説明

結晶性ポリマー分散体、活性光線硬化型インキ及びその製造方法

【課題】活性光線硬化型インキに優れた硬化皮膜の物性を付与する結晶性ポリマー分散体、硬化皮膜の物性に優れた活性光線硬化型インキ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)炭素数10以上の高級α−オレフィンの単独重合体又は炭素数10以上の高級α−オレフィンと他のオレフィン一種以上とを共重合して得られる、高級α−オレフィン単位含有量が50モル%以上の共重合体であって、かつ、融点が20℃〜100℃である結晶性ポリマー及び(B)活性光線硬化型分散媒を含有する結晶性ポリマー分散体、並びに、該結晶性ポリマー分散体、(C)着色剤、(D)インキ用ワニス及び(E)開始剤を含有する活性光線硬化型インキである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性ポリマー分散体、その製造方法及び該結晶性ポリマー分散体を含有する活性光線硬化型インキに関する。さらに詳しくは、紫外線、電子線、γ線などの活性光線を照射することによって硬化する結晶性ポリマー分散体、その製造方法及び該結晶性ポリマー分散体を含有し、皮膜表面の物性に優れた活性光線硬化型インキに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロイル基を有する化合物を含有する印刷インキ、コーティングワニス等の活性光線硬化型組成物は、紫外線、電子線、γ線などの活性光線を照射することによって組成物に存在するアクリロイル基がラジカル重合反応によって硬化、乾燥する。しかしながら、大気中の酸素と反応したラジカルは安定性が非常に高いため成長反応を阻害する。成長反応の阻害は大気に面した表面部分で起こり皮膜表面は低分子量の未反応物が残存してしまうことが知られており、この現象は酸素阻害と呼ばれている。
酸素阻害の防止方法としては、従来より、融点50〜80℃程度のパラフィンワックスを加える手法が知られており、活性光線照射時にワックスが皮膜表面に析出するため、酸素と皮膜との接触が防止される。ここで、高融点(50〜80℃)のパラフィンワックスを利用するのは、常温においてインキに必要な充分な硬度を出すためであるが、高融点のパラフィンワックスをもってしても、表面に析出したワックスの皮膜強度は不十分であり、耐摩擦性の低下などの印刷品質の低下をもたらしている。また、実際にワックス利用を可能とするためにはワックスを低粘度物質に溶融分散することが必要になり、このワックスの溶融分散体はワックスコンパウンドと言われる。ワックスコンパウンドの製造時にはワックスと低粘度の分散媒を仕込み、ワックスの融点以上の温度に加温した後、攪拌し分散状態を保って急冷することで得られる。ここで使用される分散媒は、充分な硬化皮膜を得るため、コンパウンド製造温度、つまり、100℃以上、好ましくは130℃以上の高温で安定である必要である。
【0003】
しかしながら、分散媒として活性光線硬化型分散媒を用いる際に、熱安定性の高い分散媒を選ぶと活性光線照射時の硬化能力が非常に低く実用的には効果不十分である。更に、ワックスの分散能力向上のため、分散媒として軽油に近い酸化重合タイプのインキに使われているインキ溶剤を使用することもある。このワックスコンパウンドを利用した場合は、硬化皮膜に分散媒として使用したインキ溶剤が乾燥皮膜中に残存するため、皮膜物性が低下するという弊害がある。
上記問題を解決する方法として、例えば特許文献1には、電離放射線硬化用インキにおいて、表面に機能性を付与する添加剤を表面に局在化させる手法が開示されている。
また、特許文献2には、融点が30〜50℃の高級α−オレフィン重合体を配合することを特徴とするインク組成物が開示されている。
さらに、特許文献3には、ポリα−オレフィンポリマーを添加剤とするインク調合物が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3305708号公報
【特許文献2】特開2007−246820号公報
【特許文献3】特開2001−187855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の表面機能化方法を用いてインクを硬化させる場合には、生産性が低下してしまうという問題がある。
また、特許文献2に記載された調整法で得られたインク組成物においては、融点が30〜50℃の高級α−オレフィン重合体をワックスとして用いることで、活性光線照射時の硬化能力の高い分散媒を選ぶことができ、得られるインクの特性は向上する。しかしながら、ワックスコンパウンドを用いていないために、高結晶性である高級α−オレフィン重合体がインク中に分散しにくく、得られる効果も不十分となる。また、酸素阻害の防止効果が得られるには粘度が高すぎるものと考えられる。
さらに、特許文献3に記載されたインク調合物は、実質的には炭素数10のα−オレフィンからなるポリマーを粘度調整剤として添加するものであり、電離放射線硬化用インキにおける酸素阻害を防止するものではなく、さらには、表面への析出によりべたつきの発生など印刷品質の低下の可能性も含んでいる。
【0006】
本発明は、上記のような状況下で、活性光線硬化型インキに優れた硬化皮膜の物性を付与する結晶性ポリマー分散体、硬化皮膜の物性に優れた活性光線硬化型インキ及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の結晶性ポリマー及び活性光線硬化型分散媒を含有する結晶性ポリマー分散体を用いることで上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、
1.(A)炭素数10以上の高級α−オレフィンの単独重合体又は炭素数10以上の高級α−オレフィンと他のオレフィン一種以上とを共重合して得られる、高級α−オレフィン単位含有量が50モル%以上の共重合体であって、かつ、融点が20℃〜100℃である結晶性ポリマー及び(B)活性光線硬化型分散媒を含有する結晶性ポリマー分散体、
2.前記(A)結晶性ポリマー10〜50質量部及び(B)活性光線硬化型分散媒50〜90質量部を合計100質量部となるように含有する請求項1に記載の結晶性ポリマー分散体、
3.(A)炭素数10以上の高級α−オレフィンの単独重合体又は炭素数10以上の高級α−オレフィンと他のオレフィン一種以上とを共重合して得られる、高級α−オレフィン単位含有量が50モル%以上の共重合体であって、かつ、融点が20℃〜100℃である結晶性ポリマー及び(B)活性光線硬化型分散媒を含有する結晶性ポリマー分散体、(C)着色剤、(D)インキ用ワニス並びに(E)開始剤を含有する活性光線硬化型インキ、及び
4.(A)炭素数10以上の高級α−オレフィンの単独重合体又は炭素数10以上の高級α−オレフィンと他のオレフィン一種以上とを共重合して得られる、高級α−オレフィン単位含有量が50モル%以上の共重合体であって、かつ、融点が20℃〜100℃である結晶性ポリマー及び(B)活性光線硬化型分散媒を含有する結晶性ポリマー分散体を調製し、さらに、(C)着色剤、(D)インキ用ワニス及び(E)開始剤を配合して請求項3に記載の活性光線硬化型インキを得ることを特徴とする活性光線硬化型インキの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の結晶性ポリマー分散体を用いることで、硬化皮膜の物性に優れた活性光線硬化型インキを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、(A)炭素数10以上の高級α−オレフィンの単独重合体又は炭素数10以上の高級α−オレフィンと他のオレフィン一種以上とを共重合して得られる、高級α−オレフィン単位含有量が50モル%以上の共重合体であって、かつ、融点が20℃〜100℃である結晶性ポリマー(以下、(A)結晶性ポリマーと略すことがある。)及び(B)活性光線硬化型分散媒を含有する結晶性ポリマー分散体を提供する。
【0010】
(A)結晶性ポリマー
本発明において用いられる(A)結晶性ポリマーとしては、以下の(ア)、(イ)を満たす高級α−オレフィン重合体であることが必要である。
(ア)炭素数10以上の高級α−オレフィンの単独重合体又は炭素数10以上の高級α−オレフィンと他のオレフィン一種以上とを重合して得られる、高級α−オレフィン単位含有量が50モル%以上の共重合体である。
上記高級α−オレフィンとしては、炭素数12以上のものが好ましく、炭素数12〜50のものがより好ましく、炭素数14〜30のものが特に好ましい。上記高級α−オレフィンの炭素数が9以下では結晶性が低下するため、これを含有する活性光線硬化型インキにはベタ付きが発生する。上記炭素数10以上の高級α−オレフィンの具体例としては、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−ヘプタコセン、1−オクタコセン、1−ノナコセン、1−トリアコンテン等が挙げられ、これらのうち一種又は二種以上を用いることができる。
また、上記(A)結晶性ポリマーは、高級α−オレフィンの単独重合体又は高級α−オレフィン単位含有量が70モル%以上の共重合体であることが好ましく、高級α−オレフィンの単独重合体又は高級α−オレフィン単位含有量が90モル%以上の共重合体であることがより好ましく、高級α−オレフィンの単独重合体であることがさらに好ましい。高級α−オレフィン単位の含有量が50モル%未満では結晶性が低下し、これを含有する活性光線硬化型インキにベタ付きが発生する。
【0011】
上記高級α−オレフィンと共重合させる他のオレフィンとしては、炭素数2〜30のオレフィンを用いると好ましく、炭素数2〜9のα−オレフィンを用いるとより好ましい。炭素数2〜9のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、スチレン、パラメチルスチレン、などが挙げられ、これらの中でエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、スチレンなどが特に好適である。高級α−オレフィンと共重合させる他のオレフィンとしては、これらのうち一種又は二種以上を用いることができる。
【0012】
(イ)融点が20℃〜100℃である。
上記(A)結晶性ポリマーの融点は、好ましくは25〜55℃であり、より好ましくは25〜45℃である。融点が20℃未満の(A)結晶性ポリマーを用いると、得られる活性光線硬化型インキにベタ付きが発生し、融点が100℃を超えるものを用いると、高反応性分散媒が使用できなくなる。また、融点20℃〜100℃であることにより、結晶性ポリマー分散体の製造が容易となり、高反応性分散媒の使用が可能となる。
上記(ア)及び(イ)を満たす(A)結晶性ポリマーは、凝固点以下の温度での硬度が非常に高いという特徴があり、インキの硬度を出すために高融点とする必要がなく、さらには、同程度の融点を持つパラフィンワックスと比較しても硬度が高いために、印刷後に表面に析出する皮膜の強度が高くなる。さらに、パラフィンワックスよりも表面光沢が高く、摩擦係数が低いため、印刷品質の向上やスリップ性の向上などの効果も得られる。
【0013】
(A)結晶性ポリマーは、さらに以下の(ウ)を満足することが好ましい。
(ウ)ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が1,000〜40,000の範囲にある。
上記重量平均分子量は、より好ましくは1,000〜20,000、さらに好ましくは、1、000〜10,000、特に好ましくは2,000〜10,000、きわめて好ましくは2,000〜6、000である。
GPC法により測定したポリスチレン(PS)換算された重量平均分子量(Mw)が1,000以上であると、ブリードが見られず、粘度差が小さいため配合時の混練性が向上する。一方重量平均分子量が40,000以下であると、粘度が高くなりすぎず、他材料との混和性が向上するため均一かつ安定なインキが得られ、フロー値が経時的に変化しにくい。
また、(A)結晶性ポリマーは、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.0以下のものが好ましく、3.5以下のものがより好ましく、3.0以下のものがさらに好ましく、2.3以下のものが特に好ましい。分子量分布が4.0以下であると組成分布が狭く、表面特性が向上し、特にべたつきや滲み出しが起こりにくく、熱安定性が向上する。
【0014】
さらに、(A)結晶性ポリマーは、少なくとも以下に示す(エ)〜(キ)のいずれか1つ以上を満足することが好ましい。
(エ)融点(Tm)が1つ存在し、かつ100℃以下である
ここで、融点(Tm)は以下のようにして測定する。示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−30℃で5分間保持した後、190℃まで、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから観測される最大ピークのピークトップとして定義される融点(TmD)を有し、さらに、190℃で5分保持した後、−30℃まで、5℃/分で降温させ、−30℃で5分保持した後、190℃まで10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから観測されるピークトップを融点(Tm)として定義する。この融点(Tm)を測定する2回目の昇温過程にて、複数のピーク(ショルダーピークを含む)が観測されることがあるが、(A)結晶性ポリマーとしては、ピークが唯一観測されることが好ましい。ピークが唯一であるということは、他のピークやショルダーと見られる吸収が無いことである。ピークが唯一でない場合には、低融点成分が含まれることとなり、印刷物にベタつきが発生するため不適当である。
【0015】
(オ)広角X線散乱強度分布における、15deg<2θ<30degに観測される側鎖結晶化に由来する、単一のピークX1が観測される。
(A)結晶性ポリマーとしては、X線強度分布において、側鎖結晶に由来する単一ピークXが観測されることが好ましい。X線強度分布において、単一ピークが観測されることにより、変換温度でのシャープな透過性の変化が達成できるようになる。X線強度分布において、側鎖結晶に由来するピークが観測されない場合や、側鎖結晶に由来するピークが単一でない場合、結晶成分が広く、強度低下、特に、融解ピークがシャープでなくなる事により、変換温度でのシャープな透過性の変化が達成できなくなる。
広角X線散乱強度分布における、側鎖結晶化に由来する、20deg<2θ<30degに観測されるピークX1および、その強度比(%)は以下の方法により測定できる。
理学電機社製対陰極型ロータフレックスRU−200を用い、30kV、100mA出力のCuK・線(波長=1.54Å)の単色光をφ2mmのピンホールでコリメーシ
ョンし、位置敏感型比例計数管を用い、露光時間1分で広角X線散乱(WAXS)強度分布を測定した。なお、強度比は、複数のピークが観測された場合、ピーク分離を行いそれぞれの強度比を計算することにより得られる。
【0016】
(カ)高級α−オレフィン連鎖部に由来する立体規則性指標値M2が30モル%以上である。
また、本発明において用いられる(A)結晶性ポリマーとしては、アイソタクチック構造が好適で、立体規則性指標値M2(モル%)が30モル%以上であることが好ましく、より好ましくは30〜90モル%、さらに好ましくは30〜85モル%、一層好ましくは30〜75モル%である。このように立体規則性を中程度以上、さらには中程度に制御することにより、本発明の目的を達成することができるようになる。M2が30モル%未満では、変換温度によるシャープな透過性の変化が見られなくなる。M2が90モル%以上では、結晶性が高すぎるため、主鎖の結晶性が発現し、変換温度によるシャープな透過性の変化が見られなくなる。
また、ペンタッドアイソタクティシティーと同様の指標である立体規則性指標値M4(モル%)についても、25〜60モル%が好ましく、さらに好ましくは25〜45モル%である。
さらに、立体規則性の乱れの指数である立体規則性指標値MR(モル%)については、2.5%以上が好ましく、さらに好ましくは5%以上、特に好ましくは10%以上である。
この立体規則性指標値M2、M4、MRは、T.Asakura,M.Demura,Y.Nishiyamaにより報告された「Macromolecules,24,2334(1991)」で提案された方法に準拠して求めた。すなわち、13C−NMRスペクトルで側鎖α位のCH2炭素が立体規則性の違いを反映して分裂して観測されることを利用して求めることができる。このM2、M4の値が小さいほどアイソタクティシティーが小さいことを示し、MRの値が大きいほど、立体規則性に乱れがあることを示す。
【0017】
なお、13C−NMRの測定は以下の装置、条件にて行う。
装置:日本電子株式会社製 EX−400
測定温度:130℃
パルス幅:45°
積算回数:1000回
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
また、立体規則性指標値の計算は以下のようにして求める。
混合溶媒に基づく大きな吸収ピークが、127〜135ppmに6本見られる。このピークのうち、低磁場側から4本目のピーク値を131.1ppmとし、化学シフトの基準とする。
このとき側鎖α位のCH2炭素に基づく吸収ピークが34〜37ppm付近に観測される。このとき以下の式を用いてM2、M4、MR(mol%)を求める。
【0018】
【数1】

【0019】
(キ)示差走査型熱量計(DSC)を用いることにより得られた融解吸熱カーブから観測される半値幅(Wm)が10℃以下である。
また、上記の融点(Tm)測定において、融点の融解ピーク全体のベースラインからピークトップまでの高さの中点におけるピーク幅として定義される融解ピーク半値幅Wm(℃)は、10℃以下であると好ましく、7℃以下であるとより好ましく、6℃以下であるとさらに好ましく、5℃以下であると特に好ましく、2〜4℃であると極めて好ましい。
(A)結晶性ポリマーとしては、変換温度でシャープに変化することが必要なため、所定の温度でシャープに融解・結晶化が起こることが望まれ、融点は1つが、さらに融解ピーク半値幅(Wm)が狭いことが望ましい。
この際に融解ピークの面積から計算される融解熱ΔH(J/g)は、好ましくは30J/g以上、より好ましくは50J/g、さらに好ましくは60J/g以上、特に好ましくは75J/g以上である。ΔHが30J/g以上であると、べたつきが生じにくい。
【0020】
(A)結晶性ポリマーの合成法は特に限定されないが、いわゆるメタロセン触媒と呼ばれる均一系の触媒で合成されることが好ましく、その中でも特に、アイソタクチックポリマーを合成できる、C2対称および、C1対称の遷移金属化合物を用いることが好ましい。
すなわち、本発明の(A)結晶性ポリマーとしては、(a)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物、及び(b)(b−1)該(a)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(b−2)アルミノキサンから選ばれる少なくとも一種類の成分を含有する重合用触媒の存在下、炭素数10以上の高級α−オレフィンあるいは高級α−オレフィン及び他のオレフィンを(共)重合させる方法で製造されたものが好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
〔式中、Mは周期律表第3〜10族またはランタノイド系列の金属元素を示し、E1及びE2はそれぞれ置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基,ホスフィド基,炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A1及びA2を介して架橋構造を形成しており、またそれらは互いに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1,E2又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY,E1,E2又はXと架橋していてもよく、A2及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
【0023】
上記一般式(I)において、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、具体例としてはチタン,ジルコニウム,ハフニウム,イットリウム,バナジウム,クロム,マンガン,ニッケル,コバルト,パラジウム及びランタノイド系金属などが挙げられるが、これらの中ではオレフィン重合活性などの点からチタン,ジルコニウム及びハフニウムが好適である。E1及びE2はそれぞれ、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基(−N<),ホスフィン基(−P<),炭化水素基〔>CR−,>C<〕及び珪素含有基〔>SiR−,>Si<〕(但し、Rは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基あるいはヘテロ原子含有基である)の中から選ばれた配位子を示し、A1及びA2を介して架橋構造を形成している。また、E1及びE2はたがいに同一でも異なっていてもよい。このE1及びE2としては、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基及び置換インデニル基が好ましい。
【0024】
また、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1,E2又はYと架橋していてもよい。該Xの具体例としては、ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数1〜20のアミド基,炭素数1〜20の珪素含有基,炭素数1〜20のホスフィド基,炭素数1〜20のスルフィド基,炭素数1〜20のアシル基などが挙げられる。一方、Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のYやE1,E2又はXと架橋していてもよい。該Yのルイス塩基の具体例としては、アミン類,エーテル類,ホスフィン類,チオエーテル類などを挙げることができる。
【0025】
次に、A1及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。このような架橋基としては、例えば一般式
【0026】
【化2】

【0027】
(Dは炭素、ケイ素、ゲルマニウム又はスズ、R2及びR3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基で、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、またたがいに結合して環構造を形成していてもよい。eは1〜4の整数を示す。)
で表されるものが挙げられ、その具体例としては、メチレン基,エチレン基,エチリデン基,プロピリデン基,イソプロピリデン基,シクロヘキシリデン基,1,2−シクロヘキシレン基,ビニリデン基(CH2=C=),ジメチルシリレン基,ジフェニルシリレン基,メチルフェニルシリレン基,ジメチルゲルミレン基,ジメチルスタニレン基,テトラメチルジシリレン基,ジフェニルジシリレン基などを挙げることができる。これらの中で、エチレン基,イソプロピリデン基及びジメチルシリレン基が好適である。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。
このような一般式(I)で表される遷移金属化合物の中では、一般式(II)
【0028】
【化3】

【0029】
で表される二重架橋型ビスシクロペンタジエニル誘導体を配位子とする遷移金属化合物が好ましい。
上記一般式(II)において、M,A1,A2,q及びrは一般式(I)と同じである。X1はσ結合性の配位子を示し、X1が複数ある場合、複数のX1は同じでも異なっていてもよく、他のX1又はY1と架橋していてもよい。このX1の具体例としては、一般式(I)のXの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。Y1はルイス塩基を示し、Y1が複数ある場合、複数のY1は同じでも異なっていてもよく、他のY1又はX1と架橋していてもよい。このY1の具体例としては、一般式(I)のYの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。R4〜R9はそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基,珪素含有基又はヘテロ原子含有基を示すが、その少なくとも一つは水素原子でないことが必要である。また、R4〜R9はたがいに同一でも異なっていてもよく、隣接する基同士がたがいに結合して環を形成していてもよい。なかでも、R6とR7は環を形成していること及びR8とR9は環を形成していることが好ましい。R4及びR5としては、酸素、ハロゲン、珪素等のヘテロ原子を含有する基が重合活性が高くなり好ましい。
【0030】
この二重架橋型ビスシクロペンタジエニル誘導体を配位子とする遷移金属化合物は、配位子間の架橋基にケイ素を含むものが好ましい。
一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体例としては、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4,7−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(3−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
【0031】
(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4,7−ジ−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1 ,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
【0032】
(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
【0033】
(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
【0034】
(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
【0035】
(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレンインデニル) (2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2’−ジフェニルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレンインデニル) (2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジイソブロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
【0036】
(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、 (1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドなど及びこれらの化合物におけるジルコニウムをチタン又はハフニウムに置換したものを挙げることができる。もちろんこれらに限定されるものではない。また、他の族又はランタノイド系列の金属元素の類似化合物であってもよい。また、上記化合物において、(1,1’−)(2,2’−)が(1,2’−)(2,1’−)であってもよく、(1,2’−)(2,1’−)が(1,1’−)(2,2’−)であってもよい。
【0037】
次に、(b)成分のうちの(b−1)成分としては、上記(a)成分の遷移金属化合物と反応して、イオン性の錯体を形成しうる化合物であれば、いずれのものでも使用できるが、次の一般式(III)、(IV)
(〔L1−R10k+a(〔Z〕-b ・・・(III)
(〔L2k+a(〔Z〕-b ・・・(IV)
(ただし、L2はM2、R11123、R133C又はR143である。)
〔(III)、(IV)式中、L1はルイス塩基、〔Z〕-は、非配位性アニオン〔Z1-及び〔Z2-、ここで〔Z1-は複数の基が元素に結合したアニオンすなわち〔M112・・・Gf-(ここで、M1は周期律表第5〜15族元素、好ましくは周期律表第13〜15族元素を示す。G1〜Gfはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数7〜40のアルキルアリール基,炭素数7〜40のアリールアルキル基,炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基,炭素数1〜20のアシルオキシ基、有機メタロイド基、又は炭素数2〜20のヘテロ原子含有炭化水素基を示す。G1〜Gfのうち2つ以上が環を形成していてもよい。fは〔(中心金属M1の原子価)+1〕の整数を示す。)、〔Z2-は、酸解離定数の逆数の対数(pKa)が−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基、あるいは一般的に超強酸と定義される酸の共役塩基を示す。また、ルイス塩基が配位していてもよい。また、R10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、R11及びR12はそれぞれシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基又はフルオレニル基、R13は炭素数1〜20のアルキル基,アリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。R14はテトラフェニルポルフィリン,フタロシアニン等の大環状配位子を示す。kは〔L1−R10〕,〔L2〕のイオン価数で1〜3の整数、aは1以上の整数、b=(k×a)である。M2は、周期律表第1〜3、11〜13、17族元素を含むものであり、M3は、周期律表第7〜12族元素を示す。〕
で表されるものを好適に使用することができる。
【0038】
ここで、L1の具体例としては、アンモニア,メチルアミン,アニリン,ジメチルアミン,ジエチルアミン,N−メチルアニリン,ジフェニルアミン,N,N−ジメチルアニリン,トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリ−n−ブチルアミン,メチルジフェニルアミン,ピリジン,p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン,p−ニトロ−N,N−ジメチルアニリンなどのアミン類、トリエチルホスフィン,トリフェニルホスフィン,ジフェニルホスフィンなどのホスフィン類、テトラヒドロチオフェンなどのチオエーテル類、安息香酸エチルなどのエステル類、アセトニトリル,ベンゾニトリルなどのニトリル類などを挙げることができる。
【0039】
10の具体例としては水素,メチル基,エチル基,ベンジル基,トリチル基などを挙げることができ、R11,R12の具体例としては、シクロペンタジエニル基,メチルシクロペンタジエニル基,エチルシクロペンタジエニル基,ペンタメチルシクロペンタジエニル基などを挙げることができる。R13の具体例としては、フェニル基,p−トリル基,p−メトキシフェニル基などを挙げることができ、R14の具体例としてはテトラフェニルポルフィン,フタロシアニン,アリル,メタリルなどを挙げることができる。また、M2の具体例としては、Li,Na,K,Ag,Cu,Br,I,I3などを挙げることができ、M3の具体例としては、Mn,Fe,Co,Ni,Znなどを挙げることができる。
【0040】
また、〔Z1-、すなわち〔M112・・・Gf〕において、M1の具体例としてはB,Al,Si,P,As,Sbなど、好ましくはB及びAlが挙げられる。また、G1,G2〜Gfの具体例としては、ジアルキルアミノ基としてジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基など、アルコキシ基若しくはアリールオキシ基としてメトキシ基,エトキシ基,n−ブトキシ基,フェノキシ基など、炭化水素基としてメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,n−オクチル基,n−エイコシル基,フェニル基,p−トリル基,ベンジル基,4−t−ブチルフェニル基,3,5−ジメチルフェニル基など、ハロゲン原子としてフッ素,塩素,臭素,ヨウ素,ヘテロ原子含有炭化水素基としてp−フルオロフェニル基,3,5−ジフルオロフェニル基,ペンタクロロフェニル基,3,4,5−トリフルオロフェニル基,ペンタフルオロフェニル基,3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基,ビス(トリメチルシリル)メチル基など、有機メタロイド基としてペンタメチルアンチモン基、トリメチルシリル基,トリメチルゲルミル基,ジフェニルアルシン基,ジシクロヘキシルアンチモン基,ジフェニル硼素などが挙げられる。
【0041】
また、非配位性のアニオンすなわちpKaが−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基〔Z2-の具体例としてはトリフルオロメタンスルホン酸アニオン(CF3SO3-,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ベンジルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド,過塩素酸アニオン(ClO4-,トリフルオロ酢酸アニオン(CF3CO2-,ヘキサフルオロアンチモンアニオン(SbF6-,フルオロスルホン酸アニオン(FSO3-,クロロスルホン酸アニオン(ClSO3-,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化アンチモン(FSO3/SbF5-,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化砒素(FSO3/AsF5-,トリフルオロメタンスルホン酸/5−フッ化アンチモン(CF3SO3/SbF5-などを挙げることができる。
【0042】
このような前記(a)成分の遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成するイオン性化合物、すなわち(b−1)成分化合物の具体例としては、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム,テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム,テトラフェニル硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(4−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム,テトラキス〔ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル〕硼酸ジメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸フェロセニウム,テトラフェニル硼酸銀,テトラフェニル硼酸トリチル,テトラフェニル硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’−ジメチルフェロセニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラフルオロ硼酸銀,ヘキサフルオロ燐酸銀,ヘキサフルオロ砒素酸銀,過塩素酸銀,トリフルオロ酢酸銀,トリフルオロメタンスルホン酸銀などを挙げることができる。
(b−1)は一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、(b−2)成分のアルミノキサンとしては、一般式(V)
【0043】
【化4】

【0044】
(式中、R15は炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基,アルケニル基,アリール基,アリールアルキル基などの炭化水素基あるいはハロゲン原子を示し、wは平均重合度を示し、通常2〜50、好ましくは2〜40の整数である。なお、各R15は同じでも異なっていてもよい。)
で示される鎖状アルミノキサン、及び一般式(VI)
【0045】
【化5】

【0046】
(式中、R15及びwは前記一般式(V)におけるものと同じである。)
で示される環状アルミノキサンを挙げることができる。
【0047】
前記アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水などの縮合剤とを接触させる方法が挙げられるが、その手段については特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。例えば、(1)有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させる方法、(2)重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、(3)金属塩などに含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、(4)テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、さらに水を反応させる方法などがある。なお、アルミノキサンとしては、トルエン不溶性のものであってもよい。
これらのアルミノキサンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(a)触媒成分と(b)触媒成分との使用割合は、(b)触媒成分として(b−1)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは10:1〜1:100、より好ましくは2:1〜1:10の範囲が望ましく、上記範囲を逸脱する場合は、単位質量ポリマーあたりの触媒コストが高くなり、実用的でない。また(b−2)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは1:1〜1:1000000、より好ましくは1:10〜1:10000の範囲が望ましい。この範囲を逸脱する場合は単位質量ポリマーあたりの触媒コストが高くなり、実用的でない。また、触媒成分(b)としては(b−1),(b−2)を単独又は二種以上組み合わせて用いることもできる。
【0049】
また、本発明における(A)結晶性ポリマーを製造する際の重合用触媒は、上記(A)成分及び(B)成分に加えて(C)成分として有機アルミニウム化合物を用いることができる。
ここで、(C)成分の有機アルミニウム化合物としては、一般式(VII)
16vAlJ3-v ・・・(VII)
〔式中、R16は炭素数1〜10のアルキル基、Jは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1〜3の整数である〕
で示される化合物が用いられる。
前記一般式(VII)で示される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,ジメチルアルミニウムクロリド,ジエチルアルミニウムクロリド,メチルアルミニウムジクロリド,エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムヒドリド,ジエチルアルミニウムヒドリド,エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。
これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0050】
前記(a)触媒成分と(c)触媒成分との使用割合は、モル比で好ましくは1:1〜1:10000、より好ましくは1:5〜1:2000、さらに好ましくは1:10ないし1:1000の範囲が望ましい。該(c)触媒成分を用いることにより、遷移金属当たりの重合活性を向上させることができるが、あまり多いと有機アルミニウム化合物が無駄になるとともに、重合体中に多量に残存し、好ましくない。
本発明における(A)結晶性ポリマーの製造においては、触媒成分の少なくとも一種を適当な担体に担持して用いることができる。該担体の種類については特に制限はなく、無機酸化物担体、それ以外の無機担体及び有機担体のいずれも用いることができるが、特に無機酸化物担体あるいはそれ以外の無機担体が好ましい。
【0051】
無機酸化物担体としては、具体的には、SiO2,Al23,MgO,ZrO2,TiO2,Fe23,B23,CaO,ZnO,BaO,ThO2やこれらの混合物、例えばシリカアルミナ,ゼオライト,フェライト,グラスファイバーなどが挙げられる。これらの中では、特にSiO2,Al23が好ましい。なお、上記無機酸化物担体は、少量の炭酸塩,硝酸塩,硫酸塩などを含有してもよい。
【0052】
一方、上記以外の担体として、MgCl2,Mg(OC252などで代表される一般式MgR17X1yで表されるマグネシウム化合物やその錯塩などを挙げることができる。ここで、R17は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基、X1はハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、xは0〜2、yは0〜2でり、かつx+y=2である。各R17及び各X1はそれぞれ同一でもよく、また異なってもいてもよい。
また、有機担体としては、ポリスチレン,スチレン−ジビニルベンゼン共重合体,ポリエチレン,ポリ1−ブテン,置換ポリスチレン,ポリアリレートなどの重合体やスターチ,カーボンなどを挙げることができる。
【0053】
(A)結晶性ポリマーの製造に用いられる触媒の担体としては、MgCl2,MgCl(OC25),Mg(OC252,SiO2,Al23などが好ましい。また担体の性状は、その種類及び製法により異なるが、平均粒径は通常1〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmである。
粒径が小さいと重合体中の微粉が増大し、粒径が大きいと重合体中の粗大粒子が増大し嵩密度の低下やホッパーの詰まりの原因になる。
また、担体の比表面積は、通常1〜1000m2/g、好ましくは50〜500m2/g、細孔容積は通常0.1〜5cm3/g、好ましくは0.3〜3cm3/gである。
【0054】
比表面積又は細孔容積の何れかが上記範囲を逸脱すると、触媒活性が低下することがある。なお比表面積及び細孔容積は、例えばBET法に従って吸着された窒素ガスの体積から求めることができる(I.Am.Chem.Soc.,60,309(1983)参照)。さらに、上記担体が無機酸化物担体である場合には、通常150〜1000℃、好ましくは200〜800℃で焼成して用いることが望ましい。
【0055】
触媒成分の少なくとも一種を前記担体に担持させる場合、(a)触媒成分及び(b)触媒成分の少なくとも一方を、好ましくは(a)触媒成分及び(b)触媒成分の両方を担持させるのが望ましい。
該担体に、(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方を担持させる方法については、特に制限されないが、例えば(1)(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方と担体とを混合する方法、(2)担体を有機アルミニウム化合物又はハロゲン含有ケイ素化合物で処理したのち、不活性溶媒中で(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方と混合する方法、(3)担体と(a)成分及び/又は(b)成分と有機アルミニウム化合物又はハロゲン含有ケイ素化合物とを反応させる方法、(4)(a)成分又は(b)成分を担体に担持させたのち、(b)成分又は(a)成分と混合する方法、(5)(a)成分と(b)成分との接触反応物を担体と混合する方法、(6)(a)成分と(b)成分との接触反応に際して、担体を共存させる方法などを用いることができる。
なお、上記(4)、(5)及び(6)の方法において、(c)成分の有機アルミニウム化合物を添加することもできる。
【0056】
このようにして得られた触媒は、いったん溶媒留去を行って固体として取り出してから重合に用いてもよいし、そのまま重合に用いてもよい。
また、本発明における(A)結晶性ポリマーの製造においては、(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方の担体への担持操作を重合系内で行うことにより触媒を生成させることができる。例えば(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方と担体とさらに必要により前記(c)成分の有機アルミニウム化合物を加え、エチレンなどのオレフィンを常圧〜2MPa(gauge)加えて、−20〜200℃で1分〜2時間程度予備重合を行い触媒粒子を生成させる方法を用いることができる。
【0057】
(A)結晶性ポリマーの製造に用いられる触媒における(b−1)成分と担体との使用割合は、質量比で好ましくは1:5〜1:10000、より好ましくは1:10〜1:500とするのが望ましく、(b−2)成分と担体との使用割合は、質量比で好ましくは1:0.5〜1:1000、より好ましくは1:1〜1:50とするのが望ましい。(b)成分として二種以上を混合して用いる場合は、各(b)成分と担体との使用割合が質量比で上記範囲内にあることが望ましい。また、(a)成分と担体との使用割合は、質量比で、好ましくは1:5〜1:10000、より好ましくは1:10〜1:500とするのが望ましい。
【0058】
(b)成分〔(b−1)成分又は(b−2)成分〕と担体との使用割合、又は(a)成分と担体との使用割合が上記範囲を逸脱すると、活性が低下することがある。このようにして調製された重合用触媒の平均粒径は、通常2〜200μm、好ましくは10〜150μm、特に好ましくは20〜100μmであり、比表面積は、通常20〜1000m2/g、好ましくは50〜500m2/gである。平均粒径が2μm未満であると重合体中の微粉が増大することがあり、200μmを超えると重合体中の粗大粒子が増大することがある。比表面積が20m2/g未満であると活性が低下することがあり、1000m2/gを超えると重合体の嵩密度が低下することがある。また、(A)結晶性ポリマーの製造に用いられる触媒において、担体100g中の遷移金属量は、通常0.05〜10g、特に0.1〜2gであることが好ましい。遷移金属量が上記範囲外であると、活性が低くなることがある。
このように担体に担持することによって工業的に有利な高い嵩密度と優れた粒径分布を有する重合体を得ることができる。
【0059】
本発明における(A)結晶性ポリマーに関しては、重合方法は特に制限されず、スラリー重合法,気相重合法,塊状重合法,溶液重合法,懸濁重合法などのいずれの方法を用いてもよいが、スラリー重合法,気相重合法が特に好ましい。
重合条件については、重合温度は通常−100〜250℃、好ましくは−50〜200℃、より好ましくは0〜130℃である。また、反応原料に対する触媒の使用割合は、原料モノマー/上記(A)成分(モル比)が好ましくは1〜108、特に100〜105となることが好ましい。重合時間は通常5分〜10時間、反応圧力は好ましくは常圧〜20MPa(gauge)、さらに好ましくは常圧〜10MPa(gauge)である。
【0060】
(A)結晶性ポリマーの製造においては、水素を添加すると重合活性が向上するので好ましい。水素を用いる場合は、通常、常圧〜5MPa(gauge)、好ましくは常圧〜3MPa(gauge)、さらに好ましくは常圧〜2MPa(gauge)である。
重合溶媒を用いる場合、例えば、ベンゼン,トルエン,キシレン,エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロペンタン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,オクタンなどの脂肪族炭化水素、クロロホルム,ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素などを用いることができる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせてもよい。また、α−オレフィンなどのモノマーを溶媒として用いてもよい。なお、重合方法によっては無溶媒で行うことができる。
【0061】
重合に際しては、前記重合用触媒を用いて予備重合を行うことができる。予備重合は、固体触媒成分に、例えば、少量のオレフィンを接触させることにより行うことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。予備重合に用いるオレフィンについては特に制限はなく、前記に例示したものと同様のもの、例えばエチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、あるいはこれらの混合物などを挙げることができるが、該重合において用いるオレフィンと同じオレフィンを用いることが有利である。
【0062】
予備重合温度は、通常−20〜200℃、好ましくは−10〜130℃、より好ましくは0〜80℃である。予備重合においては、溶媒として、脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素,モノマーなどを用いることができる。これらの中で特に好ましいのは脂肪族炭化水素である。また、予備重合は無溶媒で行ってもよい。
予備重合においては、予備重合生成物の極限粘度〔η〕(135℃デカリン中で測定)が0.1デシリットル/g以上、触媒中の遷移金属成分1ミリモル当たりに対する予備重合生成物の量が1〜10000g、特に10〜1000gとなるように条件を調整することが望ましい。
【0063】
また、重合体の分子量の調節方法としては、各触媒成分の種類、使用量、重合温度の選択、さらには水素存在下での重合などがある。窒素等の不活性ガスを存在させても良い。
上述のような(A)結晶性ポリマーの製造方法により、(A)結晶性ポリマーを効率よく得ることができ、低温特性、剛性、耐熱性、潤滑油との相溶性、無機充填剤との混合性、二次加工性が優れた(A)結晶性ポリマーが得られる。
また、(A)結晶性ポリマーとしては、無水マレイン酸などの有機酸による変性や空気酸化などの手法により極性基を導入したものであっても良い。
【0064】
(B)活性光線硬化型分散媒
本発明において用いられる(B)活性光線硬化型分散媒としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であれば特に限定されないが、より活性度の高いアクロイル基を有する化合物が好ましく、具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、4−tブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等があげられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
本発明の結晶性ポリマー分散体としては、(A)結晶性ポリマー10〜50質量部及び(B)活性光線硬化型分散媒50〜90質量部を合計100質量部となるように含有するものが好ましい。(A)結晶性ポリマーが10質量部以上であると、最終的に得られる活性光線硬化型インキとして所望の効果が得られ、また、50質量部以下であると(A)結晶性ポリマーを均一に分散させることが容易となる。
結晶性ポリマー分散体の製造法は、(B)活性光線硬化型分散媒中に(A)結晶性ポリマーが高分散される方法であれば特に限定されないが、(A)結晶性ポリマー及び(B)活性光線硬化型分散媒を反応釜に仕込み、加熱・混合する。ここで、加熱温度は、活性光線硬化成分である(メタ)アクロイル基成分が加熱によってラジカルを発生する懸念の少ない100℃以下であることが必要であり、保存中にも安定な結晶性ポリマー分散体を得るには出来るだけ低温で分散することが望ましく、好ましくは結晶性ポリマーの融点より0〜20℃高い温度、より好ましくは0〜10℃高い温度にとどめて分散し、急冷することでハンドリングの良好な結晶性ポリマー分散体となる。この結晶性ポリマー分散体を利用することで、保存中に(A)結晶性ポリマーが分離したり、析出することを防止できる。(A)結晶性ポリマーは、他の結晶性材料とは異なり、生成する結晶が冷却条件の影響を受けにくいため、特別な急冷を施す必要は無いが、製品の均一性を得るためには、二重管型スタティックミキサーなどを用いて急冷することが望ましい。
必要に応じて、さらに従来公知の重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、結晶核剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、合成油、ワックス、電気的性質改良剤、スリップ防止剤、アンチブロックング剤、粘度調製剤、着色防止剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、塩素捕捉剤、酸化防止剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
該添加剤の配合量は、(A)結晶性ポリマーと(B)活性光線硬化型分散媒との合計100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0066】
本発明はまた、上記結晶性ポリマー分散体、(C)着色剤、(D)インキ用ワニス及び(E)開始剤を含有する活性光線硬化型インキをも提供する。
(C)着色剤
上記(C)着色剤としては、黒、白、イエロー、マゼンタ、シアンなどの色相の有機・無機の各種顔料や染料が使用でき、黒鉛、カーボンブラック、ランプ黒、二酸化チタン、四三酸化鉄、紺青、ニグロシン染料、アルカリブルー、イオゾールレッド、ピグメントブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン顔料、ローズベンガル、ブリリアントグリーン、モノアゾ染料、分散アントラキノン染料、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、キナクリドン顔料等の他、分散染料等の各種染料を使用することができる。(C)着色剤量の含有量は、着色剤の種類によって異なるが、カーボンブラックや有機顔料を利用する場合は1〜30質量%が好ましく、二酸化チタンを用いる場合には20質量%〜60質量%が好ましい。有機顔料の(C)着色剤の含有量が30質量%以上であると、インキの粘度が高くなり加工性が悪くなる。また、(C)着色剤の含有量が1質量%以下であると、明瞭な画像を得ることができない。
【0067】
(D)インキ用ワニス
本発明における(D)インキ用ワニスとは、インキのビヒクルに相当するものであり、紫外線硬化型ポリマー、イナートハードレジン、モノマーから選択される1種類以上を含む。(D)インキ用ワニスの粘度は、上記紫外線硬化型ポリマー及び/又はイナートハードレジンとモノマーとの配合量を変化させることにより調整することができる。
上記モノマーの具体例としては、ジシクロペンテニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、上記紫外線硬化型ポリマーとしてはエポキシ(メタ)アクリレート、ロジン変性エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリオールポリ(メタ)アクリレート等の特殊アクリレートが挙げられ、上記イナートハードレジンとしては、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂及び石油樹脂等が挙げられる。なお、ここで、上記紫外線硬化型ポリマーやイナートハードレジンとしては、いわゆるオリゴマーやプレポリマーを含む。
(D)インキ用ワニスの含有量は、一般に、全インキ量に対して20〜80質量%とすることができ、30〜60質量%であると好ましい。
【0068】
(E)開始剤
上記(E)開始剤としては、一般に市販されている光開始剤を使用でき、例えば、イルガキュアー651、イルガキュアー184、ダロキュアー1173、イルガキュアー907、イルガキュアー369(以上チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、或いは、カヤキュアーDETX、カヤキュアーITX(以上日本化薬社製)、ソルバスロンBIPE、ソルバスロンBIBE(以上黒金化成製)、ルシリンTPO(BASF製)、ベンゾフェノン、アセトフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル等から1種または2種以上を混合して用いられる。さらに増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の脂肪族アミン、芳香族アミンを併用しても良い。(E)開始剤は一般に紫外線硬化型インキ全量に対して1〜20質量部添加される。
【0069】
本発明はさらに、(A)結晶性ポリマー及び(B)活性光線硬化型分散媒を含有する結晶性ポリマー分散体を調製し、さらに、(C)着色剤、(D)インキ用ワニス及び(E)開始剤を配合して上記活性光線硬化型インキを得る活性光線硬化型インキの製造方法をも提供する。
(A)結晶性ポリマーは、予め(B)活性光線硬化型分散媒に分散させて、結晶性ポリマー分散体とした状態で投入すると、(A)結晶性ポリマーをインキ中に高分散させることが可能となるため、活性光線照射時に(A)結晶性ポリマーが均一にインキ表面に析出することが可能となる。その結果、酸素阻害の高い防止効果が発現し、インキ皮膜の強度を向上することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0071】
製造例1((A)結晶性ポリマーの製造)
(1)触媒調製:(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの製造
シュレンク瓶に(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)のリチウム塩の3.0g(6.97ミリモル)をTHF(テトラヒドロフラン)50ミリリットルに溶解し−78℃に冷却する。ヨードメチルトリメチルシラン2.1ミリリットル(14.2ミリモル)をゆっくりと滴下し室温で12時間撹拌した。溶媒を留去しエーテル50ミリリットルを加えて飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄した。分液後、有機相を乾燥し溶媒を除去して(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)を3.04g(5.88ミリモル)を得た(収率84%)。
次に、窒素気流下においてシュレンク瓶に前記で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)を3.04g(5.88ミリモル)とエーテル50ミリリットルを入れた。−78℃に冷却しn−BuLiのヘキサン溶液(1.54モル/リットル、7.6ミリリットル(1.7ミリモル))を滴下した。温度を室温とし12時間撹拌後、エーテルを留去した。得られた固体をヘキサン40ミリリットルで洗浄することによりリチウム塩をエーテル付加体として3.06g(5.07ミリモル)を得た(収率73%)。
【0072】
1H−NMR(90MHz、THF−d8)による測定の結果は、δ:0.04(s、18H、トリメチルシリル);0.48(s、12H、ジメチルシリレン);1.10(t、6H、メチル);2.59(s、4H、メチレン);3.38(q、4H、メチレン)、6.2−7.7(m,8H,Ar−H)であった。
窒素気流下で得られたリチウム塩をトルエン50ミリリットルに溶解した。−78℃に冷却し、ここへ予め−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム1.2g(5.1ミリモル)のトルエン(20ミリリットル)懸濁液を滴下した。滴下後、室温で6時間撹拌した。その反応溶液の溶媒を留去した。得られた残渣をジクロロメタンにより再結晶化することにより、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを0.9g(1.33ミリモル)を得た(収率26%)。
1H−NMR(90MHz、CDCl3)による測定の結果は、δ:0.0(s、18H、トリメチルシリル);1.02,1.12(s、12H、ジメチルシリレン);2.51(dd、4H、メチレン);7.1−7.6(m,8H,Ar−H)であった。
【0073】
(2)重合
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、出光興産株式会社製「リニアレン2024」(主として炭素数20,22,24のα−オレフィンの混合体)を140g含んだヘプタン溶液400ミリリットルを入れ、水素0.1MPa導入し、重合温度60℃まで昇温、昇圧した。トリイソブチルアルミニウム5ミリモル、上記で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを5マイクロモル、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート25マイクロモルを加え、60分間重合した。重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、高級α−オレフィン重合体1 7gを得た。
得られた高級α−オレフィン重合体1の物性測定結果を第1表に示す。
【0074】
製造例2((A)結晶性ポリマーの製造)
(1)触媒調製:(1,1’−Me2SiSiMe2)(2,2’−(i−Pr)2NB)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
窒素気流下、2−ブロモインデン3.1g(15.9mmol)と、Mg1.6gを、テトラヒドロフラン50mL中で反応させ、ブロモマグネシウムインデンを調製した。
この溶液を、(2−インデニル)(ジイソプロピルアミノ)クロロボラン4.11g(15.7mmol)のテトラヒドロフラン30mLの溶液に、0℃で滴下した。室温で4時間攪拌後、溶媒を留去し、ヘキサン40mL、ジクロロメタン10mLで2回抽出することにより、淡黄色固体のビス(2−インデニル)(ジイソプロピルアミノ)ボランを、6.47g(19.0mmol)得た。
テトラヒドロフラン50mL中で、ジイソプロピルアミン3.3mL(23.5mmol)とn−ブチルリチウム(1.58M,ヘキサン溶液)14.8mLを反応させ、リチウムジイソプロピルアミドを調製した。
ビス(2−インデニル)(ジイソプロピルアミノ)ボラン4.0g(11.7mmol)を、テトラヒドロフラン30mLに溶解し、これに0℃で先に調製したリチウムジイソプロピルアミドを滴下した。
滴下終了後、室温で2時間攪拌すると暗緑色溶液となった。これに、テトラメチルジクロロジシラン2.0mLを、−78℃で滴下後、室温で2時間攪拌した。溶媒を留去し、ヘキサン30mLで2回抽出した。減圧下にて、ヘキサンを留去することにより、(1,1’−Me2SiSiMe2)(2,2’−(i−Pr)2NB)ビス(インデン)の白色固体2.61g(5.7mmol)を得た。
【0075】
(1,1’−Me2SiSiMe2)(2,2’−(i−Pr)2NB)ビス(インデン)1.4g(3.1mmol)を、エーテル30mLに溶解し、−78℃でn−ブチルリチウム(1.58M,ヘキサン溶液)3.9mLを滴下し、室温で8時間攪拌した。溶媒を減圧下で留去後、得られた固体をヘキサン30mLで洗浄することにより、ジリチオ塩を淡橙色固体として得た。
これをトルエン20mLに懸濁させ、別に、トルエン10mLに懸濁させた四塩化ジルコニウム0.72g(3.1mmol)を0℃で滴下した。室温で終夜攪拌し、沈殿部をろ別、溶媒を半分に濃縮し、ヘキサン5mLを加えることにより、黄色粉末として(1,1’−Me2SiSiMe2)(2,2’−(i−Pr)2NB)(インデニル)2ジルコニウムジクロリド0.29gを得た
【0076】
(2)重合
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、出光興産(株)製「リニアレン2024」(主として炭素数20,22,24のα−オレフィンの混合体)を400ミリリットル入れ、重合温度80℃に昇温した後、トリイソブチルアルミニウム1mmol、触媒製造例2で合成した(1,1’−Me2SiSiMe2)(2,2’−(i−Pr)2NB)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド2μmol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート8μmolを加え、さらに水素を0.2MPa導入し、1時間重合した。
重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿、ろ過した後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、高級α−オレフィン重合体2 193gを得た。
得られた高級α−オレフィン重合体2の物性測定結果を第1表に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例1(結晶性ポリマー分散体の調製)
内容積2Lの攪拌機付きガラス製フラスコにトリメチロールプロパントリアクリレー ト700質量部、t−ブチルハイドロキノン1質量部を仕込み、10rpmの回転数で攪拌し、100℃の温浴中で加温、55℃に昇温して製造例2の高級α−オレフィン重合体300質量部を投入し、5分間同温度で攪拌し透明に分散したことを確認した後、冷却用外筒付きスタティックミキサー(櫻製作所製)にて急冷(外筒冷却水温度18℃、水量10L/分、内容物流量1Kg/分)し、グリ−ス状態の結晶性ポリマー分散体1を得た。
【0079】
実施例2(結晶性ポリマー分散体の調製)
製造例1で得られた高級α−オレフィン重合体1に代えて、製造例2で得られた高級α−オレフィン重合体2を使用した以外は実施例1と同様にして結晶性ポリマー分散体2を得た
【0080】
比較例1(ワックスコンパウンドの調製)
攪拌機付き反応管に亜麻仁油300質量部と出光アイソール400質量部を仕込み、攪拌、加熱し100℃に昇温した時点でACポリエチレン130(三洋化成工業株式会社製)300質量部を投入し140℃に昇温し30分攪拌して溶融分散し、くみ出し後すぐに40℃にコントロールした3本ロールにて急冷して流動性のあるワックスコンパウンドを得た。
【0081】
比較例2(ワックスコンパウンドの調製)
攪拌機付き反応管にジトリメチロールプロパンジアクリレート700質量部、t−ブチルハイドロキノン1質量部を仕込み、攪拌、加熱し100℃となった時点でACポリエチレン1302を300質量部を投入し140℃に昇温した。140℃昇温後20分でゲル化してしまい、流動性のあるワックスコンパウンドが得られなかった。
【0082】
実施例3(活性光線硬化型インキの調製)
ダイソーDAP(ダイソー株式会社製、ジアリルフタレート樹脂)300質量部と1,6ヘキサンジオールジアクリレート300質量部、t−ブチルハイドロキノン0.6質量部を攪拌付き反応管に仕込み、攪拌、加熱し100℃で溶解してインキ用ワニス1を調整した。
カーミン6B(東洋インキ製紅顔料)20質量部、上記インキ用ワニス1 60質量部、イルガキュア907(開始剤、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)10質量部、1,6ヘキサンジオールジアクリレート10質量部、ハイドロキノン0.03質量部を3本ロールミルで連肉してインキ1を得た。なお、GR値は3であり、最大粒径が7.5μm以下であることを確認した。尚、上記GR値は、グラインドメーター(安田精機製作所製、「No.547」)を用いて測定したもので、数値が小さいほど、顔料の分散性が良いことを意味する。
上述のようにして得られたインキ1 97質量部と、実施例2で得られた結晶性ポリマー分散体2 3質量部とを混合し、活性光線硬化型インキを調製した。得られた活性光線硬化型インキの物性測定結果を第2表に示す。
【0083】
実施例4(活性光線硬化型インキの調製)
ダイソーDAP(ダイソー株式会社製、ジアリルフタレートオリゴマー)200質量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート400質量部、t−ブチルハイドロキノン0.6質量部を攪拌付き反応管に仕込み、攪拌、加熱し100℃で溶解してインキ用ワニス2を調整した。
カーミン6B(東洋インキ製紅顔料)20質量部、上記インキ用ワニス2 55質量部、イルガキュア907(開始剤、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)10質量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート15質量部、ハイドロキノン0.03質量部を3本ロールミルで連肉してインキ2を得た。なお、GR値は3であり、最大粒径が7.5μm以下であることを確認した。
上述のようにして得られたインキ2 97質量部と、実施例1で得られた結晶性ポリマー分散体1 3質量部とを混合し、活性光線硬化型インキを調製した。得られた活性光線硬化型インキの物性測定結果を第2表に示す。
【0084】
実施例5(活性光線硬化型インキの調製)
実施例3で得られたインキ1 97質量部と、実施例2で得られた結晶性ポリマー分散体2 3質量部とを混合し、活性光線硬化型インキを調製した。得られた活性光線硬化型インキの物性測定結果を第2表に示す。
【0085】
比較例3〜8(インキの調製)
下記に示す原料を、それぞれ第2表に示す配合量で混合し、インキを得た。得られたインキの物性測定結果を第2表に示す。
(原料)
インキ1:実施例3で得られたインキ1
インキ2:実施例4で得られたインキ2
結晶性ポリマー分散体1:実施例1で得られた結晶性ポリマー分散体1
結晶性ポリマー分散体2:実施例2で得られた結晶性ポリマー分散体2
ワックスコンパウンド:比較例1で得られたワックスコンパウンド
高級α−オレフィン重合体2:製造例2で得られた高級α−オレフィン重合体2
【0086】
また、インキの評価は、以下に示す方法で行った。
(タック値)
東洋精機(株)社製インコメーター400rpm、雰囲気温度25℃、ロール温度30℃の条件で、規定インキ量にて1分後の値をタック値とした。
(フロー値)
規格平行板粘度計で、雰囲気温度25℃にて1分後のインキ流動半径値(ミリメートル)を示した。
(保存安定性)
インキを遮光プラスチックインキ容器に入れ、25℃の室温で10日間保存してフロー値を測定した。
(裏移りテスト)
インキの活性光線による表面硬化能力を診るため、アルミホイル紙にRIテスターを用いて全面に0.4cm3のインキ量で印刷し80W/cmのメタルハライド水銀ランプ3灯下10cmでコンベアスピード100m/sec.で通過させて硬化し印刷面にアート紙をかぶせ0.02N/mm2の圧力を加えてアート紙への着色度合を調べて表面の酸素阻害の影響を調べた。なお、アート紙の着色度合結果は、以下のように判定した。
○:着色なし。
△:着色は殆どないものの剥離時に抵抗あり。
×:若干の着色がある。
××:アルミ紙の着色がはっきり見られる。
【0087】
【表2】

*:比較例4と比較例7の10日後のフロー測定では、フロー値に変化はないものの、インキ中に結晶性ポリマーの結晶が見られた。
【0088】
比較例2の結果より、モノマーを分散媒として用いる場合、ポリエチレンワックスのような高融点のワックスを均一に分散させようとすると、高温での配合が必要となり、結果としてモノマーが反応しゲル化してしまう。つまり、高融点ワックスを使用しても、組成物が製造できないことを示している。
また、製造例1及び2で得られた高級α−オレフィン重合体を用いた結晶性ポリマー分散体を使用したインキは、それらを使用していないインキに比べて、フロー値の安定性を維持しつつ、タック値が低く、インキ中にポリマーの結晶がなく、着色度合いが低いなどインキとして優れた特性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明による結晶性ポリマー分散体は、未反応物の減少による硬化皮膜の物性の向上を容易に達成するものであり、加熱乾燥や電子線、紫外線、可視光線、赤外線などの活性光線の照射により硬化させる、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、3Dインクジェット印刷などのインキに適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数10以上の高級α−オレフィンの単独重合体又は炭素数10以上の高級α−オレフィンと他のオレフィン一種以上とを共重合して得られる、高級α−オレフィン単位含有量が50モル%以上の共重合体であって、かつ、融点が20℃〜100℃である結晶性ポリマー及び(B)活性光線硬化型分散媒を含有する結晶性ポリマー分散体。
【請求項2】
前記(A)結晶性ポリマー10〜50質量部及び(B)活性光線硬化型分散媒50〜90質量部を合計100質量部となるように含有する請求項1に記載の結晶性ポリマー分散体。
【請求項3】
(A)炭素数10以上の高級α−オレフィンの単独重合体又は炭素数10以上の高級α−オレフィンと他のオレフィン一種以上とを共重合して得られる、高級α−オレフィン単位含有量が50モル%以上の共重合体であって、かつ、融点が20℃〜100℃である結晶性ポリマー及び(B)活性光線硬化型分散媒を含有する結晶性ポリマー分散体、(C)着色剤、(D)インキ用ワニス並びに(E)開始剤を含有する活性光線硬化型インキ。
【請求項4】
(A)炭素数10以上の高級α−オレフィンの単独重合体又は炭素数10以上の高級α−オレフィンと他のオレフィン一種以上とを共重合して得られる、高級α−オレフィン単位含有量が50モル%以上の共重合体であって、かつ、融点が20℃〜100℃である結晶性ポリマー及び(B)活性光線硬化型分散媒を含有する結晶性ポリマー分散体を調製し、さらに、(C)着色剤、(D)インキ用ワニス及び(E)開始剤を配合して請求項3に記載の活性光線硬化型インキを得ることを特徴とする活性光線硬化型インキの製造方法。

【公開番号】特開2009−280678(P2009−280678A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133308(P2008−133308)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】