説明

絞り機構

【課題】小絞り時の光通過口の形状を菱形とした場合に、背景のボケ像が菱形になる場合があった。
【解決手段】絞り機構10において、2枚の絞り羽根14、16は、互いに重なり合うよう配置され、撮像に利用される光を導入する一つの光通過口50を双方の縁部によって形成する。駆動機構22は、2枚の絞り羽根14、16の各々を互いに異なる方向に駆動することにより光通過口50の開口面積を所定範囲内において変化させる。2枚の絞り羽根14、16は、光通過口50の開口面積が上記所定範囲のうち最小となる最小絞り位置に各々が位置しているとき、8本の直線を含む境界で囲われる一つの光通過口50を双方の縁部で形成するよう設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り機構に関するものであり、特に、2枚の絞り羽根を駆動して、撮像のための光を導入する光通過口の開口面積を調整する絞り機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、2枚の絞り羽根を用いて光通過口を形成し、この2枚の絞り羽根を近接および離間させる方向に移動させることによって、光通過口の開口面積を調整して光量を調整する絞り機構が知られている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。また、光通過口の開口面積を最小にした後、電子シャッターで露出を調整する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−182264号公報
【特許文献2】特開2000−111970号公報
【特許文献3】特開平8−237544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1または2に記載される絞り機構では、光通過口の開口面積を小さくしたときに、光通過口の形状が菱形となる。このように光通過口の形状を菱形にすると、例えば背景をぼかして被写体を際だたせるよう撮影したときに、背景のボケ像が菱形になり背景が不自然となる場合がある。一方、このような現象を回避するために、光通過口の開口面積をあまり小さくしないうちに上述の特許文献3に記載されるように電子シャッターによる露出の調整に切り替える技術も考えられる。しかしながら、光通過口の開口面積をあまり小さくしないうち電子シャッターに切り替えると、撮像素子に強い光が当たりスミアなどの画質への影響が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、背景のボケ像の不自然さを抑制した絞り機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の絞り機構は、互いに重なり合うよう配置され、撮像に利用される光を導入する一つの光通過口を双方の縁部によって形成する2枚の絞り羽根と、2枚の絞り羽根の各々を互いに異なる方向に駆動することにより光通過口の開口面積を変化させる駆動機構と、を備える。2枚の絞り羽根は、5本以上の直線を含む境界で囲われる一つの光通過口を双方の縁部で形成するよう設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、背景のボケ像の不自然さを抑制した絞り機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る絞り機構の正面図である。
【図2】ベースユニットの正面図である。
【図3】絞り羽根の正面図である。
【図4】絞り羽根の正面図である。
【図5】2枚の絞り羽根をベースユニットに取り付けたときの絞り機構の正面図である。
【図6】(a)および(b)は、凹部の形状の決定方法を示す図である。
【図7】(a)〜(e)は、2枚の絞り羽根を互いに近接させたときの光通過口の形状の変化を示す図である。
【図8】2枚の絞り羽根が最小絞り位置に位置しているときの光通過口の形状を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る絞り機構の正面図である。
【図10】絞り羽根の正面図である。
【図11】絞り羽根の正面図である。
【図12】2枚の絞り羽根をベースユニットに取り付けたときの絞り機構の正面図である。
【図13】(a)および(b)は、凹部の形状の決定方法を示す図である。
【図14】(a)〜(e)は、2枚の絞り羽根を互いに近接させたときの光通過口の形状の変化を示す図である。
【図15】2枚の絞り羽根が最小絞り位置に位置しているときの光通過口の形状を示す図である。
【図16】第3の実施形態に係る絞り機構の正面図である。
【図17】絞り羽根の正面図である。
【図18】絞り羽根の正面図である。
【図19】2枚の絞り羽根をベースユニットに取り付けたときの絞り機構の正面図である。
【図20】(a)および(b)は、凹部の形状の決定方法を示す図である。
【図21】(a)〜(e)は、2枚の絞り羽根を互いに近接させたときの光通過口の形状の変化を示す図である。
【図22】2枚の絞り羽根が最小絞り位置に位置しているときの光通過口の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る絞り機構10の正面図である。絞り機構10は、ベースユニット12、および2枚の絞り羽根14、16を有する。2枚の絞り羽根14、16は、互いに離間および近接するよう各々が図1における上下方向に移動可能に設けられている。以下、理解を容易にすべく、2枚の絞り羽根14、16の各々が移動可能とされている方向を「上下方向」という。また、2枚の絞り羽根14、16の各々が移動可能とされている方向と垂直な方向を「水平方向」という。
【0011】
図2は、ベースユニット12の正面図である。ベースユニット12は、ベースプレート20、駆動機構22、ガイドピン24、26、28、30を有する。ベースプレート20は、上下方向に延在する略矩形の板状に形成され、縁部が垂直に曲げられてフランジが設けられている。ベースプレート20の略中央には、円形の開口部である固定絞り孔20aが設けられている。
【0012】
駆動機構22は、揺動ロッド40、揺動軸42、連結ピン44、46を有する。揺動軸42は、ガイドピン30の一端部近傍に取り付けられる。揺動ロッド40は、揺動可能となるよう中央が揺動軸42に支持されている。連結ピン44および連結ピン46は、軸方向がベースプレート20と垂直となるよう揺動ロッド40の各々の端部に設けられている。
【0013】
ガイドピン24、26、28、30の各々は、固定絞り孔20aの周囲において、ベースプレート20に対して軸方向が垂直に向いて突出するようベースプレート20上に配置される。具体的には、ガイドピン24、26、およびガイドピン28、30は、それぞれ水平方向に並ぶよう配置される。ガイドピン28、30は、ガイドピン24、26よりも駆動機構22に近い位置に配置される。また、ガイドピン24、28は、連結ピン44と共に上下方向に並ぶように配置される。ガイドピン26、30は、連結ピン46と共に上下方向に並ぶように配置される。
【0014】
図3は、絞り羽根14の正面図である。絞り羽根14は、切り込むように形成された凹部14aを有する板状に形成される。また、絞り羽根14は、長孔であるガイド孔14b、14c、14d、および連結孔14eを有する。
【0015】
ガイド孔14b、14c、14dの各々は、上下方向に延在するよう設けられている。ガイド孔14b、ガイド孔14d、および連結孔14eは、その順に上下方向に並んで形成される。ガイド孔14b、14dは、同一直線上に延在するよう形成されている。連結孔14eは、水平方向に延在するよう形成されている。ガイド孔14cは、ガイド孔14bと水平方向に並ぶよう形成されている。
【0016】
凹部14aは、ガイド孔14bとガイド孔14cとの間に設けられている。一対の第1縁部14fは、凹部14aに一端が接続され、上下方向と平行に伸びるよう形成される。
【0017】
凹部14aは、一対の第2縁部14g、および一対の第3縁部14hを含む。一対の第2縁部14gの各々は直線状に形成され、互いに同じ長さを有する。一対の第2縁部14gの各々の一端には、それぞれ上下方向と平行に延びる一対の第1縁部14fの一端が接続される。一対の第2縁部14gの各々は、他端に近づくにしたがって互いに近接するよう、上下方向に対して所定角度で傾斜する。
【0018】
一対の第3縁部14hの各々は直線状に形成され、互いに同じ長さを有し、一対の第2縁部14gの各々の他端に一端が接続される。一対の第3縁部14hは、互いに他端が接続される。一対の第3縁部14hの各々は、他端に近づくに従って互いに近接するよう上下方向に対して所定角度で傾斜する。このとき、上下方向に対する第3縁部14hの傾斜角度は、上下方向に対する第2縁部14gの傾斜角度よりも大きくされている。こうして凹部14aは、一対の第3縁部14hの交点P1を通過する上下方向と平行なラインを中心に左右対称に形成される。
【0019】
図4は、絞り羽根16の正面図である。絞り羽根16は、切り込むように形成された凹部16aを有する板状に形成される。また、絞り羽根16は、長孔であるガイド孔16b、16c、16d、および連結孔16eを有する。
【0020】
ガイド孔16b、16c、16dの各々は、上下方向に延在するよう設けられている。ガイド孔16c、16d、および連結孔16eは、その順に上下方向に並んで形成される。ガイド孔16b、16dは、同一直線上に延在するよう形成されている。連結孔16eは、水平方向に延在するよう形成されている。ガイド孔16bは、ガイド孔16cと水平方向に並ぶよう形成されている。
【0021】
凹部16aは、ガイド孔16bとガイド孔16cとの間に設けられている。凹部16aは、一対の第2縁部16g、および一対の第3縁部16hを含む。
【0022】
ガイド孔16dの内側には、上下方向に延びる第1縁部16fが形成されている。一対の第2縁部16gの一方は第1縁部16fの端部に一端が接続される。一対の第2縁部16gの各々は直線状に形成され、互いに同じ長さを有し、他端に近づくにしたがって互いに近接するよう、上下方向に対して所定角度で傾斜する。
【0023】
一対の第3縁部16hの各々は直線状に形成され、互いに同じ長さを有し、一対の第2縁部16gの各々の他端に一端が接続される。一対の第3縁部16hは、互いに他端が接続される。一対の第3縁部16hの各々は、他端に近づくに従って互いに近接するよう上下方向に対して所定角度で傾斜する。このとき、上下方向に対する第3縁部16hの傾斜角度は、上下方向に対する第2縁部16gの傾斜角度よりも大きくされている。こうして凹部16aは、一対の第3縁部16hの交点P2を通過する上下方向と平行なラインを中心に左右対称に形成される。
【0024】
図5は、2枚の絞り羽根14、16をベースユニット12に取り付けたときの絞り機構10の正面図である。まず、ベースプレート20に絞り羽根16が取り付けられる。このとき、ガイド孔16bにガイドピン24が挿入され、ガイド孔16cにガイドピン26が挿入され、ガイド孔16dにガイドピン30が挿入される。これにより、絞り羽根16は上下方向に移動可能とされ、水平方向への移動が規制される。また、連結孔16eには、揺動ロッド40の連結ピン46が挿入される。
【0025】
次に、絞り羽根16の上に重ね合わせるように絞り羽根14がベースプレート20に取り付けられる。このとき、ガイド孔14bにガイドピン24が挿入され、ガイド孔14cにガイドピン26が挿入され、ガイド孔14dにガイドピン28が挿入される。これにより、絞り羽根14は上下方向に移動可能とされ、水平方向への移動が規制される。また、連結孔14eには、揺動ロッド40の連結ピン44が挿入される。
【0026】
2枚の絞り羽根14、16がベースユニット12に取り付けられたとき、凹部14aと凹部16aとは互いに向き合うように開口する。2枚の絞り羽根14、16は、撮像に利用される光を導入する一つの光通過口50を、縁部である凹部14aと凹部16aとによって形成する。駆動機構22は、揺動ロッド40を揺動することによって、互いに近接および離間するよう2枚の絞り羽根14、16を上下方向と平行に互いに反対方向に駆動し、光通過口50の開口面積を変化させる。
【0027】
なお、2枚の絞り羽根14、16の各々は、例えば曲線を描くように移動可能に設けられてもよい。この場合も駆動機構22は、2枚の絞り羽根14、16の各々を互いに異なる方向に駆動することにより光通過口50の開口面積を変化させてもよい。
【0028】
駆動機構22は、光通過口50の開口面積を所定範囲内で調整するよう2枚の絞り羽根14、16の各々を駆動する。具体的には、駆動機構22は、光通過口50の開口面積が最小となる最小絞り位置から光通過口50の開口面積が最大となる最大絞り位置まで2枚の絞り羽根14、16の各々を駆動する。
【0029】
図6(a)は、凹部14aの形状の決定方法を示す図である。一対の第1縁部14fは、互いの間隔が、固定絞り孔20aと同じまたは固定絞り孔20aの直径よりもわずかに大きくなるよう形成される。一対の第2縁部14gは、互いに45°を成すよう形成される。したがって一対の第2縁部14gの各々は、上下方向に対して22.5°傾斜する。一対の第2縁部14gの各々は、絞り羽根14が最大絞り位置にあるときに固定絞り孔20aに外接する位置に設けられている。
【0030】
図6(b)もまた、凹部14aの形状の決定方法を示す図である。最も使用頻度が高いF値を実現するための開口面積を有する仮想円C1を、図6(a)にて決定された一対の第2縁部14gに内接させる。第1の実施形態では、最も使用頻度が高いF値は4とされている。なお、このときのF値が4に限定されないことは勿論である。
【0031】
一対の第3縁部14hは、互いの内角が135°を成すよう形成される。したがって一対の第3縁部14hの各々は、上下方向に対して67.5°傾斜し、また、第2縁部14gとは互いの内角が135°を成すよう形成される。一対の第3縁部14hの各々は、仮想円C1に外接するよう形成される。こうして、一対の第1縁部14f、一対の第2縁部14g、および一対の第3縁部14hの各々の形状が決定される。
【0032】
凹部16aは、開口方向が逆となっている以外は、凹部14aと同一形状に形成される。したがって、一対の第2縁部16gの各々は上下方向に対して22.5°傾斜し、一対の第3縁部16hの各々は上下方向に対して67.5°傾斜する。絞り羽根16が最大絞り位置にあるときに固定絞り孔20aに外接するよう一対の第2縁部16gが設けられている点も、一対の第2縁部14gと同様である。なお、凹部16aが凹部14aと異なる形状に形成されていてもよい。
【0033】
図7(a)〜図7(e)は、2枚の絞り羽根14、16を互いに近接させたときの光通過口50の形状の変化を示す図である。なお、理解を容易にすべく、2枚の絞り羽根14、16の各々の形状は模式的に示している。
【0034】
図7(a)は、2枚の絞り羽根14、16の各々が光通過口50を通過する光量を最大とするように最も移動した最大絞り位置にあるときの絞り機構10の正面図である。2枚の絞り羽根14、16が最大絞り位置にあるとき2枚の絞り羽根14、16による、固定絞り孔20aの遮光が完全に解除される。このため、光通過口50の開口面積は固定絞り孔20aの開口面積となる。
【0035】
図7(b)は、2枚の絞り羽根14、16の各々を最大絞り位置から所定距離だけ互いに近接させたときの絞り機構10の正面図である。この状態では、一対の第2縁部14gの一部および一対の第2縁部16gの一部が固定絞り孔20aの内側に位置し、固定絞り孔20aを通過しようとする光の一部を遮光する。しかし、一対の第3縁部14hおよび一対の第3縁部16hは固定絞り孔20aの外側に位置したままとなる。このため、このときの光通過口50は、一対の第2縁部14g、一対の第2縁部16g、および固定絞り孔20aによって画定される。
【0036】
図7(c)は、2枚の絞り羽根14、16の各々を図7(b)の状態からさらに互いに所定距離だけ近接させたときの絞り機構10の正面図である。このとき、一対の第3縁部14hおよび一対の第3縁部16hも固定絞り孔20aの内側に位置するようになる。しかし、一対の第3縁部14hおよび一対の第3縁部16hが固定絞り孔20aの内側に進入した当初は、光通過口50を形成する境界線のうち第2縁部14gおよび第2縁部16gによって形成される境界線が第3縁部14hおよび第3縁部16hよりも長い状態となる。このため光通過口50は、上下方向の幅が水平方向の幅よりも長い扁平した形状となる。
【0037】
図7(d)は、2枚の絞り羽根14、16の各々を図7(c)の状態からさらに互いに所定距離だけ近接させたときの絞り機構10の正面図である。2枚の絞り羽根14、16をさらに互いに近接させていくと、光通過口50の扁平が徐々に減少していき、上下方向の幅が水平方向の幅と等しくなる。図7(d)は、このときの状態を示したものである。
【0038】
このとき、光通過口50を形成する境界線のうち第2縁部14gおよび第2縁部16gによって形成される境界線が第3縁部14hおよび第3縁部16hと同じ長さとなる。したがって光通過口50は、境界線を構成する8本の縁部がすべて同じ長さとなり、8本の縁部の各々が隣接する縁部と互いに135°を成すため、光通過口50は正八角形となる。この正八角形は、上述の仮想円C1に外接するよう形成される。
【0039】
このように最も使用頻度の高いF値を実現するときに、光通過口50を上述の仮想円C1に最も近い形状にすることができる。なお、このときの光通過口50が正八角形に限定されないことは勿論であり、例えば正八角形以外の八角形でもよい。
【0040】
また、光通過口50を形成する境界線を曲線によって構成すると、特に外部が明るいときに、「ゴースト」と呼ばれる画質への影響が生じやすくなる。このように光通過口50の境界を直線によって構成することによって、このゴーストを抑制することができる。
【0041】
また、例えば最も使用頻度が高いF値よりも数値の大きいF値を実現するときに光通過口50が上述の仮想円C1に最も近い形状となるよう、2枚の絞り羽根14、16の各々が形成されてもよい。これにより、外部が明るいときに光通過口50の扁平を小さくすることができ、光通過口50が扁平することによる画質への影響を抑制することができる。なお、最も使用頻度が高いF値よりも数値の小さいF値を実現するときに光通過口50が上述の仮想円C1に最も近い形状となるよう、2枚の絞り羽根14、16の各々が形成されてもよい。
【0042】
図7(e)は、2枚の絞り羽根14、16の各々が最小絞り位置にあるときの絞り機構10の正面図である。図7(d)の状態からさらに2枚の絞り羽根14、16の各々を互いに近接させると、光通過口50は、今度は上下方向の幅よりも水平方向の幅の方が長くなるよう扁平していく。このように2枚の絞り羽根14、16の各々が最小絞り位置にあるときも、光通過口50は扁平した形状となる。2枚の絞り羽根14、16は、このように最小絞り位置に達したときも、8本の直線によって構成される境界線で囲われる光通過口50を双方の縁部で形成する。
【0043】
例えば光通過口を4本の直線によって囲われる菱形とした場合、例えば背景をぼかして被写体を際だたせるよう撮影したときに背景のボケ像が菱形になり、不自然な背景となる場合がある。発明者による実験の結果、このように最小絞り位置にあるときの光通過口50の境界線を構成する直線を8本とすることによって、4本の直線によって菱形の光通過口を形成した場合に比べ、背景のボケ像の不自然さを大幅に軽減できることが判明した。したがって、絞り機構10によれば、背景のボケ像の不自然さ、およびゴーストの双方を適切に抑制することができる。
【0044】
なお、光通過口50は、その境界線が直線だけでなく曲線を含んでいてもよい。例えば、一対の第3縁部14hの接続部分や一対の第3縁部16hの接続部分が曲線とされていてもよい。また、第2縁部14gと第3縁部14hとの接続部分、または第2縁部16gと第3縁部16hとの接続部分が曲線とされていてもよい。
【0045】
第1の実施形態では、駆動機構22は、実現すべきF値が所定の値以下のときに、2枚の絞り羽根14、16の各々を最小絞り位置まで移動させる。なお、このときのF値の所定の値は、5以上6以下の値されている。
【0046】
絞り機構10が搭載されるカメラやビデオなどの撮像装置は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの撮像素子(図示せず)と、この撮像素子を露光させて蓄電させる蓄電時間を調整する電子制御ユニット(図示せず)とを備える。電子制御ユニットは、マイコンやROM、RAMなどによって構成される。電子制御ユニットは、このように撮像素子の蓄電時間を調整することにより、光通過口50を通過して撮像に利用される光の光量を実質的に調整する。このため、電子制御ユニットは光量調整手段として機能する。このような撮像素子の制御による露光調整は、「電子シャッター」と呼ばれる。このように絞り機構10が搭載される撮像装置は、絞り機構10によるメカニカルな光量調整手段と電子シャッターの双方を有する。
【0047】
また、電子制御ユニットは、撮像素子からの検出信号を利用して、外部の明るさを検出する。電子制御ユニットは、検出された外部の明るさを利用して、実現すべきF値を設定する。駆動機構22は、設定されたF値が所定の値以下の場合、最大絞り位置と最小絞り位置との間で2枚の絞り羽根14、16を駆動し、絞り機構10によるメカニカルな光量調整手段によって実際のF値を調整する。設定されたF値が所定の値より大きい場合、駆動機構22は、2枚の絞り羽根14、16を最小絞り位置まで移動させ、それ以上の絞り機構10によるメカニカルな光量調整手段でのF値の調整を回避する。このとき電子制御ユニットは、上記所定の値より大きく設定されたF値を実質的に実現するよう、撮像素子の蓄電時間を調整する。このようにメカニカルな光量調整手段である絞り機構10と電子シャッターとを併用することにより、最小絞り位置における光通過口50の扁平率を抑制しつつ、数値の大きいF値にも対応することができる。
【0048】
図8は、2枚の絞り羽根14、16が最小絞り位置に位置しているときの光通過口50の形状を示す図である。このとき光通過口50は、水平方向の幅が最大幅となる。2枚の絞り羽根14、16の各々は、このときの水平方向長さL12を上下方向長さL11で割った光通過口50の扁平率が1より大きく且つ1.4以下となるよう形成されている。発明者による実験の結果、2枚の絞り羽根14、16が最小絞り位置にあるときの光通過口50の扁平率をこのような値とすることで、背景のボケ像の不自然さを抑制しつつ、数値の大きいF値が設定されたときもスミアなどを抑制して円滑に電子シャッターに切り替えることが可能となることが判明している。
【0049】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係る絞り機構100の正面図である。なお、特に言及しない限り、絞り機構100および絞り機構100が搭載される撮像装置の構成は第1の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態と同様の個所は同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
絞り機構100は、ベースユニット12、および2枚の絞り羽根114、116を備える。2枚の絞り羽根114、116は、互いに離間および近接するよう各々が上下方向に移動可能に設けられている。
【0051】
図10は、絞り羽根114の正面図である。絞り羽根114は、切り込むように形成された凹部114aを有する板状に形成される。絞り羽根114は、長孔であるガイド孔114b、114c、114d、および連結孔114eを有するが、これらの形状や配置は、第1の実施形態に係るガイド孔14b、14c、14d、および連結孔14eと同様である。一対の第1縁部114fも、上述の一対の第1縁部14fと同様に形成される。
【0052】
凹部114aは、ガイド孔114bとガイド孔114cとの間に設けられている。凹部114aは、一対の第2縁部114g、および第3縁部114hを含む。一対の第2縁部114gの各々は直線状に形成され、互いに同じ長さを有し、一対の第1縁部114fの各々に一端が接続される。一対の第2縁部114gの各々は、他端に近づくにしたがって互いに近接するよう、上下方向に対して所定角度で傾斜する。第3縁部114hは、水平方向に延在するよう形成され、一対の第2縁部114gの各々の他端に両端が接続される。こうして凹部114aは、第3縁部114hの中点を通過する上下方向と平行なラインを中心に左右対称に形成される。
【0053】
図11は、絞り羽根116の正面図である。絞り羽根116は、切り込むように形成された凹部116aを有する板状に形成される。また、絞り羽根116は、長孔であるガイド孔116b、116c、116d、および連結孔116eを有する。ガイド孔116b、116c、116d、および連結孔116eの形状や配置は、第1の実施形態に係るガイド孔14b、14c、14d、および連結孔14eと同様である。また、第1縁部116fも、上述の一対の第1縁部16fと同様に形成される。
【0054】
凹部116aは、ガイド孔116bとガイド孔116cとの間に設けられている。凹部116aは、一対の第2縁部116g、および第3縁部116hを含む。
【0055】
一対の第2縁部116gの一方は、第1縁部116fの端部に一端が接続される。一対の第2縁部116gの各々は直線状に形成され、互いに同じ長さを有し、他端に近づくにしたがって互いに近接するよう、上下方向に対して所定角度で傾斜する。第3縁部116hは、水平方向に延在するよう形成され、一対の第2縁部116gの各々の他端に両端が接続される。こうして凹部116aは、第3縁部116hの中点を通過する上下方向と平行なラインを中心に左右対称に形成される。
【0056】
図12は、2枚の絞り羽根114、116をベースユニット12に取り付けたときの絞り機構10の正面図である。ベースユニット12への2枚の絞り羽根114、116の取り付け方法は、上述の2枚の絞り羽根14、16の取り付け方法と同様である。2枚の絞り羽根114、116がベースユニット12に取り付けられたとき、凹部114aと凹部116aとは互いに向き合うように開口する。こうして2枚の絞り羽根114、116は、撮像に利用される光を導入する一つの光通過口150を、各々の縁部である凹部114aおよび凹部116aの双方で形成する。駆動機構22は、揺動ロッド40を揺動することによって、互いに近接および離間するよう2枚の絞り羽根114、116を上下方向と平行に互いに反対方向に駆動し、光通過口150の開口面積を変化させる。
【0057】
図13(a)は、凹部114aの形状の決定方法を示す図である。一対の第1縁部114fは、互いの間隔が、固定絞り孔20aと同じまたは固定絞り孔20aよりもわずかに大きくなるよう形成される。一対の第2縁部114gは、互いに60°を成すよう形成される。したがって一対の第2縁部114gの各々は、上下方向に対して30°傾斜する。一対の第2縁部114gの各々は、絞り羽根114が最大絞り位置にあるときに固定絞り孔20aに外接する位置に設けられている。
【0058】
図13(b)もまた、凹部114aの形状の決定方法を示す図である。最も使用頻度が高いF値を実現するための開口面積を有する仮想円C1を、図13(a)にて決定された一対の第2縁部114gに内接させる。
【0059】
第3縁部114hは、水平方向に延在しながら仮想円C1に外接するよう形成される。こうして、一対の第1縁部114f、一対の第2縁部114g、および第3縁部114hの形状が決定される。
【0060】
凹部116aは、開口方向が逆となっている以外は、凹部114aと同一形状に形成される。したがって、一対の第2縁部116gの各々は上下方向に対して30°傾斜し、第3縁部116hは水平方向に延在するよう形成される。絞り羽根116が最大絞り位置にあるときに固定絞り孔20aに外接するよう一対の第2縁部116gが設けられている点も、一対の第2縁部114gと同様である。なお、凹部116aが凹部114aと異なる形状に形成されていてもよい。
【0061】
図14(a)〜図14(e)は、2枚の絞り羽根114、116を互いに近接させたときの光通過口150の形状の変化を示す図である。なお、理解を容易にすべく、2枚の絞り羽根114、116の各々の形状は模式的に示している。
【0062】
図14(a)は、2枚の絞り羽根114、116の各々が光通過口50を通過する光量を最大とするように最も移動した最大絞り位置にあるときの絞り機構10の正面図である。2枚の絞り羽根114、116が最大絞り位置にあるとき2枚の絞り羽根114、116による固定絞り孔20aの遮光が完全に解除される。このため、光通過口150の開口面積は固定絞り孔20aの開口面積となる。
【0063】
図14(b)は、2枚の絞り羽根114、116の各々を最大絞り位置から互いに所定距離だけ近接させたときの絞り機構10の正面図である。この状態では、一対の第2縁部114gの一部および一対の第2縁部116gの一部が固定絞り孔20aの内側に位置し、固定絞り孔20aを通過しようとする光の一部を遮光する。しかし、第3縁部114hおよび第3縁部116hは固定絞り孔20aの外側に位置したままとなる。このため、このときの光通過口50は、一対の第2縁部114g、一対の第2縁部116g、および固定絞り孔20aによって画定される。
【0064】
図14(c)は、2枚の絞り羽根114、116の各々を図14(b)の状態からさらに互いに所定距離だけ近接させたときの絞り機構10の正面図である。このとき、第3縁部114hおよび第3縁部116hも固定絞り孔20aの内側に位置するようになる。しかし、第3縁部114hおよび第3縁部116hが固定絞り孔20aの内側に進入した当初は、光通過口150を形成する境界線のうち第2縁部114gおよび第2縁部116gによって形成される境界線が第3縁部114hおよび第3縁部116hよりも長い状態となる。このため光通過口150は、上下方向の幅が水平方向の幅よりも長い扁平した形状となる。
【0065】
図14(d)は、2枚の絞り羽根114、116の各々を図14(c)の状態からさらに互いに所定距離だけ近接させたときの絞り機構10の正面図である。2枚の絞り羽根114、116をさらに互いに近接させていくと、光通過口150の扁平が徐々に減少していき、光通過口150が仮想円C1に外接する形状となる。図14(d)は、このときの状態を示したものである。
【0066】
このとき、光通過口150を形成する境界線のうち第2縁部114gおよび第2縁部116gによって形成される境界線が第3縁部114hおよび第3縁部116hと同じ長さとなる。したがって光通過口150は、境界線を構成する6本の縁部がすべて同じ長さとなり、6本の縁部の各々が隣接する縁部と互いに120°を成すため、光通過口150は正六角形となる。この正六角形は、上述の仮想円C1に外接するよう形成される。
【0067】
このように最も使用頻度の高いF値を実現するときに、光通過口150を上述の仮想円C1に最も近い形状とすることができる。このときの光通過口150の形状が正六角形に限定されないことは勿論であり、例えば正六角形以外の六角形でもよい。
【0068】
なお、例えば最も使用頻度が高いF値よりも数値の大きいF値を実現するときに光通過口150が上述の仮想円C1に最も近い形状となるよう、2枚の絞り羽根114、116の各々が形成されてもよい。なお、最も使用頻度が高いF値よりも数値の小さいF値を実現するときに光通過口150が仮想円C1に最も近い形状となるよう、2枚の絞り羽根114、116の各々が形成されてもよい。
【0069】
図14(e)は、2枚の絞り羽根114、116の各々が最小絞り位置にあるときの絞り機構10の正面図である。図14(d)の状態からさらに2枚の絞り羽根114、116の各々を互いに近接させると、光通過口150は、今度は上下方向の幅よりも水平方向の幅の方が長くなるよう扁平していく。このように2枚の絞り羽根114、116の各々が最小絞り位置にあるとき、光通過口150は扁平した形状となる。
【0070】
2枚の絞り羽根114、116は、最小絞り位置に達したときも、6本の直線を含む境界で囲われる光通過口150を双方の縁部で形成するよう設けられている。発明者による実験の結果、このように最小絞り位置にあるときの光通過口150の境界線を構成する直線を6本とすることによって、4本の直線によって菱形の光通過口を形成した場合に比べ、いわゆる背景のボケ像の不自然さを大幅に軽減できることが判明している。
【0071】
なお、光通過口150は、その境界線が直線だけでなく曲線を含んでいてもよい。例えば、第2縁部114gと第3縁部114hとの接続部分、または第2縁部116gと第3縁部116hとの接続部分が曲線とされていてもよい。
【0072】
第2の実施形態においても、駆動機構22は、設定されたF値が所定の値より大きい場合、2枚の絞り羽根114、116を最小絞り位置まで移動させ、それ以上の絞り機構100によるメカニカルな光量調整手段でのF値の調整を回避する。このとき電子制御ユニットは、所定の値より大きく設定されたF値を実質的に実現するよう、撮像素子の蓄電時間を調整する。
【0073】
図15は、2枚の絞り羽根114、116が最小絞り位置に位置しているときの光通過口150の形状を示す図である。このとき光通過口150は、上下方向の幅が最小幅となり、水平方向の幅が最大幅となる。2枚の絞り羽根114、116の各々は、このときの水平方向長さL22を上下方向長さL21で割った光通過口150の扁平率が1より大きく且つ1.4以下となるよう形成されている。光通過口150の扁平率をこのような値にすることによって、背景のボケの不自然さを抑制しつつ、円滑に電子シャッターに移行させることができる。
【0074】
(第3の実施形態)
図16は、第3の実施形態に係る絞り機構200の正面図である。なお、特に言及しない限り、絞り機構200および絞り機構200が搭載される撮像装置の構成は第1の実施形態と同様である。以下、上述の実施形態と同様の個所は同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
絞り機構200は、ベースユニット12、および2枚の絞り羽根214、216を備える。2枚の絞り羽根214、216は、互いに離間および近接するよう各々が上下方向に移動可能に設けられている。
【0076】
図17は、絞り羽根214の正面図である。絞り羽根214は、切り込むように形成された凹部214aを有する板状に形成される。絞り羽根214は、長孔であるガイド孔214b、214c、214d、および連結孔214eを有するが、これらの形状や配置は、第1の実施形態に係るガイド孔14b、14c、14d、および連結孔14eと同様である。一対の第1縁部214fも、上述の一対の第1縁部14fと同様に形成される。
【0077】
凹部214aは、ガイド孔214bとガイド孔214cとの間に設けられている。凹部214aは、一対の第2縁部214g、一対の第3縁部214h、および第4縁部214iを含む。
【0078】
一対の第2縁部214gの各々は直線状に形成され、互いに同じ長さを有し、一対の第1縁部214fの各々の端部に一端が接続される。一対の第2縁部214gの各々は、他端に近づくにしたがって互いに近接するよう、上下方向に対して所定角度で傾斜する。一対の第3縁部214hの各々は直線状に形成され、互いに同じ長さを有し、一対の第2縁部214gの各々の他端に一端が接続される。一対の第3縁部214hの各々は、他端に近づくにしたがって互いに近接するよう、上下方向に対して所定角度で傾斜する。このとき、上下方向に対する第3縁部214hの傾斜角度は、上下方向に対する第2縁部214gの傾斜角度よりも大きくされている。第4縁部214iは、水平方向に延在するよう形成され、一対の第3縁部214hの各々の他端に両端が接続される。こうして凹部214aは、第4縁部214iの中点を通過する上下方向と平行なラインを中心に左右対称に形成される。
【0079】
図18は、絞り羽根216の正面図である。絞り羽根216は、切り込むように形成された凹部216aを有する板状に形成される。絞り羽根216は、長孔であるガイド孔216b、216c、216d、および連結孔216eを有するが、これらの形状や配置は、第1の実施形態に係るガイド孔14b、14c、14d、および連結孔14eと同様である。第1縁部216fも、上述の一対の第1縁部16fと同様に形成される。
【0080】
凹部216aは、ガイド孔216bとガイド孔216cとの間に設けられている。凹部216aは、一対の第2縁部216g、および第4縁部216iを含む。
【0081】
一対の第2縁部216gの一方は、第1縁部216fの端部に一端が接続される。一対の第2縁部216gの各々は直線状に形成され、互いに同じ長さを有し、他端に近づくにしたがって互いに近接するよう、上下方向に対して所定角度で傾斜する。一対の第3縁部216hの各々は直線状に形成され、互いに同じ長さを有し、一対の第2縁部216gの各々の他端に一端が接続される。一対の第3縁部216hの各々は、他端に近づくにしたがって互いに近接するよう、上下方向に対して所定角度で傾斜する。このとき、上下方向に対する第3縁部216hの傾斜角度は、上下方向に対する第2縁部216gの傾斜角度よりも大きくされている。第4縁部216iは、水平方向に延在するよう形成され、一対の第3縁部216hの各々の他端に両端が接続される。こうして凹部216aは、第4縁部216iの中点を通過する上下方向と平行なラインを中心に左右対称に形成される。
【0082】
図19は、2枚の絞り羽根214、216をベースユニット12に取り付けたときの絞り機構10の正面図である。ベースユニット12への2枚の絞り羽根214、216の取り付け方法は、上述の2枚の絞り羽根14、16の取り付け方法と同様である。2枚の絞り羽根214、216がベースユニット12に取り付けられたとき、凹部214aと凹部216aとは互いに向き合うように開口する。こうして2枚の絞り羽根214、216は、撮像に利用される光を導入する一つの光通過口250を、各々の縁部である凹部214aおよび凹部216aの双方で形成する。駆動機構22は、揺動ロッド40を揺動することによって、互いに近接および離間するよう2枚の絞り羽根114、116を上下方向と平行に互いに反対方向に駆動し、光通過口250の開口面積を変化させる。
【0083】
図20(a)は、凹部214aの形状の決定方法を示す図である。一対の第1縁部214fは、互いの間隔が、固定絞り孔20aと同じまたは固定絞り孔20aよりもわずかに大きくなるよう形成される。一対の第2縁部214gは、互いに36°を成すよう形成される。したがって一対の第2縁部214gの各々は、上下方向に対して18°傾斜する。一対の第2縁部214gの各々は、絞り羽根214が最大絞り位置にあるときに固定絞り孔20aに外接する位置に設けられている。
【0084】
図20(b)もまた、凹部214aの形状の決定方法を示す図である。最も使用頻度が高いF値を実現するための開口面積を有する仮想円C1を、図20(a)にて決定された一対の第2縁部214gに内接させる。
【0085】
一対の第3縁部214hは、互いに108°を成すよう形成される。したがって一対の第3縁部214hの各々は、上下方向に対して54°傾斜し、第2縁部14gと互いの内角が144°を成すよう形成される。一対の第3縁部214hの各々は、仮想円C1に外接するよう形成される。第4縁部214iは、水平方向に延在しながら仮想円C1に外接するよう形成される。このように一対の第3縁部214hと第4縁部214iとは同じ仮想円C1に外接するため、一対の第3縁部214hの各々と第4縁部214iとは同じ長さとなっている。こうして、一対の第1縁部214f、一対の第2縁部214g、一対の第3縁部214h、および第4縁部214iの形状が決定される。
【0086】
凹部216aは、開口方向が逆となっている以外は、凹部214aと同一形状に形成される。したがって、一対の第2縁部216gの各々は上下方向に対して18°傾斜し、一対の第3縁部216hの各々は上下方向に対して54°傾斜し、第4縁部216iは水平方向に延在するよう形成される。一対の第3縁部216hの各々と第4縁部216iとは同じ長さとなる。絞り羽根216が最大絞り位置にあるときに固定絞り孔20aに外接するよう一対の第2縁部216gが設けられている点も、一対の第2縁部214gと同様である。なお、凹部216aが凹部214aと異なる形状に形成されていてもよい。
【0087】
図21(a)〜図21(e)は、2枚の絞り羽根214、216を互いに近接させたときの光通過口250の形状の変化を示す図である。なお、理解を容易にすべく、2枚の絞り羽根214、216の各々の形状は模式的に示している。
【0088】
図21(a)は、2枚の絞り羽根214、216の各々が光通過口50を通過する光量を最大とするように最も移動した最大絞り位置にあるときの絞り機構10の正面図である。2枚の絞り羽根214、216が最大絞り位置にあるとき2枚の絞り羽根214、216による、固定絞り孔20aの遮光が完全に解除される。このため、光通過口250の開口面積は固定絞り孔20aの開口面積となる。
【0089】
図21(b)は、2枚の絞り羽根214、216の各々を最大絞り位置から互いに所定距離だけ近接させたときの絞り機構10の正面図である。この状態では、一対の第2縁部214gの一部および一対の第2縁部216gの一部が固定絞り孔20aの内側に位置し、固定絞り孔20aを通過しようとする光の一部を遮光する。しかし、第3縁部214h、第4縁部214i、第3縁部216h、および第4縁部216iは固定絞り孔20aの外側に位置したままとなる。このため、このときの光通過口50は、一対の第2縁部214g、一対の第2縁部216g、および固定絞り孔20aによって画定される。
【0090】
図21(c)は、2枚の絞り羽根214、216の各々を図21(b)の状態からさらに互いに所定距離だけ近接させたときの絞り機構10の正面図である。このとき、第3縁部214h、第4縁部214i、第3縁部216h、および第4縁部216iも固定絞り孔20aの内側に位置するようになる。しかし、第3縁部214h、第4縁部214i、第3縁部216h、および第4縁部216iが固定絞り孔20aの内側に進入した当初は、光通過口250を形成する境界線のうち第2縁部214gおよび第2縁部216gによって形成される境界線が第3縁部214hなどよりも長い状態となる。このため光通過口250は、上下方向の幅が水平方向の幅よりも長い扁平した形状となる。
【0091】
図21(d)は、2枚の絞り羽根214、216の各々を図21(c)の状態からさらに互いに所定距離だけ近接させたときの絞り機構10の正面図である。2枚の絞り羽根214、216をさらに互いに近接させていくと、光通過口250の扁平が徐々に減少していき、光通過口250が仮想円C1に外接する形状となる。このとき光通過口250は、上下方向の幅が水平方向の幅と同一となり、扁平率は最小となる。図21(d)は、このときの状態を示したものである。
【0092】
このとき、光通過口250を形成する境界線のうち第2縁部214gおよび第2縁部216gによって形成される境界線が第3縁部214hなどと同じ長さとなる。したがって光通過口250は、境界線を構成する10本の縁部がすべて同じ長さとなり、10本の縁部の各々が隣接する縁部と互いに144°を成すため、光通過口250は正十角形となる。この正十角形は、上述の仮想円C1に外接するよう形成される。
【0093】
このように最も使用頻度の高いF値を実現するときに、光通過口250を仮想円C1に最も近い形状とすることができる。このときの光通過口250の形状が正十角形に限定されないことは勿論であり、例えば正十角形以外の十角形でもよい。
【0094】
また、例えば最も使用頻度が高いF値よりも数値の大きいF値を実現するときに光通過口250が仮想円C1に最も近い形状となるよう、2枚の絞り羽根214、216の各々が形成されてもよい。なお、最も使用頻度が高いF値よりも数値の小さいF値を実現するときに光通過口250が仮想円C1に最も近い形状となるよう、2枚の絞り羽根214、216の各々が形成されてもよい。
【0095】
図21(e)は、2枚の絞り羽根214、216の各々が最小絞り位置にあるときの絞り機構10の正面図である。図21(d)の状態からさらに2枚の絞り羽根214、216の各々を互いに近接させると、光通過口250は、今度は上下方向の幅よりも水平方向の幅の方が長くなるよう扁平していく。このように2枚の絞り羽根214、216の各々が最小絞り位置にあるとき、光通過口250は扁平した形状となる。
【0096】
2枚の絞り羽根214、216は、最小絞り位置に達したときも、10本の直線を含む境界で囲われる光通過口250を双方の縁部で形成するよう設けられている。発明者による実験の結果、このように最小絞り位置にあるときの光通過口250の境界線を構成する直線を10本とすることによって、4本の直線によって菱形の光通過口を形成した場合に比べ、いわゆる背景のボケ像の不自然さを大幅に軽減できることが判明している。
【0097】
なお、光通過口250は、その境界線が直線だけでなく曲線を含んでいてもよい。例えば、第2縁部214gと第4縁部214iとの接続部分、または第2縁部216gと第4縁部216iとの接続部分が曲線とされていてもよい。
【0098】
第3の実施形態においても、駆動機構22は、設定されたF値が所定の値より大きい場合、2枚の絞り羽根214、216を最小絞り位置まで移動させ、それ以上の絞り機構200によるメカニカルな光量調整手段でのF値の調整を回避する。このとき電子制御ユニットは、所定の値より大きく設定されたF値を実質的に実現するよう、撮像素子の蓄電時間を調整する。
【0099】
図22は、2枚の絞り羽根214、216が最小絞り位置に位置しているときの光通過口250の形状を示す図である。このとき光通過口250は、上下方向の幅が最小幅となり、水平方向の幅が最大幅となる。2枚の絞り羽根214、216の各々は、このときの水平方向長さL32を上下方向長さL31で割った光通過口250の扁平率が1より大きく且つ1.4以下となるよう形成されている。光通過口250の扁平率をこのような値にすることによって、背景のボケの不自然さを抑制しつつ、円滑に電子シャッターに移行させることができる。
【0100】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、各実施例の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施例として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0101】
ある変形例では、2枚の絞り羽根は、5本以上の直線を含む境界で囲われる一つの光通過口を双方の縁部で形成するよう設けられる。例えば2枚の絞り羽根は、5本の直線を含む境界で囲われる一つの光通過口を双方の縁部で形成するよう設けられてもよく、7本の直線を含む境界で囲われる一つの光通過口を双方の縁部で形成するよう設けられてもよい。このように5本以上の直線を含む境界で囲われる一つの光通過口を双方の縁部で形成することにより、4本の直線による菱形状の境界で囲われる光通過口を形成する場合に比べ、背景のボケ像の不自然さを抑制することができる。
【0102】
なお、この場合も2枚の絞り羽根は、各々が最小絞り位置にあるときに、5本以上の直線を含む境界で囲われる一つの光通過口を双方の縁部で形成するよう設けられてもよい。また、電子制御ユニットは、最小絞り位置に2枚の絞り羽根の各々が位置しているときに、撮像素子の蓄電時間を調整して撮像に利用される光の光量を調整してもよい。
【0103】
ある別の変形例では、電子シャッターに変えて、ND(Neutral Density)フィルタが設けられる。この場合も、NDフィルタは、最小絞り位置に2枚の絞り羽根の各々が位置しているときに撮像に利用される光の光量を調整するよう設けられる。NDフィルタの構成は公知であるため説明を省略する。このようにNDフィルタを利用しても、2枚の絞り羽根が最小絞り位置にあるときにおける光量の調整を実現できる。
【符号の説明】
【0104】
10 絞り機構、 12 ベースユニット、 14 絞り羽根、 14a 凹部、 14f 第1縁部、 14g 第2縁部、 14h 第3縁部、 16 絞り羽根、 16a 凹部、 16e 連結孔、 16f 第1縁部、 16g 第2縁部、 16h 第3縁部、 20 ベースプレート、 20a 固定絞り孔、 22 駆動機構、 50 光通過口、 100 絞り機構、 114 絞り羽根、 116 絞り羽根、 150 光通過口、 200 絞り機構、 214 絞り羽根、 216 絞り羽根、 250 光通過口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重なり合うよう配置され、撮像に利用される光を導入する一つの光通過口を双方の縁部によって形成する2枚の絞り羽根と、
前記2枚の絞り羽根の各々を互いに異なる方向に駆動することにより前記光通過口の開口面積を変化させる駆動機構と、
を備え、
前記2枚の絞り羽根は、5本以上の直線を含む境界で囲われる一つの光通過口を双方の縁部で形成するよう設けられていることを特徴とする絞り機構。
【請求項2】
前記2枚の絞り羽根は、6本、8本、または10本の直線を含む境界で囲われる一つの光通過口を双方の縁部で形成するよう設けられていることを特徴とする請求項1に記載の絞り機構。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記光通過口の開口面積を所定範囲内で調整するよう前記2枚の絞り羽根の各々を駆動し、
前記2枚の絞り羽根は、前記光通過口の開口面積が前記所定範囲のうち最小となる最小絞り位置に各々が位置しているとき、5本以上の直線を含む境界で囲われる一つの光通過口を双方の縁部で形成するよう設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の絞り機構。
【請求項4】
前記光通過口を通過して撮像に利用される光の光量を調整する光量調整手段をさらに備え、
前記光量調整手段は、前記最小絞り位置に前記2枚の絞り羽根の各々が位置しているときに撮像に利用される光の光量を調整することを特徴とする請求項3に記載の絞り機構。
【請求項5】
前記2枚の絞り羽根は、前記最小絞り位置に各々が位置しているとき、前記光通過口の最大幅をその最大幅の方向に直交する方向の幅で割った扁平率が1より大きく且つ1.4以下となるよう設けられていることを特徴とする請求項3に記載の絞り機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−112946(P2011−112946A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270459(P2009−270459)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】