説明

細胞生理活性物質および細胞培養補添物

本発明は、増殖因子、サイトカインなどの細胞生理活性物質を、大量に調製しおよび/または均質な調製物を生産するための簡便な方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、血清の全部または一部を代替する細胞培養培地補添物、およびそのような補添物を含有する培養培地を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、再生医療に用いる細胞を調製する方法を提供することを課題とする。また、本発明は、細胞生理活性物質を補充することによって被検体を治療するための方法、およびその方法に使用される細胞生理活性物質を調製するための方法を提供することを課題とする。
従来廃棄していた術後ドレーン廃液などの創部に由来する体液を原料として増殖因子、サイトカインなどの細胞生理活性物質、ならびに細胞培養培地補添物を大量におよび/または均質に調製する方法を提供することによって、上記課題が解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖因子、サイトカインのような細胞生理活性物質を簡便に調製するための方法に関する。また、本発明は、細胞培養のための補添物、そのような補添物を含有する細胞培養培地、ならびにそのような細胞培養培地を用いる細胞培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
増殖因子、サイトカインなどの細胞生理活性物質は、細胞培養に必要であり、種々の分野において利用されている。例えば、細胞生理活性物質は、免疫応答の制禦作用、内分泌系の調節、神経系の調節、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節作用などにも有用であり得る。
【0003】
ヒトに適用する場合に最も適した細胞生理活性物質は、ヒト由来のものである。ヒトの細胞生理活性物質の供給源としては、例えば血清、リンパ、髄液、滑液、創部からの浸出液などの体液が挙げられる。しかし、血清、リンパ、髄液、滑液は、その供給量が限定されていることから、大量かつ均質に調製することは困難である。また、本発明者が知りうる限りでは、創部からの浸出液は、生理活性の物質の含有量は多いが、浸出液自体の量が少ないうえに、体外で回収されるために細菌などで汚染されており、さらに回収が難しいために回収効率も悪い。そのため、生理活性の測定は行われても、その浸出液から生理活性物質を調整しようとする試みは一切行われていなかった。このような知見に基づき、従来は、創部からの浸出液から細胞生理活性物質を調製することは、かえって費用および時間の面で、デメリットがあると考えられており、そのため、創部からの浸出液から細胞生理活性物質(例えば、サイトカイン、または細胞増殖のための補添物)を調製しようとする試みは、行われていなかった。創部からの浸出液がサイトカインを含むことは公知であったが、サイトカインの含有量が少ないことなどの理由で、そのようなサイトカインの存在は、あくまで創傷治癒のマーカー、または外科手術の結果のマーカーとしての有用性のみが認識されていた(非特許文献1)。従来、創部からの浸出液が、細胞生理活性物質の供給源であること、例えば、創部からの浸出液が細胞培養における血清の代替物として使用できることは、教示も示唆もされていなかった。
【0004】
他方、ヒトの細胞生理活性物質をコードする遺伝子が単離されていることから、遺伝子組換え的手法を用いてヒトの細胞生理活性物質を発現して、大量かつ均一な性質の細胞生理活性物質を調製することが可能である。しかし、最も操作が簡便である細菌宿主を用いた場合には、天然のヒト細胞生理活性物質に存在する糖鎖修飾などの翻訳後修飾がなされない。非ヒト真核生物発現系(例えば、酵母細胞、マウス細胞、マウス個体)を用いた場合、発現された細胞生理活性物質は糖鎖修飾されるものの、その糖鎖構造は、天然のヒト細胞生理活性物質とは異なる。また、たとえヒト培養細胞を用いた場合であっても、細胞による翻訳後修飾(特に、糖鎖修飾)は細胞の種類、悪性度などによって変化することから、概して、天然の細胞生理活性物質と同一の構造を有する物質を大量かつ均一に調製することは困難である。
【0005】
その一方で、細胞生理活性物質の、免疫増強および炎症性疾患の治療などにおける有用性のために、細胞生理活性物質に関する需要は高い。また、天然の細胞生理活性物質と同一の構造および機能を有し、そのため天然の細胞生理活性物質の代替物として使用し得る細胞生理活性物質を調製に関する需要も高い。また、細胞培養において、動物由来のフィーダー細胞、動物由来血清、動物由来細胞外マトリックス、動物由来の脳下垂体などの内分泌臓器抽出物などが広く使われているが、動物由来であるために安全性の面から臨床応用への問題点が大きいのが現状である。
【0006】
従って、天然の細胞生理活性物質を大量かつ均質に調製する方法、および細胞培養培地における血清代替物の開発が望まれる。
【非特許文献1】Balerら、WoundRepair and Regeneration、2003年7-8月、pp. 261-267
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、増殖因子、サイトカインなどのヒト細胞生理活性物質を、大量に調製しおよび/または均質な調製物を生産するための簡便な方法を提供することを課題とする。また、本発明は、血清の全部または一部の替物としての細胞培養補添物を簡便かつ大量に調製する方法を提供することを課題とする。
【0008】
さらに、本発明は、再生医療に用いる細胞を調製する方法を提供することを課題とする。また、本発明は、細胞生理活性物質を補充することによって被検体を治療するための方法、およびその方法に使用される細胞生理活性物質を調製するための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一部、従来廃棄していた術後ドレーン廃液などの創部に由来する体液を原料として増殖因子、サイトカインなどの細胞生理活性物質(例えば、血清の全部または一部を代替するための細胞培養培地補添物)を大量におよび/または均質に調製することができることを見出したことにより達成された。
【0010】
したがって、本発明は、以下を提供する。
1.細胞生理活性物質を含む組成物を調製するための方法であって、
a)創部に由来する体液を得る工程;および
b)該体液を用いて、細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程、
を包含する、方法。
2.前記体液は、術後のドレーン廃液より得られる、項目1に記載の方法。
3.前記体液は、浸出液、リンパ液および血液、ならびにこれらの混合液からなる群より選択される体液を含む、項目1に記載の方法。
4.前記細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程は、該体液を濃縮することを包含する、項目1に記載の方法。
5.前記体液は、無菌的に得られる、項目1に記載の方法。
6.前記組成物は、PDGFファミリーに属するタンパク質、FGFファミリーに属するタンパク質、EGFファミリーに属するタンパク質、VEGFファミリーに属するタンパク質、アンジオポイエチンファミリーに属するタンパク質、IGFファミリーに属するタンパク質、スキャッター因子ファミリーに属するタンパク質、TGFβスーパーファミリーに属するタンパク質、BMPファミリーに属するタンパク質、CNNファミリーに属するタンパク質ファミリーに属するタンパク質、ケモカイン、プロ炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカインおよびMMPファミリーに属するタンパク質からなる群から選択される細胞生理活性物質を含む、項目1に記載の方法。
7.前記組成物は、bFGF、FGF−7、EGF、HB−EGF、アンフィレギュリン、TGFα、PRGF、HGF、NGF、IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−8、TNFα、GM−CSF、レプチン、IL−10、コラゲナーゼおよびゼラチナーゼからなる群から選択される細胞生理活性物質を含む、項目1に記載の方法。
8.前記組成物は、b−FGF、EGF、PDGF、TGF−β、VEGF、KGF、HGF、IGF−1、IL−6、およびIL−8からなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を含む、項目1に記載の方法。
9.前記組成物は、b−FGF、EGF、PDGF、TGF−β、VEGF、KGF、HGF、IGF−1、IL−6、およびIL−8からなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を血清よりも高い濃度で含む、項目1に記載の方法。
10.前記組成物は、PDGF、b−FGF、VEGFおよびEGFからなる群より選択される少なくとも1種の細胞生理活性物質を血清よりも高い濃度で含む、項目9に記載の方法。
11.前記b−FGF、EGF、PDGF、およびTGF−βからなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程は、前記創部の形成から1日後以内に行われる、項目9に記載の方法。
12.前記VEGF、KGF、およびHGFからなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程は、前記創部の形成から4日後以降に行われる、項目9に記載の方法。
13.前記創部に由来する体液が、1日あたり前記創部を有する宿主の総体液量の5%以内の量である、項目1に記載の方法。
14.創部に由来する体液から、溶血した血液を除去する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
15.透析する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
16.遠心分離する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
17.前記工程は、無菌的に行われる、項目1に記載の方法。
18.滅菌工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
19.前記滅菌工程は、フィルター濾過、またはγ線照射によって行われる、項目1に記載の方法。
20.さらに、所望の細胞生理活性物質を分離する工程を包含する、項目1に記載の方法。
21.前記組成物がさらに、血清を含有する、項目1に記載の方法。
22.項目1に記載の方法によって調製される組成物。
23.創部に由来する体液を用いて調製される、細胞生理活性物質を含む組成物。
24.前記組成物は、PDGFファミリーに属するタンパク質、FGFファミリーに属するタンパク質、EGFファミリーに属するタンパク質、VEGFファミリーに属するタンパク質、アンジオポイエチンファミリーに属するタンパク質、IGFファミリーに属するタンパク質、スキャッター因子ファミリーに属するタンパク質、TGFβスーパーファミリーに属するタンパク質、BMPファミリーに属するタンパク質、CNNファミリーに属するタンパク質ファミリーに属するタンパク質、ケモカイン、プロ炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカインおよびMMPファミリーに属するタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の細胞生理活性物質を血清よりも高い濃度で含む、項目22に記載の組成物。
25.b−FGF、EGF、PDGF、TGF−β、VEGF、KGF、HGF、IGF−1、IL−6、およびIL−8からなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を含む、項目23に記載の組成物。
26.b−FGF、EGF、PDGF、TGF−β、VEGF、KGF、HGF、IGF−1、IL−6、およびIL−8からなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を血清よりも高い濃度で含む、項目23に記載の組成物。
27.PDGF、b−FGF、VEGFおよびEGFからなる群より選択される少なくとも1種の細胞生理活性物質を血清よりも高い濃度で含む、項目26に記載の組成物。
28.前記細胞生理活性物質は、血清の少なくとも3倍の濃度で含まれる、項目23に記載の組成物。
29.前記細胞生理活性物質は、血清の少なくとも10倍の濃度で含まれる、項目23に記載の組成物。
30.さらに、血清を含む、項目23に記載の組成物。
31.細胞を含む調製物を調製するための方法であって、
a)創部に由来する体液を得る工程;
b)該体液を用いて、細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程;および
c)該組成物の存在下で細胞を培養する工程、
を包含する、方法。
32.前記体液と、前記細胞とは、同一個体に由来する、項目31に記載の方法。
33.前記細胞は、該細胞と同一宿主に移植するためのものである、項目31に記載の方法。
34.前記細胞は、該細胞と異なる宿主に移植するためのものである、項目31に記載の方法。
35.前記異なる宿主に対する病原体を処置する工程をさらに包含する、項目34に記載の方法。
36.前記組成物がさらに、血清を含有する、項目31に記載の方法。
37.細胞を補充することにより被検体を処置するための方法であって、
a)創部に由来する体液を得る工程;
b)該体液を用いて、細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程;
c)該組成物の存在下で該細胞を培養する工程;および
d)培養された該細胞を該被検体に注入する工程、
を包含する、方法。
38.創部に由来する体液の、細胞生理活性物質を含む医薬を製造するための、使用。
39.前記創部に由来する体液は、術後のドレーン廃液である、項目38に記載の使用。
40.創部に由来する体液を用いて調製される、細胞培養のための補添物。
41.項目40に記載の補添物を含有する細胞培養培地。
42.さらに、血清を含有する、項目41に記載の細胞培養培地。
43.項目41に記載の細胞培養培地を用いる、細胞培養方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、増殖因子、サイトカインなどの細胞生理活性物質を、大量に調製しおよび/または均質な調製物を生産するための簡便な方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、再生医療に用いる細胞を調製する方法を提供する。また、本発明は、細胞を補充することによって被検体を治療するための方法、およびその方法に使用される細胞を調製するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の方法によって調製した組成物中に、高濃度でPDGFが含まれることを示す結果である。
【図2】図2は、本発明の方法によって調製した組成物中に、高濃度でbFGFが含まれることを示す結果である。
【図3】図3は、本発明の方法によって調製した組成物中に、高濃度でVEGFが含まれることを示す結果である。
【図4】図4は、本発明の方法によって調製した組成物中に、高濃度でEGFが含まれることを示す結果である。
【図5】図5は、本発明の方法によって調製した組成物中に、高濃度でKGFが含まれることを示す結果である。
【図6】図6は、本発明の方法によって調製した組成物中に、高濃度でTGF−βが含まれることを示す結果である。
【図7】図7は、本発明の方法によって調製した組成物中に、高濃度でIL−6が含まれることを示す結果である。
【図8】図8は、本発明の方法によって調製した組成物中に、高濃度でIL−8が含まれることを示す結果である。
【図9】図9は、本発明の方法によって調製した組成物中に、高濃度でMMP−1が含まれることを示す結果である。
【図10A】図10Aは、外科手術中に採取された試料中(「ope」)、および手術後の帰室後0〜7日に放出されるb−FGFの濃度を示すグラフである。
【図10B】図10Bは、血清中(「serum」)、ならびに手術後0〜1日目(「D(0−1)」)および手術後5〜6日目(「D(5−6)」)のドレーン廃液中に含まれるb−FGFの濃度を示すグラフである。
【図11A】図11Aは、外科手術中に採取された試料中(「ope」)、および手術後の帰室後0〜7日に放出されるEGFの濃度を示すグラフである。
【図11B】図11Bは、血清中(「serum」)、ならびに手術後0〜1日目(「D(0−1)」)および手術後5〜6日目(「D(5−6)」)のドレーン廃液中に含まれるEGFの濃度を示すグラフである。
【図12A】図12Aは、外科手術中に採取された試料中(「ope」)、および手術後の帰室後0〜7日に放出されるPDGFの濃度を示すグラフである。
【図12B】図12Bは、血清中(「serum」)、ならびに手術後0〜1日目(「D(0−1)」)および手術後5〜6日目(「D(5−6)」)のドレーン廃液中に含まれるPDGFの濃度を示すグラフである。
【図13A】図13Aは、外科手術中に採取された試料中(「ope」)、および手術後の帰室後0〜7日に放出されるTGF−βの濃度を示すグラフである。
【図13B】図13Bは、血清中(「serum」)、ならびに手術後0〜1日目(「D(0−1)」)および手術後5〜6日目(「D(5−6)」)のドレーン廃液中に含まれるTGF−βの濃度を示すグラフである。
【図14A】図14Aは、外科手術中に採取された試料中(「ope」)、および手術後の帰室後0〜7日に放出されるVEGFの濃度を示すグラフである。
【図14B】図14Bは、血清中(「serum」)、ならびに手術後0〜1日目(「D(0−1)」)および手術後5〜6日目(「D(5−6)」)のドレーン廃液中に含まれるVEGFの濃度を示すグラフである。
【図15A】図15Aは、外科手術中に採取された試料中(「ope」)、および手術後の帰室後0〜7日に放出されるKGFの濃度を示すグラフである。
【図15B】図15Bは、血清中(「serum」)、ならびに手術後0〜1日目(「D(0−1)」)および手術後5〜6日目(「D(5−6)」)のドレーン廃液中に含まれるKGFの濃度を示すグラフである。
【図16A】図16Aは、外科手術中に採取された試料中(「ope」)、および手術後の帰室後0〜7日に放出されるHGFの濃度を示すグラフである。
【図16B】図16Bは、血清中(「serum」)、ならびに手術後0〜1日目(「D(0−1)」)および手術後5〜6日目(「D(5−6)」)のドレーン廃液中に含まれるHGFの濃度を示すグラフである。
【図17A】図17Aは、外科手術中に採取された試料中(「ope」)、および手術後の帰室後0〜7日に放出されるIGF−1の濃度を示すグラフである。
【図17B】図17Bは、血清中(「serum」)、ならびに手術後0〜1日目(「D(0−1)」)および手術後5〜6日目(「D(5−6)」)のドレーン廃液中に含まれるIGF−1の濃度を示すグラフである。
【図18A】図18Aは、外科手術中に採取された試料中(「ope」)、および手術後の帰室後0〜7日に放出されるIL−6の濃度を示すグラフである。
【図18B】図18Bは、血清中(「serum」)、ならびに手術後0〜1日目(「D(0−1)」)および手術後5〜6日目(「D(5−6)」)のドレーン廃液中に含まれるIL−6の濃度を示すグラフである。
【図19A】図19Aは、外科手術中に採取された試料中(「ope」)、および手術後の帰室後0〜7日に放出されるIL−8の濃度を示すグラフである。
【図19B】図19Bは、血清中(「serum」)、ならびに手術後0〜1日目(「D(0−1)」)および手術後5〜6日目(「D(5−6)」)のドレーン廃液中に含まれるIL−8の濃度を示すグラフである。
【図20】図20は、ドレーン廃液原液が、細胞培養培地の補添物として非常に有用であることを示す結果である。
【図21】図21は、脱塩処理したドレーン廃液が、細胞培養培地の補添物として非常に有用であることを示す結果である。
【図22A】図22Aは、本発明のドレーン廃液を記載された濃度で添加した培地(「drain」)、およびFBSを5%添加した培地(「FBS5%」)で培養した線維芽細胞の細胞数を、ウシ胎児血清を添加しないコントロール培地(「FBS(−)」)で培養した場合の線維芽細胞の細胞数との相対値として、Y軸に示したグラフである。
【図22B】図22Bは、本発明のドレーン廃液を記載された濃度で添加した培地(「drain」)、およびFBSを10%添加した培地(「FBS10%」)で培養した線維芽細胞の細胞数を、FBSを5%添加した培地(「FBS5%」)で培養したコントロール線維芽細胞の細胞数との相対値として、Y軸に示したグラフである。
【図23】図23は、本発明のドレーン廃液を記載された濃度で添加した培地(「drain」)、およびFBSを1%添加した培地(「FBS1%」)で培養したヒト臍帯由来血管内皮細胞(HUVEC)の細胞数を、ウシ胎児血清を添加しないコントロール培地(「FBS(−)」)で培養した場合のヒト臍帯由来血管内皮細胞(HUVEC)の細胞数との相対値として、Y軸に示したグラフである。
【図24A】図24Aは、本発明のドレーン廃液を記載された濃度で添加した培地(「drain」)、およびFBSを5%添加した培地(「FBS5%」)で培養した脂肪前駆細胞(ASC)の細胞数を、ウシ胎児血清を添加しないコントロール培地(「FBS(−)」)で培養した場合の線維芽細胞の細胞数との相対値として、Y軸に示したグラフである。
【図24B】図24Bは、本発明のドレーン廃液を記載された濃度で添加した培地(「drain」)、およびFBSを10%添加した培地(「FBS10%」)で培養した脂肪前駆細胞(ASC)の細胞数を、FBSを5%添加した培地(「FBS5%」)で培養したコントロール脂肪前駆細胞(ASC)の細胞数との相対値として、Y軸に示したグラフである。
【図25】図25は、ドレーン廃液採取時期による細胞増殖の差を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0015】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0016】
本明細書において「細胞生理活性物質」および「生理活性物質」(physiologically active substance)は、互換可能に用いられ、細胞または組織に作用する物質をいう。その作用としては、細胞の増殖促進、増殖抑制、分化誘導、分化抑制などが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な細胞生理活性物質としては、サイトカインおよび増殖因子が挙げられるが、これらに限定されない。細胞生理活性物質は、天然に存在するものであっても、合成されたものでもよい。また、細胞生理活性物質は、1種類の物質であっても、2種類以上の物質の混合物であってもよい。好ましくは、生理活性物質は、細胞が産生するものまたはそれと同様の作用を有するものである。本明細書では、生理活性物質はタンパク質形態あるいは他の形態であり得る。実際に作用する時点においては、サイトカインは通常はタンパク質形態である。本発明において、生理活性物質は、人工組織の移植の際に、定着を促進するためなどに使用され得る。
【0017】
本明細書において使用される「サイトカイン」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、細胞から産生され同じまたは異なる細胞に作用する生理活性物質をいう。サイトカインは、一般にタンパク質またはポリペプチドであり、免疫応答の制御作用、内分泌系の調節、神経系の調節、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節作用などを有する。本明細書では、サイトカインはタンパク質形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用する時点においては、サイトカインは通常はタンパク質形態を意味する。
【0018】
本明細書において用いられる「増殖因子」または「細胞増殖因子」とは、本明細書では互換的に用いられ、細胞の増殖を促進または制御する物質をいう。増殖因子は、成長因子または発育因子ともいわれる。増殖因子は、細胞培養または組織培養において、培地に添加されて血清高分子物質の作用を代替し得る。多くの増殖因子は、細胞の増殖以外に、分化状態の制御因子としても機能することが判明している。
【0019】
本明細書において用いられる「細胞増殖用補添物」とは、「増殖因子」または「細胞増殖因子」を含有する、細胞培養培地に添加される物質をいう。
【0020】
サイトカインには、代表的には、インターロイキン類が含まれる。また、サイトカインファミリーは、その対応する受容体の構造に基づいて、クラスIファミリー、クラスIIファミリー、TGF(トランスホーミング増殖因子)ファミリー、TNF(腫瘍壊死因子)ファミリー、増殖因子ファミリー、ケモカインファミリー、Wntファミリーに分類される(わかる実験医学シリーズ、基礎から最新トピックスまでのサイトカインがわかる、羊土社、宮島篤 編、2002年6月30日)。
【0021】
インターロイキン類としては、IL−1〜IL−25まで報告されている。IL−2、3、4、5、6、7、9、11、12、13、15、21、および23、ならびに造血因子(例えば、EPO(エリトロポイエチン)およびG−CSF(顆粒球コロニー刺激因子))は、クラスIファミリーに分類される。IL−10、19、20、および22からなるIL−10ファミリーは、インターフェロンα、βおよびガンマと同様に、クラスIIファミリーに分類される。これらはいずれも4つのαへリックスを有する。IL−8は、MCP、MIP、エオタキシン(Eotaxin)と同様に、ケモカインファミリーに分類される。IL−1およびIL−18は類似の構造を有し、1つのグループをなす。IL−17類似の分子としては、IL−17B、IL−17C、IL−25およびヘルペスウイルスのコードする遺伝子産物HSV13が挙げられ、独自のグループを形成する。
【0022】
TGF−β(トランスホーミング増殖因子−β)は、上皮細胞の腫瘍化に作用する増殖因子である。この分子は、単に増殖因子として作用するだけでなく、増殖阻害や分化誘導などの多様な活性を示す。さらに、これに類似のサイトカインとして、アクチビン、インヒビン、およびBMP(骨形態形成タンパク質)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
TNFファミリーとしては、TNFα、Fasリガンド、RANKL、CD30リガンド、CD40リガンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
サイトカインの増殖因子ファミリーとしては、代表的には、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝実質細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、Ang、Ephリガンド(例えば、Ephrin)のような増殖活性を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
Wntファミリーとしては、Wnt−1〜Wnt−20が挙げられる。
【0026】
サイトカインおよび増殖因子などの生理活性物質は一般に、機能重複現象(redundancy)があることから、他の名称および機能で知られるサイトカインまたは増殖因子であっても、本発明に使用される生理活性物質の活性を有する限り、本発明において使用され得る。また、サイトカインまたは増殖因子は、本明細書における好ましい活性を有してさえいれば、本発明の治療法または医薬の好ましい実施形態において使用することができる。
【0027】
また、本発明に従って調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、細胞生理活性物質を調製するための供給源としても有用である。
【0028】
好ましいサイトカインとしては、PDGFファミリーに属するタンパク質、FGFファミリーに属するタンパク質(例えば、bFGF、FGF−7など)、EGFファミリーに属するタンパク質(例えば、EGF、HB−EGF、アンフィレギュリン(amphiregulin)、TGFαなど)、VEGFファミリーに属するタンパク質、アンジオポイエチン(angiopoietin)ファミリーに属するタンパク質、IGFファミリーに属するタンパク質、スキャッター因子(scatter factor)ファミリーに属するタンパク質(PRGF、HGFなど)、NGF、TGFβスーパーファミリーに属するタンパク質、BMPファミリーに属するタンパク質、CNNファミリー(結合組織増殖因子(CONNECTIVE TISSUE GROWTH FACTOR/システイン−リッチ61(CYSTEINE−RICH 61/腎芽細胞腫過剰発現タンパク質(NEPHROBLASTOMA OVEREXPRESSED)に属するタンパク質、ケモカイン、プロ炎症性サイトカイン(例えば、IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−8、TNFαなど)、GM−CSF、レプチン、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−10など)、MMPファミリーに属するタンパク質(例えば、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ)からなる群から選択される物質が挙げられるが、これらに限定されない。これら細胞生理活性物質の各々は、異なる標的および異なる生物学的活性を有することが周知である。
【0029】
本明細書において、細胞生理活性物質は、以下の周知の方法によって、検出および/または定量が行われるが、これらに限定されない:
(A)抗体を用いる以下のアッセイ:放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫放射分析アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、インサイチュ免疫アッセイ(例えば、コロイド金、酵素または放射性同位体標識を用いる)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、血球凝 集アッセイ)、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、および免疫電気泳動アッセイなどのような技術を用いる競合および非競合アッセイ系。1つの実施形態では、抗体結合が、一次抗体上の標識を検出することによって検出される。別の実施形態では、この一次抗体は、この一次抗体に対する二次抗体または試薬の結合を検出することによって検出される。さらなる実施形態では、この二次抗体が標識される。免疫アッセイにおける結合の検出のための多くの手段が、当該分野で公知であり、そして本発明の範囲内である。
(B)固相に結合した細胞生理活性物質に特異的に結合する抗体と、細胞生理活性物質との結合を検出するアッセイ方法。このアッセイ方法としては、表面プラズモン共鳴の原理を用いて検出する方法、および水晶発振子マイクロバランスの原理を用いて検出する方法、ならびに、固相に結合した抗体と細胞生理活性物質との複合体を遠心力、磁力、電場などによって物理的に分離し、分離された複合体を検出する方法が挙げられるが、これらに限定されない;
(C)細胞生理活性物質レセプターのような細胞生理活性物質と特異的に相互作用する物質に対する、細胞生理活性物質の結合を検出する方法。上記(B)のように種々の検出方法と同様の原理が適用され得る;ならびに
(D)細胞生理活性物質の生物学的活性を検出する方法。例えば、各細胞生理活性物質に特異的なレセプターを発現し、かつ細胞生理活性物質に応答性の細胞を用い、その細胞と細胞生理活性物質との結合を、細胞の応答を指標に検出する方法が挙げられる。各細胞生理活性物質の生物学的活性およびその標的となる細胞は周知である。例えば、PDGF(血小板由来増殖因子)は、間葉系細胞を標的として、その増殖を促進する生物学的活性を有する。bFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)は、塩基性繊維芽細胞増殖因子レセプターを発現する細胞を標的とし、血管新生、細胞増殖の促進、分化誘導などの生物学的活性を有する。VEGF(血管内皮増殖因子)は、胎生期の血管形成に関与する細胞を標的とし、血管形成を促進する生物学的活性を有する。EGF(上皮増殖因子)は、上皮細胞を標的として、その分化・増殖を促進する生物学的活性を有する。従って、例えば、上記の細胞生理活性物質の標的細胞を調製し、試料とその標的細胞を接触させ、上記の生物学的活性が検出されるか否かを調べることによって、試料中の細胞生理活性物質の存在の有無およびその存在量を決定することができる。
【0030】
本明細書において、用語「術後のドレーン廃液」とは、外科手術の後の創腔内に貯留した液体であって、創腔内に挿入された管(例えば、ドレーン)によって除去され得る液体をいう。
【0031】
本明細書において「創部に由来する体液」とは、外科手術以外のみならず、例えば、外科手術以外の創傷によって生じた創腔内に貯留した液体をも包含する。「創部に由来する体液」を創腔内に生じる創傷としては、皮下、筋肉内、胸腔内、腹腔内、頭蓋内に達する手術創、打撲・骨折などの外傷、血腫・漿液腫などを生じる炎症、血管腫(動静脈奇形)・リンパ管腫などの脈管系腫瘍および奇形が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書において「創部の形成」は、例えば、外科手術、および外科手術以外の創傷などによってなされるが、これらに限定されない。
【0033】
「創部に由来する体液」を創腔より取り出す手段は、当該分野において周知である。代表的には、創腔に、排出手段を挿入し、排出手段に陰圧をかけ、創腔内に貯留した液体を取り出すことによって得ることができる。排出手段としては、例えば、管と管の一方の端部が連結されたバッグからなる排出手段が挙げられるが、これに限定されない。管と管の一方の端部が連結されたバッグからなる排出手段を用いる場合、その管の一方の端部は、バッグに連結され、その管の別の一方の端部が創腔内に挿入される。好ましくは、この管と管の一方の端部が連結されたバッグからなる排出手段は、創腔内に挿入される一方の端部以外は、閉鎖回路を形成し、そのため、生体から創部由来の体液を取り出す際に、その体液中への生体外の感染因子(例えば、ウイルスおよび細菌)の混入を生じない。
【0034】
排出手段として使用される、管と管の一方の端部が連結されたバッグからなる排出手段は、その管とバッグが予め連結された状態で供給されても、その管とバッグが連結されることなく供給されてもよい。好ましくは、排出手段は、滅菌された状態で提供される。
【0035】
この排出手段中の管は、ドレーン、排液管、除液管、流出管、排水管とも呼ばれる。この管およびバッグは、滅菌可能であり、かつ、可撓性の部材(例えば、ポリエチレン、シリコーン、およびポリ塩化ビニルなどが挙げられるがこれらに限定されない。)によって形成される。代表的な排出手段としては、J−VAC(登録商標)ドレナージシステム、マノパックドレーン、およびSBバックなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明の「細胞生理活性物質」は、本発明の方法に従って調製された後に、必要に応じてさらに滅菌処理されてもよい。細胞生理活性物質の滅菌方法は周知であり、例えば、フィルターによるろ過、およびγ線滅菌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
また、本発明の「細胞生理活性物質」は、本発明の方法に従って調製された後に、必要に応じてさらに病原体処置方法によって処置されてもよい。細胞生理活性物質中の病原体を処置する方法は周知であり、例えば、濾過滅菌、およびガンマ線滅菌などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書において、細胞生理活性物質の「生物学的活性」とは、細胞生理活性物質が有する任意の活性をいう。細胞生理活性物質の生物学的活性としては、標的細胞に対する作用(例えば、分化促進、増殖促進、免疫細胞(T細胞、B細胞および/またはマクロファージ)の活性化、抗ウイルス効果関連酵素群(例えば、リボヌクレアーゼL)の発現誘導、赤血球の産生促進、血小板の産生促進、アポトーシス、細胞外マトリクスの産生、骨形成誘導、細胞遊走の制御、遺伝子の転写・翻訳・発現の制御、血管形成、脂肪細胞肥大が挙げられるがこれらに限定されない)、ならびに、対応する受容体との結合が挙げられる。
【0039】
本明細書において使用される「固相」とは、抗体のような分子が固定され得る支持体をいう。固相の形状は、平面状、球状、またはその他の形状であってもよい。また、本発明の固相は、ゲル状であってもよい。本発明において表面プラズモン共鳴の原理を用いて検出する場合、固相は、金、銀またはアルミニウムを含む金属薄膜を片面に持つガラス基板の基材であることが好ましい。本発明において水晶発振子マイクロバランスの原理を用いて検出する場合は、周波数変換素子(例えば水晶発振子、表面弾性波素子)を固相として用い、直接受容体を結合させる。水晶板の片面はシリコーンで被覆し、もう一方の面は金電極を施したものを固相として用いる。
【0040】
(細胞生理活性物質の調製法)
本発明の一つの局面において、細胞生理活性物質を含む組成物を調製するための方法であって、
a)創部に由来する体液を得る工程;および
b)体液を用いて、細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程、
を包含する、方法が提供される。この体液としては、血液、リンパ液、浸出液が挙げられる。好ましくは、この体液は、創部からの浸出液であり、さらに好ましくは、従来廃棄されていた術後のドレーン廃液である。この体液を得る手段としては、陰圧、吸引が挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、この手段は、陰圧である。この細胞生理活性物質としては、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法によって調製された組成物は、従来技術から予測された程度を遥かに上回る濃度の細胞生理活性物質を含む。本発明の方法は、必要に応じて、創部を形成する工程を包含する。
【0041】
従って、本発明によって、従来廃棄されていた創部からの浸出液を利用し、細胞生理活性物質を含有する組成物を大量に調製し得る方法が提供される。従って、本発明の方法は、生物学的廃棄物を減少し、かつ大量調製が困難な天然の細胞生理活性物質を大量に調製し得るという有用性を有する。本発明の方法によって、従来、細胞生理活性物質の供給源として使用されていた血清と比較して、約3倍以上、約5倍以上、約8倍以上、約10倍以上、約15倍以上、約20倍以上、約25倍以上、約35倍以上、約50倍以上、約70倍以上、約150倍以上、および約250倍以上の生物学的活性を有する細胞生理活性物質を含有する組成物が調製される。
【0042】
また、本発明の方法によって調製された組成物は、哺乳動物細胞の培養において培養培地に添加される血清の全部または一部を代替する補添物としても、機能し得る。従って、本発明は、創部に由来する体液を用いて調製される、細胞培養のための補添物、そのような補添物を含有する細胞培養培地、およびそのような細胞培養培地を用いる、細胞培養方法を提供する。
【0043】
本発明の組成物の調製方法において、創部に由来する体液を用いて、細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程においては、創部に由来する体液をそのまま添加しても、濃縮および/または精製などの処理を行った後に添加してもよい。
【0044】
本発明の方法によって調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、限外ろ過などの周知の方法によって濃縮され得る。例えば、免疫沈降法、クロマトグラフィー、アフィニティカラム法、ウエスタンブロット、脱水、および凍結乾燥などのような限外ろ過以外の方法であっても、細胞生理活性物質の生物学的活性を損なわない限り、使用し得る。また、本発明の方法によって調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、リン酸バッファー、トリス塩酸バッファー、トリス酢酸バッファー、HEPESバッファー、およびクエン酸ナトリウムバッファーなどの緩衝液によって、その活性を失うことなく希釈され得る。
【0045】
本発明の細胞生理活性物質を含む組成物を得る工程は、体液を被検体から得る工程の、1日後以内、2日後以内、3日後以内、4日後以内、5日後以内、6日後以内、7日後以内、または7日以上であり得る。好ましくは、被検体から得られた体液の変性、不活化を防止するために、1日後以内である。
【0046】
また、好ましくは、本発明の細胞生理活性物質を含む組成物は、無菌的に得られる。必要に応じて、本発明の組成物は、滅菌処理、および/または感染因子(例えば、ウイルス、細菌)処理に供される。滅菌処理は、周知であり、例えば、フィルターろ過(例えば、0.22μm)、ガンマ線滅菌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明において、体液の回収の間の経過時間のために回収した血液が溶血する場合は、遠心分離、限外ろ過などによって、溶血を除去してもよい。遠心分離によって溶血を除去する場合は、100μm、0.22μmのフィルターを用いてそれぞれろ過した後、VIVASPIN20、MWCO1,000,000 PES(VIVASCIENCE社製)を用いて、6000×g、60分間遠心することによって、ヘモグロビンを除去する。
【0048】
本発明の方法において、透析工程において「カルシウム濃度を実質的に保持する」とは、透析前のサンプル中のカルシウム濃度と、実質的に同一のカルシウム濃度を有する透析液を用いて透析することをいう。
【0049】
本発明の方法は、好ましくは、無菌的工程において、無菌的ドレーン廃液を得るものであるため、体外の感染因子に汚染される可能性は極めて低い。無菌的操作は、例えば、クリーンルーム内で排出手段を創部に挿入し、ドレーン廃液を取り出すことによって行われる。また、所望される場合、さらに本発明の組成物に対して、滅菌操作がなされる。
【0050】
本発明の方法によって得られた組成物は細胞生理活性物質を含むため、本発明の1つの局面において、本発明の組成物を細胞培養培地に添加し、そしてその培地で細胞を培養することによって、細胞の分化および/または増殖を制御しながら、所望の細胞を培養することが可能となる。従って、所定の細胞に適した培養培地を選択し、その培養培地に本発明の組成物を添加し、その所定の細胞を培養することにより、その細胞の分化・未分化の状態を制御しつつ培養することが可能となる。例えば、この方法を血球系幹細胞に適用することによって、所望の成熟血球細胞に分化した細胞集団を得ることが可能となる。
【0051】
好ましくは、上記方法において使用する細胞生理活性物質含有組成物は、培養される細胞と同一個体に由来する細胞である。また、上記方法において調製された細胞は、その細胞が由来する宿主と同一の宿主に移植するためのものであっても、その細胞が由来する宿主と異なる宿主に移植するためのものであってもよい。上記細胞の移植は、血管内、筋肉内、腹腔内、胸腔内、皮下および関節内への注射および注入を含む投与の様式を行うことによって、なされ得る。
【0052】
また、本発明の細胞をその組成物が由来する宿主と異なる宿主に移植する場合、必要に応じて、その異なる宿主に対する病原体を処置する工程を行ってもよい。
【0053】
本発明の別の局面において、細胞を補充することにより被検体を処置するための方法であって、
a)創部に由来する体液を得る工程;
b)該体液を用いて、細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程;
c)該組成物の存在下で該細胞を培養する工程;および
d)培養された該細胞を該被検体に注入する工程、
を包含する方法が提供される。
【0054】
本発明の組成物は、細胞生理活性物質を含むため、上記方法によって、所望の分化の程度に制御された細胞が、被検体に注入され、その結果、被検体に不足する特定の細胞集団を補うことが可能となる。
【0055】
本発明の組成物に含有される細胞生理活性物質は、サイトカイン、および/または増殖因子を大量に含有する。この細胞生理活性物質は、生物学的活性として、標的細胞に対する作用、例えば、分化促進、増殖促進、免疫細胞(T細胞、B細胞および/またはマクロファージ)の活性化、抗ウイルス効果関連酵素群(例えば、リボヌクレアーゼL)の発現誘導、赤血球の産生促進、血小板の産生促進、アポトーシス、細胞外マトリクスの産生、骨形成誘導、細胞遊走の制御、遺伝子の転写・翻訳・発現の制御、血管形成、脂肪細胞肥大という作用を有し、さらに、ウイルスなどの感染に対する処置薬、癌の処置薬、免疫増強剤、炎症性疾患治療剤、新血管形成剤、アポトーシスの抑制・誘導のための薬剤、および細胞外マトリックスの産生・分解のための薬剤などとして使用され得る。そのため、創部に由来する体液を用いて、これら疾患を処置するための、細胞生理活性物質を含有する医薬を製造することが可能となる。
【0056】
本発明のさらなる局面において、本発明の方法によって調製された細胞生理活性物質を含む組成物を、細胞増殖を促進するための細胞増殖用補添物として、細胞培養培地に添加し得る。この細胞増殖用補添物を添加する培地は、血清を含む培地であっても、無血清培地であってもよい。本発明の細胞増殖用補添物は、血清の代替的機能を有するため、無血清培地を用いた場合であっても、細胞の増殖が活発に行われる。
【0057】
本発明の細胞生理活性物質含有組成物は、細胞培養培地の補添物としても有用である。本発明の組成物または、創部に由来する体液を、細胞増殖用補添物として使用する場合、細胞培養培地に添加する濃度としては、最終濃度として、体液または組成物が細胞培養培地の0.1%以上、0.2%以上、0.5%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、12%以上、14%以上、または16%以上となるように添加される。
【0058】
本発明に従って、細胞培養培地もまた提供される。本発明の細胞培養培地は、本発明の組成物または、創部に由来する体液を、細胞培養培地の0.1%以上、0.2%以上、0.5%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、12%以上、14%以上、または16%以上含む。必要に応じて、本発明の細胞培養培地は、血清を含んでもよい。
【0059】
本発明の細胞生理活性物質含有組成物を、細胞増殖用補添物として添加する培地としては、任意の哺乳動物細胞培養培地が用いられ得る。
【0060】
(処方)
本発明はまた、有効量の治療剤の被験体への投与による、疾患または障害(例えば、本明細書中に開示される1以上の疾患または障害のいずれかのような)の処置および/または予防の方法を提供する。治療剤は、薬学的に受容可能なキャリア型(例えば、滅菌キャリア)と組み合せた、本発明の組成物を意味する。
【0061】
治療剤を、個々の患者の臨床状態(特に、治療剤単独処置の副作用)、送達部位、投与方法、投与計画および当業者に公知の他の因子を考慮に入れ、医療実施基準(GMP=good medical practice)を遵守する方式で処方および投薬する。従って、本明細書において目的とする「有効量」は、このような考慮を行って決定される。
【0062】
一般的提案として、用量当り、非経口的に投与される治療剤の合計薬学的有効量は、患者体重の、約1μg/kg/日〜10mg/kg/日の範囲にあるが、上記のようにこれは治療的裁量に委ねられる。さらに好ましくは、本発明の細胞生理活性物質について、この用量は、少なくとも0.01mg/kg/日、最も好ましくはヒトに対して約0.01mg/kg/日と約1mg/kg/日との間である。連続投与する場合、代表的には、治療剤を約1μg/kg/時間〜約50μg/kg/時間の投薬速度で1日に1〜4回の注射かまたは連続皮下注入(例えばミニポンプを用いる)のいずれかにより投与する。静脈内用バッグ溶液もまた使用し得る。変化を観察するために必要な処置期間および応答が生じる処置後の間隔は、所望の効果に応じて変化するようである。
【0063】
治療剤を、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与し得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
【0064】
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与され得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
【0065】
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、適切なポリマー物質(例えば、成形品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態の半透過性ポリマーマトリックス)、適切な疎水性物質(例えば、許容品質油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、および貧可溶性誘導体(例えば、貧可溶性塩)を包含する。
【0066】
徐放性マトリックスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら、Biopolymers 22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15: 167−277(1981)、およびLanger,Chem.Tech.12:98−105(1982))、エチレンビニルアセテート(Langerら、同書)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。
【0067】
徐放性治療剤はまた、リポソームに包括された本発明の治療剤を包含する(一般に、Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(編),Liss,New York,317−327頁および353−365(1989)を参照のこと)。治療剤を含有するリポソームは、それ自体が公知である方法により調製され得る:DE3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688−3692(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030−4034(1980);EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,949;EP142,641;日本国特許出 願第83−118008号;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号ならびにEP第102,324号。通常、リポソームは、小さな(約200〜800Å)ユニラメラ型であり、そこでは、脂質含有量は、約30モル%コレステロールよりも多く、選択された割合が、最適治療剤のために調整される。
【0068】
なおさらなる実施態様において、本発明の治療剤は、ポンプにより送達される(Langer、前出;Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら、Surgery 88:507(1980);Saudekら、N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。
【0069】
他の制御放出系は、Langer(Science 249:1527−1533(1990))による総説において議論される。
【0070】
非経口投与のために、1つの実施態様において、一般に、治療剤は、それを所望の程度の純度で、薬学的に受容可能なキャリア、すなわち用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、かつ処方物の他の成分と適合するものと、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で混合することにより処方される。例えば、この処方物は、好ましくは、酸化、および治療剤に対して有害であることが知られている他の化合物を含まない。
【0071】
一般に、治療剤を液体キャリアまたは微細分割固体キャリアあるいはその両方と均一および緊密に接触させて処方物を調製する。次に、必要であれば、生成物を所望の処方物に成形する。好ましくは、キャリアは、非経口的キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性ビヒクルもまた、リポソームと同様に本明細書において有用である。
【0072】
キャリアは、等張性および化学安定性を高める物質のような微量の添加剤を適切に含有する。このような物質は、用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、このような物質としては、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸またはその塩類のような緩衝剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンのようなアミノ酸;セルロースまたはその誘導体、ブドウ糖、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン;および/またはポリソルベート、ポロキサマーもしくはPEGのような非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0073】
治療剤は、代表的には約0.1mg/ml〜100mg/ml、好ましくは1〜10mg/mlの濃度で、約3〜8のpHで、このようなビヒクル中に処方される。前記の特定の賦形剤、キャリアまたは安定化剤を使用することにより、ポリペプチド塩が形成されることが理解される。
【0074】
治療的投与に用いられるべき任意の薬剤は無菌状態であり得る。滅菌濾過膜(例えば0.2ミクロンメンブレン)で濾過することにより無菌状態は容易に達成される。一般に、治療剤は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下用注射針で穿刺可能なストッパー付の静脈内用溶液バッグまたはバイアルに配置される。
【0075】
治療剤は、通常、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに、水溶液または再構成するための凍結乾燥処方物として貯蔵される。凍結乾燥処方物の例として、10mlのバイアルに、滅菌濾過した1%(w/v)治療剤水溶液5mlを充填し、そして得られる混合物を凍結乾燥する。凍結乾燥した治療剤を、注射用静菌水を用いて再構成して注入溶液を調製する。
【0076】
本発明はまた、本発明の治療剤の1つ以上の成分を満たした一つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。さらに、治療剤を他の治療用化合物と組み合わせて使用し得る。
【0077】
本発明の治療剤は、単独または他の治療剤と組合わせて投与され得る。本発明の治療剤と組合わせて投与され得る治療剤としては、化学療法剤、抗生物質、ステロイドおよび非ステロイドの抗炎症剤、従来の免疫治療剤、他のサイトカインおよび/または増殖因子が挙げられるが、これらに限定されない。組合わせは、例えば、混合物として同時に;同時にまたは並行してだが別々に;あるいは経時的のいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療用混合物として共に投与されるという提示、およびまた、組み合わされた薬剤が、別々にしかし同時に、例えば、同じ個体に別々の静脈ラインを通じて投与される手順を含む。「組み合わせて」の投与は、一番目、続いて二番目に与えられる化合物または薬剤のうち1つの別々の投与をさらに含む。
【0078】
特定の実施態様において、本発明の治療剤は、抗レトロウイルス薬剤、ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、および/またはプロテーアーゼインヒビターとの組み合わせで投与される。
【0079】
さらなる実施態様において、本発明の治療剤は、抗ウイルス剤と組み合わせて投与され得る。本発明の治療剤と組み合わせて投与され得る抗ウイルス剤として は、アクリクロビル、リバビリン、アマンタジンおよびレマンチジン(remantidine)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
さらなる実施態様において、本発明の治療剤は、抗生物質と組合わせて投与される。使用され得る抗生物質としては、アミノグリコシド系抗生物質、ポリエン系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、セフェム系抗生物質、ペプチド系抗生物質、マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
さらなる実施態様において、本発明の治療剤は、単独または抗炎症剤と組合わせて投与される。本発明の治療剤とともに投与され得る抗炎症剤としては、グルココルチコイドおよび非ステロイド抗炎症剤、アミノアリールカルボン酸誘導体、アリール酢酸誘導体、アリール酪酸誘導体、アリールカルボン酸、アリールプロピオン酸誘導体、ピラゾール、ピラゾロン、サリチル酸誘導体、チアジンカルボキサミド、e−アセトアミドカプロン酸、S−アデノシルメチオニン、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン(amixetrine)、ベンダザック、ベンジドアミン、ブコローム、ジフェンピラミド、ジタゾール、エモル ファゾン、グアイアズレン、ナブメトン、ニメスリド、オルゴテイン、オキサセプロール、パラニリン、ペリゾキサル、ピフオキシム、プロキアゾン、プロキサゾール、およびテニダップが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
別の実施形態において、本発明の組成物は、癌の化学療法剤と組合わせて投与される。本発明の治療剤とともに投与され得る化学療法剤としては、抗生物質誘導体(例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、およびダクチノマイシン);抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン);抗代謝物(例えば、フルオロウラシル、5−FU、メトトレキサート、フロックスウリジン(floxuridine)、インターフェロンα−2b、グルタミン酸、プリカマイシン、メルカプトプリン、および6−チオグアニン);細胞傷害剤(例えば、カルムスチン、BCNU、ロムスチン、CCNU、シトシンアラビノシド、シクロホ スファミド、エストラムスチン、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シス−プラチン、およびビンクリスチンスルフェー ト);ホルモン(例えば、メドロキシプロゲステロン、エストラムスチンリン酸ナトリ ウム、エチニルエストラジオール、エストラジオール、メゲストロールアセテート、メチルテストステロン、ジエチルスチルベストールジホスフェート、クロロ トリアニセン、およびテストラクトン);ナイトロージェンマスタード誘導体(例えば、メファレン、クロランブシル、メクロレタミン(ナイトロージェンマス タード)およびチオテパ);ステロイドおよび組合わせ(例えば、ベタメタゾンリン酸ナトリウム);ならびにその他(例えば、ジカルバジン、アスパラギナー ゼ、ミトタン、ビンクリスチンスルフェート、ビンブラスチンスルフェート、およびエトポシド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
特定の実施形態において、本発明の治療剤は、CHOP(シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレジニゾン)と組み合わせて投与 されるか、CHOPの成分の任意の組み合わせで投与される。別の実施形態において、本発明の治療剤は、Rituximabと組み合わせて投与される。さらなる実施形態において、本発明の治療剤は、RituxmabおよびCHOPと共に、またはRituxmabおよびCHOPの成分の任意の組み合わせと共に投与される。
【0084】
さらなる実施形態において、本発明の治療剤は、他の治療レジメまたは予防レジメ(例えば、放射線治療)と組合わせて投与される。
【0085】
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0086】
(術後のドレーン廃液の調製方法)
外科手術終了の際、創部に、ポリエチレン製の透明な内径3−10mm程度の管の一端を留置した。管の別の一端は体外に出ており、その末端に陰圧がかかる簡単なプラスチックバッグが備えられている。バッグの大きさは、代表的には150〜300mL程度である。陰圧の圧力としては、代表的には40〜60mmHg程度であり、バッグ内のプラスチックばねもしくは膨らませた風船の復元力を利用して持続的に陰圧がかかるような機構であるが、創部の部位、および大きさに依存して、適宜調整し得る。
【0087】
予め了承を得た患者から、術後のドレーン廃液を、創部に浸出した浸出液および血液を含む体液として回収した。具体的には、バッグ陰圧によって、術後のドレーン廃液を管を通じて体外のバッグに収納した。この管およびバッグからなる排出手段は、すべて閉鎖回路であり、外部と内部が遮断されている。そのため、創部が感染因子によって汚染されていない限り、排出された体液が細菌感染を受けることはない。
【0088】
毎日、そのバッグ中に収納された液体を、回収し、量を計測した。色は出血がない場合は黄色(血清のような黄色)、出血が多いほど赤色となる。体液の回収の間の経過時間のために、回収した血液は溶血した。毎日、回収されたサンプル中の増殖因子としてbFGF、HGF、KGF、IGF−1、TGF−β1、VEGF、EGF、PDGF−BB、MMP、EGFを測定した。
【0089】
以下の実施例において、サンプルとして、300rpm、10分間遠心を行い、凝血塊などを除去し、−80℃で凍結保存した、以下の被検体由来のサンプルを用いた。
【0090】
必要に応じて、上記組成物調製時に混入するヘモグロビンを、100μm、0.22μmのフィルターでそれぞれろ過した後、VIVASPIN 1,000,000MWCOを用い、6000rpm、10min遠心して取り除くことができる。
【0091】
【表1】

【実施例2】
【0092】
(術後のドレーン廃液中に含まれる細胞生理活性物質の測定)
術後のドレーン廃液中に含まれる、PDGF、bFGF、VEGF、EGF、TGF−β、KGF、IL−6、IL−8、およびMMP−1を測定し、FBS(ウシ胎仔血清;SIGMA製、BIOWEST製)およびヒト血清と比較した。
【0093】
(1)ヒト血清の調製
患者前腕より400mlの静脈血を採取し、4200rpm、5分間遠心し、赤血球を除去する。その後、4200rpm、15分間遠心し、凝固因子を除去した。この遠心によって調製された血漿100mlに対し、CaCl0.29g、トロンビン200単位を混入した。1晩4℃の冷蔵庫へ保存し、凝固した血漿を1500回転、10分遠心し、液体部分を血清として採取した。
【0094】
上記の方法で、ヒト血清14症例14検体よりヒト血清を調製し、その血清中に含まれる各因子の量を測定したところ、平均値でbFGF 19.1pg/ml、EGF 17.6pg/ml、PDGF 90.9pg/ml、VEGF 33.9pg/ml、HGF 575.5pg/ml、KGF測定感度以下、TGF−β測定感度以下、と少量のみが認められた。
【0095】
(2)PDGFの測定
PDGFの測定には、ANALYZA human PDGF−BB Immunoassay(TECHNE社製Catalog No.8062)を使用した。具体的には、試料をPDGF Rβ/Fcキメラタンパクでコートされたポリスチレンディッシュ上でインキュベートし、PDGF−BBタンパクを結合させた。その後、西洋ワサビぺルオキシダーゼに連結した抗ヒトPDGF−BBポリクローナル抗体を反応させ、酵素反応による発色を標準曲線に対応させ、PDGF量を定量した。その結果を、図1に示す。
【0096】
予め了承を得た9人の患者から得た外科手術後のドレーン廃液中には、平均約280pg/mlのPDGFが含まれていた(図1)。最高値は、約1000pg/mlであった。この量は、ヒト血清と比較して、約12倍量であった。さらに、術後3〜5日目にわたり、毎日PDGF測定を行った患者では、ドレーン廃液中の濃度が、経時的に漸増していった。
【0097】
従って、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、間葉系細胞の増殖を促進する組成物として有用である。さらに、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、PDGFを調製するための供給源でもある。
【0098】
(3)bFGFの測定
bFGFの測定には、ANALYZA human FGF basic Immunoassay(TECHNE社製Catalog No.8065)を使用した。具体的には、試料を抗ヒトbFGFマウスモノクローナル抗体でコートされたポリスチレンディッシュ上でインキュベートし、bFGFタンパクを結合させた。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結した抗ヒトbFGFマウスモノクローナル抗体を反応させ、その後、酵素反応による発色を標準曲線に対応させ、bFGF量を定量した。
【0099】
予め了承を得た6人の患者から得た外科手術後のドレーン廃液中には、平均約160pg/mlのbFGFが含まれていた(図2)。最高値は、約800pg/mlであった。この量は、ヒト血清と比較して、約40倍量であった。
【0100】
従って、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、血管新生、細胞増殖の促進、および/または分化誘導を促進する組成物として有用である。さらに、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、bFGFを調製するための供給源でもある。
【0101】
(4)VEGFの測定
VEGFの測定には、ANALYZA human VEGF Immunoassay(TECHNE社製Catalog No.8059)を使用した。具体的には、試料を抗VEGFマウスポリクローナル抗体でコートされたポリスチレンディッシュ上でインキュベートし、VEGFタンパクを結合させた。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結した抗ヒトVEGFマウスポリクローナル抗体を反応させ、その後、酵素反応による発色を標準曲線に対応させ、VEGF量を定量した。
【0102】
予め了承を得た7人の患者から得た外科手術後のドレーン廃液中には、平均約170pg/mlのVEGFが含まれていた(図3)。最高値は、約4000pg/mlであった。この量は、ヒト血清と比較して、約130倍量であった。さらに、術後3〜5日目にわたり、毎日VEGF測定を行った患者では、ドレーン廃液中の濃度が、経時的に漸増していった。
【0103】
従って、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、血管形成を促進する組成物として有用である。さらに、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、VEGFを調製するための良好な供給源でもある。
【0104】
(5)EGFの測定
EGFの測定には、ANALYZA human EGF Immunoassay(TECHNE社製Catalog No.80245)を使用した。具体的には、試料を抗ヒトEGFマウスモノクローナル抗体でコートされたポリスチレンディッシュ上でインキュベートし、EGFタンパクを結合させた。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結した抗ヒトEGFマウスポリクローナル抗体を反応させ、その後、酵素反応による発色を標準曲線に対応させ、EGF量を定量した。
【0105】
予め了承を得た5人の患者から得た外科手術後のドレーン廃液中には、平均約84pg/mlのEGFが含まれていた(図4)。最高値は、約370pg/mlであった。この量は、ヒト血清と比較して、約20倍量であった。
【0106】
従って、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、上皮細胞を分化・増殖させる組成物として有用である。さらに、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、EGFを調製するための良好な供給源でもある。
【0107】
(6)HGFの測定
HGFの測定は、以下のように行った。試料を抗ヒトHGFマウスモノクローナル抗体でコートされたポリスチレンディッシュ上でインキュベートし、HGFタンパクを結合させた。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結した抗ヒトHGFマウスポリクローナル抗体を反応させ、その後、酵素反応による発色を標準曲線に対応させ、HGF量を定量した。
【0108】
予め了承を得た患者から得た外科手術後のドレーン廃液中には、最高値で、約580pg/mlのHGFを含んでいた。この量は、ヒト血清と比較して、約80倍量であった。
【0109】
従って、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、肝細胞を分化・増殖させる組成物として有用である。さらに、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、HGFを調製するための良好な供給源でもある。
【0110】
(7)KGF(角質細胞増殖因子)の測定
KGFの測定は、以下のように行った。試料を抗ヒトKGFマウスモノクローナル抗体でコートされたポリスチレンディッシュ上でインキュベートし、KGFタンパクを結合させた。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結した抗ヒトKGFマウスポリクローナル抗体を反応させ、その後、酵素反応による発色を標準曲線に対応させ、KGF量を定量した。
【0111】
予め了承を得た15人の患者から得た外科手術後のドレーン廃液中には、平均約330pg/mlのKGFが含まれていた(図5)。最高値は、約1000pg/mlであった。血清中には、検出可能なKGFが存在しなかったことから、ドレーン廃液は、KGFの有用な供給源であることが理解できる。さらに、術後1〜3日目にわたり、KGF測定を行った患者では、ドレーン廃液中の濃度が、経時的に漸増していった。また、別の患者のドレーン廃液について、術後20〜25日目にわたり、KGF測定を行った場合にもまた、経時的に漸増が観察された。
【0112】
従って、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、角質細胞などの細胞の増殖を促進する組成物として有用である。さらに、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、KGFを調製するための良好な供給源でもある。
【0113】
(8)TGF−βの測定
TGF−βの測定は、以下のように行った。試料を抗ヒトTGF−βマウスモノクローナル抗体でコートされたポリスチレンディッシュ上でインキュベートし、TGF−βタンパクを結合させた。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結した抗ヒトTGF−βマウスポリクローナル抗体を反応させ、その後、酵素反応による発色を標準曲線に対応させ、TGF−β量を定量した。
【0114】
予め了承を得た15人の患者から得た外科手術後のドレーン廃液中には、平均約74pg/mlのTGF−βが含まれていた(図6)。最高値は、約170pg/mlであった。血清中には、検出可能なTGF−βが存在しなかったことから、ドレーン廃液は、TGF−βの有用な供給源であることが理解できる。
【0115】
従って、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、上皮細胞の増殖抑制、創傷治癒の促進をする組成物として有用である。さらに、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、TGF−βを調製するための良好な供給源でもある。
【0116】
(9)IL−6の測定
IL−6の測定は、以下のように行った。試料を抗ヒトIL−6マウスモノクローナル抗体でコートされたポリスチレンディッシュ上でインキュベートし、IL−6タンパクを結合させた。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結した抗ヒトIL−6マウスポリクローナル抗体を反応させ、その後、酵素反応による発色を標準曲線に対応させ、IL−6量を定量した。
【0117】
予め了承を得た10人の患者から得た外科手術後のドレーン廃液中には、平均約460pg/mlのIL−6が含まれていた(図7)。従って、ドレーン廃液は、IL−6の有用な供給源であることが理解できる。さらに、術後1〜2日目にわたり、IL−6測定を行った患者では、ドレーン廃液中の濃度が、経時的に漸増していった。
【0118】
従って、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、B細胞の抗体産生細胞への分化、免疫応答の促進などを行う組成物として有用である。さらに、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、IL−6を調製するための良好な供給源でもある。
【0119】
(10)IL−8の測定
IL−8の測定は、以下のように行った。試料を抗ヒトIL−8マウスモノクローナル抗体でコートされたポリスチレンディッシュ上でインキュベートし、IL−8タンパクを結合させた。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結した抗ヒトIL−8マウスポリクローナル抗体を反応させ、その後、酵素反応による発色を標準曲線に対応させ、IL−8量を定量した。
【0120】
予め了承を得た14人の患者から得た外科手術後のドレーン廃液中には、平均約960pg/mlのIL−8が含まれていた(図8)。従って、ドレーン廃液は、IL−8の有用な供給源であることが理解できる。さらに、術後1〜3日目にわたり、IL−8測定を行った患者では、ドレーン廃液中の濃度が、経時的に漸増していった。
【0121】
従って、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、好中球の動員、好中球の活性化、免疫応答の促進、好中球減少症の治療薬製造のための組成物として有用である。さらに、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、IL−8を調製するための良好な供給源でもある。
【0122】
(11)MMP−1の測定
MMP−1の測定は、以下のように行った。試料を抗ヒトMMP−1マウスモノクローナル抗体でコートされたポリスチレンディッシュ上でインキュベートし、MMP−1タンパクを結合させた。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結した抗ヒトMMP−1マウスポリクローナル抗体を反応させ、その後、酵素反応による発色を標準曲線に対応させ、MMP−1量を定量した。
【0123】
予め了承を得た10人の患者から得た外科手術後のドレーン廃液中には、平均約30pg/mlのMMP−1が含まれていた(図9)。従って、ドレーン廃液は、MMP−1の有用な供給源であることが理解できる。さらに、術後1〜3日目にわたり、MMP−1測定を行った患者では、ドレーン廃液中の濃度が、経時的に漸増していった。
【0124】
従って、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、細胞外マトリクスの産生・分解、細胞外マトリクス異常に関連する疾患の診断・処置、アポトーシスの抑制・誘導、リンパ節転移の診断・処置のための組成物として有用である。さらに、本発明の方法で調製された細胞生理活性物質を含む組成物は、MMP−1を調製するための良好な供給源でもある。
【0125】
(12)まとめ
術後の創部における炎症反応、創傷治癒反応に起因して、ドレーン廃液として回収された体液中には活発に活動する炎症細胞群、血小板から放出されるサイトカイン、増殖因子群が高濃度で含まれていた。このような高濃度の細胞生理活性物質、特にVEGF、EGFが創部の浸出液中に高濃度で存在することは、従来全く予測されていなかった。従って、本発明のような簡便な方法で、ヒトの天然型の細胞生理活性物質が大量に調製できるということは、本発明の顕著な効果の1つである。さらに、本発明のドレーン廃液は、同一の被検体から数日〜数週間にわたって回収することができる。従って、本発明のさらなる効果としては、単一の個体から得られる細胞生理活性物質すなわち、均質な細胞生理活性物質が大量に得られる点にある。
【実施例3】
【0126】
(ドレーン滲出液の生化学的特徴付け)
形成外科手術症例20症例の創部に留置した吸引ドレーンから連日滲出液を採取し、58検体を得た。このうち、のべ3日以上滲出液を採取できた6例31検体につき、生化学特徴付けを行った。また、手術症例とは別の患者14例より採取した血液より血清を生成し、その生化学特徴をドレーン滲出液と比較した。
【0127】
【表2】

TP=総タンパク質、Alb=アルブミン、Na=ナトリウム
Cl=クロライド、K=カリウム、Ca=カルシウム、Fe=鉄。
【0128】
総タンパク、アルブミンは、血清の約50%程度と低い値を示し、電解質はほぼ同程度の値を示した。カリウム(K)はやや高めであったが、静脈採血時の基準値以内の値である。それに比較し、鉄(Fe)は約18倍と高値を示した。また、Fe濃度は術直後に高く、経時的に徐々に低下していった(データ示さず)。このことからも推察されるように、Fe濃度は浸出液中の赤血球数をおおむね反映するものと考えられる。
【実施例4】
【0129】
(ドレーン滲出液に含まれる増殖因子、酵素の経時的変化)
検体に含まれるb−FGF、EGF、PDGF、TGF−β、VEGF、KGF、HGF、IGF−1、IL−6、およびIL−8の濃度をELISA法にて測定した。
【0130】
のべ3日以上、滲出液を採取できた6例(63M=63歳男性、38F=38歳女性、31F=31歳女性、23F=23歳女性、57F=57歳女性)について、各増殖因子の経時的変化を追跡した。各増殖因子の測定方法は、実施例2と同様に行った。各増殖因子についての結果を、図10A〜図19Aに示す。X軸において、「ope」は、外科手術中に採取された試料を示す(通常、手術開始から1〜2時間経過後)。「0」は、手術後の帰室後に採取された試料を示す(通常、手術開始から数時間経過後)。「1〜7」は、手術後の日数を示す。Y軸の数値は、増殖因子の濃度を示す。
【0131】
手術当日および術後1日目の12例17検体(「D(0〜1)」として示す)、ならびに術後5日および6日目(「D(5〜6)」として示す)の6例につき、血液より調整した14例の血清(「serum」として示す)を対照群として、同様の測定を行い比較した。各増殖因子についての結果を、図10B〜図19Bに示す。Y軸の数値は、増殖因子の濃度を示す。
【0132】
(b−FGF、EGF、PDGF、TGF−β)
b−FGFは、術直後より大量に放出されるが、術後3日頃には、ほとんど検出されなくなった(図10A)。また、図10Bの棒グラフから、術後早期の滲出液には、血清に比較し300倍以上の大量のbFGFが含まれるが、術後5〜6日にはほとんど血清中と変わらない濃度に低下したことがわかる。EGF(図11AおよびB)、PDGF(図12AおよびB)、TGF−β(図13AおよびB)においても同様の傾向が観察された。
【0133】
(VEGF、KGF、HGF)
VEGFは、血清中にはほとんど認められなかった。前4者(b−FGF、EGF、PDGF、およびTGF−β)とは異なり、術後早期にはあまり検出されなかったが(図14A)、数日以内に濃度が血清の200倍以上にまで上昇した(図14B)。KGF(図15AおよびB)、およびHGF(図16AおよびB)は、VEGFと同様の変化を示した。
【0134】
(IGF−1)
IGF−1は、血清に高濃度に認められるが、これはソマトメジンとして知られている。血清から創部浸出液に移行するようであり、1/2程度の値が持続する(図17AおよびB)。
【0135】
(IL−6およびIL−8)
IL−6は、血清中では検出されなかったが、手術後0〜1日において、大量に放出された(図18A)。また、その後、手術後5〜6日であっても、放出は、持続した(図18B)。IL−8も同様の放出パターンを示した。IL−8は、血清中では検出されなかったが、手術後0〜1日において、大量に放出され(図19A)、その後、手術後5〜6日では、放出量はさらに増加した(図19B)。
【0136】
本発明において、創部の浸出液中に見出された各種増殖因子は、その放出パターンが異なることが見出された。従来予測されたなかったこの知見に基づいて、所望の増殖因子を高収率で回収するのに適切な回収方法を決定することができる。例えば、b−FGF、EGF、PDGF、およびTGF−βは、手術後0〜1日目に回収した創部の浸出液中から調製すべきである。VEGF、KGF、およびHGFは、手術後0〜1日目に回収した創部の浸出液中から調製可能であるが、手術後2日以降、例えば、手術後2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、または7日目に回収した創部の浸出液中から調製することがより好ましい。IGF−1、IL−6およびIL−8の創部の浸出液中の濃度は、手術後の経過時間に、あまり影響されないようである。
【0137】
上記放出パターンに基づいて、本発明のような簡便な方法で、ヒトの天然型の細胞生理活性物質が大量に調製できる。
【実施例5】
【0138】
(本発明の組成物の細胞増殖用補添物としての使用)
哺乳動物細胞の培養には、単なる栄養源のみならず、種々の増殖因子、ホルモン、および/またはサイトカインが必要である。そのため、一般には、ウシ由来の血清(例えば、FBS)や動物由来内分泌臓器抽出物(例えばウシ脳下垂体エキス)を培地に添加して細胞培養が行われる。さらに、動物細胞(もしくは細胞株)によるフィーダー細胞との混合培養や動物由来細胞外マトリックスをコーティングした培養皿が用いられたりする。異種の血清、臓器エキスや細胞を用いた場合にはその血清中に混入するウイルスのような感染因子による感染のリスクを検証する必要があるため、臨床応用のためには安全性の検証が必要になる。そのような安全性検証を避けるためには、無血清培地で無コーティングで単独培養を用いることが好ましい。この点、血清を含まない合成培地および半合成培地も実用化されているが、細胞増殖効率および物質生産効率という点では、現在使用されている血清や臓器エキスを添加した培地に劣る。
【0139】
この問題は、培養細胞によって生産された物質を薬物として投与する場合、ならびに培養細胞自身を薬物として投与する場合、特に顕著になる。しかし、この問題は、その薬物を投与される被検体由来の細胞生理活性物質を含む培地を用いることによって解消され得る。また他家移植の場合でも、ヒト由来の天然生理活性物質を用いることにより、有効性を維持し、もしくは高めつつ、安全な利用を実現し得る。なぜなら、異種由来物質を用いることによるウイルスなどの感染因子による感染を防ぎつつ、かつ高効率での物質生産が可能となるからである。
【0140】
そこで、本発明の方法を用いて調製した、細胞生理活性物質を含む組成物が、細胞培養において血清代替物としての細胞増殖用補添物となり得るか否かについて、検討した。
【0141】
(1.ドレーン廃液の、細胞培養培地添加物としての増殖促進効果)
実施例1に記載の方法を用いて得られたドレーン廃液の原液、およびFBSを、所定の濃度でM199細胞培養培地に添加し、37℃、5%CO条件下でPLA細胞を培養した。培養開始の3日後、5日後、および7日後に、その増殖を570nmの吸光度を用いて、測定した。
【0142】
その結果、M199培地に5%FBSと1%のドレーン廃液原液を加えた場合、M199培地に10%FBSを加えた場合よりも、PLA細胞の増殖が促進された。この結果は、ドレーン廃液が、哺乳動物細胞の培養培地の補添物として非常に有用であり、その添加量あたりの効果は、FBSを上回るものであることを示す(図20)。M199培地に添加するドレーン廃液原液の量を1%から10%に増加すると、その増殖促進効果はさらに増加した。
【0143】
(2.脱塩処理したドレーン廃液の、細胞培養培地添加物としての機能)
ドレーン廃液をヘパリンカラムクロマトグラフィー(ハイトラップ脱塩用カラム、ファルマシア社)によって脱塩処理し、その細胞培養培地添加物としての増殖促進効果について試験した。その結果、5mlの5%FBS含有M199培地に対して、脱塩処理後のドレーン廃液を100μlおよび1000μl添加した場合、細胞培養培地添加物としての増殖促進効果が確認された(図21)。
【0144】
(3.血清代替物としてのドレーン滲出液の使用)
血清に比べ増殖因子を大量に含む滲出液は、培養細胞の増殖において、血清代替物として使用可能ではないかと考えた。そこで、ウシ胎児血清を添加した培地、添加しない培地に、さらにドレーン浸出液を添加し、線維芽細胞、ヒト臍帯由来血管内皮細胞(HUVEC)、脂肪前駆細胞(ASC)の増殖率を検討した。
【0145】
ドレーン滲出液は、23歳から63歳までの患者6名、平均42.4歳のドレーン滲出液のうち、術当日、または1日目のドレーン滲出液を、実施例1の方法によって調製した。線維芽細胞の培養にはDMEM培地を、ヒト臍帯由来血管内皮細胞にはEMB-2培地を、脂肪前駆細胞の培養にはM199培地を用いた。ドレーン廃液は混合せず、1名単独の検体を培地に混入し、培地を形成した。6mmデッィシュにそれぞれ5万個の細胞を播種し、3mLの培地を混入し、3日目、および5日目に培地交換をした後、7日目に細胞数をカウントした。それぞれの条件につき、3枚のシャーレで培養を行い、その平均値をとった。6検体につき同様の培養を行った。
【0146】
(3.1.線維芽細胞の増殖)
線維芽細胞は血清を添加しないとほとんど増殖しない細胞であるが、実施例1に記載の方法で調製した本発明のドレーン滲出液を添加することにより、細胞増殖率は増加し、そして、ウシ胎児血清を添加しない場合であっても細胞増殖を促進することができた。また、5%FBSが添加されたDMEM培地にさらにドレーン滲出液を添加することによって、さらに増殖率を伸ばすことができた。1つの条件につき6検体の平均値をとりデータをまとめ、ドレーン滲出液添加による細胞増殖への影響につき検討した。結果を図22Aおよび図22Bに示す。
【0147】
図22A中、「FBS(−)」は、ウシ胎児血清を添加しないコントロールであり、その値を「1」で示した。図22A中、「drain」は、本発明のドレーン廃液を記載された濃度で添加した培地を示し、「FBS5%」は、FBSを5%添加した培地を示す。これら培地での細胞数を、コントロールとの相対値として、Y軸に示した。この結果は、本発明のドレーン廃液が血清の代替物として機能したことを実証する。
【0148】
図22B、「FBS5%」は、5%ウシ胎児血清を添加し、本発明のドレーン廃液を添加しないコントロールであり、その値を「1」で示した。図22B中、「drain」は、本発明のドレーン廃液を記載された濃度で添加した培地を示し、「FBS10%」は、FBSを10%添加し、本発明のドレーン廃液を添加しない培地を示す。これら培地での細胞数を、コントロールとの相対値として、Y軸に示した。この結果は、本発明のドレーン廃液が、血清による細胞増殖をさらに増強する効果を有したことを実証する。
【0149】
また、ドレーン廃液を添加した培地を添加しなかった培地における線維芽細胞の形態は、同一であった(データ示さず)。
【0150】
(3.2.ヒト臍帯由来血管内皮細胞(HUVEC)の増殖)
HUVECは、無血清では全く増殖しない細胞である。しかし、実施例のドレーン廃液の添加により、血清を添加することなく増殖させることができた。1つの条件につき6検体の平均値をとりデータをまとめ、ドレーン滲出液添加による細胞増殖への影響につき検討した。結果を図23に示す。
【0151】
図23中、「FBS(−)」は、ウシ胎児血清を添加しないコントロールであり、その値を「1」で示した。図23中、「drain」は、本発明のドレーン廃液を記載された濃度で添加した培地を示し、「FBS1%」は、FBSを1%添加した培地を示す。これら培地での細胞数を、コントロールとの相対値として、Y軸に示した。この結果は、本発明のドレーン廃液が血清の代替物として機能し、血清を添加することなくHUVECを増殖させたことを実証する。
【0152】
また、ドレーン廃液を添加した培地を添加しなかった培地におけるHUVECの形態は、同一であった(データ示さず)。
【0153】
(3.3.脂肪前駆細胞(ASC)の増殖)
脂肪前駆細胞(ASC)は、無血清でもある程度の増殖を認められる細胞である。しかし、本発明のドレーン滲出液の添加により、さらに増殖率が増加した。また、5%FBSを添加した培地にさらにドレーン滲出液を添加すると、ドレーン滲出液を5%添加したもの(すなわち、5%FBS+5%ドレーン廃液)では、10%FBSよりも高い増殖率を認めた。1つの条件につき6検体の平均値をとりデータをまとめ、ドレーン滲出液添加による細胞増殖への影響につき検討した。結果を図24Aおよび図24Bに示す。
【0154】
図24A中、「FBS(−)」は、ウシ胎児血清を添加しないコントロールであり、その値を「1」で示した。図24A中、「drain」は、本発明のドレーン廃液を記載された濃度で添加した培地を示し、「FBS5%」は、FBSを5%添加した培地を示す。これら培地での細胞数を、コントロールとの相対値として、Y軸に示した。この結果は、本発明のドレーン廃液が血清の代替物として機能したことを実証する。
【0155】
図24B中、「FBS5%」は、5%ウシ胎児血清を添加し、本発明のドレーン廃液を添加しないコントロールであり、その値を「1」で示した。図24B中、「drain」は、本発明のドレーン廃液を記載された濃度で添加した培地を示し、「FBS10%」は、FBSを10%添加し、本発明のドレーン廃液を添加しない培地を示す。これら培地での細胞数を、コントロールとの相対値として、Y軸に示した。この結果は、本発明のドレーン廃液が、血清による細胞増殖をさらに増強する効果を有したことを実証する。
【0156】
また、ドレーン廃液を添加した培地を添加しなかった培地における脂肪前駆細胞(ASC)の形態は、同一であった(データ示さず)。
【0157】
(3.4.ドレーン廃液採取時期による細胞増殖の差)
上記3.1.〜3.3.のデータは、術当日または術後1日目のドレーン滲出液を添加して得ているが、術後後期のドレーン滲出液に含まれる成長因子の組成は、前期のものと異なる。そこで、術後後期のドレーンを添加することにより、増殖率に差が出るかの検討を行った。ドレーン滲出液は、38歳女性の0日目の検体と、5日目の検体を用いた。結果を図25に示す。
【0158】
図25中、「FBS(−)」は、ウシ胎児血清を添加しないコントロールである。図25中、「drain」は、本発明のドレーン廃液を記載された濃度で添加した培地を示し、「FBS5%」および「FBS10%」は、ウシ胎児血清(FBS)を5%および10%添加した培地を示す。これら培地での細胞数を、Y軸に示した。この結果は、脂肪前駆細胞(ASC)については、0日目のドレーン滲出液を添加したもののほうが、増殖率が高かったことを実証する。
【0159】
(3.5.まとめ)
再生医療を目的とする細胞培養において、ウシ胎児血清が安全性の上で問題とされている現在、上記実験データは増殖因子を大量に含む本発明のドレーン浸出液が、その代替、もしくはサプリメントとして使用できることを示すものである。
【0160】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明に従って、従来廃棄していた術後ドレーン廃液などの創部に由来する体液を原料として増殖因子、サイトカインなどの細胞生理活性物質、ならびに細胞培養培地補添物を大量におよび/または均質に調製する方法が提供される。また、本発明に従って、細胞培養培地補添物、そのような補添物を含む培養培地、ならびにそのような培養培地を用いる細胞培養方法が提供される。
【0162】
さらに、本発明の組成物は、被検体を処置するための医薬としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞生理活性物質を含む組成物を調製するための方法であって、
a)創部に由来する体液を得る工程;および
b)該体液を用いて、細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記体液は、術後のドレーン廃液より得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記体液は、浸出液、リンパ液および血液、ならびにこれらの混合液からなる群より選択される体液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程は、該体液を濃縮することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記体液は、無菌的に得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物は、PDGFファミリーに属するタンパク質、FGFファミリーに属するタンパク質、EGFファミリーに属するタンパク質、VEGFファミリーに属するタンパク質、アンジオポイエチンファミリーに属するタンパク質、IGFファミリーに属するタンパク質、スキャッター因子ファミリーに属するタンパク質、TGFβスーパーファミリーに属するタンパク質、BMPファミリーに属するタンパク質、CNNファミリーに属するタンパク質ファミリーに属するタンパク質、ケモカイン、プロ炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカインおよびMMPファミリーに属するタンパク質からなる群から選択される細胞生理活性物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物は、bFGF、FGF−7、EGF、HB−EGF、アンフィレギュリン、TGFα、PRGF、HGF、NGF、IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−8、TNFα、GM−CSF、レプチン、IL−10、コラゲナーゼおよびゼラチナーゼからなる群から選択される細胞生理活性物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物は、b−FGF、EGF、PDGF、TGF−β、VEGF、KGF、HGF、IGF−1、IL−6、およびIL−8からなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物は、b−FGF、EGF、PDGF、TGF−β、VEGF、KGF、HGF、IGF−1、IL−6、およびIL−8からなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を血清よりも高い濃度で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物は、PDGF、b−FGF、VEGFおよびEGFからなる群より選択される少なくとも1種の細胞生理活性物質を血清よりも高い濃度で含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記b−FGF、EGF、PDGF、およびTGF−βからなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程は、前記創部の形成から1日後以内に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記VEGF、KGF、およびHGFからなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程は、前記創部の形成から4日後以降に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記創部に由来する体液が、1日あたり前記創部を有する宿主の総体液量の5%以内の量である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
創部に由来する体液から、溶血した血液を除去する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
透析する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
遠心分離する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記工程は、無菌的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
滅菌工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記滅菌工程は、フィルター濾過、またはγ線照射によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
さらに、所望の細胞生理活性物質を分離する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物がさらに、血清を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法によって調製される組成物。
【請求項23】
創部に由来する体液を用いて調製される、細胞生理活性物質を含む組成物。
【請求項24】
前記組成物は、PDGFファミリーに属するタンパク質、FGFファミリーに属するタンパク質、EGFファミリーに属するタンパク質、VEGFファミリーに属するタンパク質、アンジオポイエチンファミリーに属するタンパク質、IGFファミリーに属するタンパク質、スキャッター因子ファミリーに属するタンパク質、TGFβスーパーファミリーに属するタンパク質、BMPファミリーに属するタンパク質、CNNファミリーに属するタンパク質ファミリーに属するタンパク質、ケモカイン、プロ炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカインおよびMMPファミリーに属するタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の細胞生理活性物質を血清よりも高い濃度で含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
b−FGF、EGF、PDGF、TGF−β、VEGF、KGF、HGF、IGF−1、IL−6、およびIL−8からなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
b−FGF、EGF、PDGF、TGF−β、VEGF、KGF、HGF、IGF−1、IL−6、およびIL−8からなる群より選択される少なくとも1つの細胞生理活性物質を血清よりも高い濃度で含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
PDGF、b−FGF、VEGFおよびEGFからなる群より選択される少なくとも1種の細胞生理活性物質を血清よりも高い濃度で含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記細胞生理活性物質は、血清の少なくとも3倍の濃度で含まれる、請求項23に記載の組成物。
【請求項29】
前記細胞生理活性物質は、血清の少なくとも10倍の濃度で含まれる、請求項23に記載の組成物。
【請求項30】
さらに、血清を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項31】
細胞を含む調製物を調製するための方法であって、
a)創部に由来する体液を得る工程;
b)該体液を用いて、細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程;および
c)該組成物の存在下で細胞を培養する工程、
を包含する、方法。
【請求項32】
前記体液と、前記細胞とは、同一個体に由来する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞は、該細胞と同一宿主に移植するためのものである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞は、該細胞と異なる宿主に移植するためのものである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記異なる宿主に対する病原体を処置する工程をさらに包含する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物がさらに、血清を含有する、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
細胞を補充することにより被検体を処置するための方法であって、
a)創部に由来する体液を得る工程;
b)該体液を用いて、細胞生理活性物質を含む組成物を調製する工程;
c)該組成物の存在下で該細胞を培養する工程;および
d)培養された該細胞を該被検体に注入する工程、
を包含する、方法。
【請求項38】
創部に由来する体液の、細胞生理活性物質を含む医薬を製造するための、使用。
【請求項39】
前記創部に由来する体液は、術後のドレーン廃液である、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
創部に由来する体液を用いて調製される、細胞培養のための補添物。
【請求項41】
請求項40に記載の補添物を含有する細胞培養培地。
【請求項42】
さらに、血清を含有する、請求項41に記載の細胞培養培地。
【請求項43】
請求項41に記載の細胞培養培地を用いる、細胞培養方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25】
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【国際公開番号】WO2005/080553
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510257(P2006−510257)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002653
【国際出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(503368498)株式会社バイオマスター (11)
【Fターム(参考)】