説明

組み合わせ触媒系を用いる潤滑油基材の低温性能の向上方法

担体に担持された金属水素添加成分を含む一体化混合粉末化ペレット触媒を用いて、ワックス質原料を基材に転化する。前記触媒は、第一の脱ロウ成分および第二の異性化成分を有し、第一の成分は、10および12員環モレキュラーシーブ並びにそれらの混合物から選択され、第二の成分は、非晶質無機酸化物である。第一および第二の成分は、ワックス異性化およびナフテン破壊を、VIを実質的に低減することなく促進するのに十分な比率で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラックワックス、スラックワックス異性化油、フィッシャー−トロプシュワックス、フィッシャー−トロプシュ水素異性化油、ワックス質ラフィネートおよびワックス質留出油を含むワックス質原料を水素化脱ロウして、潤滑油基材または混合材を製造することに関する。より詳しくは、本発明は、ワックス質原料を、ワックス異性化およびナフテン破壊を促進可能な混合触媒を用いて転化して、最小のVI損失で、良好な低温特性を有する潤滑油基材を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機流体および乗用車エンジン油で用いられるものなどの潤滑油に対する性能基準は、ユーザーが、より良好な摩耗防止や、向上された揮発性および低温特性をもたらす基材を求めるにつれて、ますますより過酷になってきた。
【0003】
ワックス質原料は、周知の接触脱ロウ触媒を用いて液体生成物に転化できる。しかしこれらの場合、パラフィンの選択的分解が、典型的には粘度指数(VI)を損失する。これは望ましくない。
【0004】
特許文献1(オレック(Oleck)ら)には、高度にワックス質の原料を、ZSM−5およびZSM−35などの二つの異なるゼオライトと接触させることにより、高ワックス含有量を有する原料油の流動点および粘度指数を向上する方法がクレームされている。
【0005】
対照的に、線形1D細孔構造を有するモレキュラーシーブベースの触媒を用いてワックス質原料を異性化することにより、潤滑油基材がVIを損失することなく製造される。この異性化方法は、接触脱ロウのそれを超える利点をもたらすものの、それでもなお、ワックス質原料を、VIを実質的に損失することなく、良好な低温特性を有する潤滑油基材に転化するための別の向上された方法に対する必要性が残る。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,428,865号明細書
【特許文献2】米国特許第5,122,258号明細書
【特許文献3】米国特許第5,254,518号明細書
【特許文献4】欧州特許第057049号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原料を水素化脱ロウして、向上された低温特性を有する潤滑油基材を製造する方法であって、
(a)原料を、一体化混合粉末ペレット触媒と水素化脱ロウ条件下で接触させる工程
を含み、前記触媒は、
(i)分散された金属水素添加成分を担持する10および12員環モレキュラーシーブ、並びにそれらの混合物よりなる群から選択される第一の脱ロウ成分、および
(ii)分散された金属水素添加成分を担持する非晶質無機酸化物よりなる群から選択される第二の成分
を含み、
(iii)前記第一および第二の成分は、メチルシクロヘキサンの1,1−ジメチルシクロペンタン、1,2−ジメチルシクロペンタン、1,3−ジメチルシクロペンタンおよびエチルシクロペンタンへの320℃における転化率で触媒を評価するとき、触媒が、trans−1,2−/trans−1,3−ジメチルシクロペンタン比約1:1〜約1:2、および転化率10%におけるエチルシクロペンタンへの選択性約50%以上をもたらす比率で存在する
ことを特徴とする水素化脱ロウ方法に関する。
【0008】
本発明の他の実施形態においては、第一および第二の両成分は、少なくとも一種の8、10または12員環モレキュラーシーブ、或いはそれらの混合物を含む。第一および第二の両成分は、分散された金属水素添加成分を担持する。
【0009】
本発明のこの実施形態および他の実施形態は、以下に議論される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するに際して適切な原料には、スラックワックス、スラックワックス異性化油、フィッシャー−トロプシュワックス、フィッシャー−トロプシュ水素異性化油、ワックス質ラフィネート、ワックス質留出油などのワックス質炭化水素油が含まれる。典型的には、これらの原料は、15%以上のワックス含有量を有する。好ましい原料は、各々約20wppm未満の窒素および硫黄含有量を有する。実際、原料が、より多量の硫黄および窒素を含む場合、原料をまず典型的な水素化条件下で水素化に付し、硫黄および窒素含有量を低減しうる。Ni/Mo(アルミナ上)、Ni/W(アルミナ上)、Co/Mo(アルミナ上)など、従来のあらゆる水素化触媒を用いうる。換言すれば、金属酸化物耐火性担体に担持された第VIB族〜第VIII族(この箇所および以降にいう族とは、元素周期律表(サージェント−ウェルチ サイエンティフィック社)における金属の族である)のあらゆるものを用いてよい。そのようなものの限定しない商業的な例は、HDN−30、KF−840、KF−848等として同定される。
【0011】
水素化は、硫黄および窒素含有量を、窒素20wppm以下または硫黄20wppm以下、特に窒素10ppm未満および硫黄10ppm以下のレベル、最も好ましくは窒素5ppm未満および硫黄5ppm以下のレベルに低減するように行われる。
【0012】
天然の石油源から得られるワックス質原料は、ワックス水素異性化触媒を不活性化すると知られる多量の硫黄および窒素化合物を含む。この不活性化を防止するためには、原料は、硫黄10ppm以下、好ましくは硫黄2ppm未満、および窒素2ppm以下、好ましくは窒素1ppm未満を含むことが好ましい。
【0013】
これらの範囲を達成するためには、原料は、好ましくは、硫黄および窒素含有量を減少するように水素化される。
【0014】
水素化は、Ni/Mo(アルミナ上)、Co/Mo(アルミナ上)、Co/Ni/Mo(アルミナ上)など、あらゆる典型的な水素化触媒を用いて行える。例えば、KF−840、KF−843、HDN−30、HDN−60、クリテリア(Criteria)C−411等である。同様に、特許文献2に記載されるNi/Mn/MoまたはCr/Ni/Mo硫化物を含むバルク触媒を用いることができる。
【0015】
水素化は、温度範囲280〜400℃、好ましくは340〜380℃、圧力範囲500〜3000psi、水素処理ガス比範囲500〜5000SCF/bblおよび流速範囲0.1〜5LHSV、好ましくは1〜2LHSVで行われる。
【0016】
水素化されたワックス質油は、ストリッピングされて、アンモニアおよびHSが除去され、次いで本発明の水素異性化方法に付される。
【0017】
本発明に従いワックス質原料の水素異性化に用いられる触媒は、一体化された混合粉末化ペレット触媒である。本明細書および特許請求の範囲で用いられる用語「一体化」とは、各ペレットが、粉末化された第一の成分を粉末化された第二の成分と混合し、得られた混合物をペレット化して、各々前記の全粉末成分を含むペレットを製造することによって調製されるペレットであることを意味する。
【0018】
一体化触媒は、個々の仕上げ粉末化成分から開始し、そのような個々の仕上げ成分を粉砕・粉末化し、粉末化物質を混合して均一な集体を形成し、次いで圧縮/押出し成形およびペレット化して、個々の異なる別個の触媒成分の混合物を含む一体化ペレット触媒を製造することにより調製することができる。粉砕および粉末化は、乳鉢および乳棒その他類似の通常の粉末化手段を用いて達成可能な粘度(consistency)まで行う。
【0019】
本発明の方法で用いられる触媒は、金属水素添加成分を、二つの成分担体に担持されて含む。金属水素添加成分は、第VIB族または第VIII族金属、好ましくは第VIII族金属、より好ましくはPt、Pdおよびそれらの混合物の少なくとも一種である。金属は、両成分上に分散される。典型的には、金属は、約0.1〜約30wt%、好ましくは約0.1〜10wt%存在する。金属が第VIII族貴金属である場合、好ましい量は、0.1〜5wt%である。触媒は、実質的に不活性な結合剤または母材物質をも含んでいてよい。
【0020】
第一の成分は、結晶質10および12員環モレキュラーシーブを含む接触脱ロウ成分である。結晶質モレキュラーシーブには、アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートが含まれる。結晶質アルミノシリケートの例には、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、シータ−1(ZSM−22)、ZSM−23、ZSM−35、天然および合成フェリエライト、ZSM−48、ZSM−57、SSZ−31、ゼオライトベータ、モルデナイト、オフレタイト、ECR−42、MCM−71、ITQ−13などのゼオライトが含まれる。結晶質アルミノホスフェートの例には、SAPO−11、SAPO−41、SAPO−31、MAPO−11およびMAPO−31が含まれる。好ましいモレキュラーシーブには、ZSM−5、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−48、フェリエライト、SSZ−31、SAPO−11、ECR−42、MCM−71およびITQ−13が含まれる。最も好ましいモレキュラーシーブは、ZSM−48、ECR−42、MCM−71、SSZ−31およびITQ−13である。
【0021】
第二の異性化成分は、あらゆる典型的な異性化触媒でありうる。例えば、非晶質耐火性金属酸化物担体ベース(例えばアルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア等)を含み、その上に、好ましくは、第VIB族、第VIIB族、第VIII族金属およびそれらの混合物、好ましくは少なくとも一種の第VIII族金属、より好ましくは少なくとも一種の第VIII族貴金属、最も好ましくはPt、Pdおよびそれらの混合物から選択される触媒活性金属が沈積されたものである。これには、任意に助触媒またはドーパント(例えばハロゲン、リン、ボリア、イットリア、希土類酸化物(例えばLa、Ce等からのもの)、マグネシア等、好ましくはハロゲン、イットリアまたはマグネシア、最も好ましくはフッ素)が含まれる。触媒活性金属は、0.1〜5wt%、好ましくは0.1〜3wt%、より好ましくは0.1〜2wt%、最も好ましくは0.1〜1wt%の範囲で存在する。助触媒およびドーパントは、異性化触媒の酸性度を制御するのに用いられる。従って、異性化触媒がアルミナなどのベース物質を用いる場合には、ハロゲン(好ましくはフッ素)を添加することによって、結果としての触媒に酸性を付与する。ハロゲン(好ましくはフッ素)を用いる場合、それは0.1〜10wt%、好ましくは0.1〜3wt%、より好ましくは0.1〜2wt%、最も好ましくは0.5〜1.5wt%存在する。同様に、シリカ−アルミナをベース物質として用いる場合には、シリカ/アルミナ比を調整すること、またはイットリア、希土類酸化物(例えば、La、Ce等からのもの)、ボリア、マグネシアなどのドーパントを添加することにより、酸性度を制御しうる。これは、特許文献3(ソレド、マクビッカー、ゲイツ、ミセオ(Soled、McVicker、Gates、Miseo))に教示されるように、シリカ−アルミナベース物質の酸性度を修飾する。
【0022】
また、第一および第二の両成分が、少なくとも一種の結晶質10または12員環モレキュラーシーブであることも、本明細書において予期される。第一および第二の成分を、10および12員環モレキュラーシーブの混合物から選択してもよい。従って、第一および第二の両成分を、上記の10および12員環モレキュラーシーブ、並びにそれらの混合物のあらゆるものから選択できる。好ましくは、第一の成分はITQ−13であり、第二の成分は、ZSM−48、ZSM−35、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−57、SSZ−31およびそれらの混合物から選択される。より好ましくは、第一の成分は、ITQ−13、ZSM−57およびそれらの混合物から選択され、第二の成分は、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、SSZ−31およびそれらの混合物から選択される。
【0023】
第一および第二の成分は、VIを実質的に低減することなく、ワックス異性化およびナフテン破壊を促進するのに十分な比率で組み合わされる。本発明の触媒について、ゼオライト/非晶質無機酸化物比は約1:1〜1:20(重量)の範囲であり、次に記載されるMCH試験で承認される必要がある。
【0024】
触媒中の第一および第二の成分の適切な比率を決定する一技法は、約0.5wt%Ptを含む組み合わせ成分を、メチルシクロヘキサン(MCH)の種々のシクロペンタン化合物への転化率で評価することに基づく。320℃で、trans−1,2−ジメチルシクロペンタン/trans−1,3−ジメチルシクロペンタン(trans−1,2/trans−1,3DMCP)比1超(例えば、1:1〜2:1)をもたらす触媒は、VIを実質的に低減することなく、原料のワックス異性化およびナフテン破壊を促進することが見出された。
【0025】
第二の要件は、約0.5wt%Ptで含浸され、転化率10%におけるメチルシクロヘキサン(MCH)の種々のシクロペンタン化合物への転化で評価された触媒が、エチルシクロペンタン(ECP)形成に対する選択性50%以上を示す場合である。
【0026】
この技法は、更に、次のように説明される。触媒によるMCHの種々のシクロペンタン生成物への反応は、図1に示される。図1に示されるように、MCH分解の生成物には、エチルシクロペンタン、シス−およびtrans−1,2−ジメチルシクロペンタン、シス−およびtrans−1,3−ジメチルシクロペンタン、並びに1,1−ジメチルシクロペンタンが含まれる。この技法は、MCH試験としても知られるが、本発明の触媒について、相対的な酸性点濃度、強度、および活性点制約を定義するのに用いられる。
【0027】
重要な要件は、次のように要約される。即ち、(1)所定の触媒重量に対するMCHの全転化(320℃)は、酸性点の相対数の指標であること;(2)転化率10%におけるECPへの選択性は、相対的な酸強度の尺度であり、高いECP選択性値は低い酸強度を表し、低いECP選択性値は高い酸強度を表すこと;および(3)trans−1,2−DCMP/trans−1,3−DCMP比は、触媒の活性点における制約と相関し、高い比率(>1)は、活性点における物理的制約が殆どまたは全くないことを表し、低い比率(<1)は、活性点における物理的制約を表すことである。
【0028】
本方法においては、向上された低温特性を与える触媒を製造するために、trans−1,2−DCMP/trans−1,3−DCMP比は、主に、非晶質異性化成分の酸強度を制御することによって、1:1〜2:1に調整される。シリカ−アルミナなどのより高い酸強度の非晶質成分を用いることが好ましい。
【0029】
逆に、高収率をもたらす触媒は、非晶質相の酸強度を低減することにより製造される。この場合には、アルミナなどのより低い酸強度の非晶質成分を用いることが好ましい。これらの触媒を調製する別法は、一体化触媒が、trans−1,2/trans−1,3DMCP比1未満を有するように、微細孔成分/非晶質成分比を変更することによる。
【0030】
本発明の触媒を用いる水素化脱ロウ方法は、温度約200〜400℃、好ましくは250〜380℃、最も好ましくは300〜350℃、圧力約500〜5,000psig(3.55〜34.6mPa)、好ましくは1,000〜2000psig(7.0〜13.9mPa)、水素ガス処理比500〜10000SCF H/B(89〜1780m/m)、好ましくは2,000〜5,000SCF H/B(356〜890m/m)およびLHSV0.5〜5v/v/時間、好ましくは1〜2v/v/時間で行われる。
【0031】
本発明の別の実施形態においては、原料は、最初に、ほぼ+10℃以下の流動点に溶剤脱ロウに付される。
【0032】
用いられる脱ロウ溶剤には、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、MEKとMIBKの混合物などのC〜Cケトン、トルエンなどの芳香族炭化水素、MEK/トルエンなどのケトンと芳香族の混合物、メチルt−ブチルエーテルなどのエーテル、並びにそれとケトンまたは芳香族との混合物が含まれうる。同様に、液化(通常ガス状)炭化水素(プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレンおよびそれらの混合物など)を、溶剤として用いてよい。好ましくは、用いられる溶剤は、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの等容量混合物である。典型的には、異性化油/溶剤比は、1〜10の範囲、好ましくは約1:3である。脱ロウ原料は次いで、上記されるように水素異性化に付される。
【0033】
本発明は以降、限定しない実施例において明らかにされる。
【実施例】
【0034】
比較例1
0.5wt%PtZSM−5(シリカ/アルミナ比220:1)およびアルミナを重量比25:75で含む触媒(B)を用いて、二つの運転で、次の特性を有する水素化分解油留出油を脱ロウした。
KV、cST@100℃ 3.808
KV、cST@135℃ 2.28
流動点、℃ 39
沸点範囲(GCD) 325〜503℃
用いられた脱ロウ条件は、下記表1に列記される。結果を、実施例2に続く表1の列Bに示す。
【0035】
メチルシクロヘキサンによる活性および選択性に対して選別すると、この触媒は、表1に示されるように、EPC選択性40およびt−1,2/t−1,3ジメチルシクロペンタン比0.02を有した。表1の列AとBを比較すると、得られた液体生成物(350℃+)のVIは、溶剤脱ロウによって得られたものより低いことが示される。また、ブルックフィールド粘度@−40℃(標準フォードタイプのATFアドパックを添加)によって示される生成物の低温特性を、表1に示す。ブルックフィールド粘度は、接触脱ロウによって、溶剤脱ロウ生成物のそれを超えて減少される。しかし、溶剤および接触脱ロウの両生成物のブルックフィールド粘度は、極めて不十分である。
【0036】
比較例2
0.5wt%PtZSM−5(シリカ/アルミナ比220:1)およびシリカ−アルミナを重量比50:50で含む触媒(C)を用いて、比較例1に示された特性を有する水素化分解油留出油を脱ロウした。この触媒は、粉末化ZSM−5(Si/Al比110)を粉末化非晶質成分と重量比50:50で組み合わせ、次いで白金テトラアミンジクロリドを用いて初期湿潤により白金を充填することによって調製された。
【0037】
メチルシクロヘキサンによる活性および選択性に対して選別すると、この触媒は、実施例2の次の表1に示されるように、EPC選択性47およびt−1,2/t−1,3ジメチルシクロペンタン比0.82を有した。表1の列AとCを比較すると、得られた液体生成物(350℃+)のVIは、溶剤脱ロウによって得られたものより低いことが示される。また、ブルックフィールド粘度@−40℃(標準フォードタイプのATFアドパックを添加)によって示される生成物の低温特性を、表1に示す。ブルックフィールド粘度は、接触脱ロウによって、溶剤脱ロウ生成物のそれを超えて減少される。しかし、実施例1のアルミナ結合触媒を用いて得られたものを有意に超えて減少されない。
【0038】
実施例1
0.5wt%PtZSM−5(シリカ/アルミナ比220:1)およびシリカ−アルミナを、重量比10:90で含む触媒(D)を用いて、比較例1に示された特性を有する水素化分解油留出油を脱ロウした。この触媒は、粉末化ZSM−5(Si/Al比110)を粉末化非晶質成分と、各々重量比10:90で組み合わせ、次いで白金テトラアミンジクロリドを用いて初期湿潤により白金を充填することによって調製された。
【0039】
メチルシクロヘキサンによる活性および選択性に対して選別すると、この触媒は、実施例2の次の表1に示されるように、EPC選択性50およびt−1,2/t−1,3ジメチルシクロペンタン比1.80を有した。これらの値はいずれも、この発明の触媒に対する基準内にある。表1の列AとDを比較すると、得られた液体生成物(350℃+)のVIは、溶剤脱ロウによって得られたものより高いことが示される。また、ブルックフィールド粘度@−40℃(標準ECA/ATFアドパックを添加)によって示される生成物の低温特性を、表1に示す。この触媒によって接触脱ロウすることによって、ブルックフィールド粘度は、表1の溶剤脱ロウ生成物のそれを超えて、有意に減少される。
【0040】
実施例2
0.5wt%Ptシータ−1(TON)/シリカ−アルミナ(触媒E)および0.5wt%Pd/Al(触媒F−比較)を、重量比25:75で用いて、実施例1の手順に従った。
シータ−1は10員環ゼオライトであり、特許文献4に記載される。この触媒は、粉末化TONゼオライト(Si/Al比30)を粉末化非晶質成分と種々の比率で組み合わせ、次いで白金テトラアミンジクロリドを用いて初期湿潤により白金を充填することによって調製された。条件および結果を表1の列EおよびFに示す。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】メチルシクロヘキサンの種々のシクロペンタン化合物への320℃における転化を示す概略図である。
【図2】種々の触媒混合物について、ブルックフィールド(Brookfield)粘度対収率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を水素化脱ロウして、向上された低温特性を有する潤滑油基材を製造する方法であって、
(a)原料を、一体化混合粉末ペレット触媒と水素化脱ロウ条件下で接触させる工程
を含み、前記触媒は、
(i)分散された金属水素添加成分を担持する10および12員環モレキュラーシーブ、並びにそれらの混合物よりなる群から選択される第一の脱ロウ成分、および
(ii)分散された金属水素添加成分を担持する非晶質無機酸化物よりなる群から選択される第二の成分
を含み、
(iii)前記第一および第二の成分は、メチルシクロヘキサンの1,1−ジメチルシクロペンタン、1,2−ジメチルシクロペンタン、1,3−ジメチルシクロペンタンおよびエチルシクロペンタン(ECP)への320℃における転化率で触媒を評価するとき、触媒が、trans−1,2−/trans−1,3−ジメチルシクロペンタン比1:1〜1:2、および転化率10%におけるエチルシクロペンタンへの選択性50%以上をもたらす比率で存在する
ことを特徴とする水素化脱ロウ方法。
【請求項2】
前記金属水素添加成分は、第VI族および第VIII族金属の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項3】
前記金属水素添加成分は、少なくとも一種の第VIII族金属であることを特徴とする請求項2に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項4】
前記金属水素添加成分は、Pt、Pdおよびそれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項5】
前記水素添加成分は、0.1〜30wt%分散されることを特徴とする請求項1に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項6】
前記第二の成分は、メチルシクロヘキサンの320℃における転化率で触媒を評価するとき、ECP形成に対し少なくとも50%以上の選択性を示すことを特徴とする請求項2に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項7】
前記原料は、流動点+10℃以下に溶剤脱ロウされることを特徴とする請求項1に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項8】
前記原料は、温度範囲280〜400℃、圧力範囲500〜3000psi、水素処理ガス比範囲500〜5000SCF/bblおよび流速範囲0.1〜5LHSVで水素化されることを特徴とする請求項1に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項9】
前記10および12員環モレキュラーシーブは、アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートから選択されることを特徴とする請求項1に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項10】
前記アルミノシリケートは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、天然および合成フェリエライト、ZSM−48、ZSM−57、SSZ−31、ゼオライトベータ、モルデナイト、オフレタイト、ECR−42、MCM−71並びにITQ−13から選択されることを特徴とする請求項9に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項11】
前記アルミノホスフェートは、SAPO−11、SAPO−41、SAPO−31、MAPO−11およびMAPO−31よりなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項12】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−5、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−48、フェリエライト、SSZ−31、SAPO−11、ECR−42、MCM−71およびITQ−13よりなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項13】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−48、ECR−42、MCM−71、SSZ−31およびITQ−13よりなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項14】
前記非晶質無機酸化物は、イットリア、希土類酸化物、ボリアまたはマグネシアによって助触またはドープされることを特徴とする請求項1に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項15】
原料を水素化脱ロウして、向上された低温特性を有する潤滑油基材を製造する方法であって、
(a)原料を、一体化混合粉末ペレット触媒と水素化脱ロウ条件下で接触させる工程
を含み、前記触媒は、
(i)分散された金属水素添加成分を担持する10および12員環モレキュラーシーブ、並びにそれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも一種の第一の成分、および
(ii)分散された金属水素添加成分を担持する10および12員環モレキュラーシーブ、並びにそれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも一種の第二の成分
を含み、
(iii)前記第一および第二の成分は、メチルシクロヘキサンの1,1−ジメチルシクロペンタン、1,2−ジメチルシクロペンタン、1,3−ジメチルシクロペンタンおよびエチルシクロペンタンへの320℃における転化率で触媒を評価するとき、触媒が、trans−1,2−/trans−1,3−ジメチルシクロペンタン比1:1〜1:2、および転化率10%におけるエチルシクロペンタンへの選択性50%以上をもたらす比率で存在する
ことを特徴とする水素化脱ロウ方法。
【請求項16】
前記10および12員環モレキュラーシーブは、アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートよりなる群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項17】
前記アルミノシリケートは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、天然および合成フェリエライト、ZSM−48、ZSM−57、ゼオライトベータ、モルデナイト、オフレタイト、ECR−42、MCM−71並びにITQ−13よりなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項18】
前記少なくとも一種の第一の成分は、ITQ−13であり、
前記少なくとも一種の第二の成分は、ZSM−48、ZSM−35、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−57、SSZ−31およびそれらの混合物よりなる群から選択される
ことを特徴とする請求項17に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項19】
前記少なくとも一種の第一の成分は、ITQ−13、ZSM−57およびそれらの混合物よりなる群から選択され、
前記少なくとも一種の第二の成分は、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、SSZ−31およびそれらの混合物よりなる群から選択される
ことを特徴とする請求項17に記載の水素化脱ロウ方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を水素化脱ロウして、向上された低温特性を有する潤滑油基材を製造する方法であって、
(a)原料を、一体化混合粉末ペレット触媒と水素化脱ロウ条件下で接触させる工程
を含み、前記触媒は、
(i)分散された金属水素添加成分を担持する10および12員環モレキュラーシーブ、並びにそれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも一種の第一の成分、および
(ii)分散された金属水素添加成分を担持する10および12員環モレキュラーシーブ、並びにそれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも一種の第二の成分
を含み、
(iii)前記第一および第二の成分は、メチルシクロヘキサンの1,1−ジメチルシクロペンタン、1,2−ジメチルシクロペンタン、1,3−ジメチルシクロペンタンおよびエチルシクロペンタンへの320℃における転化率で触媒を評価するとき、触媒が、trans−1,2−/trans−1,3−ジメチルシクロペンタン比1:1〜1:2、および転化率10%におけるエチルシクロペンタン(ECP)への選択性50%以上をもたらす比率で存在する
ことを特徴とする水素化脱ロウ方法。
【請求項2】
前記10および12員環モレキュラーシーブは、アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートから選択されることを特徴とする請求項1に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項3】
前記アルミノシリケートは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、天然および合成フェリエライト、ZSM−48、ZSM−57、ゼオライトベータ、モルデナイト、オフレタイト、ECR−42、MCM−71並びにITQ−13よりなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項4】
前記少なくとも一種の第一の成分は、ITQ−13、ZSM−57およびそれらの混合物よりなる群から選択され、
前記少なくとも一種の第二の成分は、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、SSZ−31およびそれらの混合物よりなる群から選択される
ことを特徴とする請求項3に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項5】
前記少なくとも一種の第一の成分は、ITQ−13であり、
前記少なくとも一種の第二の成分は、ZSM−48、ZSM−35、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−57、SSZ−31およびそれらの混合物よりなる群から選択される
ことを特徴とする請求項に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項6】
前記第二の成分は、メチルシクロヘキサンの320℃における転化率で触媒を評価するとき、ECP形成に対し少なくとも50%以上の選択性を示すことを特徴とする請求項2に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項7】
前記原料は、流動点+10℃以下に溶剤脱ロウされることを特徴とする請求項1に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項8】
前記原料は、温度範囲280〜400℃、圧力範囲500〜3000psi、水素処理ガス比範囲500〜5000SCF/bblおよび流速範囲0.1〜5LHSVで水素化されることを特徴とする請求項1に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項9】
前記金属水素添加成分は、第VI族および第VIII族金属の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項10】
前記金属水素添加成分は、少なくとも一種の第VIII族金属であることを特徴とする請求項に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項11】
前記金属水素添加成分は、Pt、Pdおよびそれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項12】
前記水素添加成分は、0.1〜30wt%分散されることを特徴とする請求項に記載の水素化脱ロウ方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−509847(P2006−509847A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551375(P2004−551375)
【出願日】平成14年11月12日(2002.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2002/036522
【国際公開番号】WO2004/043594
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】