説明

経口投与できる固体の放出改変型医薬投与形

本発明は、放出が改変された、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミドを含有する固体の経口投与可能な医薬投与形、およびそれらの製造方法、医薬としてのそれらの使用、疾患の予防、二次予防および/または処置のためのそれらの使用、および疾患の予防、二次予防および/または処置用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与でき、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミドを含む固体の放出改変型医薬投与形、およびそれらの製造方法、医薬としてのそれらの使用、障害の予防、二次予防および/または処置のためのそれらの使用、並びに、障害の予防、二次予防および/または処置用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。
【0002】
放出改変型投与形は、本発明によると、その摂取後の有効成分放出特徴が、時間、プロフィールおよび/または消化管中の部位に関して、常套の製剤(例えば、経口液剤または有効成分を迅速に放出する固体投与形)の投与後には達成できない態様で調節されている製剤を意味する。用語「放出改変型」の他に、「徐放性」「遅延型」または「制御放出型」などの代替的用語も頻繁に使用される。これらは、同様に本発明の範囲に包含される。
【背景技術】
【0003】
放出改変型医薬投与形を製造するために、様々な方法が知られている。例えば、B. Lippold in "Oral Controlled Release Products: Therapeutic and Biopharmaceutic Assessment" edited by U. Gundert-Remy and H. Moeller, Stuttgart, Wiss. Verl.-Ges., 1989, 39-57 参照。
【0004】
5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド(I)は、経口投与でき、様々な血栓塞栓性障害の予防、二次予防および/または処置に用いることができる、凝固因子Xaの低分子量阻害剤である(これに関して、WO−A01/47919参照、その開示を出典明示により本明細書の一部とする)。以後、有効成分(I)に言及するとき、これは、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド(I)の全ての結晶変態および無定形、並びに各々の水和物、溶媒和物および共結晶を包含する。
【0005】
長期の処置を必要とする疾患には、または、疾患の長期的予防には、薬物摂取の頻度を最小化するのが望ましい。これは、患者にとってより便利であるのみならず、不規則な摂取の不利益を低減することにより、処置の信頼性(コンプライアンス)も高める。例えば1日2回から1日1回の投与への望ましい摂取頻度の減少は、投与形からの有効成分の放出を改変することを介して、治療的に有効な血漿レベルを延長することにより達成できる。
【0006】
有効成分の放出が改変された投与形の摂取後に、さらに、血漿プロフィールをならす(所謂ピーク/トラフ比を最小化する)ことにより、即ち、即時放出医薬形の投与後に頻繁に観察される有効成分の高血漿濃度を回避することにより、ピーク濃度に相関する望まない副作用の発生を減らすこともできる。
【0007】
特に動脈および/または静脈の血栓塞栓性障害(例えば、深部静脈血栓症、卒中、心筋梗塞および肺塞栓症)の長期治療または予防および二次予防には、有効成分放出の改変を通して、ピーク/トラフ比の低下を導き、1日1回の投与を可能にする形態で、有効成分(I)を利用可能にするのが有利である。
【0008】
製剤の開発においてさらに必要なのは、有効成分(I)の物理化学および生物学的特性、例えば、WO01/47919の実施例44に記載の経路により製造する場合に得られ、以後変態Iと称する、血漿半減期が約7時間の有効成分(I)の結晶変態では、有効成分(I)の比較的低い水溶性(約7mg/l;25℃)、比較的高い約230℃の融点を、考慮に入れることである。従って、望ましい1日1回の投与には、その物理化学および生物学的特性を考慮して、有効成分(I)の放出が改変された特定の医薬製剤が必要である。
【0009】
DE10355461は、親水性化(hydrophylized)形態で有効成分(I)を含む医薬投与形を記載している。これに関して好ましいのは、USPの器具2(パドル)を用いる放出試験において、Q値(30分)75%を有する即時放出錠剤である。
【発明の開示】
【0010】
驚くべきことに、この度、有効成分(I)を特定の定められた改変された速度で放出する投与形が、比較的一定の血漿濃度で1日1回の投与を可能にすることが見出された。
【0011】
本発明は、経口投与でき、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド(I)を含み、USPの器具2(パドル)を用いる放出試験において有効成分(I)の80%(表示された有効成分の総質量に基づく)が少なくとも2時間、多くとも24時間の期間にわたって放出されることを特徴とする、固体の放出改変型医薬投与形に関する。
【0012】
本発明の好ましい実施態様では、有効成分(I)の80%は、USPの器具2(パドル)を用いる放出試験において、4ないし20時間の期間で放出される。
【0013】
有効成分(I)は、結晶形または非晶質無定形または結晶形と無定形の有効成分画分の混合物として、本発明の医薬投与形中に存在し得る。
【0014】
本発明の投与形が結晶形の有効成分(I)を含む場合、本発明の好ましい実施態様では、有効成分(I)は結晶変態1の微粉化形態で用いる。この場合、有効成分(I)は、好ましくは、10μmより小さい、特に8μmより小さい平均粒径X50、および20μmより小さい、特に15μmより小さいX90値(90%画分)を有する。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施態様では、結晶性有効成分(I)を使用するとき、微粉化有効成分(I)は親水性化形態で存在し、かくしてその溶解速度を高める。親水性化有効成分(I)の製造は、DE10355461に詳細に記載されており、その開示を出典明示により本明細書の一部とする。
【0016】
有効成分(I)は、しかしながら、好ましくは、結晶形ではなく、完全または支配的に無定形で、本発明の医薬投与形中に存在する。有効成分の無定形化の大きな利点は、有効成分の溶解度が高まることであり、かくして、特に腸の下部から吸収される有効成分(I)の画分が増加する可能性が高まることである。
【0017】
様々な医薬的に適する製造方法が、有効成分(I)の無定形化に考えられる。
これに関して、結晶性の有効成分(I)は、例えばアセトンまたはエタノールなどの医薬的に適する有機溶媒中で限られた溶解性しかなく、従って不相応に大量の溶媒を使用しなければならないので、有効成分および必要に応じて用いる補助剤を溶解し、次いでさらに処理する溶解方法は、あまり適さない。
【0018】
本発明によると、有効成分(I)の無定形化に好ましい方法は、有効成分を1種またはそれ以上の適する補助剤と共に融解する、融解法である。
【0019】
これに関して特に好ましいのは、溶融押出法である [Breitenbach, J., "Melt extrusion: from process to drug delivery technology", European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 54 (2002), 107-117; Breitenbach, J., "Feste Loesungen durch Schmelzextrusion - ein integriertes Herstellkonzept", Pharmazie in unserer Zeit 29 (2000), 46-49]。
【0020】
この方法では、適する製剤および適する製造パラメーターの選択により、有効成分の分解が医薬的に許容し得る限界を確実に超えないようにできる。これは、結晶変態Iの有効成分(I)の約230℃の融点では困難な作業である。なぜなら、この高温範囲では、有効成分および/または補助剤の相当な分解速度が通常予想されるからである。
【0021】
無定形の有効成分(I)を製造するための溶融押出法は、本発明によると、ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン類、ポリエチレングリコール類(PEG)、ポリメタクリレート類、ポリメチルメタクリレート類、ポリエチレンオキシド類(特に水溶性ポリエチレンオキシド樹脂、例えば、POLYOX(商標) Water Soluble Resins, Dow)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ビニルピロリドン−ビニルアセテートコポリマー類、または、セルロースエーテル、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、または、様々なポリマーの混合物、例えば、2種またはそれ以上の上述のポリマーの混合物の存在下で実施する。これに関して好ましいポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)またはHPCとPVPの混合物である。これに関して、特に好ましくは、ポリマーはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0022】
溶融押出物におけるポリマーの割合は、好ましくは、本発明によると、溶融押出物の全重量の少なくとも50%である。
【0023】
有効成分(I)は、好ましくは、本発明によると、溶融押出物の全重量に対して1ないし20%の濃度で溶融押出物中に存在する。
【0024】
無定形の有効成分(I)を製造するための溶融押出法では、有効成分(I)の融点を下げるために、または、押出工程で起こる有効成分の分解を低減し、処理を容易にするための可塑剤として、1種またはそれ以上の医薬的に適する物質を添加することが有利であると明らかになった。
【0025】
これらの医薬的に適する物質は、本発明によると、好ましくは、溶融押出物の全重量に対して、2ないし40%の濃度で添加する。
【0026】
この目的に適する例は、尿素、ポリマー、例えばポリビニルピロリドン類、ポリエチレングリコール類、ポリメタクリレート類、ポリメチルメタクリレート類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ビニルピロリドン−ビニルアセテートコポリマー類、または、糖アルコール類、例えば、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトールおよびキシリトールである。糖アルコール類を好ましくは用いる。これに関して、有効成分の溶解性を高めるために、適する製剤パラメーターの選択により、有効成分(I)ができるだけ完全に無定形状態に変換されることを確実にしなければならない。
【0027】
有効成分(I)を含み、溶融押出法により得られる押出物を切り分け、必要に応じて丸め、かつ/または、被覆し、例えば、さらにサシェ(sachet)製剤に加工し得るか、または、カプセルに充填し得る(多ユニットの製剤)。さらなる可能性は、溶融押出後に得られる押出物を、切断および粉砕後に、通常の錠剤化補助剤と混合し、錠剤に打錠し、後者をまた、必要に応じて続いて被覆する(単一ユニットの製剤)ことである。
【0028】
本発明によると、有効成分(I)の放出が改変された様々な医薬の経口投与形を用いることができる。本発明の範囲を制限せず、言及し得る好ましい例は以下のものである:
1.侵食マトリックスシステムに基づく錠剤製剤(単一ユニット)
2.侵食および/または拡散により制御される放出動態の複数粒子の投与形、例えば、顆粒剤、ペレット剤、ミニ錠剤およびそれらから製造される医薬形、例えば、サシェ剤、カプセル剤または錠剤
3.浸透放出システムに基づく投与形。
【0029】
1.侵食マトリックスシステムに基づく錠剤製剤
この場合、有効成分の放出の改変は、1種またはそれ以上の可溶性ポリマーからなる侵食可能マトリックス中に有効成分を含む製剤により行い、有効成分の放出は、マトリックスの膨潤および溶解または侵食の速度、並びに、有効成分の溶解速度、溶解度および拡散速度に依存する。この有効成分の放出の改変の原理は、侵食マトリックスまたは親水コロイドマトリックスシステムの用語でも知られている。医薬投与形からの有効成分の放出を改変するための侵食/親水コロイドマトリックスの原理は、例えば、
・Alderman, D.A., "A review of cellulose ethers in hydrophilic matrixes for oral controlled-release dosage forms", Int. J. Pharm. Tech. Prod. Mfr. 5 (1984), 1-9.
・Melia, C.D., "hydrophilic matrix sustained release systems based on polysaccharide carriers", Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 8 (1991), 395-421.
・Vazques, M.J. et al., "Influence of technological variables on release of drugs from hydrophilic matrices", Drug Dev. Ind. Pharm. 18 (1992), 1355-1375
に記載されている。
【0030】
所望の放出動態は、例えば、ポリマーのタイプ、ポリマーの粘度、ポリマーおよび/または有効成分の粒径、有効成分−ポリマー比、および、例えば可溶性または/および不溶性賦形剤などのさらなる医薬的に通常の補助剤の添加により、制御できる。
【0031】
本発明の目的上、適するマトリックス形成物質は、多数のポリマー、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの多糖類およびセルロースエーテルであり、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはヒドロキシプロピルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物を用いる。
【0032】
マトリックス形成物質は、好ましくは、侵食マトリックスシステムに基づく本発明の錠剤製剤中に、錠剤の総質量をベースとして10ないし95%の濃度で存在する。
有効成分(I)は、好ましくは、侵食マトリックスシステムに基づく本発明の錠剤製剤中に、錠剤の総質量をベースとして1ないし50%の濃度で存在する。
【0033】
侵食(親水コロイド)マトリックスを形成するためのポリマーおよび有効成分の他に、錠剤製剤に、当業者に周知のさらなる錠剤化補助剤(例えば、結合剤、賦形剤、滑沢剤/流動化剤/流動補助剤(flow aid))を添加することが可能である。錠剤は、コーティングによりさらに被覆してもよい。
【0034】
光防護および/または着色コーティングに適する物質は、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのポリマーであり、必要に応じて、例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどの適する可塑剤、および、例えば二酸化チタンまたは酸化鉄などの色素と組み合わせる。
【0035】
コーティングの製造に適する物質のさらなる例は、水性分散物、例えば、エチルセルロース分散物(例えば、Aquacoat, FMC) またはポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)分散物(Eudragit NE 30 D, Roehm/Degussa)である。可塑剤および湿潤剤(例えば、クエン酸トリエチルまたはポリソルベート類)、粘着防止物質、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、および親水性小孔形成物質、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたは糖をコーティングに添加することも可能である。コーティングは、実質的に、有効成分の放出を投与後最初の1時間ないし最大2時間にわたり遅延できる効果を有する。
【0036】
コーティングの製造に適するさらなる物質は、例えば、メタクリル酸に基づく陰イオン性ポリマー(Eudragit L+S, Roehm/Degussa)またはセルロースアセテートフタレートなどの、胃液耐性を達成する物質である。
【0037】
有効成分(I)を結晶形または支配的に結晶形で含む本発明の錠剤製剤を製造するのに適する方法は、直接錠剤化、乾式造粒後の錠剤化、溶融造粒、押出または湿式造粒、例えば、流動床式造粒などの、当業者に知られている通常のものである。
【0038】
しかしながら、有効成分(I)が最終製剤中に無定形で存在するように、有効成分(I)は、好ましくは、無定形または支配的に無定形で、特に溶融押出物として、本発明の侵食マトリックスシステムに基づく錠剤製剤に用いる。
【0039】
本発明は、さらに、侵食マトリックスシステムに基づく本発明の錠剤製剤の製造方法に関し、その方法では、有効成分(I)を含む押出物を、好ましくは溶融押出を利用して製造し、次いで、粉砕し、当業者に知られているさらなる錠剤化補助剤(マトリックス形成物質、結合剤、賦形剤、滑沢剤/流動化剤/流動補助剤)と混合し、次いで、好ましくは直接錠剤化により打錠して錠剤とし、それを最後にコーティングで被覆し得る。
【0040】
2.顆粒剤、ペレット剤、ミニ錠剤などの多粒子性投与形、並びに、これらから製造されるカプセル剤、サシェ剤および錠剤
所謂「単一ユニット」の他に、その有効成分の放出の改変が侵食/拡散制御下で起こる多粒子性投与形も、有効成分(I)に適する。用語「多粒子性投与形」は、本発明によると、単一ユニット(錠剤)とは対照的に、顆粒状粒子、球状粒子(ペレット)またはミニ錠剤などの複数の小型粒子からなる製剤を意味する。これらの粒子の直径は、通常、0.5ないし3.0mm、好ましくは1.0ないし2.5mmである。
【0041】
これらの多粒子システムの利点は、単一ユニットと比較して、個体内および個体間の消化管通過の変動が通常より小さく、血漿プロフィールの変動をより小さくし、しばしば、食物依存性(食物効果)を低減する、即ち、満腹または空腹の胃に投与した後の差異を低下させることである。顆粒剤(ペレット剤)または小さい形状の錠剤(直径3mmを超えないミニ錠剤)は、カプセルに充填できるか、またはサシェ剤として製造できる。さらなる可能性は、水/胃液との接触後に迅速な崩壊により最初の顆粒剤/ペレット剤を放出する、より大きい錠剤にさらに加工することである。
【0042】
有効成分(I)を含む多粒子性医薬投与形の製造に適する補助剤および方法は、原則としてセクション1で述べたもの全てである。
【0043】
この場合に用いるマトリックス形成物質は、好ましくは、セルロースエーテルの群からのポリマー、特にヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはヒドロキシプロピルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物である。
【0044】
ポリマーは、好ましくは、多粒子性投与形に基づく本発明の医薬投与形中に、組成物の総質量をベースとして、10ないし99%、特に25ないし95%の濃度で存在する。
有効成分(I)は、好ましくは、多粒子性投与形に基づく本発明の医薬投与形中に、組成物の総質量をベースとして、1ないし30%の濃度で存在する。
【0045】
例えば Gandhi, R., Kaul, C.L., Panchagnula, R., "Extrusion and spheronization in the development of oral controlled-release dosage forms", Pharmaceutical Science & Technology Today Vol. 2, No. 4 (1999), 160-170 に記載の押出/球状化方法は、有効成分(I)を結晶形または支配的に結晶形で含むペレット剤を製造するのに特に適する。
【0046】
本発明の好ましい実施態様では、多粒子性投与形は、有効成分(I)を無定形で含み、さらに、好ましくは溶融押出法により製造されたものである。
【0047】
粒子/ペレット剤/ミニ錠剤は、例えば水性分散物、例えば、エチルセルロース分散物(例えば、Aquacoat, FMC) またはポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)分散物(Eudragit NE 30 D, Roehm/Degussa)で、必要に応じて被覆し得る。可塑剤および湿潤剤(例えば、クエン酸トリエチルまたはポリソルベート類)、非粘着性物質、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、および親水性小孔形成物質、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたは糖をコーティングに添加することも可能である。コーティングは、実質的に、有効成分の放出を、投与後最初の1時間ないし最大2時間にわたり遅延できる効果を有する。
【0048】
コーティングの製造に適するさらなる物質は、例えば、メタクリル酸に基づく陰イオン性ポリマー(Eudragit L+S, Roehm/Degussa)またはセルロースアセテートフタレートなどの、胃液耐性を達成する物質である。
【0049】
本発明はさらに、上記の多粒子性投与形を含む医薬投与形、好ましくはカプセル剤、サシェ剤または錠剤に関する。
【0050】
本発明はさらに、本発明の多粒子性医薬投与形の製造方法に関し、その方法では、有効成分(I)を無定形で含む押出物を、好ましくは溶融押出により得る。本発明の好ましい実施態様では、この押出物の鎖を切断することによりペレット剤形態の多粒子性投与形を直接製造し、必要に応じて、続いて丸める。かくして得られたペレット剤を、次いで、コーティングで被覆し、カプセルまたはサシェに充填できる。
【0051】
3.浸透放出システム
有効成分(I)の放出が改変されたさらに適する投与形は、浸透放出システムに基づく。この場合、コア、例えばカプセル剤または錠剤、好ましくは錠剤を、少なくとも1つの孔を有する半透膜で包む。水透過性膜は、コアの成分に対して非透過性であるが、浸透によりシステムに外側から水を侵入させる。侵入した水は、次いで、産生される浸透圧により、溶解または懸濁形の有効成分を膜の孔から放出する。全有効成分放出および放出速度は、半透膜の厚さおよび空隙率、コアの組成並びに孔の数およびサイズにより、実質的に制御できる。利点、製剤の態様、使用形態および製造工程の情報は、なかんずく、以下の刊行物に記載されている:
・Santus, G., Baker, R.W., "Osmotic drug delivery: a review of the patent literature", Journal of Controlled Release 35 (1995), 1-21
・Verma, R.K., Mishra, B., Garg, S., "Osmotically controlled oral drug delivery", Drug Development and Industrial Pharmacy 26 (7), 695-708 (2000)
・Verma, R.K., Krishna, D.M., Garg, S., "Formulation aspects in the development of osmotically controlled oral drug delivery systems", Journal of Controlled Release 79 (2002), 7-27
・US 4,327,725, US 4,765,989, US 20030161882, EP 1 024 793。
【0052】
単室(single-chamber)システム(基本的な浸透ポンプ)および二室(two-chamber)システム(加圧/吸引システム)の両方が、有効成分(I)に適する。有効成分(I)は、浸透システム中に、結晶形で、好ましくは微粉化形態で、そして無定形で、または、結晶形および無定形の画分の混合物で、存在し得る。
【0053】
浸透医薬放出システムの殻は、単室システムおよび二室システムの両方で、コアの成分に対して非透過性である水透過性物質からなる。このような殻物質は、原則として知られており、例えばEP−B1−1024793の3−4頁に記載されており、その開示を出典明示により本明細書の一部とする。好ましくは、殻物質として用いられるのは、本発明によると、セルロースアセテートまたはセルロースアセテートとポリエチレングリコールの混合物である。
【0054】
コーティング、例えば光防護および/または着色コーティングは、必要であれば殻に適用できる。この目的に適する物質は、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのポリマーであり、必要に応じて、例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどの適する可塑剤、および、例えば二酸化チタンまたは酸化鉄などの色素と組み合わせる。
【0055】
浸透単室システムのコアは、好ましくは、
・2ないし30%の有効成分(I)
・20ないし50%のキサンタン
・10ないし30%のビニルピロリドン−ビニルアセテートコポリマー
を含み、100%からの差は、必要に応じて、さらなる親水性膨潤可能ポリマー、浸透的に活性な添加物および医薬的に通常の補助剤からなる群から選択される1種またはそれ以上のさらなる成分により埋められる。コア成分の総量は100%であり、%のデータは、各場合でコアの総質量に対するものである。
【0056】
浸透単室システムは、本質的なコアの成分の1種として、親水性の水で膨潤可能なポリマーのキサンタンを含む。これは、例えば Rhodigel(登録商標) (Rhodia により製造)の名称で購入できる陰イオン性複合多糖類(heteropolysaccharide)である。それは、コア成分の総質量をベースとして、20ないし50%、好ましくは25ないし40%の量で存在する。
【0057】
さらなる本質的なコアの成分は、ビニルピロリドン−ビニルアセテートコポリマーである。このコポリマーは、それ自体知られており、任意の所望のモノマー混合比で製造できる。好ましくは使用される、購入できる Kollidon(登録商標) VA64 (BASFにより製造)は、例えば、60:40コポリマーである。それは、光散乱測定により測定して、平均分子量Mw約45000ないし約70000の重量を有する。コア中のビニルピロリドン−ビニルアセテートコポリマーの量は、コア成分の総質量をベースとして、10ないし30%、好ましくは15ないし25%である。
【0058】
必要に応じてコア中にさらに存在する親水性膨潤可能ポリマーは、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルスターチ、ポリアクリル酸およびそれらの塩である。
【0059】
必要に応じてコア中にさらに存在する浸透的に活性な添加物は、例えば、薬学における使用に許容し得る全ての水溶性物質、例えば、薬局方または"Hager" および "Remington Pharmaceutical Science"に記載の水溶性補助剤である。特に、無機または有機酸の水溶性の塩または高い水溶解性を有する非イオン性有機物質、例えば、炭水化物、特に糖、糖アルコールまたはアミノ酸を使用することが可能である。例えば、浸透的に活性な添加物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、硫酸塩、炭酸塩および重炭酸塩、並びにそれらのリン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、酢酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩またはアスコルビン酸塩などの無機塩から選択できる。アラビノース、リボースまたはキシロースなどの五炭糖、グルコース、フルクトース、ガラクトースまたはマンノースなどの六炭糖、スクロース、マルトースまたはラクトースなどの二糖類、または、ラフィノースなどの三糖類の使用がさらに可能である。水溶性アミノ酸には、グリシン、ロイシン、アラニンまたはメチオニンが含まれる。本発明によると、塩化ナトリウムが特に好ましく使用される。浸透的に活性な添加物は、好ましくは、コア成分の総質量をベースとして、10ないし30%の量で存在する。
【0060】
必要に応じてコア中にさらに存在する医薬的に通常の補助剤は、例えば、重炭酸ナトリウムなどの緩衝物質、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドンなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤、および/または、コロイド状二酸化ケイ素などの流動調節剤である。
【0061】
本発明は、さらに、本発明の浸透単室システムの製造方法に関し、その方法では、コアの成分を共に混合し、必要に応じて湿式または乾式造粒に付し、続いて錠剤化し、かくして製造されたコアを殻で被覆し、次いで、それを必要に応じて光防護および/または着色コーティングで被覆し、1個またはそれ以上の孔を開ける。
【0062】
本発明の好ましい実施態様では、浸透単室システムの製造において、コア成分を湿式造粒に付す。なぜなら、この工程は、錠剤コアの成分の水和性を改善し、消化液の流入によるより良好なコアの浸透をもたらし、それは、頻繁に、より迅速かつ完全な有効成分の放出を導くからである。
【0063】
浸透二室システムでは、コアは2層、即ち1つの有効成分層および1つの浸透層からなる。このタイプの浸透二室システムは、例えばDE3417113C2に詳細に記載されており、その開示を出典明示により本明細書の一部とする。
【0064】
有効成分層は、好ましくは、
・1ないし40%の有効成分(I)
・50ないし95%の1種またはそれ以上の浸透的に活性なポリマー、好ましくは中程度の粘度(40ないし100mPa・s;5%強度水性溶液、25℃;好ましくは、適する Brookfield 粘度計および適するスピンドルを適する回転速度で使用して、特に、RVT モデル Brookfield 粘度計および No. 1 スピンドル を、50rpmの回転速度で使用して、または、匹敵するモデルを対応する条件(スピンドル、回転速度)で使用して測定する)のポリエチレンオキシド
を含む。
【0065】
浸透層は、好ましくは、
・40ないし90%の1種またはそれ以上の浸透的に活性なポリマー、好ましくは高粘度(5000ないし8000mPa・s;1%強度水性溶液、25℃;好ましくは、適する Brookfield 粘度計および適するスピンドルを適する回転速度で使用して、特に、RVF モデル Brookfield 粘度計および No. 2 スピンドル を、2rpmの回転速度で使用して、または、匹敵するモデルを対応する条件(スピンドル、回転速度)で使用して測定する)のポリエチレンオキシド
・10ないし40%の浸透的に活性な添加物
を含み、
個々の層における100%からの差は、各場合で相互に独立して、医薬的に通常の補助剤の形態の1種またはそれ以上のさらなる成分により埋められる。%のデータは、各場合で特定のコア層の総質量に基づく。
【0066】
浸透二室システムのコアで使用される浸透的に活性な添加物は、上記の単室システムの場合と同じものであり得る。これに関して、塩化ナトリウムが好ましい。
【0067】
浸透二室システムのコアで使用される医薬的に通常の補助剤は、上記の単室システムの場合と同じものであり得る。これに関して、好ましいのは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドンなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤、および/または、コロイド状二酸化ケイ素などの流動調節剤、および、有効成分層と浸透層を区別するための、2層の一方における酸化鉄などの着色性色素である。
【0068】
本発明は、さらに、本発明による浸透二室システムの製造方法に関し、その方法では、有効成分層の成分を混合し、造粒し、浸透層の成分を混合し、造粒し、次いで、その2種の顆粒を二層打錠機で二層錠剤に打錠する。かくして製造されたコアを、次いで、殻で被覆し、殻の有効成分側に1個またはそれ以上の孔を開け、続いて必要に応じてコーティングで覆う。
【0069】
本発明の好ましい実施態様では、浸透二室システムの製造において、有効成分層の成分および浸透層の成分の両方を、特に回転造粒を利用する乾式造粒に付す。
【0070】
本発明によると、有効成分(I)の物理化学的特性のために、有効成分層と浸透層が分かれている浸透二室システム(押引システム)、例えば、そして有利には、二層錠剤として製剤化されたものが好ましい。浸透単室システムに対する利点は、この場合、長期にわたり放出速度がより均一であること、およびシステムに関連する過剰の有効成分の必要性を低減できることである。
【0071】
本発明は、さらに、本発明による固体の放出改変型医薬投与形を含む医薬に関し、これは、経口投与でき、有効成分(I)を含む。
【0072】
本発明は、さらに、障害の、特に心筋梗塞、狭心症(不安定狭心症を含む)、血管形成術または大動脈冠動脈バイパス術後の再閉塞および再狭窄、卒中、一過性虚血発作、末梢動脈閉塞性疾患、肺栓塞症または深部静脈血栓症などの動脈および/または静脈血栓塞栓性障害の予防、二次予防および/または処置のための、経口投与でき、有効成分(I)を含む本発明による固体の放出改変型医薬投与形の使用に関する。
【0073】
本発明は、さらに、障害の、特に心筋梗塞、狭心症(不安定狭心症を含む)、血管形成術または大動脈冠動脈バイパス術後の再閉塞および再狭窄、卒中、一過性虚血発作、末梢動脈閉塞性疾患、肺栓塞症または深部静脈血栓症などの動脈および/または静脈血栓塞栓性障害の予防、二次予防および/または処置用の医薬を製造するための、経口投与でき、有効成分(I)を含む本発明による固体の放出改変型医薬投与形の使用に関する。
【0074】
本発明は、さらに、本発明による固体の放出改変型医薬投与形を製造するための、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド(I)の使用に関する。
【0075】
本発明は、さらに、経口投与でき、有効成分(I)を含む本発明による固体の放出改変型医薬投与形の投与による、動脈および/または静脈血栓塞栓性障害の予防、二次予防および/または処置方法に関する。
【0076】
本発明を、好ましい例示的実施態様により下記でより詳細に説明するが、これらに制限されない。断りのない限り、下記の全ての量的データは、重量パーセントに基づく。
【実施例】
【0077】
実験の部
断りのない限り、下記のインビトロの放出研究は、USPの器具2(パドル)を用いる放出試験により実施した。撹拌機の回転速度は、水10l中のオルト−リン酸1.25ml、クエン酸一水和物4.75gおよびリン酸水素二ナトリウム無水和物27.46gから製造したpH6.8の緩衝液900ml中で、75rpm(毎分の回転数)である。必要に応じて、1%の界面活性剤、好ましくはラウリル硫酸ナトリウムも溶液に添加する。錠剤製剤は、好ましくは、日本薬局方で指定されたシンカーから放出される。
【0078】
1.侵食マトリックスシステムに基づく錠剤製剤
1.1結晶性有効成分(I)を含む侵食マトリックス錠剤
例示的製剤1.1.1
【表1】

【0079】
製造:
タイプLヒドロキシプロピルセルロースおよびラウリル硫酸ナトリウムの一定量を水に溶解する。微粉化有効成分(I)をこの溶液に懸濁する。かくして製造された懸濁液を、造粒液として微結晶セルロース、HPC−LおよびHPC−M並びにラクトース一水和物に流動床造粒で噴霧する。得られる顆粒を乾燥し、篩にかけ(網目幅0.8mm)、続いてステアリン酸マグネシウムを添加し、混合する。かくして得られる打錠の準備ができた混合物を、直径7mm、破壊耐性50ないし100Nの錠剤に打錠する。続いて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(15cp)およびポリエチレングリコールの水溶液に懸濁した二酸化チタンで錠剤を被覆する。
【0080】
例示的製剤1.1.2
【表2】

製造は、例示的製剤1.1.1と同様に行う。
【0081】
例示的製剤1.1.1および1.1.2からのインビトロの放出:
【表3】

方法:USPパドル、75rpm、pH6.8のリン酸緩衝液+0.5%ラウリル硫酸ナトリウム900ml、JPシンカー
【0082】
1.2無定形有効成分(I)を含む侵食マトリックス錠剤
例示的製剤1.2
【表4】

【0083】
製造:
微粉化有効成分(I)、ヒドロキシプロピルセルロースおよびキシリトールを混合し、二軸押出機(Leistritz Micro 18 PH)中、金型直径2mmを用いて処理する。混合物を195℃(金型の出口で測定)の温度で押し出す。得られる押出物の鎖を、1ないし2mmのサイズの小片に切り分け、次いで、衝撃式粉砕機(impact mill)中で粉砕する。
篩(0.63mm)にかけた後、さらなる補助剤(上記の表を参照)を粉砕押出物と混合し、この混合物を、15x7mm(A+B)または14x7mm(C)の長方形の形状の錠剤に打錠する。
【0084】
製剤1.2AないしCからのインビトロの放出:
【表5】

方法:USPパドル、75rpm、pH6.8のリン酸緩衝液900ml、JPシンカー
【0085】
同じ有効成分量の有効成分(I)30mg/錠剤を微粉化結晶形で含有する常套の即時放出錠剤は、同じ条件下で不完全な有効成分の放出しか達成しなかった:この場合、有効成分の約33%の放出にすぎないプラトーに、4ないし6時間後に達した。それと比較して、界面活性剤を含まない放出媒体中での押出物製剤A−Cからの事実上完全な有効成分の放出は、有効成分(I)の溶解性の非常に顕著な増加を示す。有効成分(I)を溶融押出工程で無定形状態に変換することにより、これを達成することができた。
【0086】
2.多粒子性製剤
2.1結晶性有効成分(I)を含むミニ錠剤
例示的製剤2.1
【表6】

【0087】
製造:
Klucel HXF ヒドロキシプロピルセルロースを、有効成分(I)およびHPC−Lタイプのヒドロキシプロピルセルロースおよびラウリル硫酸ナトリウムの水性懸濁液で造粒する。得られる顆粒を乾燥し、篩にかけ、続いてステアリン酸マグネシウムを添加し、混合する。かくして得られる打錠の準備ができた混合物を、6.5mgの2mmのミニ錠剤に打錠する。有効成分(I)25mgに相当する量のミニ錠剤(50個)からの放出を、下記に詳述する:
【0088】
製剤2.1からのインビトロの放出:
【表7】

方法:USPパドル、75rpm、リン酸緩衝液pH6.8+0.5%ラウリル硫酸ナトリウム900ml
【0089】
2.2無定形有効成分(I)を含むペレット剤
例示的製剤2.2.1
【表8】

*コーティングの乾燥物質37.8mgに相当
**コーティングの乾燥物質
【0090】
製造:
微粉化有効成分(I)、ヒドロキシプロピルセルロースおよびキシリトールを混合する。この混合物1.5kgを、二軸押出機(Leistritz Micro 18 PH)中、金型直径2mmを用いて処理する。混合物を200℃(金型の出口で測定)の温度で押し出す。得られる押出物の鎖を、1.5mmのサイズの小片に切り分ける。篩にかけて微粒子を除去した後、ペレットを流動床で被覆する。この目的で、上記の成分および20%の固体内容物からなる水性コーティング分散物を、粒子に噴霧する。乾燥し、篩にかけた後、ペレットを例えばガラス瓶、サシェまたはハードゼラチンカプセルに充填できる。
【0091】
例示的製剤2.2.2
【表9】

*コーティングの乾燥物質37.8mgに相当
**コーティングの乾燥物質
製造:2.2.1と同様
【0092】
多粒子徐放性製剤を製造するための同様の方法/工程がEP1113787に記載されているが、違いは、本明細書に記載の実施例2.2.1および2.2.2では、適する工程パラメーターの理由で、有効成分(I)を無定形に変換することである。有効成分の溶解度の増大は、これにより達成される:
【0093】
製剤2.2.1および2.2.2からのインビトロの放出
【表10】

方法:USPパドル、75rpm、pH6.8のリン酸緩衝液900ml
有効成分(I)を結晶形で含む投与形は、同じ条件下で約33%の放出しか達成しない(例示的製剤1.2の放出結果の考察も参照)。
【0094】
3.浸透システム
3.1結晶性有効成分(I)を含む単室システム
例示的製剤3.1
【表11】

【0095】
製造:
キサンタンガム、コポリビドン、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよびナトリウムカルボキシメチルセルロースを混合し、次いで、有効成分(I)およびヒドロキシプロピルメチルセルロースの水性懸濁液で湿式造粒に付す。乾燥させ、篩にかけ、続いて Aerosil およびステアリン酸マグネシウムを混合し、かくして得られる打錠の準備ができた混合物を、直径8mmの錠剤に打錠する。錠剤コアをセルロースアセテートおよびポリエチレングリコールのアセトン溶液で被覆し、乾燥させる。続いて、直径各1mmの2個の孔を、ハンドドリルを使用して各錠剤に開ける。
【0096】
例示的製剤3.1からのインビトロの放出
【表12】

方法:USPパドル、100rpm、リン酸緩衝液pH6.8+1.0%ラウリル硫酸ナトリウム900ml、JPシンカー
【0097】
3.2結晶性有効成分(I)を含む二室システム
例示的製剤3.2
【表13】

*5%強度水性溶液の粘度(25℃、RVT モデル Brookfield 粘度計、No. 1 スピンドル、回転速度:50rpm):40−100mPa・s(例えば、POLYOX(商標) Water-Soluble Resin NF WSR N 80; Dow)
**1%強度水性溶液の粘度(25℃、RVF モデル Brookfield 粘度計、No. 2 スピンドル、回転速度:2rpm):5000−8000mPa・s(例えば、POLYOX(商標) Water-Soluble Resin NF WSR Coagulant; Dow)
【0098】
製造:
有効成分層の成分を混合し、乾式造粒(回転造粒)に付す。浸透層の成分を、同様に混合し、乾式造粒(回転造粒)に付す。2種の顆粒を二層打錠機中で打錠し、二層錠剤(直径8.7mm)とする。錠剤を、セルロースアセテートおよびポリエチレングリコールのアセトン溶液で被覆し、乾燥させる。次いで、各錠剤の有効成分側に、ハンドドリルを使用して直径0.9mmの孔を開ける。
【0099】
例示的製剤3.2からのインビトロの放出
【表14】

方法:USPパドル、100rpm、リン酸緩衝液pH6.8+1.0%ラウリル硫酸ナトリウム900ml、JPシンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与でき、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド(I)を含む固体の放出改変型医薬投与形であって、USPの器具2(パドル)を用いる放出試験において有効成分(I)の80%が2ないし24時間の期間に放出されることを特徴とする、医薬投与形。
【請求項2】
USPの器具2(パドル)を用いる放出試験において有効成分(I)の80%が4ないし20時間の期間に放出されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬投与形。
【請求項3】
有効成分(I)が結晶形で存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬投与形。
【請求項4】
有効成分(I)を微粉化形態で含む、請求項3に記載の医薬投与形。
【請求項5】
有効成分(I)を親水性化形態で含む、請求項4に記載の医薬投与形。
【請求項6】
有効成分(I)が無定形で存在することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の医薬投与形。
【請求項7】
有効成分(I)が溶融押出により無定形化されたものであることを特徴とする、請求項6に記載の医薬投与形。
【請求項8】
溶融押出で用いるポリマーがヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはポリビニルピロリドン(PVP)であり、溶融押出物中のポリマーの割合が少なくとも50%であり、有効成分(I)が溶融押出物中に1ないし20%の濃度で存在することを特徴とする、請求項7に記載の医薬投与形。
【請求項9】
少なくとも1種の医薬的に適する物質を、2ないし40%の濃度で、可塑剤として、かつ/または、有効成分(I)の融点を下げるために添加することを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の医薬投与形。
【請求項10】
医薬的に適する添加物が糖アルコールであることを特徴とする、請求項9に記載の医薬投与形。
【請求項11】
侵食マトリックスシステムに基づく、請求項1または請求項2に記載の医薬投与形。
【請求項12】
有効成分(I)が無定形で存在することを特徴とする、請求項11に記載の医薬投与形。
【請求項13】
ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物を、親水性マトリックス形成物質として含む、請求項11または12に記載の医薬投与形。
【請求項14】
有効成分(I)が1ないし50%の濃度で存在することを特徴とする、請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の医薬投与形。
【請求項15】
有効成分(I)を含む押出物を溶融押出により製造し、粉砕し、さらなる錠剤化補助剤と混合し、次いで直接錠剤化により打錠して錠剤とすることを特徴とする、請求項11ないし請求項14のいずれかに記載の医薬投与形の製造方法。
【請求項16】
請求項1または請求項2に記載の多粒子性医薬投与形。
【請求項17】
有効成分(I)が無定形で存在することを特徴とする、請求項16に記載の多粒子性医薬投与形。
【請求項18】
ヒドロキシプロピルセルロースを親水性マトリックス形成物質として含む、請求項16または請求項17に記載の多粒子性医薬投与形。
【請求項19】
ヒドロキシプロピルセルロースが親水性マトリックス形成物質として10ないし99%の濃度で存在することを特徴とする、請求項18に記載の多粒子性医薬投与形。
【請求項20】
有効成分(I)が1ないし30%の濃度で存在することを特徴とする、請求項16ないし請求項19のいずれかに記載の多粒子性医薬投与形。
【請求項21】
粒子の直径が0.5ないし3.0mmであることを特徴とする、請求項16ないし請求項20のいずれかに記載の多粒子性医薬投与形。
【請求項22】
粒子の直径が1.0ないし2.5mmであることを特徴とする、請求項21に記載の多粒子性医薬投与形。
【請求項23】
請求項16ないし請求項22のいずれかに記載の多粒子性医薬投与形を含む医薬投与形。
【請求項24】
カプセル剤、サシェ剤または錠剤の形態の、請求項23に記載の医薬投与形。
【請求項25】
有効成分(I)を含む押出物の鎖を溶融押出により製造し、切り分けることを特徴とする、請求項16ないし請求項22のいずれかに記載の多粒子性医薬投与形の製造方法。
【請求項26】
押出物の鎖を切り分けた後に得られる中間製品を丸めることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
得られる製品を被覆することを特徴とする、請求項25または請求項26に記載の方法。
【請求項28】
浸透放出システムに基づく、請求項1または請求項2のいずれかに記載の医薬投与形。
【請求項29】
有効成分(I)が無定形で存在することを特徴とする、請求項28に記載の医薬投与形。
【請求項30】
・2ないし30%の有効成分(I)
・20ないし50%のキサンタン
・10ないし30%のビニルピロリドン−ビニルアセテートコポリマー
を含むコア、
並びに、コアの成分に対して非透過性である水透過性物質からなり、少なくとも1個の孔を有する殻
を含む浸透単室システムからなる、請求項28または請求項29に記載の医薬投与形。
【請求項31】
浸透的に活性な添加物として、コア中に塩化ナトリウムをさらに含む、請求項30に記載の医薬投与形。
【請求項32】
殻が、セルロースアセテートまたはセルロースアセテートとポリエチレングリコールの混合物からなることを特徴とする、請求項30または請求項31に記載の医薬投与形。
【請求項33】
コアの成分を混合し、造粒し、錠剤化し、かくして製造されたコアを殻で被覆し、最後に殻に1個またはそれ以上の孔を開けることを特徴とする、請求項30ないし請求項32のいずれかに記載の浸透単室システムの製造方法。
【請求項34】
・1ないし40%の有効成分(I)
・50ないし95%の1種またはそれ以上の浸透的に活性なポリマー
を含む有効成分層、
および、
・40ないし90%の1種またはそれ以上の浸透的に活性なポリマー
・10ないし40%の浸透的に活性な添加物
を含む浸透層
を有するコア、
並びに、コアの成分に対して非透過性である水透過性物質からなり、少なくとも1個の孔を有する殻
を含む浸透二室システムからなる、請求項28または請求項29に記載の医薬投与形。
【請求項35】
40ないし100mPa・s(5%強度水性溶液、25℃)の粘度を有するポリエチレンオキシドを、浸透的に活性なポリマーとしてコアの有効成分層に含み、5000ないし8000mPa・s(1%強度水性溶液、25℃)の粘度を有するポリエチレンオキシドを浸透的に活性なポリマーとしてコアの浸透層に含む、請求項34に記載の医薬投与形。
【請求項36】
殻が、セルロースアセテート、または、セルロースアセテートとポリエチレングリコールの混合物からなることを特徴とする、請求項34または請求項35に記載の医薬投与形。
【請求項37】
・有効成分層の成分を混合し、造粒し、そして、
・浸透層の成分を混合し、造粒し、
・続いて、これらの2種類の顆粒を、二層打錠機で打錠して二層錠剤とし、
・次いで、かくして製造されたコアを、殻で被覆し、そして、
・殻の有効成分側に1個またはそれ以上の孔を開ける
ことを特徴とする、請求項34ないし請求項36のいずれかに記載の浸透二室システムの製造方法。
【請求項38】
経口投与でき、有効成分(I)の放出が請求項1に記載の通りに改変されたものである、固体の医薬投与形を含む医薬。
【請求項39】
請求項1に記載の、経口投与でき、有効成分(I)を含み、放出が改変されたものである固体の医薬投与形の、障害の予防、二次予防および/または処置のための使用。
【請求項40】
請求項1に記載の、経口投与でき、有効成分(I)を含み、放出が改変されたものである固体の医薬投与形の、障害の予防、二次予防および/または処置用の医薬を製造するための使用。
【請求項41】
血栓塞栓性障害の予防、二次予防および/または処置のための、請求項39または請求項40に記載の使用。
【請求項42】
心筋梗塞、狭心症、血管形成術または大動脈冠動脈バイパス術後の再閉塞および再狭窄、卒中、一過性虚血発作、末梢動脈閉塞性疾患、肺栓塞症または深部静脈血栓症の予防、二次予防および/または処置のための、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
請求項1に記載の医薬投与形を製造するための、5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−2−チオフェンカルボキサミド(I)の使用。
【請求項44】
請求項1に記載の、経口投与でき、有効成分(I)を含み、放出が改変されたものである固体の医薬投与形を投与することによる、血栓塞栓性障害の予防、二次予防および/または処置方法。

【公表番号】特表2008−525335(P2008−525335A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547259(P2007−547259)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013337
【国際公開番号】WO2006/072367
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】