロータ上に円形列に回動自在に装着され、かつ前記ロータの回転による遠心力によって前記円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダと、前記ロータに装着され前記ロータと同時に回転し、前記複数の試験管ホルダにそれぞれ保持された複数の試験管内に洗浄液を供給する洗浄液分配素子と、前記試験管ホルダを垂直または垂直に近い角度に保持する保持手段と、前記モータ、前記洗浄液分配素子および前記保持手段の動作を制御する制御装置と、を備える細胞洗浄遠心機において、前記試験管ホルダは、前記試験管の中心軸が前記ロータの回転軸に沿う垂直線方向から前記試験管ホルダの前記円形列が作る円の接線に沿う水平線方向に傾斜するように、前記試験管を垂直状態より傾斜させた状態に保持し、前記制御装置は、前記ロータの回転中に、前記洗浄液分配素子により洗浄液を前記試験管へ注入する洗浄液注入工程と、前記ロータの回転による遠心力によって前記試験管ホルダを回動させて前記試験管内の浮遊細胞を該試験管内底に沈殿させる遠心工程と、前記試験管ホルダを前記保持手段によって保持した状態で前記ロータを回転させて前記試験管から前記洗浄液の上澄液を排出する上澄液排出工程と、から成る洗浄サイクルを順次、実行する。
【0029】
本発明の他の特徴によれば、前記遠心工程において、前記ロータを前記洗浄液注入工程より速い第1の回転速度で回転させる。
【0030】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記上澄液排出工程において、前記ロータを前記第1の回転速度より低速の第2の回転速度で回転させる。
【0031】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記洗浄液注入工程の前記ロータの回転方向は、前記上澄液排出工程の前記ロータの回転方向と異なる方向である。
【0032】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記試験管ホルダは、前記洗浄液注入工程での前記ロータの回転方向に対して前記試験管の上端部が前記試験管の下端部よりも前進した位置となるように、前記試験管を垂直状態より前記水平線方向へ傾斜させた状態に保持する。
【0033】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記試験管ホルダは、前記上澄液排出工程での前記ロータの回転方向に対して前記試験管の上端部が前記試験管の下端部よりも後退した位置となるように、前記試験管を垂直状態より前記水平線方向へ傾斜させた状態に保持する。
【0034】
本発明のさらに他の特徴によれば、ロータと、前記ロータ上に円形列に回動自在に装着され、かつ前記ロータの回転による遠心力によって前記円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダと、前記ロータに装着され前記ロータと同時に回転し、前記複数の試験管ホルダにそれぞれ保持される複数の試験管内に洗浄液を供給する洗浄液分配素子と、からなる細胞洗浄ロータにおいて、前記試験管ホルダは、保持する試験管の中心軸が前記ロータの回転軸に沿う垂直線方向から前記試験管ホルダの前記円形列が作る円の接線に沿う水平線方向に傾斜するように、前記試験管を垂直状態より傾斜させた状態に保持する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の上述した構成によれば、複数の試験管ホルダは、試験管の中心軸がロータの回転軸に沿う垂直線方向から試験管ホルダの円形列が作る円の接線に沿う水平線方向に傾斜するように、試験管を垂直状態より傾斜させた状態に保持するので、洗浄液注入工程において多数の試験管へ均等な洗浄液量を供給でき、また、上澄液排出工程において多数の試験管について洗浄液の上澄液排出を十分に、かつ均等に行なうことができる。これによって、細胞洗浄効果を向上させ、信頼性の高い細胞検査結果を得ることが可能な細胞洗浄遠心機を提供できる。
【0036】
本発明の上記特徴および他の特徴、ならびに上記効果および他の効果は、以下の本明細書の記述および添付図面よりさらに明らかにされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。また、従来技術と同一または類似の構造または機能を有するものについては、従来技術と同一の符号が付されている。
【0038】
図1は本発明に係る細胞洗浄遠心機の全体構成を示す断面図、図2は各洗浄処理工程における、細胞洗浄遠心機の試験管ホルダの動作状態を示す断面図、図3は本発明に係る細胞洗浄遠心機のモータの回転速度、ポンプ動作、および磁気素子動作の通電タイミングを示すタイムチャートである。
【0039】
図1に示すように、本発明に係る細胞洗浄遠心機20は、上面から見た断面形状が四角形を有する筐体(フレーム)22及び該筐体22の上部を開閉するドア21を備え、この筐体22内に組立てられた、駆動軸(回転軸)8を有するモータ1と、モータ1の駆動軸8に連結され、該モータ1で回転されるロータ2とを備える。ロータ2上には、上面から見て円形列に、かつ回動自在に装着された複数(例えば、24個)の試験管ホルダ3が設置されている。試験管ホルダ3は、磁性体部材より構成され、図4に示すように、試験管4を挿入する保持挿入部3cと、試験管4の底部を支持する保持底部3dとを有する。各試験管ホルダ3内には、予め赤血球等の生体細胞が適量入った試験管4が保持される。
【0040】
また、細胞洗浄遠心機20は、試験管ホルダ3をロータ2に、図1の断面図を横切る方向に視て、言い換えれば、試験管ホルダ3の円形列における円の接線方向から視て、垂直または垂直に近い小さい角度に、保持するための保持手段7を備えている。本実施形態では、保持手段7は、磁力によって吸着し保持するための磁気素子から構成され、円盤状の上部磁性体部材7aと下部磁性体部材7bとを備え、さらに、これら上部磁性体部材7aと下部磁性体部材7bとによって挟み込まれるように設置された、絶縁導線のリング状コイル(磁気コイル)7cを備える。これら磁性体部材7aおよび7bと、磁気コイル7cはモータ1の駆動軸8に固定され、ロータ2と共に一体に回転する。制御装置11は、回転する磁気コイル7cに一対のスリップリング7dおよび7eを介して電流を供給することによって、上部磁性体部材7aと下部磁性体部材7bに発生する磁力を制御する。制御装置11によって磁気コイル7cに電流を通電すると磁場を生じ、磁性体材料、例えばSUS430材、によって作られた、後述する試験管ホルダ3は、上部磁性体部材7aと下部磁性体部材7bと共に、磁気回路を形成するので、上部磁性体部材7aおよび下部磁性体部材7b(磁気素子7)に強く吸着される。すなわち、磁気コイル7cに電流を通電することによって、保持手段7(磁性体部材7a及び7b)は一個の磁石として作用し、磁性体材料から成る試験管ホルダ3を吸着する。本実施例では上部磁性体部材7aの外径は、下部磁性体部材7bに比べ大きい外径を持つ。これによって、磁性体部材7aおよび7b(磁気素子7)の吸着面は、試験管4が鉛直線(ロータ回転軸と並行する一方向)に対して、試験管ホルダ3の円形列の外周方向に約8度開いた状態になるように試験管ホルダ3を吸着できる。
【0041】
本発明の一つの特徴によれば、試験管ホルダ3は、図4および図5に示すように、試験管ホルダ3が試験管4を保持したとき、試験管4の中心軸4a(図5参照)が、ロータ2の回転軸8aに沿う垂直線方向4y(図4および図5の正面図では回転軸8aに一致)から、多数の試験管ホルダ4の円形列が作る円の接線に沿う水平線方向4x(図4および図5の3a方向と一致)に、所定の角度θで傾斜するように、試験管4を垂直状態4yより傾斜させた状態に保持する。すなわち、図4に示すように、ロータ2に装着される試験管ホルダ3の回動軸3a(円形列の接線方向4xと一致)とロータ2の回転軸8a(垂直線方向4y)は直角であり、試験管4が挿入される保持挿入部3cおよび保持底部3dの中心軸3bは回動軸3a(水平線方向4x)に対して角度θだけ傾斜している。さらに言い換えるならば、図5に示すように、試験管4の中心軸4aと、ロータ2の回転軸8a(垂直線4y)とは、図10および図11に示す従来のような同一平面状に一致するものとは異なった装着状態となり、両者の位置は、ねじれの位置関係となる。上記傾斜角度θは、例えば、10度に設定されている。この傾斜角度θは、後述するように、ロータ2の回転速度に対応して5〜30度の範囲内に選択できる。望ましくは10〜15度に設定される。
【0042】
また、本発明の他の特徴によれば、図5および図6に示すように、上記試験管4(試験管ホルダ3)の中心軸4aの傾きは、後述する洗浄液注入工程におけるロータ2の回転方向Aに対して、試験管4の上部4cが下部4dより前進した位置となるように傾斜角度θを有する。
【0043】
さらに、本発明の他の特徴によれば、図7に示すように、後述する上澄液排出工程におけるロータ2の回転方向Bは、洗浄液注入工程におけるロータの回転方向Aと反対方向に制御される。従って、上述した試験管ホルダ3の傾斜中心軸3b、すなわち試験管4の中心軸4aの傾きは、上澄液排出工程におけるロータ2の回転方向Bに対して、試験管4の上部4cが下部4dより後退した位置となる。
【0044】
試験管ホルダ3は、後述する洗浄処理の遠心工程において、制御装置11によって磁気素子7の動作がオフされて吸着力が解除された状態で、ロータ2の速い回転数による遠心力を受けて水平方向に回動する。これによって、試験管4を保持する試験管ホルダ3は、ロータの円周の放射水平方向に回動し、試験管ホルダ3の下部がボウル10に当たるまで傾き、試験管4内の血球などの試料を遠心分離する。例えば、磁気素子7の動作をオフして吸着力を解除した状態においてモータ1の回転を3000rpmとして、試験管ホルダ3の下端部がボウル10に当接したとき、試験管4と鉛直線がなす角度が約40°となるように回動する。モータ1は、例えば誘導モータより成り、その回転数(回転速度)は制御装置11によって制御できる。
【0045】
また、細胞洗浄遠心機20は、円形列の複数の試験管4内に洗浄液5aを供給する洗浄液分配素子5を有する。洗浄液分配素子5は、図9に示され、また上記特許文献6に開示された従来技術と同じ構造を有する。洗浄液分配素子5は、円形列の試験管ホルダ3を搭載するロータ2と一体に回転するようにロータ2上に構成され、洗浄液分配素子5およびロータ2は一体となって、所謂、細胞洗浄ロータ25を構成する。
【0046】
洗浄液分配素子5に関連して、洗浄液供給路9が設けられ、洗浄液供給路9にはポンプ6が結合される。制御装置11によってポンプ6の動作電源をオン(ON)させることにより、図示しない外部の洗浄液タンクから、洗浄液5aを、洗浄液供給路9を通して細胞洗浄遠心機20の上部に位置するノズル9aに供給することができる。後述する洗浄液注入工程では、ノズル9aから下方に噴出した洗浄液は、ロータ2と一体で高速回転する洗浄液分配素子5の中央部内に入り、洗浄液分配素子5内の遠心力により外周に分流され、試験管ホルダ3に保持された試験管4と同数(24本)の各流路に分岐され、分配素子5の外周注入口5bから勢い良く各試験管4内に注入される。
【0047】
次に、細胞洗浄遠心機20によって、例えば輸血検査等を行うための血球洗浄プロセスを実行する場合について、図2に示す洗浄処理工程別の遠心機の要部断面図、および図3に示す遠心機の動作タイムチャートを参照して以下に説明する。
【0048】
まず、洗浄液注入工程において、図3のタイミングチャート(1)および図2の工程断面図(1)に示すように、予め赤血球等の生体細胞を適量入れた24本の試験管4を保持する24本の試験管ホルダ3は、モータ1(ロータ2)の最高回転数(回転速度)が3000rpmに達するように加速回転され、遠心力が与えられる。上述したように、洗浄液(例えば、生理食塩水)5aは、この遠心力により運動エネルギーを得るため、モータ1の回転数が約1000rpmとなった加速途中時点でポンプ6の動作を開始することにより洗浄液分配素子5に注入される。洗浄液5aは、洗浄液分配素子5内の遠心力により外周に分流され、試験管ホルダ3に保持された試験管4と同数(24本)の各流路に分岐され、分配素子5の外周から勢い良く流出する。分配素子5から試験管4へ注入された洗浄液5aは、洗浄液分配素子5の外側に位置する各試験管4の内壁に当たり、壁面を伝わり試験管4の底部にある細胞を浮遊させ、懸濁状態を作り出す。試験管4に適量の洗浄液5aが入ると、制御装置11によってポンプ6の動作は停止され、洗浄液注入工程は終了する。
【0049】
洗浄液注入工程(1)において、本発明に従う上記試験管ホルダ3の装着構造によれば、多数の試験管4内に供給される洗浄液5aの注入量のばらつきを抑制することができる。
【0050】
すなわち、洗浄液注入工程(1)において、洗浄液分配素子5と試験管4の関係は、図6の平面図(斜視図)に示すように、洗浄液分配素子5から流出した洗浄液5aは、ロータ2の回転による風圧と、コリオリ力による回転方向と反対方向の力とを受けて回転方向Aと反対方向に曲がりながら空中を飛び、洗浄液分配素子5の外側に位置する各試験管4に勢い良く注入される。洗浄液5aはロータ2(モータ1)の回転数が1000rpmで洗浄液分配素子5に注入されて外周から流出するが、約10mm離れた各試験管4の近傍では約5度その軌跡が曲がる。またロータ2の回転数が3000rpmの時には、より多く軌跡が曲がり、各試験管4の近傍で約30度となる。
【0051】
このとき、上述したように試験管4の中心軸4aは、円形列の接線に沿う水平線方向4x(回動軸3a方向)に対して試験管4の上部4cは下部4dよりも前進した位置となるような、ねじれの位置関係を構成し、かつその傾斜角度θは洗浄液5aの流出する軌跡が曲がりと同様の5〜30度になるように構成されるので、試験管上部4cの受口部(開口部)は、洗浄液5aの注入方向に正対し、洗浄液分配素子5から風圧の影響を受けて供給される洗浄液5aに対する受口面積を図12に示した従来技術による処理工程より著しく拡張することが可能となる。傾斜角度θは、より望ましくは洗浄液5aの流出する軌跡が曲がりの平均値近くの10〜15度に設定することにより、洗浄液5aの注入効果を最も大きくすることができる。
【0052】
この結果、洗浄液5aが試験管4に注入するときに試験管4の内壁に当たることで、その運動エネルギーを減少するようなことはなく、試験管4の底部(下部)4dにある生体細胞を浮遊させ、十分な懸濁状態を作り出すことが出来る。また、試験管4の受口は、洗浄液5aの注入方向に正対することで、洗浄液5aが試験管4に注入する確度(注入量)を最も大きく取れ、各々の試験管4に注入する洗浄液5aの注入量のばらつきを少なくすることができる。
【0053】
以上の工程により試験管4に適量の洗浄液5aが入ると、制御装置11によって、ポンプ6の動作は停止され、洗浄液注入工程(1)は終了する。引続く遠心工程(2)において、図3のタイミングチャート(2)および図2の断面図(2)に示すように、浮遊している生体細胞が試験管4の底部4dに沈殿し、一方、血清等の不要物質は上澄に残るような高速回転の条件、例えば本実施例では3000rpm、35秒間、高速回転を継続し、遠心分離をする。遠心分離後、モータ1の回転を停止する。
【0054】
次に、上澄液排出工程(3)において、図3のタイムチャート(3)および図2の断面図(3)に示すように、制御装置11よりリング状コイル7cに通電し、磁気素子7の動作をON状態にする。これにより、磁気素子7は磁性体材料の試験管ホルダ3を吸着し、保持する。上述したように、磁気素子7の上部磁性体部材7aの外径は下部磁性体部材7bに比較して若干大きな外径となっているので、試験管ホルダ3が磁気素子7に吸着される面は、上方に約8度放射方向に開いたほぼ垂直状態に近い状態で保持され、回転する。
【0055】
図7に示すように、上澄液排出工程(3)におけるロータの回転方向Bは、先の洗浄液注入工程の回転方向Aとは逆回転で、回転数を約400rpmの回転に上昇させる。試験管4内の上澄液は、図7に示すように、400rpmの回転による遠心力と慣性力の合力方向の力を受けて試験管4の内壁面を上昇する。また、この工程における回転方向Bは、図13に示した従来技術の回転方向Aと異なっていることに留意すべきである。
【0056】
本発明の上澄液排出工程(3)によれば、図7に示すように、試験管4の中心軸4aは、回転軸垂直方向4y(またはロータ回転軸8a)に対して、試験管4の上部4cが下部4dよりも後退した位置となるようなねじれの位置関係を構成しているので、遠心力と慣性力の合力方向に試験管4の開口部4cが傾くことになる。その結果、上澄液は、試験管4の壁面における最短の経路を通り開口部4cに達することができるので、最短の時間で外部へ排出され、試験管4の底部4dにある赤血球等の生体細胞のみ、そのまま底部に残すことができ、各々の試験管4の上澄液残量を少なく、かつ上澄液排出工程(3)の処理時間を、図13に示したような従来技術に比べ、著しく短縮することができる。
【0057】
上澄液排出工程終了後、揺動工程(4)において図3のタイムチャート(4)および図2の断面図(4)に示すように、モータ1は小刻みに回転、停止を繰り返す。これによって、試験管ホルダ3は、回転による遠心力で外周方向に振られ、停止とともに磁気素子7に衝突することにより揺動を与えられ、試験管4の底部に沈殿し、固着した細胞塊を解す効果を生じる。
【0058】
以上説明した洗浄工程(1)から揺動工程(4)まで成る工程を1洗浄サイクルとして、このサイクルを3〜4回繰り返すことにより、試験管4内の赤血球等の生体細胞を洗浄し、抗体などの異物をより完全に分離、取り除くことができる。
【0059】
上記実施態様の説明から明らかなように、本発明によれば、図6および図12に示すように、洗浄サイクルの洗浄液注入工程において、従来に比べて洗浄液の注入量のばらつきを少なくすることができる。また、注入する洗浄液の運動エネルギーも高くすることができるので、試験管4の底部に存在する生体細胞を浮遊させ、十分な懸濁状態を作り出すことができる。
【0060】
さらに、本発明によれば、図7および図13に示すように、上澄液排出工程において、従来に比べて上澄液を短時間で、より多くの量を試験管外に排出可能となり、多数の各試験管4における上澄液残量のばらつきを少なくすることができる。
【0061】
以上の構成によれば、洗浄効果が均等となるので、洗浄特性が良好で、信頼性が高い細胞洗浄遠心機を提供することができる。また、洗浄液の使用量の軽減や、洗浄サイクルの回数を少なくすることも可能となるので、省資源および少エネルギー化、ならびに検査時間の短縮化も可能な細胞洗浄遠心機を提供することができる。
【0062】
上記実施形態において、試験管ホルダ3の中心軸3bの傾斜角θは、試験管4の保持部3c、3dを部分的に傾斜させることによって形成したが、部分的に保持部3cを曲げ加工することなく、多数の試験管ホルダ3における各々の回動軸3aを水平軸より傾斜させることによって、試験管ホルダ3全体の中心軸を傾斜させた状態でロータ本体2へ回動自在に装着することもできる。
【0063】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る細胞洗浄遠心機を示す全体断面図。
【図2】図1に示した細胞洗浄遠心機によって実行する血球洗浄プロセスの各工程おける遠心分離機の要部断面図。
【図3】図1に示した細胞洗浄遠心機においてモータの回転速度、ポンプ動作および磁気素子動作を制御するためのタイムチャート。
【図4】図1に示した細胞洗浄遠心機を構成する試験管ホルダの回動軸とロータの回転軸の関係を示す正面図。
【図5】図1に示した細胞洗浄遠心機を構成する試験管ホルダの回動軸と試験管の中心軸の関係を示す正面図。
【図6】本発明に係る洗浄液注入工程における洗浄液分配素子と試験管の関係を示す平面図。
【図7】本発明に係る上澄液排出工程における洗浄液分配素子と試験管の関係を示す平面図。
【図8】従来技術に係る細胞洗浄遠心機においてモータの回転速度、ポンプ動作および磁気素子動作を制御するためのタイムチャート。
【図9】従来技術に係る細胞洗浄遠心機の洗浄液分配素子およびロータから成る細胞洗浄ロータの構造を示す斜視図。
【図10】従来技術に係る細胞洗浄遠心機を構成する試験管ホルダの回動軸とロータの回転軸の関係を示す正面図。
【図11】従来技術に係る細胞洗浄遠心機を構成する試験管ホルダの回動軸と試験管の中心軸の関係を示す正面図。
【図12】従来技術に係る洗浄液注入工程における洗浄液分配素子と試験管の関係を示す平面図。
【図13】従来技術に係る上澄液排出工程における洗浄液分配素子と試験管の関係を示す平面図。
【符号の説明】
【0065】
1:モータ 2:ロータ 3:試験管ホルダ 3a:回動軸
3b:保持部中心軸 3c:保持挿入部 3d:保持底部
4:試験管 4a:試験管の中心軸 4c:試験管上部
4d:試験管下部 4x:接線水平方向 4y:垂直方向
5:洗浄液分配素子 5a:洗浄液 5b:外周注入口
6:ポンプ 7:磁気素子(磁気素子) 7a:上部磁性体部材
7b:下部磁性体部材 7c:リング状コイル 7d:スリップリング
7e:スリップリング 8:駆動シャフト 8a:回転軸
9:洗浄液供給路 9a:洗浄液供給ノズル 10:ボウル
11:制御装置 20:細胞洗浄遠心機 21:ドア
22:筐体(フレーム) 25:細胞洗浄ロータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力を利用して赤血球等の生体細胞を洗浄するための細胞洗浄遠心機に関し、特に、洗浄効果が大きく、洗浄の信頼性を高いものとするために好適な細胞洗浄遠心機およびそれに用いられる細胞洗浄ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸血検査時の抗グロブリン試験、交差適合試験、不規則抗体スクリーニング等において、赤血球を生理食塩水等の洗浄液で洗浄し、懸濁液中の余分な抗体等を除去するために用いられる細胞洗浄遠心機(血球洗浄遠心機)が知られている。
【0003】
周知の細胞洗浄遠心機は、駆動軸を有するモータと、該モータの駆動軸に連結され、モータで回転されるロータと、該ロータ上に円形列に回動自在に装着され、かつロータの回転による遠心力によって円形列の外側水平方向に回動し、かつ磁性体部材より成る複数の試験管ホルダと、ロータに装着され、ロータと同時に回転し、複数の試験管ホルダにそれぞれ保持された複数の試験管内に洗浄液を供給する洗浄液分配素子と、磁気コイルへの通電に基づいて発生する磁気吸引力によって前記試験管ホルダを垂直または垂直に近い角度に吸着する磁気素子(保持手段)とを備えている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、洗浄遠心機の洗浄液の分配素子が開示され、分配素子は内面が円錐形状容器の底面外周から放射状に設置されたノズルを有し、ロータと共に回転する洗浄液分配素子の中央から遠心力で注入された洗浄液を等分に分配し、ノズルより試験管ホルダによって保持された多数の試験管内に洗浄液を供給することを特徴としている。
【0005】
また、下記特許文献2には、ロータと共に回転する洗浄液分配素子に穿孔された穴からロータに回動自在に支持された試験管ホルダ内の試験管に洗浄液を供給することが開示されている。また、同特許文献には、磁気素子を使用して試験管ホルダをロータに保持させることも開示されている。
【0006】
さらに、下記特許文献3及び下記特許文献4には、試験管ホルダを、ロータにリムや回転部材を用いて、垂直方向から小さな角度に保持したまま低速で回転し、試験管から洗浄液の上澄液を排出する技術が開示されている。さらに、下記特許文献5には、ロータに試験管ホルダを磁気素子によって垂直方向より小さな角度で傾いた状態に保持し、該ロータを低速で回転しつつ、試験管ホルダに保持された試験管から洗浄液の上澄液を排出することが開示されている。
【0007】
一方、細胞洗浄遠心機において、洗浄液注入工程、遠心工程、上澄液排出工程、および揺動工程を含む洗浄プロセスを、順次、自動的に実行する自動血球洗浄遠心機が周知である。例えば、下記非特許文献1に示されているように、本願出願人によって製品名「himacMC450」として販売している自動血球洗浄遠心機が周知である。図8は、かかる従来の自動細胞洗浄遠心機において、輸血検査等を行う洗浄プロセスを実行するためのロータ駆動用モータの回転、洗浄液分配素子のポンプの運転、および試験管ホルダを固定する磁気素子の磁気コイルへの通電に関するタイムチャートを示している。従来の自動血球洗浄遠心機を用いた洗浄プロセスは次のように実行される。
【0008】
(1)先ず、図8に示す時間(1)の洗浄液注入工程において、血球等の生体細胞を入れた試験管をロータの試験管ホルダにセットし、ロータを駆動するモータを加速回転させ、その遠心力によって試験管ホルダ内の試験管下部を外方に回動させ、試験管を垂直方向から水平方向に一定の角度に傾けた状態で、ロータ(モータ)を回転させる。このとき、図8に示したように、時間(1)においてポンプ動作をオン(ON)状態(ポンプに給電した状態)にすることにより、ロータの回転と共に回転する洗浄液分配素子を介して試験管へ洗浄液を注入する。血球は洗浄液注入の勢いにより攪拌され、洗浄される。
【0009】
(2)次に、図8に示す時間(2)の遠心工程において、例えばロータ(モータ)を3000rpm、45秒間、遠心する。これによって、血球は試験管の底部に沈殿し、血清等の不要物質は上澄状態で残る。
【0010】
(3)さらに、図8に示す時間(3)の上澄液排出工程において、図8に示すような磁気コイルへの通電をオン(ON)状態として磁気素子動作をオン(ON)とし、該磁気素子に発生する吸引力によって、試験管ホルダをほぼ垂直状態に吸着し、固定する。この状態で再度、ロータを低速、例えば400rpmで回転すると、試験管4の上部は小さな角度で開いた状態又は垂直状態となるために、上澄液は遠心力により試験管の壁面を上昇し、外部へ排出される。直ちに回転を停止すると沈殿した血球のみが残る。
【0011】
(4)次に、図8に示す時間(4)の揺動工程において、ロータの回転と停止を交互に小刻みに繰り返すか、又は正回転と逆回転を交互に小刻みに繰り返すことにより、ロータの試験管ホルダ内の試験管に揺動を与え、試験管の底に沈殿させ、固着した血球を解す。
【0012】
以上の4つの工程を洗浄サイクルの1サイクルとして、通常、このサイクルを3〜4回繰り返すことで洗浄を実行している。
【0013】
下記特許文献6には、上述した洗浄プロセスを実行するための細胞洗浄遠心機に使用される洗浄液分配素子と、該洗浄液分配素子から洗浄液が供給される多数の試験管を保持するための試験管ホルダを円形列に装着したロータとからなる細胞洗浄ロータが開示されている。特許文献6に開示され、一般的に使用されている洗浄液分配素子およびロータからなる細胞洗浄ロータの構造を図9、図10および図11に示す。
【0014】
図9に示すように、細胞洗浄ロータ25は、ロータ2と、ロータ2上に円形列に、回動軸3aを回転中心として回動自在に装着され、かつロータ2の回転による遠心力によって円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダ3と、ロータ2に装着され該ロータと同時に回転し、複数の試験管ホルダ3にそれぞれ保持される複数の試験管4に洗浄液を供給する洗浄液分配素子5と、からなる。図10および図11に示すように、試験管ホルダ3は、保持する試験管4の中心軸4aが、ロータ2の回転軸8aに沿う垂直線方向4yと一致するように、試験管4を垂直状態に保持することを特徴としている。
【0015】
このような細胞洗浄ロータ25を用いて上述したような洗浄液注入工程を実施すると、図12に示すように、試験管ホルダ3は、細胞洗浄ロータ25の回転による遠心力で、回転方向または円形列の接線方向には回動することなく、円形列の外側水平方向に回動し、洗浄液5aが試験管4内に注入され、細胞を洗浄する。また上述した洗浄液注入工程後の上澄液排出工程では、図13に示すように、試験管ホルダ3を垂直状態または垂直状態に近い状態に磁気素子で固定し、試験管ホルダ3が、ロータ2の回転軸8aに沿う垂直線方向4yと一致するように、試験管4を垂直状態に保持して上澄液の排出を行っている。
【0016】
【特許文献1】特開昭50−22693号公報
【特許文献2】実開平2−81640号公報
【特許文献3】特公昭48-27267
【特許文献4】公開昭60−150857
【特許文献5】実開昭54−167860号公報
【特許文献6】特開2003−337088号公報
【非特許文献1】日立工機株式会社ホームページ「日立自動血球洗浄機 himac MC450」、[平成19年5月31日検索]、インターネット<URL:http://www.hitachi−koki.co.jp/himac/products/centrifuges/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記したような従来の細胞洗浄ロータを装着する細胞洗浄遠心機では、洗浄液注入工程での洗浄液注入量のばらつき、および上澄液排出工程での上澄液残量のばらつきを抑制することが不充分であった。
【0018】
細胞洗浄の自動化を目的とした遠心機により良好な輸血検査等を行うためには、(1)洗浄液注入工程において洗浄液分配素子により試験管ホルダに保持された多数の試験管内に供給される洗浄液量が等量であること、(2)上澄液排出工程において試験管から洗浄液の上澄液排出が十分に、多数の試験管で均等に行なわれることが望ましい。
【0019】
すなわち、多数の試験管内に供給された洗浄液量にばらつきがある場合、例えば、洗浄液供給量の少ないときでは、懸濁液中に他の試験管よりも多量の抗体などの異物が残留する試料となる。逆に、洗浄液供給量の多い試験管内では懸濁液中の抗体などの残留異物が少なくなる。この差が、細胞洗浄遠心機を用いた洗浄処理工程の後に行われる試薬反応検査において検査結果の差として表れ、結果として輸血検査等の判定に重大な誤りを生ずる原因となる。
【0020】
また、洗浄液量の供給量が少なくてよいと思われる試験管を基準に洗浄液分配素子から洗浄液を供給すると、注入量のばらつきによって、洗浄液分配素子から洗浄液量が比較的多く注入される試験管では洗浄液量が試験管から溢れ、貴重な細胞試料が失われてしまうという問題を招く。さらに、洗浄液量の少ないものに合わせて洗浄回数を決定すると洗浄工程が長時間におよぶ不具合を招くことになる。
【0021】
本願発明者は、上述したような従来の細胞洗浄ロータを検討したところ、洗浄液量が不均一となる一つの原因として、従来の洗浄液分配素子の洗浄液出口と試験管口の距離が離れているため、洗浄液分配素子の洗浄液出口穴の加工精度誤差により洗浄液分配素子から注入される洗浄液の一部が試験管に入らない場合があることが分かった。
【0022】
一方、洗浄液注入工程後に続く上澄液排出工程において、洗浄液の上澄液を多数の試験管内から排出する場合、上澄液の排出量にばらつきがある場合も、検査結果に誤差を与える原因となる。例えば、上澄液排出量の少ない試験管内では、上澄液排出工程後に試験管中に他の試験管よりも抗体などの異物が多く残留する。逆に、上澄液排出量の多い試験管内では抗体などの残留異物が少なくなる。この差も、細胞洗浄遠心機を用いた後工程で行われる試薬反応による検査結果に誤差を生ずる原因となり、結果として輸血検査等の判定に誤りを生ずる原因となる。
【0023】
さらに、上澄液排出量の少ないものを基準に、上澄液排出工程の処理時間を長くしたり、上澄液排出工程の回転数を高くすると、上澄液排出量の多いものは、分離した細胞も試験管から排出し、貴重な細胞試料が失われてしまうという不具合を生ずる場合もある。
【0024】
本願発明者は、上述したような従来の細胞洗浄ロータを検討したところ、上澄液排出工程の処理時間も短くできることを見出した。
【0025】
従って、本発明の目的は、上述した従来技術における問題点に鑑み、洗浄液注入工程において多数の試験管について均等な洗浄液量を供給でき、また上澄液排出工程において多数の試験管について洗浄液の上澄液の排出を均等に行なうことが可能な細胞洗浄遠心機および細胞洗浄ロータを提供することにある。
【0026】
さらに、本発明の他の目的は、細胞洗浄効果を向上させ、信頼性の高い細胞検査結果を得ることが可能な細胞洗浄遠心機および細胞洗浄ロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記本発明の目的を達成するために、本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次のとおりである。
【0028】
本発明の一つの特徴によれば、駆動軸を有するモータと、該モータの駆動軸に連結され、前記モータで回転されるロータと、該ロータ上に円形列に回動自在に装着され、かつ前記ロータの回転による遠心力によって前記円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダと、前記ロータに装着され前記ロータと同時に回転し、前記複数の試験管ホルダにそれぞれ保持された複数の試験管内に洗浄液を供給する洗浄液分配素子と、前記試験管ホルダを垂直または垂直に近い角度に保持する保持手段と、前記モータ、前記洗浄液分配素子および前記保持手段の動作を制御する制御装置と、を備える細胞洗浄遠心機において、前記試験管ホルダは、前記試験管の中心軸が前記ロータの回転軸に沿う垂直線方向から前記試験管ホルダの前記円形列が作る円の接線に沿う水平線方向に傾斜するように、前記試験管を垂直状態より傾斜させた状態に保持し、前記制御装置は、前記ロータの回転中に、前記洗浄液分配素子により洗浄液を前記試験管へ注入する洗浄液注入工程と、前記ロータの回転による遠心力によって前記試験管ホルダを回動させて前記試験管内の浮遊細胞を該試験管内底に沈殿させる遠心工程と、前記試験管ホルダを前記保持手段によって保持した状態で前記ロータを回転させて前記試験管から前記洗浄液の上澄液を排出する上澄液排出工程と、から成る洗浄サイクルを順次、実行する。
【0029】
本発明の他の特徴によれば、前記遠心工程において、前記ロータを前記洗浄液注入工程より速い第1の回転速度で回転させる。
【0030】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記上澄液排出工程において、前記ロータを前記第1の回転速度より低速の第2の回転速度で回転させる。
【0031】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記洗浄液注入工程の前記ロータの回転方向は、前記上澄液排出工程の前記ロータの回転方向と異なる方向である。
【0032】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記試験管ホルダは、前記洗浄液注入工程での前記ロータの回転方向に対して前記試験管の上端部が前記試験管の下端部よりも前進した位置となるように、前記試験管を垂直状態より前記水平線方向へ傾斜させた状態に保持する。
【0033】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記試験管ホルダは、前記上澄液排出工程での前記ロータの回転方向に対して前記試験管の上端部が前記試験管の下端部よりも後退した位置となるように、前記試験管を垂直状態より前記水平線方向へ傾斜させた状態に保持する。
【0034】
本発明のさらに他の特徴によれば、ロータと、前記ロータ上に円形列に回動自在に装着され、かつ前記ロータの回転による遠心力によって前記円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダと、前記ロータに装着され前記ロータと同時に回転し、前記複数の試験管ホルダにそれぞれ保持される複数の試験管内に洗浄液を供給する洗浄液分配素子と、からなる細胞洗浄ロータにおいて、前記試験管ホルダは、保持する試験管の中心軸が前記ロータの回転軸に沿う垂直線方向から前記試験管ホルダの前記円形列が作る円の接線に沿う水平線方向に傾斜するように、前記試験管を垂直状態より傾斜させた状態に保持する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の上述した構成によれば、複数の試験管ホルダは、試験管の中心軸がロータの回転軸に沿う垂直線方向から試験管ホルダの円形列が作る円の接線に沿う水平線方向に傾斜するように、試験管を垂直状態より傾斜させた状態に保持するので、洗浄液注入工程において多数の試験管へ均等な洗浄液量を供給でき、また、上澄液排出工程において多数の試験管について洗浄液の上澄液排出を十分に、かつ均等に行なうことができる。これによって、細胞洗浄効果を向上させ、信頼性の高い細胞検査結果を得ることが可能な細胞洗浄遠心機を提供できる。
【0036】
本発明の上記特徴および他の特徴、ならびに上記効果および他の効果は、以下の本明細書の記述および添付図面よりさらに明らかにされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。また、従来技術と同一または類似の構造または機能を有するものについては、従来技術と同一の符号が付されている。
【0038】
図1は本発明に係る細胞洗浄遠心機の全体構成を示す断面図、図2は各洗浄処理工程における、細胞洗浄遠心機の試験管ホルダの動作状態を示す断面図、図3は本発明に係る細胞洗浄遠心機のモータの回転速度、ポンプ動作、および磁気素子動作の通電タイミングを示すタイムチャートである。
【0039】
図1に示すように、本発明に係る細胞洗浄遠心機20は、上面から見た断面形状が四角形を有する筐体(フレーム)22及び該筐体22の上部を開閉するドア21を備え、この筐体22内に組立てられた、駆動軸(回転軸)8を有するモータ1と、モータ1の駆動軸8に連結され、該モータ1で回転されるロータ2とを備える。ロータ2上には、上面から見て円形列に、かつ回動自在に装着された複数(例えば、24個)の試験管ホルダ3が設置されている。試験管ホルダ3は、磁性体部材より構成され、図4に示すように、試験管4を挿入する保持挿入部3cと、試験管4の底部を支持する保持底部3dとを有する。各試験管ホルダ3内には、予め赤血球等の生体細胞が適量入った試験管4が保持される。
【0040】
また、細胞洗浄遠心機20は、試験管ホルダ3をロータ2に、図1の断面図を横切る方向に視て、言い換えれば、試験管ホルダ3の円形列における円の接線方向から視て、垂直または垂直に近い小さい角度に、保持するための保持手段7を備えている。本実施形態では、保持手段7は、磁力によって吸着し保持するための磁気素子から構成され、円盤状の上部磁性体部材7aと下部磁性体部材7bとを備え、さらに、これら上部磁性体部材7aと下部磁性体部材7bとによって挟み込まれるように設置された、絶縁導線のリング状コイル(磁気コイル)7cを備える。これら磁性体部材7aおよび7bと、磁気コイル7cはモータ1の駆動軸8に固定され、ロータ2と共に一体に回転する。制御装置11は、回転する磁気コイル7cに一対のスリップリング7dおよび7eを介して電流を供給することによって、上部磁性体部材7aと下部磁性体部材7bに発生する磁力を制御する。制御装置11によって磁気コイル7cに電流を通電すると磁場を生じ、磁性体材料、例えばSUS430材、によって作られた、後述する試験管ホルダ3は、上部磁性体部材7aと下部磁性体部材7bと共に、磁気回路を形成するので、上部磁性体部材7aおよび下部磁性体部材7b(磁気素子7)に強く吸着される。すなわち、磁気コイル7cに電流を通電することによって、保持手段7(磁性体部材7a及び7b)は一個の磁石として作用し、磁性体材料から成る試験管ホルダ3を吸着する。本実施例では上部磁性体部材7aの外径は、下部磁性体部材7bに比べ大きい外径を持つ。これによって、磁性体部材7aおよび7b(磁気素子7)の吸着面は、試験管4が鉛直線(ロータ回転軸と並行する一方向)に対して、試験管ホルダ3の円形列の外周方向に約8度開いた状態になるように試験管ホルダ3を吸着できる。
【0041】
本発明の一つの特徴によれば、試験管ホルダ3は、図4および図5に示すように、試験管ホルダ3が試験管4を保持したとき、試験管4の中心軸4a(図5参照)が、ロータ2の回転軸8aに沿う垂直線方向4y(図4および図5の正面図では回転軸8aに一致)から、多数の試験管ホルダ4の円形列が作る円の接線に沿う水平線方向4x(図4および図5の3a方向と一致)に、所定の角度θで傾斜するように、試験管4を垂直状態4yより傾斜させた状態に保持する。すなわち、図4に示すように、ロータ2に装着される試験管ホルダ3の回動軸3a(円形列の接線方向4xと一致)とロータ2の回転軸8a(垂直線方向4y)は直角であり、試験管4が挿入される保持挿入部3cおよび保持底部3dの中心軸3bは回動軸3a(水平線方向4x)に対して角度θだけ傾斜している。さらに言い換えるならば、図5に示すように、試験管4の中心軸4aと、ロータ2の回転軸8a(垂直線4y)とは、図10および図11に示す従来のような同一平面状に一致するものとは異なった装着状態となり、両者の位置は、ねじれの位置関係となる。上記傾斜角度θは、例えば、10度に設定されている。この傾斜角度θは、後述するように、ロータ2の回転速度に対応して5〜30度の範囲内に選択できる。望ましくは10〜15度に設定される。
【0042】
また、本発明の他の特徴によれば、図5および図6に示すように、上記試験管4(試験管ホルダ3)の中心軸4aの傾きは、後述する洗浄液注入工程におけるロータ2の回転方向Aに対して、試験管4の上部4cが下部4dより前進した位置となるように傾斜角度θを有する。
【0043】
さらに、本発明の他の特徴によれば、図7に示すように、後述する上澄液排出工程におけるロータ2の回転方向Bは、洗浄液注入工程におけるロータの回転方向Aと反対方向に制御される。従って、上述した試験管ホルダ3の傾斜中心軸3b、すなわち試験管4の中心軸4aの傾きは、上澄液排出工程におけるロータ2の回転方向Bに対して、試験管4の上部4cが下部4dより後退した位置となる。
【0044】
試験管ホルダ3は、後述する洗浄処理の遠心工程において、制御装置11によって磁気素子7の動作がオフされて吸着力が解除された状態で、ロータ2の速い回転数による遠心力を受けて水平方向に回動する。これによって、試験管4を保持する試験管ホルダ3は、ロータの円周の放射水平方向に回動し、試験管ホルダ3の下部がボウル10に当たるまで傾き、試験管4内の血球などの試料を遠心分離する。例えば、磁気素子7の動作をオフして吸着力を解除した状態においてモータ1の回転を3000rpmとして、試験管ホルダ3の下端部がボウル10に当接したとき、試験管4と鉛直線がなす角度が約40°となるように回動する。モータ1は、例えば誘導モータより成り、その回転数(回転速度)は制御装置11によって制御できる。
【0045】
また、細胞洗浄遠心機20は、円形列の複数の試験管4内に洗浄液5aを供給する洗浄液分配素子5を有する。洗浄液分配素子5は、図9に示され、また上記特許文献6に開示された従来技術と同じ構造を有する。洗浄液分配素子5は、円形列の試験管ホルダ3を搭載するロータ2と一体に回転するようにロータ2上に構成され、洗浄液分配素子5およびロータ2は一体となって、所謂、細胞洗浄ロータ25を構成する。
【0046】
洗浄液分配素子5に関連して、洗浄液供給路9が設けられ、洗浄液供給路9にはポンプ6が結合される。制御装置11によってポンプ6の動作電源をオン(ON)させることにより、図示しない外部の洗浄液タンクから、洗浄液5aを、洗浄液供給路9を通して細胞洗浄遠心機20の上部に位置するノズル9aに供給することができる。後述する洗浄液注入工程では、ノズル9aから下方に噴出した洗浄液は、ロータ2と一体で高速回転する洗浄液分配素子5の中央部内に入り、洗浄液分配素子5内の遠心力により外周に分流され、試験管ホルダ3に保持された試験管4と同数(24本)の各流路に分岐され、分配素子5の外周注入口5bから勢い良く各試験管4内に注入される。
【0047】
次に、細胞洗浄遠心機20によって、例えば輸血検査等を行うための血球洗浄プロセスを実行する場合について、図2に示す洗浄処理工程別の遠心機の要部断面図、および図3に示す遠心機の動作タイムチャートを参照して以下に説明する。
【0048】
まず、洗浄液注入工程において、図3のタイミングチャート(1)および図2の工程断面図(1)に示すように、予め赤血球等の生体細胞を適量入れた24本の試験管4を保持する24本の試験管ホルダ3は、モータ1(ロータ2)の最高回転数(回転速度)が3000rpmに達するように加速回転され、遠心力が与えられる。上述したように、洗浄液(例えば、生理食塩水)5aは、この遠心力により運動エネルギーを得るため、モータ1の回転数が約1000rpmとなった加速途中時点でポンプ6の動作を開始することにより洗浄液分配素子5に注入される。洗浄液5aは、洗浄液分配素子5内の遠心力により外周に分流され、試験管ホルダ3に保持された試験管4と同数(24本)の各流路に分岐され、分配素子5の外周から勢い良く流出する。分配素子5から試験管4へ注入された洗浄液5aは、洗浄液分配素子5の外側に位置する各試験管4の内壁に当たり、壁面を伝わり試験管4の底部にある細胞を浮遊させ、懸濁状態を作り出す。試験管4に適量の洗浄液5aが入ると、制御装置11によってポンプ6の動作は停止され、洗浄液注入工程は終了する。
【0049】
洗浄液注入工程(1)において、本発明に従う上記試験管ホルダ3の装着構造によれば、多数の試験管4内に供給される洗浄液5aの注入量のばらつきを抑制することができる。
【0050】
すなわち、洗浄液注入工程(1)において、洗浄液分配素子5と試験管4の関係は、図6の平面図(斜視図)に示すように、洗浄液分配素子5から流出した洗浄液5aは、ロータ2の回転による風圧と、コリオリ力による回転方向と反対方向の力とを受けて回転方向Aと反対方向に曲がりながら空中を飛び、洗浄液分配素子5の外側に位置する各試験管4に勢い良く注入される。洗浄液5aはロータ2(モータ1)の回転数が1000rpmで洗浄液分配素子5に注入されて外周から流出するが、約10mm離れた各試験管4の近傍では約5度その軌跡が曲がる。またロータ2の回転数が3000rpmの時には、より多く軌跡が曲がり、各試験管4の近傍で約30度となる。
【0051】
このとき、上述したように試験管4の中心軸4aは、円形列の接線に沿う水平線方向4x(回動軸3a方向)に対して試験管4の上部4cは下部4dよりも前進した位置となるような、ねじれの位置関係を構成し、かつその傾斜角度θは洗浄液5aの流出する軌跡が曲がりと同様の5〜30度になるように構成されるので、試験管上部4cの受口部(開口部)は、洗浄液5aの注入方向に正対し、洗浄液分配素子5から風圧の影響を受けて供給される洗浄液5aに対する受口面積を図12に示した従来技術による処理工程より著しく拡張することが可能となる。傾斜角度θは、より望ましくは洗浄液5aの流出する軌跡が曲がりの平均値近くの10〜15度に設定することにより、洗浄液5aの注入効果を最も大きくすることができる。
【0052】
この結果、洗浄液5aが試験管4に注入するときに試験管4の内壁に当たることで、その運動エネルギーを減少するようなことはなく、試験管4の底部(下部)4dにある生体細胞を浮遊させ、十分な懸濁状態を作り出すことが出来る。また、試験管4の受口は、洗浄液5aの注入方向に正対することで、洗浄液5aが試験管4に注入する確度(注入量)を最も大きく取れ、各々の試験管4に注入する洗浄液5aの注入量のばらつきを少なくすることができる。
【0053】
以上の工程により試験管4に適量の洗浄液5aが入ると、制御装置11によって、ポンプ6の動作は停止され、洗浄液注入工程(1)は終了する。引続く遠心工程(2)において、図3のタイミングチャート(2)および図2の断面図(2)に示すように、浮遊している生体細胞が試験管4の底部4dに沈殿し、一方、血清等の不要物質は上澄に残るような高速回転の条件、例えば本実施例では3000rpm、35秒間、高速回転を継続し、遠心分離をする。遠心分離後、モータ1の回転を停止する。
【0054】
次に、上澄液排出工程(3)において、図3のタイムチャート(3)および図2の断面図(3)に示すように、制御装置11よりリング状コイル7cに通電し、磁気素子7の動作をON状態にする。これにより、磁気素子7は磁性体材料の試験管ホルダ3を吸着し、保持する。上述したように、磁気素子7の上部磁性体部材7aの外径は下部磁性体部材7bに比較して若干大きな外径となっているので、試験管ホルダ3が磁気素子7に吸着される面は、上方に約8度放射方向に開いたほぼ垂直状態に近い状態で保持され、回転する。
【0055】
図7に示すように、上澄液排出工程(3)におけるロータの回転方向Bは、先の洗浄液注入工程の回転方向Aとは逆回転で、回転数を約400rpmの回転に上昇させる。試験管4内の上澄液は、図7に示すように、400rpmの回転による遠心力と慣性力の合力方向の力を受けて試験管4の内壁面を上昇する。また、この工程における回転方向Bは、図13に示した従来技術の回転方向Aと異なっていることに留意すべきである。
【0056】
本発明の上澄液排出工程(3)によれば、図7に示すように、試験管4の中心軸4aは、回転軸垂直方向4y(またはロータ回転軸8a)に対して、試験管4の上部4cが下部4dよりも後退した位置となるようなねじれの位置関係を構成しているので、遠心力と慣性力の合力方向に試験管4の開口部4cが傾くことになる。その結果、上澄液は、試験管4の壁面における最短の経路を通り開口部4cに達することができるので、最短の時間で外部へ排出され、試験管4の底部4dにある赤血球等の生体細胞のみ、そのまま底部に残すことができ、各々の試験管4の上澄液残量を少なく、かつ上澄液排出工程(3)の処理時間を、図13に示したような従来技術に比べ、著しく短縮することができる。
【0057】
上澄液排出工程終了後、揺動工程(4)において図3のタイムチャート(4)および図2の断面図(4)に示すように、モータ1は小刻みに回転、停止を繰り返す。これによって、試験管ホルダ3は、回転による遠心力で外周方向に振られ、停止とともに磁気素子7に衝突することにより揺動を与えられ、試験管4の底部に沈殿し、固着した細胞塊を解す効果を生じる。
【0058】
以上説明した洗浄工程(1)から揺動工程(4)まで成る工程を1洗浄サイクルとして、このサイクルを3〜4回繰り返すことにより、試験管4内の赤血球等の生体細胞を洗浄し、抗体などの異物をより完全に分離、取り除くことができる。
【0059】
上記実施態様の説明から明らかなように、本発明によれば、図6および図12に示すように、洗浄サイクルの洗浄液注入工程において、従来に比べて洗浄液の注入量のばらつきを少なくすることができる。また、注入する洗浄液の運動エネルギーも高くすることができるので、試験管4の底部に存在する生体細胞を浮遊させ、十分な懸濁状態を作り出すことができる。
【0060】
さらに、本発明によれば、図7および図13に示すように、上澄液排出工程において、従来に比べて上澄液を短時間で、より多くの量を試験管外に排出可能となり、多数の各試験管4における上澄液残量のばらつきを少なくすることができる。
【0061】
以上の構成によれば、洗浄効果が均等となるので、洗浄特性が良好で、信頼性が高い細胞洗浄遠心機を提供することができる。また、洗浄液の使用量の軽減や、洗浄サイクルの回数を少なくすることも可能となるので、省資源および少エネルギー化、ならびに検査時間の短縮化も可能な細胞洗浄遠心機を提供することができる。
【0062】
上記実施形態において、試験管ホルダ3の中心軸3bの傾斜角θは、試験管4の保持部3c、3dを部分的に傾斜させることによって形成したが、部分的に保持部3cを曲げ加工することなく、多数の試験管ホルダ3における各々の回動軸3aを水平軸より傾斜させることによって、試験管ホルダ3全体の中心軸を傾斜させた状態でロータ本体2へ回動自在に装着することもできる。
【0063】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る細胞洗浄遠心機を示す全体断面図。
【図2】図1に示した細胞洗浄遠心機によって実行する血球洗浄プロセスの各工程おける遠心分離機の要部断面図。
【図3】図1に示した細胞洗浄遠心機においてモータの回転速度、ポンプ動作および磁気素子動作を制御するためのタイムチャート。
【図4】図1に示した細胞洗浄遠心機を構成する試験管ホルダの回動軸とロータの回転軸の関係を示す正面図。
【図5】図1に示した細胞洗浄遠心機を構成する試験管ホルダの回動軸と試験管の中心軸の関係を示す正面図。
【図6】本発明に係る洗浄液注入工程における洗浄液分配素子と試験管の関係を示す平面図。
【図7】本発明に係る上澄液排出工程における洗浄液分配素子と試験管の関係を示す平面図。
【図8】従来技術に係る細胞洗浄遠心機においてモータの回転速度、ポンプ動作および磁気素子動作を制御するためのタイムチャート。
【図9】従来技術に係る細胞洗浄遠心機の洗浄液分配素子およびロータから成る細胞洗浄ロータの構造を示す斜視図。
【図10】従来技術に係る細胞洗浄遠心機を構成する試験管ホルダの回動軸とロータの回転軸の関係を示す正面図。
【図11】従来技術に係る細胞洗浄遠心機を構成する試験管ホルダの回動軸と試験管の中心軸の関係を示す正面図。
【図12】従来技術に係る洗浄液注入工程における洗浄液分配素子と試験管の関係を示す平面図。
【図13】従来技術に係る上澄液排出工程における洗浄液分配素子と試験管の関係を示す平面図。
【符号の説明】
【0065】
1:モータ 2:ロータ 3:試験管ホルダ 3a:回動軸
3b:保持部中心軸 3c:保持挿入部 3d:保持底部
4:試験管 4a:試験管の中心軸 4c:試験管上部
4d:試験管下部 4x:接線水平方向 4y:垂直方向
5:洗浄液分配素子 5a:洗浄液 5b:外周注入口
6:ポンプ 7:磁気素子(磁気素子) 7a:上部磁性体部材
7b:下部磁性体部材 7c:リング状コイル 7d:スリップリング
7e:スリップリング 8:駆動シャフト 8a:回転軸
9:洗浄液供給路 9a:洗浄液供給ノズル 10:ボウル
11:制御装置 20:細胞洗浄遠心機 21:ドア
22:筐体(フレーム) 25:細胞洗浄ロータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸を有するモータと、該モータの駆動軸に連結され、前記モータで回転されるロータと、該ロータ上に円形列に回動自在に装着され、かつ前記ロータの回転による遠心力によって前記円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダと、前記ロータに装着され前記ロータと同時に回転し、前記複数の試験管ホルダにそれぞれ保持された複数の試験管内に洗浄液を供給する洗浄液分配素子と、前記試験管ホルダを垂直または垂直に近い角度に保持する保持手段と、前記モータ、前記洗浄液分配素子および前記保持手段の動作を制御する制御装置と、を備える細胞洗浄遠心機において、
前記試験管ホルダは、前記試験管の中心軸が前記ロータの回転軸に沿う垂直線方向から前記試験管ホルダの前記円形列が作る円の接線に沿う水平線方向に傾斜するように、前記試験管を垂直状態より傾斜させた状態に保持し、
前記制御装置は、前記ロータの回転中に前記洗浄液分配素子により洗浄液を前記試験管へ注入する洗浄液注入工程と、前記ロータの回転による遠心力によって前記試験管ホルダを回動させて前記試験管内の浮遊細胞を該試験管内底に沈殿させる遠心工程と、前記試験管ホルダを前記保持手段によって保持した状態で前記ロータを回転させて前記試験管から前記洗浄液の上澄液を排出する上澄液排出工程と、から成る洗浄サイクルを順次、実行することを特徴とする細胞洗浄遠心機。
【請求項2】
前記遠心工程において、前記ロータを前記洗浄液注入工程より速い第1の回転速度で回転させることを特徴とする請求項1に記載された細胞洗浄遠心機。
【請求項3】
前記上澄液排出工程において、前記ロータを前記第1の回転速度より低速の第2の回転速度で回転させることを特徴とする請求項2に記載された細胞洗浄遠心機。
【請求項4】
前記洗浄液注入工程の前記ロータの回転方向は、前記上澄液排出工程の前記ロータの回転方向と異なる方向であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載された細胞洗浄遠心機。
【請求項5】
前記試験管ホルダは、前記洗浄液注入工程での前記ロータの回転方向に対して前記試験管の上端部が前記試験管の下端部よりも前進した位置となるように、前記試験管を垂直状態より前記水平線方向へ傾斜させた状態に保持することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載された細胞洗浄遠心機。
【請求項6】
前記試験管ホルダは、前記上澄液排出工程での前記ロータの回転方向に対して前記試験管の上端部が前記試験管の下端部よりも後退した位置となるように、前記試験管を垂直状態より前記水平線方向へ傾斜させた状態に保持することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載された細胞洗浄遠心機。
【請求項7】
ロータと、前記ロータ上に円形列に回動自在に装着され、かつ前記ロータの回転による遠心力によって前記円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダと、前記ロータに装着され前記ロータと同時に回転し、前記複数の試験管ホルダにそれぞれ保持される複数の試験管内に洗浄液を供給する洗浄液分配素子と、からなる細胞洗浄ロータにおいて、
前記試験管ホルダは、保持する試験管の中心軸が前記ロータの回転軸に沿う垂直線方向から前記試験管ホルダの前記円形列が作る円の接線に沿う水平線方向に傾斜するように、前記試験管を垂直状態より傾斜させた状態に保持することを特徴とする細胞洗浄ロータ。
【請求項1】
駆動軸を有するモータと、該モータの駆動軸に連結され、前記モータで回転されるロータと、該ロータ上に円形列に回動自在に装着され、かつ前記ロータの回転による遠心力によって前記円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダと、前記ロータに装着され前記ロータと同時に回転し、前記複数の試験管ホルダにそれぞれ保持された複数の試験管内に洗浄液を供給する洗浄液分配素子と、前記試験管ホルダを垂直または垂直に近い角度に保持する保持手段と、前記モータ、前記洗浄液分配素子および前記保持手段の動作を制御する制御装置と、を備える細胞洗浄遠心機において、
前記試験管ホルダは、前記試験管の中心軸が前記ロータの回転軸に沿う垂直線方向から前記試験管ホルダの前記円形列が作る円の接線に沿う水平線方向に傾斜するように、前記試験管を垂直状態より傾斜させた状態に保持し、
前記制御装置は、前記ロータの回転中に前記洗浄液分配素子により洗浄液を前記試験管へ注入する洗浄液注入工程と、前記ロータの回転による遠心力によって前記試験管ホルダを回動させて前記試験管内の浮遊細胞を該試験管内底に沈殿させる遠心工程と、前記試験管ホルダを前記保持手段によって保持した状態で前記ロータを回転させて前記試験管から前記洗浄液の上澄液を排出する上澄液排出工程と、から成る洗浄サイクルを順次、実行することを特徴とする細胞洗浄遠心機。
【請求項2】
前記遠心工程において、前記ロータを前記洗浄液注入工程より速い第1の回転速度で回転させることを特徴とする請求項1に記載された細胞洗浄遠心機。
【請求項3】
前記上澄液排出工程において、前記ロータを前記第1の回転速度より低速の第2の回転速度で回転させることを特徴とする請求項2に記載された細胞洗浄遠心機。
【請求項4】
前記洗浄液注入工程の前記ロータの回転方向は、前記上澄液排出工程の前記ロータの回転方向と異なる方向であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載された細胞洗浄遠心機。
【請求項5】
前記試験管ホルダは、前記洗浄液注入工程での前記ロータの回転方向に対して前記試験管の上端部が前記試験管の下端部よりも前進した位置となるように、前記試験管を垂直状態より前記水平線方向へ傾斜させた状態に保持することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載された細胞洗浄遠心機。
【請求項6】
前記試験管ホルダは、前記上澄液排出工程での前記ロータの回転方向に対して前記試験管の上端部が前記試験管の下端部よりも後退した位置となるように、前記試験管を垂直状態より前記水平線方向へ傾斜させた状態に保持することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載された細胞洗浄遠心機。
【請求項7】
ロータと、前記ロータ上に円形列に回動自在に装着され、かつ前記ロータの回転による遠心力によって前記円形列の外側水平方向に回動する複数の試験管ホルダと、前記ロータに装着され前記ロータと同時に回転し、前記複数の試験管ホルダにそれぞれ保持される複数の試験管内に洗浄液を供給する洗浄液分配素子と、からなる細胞洗浄ロータにおいて、
前記試験管ホルダは、保持する試験管の中心軸が前記ロータの回転軸に沿う垂直線方向から前記試験管ホルダの前記円形列が作る円の接線に沿う水平線方向に傾斜するように、前記試験管を垂直状態より傾斜させた状態に保持することを特徴とする細胞洗浄ロータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−2777(P2009−2777A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163559(P2007−163559)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]