説明

結晶性樹脂板の製造方法

【課題】本発明は、凹反りを解消し、簡易な方法により平坦性に優れた結晶性樹脂板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の結晶性樹脂板の製造方法は、結晶性樹脂をダイからシート状に押出す工程と、押出したシート状の上記結晶性樹脂を圧延ロールに通過させて押出シートを形成する工程と、上記押出シートのシート面の幅方向が水平となるように押出シートを搬送する工程とを含む結晶性樹脂板の製造方法であって、搬送する工程は、押出シートの搬送方向に沿って配置された少なくとも4本の搬送ロールに接触させて行なわれ、かつ、押出シートの上表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させたのちに押出シートの下表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させる工程と、押出シートの下表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させたのちに搬送ロールに押出シートの上表面を搬送方向に沿って接触させる工程との少なくとも1つの工程を、あわせて2以上含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶性樹脂板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直下型液晶ディスプレイを構成するバックライト装置に使用される光拡散板にも高い平面性が要求されることになってきている。これまで光拡散板としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、メチルメタクリレート−スチレン共重合(MS)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂などが用いられてきたが、これらは全て非晶性樹脂であった。一方、プロピレン樹脂をはじめとする結晶性樹脂からなる光拡散板は、軽量であること、機械的強度が大きく壊れにくいこと、吸湿や光源からの熱の影響により変形しにくいという特徴をもつことが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、プロピレン樹脂などの結晶性樹脂は、押出成形方法により成形する際、溶融状態から冷却して成形する段階で結晶化による発熱を伴うために、シートの反りを制御することが困難である。特に、液晶ディスプレイ用バックライト装置に使用される光拡散板としては、高い平面性が要望されるので、結晶性樹脂であるプロピレン樹脂等からなる光拡散板を、押出成形で反り制御しながら製造することは技術的に困難であった。
【0004】
このような反りを防止する方法として、従来、押出成形時に圧延ロール通過後に、搬送ロールの上を平らな状態で通過させる方法が採用されていたが(例えば、図5参照)、搬送方向(MD方向ともいう)に平行な断面で凹反りのみが発生し、MD方向の凸反りは発生しなかった。そのため反りを抑制したり制御したりすることが困難であった。このようなMD方向の凹反りは得られるシートの反りに影響するため、MD方向の凹反りを含めたシートの反りの発生を抑制または解消するための方法が種々検討されている。
【0005】
例えば、特許文献2には、図6に示すように押圧ロール3,4,5を通過する樹脂シート2をヒータ8,9で加熱して、その後従来の方法により搬送することで、波打のような歪みを低減する方法が開示されている。また、特許文献3には、図7に示すように、反り量を調整するために反り付けロール10を設けて、該反り付けロール10通過時の樹脂シート2を、加熱または冷却することで、搬送時の樹脂シート2の上下面の温度差を制御する方法が開示されている。特許文献4には、図8に示すように、特定の反り付けロール20を配置して、反りの発生を抑制または反りを調整する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−083660号公報
【特許文献2】特開2002−120248号公報
【特許文献3】特開2002−120249号公報
【特許文献4】特開2005−088310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法では、反りを抑制するための装置構成が複雑であり、また、押出シートの搬送方向の反りの抑制または調整が不十分であり、搬送方向の凹反りが残ってしまうという問題があった。本発明は、このような凹反りを含めたシートの反りを解消し、簡易な方法により平坦性に優れた結晶性樹脂板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、結晶性樹脂をダイからシート状に押出す工程と、押出したシート状の前記結晶性樹脂を圧延ロールに通過させて押出シートを形成する工程と、押出シートのシート面の幅方向が水平となるように押出シートを搬送する工程とを含む結晶性樹脂板の製造方法であって、搬送する工程は、押出シートの搬送方向に沿って配置された少なくとも4本の搬送ロールに接触させて行なわれ、かつ、押出シートの上表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させたのちに押出シートの下表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させる工程と、押出シートの下表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させたのちに搬送ロールに押出シートの上表面を搬送方向に沿って接触させる工程との少なくとも1つを、あわせて2以上含む結晶性樹脂板の製造方法に関する。
【0009】
上記搬送する工程は、押出シートの搬送方向に沿って配置された少なくとも4本の搬送ロールに接触させて行なわれ、かつ、この接触は、各搬送ロールに押出シートの上表面または下表面のいずれかを搬送方向に沿って交互に接触させることが好ましい。
【0010】
上記搬送する工程は、結晶性樹脂の結晶化温度をTc(℃)とし、連続して配置された4本の搬送ロールのうち、搬送方向に沿って第一番目の搬送ロールに接触する際の搬送ロールと接触しない側のシート表面の温度をTwarp(℃)とすると、Twarpが下式(1)を満たす条件で行なわれることが好ましい。
c−30≦Twarp≦Tc+20…(1)
また本発明の製造方法は、上記結晶性樹脂がプロピレン樹脂である場合に好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な方法で搬送方向の凹反りを抑制または制御し、シート全体の反りを小さくすることが可能であり、従来の方法により得られたシート(樹脂板)に比べて、シートのうねり発生を抑制し、平坦性に優れた樹脂板を提供することができる。また、本発明の方法によれば、従来の方法に比べて短い搬送距離でシートが冷却されるので、搬送距離がより限られてしまうような小スペースにおいても生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の結晶性樹脂板の製造方法に用いられる装置の概略断面図である。
【図2】隣接する搬送ロールのピッチを示す概略断面図である。
【図3】隣接する搬送ロールの垂直方向の位置関係を示す図である。
【図4】実施例1における結晶性樹脂板の製造方法に用いた装置の概略断面図である。
【図5】従来の結晶性樹脂板の製造方法に用いられる装置の概略断面図である。
【図6】ヒータを備えた従来の結晶性樹脂板の製造方法に用いられる装置の概略断面図である。
【図7】反り付けロールを備えた従来の結晶性樹脂板の製造方法に用いられる装置の概略断面図である。
【図8】3本の反り付けロールを備えた従来の結晶性樹脂板の製造方法に用いられる装置の概略断面図である。
【図9】実施例4における結晶性樹脂板の製造方法に用いた装置の概略断面図である。
【図10】(a)搬送ロールと搬送される押出シートとの位置関係の第一の態様を示す概略断面図であり、(b)搬送ロールと搬送される押出シートとの位置関係の第二の態様を示す概略断面図であり、(c)搬送ロールと搬送される押出シートとの位置関係の第三の態様を示す概略断面図であり、(d)搬送ロールと搬送される押出シートとの位置関係の第四の態様を示す概略断面図である。
【図11】比較例2における結晶性樹脂板の製造方法に用いた装置の概略断面図である。
【図12】転写型に施されるV字凹みの溝のレプリカの断面形状を示す模式図である。
【図13】転写型に施される半円凹みの溝のレプリカの断面形状の模式図である。
【図14】シリンドリカルレンズの模式図である。
【図15】転写型に施されるV字溝−曲面複合形状である凹み溝のレプリカの断面形状の一例の模式図である。
【図16】V字溝−曲面複合形状である凹み溝の一部の断面形状の一例の模式図である。
【図17】転写型に施される凹み溝のレプリカの断面形状の別の一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
【0014】
<結晶性樹脂板の製造方法>
本発明の結晶性樹脂板の製造方法は、結晶性樹脂をダイからシート状に押出す工程と、押出したシート状の結晶性樹脂を圧延ロールに通過させて押出シートを形成する工程と、押出シートのシート面の幅方向が水平となるように押出シートを搬送する工程とを含む。
【0015】
本発明において結晶性樹脂(以下において単に樹脂ということがある)とは、化学辞典(東京化学同人)等に定義されるように、固体状態で結晶になる性質をもった高分子化合物であり、X線回折スペクトルにおいて結晶性回折ピークを示す樹脂(高分子)をいう。結晶性樹脂において押出し成形により平面性に優れた樹脂板を製造する際には、上述のように搬送方向における凹反りを含めたシート全体の反りの発生が問題となる。本発明は、このような結晶性樹脂を押出し成形して樹脂板とする場合の反りを抑制または排除するのに有効である。
【0016】
上記結晶性樹脂は、単一のユニットからなるものでもよいし、2以上のユニットを含む共重合体からなるものを用いてもよい。たとえば、結晶性樹脂にプロピレン単位が75質量%以上含有されるプロピレン重合体またはプロピレン共重合体を例示することができ、具体的にはプロピレン単位含有量が75〜100質量%、エチレン単位が0〜15質量%かつ1−ブテン単位が0〜25質量%含まれるプロピレン重合体またはプロピレン共重合体で構成されていることが好ましい。より好ましくは、プロピレン単位が95質量%以上、エチレン単位が0〜5質量%かつ1−ブテン単位が0〜5質量%含まれるプロピレン重合体で構成される場合であり、さらに好ましくはプロピレン単位が99質量%以上、エチレン単位が0〜1質量%かつ1−ブテン単位が0〜1質量%含まれるプロピレン重合体で構成される場合である。また、プロピレン単位含有量が100質量%であってもよい。なお、本発明の製造方法は結晶性樹脂に特に有用であるが、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を使用した場合にもシート全体の反りを抑制することが可能である。
【0017】
また、上記樹脂には、造核剤、光拡散剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、加工安定剤、帯電防止剤などの添加剤が添加されていてもよい。これらの添加剤の配合量は本発明の効果を奏する範囲において調整して用いればよく、特に限定されない。また、その他、結晶性樹脂以外の非晶性樹脂についても本発明の効果を損なわない程度に混合してもよい。特に、押出シートを構成する樹脂がプロピレン系樹脂の場合、アクリル系樹脂を混合すると、これらの樹脂の屈折率がほぼ同等であることから、得られる樹脂板の透明度を損なわずに剛性などの機械特性を向上させる方法として有用である。
【0018】
上記光拡散剤は、無機系光拡散剤であってもよいし、有機系光拡散剤であってもよい。無機系光拡散剤としては、たとえば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、無機ガラス、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などのような無機化合物の粒子が挙げられる。無機系光拡散剤は、脂肪酸などの表面処理剤により表面処理されていてもよい。また、有機系光拡散剤としては、たとえばスチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子などのような有機化合物の粒子が挙げられる。
【0019】
光拡散剤を添加する場合、添加される光拡散剤の屈折率と樹脂の屈折率との差の絶対値は、光拡散の効果の点で、通常0.02以上であり、得られる結晶性樹脂板の光透過性の点で、通常は0.25以下である。このように樹脂に光拡散剤を添加した場合、得られる結晶性樹脂板は、光拡散板として使用することができる。光拡散剤の添加量は特に限定されず、適宜調整すればよい。
【0020】
上記結晶性樹脂中に造核剤が含有される場合は、結晶化が促進することによりシートの製造効率を向上させることができる。造核剤としては有機リン酸塩系造核剤など公知のものを用いることができ、たとえば結晶性樹脂100質量部に対して、0.03〜1.0質量部の含有量とすればよいが、この範囲に限られるものではない。
【0021】
結晶性樹脂をシート状に押し出す工程はダイを用いて行なわれる。このようなダイとしては従来公知の押出し成形において用いられる金属製のTダイ等を用いることができる。上記ダイから樹脂は加熱溶融状態で連続的に押し出され、この押出しには通常の押出成形法と同様に押出機を用いることができる。押出機は一軸押出機であってもよいし、二軸押出機であってもよい。上記結晶性樹脂は押出機内で加熱され、溶融された状態でダイに送られ、押し出される。ダイから押し出された樹脂は、連続的にシート状となって押し出される。シートの形状は特に限定されず、得られる樹脂板の用途によってその厚みおよび幅を調整する。また、押出シートは単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造とすることもできる。これらの構成は、上記のように得られる樹脂板の用途によって適宜変更すればよい。例えば、光拡散板として用いる場合は合計厚みを通常0.1mm以上3.0mm以下、好ましくは0.5mm以上3.0mm以下、さらに好ましくは0.8mm以上3.0mm以下とすればよい。
【0022】
上記シート状に押出された結晶性樹脂は、次いで圧延ロールを通過させて押出シートを形成する工程に供される。図1に本発明の結晶性樹脂板の製造方法に用いる装置の概略断面図を示す。ダイ1から押出された結晶性樹脂のシートは、圧延ロールである第一押圧ロールと第二押圧ロールに挟まれて所望の厚さの押圧シート2に成形される。圧延ロールである第一押圧ロールおよび第二押圧ロールは、このような樹脂板の製造に用いられる公知のロールとすればよく、またその直径も特に限定されない。また、第一、第二および第三押圧ロールは、鏡面ロールであってもよいし、レンズ形状、エンボス形状、プリズム形状などの形状が施された、いわゆる転写用ロールであってもよい。これらの押圧ロールの表面温度は特に限定されないが、通常50℃〜150℃としておくことが好ましい。このような温度条件で圧延して押圧シートを成形する場合は、本発明の後の結晶性樹脂板の製造方法の工程と組み合わせて、得られる結晶性樹脂板の平面性の向上効果をより改善させることができる。
【0023】
上記転写ロールは、表面に転写型を備えたロールである。転写型は、連続樹脂シートの表面に押し当てられ、その表面形状を逆型として連続樹脂シートに転写するものである。転写型は、例えば転写ロール表面に設けられた複数の凹部または凸部からなり、凹部または凸部のピッチ間隔は、転写型の作製が容易であることから通常10μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上である。また、その上限は特に限定されないが、通常、500μm以下、好ましくは250μm以下である。
【0024】
また、凹部の溝深さ、または凸部の頂部高さは、転写型の作製の点から30μm〜1500μmであるが、この範囲に限定されるものではない。
【0025】
転写型の凹部のピッチ間隔に対する溝深さの比率(溝深さ/ピッチ間隔)または凸部のピッチ間隔に対する頂部高さの比率(頂部高さ/ピッチ間隔)は、樹脂として結晶化温度ピークの幅が9℃以下である結晶性高分子樹脂を用いる場合には、上記比率を1以上、さらには1.2以上としても好適な転写を行なうことが可能である。この転写型の凹部のピッチ間隔に対する溝深さの比率(溝深さ/ピッチ間隔)または凸部のピッチ間隔に対する頂部高さの比率(頂部高さ/ピッチ間隔)は、通常5以下、好ましくは3以下である。上記比率が1未満であってもよい。
【0026】
図12は転写型表面の一例であって、断面形状がV字(三角形)の転写型の表面断面図である。図12においては、断面形状の頂部および凹部または凸部の断面形状全体がV字(三角形)となっている。図12に示すように、転写型には複数の凹部または凸部が設けられており、凹部または凸部のピッチ間隔(P’)とは隣接する凹部の溝部間の距離(図12中、P1’)または隣接する凸部の頂部間の距離(図12中、P2’)をいい、凹部の溝深さ(H’)とは転写ロール表面から凹部の最深部までの垂直距離をいい、凸部の頂部高さは、凸部底面から転写ロール表面までの垂直距離をいい、図12では凹部の溝深さ(H’)と同様である。
【0027】
断面形状の頂部がV字(三角形)である場合、該三角形の頂角Θ’は10°〜100°とすることができる。頂角Θ’は10°〜90°の範囲であってもよい。樹脂として結晶化温度ピークの幅が9℃以下である結晶性高分子樹脂を用いる場合には、三角形の頂角Θ’が10°〜60°である微細な転写型を用いた場合であっても、精度よく転写を行なうことができ、得られたシートの表面形状は転写型とほぼ等しいものである。
【0028】
また、上記転写型の形状としては、図12に示すようなV字の断面形状を有するものに限らず、たとえば図13に示すような略半円形状である略半円凹部(略半円凹み)の溝や、たとえば図15に示すようなV字溝−曲面複合形状である直線11’により形成されるV字(三角形)の頂角Θ’および曲面状の辺12’を有する凹部の溝を例示することができる。図13の転写型表面1’において、ピッチ間隔(P’)は図12と同様に、隣接する凹部の溝部間の距離をいい、凹部の溝深さ(H’)とは転写ロール表面から凹部の最深部までの垂直距離をいう。また、略半円凹部の溝を反転したような略半円凸部も転写型の形状に含まれる。転写型を略半円凸部とする場合は、ピッチ間隔は隣接する凸部の頂部間の距離をいい、凸部の頂部高さとは、凸部底面から転写ロール表面までの垂直距離をいう。上記略半円とは、図13に示すように、断面が半円弧状である形状に限定されるものではなく、たとえば図14に示すシリンドリカルレンズ8’のように、円柱体をその軸線に平行であって、該軸線を含まない平面で切断した場合の断面のいずれかの弧状である形状であってもよいし、或いは断面が半楕円弧状や、該半楕円弧状の一部である扁平湾曲状等の形状であってもよい。上記「略半円凹部」または「略半円凸部」とは、このような略半円形状の断面の凹部または凸部をも含むものとする。
【0029】
図15において、ピッチ間隔(P’)は図12と同様に、隣接する凹部の溝部間の距離または隣接する凸部の頂部間の距離をいい、凹部の溝深さ(H’)とは転写ロール表面から凹部の最深部までの垂直距離をいう。また、凸部の頂部高さは、凸部底面から転写ロール表面までの垂直距離をいい、凹部の溝深さ(H’)と同じ距離である。上記V字溝−曲面複合形状とは、たとえば図16に示すように、断面が直線11’により形成されるV字(三角形)の頂角Θ’および曲面状の辺12’からなる斜面を有していれば、該曲面を含む円柱体の軸線を含まない平面で切断した場合の断面のいずれかの形状であってもよい。ここでいう曲面とは、円弧状の一部、または楕円弧状の一部であってもよいし、楕円弧状以外の曲線からなる形状であってもよい。上記「V字溝−曲面複合形状凹部」とは、このような略V字溝−曲面複合形状の断面の凹部をも含むものとする。また、凹部または凸部の形状には、図15のように直線部分を含まず、図17に示されるように曲線13’が交差して形成される形状の溝も含まれる。
【0030】
また、転写型における各凹部または各凸部は、図12に示されるように連続して設けたり、図13および図15に示すように任意の間隔d’をあけて平行に設ける場合がある。これら凹部の間隔または凸部の間隔は得られるシート用途により選択する。なお、本発明において上記転写型におけるピッチ間隔(P’)および溝深さ(H’)または頂部高さは、転写型全体で必ずしも一定ではなく、部分的に隣接する凹部間または凸部間で異なる形状である場合も含まれるものとする。また、上記V字凹みの溝が反転したV字凸部、略半円凹みの溝が反転した略半円凸部を備える場合も本発明の範囲に含まれる。上記間隔d’は得られるシートの用途により任意に設定すればよいが、樹脂として結晶化温度ピークの幅が9℃以下である結晶性高分子樹脂を用いる場合には、上記間隔d’が10μm以下、または間隔d’が設けられないような微細な転写型であっても転写率や製造効率のよい表面形状転写樹脂シートの製造方法とすることができる。
【0031】
上記転写型の作製方法としては、公知の方法を採用することができ、上記ステンレス鋼、鉄鋼などからなる転写ロールの表面に、たとえばクロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施した後に、そのメッキ面に対してダイヤモンドバイトや金属砥石等を用いた除去加工や、レーザー加工や、またはケミカルエッチングを行ない、形状を加工する方法が例示されるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0032】
また、転写ロールの表面は、上記転写型を形成した後に、たとえば表面形状の精度を損なわないレベルで、クロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施してもよい。
【0033】
上記押出シートを形成する工程の後、押出シートはシート面の幅方向が水平となるようにして搬送する工程を経る。ここで、押出シートは上記第一押圧ロールと第二押圧ロールとに水平方向に圧延された後、そのまま搬送ロールにより搬送してもよく、例えば図1に示すように、第二押圧ロール4とその上側に設けられた第三押圧ロール5とにより押圧される工程を含み、その後搬送ロール6により搬送してもよい。このような工程の追加は、後述のように用いる結晶性樹脂の結晶化温度により調整すればよい。なお、図1においては、得られる押圧シート2は第一押圧ロール3および第二押圧ロール4によりダイ1より上方に移動させて搬送されているが、第一押圧ロール3の下方に第二押圧ロール、さらにその下方に第三押圧ロールを設けて、ダイ1より下方に押圧シート2を移動させてその後搬送する形態も本発明の製造方法に含まれる(図9参照)。また、水平方向とは、シート面の幅方向が実質的に水平方向と平行であればよく、たとえばシート面の幅方向が水平方向から±30°以内の範囲で傾いているような場合でも本発明の効果は奏される。このような方向は、シートの効率的な搬送の点から、例えば傾きによるシートの搬送ロールからの離脱等の起こらない範囲に設定すればよい。
【0034】
本発明において、搬送する工程は、押出シートの搬送方向に沿って配置された少なくとも4本の搬送ロールに接触させて行なわれ、かつ、押出シートの上表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させたのちに押出シートの下表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させる工程(以下においてA工程ということがある)と、押出シートの下表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させたのちに搬送ロールに押出シートの上表面を搬送方向に沿って接触させる工程(以下においてB工程ということがある)の少なくとも1つの工程を、あわせて2以上含む。上記A工程と上記B工程とはあわせて2以上含まれていればよいが、3以上とすることが好ましく、4以上とすることがより好ましい。上記構成とすることで、従来の方法に比べて短い搬送距離でシートが冷却されるので、搬送距離がより限られてしまうような小スペースにおいても生産することができる。また、搬送方向の凹反りを抑制または制御し、シート全体の反りを小さくすることが可能であり、従来の方法に比べて、平坦性に優れた結晶性樹脂板を製造することができる。
【0035】
上記A工程とB工程との各1工程において、押出シートの下表面が接触する搬送ロール、押出シートの上表面が接触する搬送ロールとは1本とするが、各工程の間に、さらに搬送ロールを1本以上設けた場合でも、A工程とB工程とがあわせて2以上含まれ、少なくとも4本の搬送ロールに接触する限り、本発明の効果は奏される。
【0036】
すなわち、上記A工程とB工程との少なくとも1つの工程を、あわせて2以上行なう工程は、たとえば搬送方向に連続する搬送ロール20本以内に連続してまたは他の搬送ロールを介して含まれていることが好ましく、連続する搬送ロール10本以内に含まれることがより好ましく、連続する搬送ロール6本以内に含まれることがさらに好ましい。上記搬送ロールの本数の範囲にA工程とB工程とをあわせて2以上含むことによって、搬送方向の凹反りをより効率よく抑制または制御することができる。
【0037】
図10(a)〜図10(d)に、このような構成を満たす搬送ロールと搬送される押出シートとの位置関係の断面模式図を示す。図10(a)〜図10(d)では6本の搬送ロールにおいて上記A工程とB工程との少なくとも1つの工程を、あわせて2以上含む場合の態様を示すものである。図10(a)、図10(b)では1本の搬送ロールに押出シートの下表面が接触した後に、1本の搬送ロールに押出シートの下表面を接触させたのちに押出シートの上表面を1本の搬送ロールに接触させる工程(B工程)と、押出シートの上表面を1本の搬送ロールに接触させたのちに押出シートの下表面を1本の搬送ロールに接触させる工程(A工程)と、その後さらに1本の搬送ロールに押出シートの上表面を接触させる工程(図10(a))または、さらに1本の搬送ロールに押出シートの下表面を接触させる工程(図10(b))が含まれる。図10(c)では1本の搬送ロールに押出シートの下表面を接触させたのちに押出シートの上表面を1本の搬送ロールに接触させる工程(B工程)を2回繰り返し、押出シートの上表面を1本の搬送ロールに接触させたのちに押出シートの下表面を1本の搬送ロールに接触させる工程(A工程)とが含まれる。ここで、B工程繰り返しにおいては、B工程後半における押出シートの下表面が接触する部分をA工程前半部分とみなし、2回目のB工程前半における押出シートの上表面が接触する部分をA工程後半部分とみなすことができるので、図10(c)には、厳密にはA工程とB工程とがあわせて4回含まれることになるが、便宜上搬送方向にそって各工程を考慮するものとし、各工程間で搬送ロールを重複して考慮しないものとする。すなわち、図10(c)においては、A工程が1回とB工程が2回、あわせて3工程が含まれるものとなる。図10(d)では、1本の搬送ロールに押出シートの下表面を接触させたのちに押出シートの上表面を1本の搬送ロールに接触させる工程(B工程)と、1本の搬送ロールに押出しシートの上表面を接触させる工程と、押出シートの上表面を1本の搬送ロールに接触させたのちに押出シートの下表面を1本の搬送ロールに接触させる工程(A工程)と、さらに押出シートの下表面を1本の搬送ロールに接触させる工程が含まれる。
【0038】
本発明の別の好ましい態様において、上記搬送する工程は少なくとも4本の搬送ロールに接触させて行なわれる。これらの4本のロールは押出シートの搬送方向に沿って配置されたものであり、連続して配置される。搬送方向から第N番目の搬送ロールをRnとすると、図1においてR1〜R4の4本を搬送ロールとして備える装置により搬送する工程を行なうことができる。搬送ロールはこのように連続して配置された4本を後述の条件となるように押出シートと接触させればよく、例えば図1のR2〜R5の4本を用いる場合も本発明の効果は奏される。
【0039】
上記搬送ロールの本数は、少なくとも4本であればその上限は特に限定されないが、例えば10本とすることができ、また、装置上の構成の点から300本程度までとするのが一般的である。ただし、搬送ロールの本数がこれを超える場合であっても、そのうち少なくとも4本の搬送ロールに接触する押出シートが後述の条件を満たす限り本発明の効果は発揮される。また、搬送ロールの表面温度は調整されていてもいなくてもよいが、任意の温度に調整できる方が、反りの調整しやすさの点から好ましい。このような搬送ロールの表面温度の調整は、搬送ロールに内設した温度調節装置や、搬送ロールの上下に設けたヒータ等の温度調節装置により行なえばよい。搬送ロールにおいて温度調整を行ない押出シートを加熱する場合は、得られる結晶性樹脂板の耐熱性がより向上するので好ましい。
【0040】
各搬送ロールには、押出シートの上表面または下表面のいずれかが接触するが、本発明において、上記少なくとも4本の各搬送ロールに対しては、搬送方向に沿って上表面と下表面とが交互に接触する態様とすることが好ましい。このような接触について図1にしたがって具体的に説明する。図1に示す搬送ロールR1〜R4の4本の搬送ロール6に押出シート2が接触する場合、搬送方向に沿った第一番目の搬送ロールR1に押出シート2の下表面が接触して搬送されると、第二番目の搬送ロールR2に対しては押出シート2の上表面が接触する。次いで、第三番目の搬送ロールR3とは押出シート2の下表面が接触して搬送され、第四番目の搬送ロールR4には押出シート2の上表面が接触して搬送される。また、第一番目の搬送ロールR1に押出シート2の上表面が接触した場合には、第二番目搬送ロールR2には押出シート2の下表面が接触し、第三番目の搬送ロールR3には押出シート2の上表面が接触し、第四番目の搬送ロールR4には押出シート2の下表面が接触する。このように少なくとも4本の搬送ロールに対して押出シートの上表面と下表面とが搬送方向に沿って交互に接触するように押出シートを搬送することによっても、従来の方法におけるシート搬送方向の凹反りおよびシート全体の反りを抑制または排除することが可能となる。その結果、得られた結晶性樹脂板の平面性を向上させることができる。
【0041】
上記のようにA工程とB工程とを含む場合の押出シートと搬送ロールとの接触や、押出シートの上表面と下表面とを搬送ロールに交互に接触させる方法としては、たとえば各搬送ロールに公知のガイドロールを設けることで達成することができる。また、少なくとも4本の搬送ロールにおいて、上記A工程とB工程との少なくとも1つの工程を、あわせて2以上含むように、押出シートの各表面を接触させたり、好ましくは上記押出シートの各表面を交互に接触させる限り、例えば5本の搬送ロールの第五番目の搬送ロールと押出シートの接触面は特に限定されず、これより多く搬送ロールを設ける場合であっても同様である。
【0042】
上記搬送ロールとしては、公知の搬送ロールを用いることができる。図2に隣接する搬送ロールのピッチを示す概略断面図を示す。各搬送ロールの直径Dは所望の大きさとすることができ、例えば20mm〜800mmの直径Dに設定すればよい。隣接する第N番目の搬送ロールRnと第N+1番目の搬送ロールRn+1との中心間距離をピッチPで示すと、このピッチPは30mm〜2000mmとすることが好ましく、100mm〜800mmとすることがより好ましい。このようなピッチPとすることで、押出シートの冷却と凹反りの抑制とがより良好に行なわれる。隣接する搬送ロールのピッチPは一定のものに限られず、第N番目の搬送ロールRnと第N+1番目の搬送ロールRn+1とのピッチPと第N+1番目の搬送ロールRn+1と第N+2番目の搬送ロールRn+2とのピッチPとが異なっていてもよい。また、搬送ロールのピッチPと直径Dとの比率P/Dは、0.6〜10とすることが好ましく、1〜6とすることがより好ましい。
【0043】
図1において各搬送ロールは垂直方向の同じ高さに設ける場合を図示しているが、隣接する搬送ロールの垂直方向の高さは必ずしも同じである必要はない。図3に隣接する搬送ロールの垂直方向の位置関係を示す。少なくとも4本の搬送ロールを搬送方向に沿って順にRm、Rm+1、Rm+2、Rm+3とし、押出シートの押出シートと垂直方向の高さ位置をdAとする場合、例えば図3の軌道(A)に示すように、押出シートがdAの高さを維持する軌道で搬送されるように搬送ロールRm、Rm+1、Rm+2およびRm+3を配置する場合が含まれる。また、例えば図3の軌道(B)に示すように、搬送ロールRmとRm+2とがdAの高さで押出シートの下表面と接触する位置に配置され、搬送ロールRm+1とRm+3との中心がdAの高さとなるようにRmより高位に配置される態様も含まれる。また、図3の軌道(C)に示すように、全ての搬送ロールRm〜Rm+3が垂直方向に同じ位置に配置される態様も含まれる。図3の軌道(D)に示すように、搬送ロールRmとRm+2とがdAの高さで押出シートの下表面と接触する位置に配置され、搬送ロールRm+1とRm+3との中心がdAよりも低く、すなわちRmより低位に配置される態様としてもよい。なお、上記軌道(A)〜(D)は例示的なものであって、垂直方向の位置は図示するものに限られず、また軌道(A)〜(D)を組み合わせて、例えば搬送ロールRm+1が軌道(B)のように配置され、搬送ロールRm+3が軌道(D)のように配置されて、互いの垂直方向の位置が異なる配置であっても本発明の効果は奏される。これらの中でも、上記少なくとも4本の搬送ロールが図3中の軌道(B)〜(D)に示すような軌道となるように配置される場合は、搬送ロール間の押圧シートの移動距離が例えば軌道(A)に示す場合よりも長くなり、押圧シートの冷却が起こり短時間で結晶性樹脂板を製造することが可能となる。
【0044】
上記搬送する工程は、結晶性樹脂の結晶化温度をTc(℃)とし、連続して配置された4本の搬送ロールのうち、搬送方向に沿って第一番目の搬送ロールに接触する際の搬送ロールと接触しない側のシート表面の温度をTwarp(℃)とすると、Twarpが下式(1)を満たす条件で行なわれることが好ましい。
c−30≦Twarp≦Tc+20…(1)
シート表面の温度Twarp(℃)が、式(1)を満たす場合は、押出シート全体の反り量を小さくすることができる。シート表面の温度Twarp(℃)は、TC−20(℃)以上であることが好ましく、TC+10(℃)以下であることがより好ましい。このような場合には、押出シート全体の反り量をさらに小さくすることができる。
【0045】
本発明の製造方法においては、上記押圧ロールや搬送ロールの他に、本発明に技術上無関係なロールを設けてもよい。このようなロールは押出シートに接するものであり、たとえば、押出シートを第一押圧ロールおよび第二押圧ロール、または搬送ロールに沿わせるように搬送するためのガイドロールや、押圧シートを第二押圧ロールや第三押圧ロールに密着させておくためのタッチロールを挙げることができる。このようなガイドロールやタッチロールとしては、上記目的で使用するものであって、従来公知のロールを適用することができる。
【0046】
上記本発明の結晶性樹脂板の製造方法により製造された結晶性樹脂板は、従来の方法により製造される樹脂板と比較して、平坦性が向上したものとなるので、バックライト装置に好適に利用される。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
[中間層材料マスターバッチ1の製造]
プロピレン−エチレン共重合体(プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%未満、商品名「FSX20L8」、住友化学(株)製)を54.0質量部と、光拡散剤としてスチレン系重合体粒子(平均粒径0.8μm、商品名「XX307K」、積水化成品工業(株)製)40.0質量部と、加工安定剤(商品名「IRGAFOS168」、チバガイギー社製)2.0質量部と、帯電防止剤(商品名「エレクトロストリッパーTS−2B」、花王(株)製)4.0質量部とをドライブレンドした後、180℃〜250℃で65mm二軸押出機によりペレット化して、ペレット状の中間層材料マスターバッチ1を得た。
【0049】
[中間層材料マスターバッチ2の製造]
プロピレン−エチレン共重合体(プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%未満、商品名「FSX20L8」、住友化学(株)製)を84.0質量部と、加工安定剤(商品名「IRGAFOS168」、チバガイギー社製)4.0質量部と、造核剤(有機リン酸塩系、商品名「NA11」、ADEKA社製)4.0質量部と、帯電防止剤(商品名「エレクトロストリッパーTS−2B」、花王(株)製)8.0質量部とをドライブレンドした後、180℃〜250℃で65mm二軸押出機によりペレット化して、ペレット状の中間層材料マスターバッチ2を得た。
【0050】
[表層材料マスターバッチの製造]
プロピレン−エチレン共重合体(プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%未満、商品名「FSX20L8」、住友化学(株)製)を86.0質量部と、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、商品名「LA31」、ADEKA社製)5.0質量部と、光安定剤(ヒンダードアミン系、商品名「Tin855FF」、チバ・ジャパン社製)5.0質量部と、造核剤(商品名「NA11」、ADEKA社製)2.0質量部と、加工安定剤(商品名「IRGAFOS168」、チバガイギー社製)2.0質量部とをドライブレンドした後、180℃〜260℃で65mm二軸押出機によりペレット化して、ペレット状の表層材料マスターバッチを得た。
【0051】
[結晶性樹脂板の製造]
本実施例1においては、図4に示すロール構成を備えた装置を用いた。ダイ1には、メイン押出機とサブ押出機とが備えられており(図示せず)、これらの押出機のそれぞれに後述の配合比で樹脂等を投入し、マルチマニホールドダイを経由させて積層状態で共押出しする。
【0052】
メイン押出機には、79.0質量部のプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%未満、商品名「FSX20L8」、住友化学(株)製)と、16.0質量部の上記中間層材料マスターバッチ1と、5.0質量部の上記中間層材料マスターバッチ2とをドライブレンドしたブレンド物を供給して、200℃〜250℃で溶融させた。メイン押出機における溶融混練は50.6rpmで759kg/hの条件で行なった。
【0053】
サブ押出機には、90.0質量部のプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%未満、商品名「FSX20L8」、住友化学(株)製)と、10.0質量部の上記表層材料マスターバッチとをドライブレンドしたブレンド物を供給して、190℃〜250℃で溶融させた。サブ押出機における溶融混練は41.5rpmで40.0kg/hの条件で行なった。
【0054】
溶融したこれらのブレンド物を、マルチマニホールドダイを経由させてダイ温度250℃〜260℃で共押出しして、図4に示すロール構成を用いて、表面層0.05mm、中間層(光拡散層)1.1mm、表面層0.05mmの三層構造で、合計厚みが1.2mm、平均幅1400mmの結晶性樹脂板(A)を得た。得られた樹脂板の結晶化温度は125.1℃であった。
【0055】
[搬送ロール]
搬送ロールは直径Dが75mmのものを合計10個用いた。隣接する搬送ロールの相対位置は、シート搬送方向に沿って数えた場合の第一番目の搬送ロール(図4中R1)と押出シートとの接点の押出シートの垂直方向の高さと、該ロールに隣接するシート搬送方向に沿って数えた場合の第二番目の搬送ロール(図4中R2)と押出シートとの接点との押出シートの垂直方向の高さとの差が75mmとなるように配置した(図3の軌道(C)参照)。すなわち、第一番目の搬送ロールR1と第二番目の搬送ロールR2との押出シートの垂直方向の高さはほぼ同じとなる。
【0056】
また、隣接する搬送ロールの間隔は、図4の搬送ロールR1〜R5は、図2に示すピッチPを250mmとし、搬送ロールR5〜R10のピッチPは300mmとした。搬送ロールR1〜R10は、それぞれ表面温度を90℃に設定した。
【0057】
[搬送方法]
搬送ロールR10までは、搬送ロールR1から順に押出シートのシート面が交互に搬送ロールに接触するように通過させ、搬送ロールR11以降は搬送ロールの上側にシートを通過させた(図4)。なお搬送ロールR11以降のロールの直径は75mmとし、ピッチは300mmとして、ロールの垂直方向の位置をR10と同じとした。なお、搬送ロールR11以降のロール表面の温度は調整しなかった。
【0058】
[押出シート表面温度:Twarp
搬送方向に沿って数えた第一番目の搬送ロールR1を通過する際の押出シートの表面温度であって、搬送ロールと接触しない側の押出シートの表面温度Twarpは116.0℃であった。
【0059】
<評価:反り測定1>
実施例1で得られた結晶性樹脂板(A)の幅方向の異なる地点で、400mm×400mmの大きさの試験板を3枚切り出した。これらの試験板のそれぞれについて、反り測定を行なった。反り測定は、(株)ミツトヨ製の自然石常盤(600mm×600mm)の上に載せ、試験板の4辺の各中点および各頂点の計8箇所について常盤から浮いている量(距離)を測定した。各試験板について表裏合計16点の常盤から浮いている量を測定して、このうちの最大値を反り量(1)とした。測定は室温で行なった。試験板それぞれにおける結果を表1および表2に示す。
【0060】
<評価:反り測定2>
得られた結晶性樹脂板(A)の幅方向の異なる地点で、400mm×400mmの大きさの試験板を3枚切り出した。これらの試験板のそれぞれについて、目視による反り測定を行なった。目視判定による反り評価結果は、シートにうねりが無い場合を「○」とし、シートにうねりが有る場合を「×」として表1に記す。
【0061】
(実施例2)
実施例1で作製した中間層材料マスターバッチ1、中間層材料マスターバッチ2および表層材料マスターバッチを用いて以下の方法で結晶性樹脂板を製造した。
【0062】
[結晶性樹脂板の製造]
本実施例2においては、図4に示すロール構成を備えた装置を用いた。ダイ1には、メイン押出機とサブ押出機とが備えられており(図示せず)、これらの押出機のそれぞれに後述の配合比で樹脂等を投入し、マルチマニホールドダイを経由させて積層状態で共押出しする。
【0063】
メイン押出機には、83.0質量部のプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%未満、商品名「FSX20L8」、住友化学(株)製)と、12.0質量部の上記中間層材料マスターバッチ1と、5.0質量部の上記中間層材料マスターバッチ2とをドライブレンドしたブレンド物を供給して、200℃〜250℃で溶融させた。メイン押出機における溶融混練は43.6rpmで654kg/hの条件で行なった。
【0064】
サブ押出機には、90.0質量部のプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%未満、商品名「FSX20L8」、住友化学(株)製)と、10.0質量部の上記表層材料マスターバッチとをドライブレンドしたブレンド物を供給して、190℃〜250℃で溶融させた。サブ押出機における溶融混練は48.4rpmで46.7kg/hの条件で行なった。
【0065】
溶融したこれらのブレンド物を、マルチマニホールドダイを経由させてダイ温度250℃〜260℃で共押出しして、図4に示すロール構成を用いて、表面層0.05mm、中間層(光拡散層)1.4mm、表面層0.05mmの三層構造で、合計厚みが1.5mm、平均幅1400mmの結晶性樹脂板(B)を得た。得られた樹脂板の結晶化温度は125.9℃であった。得られた結晶性樹脂板(B)について、結晶性樹脂板(A)と同様の反り評価を行なった。結果を表1および表2に示す。
【0066】
搬送ロールおよびその配置方法、押出シートの搬送方法は実施例1と同様の方法により行なった。
【0067】
[押出シート表面温度:Twarp
搬送方向に沿って数えた第一番目の搬送ロールR1を通過する際の押出シートの表面温度であって、搬送ロールと接触しない側の押出シートの表面温度Twarpは119.9℃であった。
【0068】
(実施例3)
実施例1で作製した中間層材料マスターバッチ1、中間層材料マスターバッチ2および表層材料マスターバッチを用いて以下の方法で結晶性樹脂板を製造した。
【0069】
[結晶性樹脂板の製造]
本実施例3においては、図4に示すロール構成を備えた装置を用いた。ダイ1には、メイン押出機とサブ押出機とが備えられており(図示せず)、これらの押出機のそれぞれに後述の配合比で樹脂等を投入し、マルチマニホールドダイを経由させて積層状態で共押出しする。
【0070】
メイン押出機には、95.0質量部のプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%未満、商品名「FSX20L8」、住友化学(株)製)と、5.0質量部の上記中間層材料マスターバッチ2とをドライブレンドしたブレンド物を供給して、200℃〜250℃で溶融させた。メイン押出機における溶融混練は36.7rpmで550kg/hの条件で行なった。
【0071】
サブ押出機には、90.0質量部のプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%未満、商品名「FSX20L8」、住友化学(株)製)と、10.0質量部の上記表層材料マスターバッチとをドライブレンドしたブレンド物を供給して、190℃〜250℃で溶融させた。サブ押出機における溶融混練は51.8rpmで50.0kg/hの条件で行なった。
【0072】
溶融したこれらのブレンド物を、マルチマニホールドダイを経由させてダイ温度250℃〜260℃で共押出しして、図4に示すロール構成を用いて、表面層0.05mm、中間層(光拡散層)1.9mm、表面層0.05mmの三層構造で、合計厚みが2.0mm、平均幅1400mmの結晶性樹脂板(C)を得た。得られた樹脂板の結晶化温度は125.3℃であった。得られた結晶性樹脂板(C)について、結晶性樹脂板(A)と同様の反り評価を行なった。結果を表1および表2に示す。
【0073】
搬送ロールおよびその配置方法、押出シートの搬送方法は実施例1と同様の方法により行なった。
【0074】
[押出シート表面温度:Twarp
搬送方向に沿って数えた第一番目の搬送ロールR1を通過する際の押出シートの表面温度であって、搬送ロールと接触しない側の押出シートの表面温度Twarpは120.9℃であった。
【0075】
(比較例1)
搬送方法を以下の条件に変更した以外は、実施例2と同様の方法により結晶性樹脂板を製造した。得られた結晶性樹脂板について、実施例1と同様に反り評価を行なった。結果を表2に示す。
【0076】
[搬送方法]
全ての搬送ロールの上側にシートを通過させた(図5)。搬送ロールの大きさやピッチ等は実施例2と同様とした。
【0077】
[押出シート表面温度:Twarp
搬送方向に沿って数えた第一番目の搬送ロールR1を通過する際の押出シートの表面温度であって、搬送ロールと接触しない側の押出シートの表面温度Twarpは121.0℃であった。
【0078】
【表1】

【0079】
表1において、シート温度の符号a〜kは押圧シートの温度測定を行なった箇所を示し、これらは図4に模式的に示されている。符号a〜kそれぞれの箇所について、幅方向に異なる3点のシート温度を測定し、それら3点のシート温度を表1に記載した。なお符号fの測定においては、「f上」とは搬送ロールR1と押圧シートの接触の際の搬送ロールに接触しない側の押圧シート2表面を示す。それ以外の符号e〜kにおいては、各搬送ロールに押圧シート2が接触する直前の押圧シートの上表面および下表面のそれぞれを「上」、「下」の表記で示す。ライン速度(m/min)はダイからの押出速度を示し、引取比率とは、第三押圧ロール5と搬送ロール6と図示しない引取ロールとでの押圧シートの引取割合の比を示し、本実施例および比較例では第三押圧ロール5/搬送ロール6/引取ロール=1.025/0.998/0.960とした。
【0080】
表1のロール温度の欄の「第一」、「第二」、「第三」はそれぞれ第一押圧ロール、第二押圧ロール、第三押圧ロールを示す。反り量については、いずれも最大値を示しており、数値の前の「−」は反りがシート搬送の水平方向よりも凹んでいることを示し、「+」は反りがシート搬送の水平方向よりも凸であったことを示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2の結果から明らかなように、本発明の方法により製造した結晶性樹脂板に対応するそれぞれの試験板の反り量は、従来の方法により得られた結晶性樹脂板に対応する試験板に比べて、いずれも反りが抑制された結果となった。また、その反り量の絶対値も、最大で5.9mm低減されることがわかる。
【0083】
(実施例4)
[中間層材料マスターバッチ3の製造]
プロピレン−エチレン共重合体(プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%未満、商品名「E111G」、プライムポリマー(株)製)を85.0質量部と、ヒンダードアミン系光安定剤(商品名「キマソーブ119FL」、チバ・ジャパン(株)製)5.0質量部と、加工安定剤(商品名「スミライザーGP」、住友化学(株)製)4.0質量部と、造核剤(商品名「HPN−20E」、ミリケン・ジャパン(株)製)6.0質量部とをドライブレンドした後、180℃〜260℃で65mm二軸押出機によりペレット化して、ペレット状の中間層材料マスターバッチ3を得た。
【0084】
[結晶性樹脂板の製造]
本実施例4においては、図9に示すロール構成を備えた装置を用いた。ダイ1には、押出機が備えられており、後述の配合比で樹脂等を投入し、フィードブロックダイを経由させて単層状態で押出した。
【0085】
メイン押出機に、95.0質量部のプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%未満、商品名「E111G」、プライムポリマー(株)製)と、5.0質量部の上記中間層材料マスターバッチ3とをドライブレンドしたブレンド物を供給して、200℃〜250℃で溶融させた。メイン押出機における溶融混練は12.6rpmで281kg/hの条件で行なった。
【0086】
上記溶融させたブレンド物を、フィードブロックダイを経由させてダイ温度250℃〜265℃で押出しして、図9に示すロール構成を用いて、単層構造で、厚みが0.6mm、平均幅1100mmの結晶性樹脂板(B)を得た。得られた樹脂板の結晶化温度は125.0℃であった。
【0087】
[搬送ロール]
搬送ロールは直径Dが60mmのものを合計6個用いた。隣接する搬送ロールの相対位置は、シート搬送方向に沿って数えた場合の第一番目の搬送ロール(図9中R1)と押出シートとの接点の押出シートの垂直方向の高さと、該ロールに隣接するシート搬送方向に沿って数えた場合の第二番目の搬送ロール(図9中R2)と押出シートとの接点との押出シートの垂直方向の高さとの差が60mmとなるように配置した(図3の軌道(C)参照)。すなわち、第一番目の搬送ロールR1と第二番目の搬送ロールR2との押出シートの垂直方向の高さはほぼ同じとなる。
【0088】
また、隣接する搬送ロールの間隔は、図9の搬送ロールR1〜R6は、図2に示すピッチPを300mmとし、搬送ロールの表面温度はそれぞれ調整せずに室温条件において結晶性樹脂板の製造を行なった。
【0089】
[搬送方法]
搬送ロールR6までは、図9に示すように押出シートが搬送ロールR1の上側、搬送ロールR2の下側、搬送ロールR3およびR4の上側、搬送ロールR5およびR6の下側に接触するように通過させ、搬送ロールR7以降は搬送ロールの上側にシートを通過させた。なお搬送ロールR7以降のロールの直径は60mmとし、ピッチは300mmとし、搬送ロールR7以降のロール表面の温度は調整しなかった。
【0090】
[押出シート表面温度:Twarp
搬送方向に沿って数えた第一番目の搬送ロールR1を通過する際の押出シートの表面温度であって、搬送ロールと接触しない側の押出シートの表面温度Twarpは111.6℃であった。
【0091】
得られた押出シートについて実施例1と同様に評価を行なった。結果を下記表3に示す。
【0092】
(比較例2)
搬送方法を以下の条件に変更した以外は、実施例4と同様の方法により結晶性樹脂板を製造した。得られた結晶性樹脂板について、実施例1と同様に反り評価を行なった。結果を表3に示す。
【0093】
[搬送方法]
全ての搬送ロールの上側にシートを通過させた(図11)。搬送ロールの大きさやピッチ等は実施例4と同様とした。
【0094】
[押出シート表面温度:Twarp
搬送方向に沿って数えた第一番目の搬送ロールR1を通過する際の押出シートの表面温度であって、搬送ロールと接触しない側の押出シートの表面温度Twarpは112.0℃であった。
【0095】
【表3】

【0096】
このように、本発明の方法によれば、従来の装置の構成において、搬送方法を変更するだけで、著しく反りを抑制した平坦性に優れた結晶性樹脂板を製造できることが分かる。
【0097】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0098】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の製造方法により製造される結晶性樹脂板は平坦性に優れているので、光拡散板、すなわち直下型液晶ディスプレイ装置を構成するバックライト装置用として好適である。
【符号の説明】
【0100】
1 ダイ、2 押出シート、3 第一押圧ロール、4 第二押圧ロール、5 第三押圧ロール、6 搬送ロール、7 引取りロール、8,9 ヒータ、10,20 反り付けロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性樹脂をダイからシート状に押出す工程と、押出したシート状の前記結晶性樹脂を圧延ロールに通過させて押出シートを形成する工程と、前記押出シートのシート面の幅方向が水平となるように押出シートを搬送する工程とを含む結晶性樹脂板の製造方法であって、
前記搬送する工程は、前記押出シートの搬送方向に沿って配置された少なくとも4本の搬送ロールに接触させて行なわれ、かつ、
前記押出シートの上表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させたのちに前記押出シートの下表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させる工程と、前記押出シートの下表面を搬送ロールに搬送方向に沿って接触させたのちに搬送ロールに前記押出シートの上表面を搬送方向に沿って接触させる工程との少なくとも1つの工程を、あわせて2以上含む結晶性樹脂板の製造方法。
【請求項2】
前記搬送する工程は、前記押出シートの搬送方向に沿って配置された少なくとも4本の搬送ロールに接触させて行なわれ、かつ、
前記各搬送ロールに前記押出シートの上表面または下表面のいずれかを搬送方向に沿って交互に接触させる請求項1に記載の結晶性樹脂板の製造方法。
【請求項3】
前記搬送する工程は、前記結晶性樹脂の結晶化温度をTc(℃)とし、前記連続して配置された4本の前記搬送ロールのうち、搬送方向に沿って第一番目の搬送ロールに接触する際の前記搬送ロールと接触しない側のシート表面の温度をTwarp(℃)とすると、前記Twarpが下式(1)を満たす条件で行なわれる請求項1または2に記載の結晶性樹脂板の製造方法。
c−30≦Twarp≦Tc+20…(1)
【請求項4】
前記結晶性樹脂は、プロピレン樹脂である請求項1から3のいずれかに記載の結晶性樹脂板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−214940(P2010−214940A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223043(P2009−223043)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】