説明

結晶形成デバイスならびに結晶形成デバイスを作製および使用するためのシステムおよび方法

本発明は、マイクロ流体デバイス及びその使用方法を提供する。本発明は、マイクロ流体デバイスの使用、マイクロ流体デバイスの中で実行される反応を解析するための装置及びシステム、ならびにマイクロ流体デバイスの使用で得られるデータの生成、保存、編成、及び解析のためのシステムをさらに提供する。本発明は、一部の実施形態において結晶形成に有用なマイクロ流体システム及びデバイスを使用し、製作する方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本願は、35U.S.C.119条(e)項の下に、以下の共同所有、同時係属米国仮特許出願による優先権の利益を主張する;
2004年3月30日にUngerが出願した60/558,316、名称「Microfluidic Devices and Systems and Methods for Using the Same」;
2004年3月29日にUngerが出願した60/557,715、名称「Microfluidic Devices and Systems and Methods for Using the Same」;及び
2004年1月25日にUngerらが出願した60/539,283
、名称「Microfluidic Devices and Systems and Methods for Using the Same」;
これら出願の各々を、本明細書で開示するすべての目的及び特定の目的のために、その全体を参考として本明細書に組み込む。
【0002】
(特許及び特許出願との相互参照)
本発明は以下の特許及び特許出願に開示された内容に関連する:2001年2月28日にUngerら(以降「Unger」)が出願し、現在は米国特許第6,408,878号となっている、名称「Microfablicated Elastomeric Valve and Pump Systems」の米国特許出願第09/796,666号;2002年4月5日にHansenら(以降「Hansen」)が出願し、US2003.9961687 A1として公開された米国特許出願第09/887,997号;及び、2002年5月30日にDelucasら(以降「Delucas」)が出願し、2002年11月2日に米国特許公開第2002/0164812 A1号として公開された米国特許出願第10/160,906号、この出願は、2000年4月5日に出願され、現在は放棄されている米国特許出願第09/543,326号の継続であり、1999年4月6日に出願された米国仮特許出願第60,128,012号に対する優先権を主張している。これら各々の開示内容を、すべての目的のために参考として本明細書に組み込む。
【0003】
本発明は、2004年11月24日にFacerらが出願した、名称「Devices and Methods for Holding Microfluidic Devices」の米国特許出願第10/997,714号にさらに関連する。前記出願は、2003年11月26日にFacerらが出願した米国仮特許出願第60/525,245号対する優先権を主張しており、これら出願の全開示内容をすべての目的のために参考として本明細書に組み込む。
【0004】
本発明は、2004年4月19日にNassefらが出願した、名称「Crystal Growth Devices and Systems, and Methods for Using Same」の米国特許出願第10/827,917号にさらに関連する。前記出願は、2003年10月5日にNassefらが出願した米国仮特許出願第60/509,098号、及び2003年4月28日にNassefらが出願した第60/466,305号、及び2003年4月17日にNassefらが出願した第60/463,778号に対する優先権を主張しており、これら出願の全開示内容をすべての目的のために参考として本明細書に組み込む。
【0005】
(発明の分野)
本発明は、他の分野もあるが、とりわけ流体工学、ラブオンチップ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、生化学分析、タンパク質結晶化及びタンパク質結晶化条件設定のためのスクリーニング、マイクロ加工、実験用ロボット工学、及び自動バイオロジカル・スクリーニング及び分析に関する。
【背景技術】
【0006】
結晶化は、生物学及び化学技術において重要な技法である。具体的には、ターゲット化合物の高品質な結晶をx線回析技法によって分析し、ターゲットの正確な三次元構造を生成することができる。そこで、この三次元構造情報を利用してターゲットの機能性及び作用を予測することができる。
【0007】
理論上は、結晶化プロセスは簡単である。純粋な形態のターゲット化合物を溶剤に溶解する。次に溶解したターゲット材料の化学的環境を、ターゲットの溶解性が低下して結晶性形状で固相に戻るように変化させる。この化学的環境の変化は、通常、結晶化剤を取り入れることで実現されるが、温度及び圧力を変化させてターゲット材料の溶解性を操作することもできる。
【0008】
しかしながら、実際上は、高品質の結晶を形成することは一般的に困難で、時には不可能なこともあり、多くの回数の試行錯誤と研究者の忍耐とが必要になる。具体的には、簡単なバイオロジカル化合物であってもその非常に複雑な構造のゆえに、高度に秩序立った結晶構造を形成するには適していない。従って、研究者は、忍耐強く入念でなければならず、結晶が実際に得られる場合であっても、高品質の結晶を得るために、サンプル濃度、溶剤の種類、反溶剤の種類、温度、及び持続時間のようなパラメータを変化させて、多数の結晶化条件の実験をしなければならない。
【0009】
従って、ターゲット材料の結晶化法の大量スクリーニング処理を実施するための方法及び仕組みの技術が求められている。
【0010】
マイクロ流体デバイスは、しばしばチャンネル、マイクロチャンネル、トレンチ、リセスと呼ばれ、1000μmより小さい断面寸法を持ち、処理能力の増加及び反応の量の削減の利点を提供する一つ以上の流体路を有するデバイスとして定義される。マイクロ流体デバイスを、ロボット液体分注システムのような規模の大きなシステムと接合するのは難しい作業であり、単一のマイクロ流体デバイス中で並行して実施可能な反応の数を減らしていた。限定されない例として、Delucasは、例えば、マイクロ流体デバイスを使った、並行アレー構成におけるナノリッター規模のタンパク質結晶化スクリーニング反応を開示している。
【0011】
特許文献1は、例えば、湾曲可能な膜を持つエラストマー・ブロックを備えたマイクロ流体デバイスを開示している。図1A及び1Bに描かれた一つの開示実施形態において、マイクロ・リセス2が形成された底面部8を持つ第一エラストマー層1は、マイクロ・リセス4が形成された第二エラストマー層3の上面7に接合されており、第二エラストマー層3の上面部7によって閉じられた第一エラストマー層1のリセス2によって形づくられた第一チャンネル6を有するエラストマー・ブロック5を形成している。第二エラストマー層のリセス4は、形成された第一チャンネル6とオーバーラップしており、湾曲可能な膜(Deflectable membrane)8は、第二エラストマー層3の、第一チャンネル6と第二エラストマー層3のリセス4とを隔てている部分で形成されている。次に、エラストマー・ブロック5をサブストレート9に取り付けると、第二エラストマー層3のリセス4が、サブストレート9の上面部とともに第二チャンネル10を形成することができる。湾曲可能な膜8を作動し湾曲させ、第二チャンネル10内に出入りさせることによって、第二チャンネル10を通る流体流れを制御することができる。第一チャンネル6内の流体圧力を増減することによって湾曲可能な膜8を作動し、湾曲可能な膜を湾曲させ第二チャンネル10内に出入りさせることができる。これに換えて、第二チャンネル10中の圧力を増減することによって、湾曲可能な膜8を湾曲させ第一チャンネル6内に出入りさせることもできる。
【0012】
図1Cは、バイア11を通して液体を第二チャンネル10中に取り入れることを単に説明したデバイスの使用法を描いたものであり、バイアは、エラストマー・ブロックの最上部から第一エラストマー層1、第二エラストマー層3の一部を通して第二チャンネル10中への流体路をコアリングして作られている。ここでは、第一エラストマー層1を通り第一チャンネル6中にコアリングして作られた第二バイア13を通して、ガス圧のような流体圧力を加えることにより第一チャンネル6中の圧力が増大した場合、湾曲可能な膜8は第二チャンネル10内に湾曲して張り出しサブストレート9の表面と接触し、第二チャンネル10を満たしている流体を区切ることができよう。Ungerは、湾曲可能な膜を作動して、内部流体の動きを誘導及び/又は制限し、膜をバルブ又はポンプの一部として機能させることができる、高密度で信頼できる具体的なマイクロ流体デバイスを提供している。
【0013】
マイクロ流体デバイスの対象用途は、タンパク質の構造解析に十分な大きさの結晶を形成させるための条件をスクリーニングすることである。タンパク質の結晶化は、このようなタンパク質の構造を判定するための重要な工程である。通常、タンパク質を含む溶液とタンパク質結晶化試薬を含む溶液とを手作業でピペット調量し、X線回析調査を実施するためX線源に合わせてセットするのに十分な大きさの結晶をタンパク質が形成するように反応を整えていた。十分な大きさの結晶を形成させる正確な条件の判定は、多くの場合、見たところでは無数の試行錯誤実験を経て決められている。このため、貴重な単離タンパク質は供給が非常に限られていることからも、慎重な使い方をして、正確な結晶化条件をスクリーニングする必要がある。条件スクリーニングにおいてタンパク質を節約するやり方として、スクリーニングにおいて、タンパク質結晶化検定の単量を節減し並行実施される実験の数を増やす取組みが行われている。Delucasは、例えば、ナノリッター規模の(ナノ規模)のタンパク質結晶化実験を行うための方法及びデバイスを開示している。開示された一つの実施形態において、マイクロ流体デバイスを使い、サブストレート中に形成された穴部(well)の中で、ナノ規模のタンパク質結晶化実験を実施する。
【0014】
特許文献2は、例えば、タンパク質結晶化反応を行うためのマイクロ流体デバイスを開示している。Hansenが開示した一部の実施形態は、湾曲可能な膜を備え内部の流体流れを調節するUngerのエラストマー・ブロックを採用している。例えば、あるマイクロ流体デバイスの第一チャンバは、タンパク質の溶液を含み、結晶化剤を含有する溶液を含む第二チャンバと流体連通しており、結晶化剤が第一チャンバ中のタンパク質と接触すると、タンパク質が結晶化するように誘導することができる。多くの中の一つの例において、各チャンバ間の流体連通は一つ以上のチャンネルを介して行われる。各チャンバの間に配置されて、チャンネルと連通するバルブを作動し、2つのチャンバの間の拡散を調節することができる。第一チャンバは、タンパク質を含有する溶液を第一チャンバ中に取り入れるための第一注入口と連通しており、第二チャンバ作用剤は、結晶化剤を含有する溶液をこのチャンバに取り入れるための第二注入口と連通している。
【0015】
特許文献2は、例えば、Hansenのデバイスを保持するための取付台(carrier)を開示している。Hansen取付台の例が、図2に示されており、マイクロ流体構造体11000は、穴部列11012a及び穴部列11012b、サンプル注入口11012c及び収納バルブ制御注入口1102d及びインタフェース・バルブ制御注入口11012eのような、いくつかの注入口と注入口列とを有し、フレームベース11002の内側のビューウインドウ1103を持つ収納域1106の中に配置されている。上部フレーム11014は、圧力キャビティ11026及び11024を具えており、フレームベース11002の上に、間にマイクロ流体構造体11000をはさんで設置され、各圧力キャビティは穴部列11012a及び11012bに向かい合ってシールされ、各穴部列の上部に圧力チャンバが形成されるようにする。使用において、通常、穴部列11012a及び11012bの各々の穴部はタンパク質を結晶化するための各種試薬で満たされ、サンプル注入口11012cには、結晶化されるタンパク質を含有するサンプル溶液が取り込まれる。格納バルブ制御注入口11012d及びインタフェース・バルブ制御注入口11012eは、通常、オイル又は水のような液体で満たされ、マイクロ流体デバイス中のバルブを液圧で作動する。制御注入口11012d及び11012eに圧力気体ラインを挿入し、マイクロ流体デバイス内の各制御注入チャンネル中に包含される液体に流体連通させた高圧ガスを加え、これにより、図1にしたように、第一エラストマー層と第二エラストマー層との間の所定の交点にある膜バルブを湾曲させる。
【0016】
同じように、サンプル溶液をマイクロ流体デバイス内部のチャンネル中及びチャンバ内に押し入れることができ、サンプル注入口11012cに同様なガス圧を加え、サンプル溶液の液圧を上昇させ、チャンネルを通ってサンプル溶液をチャンバ中に移動させる。また、ガス圧を各々の圧力キャビティに加えることによって、穴部列11012a及び11012bの穴部の中に取り込まれた試薬を、マイクロ流体デバイス内部の対応するチャンネル中及びチャンバに押し入れることができる。マイクロ流体デバイス内のサンプル及び試薬の各チャンバが満たされたならば、チャンバ手前の注入チャンネルと連係する湾曲可能な膜を作動し格納バルブを閉じて、サンプル及び試薬をそれぞれ対応するチャンバ内に保持することができる。この間、各サンプル/試薬チャンバ対の両者間のインタフェース・バルブは閉鎖されており、試薬がサンプル中に拡散したり、サンプルが試薬の中に拡散したりしないように保持されている。すべてのチャンバの充填が完了した後、インタフェース・バルブを開き、一方で格納バルブを閉じておくことによって、自由界面拡散を開始させることができる。
【0017】
特許文献2の出願で開示されたデバイスを使って行うタンパク質結晶化実験は、実施に数日を要することがある。前記のように、サンプル又は試薬がチャンバから流出して、相互に汚染される可能性を防止するために、格納バルブを常時閉じておかなければならない。従って、格納バルブを閉じておくため、一定の液圧源が生成されるように圧力気体源を維持しておく必要がある。これは、取付台を、安定化ガス源のような圧力ガスの源泉に接続する「導管コード」を設けることによって実施できる。しかしながら、このような導管コードによって、ユーザは、例えば、温度制御を行うため実験室周りの冷蔵庫又はインキュベータ中に取付台を移動する能力を制限されることになる。このように、Hansen又はUngerが述べたようなマイクロ流体デバイスを、バルブ作動を維持するための導管コードに対する明らかな必要性から開放してくれるシステムが求められている。
【0018】
Schulteら(以降「Schulte」)の、2003年2月20日に公開された特許文献3、名称「Well−Plate Microfluidics」(この発明をすべての目的のために本明細書中に援用する)は、マイクロ流体デバイスを開示しているが、本明細書に開示した発明とSchulteのデバイスとの間には幾多の重要な違いがある。
【特許文献1】米国特許第6,408,878号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/9961687号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0034306号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
本発明は、マイクロ流体デバイス及びその使用方法を提供する。本発明は、マイクロ流体デバイスの使用、マイクロ流体デバイス中で実行される反応を解析するための装置及びシステム、及びマイクロ流体デバイスの使用で得られるデータの生成、保存、編成、及び解析のためのシステムをさらに提供する。本発明は、一部の実施形態において結晶形成に有用なマイクロ流体システム及びデバイスを使用し、作製する方法をさらに提供する。
【0020】
本発明は、マイクロ流体デバイスを動作させるための装置を提供する。一つの実施形態において、本装置は、一つ以上の流体ポートを備えた平板面を持つプラテンを含む。流体ポートは、マイクロ流体デバイス表面上の一つ以上の穴部と空間的に対応している。装置には、プラテンに対してマイクロ流体デバイスを保持するためのプラットフォーム、及びプラテン駆動部含まれ、駆動部はプラテンをマイクロ流体デバイスに対して押し当て、これにより、プラテンの少なくとも一つのポートは穴部の一つに押し当てられて、穴部とポートとより成る圧力チャンバを形成し、加圧流体がポートの一つを通して圧力チャンバに導入又は除去されることによって流体の圧力が変化する。
【0021】
他の実施形態において、装置は、ロボット・プラテン駆動部を含み、プラテン駆動部はコントローラによって電子制御され、コントローラはコンピュータであるか、又はコンピュータに制御されており、コンピュータはプログラムに従い、プログラムは装置のユーザによりカスタマイズされたものである。マイクロ流体デバイスは、チャンネルを通して相互に流体連通している第一及び第二チャンバを含み、チャンネル沿いにバルブが配置され、これが開閉することにより第一チャンバと第二チャンバとの間の流体連通が制御され、マイクロ流体デバイスがプラテンに結合されているときは、バルブは自動バルブ作動デバイスに制御される。自動バルブ作動デバイスもコンピュータの制御下にあり、バルブは自動バルブ作動デバイスを使って開閉される。バルブは湾曲可能な膜を含み、プラテン駆動装置は、平方インチ約1ポンド(1psi)から平方インチ約35ポンド(35psi)の間の圧力を使って、少なくとも一つの流体圧力ポートに加圧流体を供給するようにされている。
【0022】
本発明は、マイクロ流体システムをさらに提供する。このような一つのシステムは、複数のチャンバを備えたマイクロ流体デバイスを含み、マイクロ流体デバイスは取付台に結合され、複数のチャンバの一部は取付台中の複数の注入口に連結されている。システムは、取付台中の少なくとも一つの注入口に組み合わさるようになされたインタフェース・プレートを含み、流体源はインタフェース・プレートに結合されて、取付台中の注入口の少なくとも一つに加圧流体を供給するようになされており、コントローラは、流体を流体源から取付台に導くため、流体源及びインタフェース・プレートに連結されている。
【0023】
他の実施形態において、マイクロ流体デバイスは、複数のバルブ・ラインをさらに含み、コントローラにより、流体は少なくとも一部のバルブ・ラインの導かれる。コントローラは、バルブ・ラインの少なくとも一部を開閉するようにさらになされている。取付台は複数の穴部をさらに含み、穴部の少なくとも一部は、複数の注入口中の対応する注入口に連結され、対応注入口は、マイクロ流体デバイス中における分析のための流体を受けるようになされている。コントローラは、流体を複数のチャンバの少なくとも一部に押し入れるために、複数の穴部の少なくとも一部にインタフェース・プレートを通して圧力を加えるようになされている。インタフェース・プレートは、各々が取付台の少なくとも一つの注入口に組み合わさるようになされた、2つ以上の別々のインタフェース・プレートを含む。取付台は、アキュムレータ・ポートを有するアキュムレータ・チャンバを含み、インタフェース・プレートは、アキュムレータ・チャンバと流体連通しているポートを含む。アキュムレータ・チャンバは、アキュムレータ・ポートを通りアキュムレータ・チャンバ内に入る流体の動きを制御するためのバルブをさらに含み、このバルブはアキュムレータ・ポートと流体連通している。バルブは、アキュムレータ・ポートを通りアキュムレータ・チャンバ内への流体流れは可能とするが、アキュムレータ・ポートを通りアキュムレータ・チャンバから出る流体流れを制限する。バルブが作動されると、バルブは、アキュムレータから出る流体流れを可能にする。バルブは機械的に作動され、バルブは逆止めバルブである。インタフェース・プレートは、バルブ駆動部を含み、この駆動部は、インタフェース・プレートと取付台が結合されると、バルブと組み合わさるようになされている。アキュムレータ・チャンバは液体をさらに含む。アキュムレータ・チャンバは、ガス、又はガスと液体とをさらに含む。ガスは、アキュムレータ・チャンバ外部のガス圧力に対して高圧にされる。インタフェース・プレートは、シーリング・ガスケットをさらに含む。アキュムレータは、マイクロ流体デバイス中のバルブを閉状態に維持するために、必要な圧力レベルより上の圧力を維持するようになされている。閉じたバルブ状態は少なくとも2日間は持続する。
【0024】
本発明は、タンパク質結晶化条件のスクリーニング工程を実施するための方法をさらに提供する。一つの実施形態において、本方法は、マイクロ流体デバイスを準備する工程と、以下からなる工程群の一つを実施する工程とを含む:ロボット利用によりマイクロ流体デバイスの穴部に試薬を充填し、ロボット利用によりマイクロ流体デバイスをロボット液体分注ステーションから他の場所に移動させ、ロボット利用によりマイクロ流体デバイスを装置の中に設定する工程;マイクロ流体デバイスを装置から取り外し、ロボット利用によりマイクロ流体デバイスを光学検査ステーションに置き、自動画像システムを使ってマイクロ流体デバイスを光学的に点検する工程。ロボット利用とは、コンピュータ又は電子コントローラに制御される機械的装置によってマイクロ流体デバイスを動かすことをいう。
【0025】
本発明はタンパク質を結晶化するための方法を提供する。一つの実施形態において、本方法は、1000μmから1μmの間の寸法の第一チャンバと、1000μmから1μmの間の寸法の第二チャンバと、1000μmから1μmの間の寸法のチャンネルとを有するマイクロ流体デバイスを準備する工程を含む。第一及び第二チャンバは、チャンネルを通して相互に流体連通している。チャンネル沿いにバルブが配置され、これを開閉作動することによって、第一チャンバと第二チャンバとの間の連通を制御する。本方法は、結晶化試薬を第一チャンバに取り入れる工程と、溶液中のタンパク質を第二チャンバの取り入れる工程と、バルブを開いて、第二チャンバ中のタンパク質を含有する溶液を第一チャンバ中の結晶化試薬と流体連通させるようにする工程と、一定時間後にバルブを閉じて、第一と第二チャンバとの間の流体連通を遮断する工程とを含む。
【0026】
一部の実施形態において、本方法は以下の機構を含む:バルブは自動バルブ作動デバイスに制御される;自動バルブ作動デバイスはコンピュータにさらに制御される;バルブは2回以上開閉される;マイクロ流体デバイスは、多層マイクロ流体デバイスである;多層マイクロ流体デバイスは少なくとも一つのエラストマー層を含み、バルブは湾曲可能な膜を含む;多層マイクロ流体デバイスの2つの層は、エラストマー材料を含み、これら層を接合してエラストマー・ブロックを形成することができる;多層マイクロ流体デバイスの2つ以上の層は、第一層に第一チャンネルを、第二層に第二チャンネルを含み、オーバーラップ域において、第一チャンネルの一部と第二チャンネルの一部はオーバーラップしている;第一及び第二チャンネルは、オーバーラップ域に設けられたバイアを通して流体連通している;オーバーラップ域には、第一又は第二チャンネルのいずれかの中に湾曲し第一又は第二チャンネルに沿った流体移動を制御することが可能な湾曲可能な膜がさらに含まれる;及び、湾曲可能な膜は、第一又は第二層のいずれかと一体化している。
【0027】
一つの様態において、本発明は、0.1μmから1000μmの間の幅寸法のリセスを持つ第一エラストマー層、0.1μmから1000μmの間の幅寸法のリセスを持つ第二エラストマー層及び上部面を含む、マイクロ流体デバイスを提供しており、この第一エラストマー層は第二エラストマー層の上面に接合されて、湾曲可能な部分を中に有するエラストマー・ブロックを形成し、エラストマー・ブロックはある表面域を規定する底面を有し、エラストマー・ブロックはある高さを有し、サブストレートはその中にリセス、及び第一面を有し、サブストレートはサブストレート第一面にポートを有し、ポートはサブストレートのリセスと流体連通しており、エラストマー・ブロックは、エラストマー・ブロックがポートを塞がないようにサブストレートに取り付けられて、マイクロ流体デバイスを形成している。
【0028】
一部の実施形態において、ポートは、サブストレートの第一面に開口を持つ穴部であり、エラストマー・ブロックがサブストレートに取り付けられるときに穴部の開口を塞がないようにしてある。サブストレートは、サブストレートの第一面とは異なる第二面をさらに含み、エラストマー・ブロックはサブストレートの第二面に取り付けられる。第一面はサブストレートの上面で第二面はサブストレートの底面であり、エラストマー・ブロックは、エラストマー・ブロックがポートを塞がないようにしてサブストレートの第一面に取り付けられる。ポートは穴部であり、穴部は、エラストマー・ブロックがサブストレートに取り付けられたサブストレートの第一面の上まで延びる高さの内壁を持ち、穴部内壁の高さはエラストマー・ブロックの高さと同寸、又は穴部内壁の高さはエラストマー・ブロックの高さより低く、又は穴部内壁の高さをエラストマー・ブロックの高さより高い。リセスは複数であり、ポートは複数であって、各ポートは、サブストレートの複数のリセスの少なくとも一つと流体連通しており、複数のポートの少なくとも一つは穴部である。穴部は、0.1μlから400μlまでの容積を有する、又は穴部は0.1μlから250μlまでの容積を有する、又は穴部は0.1μlから100μlまでの容積を有する、又は穴部は0.1μlから10μlまでの容積を有する。サブストレートの複数のリセスの少なくとも一つのリセスは、0.1μmから1000μmの間の断面寸法を持つ少なくとも一つの部位を有する、サブストレートの複数のリセスの少なくとも一つのリセスは、0.1μmから500μmの間の断面寸法を持つ少なくとも一つの部位を有する、サブストレートの複数のリセスの少なくとも一つのリセスは、0.1μmから100μmの間の断面寸法を持つ少なくとも一つの部位を有する、サブストレートの複数のリセスの少なくとも一つのリセスは、0.1μmから10μmの間の断面寸法を持つ少なくとも一つの部位を有する。及び/又は、サブストレートはポリマーを含む場合、サブストレートは、以下より成る群から選定されたポリマーを含む:ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、フルオロポリマー類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリシリコン、及びポリジメチルシロキサン。サブストレートはガラス又は水晶を含む。サブストレートは、リセスをシーリングしてリセスによるチャンネルを形成するため、サブストレートに付着されたシーリング・レイヤーをさらに含み、シーリング・レイヤーは、フィルムを含み、フィルムは接着剤で貼付されるか、又は、サブストレートにフィルムを付着するに先立ってフィルム上に接着剤を塗布された接着性フィルムとする。エラストマー・ブロックは、バイアをさらに含み、バイアは、サブストレート中のリセスと第一エラストマー層中のリセスとの間に流体連通を提供する。バイアはエラストマー・ブロックをコアリングして形成されており、バイアはエラストマー・ブロックをドリル穿孔して形成されており、バイアは融除により形成されており融除はレーザビームを使って行われており、レーザビームはエキシマー・レーザによって生成されており、又はバイアは第一及び第二エラストマー層の一つをエッチングして形成された、又はバイアは、エラストマー・ブロックを形成する前に、第一及び第二エラストマー層の一つに形成される。エラストマー層中のリセスは第二エラストマー層のリセスにオーバーラップし、エラストマー・ブロックの湾曲可能な部分は第二エラストマー層から形成されており、第二エラストマー層のリセスは第一エラストマー層のリセスにオーバーラップされていて、該部分は第一エラストマー層のリセスと第二エラストマー層のリセスとを分離する湾曲可能な膜を形成している。サブストレートのリセスと、第一エラストマー層中のバイア及びリセスとは一つの流体を含有し、この流体が第二層のリセス中の流体の圧力と異なった圧力になったときに湾曲可能な膜を作動し、湾曲可能な膜が、第一エラストマー層のリセス又は第二エラストマー層のリセスの一つに張り出す。バイアは、x及びy次元に移動可能なロボット装置を使った工程で形成され、ロボット装置はx,y軸可動のステージを含む。第一及び第二エラストマー層の少なくとも一つは、1000Paから1,000,000Paの間のヤング率を持つエラストマー材料を含む、第一及び第二エラストマー層の少なくとも一つは、10,000Paから1,000,000Paの間のヤング率を持つエラストマー材料を含む、第一及び第二エラストマー層の少なくとも一つは、100,000Paから1,000,000Paの間のヤング率を持つエラストマー材料を含む、又は第一及び第二エラストマー層の少なくとも一つは、360,000Paから870,000Paの間のヤング率を持つエラストマー材料を含む。エラストマー層の少なくとも一つはポリジメチルシロキサンを含む、エラストマー層の少なくとも一つは二元ポリマー形成材料から製造されたポリマーを含む。エラストマー層の少なくとも一つはプラズマ・エッチングされる。エラストマー・ブロックはサブストレートに密着される、エラストマー・ブロックはサブストレートに接着される、エラストマー・ブロックとサブストレートとの間にガスケットがさらに含まれる、エラストマー・ブロックはサブストレートにグルー付けされる。ポートは、アキュムレータ・チャンバと流体連通しており、アキュムレータ・チャンバは、流体をアキュムレータ・チャンバ内に取り入れるためのアキュムレータ・ポートを具える。アキュムレータ・チャンバは、アキュムレータ・ポートを通ってアキュムレータ・チャンバ内に入る流体移動を制御するためのバルブをさらに含み、バルブはアキュムレータ・ポートと流体連通しており、バルブは、アキュムレータ・ポートを通りアキュムレータ・チャンバ内への流体流れは可能とするが、アキュムレータ・ポートを通りアキュムレータ・チャンバから出る流体流れを制限する、バルブが作動されると、バルブは、アキュムレータから出る流体流れを可能にする。バルブは機械的に作動され、バルブは逆止めバルブである。アキュムレータ・チャンバは液体をさらに含む、アキュムレータ・チャンバは、ガス、又はガスと液体とをさらに含む、ガスは、アキュムレータ・チャンバ外部のガス圧力に対して高圧にされる。ポートは複数であり、サブストレート中のリセスはサブストレート中の複数のリセスであり、複数のポートの各々は複数のリセスの少なくとも一つと流体連通している。複数ポートの各々は、複数の穴部の一つと流体連通しており、各穴部は第一面に開口を有し、エラストマー・ブロックがサブストレートに取り付けられる際に穴部の開口を塞がないようにされる。穴部開口は中心点を持ち、複数の穴部は、各穴部の中心から中心の間隔が、96穴微量検定板、384穴微量検定板、864穴微量検定板、1536穴微量検定板、及び6144穴微量検定板の群から選定されたパターンを持つ微量検定板の穴中心間隔になるように空間的に配列される、穴部開口は中心点を持ち、複数の穴部は、各穴部の中心から中心の間隔が約4.5mmになるように空間的に配列される。
【0029】
本発明の別の様態は、第一リセスを有する第一層と、第二層上面及び第二リセスを有する第二層と、最上面を有するサブストレート層とを含むマイクロ流体デバイスとを提供し、第一層は、第一リセスと第二層の上面とで第一チャンネルが形成されるように、第二層に接着され、第二層は、第二リセスとサブストレートの上面とで第二チャンネルが形成されるように、第二層に接着されている。第一チャンネルの一部は第二チャンネルの一部とオーバーラップしてチャンネル・オーバーラップ部を形成し、チャンネル・オーバーラップ部における第一チャンネル−第二チャンネル・バイアが、第二チャンネルと第一チャンネルとの間の流体連通を確保しており、第一チャンネル−第二チャンネル・バイアは、第一層と第二層とが一体に接着され、マイクロ流体デバイスが形成された後に形成されたものである。
【0030】
他の様態において、第一チャンネル−第二チャンネル・バイアは、第二チャンネルから第一チャンネルを通りこれを超えて延びている。第一チャンネル−第二チャンネル・バイアは、レーザー融除により形成される。2つの層の少なくとも一つはエラストマーを含む。サブストレートはポリマー、ガラス、又は水晶を含む。ポリマーは、以下より成る群から選定される:ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリシリコン、及びプラスチック。第二層は、第二層中の第三リセスとサブストレートの上面とで形成される第三チャンネルをさらに含み、第三チャンネルの一部と第一チャンネルの第二部分はオーバーラップして第二オーバーラップ部を形成し、第三チャンネルと第二チャンネルとは、第二オーバーラップ部にある第一チャンネル−第三チャンネル・バイアを通して流体連通している。第一チャンネル−第二チャンネル・バイアは、第一層と第二層とが接着された後で形成される。サブストレートは、サブストレート・リセスをさらに含み、リセスの一部は第一チャンネルにオーバーラップされて第一チャンネル−サブストレート・チャンネル・オーバーラップ部を形成する。上面を有するシーリング・レイヤーがサブストレートに接着され、サブストレートの少なくとも一つはサブストレート・チャンネルを形成し、第一チャンネル−サブストレート・チャンネル・バイアは、第一チャンネル−サブストレート・チャンネルのオーバーラップ部にあり、第一チャンネルとサブストレート・チャンネルとは、第一チャンネルを通して流体連通している。
【0031】
本発明の別の様態は、マイクロ流体デバイスの異なる層内に配置されたチャンネルを相互接続させることによって、マイクロ流体デバイス内での反応の実施密度を増大させ、前記の相互接続にはバイアが用いられ、望ましくは、バイアは、チャンネルを包含する2つ以上の層を一体に接着した後に形成され、さらに望ましくはレーザ融除を用いて形成される。
【0032】
本発明は、一つの様態において、以下を含むマイクロ流体デバイスを保持するための取付台を提供する:ハウジング、このハウジングは、内部にチャンバを設け、マイクロ流体デバイスを収納するための収納部を具えている;マイクロ流体デバイスを保持するための接続ブロック、この接続ブロックは一本以上のピンを使ってマイクロ流体デバイスに取り付けられるようになっており、マイクロ流体デバイスは、接続ブロックに保持されてハウジングの収納部に挿入できるようになっている。
【0033】
他の実施形態には、以下のハウジング形態が含まれる:一つ以上のピン、2つ以上のピンを持つもの、一つ以上のピンの少なくとも一つはチューブであるもの;収納部に挿入する際に、マイクロ流体デバイスをガイドし保持するための少なくとも一つのスロットを備えた受入れ部を持つもの;収納部に挿入されたマイクロ流体デバイスの中にピペット・チップをガイドするための一つ以上のピペット支持部をさらに含む受け入れ部を持つもの;収納部に挿入されたときマイクロ流体デバイスに加圧流体を供給するための一つ以上のアキュムレータを含むもの、望ましくは少なくとも一つのアキュムレータは逆止めバルブをさらに含む;望ましくは、アキュムレータが取り付けられている場合には、ハウジング・ベース、及びハウジング・カバーを含み、望ましくはハウジング・カバーとハウジング・ベースがガスケットでともにシールされている、ハウジングを持つもの、ハウジング内の湿度制御を行うための湿度制御材料を含み、望ましくは、湿度制御材料はスポンジ、ゲル材、乾燥剤及び織布から成る群から選定される;望ましくはポリマー製のハウジングを持つもの、さらに望ましくは、ポリマーは、ポリカーボネート又はアクリル又はポリスチレンのいずれかである。望ましくは、アキュムレータは、一つ以上のアキュムレータ−接続ブロック管を通して接続ブロックと流体連通しており、アキュムレータ−接続ブロック管は望ましくは柔軟である。一つ以上の導管の第一管は、一つ以上の第一バルブを制御するためマイクロ流体デバイスと流体連通し、望ましくは、一つ以上の導管の第二管は一つ以上の第二バルブを制御するためマイクロ流体デバイスと流体連通しており、例えば、以下に限らないが、第一バルブはインタフェース・バルブであり、及び/又は第二バルブは格納バルブである。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、結晶を保持するためのチップを含む、タンパク質結晶をエネルギー・ビームの中に位置合わせするためのデバイスを提供し、チップは、湾曲可能な膜をその中に配置されたエラストマー・ブロックで作られている。本デバイスは、チップを支柱に接続するためのアダプタ・プレートを含み、チップは、チップを貫通する一つ以上の支柱を介して、アダプタ・プレート、及び角度計に接続されており、結晶をビーム内に位置決めするために、支柱と支柱とはつながれている。他の様態において、アダプタプレートは、ビームに対して垂直軸内の結晶をさらに位置調整するため並行移動できるようになっており、角度計は、ビームと垂直でこれを横切る軸の周りを回転できるようになっていて、チップはビームの軸周りに回転し、結晶の異なった小面をビームに曝すようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明のシステムは、ターゲット材料の結晶化の実施に関連して、少量の材料を調量するために特に有用となる。こういった結晶化スクリーニングにおいて多数のパラメータを変更することができる。このようなパラメータには、以下に限らないが、1)結晶化の試行量、2)ターゲット溶液と結晶化剤溶液との比率、3)ターゲット濃度、4)第二小分子又は高分子とのターゲットの共結晶化、5)水和作用、6)温置(incubation)時間、7)温度、8)圧力、9)接触面積、10)ターゲット分子の変形、11)比重、及び12)化学的可変性が含まれる。結晶化試行の量を、ピコリッターからミリリッターの範囲の考えられる任意の値とすることができる。
【0036】
結晶化実験の時間の長さは、数分又は数時間から数週又は数ヶ月の範囲に及ぶことがある。バイオロジカル・システムのほとんどの実験は、通常、24時間から2週間以内に結果が示される。この温置時間の期間を、本発明の実施形態によるマイクロ流体デバイスによって調節することができる。
【0037】
結晶化実験の温度は成否の比率に大きな影響を及ぼし得る。このことは、とりわけ、バイオロジカル・サンプルで結晶化実験温度が0−42℃の範囲にある場合にいえる。最も一般的な結晶化温度の一部は、0,1,2,4,5,8,10,12,15,18,20,22,25,30,35,37,及び42である。本発明の実施形態によるマイクロ流体デバイスは、前記の温度に放置しておくことができ、又はこれに換えて、抵抗性ヒーター又はペルチェ冷却機構のような小型の温度制御機構に温度接触させておくことができる。さらに、本発明の実施形態による小さな占有面積と短いセットアップ時間によって、より迅速な所望狙い温度での温度平衡、及び、所定温度範囲におけるより小型の温置器中での保管が可能となる。
【0038】
本発明によるマイクロ流体構造の実施形態を、結晶化スクリーニング以外の用途に用いることができる。そういった用途の例には、2001年11月16日出願、名称「Cell Assays and High Throughput Screening」、PCT出願PCT/US01/44869に記載された用途が含まれ、前記出願を、すべての目的のため参考として本明細書に組み込む。このような用途を遂行するのに適したマイクロ流体構造の例には、本明細書に記載したものの他にも、及び2002年4月5日出願の名称「Nucleic Acid Amplification Utilizing Microfluidic Devices」、米国特許出願第10/118,466号に記載された用途が含まれ、前記出願の全内容を、すべての目的のため参考として本明細書に組み込む。
【0039】
本発明によってマイクロ流体デバイスを作製する方法の実施形態には、ガラス・サブストレートの上面をエッチングして複数の穴部を生成する工程と、底面にパターン化されたリセスが形成されるようにエラストマー・ブロックを成型する工程と、成型されたエラストマー・ブロックの底面をガラス・サブストレートの最上面に密着させ、リセスのパターンを穴部と整列させて穴部の間のフロー・チャンネルを形成させるようにする工程とが含まれる。
【0040】
ターゲット材料の結晶を形成する方法の実施形態は、エラストマー・マイクロ流体デバイスの第一チャンバをターゲット材料溶液の第一所定量で満たす工程を含む。エラストマー・マイクロ流体デバイスの第二チャンバは、第二所定量の結晶化剤で満たされる。第一チャンバは第二チャンバと流体連通され、ターゲット材料と結晶化剤との拡散が可能になり、ターゲット材料の環境は結晶を形成させるように変化する。
【0041】
さらに別の実施形態において、チャンバ又は調量セルを第一エラストマー層に形成し、前記チャンバ又は調量セルを流体チャンネルを通して流体連通させ、第二層中に制御チャンネルを形成し、第一と第二層との間の湾曲可能な膜を第一層内に湾曲させて流体チャンネルを通る流体流れを制御することができる。サブストレートを第一及び第二層に組み合わせて剛性を与え、又は流体相互接続を追加して具えることができる。そこで、本明細書でさらなる詳細を述べるように、マイクロ流体デバイスを、取付台及び/又はシステムと併せて使用し工程制御を行うことができる。
【0042】
本発明は、マイクロ流体デバイス及びその使用方法を提供する。本発明は、本発明のマイクロ流体デバイスを用いるための装置、マイクロ流体デバイス中で行われる反応の解析、及びマイクロ流体デバイスを使用することで得られるデータの生成、保存、編成、及び解析のためのシステムをさらに提供する。本発明の装置、システム及び方法は、以下に限らないが、California州South San FranciscoのFluidigm Corporation社が販売しているデバイスのTopaz(登録商標)を含むさまざまなマイクロ流体デバイスと併せ使用すれば特に有用である。また、本発明は、2001年4月6日出願、名称「Microfabricated Elastomeric Valve and Pump Systems」の米国特許出願09/826,583;2000年11月28日出願、名称「Microfabricated Elastomeric Valve and Pump Systems」の米国特許出願09/724,784;及び2000年6月27日出願、名称「Microfabricated Elastomeric Valve and Pump Systems」の米国特許出願09/605,520に概述されたものも含め、他のエラストマー材料を用いたマイクロ加工流体デバイスに対しても有用である。上記の特許出願を、参考のため本明細書に組み込む。
【0043】
ターゲット材料結晶化の高スループット・スクリーニング、又はターゲット材料の小サンプルの再結晶化による精製については、既知の濃度のターゲット材用の溶液を、マイクロ加工流体デバイスの複数のチャンバに同時に取り込むことによって実現する。このとき、マイクロ加工流体デバイスを操作し、チャンバ内の溶解条件を変化させ、これにより多数の結晶化環境を同時に生成する。溶解条件変更の制御は、以下に限らないが、体積排除によるチャンバ中への結晶化剤量の秤量、マイクロ加工構造体の寸法により規定される液量の取り込み、又は直交フロー・チャンネルの交差により定まる接合点マトリックスでのクロス・チャンネル注入によるチャンバ中への結晶化剤の調量投入を含めた、各種の技法によって行うことができる。
【0044】
x線結晶構造解析を用いて、本発明の実施形態による結晶化から得られた結晶の三次元分子構造を判断することができる。本発明の実施形態による高スループット・スクリーニングによって、直接x線結晶構造解析を行うのに十分なサイズの結晶が生成されない場合には、前記に換えて、それら結晶をさらに結晶化実験をするための「種結晶」として利用することができる。また、有望なスクリーニング結果を、標準的な疎行列技法の使用と類似したやり方で、結晶化条件をさらにより狭い範囲に絞るためのベースとして利用することができる。
【0045】
本発明の実施形態によるシステム及び方法は、タンパク質、核酸、ビールス、及びタンパク質/リガンド錯体のような大型のバイオロジカル高分子又はその集合体を結晶化するのに特に適している。但し、本発明による結晶化はいかなる特定の種類のターゲット材料にも限定されるものではない。さらに、本発明の実施形態の説明では、液相での結晶化剤の拡散を用いているが、結晶生成を誘起するため用いられた別の技法として、蒸気拡散がある。
【0046】
本発明によるマイクロ流体デバイスの実施形態は、オンチップの貯液部又は穴部を利用している。しかしながら、多種類の溶液を取り込む必要のあるマイクロ流体デバイスにおいては、これに応じて各穴部をインタフェースするための別々のピンを備えた多数のインプット導管を使うことは、マイクロ流体デバイスの比較的小さい寸法を考慮すれば実際的でない。さらに、少量の液体を分注するためのピペット使用の自動化が知られており、これらによって、チップ面上に存在する穴部に直接溶液をピペット分注するような技法を用いるのが最も容易であることが実証されよう。
【0047】
毛管作用は、特に行き止まりのチャンバに材料が満たされている場合、溶液をオンチップの穴部からチップの反応域に引き入れるには不十分な可能性がある。そういった実施形態においては、材料をチップに取り込む一つのやり方として外部圧力の使用を介することがある。しかしこれも同様に、考えられる多数の材料源につながれた小寸法のデバイスに対して、ピン又は配管を通して個別の穴部に圧力を加えるのは現実的でなかろう。
【0048】
図3を見ると、本明細書の実施形態によるマイクロ流体デバイスは、一つ以上の内蔵の流体圧力貯蔵チャンバすなわちアキュムレータを有し、マイクロ流体デバイス内の一つ以上の湾曲可能な膜に対する流体圧力の供給源を提供するものとして説明することができよう。図3は内蔵圧力アキュムレータを有する取付台323の好適な実施形態を示す。取付台323は、取り付けベース301を含み、ベースはマイクロ流体デバイス305を取付台323の内部に収納しその位置を維持するための収納域300を有する。マイクロ流体デバイス305を、Fluidigm Corporationが販売しているTopaz(登録商標)1.96及びTopaz(登録商標)4.96チップを含め、本発明範囲内の幅広い範囲のデバイスとすることができる。
【0049】
マイクロ流体デバイス305は、マイクロ流体デバイス305内部のチャンネルと流体連通している一つ以上の注入穴部307を有する一つ以上の穴部列306と、格納バルブ注入口320と、インタフェース・バルブ注入口321と、サンプル注入口324とを含む。取付台上面309は、圧力キャビティ部310及び311を含み、これらは穴部列306に接して配置され、各穴部列306の各々の穴307の上方に共通の圧力チャンバを形成する。各圧力キャビティ部がマイクロ流体デバイス305の表面に密着して各圧力チャンバが形成されたとき、圧力チャンバ注入口313及び314を使い、これらチャンバにガス圧力を供給する。
【0050】
取付台323は、望ましくはアキュムレータ最上部303を取り付けベース301の一部に組み付けてアキュムレータ・チャンバ304を形成することにより形作られた圧力アキュムレータ324をさらに含む。流体、望ましくはガス、を、アキュムレータ・チャンバと流体連通しているアキュムレータ注入路317を通して、アキュムレータ・チャンバ304に取り入れる。望ましくは、アキュムレータ逆止めバルブ302は、アキュムレータ注入口317とアキュムレータ・チャンバ304との間に直列に配置され、アキュムレータ注入口317から流体圧力源(図示せず)との接続を外した後においても、アキュムレータ・チャンバ304内の流体圧力を維持する。アキュムレータ・チャンバ304を加圧するのにガスが使われ、アキュムレータ・チャンバ304の一部に液体が収納されており、その収納液体が液圧を生成している場合には、望ましくは、アキュムレータ逆止めバルブ302は、アキュムレータ・チャンバ内部の「ドライ穴部」内に配置される。これにより、アキュムレータ・チャンバ304及びマイクロ流体デバイス305内部の少なくとも一つのチャンネルと流体連通しているアキュムレータ出力口316を通して液圧を供給することによって、加圧液体を使い、膜、望ましくはバルブ膜のような、マイクロ流体デバイス305内部の湾曲性部分を作動することができる。
【0051】
図3に示す実施形態において、取付台最上部309は、取付台ベース部301の一つ以上の対応ネジ穴333を通る一つ以上のネジ309によって取付台ベース部301に取り付けられ、取付台最上部309とマイクロ流体デバイスの上面との間の圧縮力を維持し、圧力キャビティ310及び311が穴列306の周りに流体密閉シールを形成するようにしている。インタフェース圧力供給ライン注入口318はインタフェース圧力供給ライン319とつながっており、このラインは、マイクロ流体デバイス305のインタフェース・バルブ注入口321にも挿入されていて、圧力流体、望ましくはガス、又は液圧の源泉をマイクロ流体デバイス305内の第二チャンネルに供給し、マイクロ流体デバイス305内の少なくとも一つの湾曲性部分、望ましくは、第二インタフェース・バルブの湾曲可能な膜を作動する。マイクロ流体デバイス305内の一つ以上の調量セル308は、穴部注入口307及びサンプル注入口334と流体連通している。一部の実施形態において、Hansenが表したような、タンパク質結晶化調量セルを提供し、これにおいては、第一チャンバと第二チャンバとは、両者の間にある一つ以上のインタフェース・チャンネルを介して流体連通しており、インタフェース・チャンネルは、各チャンバ間の拡散と流体移動とを制御するためのインタフェース・バルブをさらに含む。各チャンバは、各チャンバに流体を取り入れるための注入口とさらに流体連通しており、これら注入口は、マイクロ流体デバイス内部のチャンネルを通してチャンバと流体連通している。
【0052】
本発明による取付台323を使う一つの方法を以下に説明する。取付台最上部309を取り外して、穴部307を試薬で満たす。マイクロピペットを使ってサンプル溶液をサンプル注入口334に注入する。インタフェース圧力供給ライン319を通してインタフェース・バルブ注入口321に圧力を加えることによって、各調量セル308のインタフェース・バルブを閉じる。サンプル注入口334にさらに圧力を加えて(例、ガス圧力の形で)、サンプル溶液をマイクロ流体デバイス305内部にさらに移動させ、サンプル溶液を調量セル308のサンプル試薬の中に押し入れることができる。加圧液、望ましくは水、さらに望ましくはオイル、まださらに望ましくはKrytox(登録商標)GL100(商標)オイル(すなわち、酸化ポリヘキサフルオロプロピレン)、又はオイルと、例えば水のような他の溶剤とのブレンドを、望ましくはマイクロピペットを使って、インタフェース・バルブ注入口320及び格納バルブ注入口321に取り入れる。格納ライン300及び制御ラインライン319は、それぞれ注入口320及び321に挿入し、取付台最上部309を、マイクロ流体デバイス305を間に挟んで取付台ベース301に固定する。
【0053】
図4は、図3に示した取付台323の斜視図を表す。図5は、図3及び図4に示した取付台323の平面図を表す。図6は、アキュムレータ324内部のアキュムレータ・チャンバ304の断面図を描いたもので、アキュムレータ・チャンバのカバー303に対して下向きに傾いた傾斜チャンバ床が示されており、これにより液体がライン300に向かって流れるのを可能にし、また、ネジ335へのアクセスが示されておりこれを取り外して、流体、望ましくは、アキュムレータ・チャンバ304を部分的に満たしているのが示されているように、液体を追加又は除去することができる。ドライ穴部穴部隔壁340.1で仕切られたドライ穴部340の内部に配置された逆止めバルブ302の側面図が示されている。
【0054】
図7は、図3−6に示した取付台と類似の取付台であるが、単一のアキュムレータが存在する代わりに、2つの別個のアキュムレータ303.1及び303.2が取付台に組み込まれている。好適な使用において、第二アキュムレータは、マイクロ流体デバイスの第二湾曲性部分、望ましくは第二湾曲可能な膜バルブを作動し、作動状態を維持するために使われる。特定の好適な実施形態において、第一アキュムレータは、調量セル内のインタフェース・バルブを作動するのに使われ、第二アキュムレータは、調量セル内の格納バルブを作動するのに使われ、相互に独立している。また、さらに他の実施形態において、複数のアキュムレータを組み込んで、追加バルブ・システムの独立した作動を設けたり、マイクロ流体デバイスを通して流体を駆動することができる。
【0055】
本発明の別の実施形態において、図8Aはマイクロ流体デバイスのサブストレート800を示しており、バルブ、望ましくはカバーに取り付けられた逆止めバルブ、を収納するためのドライ穴部803、804を、それぞれ具える内蔵の圧力アキュムレータ穴部801及び802を有する(図8B参照)。サブストレート800は、それぞれに、一つ以上の穴部805を配置された穴部列806a、b、c及びdをさらに含む。サブストレート800の穴部805の各々は、穴部805から、エラストマー材料、望ましくはマイクロ加工されたリセス又はチャンネルを中に有する2つ以上のエラストマーの層で形成されたエラストマー・ブロック、を取り付けるための、サブストレート800内のエラストマー・ブロック取付域807につながるチャンネルを持つ。
【0056】
図8Bは、図8Aに示した構成要素を含み、エラストマー・ブロック808をさらに含む、全体マイクロ流体デバイス899の立体分解図を表しており、エラストマー・ブロックは、サブストレート800のエラストマー・ブロック取付域807に取付けられ、又はさらに望ましくは接着され、まださらに望ましくは、できれば接着剤を使わずに直接接着されて全体マイクロ流体デバイス899を形成している(図8C参照)。エラストマー・ブロック808内には、一つ以上のバイア814と流体連通している一つ以上のチャンネルがあり、バイアは同様にエラストマー・ブロック内のチャンネルとサブストレート内のチャンネルとの間の流体連通を提供し、サブストレート・チャンネルは穴部列806a−d内の穴部805につながって、サブストレート800の穴部805とエラストマー・ブロック808内のチャンネルとの間での流体連通を提供する。アキュムレータ穴部最上部809及び810はアキュムレータ穴部801及び802に取り付けられ、アキュムレータ・チャンバ815及び816を形成している。アキュムレータ穴部最上部809及び810は、それぞれバルブ812及び811を含み、バルブは、望ましくは、アキュムレータ・チャンバ815及び816に加圧ガスを取入れ保持するための逆止めバルブである。バルブ811及び812は、ドライ穴部802及び804の内部に収納され、液体がアキュムレータ・チャンバ815及び816に液体が存在するときに、液体がバルブ811及び812と接触するのを防止する。バルブ811及び812は、望ましくは、好適な逆止めバルブ内の端子、ピン又は類似物を押すことによって、逆止めバルブの自己閉鎖力を乗り越えて機械的に開くことが可能で、アキュムレータ・チャンバの圧力を解放し、アキュムレータ・チャンバ内に含有される流体の圧力を低減することができる。
【0057】
図8Dは、マイクロ流体デバイス899及び穴部805の平面図を示しており、ポートは、穴部から、サブストレート800内に形成された、望ましくは穴部805の反対の側のサブストレート800内に形成された、チャンネル中へ流体を通すため、穴部の底辺部、望ましくは底面、又はこれに換えて穴部805の側面に隣接して配置される。特定の好適な実施形態において、サブストレート800は、リセスを持つように成型され、リセスは、シーリング・レイヤー、望ましくは粘着フィルム又は粘着シーリング・レイヤー、によってチャンネルに形成される。
【0058】
サブストレート800及びその関連構成要素を、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンPTTEのようなポリマー類、又はテフロン(登録商標)、ガラス、水晶、金属(例えば、アルミニウム)、透明材料、ポリシリコン、又は類似材料で作製することができる。アキュムレータ穴部最上部809及び810にアクセス・ネジ812をさらに含め、このネジを外して、アキュムレータ・チャンバ815及び816にガス又は液体を入れ出しできる。望ましくは、バルブ812及び811を作動して、アキュムレータ・チャンバ815及び816内部に保持される液体圧力を解放することができる。ノッチ817は、他の計器装備、例えば、マイクロ流体デバイスを使用又はその中の反応を解析するために用いる計器装備の中へマイクロ流体デバイスを正確に配置する助力のために用いられる。図8Dは、エラストマー・ブロック域807を囲む水和チャンバ850をさらに描いたもので、この領域を水和カバー851で覆って、エラストマー・ブロックの周りの湿度制御をしやすくするための加湿チャンバを形成することができる。湿度チャンバ851に、揮発性液体、例えば水を、望ましくは吸収材又はスポンジを濡らして加えることによって湿度を上昇させることができる。望ましくはポリビニール・アルコールを用いることができる。ポリビニール・アルコールと水との比率を変化させ、望ましくは吸収材又はスポンジを濡らすことによって湿度制御を実施することができる。また、例えば、水蒸気は浸透させるが液体は浸透させない膜を使い、所望の湿度レベルを維持するのに適した塩分濃度を持つ塩水溶液を保持するHUMIDIPAK(商標)加湿パッケージのような湿度制御装置を使って水和反応を制御することができる。Saariらによる米国特許第6,244,432号を参照のこと。湿度制御装置及び方法の特別な目的を含むすべての目的のため、前記特許を参考として本明細書に組み込む。水和カバー850は、使用中にエラストマー・ブロック内の事象が目に見えるように、望ましくは透明である。同様に、サブストレート800のエラストマー・ブロック域807の下の部分も好ましくは透明であるが、不透明又は反射面とすることもできる。
【0059】
図8Eは、穴部805とエラストマー・ブロック808(図示せず)との間の流体連通を提供するチャンネルをその中に有するサブストレート800の平面図を示しており、エラストマー・ブロックは、エラストマー・ブロック域807内において、チャンネル872を通してサブストレート800と組み合わされている。アキュムレータ・チャンバ801及び802は、チャンネル870を通してエラストマー・ブロック域807と、最終的には、エラストマー・ブロック808と流体連通している。
【0060】
図8Fは、サブストレート800の底面図を示す。特定の好適な実施形態において、穴部805の形成箇所と反対側に向けサブストレート800を通る第一ポート890と、サブストレート800を通りエラストマー・ブロック808(図示せず)中のバイアと流体連通している第二ポート892との間のサブストレート800底部にリセスが形成されている。
【0061】
図8Gは、エラストマー・ブロック域807に配置されたエラストマー・ブロック808を備えたサブストレート800を、サブストレート800のエラストマー・ブロック808と反対面に付着されたシーリング・レイヤーとともに切った断面図である。穴部805は、第一ポート890、チャンネル870、及び第二ポート897を通して、エラストマー・ブロック808のエラストマー層のリセス中へ流体連通しており、リセスはサブストレート800の上面897でシールされチャンネル885を形成している。シーリング・レイヤー881は、サブストレート800の底面部898中の成型又は機械加工されたリセスとともにチャンネル870を形成している。シーリング・レイヤー881は、望ましくは、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、又はポリプロピレンのような透明な材料である。一つの実施形態において、シーリング・レイヤー881は、粘着テープのような柔軟材であり、接着剤又はヒートシーリングなどで貼り付けてサブストレート800に接合し、又は圧着などで機械的に接合することができる。望ましくは、シーリング・レイヤー881の材料は、各リセスとともに流体シールを形成し、リークが最少の流体チャンネルを形成するのに適したものである。シーリング・レイヤー881を、剛体の追加支持層(図示せず)でさらに保護することができる。別の実施形態において、シーリング・レイヤー881は剛体である。
【0062】
図9Aは、エラストマー・ブロック808とサブストレート800のエラストマー・ブロック域807との間の流体インタフェースの拡大詳細図を示す。Unger及びHansenが表しているように、一体に貼り合わせた複数のエラストマー材料の層でエラストマー・ブロックを形成することができる。望ましくは、エラストマー・ブロックの層のうち少なくとも2枚はリセスを有する。例えば、リセスが形成された第一エラストマー層を、リセスが形成された第二エラストマー層に接着することにより、リセスを有するエラストマー・ブロックが形成される。第一エラストマー層のリセスは、全体的にあるいは部分的に閉じられて、第一エラストマー層中にチャンネルを形成する。第二エラストマー層中に形成されたリセスは、同様に、サブストレートに接着されると、全体的にあるいは部分的に閉じられて、第二エラストマー層中にチャンネルを形成し、このようにして、内部にチャンネルを備えた複数の層を持つマイクロ流体デバイスが形成される。
【0063】
図9A及び9Bを見ると、第一リセス901が形成された底面部を有する第一エラストマー層920と、上面及び第二リセス905が形成された底面部を有する第二エラストマー層923とが一体に接着され、チャンネル907(第一リセス901と第二エラストマー層923上面とで形成される)を有するエラストマー・ブロックが形成されている。サブストレート800が第二エラストマー層923の底面に接着されて、サブストレート800の上面897及び第二エラストマー層923の底面部によってチャンネル909が形成されている。ポート892によって、サブストレート800のチャンネル872を、サブストレート800の上面部により部分的に形成された第二エラストマー層のチャンネル909に接続することができる。これに換えて、図9A及び9Bに示すように、ポート892は、サブストレート800のチャンネル872を、バイア950を通してエラストマー・ブロック808の第一エラストマー層920のチャンネル907に接続する。バイア950は、サブストレート表面873のほぼ法線方向に形成され、望ましくは、エラストマー層920に貼り付ける前に第二エラストマー層923の中に形成され、さらに望ましくは、第一及び第二エラストマー層が一体に貼り合わされた後に形成される。同時係属で同一出願人による、2004年3月29日Ungerが出願した米国仮特許出願第60/57,715号を参照すること。前記出願は、自動レーザ融除システム及び方法を用いたバイア形成の教示の特別目的を含め、すべての目的のため参考として組み込まれる。バイアを生成するための典型的な方法には、第二エラストマー層形成時におけるマイクロ加工、レーザ・ドリル、CO2レーザによるレーザ・ドリル、エキシマ・レーザによるレーザ・ドリル、機械的ドリル、及びコアリングが含まれ、望ましくは、ドリルはロボット・ドリルシステムで行われ、前記システムは望ましくはx,y軸自動化ステージを具える。
【0064】
図9Bは、図9Aのマイクロ流体デバイスにおいて、第一エラストマー層920のチャンネル907が第二エラストマー層923のチャンネル909とオーバーラップし、望ましくは第二エラストマー層923の一部によって、エラストマー・ブロック内に湾曲性部分、望ましくは湾曲可能な膜が形成されている図を示す。流体圧力は、加圧流体源(図示せず)からチャンネル872、ポート892及びバイア950を介して第一エラストマー層920のチャンネル907に伝達され、エラストマー膜990を下側に湾曲させて、第二エラストマー層923のチャンネル909を通る流体流れ又は拡散を制御する。
【0065】
図9Cは、本明細書に記述するマイクロ流体デバイス中のバイアの別の好適な使用形態の断面図を示す。マイクロ流体デバイス921は、第一層リセス(すなわち、第二層に接合されたときのチャンネル)907を有する第一層920、及び第二層リセス(すなわち、サブストレートに接合されたときのチャンネル)950を有する第二層923を含む。2つの第二層チャンネルは、2つ以上のバイア950を介し、第一層チャンネルと流体連通している。望ましくは、バイア950の少なくとも一つは、サブストレートのリセス892(すなわち、シーリング・レイヤー(図示せず)がサブストレート800に接着された場合のチャンネル)を通してサブストレート800の穴部999と流体連通している。少なくとも一つの第二層チャンネル909は、流体連通のない第一層チャンネルの一部にオーバーラップされている。図9Cに示す実施形態において、一つの層の中の流体チャンネルを、同一層内の邪魔になる流体チャンネルの上側又は下側に迂回させられるので、マイクロ流体デバイスの単位面積あたり、より高密度の反応及び/又は検出を実現することができる。レーザ融除されたバイア950から生成されるデブリを捕捉するための融除デブリ・チャンバ989を設ける。デブリ・チャンバ989を、二層成型工法で層920の中に成型することができ、フォトレジストの第一層が形成され現像された後に、フォトレジストの第二層が第一パターンの上に上掛けされて、第二パターンは第一フォトレジスト層のパターンの上に形成され、フォトレジスト・パターンを部位によって異なる高さにすることができる。複数の層を順次に構築して異なる高さのパターンを生成することができる。また、異なるフォトレジスト材料を使って、例えば、フォトレジストの上部層を加熱によりリフローが可能なものとし、下部の層を同じ加熱温度ではほとんどリフローしないフォトレジストで構成することができる。
【0066】
図9Dは、2つの異なる層のチャンネルを相互接続するバイア950の拡大図を示す。マイクロ流体ブロック921は、チャンネル907を有する第一層920及びチャンネル909を有する第一層923で形成されている。バイア950は、チャンネル907と909とを相互接続している。また、デブリ・チャンバ989が示されており、これは前記のマルチ高さ成型工程によって層920の中に成型されたものである。バイア950がレーザ融除によって形成される際、層の一つから生じるデブリ又は材料を、バイアが形成された箇所のチャンネル907の上部部分に留め置くことができる。融除の後のこういったデブリ又は材料を留め置くチャンバを具えることは、チャンネル907又は909の閉塞又は狭窄を防止する助力となる。
【0067】
本発明のフロー・チャンネルを、所望の用途に応じて、異なった断面サイズ及び形状を持ち、異なる利点を提供するように、任意に設計することができる。例えば、下側フロー・チャンネルの断面形状を、その全長もしくは上側横断チャンネルの下に配置された部位において、曲線状の上面を持つようにすることができる。こういった以下のごとき曲線状の上面部により、バルブのシーリングが容易化される。本発明が意図する膜厚プロフィール及びフロー・チャンネル断面には、三角形、台形、円形、楕円形、放物線形、双曲線形、及び多角形、ならびに前記形状の分割形が含まれる。また、フロー・チャンネル中に凸部のある実施形態又は凹部を持つ実施形態のようなさらに複雑な断面形状も本発明の意図するところである。
【0068】
さらに、主として、フロー・チャンネルの壁及び天井は、エラストマーで形成され、チャンネルの床は下にあるサブストレートで形成される実施形態に関連させて本発明を説明しているが、本発明はこの特定な志向に限定されるものではない。チャンネルの壁と床とを下にあるサブストレートで中に形成し、フロー・チャンネルの天井だけをエラストマーで構築することもできよう。このエラストマー・フロー・チャンネルの天井を、加えた作動力に反応してチャンネルの中に張り出させ、これにより、フロー・チャンネルを通る材料の流れを制御することができよう。一般に、マイクロ流体用具には集積エラストマー構造が望ましい。しかしながら、サブストレートで形成されたチャンネルを、そういった構成に利点がある場合は、用いるのが役立つことがある。例えば、光学導波管を含むサブストレートを構築し、導波管によって、特にマイクロ流体チャンネルの脇に光を導くようにできよう。
【0069】
図10は、96個の別個の調量セルがエラストマー・ブロック808内に形成された好適な実施形態の平面図を示す。ある好適な実施形態において、サブストレート800(図示せず)内のポートをエラストマー・ブロック808内のチャンネルにつないでいる各エラストマー・ブロック注入口に隣接して水和ライン1010を設け、所定のオスモル濃度溶液の供給源を具えて、エラストマー・ブロック808の一部に、水和反応及び/又は浸透圧調節の源泉を提供する。
【0070】
図11Aは、タンパク質結晶化に使われる典型的な調量セルの拡大平面図を示しており、隣接するチャンネル及びチャンバ中の流体流れは、湾曲可能な膜バルブ、望ましくは、相互に重なり合って対向する「T」又はティー形状のバルブ1100に制御されている。好適な実施形態において、一連のチャンネル及び試薬チャンバは密接して配置されており、隣接する試薬チャンバ又はチャンネルの間のオスマル濃度の差異によって、典型的には蒸気の形でエラストマー・ブロックのエラストマー層を通して、流体のマイグレーションが生じる可能性がある場合、不連続バルブラインを使用することは、各チャンバ間とより短い流体距離にあるリニア・バルブライン119に比べて、試薬チャンバを「浸透圧的に」隔てるために役立つ。
【0071】
図11Bは調量セルに対するバルブの状態を示す。図の調量セル1101の中で、試薬チャンバ1103とタンパク質チャンバ1104とは、インタフェース・バルブ1106の作動により相互に分離され、その間、試薬及びタンパク質の溶液がそれぞれのチャンバに取り入れられる。満たされると、図11Cに示すように、格納バルブ1109が閉じられ、インタフェース・バルブ1106を開くことによって自由界面拡散が行われる。図11Dに示すように、インタフェース・バルブ1106を閉じることによって拡散を中断し、例えば、エラストマー・ブロック808の周辺及び内部の環境湿度を低下させることによって脱水を行うことができる。
【0072】
図11Eは、典型的な調量セル構成の写真である。
【0073】
図11Fは、複数のサンプルを複数の試薬と、例えば、望ましくは、以下に限定されないが48サンプルの48試薬と反応させることを含め、4つのサンプルを96の試薬と、8つの試薬を92のサンプルと反応させる等々のための高密度構成を示す。各々の反応ペアを、拡散などによって、別々に混合又は合成することができ、この構成は、介在する他の流体チャンネルの上側又は下側を迂回している。図11Fは、バイアを使用してマイクロ流体チップの反応/検出域の密度を増加させた例の拡大図である。拡大図11110には、タンパク質結晶化実験のような反応を行うための4つの調量セルのセットが提示されている。調量セル11100は、各セット内に、流体連通し、インタフェース・バルブ11020で分離された第一チャンバと第二チャンバとを有する4つのチャンバ・セットを含む。インタフェース・バルブ11020を閉じて、試薬チャンバ11030を満たすため調量セル11100と流体連通しているポート11050のようなポートを通して、試薬が取り入れられる。いずれも図示していないが、サンプル注入口ポート11080及び11070を通してタンパク質サンプルのようなサンプルが取り入れられ、バイア11040を介し相互接続しているチャンネルを通し、バイアがサンプルをサンプル分岐チャンネル11120に通過させて、サンプル・チャンバ11090に移送される。11020aのような広いチャンネル路は、第一層チャンネルと第二層チャンネルとのオーバーラップで形成される湾曲可能な膜バルブの所在を示している。比較的狭いチャンネル部分が他のチャンネルとオーバーラップしている場合は、湾曲可能な膜が形成されておらず、したがってバルブとして作用していない箇所を表す。当業者がよく理解しているように、本出願明細書に記載した構造の系列を入れ換えることができる。例えば、より厚い層の内部に流体層を形成し、より薄い層を制御層として使うことができ、各層の中に制御及び流体チャンネルの双方を持たせることができ、バイアを通して一つ以上の異なった層と流体連通させることができる。望ましくは、本明細書に記載するデバイスを二つ以上のエラストマー層で構成することができ、望ましくは二つ以上の層を一体に接合する。望ましくは、二つ以上の層の相補的化学性質を使って一体に接合することができ、密着して一体に結合する、又はさらに望ましくは、一つ以上の層をプラズマ、望ましくはArプラズマ処理する、さらに望ましくは、接合の前にクリーン乾燥エアプラズマ・エッチングする、望ましくは接着剤で接合し、接着剤は、望ましくは一体接合される一つ以上の層の化学的性質と類似又はこれと相補的な成分を含む。接着剤を層の表面にスピンコーティングで塗布することによって塗布することができ、又は、何かの表面に接着剤の層をスピンコートし、構成層を別の層に接合する前に、このようにスピンされた接着剤の上に層を押し当てて、このような層に接着剤を塗布することができる。
【0074】
図11Gは、96個の別個の調量セルの4セットがエラストマー・ブロック中に形成された好適な実施形態の平面図を示す。
【0075】
本発明による、ポンプ及びバルブにより供給可能な非常に小さな量は、多くの利点を提供する。具体的には、マニュアルで調量可能な流体の知られた最少量は0.1μl前後である。自動化システムで調量可能な流体の知られた最少量はそれより約10倍大きい(1μl)。本発明によるポンプ及びバルブを利用すると、10nl以下の液量をごく普通に調量し分注することができる。本発明により可能となった非常に少量の流体の正確な調量は、診断テスト及び分析を含め、多数のバイオロジカルな用途において非常に貴重なものとなろう。
【0076】
式1は、均一な厚さの長方形、リニアで弾力のある等方性のプレートが、加えられた圧力で曲がる際の非常に簡略化された数学モデルである;
w=(BPb)/(Eh)、ここで:
w=プレートの曲がり、
B=形状係数(長さ幅比及びプレート端の支持台に依存する)、
P=加えられた圧力、
b=プレートの幅、
E=ヤング率、及び
h=プレート厚さ。
【0077】
これより、非常に簡略化された式であっても、圧力に反応するエラストマー膜の湾曲は、膜の長さ、幅、及び厚さ、膜のたわみ性(ヤング率)、及び加わる作動力の関数となる。これらのパラメータの各々は、実際の寸法及び本発明による特定のエラストマー・デバイスの物理的組成によって大きく変わり得るので、本発明では、幅広い範囲の膜厚及び弾性、チャンネル幅、及び作動力を意図している。
【0078】
先に提示した式は単なる近似式であることを理解すべきである、というのは、通常、膜は均一な厚さを持たず、膜の厚さは、長さ及び幅と比べて必ずしも小さくなく、湾曲は、膜の長さ及び幅と比べて必ずしも小さくないからである。そうではあっても、先の式は、可変パラメータ調整して加えた力に対する所望の湾曲度を実現するための有用なガイドとして役立つ。
【0079】
本発明のマイクロ流体デバイスを単独型装置として使用することができ、望ましくは本発明が提供するシステムの一部として使用することができる。図12Aは、マイクロ流体デバイスを作動するためのロボット・ステーションの斜視図を示す。自動化気圧制御及びアキュムレータ・チャージ・ステーション1200は、8A−Gに示したような本発明のマイクロ流体デバイス1205を保持するための、収納ベイ1203を含む。プラテン1207は、マイクロ流体デバイス1205の上面1209に接触するようになされている。プラテン1207は、その中にマイクロ流体デバイス1205と位置合わせされたポートを有しており、マイクロ流体デバイス内の穴部及びアキュムレータに流体圧力を、望ましくはガス圧力を供給する。一つの実施形態において、プラテン1207は、アーム1211の動きにより、マイクロ流体デバイス1205の上面1211に押し当てられ、アームは、ピボット1213上にちょうつがい連結されてピストン1215によって駆動される。ピストンの一端はアーム1211に、他の端は、プラットフォーム1217に取り付けられている。ピストン1215に伴ったセンサは、ピストンの動きを検知し、ピストン位置についての情報をコントローラに中継し、コントローラは、望ましくは、ソフトウエア・スクリプトに従うコンピュータ(図示せず)に制御されている。プレート検知器1219は収納ベイ1203内のマイクロ流体デバイス1205の存在を検知し、望ましくは、マイクロ流体デバイス1205の適正な方向付けを検知することができる。このことは、例えば、マイクロ流体デバイス1205の側面に光を反射させてマイクロ流体デバイス1205の存在及び方向付けを光学的に検知することによって実施することができる。プラテン1207を、ロボットで、気体圧力で、電子的に、又は類似メカニズムで下降させることができる。一部の実施形態において、プラテン1207を手動で下降させデバイス1205とかみ合わせる。
【0080】
図12Bは、下降位置にあり、マイクロ流体デバイス1205の上部面1221に押し当てられたプラテン1207とともにチャージ・ステーション1200を描いたものであり、現在、デバイスはプラテン1207の側板で覆われている。一つの実施形態において、プラテンに導かれる流体ラインはアーム1211の中に配置され、流体圧力供給源は、望ましくは、コントローラに制御される自動気体圧力供給源である。圧力供給源は、プラテン1207のプラテン面(図示せず)内のポートに制御流体圧力を供給し、マイクロ流体デバイス1205に制御加圧流体を供給する。少なくとも一部において、ジンバル継手1223を用い、プラテン1207をアーム1211に取り付けることによって、プラテン1207はマイクロ流体デバイス1205の上面1221に垂直な軸の周りを自在移動することができ、プラテン1207の精密な位置付けが達成される。
【0081】
図12C及び12Dは、チャージ・ステーション1200の上昇位置及び下降位置状態双方それぞれの断面側面図を示す。図12Eは、下降位置にあるプラテン1207の拡大図を示す。
【0082】
図12Fは、マイクロ流体デバイス1205の上面1221に押し当てられたプラテン1207の断面側面図を示す。プラテン1207は、マイクロ流体デバイス1205の上面1221に押し当てられて、マイクロ流体デバイス1205とプラテン面1227との間、又はデバイス1205の一部と面1227の一部との間で流体密封シールを形成している。一つの実施形態において、プラテン面1227は、弾力性エラストマー、望ましくは化学耐性ゴムなどの柔軟な材料を含むか又はこれらで作製されている。プラテン1207内部には別々の流体圧力ライン、望ましくは圧力ガスラインがあり、これらはマイクロ流体デバイスの上面1221のさまざまな箇所と対になっている。また、逆止めバルブ・パージ駆動部1233が示されており、望ましくは気圧力で作動され、作動されると、ピン1231を下方、逆止めバルブ812内に押してバルブを開き、流体圧力を解放し又は開口部抵抗を減ずることによって、逆止めバルブ812を通しての流体取入れを可能にする。一つの実施形態において、プラテン1207は、逆止めバルブ811及び812と組み合わさった第一及び第二パージ駆動部1233を有する(図8B参照)。
【0083】
別の実施形態において、チップすなわちデバイス1205は、通常閉の格納バルブ及び/又はインタフェース・バルブを使って作製される。この実施形態において、アキュムレータは、反応期間の間、バルブを閉鎖しておく必要はないことになる。インタフェース・バルブ及び/又は格納バルブを必要に応じて開くことにより、取付台又はデバイス1205の穴部域に圧力が加えられることになる。それ以外の時間は、常時又はほとんど常時バルブは閉じており、チップのさまざまな実験を相互に分離、及び/又はチップ上の試薬穴部とタンパク質穴部とを相互に分離している。
【0084】
図12Gは、マイクロ流体デバイス1205のサブストレート800内に配置された逆止めバルブ812を作動するパージ駆動部1233の超拡大図を示す。
【0085】
図12Hは、マイクロ流体デバイス1205の上面1221に押し当てられたプラテン1207の断面図を示しており、プラテン面1227をデバイス上面1221のリッジ1250に密着させることにより、穴部列806上部に圧力キャビティ1255を形成している。そこで、チャージ・ステーション1200の下降アーム1211内を走る圧力ラインからキャビティ1255内に流体を取り入れることによって、流体圧力、望ましくはガス圧力を圧力キャビティに加える。圧力は、チャージ・ステーション1200に具えられた圧力レギュレータによって、望ましくは、できればコンピュータに制御されるチャージ・ステーション・コントローラから送信される信号に従ってアウトプット圧力を変化させることのできる、電子制御の可変圧力レギュレータによって、調節される。これにより、圧力キャビティ内部の加圧流体は、穴部805内の液体をサブストレート800中のチャンネルを通してエラストマー・ブロック808のチャンネル及び/又はチャンバ中に移動させチャンネル又はチャンバを満たすか、あるいは、前記のように、エラストマー・ブロック808の湾曲性部分、望ましくは湾曲可能な膜バルブを作動する。
【0086】
図13は、本発明の特定の実施形態による、プラテン面1227内の流体経路、及びプラテン面1227の各流体圧力ポートの空間配置の背面図を示す。特定の実施形態において、プラテン1207の流体接合点は、プラテン1207がマイクロ流体デバイス1205とかみ合わさったとき、流体ポート、穴部805、逆止めバルブ及び類似要素と整合するように位置付けされている。特定の実施形態において、マイクロ流体デバイス1205は、Topaz(登録商標)1.96又はTopaz(登録商標)4.96チップのような、一体化された取付台とマイクロ流体とのチップである。
【0087】
断続拡散は、より少量の結晶化剤を、タンパク質を収納しているチャンバ中に拡散させるのに十分な拡散期間を可能としながら、インタフェース・バルブを閉じることによって、タンパク質の結晶化剤チャンバ中への反対拡散を制限すると考えられている。インタフェース・バルブが作動されると、タンパク質を収納するチャンバを結晶化剤を収納するチャンバから分離する。
【0088】
本発明は、マイクロ流体デバイス、具体的には、少なくとも一つの湾曲可能な膜が、約500マイクロメータの断面寸法を持つマイクロ流体チャンネル内の流体を中断又は分離するためのバルブとして機能する、多層エラストマーマイクロ流体デバイスを保持するための装置、システム及びこのような装置とシステムとを使用するための方法を提供する。典型的なマイクロ流体デバイスを使用し、自由界面拡散(FID)によりタンパク質溶液からタンパク質結晶を形成させる条件をスクリーニングする。使用において、マイクロ流体デバイスに、タンパク質溶液、及び通常試薬溶液の形で結晶化剤が取り込まれ、各溶液は、バルブを備えたチャンネルで相互接続された別個のチャンバに入れられる。そこで、チャンネル中に配置されチャンバを分離しているバルブが開かれてチャンバ間の拡散が開始されるに際しては、格納バルブを使って、各溶液はその対応チャンバ中に保持される。好適なデバイスにおいて、バルブは、例えば、液圧又は気圧のいずれかの流体圧力の変化によって作動される。従って、バルブの各々に対する流体圧力を変化させる手段が有用となる。
【0089】
一つの様態において、本発明は、制御された流体圧力へのアクセスを具える取付台を提供する。図14Aは、好適な実施形態の斜視図を示す。図14A中の取付台は、一つの実施形態において約3平方インチの占有面積と1インチの高さとを持ち、望ましくはポリマー、望ましくはアクリルで作製される。取付台を使って実施される実験の性質、及び使用中に取付台が曝される溶液の如何によっては他の材料を使うことができる。例えば、取付台をポリプロピレンで作製して、アセトンのようなある種の溶剤に対する耐性を備えることができよう。
【0090】
図14A及び14Bを見ると本発明の具体的な実施形態が記載されている。図14Aは、タンパク質結晶を成長させるために用いられるチップのような、マイクロ流体デバイス又はチップ(図示せず)を収納するようになされた取付台1400を示す。チップを取付台1400中に搭載し、又は取付台と一体に形成し、又は取付台1400と同様なサイズ、特質及び機能を有する単独型のチップとすることができる。一つの実施形態において、取付台1400は、マイクロ流体デバイス用の対応する穴部と流体連通している複数のポート又は穴部を含む。このようなやり方で、取付台の穴部に供給された流体を、そこからマイクロ流体デバイスに配送することができる。さらに、取付台又はデバイスの穴部の中に投入された流体を、取付台1400のポート又は穴部に圧力を加えることによって、デバイス内の試験域に送ることができる。
【0091】
特定の実施形態において、マイクロ流体デバイス又はチップは、取付台1400内に設置されたチップ域1410中に収納、又は底部に一体形成される。一つの実施形態において、取付台1400は、複数の試薬を受けるようになされた第一穴部域1420及び第二穴部域1422を含む。一つの実施形態において、第一穴部域1420及び第二穴部域1422は、各々、48の試薬を受けるようになされている。一つの実施形態において、区域1420及び1422は、デバイスが取付台1400に設置されたときに、マイクロ流体デバイスの対応する穴部に連結される複数の穴部を含む。この連結は、前記のように、例えば取付台1400中のチャンネルを使って行うことができる。一つの実施形態において、取付台1400は、第一タンパク質域1430及び第二タンパク質域1432をさらに含む。第一タンパク質域1430は、所望のタンパク質を受けるようになされた複数の穴部を含み、特定の実施形態においては4つの穴部又はポートを含む。別の実施形態において、第二タンパク質域1432は、上限4種までのタンパク質を受けるようになされている。特定の実施形態において、第二タンパク質域1432は、取付台1400のための通気口を具える。他の実施形態において、穴部の数は、以下に限らないが、所望する実験又はテストの数、所望する穴部又は結晶のサイズ、取付台のサイズなどを含む広範囲のファクターの如何によって、本明細書において区域1420,1422、1430及び1432に対して記載した数と違ったものになる。
【0092】
一部の実施形態においては、チップの湿度を制御することが望ましい。一つの実施形態において、チップの周りに水和チャンバ1440が形成され、水和チャンバ1440は流体又は流体源を保持するようになされている。特定の実施形態において、スポンジ、ゲル・パッケージ、布切れ又は木綿ボール/パッドのような織布材料、又は液体を保持するようにされた他の材料が、水和チャンバ1440の中に配置される。特定の実施形態において、図14Bに示すように、チップの両側に流体含有材料が配置される。スポンジ又は他の材料を水、緩衝液、結晶化試薬又は溶剤で潤すことができる。これに換えて、乾燥剤を加えてマイクロ流体デバイスから湿度を除去することができる。取付台1400は、逆止めバルブ1465を有するインタフェース・アキュムレータ1460、及び逆止めバルブ1455を有するインタフェース・アキュムレータ1450をさらに含む。前記の実施形態に関連して前に説明したように、逆止めバルブ1455、1465は、アキュムレータ1450及び1460内の圧力を増大又は解放して、アキュムレータ1450及び1460に流体を取入れ又は除去し、また、取付台1400内の圧力を維持するように動作して、これにより、取付台内に配置されたマイクロ流体デバイスの必要箇所の圧力を維持又は加圧することができるようになされている。制御された流体圧力の「オンボード」源を持つ利点は、マイクロ流体デバイスが流体圧力の変化によって作動されている場合、流体圧力の外部供給源と関係なく作動状態を保持することができ、これにより、マイクロ流体デバイス及び取付台を、流体圧力の外部供給源に取り付けられた導管コードから解放できることである。アキュムレータに、接続ブロックと流体圧力を連通するため加圧ガス注入口ポート、液体追加ポート、及びの加圧流体放出口をさらに含めることができる。
【0093】
特定の実施形態において、一体化された取付台1400及びマイクロ流体デバイスは、本発明の実施形態により、本発明のシステムを用いて所望の実験を実施するようになされている。さらに具体的には、図15Aに示すように、システム1500は、各々が取付台1400を収納するようになされている一つ以上の収納ステーション1510を含む。特定の実施形態において、システム1500は、4つの収納ステーション1410を含むが、本発明の別の実施形態においては、これより少ない又は多い数のステーション1510を具える。図15Bは、取付台1400とデバイスとが組み合わされて、インタフェース・プレート1520の下側のステーション1610中に配置されている図を示す。インタフェース・プレート1520は、図15Bの下方に動き、インタフェース・プレート1520が取付台1400及びそのマイクロ流体デバイスの上面部にかみ合わさるようになされている。一部の実施形態において、ステーション1510及びプラテン1520は、ステーション1200及びプラテン1207と同様である。インタフェース・プレート1520は、取付台1400内の、流体、圧力などを受けるようになされた箇所と結合するための一つ以上のポート1525を含む。一部の実施形態において、インタフェース・プレート1520は、2つのポート、3つのポート、4つのポート、5つのポート、6つのポート、7つのポート、8つのポート、9つのポート、10のポート、又は類似数のポートを含む。好適な実施形態において、インタフェース・プレート1520は、取付台1400の必要箇所に圧力を供給するための6本のライン、及び、逆止めバルブ1455と1465とを作動するためのメカニズムを提供するための2本のラインと連結されている。
【0094】
図15Cは、図13と類似の、本発明の特定の実施形態によるインタフェース・プレート1520のさまざまな箇所を示す。別の実施形態において、インタフェース・プレート1520は、図15Cに示されたのとは異なる数又は構成のポートを含む。
【0095】
図15Aに示したシステム1500は、一つの実施形態においてはノート型パソコン又は他の計算装置と一体になったプロセッサを含む。計算装置1530は、本発明の所望の処理を実施するためのソフトウエア、スクリプトなどを保存するようになされたメモリを含む。さらに、計算装置1530は、調査の結果及びマイクロ流体デバイスの分析内容を表示するための画面1540を含み、図17にはシステム1500のディスプレイ画面ショットの一つの実施形態が示されている。システム1500は、加圧流体、ガスなど、一つ以上の圧力源に連結されており、これらを、インタフェース・プレート1520と流体連結しているマイクロ流体デバイスに配送する。
【0096】
図16A及び16Bは、システム1500の特定の実施形態、さらに具体的にはインタフェース・プレート1520を示す。図16Aにおいて、インタフェース・プレート1520は、一体化されたチップ及び取付台1400と、その特定域を流体的に密封するようにして連結されている。具体的には、流体密封は、インタフェース・プレート1520と、第一タンパク質域1430、第二タンパク質域1432、第一穴部域1420、第二穴部域1422、インタフェース・アキュムレータ1460、逆止めバルブ1465、収納アキュムレータ1450、及び/又は逆止めバルブ1455のような、取付台1400及びチップの一つ以上の区域との間に設けられる。一つの実施形態において、インタフェース・プレート1520は、区域1420、1422、1430、1432、及びアキュムレータ1450及び1460に対し流体密封を設定する。図16Bでよく分かるように、一つの実施形態において、インタフェース・プレート1520は、一つ以上の逆止めバルブ駆動部1570を具えている。
【0097】
一部の実施形態において、インタフェース・プレート1520は、取付台1400及びマイクロ流体デバイスに対し、必要なすべての流体密封を提供する。そのため、インタフェース・プレート1520にはシーリング・ガスケット1580を含めることができる。シーリング・ガスケット1580を、以下に限らないが、シリコンラバー、エラストマーなどを含め、幅広い範囲の材料で構成することができる。一部の実施形態において、ガスケット1580は、所望箇所の流体シールを形成するのに役立つ柔軟な材料から成る。このようにして、システム1500は、必要な圧力を、チップ及び取付台1400の適切な区域に供給することができる。他の実施形態において、インタフェース・プレート1520は、2つ以上のプレート部品である。例えば、取付台1400及びマイクロ流体デバイス上の区域及びポートの各々を、そのポート又は区域に整合するようにされた別々のプレート1520に流体結合させることができる。そこで、システム1500には、各種のポート及び区域のために必要な数のインタフェース・プレート1520が含まれることになる。さらに、一部の実施形態において、一つ以上の区域及びポートはある特定のインタフェース・プレート1520に連結され、他の区域及びポートは別のインタフェース・プレート1520に連結される。また、インタフェース・プレートと、取付台/チップの区域及びポートとの他の組み合わせ方も本発明の範囲に含まれる。
【0098】
一つの実施形態において、システム1500の作動は、一つ以上の取付台1400を収納ステーション1510に収納する工程を含む。一部の実施形態において、取付台1400は、これに結合されたマイクロ流体デバイスを含み、取付台が収納ステーション1510の中に設置される前に、所望の試薬及びタンパク質は取付台穴部に取り込まれる。他の実施形態において、取付台1400は収納ステーション1510に設置され、その後に試薬及びタンパク質が供給される。取付台1400には、さらに水和流体を取り込ませることができる。水和流体を水和チャンバ1440に格納することができる。取付台1400をシステム1500に装着した後に、インタフェース・プレート1520は、下降又は他の方法で動かされ取付台1400とかみ合わさる。プレート1520を、手動で、ロボットで、又は他の方法で下降させ、チップ/取付台1400の一部又は全体とともに流体密封することができる。水和流体を、インタフェース・アキュムレータ1460及び/又は格納アキュムレータ1450に供給し、インタフェース・プレート1520に連結された圧力源を用いて適切な圧力をアキュムレータ1450、1460に加え、チップの中に押し入れる。特定の実施形態において、システム1500はこの工程を自動的に遂行し、特定の実施形態において、水和流体が取付台1400に加えられた後、約20時間以内にこの工程が実施される。結果として、本明細書に、さらに詳しくは、先に参考として本明細書に組み込まれた特許及び出願中に記載されているように、チップには、チップの格納バルブ及び/又はインタフェース・バルブを作動するための液圧流体が十分に取り込まれる。
【0099】
対応する注入口の周りの密封された適切なチップ域に必要な圧力を加えることにより、タンパク質及び試薬はチップ中に注入される。例えば、約1psiから35psiの間の圧力を第一及び第二穴部域1420及び1422に加える操作によって、試薬をチップ中に押し込む。同様に、約1psiから35psiの間の圧力を第一及び第二タンパク質域1430及び1432に加える操作によって、タンパク質をチップ中に押し込む。特定に実施形態において、チップに液圧流体を取り込んだ後、約60分以内にこれが行われる。タンパク質及び試薬が、チップ内の必要な穴部、チャンバ、収納部などに取り入れられたならば、インタフェース・アキュムレータ1460中の逆止めバルブ1465を解放することによって、チップ内のインタフェース・バルブが開かれる。特定の実施形態において、システム1500が逆止めバルブ1465と組み合わされた逆止めバルブ駆動部1570を作動すると、逆止めバルブ1465が解放されて、チップ中のインタフェース・バルブが開かれる。一部の実施形態において、逆止めバルブ駆動部1570は、インタフェース・アキュムレータ1460内の圧力を解放するために、逆止めバルブに組み合わさるようにされたピン、支柱などを含む。別の実施形態において、逆止めバルブ1465は、手動で解放又は開かれる。
【0100】
試薬とタンパク質とを、自由界面拡散又は他の適切な処理法を用いて所望の期間混合させた後、インタフェース・バルブは閉鎖される。インタフェース・バルブ及び格納バルブを閉じたままに維持するために、駆動部1450及び/又は1460に圧力が加えられる。温置又は自然放置のため、システム1500から取付台1400を取り外すことができる。格納バルブ及びインタフェース・バルブが開くのを防止又は防止を助力するために、駆動部1450及び1460は、数時間から数日までの所望の期間、圧力を保持する。特定に実施形態において、駆動部1450及び1460は、チップ内の圧力を、格納バルブ及び/又はインタフェース・バルブの閉鎖を保持するのに十分な所望閾値圧力より高く維持する。一つの実施形態において、駆動部1450及び1460は、圧力を、少なくとも2日間、少なくとも7日間といった期間、閾値圧力より高く維持する。駆動部1450及び1460所望の圧力を維持する時間の長さは、部分的に温置温度に依存する。一部は、所望の温置期間の長さ及び/又は温置条件如何によって、駆動部1450及び1460を再充填又は再加圧するために、取付台1400をシステム1500に戻すことができる。このように、温置期間を延長し、所望の結晶成長、又は他の化学的又は関連処理の成就に役立てることができる。
【0101】
図17は、前記のコンピュータ駆動のステーション1510により生成された典型的なグラフィック・ユーザ・インタフェース・コンピュータ画面である。示された好適な実施形態において、状態を示す4つの別個の画面列に見られるように、4つの異なるチャージ・ステーションを独立的に作動することができる。ソフトウエアをデータ入力装置及びデータベースにリンクさせ、固有の識別記号、望ましくは、バーコード又は空間的ドット光学コード、又はエンコード無線周波数装置を本発明のマイクロ流体デバイスと関連付けて、実験条件、使用試薬、ユーザID、サンプル符号、バルブ作動プロフィール、湿度反応後分析データを、相互に関連させることができる。以下のような各種の実験機器によって情報を生成することができる:ロボット分注ステーション、ロボット・プレート取扱い装置、温置器、本明細書に記載したようなチャージ・ステーション、及び、光学検査ステーション;2003年5月20日にLeeらが出願した同時係属の米国仮特許出願番号第60/472,226号、3つの各々が2003年7月28日に出願され、本発明の譲受人に譲渡された、両方ともTaylorによる60/490,712号及び60/490,584号ならびにQuanによる60/490,666号に記載されているような機器。これら出願は、すべての目的のt目その全体を参考として本明細書に組み込まれる。
【0102】
本明細書に記載されたチャージ・ステーションを作動するために用いるソフトウエアは、エンドユーザがカスタム・スクリプトを作成して、本明細書に記載したマイクロ流体デバイスを作動し、別なやり方で制御又は操作することができるようにするための、エンドユーザ・スクリプト書き方手法をさらに提供することができる。このようなカスタム・スクリプトは、本発明のマイクロ流体デバイスを、これが関わる実験に使われる他のコンピュータ・プログラム及びコンピュータ制御装置とさらに統合させる。
【0103】
例1:好適な実施形態において、インタフェース・バルブをある時間経過後、例えば60分後に閉じて拡散を制御することにより、タンパク質結晶化反応を実施することができる。下記の表1は、本発明の典型的なタンパク質結晶化デバイスを、拡散をある時間経過の後に中断するやり方で使用するための工程を明示したものである。
【0104】
【表1−1】

【0105】
【表1−2】

【0106】
【表1−3】

特定の実施形態を参照して、本発明を説明してきたが、変形の幅、さまざまな名変更及び置き換えは、前記した開示範囲内として意図されており、一部の例において、ここに示した本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の一部の特質を、対応する他の特質を使用せずに用いることができることは十分に理解されよう。例えば、前記した圧力ベース作動システムに加え、オプションとして静電気及び磁気作動システムも考えられる。また、熱膨張又は液体からのガス発生のいずれかによる熱エネルギーの応用に基づいて、制御チャンネルに流体を流すことによってデバイスを作動することも可能である。さらに、別の実施形態において、遠心力を使ってタンパク質及び試薬をチップ内に入れ込む。しかして、特定の状況又は材料に適応させるために、本発明の本質的な範囲及び精神を逸脱することなく、本発明の教示の多くの変形を作ることができる。本発明は、本発明を実施するため考えられる最善のモードとして開示した、特定の実施形態に限定されるものでなく、本発明は、請求事項の範囲に該当するすべての実施形態及び同等案を含むことを意図している。
【0107】
前述してきた開示には、独自の効用のため、一つ以上の別の発明を包含するものがある。これらの発明の各々は、その好ましい形態で開示されている。これらの好ましい形態は、本明細書において開示され説明された特定の実施形態を含め、数多くの変形案が可能なので、制限的意味を持つものとしては意図されていない。本発明の主題には、本明細書に開示された、各種の要素、特質、機能、及び/又は特性の、すべての新規な及び非自明な組み合わせ及びサブ組み合わせが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1−1】図1A〜1Bは、従来技術によるエラストマー・ブロックの簡易断面図である。
【図1−2】図1Cは、従来技術によるエラストマー・ブロックの簡易断面図である。
【図2】図2は、従来技術による取付台及びマイクロ流体デバイスの立体分解図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態による取付台及びマイクロ流体デバイスの立体分解図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態による取付台の斜視図を示す。
【図5】図5は、図3及び図4に示した取付台の平面図を示す。
【図6】図6は、図3−5に示した取付台のアキュムレータ・チャンバの断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態による別の取付台の斜視図を示す。
【図8A】図8Aは、本発明の実施形態による、内蔵の圧力アキュムレータ穴部を有する、マイクロ流体デバイスのサブストレートを示す。
【図8B】図8Bは、図8Aに示したマイクロ流体デバイスが、エラストマー・ブロックをさらに含んだものの立体分解図を示す。
【図8C】図8Cは、図8Bに示したマイクロ流体デバイスの全体図である。
【図8D】図8Dは、図8Bに示したマイクロ流体デバイスの平面図である。
【図8E】図8Eは、図8Bに示したマイクロ流体デバイスの平面図を示す。
【図8F】図8Fは、図8Bに示したマイクロ流体デバイスの底面図を示す。
【図8G】図8Gは、図8Bに示したマイクロ流体デバイスの断面図を示す。
【図9A】図9A及び9Bは、本発明の実施形態による流体インタフェースの拡大図である。
【図9B】図9A及び9Bは、本発明の実施形態による流体インタフェースの拡大図である。
【図9C】図9Cは、本発明のマイクロ流体デバイスに一部の実施形態において使用するバイアの断面図である。
【図9D】図9Dは、本発明のマイクロ流体デバイスに一部の実施形態において使用するバイアの拡大図である。
【図10】図10は、本発明で用いるチップの一つの実施形態の平面図である。
【図11A】図11A−Dは、本発明の実施形態による、さまざまなバルブ状態における典型的な調量セルの拡大平面図である。
【図11B】図11A−Dは、本発明の実施形態による、さまざまなバルブ状態における典型的な調量セルの拡大平面図である。
【図11C】図11A−Dは、本発明の実施形態による、さまざまなバルブ状態における典型的な調量セルの拡大平面図である。
【図11D】図11A−Dは、本発明の実施形態による、さまざまなバルブ状態における典型的な調量セルの拡大平面図である。
【図11E】図11Eは、典型的な調量セル構成の写真である。
【図11F】図11Fは、本発明の実施形態による、複数のサンプルを反応させるための高密度ホルマールを示す。
【図11G】図11Gは、本発明で用いるチップの一つの実施形態の平面図である。
【図12A】図12Aは、本発明の実施形態による、マイクロ流体デバイスを作動させるためのステーションの斜視図である。
【図12B】図12B及び12Dは、それぞれ、プラテンを下降位置にした図12Aのステーションの斜視図と側面図とである。
【図12C】図12Cは、プラテンを上昇位置にした図12Aのステーションの側面図である。
【図12D】図12B及び12Dは、それぞれ、プラテンを下降位置にした図12Aのステーションの斜視図と側面図とである。
【図12E】図12Eは、図12Aのプラテンの拡大図を示す。
【図12F】図12Fは、図12Aのプラテンの断面図を示す。
【図12G】図12Gは、本発明の実施形態による、逆止めバルブを操作するパージ駆動部の拡大図である。
【図12H】図12Hは、本発明の実施形態による、マイクロ流体デバイスの上部面に押し当てられたプラテンの切断面を示す。
【図13】図13は、本発明の実施形態による、プレート・インタフェース又はプラテン内部の流体経路の背面図である。
【図14A】図14Aは、本発明の実施形態による取付台の斜視図である。
【図14B】図14Bは、本発明の実施形態による、組み込まれた取付台及びチップの上面図である。
【図15A】図15Aは、本発明の実施形態による、システムの簡単な全体図である。
【図15B】図15Bは、図15Aのシステム中の受入れステーションの斜視図である。
【図15C】図15Cは、本発明の実施形態による、プレート・インタフェース又はプラテン内部の流体経路の背面図である。
【図16A】図16A及び16Bは、本発明の実施形態による、取付台に結合させたインタフェース・プレートを示す断面側面図である。
【図16B】図16A及び16Bは、本発明の実施形態による、取付台に結合させたインタフェース・プレートを示す断面側面図である。
【図17】図17は、図15Aのシステムで利用可能な画面ショットの例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスを動作させる装置であって、
一つ以上の流体ポートを備えたプラテン面を有し、該流体ポートは、該マイクロ流体デバイスの表面上の一つ以上の注入口と空間的に対応している、プラテンと、
該マイクロ流体デバイスを、該プラテンに対して保持するプラットフォームと、
該プラテンを該マイクロ流体デバイスに押し当てて、該プラテンの該流体ポートの少なくとも一つは該注入口の一つに押し当てられて該注入口と該ポートより成る圧力チャンバを形成し、該ポートの一つを通して加圧流体が該圧力チャンバに出入りするときにその中の圧力が変化する、プラテン駆動部と、
を備える、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記プラテン駆動部はロボット・プラテン駆動部を備える、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、前記プラテン駆動部は、コントローラによる電子的な制御下にある、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、前記コントローラはコンピュータであるか、又はコンピュータの制御下にある、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、前記コンピュータはプログラムに従う、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、前記プログラムは、前記装置のユーザによってカスタマイズされる、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、前記マイクロ流体デバイスは、
チャンネルを通じて相互に流体連通している第一チャンバ及び第二チャンバと、
該チャンネルに沿って配置され、開閉するときに該第一チャンバと第二チャンバとの間の流体連通を制御するバルブとを備え、
該バルブは、該マイクロ流体デバイスが前記プラテンに連結されたときに、自動バルブ作動デバイスの制御下にある、
装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、前記自動バルブ作動デバイスがさらにコンピュータの制御下にある、装置。
【請求項9】
請求項7に記載の装置であって、前記バルブは、前記自動バルブ作動デバイスを使って開閉される、装置。
【請求項10】
請求項7に記載の装置であって、前記バルブは湾曲可能な膜を備える、装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置であって、前記プラテン駆動部は、約1psiと約35psiとの間の圧力を用いて、前記少なくとも一つの流体圧力ポートに加圧流体を送達するのに適合している、装置。
【請求項12】
マイクロ流体システムであって、
収納ステーションであって、該収納ステーションは、複数のチャンバを有するマイクロ流体デバイスを収納し、該マイクロ流体デバイスは取付台に連結され、該複数のチャンバの少なくとも一部は該取付台の複数の注入口に連結されている、ステーションと、
該取付台の該注入口の少なくとも一つと係合するのに適合しているインタフェース・プレートと、
該インタフェース・プレートに連結され、該取付台の該注入口の少なくとも一つに加圧流体を供給するのに適合している流体源と、
該流体源及び、該流体源から該取付台に流体を導くための該インタフェース・プレートに連結されたコントローラと、
を備える、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記マイクロ流体デバイスは複数のバルブ・ラインをさらに備え、前記流体は、前記コントローラによって前記バルブ・ラインの少なくとも一部の中に導かれる、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、前記コントローラは、前記バルブ・ラインの少なくとも一部を開閉するのにさらに適合している、システム。
【請求項15】
請求項12に記載のシステムであって、前記取付台は複数の穴部をさらに含み、前記穴部の少なくとも一部は、前記複数の注入口のうちの対応する注入口に連結され、前記対応する注入口は、解析のための流体を前記マイクロ流体デバイス中に受けるのに適合している、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、前記コントローラは、穴部の中の前記流体を、前記複数のチャンバの少なくとも一部に押し入れるために、前記インタフェース・プレートを介して前記複数の穴部に圧力を加えるようになされている、システム。
【請求項17】
請求項12に記載のシステムであって、前記インタフェース・プレートは、それぞれが前記取付台の少なくとも一つの注入口に係合するのに適合している2つ以上の別個のインタフェース・プレートを備える、システム。
【請求項18】
請求項12に記載のシステムであって、前記取付台は、アキュムレータ・ポートを有するアキュムレータ・チャンバを備え、該インタフェース・プレートは、該アキュムレータ・チャンバと流体連通するポートを備える、システム。
【請求項19】
請求項18に記載のシステムであって、前記アキュムレータ・チャンバは、前記アキュムレータ・ポートを通って該アキュムレータ・チャンバ内への流体移動を制御するためのバルブをさらに備え、該バルブは該アキュムレータ・ポートと流体連通している、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、前記バルブは、前記アキュムレータ・ポートを通る前記アキュムレータ・チャンバから出る流体流れを制限すしながら、該アキュムレータ・ポートを通る該アキュムレータ・チャンバ内への流体流れを可能にする、システム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムであって、前記バルブは、該バルブが作動されたときに、前記アキュムレータから出る流体流れを可能とする、システム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムであって、前記バルブは機械的に作動される、システム。
【請求項23】
請求項21に記載のシステムであって、前記バルブは逆止めバルブである、システム。
【請求項24】
請求項19に記載のシステムであって、前記インタフェース・プレートは、前記インタフェース・プレートと取付台とが連結されたときに、前記バルブと係合するように適合しているバルブ駆動部を含む、システム。
【請求項25】
請求項18に記載のシステムであって、前記アキュムレータ・チャンバが液体をさらに含む、システム。
【請求項26】
請求項18に記載のシステムであって、前記アキュムレータ・チャンバがガスをさらに含む、システム。
【請求項27】
請求項18に記載のシステムであって、前記アキュムレータ・チャンバがガスと液体とをさらに含む、システム。
【請求項28】
請求項26に記載のシステムであって、前記ガスは、前記アキュムレータ・チャンバの外部のガス圧に対して加圧されている、システム。
【請求項29】
請求項12に記載のシステムであって、前記インタフェース・プレートは、シーリング・ガスケットをさらに備える、システム。
【請求項30】
請求項18に記載のシステムであって、前記アキュムレータ・チャンバは、前記マイクロ流体デバイス中のバルブを閉状態に維持するために、圧力を所望の圧力レベルより高く維持するのに適合している、システム。
【請求項31】
請求項30に記載のシステムであって、前記閉じたバルブが少なくとも2日間持続する、システム。
【請求項32】
タンパク質結晶化条件のスクリーニングにおける工程を実行する方法であって、該方法は、
マイクロ流体デバイスを提供する工程と、
以下:
ロボットで、該マイクロ流体デバイスの穴部を試薬で満たす工程、
ロボットで、該マイクロ流体デバイスを、ロボット液体分注ステーションから異なる場所へ移動する工程、
ロボットで、該マイクロ流体デバイスを、請求項12に記載のシステム中に配置する工程、
該マイクロ流体デバイスを、請求項12に記載のシステムから取り外す工程、
ロボットで、該マイクロ流体デバイスを、光学検査ステーション中に配置する工程;
自動画像システムを使ってマイクロ流体デバイスを光学的に点検する工程;
からなる群から1つの工程を実施する工程、
とを包含し、
ここで、「ロボットで」とは、コンピュータ又は電子コントローラの制御下にある機械的デバイスによって引き起こされる該マイクロ流体デバイスの動作を意味する、
方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図12H】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【公表番号】特表2007−518562(P2007−518562A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551419(P2006−551419)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/002408
【国際公開番号】WO2005/072353
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(503367169)フルイディグム コーポレイション (14)
【Fターム(参考)】