説明

経口投薬形態における、毒性コアの非毒性領域中へのカプセル化

【課題】薬学的に毒性のコアまたは有効性を有するコアをカプセル化するかまたは取り囲む非毒性領域を含む経口投薬形態を提供すること。
【解決手段】本発明は、従来技術の制限を克服し、そしてさらなる利点を提供する。本発明の1つの局面において、医薬送達システム(例えば、経口投薬形態(ODF))は、非毒性領域でカプセル化された危険な薬物を含む。この非毒性領域は、薬理学的に不活性な物質であり得、そして毒性または有効性を有する内部と外部接触との間に隔離バリアを提供する、層、コーティングまたはシェルのような領域であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は一般に、医薬の送達システムに関し、より詳細には、薬学的に毒性のコアまたは強力なコアをカプセル化するかまたは取り囲む非毒性領域を含む経口投薬形態に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
薬物の経口投薬形態(ODF)は、以前は、内部の特性とは異なる特性を有するコーティングで囲まれていた。例えば、被覆錠剤は、米国特許第5,914,132号の目的であり、ここでこのコーティングは、異なる化学的環境(例えば、pHおよび酵素系)を有する胃腸管の初期の部分よりも、その特定の化学的環境で、結腸への薬物の送達を可能にする。
【0003】
医薬をコーティングするための方法および装置は、米国特許第4,497,847号に開示され、これは、噴霧、または遠心流動コーティング装置もしくは流動床顆粒コーティング装置への浸漬により、医薬にコーティングを適用するための方法を開示する。これらのコーティングは、種々の制御放出プロフィールを提供することが意図された。最も一般的には、錠剤の主な内部は、粉末の圧縮によって形成された。
【0004】
これらおよび類似の特許において、薬物は本質的に毒性でも危険でもなく、そしてコーティングは、製品を製造するかまたは扱う個人から毒性または危険な物質を隔離する目的を果たさなかった。従って、製薬工業で従来的に用いられている取り扱いまたは製造の注意を越える通常の取り扱いまたは製造の注意は、この薬物の特性に起因して、必要とされない。さらに、コーティングプロセスは、通常、別個のプロセスにより製造された仕上げ錠剤またはペレット剤に対して行われ、そして医薬形態の製造と同時ではなかった。従って、このコーティングプロセス自体は、製造中の粉末混合工程(ここで、風媒性粒子物質が精製され得る)を回避しなかった。非常に毒性の風媒性粒子物質または強力な医薬は、特定の取り扱い手順を必要とする製造業者および患者ではない個人に対する問題を生んだ。これらの手順は、しばしば、無益かつ高価であった。
【0005】
軟質ゼラチンカプセルは、溶解形態、可溶化形態または懸濁形態で活性剤を送達するために使用されている。軟質ゼラチンカプセルは、風媒性粒子物質への暴露の回避、ならびに他の固体投薬形態よりも優れた内容物の均一性の達成という利点を有する。しかし、液相からゼラチンシェルへの溶質および活性剤の移動は、主な欠点であった。軟質ゼラチンカプセルはまた、長い放出持続時間を必要とする活性剤の処方には適切ではなかった。なぜなら、このカプセル自体は薬物放出を維持しなかったからである。従って、軟質ゼラチンカプセルは、非常に毒性であるか、強力であるか、またはそうでなければ危険な薬物と共に使用されなかった。
【0006】
いくつかの医薬(例えば、抗癌剤)は、非常に毒性である。例えば、9−ニトロカンプトセシンは、膵臓癌を処置するために使用されるが、あまりに毒性であるため、会社は、従来の製造技術に特有の露出の危険のために、この医薬を固体投薬形態に製造することに反対している。ホルモンのような他のタイプの薬学的活性剤もまた存在し、これはあまりに強力であるために、患者でない個人は、たとえ少量の活性剤であっても曝されるべきではない。従って、非常に毒性であるかまたは強力であるか、あるいはそうでなければ患者ではない個人に対して危険である物質の製造の間および後の両方の取り扱いにより適した製造技術およびODFの必要性が存在する。
【0007】
ODFの製造中の毒性成分の取り扱いの問題を解決するための1つの試みは、WO94/09762に開示された。活性成分は、液体形態であり、そしてフィルムコーティングとしてODFのコアに塗布され、そしてこれは、さらなる隔離のために、オーバーコートによって必要に応じて被覆された。この製造技術は、多数の引き続く製造工程を包含し、そして液体コーティングが中心形態の周りに形成した1つの薄層に含まれる薬物の量を組み込むことができるにすぎなかった。従って、低い溶解度を有する薬物は除外された。
【0008】
三次元プリンティング(3DP)技術は、米国特許第5,490,962号;同第5,869、170号;および同第5,518,680号に開示されるような医用デバイスを製造するために使用されている。しかし、医用デバイスの3DP製造は、従来の製造に見出された処理後の工程の多く(例えば、コーティングの塗布)を克服しなかった。さらに、医用デバイスの3DP製造は、医用デバイスを粉末床内の緩く結合していない粒子を医用デバイスから取り出し、そして粉塵除去(dedust)する最終工程を必要とした。粉塵除去は、生成物の主体にしっかりと結合していない、医用デバイスの表面のいくつかの粉末粒子を除去した。粉塵除去は、医用デバイスに撹拌を適用して、緩い粉末粒子および部分的に結合した粒子を除去する工程を包含する。危険な材料を用いて医用デバイスを製造する場合、緩い粉末粒子は、製造者に対して問題があり得る。さらに、粉塵除去技術を変えることにより、薬物の質の変化が生じ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、従来技術の制限を克服し、そしてさらなる利点を提供する。本発明の1つの局面において、医薬送達システム(例えば、経口投薬形態(ODF))は、非毒性領域でカプセル化された危険な薬物を含む。この非毒性領域は、薬理学的に不活性な物質であり得、そして毒性または強力な内部と外部接触との間に隔離バリアを提供する、層、コーティングまたはシェルのような領域であり得る。
本発明の別の局面は、毒性薬物が個々のODFに溶液の水性懸濁液として組み込まれる製造技術、またはより慣習的な粉末の圧縮によるよりもむしろ可溶化による製造技術を包含する。これは、製造の間に毒性の薬物の風媒性粒子が生成する可能性を最小化し、従って、毒性化合物に対する製造者の暴露を制御および最小化する。薬物を溶液の可溶化したかまたは水性の懸濁液として組み込むことは、患者に対する薬物のより良好なバイオアベイラビリティをさらに可能にする。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1) 薬学的投薬形態であって、以下:
第1の毒性または有効性を有する薬学的活性剤を含む、コア領域;
移行領域であって、該移行領域は、該コア領域をカプセル化する、移行領域;および
シェル領域であって、該シェル領域は、該移行領域をカプセル化し、そして該シェル領域は、毒性でも有効性を有するでもない、シェル領域、
を含む、薬学的投薬形態。
(項目2) 前記移行領域が非結合粉末を含む、項目1に記載の薬学的投薬形態。
(項目3) 前記第1の毒性または有効性を有する薬学的活性剤が、溶液または懸濁液として、あるいは可溶化により調剤される、項目1に記載の薬学的投薬形態。
(項目4) 前記第1の毒性または有効性を有する活性剤とは独立してコア領域中に含まれる、第2の毒性または有効性を有する薬学的活性剤をさらに含む、項目1に記載の薬学的投薬形態。
(項目5) 前記第2の毒性または有効性を有する活性剤が、前記第1の毒性または有効性を有する活性剤をカプセル化する、項目4に記載の薬学的投薬形態。
(項目6) 前記第1薬学的活性剤が、抗癌剤、ステロイド、ホルモン、麻酔剤または別の高い毒性または有効性を有する別の化合物である、項目1に記載の薬学的投薬形態。
(項目7) 前記第1薬学的活性剤が、カンプトセシンまたは9−ニトロカンプトセシンまたはトリヨードチロニンまたはテトラヨードチロニンである、項目1に記載の薬学的投薬形態。
(項目8) 前記シェル領域が、薬学的に不活性である、項目1に記載の薬学的投薬形態。
(項目9) 前記シェル領域が、1種以上の薬学的賦形剤を含む、項目1に記載の薬学的投薬形態。
(項目10) 前記シェル領域を完全に取り囲むカプセルをさらに含む、項目1に記載の薬学的投薬形態。
(項目11) 前記シェル領域が、徐放物質を含む、項目1に記載の薬学的投薬形態。
(項目12) 3次元プリンティングよって製造される、薬学的投薬形態であって、以下:
粉末床上に堆積された第1溶液中に含まれる、少なくとも1種の毒性または有効性を有する医薬を含む、コア領域;
移行領域であって、該移行領域は、該コア領域をカプセル化する、移行領域;および
シェル領域であって、該シェル領域は、該移行領域をカプセル化し、該シェル領域は、非毒性であり、そして、該シェル領域は、該粉末床上に堆積された第2溶液を含む、シェル領域、
を含む、薬学的投薬形態。
(項目13) 前記毒性または有効性を有する医薬が、前記第1溶液中に溶解されている、項目12に記載の薬学的投薬形態。
(項目14) 前記毒性または有効性を有する医薬が、前記第1溶液中において、懸濁粒子として存在する、項目12に記載の薬学的投薬形態。
(項目15) 前記懸濁粒子の平均サイズは、約0.5ミクロン以下である、項目14に記載の薬学的投薬形態。
(項目16) 項目14に記載の薬学的投薬形態であって、前記第1溶液が、ある直径を有するオリフィスを通じて調剤され、そして前記懸濁粒子の最大サイズは、該オリフィスの直径の約1/10未満である、薬学的投薬形態。
(項目17) 前記懸濁液が、立体障害剤もしくは懸濁剤またはそれらの両方をさらに含む、項目14に記載の薬学的投薬形態。
(項目18) 前記デバイスは、1種以上の薬学的賦形剤である粉末から製造される、項目12に記載の薬学的投薬形態。
(項目19) 項目18に記載の薬学的投薬形態であって、前記粉末は、該粉末が前記第1溶液と相互作用する場合にゲルを形成するゼラチン剤を、さらに含み、これによって、該粉末全体にわたって、第1溶液の移動が遅延される、薬学的投薬形態。
(項目20) 前記ゼラチン剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは他の親水性ポリマーを含む、項目19に記載の薬学的投薬形態。
(項目21) 前記シェル領域が、徐放物質を含む、項目12に記載の薬学的投薬形態。
(項目22) 前記シェルを完全に取り囲むカプセルをさらに含む、項目12に記載の薬学的投薬形態。
(項目23) 前記第2溶液が、前記粉末床中の粉末のための溶媒である、項目12に記載の薬学的投薬形態。
(項目24) 前記第2溶液が、接着剤または可塑剤を含む、項目12に記載の薬学的投薬形態。
(項目25) 前記粉末が、前記第1溶液または前記第2溶液と相互作用する接着剤の固体粒子を含む、項目12に記載の薬学的投薬形態。
(項目26) 薬学的活性剤を含むコア領域および該コア領域を取り囲むシェル領域を含む医薬送達デバイスを製造するための方法であって、該方法は、以下:
粉末の層を拡散する工程;
コア領域を形成する選択された場所において、薬学的活性剤を含む第1流体を、該粉末上に分散する工程;
該第1流体が堆積される場所を完全に取り囲むように、該場所において、第2流体を該粉末上に分散し、そしてシェル領域を形成する工程;および
上記プロセスを必要なだけ繰り返す工程であって、該第1溶液が、該第2溶液によって形成される周囲の該シェル領域によってカプセル化される領域にのみに分散される、工程、を包含する、方法。
(項目27) 前記第1溶液または前記第2溶液は、結合剤をさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目28) 前記薬学的活性剤が、抗癌剤、ステロイド、ホルモン、麻酔剤または他の高い毒性または有効性を有する別の化合物である、項目26に記載の方法。
(項目29) 前記薬学的活性剤が、カンプトセシンまたは9−ニトロカンプトセシンまたはカンプトセシンの他の誘導体またはトリヨードチロニンまたはテトラヨードチロニンである、項目26に記載の方法。
(項目30) 前記第1溶液が、溶液中に前記薬学的活性剤を含む、項目26に記載の方法。
(項目31) 前記第1溶液が、該第1溶液中に懸濁された固体粒子として前記薬学的活性剤を含む、項目26に記載の方法。
(項目32) カプセル化された毒性または有効性を有するコアを含む投薬形態を製造する方法であって、該方法は、
毒性でも有効性を有するでもない賦形剤を含む第1結合剤流体を、バルクな材料の層上に分散する工程;
該第1結合剤流体のフットプリント内に毒性または有効性を有する活性剤を含む第2結合剤流体を、バルクな材料の少なくとも1つの二次層上に分散する工程;
該分散された毒性結合剤の周辺領域の周りに、毒性でも有効性を有するでもない賦形剤のいずれかを含む結合剤流体を、該バルクな材料の少なくとも1つの二次層上に分散する工程であって、ここで、該周辺領域が、隣接層に結合されている、工程;ならびに
毒性でも有効性を有するでもない賦形剤のいずれかを含む結合剤流体を、該バルクな材料の少なくとも1つの二次層上に分散し、これによって、該毒性結合領域または有効性を有する結合領域を、毒性でも有効性を有するでもない賦形剤を含むカプセル化領域で囲む工程、を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態に従う、三次元プリンティング装置の等角図である。
【図2】図2は、本発明の1つの実施形態に従う、薬学的形態の分解等角図である。
【図3】図3は、本発明の1つの実施形態に従う、図2の薬学的形態の部分分解等角図である。
【図4】図4は、本発明の1つの実施形態に従う、個々のプリント層内の緩衝領域を例示する、薬学的形態の断面図である。
【図5】図5は、コア領域の上および下の緩衝領域をさらに例示する、図4のライン5−5に沿った薬学的形態の立面図である。
【図6A】図6Aは、個々の滴下位置またはボクセルを含む、実施例1に対応する詳細なプリンティングダイアグラムである。
【図6B】図6Bは、個々の滴下位置またはボクセルを含む、実施例1に対応する詳細なプリンティングダイアグラムである。
【図7A】図7Aは、2つの異なる薬物のための個々の領域を含む、実施例2に対応する様々な薬学的形態を例示する図である。
【図7B】図7Bは、2つの異なる薬物のための個々の領域を含む、実施例2に対応する様々な薬学的形態を例示する図である。
【図7C】図7Cは、2つの異なる薬物のための個々の領域を含む、実施例2に対応する様々な薬学的形態を例示する図である。
【図7D】図7Dは、2つの異なる薬物のための個々の領域を含む、実施例2に対応する様々な薬学的形態を例示する図である。
【図7E】図7Eは、2つの異なる薬物のための個々の領域を含む、実施例2に対応する様々な薬学的形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
薬物送達デバイス、および特に、医薬を、非毒性領域(ここで、この非毒性領域は、薬理学的に不活性な物質であり得る)でカプセル化された毒性または強力な薬物を含む経口投薬形態(ODF)の形態で製造するための方法が提供される。この非毒性領域は、毒性または強力なコアを、取り扱い中の損傷または薬物の早期の放出から保護する隔離バリアまたは緩衝ゾーンを提供する。この非毒性物質は、コアを、粉末の未結合領域、毒性薬物の層、コーティング、シェル、またはそれらの任意の組み合わせを含む領域でカプセル化するように製造される。この毒性薬物は、溶液として、懸濁液として、または可溶化によって送達デバイスに組み込まれ得、これは患者に対するこの薬物のより優れたバイオアベイラビリティを提供しつつ、毒性の風媒性粒子を最小化するように働く。以下の記載において、毒性薬物が、溶液として、懸濁液として、または緩い粉末を扱うことによってよりむしろ可溶化によって、個々のODFに入れられる製造技術のような、多数の特定の詳述が提供される。しかし、関連技術の当業者は、本発明は、この特定の詳述の1つ以上を用いずに、または他の活性物質または不活性物質を用いて本発明が実施され得ることを理解する。他の例において、周知の構造、操作またはプロセスは、本発明の不明瞭な局面を避けるために、示されないか、または詳細には記載されない。
【0012】
本発明の投薬形態を作製するために適切な1つの製造技術は、無固体型製造(Solid Free−form Fabrication)(SFF)として公知のファミリーである。SFFは、例えば、三次元プリンティングまたは選択的レーザー焼結を使用して、粉末から任意の形状を構築する工程、または例えば、ステレオリゾグラフィーを使用して、液体またはペーストから任意の形状を構築する工程を包含する。1つのSFFプロセスは、米国特許第5,204,055号(Emanuel Sachsらにより発行)に記載される三次元プリンティング(3DP)である。
【0013】
図1に例示されるように3DP装置は、移動の第1の軸110、この移動の第1の軸に対して垂直であり得る移動の第2の軸120、および液体分配デバイス130を備えるプリンター100を備える。この分配デバイス130は、第1の液体の液滴140を粉末床150に分配し得る。粉末150の層は、ローラーまたはスラリー堆積のような他の方法によって、固着される。液体は、少量の液滴140を分配するための分配デバイス130(代表的には、インクジェットプリントヘッドと類似している)によって、粉末床の所定の領域に分配される。例えば、これは、マイクロバルブ(Lee Company,Essex,CT)であり得るか、またはこれは、当該分野で公知のような、圧電ドロップオンデマンド(drop−ondeman)プリントヘッドであり得る。これは、溶解および再可溶化よって、または液滴140の接着作用によってのいずれかで、粉末床150の粒子を湿潤領域で生じ、一緒に縮合または結合する。時折、粉末化された結合剤が、この粉末床150に含まれ、そして液滴140に暴露された場合に、他の粒子に結合する。この液体分配プロセスが1つの層上で完了した後、粉末の別の層が分散され、そして完全な三次元物体が構築されるまで、液体分配が繰り返され、以下同様である。
【0014】
印刷の間、非結合粉末は、結合形状および粉末の後期沈着層を支持する。印刷プロセスの終わりに、非結合かつ非捕捉粉末は除去され、共に結合された形状のみを残す。各粉末層において、非常に複雑な細部を潜在的に含むほとんど任意の所望の形状の結合製品を生成するために、例えば、2つの軸110、120に沿って、プリントヘッドを動かすソフトウェアによって、液滴イジェクションの時期が調整される。
【0015】
本発明のような出願について、第2の液体の液滴142を分配するための第2のディスペンサー132を含むことがさらに望ましくあり得る。第2のディスペンサー132は、第1のディスペンサー130と同じ動作系およびプリントヘッドに固定されているように示される。あるいは、第2のディスペンサー132は、別の動作系に固定され得る。第2のディスペンサー132が別に固定される場合、2つのディスペンサー130、132に適切な位置決めまたは調和位置の系を提供することが好ましくあり得、その結果、各ディスペンサーは、他のディスペンサーによって沈着された液体の位置に正確に関連して、予め決定された位置で液体を沈着し得る。
【0016】
本発明は、薬学的な投薬形態(例えば、経口投薬形態(ODF))に関する。ODFは、代表的に、バルク物質、結合剤および活性物を含む。粉末またはバルク物質は、当該分野で公知のような代表的な薬学的賦形剤から構成され得る。賦形剤の例としては、微結晶性セルロース、ラクトース、マンニトールおよびリン酸二カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
結合剤は、バルク物質に分配される。結合剤は、液体、粉末または本明細書中においてスラリーもしくは懸濁液と称されるような液体および粉末の何らかの組み合わせであり得る。結合剤はさらに、可溶化された活性物を含む液体であり得る。可溶化によって、代表的に不溶性である化合物は、界面活性剤または可溶化剤が系に添加される場合、ミセルを形成して、分配系において溶解度を増加し得る。大量の溶液中の界面活性剤の溶質の濃度が限界値(いわゆる、臨界ミセル濃度(CMC))を超える場合、界面活性剤は、分子またはイオンの凝集体(ミセルと呼ばれる)を形成する。ミセルの形成は、本明細書中で可溶化プロセスといわれる。
【0018】
結合剤の1つのありうる目的は、送達系に薬物または活性物を運搬することである。別のありうる目的は、粒子がお互いに結合することを引き起こすことであり、その場合、これは、本明細書中で結合剤といわれる。結合剤は、これらの機能の両方またはそのいくつかの部分をさらに果たし得る。粒子の結合は、いくつかの機構を介して起こり得る。1つの機構は、結合剤がバルク物質または粉末の溶媒として作用する液体である機構であり、この場合、この液体は、粉末粒子を実際に溶解する。液体中の溶媒が蒸発するにつれて粒子は再凝固し、その結果、これらは共に結合される。別の機構は、液体結合剤が、固体粒子のまわりで単に凝固し、それによりこれらを結合する機構である。なお別の機構は、液体結合剤が、液体蒸発の場合に取り残されて粒子を共に結合する溶解接着性物質を含み得る機構である。溶解物質は、可塑剤(例えば、ポリマー物質)であり得、これは、バルク物質の化学を結合を引き起こすように修飾する。可塑剤は、ポリマー中に取り込まれ、ポリマー分子間の自由体積を増加することによって、その実行可能性、可撓性、または伸展性を増加する。自由体積における増加は、ポリマー分子の運動の自由度を増加し、従って、ポリマー粒子間のよりよい融合を提供する。可塑剤は通常、中程度に高分子量の液体であり、ときどき低融点固体である。一般に使用される可塑剤の例としては、カルボン酸およびリン酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。結合についてのなお別の機構は、特定の溶媒の吸収の際に活性化される固体形態における結合剤の粒子を含む粉末バルク物質を含む。
【0019】
本願において、活性物または薬物は、投薬形態の中央領域またはコアに沈着される。毒性または強力な薬物を含む液体は、本明細書中でコア結合剤といわれる。これは、粉末床150の特定の領域に薬物または薬物の組み合わせを配置するように分配される薬学的な活性物を含む液体液滴140として、図1に示される。このコア結合剤は、好ましくは、結合因子として機能し、従って、粉末粒子が共に接着することを引き起こすが、これが結合因子として機能することは必須ではない。この液体は、投薬形態内の薬物の配置の手段として単に役割を果たし得る。
【0020】
本願の1つの実施形態によると、活性物を含む領域のまわりにカプセル化領域を形成するように同時的に分配される第2の液体142が存在する。第2の液体142は、粉末またはバルク物質を結合し、そして危険なコアをカプセル化する領域を作製するための結合因子として機能する。この第2の液体は、本明細書中で、シェル(shell)結合剤といわれる。シェル結合剤は、毒性または強力な薬物を含まないが、これは、他の治療目的で、活性薬物を含み得る。
【0021】
シェル結合剤は、コア領域中の毒性薬物に相補的であるか、コア中の薬物に対する前処置であるか、またはコア中の薬物の特徴に中和性でさえある非毒性活性物を含み得る。例えば、コア中の抗癌薬剤は、シェル結合剤に配置された抗催吐または抗嘔吐薬物と組み合わせられ得る。シェル結合剤に取り込まれ得る添加剤または活性物の他の例としては、食味マスキング活性物、糖、物理的統合性を増加し、そして投薬形態の破砕性を減少する添加剤、または環境のpHに基づいてかもしくは消化の期間に基づいてコア薬物の放出を遅延する添加剤が挙げられる。
【0022】
図2および3は、ボックスまたはシェルが活性コアを囲むODF200および300を示す。図2において、ODF200の個々の層は、説明を明瞭にするために分解される。頂部210、底部220および壁240は、コア230を囲み、これは、毒性または強力な薬物を含む。薬物が沈着される任意の個々の層において、非毒性領域240は、薬物が沈着されている領域のまわりに閉鎖曲線を形成する。この非毒性領域は、薬学的に不活性の物質または治療的であるが非毒性の薬物を含む領域であり得る。頂部210および底部220もまた、非毒性領域を形成する。3つ全ての次元を考慮すると、個々の層上の非毒性閉鎖曲線または領域はまとめて、非毒性閉鎖表面領域またはシェルを形成する。この非毒性領域は、毒性コアとハンドラとの間の境界または分離領域として作用し、そして移行領域、層、コーティング、シェル、またはこれらの組み合わせを含む複数の領域が挙げられ得る。
【0023】
図3は、図2と類似するが、より簡単な構成を用いるODFを示す。ボックスの頂部310およびボックスの底部320は、分解図で示される。この実施形態において、壁は、厚い層として構成される。この図面において、活性な危険なコア330は、頂部310、底部320および壁340によって囲まれて示される。
【0024】
本発明に従って投薬形態を製造する1つの例示的な方法は、投薬形態の意図される構成の形状で、薬物フリーかまたは非毒性の結合剤を用いて1つ以上の底部層を形成することによる。引き続く層は、底部層のフットプリント内に配置される同時または連続的に分配された毒性コア薬物、および毒性コアのカプセル化周囲のまわりに配置された薬物フリーまたは非毒性結合剤流体を含む。
【0025】
壁240、340は、底部または頂部によってまだ結合されていない毒性コアを囲む全ての領域を含む、側面上の閉鎖領域を規定するために、非毒性シェル結合剤を再び使用して、粉末の一部を共に結合することによって形成される。壁240、340、ならびに頂部および底部210、310、220、320は、シェルといわれ得、そして壁240、340ならびに頂部210、310および底部220、320に結合する結合剤は、シェル結合剤といわれ得る。
【0026】
1つの実施形態において、シェルとコアとの間の中間領域または移行領域における粉末は、コアとシェルとの間の場所に、共に結合されていないが、閉じ込められている。あるいは、図3および4における投薬形態の壁240、340として示される移行領域230、330は、非毒性薬学的賦形剤または他の不活性な物質を含む結合粉末および非結合粉末の複数の領域を含み得る。
【0027】
各層における壁240、340はさらに、その下の層およびその上の層の結合領域に結合され、従って毒性コアをカプセル化する。上の層および下の層は、シェル境界の形状が印刷される層であり得るか、または頂部もしくは底部であり得る。ボックスについての頂部は、底部と全く同様の様式で、作製され得る。
【0028】
示される実施形態は、中空の長方形の平行六面体である囲いを生成する。しかし、任意の他の形状(例えば、円柱、楕円体、杆状体、または球)がまた生成され得ることが理解されるべきである。これらの形状のいずれかは、カプセルの内側に単一でかまたは集団でさらに配置され得る。
【0029】
粉末を取り込む医薬品は、破砕性、すなわち、表面の粒子の処理または操作の間に摩擦によってはがれ落ちるかまたは外れる傾向によって特徴付けられる。破砕性は、脆弱性の程度である。本発明において、粒子のこのような外れが生じる場合、このような粒子は、投薬形態の非毒性の外側の表面である。これは、先行技術に対して有利な利点を示す。しかし、完成したデバイスは、過度にはもろくないことがなお望ましい。このデバイスが、極端にもろい場合、粒子は、毒性コアを曝露するように崩壊し得る。破砕性は、シェルの組成によって決定される。従って、シェルの組成(すなわち、粉末およびシェル結合剤)は、仕上げ製品が、ひび割れ、破壊、摩擦(attrition)、摩擦(friction)などに対する少なくとも中程度の量の耐性を有するように、選択されるべきである。これを達成するための物質の選択は、当該分野で公知であり、さらに実施例において記載される。
【0030】
コア結合剤および必要に応じてシェル結合剤は、溶解した溶質として薬学的な活性物を含み得る。あるいは、これらの結合剤のいずれかは、例えば、薬物が、使用される液体中で十分に可溶性でない場合、液体中に懸濁された薬物の固体粒子を含む懸濁液であり得る。なお別の実施形態において、この結合剤は、可溶化形態で活性物を含み得る。
【0031】
溶液、微小微細懸濁液中または可溶化形態の毒性または強力な薬物の湿式分配は、固体投薬形態が、アモルファス状態で毒性または強力な薬物を含むことを可能にする。アモルファス状態で薬物を提供することは、有利である。なぜなら、これは、結晶形態で存在することが可能である薬物よりも、患者に対してより高いバイオアベイラビリティを有する薬物を生じるためである。アモルファスの非結晶状態の薬物は、溶解および吸収のためのより高い表面積に起因して、結晶状態の薬物よりも、身体によってよりよく吸収される。
【0032】
本発明のなお別の利点は、薬物が、結晶化インヒビターの存在下でアモルファス形態で存在する場合、結晶成長が阻害され得、従って、薬物の吸収を増強するということである。例えば、活性物を含む結合剤溶液中のPVP、HPMCのような立体的妨害物、または界面活性剤は、乾燥後の投薬形態における活性物の再結晶を阻害する。従って、再凝固した活性粒子は、アモルファス形態で存在するか、または非常に小さい結晶サイズを有するかのいずれかである。結果として、吸収は、活性物の本来の固体状態と比較して、増強される。なぜなら、溶解のための表面積およびそれゆえ吸収の増加が、薬物のバイオアベイラビリティを増強するからである。
【0033】
毒性コアの隔離を達成することに関連する別の因子は、ブリーディングに関連する。ブリーディングとは、液体が印刷された後であるがそれが乾燥する前の、粉末床内への液体の拡散である。ブリーディングは、毛管現象によって起こり、そして3DPにおける通常の懸念である。なぜならこれは、寸法的な正確さおよび表面仕上げに影響を与えるからである。ブリーディングは、粉末層の水平方向、および先行または後続の粉末の層への垂直方向に起こり得る。垂直方向のブリーディングは、さほど重大ではなく、そして以前に記載されたように、連続する層を一緒に結合するよう働く。3DPにおいては代表的に、層上の印刷された領域の全てが同時に、少なくともいくらか湿っている。このことは、プロセスの時間効率、および隣接した層の印刷された領域間のより良好な相関接着に寄与する。しかし、予測され得るより表面に近く、毒性または強力な薬学的活性物を描く場合には、ブリーディングが問題になり、意図されるより乏しい隔離を生じる。例えば、コア領域およびシェル領域がほぼ同時に印刷され、そして互いに接触される場合には、これら2つの湿った領域において液体が混合し得る。このことによって、位置決めされることが意図された幾何学的位置を越えての、毒性または強力な活性物の拡散が生じる。
【0034】
ブリーディングに反作用する1つの方法は、投薬形態に移行領域を含めることである。従って、毒性または強力な活性物は、問題を生じることなく、またはシェルバインダーに実際に到達することなく拡散し得る。この移行領域は、毒性コアの周囲のカプセル化領域であり得、これは、結合していない粉末、部分的に結合した粉末または結合した粉末を含む。
【0035】
図4は、薬学的形態400が移行領域410を含む、本発明の1つの実施形態を示す。移行領域410は、薬物含有コア420とシェル領域430との間に作製されて、薬物含有液体の、コア領域420(ここに、薬物含有液滴が実際に位置した)を越えての可能なブリーディングまたは浸潤を吸収する。従って、移行領域410は、毒性または強力な薬物が、シェルに到達または浸潤することを防止する。このことは、実施例1にさらに説明されている。
【0036】
移行領域410は、結合していない粉末から構成され得る。このような状況において、毒性または強力なコア420は最内であり、箱の壁430が最外であり、そしてこれらの間に、薄い緩衝領域410が存在し、これは、一緒には結合せず、そしてまた最内領域のように毒性または強力な薬物を含有しない。毒性または強力な薬物のブリーディングが起こる場合に、このようなブリーディングは、緩衝領域または移行領域410に拡散し得るが、壁またはシェル430には実際には到達しない。
【0037】
図5に示すように、底部層の上の1つ以上の粉末の層および頂部層のすぐ下の1つ以上の粉末の層は、移行領域410によって毒性コア420がカプセル化されることを可能にする。これらの層には、コアバインダーが印刷されない。このことは、垂直方向での可能なブリーディングを吸収する機会を提供する。このさらなる補助は、外界からの毒性または有害なコア420の隔離を達成する。
【0038】
ブリーディングを制御する別の方法は、粉末を作製する賦形剤を適切に選択することである。バインダー液体を吸収する場合にゲルを形成する粉末に含まれ得る物質が存在する。バインダー液体は吸収されて固定されるので、このゲルは、浸潤バリアとして機能し、その結果、バインダー液体はこの物質と相互作用した後、さらには拡散しない。このような物質の例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。バインダー水溶液と共に使用するための他の例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、カルボポール、親水性シリカゲル、キサンタンガム、ゲランガム(gellan gum)、イナゴマメガム、アクリル酸ポリマー、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ガーゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレン−ポリプロピレンコポリマー、コーンスターチ、およびポリビニルピロリドン(PVP)ならびに他の親水性ポリマーが挙げられる。エタノール性バインダー系と共に使用するための他の例としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレン−ポリプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0039】
医薬の便利な製造において、所望でない場合に物質の多量の分散の比較的大きな可能性を与えるものは、粉末の取り扱い工程である。粉末は、含めることが困難であり得る。なぜなら、粉末は、ある範囲の粒子サイズを含み、そして微粒子が容易に空気伝播され得るからである。毒性または強力な薬物が湿って分散する、本発明の1つの利点は、拡散して各層を形成する粉末が、薬理学的に不活性な賦形剤からなり得、そしてこの賦形剤から分散し得るあらゆる粒子が穏やかであることである。本発明において、毒性または強力な薬物は、ディスペンスされる液体に含まれる。有害物質は、これが液体に不溶性またはわずかにのみ可溶である場合でさえも、液体によりディスペンスされ得る。なぜなら、必要であれば、この物質は、固体粒子の懸濁液として、または可溶化形態で、この液体に含まれ得るからである。このことによって、錠剤圧縮技術において見出される、薬物を含有する乾燥粉末の粒子が空気伝播される傾向を回避することが可能となる。このことは、高度に毒性または強力な物質の場合には、製造人員に対する曝露の危険を提供し得る。
【0040】
先行技術に対するさらなる利点は、本発明が、人員または工具のいずれによっても、毒性または強力な薬物への接触なしに、毒性または強力な薬物の収容を提供することである。さらに、投薬形態自体が、製造の間に互いに衝突も接触もしない。製造の間に投薬形態が接触しないことによって、製品とプロセスとの両方が、先行技術より優れたものになる。
【0041】
本発明の完成形態は、カプセル化中間物または移行領域を用いて、毒性または強力な薬学的活性物をコア領域内に効果的に固定した、固体である。これは、軟質ゲルカプセルの代替のパッケージング(ここでは、液体がゼラチンシェルによって囲まれている)に対する場合より完全な固定である。軟質ゲルカプセルにおいては、依然として、内部の液体から周囲のカプセル本体への物質の有限の速度の拡散が存在し得る。
【0042】
これは、3DP投薬形態が以前に記載されるように埃を除去される場合に、部分的に接着した粒子の投薬形態の表面からの可能な除去が、いかなる毒性薬物をも除去せず、従って、埃の除去が、個々の投薬形態に含まれる薬物の投薬において、いかなる誤りをも導入し得ない点で、さらに有利である。このことは、投薬形態における薬物の最終含有量に対する可能性のある無作為化の影響を排除する。
【0043】
図7A〜7Eは、本発明のさらなる実施形態を示し、2用量で放出される投薬形態を説明する。この実施形態を使用して、1つの単回ユニット投薬形態に、2用量の活性物を含み得、これによって、患者のコンプライアンスおよび信頼度を増加させる。シェル領域730に含まれる第一の用量は、投与の際に即座に放出され得る。このシェル領域とコア領域710との間の移行領域720は、高い飽和レベルで作製されて、遅れ時間を生じさせ得る。この設計の例は、抗癌化合物および制吐剤化合物を、単一の投薬形態に含むことである。従って、シェル領域730に含まれる制吐剤は、抗癌処置が施されるような嘔吐を生じる処置の前に効果を顕す十分な時間を有し得る。この場合には、移行領域720は、バインダー(これは、結合剤であり、そして時間遅延領域を形成する)の使用によって、結合される。これは、既に記載した2つのバインダー以外の、第三のバインダーであり得る。あるいは、このような投薬形態に関して、この設計は、外側から開始して内向きに進行して、以下のようであり得る:制吐剤を含むシェル領域;時間遅延である中間に位置するシェル;ブリーディング制御のためのみ結合粉末であり得る、移行領域;および毒性または強力な薬物を含有する、コア領域;全ての領域が、すぐ隣接してその内側にある領域をカプセル化する。
【0044】
以下の実施例が、説明の目的で、さらに提供される。
【0045】
(実施例1)
特に興味深い薬物は、カムプトテシン(camptothecin)(C20H15N3O6)およびその誘導体である9−ニトロカムプトテシン(9−NC)(rubitecan)、ならびにさらに、カンプトテシンの他の誘導体である。これらの薬物は、膵臓癌(これは、特に有毒な形態の癌である)に対して有効である。9−NCは、55mg/kgの急性および2.5mg/kgの慢性の、経口LD−50(マウスに対して)を有する。これは、取り扱いが極度に危険であると考えられる。実際に、その毒性は、これを癌に対して有用にするものの一部である。この薬物の公知の効果にかかわらず、薬物の製造者および包装者は、製造人員に対するその毒性および潜在的な危険に起因して、この薬物を使用して固体ODFを作製することを嫌う。この医薬の従来のコートされていない錠剤が、錠剤圧縮法によって作製される場合には、空気伝搬粒子は、製造および包装人員に対して非常に危険であり、そしてこれらの錠剤に直接触れることは、看護婦、薬剤師、および他の健康管理人員に対して危険である。このことに起因して、この薬物は、他に利用可能な処置がほとんどない場合でさえも、患者にとって比較的利用不可能である。
【0046】
本実施例における経口投薬形態を、3DPプロセスを使用して作製した。この薬物を分散させるために使用した液体は、水懸濁液であった。これらの薬物は、本質的に水に不溶性である。微細なカムプトテシンまたは9−NCを、2.5(重量)%の濃度でこの懸濁物に組み込んだ。平均粒子サイズは、おおよそ0.5ミクロンであった。この懸濁物に含まれた他の物質は、Avicel RC−591(10% Na CMC、90% 微晶質セルロース)およびPVP K−25(25,000g/モルの分子量のポリビニルピロリドン)であり、これらはそれぞれ、懸濁剤および立体障害剤として機能し、凝集物の形成を防止する。液滴が、Lee Corporation,Essex CTによって製造される電子的に作動されるマイクロバルブによって、ノズル(これは、Swiss Jewel Company,Philadelphia PAから市販されているような宝石に穿孔された穴であった)を通してディスペンスした。当該分野において公知であるような他の方法によるディスペンスもまた、使用され得る。
【0047】
ODFマトリックスを作製するために使用した粉末(表面に印刷が実施される粉末)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)および他の賦形剤(例えば、Avicel CL−611、Avicel PH−301およびラクトース)を含む混合物であった。Avicelは、FMC Corp.,Philadelphia,PAによって製造される。Avicel CL−611は、85%の微晶質セルロースおよび15%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na CMC)を含む。Na CMCは、水和の際にゲル化する、固体バインダーとして機能する。Avicel PH−301は、一種の微晶質セルロースであり、水に不溶の賦形剤である。HPMCは、既に記載されたようなゲル化剤である。HPMCの品質は、薬物放出速度を調整するために変動され得る。より多くのHPMCの添加は、薬物の放出速度を効果的に低下させる。薬物懸濁物の流速を、ODFのコア領域に0.5mgの活性物の名目上の全薬物負荷を送達するように調製した。
【0048】
図6Aに示される、錠剤600の代表的な寸法は、#3カプセルの内側にはまり得るように、直径4.8mmおよび長さ12.1mmであった。種々の方向でのボクセル(単位セル)数のような印刷パラメータを、図6Bに示す。ボクセルの寸法は、液滴の寸法にいくらか対応し、そしてまた、所望される飽和(液体による空隙空間の充填)の程度によって、影響を受ける。ここに示される製造パターンに関して、水平方向での代表的な単位間隔は、10ミクロンである。シェル領域630を、バインダー(ディスペンスした液体)(シェルバインダー)を用いて作製した。このバインダーは、PVP(ポリビニルピロリドン)およびTween 20(ポリエチレンソルビタン−モノラウレート、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)を含有する、薬物を含まない溶液であり、これは、その液体に適切な粘度および表面張力を提供した。着色料(FD&C Red No.40)をもまた添加した。外側表面(底部、頂部および壁)の結合を、この液体を用いて達成した。
【0049】
図6Bは、製品設計の重要な特徴を例示する。コア領域610とシェル領域630との間の緩衝領域620は、同様に、既に考察されている。この緩衝領域620は、コアバインダーまたはシェルバインダーのいずれにもプリントされていない粉末によって占有されている。これによって、スペースが提供され、これに対してコア(薬物含有)バインダーを、必要な場合、実際にシェルに達することなく、ブリーディング(bleed)得る。これによって、外界からの毒性物質または効果物質の単離の程度が改善される。ここで示したプリントパターンにおいて、緩衝領域620の水平方向の寸法は、遅軸方向において、1ボクセルまたは小滴間隔距離または1空間増分(インクリメント)である。垂直方向で、コアバインダーをプリント開始する前に、底部表面をプリントすることによって、次いでコアバインダーによるプリントなしに2つまたは3つの粉末層を残すことによって、類似の単離物を提供した。この場合、粉末層の厚みは400ミクロンであった。重力のせいで、垂直下方への(以前に沈着された粉末層への)ブリーディング(bleeding)は、垂直上方(引き続いて沈着された粉末層への)ブリーディングよりも重大である。従って、プリントした投薬形態の頂部で、粉末の1つ以上の層を、その上にプリントされたコアバインダーなしに、同時に残しておくことが可能である。しかし、重要性または必要な厚みは、それが底にある場合ほど大きくない。
【0050】
種々の組み合わせの賦形剤のタイプ、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)含量、および投薬形態マトリックスの微小構造を、製造パラメータの変更によって生成した。これらの種々の組み合わせによって、種々の異なる薬物放出速度を生じた。界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)の存在下、または非存在下で、0.1N HClを用いて、米国薬局方(USP)のバスケット方法によって、薬物放出速度を決定した。非包装経口投薬形態の代表的な薬物放出期間は、10分である。しかし、さらに緩徐な最初の放出速度が好ましい。なぜなら、活動による胃への刺激が最小限であるからである。薬物放出期間は賦形剤のタイプの変化によって、10分から2時間以上まで延長し得ることが見出された。薬物放出は、HPMCレベルを漸増することによってさらに遅延され得た。例えば、HPMC含量が50%に増大した場合、約40%の薬物が1時間で放出された。シェルの存在はまた、シェルの厚み、組成物などに依存して、薬物放出速度に対して効果を有し得るが、この場合、このシェルは、放出プロフィールに対して有意な効果を有するとは考えられなかった。
【0051】
このODFの包装は、投薬形態の製造後に、ODFが硬性シェルカプセルでカプセル化されることを意図するものであった。カプセルは代表的には2つの半分ずつになり、これが一緒にスライドして緊密な適合を形成する。カプセルは代表的には、ゼラチン状物質から製造され、これが胃腸管の体液中でかなり迅速に溶解する。投薬形態の寸法は、長さ12.1mmおよび直径4.8mmであり、それ自体を#3のカプセルの内側に適合させる。
【0052】
(実施例2)
目的の他の薬物は、甲状腺ホルモン、トリヨードチロニン(T3)(分子量=650.98g/モル)、およびテトラヨードチロキシン(T4)(分子量=776.87g/モル)である。これらは、以前に記載された抗癌剤よりも1単位量あたり、なおさらに強力なホルモンである。抗癌剤と同様、ホルモンは、処置の間、活動に対する望ましくない人的曝露の懸念を有し、それによって製品を製造し、そして取り扱う人員を隔離する必要がある。本実施例は、異なるカテゴリーの薬物、すなわちホルモンを例示する。特定の治療目的のためには、これらの2つのモルモンは、単回経口投与形態で含まれることが必要である。従って、本実施例はまた、実施例1を上回る製造の追加の詳細(すなわち、1つだけでなく、2つの幾何学的薬物領域の作製)を例示する。本実施例において、分配された液体は懸濁液ではなく溶液である。錠剤中に充填する所望の薬物は、1錠剤中に、25〜200マイクログラムの範囲のT4の投薬量、および1錠剤中に、1.5〜12マイクログラムの範囲のT3の投薬量である。
【0053】
図7Aから7Eは、種々の薬学的形態を例示する。2つの異なる形状をここ(図7Dおよび7E)に示している。その1方は、後の内部挿入カプセルに適切であり、そのもう1方は、カプセル化の必要のない錠剤に適切である。カプセルの形状では、この長さは、この投薬形態の最長の寸法であり、そのため2つの個々の薬物領域の好ましい幾何的整列は、それをお互いの頂部に積み上げ、両方が薬物学的に不活性なシェル(inert shell)を内側に封入するためのものである。錠剤の幾何学については、直径は、投薬形態の最大の寸法であり、そしてここでも、全ての活動物は、不活性なシェルによって囲まれなければならず、他の薬物領域の同心円状に内側の1つの薬物領域に位置することが好ましい(それらの両方ともが薬学的に不活性なシェルによってさらに囲まれている)。
【0054】
液体形態の薬物を分配することは、懸濁液の使用におそらく必要でないそれらの特定の薬物について以外は、実施例1の技術と類似の技術による。なぜなら、薬物の可溶性と必要な投薬用量の組み合わせは、この必要な投薬量が結合液体中に溶解され得るものであるからである。
【0055】
本明細書に提示される実施例において、本実施例の形状は、いくつかの形態のプリズム、例えば、円柱または長方形の平行なパイプ(parallelepiped)であり、従って、全ての形状は平坦な底面および平坦な頂部およびいくつかの形状の側面(閉じられた境界の残りに充填されている)を有した。しかし、一般に3DPの1つの長さは、それが複合形状を形成する能力であることが十分理解され得る。従って、投薬量形態の形状を、平坦な頂部および底部を有する形状に限定する必要はない。3DPは、好ましくは、球状、または楕円体、または円柱状(湾曲した頂部、および底部を有する)、または他の形状である、投薬形態をプリントし得る。
【0056】
本発明は、分散されている液体の小滴に関して考察されている。しかし、ある状況では、液体は、正確には別の小滴でない様式で分配され得ることが理解されるべきである。例えば、液体は、液体の細いつらなりによって互いに連続されている、液体の一連の塊として分配され得る。液体は、ストリーム(流れ)としてさえ分配され得る。このストリームは、単にオン、オフに切り替えられるか、またはマスクによって物理的に妨害さえされる。これらの全てが本発明によって包含される。分配された液体は、以前に開示されたように水性(水がベース)の液体であり得るが、これはまた、一般に、水、エタノール、他のアルコール、クロロホルム、他のハロゲン化炭化水素、アセトンなど、そして適切な場合にはそれらの組み合わせ、を含む任意の液体処方物にも存在し得る。
【0057】
本発明は、製造のための最上の候補である、3DPに関して考察してきた。しかし、3DPは、全体として固体自由造形製造(solid free−form fabrication)(SFF)として公知の多数の技術のうちの1つにすぎない。このファミリーの他のメンバーがまた用いられ得る。
【0058】
ODFはまた、患者への投与を容易にするために、または外観もしくは市場の目的のために所望される場合、カプセルによってさらに封入され得る。このカプセルは、本明細書において記載されたように製造された1つのODFまたは複数のODFのいずれかを含み得る。さらなる実施形態は、味覚、美的外観、または破砕性の低下を目的としたコーティング(被覆)を含み得る。
【0059】
本発明は、毒性の抗癌剤および強力なホルモンに関して記載してきたが、これは、毒性または効力による危険性の懸念を有する、任意の他の毒性化合物または強力な化合物(例えば、抗癌剤、他のホルモン、ステロイド、または麻薬)を用いて同様に用いられ得る。
【0060】
実施例1において、薬物の放出速度を決定する限りは、シェルは、どのような機能も行うとは考えられない。これは、嚥下された後にかなり迅速に溶解する物質で作製された。しかし、他の適用では、当該分野で公知のように(例えば、WO98/3673941に記載のように)、シェルが所望の様式で放出プロフィールに影響するように、シェルの組成および寸法を設計することが有用であり得る。
【0061】
本発明の例示的実施例の上記の説明は、網羅的であることも、本発明を記載された正確な形態に限定することも意図しない。本発明の特定の実施形態、および本発明の実施例は、例示的目的で本明細書において記載されているが、当該分野の当業者に理解されるように、種々の等価な改変が、本発明の範囲内で可能である。本発明の本明細書において提供した教示は、上記の例示的経口投薬形態だけでなく、他の薬学的形態に、おそらく、移植可能薬物送達システムにさえ、適用可能である。
【0062】
上記の種々の実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合せられ得る。上記の特許および出願の全ては、参考として援用されている。本発明の局面は、必要な場合、改変されて、上記の種々の特許および出願のプロセス、装置および概念を使用して、本発明のなおさらなる実施形態を提供し得る。
【0063】
これらの変化および他の変化が、上記の詳細な説明に照らして、本発明に対してなされ得る。概して、添付の特許請求の範囲において、用いた用語は、本明細書および本特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に対して本発明を限定すると解釈されるべきではなく、本特許請求の範囲のもとで操作する全ての医薬品を含み、危険なコアを含むための方法を提供すると解釈されるべきである。従って、本発明は、開示によっては限定されず、その代わり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって全体として決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図5】
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【図6B】
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【図7D】
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【図7E】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6A】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2012−82224(P2012−82224A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−12834(P2012−12834)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【分割の表示】特願2001−583741(P2001−583741)の分割
【原出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(501147716)セリックス, インコーポレイテッド (2)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】