説明

組成物、フィルム、偏光板、及び液晶表示装置

【課題】面内レターデーションの波長分散と厚み方向レターデーションの波長分散を独立に制御したフィルムの作製に有用な組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)で表される繰り返し単位を含む重合体の少なくとも一種を含有する組成物である。式中、A1及びA2はそれぞれ、−O−、−NRa−(Raは水素原子又は置換基)、−S−、及び−CO−から選ばれる基を表し;R1、R2及びR3はそれぞれ置換基を表し;nは0〜2の整数を表し;Xは、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、又はヘテロ環基を表し;L1及びL2はそれぞれ、所定の連結基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆波長分散性位相差フィルムの作製に有用な組成物に関する。また本発明は、該組成物からなるフィルム、ならびに当該フィルムを有する偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、消費電力の小さい省スペースの画像表示装置として年々用途が広がっている。従来、画像の視野角依存性が大きいことが液晶表示装置の大きな欠点であったが、近年、VAモードの高視野角液晶モードが実用化されており、これによりテレビ等の高品位の画像が要求される市場でも液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。これに伴い液晶表示装置において、色味、コントラスト、及びそれらの視角依存性改良に用いられる光学補償部材に対しても光学補償能のさらなる向上が求められている。この向上のために、面内レターデーションが短波長側ほど小さく(逆波長分散)、且つ厚み方向レターデーションが短波長側ほど大きい(順波長分散)という光学特性を満足する光学補償部材が提案されている(特許文献1)。
これは、広帯域のλ/4板(直線偏光を円偏光に変換する偏光板)を作製する方法に関するものである。1枚の位相差フィルムで広帯域のλ/4板を作製することができる点で有用であるが、得られる位相差の範囲が狭いので、この技術を用いて様々な光学特性を提供するためには、複数層のフィルムの積層が必要である。この課題は、λ/4板であるか否かを問わず、要求されているものであった。
また、VAモードの高視野角液晶モードにおいては、黒表示時に、パネルの正面方向及びその方向からある角度なす方向(視野角方向)から眺めた際の色ずれが問題になっている。
【特許文献1】特開2005−242293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、面内レターデーションの波長分散と厚み方向レターデーションの波長分散を独立に制御したフィルム、及び該フィルムの作製に有用な組成物を提供することである。
また本発明の他の目的は、逆波長分散性を有する偏光板を提供すること、及び該偏光板を液晶表示装置に用いることで、色味変化が少なく、コントラストの視野角依存性が改良された表示品位の高い液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 下記一般式(I)で表される繰り返し単位を含む重合体を含有する組成物:
【化1】

式中、A1及びA2はそれぞれ、−O−、−NRa−(Raは水素原子又は置換基)、−S−、及び−CO−からなる群から選ばれる基を表し;R1、R2及びR3はそれぞれ置換基を表し;nは0〜2の整数を表し;Xは、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、又はヘテロ環基を表し;L1及びL2はそれぞれ、下記連結基のいずれかを表し;
【化2】

Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜30のシクロアルキル基を表す。
【0005】
[2] セルロース化合物を含むことを特徴とする[1]の組成物。
[3] 前記セルロース化合物がセルロースアシレートであることを特徴とする[2]の組成物。
[4] 前記一般式(I)で表される繰り返し単位を含む重合体を含有することを特徴とするフィルム。
[5] セルロース化合物を主成分として含むことを特徴とする[4]のフィルム。
[6] 複屈折Δn(550nm)が正であり、且つ下記数式(1)及び(2)を満足することを特徴とする[4]又は[5]のフィルム:
数式(1) 0.5<Δn(450nm)/Δn(550nm)<1.0
数式(2) 1.05<Δn(630nm)/Δn(550nm)<1.5 。
[7] 偏光子と、[4]〜[6]のいずれかのフィルムとを有する偏光板。
[8] [4]〜[6]のいずれかのフィルム及び/又は[7]の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、面内レターデーションの波長分散と厚み方向レターデーションの波長分散を独立に制御したフィルム、及び該フィルムの作製に有用な組成物を提供することができる。
また本発明によれば、逆波長分散性を有する偏光板を提供すること、及び該偏光板を液晶表示装置に用いることで、色味変化が少なく、コントラストの視野角依存性が改良された表示品位の高い液晶表示装置を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。以下の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0008】
[高分子組成物]
本発明は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体の少なくとも一種を含有する組成物に関する。
【0009】
【化3】

【0010】
式中、A1及びA2はそれぞれ、−O−、−NRa−(Raは水素原子又は置換基)、−S−及び−CO−からなる群から選ばれる基を表し;R1、R2及びR3はそれぞれ、置換基を表す。nは0〜2の整数を表す。Xはアルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロ環基を表す。L1及びL2はそれぞれ下記連結基のいずれかを表す。
【0011】
【化4】

【0012】
ここで、Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜30のシクロアルキル基を表す。
【0013】
前記式中、A1及びA2は各々独立に、−O−、−NR−(Rは水素原子又は置換基)、−S−及び−CO−からなる群から選ばれる基を表す。好ましくは−O−、−NR−(Rは置換基を表し、例としては後述するR1の例が挙げられる。)又はS−である。
【0014】
前記式中、L1及びL2が表す二価の連結基において、Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、又は炭素数3〜30のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基)を表す。
さらに好ましくは−O−、−COO−、−OCO−、−O(C=O)O−である。
【0015】
前記式中、R1〜R3はそれぞれ置換基であり、R1が複数存在する場合は同じでも異なっていてもよく、環を形成してもよい。前記置換基の例には、
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)、
【0016】
アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、
【0017】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、
【0018】
シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、
【0019】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、
【0020】
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、
【0021】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、
【0022】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、
【0023】
アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換又は無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)が含まれる。
【0024】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0025】
1は、好ましくは塩素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アミノ基であり、さらに好ましくは塩素原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アミノ基である。
【0026】
2及びR3はそれぞれ、ハメットの置換基定数σp値が0より大きい電子吸引性の置換基であることが好ましく、σp値が0〜1.5の電子吸引性の置換基であることがさらに好ましい。このような置換基としてはトリフルオロメチル基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。また、R2とR3とが結合して環を形成してもよい。
なお、ハメットの置換基定数のσp、σmに関しては、例えば、稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、日本化学会編「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応V」2605頁(丸善)、仲谷忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル レビュー,91巻,165〜195頁(1991年)等の成書に詳しく解説されている。
【0027】
一般式(I)中、nは0〜2の整数を表し、好ましくは0又は1である。
【0028】
一般式(I)中、Xはアルケニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニレン基であり、例えば、ビニレン基、アリーレン基、2−ブテニレン基、3−ペンテニレン基などが挙げられる)、アルキニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギニレン基、3−ペンチニレン基などが挙げられる)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)を表す。
【0029】
Xは、好ましくはアリーレン基である。X中の水素原子が置換可能である場合は、Xは置換基を有していてもよい。置換基としては、R1等の置換基の例と同様である。
【0030】
前記の一般式(I)で表される繰返し単位の具体例を以下に示すが、これらに限定されることはない。
【0031】
【化5】

【0032】
本発明の高分子組成物に含まれる重合体は、前記一般式(I)で表される繰返し単位の他に、フィルム成形性や溶解性等を考慮して、他の繰返し単位を含んでもよく、特に制限はない。前記重合体が、他の繰返し単位を含む場合、前記一般式(I)で表される繰返し単位と他の繰返し単位との比は95:5〜50:50の範囲で用いることが好ましく、90:10〜75:25の範囲で用いることがより好ましい。当該他の繰り返し単位の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0033】
【化6】

【0034】
本発明の高分子組成物に含まれる前記重合体は、重縮合や重付加といった逐次重合反応により得ることができ、その方法に制限はない。例えば、重縮合方法としては、脱酢酸による溶融重縮合法、脱フェノールによる溶融重縮合法、ジカルボン酸化合物を酸クロライドとして有機塩基を用いポリマーが可溶となる有機溶媒系で行う脱塩酸均一重合法、ジカルボン酸化合物を酸クロライドとしてアルカリ水溶液と水非混和性有機溶媒の2相系で行う界面重縮合法などいずれの公知の方法を用いてもよい。
【0035】
前記重合体の重合度は、繰返し単位の分子量にもよるが、3〜4000量体の範囲にあることが好ましい。得られるフィルムの強度等の物性を鑑みると、100〜4000量体が好ましく、150〜3500量体がより好ましく、200〜3000量体がさらに好ましい。但し、他の重合体と併用する場合は、より低い重合度であっても十分な強度が得られる場合もあるので、この限りではない。また、他の重合体を併用し、フィルム等を作製する場合は、重合体同士の相溶性等の観点では、重合度は高過ぎないのが好ましく、その観点では、3〜300量体程度が好ましく、3〜250量体程度がより好ましく、3〜200量体程度がさらに好ましい。即ち、本発明では、式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体については、「高分子」と表現する場合もあるが、一般的には、「オリゴマー」と表現される低重合度のものも含まれるものとする。
なお、重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリエチレンオキサイド(PEO)換算の値によって算出することができる。
【0036】
前記式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体は、光学フィルム用のレターデーション制御剤(特に、レターデーション上昇及び波長分散制御剤)として機能する。特に延伸によるRe発現性及び波長分散に優れたフィルムを得るためのレターデーション制御剤として機能する。同様の部分構造を有する単量体の剤と比較して、多量体となっていることで、配向度を上げられる点で有利である。また、多量体とすることで結晶化が抑制されるため、ヘイズの発生や溶質成分の析出が抑制される。さらに、多量体であるため、他の重合体に対する相溶性が向上するため添加量を増やすことができ、脆性の観点でも有利に作用する。
【0037】
本発明の組成物は、前記重合体を一種のみ含有していても、複数種含有していてもよい。また、本発明の組成物は、前記重合体とともに、前記一般式(1)で表される繰返し単位を含まない重合体(以下、「他の重合体」という。)を一種以上含有していてもよい。
【0038】
(他の重合体)
上記他の重合体としては、特に制限はない。例えば、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリオレフィン類、ポリアセチレン類、シクロオレフィン系ポリマー類、ノルボルネン系ポリマー類、及びセルロース化合物類が挙げられ、好ましくはセルロース化合物類であり、本発明の組成物の好ましい一態様は、前記重合体、及び主成分としてセルロース化合物を含有する組成物である。ここで、「主成分とする」とは、セルロース化合物を、組成物全体に対して50質量%以上含有することを意味する。好ましくは75質量%以上含有する。
【0039】
他の重合体、例えば、セルロース化合物を併用する場合、前記一般式(1)で表される繰返し単位を含む重合体の含有量は、他の重合体に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.1〜16質量部であることがより好ましく、0.5〜12質量部であることがさらに好ましく、0.5〜10質量部であることがよりさらに好ましい。
【0040】
本発明において、「セルロース化合物」とは、例えば、セルロースを基本構造とする化合物であって、セルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物を含むものをいう。セルロース化合物として好ましいものはセルロースエステルであり、より好ましくはセルロースアシレート(セルローストリアシレート、セルロースアシレートプロピオネート等が挙げられる。)である。また、本発明においては異なる2種類以上のセルロース化合物を混合して用いてもよい。
【0041】
本発明に用いられるセルロース化合物に関して詳細に説明する。本発明に用いられるセルロース化合物は、好ましくはセルロースアシレートである。以下、セルロースアシレートを例にして、本発明の好ましい態様を説明する。
本発明に用いられるセルロースアシレートの原料であるセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートも使用できる。場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤・宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0042】
前記セルロースアシレートは、セルロースの水酸基をアセチル基及び炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの混合脂肪酸エステルであって、セルロースの水酸基への置換度が下記数式(5)及び数式(6)を満足するセルロースアシレートであることが好ましい。
数式(5):2.0≦A+B≦3.0
数式(6):0<B
上記式中Aは、セルロースの水酸基に置換されているアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に置換されている炭素原子数3以上のアシル基の置換度を表す。
【0043】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部を、アシル基によってエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
【0044】
前記セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であることが好ましく、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400がさらに好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度を700以下とすることにより、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり過ぎず、流延によるフィルム製造が容易になる傾向にある。また、重合度を180以上とすることにより、作製したフィルムの強度がより向上する傾向にあり好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫著、「繊維学会誌」、第18巻、第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。具体的には、特開平9−95538号公報に記載の方法に従って測定することができる。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましく、1.0〜1.6であることがさらに好ましい。
【0045】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。本発明で用いるセルロースアシレートの製造時に使用される際には、セルロースアシレートの含水率は2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.7質量%以下であることがさらに好ましい。通常のセルロースアシレートは、2.5〜5質量%の割合で含水していることが知られている。このような場合、上記本発明において好ましい含水率にするため、セルロースアシレートを乾燥することが好ましい。乾燥方法は目的とする含水率とすることができる方法であれば特に限定されない。
また、本発明におけるセルロースアシレートの原料綿や合成方法としては、例えば、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、7頁〜12頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載のものを好ましく採用できる。
【0046】
本発明の組成物は、所望により、組成物中に一種以上の添加剤を添加してもよい。
以下、所望により添加される添加剤の例について説明する。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0047】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0048】
サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。
【0049】
これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0050】
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、上述のベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不用な着色が少ないことから、好ましい。
【0051】
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
【0052】
紫外線吸収剤の添加量は、組成物の主成分(例えばセルロースアシレート)に対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%以上であれば添加効果が十分に発揮されうるので好ましく、添加量が5質量%以下であればフィルム表面への紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できるので好ましい。
【0053】
(劣化防止剤)
前記劣化防止剤を、フィルムが劣化、分解するのを防止するために添加してもよい。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物を用いることができる。
【0054】
(可塑剤)
可塑剤としては、リン酸エステル及び/又はカルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が好ましい。また、カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
【0055】
(剥離促進剤)
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が好ましい例として挙げられる。
(赤外吸収剤)
赤外吸収剤としては、例えば特開2001−194522号公報に記載のものが好ましい。
【0056】
(染料)
本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、組成物の主成分(例えば、セルロースアシレート)に対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmがさらに好ましい。この様に染料を含有させることにより、フィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。
【0057】
(マット剤微粒子)
マット剤として微粒子を加えてもよい。該微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は、ケイ素を含むものが濁度が低くなる点でより好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を調製することが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0058】
これらの微粒子は、通常平均粒子サイズが0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子サイズは0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.4μm〜1.2μmがさらに好ましく、0.6μm〜1.1μmがよりさらに好ましい。1次/2次粒子サイズはフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとした。
【0059】
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0060】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化ケイ素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0061】
2次平均粒子サイズの小さな粒子を含有するフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のポリマー溶液(例えば、セルロースアシレート溶液)に加えて撹拌溶解し、さらにメインのドープ液と混合し、流延する方法がある。この方法は二酸化ケイ素微粒子の分散性がよく、二酸化ケイ素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。他にも、溶剤に少量の主成分ポリマー(例えばセルロースアシレート)を加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。微粒子を溶剤などと混合して分散するときの濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましく、15〜20質量%がさらに好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gがよりさらに好ましい。使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、フィルムの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0062】
(添加剤の比率)
本発明の組成物中、分子量が3000以下の化合物の総量は、主成分である重合体(例えば、セルロースアシレート)の質量に対して、5〜45質量%であることが好ましい。より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜30質量%である。これらの化合物としては上述したような添加剤などが該当する。さらに、分子量が2000以下の化合物の総量が上記範囲内であることがより好ましい。前記範囲とすることで、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動し難くなる。またこれら化合物の総量を前記範囲とすることで、これらの化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムの白濁(フィルムからの泣き出し)が抑止される傾向にあり好ましい。
【0063】
これらの添加剤を組成物中に添加する際は、いずれのタイミングであってもよい。後述する溶液製膜法でフィルムを作製する場合は、流延するドープ溶液中に添加されるが、これらの添加剤の添加時期は、ドープ作製工程のいずれのタイミングであってもよい。
また、これらの添加剤は、固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば、20℃以下の紫外線吸収剤と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いたりすることができる。具体的には、特開2001−151901号公報に記載の方法を採用できる。
【0064】
[フィルム]
本発明は、前記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有するフィルムにも関する。本発明のフィルムの好ましい一例は、セルロースアシレートフィルムである。前記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体は、その分子構造上の特徴から、単独でもしくは他の高分子とともにフィルム成形された際に、そのフィルムの複屈折Δnが、可視光域の波長に対して逆分散性(即ち、短波長ほど小さいという特性)を示す。
フィルム中では、一般的に材料の分子は、所定の方向に配向している。フィルムの複屈折Δnは、この配向方向(以下、TD方向と示す)の屈折率から、それに直交する方向(以下、MD方向と示す)の屈折率を差し引いた値であるため、TD方向の屈折率の波長分散性よりも、MD方向の波長分散性が、より右肩下がり(右を長波長側、左を短波長側とおいたときのΔnの傾き)であれば、その差し引いた値は、
数式(3):1>|Δn(450nm)/Δn(550nm)|、及び
数式(4):1<|Δn(630nm)/Δn(550nm)|
を満足する。即ち、逆波長分散性になる。
屈折率の波長分散性は、Lorentz−Lorenzの式で表されているように、物質の吸収に密接な関係にあるため、MD方向の波長分散性がより右肩下がりであるためには、TD方向に比較してMD方向の吸収遷移波長がより長波長であることが必要である。前記式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体は、その構造的特徴により、吸収遷移波長が高分子幅方向(MD方向)において長波長であるので、その結果、該重合体を含有するフィルムは、上記数式(3)及び(4)を満たす、即ちΔnについて、逆波長分散特性のフィルムとなる。
なお、前記重合体の屈折率の大きさがMD方向に比べてTD方向に大きければ、フィルムとしてTD方向に対して複屈折Δn(550nm)が正であることに問題がないが、逆に前記重合体の屈折率の大きさがTD方向に比べてMD方向に大きくても高分子材料の屈折率がTD方向に大きく、フィルムとして複屈折Δn(550nm)が正であれば問題ない。
【0065】
本発明の組成物を用いることにより、その複屈折Δnが逆波長分散特性を示すフィルムを作製することができる。本発明のフィルムの一例は、下記数式(1)及び(2)を満足する波長分散特性を示す。
数式(1) 0.5<Δn(450nm)/Δn(550nm)<1.0
数式(2) 1.05<Δn(630nm)/Δn(550nm)<1.5
ここで、波長450nmは青、波長550nmは緑、波長630nmは赤に対応する。液晶表示装置の視野角特性向上に寄与するためには、フィルムのレターデーションをそれぞれの波長において最適値とするのが好ましい。本発明のフィルムは、波長550nmにおける複屈折Δn(550)が正であり、しかもΔn(450)及びΔn(630)について好ましい範囲となり、さらに前記数式(1)及び(2)を満足しているのが好ましい。
【0066】
本発明のフィルムの光学特性、具体的には、Re値とRth値、は、使用する一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体の種類及びその添加量を選択することで、ならびに後述する延伸処理を実施する場合は、延伸倍率を適宜調整することで、好ましい範囲とすることができる。例えば、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体を選択することにより、所望のRth値を達成し、その添加量を選択して及び/又はフィルムの延伸倍率を適宜設定することで、所望のRe値を達成することができる。
【0067】
本発明のフィルムは、溶液製膜法及び溶融製膜法のいずれの方法によっても製造することができる。以下では、溶液製膜法を利用した方法について説明するが、これに限定されるものではない。
(溶液製膜法(セルベントキャスト法))
ソルベントキャスト法では、本発明の組成物を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)調製し、このドープを用いて製膜する。ドープの調製に用いられる主溶媒は、有機溶媒であるのが好ましく、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、及び炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン及び、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、例えば、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
また、塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としてもよいし、例えば公開技法(公開技報2001−1745、12頁〜16頁、2001年発行、発明協会)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としてもよい。
【0068】
その他、ドープの調製方法、溶媒等については、その溶解方法も含め以下の特許文献に開示されているものを、好ましい態様としてあげることができる。特開2000−95876号、特開平12−95877号、特開平10−324774号、特開平8−152514号、特開平10−330538号、特開平9−95538号、特開平9−95557号、特開平10−235664号、特開平12−63534号、特開平11−21379号、特開平10−182853号、特開平10−278056号、特開平10−279702号、特開平10−323853号、特開平10−237186号、特開平11−60807号、特開平11−152342号、特開平11−292988号、特開平11−60752号、特開平11−60752号の各公報。
【0069】
ドープの調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法又は高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。ドープの調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、22頁〜25頁、2001年3月15日発行、発明協会)にて詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
【0070】
本発明のフィルムの製造に用いるドープの透明度としては、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、商品名、島津製作所)で550nmの吸光度を測定する。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比から透明度を算出する。
【0071】
溶解機(釜)から調製されたドープを貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば、回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせは、目的に応じて決定することができる。
【0072】
なお、本発明のフィルムを、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる場合は、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等をフィルム表面に成形することがよくある。そのためには、溶液流延製膜装置の他に、塗布装置が用いられる。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、25頁〜30頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
【0073】
上記方法により製造されたフィルムは、そのまま種々の用途に利用することができる。さらに延伸処理を施して、所望の光学特性としてから使用してもよい。特に、フィルムの面内レターデーション値を高い値とする場合には、積極的に幅方向に延伸する方法、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている方法等に従って、フィルムを延伸するのが好ましい。
【0074】
フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦又は横だけの一軸延伸でもよく、同時又は逐次2軸延伸でもよい。フィルムは、1〜200%の延伸を行うことが好ましく、1〜100%の延伸を行うことがより好ましく、1〜50%の延伸を行うことがさらに好ましい。
延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶媒を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶媒量が2〜30質量%で好ましく延伸することができる。
【0075】
また、本発明のフィルムを、偏光膜の保護フィルムとして利用する場合は、偏光膜の透過軸とフィルムの面内遅相軸を平行に配置する場合が多い。連続的に製造された長尺の偏光膜の透過軸は、一般的に、フィルムの幅方向に平行であるので、長尺の偏光膜と、長尺な本発明のフィルムとを、連続的に貼り合せるためには、本発明のフィルムの面内遅相軸が、フィルムの幅方向に平行であるのが好ましい。そのためには、幅方向により多く延伸することが好ましい。
【0076】
本発明のフィルムの厚さは、使用目的によって異なり、5〜500μmの範囲であることが好ましく、20〜300μmの範囲であることがより好ましく、30〜150μmの範囲であることがさらに好ましい。また、光学用、特にVA液晶表示装置用の光学フィルムとしては、40〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0077】
以上のようにして得られた、本発明のフィルムの一態様は、フィルムの幅が0.5〜3m(好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2m)であり、長さは100〜10000m(より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000m)の長尺フィルムであり、ロール状に巻き取られた形態である。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
【0078】
液晶表示装置の光学補償フィルム等として用いる場合は、フィルムの幅方向のRe(590)値のばらつきは、±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また幅方向のRth(590)値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも、幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
【0079】
(フィルムのRe及びRthの測定)
なお、本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(いずれも商品名、王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(13)及び式(14)によりRthを算出することもできる。
【0080】
【数1】

【0081】
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
【0082】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、「ポリマーハンドブック」(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRにおいてnx、ny、nzが算出される。この算出されたnx、ny、nzによりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0083】
(フィルムの透湿度の測定)
本発明のフィルムの透湿度は、JIS規格JIS Z 0208をもとに、温度60℃、湿度95%RH(相対湿度)の条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。2000g/m2・24h以下とすることにより、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えにくくなり、好ましい。また、本発明のフィルム(好ましくはセルロースアシレートフィルム)に光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えにくくなり、好ましい。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、フィルム(好ましくはセルロースアシレートフィルム)の透湿度を400g/m2・24h以上とすることにより、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、フィルム(好ましくはセルロースアシレートフィルム)によって接着剤が乾燥しにくくなり、接着不良を生じにくくできる。
フィルム(好ましくはセルロースアシレートフィルム)の膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる傾向にある。そこで、本発明における透湿度は、膜厚を80μmに換算した値として述べている。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4,共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のフィルム(好ましくはセルロースアシレートフィルム)試料70mmφを25℃90%RH及び60℃95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、商品名、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求める。
【0084】
<フィルムの残留溶剤量>
本発明では、フィルム(好ましくはセルロースアシレートフィルム)に対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。本発明のフィルム(好ましくはセルロースアシレートフィルム)を支持体に用いる場合、残留溶剤量を該範囲内とすることでカールをより抑制できる。これは、前述のソルベントキャスト方法による製膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
【0085】
<フィルムの吸湿膨張係数>
本発明のフィルム(好ましくはセルロースアシレートフィルム)の吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましく、15×10-5/%RH以下とすることがより好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、下限値は特に定めるものではなく、吸湿膨張係数は小さい方が好ましい傾向にあるが、より好ましくは、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、本発明のフィルム(好ましくはセルロースアシレートフィルム)を光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
【0086】
本発明のフィルムは他の機能層(例えば、下塗層及びバック層)を有していてもよい。機能層との接着性を改善するために、表面処理を行ってもよい。表面処理の例には、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理が腹案れる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.133Pa〜2.67kPa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などが挙げられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、30頁〜32頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0087】
アルカリ鹸化処理は、特にセルロースアシレートフィルムにおいて有効である。フィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法、又は鹸化液をフィルムに塗布する方法により実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をフィルムに対して塗布するために、濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によってフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がさらに好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
【0088】
本発明のフィルムは種々の分野の部材として用いることができる。特に、光学用材料及び写真感光材料に適する。特に、液晶表示装置用の光学フィルムとして適している。液晶セルの複屈折性を補償する光学補償フィルムとして、及び偏光膜の保護フィルムとして好ましい。
【0089】
本発明のフィルムを液晶表示装置の光学フィルムとして利用する場合は、フィルムに各種の機能層を付与することが実施されるであろう。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶硬化層などである。前記機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止剤、ハードコート層用材料などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、32頁〜45頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0090】
[偏光板]
本発明のフィルム(好ましくはセルロースフィルム)は特に偏光板保護膜用として有用である。偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
本発明のフィルムの処理面と偏光膜とを貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光膜及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
【0091】
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明のフィルムを有する偏光板を液晶表示装置に組み込む際は、該フィルムがどの位置に配置されてもよいが、本発明のフィルムが、液晶セルと偏光膜との間に配置されるのが好ましい。
【0092】
[光学補償フィルム(位相差板)]
本発明のフィルムは、液晶表示装置の光学補償フィルムとして有用である。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、液晶層の複屈折性を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
【0093】
光学補償フィルムに求められる光学特性は、いずれのモードの液晶表示装置に用いられるかによって異なる。
例えば、VAモード及びOCBモード液晶表示装置の視野角改善のために用いられる光学補償フィルムとしては、Re(λ)値及びRth(λ)値が、それぞれ、以下の数式(7)、(8)を満たすことが好ましい。また下記数式(7)及び(8)は、偏光板の液晶セル側の保護膜として好ましい特性でもある。
数式(7):0nm≦Re(590)≦200nm
数式(8):0nm≦Rth(590)≦400nm
さらに好ましくは、
数式(7−1):30nm≦Re(590)≦150nm
数式(8−1):30nm≦Rth(590)≦300nm
である。
【0094】
また、本発明のフィルムをVAモード又はOCBモードの液晶表示装置に使用する場合、セルの両側に1枚ずつ合計2枚使用する形態(2枚型)と、セルの上下のいずれか一方の側にのみ使用する形態(1枚型)の2形態がある。
2枚型では、Re(590)は20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rth(590)については70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型では、Re(590)は30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rth(590)については100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
【0095】
なお、本発明のフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光膜の透過軸と、本発明のフィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。保護フィルムとして配置する場合は、上記した通り、偏光膜の透過軸と平行とするのが好ましい。
【0096】
[液晶表示装置]
本発明は、本発明のフィルム及び/又は本発明の偏光板を有する液晶表示装置にも関する。
液晶表示装置は、通常、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光膜を有する。本発明のフィルムは、液晶セルと偏光膜との間に配置される光学補償フィルムとして、又は偏光膜保護フィルムとして利用するのが好ましい。
本発明の液晶表示装置は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)等、いずれのモードの液晶表示装置であってもよい。マルチドメイン構造の液晶表示装置であってもよいし、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置であってもよい。
【0097】
(TN型液晶表示装置)
本発明のフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36,(1997),p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36,(1997),p.1068)の記載に従って作製することができる。
【0098】
(STN型液晶表示装置)
本発明のフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報の記載に従って作製することができる。
【0099】
(VA型液晶表示装置)
本発明のフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのRe値を0〜150nmとし、Rth値を70〜400nmとすることが好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であってもよい。
【0100】
(IPS型液晶表示装置及びECB型液晶表示装置)
本発明のフィルムは、IPSモード及びECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置及びECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、又は偏光板の保護膜としても有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のフィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に本発明のフィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のレターデーション値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
【0101】
(OCB型液晶表示装置及びHAN型液晶表示装置)
本発明のフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーション値の絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質及び光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38,(1999),p.2837)の記載に従って作製することができる。
【0102】
(反射型液晶表示装置)
本発明のフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号公報、国際公開WO98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報の記載に従って作製することができる。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開WO00/65384号の記載に従って作製することができる。
【0103】
(その他の液晶表示装置)
本発明のフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest,(1998),p.1089)の記載に従って作製することができる。
【0104】
[他の用途]
<ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム>
本発明のフィルムは、また、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムに好ましく用いることができる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のフィルムの片面又は両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、54頁〜57頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されている。
【0105】
<写真フィルム支持体>
さらに、本発明のフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用できる。具体的には、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載に従って、本発明のフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法に従って、作製することができる。
【0106】
<透明基板>
本発明のフィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持たせることもできることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のフィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明のフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15質量%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報に記載の方法を用いることができる。
【実施例】
【0107】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
[セルロースアセテートフィルムの作製]
下記セルロースアセテート溶液組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 318質量部
メタノール(第2溶媒) 47質量部
【0108】
別のミキシングタンクに、重合体(1)、重合体(2)又は比較化合物(1)と、メチレンクロライド87質量部及びメタノール13質量部とを投入し、加熱しながら攪拌して、各レターデーション制御剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液474質量部に上記調製したレターデーション制御剤溶液をそれぞれ36質量部混合し、充分に攪拌してドープを調製した。なお、重合体(1)、重合体(2)又は比較化合物(1)の量がセルロースアセテート100質量部に対して表1に記載の質量部を添加するように、各レターデーション制御剤溶液を調製した。
【0109】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、150℃の条件で、自由端一軸延伸で15%の延伸倍率で横延伸して、セルロースアセテートフィルム(厚さ:92μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフィルムについて、波長450nm、550nm、630nmにおけるRe値を、KOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器(株)製)において各波長の光をフィルム法線方向に入射させて測定した。結果を表1に示す。なお、表1中のNo.1は、レターデーション制御剤溶液を加えないこと以外は同様にして製造されたセルロースアセテートフィルムである。
【0110】
【表1】

【0111】
【化7】

【0112】
表1の結果から、前記式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体を用いなかったフィルム試料No.1は、Re値が著しく小さく、延伸によるRe発現性が得られないことがわかった。また、前記数式(1)及び(2)を満たさず、複屈折Δnの波長分散性に劣ることが理解できる。
また、比較化合物(1)を添加して作製したフィルム試料No.6は、各波長におけるRe値は大きかったものの、前記数式(1)及び(2)を満たさず、複屈折Δnの波長分散性に劣ることが理解できる。
これに対し、本発明の試料(試料No.2〜5)はいずれも各波長におけるRe値が大きく、かつ、前記数式(1)及び(2)を満たし、複屈折Δnが逆波長分散性を示していることが理解できる。
【0113】
さらに、比較化合物(1)を添加した試料No.6と、当該比較化合物(1)と同質量部の本発明の重合体(1)又は重合体(2)を添加した試料No.3及び5とを比較すると、Re(550nm)の値は大きく差がないが、試料No.3及び5は前記数式(1)及び(2)を満たすのに対して、試料No.6は満たさないことが理解できる。
また、重合体(1)又は重合体(2)の添加量を変化させた試料No.2及び3並びに4及び5を比較すると、添加量が増すにつれてRe(550nm)が増大することが理解できる。
【0114】
(実施例2)
[偏光板の作製]
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
上記実施例3で作製したセルロースアシレートフィルムNo.4を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。なお、ケン化処理は以下の条件で行った。
1.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01モル/リットルの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製したセルロースアシレートフィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
市販のセルローストリアシレートフィルム(フジタックTD80UF、商品名、富士フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、70℃で10分以上乾燥した。
偏光膜の透過軸と上記のように作製したセルロースアシレートフィルムの遅相軸とが平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
【0115】
(液晶セルの作製)
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、商品名、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のレターデーション(即ち、液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
【0116】
(VAパネルへの実装)
上記の垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置の上側偏光板(観察者側)には、市販品のスーパーハイコントラスト品(株式会社サンリッツ社製、商品名、HLC2−5618)を用いた。下側偏光板(バックライト側)には、上記実施例3で作製したセルロースアシレートフィルムNo.4を備えた偏光板を、該セルロースアシレートフィルムが液晶セル側となるように配置した。上側偏光板及び下側偏光板は粘着剤を介して液晶セルに貼りつけた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
【0117】
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示5V、黒表示0Vのノーマリーブラックモードとした。黒表示の方位角45度、極角60度方向視野角における黒表示及び、方位角45度極角60度と方位角180度極角60度との色ずれを観察した。作製した液晶表示装置を観察した結果、本発明のセルロースアシレートフィルムNo.4を備えた偏光板を有する液晶パネルは、正面方向及び視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示を実現することがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位を含む重合体を含有する組成物:
【化1】

式中、A1及びA2はそれぞれ、−O−、−NRa−(Raは水素原子又は置換基)、−S−、及び−CO−からなる群から選ばれる基を表し;R1、R2及びR3はそれぞれ置換基を表し;nは0〜2の整数を表し;Xは、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、又はヘテロ環基を表し;L1及びL2はそれぞれ、下記連結基のいずれかを表し;
【化2】

Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜30のシクロアルキル基を表す。
【請求項2】
セルロース化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記セルロース化合物がセルロースアシレートであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1中に記載の一般式(I)で表される繰り返し単位を含む重合体を含有することを特徴とするフィルム。
【請求項5】
セルロース化合物を主成分として含むことを特徴とする請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
複屈折Δn(550nm)が正であり、且つ下記数式(1)及び(2)を満足することを特徴とする請求項4又は5に記載のフィルム:
数式(1) 0.5<Δn(450nm)/Δn(550nm)<1.0
数式(2) 1.05<Δn(630nm)/Δn(550nm)<1.5 。
【請求項7】
偏光子と、請求項4〜6のいずれか1項に記載のフィルムとを有する偏光板。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のフィルム及び/又は請求項7に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−102565(P2009−102565A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277369(P2007−277369)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】