説明

組織工学用の重合可能なエマルション

【課題】本発明は、組織工学及び生物接着性塗布剤に有用な、例えば脊椎動物、特に人間の脊柱の劣化した椎間板の矯正に有用な組成物及び方法に関するものである。
【解決手段】提供されるのは、流体油中水エマルションの重合から誘導された生物適合性の粘弾性固形材料、並びにこれらの調製方法、及び病気になり、損傷し又は劣化した椎間板を、許容可能な侵襲性のない手段により矯正することを含む、組織工学処置へのそれらの使用方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願の参照)
この出願は2003年10月29日に出願した60/515,404の優先権を主張し、本明細書に全体が取り込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、組織工学及び生物接着性塗布剤に有用な、例えば脊椎動物、特に人間の脊柱の劣化した椎間板の矯正に有用な組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
背中の痛みは、米国において最も頻繁に報告される筋骨格の問題の一つであり、通常は椎間板の劣化によって起こる。脊柱の椎骨は互いを関節でつなぎ、前額面、矢状面及び横断面の運動を可能とするが、体の上部の重さが増加するに従って、主に圧縮の負荷を下から支えるように設計された椎体は、尾側に大きさが増加する。腰椎の長さの約20−33%を含む椎間板は隣接した脊柱の椎骨間の主たる連結であり、周囲の靱帯や筋肉と共に脊柱に安定性を提供する。いずれの椎間板も、積層された繊維質の繊維輪により囲まれ、隣接した椎骨の終板の間に位置する、ゼラチン状の髄核からなる。該椎間板は、体重を支えかつ椎体から次の椎体へと負荷を移動させ、及び変形できる空間を維持して、通常の脊柱の動きに適合する。
該髄核は膠原繊維と水結合グリコサミノグリカンを含み、一方周囲の繊維輪は繊維軟骨性の組織、及び髄核の周りに同心円状の輪を形成する10から20のラメラに配置された繊維状タンパク質を含んでいる。いずれのラメラ内の膠原繊維も、互いに平行であり、垂直から〜60°の角度であり、かつそれぞれのラメラの傾斜の方向が交互になっている。
この十字配列が、繊維輪をねじれ及び曲げの負荷に耐えられるようにする。該終板は硝子軟骨を含み、かつ繊維輪の内部1/3を形成するラメラに直接結合する。
【0004】
圧縮負荷の下では、該髄核は平らになりかつ中心から外に向けてはみ出る;同時に繊維輪は応力に抵抗して伸びる。同様に椎体の終板は、該髄核が変形する能力に対抗する。このように、圧力は繊維輪及び終板に対してかけられ、椎体に圧縮負荷を伝達する。逆に、引っ張る力がかけられた場合、椎間板は上がり、繊維輪の中の膠原繊維が引っ張られる。
個別に曲げた場合は、該椎間板の一方の側は引っ張られ、同時に他の側は圧縮され、かつ圧縮された側の繊維輪は外側にはみ出る。
該椎間板がねじられた場合、剪断応力がかかる。個々人が年を取るにつれて、繰り返される回転負荷は、繊維輪における周辺の断裂を起こさせ、該断裂は髄核における放射状の断裂を徐々に生じさせ、結果として断裂箇所での劣化及び水の損失が生じる。従って時間の経過と共に、椎間板は繊維輪のはみ出しに従って、その圧縮負荷に抵抗する能力を失う。断裂の苛酷さが増加するに従って、髄核において繊維質組織の細い線のみを残して、該椎間板の成分の大半が失われる−椎間板吸収として知られる状態である。繊維輪が後ろ側の脊柱管にはみ出すことにより、神経の通り道の圧縮が、結果として座骨神経痛を生じさせる。いったん該椎間板が断裂すると、過度の動きは脊柱において分節の不安定性を生じさせ、外傷に対して脊柱をより傷つきやすくさせ、かつ変形性脊椎すべり症を引き起こし、痛みを増加させ得る。
【0005】
脱出した椎間板の外科的な治療は椎弓切除術、脊椎固定術及び椎間板とプロテーゼとの置換を含む。しかしながら、脊椎固定術の結果は自家移植片を用いてさえ異なり、該固定術は結果として融合連結箇所における動作の全排除、及びしばしば顕著で長期間の制限を生じることとなる。このため椎間板のプロテーゼが、脊椎固定術の代替として、置換及び正常な椎間板の機能のシミュレートに使用されてきた。椎間板代替プロテーゼは、生物適合性でなければならず、かつ体重を支えかつ椎体から次の椎体へと負荷を移動できる能力がなければならない。該プロテーゼは、患者の寿命の間持続し、かつ十分な機械的強度を有し、運動の間損傷に抵抗しなければならず、同時に脊椎間の変形できる空間を維持し脊椎間の動きに適合できなければならない。さらに重要なことは、置換した椎間板は隣接する椎骨に固定できなければならないが、仮に該椎間板が故障しても損傷を起こすものであってはならない。
多くの人工椎間板の設計が使用され、又は提案されてきた。全椎間板の置換の手段は、シリコーンゴム核及びシリコーン液を満たしたプラスチックチューブを有する金属ボールベアリングから、スプリングシステム、弾性椎間板プロテーゼ、及び固いカラムで覆われた弾性椎間板までの範囲で変化してきた。不運なことに、該手段は、時間の経過と共に不十分な機械的性能及び好ましくない長期間の骨の固定を提供することを立証してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,047,055
【特許文献2】米国特許第5,192,326号
【特許文献3】米国特許第4,772,287
【特許文献4】米国特許第4,904,260
【特許文献5】米国特許第5,674,295号
【特許文献6】米国特許第5,888,220号
【特許文献7】米国特許第5,108,438
【特許文献8】米国特許第5,258,043号
【特許文献9】米国特許第5,204,104号
【特許文献10】米国特許第5,204,106号
【特許文献11】米国特許第5,204,106号
【特許文献12】米国特許第5,964,807号
【特許文献13】米国特許第6,337,198
【特許文献14】米国特許第6,103,255号
【特許文献15】EP0430517(A2)
【特許文献16】米国特許第5,151,217号
【特許文献17】米国特許第6,045,972号
【特許文献18】米国特許第6,224,893号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Fernstrom,Nord.Med.71:160(1964)
【非特許文献2】Hou et al.,Chinese Med.J.104:381−386(1991)
【非特許文献3】(Bao et al.,Biomaterials 17:1157−1167(1996)
【非特許文献4】Ray et al.,The Artificial Disc,(Brock et al.,eds),Berlin:Springer−Verlag,1991,pp53−67
【非特許文献5】Sabolinski,Biomaterials 17:311−320(1996)
【非特許文献6】Thomson,“Polymer Scaffold Processing,”pp.251−261 in Principle of Tissue Engineering,2ndEd.,(Lanza et al.,eds.)Academic Press,San Diego,CA,2000
【非特許文献7】El−Ghannam,et al.,J.Biomed.Materials Res.29:359−370(1974)、Schepers et al.,J.Oral Rehab.18:439−452(1991)
【非特許文献8】Baldick et al.,Transactions 5th World Biomaterials Conf.,Toronto,II−114(June 1996)
【非特許文献9】El−Ghannam,et al.,J.Biomed.Materials Res.29:359−370(1974)、Schepers et al.,J.Oral Rehab.18:439−452(1991)
【非特許文献10】Iatridis et al.,J. Orthopaedic Res.17:732−737(1999);Iatridis et al.,J.Orthopaedic Res.15:318−322(1997)
【非特許文献11】Friberg,et al.,“Emulsions,”in Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,4thEd,Vol.9,pp.393−413,1994
【非特許文献12】Allcock et al.,Contemporary Polymer Chemistry,2nd Ed.,Prentice Hall,Englewood Cliffs,NJ,1990,p.553
【非特許文献13】Costanza et al.,Radiation Cured Coatings,Federation of Societies for Coating Technology,Philadelphia,PA,1986
【非特許文献14】Ferry,Viscoelastic Properties of Polymers,John Wiley,NY,1980,p.529
【非特許文献15】Allcock et al.,supra;DeRossi et al.,inMacro−Ion Characterization,(Smith,ed.),ACS Symposium Series 548、Amer.Chem.Soc.,Washington,DC,1994,p.20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、該核プロテーゼのみの置換は、椎間板全体の置換に対していくつもの重要な利点を有する。該核は繊維輪及び終板より非常に単純な構造及び機能を有しており、そのため該核プロテーゼの適切な設計によって、外科医は繊維輪と終板を無傷のまま残すことができる。繊維輪の空間的及び機械的な性質のみが置換され、椎間板上の圧縮負荷を緩和する。これにより、椎間板組織及びこれらの保持されるべき機能を残すことが可能となり、同時に最小の外科的侵襲処置、例えば繊維輪における小さな切開を通した内視鏡による移植のみが必要となる。該移植は、椎骨に対する固定を全く必要としないように設計できる。
【0009】
例えば、金属(非特許文献1)又は種々のエラストマー(前もって成形されたか又はその場で成形されたもののいずれか)(非特許文献2)を使用する種々の試みが、核用のプロテーゼを開発するためになされてきているが、しかしこれらは生物適合性及び機械的強度を欠くことが立証された。Bao et al.は、生理的な負荷状況下において70%近くの水含量を有するハイドロゲル材料を用いた、より効果的な人工椎間板核を設計した非特許文献3;特許文献1及び2)。該ハイドロゲル核移植片の能力は核組織の能力によく似ており、周期的な負荷の状況下で水を吸収及び放出し、それにより局所的又は全身の組織の反応に悪影響を及ぼすことなく、椎間板の解剖学的構造及び機能を機械的に回復させる。ハイドロゲルは主要な機械的欠点をいくつか有している。そもそも、これらは架橋の後に水を吸収することにより作用するが、例えば、椎間板が劣化した箇所において、水の吸収が制御できない。さらに、水の吸収は可逆過程であり、すなわち、該水はハイドロゲル移植片に吸収されるのと同様に、該片から失われ−もはや水和反応の制御がきわめて困難となる。加えて、いくつかのハイドロゲルを架橋させるために必要とされる熱活性化方法は、制御が困難なことで有名である。
【0010】
椎体間の固く、挿入された核移植片が、臨床的に使われてきており、以下の文献を参照されたい:非特許文献4;特許文献3、特許文献4及び特許文献5。該プロテーゼは柔軟ではあるが、非弾性の編んだポリエチレン繊維のジャケットによって圧迫されたハイドロゲル核を有し、該ジャケットは組織の内方成長を誘引する生物吸収性の材料が混じっているが、移植には通常の切開術よりも大きな切開を使用する椎間板切除術が必要である。しかしながら、該プロテーゼ材料は純粋な合成物であり、いかなる細胞又は生長する組織も含んでいない。より最近では、移植片の押し出し及び外科的侵襲を最小化するため、アドバンストバイオサーフェース(Advanced BioSurfaces)が、ポリマー射出ガンを用いたバルーンカテーテルを通じて送達されたポリマー配合物を特色とするシステムを開発した(特許文献6)。ポリウレタンを使用してその場で硬化させ、強固な機械的特性を提供する。
しかしながら、該システムの成分の多くは生物適合性を欠き、かつバルーンカテーテルの使用は、より複雑な治療方法及び治療上の機械的制限に導く。
【0011】
皮膚組織、特にやけどの患者又は褥瘡性潰瘍の創傷を修復するために、細胞は吸収性又は非吸収性の材料のいずれかのテンプレート上に接種され、創傷の箇所に適用されてきた(非特許文献5)。しかしながら、皮膚の組織工学は、完全に異なった組織組成物及び独特の機械的要件を要する椎間板の組織工学とは顕著に異なる。
特許文献7及び8は、生物適合性でかつ生物吸収性の繊維の多孔質マトリックスを教示し、該繊維には、グリコサミノグリカン分子が分散されて椎間板組織を再生するための骨格マトリックスを形成し、かつ繊維輪及び髄核の両者を置換する。しかしながら、過剰な組織の置換は、長い回復時間を要する相対的に侵襲性の方法である。そのうえ、これらマトリックスは組織の回復を刺激する細胞を一切含んでおらず、そして本処理における移植の際の、初発の組織形成もない。組織工学用のポリマー骨格は周知である(例えば、非特許文献6)。しかしながら、このようなあらかじめ作られた構造物の使用は大規模な外科術を要する。
【0012】
種々の生物活性ガラス材料(例えば、特許文献9)に、増殖を含む細胞機能及び細胞外のマトリックス合成を促進するため、細胞が接種されてきており、例えば非特許文献7及び特許文献10が用いられてきた。加えて、高密度な生物活性ガラス椎間板は、骨芽前駆細胞の分化を促進することが見出されており(非特許文献8)、該ガラス椎間板に、増殖を含む細胞の機能及び細胞外マトリックスの合成を促進するために、細胞が接種されてきており、例えば、非特許文献9及び特許文献11である。
【0013】
特許文献12は、椎間板から劣化した髄核組織を排除し、その後生物活性ガラス、ポリマーフォーム又はゾルゲル生物活性材料で被覆したポリマーフォームを含む生分解性の基質と椎間板細胞を組み合わせることによって調製されたハイブリッド材料を、髄核が排除された空間に移植する方法を教示する。該ポリマーフォームは、D,L−ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)のコポリマーを含む。該方法は椎間板の髄核から生細胞を単離し、かつ移植の前に生物分解性基質上で該細胞を培養するか、又は移植の直前に生物分解性基質とそれらを組み合わせる前に該細胞を培養することを含む。しかし、その結果得られた移植片は、要求される健康な髄核の粘弾特性を欠いており、例えば、非特許文献10である。
【0014】
液状エマルション及び発泡エマルションは、組織工学用のポリマー骨格を調製するために記載されてきており、例えば、特許文献13及び14は、選択されたポリマー及び複数の溶媒のエマルションから多孔質のポリマー骨格を調製し、その後溶媒を除去して細孔を形成し、これにより骨格を作成することを教示する。
これらの手法では、最初にポリマーを形成し、その後に乳化することを要する。しかしながら、該骨格の重合は、炎症性又は毒性の反応の原因となり得る残存有機溶媒が存在し得る、患者のその場での重合が容認されない、熱を基本とするものである。
【0015】
分離した水性相及び有機、典型的には炭化水素の連続相から成る油中水(逆)(“W/O”)エマルションは、被覆、接着剤、水処理、化粧品、パーソナルケア及び医薬品において多くの用途を有する。W/Oエマルションは液体中で自由に流動する形態で、水溶解性の“活性剤”の高い濃度を与えることが主な理由となって、該エマルションは有用である。例えば以下の文献を参照されたい:非特許文献11。該活性剤は、一以上の成分、例えば水処理用の高分子量水可溶性ポリマー、又は有機塩、例えば病気治療用の多くの医薬品を含むことができる。
反応性モノマー及びオリゴマーの重合方法は先行技術において周知であり、被覆材、インク及び他のポリマーシステムを調製するために、産業上通常に使用されている。例えば以下の文献を参照されたい:一般的には、非特許文献12。しばしば光、特にUV光が、重合過程、例えば光重合を始めるために用いられる。
【0016】
特許文献15は、W/Oエマルション及びマイクロエマルションから形成したバイオモザイクポリマーを教示し、及び該ポリマーが、重合された表面において生物活性材料、例えばタンパク質、酵素、DNA、抗原及び抗体を結合させることを必要とする分析、分離及び触媒方法用の膜の製造に使用することを教示する。例示されたモノマーは、イソボルニルアクリレート及びメチルメタクリレートであり、及び活性材料の結合は、所望の用途に依存して、化学的であっても物理的であっても良い。該教示された方法は、界面活性剤で安定化したエマルションの光開始重合を含む。同様に、特許文献16は、有機(油)相及び水性(水)相の両方で重合可能な有機モノマーを含む、バイコンティニュアス構造のマイクロエマルション(bicontinuous microemulsion)を開示している。該水性相は重合可能な界面活性剤も含み、かつ、光開始剤の含有により重合は明らかに活性化される。逆に水が連続相であり、最終生成物の構造的機械的な成分が存在する水中油(“O/W”)エマルションでは、重合は光開始で行われてきており、例えば、一般的には、非特許文献13;特許文献17である。
【0017】
ポリマーは同様にゲル形状で調製されることが可能である。該ポリマーゲルは基本的に、化学結合、結晶化又は該ポリマー中のモノマーの化学的特性によって作られた他の種類の結合によってつながった、架橋された溶液である。“ハイドロゲル”は、水性媒体によって浸透され又は膨潤するがこれらには溶解しない高分子電解質を含んだ、親水性、水溶解性又は水分散性ポリマーの架橋されたポリマーネットワークを含む、ポリマーゲルの特定の一群である(非特許文献14;非特許文献15)。
組織工学で使用するための注射可能なハイドロゲル、ゼラチン及び同様のポリマーキャリアーは、先行技術において周知である。例えば、特許文献18において,Langer et al.は、医薬品送達及び組織工学用のハイドロゲルを形成するインターペネトレーティングポリマーネットワーク(interpenetrating polymer network)の使用を教示しており、報告によれば注射可能な光硬化性細胞骨格の形成に有用である。
【0018】
しかしながら、これらのインターペネトレーティングネットワーク及び該先駆体成分は、二つ以上のポリマーを必要とする単相分散を含み、これらの架橋は限られた機械的特性を有する連続したハイドロゲル状態を生じる。
理想的には、椎間板の治療は、損傷を受け又は病気にかかった椎間板組織、とりわけ髄核及び繊維輪組織の矯正を導き、刺激するものであろう。しかしながら、現在、ハイドロゲル及び組織工学モデルが試みられてきているとはいえ、拒絶反応となり得る自己免疫性又は炎症性の反応を誘発しない、非毒性で生物適合性の置換材料を用いた、損傷を受けた椎間板を再建するための良好な治療方法は未だ存在しない。該材料は、最小の侵襲性の方法により流体又はゲル状態で送達可能であるべきだが、取り付けられたときに、椎間板の全内部空間を満たし、髄核に適合した機械的特性を提供しなければならない。従って、そのような材料に対する要求は本発明まで残ってきた。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(本発明の概要)
本発明は、自己免疫性又は炎症性の反応を誘発しない、非毒性で生物適合性の逆エマルション(油中水)を用いて、損傷した椎間板の再建に効果的な治療方法を提供することにより、前述の要求をかなえる。さらに、該エマルションは、最小の侵襲性の方法により身体に送達でき、修復又は再建を必要とする組織構造の複合形状に適合できる。その場での及び/又は生体内での重合の後、得られたゲルは、組織又は器官、例えば椎間板の髄核の機械的要求に適合する制御された粘弾性を保持する。結果得られる本発明の生物適合性のある組織工学生成物は、エマルション単独、及びガラス又は生物活性ガラス成分、生細胞、促進剤、安定剤、光反応剤及び特に劣化し、損傷し又は病気となった椎間板の矯正用に生体内で使用される生成物の性能、安定性及び耐久性を向上させる剤等を添加したエマルションから得られる重合されたマトリックスを含む。
本発明の目的は、二つの別々の有機相及び水性相を含む、生物適合性で非毒性の組織工学用の逆(油中水)流体エマルションを提供することであり、ここで該有機相は一以上の反応性のエチレン性不飽和モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物を含み、前記エマルションがその場で重合される場合には、二つの別々の有機相及び水性相を含む強固で、粘着性の粘弾性材料を形成する。
【0020】
本発明の他の目的は、二つの別々の有機相及び水性相を有する組織工学用の強固で、生物適合性のある粘弾性材料の調製方法を提供することであり、前記方法は二つの別々の相(有機の及び水性の)を含む、生物適合性があり非毒性の逆(油中水)流体エマルションを調製し、ここで該有機相は一以上の反応性のエチレン性不飽和モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物を含む;かつその場で前記エマルションを重合することを含む。
本発明のさらに他の目的は、組織工学用の強固で生物適合性のある粘弾性材料を提供することであり、該材料は二つの別々の相(有機の及び水性の)を有する。
さらに他の目的は、生物適合性のある粘弾性材料を使用する方法を提供することであり、該方法は組織移植片中でのエマルション、細胞を成長させる骨格、又は生きた組織を結合し又は修復するための生物接着剤の形成を含む。該エマルションは、哺乳動物において修復、再生又は組織工学が必要とされる箇所に送達され、その場で重合されて生物適合性のある粘弾性材料になり、好ましくは、送達は許容できる非侵襲性の手段、例えば注射により成し遂げられる。特に、該提供される方法は、哺乳動物の脊柱における少なくとも一つの椎間板の置換又は修復、並びに哺乳動物の椎間板の髄核の取り除かれた領域に該エマルションを送達すること、及びその後に該エマルションをその場で重合させて粘弾性材料を形成させ、それによって哺乳動物における移植片の形成を含むことを教示する。該方法は、さらに、該エマルションを送達する前に、最小の外科的侵襲手段により、哺乳動物の椎間板から、劣化した髄核を全体的又は部分的に取り除くことを含み得る。
【0021】
先行技術に対する本発明の利点は、良好な空間的及び時間的な制御、室温又は生理学的な温度における速い硬化及び重合する間の極小の熱の生成を含む。該エマルションは、修復又は再建の目標となる組織構造に従った、複雑な形状を形成する能力を有しており、さらに、重合の後、ゲル状の生成物が組織又は器官、例えば椎間板の髄核の機械的要求に適合する制御された粘弾性を保持する。さらに、該新規エマルションの多孔性で水性の環境により、細胞の再生が促進され、及び結果として得られる生物適合性の組織工学生成物及びそれらを用いた方法を促進し、安定化し及び調節する活性剤の添加が許容される。
本発明の付加的な目的、利点及び新規な特徴は、説明目的のみでかつ本発明をいかなる方法でも制限することを意図しない後述の記述、例及び図の一部に示され、一部は後述の試験をすること又は本発明を実施することによる学習により、当業者にとって明白となるであろう。
【0022】
先の概要、同様に後述の本発明の詳細な説明は、添付した図面と併せて読むことでさらによく理解される。しかしながら、本発明は図面に示された厳密な配置及び寸法に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、流体油中水エマルションの基本的な組成を説明する。
【図2】図2は、図1で示された該エマルションの注射方法を具体的にしたもの、及び光活性重合及び硬化させて組織工学特に椎間板の再建に使用するマトリックスを製造することを説明し、例示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(本発明の態様の詳細な説明)
本発明は図1に示す形状の流体油中水(“W/O”)エマルションを提供し、該エマルションは、再建外科、例えば椎間板の髄核の修復を含む、組織工学及び生物接着性手段に特に有用な、粘弾性で、柔らかく、柔軟性がありかつ粘着性のゲルマトリックスに、その場で及び/又は生体内において重合可能なものである。組織工学の骨格に使用する該エマルションは、生物適合性でかつ非毒性であり複雑な形状に容易に加工処理される必要があり、一方で、得られた重合されたゲルは、容積割合に対して大きな表面を可能にすることが必要な物理的特性、及び骨又は組織代替物が必要とする機械的耐性を有する。柔軟である一方で、結果得られたポリマーゲルマトリックスは、生体内条件下において所望の形状を維持するのに十分な程度に固い。
本発明における該ポリマーは、特に生分解性ではなく、結果として該システムは生体内において長年の間残り、それにより付加的な手順の必要性を低下させ又は排除する。ある好ましい態様におけるポリマーマトリックスの多孔質構造は、さらに、細胞の内方成長を促進する接着性基質として機能する一方で、分化した細胞の機能の維持を可能とする。生物活性ガラス及び付加的な活性剤も同様に存在し得る。W/Oエマルションのベース組成は、図1に説明されている。
【0025】
本発明は、逆W/Oエマルションが有機相と水性相を有して形成できることを示す。驚くべきことに、必須の成分として一以上の反応性、重合性の有機モノマー及び/又はオリゴマーを含む有機相が、水、ポリマー溶液及び分散物、塩、顔料並びに他の活性剤、溶液及び分散物成分、例えば無機、有機及びセラミックの生物細胞生長刺激剤、加えて任意で生細胞等を含む水性相と組み合わせたときに、得られるエマルションは新規かつ有用である。水は常に、水性相中においていくらかの量で存在する。本発明のエマルションのために選択される反応性のモノマー及びポリマーの選択は、重合されたゲル生成物の粘弾性及び多孔度を、種々の意図する使用の要求を満たすように調整することを可能にする。該有機相は、さらに、任意で高分子量ポリマー及び重合開始剤、例えば好ましい態様においては光開始剤を含むことができ、又は該反応性有機モノマー及び/又はオリゴマーは、生物適合性、低毒性の長鎖脂肪酸部分、例えば天然脂肪及び生物細胞膜において見出されるものを含むことができ、ブチル、カプロン、カプリル、カプリン、ラウリン、ミリスチン、パルミチン、パルミトオレイン、ステアリン、オレイン、リノレイン、リノレン、リシノール、ガドレイン、アラキドン、ベヘン、セトレイン及びエルカを含むことができる。従って、本発明のエマルションは、組織工学目的の先行技術において知られていなかった、有用な広い範囲の組成及び割合を含む。
【0026】
本発明において、“流体”は物質、この場合においてはエマルションの形態を意味し、たとえ技術的に該液体が一つの連続相になり得るとしても、流れを起こす剪断力に持続的に抵抗することができない形態であり、一方で本発明のエマルションは、化学力によって結合させた少なくとも二つの混合しない成分を含むと言う点で、そのような液体と区別される。“粘度”は、流体内部の摩擦又は流体がかけられた力の下で流れに抵抗する程度を意味し、流体の剪断速度に対する剪断応力の割合として測定される。“ポリマーゲル”は、物理的又は化学的な会合が、別々のポリマー鎖の間で存在するポリマー材料であり、該会合は溶媒の進入及び膨潤を可能とするより、制限された動き、典型的には三次元構造をそれらに保持させる原因となる。本発明の該ポリマーゲルは、加えられた外部応力に応答して柔軟性又は曲げやすさを提供して“粘弾性的に”変形する固形材料である。
本発明のエマルション及び結果得られる重合されたポリマーシステムは、重合前のエマルション中及び重合後のゲル中の両方にて、別々の親水性相及び疎水性相を有する、異なりかつ独特の有用な2相組成物を表す。従って、本発明のW/Oエマルションは図1に描くように、定義上ハイドロゲルではない。ハイドロゲルはGrand&Hackh’s Chemical Dictionaryにおいて、水で膨潤した、固く、架橋した三次元ネットワークの、親水性高分子(20−95%水)として定義されている。従って、ハイドロゲルは、本発明で使用されるW/Oエマルションとは完全に異なる化合物の種類を構成し、本発明のW/O組成物は、特に髄核の再建及び置換用として、ハイドロゲル技術に対して著しい向上を表す。本発明の技術の機械特性及び弾性特性は、その場でのいかなる反応、例えばその場での水の吸収に依存せず、及びハイドロゲルで必要とされる架橋を達成するための熱エネルギーも一切要求しない。
【0027】
あらかじめ検討したButteryの出願、EP0430517A2は、このため、ハイドロゲルを利用する点で、本発明と異なる。比較して、本発明は、ある生物適合性モノマーのみが有用であり、かつ該水性相の液滴の大きさは、水性相の重要な成分であるガラス、生存可能な生物学的細胞、生物活性ガラス、又は他の成分が、生物学的な組織の形成に必要とされるに従って周囲の領域に拡散することを可能にするのに十分な形態及び量において、これらの成分を含むことを可能にするのに十分な大きさでなければならない。さらに、本発明は、Butteryにより開示された生物学的なアッセイ膜材料の生体外調製よりもむしろ、油中水エマルションの生体内での重合に向けられている。
【0028】
本発明の好ましいエマルションの疎水性有機相は、すべての周知のモノマー、すなわちエチレン性不飽和モノマーを含む。アクリレートが、典型的、一般的かつ好ましく本発明で使用される種類のモノマーであり、本発明のある好ましい態様において含まれるものは、:メチルアクリレート;メチルメタクリレート;エチルアクリレート;エチルメタクリレート;ステアリルアクリレート及びメタクリレート;ラウリルアクリレート及びメタクリレート;エトキシ化及び/又はプロポキシ化されたアクリレート及びメタクリレート;アルコキシ化されたアクリレート及びメタクリレート;アリルアクリレート及びメタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート;イソデシルアクリレート又はメタクリレート;オクチルデシルアクリレート及びメタクリレート;フェノキシエチルアクリレート及びメタクリレート;グリシジルアクリレート及びメタクリレート;イソボルニルアクリレート;カプロラクトンアクリレート;エトキシ化されたノニルフェノールアクリレート及びメタクリレート;プロピレングリコールアクリレート及びメタクリレート;アルコキシ化されたノニルフェノールアクリレート及びメタクリレート;アルコキシ化されたジオールジアクリレート;アルコキシ化されたビスフェノールジアクリレート;エチレングリコールジアクリレート;ブチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート;ブタンジオールジアクリレート及びジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート及びジメタクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート;エトキシ化されたビスフェノールジアクリレート;飽和及び不飽和(C36)ダイマージオールジアクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート;ポリブタジエンジアクリレート及びジメタクリレート;ポリブタジエンウレタンジアクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート;アクリルアミド及びメタクリルアミド;モノマーのホモポリマー、同様にモノマー混合物の共重合物であるが、これらに限定されるものではない。当業者は、ポリマーの調製に使用できる他のモノマーをよく知っており、それらは本発明の有機相において有用である。プレポリマー化されたラウリルアクリレートを増粘剤として使用して該油相中のモノマーの一部を置換できる。
【0029】
W/Oエマルションを含む多くの例において、該炭化水素相は、該水性相に一般的に含まれる活性生成物の実際の性能において、何の役割も有さない。いくつかの場合において、有機炭化水素相成分は、活性の性能に直接関係するか又は環境的な関心のため、ある性能に悪影響を与える好ましくない問題を表す可能性がある。これは、特に使用、例えば工業的被覆、水処理又は製紙、及び生物医学的な使用、例えば組織工学に対して当てはまり、この場合有機溶媒は患者に、炎症性及び毒性の反応を起こす可能性がある。逆に言えば、ある使用、例えば組織工学において、重合の後に、結果得られた粘弾性有機ポリマー相は、該システムの不可欠かつ機能的な部分となる。現状では、反応性モノマーの重合は、好ましくない有機相成分に付随する潜在的な問題を緩和する。
エマルションの作成に必要とされる実際の処理は、先行技術において周知であり、例えば一般的な検討として以下の文献がある:Morrison et al.,Colloidal Dispersions,Wiley Interscience,NY,2002;及びBinks,Modern Aspects of Emulsion Science,Royal Society of Chemistry,Cambridge,UK,1998。例えば、該油中水エマルションは、混合物を1500から4000のRPMの範囲で、高剪断の機械攪拌にかけることにより達成できる。代わりに、高剪断の機械攪拌と組み合わせて、商業上入手可能な高圧ホモジナイザーを用いて、混合物を高圧均質化することも可能である。均質化を用いる際は、15,000Pa(150bar)から150,000Pa(1500bar)の範囲の圧力を用いた一段階又は二段階であることができる。
【0030】
水及び油エマルションは、一般的に、一定量の炭化水素又は他の疎水性有機成分、及び水又は水性溶液(典型的にはそれぞれ10%から80%)を、一方又は両方の相に含まれエマルションを安定化する一以上の界面活性剤と共に含む。いくつかのシステムにおいて、特定の工業的使用で必要とされるように、W/O(油中水)からO/W(水中油)へのエマルションの逆転を可能とすることを主要な目的として界面活性剤が選択され、以下のものが含まれる:一以上のヒドロキシル、カルボキシル、四級アミンを含むアミン、アルコキシル若しくはサッカライド基を有する一以上の直鎖状若しくは分枝状のアルカン類若しくはアルケン類、又はこれらの混合物、又はステアリン酸、オレイン酸及び他の脂肪酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛塩を含むこれらの塩;プロピレングリコールのポリマー又はプロピレングリコール及びエチレングリコールのコポリマー;シロキサン又はアルキルシロキサン界面活性剤化合物;フッ素化界面活性剤化合物;又はこれらの混合物:これらに限定されるものではない。
【0031】
該システムの温度は、しばしば該エマルションの安定性及び形態を決定する(言い換えれば、該エマルションがW/O又はO/Wかどうか)。W/Oが好ましく、実際に本発明に要求されるエマルションの形態である。W/Oエマルションを生成する温度範囲は、該成分相の組成と強い相関がある。例えば、温度は、アイスクリームやバターでは非常に低く、石油の二次回収では非常に高い。さらにエマルションの安定性は、調製方法、分散相中の液滴の大きさ、存在する界面活性剤及び塩の濃度及び種類、並びに他の要因を含む種々の付加的な要因に依存するが、これらに限定されるものではない。
【0032】
従って、好ましい態様の該有機相は、いかなる方法、例えば熱開始、又は他の周知の反応方法によって重合することができる。しかし、好ましい態様において重合は光開始法、例えば紫外線光、可視光、赤外光及びマイクロ波を含む、電磁放射の使用により開始され、結果重合された有機成分が、その場で、好ましくは生体内において、分散された水性相の周囲に固形相を形成する。多孔質構造は、水性相の存在する量、分散された水性相の安定化に用いられた界面活性剤の量及び種類、並びにエマルションにおいて水性相を液滴へ分散するために用いたエネルギーの量に相関する。この場合において、硬化の時に、該細孔は多数の組織骨格におけるような中空細孔ではない;むしろ、分散された安定な水液滴の大きさは、ナノメーターからマイクロメーターの範囲である。該システムは、目標となる基質に対して活性成分を送達できる、多孔質マトリックスを提供する。これら基質は、工業的に重要なのもの、例えば金属性又は他の被覆された表面、及び生物医学的に重要なもの、例えば組織工学での使用、例えば椎間板、軟骨及び骨への使用を含むことができる。
【0033】
組織工学において、ポリマーマトリックスは、細胞の成長を支持し、及び目標となる器官又は組織に活性細胞又は細胞生長刺激剤を挿入又は適用する手段を提供することが知られている。本発明のポリマーの粘弾性特性は、これらの処理、例えば椎間板の髄核の修復における確実さにとって重要な意味を持つ。本発明のエマルションのために選択された反応性モノマー及びポリマーは、反応したゲル生成物の粘弾性及び多孔度を調整して、種々の使用の要件を満たすことができる。
【0034】
好ましい態様の該水性相は、水中で実質的な濃度に調製することができるいかなる水溶性又は水分散可能なポリマーも含むことができる。従って、本発明のエマルションにおける水性相の濃度は、モノマー等から成る疎水性油相の約0.5%から90%W/W、好ましくは約5質量%から約75質量%、より好ましくは約10質量%から約50質量%、さらに好ましくは約0.5質量%から15質量パーセント、及び15質量%から約30質量%の範囲で変動することができる。以下で定義する安定化剤及び安定化塩等は、水性相に有利に添加できる。
結果として、本発明のエマルションの水性相は重合可能ではなく、かつ定義上、‘217特許のマイクロエマルションはナノメーター範囲の水性粒子サイズを有しており−生存生物細胞及び活性材料を収容するには小さすぎるという点で、本発明は米国特許第5,151,217号(Price)からたやすく区別される。
【0035】
本発明により考慮されたW/Oエマルションは、該有機相に高分子量のポリマーを添加し又は添加しないで製造できることから、該エマルションの最初の粘度は可変であり、使用の多大な柔軟性が可能となる。しかしながら、付加的なポリマーを水性相に添加してもよく、通常はフリーラジカル開始により調製され;及び縮重合ポリマーは通常特別な開始剤なしで調製される。この種類のポリマーは、本技術分野において周知であり、合成又は天然由来のものであっても良い。合成由来のこれらポリマーは、高分子電解質、例えばポリアクリル酸、ポリスチレンスルホネート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー、及び本技術分野で周知の他の合成ポリマーを含む。天然由来のこれらのポリマーは、多糖類、タンパク質類、プロテオグリカン類、核酸類及びこれらを合成により変性した、例えばヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースを含む、本技術分野で周知の他の天然由来のポリマーを含む。当業者は、これらポリマーが有用である多くの使用にとって、分子量の増加と共にポリマーの活性が増加することを理解する。
【0036】
本質的に非毒性で生物適合性の物質であって、エマルションの水性相に容易に溶解するものを添加しても良い。水性相への添加に適したポリマーの記載を、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,John Wiley&Sons,New York,1989に見出すことができ;薬剤として許容される組成物について同様に、例えばRemington’s Pharmaceutical Science,Mac Publishing Co.,(Gennaro,ed.),1985に記載されている。該材料は、使用する投薬量及び濃度において患者に対して非毒性であり、以下のものが含まれるがこれに限定されない:希釈剤;可溶化剤;潤滑剤;懸濁剤;カプセル化材料;溶媒;増粘剤;分散剤;緩衝剤、例えばホスフェート、シトレート、アセテート及び他の有機酸塩;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸;防腐剤;低分子量ペプチド(約10残基より小さい)、例えばポリアルギニン;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又はイムノグロブリン;親水性ポリマー、例えばポリ(ビニルピロリン−ジノン);アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸又はアルギニン;単糖類;二糖類及びセルロース又はその誘導体を含む他の炭水化物;グルコース;マンノース;デキストリン類;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;対イオン類、例えばナトリウム及び/又は非イオン界面活性剤、例えばTween、Pluronic又はPEG。安定化剤及び安定化無機塩を含んでもよく、例えばヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、塩化ナトリウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物、塩化カリウム、炭酸カルシウム、サルフェート類、例えば硫酸カルシウム、ホスフェート、塩化マグネシウム等。
【0037】
態様は、重合可能なエマルションの水性相に薬剤の添加剤を送達する、薬剤として許容されるキャリアーの使用を含む。薬剤として許容されるキャリアーの例は、水、生理食塩水、デンプン、ハイドロゲル、ポリビニルピロリドン、多糖類、ヒアルロン酸エステル、及び血漿を含み、水が好ましいが、これらに限定されるものではない。存在するのであれば、緩衝剤は典型的には活性形態で存在し、該薬剤として許容されるキャリアー100mlに対して、約0−0.1mgの濃度で、又は該薬剤として許容されるキャリアー100mlに対して、約0.08mgから約0.1mgの濃度で存在する。注射可能とするために凍結乾燥された粉末形態は、もしあれば緩衝剤の質量で、0−0.2質量%、又は約0.09から約0.11質量%を典型的に含むことができる。
【0038】
これらエマルションは、さらに、粒子状の有機/無機充填材、例えば放射乳白剤、ポリマーミクロスフェア、ガラス又は生物活性/生物不活性ガラス(シラン処理した及び/又はシラン処理のされていない)をエマルションの0.5%から70%W/Wで含んでもよい。生物活性ガラスは不活性なガラスよりも本来反応性が高いことから、添加可能な生物活性ガラスの量は、エマルションの重合に干渉しない量に幾分限られる。糖の結晶を使用してもよく、同様に水可溶性ポリマー又はタンパク質、例えばアルブミンのミクロスフェアを使用しても良い。従って、本発明の水性相の液滴の大きさは、生存生物細胞、ガラス、生物活性ガラス又は他の成分を包含できる十分な大きさ(≧1μm)でなければならない。
乳化剤、例えばモノオレイン酸ソルビタン等は、エマルションの質量の0.1質量%から約5.0質量%の範囲で、エマルションに対して添加される。
【0039】
好ましい重合された粘弾性材料は、細胞膜中に存在する生物分子と整合する化学構造を有し、かつ髄核又は修復若しくは再建の目標となり得る他の生物組織に匹敵する機械的特性を有する、生物適合性かつ非毒性の材料を含む。従って、本発明は、薬剤を含む注射可能な移植片をも含む。該薬剤は、多くの生物活性組成物、医薬品又は移植の箇所に投与することが望まれる化合物を含み得る。添加剤を、生理学的に許容されるキャリアー、賦形剤、安定化剤等中に提供し、かつ徐放性又は時限放出性製剤に提供することができる。該添加剤は、その送達を促進するために添加剤が結合する薬剤、例えば抗体、抗体断片、生長因子、ホルモン又は他の目標部分を取り込むことができる。この方法は、髄核プロテーゼ又は重合された材料のみからなる生物接着剤の代わりを提供する。
【0040】
例えば、該薬剤は移植片又は組成物の注射に伴う痛み又は不快感を減少させる麻酔剤を含むことができ、このことはポリマーの組み込みを促進し、又は注射箇所の外傷を減少させる。麻酔剤の例は、リドカイン、キシロカイン、ノボカイン、ベンゾカイン、プリロカイン、リピバカイン及びプロポフォールを含むが、これらに限定されない。典型的には、該麻酔剤は水性ベースで使用され、その後薬剤として許容されるキャリアーと混合され、投与の前に注射可能なエマルションに添加される。
【0041】
本明細書で開示する注射可能なエマルションに使用可能な他の薬剤は、以下の一以上を含む:組織再生剤、抗生物質、ステロイド、フィブロネクチン、サイトカイン、生長因子、鎮痛薬、殺菌剤、アルファ−、ベータ又はガンマ−インターフェロン、エリトロポエチン、グルカゴン、カルシトニン、ヘパリン、インターロイキン−1、インターロイキン−2、フィルグラスチム、cDNA、DNA、タンパク質、ペプチド、HGH、黄体形成ホルモン、心房性ナトリウム利尿因子、第VIII因子、第IX因子、及び卵胞刺激ホルモン。本発明において有用であり得る、付加的な薬剤化合物は、以下のものを含むがこれらに限定されない:アシクロビル、セフラジン、マルファーレン、プロカイン、エフェドリン、アドリオマイシン、ダウノマイシン、プルンバギン、アトロピン、キニーネ、ジゴキシン、キニジン、生物活性ペプチド、セファロチン、プロリン及びプロリン類似体、例えばシス−ヒドロキシ−L−プロリン、ペニシリンV、アスピリン、イブプロフェン、ステロイド、ニコチン酸、ケモデオキシコリックアシッド(chemodeoxycholic acid)、クロラムブシル等、及び細胞結合メディエーター、例えば細胞の吸着に影響することで知られる“RGD”インテグリン結合配列の変形を含むペプチド、及び生物活性リガンド。特に有用な添加剤は、特定の種類の生長細胞又は組織を、促進又は排除する物質、例えば骨誘導性の物質、例えば骨形成タンパク質(BMP)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インシュリン様成長因子(IGF−I及びII)、TGF−ベータ等を含むが、再度これらに限定されない。
【0042】
代わりの態様において、本発明は、一般的に生長細胞を刺激し、細胞の成長を促進する生物活性ガラスの含有を許容し、かつ生存生物細胞の含有を許容して健康で新しい組織を再生できる。特に、エマルションの水性相は、人又は他由来の生物細胞を含んでも良い。
分離した細胞、例えば軟骨細胞又は肝細胞は、三次元組織又は器官を人工的に作成するためにマトリックスに使用されてきており、本発明で使用するのに適しているであろう。
しかしながら、いかなる種類の細胞も、患者に移植するための本発明のエマルションに添加することができ、該細胞は筋肉系及び骨格系の細胞、例えば軟骨細胞、線維芽細胞、筋肉細胞及び骨細胞、実質細胞例えば肝細胞、膵臓細胞(島細胞を含む)、腸由来の細胞、及び他の細胞、例えば神経細胞及び皮膚細胞を含み、ドナー、確立した細胞培養系統から得られたものであっても、又はさらには遺伝子工学の前又は後のものであってもよく、これらのものに限られない。これらは、生体内又は組織培養法の試験管内から、本発明において説明するいかなる方法、例えば光重合により誘導された、個々の細胞又は組織断片であって良い。従って、多くの種類の異なった細胞が、同じ構造で患者に移植できる。
【0043】
該細胞は適切なドナーから、又はそれらが移植されるべき患者から自己由来で得られる。細胞は、標準的な技術を用いて分離され、エマルション中に接種される。任意で、試験管内での培養を行い、移植の前に該細胞を増殖させても良い。代わりに、エマルションを注射、重合及び硬化させ、続いて血管新生させ、その後に重合した生成物に付加的な細胞を注射しても良い。試験管内で細胞を培養し組織骨格を移植する方法及び試薬は、当業者に周知である。
【0044】
本発明の重合した生成物中のガラスは、先行技術の手段における移植の失敗をしばしば招いていた、圧縮力に抵抗する移植片の能力を強化する、向上した機械的能力を提供する。該ガラスは、移植片が適切な位置に残っていることをより容易に確認できるように、重合した生成物をX線写真又は蛍光透視鏡等で見る場合に、該生成物に放射線不透過性を与える。たとえ該エマルションの水性相に好ましく添加されても、該ガラスは代わりに重合された生成物のポリマー相にも収容される場合がある。
代替的な態様において、生物活性セラミック又は生物活性ガラスは、生分解性ポリマー、例えばタンパク質を含む他のポリマーを任意に導入する手段を提供する、特有の能力を有する特別な種類のガラスを代表する。バイオガラス成分及び組織工学における使用、例えば椎間板の修復におけるそれらの使用は、以下の文献に記載されている:Ducheyne et al.,Biomaterials 20:2287−2303(1999);米国特許第5,964,807;6,240,926;6,328,990及び6,346,123号(及び出版物及び特許を本明細書で引用する):これらは全てを参照することにより本明細書に含まれる。
【0045】
ガラス又は生物活性ガラスの粒子径は、作用する組織の血管新生の程度、又は送達のために選択された手段、本発明で好ましくは経皮的な注射、に基づいて選択される。一般的な粒子径は、直径で約1000μmより小さいものであろう。本発明のいくつかの態様において、該ガラス又は生物活性ガラスの粒子の範囲は、直径で、約200μmから約300μm、又は約50μmから約100μm、又は約10μmから約100μm、又は約10μmから約50μm、又は約1μmから約40μmが好ましい。別の態様において、これらガラスの粒子は非生物活性であっても良い。これは、該ガラスにおける他の酸化物の代わりに、SiO2を増加させることで達成される。
【0046】
本発明のエマルションにおいて含まれ得る安定化界面活性剤は、二つの種類を含む。第一は、疎水性、いわゆる低HLB値界面活性剤であり、これらは文献中に示され、以下の文献に記載されている:McCutcheon’s Emulsifilers and Surfactants,McCutcheon Division,Manufacturing Confectioner Publishing Co.,Glen Rock,NJ。これら疎水性界面活性剤は、一般的には炭化水素類に可溶であり、水に不溶である。当業者は、これらの種類の界面活性剤が、逆エマルション用の乳化界面活性剤として使用されることを理解するであろう。
第二の種類の安定化界面活性剤は親水性であり、一般的に水可溶性の界面活性剤である。この種類の界面活性剤は、前記McCutcheonの文献にも記載されている。
【0047】
液状エマルションの重合の光開始が、本発明の態様である。本発明における光開始の好ましい手段は、約1から10分、より典型的には約2から5分のUV光への曝露によるものであり、照射されるエマルションの質量及び濃度に依存する。UV光は最も高いエネルギーを有しており、従って、たとえ可視光が、選択された光開始剤の存在下で使用できたとしても、UV光がほとんどの使用に対して最も効率的な光である。光開始は、苦痛又は周囲の組織の損傷の原因となり得る温度の顕著な有害となりうる上昇を伴うことなく、ごくわずかな時間(1から15分)の間に、髄核を満たすことが要求されるような、大量の材料の急速な重合を可能とする。
本発明のある態様において、UV光は生体外の光源から経皮的に又は経真皮的に使用される。一方別の態様では、十分な光の量(換言すれば、エマルションの重合を開始するのに十分な)は、最小の侵襲性の経皮的な送達針を通るのに適した、十分に小さな直径の光ファイバーを通じて、生体外の光源から治療箇所に向けられる。光ファイバー装置は、通常は医学、例えば内視鏡検査用に使用されるものであり、約0.1から1.0cm2又はそれ以上の範囲の、小さな十分に規定された表面領域へ光を送達することを目標とした光ファイバーケーブルを有する、商業上入手可能なUV光光源が存在する。
【0048】
さらに他の態様において、該有機相は、任意で高分子量重合開始剤を含んでも良い。光開始剤、例えば2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパンは、重合の技術において周知であり、アクリレートモノマーを含む広い範囲のモノマーと組み合わせることができる。光開始剤の濃度は、本発明において該エマルション中のモノマーの質量に対して、約0.01から2.0%、より典型的には約0.5%から1.0%で変動し得る。
他の重合開始剤、例えば過酸化物又はレドックス触媒を使用することも可能である。他の態様において、該エマルションは、二成分システムを用いて重合することもでき、該二成分システムはエマルションの二重成分から成り、該エマルションは第一義的に一つの成分がフリーラジカル発生開始剤、例えばベンゾイルペルオキシドを0.1%から2.0%の範囲で有するエマルションを含み、第二の成分が、第三級アミン活性化剤、例えばN,N−ジエチル−p−トルイジンを0.1%から3.0%の範囲で含んだ、同じ又は変形したエマルションを含む点で異なる。該二つのエマルションの混合時に、該フリーラジカル発生剤は活性化剤と反応してフリーラジカルを形成し、その後に該ラジカルがアクリレート又は他の不飽和モノマーと反応して重合が起こり、モノマー、開始剤、活性化剤、促進剤及びエマルション中に存在する他の成分の濃度に依存して、該重合は典型的には混合の後5から20分で完了する。
これにより、重合されたW/Oエマルションは、光重合又は二成分システムにより得られた粘弾性重合生成物を生成する。
【0049】
本発明のエマルション相の投与量及び投与方法は、対象となる患者により変わり、かつ例えば治療される哺乳動物の種類、その性別、体重、規定食、併用する薬物、全体的な臨床状況、使用される特別な化合物、これら化合物が使用される特定の用途及び他の要因に依存し、これらは当業者に理解されるであろう。再生又は置換される損傷した組織の程度及び大きさにより決定されたものとして、エマルションの量が患者に投与される。該量は組織工学における当業者に周知であろう。しかしながら、椎間板の置換治療のためには、繊維輪領域内の髄核の充填には、最適な効率を提供するためには、典型的な成人に対して重合してゲル様形態になった場合に約1から10mlの送達が必要となろう。
該エマルションの水性相に対する添加剤の治療的に効果のある投与量は、生体内か若しくは試験管内の方法のいずれかにより決定されてもよく、又は本技術で周知の基準に頼っても良い。いずれの特定の添加剤に対しても、それぞれの決定が、要求される最適な投与量を決定するように行われる。“有効な投与量”レベル、つまり所望の結果を達成するのに必要な投与量レベルの決定は、当業者に公知である。該添加剤の放出速度は、本技術における常用の技術で変更することができ、治療されるべき治療上の状況に依存して、有利な特性が決定される。該エマルションの水性相に対する添加剤の典型的な投与量は、約0.001mg/kgから約1000mg/kg、好ましくは約0.01mg/kgから約100mg/kg、さらに好ましくは約0.10mg/kgから約20mg/kgで変動し得る。該添加剤は、単独で使用しても、他の治療薬又は診断剤と共に組み合わせて使用してもよい。
【0050】
本発明の方法及び組成物による治療が必要な患者は、哺乳動物、好ましくは人間又は他の霊長類を意図しているが、組織工学が必要とされる価値ある獣医学の、実験室の、又は動物園の動物も含み得る。
侵襲性のない送達方法、例えば経皮的な注射が、患者に対する又は修復若しくは置換の必要な箇所に対する該重合性エマルションの送達にとって特に好ましい。注射は侵襲性が最小であり、非侵襲性の送達方法の中で最も好ましい方法である。従って、本発明で用いる“注射可能な”は、シリンジ、カテーテル、針及びW/Oエマルションを注射若しくは注入するための他の手段を経由して体内に投与され、送達され又は運ばれる能力を意味する。
【0051】
本発明の注射方法は、18から26ゲージの無菌針及び対応するシリンジ又は注射のための他の手段、例えば三方シリンジのいかなる種類によっても行うことができる。該針、シリンジ及び注射のための他の手段は、供給業者、例えばVWRサイエンティフィックプロダクト(West Chester,PA)、ベックトンディッキンソン、ケンダル及びバクスターヘルスケアーから商業的に入手可能である。使用されるシリンジの大きさ及び針の長さは、例えば治療を受ける特定の損傷した組織又は障害、注射の位置及び深さ、並びに使用される注射可能なエマルションの量及び特定の組成等の要因に基づいた、特定の注射される箇所に依存する。熟練した開業医は、経験及び本発明の教示に基づいてシリンジ及び針の選択をすることができるであろう。代わりに、外科的侵襲方法を最小化する試みにおいて、送達バルーン及びバルーンカテーテル、並びにポリマー注射ガンを使用する方法が開発されてきており、例えば米国特許5,888,220がある。
【0052】
当然のことながら、粘性は該非侵襲的方法による送達において、要因となるであろう。
当業者に周知のように、高分子量の水可溶性ポリマーは、溶液中で非常に粘性であり、水中において約1%を超えた濃度は、しばしば極度に粘性であり、注ぎ、ポンプでくみ出し、注射することが困難である。
【0053】
他の態様は、すぐに使えるあらかじめ充填された無菌シリンジ中:無菌懸濁液の形態にあるガラス瓶中:及び一つの区画に粉末、好ましくは凍結乾燥した粉末を含み、他の区画に医薬品として許容されるキャリアーを含む、二つの区画のあらかじめ充填されたシリンジ中における、本明細書で開示した注射可能なエマルションを含む。
組織工学及び組織誘導再生で使用される該エマルションは、無菌でなければならない。
無菌は、通常の方法、例えばフィルター滅菌、ガス、例えばエチレンオキシドの照射又は処置、加熱、又はガンマ線若しくはE線の照射により、容易に達成できる。
【0054】
前記の情報に照らして、本発明は外科医に、劣化性の椎間板疾患を有する患者の、二つの異なりかつ重要なグループの治療に対する顕著な進歩を提供する。第一のグループは、脱出した椎間板を部分的に除去し、隣接する神経への圧力を排除する、椎間板切除を必要とする患者が含まれる。たとえこの方法に従う患者における再脱出の割合が、特定の患者の状態の特性に依存して、15から38%程度の高さであるとしても、本発明までは代わりの治療法が全く存在しなかった。しかしながら本発明は、最小の侵襲性の注射方法によって、該病気にかかった椎間板の正常な機能の確立を、外科医に可能にする。
第二のグループにおいて、患者は椎間板の劣化によってかなりの痛みにあるが、該椎間板は未だ脱出しておらず、そのため患者は椎間板切除による外科的な矯正の候補とならない。しかしながら本発明は、最小の侵襲的治療法の選択肢を外科医に提供し、それにより該病気の椎間板は増強され、かつ病気の椎間板の中心に対して、開示したW/Oエマルションの経皮的な注射を経て、本発明の重合された粘弾性の生成物を導入することにより、椎骨は再度別個に間隔が置かれる。従って、劣化した椎間板の正常かつ痛みのない機能が再確立できる。従って、成功したときには、本発明の組成物及び方法は、劣化性の椎間板疾患の消耗性の合併症に反する顕著な進歩を提供する。
【0055】
本発明は特に椎間板の再建に適するが、実際に、このように説明した使用は、病気、外科術、環境の曝露、外傷、老化又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、内的及び/又は外的な事象により起こる、哺乳動物の組織における異常な状態の、あらゆる適切な組織修復にも適用でき、かつこれらを含むことを意図する。本発明の主題にそって多数の用語、例えば“発生”、“再生”、“工学”、“修復”等を本明細書において互換可能に使用している。それでもなお、まとめるとこれらの用語は、筋肉組織、結合組織、脂肪及び神経細胞を含むがこれらに限られない組織の、治療、生長、再生長又は状態の変化に付随した方法又は事象を意味する。従って、本発明の治療に適した組織の欠陥は、哺乳動物の心臓、血管、脊柱、骨、軟骨、腱、靱帯、胸、歯の組織等の欠陥を含むが、これらに限定されない。従って、本発明で使用する、“治療薬”は、損傷した又は病気の椎間板の治療及び再建を達成する“十分な量”で使用する場合に“治療的な作用”を提供するいかなる物質をも意味する。
【0056】
さらに他の態様において、本発明は、塗付方法、例えばドローダウン(draw−down)、スプレー、ペインティング又は押し出しによる基質に対するエマルションの適用によって;又はさらに他の態様においては、器官又は組織を体内、器官又は器官の構成要素に移植する前に、該重合性エマルションを体外で該器官、器官の構成要素又は組織に注射することにより、再建及び組織の発生方法を提供する。
【0057】
例示的な注射可能な組成物の調製及びその組織工学に対する使用方法を詳細に説明した、以下の特定の例を参照することにより、本発明はさらに定義されるが、これらに限定されるものではない。材料及び方法の両者の多数の変形が、本発明の目的から離れずかつ範囲を狭めることなく実施され得ることが、当業者に明白であろう。
【実施例】
【0058】
(例)
以下の実験のいずれにおいても、液状エマルションは、室温(約23℃)で、かついかなる緩衝液も使用せずにpH7で調製された。該エマルションを調製する温度は、手術室で見出される生理学的条件の存在する条件下において、安定したシステムを形成することができるように選択された。極端に高い温度又は低い温度は、相の割合及び界面活性剤の存在に依存して、エマルションを不安定にする原因となり得る。実験で使用した界面活性剤は、生物適合性であるように選択されたが、他の制限はない。従って、エマルションの安定性は、界面活性剤又は界面活性剤の混合物の最適化により向上し得る。
【0059】
例1−ベースとなるエマルションの調製
本実験において、光開始され、硬化した二相重合生成物を提供できる、最も単純な油中水(W/O)エマルションが調製された。該液状エマルションは単一の有機アクリレートモノマーから調製され、ラウリルアクリレートが、顕著な粘弾特性を有する生物適合性ポリマーを形成するために特に選択された。有機相に対する水性(水を含んだ)相の割合は30%として選択され、該割合は、生物活性材料又は細胞を添加する場合にそれらの存在を可能とするのに十分かつ実質的な(意味のある量の)水性相を有する安定なエマルションを提供する可能な割合の範囲である。
W/Oエマルション“A”は、以下の組み合わせにより調製された:
i. 101.8gのラウリルアクリレートモノマー(CPS Ageflex FA12P)が、1.84gのBAPO光開始剤(BAPO:ビスアクリルホスフィンオキシド)(Ciba Irgacure819)チバスペシャリティケミカルズ社(TarrytownNY)製と混合され;次いで、
ii. 2.03gのPE−PEO界面活性剤(シグマ−アルドリッチ(Milwaukee,WI)製のポリエチレンとポリエチレンオキシドのブロックコポリマー)(HLB4.0(HLB:親水親油バランス))が工程(i)で調製されたブレンドに添加され、有機(油)相を形成し;次いで、
iii. 30.0gの脱イオンH2O(水)相が工程(ii)の成分に添加され;次いで、
iv. 工程(iii)の全ての成分が4000rpmで25分間高い剪断力のコールズミキサーで混合され(乳化され)、エマルション“A”が形成された。
混合速度は、安定したエマルションの形成に臨界的であることが見出された。エマルション“A”は室温で数時間の間安定であったが、選択した条件下の安定性は数週間にも達した。エマルションが不安定となった後は、それらを上記のように再混合し、光開始して、作成され直ちに光開始されたエマルションと視覚的に区別できない固形粘弾性重合生成物になることが見出された。
【0060】
例2−ベースエマルションに対する生物活性ガラスの添加
例1の単一のモノマー及び光開始システムが、細胞の成長を促進することで知られる生物活性ガラス(前記を参照されたい)を含むように拡張された。この実験は、重要な生物学的な成分の水性分散液が、液体に導入されかつ光重合により安定な2相の凝固した重合生成物へ取り込まれ得ることを示すために行われた。
W/Oエマルション“B”は、以下の組み合わせにより調製された:
i. 50.1gのCPS Ageflex FA12Pラウリルアクリレートモノマーが0.89gのIrgacure819と混合され;次いで
ii. 0.53gのPE−PEO界面活性剤(HLB4.0)が28.7gの工程(i)で調製されたブレンドに添加され、有機(油)相を形成し;次いで
iii. 1.0gの生物活性ガラスセラミック(MO−SCI社.,Rolla,MO)及び1.0gのトウモロコシデンプン(アルゴ(Argo))が、100.1gの緩衝生理食塩水溶液と混合され、攪拌されて、水性(水)相分散物を形成し;次いで
iv. 10.2gの水性分散物が工程(iii)の成分に添加され;及び工程iiの有機相に添加され;
v. 工程(iv)の全ての成分が、上記のように4000rpmで25分間高い剪断力のコールズミキサーで混合(乳化)され、エマルション“B”を形成した。
エマルションに対する生物活性ガラスの添加が、該エマルションを不安定にしかねないという最初の懸念があったものの、本実験においてはそのようなことはなく、この点は重要であった。この結果は、重合された生成物に対する生物活性ガラスの添加を許容し、該生成物は、該エマルションの移植及び重合の後に髄核の領域に残存する全ての生細胞に対して潜在的な生化学的作用を有する。
【0061】
例3−代替的な分散剤を用いたエマルションシステム
該エマルションシステムの性質及び能力について、例1及び2で提供された情報をさらに拡張すると、第二の分散試薬、ステアリン酸カルシウムが添加され、本発明が単一の分散剤、例1及び2のPE−PEO(ポリエチレン及びポリエチレンオキシドのジブロックコポリマー)に制限されないことを示した。実際、例3で製造されたエマルションは、他の点で例2のエマルションと同一であることが見出された。違いが認められたとはいえ、例3のエマルションもうまく光重合する。本例3のエマルションにおける水性相の液滴は、例2のエマルションのものよりも大きな大きさであり、異なる界面活性剤が、分散された水性相の液滴の大きさに異なる作用を有することが示された。
W/Oエマルション“C”は以下の組み合わせにより調製された:
i. 50.1gのCPS Ageflex FA12Pラウリルアクリレートモノマーが、上記のように1.01gのIrgacure819と混合され;次いで
ii. 1.06gのステアリン酸カルシウムが、工程(i)の成分に添加され、有機(油)相を形成し;次いで
iii. 15.1gの水性バイオガラス分散物(例2で使用したものと同じ)が工程(ii)の有機相に添加され、プレエマルションを形成し;
iv. 工程(iii)の該プレエマルション成分が、4000rpmで25分間高い剪断力のコールズミキサーで混合(乳化)され、上記のようにエマルション“C”を形成した。
【0062】
例4−光開始重合
前述の例からのエマルションA、B及びCの有機相の重合は、ホンル(Honle)ランプ装置からのUV光曝露により以下のように開始された:
i. 5.7gの例2の工程(i)の反応性モノマーと光開始剤の混合物の有機相が、アルミニウムの秤量容器に計量され、2分間UVランプ下で曝露された;該混合物は柔軟性で粘着性のある固形ポリマーを形成した。
ii. 5.3gのエマルション“A”が、アルミニウム秤量容器に計量され、2分間UVランプ下で曝露された−結果は表1に示す。
iii. 5.4gのエマルション“B”が、アルミニウムの秤量容器に計量され、2分間UVランプ下で曝露された−結果は表1に示す。
iv. 7.5gのエマルション“B”がアルミニウムの秤量容器に計量され、3分間UVランプ下で曝露された−結果は表1に示す。
v. 10gのエマルション“B”がガラスのペトリ皿に計量され、7分間UVランプ下で曝露された−結果は表1に示す。
vi. 10gのエマルション“B”がガラスのペトリ皿に計量され、5分間UVランプ下で曝露された−結果は表1に示す。
vii. 10gの例3、工程(iii)からのプレエマルションが手で振盪され、及びガラスのペトリ皿に計量され、UVランプ下で5分間曝露された−結果は表1に示す(このエマルションにおいて大きな水の泡が出現したことは、該水が十分に分散されなかったことを示しており、予期されたように該生成物は光硬化ゲルとして許容されないものであったことに留意されたい)。
viii. 10gのエマルション“C”がガラスのペトリ皿に計量され、UVランプ下で7分間曝露された−結果は表1に示す(5分間硬化させたエマルション“C”の重合した生成物と、7分間硬化させた同じエマルション“C”の間では、観察可能な相違は何ら存在しておらず、該システムの取り扱いにおける柔軟性のレベルを示したことに留意されたい)。
ix. 10gのエマルション“C”がガラスのペトリ皿に計量され、UVランプ下で5分間曝露された−結果は表1に示す。
【0063】
上記サンプルのUV光開始重合の結果が、表1で要約される。
表1

曝露時間の範囲内で、全てのサンプルは、完全に光重合されたと考えられる。固形、不透明、乾性、“粘着性”の重合された生成物を生成したサンプルは、結果を得た後に調べられた。“粘着性”は生物接着性にとって利点となる特性であり、本発明の一部をなし、特に該特性が単一で生物適合性のあるアクリレートで達成されたためである。この効果は、以下で考察する2−相システムの重合された生成物と対照的であり、この場合には水性相の存在が、粘弾性に顕著な作用を有した。柔軟性のあるレベルがUV光の曝露の長さにおいて見られた一方、光の強度及び曝露時間が、結果として得られる重合された生成物の特性にとって重要である。あまりに少ない光は、遅い、不完全な重合を生じることが見出され、一方、過剰な又はあまりに強い光は、過剰な場合に周囲の組織に損傷を与える生成物の発熱が付随し得る。
【0064】
重合されたエマルション生成物の粘弾性は、室温にてパールフィジカ社製振動レオメーター(モデルMCRレオメーター,Ashland,VA)で決定したものとして、光重合された有機相の粘弾性と対比させた。表2は、硬化したエマルションの粘弾性が、純粋なラウリルアクリレートよりも顕著に高いことを示しており、より重要なことには、得られた粘性が、人間の髄核の粘性と同じ大きさの粘性であることを示している。前述のIatridis et al.1997及び1999を参照されたい。
表2

*は複素弾性率であり;デルタは位相角である。
表2で提供される結果の意義をよく理解するためには、髄核が粘弾性の材料であり、かつ粘弾性材料は、応力がかけられた際に、同時にエネルギーを放散しかつ貯えるものであることを理解しなければならない。物質の特定の応答は、該物質に含まれる分子が一定期間にわたって再構成される時の速度に依存する。粘性の挙動は、ダッシュポットとして模式化され、加えられた力は変形と独立しているが、変形速度には依存する。弾性の挙動は、スプリングとして模式化され、加えられた力はスプリングの変形に直接的に比例する。
直列かつ並列にしたスプリングとダッシュポットの組み合わせは、物質の正味の粘弾性挙動を表すための、フォークト、マックスウェル及びケルビンモデルとして公知である、種々の単純な機械的モデルを提供する。
【0065】
粘弾特性を評価するいくつかの方法が存在する。応力が正弦波の周波数wで周期的に加えられた場合、その後ひずみgも正弦波のように交替するが、当該交替は以下の関係に従って、応力sから位相の変化をし得る:
s=g0(G' sin wt+G'' cos wt)
ここでtは時間を、g0は最大ひずみ振幅を、G'は貯蔵弾性率を及びG''は損失弾性率を意味する。動的な周波数掃引法においては、小さなひずみ振幅が加えられ、かつ周波数が典型的に1から100ラジアン/秒の範囲で系統的に変動される。該弾性率はG''/G'=tan d、かつG*=G'+iG''により関係づけられ、ここでdは応力とひずみの間の位相角であり、G*は複素剪断弾性率である。(例えば、Ferry,Viscoelastic Properties of Polymers,John Wiley,NY,1980を参照されたい)。そのため、椎間板の成分、繊維輪と髄核の両方が、それらの病理学的な状態に依存した粘弾性応答を生成する(例えば、Buckwalter et al.,Orthopaedic Basic Science,American Academy of Orthopaedic Surgeons,Chapters21−22,1999を参照されたい)。
【0066】
例5−プレポリマーの添加から得られた増強した粘性
高い粘性のエマルションが、高い粘性のラウリルアクリレートポリマー(言い換えれば、プレポリマーが、ラウリルアクリレートのみ及びビス−GMAの使用された前述のサンプルよりも高い粘性を提供した)及び最終物である重合された粘弾性生成物の機械的強度と共に、エマルションの粘性を増強する不活性なガラス充填剤を少量添加することにより形成された。ラウリルアクリレートにおける自己会合、非共有結合的な架橋ではなく、ビス−GMAがこのエマルションに対して共有結合的な架橋を提供することに留意されたい。結果として、ビス−GMAの添加は、剪断又は圧縮応力の存在下で、強固な化学力を提供して生成物を一体に保持させた。架橋剤、例えばビス−GMAを0.05%から2.0%W/Wの範囲で含むラウリルアクリレートの光重合は、結果として固形かつ粘着性のポリマーを与えた。
加えて、必然的に常に光開始を使用しなければならないというのではなく、過酸化物及びアミン触媒に基づいたフリーラジカル開始システムを使用できることが示された。フリーラジカル開始システムは、ポリマーの文献において周知である。例えば、前述のAllcok et al.,1990を参照されたい。
【0067】
該エマルションは、3gのプレポリマー化されたラウリルアクリレート、2gの不活性充填剤材料としてのシラン処理された2−5ミクロンのガラス粉末、0.5gのヒドロキシプロピルメチルセルロースの1%溶液、0.1gのビス−GMA、4.5gのラウリルアクリレートモノマー及び0.1gのベンゾイルペルオキシド開始剤を混合することにより調製された。該エマルションは、VWRミニボルテックスミキサー(Westchester,PA)を用いて、rpm位置が10で3分間混合された。その後、0.2mlの第三級アミン活性化剤(N,Nジエチルpトルイジン)がエマルションに添加され、重合反応を誘発させた。該エマルションは、即時に使い捨てのプラスチック製シリンジに装填され、18ゲージの針を用いてアルミの型に送達された。該エマルションは、活性化の後6分の間に、固くかつ粘着粘弾性の固体に重合した。従って、増強された重合は、より高い粘性の液状W/Oエマルションの開発から得られ、該エマルションは、髄核への注射に際してより容易に保持されるという利点を有する。結果として、該変性したエマルションは、外科医によってより容易に取り扱われ、保持する手段、例えばバルーン又は他の膜の必要を避けられる。
【0068】
例6−2成分システム
例5のエマルションが同一の二つの成分に分けられ、一方が過酸化物フリーラジカル発生剤を含み、一方、他方がアミン触媒を含む。成分を分けることにより、該二つのエマルションが、それらが組み合わされたときよりもより長く延長された期間、重合の心配なしに維持できることが見出された。さらに重合は、該二つの成分を一緒に混合した場合に瞬間的に生じた。例えば前記Allcock et al.,1990を参照されたい。
該二成分システムを調製するため、第一に最初のベースエマルションを以下を用いて調製した:20gのラウリルアクリレートプレポリマー、10gの不活性充填剤材料としてのシラン処理した2−5μmのバリウムガラス粉末、0.5gのビス−GMA、2.5gのヒドロキシプロピルメチルセルロースの1%溶液、及び17gのラウリルアクリレートモノマー。該内容物に、3500rpmで10分間の機械的攪拌機を用いて、高い剪断力を加えた。該ベースエマルションは、その後25℃で2時間、508mm(20インチ)の真空下に置かれ、気泡のほとんどを除去した。
【0069】
該二つの独立した成分は、以下のように調製された。成分Aは、25gのベースエマルションに0.5gのベンゾイルペルオキシド開始剤を添加することにより調製した。成分Bは、25gのベースエマルションに1mlの第三級アミン活性化剤(N,Nジエチル−p−トルイジン)を添加することにより調製した。
両成分は、2成分カートリッジ(System3,Auburn,WA)の別々の区画に負荷された。充填後、該カートリッジは送達ガンに装填され、使い捨ての静的混合チップがカートリッジに取り付けられた。該混合物は、混合/送達ガンを用いてアルミホイルの型に施された。放出された材料は、1から20分で、固く粘着性のある粘弾性固体へ硬化した。従って、開始剤と触媒が所望の混合時間まで分離されている二成分システムへの調合物の変形は、外科医が該手順を行おうとするそのときまで、該二つの分離したそれぞれの成分の延長された貯蔵安定能力を提供する。
【0070】
例7−患者の髄核再建のための本発明の非侵襲性の送達
例6を拡張すると、全ての材料が、生体移植用に適切な清潔さ及び無菌性をもって調製され、生体内での有用性を試験された。該二成分ポリマーエマルションは、二成分カートリッジ中で貯蔵され、上述の混合/送達ガンに装填された。その後、該内容物は、二つの成分を組み合わせて重合反応を開始する、静的混合チップを通して施された。該材料は、混合方法が行われる前に、椎間板を通過しかつ髄核のスペースに挿入された、取り付けられた針を直ちに通り抜けた。該椎間板の繊維輪が既に脱出している場合には、該材料は繊維輪の内壁において脱出部位に隣接して挿入され、損傷箇所における再脱出を防止する。
1から10cm3(1から10cc)の材料が該核の空洞に施される。該針は、患者の体内から除去され、該材料は送達の後1から20分の間で体内でその場で完全に重合される。有利には、該エマルションの経皮的な注射による送達及び重合した材料の移植は、許容される非侵襲性の手段により達成できるが、切開術の間に施すことも可能である。
【0071】
例8−重合のその場での光開始
例7を拡張すると、例5のポリマーエマルションが、最終エマルションの質量の0.1%の濃度で光開始剤2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパン(Irgacure2959 チバスペシャリティケミカルズ社製、Tarrytown,NY)を導入することにより、光重合のための単一成分システムとして調製された。該エマルションブレンドは、送達末端に取り付けた18ゲージの針を有する10−ccシリンジに配置された。該エマルションは、椎間板の型で作った又は機械加工された模型において前もって形作った空間に、該針を通じて送達された。該半透明の椎間板は、直径5mmの光ファイバーケーブルを通じて誘導されたUV光に、2分間曝露された。こうして、該エマルションのポリマー相は開始され、結果得られた重合された生成物は、椎間板中の空間を満たす粘着性の粘弾性固体を形成した。光重合システムの有効性が示されたので、前述の工程は体内でも続けられ、それによって該粘着性エマルションは該髄核を満たし、かつ重合された生成物はその場で形成され、患者の損傷した又は劣化した髄核を置換及び再建する耐久性移植片となる。
【0072】
本明細書に引用し又は記載したいずれの特許、特許出願及び出版物の開示は、参照することによって全体が本明細書中に取り込まれる。
前述の明細書は、ある好ましい態様に関して記載し、多くの詳細な説明が、説明目的で記載されているが、本発明が種々の変更及び付加的な態様に向けられかつ本明細書に記載された、詳細な説明のいくつかは本発明の基本原理から外れることなく相当に変わり得るということが、本発明の精神及び範囲を外れることなく当業者にとって明白である。該変形及び付加的な態様も、添付した請求の範囲の範囲中に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの別々の有機相及び水性相を含む、組織工学用の生物適合性、非毒性の逆(油中水)流体エマルションであって、該有機相が一以上の反応性のエチレン性不飽和モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物を含み、上記エマルションをその場で重合した場合に、二つの別々の有機相及び水性相を含む強固な粘着性の粘弾性材料を形成するエマルション。
【請求項2】
該一以上の反応性のエチレン性不飽和モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物の少なくとも一つがアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該一以上の反応性のエチレン性不飽和モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物の少なくとも一つが以下から成る群より選択される、請求項1に記載の組成物:メチルアクリレート;メチルメタクリレート;エチルアクリレート;エチルメタクリレート;ステアリルアクリレート及びメタクリレート;ラウリルアクリレート及びメタクリレート;エトキシ化された及び/又はプロポキシ化されたアクリレート及びメタクリレート;アルコキシ化されたアクリレート及びメタクリレート;アリルアクリレート及びメタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート;イソデシルアクリレート又はメタクリレート;オクチルデシルアクリレート及びメタクリレート;フェノキシエチルアクリレート及びメタクリレート;グリシジルアクリレート及びメタクリレート;イソボルニルアクリレート;カプロラクトンアクリレート;エトキシ化されたノニルフェノールアクリレート及びメタクリレート;プロピレングリコールアクリレート及びメタクリレート;アルコキシ化されたノニルフェノールアクリレート及びメタクリレート;アルコキシ化されたジオールジアクリレート;アルコキシ化されたビスフェノールジアクリレート;エチレングリコールジアクリレート;ブチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート;ブタンジオールジアクリレート及びジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート及びジメタクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート;エトキシ化されたビスフェノールジアクリレート;飽和及び不飽和(C36)ダイマージオールジアクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート;ポリブタジエンジアクリレート及びジメタクリレート;ポリブタジエンウレタンジアクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート;アクリルアミド及びメタクリルアミド;同様に前記モノマーのホモポリマー及び前記モノマーの混合物の共重合物。
【請求項4】
該一以上の反応性のエチレン性不飽和モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物の少なくとも一つが、プレポリマー化されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該プレポリマー化されたモノマーがラウリルアクリレートであり、かつ該プレポリマー化されたラウリルアクリレートが、エマルションの有機相においてモノマーの画分を置換する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
該水性相が水を含み、かつさらに以下から成る群より選択されるキャリアーを含み得る、請求項1に記載の組成物:生理食塩水、デンプン、ハイドロゲル、ポリビニルピロリドン、多糖類、ヒアルロン酸エステル及び血漿。
【請求項7】
さらに以下から成る群より選択される一以上の添加剤を含む、請求項6に記載の組成物:安定化剤、安定化塩、希釈剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、カプセル化剤、溶媒、増粘剤、分散剤、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、低分子量ペプチド、蛋白免疫グロブリン、親水性ポリマー、アミノ酸、単糖類、二糖類、炭水化物、セルロール又はこれらの誘導体類、グルコース、マンノース、デキストリン、キレート剤、糖アルコール、対イオン類、非イオン性界面活性剤及び治療上の組成物。
【請求項8】
該治療上の添加剤組成物がさらに以下の一以上から成る群より選択される、請求項7に記載の組成物:ペプチド、組織再生剤、抗菌剤、ステロイド、フィブロネクチン、サイトカイン、生長因子、骨誘導性基質、骨形成タンパク質(BMP)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インシュリン様成長因子(IGF−I及びII)、TGF−ベータ、鎮痛剤、麻酔剤、殺菌剤、アルファ−、ベータ又はガンマ−インターフェロン、エリトロポエチン、グルカゴン、カルシトニン、ヘパリン、インターロイキン−1、インターロイキン−2、フィルグラスチム、cDNA、DNA、タンパク質、HGH、黄体形成ホルモン、心房性ナトリウム利尿因子、第VIII因子、第IX因子、刺激ホルモン、及び以下から成る群より選択される一又はの薬物:アシクロビル、セフラジン、マルファーレン、プロカイン、エフェドリン、アドリオマイシン、ダウノマイシン、プルンバギン、アトロピン、キニーネ、ジゴキシン、キニジン、生物活性ペプチド、セファロチン、プロリン及びプロリン類似体、ペニシリンV、アスピリン、イブプロフェン、ステロイド、ニコチン酸、ケモデオキシコリックアシッド(chemodeoxycholic acid)、クロラムブシル、細胞結合メディエーター及び生物活性リガンド。
【請求項9】
エマルションの重合が、熱開始、化学的開始又は光開始の手段による開始を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
該エマルションの有機相が、少なくとも一つの高分子量ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
該エマルションの有機相が、重合反応の開始剤又は促進剤の少なくとも一つを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
該少なくとも一つの開始剤又は促進剤が、重合反応の光開始剤の少なくとも一つを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
該エマルションがさらに、有機相又は水性相のいずれかにおいて、一以上の不活性、生物活性又は生物学的な材料の粒子、溶液又は分散物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
該一以上の不活性、生物活性又は生物学的な材料が、以下から成る群より選択される、請求項13に記載の組成物:生物細胞又は細胞断片、生体内又は試験管内の細胞培地から誘導された組織断片、生物細胞又は組織生長因子、細胞送達又は細胞生長及びそれらの送達を促進する薬剤、抗体、抗体断片、ホルモン、細胞標的部分、不活性セラミック、不活性ガラス、生物活性セラミック及び生物活性ガラス。
【請求項15】
組織工学用の強固で生物適合性の粘弾性材料の調製方法であって、前記材料が二つの異なる有機相及び水性相を有し、前記方法が以下の工程を含む方法:
二つの別々の相(有機及び水性)を含む、生物適合性で、非毒性の逆(油中水)流体エマルションを調製する工程、ここで該有機相が一以上の反応性のエチレン性不飽和モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物を含み;及び
その場で前記エマルションを重合する工程。
【請求項16】
前記一以上の反応性のエチレン性不飽和モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物の少なくとも一つがアクリレートを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
以下から成る群より選択される一以上の反応性のエチレン性不飽和モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物の少なくとも一つを選択しかつ添加することをさらに含む、請求項15に記載の方法:メチルアクリレート;メチルメタクリレート;エチルアクリレート;エチルメタクリレート;ステアリルアクリレート及びメタクリレート;ラウリルアクリレート及びメタクリレート;エトキシ化された及び/又はプロポキシ化されたアクリレート及びメタクリレート;アルコキシ化されたアクリレート及びメタクリレート;アリルアクリレート及びメタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート;イソデシルアクリレート又はメタクリレート;オクチルデシルアクリレート及びメタクリレート;フェノキシエチルアクリレート及びメタクリレート;グリシジルアクリレート及びメタクリレート;イソボルニルアクリレート;カプロラクトンアクリレート;エトキシ化されたノニルフェノールアクリレート及びメタクリレート;プロピレングリコールアクリレート及びメタクリレート;アルコキシ化されたノニルフェノールアクリレート及びメタクリレート;アルコキシ化されたジオールジアクリレート;アルコキシ化されたビスフェノールジアクリレート;エチレングリコールジアクリレート;ブチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート;ブタンジオールジアクリレート及びジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート及びジメタクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート;エトキシ化されたビスフェノールジアクリレート;飽和及び不飽和(C36)ダイマージオールジアクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート;ポリブタジエンジアクリレート及びジメタクリレート;ポリブタジエンウレタンジアクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート;アクリルアミド及びメタクリルアミド;同様に前記モノマーのホモポリマー、及び前記モノマーの混合物の共重合物。
【請求項18】
前記一以上の反応性のエチレン性不飽和モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物の少なくとも一つのプレポリマー化をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
該プレポリマー化されたモノマーがラウリルアクリレートであり、かつ該プレポリマー化されたラウリルアクリレートが、エマルションの有機相においてモノマーの画分を置換する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
該エマルションの水性相に水を含ませることをさらに含み、かつ以下から成る群からのキャリアーを選択しかつ添加することをさらに含む、請求項15に記載の方法:生理食塩水、デンプン、ハイドロゲル、ポリビニルピロリドン、多糖類、ヒアルロン酸エステル及び血漿。
【請求項21】
以下から成る群からの一以上の添加剤を選択しかつ添加することをさらに含む、請求項20に記載の方法:安定化剤、安定化塩、希釈剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、カプセル化剤、溶媒、増粘剤、分散剤、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、低分子量ペプチド、蛋白免疫グロブリン、親水性ポリマー、アミノ酸、単糖類、二糖類、炭水化物、セルロール又はこれらの誘導体類、グルコース、マンノース、デキストリン、キレート剤、糖アルコール、対イオン類、非イオン性界面活性剤及び治療上の組成物。
【請求項22】
以下の一以上から成る群からの治療上の添加剤組成物の少なくとも一つを選択しかつ添加することをさらに含む、請求項21に記載の方法:ペプチド、組織再生剤、抗菌剤、ステロイド、フィブロネクチン、サイトカイン、生長因子、骨誘導性基質、骨形成タンパク質(BMP)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インシュリン様成長因子(IGF−I及びII)、TGF−ベータ、鎮痛剤、麻酔剤、殺菌剤、アルファ−、ベータ又はガンマ−インターフェロン、エリトロポエチン、グルカゴン、カルシトニン、ヘパリン、インターロイキン−1、インターロイキン−2、フィルグラスチム、cDNA、DNA、タンパク質、HGH、黄体形成ホルモン、心房性ナトリウム利尿因子、第VIII因子、第IX因子、刺激ホルモン、及び以下から成る群より選択される一又はの薬物:アシクロビル、セフラジン、マルファーレン、プロカイン、エフェドリン、アドリオマイシン、ダウノマイシン、プルンバギン、アトロピン、キニーネ、ジゴキシン、キニジン、生物活性ペプチド、セファロチン、プロリン及びプロリン類似体、ペニシリンV、アスピリン、イブプロフェン、ステロイド、ニコチン酸、ケモデオキシコリックアシッド(chemodeoxycholic acid)、クロラムブシル、細胞結合メディエーター及び生物活性リガンド。
【請求項23】
熱開始、化学的開始又は光開始手段によるエマルションの重合開始を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも一つの重合反応の開始剤又は促進剤を、該エマルションに添加することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
添加された開始剤又は促進剤が、重合反応の光開始剤を少なくとも一つ含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
該エマルションをその場で、紫外線光、可視光又は赤外線光及びマイクロ波を含む電磁放射に曝露することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
該少なくとも一つの開始剤又は促進剤が、重合反応の化学的開始剤の少なくとも一つを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
有機相又は水性相のいずれかに対する、一以上の不活性、生物活性又は生物学的な材料の粒子、溶液又は分散物の選択及び添加をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
該エマルションを二つの部分に分けること、該部分の一方が過酸化物フリーラジカル発生剤を含み、他方がアミン触媒を含み;及び
該二つのエマルション成分を組み合わせて、粘弾性材料への重合を開始すること、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
請求項15に記載の方法により製造され、二つの別々の有機相及び水性相を有する、組織工学用の強固で生物適合性のある粘弾性材料。
【請求項31】
該エマルションを、組織移植片、細胞成長のための骨格、又は生存組織の結合若しくは修復のための生物接着剤に形成することを含む、請求項30に記載の粘弾性材料を用いる方法。
【請求項32】
哺乳動物において修復、再建又は組織工学の必要とされる箇所へ該エマルションを送達し、かつその場で該エマルションを粘弾性材料に重合することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
哺乳動物において修復、再建又は組織工学の必要とされる箇所に、許容される非侵襲的な手段により、該エマルションを送達することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
該送達が、哺乳動物において修復、再建又は組織工学の必要とされる箇所に、該エマルション手段の注射により達成される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
哺乳動物の脊柱における椎間板の少なくとも一つを、置換又は修復することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
哺乳動物の椎間板の髄核を排除した領域に、該エマルションを送達すること;及び
その場で該エマルションを重合して粘弾性材料を形成し、それによって哺乳動物に移植片を形成することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
髄核に対して該エマルションを送達する工程の前に、最小の侵襲性の外科的手段により、哺乳動物の椎間板から、劣化した髄核を全体的又は部分的に排除することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
送達した組成物中に、重合反応の化学的開始剤を少なくとも一つ含んだ開始剤又は促進剤の少なくとも一つを含むことをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
有機相又は水性相のいずれかにおける、一以上の不活性、生物活性又は生物学的な材料の粒子、溶液又は分散物の、該エマルションに対する選択及び添加をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
以下より成る群からの一以上の不活性、生物活性又は生物学的な材料の、該エマルションに対する選択及び添加をさらに含む、請求項39に記載の方法:生物細胞又は細胞断片、生体内又は試験管内の細胞培養から誘導された組織断片、生物細胞生長因子又は組織生長因子、細胞送達又は細胞生長及びこれらの送達を促進する薬剤、抗体、抗体断片、ホルモン、細胞標的部分、不活性セラミック、不活性ガラス、生物活性セラミック及び生物活性ガラス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−16614(P2012−16614A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207671(P2011−207671)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2006−538283(P2006−538283)の分割
【原出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(506148280)ジェンティス インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】