説明

結晶形態のラパマイシン類似体

ラパマイシン類似体組成物は、結晶形態のラパマイシン類似体を含む。結晶は、水和物、脱水和物、溶媒和物、又は脱溶媒和物であり得る。ラパマイシン類似体は、式(I)の構造を有することができ、場合によってプロドラッグ、塩、誘導体、又はそれらの組合せである:式(I)
【化1】

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、「結晶形態のラパマイシン類似体(CRYSTALLINE FORMS OF RAPAMYCIN ANALOGS)」と題された、2006年7月25日出願の米国特許仮出願第60/820,317号明細書、及び「結晶形態のラパマイシン類似体(CRYSTALLINE FORMS OF RAPAMYCIN ANALOGS)」と題された、2007年7月23日出願の米国特許出願第11/781,804号明細書、並びに「結晶形態のラパマイシン類似体を製造する方法(METHODS OF MANUFACTURING CRYSTALLINE FORMS OF RAPAMYCIN ANALOGS)」と題された、2007年7月23日出願の米国特許出願第11/781,807号明細書(発明者として、Shekhar Viswanath、Larry Bartelt、Robert Leanna、Michael Rasmussen、Madhup Dhaon、Rodger Henry、Thomas Borchardt、Shuang Chen、及びGeoff Zhang)の利益を主張し、それらの内容は具体的な参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、結晶形態のラパマイシン類似体並びに組成物、使用、及びその製造方法に関する。より特には、本発明は、結晶形態のラパマイシン類似体ゾタロリムス(すなわち、ABT−578)に関する。
【0003】
[発明の背景]
医薬において、通常、薬剤の溶解度、安定性、吸収性、及び生体利用率の間に二律背反が存在し、これは薬剤の形態によって調節され得る。活性化合物の一部の形態は、水への極めて低い溶解度又は不溶性の難点があり、多大な最初の肝臓通過の代謝を受ける。活性化合物の一部の形態は、それらの低い水溶解度のために吸収性不良の難点がある。晶癖及び形態学などの活性化合物の固体形態の特性は、その特性にかなり影響を与え得る。そうであるので、したがって、活性成分の形態の選択は、医薬品及び他の化学製品の性能を著しく変え得る。従来、ラパマイシン及びラパマイシン類似体は、医薬組成物の範囲内の非晶質形態で調製されてきた。
【0004】
結晶化法の開発及び研究にもかかわらず、構造理解に基づく結晶化に対する制御並びに結晶及びその他の固体形態を設計する能力は依然として限定的である。分子結晶の核生成、成長、溶解、及び形態学に対する制御は、主として「混合と試行」の問題のままである(Weissbuch,I.、Lahav,M.、及びLeiserowitz,L.、Molecules Modeling Applications in Crystallization、166、1999年)。多くの変数が、結晶化、沈殿、移相、及びそれらから生成された固体形態に影響を与え、且つ非常に多くの反応剤及び工程の変数が利用可能であるので、個々の固体形成及び結晶構造改変の試験は極めて面倒な処理である。医薬産業における結晶構造の重要性にもかかわらず、最適結晶構造又は最適非晶質固体は、精力的又は体系的に探求されていない。したがって、結晶形態などの、ラパマイシン類似体の形態の選択は、特定の用途においてその性能を著しく変える可能性があり、このような形態は継続して探求されている。
【0005】
したがって、治療上の処置に用いられ得る結晶形態のラパマイシン類似体を示すことは有益であろう。さらに、結晶形態のラパマイシン類似体のための組成物、使用方法、及び製造方法を示すことは有益であろう。
【0006】
[発明の概要]
本発明は、結晶形態のラパマイシン類似体を製造するための組成物、使用、及び方法、並びにより特には、結晶形態のゾタロリムス(すなわち、ABT−578)に関する。
【0007】
一実施形態において、本発明には、結晶形態のラパマイシン類似体が含まれる。結晶形態のラパマイシン類似体は、本明細書に記載される様々な方法によって調製され得る。このような結晶形態は、適切な結晶形態が特定の使用に同定され得るように調製され得る。ラパマイシン類似体は、下記に示されるような式1、式2、又は式3の構造を有し得る。また、結晶ラパマイシン類似体は、プロドラッグ、塩、誘導体、又はそれらの組合せであり得る。
【化1】

【0008】
一実施形態において、結晶は溶媒和物である。そのようなものとして、結晶は、その中に含まれる有機溶媒を含むことができ、ここで、溶媒は結晶を調製するために使用される。有機溶媒は、ラパマイシン類似体を調製するのに使用することができ、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、ギ酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、アニソール、メチルイソプロピルケトン、ニトロメタン、プロピオニトリル、2−ブタノン(すなわち、メチルエチルケトン又はMEK)、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸イソプロピル、それらの任意の組合せなどを含む溶媒からなる群から選択され得る。
【0009】
一実施形態において、結晶は脱溶媒和物である。そのようなものとして、結晶は、アセトン脱溶媒和物、トルエン脱溶媒和物、アセトニトリル脱溶媒和物、ギ酸エチル脱溶媒和物、酢酸イソブチル脱溶媒和物、N,N−ジメチルホルムアミド脱溶媒和物、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。
【0010】
一実施形態において、本発明には、結晶形態のラパマイシン類似体を調製する方法が含まれる。このような方法は以下を含む:ラパマイシン類似体を少なくとも1種の有機媒体と混合して混合物を形成する段階;ラパマイシン類似体が結晶化するまで混合物をインキュベートする段階;及び結晶ラパマイシン類似体を有機媒体から回収する段階。
【0011】
一実施形態において、有機媒体は、混合物を形成するために少なくとも1種の溶媒を含み得る。そのようなものとして、結晶形態のラパマイシン類似体を調製する方法には、ラパマイシン類似体を該溶媒中に溶解させる段階、及びラパマイシン類似体が結晶化するまで該溶媒をインキュベートする段階が含まれる。
【0012】
一実施形態において、該方法には、溶液中に結晶ラパマイシン類似体のスラリーを形成する段階が含まれる。一実施形態において、該方法には、ラパマイシン類似体が結晶化するまでラパマイシン類似体混合物を撹拌する段階が含まれる。一実施形態において、該方法には、ラパマイシン類似体溶液を飽和させる段階が含まれる。これには、過飽和ラパマイシン類似体溶液を形成する段階も含まれ得る。
【0013】
一実施形態において、該方法には、結晶ラパマイシン類似体を形成するのに補助となるアンチソルベントの使用が含まれる。このような方法には、少なくとも1種のアンチソルベントをラパマイシン類似体及び溶媒と混合して、二相混合物を形成し、該二相混合物をインキュベートして、溶媒中に存在する大量のラパマイシン類似体とアンチソルベント中に存在する少量のラパマイシン類似体とに分割された液−液相を生じさせる段階が含まれる。場合によって、該溶媒は、結晶が析出する前にアンチソルベントから分離され得る。
【0014】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例証的及び説明的であるのみであり、請求項に記載されたように、本発明を制限していると見られるべきではないことが理解されるべきである。本発明のさらなる利点は、添付の図面及び添付の特許請求の範囲に概要的に示される開示された実施形態の以下の詳細な説明を検討した後に明らかになるであろう。
【0015】
本発明の上述及び他の利点及び特徴をさらに明らかにするために、本発明のより詳細な説明が、添付の図面において示されるその具体的な実施形態の参照によってなされる。これらの図面が本発明の典型的な実施形態のみを示し、したがって、その範囲を限定すると考えられるべきでないことが理解される。本発明は、以下の添付の図面を使用することによってさらなる具体性及び詳細をもって記載及び説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ラパマイシン類似体を調製する方法の実施形態の概略図を示す図である。
【図2A】結晶形態のラパマイシン類似体アセトン溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図2B】結晶形態のラパマイシン類似体アセトン溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図3A】結晶形態のラパマイシン類似体アセトン脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図3B】結晶形態のラパマイシン類似体アセトン脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図4A】結晶形態のラパマイシン類似体トルエン溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図4B】結晶形態のラパマイシン類似体トルエン溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図4C】図4Bのラパマイシン類似体トルエン溶媒和物の単一のX線結晶構造の実施形態の概略図を示す図ある。
【図4D】図4Bのラパマイシン類似体トルエン溶媒和物の「b」軸に沿った溶媒チャネルを示す結晶構造の実施形態の概略図を示す図である。
【図4E】結晶形態のラパマイシン類似体トルエン脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図4F】図4Bのラパマイシン類似体トルエン溶媒和物の脱溶媒和の間の粉末X線回折パターンの変化を示す図である。
【図5A】結晶形態のラパマイシン類似体アセトニトリル溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図5B】結晶形態のラパマイシン類似体アセトニトリル溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図6A】結晶形態のラパマイシン類似体アセトニトリル脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図6B】結晶形態のラパマイシン類似体アセトニトリル脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図6C】結晶形態のラパマイシン類似体アセトニトリル脱溶媒和物の実施形態の熱重量分析を示す図である。
【図7A】結晶形態のラパマイシン類似体ギ酸エチル溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図7B】結晶形態のラパマイシン類似体ギ酸エチル溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図7C】結晶形態のラパマイシン類似体ギ酸エチル溶媒和物の実施形態の熱重量分析を示す図である。
【図8】結晶形態のラパマイシン類似体ギ酸エチル脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図9A】結晶形態のラパマイシン類似体酢酸イソブチル溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図9B】結晶形態のラパマイシン類似体酢酸イソブチル溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図9C】結晶形態のラパマイシン類似体酢酸イソブチル溶媒和物の実施形態の熱重量分析を示す図である。
【図10A】結晶形態のラパマイシン類似体N,N−ジメチルホルムアミド溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図10B】結晶形態のラパマイシン類似体N,N−ジメチルホルムアミド溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図10C】結晶形態のラパマイシン類似体N,N−ジメチルホルムアミド溶媒和物の実施形態の熱重量分析を示す図である。
【図11A】結晶形態のラパマイシン類似体アニソール溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図11B】結晶形態のラパマイシン類似体アニソール溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図11C】結晶形態のラパマイシン類似体アニソール溶媒和物の実施形態の熱重量分析を示す図である。
【図12A】結晶形態のラパマイシン類似体エタノール溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図12B】結晶形態のラパマイシン類似体エタノール脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図13A】結晶形態のラパマイシン類似体メタノール溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図13B】結晶形態のラパマイシン類似体メタノール脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図14A】結晶形態のラパマイシン類似体酢酸エチル溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図14B】結晶形態のラパマイシン類似体酢酸エチル脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図15A】結晶形態のラパマイシン類似体メチルイソプロピルケトン溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図15B】結晶形態のラパマイシン類似体メチルイソプロピルケトン脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図16】結晶形態のラパマイシン類似体ニトロメタン溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図17A】結晶形態のラパマイシン類似体酢酸イソプロピル溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図17B】結晶形態のラパマイシン類似体酢酸イソプロピル脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図18A】結晶形態のラパマイシン類似体プロピオニトリル溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図18B】結晶形態のラパマイシン類似体プロピオニトリル脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図19A】結晶形態のラパマイシン類似体メチルエチルケトン溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図19B】結晶形態のラパマイシン類似体メチルエチルケトン脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図20A】結晶形態のラパマイシン類似体テトラヒドロフラン溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図20B】結晶形態のラパマイシン類似体テトラヒドロフラン脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図21A】結晶形態のラパマイシン類似体1,2−ジメトキシエタン溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図21B】結晶形態のラパマイシン類似体1,2−ジメトキシエタン脱溶媒和物の実施形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【0017】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
一般に、本発明は、ラパマイシン類似体ゾタロリムス(すなわち、ABT−578)などの結晶形態のラパマイシン類似体を製造するための晶癖、組成物、使用、及び方法に関する。結晶形態のラパマイシン類似体は、本明細書に記載される様々な方法によって調製され得る。このような結晶形態は、適切な結晶形態が特定の使用に同定され得るように調製され得る。
【0018】
I.結晶ラパマイシン類似体
一実施形態において、ラパマイシン類似体は、式1、式2、式3、又はそれらの組合せの構造を有し得る。
【化2】

【0019】
式2のラパマイシン類似体は、ゾタロリムス又はABT−578と呼ばれ得る。さらに、該薬剤は、ラパマイシン類似体の医薬的に許容される任意の塩又はプロドラッグであり得る。ゾタロリムスなどの生物活性剤の医薬的に許容される塩及び/又はプロドラッグの調製は、当該技術分野でよく知られている。
【0020】
さらに、式1〜式3のラパマイシン類似体は、式4に示されるようなもう1つの類似体と溶液中で平衡に存在し得る。式4のラパマイシン類似体はまた、式2〜式3の対応する類似体であり得る。そのようなものとして、式4のラパマイシン類似体(及び式2〜式3と同等物)はまた、結晶を形成し得るか、又は式1〜式3のラパマイシン類似体の結晶中に取り込まれ得る。
【化3】

【0021】
一実施形態において、ラパマイシン類似体は、式1〜式4に示される類似体の誘導体であり得る。誘導体は、ヒドロキシル化、メチル化、エチル化などの微小な置換を行うか、又は他に置換基を最小に変化させることによって調製され得る。
【0022】
ある場合には、可能であれば、ラパマイシン類似体は、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、クエン酸塩、ジヒドロクロリド、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマレート、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサミレート、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、ヒドロキシナフトエート、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオネート、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、メチルスルフェート、ムスケート、ナプシレート、硝酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクチュロン酸、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート、トリエチオジド、及びパモエート(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))を含む医薬的に許容されるアニオンを含む塩に形成することができる。
【0023】
A.結晶形態
本発明の様々な結晶ラパマイシン類似体は、異なる特性を有し得る。すなわち、該結晶は、異なる構造的、物理的、薬理学的、又は化学的特性を有し得る。構造的特性には、限定されないが、結晶多形形態及び晶癖の記述が含まれる。構造的特性にはまた、例えば、固体形態が水和物、脱水和物、溶媒和物、脱溶媒和物、塩、それらの組合せなどであろうとなかろうと、その組成物が含まれる。
【0024】
また、結晶ラパマイシン類似体の物理状態は、以下にさらに分けることができる:(1)結晶マトリックスに共付加体が含まれるかどうか;(2)形態学(例えば、晶癖);及び(3)内部構造(例えば、多形)。共付加体において、結晶マトリックスには、付加体、例えば、結晶化溶媒又は水(例えば、溶媒和物又は水和物)の化学量論的又は非化学量論的量のいずれかが含まれ得る。非化学量論的溶媒和物及び水和物には、包含物又はクラスレートが含まれ、すなわち、そこでは、溶媒又は水が結晶格子マトリックス内にランダムな間隔で閉じ込められている。化学量論的溶媒和物又は水和物は、結晶マトリックスが特定の部位に特定の比率で溶媒又は水を含む場合である。すなわち、溶媒又は水分子は規定された配置で結晶マトリックスの一部であり得る。さらに、結晶マトリックスの物理状態は、本来結晶マトリックス中に存在する共付加体を除去することによって変化し得る。例えば、溶媒又は水を溶媒和物又は水和物から除去すると、空孔が結晶マトリックス内に形成され、それにより新しい物理状態を形成する。このような物理状態は、本明細書において、脱水された水和物(すなわち、脱水和物)又は脱溶媒された溶媒和物(すなわち、脱溶媒和物)と呼ばれる。
【0025】
晶癖は、個々の結晶の外観の記述である。例えば、結晶は、立方、正方、斜方、単斜、三斜、菱形、又は六方の形状を有し得る。
【0026】
結晶の内部構造は、結晶形態又は多形と呼ばれる。所与の化合物、例えば、ラパマイシン類似体は、異なる多形体、すなわち、別個の結晶種として存在し得る。一般に、所与の化合物の異なる多形は、2つの異なる化合物の結晶と同様に構造及び特性において異なり得る。溶解度、融点、密度、硬度、結晶形状、光学及び電気特性、蒸気圧、安定性などは、多形形態と共に変わり得る。
【0027】
ラパマイシン類似体などの化合物の結晶構造は、医薬としての生体利用率及び有効性に影響を与える特性を決定するのに重要な役割を果す。多くの化合物の特性は、構造変化により変化され得る。例えば、同じ医薬化合物の異なる多形又は結晶は、異なる治療活性を有し得る。構造−特性の関係を理解することは、医薬の治療有効性などのラパマイシン類似体の所望の特性を最大化するための努力において重要であり得る。
【0028】
B.結晶化
結晶化の過程は、固体格子構造においてラパマイシン類似体を秩序付けることの1つである。この過程の間、溶液物、溶融、又は気相中の不規則に組織化された分子は、格子構造において規則的な位置を取る。この格子の規則的な組織化は、X線の回折、明確な融点、及びはっきりした、明確な結晶面を含む多くの結晶の独特の特性の原因となる。沈殿は、通常、対象性又は秩序化を有しない、及び癖によって又は多形として明確化され得ない非晶質物質の形成をいうが、沈殿により結晶を形成する過程ともいい得る。結晶化及び沈殿の両方は、溶液がラパマイシン類似体を完全に溶解することができないことから生じ、何らかの方法で組成物の状態を変える(例えば、パラメータを変える)ことによって誘導され得る。
【0029】
結晶化において重要な過程の一部は、核生成、成長動力学、界面現象、凝集、及び破壊である。核生成は、相転移エネルギー障壁が克服される場合に生じ、それにより粒子を過飽和溶液から形成させる。結晶成長は、結晶の既存表面へのラパマイシン類似体の沈着によって引き起こされる結晶粒子の増大である。核生成と成長との相対速度は、形成される結晶のサイズ分布を決定する。核生成と成長の両方の熱力学的推進力は、過飽和であり、これは熱力学的平衡からのずれとして定義される。凝集は、一緒にくっつき、より大きな結晶構造を形成する2以上の粒子(例えば、結晶)によるより大きな粒子の形成である。
【0030】
ラパマイシン類似体は、結晶形態を形成するためのプロトコル及び条件に依存して多くの異なる結晶形態及びサイズを取り得る。特に重要視されているのは医薬産業における結晶特性(例えば、多形形態、結晶サイズ、晶癖、及び結晶サイズ分布)であり、これは、結晶構造及びサイズが、生体利用率を含む、製造、配合、及び薬物動態学に影響し得るためである。以下の4つの広義のクラスがあり、それにより所与の化合物の結晶が異なることがある:組成物;癖;多形形態;及び結晶サイズ。
【0031】
結晶組成物により通常、その固体形態が単一の化合物、例えば、純粋ラパマイシン類似体であるか、又は化合物の混合物であるかが記述される。例えば、固体形態は、それらの中性形態、例えば、塩基性窒素を有する化合物の遊離の塩基又は塩(例えば、塩基性窒素含有化合物の塩酸塩)で存在し得る。結晶組成物によりまた、付加分子を含有する結晶が記述され得る。結晶化又は沈殿の間に、付加分子(例えば、溶媒又は水)は、結晶格子マトリックス中に取り込まれ、表面に吸着され、又は結晶の格子内に閉じ込められ得る。このような組成物は、包含物、例えば、水和物(例えば、格子に取り込まれた水分子)及び溶媒和物(例えば、格子内に閉じ込められた溶媒)と呼ばれる。結晶が包含物として形成するかどうかは、特性、例えば、ラパマイシン類似体の生体利用率又は処理若しくは製造の容易さに大きな影響を与え得る。例えば、包含物は、同じ化合物の対応する非包含結晶構造に比べて多かれ少なかれ容易に溶解し、又は異なる機械的特性若しくは強度を有し得る。
【0032】
したがって、ラパマイシン類似体は、なかでも、結晶媒体の組成及び温度に依存して、異なる外部形状で結晶化し得る。結晶面形状は、晶癖として記述される。このような情報は、晶癖が結晶の表面対体積比に大きな影響を与えるので重要である。異なる晶癖は、同じ内部構造及び同一の単結晶パターンを有し得るが、それらは依然として、異なる医薬特性を呈し得る(Haleblian 1975年、J.Pharm.Sci.、64:1269年)。晶癖は、いくつかの医薬的特性、例えば、機械的要因[例えば、注射針通過性、タブレット成形挙動、ろ過、乾燥、及び他の物質(例えば、賦形剤)との混合]、並びに非機械的要因(例えば、溶解速度)に影響を与え得る。
【0033】
さらに、同じラパマイシン類似体は、2種以上の異なる結晶種(例えば、異なる内部格子構造を有する)として結晶化し得るか、又は1つの結晶種から別の結晶種に変わり得る。この現象は、多形として知られており、別個の種(species)は多形体として知られている。多形体は、異なる光学特性、融点、溶解度、化学反応性、溶解速度、及び異なる生体利用率を示し得る。同じ医薬化合物の異なる多形体が、異なる薬物動態学を示し得ることはよく知られている。例えば、1つの多形体は、その対応物より容易に吸収され得る。極端には、所与の医薬品の1つの多形形態のみが疾患の治療に適切であることがある。しかし、異なる多形体が一緒に又は別々に利用され得る異なる特性を有することはありそうに思われる。例えば、異なる溶解度特性を有する多形体は、放出若しくは溶出プロファイルをカスタマイズするために一緒に使用され得るか、又は異なる配合物若しくは治療に使用することができる。したがって、新規で、有益なラパマイシン類似体多形体の発見及び開発は、特に医薬分野において、極めて重要である。
【0034】
非晶質固体、例えば、従来のラパマイシン及びラパマイシン類似体は、非結晶形状を有し、癖又は多形形態によって特徴づけすることができない。通常の非晶質固体は、原子及び分子が非均一配列で存在するガラスである。非晶質固体は通常、急速固化の結果であり、これらの固体が極めて広がった線又は非結晶回折パターンを与えるので、X線粉末回折によって都合よく同定され得る。非晶質固体は、急速溶解速度などの望ましい医薬特性をしばしば有することがあるが、それらは通常、それらの物理的及び/又は化学的不安定性のために好ましくない。非晶質固体はその結晶形態に関して高エネルギー構造状態にあり、したがって、貯蔵又は輸送の間に結晶化することがある。また、非晶質固体は、酸化に対してより感受性であり得る(Pikalら、1997年、J.Pharm.Sci.66:1312頁)。非晶質固体は、熱力学的に好ましい結晶化過程を回避するような仕方で固化させることによって得ることができる。それらはまた、既存の結晶構造を破壊することによって調製することもできる。
【0035】
結晶化及び沈殿は、溶液からの結晶固体又は非晶質固体の形成をもたらす相変化である。結晶化にはまた、1つの結晶種から別の結晶種への多形変化が含まれる。結晶化の最も一般的な種類は、物質が適当な温度で溶媒に溶解し、次いで、系を処理して過飽和を達成し、その後核生成及び結晶成長させる、溶液からの結晶化である。
【0036】
C.結晶化化合物
上記のように、溶媒は結晶化及び得られるラパマイシン類似体結晶に影響を与える。一般に、大部分の結晶化組成物は、成分の1つとして溶媒を含む。溶媒は、極性、粘度、沸点、揮発性、電荷分布、及び分子形状によって結晶の形成に影響し、且つ結晶の形成を制御し得る。溶媒の同定及び濃度は、飽和を制御する1つの方法である。実際、非溶媒(すなわち、アンチソルベント)を初期の亜飽和の溶液に単に添加することによって等温条件下で結晶化させ得る。また、ある臨界量の非溶媒が添加される場合、ラパマイシン類似体の溶解度が過剰になるので、種々の量の非溶媒が添加されるラパマイシン類似体の溶液は、結晶化及び得られる結晶を変化させ得る。非溶媒をさらに添加すると、溶液の過飽和を増大させ、したがって、成長するラパマイシン類似体結晶の成長速度を増大させる。
【0037】
混合溶媒はまた、温度とは関係なく、溶媒の一方の熱力学的活性を変化させる柔軟性を加える。したがって、溶媒組成物の範囲にわたって結晶化を単に行うことによって、水和物又は溶媒和物は所与の温度で生成され得る。例えば、メタノールに非常に富むメタノール−水溶液からの結晶化は、固体に水があまり取り込まれない結晶水和物(例えば、二水和物に対する半水和物)に有利に働き得るが、水に富む溶液は、固体中に水がより多く取り込まれた水和物に有利に働く。溶媒成分の濃度がその変数である場合に、それぞれの水和物を生成するための正確な境界は、その配列の成分を調べることによって見出される。
【0038】
一実施形態において、医薬の製造に使用するために医薬産業内で一般に許容される溶媒は、ラパマイシン類似体の結晶化において使用される。それらの溶媒の様々な混合物も使用され得る。ラパマイシン類似体の溶解度は、一部の溶媒において高く、他において低い。結晶形成が誘導されるまで、高溶解度溶媒が低溶解度溶媒と混合される中で溶液は混合され得る。溶媒には、限定されないが、水系溶媒、例えば、水若しくは水性の酸、塩基、塩、緩衝剤又はそれらの混合物、及び有機溶媒、例えば、プロトン性、非プロトン性、極性又は非極性の有機溶媒が含まれる。
【0039】
結晶化化合物の特定の用途は、さらなる要求を生じさせることがある。例えば、ラパマイシン類似体などの医薬の場合に、溶媒は、溶解度のみならず、それらの生体適合性に基づいて選択される。例えば、ラパマイシン類似体が溶媒に溶解する容易性及び該類似体に対する溶媒の有害な作用の欠如は、溶媒を選択する際に考慮すべき要因である。好ましい有機溶媒は、揮発性であるか、又は比較的低い沸点を有するか、又は真空下で除去することができ、塩化メチレンなど、微量でヒトへの投与が許容される。他の溶媒、例えば、酢酸エチル、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸、ジメチルスルホキシド、及びクロロホルム、並びにそれらの混合物も使用され得る。好ましい溶媒は、連邦公報第62巻、85号、24301〜24309頁(1997年5月)に公表されたように、米国食品医薬品局によるクラス3の残留溶媒として評価されたものである。非経口又は溶液若しくは懸濁液として投与されるラパマイシン類似体の溶媒は、より典型的には、蒸留水、緩衝生理食塩水、乳酸加リンガー溶液、又は医薬的に許容される一部の他の担体であり得る。
【0040】
ラパマイシン類似体を調製するときに使用され得る溶媒の具体的な例には、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、ギ酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、アニソール、メチルイソプロピルケトン、ニトロメタン、プロピオニトリル、2−ブタノン(すなわち、メチルエチルケトンすなわちMEK)、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸イソプロピル、それらの任意の組合せなどが含まれる。
【0041】
ラパマイシン類似体を調製するときに使用され得るアンチソルベントの具体的な例には、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサン、n−オクタン、イソ−オクタン、メチルシクロヘキサン、それらの任意の組合せなどが含まれる。
【0042】
ラパマイシン類似体を調製するときに使用され得る溶媒/アンチソルベント系の具体的な例には、アセトン/ヘプタンが含まれる。
【0043】
結晶形態の生成に影響を与える結晶化反応に、他の物質も添加してよい。これらの結晶化添加剤は、反応副生成物、関連分子、ランダムに選別された化合物(例えば、小分子ライブラリーに存在するもの)、又は医薬組成物に見出される種々の任意の他の添加剤のいずれかであり得る。それらは、核生成を促進又は制御するのいずれかのために、特定の結晶又は一組の結晶の成長又は成長速度、及び結晶化に影響を与える任意の他のパラメータを制御するために使用することができる。結晶化添加剤の影響は、それらの相対濃度に依存することがあり、したがって、本発明は、結晶化添加剤及び濃度の範囲を評価する方法を提供する。結晶化添加剤の例には、限定されないが、核生成を促進及び/又は制御する添加剤、晶癖に影響を与える添加剤、並びに多形形態に影響を与える添加剤が含まれる。
【0044】
ラパマイシン類似体を調製するときに使用され得る結晶化添加剤の具体的な例には、ラパマイシン溶媒和物、ラパマイシン脱溶媒和物、ラパマイシン水和物、及びラパマイシン脱水和物が含まれる。
【0045】
さらにもう一実施形態において、固相GRAS化合物又は他に小分子ライブラリー(例えば、固相における)を含む他の物質を使用することができる。
【0046】
結晶化容器中の界面活性剤様分子の存在は、結晶核生成に影響を与え、別個の多形形態の成長を選択的に促進し得る。したがって、界面活性剤様分子は、前処理によってか又は結晶化媒体への直接添加によってのいずれかで結晶化容器中に導入され得る。界面活性剤分子は、結晶化を制御するときにそれらの影響に対して特異的に選択されるか又はランダムに選別されるかのいずれかであり得る。さらに、界面活性剤分子の作用は結晶化容器中のその濃度に依存し、したがって、界面活性剤分子の濃度は慎重に制御されるべきである。
【0047】
一部の場合には、結晶化反応の直接の結晶種入れは、生成される結晶形態の多様性増加をもたらす。一実施形態において、粒子が結晶化反応に添加される。もう1つにおいて、ナノメートルサイズの結晶(例えば、ナノ粒子)が、結晶化反応に添加される。これらの粒子は、ナノメートルサイズか、又はそれより大きいのいずれかであり得る。
【0048】
II.結晶ラパマイシン類似体
一実施形態において、本発明には、結晶形態のラパマイシン類似体が含まれる。結晶形態のラパマイシン類似体は、本明細書において記載される様々な方法によって調製され得る。このような結晶形態は、適切な結晶形態が特定の使用に同定され得るように調製され得る。ラパマイシン類似体は、上記に示されるような式1、式2、又は式3の構造を有し得る。また、結晶ラパマイシン類似体は、プロドラッグ、塩、誘導体、又はそれらの組合せであり得る。
【0049】
一実施形態において、結晶は溶媒和物である。そのようなものとして、結晶には、その中に含まれる有機溶媒が含まれ得る。有機溶媒は、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、ギ酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、アニソール、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0050】
一実施形態において、結晶は脱溶媒和物である。そのようなものとして、結晶は、アセトン脱溶媒和物、トルエン脱溶媒和物、アセトニトリル脱溶媒和物、ギ酸エチル脱溶媒和物、酢酸イソブチル脱溶媒和物、N,N−ジメチルホルムアミド脱溶媒和物、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。
【0051】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.2、9.1、及び/又は13.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図2Aに示されるようである。
【0052】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.3、10.2、10.6、13.3、及び/又は16.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図2Bに示されるようである。
【0053】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.3、10.2、10.5、及び/又は13.3にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図3Aに示されるようである。
【0054】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約6.3及び/又は12.6にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、図3Bに実質的に示されるようである。
【0055】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.4、5.9、9.9、13.8、及び/又は15.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図4A及び/又は図4Bに示されるようである。
【0056】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.9、6.2、9.1、9.8、12.5、13.6、16.4、17.7、17.9、及び/又は21.8にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図4Eに示されるようである。
【0057】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.2、5.6、6.0、7.3、10.0、及び/又は21.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図5Aに示されるようである。
【0058】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.3、10.6、12.8、13.3、15.9、16.7、21.3、及び/又は21.9にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図5Bに示されるようである。
【0059】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約3.9、8.7、9.5、13.8、15.7、及び/又は16.9にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図6Aに示されるようである。
【0060】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約6.2、10.4、11.9、12.5、15.4、18.5、及び/又は21.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図6Bに示されるようである。
【0061】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.9、7.7、9.1、10.0、及び/又は10.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図7Aに示されるようである。
【0062】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.3、5.5、10.6、15.9、16.5、及び/又は19.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図7Bに示されるようである。
【0063】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約6.2、12.5、及び/又は15.4にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図8に示されるようである。
【0064】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.0、7.0、9.1、10.1、15.4、及び16.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図9A及び/又は図9Bに示されるようである。
【0065】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.1、7.2、9.0、9.2、10.3、11.5、15.7、及び16.3にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図10A及び/又は図10Bに示されるようである。
【0066】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約6.1、8.9、9.4、10.0、10.2、及び12.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図11A及び/又は図11Bに示されるようである。
【0067】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.3、7.2、10.5、15.8、16.6、19.1、及び/又は21.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図12Aに示されるようである。
【0068】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約6.3、9.2、12.7、13.8、及び/又は16.1にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図12Bに示されるようである。
【0069】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.4、6.0、8.8、10.0、12.1、14.1、17.6、18.4、及び/又は19.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図13Aに示されるようである。
【0070】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約6.2、9.1、10.5、12.5、14.3、16.5、18.0、20.1、21.8、及び/又は22.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図13Bに示されるようである。
【0071】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.4、10.8、11.8、16.9、及び/又は17.9にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図16に示されるようである。
【0072】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.8、9.6、11.7、13.6、15.9、17.4、20.6、及び/又は23.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図18Aに示されるようである。
【0073】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約6.4、6.8、9.3、13.8、及び/又は16.8にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図18Bに示されるようである。
【0074】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.2、10.5、13.3、15.8、16.5、及び/又は19.1にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図14Aに示されるようである。
【0075】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約6.6、7.1、8.6、9.1、12.6、14.5、及び/又は15.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図14Bに示されるようである。
【0076】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.2、10.5、10.8、15.7、16.5、及び/又は19.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図17Aに示されるようである。
【0077】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.5、6.1、8.0、10.5、12.6、13.6、16.6、及び/又は19.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図17Bに示されるようである。
【0078】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.3、10.5、13.3、15.8、及び/又は16.6にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図19Aに示されるようである。
【0079】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約6.3、8.1、12.7、及び/又は16.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図19Bに示されるようである。
【0080】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.1、10.2、16.3、17.1、19.2、20.1、及び/又は20.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図15Aに示されるようである。
【0081】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.1、6.2、10.2、12.4、16.4、及び/又は17.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図15Bに示されるようである。
【0082】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約4.6、5.2、9.3、16.5、17.0、及び/又は18.6にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図20Aに示されるようである。
【0083】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約3.8、6.0、9.2、9.9、11.8、12.4、及び/又は13.7にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図20Bに示されるようである。
【0084】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約5.3、10.1、10.5、15.8、16.5、19.1、19.6、及び/又は21.1にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図21Aに示されるようである。
【0085】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、約6.6、7.1、9.2、14.6、及び/又は15.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する。また、その粉末X線回折パターンは、実質的に図21Bに示されるようである。
【0086】
全ての種類の機器化と同様に、装置の種類及び操作条件はデータに影響を与え得る。そのようなものとして、粉末X線回折データは、装置及び条件に依存してわずかに変えられ得る。したがって、粉末X線回折データは、0.5、より好ましくは0.2、最も好ましくは約0.1以内に正確であり得る。また、結晶構造の特徴づけには、粉末X線回折パターンに依存して、少なくとも2ピーク、3ピーク、4ピーク、5ピーク、6ピーク、7ピーク、8ピーク、9ピーク、及び/又は10ピークが含まれ得る。
【0087】
また、粉末X線回折パターンは、約1.54056Åにおいて銅−Kアルファ−1(CuKα1)放射線を用いて測定した。また、粉末X線回折パターンは一緒に測定することができる。また、CuKα1及びCuKα2放射線を、分解されないためのものである1.54178Åの波長で用いることができる。
【0088】
単結晶単位は、グラファイトモノクロメータで測定できるが、ホイルフィルターなしである。波長は単結晶に対して0.71073Åであり得る。また、0.71703Åが分解されないMo放射線に対して用いられるか、又は0.70930Åが専らKα1に対して用いられ得る。
【0089】
一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体は、治療有効量で存在する。
【0090】
III.結晶ラパマイシン類似体の調製
結晶ラパマイシン類似体は、本明細書に記載される方法によって調製され得る。そのようなものとして、結晶化を促進するために種々の一般的なパラメータが制御され得る。このような一般的な処理パラメータには、限定されないが、温度調整;時間調整;pH調整;目的化合物の量又は濃度調製;成分の量又は濃度調整;成分同一性(例えば、1種以上のさらなる成分の添加);溶媒除去速度調整;核生成事象の導入;沈殿事象の導入;溶媒の蒸発制御(例えば、圧力値調整又は蒸発表面積調整);及び溶媒組成調整が含まれる。他の結晶化方法には、昇華、蒸気拡散、結晶溶媒和物の脱溶媒和、及び粉砕が含まれる(Guillory,J.K、Polymorphism in Pharmaceutical Solids、186、1999年)。
【0091】
一実施形態において、ラパマイシン類似体の結晶化は、結晶化を誘導するために温度を調節することによって、又は温度を循環させることによって行うことができる。そのようなものとして、結晶化過程には、1種以上のアンチソルベントを含んでも含まなくてもよい1種以上の溶媒中にラパマイシン類似体を溶解させる段階が含まれる。溶解度は、組成(例えば、成分の同一性)によって、及び/又は温度によって一般に制御される。温度制御は、工業用晶析装置において最も一般的であり、ここで、溶解度が過剰である状態に自由に溶解する状態から物質の溶液が冷却され、それにより過飽和化される。例えば、結晶ラパマイシン類似体は、温度(T1)、好ましくは全ての固体が溶液中に完全に溶解する温度に加熱することによって調製され得る。次いで、その組成物はより低い温度(T2)に冷却される。次いで、固体の存在が測定され得る。最初の結晶又は沈殿物が検出されるときに温度を記録するために温度センサーが使用され得る。
【0092】
一実施形態において、多くの数又は配列のラパマイシン類似体組成物を、温度に関して同時に別個に処理することができ、各試料に対する小ヒーター、冷却コイル、及び温度センサーが装備及び制御される。各試料が同じ組成を有し、実験が所望の固体形態を生成する温度プロファイルを見出すために多数のそれらのプロファイルをサンプリングするように設計される場合、この手法は有用である。一実施形態において、各試料の組成が制御され、組成物の配列の全体が単位として加熱され、冷却される。
【0093】
通常、結晶核生成及び成長期の間に、いくつかの別個の温度及び/又は温度プロファイルが試験される。温度は、静的又は動的な方法のいずれかで制御され得る。静的温度は、1つの設定されたインキュベーション温度が結晶化を通して用いられることを意味する。他に、温度勾配が用いられ得る。例えば、温度は結晶化を通して一定の速度で低下させることができる。さらに、温度は、静的及び動的な要素の両方を有するような方法で制御することができる。例えば、結晶化反応剤の混合の間に一定温度(例えば、60℃)が維持される。反応剤の混合が完了後、制御された温度低下が開始される(例えば、時間とともに60℃から約25℃へ)。
【0094】
一実施形態において、ラパマイシン類似体の結晶化は、結晶化を誘導するために組成物をインキュベートする時間を調節することによって行われ得る。したがって、異なるラパマイシン類似体組成物は、結晶化を誘導及び終了させる様々な時間長(例えば、5分、60分、48時間など)でインキュベートされ得る。相変化は時間依存性である可能性があるので、ラパマイシン類似体の結晶化を時間の関数としてモニターすることが有利であり得る。
【0095】
多くの場合に、時間制御は非常に重要であり、例えば、結晶化する最初の固体形態は最も安定ではなく、むしろその後、ある期間にわたって安定な形態に変換され得る準安定であることがある。この過程は「熟成(aging)」と呼ばれる。熟成はまた、結晶サイズ及び/又は癖の変化に関連し得る。この種の熟成現象はオストワルド熟成(ripening)と呼ばれる。したがって、異なる時間で結晶化組成物をインキュベートすることは、所望の結晶生成物に結晶化を促進するのみならず、結晶化を誘導するために用いられ得る。
【0096】
一実施形態において、ラパマイシン類似体の結晶化は、結晶化を誘導又は促進するために組成物のpHを調節することによって行われ得る。ラパマイシン類似体組成物のpHは、生成される結晶の物理状態及び特性を決定し得る。pHは、当該技術分野で標準であるよく知られている緩衝剤などの無機及び有機の酸及び塩基を添加することによって制御され得る。試料のpHは、試料の容量に従って修正された標準pHメーターでモニターすることができる。
【0097】
一実施形態において、ラパマイシン類似体の結晶化は、結晶化を誘導又は促進するために組成物中のラパマイシン類似体の濃度を調節することによって行われ得る。過飽和は、結晶核生成及び成長の両方に対する熱力学的推進力であり、したがって、結晶ラパマイシン類似体を調製するときに重要な変数である。過飽和は、より多くの溶質(例えば、ラパマイシン類似体)が溶液中に懸濁されるように熱力学的溶解度平衡からのずれである。したがって、飽和の程度は、温度並びにラパマイシン類似体及び他の成分、例えば、付加体の量又は濃度によって制御され得る。一般に、飽和の程度は、準安定領域で制御することができ、準安定限界を超えた場合に、核生成が誘導される。
【0098】
ラパマイシン類似体及び/又は他の成分の量又は濃度は、得られる固体形態の物理状態及び特性に大きな影響を与え得る。そのようなものとして、所与の温度に対して、核生成及び成長は、開始溶液の組成に依存する様々な量の過飽和で生じる。核生成及び成長速度は、飽和が増大するとともに増大し、これは晶癖に影響を与え得る。例えば、急速成長は、結晶化の熱の放出を吸収しなければならない。この熱作用は、結晶化の間の樹枝状結晶の形成の原因となる。結晶の顕微鏡的形状は、樹枝状結晶及びさらに二次樹枝状結晶の存在によって大いに影響される。
【0099】
ラパマイシン類似体及び溶媒の相対量が有する第2の作用は、得られる固体形態の化学的組成である。例えば、濃厚溶液から形成される最初の結晶は、希薄溶液から形成されるものより高い温度で形成される。平衡固相は、相図においてより高い温度からのものであり、高温で水溶液から沈殿する場合、濃厚溶液は半水和物の結晶を最初に形成することがある。しかし、希薄溶液で開始する場合、二水和物が形成される最初であることがある。この場合、ラパマイシン類似体/溶媒相図は、高温で二水和物が半水和物に分解するものである。これは通常の場合であり、一般に観察される溶媒和物に通常当てはまる。
【0100】
一実施形態において、ラパマイシン類似体の結晶化は、結晶化を誘導又は促進するために組成物中の成分、例えば、溶媒及び/又は付加物の同一性を調節することによって行われ得る。組成物中の成分の同一性は、結晶化のほとんど全ての面に大きな影響を与え得る。成分同一性は、得られる結晶の物理状態及び特性のみならず、結晶核生成及び成長を促進又は抑制し得る。したがって、成分は、その意図された作用が結晶形態のラパマイシン類似体の形成を誘導、抑制、阻止、又は反転することである物質であり得る。
【0101】
成分は、ラパマイシン類似体の結晶、非晶質固体、水和物、溶媒和物、又は塩形態の形成を制御し得る。成分はまた、多形形態及び晶癖などの形成される結晶の内部及び外部構造に影響を与え得る。成分の例には、限定されないが、賦形剤、溶媒、塩、酸、塩基、気体;小分子、例えば、ホルモン、ステロイド、ヌクレオチド、ヌクレオシド、及びアミノ酸;大分子、例えば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドとポリヌクレオチドとの結合体、タンパク質、ペプチド、ペプチド類似体、及び多糖;他の薬剤;結晶化添加剤、例えば、核生成を促進及び/又は制御する添加剤、晶癖に影響を与える添加剤、及び多形形態に影響を与える添加剤;粒子又は結晶サイズに影響を与える添加剤;結晶又は非晶質固体形態を構造的に安定化させる添加剤;固体形態を溶解させる添加剤;結晶化又は固体形成を抑制する添加剤;光学的に活性な溶媒;光学的に活性な反応剤;及び光学的に活性な触媒が含まれる。
【0102】
一実施形態において、ラパマイシン類似体の結晶化は、結晶化を誘導又は促進するために溶媒除去速度及び/又はアンチソルベント除去速度を調節することによって行われ得る。溶媒除去の制御は、飽和の制御と互いに関係させられる。溶媒が除去されると、ラパマイシン類似体及び低揮発性成分の濃度は高くなる。残存する組成物に依存して、飽和の程度は、残存する組成物の極性及び粘度などの要因に依存して変化する。例えば、溶媒が除去されると、準安定限界に到達し、核生成及び結晶成長が生じるまでラパマイシン類似体の濃度は、上昇し得る。
【0103】
溶媒除去速度は、蒸発が生じ得る下で温度及び圧力並びに表面積によって制御され得る。例えば、溶媒は、所定の温度及び圧力での蒸留によって除去することができるか、又は溶媒は、単に室温で溶媒を蒸発させることによって除去することができる。一部の場合には、溶媒吸収剤を使用することができる。
【0104】
一実施形態において、ラパマイシン類似体の結晶化は、核形成又は沈殿事象を導入することによって行われ得る。一般に、これには、あるエネルギー形態、例えば、超音波又は機械的刺激下に過飽和ラパマイシン類似体溶液を置くこと、或いはさらなる成分を添加することによって過飽和を誘導することによることが含まれる。
【0105】
結晶核生成は、液体、非晶質相、気体からの、又は異なる結晶固相からの結晶固相の形成である。核生成は、結晶化方法の特徴を定め、したがって、商業的結晶化方法を設計する際に最も重要な要素の1つである(The Encyclopedia of Chemical Technology、7 kirk−Othomer(第4版、692頁において)(1993年))。
【0106】
一次核生成は、不均一又は均一機構によって起こることができ、これらの両方は、結晶成分の連続的な混合による結晶形成を含む。一次核生成は、ラパマイシン類似体の既存の結晶を含まないが、結晶の自然形成から生じる。一次核生成は、準安定限界を超えて飽和を増加させることによって、又は飽和の程度が核生成による準安定限界以下である場合に誘導され得る。核生成事象には、機械的刺激、例えば、結晶化媒体と晶析装置の回転ローターとの接触及びエネルギー源、例えば、音響(超音波)、電気、又はレーザーエネルギーへの暴露が含まれる(Garetzら、1996年Physical review Letters 77:3475頁)。一次核生成はまた、一次核生成促進剤、例えば、ラパマイシン類似体の固体形態以外の物質を添加することによって誘導され得る。ラパマイシン類似体の表面エネルギーを減少させる添加剤は、核生成を誘導し得る。核生成に対する障壁が固体−液体表面の形成後のエネルギー増加によって引き起こされるので、表面エネルギーの減少は核生成に有利に働く。したがって、核生成は、結晶化チャンバーを前処理することによってか、直接添加することによってのいずれかで界面活性剤様分子を導入することによって結晶化媒体の界面張力を調整することで制御され得る。界面活性剤分子の核生成作用は、それらの濃度に依存し、したがって、このパラメータは、慎重に制御されるべきである。このような張力調整添加剤は、界面活性剤に限定されない。ラパマイシン類似体に関連する多くの化合物は、有意な表面活性を有し得る。添加剤を含む他の不均一核生成には、種々の物質、例えば、固相賦形剤又はさらにラパマイシン類似体の合成又は処理の間に残される不純物の固体粒子が含まれる。
【0107】
二次核生成には、固体形態、好ましくは、結晶ラパマイシン類似体に望まれる特性を有する結晶である二次核生成促進剤で結晶化媒体を処理することが含まれる。所望の小さい結晶形態のラパマイシン類似体は、二次核生成促進剤として用いることができる。様々な物理状態の複数のラパマイシン類似体の核生成結晶種で直接に結晶種を入れることは、異なる組成物における異なる結晶形態の形成を誘導する手段を提供する。一実施形態において、ラパマイシン類似体以外の粒子が結晶化組成物に添加される。もう一実施形態において、ラパマイシン類似体のナノメートルサイズの結晶(例えば、ナノ粒子)が試料に添加される。
【0108】
結晶形態のラパマイシン類似体、例えば、ABT−578(すなわち、ゾタロリムス)は、アセトン、トルエン、アセトニトリル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、及びアニソールを含む有機溶媒において発見されている。アセトニトリル溶媒は、ラパマイシンアセトニトリル溶媒和物を結晶化させるのに使用することができ、次いで、これは結晶からアセトニトリルを除去するために乾燥(例えば、圧力、温度及び蒸気環境の適切な乾燥条件)後、結晶脱溶媒和物(すなわち、アセトニトリル脱溶媒和された溶媒和物)を形成する。アセトニトリル脱溶媒和された結晶溶媒和物は、現在実施されているように、非晶質ABT−578に対する酸化防止剤としてBHTの添加を無くさせる化学安定性特性を保有することができる。さらに、ABT−578の不純物プロファイルは、本明細書に記載されるように、製造工程において結晶化段階を取り込むことによって著しく改善され得る。図に示される粉末X線回折(PXRD)パターンの一部において、約38及び44における2つのピークはX線ホルダー由来である。
【0109】
結晶ラパマイシン類似体を調製する様々な方法がある。一実施形態において、結晶ラパマイシン類似体薬剤物質を調製する方法には、医薬的に許容される溶媒又は溶媒の混合物からラパマイシン類似体を結晶化させる段階が含まれる。他の実施形態において、結晶ラパマイシン類似体薬剤物質を調製する方法には、有機の溶媒又は溶媒の混合物からラパマイシン類似体を結晶化させる段階が含まれる。当然、当業者であれば、本発明の実施形態で利用され得る全ての溶媒(且つ本明細書において列挙された溶媒に限定されない)を理解することができるであろう。
【0110】
一実施形態において、本発明には、結晶形態のラパマイシン類似体を調製する方法が含まれる。このような方法は以下を含む:ラパマイシン類似体を少なくとも1種の有機媒体と混合して混合物を形成する段階;ラパマイシン類似体が結晶化するまで混合物をインキュベートする段階;及び結晶ラパマイシン類似体を有機媒体から回収する段階。
【0111】
一実施形態において、有機媒体は、混合物を形成するために少なくとも1種の溶媒を含み得る。そのようなものとして、結晶形態のラパマイシン類似体を調製する方法には、ラパマイシン類似体を該溶媒中に溶解させ、ラパマイシン類似体が結晶化するまで該溶媒をインキュベートする段階が含まれる。
【0112】
一実施形態において、該方法には、溶液中で結晶ラパマイシン類似体のスラリーを形成させる段階が含まれる。一実施形態において、該方法には、ラパマイシン類似体が結晶化するまでラパマイシン類似体混合物を撹拌する段階が含まれる。一実施形態において、該方法には、ラパマイシン類似体溶液を飽和させる段階が含まれる。これには、過飽和ラパマイシン類似体溶液を形成する段階が含まれ得る。
【0113】
一実施形態において、該方法には、結晶ラパマイシン類似体を形成するのに補助するアンチソルベントの使用が含まれる。このような方法には、少なくとも1種のアンチソルベントをラパマイシン類似体及び溶媒と混合して二相混合物を形成し、二相混合物をインキュベートして溶媒中に存在する大量のラパマイシン類似体とアンチソルベント中に存在する少量のラパマイシン類似体とに分割された液−液相を生じさせる段階が含まれる。場合によって、該溶媒は、結晶が析出する前にアンチソルベントから分離され得る。
【0114】
一実施形態において、有機媒体は、トルエン、アセトニトリル、エタノール、酢酸イソブチル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、及びそれらの組合せである。
【0115】
一実施形態において、溶媒は有機溶媒である。そのようなものとして、有機溶媒は極性有機溶媒であり得る。極性有機溶媒の例には、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、ギ酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、又はそれらの任意の組合せが含まれる。好ましくは、極性有機溶媒はアセトンである。アンチソルベントの例には、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサン、n−オクタン、イソ−オクタン、メチルシクロヘキサン、又はそれらの任意の組合せが含まれる。好ましくは、アンチソルベントはヘプタンである。好ましくは、有機媒体は、医薬調製物を製造するために医薬的に許容される。例えば、有機媒体は、医薬品グレード組成物を調製するために許容される医薬的に許容される溶媒であり得る。
【0116】
一実施形態において、ラパマイシン類似体溶液(例えば、混合物、二相など)は、約−20℃から約20℃、より好ましくは約−10℃から約10℃、さらに好ましくは約−5℃から約5℃、最も好ましくは約0℃の温度で形成、インキュベート、撹拌、混合、スラリー化、飽和、及び/又は結晶化される。
【0117】
一実施形態において、ラパマイシン類似体溶液(例えば、混合物、二相など)は、約10℃から約40℃、より好ましくは約12℃から約32℃、さらに好ましくは約20℃から約25℃、最も好ましくは約22℃の温度で形成、インキュベート、撹拌、混合、スラリー化、飽和、及び/又は結晶化される。
【0118】
一実施形態において、ラパマイシン類似体溶液(例えば、混合物、二相など)は、約0.1から約35時間、より好ましくは約1から約30時間、さらに好ましくは約5から約25時間、さらになお好ましくは約10から約20時間、最も好ましくは約15時間形成、インキュベート、撹拌、混合、スラリー化、飽和、及び/又は結晶化される。
【0119】
一実施形態において、有機媒体と混合されたラパマイシン類似体は結晶形態である。例えば、結晶形態のラパマイシン類似体は、アセトニトリル溶媒和物、アセトニトリル脱溶媒和された溶媒和物(すなわち、アセトニトリル脱溶媒和物)であり得る。他に、ラパマイシン類似体は、非晶質状態であり得る。
【0120】
一実施形態において、有機媒体中のラパマイシン混合物は、第2の有機媒体と混合され、ここで、さらに処理される(例えば、インキュベート、撹拌、混合、スラリー化、飽和、及び/又は結晶化される)混合物には、第2の有機媒体が含まれる。例えば、第1の有機媒体は、アセトニトリル、トルエン、エタノール、酢酸イソブチル、アニソール、又はそれらの組合せであり得る。第2の有機媒体の例は、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、アニソール、及びそれらの組合せであり得る。
【0121】
一実施形態において、アセトニトリル溶媒和物の形態における結晶ラパマイシン類似体は、約0℃で溶解ラパマイシン類似体、アセトン及びヘプタンの二相混合物をインキュベートすることによって調製され得る。したがって、ラパマイシン類似体は、液相を飽和させるためにアセトン及びヘプタンを含むバイアルに添加され得る。ラパマイシン類似体が、ラパマイシン類似体−アセトンに富む下相とヘプタンに富む上相とを生じる溶液中に溶解したときに液−液相が生じる。例えば、二相混合物は、結晶をバイアルの底部に観察することができるまで、約0℃で約0.1から約10日間又はそれより長くインキュベートされ得る。次いで、結晶は、粉末X線回折で分析することができ、これは図2Aで示される。結晶は周囲温度で平衡化することができ、その後、真空(水銀約3インチ)下、約30℃でさらに乾燥される。乾燥された結晶は、粉末X線回折で分析することができ、これは図3Aに示される。
【0122】
一実施形態において、アセトン溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体は、周囲温度でアセトンに非晶質ラパマイシン類似体を溶解させ、結晶固体が観察されるまで得られる溶液を約5℃でインキュベートすることによって調製され得る。この結晶は粉末X線回折で分析でき、これは図2Bに示される。結晶は、周囲温度で平衡化することができ、その後、真空(水銀約3インチ)下、30℃でさらに乾燥される。乾燥された結晶は、粉末X線回折で分析することができ、これは図3Bに示される。
【0123】
一実施形態において、トルエン溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体が調製され得る。そのようなものとして、ラパマイシン類似体トルエン溶媒和物の結晶は、トルエンに非晶質ラパマイシン類似体を溶解させ、溶液を形成することによって調製され得る。この溶液は、約22℃で約15時間又は結晶固体の濃厚スラリーが観察され得るまで撹拌され得る。また、結晶は、アセトニトリル溶媒和物などの結晶ラパマイシン類似体を用いて組成物に結晶種を入れ、結晶化を誘導することによって調製され得る。次いで、結晶は粉末X線回折で分析することができ、これは図4Aで示される。
【0124】
一実施形態において、もう1つのアセトニトリル溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体が調製され得る。そのようなものとして、アセトニトリル溶媒和物の結晶は、アセトニトリルを非晶質ラパマイシン類似体で、約22℃において飽和させ、約0℃で約2時間、又は結晶が形成するまでインキュベートすることによって生成され得る。次いで、結晶は粉末X線回折で分析することができ、これは図5Aで示される。図6Aでは、アセトニトリル溶媒和物を乾燥させることによって得ることができるラパマイシン類似体アセトニトリル脱溶媒和物についての粉末X線回折パターン分析データが示される。
【0125】
一実施形態において、ギ酸エチル溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体が調製され得る。そのようなものとして、ラパマイシン類似体ギ酸エチルの結晶は、約0℃で、ギ酸エチル中でアセトニトリル溶媒和物の湿ケーキをスラリー化することによって生成され得る。次いで、結晶は粉末X線回折で分析することができ、これは図7Aで示される。
【0126】
一実施形態において、酢酸イソプロピル溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体が調製され得る。そのようなものとして、ラパマイシン類似体酢酸イソプロピル溶媒和物結晶は、約0℃で、酢酸イソプロピル中でアセトニトリル溶媒和物の湿ケーキをスラリー化することによって生成され得る。
【0127】
一実施形態において、酢酸イソブチル溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体が調製され得る。そのようなものとして、ラパマイシン類似体酢酸イソブチルの結晶は、非晶質ラパマイシン類似体をバイアルに添加し、バイアル中に酢酸イソブチルを入れて溶解を可能にすることによって調製され得る。次いで、溶液は約0℃で約16時間、又は結晶スラリーが得られるまでインキュベートされ得る。次いで、結晶は粉末X線回折で分析することができ、これは図9Aで示される。
【0128】
一実施形態において、エタノール溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体が調製され得る。そのようなものとして、ラパマイシン類似体エタノール溶媒和物の結晶は、バイアルに非晶質ラパマイシン類似体を添加し、バイアル中にエタノール(200アルコール度数)を入れ、溶解を可能にすることによって調製され得る。溶液は、約15時間後にアセトニトリル脱溶媒和物で結晶種を入れることができ、次いで、結晶スラリーが得られるまで約0℃でさらに約16時間インキュベートすることができる。
【0129】
一実施形態において、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体が調製され得る。そのようなものとして、ラパマイシン類似体N,N−ジメチルホルムアミド溶媒和物の結晶は、約0℃で、N,N−ジメチルホルムアミド中でアセトニトリル溶媒和物の湿ケーキをスラリー化することによって生成され得る。次いで、結晶は粉末X線回折で分析することができ、これは図10Aで示される。
【0130】
一実施形態において、アニソール溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体が調製され得る。そのようなものとして、ラパマイシン類似体アニソール溶媒和物の結晶は、約0℃で、アニソール中でアセトニトリル溶媒和物の湿ケーキをスラリー化することによって生成され得る。次いで、結晶は粉末X線回折で分析することができ、これは図11Aで示される。
【0131】
IV.結晶ラパマイシン類似体組成物
本発明の結晶ラパマイシン類似体は、任意の医薬組成物、例えば、非晶質ラパマイシン類似体と一緒に通常用いられる組成物に調製され得る。したがって、結晶ラパマイシン類似体は、ポリマー組成物、例えば、ステントコーティングなどに配合され得る。ポリマー組成物には、親水性、疎水性、生分解性、非生分解性、及びそれらの任意の組合せであるポリマーが含まれ得る。ポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリカルボン酸、セルロースポリマー、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、マレイン酸無水物ポリマー、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、グリコサミノグリカン、多糖類、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ吉草酸ヒドロキシブチル、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、並びに前述の混合物及びコポリマーからなる群から選択され得る。また、ポリマー分散液、例えば、ポリウレタン分散液(BAYHYDROLなど)及びアクリル酸ラテックス分散液も使用することができる。
【0132】
使用され得る生分解性ポリマーには、ポリ(L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリグリコリド、ポリ(ジアキサノン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリオルトエステル、コポリマー[ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリヒドロキシ(ブチレート−co−バレレート)、ポリグリコリド−co−トリメチレンカーボネート]、ポリ酸無水物、ポリホスホエステル、ポリホスホエステル−ウレタン、ポリアミノ酸、ポリシアノアクリレート、生体分子(フィブリン、フィビリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンヒアルロン酸)、及びそれらの任意の組合せが含まれる。生体安定性ポリマーも使用することができ、例えば、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー及びコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー(例えば、スチレンアクリロニトリルコポリマー、エチレンメチルメタクリレートコポリマー、エチレンビニルアセテート)、ポリエーテル、レーヨン、セルロース系物質(例えば、酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース)、パリレン及びその誘導体、並びにそれらの任意の組合せがある。
【0133】
使用され得る他のポリマーには、ポリ(MPC:LAM:HPMA:TSMA)を含むMPCサブユニットが含まれ、ここで、w、x、y、及びzは、該ポリマーを調製するために供給原料に使用されるモノマーのモル比を表し、MPCは単位の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを表し、LMAは単位のラウリルメタクリレートを表し、HPMAは単位の2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを表し、TSMAは単位の3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートを表す。
【0134】
さらに、結晶ラパマイシン類似体は、任意の医薬組成物に調製され得る。このような医薬組成物には、医薬的に許容される担体又は賦形剤を含むことができ、これは、経口的、直腸的、非経口的、槽内、膣内、腹腔内、局所的(粉末、軟膏、滴薬又は経皮パッチによるなど)、頬側、口腔若しくは鼻腔スプレーとして、又は脈管系内に設置されたステント内などのように局所的に投与することができる。語句「医薬的に許容される担体」は、非毒性の固体、半固体若しくは液体充填剤、希釈剤、カプセル化材又は任意の種類の配合補助剤をいう。用語「非経口的」は、静脈内、動脈内、筋内、腹腔内、胸骨内、皮下及び関節内の注射、輸液、並びに例えば、脈管系内への設置を含む投与の方式をいう。
【0135】
医薬組成物には、医薬的に許容される滅菌の水性若しくは非水性の溶液、分散液、懸濁液又は乳濁液、並びに使用直前に滅菌注射用溶液又は分散液に再構成するための滅菌粉末が含まれ得る。好適な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、及び注射用オレイン酸エチルなどの有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材の使用、分散液の場合に必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0136】
医薬組成物はまた、アジュバント、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤を含んでもよい。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含有させることによって確保することができる。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましいこともある。注射用医薬形態の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を含有させることによって生じさせることができる。
【0137】
一部の場合には、結晶ラパマイシン類似体の効果を長くさせるために、皮下又は筋内注射からの結晶ラパマイシン類似体の吸収を遅くさせることが望ましい。これは、水難溶解度を有する結晶又は非晶質物質の液体懸濁液の使用によって達成され得る。そのとき、結晶ラパマイシン類似体の吸収速度はその溶解速度に依存し、これは同様に、結晶サイズ及び結晶形態に依存することがある。他に、非経口投与される薬剤形態の吸収遅延は、油ビヒクルにその薬剤を溶解又は懸濁させることによって達成される。
【0138】
注射用デポー剤は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中の薬剤のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作られる。薬剤対ポリマーの比及び用いられる特定のポリマーの性質に依存して、薬剤放出速度は制御され得る。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)及びポリ(酸無水物)が含まれる。デポー注射用配合物はまた、体組織に適合するリポソーム又は微エマルジョン中に薬剤を閉じ込めることによっても調製される。
【0139】
注射用配合物は、例えば、細菌保持フィルターを通したろ過によってか、又は使用直前に滅菌水若しくは他の滅菌注射用媒体に溶解若しくは分散させ得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を取り込ませることによって滅菌することができる。
【0140】
経口投与のための固体剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、粉末、及び顆粒が含まれる。このような固体剤形において、結晶ラパマイシン類似体は、少なくとも1種の不活性な、医薬的に許容される賦形剤若しくは担体(クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムなど)及び/又は(a)充填剤若しくは増量剤(デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸など)、(b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシアなど)、(c)保湿剤(グリセロールなど)、(d)崩壊剤(寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムなど)、(e)溶液緩染剤(パラフィンなど)、(f)吸収促進剤(四級アンモニウム化合物)、(g)湿潤剤(例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセリン)、(h)吸収剤(カオリン及びベントナイトクレーなど)、及び(i)潤滑剤(タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、並びにそれらの混合物と一緒に混合される。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、該剤形は緩衝剤を含んでもよい。
【0141】
ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用いて、軟、半固体及び硬充填ゼラチンカプセル又は液体充填カプセル中の充填剤として、同様の種類の固体組成物を用いることもできる。
【0142】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、及び顆粒の固体剤形は、コーティング剤及びシェル(腸溶コーティング及び医薬配合技術分野でよく知られている他のコーティングなど)で調製され得る。それらは不透明剤を場合によって含んでもよく、活性成分(複数可)のみを放出する(又は優先的に、場合によって遅延方式で、腸管の特定の部分において)組成物からなるものであることもできる。使用され得る包埋組成物の例には、ポリマー性物質及びワックスが含まれる。薬剤を含むそれらの包埋組成物は、医療用具(ステント、移植片、カテーテル、及びバルーンなど)上に配置させることができる。適切な場合、結晶ラパマイシン類似体は、1種以上の上記賦形剤と一緒のマイクロカプセル化形態であることもできる。
【0143】
経口投与のための液体剤形には、医薬的に許容される乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤が含まれる。結晶ラパマイシン類似体に加えて、液体剤形は、当該技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤[例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物]を含んでもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味料、並びに芳香剤を含むこともできる。
【0144】
活性化合物に加えて、懸濁液は、懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールとソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、及びトラガカント、並びにそれらの混合物を含んでもよい。
【0145】
局所投与には、肺及び眼の表面を含む皮膚又は粘膜への投与が含まれる。吸入のためのものを含む局所投与のための組成物は、加圧されていても、非加圧であってもよい乾燥粉末として調製され得る。非加圧粉末組成物において、微粉化形態の活性成分は、例えば、直径100マイクロメートルまでのサイズを有する粒子を含む比較的大きなサイズの医薬的に許容される不活性担体と混合して用いてもよい。好適な不活性担体には、ラクトースなどの糖が含まれる。活性化合物の粒子の少なくとも95重量%が約0.01から約10マイクロメートルの範囲の有効粒子サイズを有することが望ましい。皮膚への局所使用のための組成物には、軟膏、クリーム、ローション、及びゲルも含まれる。
【0146】
他に、組成物は加圧されていてもよく、窒素などの圧縮ガス、又は液化ガス推進剤を含み得る。液化推進媒体及びまさに全組成物は、活性成分が実質的ないかなる程度にもその中に溶解しないようにあることが好ましい。加圧組成物は界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、液体若しくは固体の非イオン性界面活性剤であっても、固体アニオン性界面活性剤であってもよい。ナトリウム塩の形態の固体アニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0147】
局所投与のさらなる形態は、眼に対してであり、眼の免疫介在状態(例えば、自己免疫疾患、アレルギー性又は炎症性状態)及び角膜移植の治療のためなどである。結晶ラパマイシン類似体は、例えば、前眼房、後眼房、硝子体、眼房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜、及び強膜などの眼の角膜及び内部領域に浸透することを可能にする十分な時間の間、眼表面と接触している状態で維持されるように、該化合物は医薬的に許容される眼のビヒクル中で送達される。医薬的に許容される眼のビヒクルは、例えば、軟膏、植物油又はカプセル化材であってもよい。
【0148】
直腸又は膣投与のための組成物は、室温で固体であるが体温で液体であり、したがって、直腸又は膣腔において融解し、活性化合物を放出する好適な非刺激性賦形剤又は担体(例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、若しくは坐剤ワックス)と結晶ラパマイシン類似体とを混合することによって調製され得る坐薬又は保持浣腸剤であることが好ましい。
【0149】
結晶ラパマイシン類似体は、リポソームの形態で投与することもできる。当該技術分野で知られているように、リポソームは一般に、リン脂質又は他の脂質物質由来である。リポソームは、水性媒体に分散したモノ又はマルチラメラ水和液晶によって形成される。リポソームを形成することができる非毒性の、生理学的に許容され、代謝可能な任意の脂質が使用され得る。リポソーム形態の本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、保存剤、賦形剤などを含み得る。好ましい脂質は、リン脂質及びホスファチジルコリン(レシチン)(天然及び合成の両方)である。リポソームを形成する方法は、当該技術分野で知られている(Prescott編、Methods in Cell Biology、第XIV巻、Academic Press、New York、N.Y.(1976年);33頁以下を参照されたい)。
【0150】
結晶ラパマイシン類似体は、ポリマー性化合物でコーティングされたステントに適用することができる。ステントのポリマーコーティングへの該化合物又は薬剤の取込みは、ポリマー性コーティングされたステントを該化合物又は薬剤を含む溶液に十分な時間(例えば、5分など)浸漬し、次いで、好ましくは空気乾燥によって十分な時間(例えば、30分など)コーティングされたステントを乾燥させることによって実施され得る。次いで、該化合物又は薬剤を含むポリマーコーティングされたステントは、バルーンカテーテルからの展開によって冠状血管に送達され得る。ステントに加えて、本発明の薬剤を脈管系に導入するために使用され得る他の用具には、限定されないが、移植片、カテーテル、及びバルーンが含まれる。さらに、本発明の薬剤の代わりに使用され得る他の化合物又は薬剤には、限定されないが、A−94507及びSDZ RAD(a.k.a.Everolimus)が含まれる。
【0151】
結晶ラパマイシン類似体は、他の薬理物質と併用して使用され得る。再狭窄を予防するのに有効であり得る薬理物質は、抗増殖剤、抗血小板薬、抗炎症薬、抗血栓剤、及び血栓溶解剤のカテゴリーに分類され得る。これらのクラスはさらに細分され得る。例えば、抗増殖剤は抗分裂剤であり得る。抗分裂剤は、細胞分裂を阻害し又はそれに影響を与え、それにより細胞分裂に本来関与する過程は起こらない。抗分裂剤の1つのサブクラスにはビンカアルカロイドが含まれる。ビンカアルカロイドの代表的な例には、限定されないが、ビンクリスチン、パクリタクセル、エトポシド、ノコダゾール、インジルビン、及びアントラサイクリン誘導体(例えば、ダウノルビシン、ダウノマイシン、及びプリカマイシンなど)が含まれる。抗分裂剤の他のサブクラスには、抗分裂アルキル化剤(例えば、タウロムスチン、ボフムスチン、及びフォテムスチンなど)及び抗分裂代謝産物(例えば、メトトレキサート、フルオロウラシル、5−ブロモデオキシウリジン、6−アザシチジン、及びシタラビン)が含まれる。抗分裂アルキル化剤は、DNA、RNA、又はタンパク質を共有結合的に修飾することによって細胞分裂に影響を与え、それによりDNA複製、RNA転写、RNA翻訳、タンパク質合成、又は前述の組合せを阻害する。
【0152】
抗血小板薬は、(1)表面、通常は血栓形成表面への血小板の付着を阻害する、(2)血小板の凝集を阻害する、(3)血小板の活性化を阻害する、又は(4)前述の組合せによって作用する治療薬である。血小板の活性化は、血小板が静止期の休止状態から、血小板が血栓形成表面との接触によって引き起こされるいくつかの形態学的変化を受ける状態に変換される過程である。これらの変化には、膜受容体に結合している、仮足の形成を伴う血小板の形状の変化並びに小分子及びタンパク質、例えば、ADP及び血小板因子4などの分泌の変化が含まれる。血小板の付着の阻害剤として作用する抗血小板薬には、限定されないが、エプチフィバチド、チロフィバン、gpIIbIIIa又はαvβ3への結合を阻害するRGD(Arg−Gly−Asp)に基づくペプチド、gpIIaIIIb又はαvβ3への結合を遮断する抗体、抗P−セレクチン抗体、抗E−セレクチン抗体、それぞれのリガンドへのP−セレクチン又はE−セレクチン結合を遮断する化合物、サラチン、及び抗フォンウィルブランド因子抗体が含まれる。ADP介在血小板凝集を阻害する薬剤には、限定されないが、ジスアグレギン及びシロスタゾールが含まれる。
【0153】
抗炎症性薬も使用することができる。これらの例には、限定されないが、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エストラジオール、フルチカゾン、クロベタゾール、並びに非ステロイド系抗炎症薬、例えば、アセタミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、及びスリンダックなどが含まれる。これらの薬剤の他の例には、サイトカイン又はケモカインによって変換されるプロ炎症性シグナルを阻害するために同族受容体へのサイトカイン又はケモカインの結合を阻害するものが含まれる。これらの薬剤の代表的な例には、限定されないが、抗IL−1、抗IL−2、抗IL−3、抗IL−4、抗IL−8、抗IL−15、抗IL−18、抗GM−CSF、及び抗TNF抗体が含まれる。
【0154】
抗血栓剤には、凝固経路の任意の段階で介入し得る化学物質及び生物学的物質が含まれる。具体的な物質の例には、限定されないが、因子Xaの活性を阻害する小分子が含まれる。さらに、直接に又は間接にのいずれかで、FXa及びトロンビンの両方を阻害し得るヘパリノイド型薬剤、例えば、ヘパリン、硫酸ヘパリン、低分子量ヘパリン(例えば、商標Clivarin(登録商標)を有する化合物)、及び合成オリゴ糖(例えば、商標Arixtra(登録商標)を有する化合物)などが含まれる。また、直接トロンビン阻害剤、例えば、メラガトラン、キシメラガトラン、アルガトロバン、イノガトラン、及びトロンビンに対するPhe−Pro−Argフィブリノーゲン基質の結合部位のペプチド類似体なども含まれる。送達され得る抗血栓剤のもう1つのクラスは、因子VII/VIIa阻害剤、例えば、抗因子VII/VIIa抗体、rNAPc2、及び組織因子経路阻害剤(TFPI)である。
【0155】
凝結塊を溶解する作用が血栓のフィブリンマトリックス内に閉じ込められた血小板を分散させるのに役立つので、血栓(凝結塊)を分解するのを助ける薬剤として定義され得る血栓溶解剤も、補助薬として用いることができる。血栓溶解剤の代表的な例には、限定されないが、ウロキナーゼ又は組換えウロキナーゼ、プロウロキナーゼ又は組換えプロウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子又はその組換え体、及びストレプトキナーゼが含まれる。
【0156】
結晶ラパマイシン類似体と併用して使用され得る他の薬剤は、細胞毒性薬、例えば、アポトーシス誘導物質(例えば、TGF)、及びトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、10−ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、及びドキソルビシンなど)である。結晶ラパマイシン類似体と併用して使用され得る他のクラスの薬剤は、細胞脱分化を阻害する薬剤及び細胞増殖抑制剤である。結晶ラパマイシン類似体と併用して使用され得る他の薬剤には、フェノフィブラート、バチミスタット、エンドセリン−A受容体のアンタゴニスト(例えば、ダルセンタンなど)、及びαvβ3インテグリン受容体のアンタゴニストが含まれる。
【0157】
結晶ラパマイシン類似体はまた、1種以上の免疫抑制剤と共投与してもよい。本発明の範囲内の免疫抑制剤には、限定されないが、IMURAN(登録商標)アザチオプリンナトリウム、ブレキナールナトリウム、SPANIDIN(登録商標)グスペリムストリヒドロクロリド(デオキシスペルグアリンとしても知られている)、ミゾリビン(ブレジニンとしても知られている)、CELLCEPT(登録商標)マイコフェノレートモフェチル、NEORAL(登録商標)Cylosporin A(商標SANDIMMUNE(登録商標)の下でCyclosporin Aの異なる配合物として市販もされている)、PROGRAF(登録商標)タクロリムス(FK−506としても知られている)、シロリムス及びRAPAMUNE(登録商標)、レフルノミド(HWA−486としても知られている)、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾロン及びその誘導体)、抗体療法(例えば、オルトクロン(OKT3)及びZenapax(登録商標))、並びに抗胸腺細胞グロブリン(例えば、胸腺グロブリン)が含まれる。
【0158】
V.結晶ラパマイシン類似体治療
結晶ラパマイシン類似体は、哺乳動物(特にヒト)に免疫調節活性を有する。免疫抑制剤として、結晶ラパマイシン類似体は、免疫介在疾患[例えば、器官又は組織(例えば、心臓、腎臓、肝臓、骨髄、皮膚、角膜、肺、膵臓、小腸(intestinum tenue)、四肢、筋、神経、十二指腸、小腸(small−bowel)、膵島細胞など)の移植]による抵抗;骨髄移植によって引き起こされる移植片対宿主疾患;自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型糖尿病、ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎など)の治療及び予防に有用である。さらなる使用には、免疫を介した疾患の炎症性過剰増殖性皮膚疾患及び皮膚症状、例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎及びさらなる湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、じんま疹、血管性水腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球、紅斑性狼瘡、座瘡、及び円形脱毛症;種々の眼疾患(自己免疫及び他)(例えば、角結膜炎、春季カタル、ベーチェット病関連ブドウ膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜、角膜上皮性異栄養症、角膜白斑、及び眼類天疱瘡)の治療及び予防が含まれる。さらに、喘息(例えば、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、及び塵埃喘息)、特に慢性(chronic or inveterate)喘息(例えば、遅発性喘息及び気道過反応)、気管支炎、アレルギー性鼻炎などの状態を含む可逆性閉塞性気道疾患は、結晶ラパマイシン類似体の標的となる。粘膜及び血管の炎症、例えば、胃潰瘍、虚血性疾患によって引き起こされる血管損傷、血栓症。さらに、過剰増殖性血管疾患、例えば、内膜平滑筋細胞過形成、再狭窄及び血管閉塞、特に以下の生物学的又は機械的介在血管外傷は、結晶ラパマイシン類似体によって治療又は予防され得るであろう。
【0159】
他の治療可能な状態には、限定されないが、虚血性腸疾患、炎症性腸疾患、壊死性腸炎、セリアック病などの腸炎症/アレルギー、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、及び潰瘍性大腸炎;神経疾患、例えば、多発性筋炎、ギラン−バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎(polyneuritis)、多発性神経炎(multiple neuritis)、単発神経炎、及び神経根障害;内分泌疾患、例えば、甲状腺機能亢進症及びバセドー氏病;血液疾患、例えば、真性赤血球系無形成、再生不良性貧血(aplastic anemia)、再生不良性貧血(hypoplastic anemia)、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、顆粒球減少症、悪性貧血、巨赤芽球性貧血、及び赤血球形成不全;骨疾患、例えば、骨粗鬆症;呼吸器疾患、例えば、サルコイドーシス、肺線維症及び特発性間質性肺炎;皮膚疾患、例えば、皮膚筋炎、尋常性白斑、尋常性魚鱗癬、光アレルギー性過敏症、及び皮膚T細胞性リンパ腫;循環器疾患、例えば、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎、及び心筋症;膠原病、例えば、強皮症、ウェゲナー肉芽腫及びシェーグレン症候群;脂肪過多症;好酸球性筋膜炎;歯周病、例えば、歯肉、歯周組織、歯槽骨、及び歯のセメント質の障害;ネフローゼ症候群、例えば、糸球体腎炎;脱毛予防若しくは発毛提供及び/又は毛生成と育毛とによる男性はげ又は老人性脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症及びセザリー症候群;アジソン病;活性酸素を介した疾患[例えば、保存、移植又は虚血性疾患(例えば、血栓症及び心筋梗塞)後に生じる臓器(例えば、心臓、肝臓、腎臓及び消化管)の虚血性再潅流損傷の臓器傷害のような];消化管疾患、例えば、内毒素性ショック、偽膜性大腸炎、及び、薬剤又は放射線によって引き起こされる大腸炎;腎疾患、例えば、虚血性急性腎不全及び慢性腎不全;肺疾患、例えば、肺−酸素又は薬剤(例えば、パラコート及びブレオマイシン)によって引き起こされる中毒症、肺癌及び肺気腫;眼疾患、例えば、白内障、鉄沈着症、網膜炎、色素肉腫、老人性黄斑変性症、硝子体瘢痕化、及び角膜アルカリ熱傷;皮膚炎、例えば、多変性紅斑、線状IgA水疱性皮膚炎及びセメント皮膚炎;及びその他、例えば、歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、環境汚染(例えば、空気汚染)によって引き起こされる疾患、老化、発癌、癌腫の転移、及び高山病;ヒスタミン又はロイコトリエン−C放出によって引き起こされる疾患;ベーチェット病、例えば、腸管、血管又は神経ベーチェット病、及びまた、口腔、皮膚、眼、陰門、関節、精巣上体、肺、腎臓などを冒すベーチェット病などが含まれる。
【0160】
さらに、結晶ラパマイシン類似体は、肝疾患、例えば、免疫原性疾患[例えば、慢性自己免疫肝疾患(例えば、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変及び硬化性胆管炎)]、部分肝切除、急性肝臓壊死(例えば、毒素、ウイルス性肝炎、ショック又は無酸素症によって引き起こされる壊死)、B型ウイルス性肝炎、非A/非B型肝炎、肝硬変(例えば、アルコール性肝硬変)及び肝不全[例えば、劇症肝不全、遅発性肝不全及び「慢性期急性(acute−on−chronic)」肝不全(慢性肝疾患上の急性肝不全)]の治療及び予防に有用であり、さらに、それらの有用な活性、化学療法効果の増強のようなそれらの有用な活性のために様々な疾患に有用であり、サイトメガロウイルス感染、特にHCMV感染に、また抗炎症性活性のために、硬化性及び線維性疾患(例えば、ネフローゼ、強皮症、肺線維症、動脈硬化症、鬱血性心不全、心室肥大、術後癒着及び瘢痕化、卒中、心筋梗塞、及び虚血と再潅流関連損傷など)に有用である。
【0161】
さらに、結晶ラパマイシン類似体は、FK−506拮抗特性を有する。したがって、結晶ラパマイシン類似体は、免疫抑制又は免疫抑制を含む障害の治療に使用することができる。免疫抑制を含む障害の例には、AIDS、癌、真菌感染、老人性痴呆症、外傷(創傷治癒、手術及びショックを含む)、慢性細菌感染、及び特定の中枢神経系障害が含まれる。治療すべき免疫抑制は、免疫抑制性大環状化合物(例えば、12−(2−シクロヘキシル−1−メチルビニル)−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エンの誘導体(例えば、FK−506又はラパマイシン))の過量摂取によって引き起こされることがある。患者によるこのような薬剤の過量は、処方時間に薬剤を服用することを忘れたことに気づいた後に極めてよくみられ、重大な副作用に至る可能性がある。
【0162】
増殖性疾患を治療するための結晶ラパマイシン類似体の能力は、Bunchman ET及びCA Brookshire、Transplantation Proceed.23 967〜968頁(1991年);Yamagishiら、Biochem.Biophys.Res.Comm.191 840〜846頁(1993年);及びShichiriら、J.Clin.Invest.87 1867〜1871頁(1991年)に記載される方法に従って証明することができる。増殖性疾患には、平滑筋増殖、全身性硬化症、肝硬変、成人呼吸窮迫症候群、特発性心筋症、紅斑性狼瘡、糖尿病性網膜症又は他の網膜症、乾癬、強皮症、前立腺肥大、心臓肥大、動脈損傷後の再狭窄又は血管の他の病的狭窄が含まれる。さらに、結晶ラパマイシン類似体はいくつかの増殖因子に対する細胞応答に拮抗し、したがって、抗血管新生特性を有しており、ある種の腫瘍、並びに肺、肝臓、及び腎臓の線維性疾患の増殖を制御し、又は逆転させるための有用な薬剤となる。
【0163】
水性液体組成物は、眼の様々な疾患、例えば、自己免疫疾患[例えば、円錐角膜、角膜炎、角膜上皮性異栄養症、角膜白斑、モーレン潰瘍、硬化症(sclevitis)、及びグレーヴス眼病を含む]及び角膜移植の拒絶反応の治療及び予防に特に有用である。
【0164】
上記又は他の治療に使用される場合、治療有効量の1種の結晶ラパマイシン類似体は、純粋な形態又はこのような形態が存在する場合、医薬的に許容される塩、エステル若しくはプロドラッグ形態で用いられ得る。他に、結晶ラパマイシン類似体は、1種以上の医薬的に許容される賦形剤と併用して目的の化合物を含む医薬組成物として投与され得る。語句「治療有効量」の結晶ラパマイシン類似体は、任意の医療に適用される合理的な利益/危険度比で疾患を治療するのに十分な量の化合物を意味する。しかし、本発明の化合物及び組成物の総1日使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当医によって決定されることは理解されるであろう。任意の特定の患者に対する具体的な治療上有効な用量レベルは、治療される疾患及び疾患の重症度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別、及び食事;用いられる特定の化合物の投与時間、投与経路、及び排泄速度;治療の期間;用いられる特定の化合物と併用又は同時使用される薬剤;及び医学分野でよく知られている同様の要素を含む様々な要素に依存する。例えば、所望の治療効果を得るのに必要とされるより低いレベルの化合物の用量で開始し、所望の効果が得られるまで投与量を次第に増加させることは十分に当該技術分野の技術範囲内である。
【0165】
ヒト又は下等動物に投与される結晶ラパマイシン類似体の総1日使用量は、約0.01から約10mg/kg/日の範囲にあることができる。経口投与のために、より好ましい用量は、約0.001から約3mg/kg/日の範囲であることができる。ステントからの局所投与のために、患者が受ける1日量はステントの長さに依存する。例えば、15mm冠状ステントは、約1から約120マイクログラムの範囲にある量で薬剤を含むことができ、数時間から数週間の範囲にある期間にわたってその薬剤を送達することができる。必要に応じて、投与の目的に対して有効1日量は複数回投与に分割することができ;その結果、単回投与組成物は、1日量を構成するための量又はその約量を含むことができる。局所投与は、適用部位に依存して、約0.001から約3mg/kg/日の範囲にある用量を含むことができる。
【実施例】
【0166】
実施例1
本発明のラパマイシン類似体及び方法は、本発明の結晶ラパマイシン類似体が調製され得る方法を説明する、ラパマイシン類似体を生成し、結晶形態のラパマイシン類似体を生成する以下の合成スキーム及び方法と関連させてよりよく理解されるであろう。
【0167】
本発明のラパマイシン類似体は、様々な合成経路によって調製され得る。代表的な手順を図1に示す。図1に示されるように、ラパマイシンのC−42ヒドロキシルのトリフルオロメタンスルホネート又はフルオロスルホネート脱離基への変換は、構造Aを与えた。拘束非求核塩基、例えば、2,6−ルチジン、又は好ましくはジイソプロピルエチルアミンの存在下でその脱離基をテトラゾールで置換すると、式2及び式3を与え、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーにより分離及び精製した。
【0168】
上記は、本発明の化合物が調製され得る方法を説明し、且つ添付の請求項に規定されるような本発明の範囲に限定することを意図しない以下の実施例を参照することによって、よりよく理解することができる。
【0169】
実施例1A
ラパマイシン(7.5g)をDCM(30g)に溶解した。2,6−ルチジン(1.76g)を添加した。この溶液をアセトニトリル−ドライアイス浴中で−30℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.89g)を10分でゆっくり添加した。反応混合物を20分間撹拌し、次いで、反応中の消費を決定するためにラパマイシンの存在をアッセイした。1−H−テトラゾール(1.44g)、続けてDIEA(5.29g)を添加した。反応混合物を室温で6時間撹拌し、次いで、1:1THF:n−ヘプタン(v/v)に調製されたシリカゲル(270g)カラムに直接負荷した。粗反応混合物を1:1THF:n−ペプタンで精製した。後で溶出する生成物(N−2異性体が最初に、その後N−1異性体が溶出する)を含む画分を収集し、濃縮した。濃縮固体を最小DCMに溶解し、70:30n−ヘプタン:アセトンで充填されたシリカゲルカラム(135g)に負荷した。カラムは70:30n−ヘプタン:アセトンで溶出させ、薄層クロマトグラフィー(TLC)により同定して純生成物を含む画分を濃縮した。
【0170】
精製生成物をt−BME(9g)に溶解し、10±10℃で激しく撹拌しながらn−ヘプタン(36g)にゆっくり添加した。沈殿固体を5〜10℃で1時間撹拌し、ろ過し、n−ヘプタンで洗浄し、漏斗上、窒素で乾燥した。BHT(0.006g)をこの固体に添加した。固体をアセトン(20g)に溶解し、フィルターを通して、濃縮した。残渣をアセトンで2回(各20g)処理し、各回ごとに乾燥まで濃縮した。生成物を真空下、50℃以下で18時間以上乾燥し、2.5gのゾタロリムスを得た。
【0171】
実施例1B
酢酸イソプロピル(0.3mL)中実施例1Aの溶液をジイソプロピルエチルアミン(87μL、0.5ミリモル)及び1H−テトラゾール(35mg、0.5ミリモル)で順次処理し、その後18時間撹拌した。この混合物を水(10mL)及びエーテル(10mL)間に分配した。有機相をブライン(10mL)で洗浄し、乾燥した(NaSO)。有機相を濃縮すると粘性の黄色固体を得、これをヘキサン(10mL)、ヘキサン:エーテル(4:1(10mL)、3:1(10mL)、2:1(10mL)、1:1(10mL))、エーテル(30mL)、ヘキサン:アセトン(1:1(30mL))で溶出するシリカゲル(3.5g、70〜230メッシュ)上でクロマトグラフィーにより精製した。異性体の一方を、エーテル画分中に収集した[MS(ESI)m/e966(M);図1の式3に対応する42−(2−テトラゾリル)−ラパマイシン(極性の少ない異性体)]。
【0172】
実施例1C
実施例1Cにおいてヘキサン:アセトン(1:1)移動相を用いるクロマトグラフィーカラムからのより遅い移動バンドの収集により、指定化合物を得た[MS(ESI)m/e966(M);図1の式2に対応する42−(1−テトラゾリル)−ラパマイシン(より極性の異性体)]。
【0173】
実施例2
実施例1B及び実施例1Cから得られるラパマイシン類似体の免疫抑制活性をラパマイシン及び2つのラパマイシン類似体:40−エピ−N−[2’−ピリドン]−ラパマイシン及び40−エピ−N−[4’−ピリドン]−ラパマイシン(両方が米国特許第5,527,907号明細書に開示される)と比較した。活性を、Kino,TらによってTransplantation Proceedings、XIX(5):36〜39頁、Suppl.6(1987年)に記載されたヒト混合白血球反応(MLR)アッセイを用いて決定した。アッセイの結果は、表1に示されるように、本発明の化合物がナノモル濃度で有効な免疫調節剤であることを証明する。
【0174】
【表1】

【0175】
実施例1B及び実施例1Cのラパマイシン類似体の薬物動態学的挙動を、カニクイザル(n=3/群)における2.5mg/kg静脈内単回投与後に特徴づけした。各化合物を、水ビヒクル中20%エタノール:30%プロピレングリコール:2%クレモフォールEL:48%デキストロース5%の2.5mg/mL溶液として調製した。1mL/kg静脈投与をサルの伏在静脈における遅いボーラス(約1〜2分)として施した。血液試料を、投与前並びに投与後0.1(IVのみ)、0.25、0.5、1、1.5、2、4、6、9、12、24、及び30時間に各動物の大腿動脈又は静脈から得た。EDTA保存試料を完全に混合し、その後の分析のために抽出した。
【0176】
血液(1.0mL)のアリコートを、内部標準を含む水(0.5mL)中20%メタノールで溶血させた。溶血試料を酢酸エチルとヘキサンの混合物(1:1(v/v)、6.0mL)で抽出した。有機層を室温で窒素気流により蒸発乾固した。試料をメタノール:水(1:1、150μL)中に再構成した。表題の化合物(50μL注入)を、UV検出を備えた逆相HPLCを用いて混入物質から分離した。試料を、実験を通して低温(4℃)に保った。各試験からの全ての試料をHPLCの単一バッチとして分析した。
【0177】
実施例1B、実施例1C、及び内部標準のラパマイシン類似体の曲線下面積(AUC)測定値を、Sciex MacQuan(商標)ソフトウェアを用いて決定した。検量線は、ピーク面積比対理論濃度の最小二乗線形回帰を用いて、スパイク血液標準のピーク面積比(親薬剤/内部標準)から誘導した。この方法は、推定定量限界0.1ng/mLを有して標準曲線の範囲にわたって両化合物について線形であった(相関>0.99)。最大血液濃度(CMAX)及び最大血液濃度に達する時間(TMAX)は、観測した血液濃度−時間データから直接読んだ。CSTRIPを用いて血液濃度データを多指数曲線適合に供し、薬物動態パラメータの推定値を得た。この推定パラメータを、NONLIN84を用いてさらに規定した。血液−時間プロファイルに関する直線台形則(linear trapeziodal rule)を用いて、投与(AUC0−t)後0からt時間(血液濃度測定可能な最終時点)からの血液濃度−時間曲線下面積を計算した。無限に外挿した残余面積を、最終測定血液濃度(C)を最終排出速度定数(β)で除して決定して、AUC0−tに加えて、曲線下総面積(AUC0−t)を得た。
【0178】
図2及び表1に示されるように、ラパマイシンと比べた場合、実施例1B及び実施例1Cの両方のラパマイシン類似体は、驚くべきことにより短い最終排出半減期(t1/2)を示した。したがって、本発明の化合物のみが十分な効果(表1)とより短い最終半減期(表2)の両方を与えた。
【0179】
【表2】

【0180】
実施例3
この実施例の目的は、ステントを含むブタ冠状動脈における新生内膜形成に対するラパマイシン類似体の効果を決定することであった。この実施例は、調合されて、Biocompatibles BiodiviYsio PC Coronaryステントから送達される場合、ラパマイシン類似体A−179578(例えば、ABT−578;図1の式2に対応)がブタ冠状動脈における新生内膜過形成及び管腔サイズに有利に影響を与えることを示す。この所見は、新生内膜過形成を制限することによってヒトに適切に適用される場合、このような組合せが実質的、臨床的に有益であり得ることを示唆する。
【0181】
この実施例で示される試験は、ラパマイシン類似体A−179578がブタ冠状ステントモデルにおける新生内膜過形成を低減させる能力を評価するために計画された。このモデルにおけるA−179578の効果は、経皮的血管再生後のステントにおける冠状再狭窄の制限及び治療のその臨床的可能性を示唆する。飼育ブタを用いたが、その理由は、このモデルが、ヒト対象における新生内膜過形成を制限することを探求する他の調査に比較し得る結果を生ずるように思われるためである。
【0182】
実施例は、農場仔ブタに設置された冠状ステントから溶出したA−179578を試験し、これらの結果を対照ステントと比較した。対照ステントは薬剤なしにポリマーコーティングされている。ポリマーそれ自体は新生内膜過形成を実質的な程度に刺激してはならないので、これは重要である。溶出した薬剤が消失すると、ポリマーへの炎症性応答は、恐らくは、再狭窄過程は止められないが遅くさせる遅発の「追いつき現象」を生じると考えられる。この現象は、ヒト対象に後日、再狭窄をもたらすことがある。
【0183】
各ブタにおいて2つの血管にステントを移植した。このモデルで使用されるブタは、一般に2〜4月齢で、体重30〜40kgであった。したがって、「正常な」ステント:動脈比1.1〜1.2を視覚的に評価することによって各ブタにおいて2つの冠状ステントを移植した。
【0184】
処置の日に開始して、ブタにアスピリン(1日325mg)を経口投与し、過程の残りの間継続した。全身麻酔は、ケタミン(30mg/kg)及びキシラジン(3mg/kg)の筋内注射、続けて静脈注射によって達成した。導入時にさらなる薬剤には、筋内投与したアトロピン(1mg)及びフロシリン(1g)が含まれた。ステント植込み術の処置の間、ヘパリン10,000単位の動脈内ボーラスを投与した。
【0185】
動脈へのアクセスは、右外頸動脈での切開及び8Fシースの設置により得た。この処置後、動物をコレステロール又は他の特別の栄養補給をしない通常の食餌で維持した。
【0186】
公称血管標的サイズ3.0mmを有するBiodivYsioステントを使用した。ブタ1頭当たり2つの冠状動脈をステントの配置にランダムに割り付けた。ステントは、薬剤溶出ステント(ポリマー+薬剤ステント)又はポリマーのみでコーティングされたステント(ポリマーのみステント)のいずれかであった。ステントを標準ガイドカテーテル及びワイヤによって送った。ステントバルーンを30秒未満の間に適切な大きさに膨らませた。
【0187】
各ブタにつき、薬剤のためのステント1個及び対照のためのステント1個となるよう、ポリマーのみのステント1個及びポリマー+薬剤のステント1個を各ブタの別々の冠状動脈内に設置した。総計ブタ20頭の試料サイズを選択して、検出力0.95及びβ0.02で、標準偏差0.15mmでの新生内膜厚さ0.2mmにおける投影差を検出した。
【0188】
組織病理学的検査及び数量化のために、動物を28日目に安楽死させた。潅流ポンプシステムから心臓を除去後、近位冠状動脈へのアクセスのために左心耳を除去した。損傷を有する冠状動脈セグメントを心外膜なしで切開した。病変を含むセグメントを摘出し、それにより十分な組織がいずれかの端部に関与していない血管を含むことを可能にした。前述のセグメント(それぞれ約2.5cm長)を、標準的なプラスチック包埋技術によって包埋及び処理した。その後、それらの組織をヘマトキシン−エオシン及びエラスチカ−ヴァンギーソン法で処理及び染色した。
【0189】
低及び高出力光学顕微鏡検査を用いて、較正解析ソフトウェアを用いるコンピュータに接続した較正レチクル及びデジタル顕微鏡検査システムによって、顕微鏡視野の面での長さ測定を行った。
【0190】
血管損傷重症度及び新生内膜応答を較正デジタル顕微鏡検査によって測定した。内弾性板の完全性の重要性は当業者によく知られている。ステント挿入された血管における組織病理学的損傷スコアは、新生内膜厚さに密接に関係しているとして妥当性が確認されている。このスコアは損傷の深さに関係しており、以下の通りである:0は、内弾性板は無傷;内皮は通常剥離され、中膜は圧縮されているが破裂していない;1は、内弾性板が破裂している;通常、中膜は圧縮されているが破裂はしていない;2は、破裂した内弾性板;中膜は目視で破裂している;外弾性板は無傷であるが、圧縮されている;及び3は、外弾性板が破裂している;通常、外弾性板を通じて延在する中膜の大きい破裂;コイル線が時に外膜に存在している。
【0191】
この損傷の量的測定を、各ステント切片の全てのステントワイヤについて評価した。較正デジタル画像も用いて、各ステントワイヤ部位における新生内膜厚さを測定した。内腔面積、内弾性板に含まれる面積、及び外弾性板内の面積も測定した。所与の切片における各ストラットについて新生内膜厚さを測定し、次いで、平均して各切片について新生内膜厚さを決定した。測定、解析及び比較のために中間ステントセグメントを用いた。近位セグメント及び遠位セグメントについてもデータを記録した(そして、本報告のデータセクションに含めた)。本試験のデータ分析法は、軽度から中等度の損傷は治療の差を検出するのに十分感受性があるために、治療/対照群にわたる変数である動脈損傷を考慮に入れる必要はなかった。対t−検定を行って、ポリマーのみステント(対照群)及びポリマー+薬剤ステント(治療群)にわたって変数を比較した。本試験において、予定時点以前に死んだ動物はいなかった。
【0192】
表3は、使用したブタ及び動脈を示す。表3において、LCXは左冠状動脈の回旋枝を意味し、LADは左前下行冠状動脈を意味し、RCAは右冠状動脈を意味する。
【0193】
【表3】

【0194】
表4は、近位、中位、及び遠位セグメントを含む、各ステントの平均損傷及び新生内膜厚さの全てのデータについてのまとめた結果を示す。表4は、内腔サイズ、狭窄パーセント、並びに内弾性板(IEL)及び外弾性板(EEL)によって測定された動脈サイズも示す。
【0195】
【表4】

【0196】
試験群(ポリマー+薬剤ステント)又は対照群(ポリマーのみステント)内の近位、中位、又は遠位セグメントにわたる新生内膜面積又は厚さに統計的有意差はなかった。この観察は、前の試験と極めて一致しており、したがって、試験用具(ポリマー+薬剤ステント)対対照用具(ポリマーのみステント)の統計的比較について中間セグメントのみを用いることを可能にする。
【0197】
表5は、試験群及び対照群にわたる統計的t−検定比較を示す。新生内膜厚さ、新生内膜面積、内腔サイズ、及び内腔狭窄パーセントに統計的有意差があり、薬剤溶出ステントは明らかに有利であった。逆に、平均損傷スコア、外弾性板面積、又は内弾性板面積について試験群(ポリマー+薬剤ステント)と対照群(ポリマーのみステント)の間に統計的有意差はなかった。
【0198】
【表5】

【0199】
ステント挿入されたセグメントに対する近位及び遠位の基準動脈を観察及び数量化した。これらの血管は、対照群(ポリマーのみステント)及び試験群(ポリマー+薬剤ステント)の両方で無損傷であり、全ての場合で正常であるように見えた。表6のデータは、対照群のステント及び試験群のステント間のサイズに統計的有意差がなかったことを示す。
【0200】
【表6】

【0201】
データは、統計的有意差が存在し、これらの差がA−179578を溶出するステントに有利に働くことを示唆する。本発明のステントは、新生内膜面積減少、新生内膜厚さ減少及び内腔面積増大をもたらす。新生内膜パラメータ又は損傷パラメータについて、試験群(ポリマー+薬剤ステント)及び対照群(ポリマーのみステント)内に有意差はなかった。試験群に比べて対照群について、動脈サイズ(ステントを含む)に有意差はなかった。これらの後者の所見は、薬剤を含むポリマーコーティングの動脈再造形特性における有意差がないことを示唆する。
【0202】
せいぜい、ポリマー+薬剤ステント及びポリマーのみステントの両方で軽度の炎症が認められた。この所見は、薬剤負荷がないときでさえ、そのポリマーが満足な生体適合性を示すことを示唆する。他の試験は、薬剤がポリマーから完全になくなったときには、新生内膜をもたらすのに十分な炎症をポリマー自体が生じさせることを示す。この現象は、臨床的遅発再狭窄の遅発の「追いつき」現象の原因となることがある。この実施例のポリマーは、冠状動脈に炎症を引き起こさなかったので、薬剤が消費される後にポリマーに関連する後発の問題は起こりにくい。
【0203】
結論として、ポリマーと共に化合物A−179578を含むステントは、冠状動脈に設置した場合にブタモデルにおいて新生内膜過形成の低減を示した。
【0204】
実施例4
この実施例の目的は、ホスホリルコリン側鎖基を含む生体適合性ポリマーでコーティングした316L Electropolished Stainless Steel CouponsからのA−179578(ABT−578)薬剤の放出速度を決定することである。
【0205】
HPLCバイアルからの蓋のゴム隔壁をバイアルから取り外し、「テフロン」側が上になるようにガラス製バイアル中に置いた。これらの隔壁は試験試料にとって支持体としての役割を果した。この試験試料は、ホスホリルコリン側鎖基を含む生体適合性ポリマー(PCポリマー)で前にコーティングされた316Lステンレススチールクーポンであった。冠状ステントは、一般に316Lステンレス製であり、PCポリマーでコーティングして薬剤を負荷するための貯蔵部位を設けることができる。ステントをシミュレートする役割をもつコーティングされたクーポンを隔壁上に置いた。ガラス製ハミルトン注射器を用いることによって、A−179578及びエタノール(10μl)の溶液を各クーポンの表面に塗布した。溶液は、100%エタノール(3.0ml)に溶解させたA−179578(30.6mg)を含んだ。注射器はそれぞれの適用の間にエタノールで清浄にした。ガラス製バイアルのキャップをバイアルに緩く載せることで、適切な換気を確保した。クーポンを最低1.5時間乾燥させた。12個のクーポンをこのように負荷し、6個は器具上に負荷した薬剤の平均量を決定するのに用い、6個は器具から薬剤を放出するのに必要な時間を測定するために用いた。
【0206】
クーポン上に負荷されたABT−578の総量を決定するために、クーポンをバイアルから取り除き、50/50アセトニトリル/0.01Mリン酸塩緩衝剤(pH6.0、5.0ml)中に入れた。クーポンを5210Branson超音波処理器上に1時間置いた。次いで、クーポンを溶液から取り出し、その溶液をHPLCでアッセイした。
【0207】
それぞれ以下の時間間隔;5、15、30及び60分で、pH6.0での0.01Mリン酸塩緩衝剤の新鮮アリコート(10.0ml)に個々のクーポンを浸漬し、取り出すことによって持続放出試験を行った。120、180、240、300、360分の残りの時間点について、容量5.0mlの緩衝剤を用いた。薬剤放出期間中の混合を容易にするために、試料を低速設定したEberbachシェーカー上に置いた。最後の試料の試験が完了後に溶液アリコート全てをHPLCでアッセイした。
【0208】
以下の設定を有するヒューレットパッカードシリーズ1100装置を用いて、HPLC分析を行った:注入容量は100μlである;捕捉時間は40分である;流量は1.0ml/分である;カラム温度は40℃である;波長は278nmである;移動相は65%アセトニトリル/35%HOである;及びカラムはYMC ODS−A S5μm、4.6×250mm(部品番号A12052546WT)。
【0209】
上記実験からの結果は表7に示される放出データを示した。
【0210】
【表7】

【0211】
実施例5
この実施例の目的は、15mmBiodivYsio薬剤送達ステントからのABT−578の負荷及び放出を決定することであった。ステントを薬剤で負荷させるために、50mg/mlの濃度でエタノール中ABT−578の溶液を調製し、12個のバイアル中に分配した。12個の個々のポリマーコーティングステントを、ステントを垂直位置に保持するように設計された固定具に置き、そのステントを薬剤溶液中に垂直に5分間浸漬した。ステント及び固定具をバイアルから取り出し、ステントを吸収材と接触させることによって、過剰の薬剤溶液を拭き取った。次いで、ステントを上下逆転させて、30分間風乾させた。
【0212】
ステントを固定具から外し、各ステントを50/50アセトニトリル/リン酸塩緩衝剤(pH5.1、2.0ml)中に置き、1時間超音波処理した。ステントを溶液から取り出し、その溶液を薬剤の濃度についてアッセイし、これにより初期にステント上にある薬剤量の計算ができるようにした。この方法は、ステントコーティングから薬剤の少なくとも95%を除去することを独立に示した。平均で、ステントは60マイクログラム±20マイクログラムの薬剤を含んだ。
【0213】
この薬剤負荷ステントを固定具上に置き、個別のバイアルにおいて0.01Mリン酸塩緩衝剤(pH=6.0、1.9ml)中に入れた。これらの試料を低速に設定したEberbachシェーカー上に載せ、前後の撹拌を与えた。緩衝剤中で薬剤飽和に近づくことを避けるために、ステントを以下の時点で一定期間ごとに新鮮緩衝剤バイアルに移した:15、30、45、60、120、135、150、165、180、240、390分。試験した薬剤放出期間の最後に、この溶解緩衝剤バイアルを、HPLCによって薬剤濃度についてアッセイした。時間の関数として薬剤の累積放出%として表したデータを下記に表形式で示す:
【0214】
【表8】

【0215】
実施例6
この実施例の目的は、新生内膜形成に対する異なる薬剤投与量の安全性及び効果を評価することであった。薬剤は、ABT−578でコーティングされたBiodivYsio
OCステント(15mm)から送達した。ステント内新生内膜形成は、成体ミニチュアブタの冠状動脈において4つの時間間隔で測定した:3日、1カ月、及び3カ月。40頭の動物を各時間間隔で試験した(用量当たり動物10頭)。各動物には、薬剤コーティングステント1個及び対照ステント1個を用いた。対照ステントには薬剤は含まれていなかった。表9はブタ効力試験についての投与計画を示す。
【0216】
【表9】

【0217】
ステント挿入された領域、隣接冠状セグメント、血管周囲組織、及び貢献心筋における組織病理学的変化を調べることで、全ての時間間隔で潜在的局所組織毒性を評価した。死亡率、血管造影移植及び再試験データ、組織形態計測、及び、ステント部位の組織病理学について検査した。
【0218】
3日目群:
走査電子顕微鏡検査と組み合わせた組織病理学により、移植ステントに対する短期応答に関する情報を得た。応答は対照群と全ての用量群において同様であり、応答には、顕著な壊死のない中膜の圧縮、ステントストラットに大部分局在する血栓及び炎症性細胞の蓄積、並びに内皮回復及び薄い壁性血栓の平滑筋細胞侵入の早期の証拠が関与した。広範囲な血栓又は顕著な壁内出血は存在しなかった。いくつかの試料の外膜は、病巣性又は広汎性の炎症性浸潤のいずれかを示し、時に脈管の脈管(vasa vasora)の閉塞又は鬱血があった。いずれの試料にも中膜壊死の証拠はなかった。
【0219】
走査電子顕微鏡検査は、全ての用量群において冠状ステントの移植後3日目に同様の内腔表面の外観を示した。ステントの形状は、組織の薄層内にはっきりと包埋されていた。内皮は、ストラット間及びさらにストラットを越えて無傷であり;内皮様細胞の融合性又はほぼ融合性の層は、内腔表面を覆った。ステントの上に、及びストラット間空間の無傷の残存内皮上に、散在性の付着血小板、血小板微小血栓、及び白血球が存在した。より重度のステント誘発血管損傷がある動脈では、より多量の壁性血栓が存在したが、ステントストラット全面の内皮回復の程度は、ABT−578の投与量にかかわらず、遅延していないように見えた。
【0220】
1カ月群:
1カ月シリーズの組織形態計測データは、ブタのステントされた冠状動脈での新生内膜形成に対する局所的に溶出されたABT−578の有意な阻害効果を示した。損傷スコアに対して正規化された内膜面積は、対照と比較して用量群3及び4(10及び27μg/mm)について有意に低下し;対照と比較して用量群3及び4の両方について絶対内膜面積及び内膜厚さの低下傾向も存在し、対照と比較して用量群3について組織学的な狭窄%の低下傾向も存在した。
【0221】
対照ステントは、1カ月目にYucatanミニチュアブタの冠状動脈に移植したステントの典型的な形態を示した。中膜は、ステントストラットの輪郭の下にある壊死を伴わずに圧縮又は薄化しており;偶発の炎症性浸潤のみが存在し;新生内膜は比較的薄いものから中程度に薄い大きさにわたり、豊富な細胞外マトリックス内の紡錘状及び星状細胞からなり、ステントストラットの輪郭周囲に線維素様物質の希な小病巣を有した。薬剤コーティングステントは、いずれの用量においても実質的な壊死なしに中膜の同様な圧縮を示し;対照用具と同様に、炎症はほとんど存在しなかった。新生内膜は、用量群3及び4で有意により薄く、一部の場合には、細胞のごく数層からなっていた。全ての用量群において、中程度の大きさの線維素様沈着物及び濃厚血栓が深在新生内膜に認められるかなりの試料が存在した。これらは通常、ステントストラットに関連するものであったが、時にストラット輪郭間に延在した。しかし、沈着物が線維細胞組織内に被包され、内腔周囲内皮様細胞の扁平層で覆われていたので、いずれの場合も内腔表面上の血栓の露出は存在しなかった。
【0222】
走査電子顕微鏡検査により、内皮又は内皮様細胞の融合層がステント挿入された表面全体を覆い、血液成分の付着の点で薬剤コーティングステントと対照ステントの間に差は存在せず;白血球は全ての群でほぼ同数で存在することが確認された。これらの所見は、ABT−578が新生内膜形成及び持続性壁性血栓の低減に関連する一方、ステントが移植後1カ月以内にステント損傷への反応の十分な血管壁治癒が起こったことを示す。この血管壁治癒により、内腔表面は血小板付着及び血栓形成に対し非反応性となり、白血球付着に対し最小限の反応性となった。さらに、中膜壊死又はステント付着不良はなかったので、最高用量(27μg/mm)でも血管壁性毒性の証拠はなかった。
【0223】
3カ月群:
この試験の3カ月期間において、ステント挿入された冠状動脈寸法の任意の組織形態計測パラメータについて用量群間で有意差はなかった。しかし、管腔の断面積及び狭窄面積%という新生内膜形成を記述する2つの主要な変数に弱い低下傾向が存在した。
【0224】
移植後3カ月目にブタ冠状動脈試料における対照ステントの組織病理学的外観は、1カ月群からの対照のものと同様に見え、且つ3カ月期間での全ての群のものと同様に見えた。全ての試料は、線維細胞性新生内膜形成を示し、新生内膜及び融合性扁平管腔周囲細胞層にほとんど紡錘状の平滑筋様細胞があった。新生内膜に壁内出血又は持続性線維素様沈着物はなかったが、しかし、試料のあるもの、特に比較的厚い新生内膜を有するものは、以前の血栓蓄積及び新生内膜での新血管形成の形態でのその後の器質化の証拠を示した。場合により、試料は、中膜構造の破壊を伴う、ステントストラットに局在する中程度から重度の炎症反応の証拠を示した。これらは同様に比較的厚い新生内膜も伴うことが最も多かった。しかし、これらは、数は少なく、薬剤コーティングステント群と同様に対照群にも認められた。これらは、移植ステントに対する動物固有の全身反応、ステントの汚染の証拠、又はこれらの2つの要因の何らかの組合せのいずれかを表すものであったと推定され、ブタ冠状動脈におけるステント移植の試験で約10〜15%の発生率で一般に認められる。いずれの試料においても、中膜の壊死又はステントからの中膜の分離の証拠はなかった。3カ月移植の大部分の外膜は、1カ月移植よりもいくらか多くの新血管形成を有するように見えたが、これは対照群又は試験ステント群に関連するように見えなかった。走査電子顕微鏡検査は、対照群及び全ての用量群において希な付着血液細胞を有する融合性内皮を示した。
【0225】
ABT−578でコーティングされたステントは、ブタ冠状動脈におけるステント内新生内膜形成を低減させ、1カ月目で生物学的薬剤効果(新生内膜の再吸収されない血栓/フィブリン沈着物)の明らかな証拠を与えた。ABT−578でコーティングされたステントが3カ月の比較的長い期間の間隔で持続性阻害効果を示す傾向は弱かった。調べたいずれの時間間隔でも、約27μg/mmステント長の最高用量を含めて、いずれかの用量群に関連した中膜壊死又はステント付着不良の形態での局所冠状動脈壁毒性はなかった。全てのステントは組織に良好に取り込まれ、1カ月間隔及び3カ月間隔での線維細胞の新生内膜取込み及び内皮被覆の形態での安定な治癒反応の証拠が存在した。ステントがこの動物に移植後3カ月目での持続性阻害効果の傾向は驚くべきであり、移植ステントから生じる臨床的再狭窄を予防することに持続性効果の可能性の証拠を与える。
【0226】
実施例7
二相混合物中でラパマイシン類似体を結晶化させることによってラパマイシン類似体結晶を調製した。簡単には、ABT−578を0.23gのアセトン及び0.82gのヘプタンを含むバイアルに添加し、液相を飽和させるために0℃でインキュベートした。ABT−578をアセトン溶液中に溶解させ、ABT−578−アセトンに富む下相及びヘプタンに富む上相を生じたときに、液−液相分離が生じるまでこの混合物をインキュベートした。二相混合物を0℃で10日間インキュベートし、ラパマイシン類似体結晶がバイアルの底部に認められた。図2Aは、粉末X線回折(PXRD)パターンを示す。
【0227】
関連結晶学的情報についてアセトン溶媒和物を分析した。これは表10に含める。c−軸に沿った溶媒分子が、ABT−578分子を分離することが測定された。溶媒分子はかなり不規則であるが、ABT−578の1分子当たり4個のアセトン、及び2個の水分子が存在するように見える。ABT−578分子は、a−軸及びb−軸に沿ってファンデルワールス相互作用を介して相互作用する。
【0228】
【表10】

【0229】
実施例8
ABT−578トルエン溶媒和物の結晶を以下の手順で生成した。300mgのトルエンに100mgの非晶質ABT−578を溶解させことによって透明溶液を調製した。この溶液を22℃で15時間撹拌し、その後結晶性固体の濃厚スラリーを認めた。図4Aは、結晶種として上記調製からの固体を用いて調製したトルエン溶媒和物結晶の粉末X線回折パターンを示す。
【0230】
実施例9
非晶質ABT−578でアセトニトリルを22℃で飽和させ、次いで、この飽和溶液を0℃で2時間インキュベートすることによって、ABT−578アセトニトリル脱溶媒和された溶媒和物の結晶を生成した。図5Aはこの結晶の粉末X線回折パターンを示す。次いで、結晶を乾燥させて、アセトニトリル脱溶媒和物を形成することができ、図6Cはこの脱溶媒和物の熱重量分析データを示す。
【0231】
実施例10
ギ酸エチル中アセトニトリル溶媒和物の湿ケーキを0℃でスラリー化することによってABT−578ギ酸エチル溶媒和物の結晶を生成した。図7A及び図7Cは、それぞれ、この結晶の粉末X線回折パターン及び熱重量分析を示す。
【0232】
実施例11
酢酸イソプロピル中でアセトニトリル溶媒和物の湿ケーキを0℃でスラリー化することによって、ABT−578酢酸イソプロピル溶媒和物の結晶を生成した。
【0233】
実施例12
バイアルに380mg非晶質のABT−578を添加し、それに870mgの酢酸イソブチルを入れて溶解を可能にさせることによって、ABT−578の結晶を調製した。これを0℃で16時間インキュベートし、その後結晶スラリーを得た。図9A及び図9Cは、それぞれ、この結晶の粉末X線回折パターン及び熱重量分析を示す。
【0234】
実施例13
バイアルに417mgの非晶質ABT−578を添加し、それに315mgのエタノール(アルコール度数200)を入れて溶解を可能にさせることによって、ABT−578エタノール溶媒和物の結晶を調製した。これを15時間後にアセトニトリル脱溶媒和化溶媒和物で結晶種を入れ、0℃でさらに16時間インキュベートし、その後結晶スラリーを得た。
【0235】
実施例14
N,N−ジメチルホルムアミド中にアセトニトリル溶媒和物の湿ケーキを0℃でスラリー化することによって、ABT−578のN,N−ジメチルホルムアミド溶媒和物の結晶を生成した。図10A及び図10Bは、それぞれ、この結晶の粉末X線回折パターン及び熱重量分析を示す。
【0236】
実施例15
アニソール中にアセトニトリル溶媒和物の湿ケーキを0℃でスラリー化することによって、ABT−578アニソール溶媒和物の結晶を生成した。図11A及び図11Cは、それぞれ、この結晶の粉末X線回折パターン及び熱重量分析を示す。
【0237】
実施例16
200μLのアセトン中約120mgの非晶質ラパマイシン類似体を周囲温度で溶解し、得られた溶液を、5℃で14時間、又は結晶固体が結晶スラリー中に認められるまでインキュベートすることによって、アセトン溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体を調製した。この結晶を粉末X線回折によって分析し、これを図2Bに示す。結晶を周囲温度で平衡化して、その後真空下(水銀約3インチ)、30℃でさらに乾燥させた。次いで、乾燥結晶を粉末X線回折によって分析し、これを図3Bに示す。
【0238】
実施例17
約400μLのトルエン中に約220mgの非晶質ラパマイシン類似体を45℃で溶解し、溶液を形成することによって、トルエン溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体を調製した。溶液を5℃で約1時間又は結晶固体が認められ得るまでインキュベートした。図4Bは、トルエン溶媒和物の回折パターンである。脱溶媒和されたトルエン溶媒和物の回折パターンを図4Eに示す。溶媒和物結晶を周囲温度で平衡化させ、その後真空(水銀約3インチ)下、30℃でさらに乾燥させることによって、脱溶媒和された結晶を得た。
【0239】
加熱後のトルエンの喪失を3段階で記述することができる。第1段階のトルエンの喪失は、90℃未満の温度においてである。第2段階は、90℃から130℃までの温度においてであり、最後の段階は、溶融後であり、150℃を超える。したがって、乾燥によって得られる結晶性の脱溶媒和されたトルエン溶媒和物は、部分的に脱溶媒和された生成物である。トルエン溶媒和物のX線単結晶構造を決定されている。結晶情報を表11に記載する。
【0240】
【表11】

【0241】
ABT−578トルエンはP21キラル空間群において結晶化し、それぞれの単位セルに2個のABT−578分子が存在する。図4CはABT−578トルエン溶媒和物のX線単結晶構造を示し、これはモリブデン−κアルファ放射線(0.070930)を用いて得た。構造から理解できるように、結晶の各非対称単位において、3個のトルエン分子及び1個のゾタロリムス分子が存在する。したがって、トルエン溶媒和物は3トルエン和物である。3個のトルエン分子(T、T、及びT)の中で、T及びTはABT−578分子と短距離の接触を有する(すなわち、C−H・・・π及びC=O・・・H−C=C相互作用)。Tは弱いファンデルワールス力を介してのみ周囲の分子と相互作用する。興味深いことに、トルエン溶媒和物結晶構造において、図4Dに示されるようにb軸に沿った溶媒チャネルが存在する。トルエン分子T及びTは、チャネルにより多く露出し、結晶から比較的容易に移動することが予想される。一方、トルエン分子Tは、ABT−578分子によって囲まれた空隙に半分閉じ込められている。したがって、これらの3個の異なるトルエン分子について、TはABT−578分子に強固に結合し、Tは中程度に結合し、Tは緩く結合する。これは、トルエン溶媒和物が乾燥/加熱後のトルエンの段階的喪失を示すこと、及び結晶からのトルエンの完全除去を達成するのが困難であるという事実を説明する。これは、図4Fに示されるように、トルエン溶媒和物の脱溶媒和のPXRDパターン変化によって証明されるように、乾燥後に結晶格子がa軸に沿って収縮することも説明する。
【0242】
実施例18
45℃で200μLのアセトニトリル中に約100mgの非晶質ラパマイシン類似体を溶解させ、約−12℃で約30時間インキュベートし、その後溶液に微量のトルエン溶媒和物結晶で結晶種を入れすることによって、アセトニトリル溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体を調製した。結晶種入れ後に−12℃でさらにインキュベートすることによって結晶固体が生成した。次いで、結晶を粉末X線回折によって分析することができ、これを図5Bで示す。結晶を周囲温度で平衡化し、その後真空(水銀約3インチ)下、30℃でさらに乾燥させた。乾燥結晶は粉末X線回折によって分析することができ、これを図6Bに示す。
【0243】
実施例19
200μLのギ酸エチル中に約100mgの非晶質ラパマイシン類似体を45℃で溶解させ、約5℃で約14時間、又は結晶が生成するまでインキュベートすることによって、ギ酸エチル溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体を調製した。図7Bは、ギ酸エチル溶媒和物の回折パターンである。ギ酸エチル脱溶媒和物の回折パターンを図8で示す。溶媒和物結晶を周囲温度で平衡化させ、その後真空(水銀約3インチ)下、30℃でさらに乾燥させることによって、脱溶媒和された結晶を得た。
【0244】
実施例20
約200μLの酢酸イソプロピル中に約100mgの非晶質ラパマイシン類似体を周囲温度で溶解させることによって、酢酸イソプロピル溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体を調製した。この溶液を5℃で14時間又は結晶固体が認められるまでインキュベートした。酢酸イソプロピル溶媒和物の回折パターンを図17Aで示す。溶媒和物結晶を周囲温度で平衡化させ、その後真空(水銀約3インチ)下、30℃でさらに乾燥させることによって、脱溶媒和された結晶を得た。図17Bは、脱溶媒和された溶媒和物のX線粉末回折パターンを示す。
【0245】
実施例21
バイアルに約400mgの非晶質ラパマイシン類似体を添加し、そのバイアルに約870mgの酢酸イソブチルを入れ、周囲温度で溶解を可能にさせることによって、酢酸イソブチルの溶媒和物の結晶ラパマイシン類似体を調製した。次いで、この溶液を約0℃で約16時間、又は結晶スラリーが得られるまでインキュベートした。次いで、結晶を粉末X線回折によって分析し、これを図9Bで示す。
【0246】
実施例22
400μLのエタノール(200アルコール度数)中に約100mgの非晶質ラパマイシン類似体を45℃で溶解させ、約5℃で14時間又は結晶が生成するまでインキュベートすることによって、エタノール溶媒和物の形態の結晶ラパマイシン類似体を調製した。図12Aはこの溶媒和物の回折パターンを示す。溶媒和物結晶を周囲温度で平衡化させ、その後真空(水銀約3インチ)下、30℃でさらに乾燥させることによって、脱溶媒和された結晶を得た。図12Bは、この脱溶媒和された溶媒和物のX線粉末回折パターンを示す。
【0247】
実施例23
200μLのメタノール中に93mgの非晶質ABT−578を周囲温度で溶解させ、−12℃で30時間保存し、その後、微量のトルエン溶媒和物結晶で結晶種を入れることによって、ABT−578メタノール溶媒和物の結晶を調製した。−12℃でさらにインキュベートすることによって結晶種入れ後に結晶固体が生成した。図13A及び図13Bは、それぞれ、この溶媒和物結晶及び脱溶媒和された溶媒和物のX線粉末回折パターンを示す。溶媒和物結晶を周囲温度で平衡化させ、その後真空(水銀約3インチ)下、30℃でさらに乾燥させることによって、脱溶媒和された結晶を得た。
【0248】
実施例24
200μLの酢酸エチル中に103mgの非晶質ABT−578を周囲温度で溶解させ、−12℃で30時間保存し、その後微量のトルエン溶媒和物結晶で結晶種を入れることによって、ABT−578酢酸エチル溶媒和物の結晶を調製した。−12℃でさらにインキュベートすることによって、結晶種を入れた後結晶固体を生成した。図14A及び図14Bは、それぞれ、溶媒和物結晶及び対応する脱溶媒和された溶媒和物のX線粉末回折パターンを示す。溶媒和物結晶を周囲温度で平衡化させ、その後真空(水銀約3インチ)下、30℃でさらに乾燥させることによって脱溶媒和された結晶を得た。
【0249】
実施例25
200μLのメチルイソプロピルケトン中に96mgの非晶質ABT−578を周囲温度で溶解させ、−12℃で30時間保存し、その後に微量のトルエン溶媒和物結晶で結晶種を入れることによって、ABT−578メチルイソプロピルケトン溶媒和物の結晶を調製した。結晶種を入れた後、−12℃でさらにインキュベートすることによって結晶固体が生成した。図15A及び図15Bは、それぞれ、溶媒和物結晶及び対応する脱溶媒和された溶媒和物のX線粉末回折パターンを示す。溶媒和物結晶を周囲温度で平衡化させ、その後真空(水銀約3インチ)下、30℃でさらに乾燥させることによって脱溶媒和された結晶を得た。
【0250】
実施例26
200μLのニトロメタン中に100mgの非晶質ABT−578を周囲温度で溶解させ、−12℃で30時間保存し、その後微量のトルエン溶媒和物結晶で結晶種を入れることによって、ABT−578ニトロメタン溶媒和物の結晶を調製した。結晶種を入れた後、−12℃でさらにインキュベートすることによって結晶固体が生成した。ABT−578のニトロメタン溶媒和物は周囲温度で容易に脱溶媒和し、X線粉末回折パターン分析において半結晶相のように見えた(図16)。
【0251】
実施例27
200μLのプロピオニトリル中に108mgの非晶質ABT−578を45℃で溶解させ、−12℃で30時間保存し、その後に、微量のトルエン溶媒和物結晶で結晶種を入れることによって、ABT−578プロピオニトリル溶媒和物の結晶を調製した。結晶種を入れた後、−12℃でさらにインキュベートすることによって結晶固体が生成した。図18Aは、溶媒和物結晶のX線粉末回折パターンを示し、結晶の脱溶媒和は半結晶相を生じた。溶媒和物を周囲温度で平衡化させ、その後に真空(水銀約3インチ)下、30℃でさらに乾燥することによって脱溶媒和された結晶を得た。図18Bは、脱溶媒和された溶媒和物のX線粉末回折パターンを示す。
【0252】
実施例28
200μLのメチルエチルケトン中に94mgの非晶質ABT−578を周囲温度で溶解させ、−12℃で30時間保存し、その後に微量のトルエン溶媒和物結晶で結晶種を入れることによって、ABT−578メチルエチルケトン溶媒和物の結晶を調製した。結晶種を入れた後、−12℃でさらにインキュベートすることによって結晶固体が生成した。図19Aは、溶媒和物結晶のX線粉末回折パターンを示し、結晶の脱溶媒和は、半結晶相を生じた。溶媒和物結晶を周囲温度で平衡化させ、その後、真空(水銀約3インチ)下、30℃でさらに乾燥させることによって、脱溶媒和された結晶を得た。図19Bは、脱溶媒和された溶媒和物のX線粉末回折パターンを示す。
【0253】
実施例29
周囲温度で200μLのテトラヒドロフラン中に107mgの非晶質ABT−578を溶解させ、−12℃で30時間保存し、その後微量のトルエン溶媒和物結晶で結晶種を入れることによって、ABT−578テトラヒドロフラン溶媒和物の結晶を調製した。結晶種を入れた後、−12℃でさらにインキュベートすることによって結晶固体を得た。図20Aは、結晶のX線粉末回折パターンを示し、結晶の脱溶媒和は、半結晶相を生じた。溶媒和物結晶を周囲温度で平衡化し、その後真空(水銀3インチ)下、30℃でさらに乾燥させることによって脱溶媒和化結晶を得た。図20Bは、脱溶媒和された溶媒和物のX線粉末回折パターンを示す。
【0254】
実施例30
200μLの1,2−ジメトキシエタン中に110mgの非晶質ABT−578を周囲温度で溶解させ、−12℃で30時間保存し、その後に微量のトルエン溶媒和物結晶で結晶種を入れることによってABT−578の1,2−ジメトキシエタン溶媒和物の結晶を調製した。結晶種を入れた後、−12℃でさらにインキュベートすることによって結晶固体が生成した。図21Aは、溶媒和物結晶のX線粉末回折パターンを示し、結晶の脱溶媒和は、半結晶相を生じた。溶媒和物結晶を周囲温度で平衡化させ、その後真空(水銀約3インチ)下、30℃で乾燥させることによって脱溶媒和された結晶を得た。図21Bは、脱溶媒和化溶媒和物のX線粉末回折パターンを示す。
【0255】
実際に当然と思われた特定の実施形態又は変更の様々な点で本発明を記載し、開示し、説明し及び示してきたが、本発明の範囲は、それにより限定されることを意図しないし、又は限定されるとみなされるべきでもなく、本明細書における教示により示唆され得るような他の変更又は実施形態は、それらが本明細書に添付される請求項の外延又は範囲内に特に入るとして特に留保される。さらに、本明細書に列挙される全ての刊行物は、具体的な参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態のラパマイシン類似体を含むラパマイシン類似体組成物。
【請求項2】
ラパマイシン類似体が式1:
【化1】


の構造を有し、場合によってプロドラッグ、塩、誘導体、又はそれらの組合せである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ラパマイシン類似体が式2:
【化2】



の構造を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ラパマイシン類似体が式3:
【化3】


の構造を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
結晶が溶媒和物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ラパマイシン類似体溶媒和物が、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、ギ酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、アニソール、メチルイソプロピルケトン、ニトロメタン、プロピオニトリル、2−ブタノン(すなわち、メチルエチルケトン又はMEK)、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸イソプロピル、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
結晶が脱溶媒和物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
結晶が、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、ギ酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、アニソール、メチルイソプロピルケトン、ニトロメタン、プロピオニトリル、2−ブタノン(すなわち、メチルエチルケトン又はMEK)、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される有機溶媒の脱溶媒和物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.2、9.1、及び/又は13.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
粉末X線回折パターンが、実質的に図2Aにおけるようである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、5.5、10.6、13.3、及び/又は16.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
粉末X線回折パターンが、実質的に図2Bにおけるようである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、10.2、10.5、及び/又は13.3にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
粉末X線回折パターンが、実質的に図3Aにおけるようである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.3及び/又は12.6にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
粉末X線回折パターンが、実質的に図3Bにおけるようである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.4、5.9、9.9、13.8、及び/又は15.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
粉末X線回折パターンが、実質的に図4A又は図4Bにおけるようである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.2、5.6、6.0、7.3、10.0、及び/又は21.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
粉末X線回折パターンが、実質的に図5Aにおけるようである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、10.6、12.8、13.3、15.9、16.7、21.3、及び/又は21.9にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
粉末X線回折パターンが、実質的に図5Bにおけるようである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
結晶ラパマイシン類似体が、約3.9、8.7、9.5、13.8、15.7、及び/又は16.9にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
粉末X線回折パターンが、実質的に図6Aにおけるようである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.2、10.4、11.9、12.5、15.4、18.5、及び/又は21.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
粉末X線回折パターンが、実質的に図6Bにおけるようである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.9、7.7、9.1、10.0、及び/又は10.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
粉末X線回折パターンが、実質的に図7Aにおけるようである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、5.5、10.6、15.9、16.5、及び19.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
粉末X線回折パターンが、実質的に図7Bにおけるようである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.0、7.0、9.1、10.1、15.4、及び16.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
粉末X線回折パターンが、実質的に図9A又は図9Bにおけるようである、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.1、7.2、9.0、9.2、10.3、11.5、15.7、及び16.3にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項34】
粉末X線回折パターンが、実質的に図10A又は図10Bにおけるようである、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.1、8.9、9.4、10.0、10.2、及び12.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
粉末X線回折パターンが、実質的に図11A又は図11Bにおけるようである、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.4、6.0、8.8、10.0、12.1、14.1、17.6、18.4、及び/又は19.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項38】
粉末X線回折パターンが、実質的に図13Aにおけるようである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.2、10.5、13.3、15.8、16.5、及び/又は19.1にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項40】
粉末X線回折パターンが、実質的に図14Aにおけるようである、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.4、10.8、11.8、16.9、及び/又は17.9にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項42】
粉末X線回折パターンが、実質的に図16におけるようである、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.1、10.2、16.3、17.1、19.2、20.1、及び/又は20.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項44】
粉末X線回折パターンが、実質的に図15Aにおけるようである、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、7.2、10.5、15.8、16.6、19.1、及び/又は21.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項46】
粉末X線回折パターンが、実質的に図12Aにおけるようである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.2、10.5、10.8、15.7、16.5、及び/又は19.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項48】
粉末X線回折パターンが、実質的に図17Aにあるようである、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.8、9.6、11.7、13.6、15.9、17.4、20.6、及び/又は23.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項50】
粉末X線回折パターンが、実質的に図18Aにおけるようである、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、10.5、13.3、15.8、及び/又は16.6にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項52】
粉末X線回折パターンが、実質的に図19Aにおけるようである、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
結晶ラパマイシン類似体が、約4.6、5.2、9.3、16.5、17.0、及び/又は18.6にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項54】
粉末X線回折パターンが、実質的に図20Aにおけるようである、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、10.1、10.5、15.8、16.5、19.1、19.6、及び/又は21.1にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項56】
粉末X線回折パターンが、実質的に図21Aにおけるようである、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.9、6.2、9.1、9.8、12.5、13.6、16.4、17.7、17.9、及び/又は21.8にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項58】
粉末X線回折パターンが、実質的に図4Eにおけるようである、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.2、9.1、10.5、12.5、14.3、16.5、18.0、20.1、21.8、及び/又は22.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項60】
粉末X線回折パターンが、実質的に図13Bにおけるようである、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.6、7.1、8.6、9.1、12.6、14.5、及び/又は15.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項62】
粉末X線回折パターンが、実質的に図14Bにおけるようである、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.1、6.2、10.2、12.4、16.4、及び/又は17.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項64】
粉末X線回折パターンが、実質的に図15Bにおけるようである、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.2、12.5、及び/又は15.4にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項66】
粉末X線回折パターンが、実質的に図8におけるようである、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.3、9.2、12.7、13.8、及び/又は16.1にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項68】
粉末X線回折パターンが、実質的に図12Bにおけるようである、請求項67に記載の組成物。
【請求項69】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.5、6.1、8.0、10.5、12.6、13.6、16.6、及び/又は19.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項70】
粉末X線回折パターンが、実質的に図17Bにおけるようである、請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.4、6.8、9.3、13.8、及び/又は16.8にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項72】
粉末X線回折パターンが、実質的に図18Bにおけるようである、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.3、8.1、12.7、及び/又は16.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項74】
粉末X線回折パターンが、実質的に図19Bにおけるようである、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
結晶ラパマイシン類似体が、約3.8、6.0、9.2、9.9、11.8、12.4、及び/又は13.7にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項76】
粉末X線回折パターンが、実質的に図20Bにおけるようである、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.6、7.1、9.2、14.6、及び/又は15.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項78】
粉末X線回折パターンが、実質的に図21Bにおけるようである、請求項77に記載の組成物。
【請求項79】
結晶ラパマイシン類似体が治療有効量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項80】
結晶形態のラパマイシン類似体を調製する方法であって、
ラパマイシン類似体を少なくとも1種の有機媒体と混合して混合物を形成する段階;
ラパマイシン類似体が結晶化するまで混合物をインキュベートする段階;及び
有機媒体から結晶ラパマイシン類似体を回収する段階
を含む方法。
【請求項81】
さらに、前記有機媒体が、混合物を形成するための少なくとも1種の有機溶媒を含み;
ラパマイシン類似体を有機溶媒中に溶解させ;
ラパマイシン類似体が結晶化するまで溶媒をインキュベートする、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
少なくとも1種のアンチソルベントをラパマイシン類似体及び溶媒と混合して二相混合物を形成する段階;及び
二相混合物をインキュベートして溶媒中に存在する大多数のラパマイシン類似体とアンチソルベント中に存在する少数のラパマイシン類似体とに分割された液−液相を生じさせる段階
をさらに含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
有機溶媒をアンチソルベントから分離する段階をさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
有機溶媒が極性有機溶媒である、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
有機溶媒が、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、ギ酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、アニソール、メチルイソプロピルケトン、ニトロメタン、プロピオニトリル、2−ブタノン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1種を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
アンチソルベントが、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサン、n−オクタン、イソ−オクタン、メチルシクロヘキサン、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1種を含む、請求項82に記載の方法。
【請求項87】
インキュベートする段階が、約−10℃から約10℃の温度で行われる、請求項80に記載の方法。
【請求項88】
結晶ラパマイシン類似体のスラリーを形成する段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項89】
ラパマイシン類似体が結晶化するまで前記混合物を撹拌する段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項90】
混合物を飽和させる段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項91】
有機媒体と混合されたラパマイシン類似体が結晶形態である、請求項80に記載の方法。
【請求項92】
混合物を第2の有機媒体と混合する段階をさらに含み、ここで、インキュベートされている混合物には第2の有機媒体が含まれる、請求項80に記載の方法。
【請求項93】
有機媒体と混合されたラパマイシン類似体が非晶質形態である、請求項80に記載の方法。
【請求項94】
有機媒体が、医薬品グレード組成物を調製するのに許容される医薬的に許容される溶媒である、請求項80に記載の方法。
【請求項95】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.2、9.1、及び/又は13.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項96】
粉末X線回折パターンが、実質的に図2Aにおけるようである、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、5.5、10.6、13.3、及び/又は16.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項98】
粉末X線回折パターンが、実質的に図2Bにおけるようである、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、10.2、10.5、及び/又は13.3にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項100】
粉末X線回折パターンが、実質的に図3Aにおけるようである、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.3及び/又は12.6にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項102】
粉末X線回折パターンが、実質的に図3Bにおけるようである、請求項102に記載の方法。
【請求項103】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.4、5.9、9.9、13.8、及び/又は15.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項104】
粉末X線回折パターンが、実質的に図4A又は図4Bにおけるようである、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.2、5.6、6.0、7.3、10.0、及び/又は21.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項106】
粉末X線回折パターンが、実質的に図5Aにおけるようである、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、10.6、12.8、13.3、15.9、16.7、21.3、及び/又は21.9にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項108】
粉末X線回折パターンが、実質的に図5Bにおけるようである、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
結晶ラパマイシン類似体が、約3.9、8.7、9.5、13.8、15.7、及び/又は16.9にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項110】
粉末X線回折パターンが、実質的に図6Aにおけるようである、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.2、10.4、11.9、12.5、15.4、18.5、及び/又は21.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項112】
粉末X線回折パターンが、実質的に図6Bにおけるようである、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.9、7.7、9.1、10.0、及び/又は10.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項114】
粉末X線回折パターンが、実質的に図7Aにおけるようである、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、5.5、10.6、15.9、16.5、及び/又は19.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項116】
粉末X線回折パターンが、実質的に図7Bにおけるようである、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.0、7.0、9.1、10.1、15.4、及び16.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項118】
粉末X線回折パターンが、実質的に図9A又は図9Bにおけるようである、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.1、7.2、9.0、9.2、10.3、11.5、15.7、及び16.3にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項120】
粉末X線回折パターンが、実質的に図10A又は図10Bにおけるようである、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.1、8.9、9.4、10.0、10.2、及び12.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項122】
粉末X線回折パターンが、実質的に図11A又は図11Bにおけるようである、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.4、6.0、8.8、10.0、12.1、14.1、17.6、18.4、及び/又は19.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項124】
粉末X線回折パターンが、実質的に図13Aにおけるようである、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.2、10.5、13.3、15.8、16.5、及び/又は19.1にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項126】
粉末X線回折パターンが、実質的に図14Aにおけるようである、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.4、10.8、11.8、16.9、及び/又は17.9にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項128】
粉末X線回折パターンが、実質的に図16におけるようである、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.1、10.2、16.3、17.1、19.2、20.1、及び/又は20.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項130】
粉末X線回折パターンが、実質的に図15Aにおけるようである、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、7.2、10.5、15.8、16.6、19.1、及び/又は21.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項132】
粉末X線回折パターンが、実質的に図12Aにおけるようである、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.2、10.5、10.8、15.7、16.5、及び/又は19.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項134】
粉末X線回折パターンが、実質的に図17Aにおけるようである、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
結晶ラパマイシン類似体が、約5,8、9.6、11.7、13.6、15.9、17.4、20.6、及び/又は23.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項136】
粉末X線回折パターンが、実質的に図18Aにおけるようである、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、10.5、13.3、15.8、及び/又は16.6にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項138】
粉末X線回折パターンが、実質的に図19Aにおけるようである、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
結晶ラパマイシン類似体が、約4.6、5.2、9.3、16.5、17.0、及び/又は18.6にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項140】
粉末X線回折パターンが、実質的に図20Aにおけるようである、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.3、10.1、10.5、15.8、16.5、19.1、19.6、及び/又は21.1にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項142】
粉末X線回折パターンが、実質的に図21Aにおけるようである、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.9、6.2、9.1、9.8、12.5、13.6、16.4、17.7、17.9、及び/又は21.8にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項144】
粉末X線回折パターンが、実質的に図4Eにおけるようである、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.2、9.1、10.5、12.5、14.3、16.5、18.0、20.1、21.8、及び/又は22.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項146】
粉末X線回折パターンが、実質的に図13Bにおけるようである、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.6、7.1、8.6、9.1、12.6、14.5、及び/又は15.0にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項148】
粉末X線回折パターンが、実質的に図14Bにおけるようである、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.1、6.2、10.2、12.4、16.4、及び/又は17.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項150】
粉末X線回折パターンが、実質的に図15Bにおけるようである、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.2、12.5、及び/又は15.4にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項152】
粉末X線回折パターンが、実質的に図8におけるようである、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.3、9.2、12.7、13.8、及び/又は16.1にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項154】
粉末X線回折パターンが、実質的に図12Bにおけるようである、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
結晶ラパマイシン類似体が、約5.5、6.1、8.0、10.5、12.6、13.6、16.6、及び/又は19.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項156】
粉末X線回折パターンが、実質的に図17Bにおけるようである、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.4、6.8、9.3、13.8、及び/又は16.8にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項158】
粉末X線回折パターンが、実質的に図18Bにおけるようである、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.3、8.1、12.7、及び/又は16.5にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項160】
粉末X線回折パターンが、実質的に図19Bにおけるようである、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
結晶ラパマイシン類似体が、約3.8、6.0、9.2、9.9、11.8、12.4、及び/又は13.7にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項162】
粉末X線回折パターンが、実質的に図20Bにおけるようである、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
結晶ラパマイシン類似体が、約6.6、7.1、9.2、14.6、及び/又は15.2にピークを有する粉末X線回折パターンを有することを特徴づけする段階をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項164】
粉末X線回折パターンが、実質的に図21Bにおけるようである、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
ラパマイシン類似体が式1:
【化4】

の構造を有する、請求項80に記載の方法。
【請求項166】
【化5】

ラパマイシン類似体が式2:
の構造を有する、請求項80に記載の方法。
【請求項167】
【化6】

ラパマイシン類似体が式3:
の構造を有する、請求項80に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【公表番号】特表2010−500286(P2010−500286A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521936(P2009−521936)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/074159
【国際公開番号】WO2008/014222
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】