説明

組換えα−フェトプロテイン、その調製のための方法及び手段、それをベースとした組成物、及びその使用

本発明は、微生物学産業及び医薬産業、遺伝子工学、バイオテクノロジーに関する。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)酵母菌系統を、ヒトα−フェトプロテイン(AFP)の構造遺伝子を含む組換えプラスミドDNAの構築をもとに、分泌型の可溶のAFPの合成及び生成をもたらす調節プロモーターの制御下で得、このAFPはヒトAFPの活性と同一又は類似の活性を有する。得られた組換えAFPを有効物質として、腫瘍学、免疫療法、美容学における使用のための、並びにまた、癌及び胎児の病態の診断のための治療用物質を調製するために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物産業及び医薬産業、遺伝子工学、バイオテクノロジーに関する。本発明による組換えα−フェトプロテイン(AFP)は、血清から得られるヒトAFPの活性を保持し、腫瘍学、免疫療法、美容学における使用を意図するものである。
【背景技術】
【0002】
α−フェトプロテイン(AFP)は、哺乳動物の胎児血清の主要成分であり、周産期の発達の間に胎児の肝臓及び卵黄嚢により合成される。出生直後に血清中のAFPレベルは急激に低下し、健康な成年個体ではその発現は検出されなくなる(Deutsch H.F.、1991年、Adv.Canc.Res.、56巻、253〜312頁)。AFPの合成は、肝臓腫瘍の悪性の進行及び胚細胞性奇形芽腫の際に復活し、例えば、急性ウィルス性肝炎又は肝硬変の間に、再生を伴う、肝臓に対する化学的及び機械的損傷の場合に、より低い程度まで検出可能である(Mizejewsky G.J.、2002年、Expert Rev.Anticancer.Ther.、2巻、89〜115頁)。
【0003】
ヒトAFPは、アミノ酸590個から成り、約4%の炭水化物成分を含む糖タンパク質である(Morinaga T.ら、1983年、Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.、80巻、4604〜4608頁;Pucci P.ら、1991年、Biochemistry、30巻、5061〜5066頁)。AFPの主要な特性の1つに、多価不飽和脂肪酸、ステロイドホルモン、金属、レチノイド、疎水性抗生物質などの様々な低分子の化学物質の非共有の収着がある(Aussel S.及びMasseyeff R.、1994年、Biochem.Biophys.Res.Commun.、119巻、1122〜1127頁;Deutsch H.F.、1994年、J.Tumor Marker Oncol.、9巻、11〜14頁)。胎児発達の初期段階では、AFPは、脂肪酸及び他の低分子物質のための輸送担体としてアルブミンに代わる(Deutsch H.F.、1991年、Adv.Canc.Res.、56巻、253〜312頁)。
【0004】
AFP分子は、タンパク質の3次構造の集合の過程の複雑さを大幅に増大させる15の鎖間ジスルフィド結合により結合している3つの球形の構造領域から成る(Morinaga T.ら、1983年、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80巻、4604〜4608頁;Pucci P.ら、1991年、Biochemistry、30巻、5061〜5066頁)。更に、AFP分子の重要な構造上の要素は、分子の正確な受容及び機能を提供する炭水化物成分である(Deutsch H.F.、1991年、Adv.Canc.Res.、56巻、253〜312頁)。
【0005】
アミノ酸残基590個から成るポリペプチド鎖の他に、血清胎児性AFP、又は肝臓癌細胞が分泌するAFPの分子構造は、Nグリコシル化によりアスパラギンに連結する1つのオリゴ糖基を含んでいる(Yamashita K.ら、1993年、Cancer Res.、53巻、2970〜2975頁)。オリゴ糖AFP鎖の構造は異質性であり、様々な因子、即ち、肝臓癌の進行の段階、又は胎児の発達の段階に依存している。オリゴ糖は、AFP分子の構造上の特性に影響を及ぼし、抗原の決定及び受容体結合センターの内容に含まれ得る(Deutsch H.F.、1991年、Adv.Canc.Res.、56巻、253〜312頁)。細菌の細胞で発現される組換えAFPは、血清AFPと異なり、グリコシル化されておらず、これはMurgitaの研究で特徴付けられた生成物の特徴的な違いであり(米国特許第6331611号、第6627440号、第6416734号)、その結果、それを血清の類似体と区別し、酵母菌のシステムで発現される組換えAFPとも区別する構造上及び機能上の特性がある。酵母菌における異種性のタンパク質の発現の間中、血清の類似体におけるのと同じアミノ酸残基に対してそれらのグリコシル化が行われるが、オリゴ糖自体の構造は、鎖の構成、長さ、及び分枝に関して大幅に異なることが知られており、鎖は対応するタンパク質の構造上及び機能上の特性におけるある種の区別も予め決定するものである(Hard K.ら、1998年、FEBS Lett.、248巻、111頁)。
【0006】
AFPは、胚細胞、幹細胞、活性化された免疫細胞、癌細胞、又はある種のレトロウィルスにより形質転換された細胞など、特定のAFP受容体(AFPR)を発現する細胞により、選択的に吸収されることがある(Uriel J.ら、1989年、Jizejewsky G.I.、Jakobson H.I.(編集)、「α−フェトプロテインの生物学的特性(Biological Properties of Alpha−Fetoprotein)」Boca Raton、CRC Press、2巻、103〜117頁)。正常の成熟細胞はAFPを吸収する能力を喪失しており、特定のAFPRを発現しない。AFPのこの特性を考慮して、癌細胞の増殖を抑制する細胞増殖抑制性の物質及び他の物質を腫瘍に送達することを目標にする目的で、AFPの治療的使用のための方法が提唱されている(Deutsch H.F.、1994年、J.Tumor Marker Oncol.、9巻、11〜14頁;Tsukada Y.ら、1994年、J.Tumor Marker Oncol.、9巻、99〜103頁)。
【0007】
AFPには数々の機能上の特性があり、これらは現在熱心に研究されている。胎児血清アルブミンの類似体としてのAFPの古典的概念を、現在、細胞の増殖、発達、及びプログラムされた死の調節を行うAFPの能力に関するデータが補足している(Mizejewsky G.J.、2002年、Expert Rev.Anticancer.Ther.、2巻、89〜115頁)。特に、組換えAFPは、血清及び培養の類似体と同様に、エストロゲン依存性の腫瘍組織及び正常組織の増殖を抑制することができることが示された(Bennett J.A.ら、1997年、Breast Cancer Res.Treat.、45巻、169〜179頁;Bennet J.A.ら、1998年、Clinical Cancer Research、4巻、2877〜2884頁)。最近では、AFPの腫瘍抑制活性が、典型的な形態学的変化、増殖の阻止、細胞毒性、及びDNAフラグメンテーションを特徴とする、アポトーシスを引き起こすメカニズムにしたがって行われることが確立された(Semenkova L.N.、1997年、Tumor Biol.、18巻、261〜274頁;Dudich E.I.ら、1998年、Tumor Biol.、19巻、30〜40頁;Dudich E.I.ら、1999年、Eur.J.Biochem.、266巻、1〜13頁;Semenkova L.ら、2003年、Eur.,J.Biochem.70巻、4388〜4399頁)。
【0008】
初期の研究では、AFPが免疫細胞の分化及び活性化を調節する能力が示された。特に、AFPは、アロ抗原又は自己抗原で活性化された免疫細胞を抑制することができ、様々なサイトカインの遺伝子の発現を阻害することができる(Yamashita K.ら、1993年、Cancer Res.、53巻、2970〜2975頁;米国特許第5965528号)。一方、AFPは、未熟な骨髄細胞、幹細胞、及び胎児細胞の増殖の明らかな刺激を引き起こす(Dudich E.I.ら、1998年、Tumor Biol.、1930〜40頁;米国特許第6627440号)。
【0009】
AFPのこれらの特性、及び、in vivoにおける癌細胞によるAFPの吸収の選択性の増加もまた(Uriel J.ら、1989年、Mizejewsky G.I.、Jakobson H.I.編集、「α−フェトプロテインの生物学的特性(Biological Properties of Alpha−Fetoprotein)」、Boca Raton、CRC Press、2巻、103〜117頁)、自己免疫疾患(米国特許第5965528号)及び腫瘍学的疾患(米国特許第6416734号;Mizejewsky G.J.、2002年、Expert Rev.Anticancer.Ther.、2巻、89〜115頁)の処置において、治療用調製物として医薬におけるその使用のための基礎を明らかにした。更に、AFPは伝統的に、腫瘍学的疾患及び胎児の発達の病態の初期診断のための腫瘍胎児性マーカーとして使用されている(Deutsch H.F.、1991年、Adv.Canc.Res.、56巻、253〜312頁)。しかし、天然のAFPを薬物として使用するということは、原材料が不足しているので、技術的に不可能である。
【0010】
伝統的に、AFPを獲得するための供給源は、妊婦の血清、臍帯胎児血清、又は癌患者の腹水である。明らかに、これらの供給源は、医薬の目的のためのタンパク質物質の生成に許容できない、というのは、第一に、原材料の供給源への接近が特に制限されており、その中のAFP含量は低く、第二にウィルス又はプリオンでの感染の危険性が増え続けているからである。
【0011】
様々な微生物で組換えAFP(rAFP)の発現、及び精製に関する初期のデータが公開された(Yamamoto R.ら、1990年、 Life Sciences、46巻、1679〜1686頁;Nishi S.ら、1988年、J.Biochem.、104巻、968〜972頁;米国特許第5206153号;米国特許第6331611号)。このようにして、ヒトrAFPの細胞内生成が、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)(Yamamoto R.ら、1990年、Life Sciences、46巻、1679〜1686頁;米国特許第5206153号)、及び大腸菌(Escherichia coli)(米国特許第6331611号、Boismenu R.ら、1997年、Protein Expression and Purification、10巻、10〜26頁)で行われた。大腸菌で発現された組換えAFPは、胎児の類似体の免疫調節活性及び腫瘍抑制活性を保持していることが示された(Boismenu R.ら、1997年、Protein Expression and Purification、10巻、10〜26頁;Bennett J.A.ら、1997年、Breast Cancer Res.Treat.、45巻、169〜179頁)。これらの発現システムの主な欠点は、異種性のタンパク質を分泌することができず、その生成が特に低レベルであることである。更に、組換え系統産生株のバイオマスから望ましい生成物を得るには、変性及び復元の更なる過程を行うことが必要とされたが、生成物の収量の大幅な減少をもたらし、結果として費用が実質的に増大した。また、細菌の発現システムを使用する場合には、既知の内毒素活性を有する外皮のリポ多糖での生成物の汚染の問題も重大である。
【0012】
本発明に最も類似する技術上の解決法は、参考文献(Yamamoto R.ら、1990年、Life Sciences、46巻、1679〜1686頁;米国特許第5206153号)に記載されているヒトAFPの系統産生株である。これらの供給源には、ヒトAFPの細胞内生成を行う酵母菌の系統産生株である出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)が公表されており、そのアミノ酸配列は、ラットAFPのシグナルペプチドに対応する更なる切片を含んでいる。この発明は、酵母菌系統の生成物の分泌を同定するが、この生成物はヒト成熟AFPの特性を有し、ヒト成熟AFPの配列に対応する配列番号2のオリジナル配列を有する。この特殊性は、本発明に記載する生成物と、以前に開示されたものとを区別するものである(Yamamoto R.ら、1990年、Life Sciences、46巻、1679〜1686頁;米国特許第5206153号)。更に、引用した参考文献に記載されたこれらの系統の欠点は、細胞内集合に対するメカニズムがなく、液体培養物へのAFPの分泌がないということであり、このため費用が大幅に上がり、精製された組換えAFPを調製用の量で調製する過程をより複雑にし、極めて低レベルのAFPの生成をもたらす。更に、引用した研究の著者らは(Yamamoto R.ら、1990年、Life Sciences、46巻、1679〜1686頁;米国特許第5206153号)修飾された組換えAFPを得たが、その配列はシグナルペプチド及びリンカーペプチドも含み、このタンパク質の構造修飾は、免疫学的特異性の変更をもたらし、その結果、静脈内投与又は皮下投与での免疫反応性の病態の危険性の増大をもたらすので、その医薬への使用の可能性を制限するものである。
【0013】
酵母細胞で、ジスルフィド結合(AFP内で)の形成で正確なフォールディングが起こるタンパク質の生成物を異種性に分泌する場合、重要なのは産生株の細胞での酵母菌のジスフフィドイソメラーゼ(Pdi)の生成レベルである(Shusta E.V.ら、1998年、Nat.Biotechnol.、16巻、773〜777頁)。更に、シャペロン様酵母菌タンパク質Bipの量の増大が、この酵素と相乗する作用をもたらす(Robinson A.S.ら、1996年、J.Biol.Chem.、271巻、10017〜10022頁)。
【0014】
酵母菌はプロテイナーゼの分泌がない生物体であると伝統的にみなされているが(Chung B.H.及びPark K.S.、1998年、Biotechnol.Bioeng.、57巻、245〜249頁)、HSAを含む数々のタンパク質に対して酵母菌を培養する過程でこれらが分解されることが示されており、細胞に付随する未だに未同定のプロテイナーゼの存在に関連している(Chung B.H.及びPark K.S.、1998年、Biotechnol.Bioeng.、57巻、245〜249頁;Kang H.A.ら、2000年、Appl.Microbiol.Biotechnol.、53巻、575〜582頁)。列挙した要因は全て、液体培養物中に効果的に分泌される、AFPの酵母菌産生株の作成の間中考慮に入れることが必要とされる。
【0015】
現在組換えAFPの調製に存在する方法の欠点を考慮に入れると、組換えAFPを発現し、分泌するためのシステムの技術の更なる改良、特に、天然の3次構造の細胞内集合を提供し、望まれる生成物を液体培養物中に引き続き分泌する異種性のタンパク質をより高度に発現する能力を有する新規な組換え系統の開発が必要とされていることが明らかになっている。
【0016】
このように、その特性に関してヒト血清AFPと同一又は類似しており、したがってヒト血清AFPが伝統的に使用されている分野においてそれを使用することを可能にする、産業的に適用可能なAFPの調製方法を開発する必要は、最新技術から客観的に続いているものである。
【0017】
記載した目的の達成は、その特性に関してヒト血清AFPと同一又は類似のポリペプチドを培養基中に生成することができる、新規な微生物の系統を作り出すことにより可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
その特性がヒト血清AFPの特性と同一又は類似の組換えAFPを調製するために、分泌された可溶性の形態のAFPの合成及び生成をもたらす系統産生株を開発することが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
ヒト成熟AFPの活性を有するタンパク質をコードするDNA配列を含むプラスミドで、親系統を形質転換することにより遺伝子工学の方法を使用して系統産生株を得た。
【0020】
酵母菌の発現システムで生成された分泌された組換えAFPは、ヒト成熟AFPの特性と同一又は類似の特性を有し、この特性は、免疫学的分析で決定され、B細胞Rajiリンパ腫、及び、in vitroの培養物におけるアポトーシス誘導性の作用に感受性な他のヒトの細胞系の増殖を抑制するその能力により決定される。このAFPは、得られたAFP、及び、伝統的な方法により得られ配列番号2で表したアミノ酸配列を有するヒト成熟血清AFPと同一の作用機序を提供する。本発明によるAFPを調製する方法を行うための条件により、天然のヒトAFPと比べて欠点が最小のポリペプチドの集合がもたらされる。
【0021】
酵母菌で生成されたヒト組換えAFPとヒト血清AFPとの特性の近接性は、単離の過程は変性−復元のステップを必要とせず、同時に、得られたポリペプチドのグリコシル化、並びに分子のフォールディング及びジスルフィド結合の形成ももたらすという点で、プラスミドの組成においてヒト成熟AFPをコードするDNA配列を含む発現カセットを含むことにより提供される。酵母菌の発現システムで分泌型で生成された組換えヒトAFPは、N型によりグリコシル化されているが、特許(Murgita R.A.米国特許第6331611号、第6627440号、第6416734号)に記載されている組換え細菌AFPはグリコシル化されていないという点で、プロユーカリオティック(proeukaryotic)の発現システムで生成された組換え類似体と異なる。酵母菌の発現システムで分泌型で生成されたヒト組換えAFPは、オリゴ糖鎖の組成及び構造により血清の類似体と異なるが、オリゴ糖鎖の組成及び構造は、酵母菌の系統及び栄養培地に含まれる糖の組成により決定される。
【0022】
宿主細胞から必要とされる活性を有する分泌されたタンパク質の高収率を得るために、AFP遺伝子をコードするプラスミドに、いくつかのさらなる遺伝子を加えたが、さらなる遺伝子は、高レベルの遺伝子の転写、分泌の過程におけるタンパク質のフォールディング、及びジスルフィド結合の正確な形成をもたらした。
【0023】
その結果、AFPを発現し、分泌するために細胞を形質転換する能力を有するpKXプラスミドが得られた。
【0024】
前述のプラスミドの助けで、組換えα−フェトプロテインを分泌する能力を有する真核生物の産生株細胞を得た。
【0025】
好ましい変異株では、出芽酵母YBS723のレシピエント系統を始原細胞として使用したが、この系統はRussian Collection of Industrial Microorganisms(VKPM)にNo.Y−3115で寄託されている系統産生株出芽酵母YBS723/pKXを得るために、pKXプラスミドにより形質転換されたものである。
【0026】
形質転換された系統を培養する間、AFPは、伝統的な生化学的方法を使用してそれから純粋な形態で単離することができる培地中に分泌される。
【0027】
形質転換された細胞から得られた、単離されたAFPを、腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤組成物の成分で用い、薬剤組成物は、得られたAFP並びに薬学的に許容できる担体及び賦形剤を含む。
【0028】
単離したAFPを、腫瘍細胞の増殖を阻害する相乗作用の組成物の構成で用い、相乗作用の組成物は、得られたAFP、及び化学療法の調製物、並びに薬学的に許容できる担体及び賦形剤を含む。
【0029】
単離されたAFPを用いて、それをベースとする薬剤組成物、又はその相乗作用の組成物を含む薬剤組成物、癌を治療し、又はその進行を予防するための方法が開発されており、この方法は、有効量のAFP、薬剤組成物、又は相乗作用の組成物を患者に投与することを想定するものである。
【0030】
得られたAFPは、ヒト血清AFPの特性に関して類似しているので、得られたAFPは、免疫抑制作用及び免疫調節作用を有する相乗作用の組成物の構成で用いられ、この場合、組成物は、AFP、及びシクロスポリンC、並びに薬学的に許容できる担体及び賦形剤を含む。
【0031】
単離されたAFP、又は前述の相乗作用の組成物を使用して、自己免疫疾患を治療し、免疫状態を正すための方法が開発されており、この方法は、有効量のAFP又は相乗作用の組成物をシクロスポリンCと共に患者に投与することを含む。
【0032】
幹細胞の増殖を刺激するAFPの能力を考慮して、本発明者らは、幹細胞の増殖を刺激する薬剤組成物を提唱しており、この組成物は、得られたAFP、並びに薬学的に許容できる担体及び賦形剤を含み、並びに幹細胞の増殖を刺激する相乗作用の組成物も提唱され、この組成物は、得られたAFP、及びビタミンA、E、Dの誘導体、抗酸化剤、ステロイドホルモン、植物起源のイソフラボンを薬学的に許容できる担体及び賦形剤と共に含む。
【0033】
単離されたAFP、前述の薬剤組成物又は相乗作用の組成物を使用して、in vitroで幹細胞の増殖を刺激するための方法が提唱され、この方法は、有効量のAFP、又は対応する組成物で細胞に作用することを含む。
【0034】
更に、in vivoで幹細胞の増殖を刺激するための方法が提唱され、この方法は、患者に有効量のAFP、又は前述の薬剤組成物若しくは相乗作用の組成物を投与することを含む。
【0035】
単離されたAFPの機能的活性に基づいて、皮膚を若返らせ、皮膚の老化を防ぐための美容用組成物が提唱されており、組成物は、得られたAFPを美容上許容できる担体及び賦形剤と共に含み、任意選択でビタミンA、E、Dの誘導体、抗酸化剤、ステロイドホルモン、植物起源のイソフラボンを含む。
【0036】
得られた美容用の組成物を、皮膚を若返らせ、皮膚の老化を防ぐために使用する方法が、本発明の枠組み内で提唱され、この方法は、組成物を個体の皮膚上に適用することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明を理解するために、主な技術上の目的は、望まれるタンパク質を液体培養物中に効果的に分泌することができるAFPの酵母菌産生株の系統を作成することであった。この目的は、ヒトAFPの調節された合成をコードする組換えDNAのpKXプラスミド、及び、溶解した分泌型のAFPの10mg/l以上の発現レベルの合成及び生成をもたらす出芽酵母YBS723/pKX系統を構築することにより解決される。溶解した分泌型の望まれるタンパク質の高レベルの合成は、pKXプラスミドが、シャペロン重鎖結合タンパク質BiPをコードするKAR2遺伝子の同時の増幅と共にGAL1遺伝子のプロモーターを含むという点でもたらされる(Robinson A.S.、ら、1996年、J.Biol.Chem.、271巻、10017〜10022頁)。レシピエントの系統のゲノムでは、タンパク質の分泌プロセスの間中ジスルフィド結合の形成に関与するジスルフィドイソメラーゼ酵素をコードするPD11遺伝子の増幅がある(Robinson A.S.ら、1996年、J.Biol.Chem.、271巻、10017〜10022頁)。
【0038】
組換えプラスミドDNAは、遺伝子の高レベルの転写をもたらすGAL1プロモーター遺伝子、及び、シャペロン重鎖結合タンパク質BiPをコードし、タンパク質に対する分泌プロセスの間中タンパク質のフォールディングに関与し、望まれるタンパク質の液体培養物中への高レベルの生成をもたらすKAR2遺伝子の制御下で、ヒトAFP遺伝子を含む。更に、ジスルフィド結合の正確な形成、及びタンパク質の天然の3次構造の形成をもたらすために、ジスルフィドイソメラーゼをコードするPS11遺伝子を用いる。
【0039】
ヒトAFP遺伝子をコードする組換えpKXプラスミドDNA(図1)は、以下の特徴により特徴付けられる。
ヒトAFPを効果的に分泌するための発現プラスミドである。
サイズは13301bpである。
配列番号2のヒト成熟α−フェトプロテインのアミノ酸配列をコードするフラグメントを含む。
【0040】
細菌のプラスミドであるpUC18のフラグメント、2−μmの酵母菌プラスミドの開始領域、選択的な酵母菌マーカーPGK1、シャペロン重鎖結合タンパク質BiPをコードするKAR2酵母菌遺伝子、ジスルフィドイソメラーゼ酵素をコードするPD11遺伝子、AFPゲノムを有する発現カセットを含む。
配列番号1のヌクレオチド配列が表す発現カセットの構造には、GAL1酵母菌遺伝子のプロモーター領域、MFα1酵母菌遺伝子の分泌のプレプロ領域、ヒト成熟AFPをコードする領域、CYC1酵母菌遺伝子の転写終結のフィールドが含まれる。このプラスミドを細胞中に導入すると、高度に効果的なGAL1プロモーターの使用によりAFP遺伝子の高レベルの転写が実現される。コード領域が液体培養物におけるヒト成熟AFPをコードするDNA配列に対応する場合は、MFα1の分泌のプレプロ領域を導入することで、予想される配列番号2のアミノ酸配列でのタンパク質の効果的な分泌を伴うAFPの正確な分泌のプロセシングがもたらされる。
提唱されたプラスミド構築の著しい差異は、afp遺伝子は高度に効果的なGAL1プロモーターの制御下にあること、並びに、ジスルフィド結合の正確な形成、及びタンパク質の天然の3次構造の形成をもたらすためにPD11及びKAR2遺伝子を用いることである。
【0041】
指摘されたプラスミドでのそのような形質転換を受けやすいあらゆる真核生物細胞を、作成したプラスミドの助けで形質転換することができる。形質転換の方法及びステップは当業者にはよく知られているので、細胞の選択は重要ではない。しかし、細胞のタイプ、及び得られた形質転換体を培養するための状態に応じてAFPの発現のレベルが変化しうるが、必要なペプチドの発現の事実が、親細胞の形質転換が成功する条件下で起こる。
【0042】
遺伝子型pgk1/pgk1のレシピエント系統YBS723を用いて、出芽酵母YBS723/pKXの系統を得た。pgk1/pgk1のホモ接合体により、酵母菌の出芽酵母が標準の消化可能な範囲内である任意の単一の炭素源を含む培地全てにおいて、この系統が増殖することが不可能になっている。gal80::PD11/gal80::PD11のホモ接合体は、GAL1遺伝子のプロモーターの調節の変化をもたらし、ジスルフィドイドイソメラーゼ酵素をコードし、タンパク質の分泌過程の間中ジスルフィド結合の形成に関与するPD11遺伝子のゲノムを同時に増幅する。
【0043】
YBS723系統は、この方法(Ito H.ら、1983年、J.Bacteriol.、153巻、163〜168頁)にしたがってpKXプラスミドにより形質転換される。形質転換は、炭素源として2%グルコースを含むフルバリュー(full−value)の酵母菌培地(バクトペプトン20g/l、酵母抽出物10g/l、バクトアガー20g/l)上で増殖する能力にしたがって選択された。このようなクローンの1つは、YBS723/pKXと呼ばれる。
【0044】
得られた2倍体の酵母菌系統出芽酵母YBS723/pKXは、以下の特徴により特徴付けられる:
遺伝子の特徴:遺伝子型pgk1/pgk1 gal80::PD11/gal80::PD11;
形態学的特徴:2%グルコースを単一の炭素源とする固形栄養培地上に増殖した48時間培養の栄養細胞は、長円形の形状で、細胞の大きさは3.6×7.1μmであり、原形質(protoplasma)は均質であり、繁殖は出芽による。酵母抽出物及びペプトン(YEP)を含む固形培地上で30℃で増殖させると、増殖の72時間後にカラム(column)は以下の外観を呈する:
1)グルコースを含むYEP培地上−辺縁は滑らかで、表面は光沢があり、円錐形の輪郭で、クリーム様の粘稠性のある白色カラム
2)デンプンを含むYEP培地上−辺縁は凸凹で、表面は光沢がなく、レンズ様の輪郭で、粒状の粘稠性の白色カラム
3)糖みつを含むYEP培地上−表面に鈍いしわがあり、辺縁は凸凹で、凸面体の輪郭で、クリーム様の粘稠性のある白色カラム
液体培地における増殖−デンプンを含むYEP培地32℃で、培養後最初の24時間の間に、液体は白濁し、白色の残留物を生じ、固まらず、頭頂膜を形成しない。
物理化学的特徴:通性嫌気性。増殖温度−23〜33℃(最適31℃)。培養のpH3.8〜6.7(最適5.0)。AFP分泌の最高レベルはpH6.8〜7.0でみられる。
炭素源の同化作用:グルコース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、サッカロース、デキストリン、デンプンを発酵する。
窒素源の同化作用:アミノ酸、尿素、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムを同化する。
特徴的な特異性:デンプンに富む(2%)培地上で培養した場合に、ディッシュで+4℃、24時間培養後、暗色の縁に取り囲まれたデンプンの退色帯が表れる。
病原性:出芽酵母YBS723/pKX系統に病原性はない。
貯蔵方法:この系統は、グルコースを含むアガライズドの(agarized)リッチな培地上で、+4℃で3カ月間貯蔵される。
【0045】
得られた出芽酵母YBS723/pKX系統は、分泌型のAFPの産生株であり、Russian Collection of Industrial Microorganisms(VKPM)にNo.Y−3115で寄託されている。
【0046】
本出願者らが提唱する組換えAFPの細胞系統産生株は、既存の原型にまさる数々の利点を有している:
望まれる生成物の生成が、液体培養物中に分泌型で行われる。
最終生成物のアミノ酸配列が、配列番号2のヒト成熟AFPの配列に対応する。
血清の胎児性の類似体と同様、出芽酵母YBS723/pKX系統産生株が生成したrAFPはグリコシル化されている。
ジスルフィド結合の形成をもたらすジスルフィドイソメラーゼ酵素PD11をコードする遺伝子、並びに、タンパク質の正確な集合及び望まれる生成物の培養基中への分泌をもたらすシャペロン重鎖結合タンパク質BiPをコードするKAR2遺伝子の発現の増大により、望まれる生成物の収量は大幅に増大する。
【0047】
DNAをコードする配列は、全体としてフェトプロテインの不活性型の獲得をもたらすことのない、遺伝暗号の変性に関する置換、及び、いくつかの置換、挿入、欠失を含むことがあることは全く明らかである。可能な変形は、当業者であれば知っている。得られたポリペプチドは、あるアミノ酸の、類似の特性を有する別のアミノ酸との置換を想定すると、アミノ酸配列の枠組み内の保存的アミノ酸置換も含むことができる。しかし、本発明が請求する特徴の範囲内では、1次、2次、及び3次構造を有する、得られたポリペプチドの必要とされる活性を妨害することがない、特に、免疫学的分析、及びin vitroの培養でB細胞Rajiリンパ腫の細胞の増殖を抑制するその能力にしたがって決定して、ヒト成熟AFPの特性と同一又は類似の特性を有するこれらのポリペプチドだけが存在する。
【0048】
得られたポリペプチドがヒト成熟血清AFPの特性を有すると考えられている機能上の活性の指標を、免疫学的反応にしたがって、及び、ヒト成熟血清AFPの活性の10%以上のレベルでB細胞Rajiリンパ腫の細胞の増殖をin vitroで阻害するその能力にしたがって決定する。
【0049】
組成物の構成の中で得られたポリペプチドを実際に使用する場合には、賦形剤、希釈剤、保存剤、バッファー溶液、生理学的溶液、塩化ナトリウムの0.9%溶液、薬物形態の生成中に用いる技術的な添加物などの、伝統的な更なる構成成分を用いる。組成物は、非経口、経口、静脈内、筋肉内などの投与又は外用の使用に供する、液体(溶液、懸濁液、クリーム、乳液など)でもよく、固体(使用前に再構成する凍結乾燥粉末、担体上に吸着させた調製物など)でもよい。その場合、外用の使用の組成物は、組織における有効物質の吸収及び拡散を促進する添加物を含むことができる。
【0050】
本発明の相乗作用の組成物は、別の有効物質の、組成物における存在を提供し、この場合、2つの有効物質が同時に存在する場合には、その1つは本発明によるAFPであり、これらの作用の効果は、各物質を別々に用いた場合よりも相対的に高い。
【0051】
当業者であれば各有効成分を別々に投与する変形が明らかであるので、相乗作用の組成物は、本発明の実施形態の好ましい変形の1つであることは、きわめて明白である。例えば、抗癌治療の場合には、有効成分の各調製物を、投与時間により、又は様々な投与方法により分けて、別々に投与することも、同時に一緒に投与することもできる。具体的な選択は、患者の状態、疾患の重症度、以前の治療などによる。
【0052】
処置のための治療投与量の選択は、必要とされる治療効果が得られるのであれば、患者の体重1kgあたり0.001〜10mgの広範囲における任意の投与量であることができる。得られたAFPは、活性に関して類似又は近接の特性を有するので、これはヒトAFPの伝統的な投与量に対応する。本発明によるAFPは、ヒトの正常の免疫系が「異物」として認識しない類似のアミノ酸配列を有するので、その限定的な投与量は、ヒトAFPの投与量に対応する。
【0053】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらは限定的な性質のものではなく、しかし、本発明の実施形態を実証することを意図し、実施形態の最良の変形の理解を意図するものである。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
sumRNAの単離、及び中間体の組換えプラスミドDNApTrcafpの構築
製造元の方法にしたがって、Trizol Reagent(Gibco BRL、米国)の助けで、ヒト肝細胞癌HepG2の細胞系から全mRNAを単離した。遺伝子afpの3’末端に相補的なプライマーオリゴ(dT)18、又はGAAGTAATTTAAACTCCCAAAGC(3R)の存在下で、First Strand cDNA Synthesis Kit(MBI Fermentas)を用いて、cDNAを得た。引き続きクローニングをするために得られたマトリックスの増幅は、
【化1】


のプライマーの存在下で行ったが、その1番目は成熟タンパク質遺伝子の5’配列に対応し(太文字で選び出したもの)、制限酵素ClaIの認識部位を含み、2番目は遺伝子の3’末端切片に相補的であり(太文字で選び出したもの)、HindIIIの認識部位を含む。遺伝子の増幅は、100μlの体積で行った。反応混合物には、cDNA10ng、プライマー(1)及び(2)各30pM、dNTPの混合物(各0.2mM)、Tris−HCl 10mM、pH8.8、KCl 10mM、MgSO2.5mM、DNAポリメラーゼ2.5単位Pfu(Stratagene社)、及びTaq DNAポリメラーゼ1単位(Fermentas社)が含まれていた。95℃/40秒、39℃/40秒、72℃/1分の計画にしたがって25サイクルを行った。反応生成物を、1%アガロースゲルで電気泳動して分析し、約1790bpの長さの細片を切り出し、ゲルからDNAを抽出し、制限酵素ClaI及びHindIIIで処理し、ベクターpTrc99Aをベースにして先に得られたプラスミドpTrcTEGF中にクローニングし(Amann E.ら、1988年、Gene、69巻、301〜315頁)、これらの同じ制限酵素で処理した。その結果、プラスミドpTrcafpが得られ、どのクローニングが行われたかに関して制限酵素ClaI及びHindIIIを用いて、また、その認識部位がAFP遺伝子の内部にあるSpeI、MunI、SecI、及びStyIを用いて制限酵素分析により確認し、PCRの助けでクローニングしたDNA切片のヌクレオチド配列の決定により、その構造を確認した。この方法にしたがって、また、Cycle Reader(登録商標)DNA Sequencing Kit(Fermentas、リトアニア)を使用して配列決定を行った。
【0055】
(実施例2)
ヒトAFP遺伝子をコードする合成cDNAの調製
合成されたAFP遺伝子を得るために、62〜68bの長さを有する36のオリゴヌクレオチドを化学的に合成した。これらのオリゴヌクレオチドをベースにして、ポリメラーゼ連鎖反応の方法により、そのそれぞれがベクターpUC18にクローニングされる2本鎖フラグメントを6つ得た。クローニングされたフラグメント全ての1次構造を、配列決定により確認した。正確なヌクレオチド構造を有するフラグメントを、次いで、プラスミドpUC18のフラグメントの形態で、制限/ライゲーションの方法により望ましい遺伝子中に逐次的に回収した。同様の方法で、欠失、変異、又はアミノ酸残基の付加を含む、修飾型のAFPを発現するためにcDNAを得た。
【0056】
(実施例3)
組換えプラスミドDNApKXの構築
プラスミドpTrcafpを、プライマー
【化2】


の存在下で、PCR用のマトリックスとして用いた。
【0057】
制限部位NcoI及びXhoI(下線付き)を、プライマーの配列にセットする。制限酵素NcoI/XhoIで処理後、増幅の結果として得られたDNAフラグメントを、プロモーターGAL1及び分泌のMFα1のプレプロ領域を含むベクターpUC18/GAL1−pp上にクローニングした。その結果、プラスミドpUC18/GAL−1pp/afpが得られた。PCRの可能なエラーを排除するために、プラスミドのNcoI/XhoIフラグメントの配列を決定した。プロモーターGAL1、分泌のMFα1のプレプロ領域を含み、ヒトAFP遺伝子の部分をコードする(図2)プラスミドpUC18/GAL−1pp/afpのHindIII/XhoIフラグメントを、HindIII/Xholバイレプリコン(bireplicon)(酵母菌−大腸菌)ベクターpPDXに移した。その結果、プラスミドpPDX/GAL−pp/afpが得られた。プラスミドpPDX/GAL1−pp/afpのClaI/XhoIフラグメントを、KAR2遺伝子の存在によりpPDXと異なるpPKのClaI/XhoIベクターに移した。その結果得られたプラスミドを、pKXと命名した(図1)。同様の方法で、最も広く使われている酵母菌コドンから成る合成ヒトAFP遺伝子を含むプラスミドpKX−1を得た(図3)。プラスミドpKX−1は、ヒト成熟AFPの合成遺伝子を含むという点で、pKXと異なる。
【0058】
(実施例4)
ヒトAFPの系統産生株の獲得
出芽酵母YBS723/pKX系統を得るために、この方法(Ito H.ら、1983年、J.Bacteriol.、153巻、163〜168頁)によりプラスミドpKXにより、レシピエント系統YBS723を形質転換した。形質転換体は、炭素源として2%グルコースを含むフルバリューの酵母菌培地(バクトペプトン20g/l、酵母抽出物10g/l、バクトアガー20g/l)上に増殖できるかどうかによって選択した。このようなクローンの1つを、YBS723/pKXと呼ぶ。
【0059】
(実施例5)
ヒトAFPの系統産生株出芽酵母YBS723/pKXの生産性の決定
系統産生株YBS723/pKXの細胞を、バイアルで、以下の成分:グルコース2%、グリセリン1.5%、酵母抽出物1%、ペプトン2%、蒸留水の培地上で、ロッカー(250rpm)上26℃で増殖させた。0.1Mリン酸バッファーを添加して、培地のpHを7.0に維持した。細胞の最初のタイターは、5×10であった。増殖のタイターが7〜8×10の定常期に移行した後、培養液の増殖72時間後に試料を採取した。培養物を10000rpmで1分間遠心分離した後に、液体培養物の試料を得、以下の分析で用いた。CLの試料を、ドデシル硫酸ナトリウムを含む12.5%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動することにより分析した。ゲルをCoomassie R−250で着色し(図4)、スキャンして、全タンパク質及びAFP特異的タンパク質の相対的含有量を決定した。電気泳動及びスキャニングのデータによると、CLにおけるAFPの全含有量は全タンパク質の約10〜25%であるが、タンパク質の部分的な細胞内変性が存在する。CLにおけるAFPの相対的含有量を、AFPに対するポリクローナル抗体の存在下で免疫ブロット法の方法により決定した(図4)。液体培養物におけるAFPの定量的含有量も、ヒトAFPに対するモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のセットを用いて、免疫酵素学的分析(IEA)法により決定した。IEAのデータによると、液体培地におけるCLにおけるAFPの平均含有量は、5mg/lに達した。
【0060】
(実施例6)
高密度培地における、ヒトAFP系統産生株出芽酵母YBS723/pKXの生産性の決定
YBS723/pKX系統の流加培養を、26℃、pH7.0の発酵槽(自動維持)で行った。溶存酸素dOの含有量を、>20%に維持した。発酵の間中、以下の組成の培地で補給を行った:酵母抽出物30g/l、ペプトン60g/l、グルコース100g/l。補給物の供給は、培養物の増殖速度μ=0.03をもたらすような速度であった。最適の280単位に等しいOD50を達成した後、CLにおけるAFPの含有量を分析した。YBS723/pKXの高密度培養物のCLにおけるAFPの相対的含有量及び全含有量を、上記実施例4に記載した通りに決定した。高密度培地で培養する場合には、IFAデータによるCLにおけるrAFPの含有量は70mg/lに達した。
【0061】
(実施例7)
系統産生株YBS723/pKXのCLからのヒト組換えAFPの単離及び特徴付け
系統産生株YBS723/pKXのCLからのrAFPの単離を、以前の記載(Dudichら、1999年、Biochemistry、38巻、10406〜10414頁)に少々変更を加えて行った。液体培養物は、細胞濃縮用「Millipore」上で限外ろ過により3lから200mlに濃縮し、0.005M Tris−HCl、pH7.5、0.1M NaClバッファー、4℃に対して透析し、次いで、0.5時間、10000rpmで遠心分離した。
【0062】
イオン交換クロマトグラフィー
遠心分離後に得られた上清を、イオン交換カラムDEAE−セファロース Fast Flow(Pharmacia、27×4cm)上に適用し、0.01M Tris−HCl、pH7.5、0.1M NaClで平衡にした。吸着剤に結合しない成分は開始バッファーでカラムから洗浄し、望ましい生成物の溶出は0.2M NaClのTris−HClバッファー溶液、pH7.5で、1ml/分の速度で行った。
【0063】
アフィニティークロマトグラフィー
rAFPを含む分画を合わせ、NaClの濃度を0.5Mとし、0.05M Tris−HCl、pH7.5及び0.5M NaClで平衡にしたポリクローナル抗−AFPウサギ抗体と複合させたセファロースCL−4Bを含むアフィニティーカラムに適用した。タンパク質の抗体に結合していないタンパク質のアウトプットの後、吸着されたrAFPを0.005M HClで溶出した。pHを5.0から3.5に達成した際の材料のアウトプットのピークを、280nmにおける吸光度により決定した。rAFPの溶液に、2MのTris−HCl溶液、pH7.5を添加することによりpH7.5に中性化した。
【0064】
ゲルクロマトグラフィー
rAFPの更なる精製を、Sephacryl S−200(1.8×7.0cm)の0.1Mリン酸バッファー溶液、pH7.0;0.15M NaClを含むカラムで、速度0.5ml/分で、ゲルクロマトグラフィーによって行った。精製したrAFPの溶液を、窒素の圧力下、細胞「Amicon」(膜YM−30)に濃縮した。
【0065】
試料の分析
得られたrAFP調製物の同定及び純度を、β−メルカプトエタノールを含む12.5%SDS−PAGEでLammlyによるゲル電気泳動の方法により調節し、引き続き、Coomassieにより着色し(図4A)、1次抗体1:500、及び2次抗体1:5000の力価でPVDF膜上でウェスタンブロット分析を行い、Hybond ECL−ニトロセルロース膜上でドットブロット(図4B)、IFAを行った。
【0066】
溶液におけるタンパク質の濃度の決定を、胎児AFPの標準溶液を対照として用い、また、278nmの分光光度法で、Bredford法により消失係数E1%,278nm=0.53を考慮に入れて、278nmの吸光度測定を行った。
【0067】
(実施例8)
in vitroにおけるヒト組換えAFPの生物学的活性の決定
rAFP及びその修飾型の機能上の活性を、以前に記載されたように、in vitroの培養物中でB細胞Rajiリンパ腫の細胞の増殖を抑制するその能力にしたがって決定した(Semenkova L.N.、1997年、Tumor Biol.、18巻、261〜274頁;Dudich E.I.ら、1998年、Tumor Biol.、19巻、30〜40頁)。新鮮な培地で予備的に洗浄したRaji細胞を、10%ウシ胎児血清の存在下RPMI−1640培地0.1ml中5×10にしたがって96胞状プレートの各セル中に配置し、次いで、12時間、様々な投与量のAFPを添加した。細胞の増殖を、培養の終わりの4時間の間に[H]−チミジンの導入による標準方法により測定した。比較のために、胎児起源のembrAFP及び酵母菌rAFPの2つのAFPの試料で、用量依存性の反応性を試験した(図5)。両調製物とも、これらの細胞に関して、細胞増殖抑制性の活性の発現を表すことは明らかである。同様に、in vitroでAFPに基づいて調製物の活性を決定するために、AFPの抑制作用に感受性がある、ヒト肝臓癌HepG2、乳癌MCF−7、前立腺癌LnCap、骨髄芽球腫U−937、及びその他などの、癌細胞の任意の他の系統を用いることができる(Semenkova L.N.、1997年、Tumor Biol.、18巻、261〜274頁;Dudich E.I.ら、1998年、Tumor Biol.、19巻、30〜40頁)。
【0068】
(実施例9)
抗癌調製物としての組換えAFPの使用
rAFP及びその修飾型をベースにした抗癌調製物を、原発性の又は転移の肝臓癌、血液の癌(白血病、骨髄芽球腫、リンパ腫)、乳癌、前立腺癌などの悪性新生物の増殖を阻止するために用いることができる。AFPに対するこのタイプの腫瘍細胞の感受性を決定するために、in vitro及び、またin vivoでも異なる方法を使用することができる。in vitroで活性を決定する方法は、先の実施例8に記載してある。in vivoでAFPをベースにした調製物の腫瘍抑制作用を決定するために、例えば、Raji、HepG2、LnCap、MCF−7、及びその他などの癌細胞のヒト系統を皮下に、又は腹腔内に埋め込んだヌードマウスの使用で、動物に対するモデルを使用することができる。例えば、B細胞Rajiリンパ腫の細胞を、マウス1匹あたり1〜5×10の量で皮下投与した。AFP及びその誘導体の投与を、腫瘍細胞を1〜10mg/kgの量で腹腔内又は静脈内に埋め込む7日前に開始した。生理学的バッファー溶液(PBS)を、対照として用いた。腫瘍の大きさを、マイクロメーターの助けで毎日測定して、評価した。
【表1】

【0069】
酵母菌rAFP又はその誘導体をベースにした調製物を投与する方法は、その中に、同時に又は逐次に化学療法の調製物を投与することも含むことができる。このような化学療法の調製物の例として以下のものを挙げることができる:ドキソルビシン、ビンクリスチン、フルオロウラシル、メタトレキセート(metatrexate)、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、タモキシフェン、フルタミド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シクロスポリン、レチノイド、カロチノイドなど。通常、化学療法の調製物は、標準の投与量、又は通常の治療用より少ない最適以下の投与量で投与することができる。rAFPとドキソルビシンと(A)、及びrAFPとオールトランスレチノイン酸(tRA)と、の組合せ作用の効果を、例として図6に示す。調製物の同時投与の場合には、最適以下の投与量の使用の場合の相乗作用の腫瘍抑制効果が観察される。
【0070】
(実施例9)
幹細胞の増殖を刺激するための組換えAFPの使用
肺、及びヒト網膜の胎児性の繊維芽細胞の1次培養物を、合法の妊娠中絶後に得た5〜10週の胎児の対応する組織の0.2%トリプシン溶液で処理することにより得た。細胞を、10%ウシ胎児血清(CFS)の存在下、RPMI−1640培地で培養した。AFPの細胞増殖抑制作用を、以前に記載された通りに測定した(Semenkova L.N.、1997年、Tumor Biol.、18巻、261〜274頁;Dudich E.I.ら、1998年、Tumor Biol.、19巻、30〜40頁)。0.15mlの培地に4×10の量の細胞を、新鮮な培地で徹底的に洗浄し、96弓形プレートの各セルに配置し、次いで、様々な投与量のAFPを加え、24時間培養した。細胞の増殖を、培養の終わりの4時間の間に、[H]−チミジンを含むことによる標準方法により測定した。
【0071】
AFPの細胞の増殖に対する投与量依存性の効果も、ヒト胎児性繊維芽細胞の1次培養物に対して試験した。AFPは、これらの細胞に刺激効果を有し、対照の50〜90%に達した(図7)。
【0072】
(実施例10)
美容学における組換えAFPの使用
AFPは肝細胞の増殖を刺激する能力を有し、胎児の細胞に対する増殖因子であるという事実を考慮すると、美容用のマスク、クリーム、及びローションの調製物に対する使用の可能性が提唱されている。rAFPは、リポソーム、ミクロソーム、及びナノソームのための賦形剤として用いることができる。AFPは、疎水性のリガンド、特に脂溶性ビタミン、ステロイド、イソフラビノイド、多価不飽和脂肪酸と結合することができるという事実を考慮して(Deutsch H.F.、1991年、Adv.Canc.Res.、56巻、253〜312頁;Aussel C.及びMasseyeff R.、1994年、Biochem.Biophys.Res.Commun.、119巻、1122〜1127頁;Deutsch H.F.、1994年、J.Tumor Marker Oncol.、9巻、11〜14頁)、rAFPの、レチノイド、カロチノイド、トコフェロール(tokoferol)、ビタミンDの誘導体などの脂溶性ビタミンとの組合せ使用、エストロゲン及びアンドロゲンの誘導体などのステロイドとの組合せ使用が示されている。このようなステロイドの例として、エストラジオール及びその他を使用することができる。
(参考文献)
Amann E.,Ochs B.,Abel K.−J.(1988) 大腸菌遺伝子での未融合および融合タンパク質の発現に有用な、厳しく調節されたtacプロモーターベクター。69(2):301−15.
Aussel,C.& Masseyeff,R.(1994) アラキドン酸のヒトα−フェトプロテインの結合とのレチノイドおよびビリルビンの相互作用。Biochem.Biophys.Res.Commun.119,1122−1127.
Bennett,J.A.,Semeniuk,D.J.,Jacobson,H.I.& Murgita,R.A.(1997) エストロゲン依存性乳がんの成長阻害剤としての天然および組換えヒトα−フェトプロテイン間の相似性。Breast Cancer Res.Treat.45,169−179.
Bennet,J.A.,Zhu,S.,Pagano−Mirarchi,A.,Kellom,T.A.& Jacobson,H.I.(1998) ヒト肝がん由来のα−フェトプロテインは、エストロゲン依存性ヒト乳がん異種移植片の成長を妨げる。Clinical Cancer Research,4,2877−2884.
Boismenu R.,Semeniuk D.,Murgita R.A.(1997) 大腸菌で発現したヒトおよびマウス組換えα−フェトプロテインの精製および特性。Protein Expression and Purification.10:10−26.
Chung B.H.,Park K.S.(1998) 出芽酵母でのヒト副甲状腺ホルモンの分泌生成中のタンパク質分解減少に対する簡潔な解決法。Biotechnol.Bioeng.57:245−249.
Deutsch,H.F.(1991) α−フェトプロテインの化学および生物学。Adv.Canc.Res.56,253−312.
Deutsch H.F.(1994) α−フェトプロテイン存在下、ヒト腫瘍細胞によるアドリアマイシン−アラキドン酸複合体の取り込み。J.Tumor Marker Oncol.9:11−14.
Dudich,E.I.,Semenkova,L.N.,Gorbatova,E.A.,Dudich,I.V.,Khromykh,L.M.,Tatulov,E.B.,Grechko,G.K.& Sukhikh,G.T.(1998) 様々なタイプの腫瘍および正常細胞に対するα−フェトプロテインの成長調節活性。Tumor Biol.19,30−40.
Dudich E.I.,Semenkova L.N.,Dudich I.V.,Gorbatova E.A.,Tokhtamysheva,N.,Tatulov E.B.,Nikolaeva M.A.& Sukhikh G.T.(1999) α−フェトプロテインは、CD95、TNFR1およびTNFR2から独立した経路を介し、カスパーゼ−3様プロテアーゼの活性化を通じて、腫瘍細胞でのアポトーシスを誘導する。Eur.J.Biochem.,266:1−13
Dudich,I.V.,Tokhtamysheva,N.,Semenkova,L.,Dudich,E.,Hellman,J.及び Korpela,T.(1999) ヒトα−フェトプロテインの2つの安定した消化断片の分離的、構造的、機能的特性。Biochemistry,38:10406−10414.
Ito H.,Fukuda Y.,Murata K.,Kimura A.(1983) アルカリカチオンで処置した無傷の酵母細胞の形質転換。J.Bacteriol.1983,153:163−168.
Hard K,Bitter W,Kamerling JP,Vliegenthart JF.(1989) 出芽酵母で生成されたヒトインスリン様成長因子I(IGF−I)のO−マンノシル化。FEBS Lett.248:111−4.
Quirk A.Y.,Geisow M.J.,Woodrow J.R.,Burton S.J.,Wood P.C.,Sutton A.D.,Lohnson R.A.,Dodsworth N.(1989) 出芽酵母からの組換えヒト血清アルブミンの生成。Bitechnol.Appl.Biochem.11:273−287.
Kang H.A.,Choi E.S.,Hong W.K.,Kim J.Y.,Ko S.M.,Sohn J.H.,Rhee S.K.(2000) 酵母菌出芽酵母で分泌された組換え血清アルブミンのタンパク質分解の安定性。Appl.Microbiol.Biotechnol.53:575−582.
Mizejewsky G.J.(2002) がんにおけるα−フェトプロテインの生物学的役割:抗がん剤治療に対する展望。Expert Rev.Anticancer.Ther.2:89−115.
Morinaga,T.,Sakai,M.,Wegmann,T.G.,及び Namaoki,T.(1983) ヒトα−フェトプロテインの主要構造およびそのmRNA。Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80,4604−4608.
Murgita R.,免疫抑制剤としての組換えヒトα−フェトプロテイン。米国特許第5,965,528 C07K 14/47,1999.
Murgita R.,細胞増殖剤としての組換えヒトα−フェトプロテイン 米国特許第6,627,440 C12N 005/00,2003.
Murgita R.,がんの治療および診断のための組換えα−フェトプロテイン 6,416,734,A61K 051/00,2002.
Murgita R.A.クローンヒトα−フェトプロテインの発現および精製。米国特許第6,331,611 C07K 014/00,2001.
Nishi S.,Koyama Y.,Sakamoto T.,Soda M.,Kairiyama C.B.(1988) 大腸菌および酵母菌でのラットα−フェトプロテインcDNAの発現。J.Biochem.104:968−972.
Pucci,P.,Siciliano,R.,Malorni,A.,Marino,G.,Tecce,M.,F.,Ceccarini,C.,及び Terrana,B.(1991)Biochemistry 30:5061−5066.
Uriel J.,Laborda J.,Naval J.,Geuskens M(1989) 腫瘍細胞におけるα−フェトプロテインレセプター。An overview;in Mizejewsky G.I.,Jakobson H.I.(eds):α−フェトプロテインの生物学的特性。Boca Raton,CRC Press,vol.2:103−117.
Robinson A.S.,Bockhaus J.A.,Wittrup K.D.(1996) Bipレベルの減少は出芽酵母での異種タンパク質分泌を減少させる。J.Biol.Chem.271:10017−10022.
Semenkova,L.N.,Dudich,E.I.& Dudich,I.V.(1997) α−フェトプロテインによるヒト肝がん細胞でのアポトーシスの誘導。Tumor Biol.18,261−274.
Semenkova,L.,Dudich,E.,Dudich,I.,Tokhtamisheva,N.,Tatulov,E.,Okruzhnov,Y.,Garcia−Foncillas,J.,Palop−Cubillo J.−A.,Korpela T.(2003) α−フェトプロテインは、積極的にチトクロームC−媒介カスパーゼ活性とアポプトソーム複合体生成を調節する。Eur.J.Biochem.70:4388−4399.
Sleep D.,Belfield G.P.,Goodey A.R.(1990) 5つの異なるリーダー配列を使用した酵母菌出芽酵母からのヒト血清アルブミンの分泌。Biotechnology 8:42−46.
Shusta E.V.,Raines R.T.,Pluckthun A.,Wittrup K.D.(1998) 一本鎖抗体フラグメントの生成に対する出芽酵母の分泌能の増加。Nature Biotechnol.16:773−777.
Tamaoki T.,Morinaga T.,Nishi S.(1993) ヒトα−フェトプロテインの生産方法およびその生成物。米国特許第5,206,153,C07K 013/00;C12N 015/62.
Tsukada Y.,Hibi N.,Ohkawa K.,Deutsch H.F.(1994) ラット腫瘍細胞系に対するダウノマイシン不飽和脂肪酸複合体の細胞破壊効果。J.Tumor Marker Oncol.9:99−103.
Yamashita,K.,Taketa,K.,Nishi,S.,Fukushima K.,及び Ohkura T.(1993) ヒト臍帯血清α−フェトプロテインの糖鎖。Cancer Res.53,2970−2975.
Yamamoto R.,Sakamoto T.,Nishi S.,Sakai M.,Morinaga T.,Tamaoki T.(1990) 酵母菌におけるヒトα−フェトプロテインの発現。Life Sciences,46:1679−1686.
【図面の簡単な説明】
【0073】
以下の図は、示した本発明の主題を説明するものである。
【図1】ヒトα−プロテイン遺伝子を有する発現カセット、細菌プラスミドpUC18のフラグメント、2−μm酵母菌プラスミドの複製開始領域、選択的PGK1酵母菌マーカーである、ジスルフィドイソメラーゼ酵素をコードするPD11遺伝子、及びタンパク質の正確な集合及び望まれる生成物を培地中に分泌することをもたらすKAR2遺伝子を含む、ヒト成熟α−フェトプロテインの配列をコードするpKXプラスミドの構造を示す図である。
【図2】pKXプラスミドの組成内にヒトα−フェトプロテインをコードする配列を含む発現カセットの構造を示す図である。GAL1酵母菌遺伝子のプロモーター領域をイタリック体で示してある。MFα1酵母菌遺伝子の分泌のプレプロ領域を太字で示してある。ヒトα−フェトプロテイン分子のアミノ酸配列を大文字で示してある。
【図3】AFPをコードし、最も多く使用される酵母菌のコドンから成る合成遺伝子の構造を示す図である。AFPアミノ酸配列は、血清ヒトAFPのアミノ酸配列と同一であり、太字で選び出してある。
【図4】様々な量の、酵母菌培養物、出芽酵母YBS723/pKX液体培地から得られた精製された組換えα−フェトプロテインを線上に適用したSDS−PAGE電気泳動(A)及び免疫ブロッティング分析(B)の結果を示す図である。p. マーカータンパク質(94、67、43、30、20kD) 2.抗AFP−セファロース(0.3μg)を充填したカラムのアフィニティークロマトグラフィー後のrAFP 3.Sephacryl S−200(0.4μg)を充填したカラムのゲルクロマトグラフィー後のrAFP 4.rAFP(0.1μg) 5.Sephacryl S−200(0.6μg)後のrAFP 6.Sephacryl S−200(0.5μg)後のrAFP 7.胎児性eAFP(0.4μg)
【図5】酵母菌系統産生株出芽酵母YBS723/pKXが発現した胎児性血清eAFP及び組換えrAFPから得られた、精製されたAFPの異なる2個のサンプルについてAFP濃度に関する、B細胞Rajiリンパ腫細胞の増殖の用量依存性を示す図である。細胞の増殖を[H]−チミジンの取り込みにより測定し、AFPとの12時間培養後の実験用培養物における増殖の阻害の、添加物のない対照に対するパーセント値で表した。
【図6】(A)骨髄芽球腫U937細胞に関し、本発明によるrAFPと組合せ使用したドキソルビシンの腫瘍抑制作用の相乗的増強を示す図である。(B)本発明によるrAFP及びレチノイン酸(プロビタミンA、酸)の組合せ使用での全体的な腫瘍抑制効果の相乗的増強を示す図である。細胞の増殖を[H]−チミジンの取り込みにより測定し、AFPとの12時間培養後の実験用培養物における増殖の阻害の、添加物のない対照に対するパーセント値で表した。
【図7】本発明によるrAFPの、胎児性の肺及び網膜の細胞の1次培養物から得た胎児性幹細胞の増殖に対する刺激効果を示す図である。細胞の増殖を培養の終わり4時間の間の[H]−チミジンの取り込みの標準の方法により測定し、AFPのない対照に対する、試験培養物における増殖の刺激のパーセントで表した。 配列のリストは、配列番号1、及び配列番号2の配列を含み、これらは、それぞれ、pKXプラスミドの組成におけるヒトα−フェトプロテインの配列のコード化を含む発現カセットのヌクレオチド配列、及び、ヒト成熟AFPのアミノ酸配列である。 発現カセットのヌクレオチド配列は、GAL1酵母菌遺伝子のプロモーター領域、MFα1酵母菌遺伝子の分泌のプレプロ領域、ヒトα―フェトプロテイン遺伝子のコード配列、及びCYC1酵母菌遺伝子の転写終結のフィールドを含む。この発現カセットは、酵母菌系統産生株出芽酵母YBS723/pKXシステムにおいてヒト成熟α−フェトプロテインの配列をコードするpKXプラスミドの組成に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GAL1酵母菌遺伝子のプロモーター領域、MFα1酵母菌遺伝子の分泌のプレプロ領域、ヒト成熟α−フェトプロテインの活性を有するタンパク質をコードするDNA配列、及びCYC1酵母菌遺伝子の転写終結のフィールドを含む、配列番号1の発現カセット。
【請求項2】
ヒト成熟α−フェトプロテインの活性を有するタンパク質をコードするDNA配列が、ヒト成熟α−フェトプロテイン(配列番号2)、又は1つ若しくは複数のアミノ酸残基の欠失、付加、若しくは置換を有するその修飾型をコードする合成の遺伝子であり、修飾されたヒトα−フェトプロテインの形成をもたらし、その配列の少なくとも80%は、修飾された構造を有する前記生成物におけるヒト成熟α−フェトプロテインの機能上の生物活性を保持してヒト成熟α−フェトプロテイン(配列番号2)のアミノ酸配列に対応する、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項3】
請求項1、2に記載の発現カセット、細菌プラスミドpUC18のフラグメント、2−μm酵母菌プラスミドの複製開始の領域、タンパク質の正確な集合及び望ましい生成物の培養基中への分泌をもたらすKAR2遺伝子、ジスルフィド結合の正確な形成をもたらすPD11遺伝子、並びに選択的URA3及び選択的PGK1酵母菌マーカーを含む、組換えpKXプラスミド。
【請求項4】
請求項3に記載のpKXプラスミドで形質転換することにより、ヒト組換えα−フェトプロテインを分泌する能力を有する、真核生物の産生株細胞。
【請求項5】
Russian Collection of Industrial Microorganisms(VKPM)にNo.Y−3115で寄託されている、ヒト組換えα−フェトプロテインを分泌する能力を有する、産生株細胞系統出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)YBS723/pKX。
【請求項6】
請求項4に記載の真核生物細胞を培養すること、組換えα−フェトプロテインを培養基中に分泌する能力を有する細胞、及び培養基から組換えα−フェトプロテインを単離するステップを含む、血清起源のヒト成熟α−フェトプロテインの生物活性を有する組換えα−フェトプロテインを調製するための方法。
【請求項7】
真核生物の細胞が酵母菌細胞であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
酵母菌細胞が、Russian Collection of Industrial Microorganisms(VKPM)にNo.Y−3115で寄託されており、組換えα−フェトプロテインを分泌する能力を有する、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)YBS723/pKX系統の細胞であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
培養を、グルコース2%、グリセリン1.5%、酵母抽出物1%、ペプトン2%、蒸留水を含む培地で23〜33℃の温度で行い、更なる緩衝作用及びpO>20%まで可溶性酸素を加えることにより培地のpHを4.5〜7.0に保持することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法により調製され、ヒト成熟血清AFPの特性を有し、前記特性は免疫学的反応及びin vitroでヒト成熟血清AFPの活性の10%以上のレベルでB細胞Rajiリンパ腫細胞の増殖を阻害するその能力により決定される、組換えα−フェトプロテイン。
【請求項11】
請求項10に記載の組換えα−フェトプロテイン、並びに薬学的に許容できる担体及び賦形剤を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の組換えα−フェトプロテイン、並びにドキソルビシン、ビンクリスチン、フルオロウラシル、メタトレキセート(metatrexate)、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、タモキシフェン、フルタミド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シクロスポリンC、レチノイン酸の誘導体、カロチノイド、ステロイドホルモン、並びに薬学的に許容できる担体及び賦形剤を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する相乗的組成物。
【請求項13】
有効量の請求項10に記載の組換えα−フェトプロテイン、請求項11に記載の薬剤組成物、又は請求項12に記載の相乗的組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む、癌を治療し、又は癌の進行を予防するための方法。
【請求項14】
請求項10に記載の組換えα−フェトプロテイン、及びシクロスポリンC、並びに薬学的に許容できる担体及び賦形剤を含む、免疫抑制作用及び免疫調節作用を有する相乗的組成物。
【請求項15】
請求項10に記載の組換えα−フェトプロテインの有効量を薬学的に許容できる担体及び賦形剤と共にそれを必要とする患者に投与し、又は請求項14に記載の組成物を投与することを含む、自己免疫疾患を治療し、免疫状態を正すための方法。
【請求項16】
組成物が、請求項10に記載の組換えα−フェトプロテイン、並びに薬学的に許容できる担体及び賦形剤を含む、幹細胞の増殖を刺激する薬剤組成物。
【請求項17】
組成物が、請求項10に記載の組換えα−フェトプロテイン、並びにビタミンA、E、Dの誘導体、抗酸化剤、ステロイドホルモン、植物起源のイソフラボン、並びに薬学的に許容できる担体及び賦形剤を含む、幹細胞の増殖を刺激する相乗作用の組成物。
【請求項18】
有効量の請求項10に記載の組換えα−フェトプロテイン、請求項16に記載の薬剤組成物、又は請求項17に記載の相乗作用の組成物で細胞に作用することを含む、in vitroで幹細胞の増殖を刺激するための方法。
【請求項19】
有効量の請求項10に記載の組換えα−フェトプロテイン、請求項16に記載の薬剤組成物、又は請求項17に記載の相乗作用の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、in vivoで幹細胞の増殖を刺激するための方法。
【請求項20】
請求項10に記載の組換えα−フェトプロテイン、美容学的に許容できる担体及び賦形剤、並びに、任意選択でビタミンA、E、Dの誘導体、抗酸化剤、ステロイドホルモン、植物起源のイソフラボンを含む、皮膚を若返らせ、皮膚の老化を防ぐ美容用組成物。
【請求項21】
前記組成物を個体の皮膚上に適用することを含む、皮膚を若返らせ、皮膚の老化を防ぐための、請求項20に記載の美容用組成物の使用方法。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図2d】
image rotate

【図2e】
image rotate

【図2f】
image rotate

【図2g】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図3d】
image rotate

【図3e】
image rotate

【図3f】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2008−506384(P2008−506384A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521429(P2007−521429)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/RU2005/000369
【国際公開番号】WO2006/009492
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507012869)
【Fターム(参考)】