説明

給送装置

【課題】 カバー部が閉じた状態の給送装置全体を小型化することができる給送装置を提供すること。
【解決手段】 被送り媒体(P)を載置する第1トレイ部(30)と、該第1トレイ部(30)を収容する基体部21と、開閉可能に設けられており、閉じた状態のとき、収納時ポジションの前記第1トレイ部(30)を覆い、開いた状態のとき、前記第1トレイ部(30)を覆わないカバー部40と、該カバー部40の動力を前記第1トレイ部(30)へ伝達する第1動力伝達手段70(45)と、を備え、該第1動力伝達手段70(45)は、前記カバー部40が開いた状態に切り替るとき、該カバー部40の変位に伴って前記第1トレイ部(30)を使用時ポジションへ変位させ、前記カバー部40が閉じた状態に切り替るとき、該カバー部40の変位に伴って前記第1トレイ部(30)を前記収納時ポジションへ変位させる構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被送り媒体の送り経路の一端側に設けられ、被送り媒体を載置するトレイ部と、該トレイ部を収容する筐体を形成する基体部と、開閉可能に設けられており、閉じた状態のとき、前記トレイ部を覆うカバー部と、を備えた給送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、原稿読取り装置において被送り媒体の一例である用紙を給送する給送装置が設けられていた。そして、前記給送装置は、カバー部材と、給紙トレイと、排出トレイと、原稿送り手段とを有していた。また、前記カバー部材は、前記給紙トレイを覆うことができるように設けられていた。従って、ユーザーは、前記カバー部材を開いて用紙を前記給紙トレイにセットすることができた。その後、前記給送装置は、用紙を送ることができた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記給紙トレイおよび前記排出トレイは、常に給送装置本体である筐体に対して固定であった。そして、前記カバー部材を閉じたとき、前記給紙トレイは、前記カバー部材と干渉、即ち、当接しないように両者の間に十分な隙間が設けられていた。
従って、前記カバー部材を閉じたとき、前記隙間が広ければ広いほど、閉じたときの内部スペースに無駄が生じる。その結果、給送装置全体が大型化する虞がある。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、カバー部が閉じた状態の給送装置全体を小型化することができる給送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の給送装置は、筐体を形成する基体部と、該基体部内に収容された収納時ポジションと、該収納時ポジションより前記基体部から突出する方向へ変位した使用時ポジションと、を有しており、被送り媒体の送り経路の一端側に設けられ、被送り媒体を載置する第1トレイ部と、開閉可能に設けられており、閉じた状態のとき、前記収納時ポジションの前記第1トレイ部を覆い、開いた状態のとき、前記第1トレイ部を覆わないカバー部と、該カバー部の開閉に係る動力を前記第1トレイ部へ伝達する第1動力伝達手段と、を備え、該第1動力伝達手段は、前記カバー部が開いた状態に切り替るとき、該カバー部の変位に伴って前記第1トレイ部を前記使用時ポジションへ変位させ、前記カバー部が閉じた状態に切り替るとき、該カバー部の変位に伴って前記第1トレイ部を前記収納時ポジションへ変位させる構成であることを特徴とする。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、前記第1トレイ部が前記カバー部の開閉動作に対して連動しない構成と比較して、前記カバー部が閉じた状態における無駄なスペースを省くことができる。その結果、前記連動しない構成と比較して、前記カバー部が閉じた状態の給送装置全体を小型化することができる。
また、前記第1トレイ部が変位可能な構成であるので、被送り媒体が何らかの原因で送り経路において詰まった場合、前記第1トレイ部を変位させることによって容易に詰まった被送り媒体を除去することが可能である。特に、前記第1トレイ部が被送り媒体の送り方向上流端側であって、該第1トレイ部の下方に被送り媒体が排出される構成である場合に有効である。
【0007】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記送り経路と面一になる使用時位置と、前記送り経路から離間する不使用時位置と、を有しており、前記送り経路の他端側に設けられ、被送り媒体を載置する第2トレイ部と、前記カバー部の動力を前記第2トレイ部へ伝達する第2動力伝達手段と、を備え、該第2動力伝達手段は、前記カバー部が開いた状態に切り替るとき、該カバー部の変位に伴って前記第2トレイ部を前記使用時位置へ変位させ、前記カバー部が閉じた状態に切り替るとき、該カバー部の変位に伴って前記第2トレイ部を前記不使用時位置へ変位させる構成であることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記第1トレイ部に加えて前記第2トレイ部をも前記カバー部の開閉動作に連動させることができる。従って、第2トレイ部が連動しない構成と比較して、前記カバー部が閉じた状態における無駄なスペースを省くことができる。その結果、前記カバー部が閉じた状態の給送装置全体をより小型化することができる。
また、前記不使用時位置における前記第2トレイ部に、トレイ以外の部材としての役割を持たせることも可能である。例えば、閉じた状態の前記カバー部と同一面を形成することにより外観を美しくする外装面としての役割を持たせることも可能である。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記第1トレイ部には、被送り媒体の幅方向に変位可能であって被送り媒体の側端を揃えるエッジガイド部が設けられており、前記第1トレイ部が前記収納時ポジションから前記使用時ポジションへ変位することによって前記エッジガイド部が前記基体部より突出する構成であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、前記使用時ポジションでは、前記エッジガイド部が前記基体部より突出している。従って、ユーザーは、前記エッジガイド部が突出していない場合と比較して、前記エッジガイド部を容易に操作することができる。即ち、前記エッジガイド部の操作性に優れる。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記カバー部は、揺動することによって開閉するように設けられており、該カバー部が閉じた状態では、前記カバー部の揺動支点を基準とした一端側が、前記第1トレイ部を覆っており、前記カバー部が揺動して開いた状態となる際、該カバー部の他端側が、前記第1トレイ部を押し上げて前記使用時ポジションへ変位させることを特徴とする。
本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、簡単な構成で前記カバー部と前記第1トレイ部とを連動させることができる。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記送り経路の他端側に設けられ、被送り媒体を載置する第2トレイ部をさらに備え、給送前の被送り媒体を載置する前記第1トレイ部と、給送後の被送り媒体を載置する前記第2トレイ部とが異なる層を成す位置関係を有する積層構造によって、前記送り経路はU字状に形成されており、かつ、前記第1トレイ部は前記第2トレイ部より積層方向上方であり、前記カバー部が開いた状態に切り替るとき、前記第1トレイ部が前記収納時ポジションより積層方向上方である前記使用時ポジションへ変位することにより、該第1トレイ部の積層方向下方に位置する前記送り経路における被送り媒体の厚み方向の間隔が広くなることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記カバー部の開閉によって前記第1トレイ部の積層方向下方に位置する前記送り経路における被送り媒体の厚み方向の間隔を変化させることができる。具体的には、前記カバー部が閉じた状態のとき、該間隔を狭くすることができる。その分、前記カバー部が閉じた状態において、給送装置全体を小型化することができる。特に、給送前の被送り媒体を載置する前記第1トレイ部と、給送後の被送り媒体を載置する前記第2トレイ部とが異なる層を成す位置関係を有する積層構造であって、前記第1トレイ部は前記第2トレイ部より積層方向上方であり、前記送り経路はU字状に形成されている場合に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るプリンター複合機のカバー部が閉じた状態を示す斜視図。
【図2】本発明に係るプリンター複合機のカバー部が開いた状態を示す斜視図。
【図3】本発明に係る給送装置のカバー部が閉じた状態を示す側断面図。
【図4】本発明に係る給送装置のカバー部の開閉途中の状態を示す側断面図。
【図5】本発明に係る給送装置のカバー部の開閉途中の状態を示す側断面図。
【図6】本発明に係る給送装置のカバー部が開いた状態を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明に係る給送装置、該給送装置を備えた画像処理装置について説明する。
図1に示すのは、画像処理装置としてのプリンター複合機のカバー部が閉じた状態のときの外観を示す斜視図である。また、図2に示すのは、プリンター複合機のカバー部が開いた状態のときの外観を示す斜視図である。
最初に、本願発明の画像処理装置を実施するための最良の形態としてインクジェットプリンターの上部にスキャナー部を搭載したプリンター複合機について、その全体構成の概略を簡単に説明する。
【0016】
図1および図2に示す如く、プリンター複合機1は、プリンター本体部10と、給送装置20とを有している。
このうち、プリンター本体部10は、鎖線で示す如くプリンター複合機1の鉛直方向下方に配設されている。また、プリンター本体部10は、スキャナー部11と、給送部12と、記録部13と、排出部14とを備えている。
【0017】
スキャナー部11は、プリンター本体部10における給送装置側である上方に配設されている。そして、スキャナー部11は、詳しくは後述する給送装置20によって、給送された用紙Pの面に記録された写真や文書等の情報を読み取ることができるように構成されている。また、給送部12は、プリンター本体部10の内部に積層された用紙Pを給送することができるように構成されている。またさらに、記録部13は、給送部12によって給送された用紙Pに対してインクを吐出することにより記録実行をすることができるように構成されている。また、排出部14は、記録部13において記録された用紙Pをプリンター本体部10の内部から外部へ排出することができるように構成されている。
【0018】
一方、給送装置20は、プリンター本体部10の上方に配設されている。そして、プリンター本体部側のスキャナー部11と対向する位置に対して用紙Pを給送することができるように設けられている。そして、スキャナー部11によって用紙Pの面に記録された情報が読み取られる。その後、給送装置20は、用紙Pを排出トレイ部50(図2参照)まで送ることができるように設けられている。
【0019】
尚、給送装置全体を上方へ揺動させて、プリンター本体部10のスキャナー部11と対向するように用紙Pの読み取らせたい面を向けて、スキャナー部11と対向する位置に直接、用紙Pをセットすることも可能である。係る場合、上方へ揺動させた給送装置全体を下方へ揺動させて用紙Pをスキャナー部11に押し当てて、用紙Pの面の情報をスキャナー部11に読み取らせることができる。
【0020】
また、給送装置20は、筐体を形成する基体部21と、カバー部40と、第1トレイ部としての用紙サポート部30と、第2トレイ部としての排出トレイ部50とを有している。カバー部40は、用紙サポート部30を覆うことが可能に設けられている。また、用紙サポート部30は、用紙Pの給送トレイの役割を果たすことができるように設けられている。またさらに、排出トレイ部50は、スキャナー部11によって読み取られた用紙Pを載置することができるように設けられている。
【0021】
図1に示すカバー部40が閉じた状態では、基体部21の上面、カバー部40および排出トレイ部50は、緩やかな曲面上に所謂、面一となるように構成されている。従って、美しい外観を構成することができる。このときの排出トレイ部50の位置が、排出トレイ部50の「不使用時位置(E1)」である。
ここで、排出トレイ部50の「不使用時位置(E1)」とは、用紙Pが送られる経路である送り経路Qから離間した位置であって、排出トレイ部50として機能しない位置をいう。具体的には、給送装置20を使用しないときにとる位置であって、カバー部40が閉じた状態にとる前記曲面を面一に形成する位置である。
【0022】
カバー部40が閉じた状態では、後述する給送開口部33(図2参照)は閉じた状態である。また、排出開口部53(図2参照)も閉じた状態である。
ここで、給送開口部33とは、後述する案内フレーム部22および用紙サポート部30によって用紙Pがセットされる開口部をいう。一方、排出開口部53とは、用紙Pが後述する排出トレイ部50へ排出される開口部をいう。
また、カバー部40のカバー軸部41(図3〜図6参照)を基準とした一端側42には、切欠き部43が設けられている(図1参照)。従って、ユーザーは、切欠き部43に指を引っかけてカバー部40を図1に示す閉じた状態から図2に示す開いた状態に揺動させることができる。
【0023】
カバー部40を開いた状態にすると、カバー部40に覆われていた用紙サポート部30および給送開口部33が現れると共に、用紙サポート部30は上方へ変位する。この位置が用紙サポート部30の「使用時ポジション(D2)」である。
ここで、用紙サポート部30の「使用時ポジション(D2)」とは、給送装置20を使用するときにおける用紙サポート部30がとるポジションをいう。具体的には、カバー部40が開いた状態のポジションである。
【0024】
詳しくは後述するが、カバー部40の一端側42と反対側である他端側44に設けられた第1動力伝達手段70および第2動力伝達手段80を兼ねる突片45が、用紙サポート部30を押し上げて「使用時ポジション(D2)」へ変位させるように構成されている。
ここで、第1動力伝達手段70とは、カバー部40が開閉する際の動力を用紙サポート部30へ伝達して用紙サポート部30を変位させる手段をいう。また、第2動力伝達手段80とは、カバー部40が開閉する際の動力を排出トレイ部50へ伝達して排出トレイ部50を変位させる手段をいう。
【0025】
また、用紙サポート部30には、用紙Pの幅方向Xへ移動可能なエッジガイド部32、32が設けられている。そして、用紙サポート部30の「使用時ポジション(D2)」では、エッジガイド部32、32の少なくとも一部が基体部21から上方へ突出するように構成されている。従って、ユーザーは、用紙Pを用紙サポート部上にセットした際、容易にエッジガイド部32、32を操作して用紙Pの位置および姿勢を安定させることができる。
尚、基体部21には、案内フレーム部22が設けられており、用紙Pは、案内フレーム部22から用紙サポート部30の範囲に亘ってセットされるように構成されている。さらに、用紙Pの後端側がカバー部40の内側面にも支持されるように構成してもよい。
【0026】
またさらに、カバー部40を開いた状態にすることにより、排出トレイ部50は、「使用時位置(E2)」へ変位するように構成されている。これに伴い、排出開口部53が開くように構成されている。
ここで、排出トレイ部50の「使用時位置(E2)」とは、送り経路Qと面一になる位置であって、排出された用紙Pを受け止め載置することができる位置をいう。本実施例では、排出トレイ部50の「使用時位置(E2)」は、「不使用時位置(E1)」より積層方向下方(Z軸の矢印と逆方向)である。積層方向下方に変位することにより、送り経路Qの他端側と接触して送り経路Qと面一になることができるように構成されている。
【0027】
また、「使用時ポジション(D2)」の用紙サポート部30と、「使用時位置(E2)」の排出トレイ部50とは、積層構造となるように構成されている。
ここで、積層構造とは、積層方向(Z軸方向)において上下にずれた位置関係、即ち、異なる層を成す位置関係を有する構造をいう。異なる層を成す関係であればよく、必ずしも、使用時ポジション(D2)」の用紙サポート部30と、「使用時位置(E2)」の排出トレイ部50とが重なっている必要はない。
本実施形態では、使用時ポジション(D2)」の用紙サポート部30は、「使用時位置(E2)」の排出トレイ部50より、積層方向上方に位置する構成である。そして、送り経路Qは側視U字状に形成されている。
【0028】
続いて、カバー部40の開閉動作によって用紙サポート部30および排出トレイ部50がどのように変位するかについて、詳しく説明する。
図3に示すのは、本発明に係る給送装置のカバー部が閉じた状態を示す側断面図である。また、図4に示すのは、本発明に係る給送装置のカバー部の開閉途中の状態を示す側断面図である。またさらに、図5に示すのは、図4の状態からさらにカバー部を開く方向へ揺動させた状態を示す側断面図である。また、図6に示すのは、本発明に係る給送装置のカバー部が開いた状態を示す側断面図である。
【0029】
図3に示す如く、カバー部40が閉じた状態では、前述したように、基体部21の上面、カバー部40および排出トレイ部50が緩やかな曲面を所謂、面一で構成している。また、カバー部40は、カバー軸部41を支点に揺動可能に設けられている。カバー軸部41を基準としたカバー部40の一端側42は、基体部21に形成された規制部26と係合している。これにより、カバー部40の図3における反時計方向の揺動が規制され、カバー部40が閉じた状態の姿勢を精度よく決めることができる。
【0030】
また、排出トレイ部50は、排出トレイ軸部51を支点に揺動可能に設けられている。そして、排出トレイ部50の自由端側は、カバー部40の一端側42と反対側である他端側44に形成された突片45に支えられるように構成されている。従って、排出トレイ部50の「不使用時位置(E1)」を精度よく決めることができる。
またさらに、用紙サポート部30は、サポート揺動軸31を支点に揺動可能に設けられている。
【0031】
そして、自重によって図3における時計方向へ揺動しようとするが、基体部21に設けられた図示しない第1揺動規制突起によって用紙サポート部30の姿勢が図3に示す状態で規制されるように構成されている。用紙サポート部30の「収納時ポジション(D1)」である。
ここで、用紙サポート部30の「収納時ポジション(D1)」とは、用紙サポート部30が基体部21に収納された状態のポジションをいう。具体的には、カバー部40が閉じた状態にとるポジションである。
【0032】
また、給送装置20の内部には、基体部21に形成された案内フレーム部22および固定トレイ部23によってU字状の送り経路Qが形成されている。そして、送り経路Qにおける用紙Pの送り方向上流側には、用紙サポート部30が配設されている。一方、送り経路Qにおける用紙Pの送り方向下流側には、排出トレイ部50が配設されている。
またさらに、詳しくは後述するが、固定トレイ部23の送り方向下流側には、凹部24および段差部25が形成されている。
【0033】
このうち、凹部24は、カバー部40の突片45が通過することができるように設けられている。また、段差部25は、後述するように排出トレイ部50が「使用時位置(E2)」に変位して段差部25の低い箇所に排出トレイ部50の自由端(52)が位置することにより(図4〜図6参照)、用紙Pをスムーズに排出トレイ部50へ案内することができるように構成されている。
また、送りローラー60、60は、案内フレーム部22および用紙サポート部30に亘ってセットされた用紙Pを一枚ずつピックアップして給送することができるように構成されている。
【0034】
図4に示す如く、ユーザーがカバー部40の一端側42の切欠き部43(図1参照)に指を引っかけて、カバー部40を開く方向である時計方向へ揺動させる。このとき、排出トレイ部50は、「不使用時位置(E1)」から「使用時位置(E2)」へ変位する。
具体的には、排出トレイ部50の自由端側52が、時計方向へ揺動するカバー部40の突片45に支えられながら、自重によって反時計方向へ揺動する。そして、排出トレイ部50の自由端側52が基体部21における段差部25の低い箇所と当接して停止する。さらに、カバー部40が時計方向へ揺動すると、カバー部40の突片45が、排出トレイ部50の自由端側52から離間して凹部24に入る。その結果、給送開口部33が現れると共に、排出開口部53が開いた状態となる。
【0035】
図5に示す如く、図4の状態からユーザーがカバー部40を時計方向へ揺動させると、突片45が、用紙サポート部30に接近する。そして、さらにカバー部40を時計方向へ揺動させることにより、突片45を用紙サポート部30と当接させて、用紙サポート部30を鉛直方向上方へ押し上げることができる。具体的には、用紙サポート部30を、サポート揺動軸31を支点に図5における反時計方向へ揺動させることができる。
【0036】
図6に示す如く、図5の状態からユーザーがカバー部40を時計方向へ揺動させると、用紙サポート部30を、さらに反時計方向へ揺動させることができる。そして、用紙サポート部30を、エッジガイド部32、32の少なくとも一部が基体部21より上方へ突出した状態である用紙サポート部30の「使用時ポジション(D2)」まで変位させることができる。
【0037】
このとき、用紙サポート部30は、基体部21に設けられた図示しない第2揺動規制突起によって「使用時ポジション(D2)」より反時計方向への揺動が規制されるように構成されている。
また、用紙サポート部30は、「使用時ポジション(D2)」において、図示しない安定手段によって安定することができるように構成されている。
【0038】
例えば、安定手段として、カバー部40および基体部21の一方に小さな突起を設け、他方に小さな凹部を設けて前記小さな突起と前記小さな凹部とを係合させることにより用紙サポート部30を「使用時ポジション(D2)」で安定させることができる。
尚、安定手段の保持力は、用紙サポート部30の自重およびセットされる用紙Pの自重に対抗することができる程度であるのは言うまでもない。
【0039】
用紙Pが案内フレーム部22および用紙サポート部30にセットされた後、ユーザーは、エッジガイド部32、32の位置を確認する。そして、スキャナー部11で用紙Pの面の情報を読み取るべく、図示しない表示部を操作する。すると、送りローラー60、60が、セットされた用紙Pのうちの最上位の用紙Pを、ピックアップして送り方向下流側へ送る。そして、送られる用紙Pは、送り経路Qの形状に沿ってU字状に向きを変えて反転する。このとき、スキャナー部11で用紙Pの面の情報が読み取られる。
【0040】
その後、用紙Pは図示しないローラーによってさらに送り方向下流側に送られ、固定トレイ部23を介して排出トレイ部50へ排出される。先行する用紙Pのスキャナー部11での読み取りが完了した時点で、後続の用紙Pが送りローラー60、60によってピックアップされ、先行する用紙Pと同様にスキャナー部11で読み取られる。このように、給送、読み取りおよび排出を繰り返すことにより、用紙サポート部30にセットされた用紙Pの数は減少すると共に、排出トレイ部50に積層される用紙Pの数は増加する。そして、最後の一枚の用紙Pが排出トレイ部50に排出されるとスキャニング終了となる。
【0041】
続いて、カバー部40を開いた状態から閉じるときの動作について説明する。
図6に示す状態から、ユーザーがカバー部40を閉じる方向である反時計方向へ揺動させる。すると、突片45が反時計方向へ揺動するので、用紙サポート部30は、突片45に支えられながら自重により時計方向へ揺動する。従って、図5に示す状態となる。
【0042】
図5に示す状態から、ユーザーがカバー部40をさらに反時計方向へ揺動させると、用紙サポート部30は、突片45に支えられながら自重によりさらに時計方向へ揺動する。そして、用紙サポート部30は、前述した図示しない第1揺動規制突起と当接することにより、停止する。即ち、用紙サポート部30の「収納時ポジション(D1)」で停止する。
続いて、ユーザーがカバー部40をさらに反時計方向へ揺動させると、突片45が、用紙サポート部30から離間し、基体部21の凹部24に入る。従って、図4に示す状態となる。
【0043】
図4に示す状態から、ユーザーがカバー部40をさらに反時計方向へ揺動させる。すると、突片45が、基体部21の段差部25の低い箇所と、排出トレイ部50の排出トレイ自由端側52との間に入り込む。そして、突片45が、排出トレイ自由端側52を掬い上げて、排出トレイ部50を時計方向へ揺動させる。そして、カバー部40の一端側42が基体部21の規制部26と接触するまで完全にカバー部40を閉じた状態にすると、排出トレイ部50は「不使用時位置(E1)」まで変位して停止する。このとき、給送開口部33はカバー部40によって塞がれた状態となる。また、排出開口部53は閉じた状態となる。
【0044】
以上、説明したように、カバー部40を開閉することによって、用紙サポート部30および排出トレイ部50を連動させて変位させることができる。そして、カバー部40を閉じた状態から開いた状態にすることにより、用紙サポート部30を「収納時ポジション(D1)」から「使用時ポジション(D2)」へ変位させることができる。
【0045】
このとき、用紙サポート部30と固定トレイ部23との間の距離が長くなる。即ち、送り経路Qの空間における用紙Pの厚み方向(本実施例ではZ軸方向)の広さについて、使用時において必要十分な広さとなり、不使用時においてできるだけ狭くすることができる構成である。その結果、不使用時であるカバー部40が閉じた状態における無駄なスペースを省くことができ、給送装置全体を小型化することができる。
【0046】
具体的には、用紙サポート部30が「使用時ポジション(D2)」で固定された構成である場合と比較して、カバー部40が閉じた状態における給送装置全体をZ軸方向において薄くすることができる。
また、用紙サポート部30を揺動可能に設けたので、用紙サポート部30の下方で用紙Pが詰まった場合、ユーザーが用紙サポート部30を持ち上げることにより、容易に詰まった用紙Pを除去することができる。即ち、用紙ジャムを容易に解除することができる。
【0047】
尚、上記実施例では、第1トレイ部を送り方向上流側であって鉛直方向上方(Z軸の矢印方向)に配設された用紙サポート部30、第2トレイ部を送り方向下流側であって鉛直方向下方に配設された排出トレイ部50として説明したが、逆の構成であってもよい。具体的には、第1トレイ部が排出トレイ部50、第2トレイ部が用紙サポート部30として、鉛直方向下方の第1トレイ部(排出トレイ部)から鉛直方向上方の第2トレイ部(用紙サポート部)へ用紙Pが送られる構成であってもよい。
【0048】
また、上記実施例では、突片45が第1動力伝達手段70および第2動力伝達手段80を兼ね構成としたが、別々に構成してもよい。
またさらに、突片45が直に用紙サポート部30および排出トレイ部50に作用する構成としたが、他の部材を介して間接的に作用する構成としてもよい。
また、上記実施例では、カバー部40が揺動する構成としたが、スライドして開閉する構成であってもよいのは勿論である。
【0049】
またさらに、上記実施例では、排出トレイ部50の「使用時位置(E2)」は「不使用時位置(E1)」より基体部21の内側であったが、逆の構成でもよい。即ち、使用時位置において、基体部より突出する側に変位する構成としてもよい。係る場合、不使用時であるカバー部40が閉じた状態における給送装置全体をより小型化することができる。
また、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0050】
本実施形態の給送装置20は、筐体を形成する基体部21と、基体部内に収容された「収納時ポジション(D1)」と、「収納時ポジション(D1)」より基体部21から突出する方向へ変位した「使用時ポジション(D2)」と、を有しており、被送り媒体の一例である用紙Pの送り経路Qの一端側に設けられ、用紙Pを載置する第1トレイ部としての用紙サポート部30と、開閉可能に設けられており、閉じた状態のとき、「収納時ポジション(D1)」の用紙サポート部30を覆い、開いた状態のとき、用紙サポート部30を覆わないカバー部40と、カバー部40の開閉に係る動力を用紙サポート部30へ伝達する第1動力伝達手段70の一例である突片45と、を備え、突片45は、カバー部40が開いた状態に切り替るとき、カバー部40の変位に伴って用紙サポート部30を「使用時ポジション(D2)」へ変位させ、カバー部40が閉じた状態に切り替るとき、カバー部40の変位に伴って用紙サポート部30を「収納時ポジション(D1)」へ変位させる構成であることを特徴とする。
【0051】
また、本実施形態において、送り経路Qの他端側に設けられ、用紙Pを載置する第2トレイ部としての排出トレイ部50は、図6に示すような「使用時位置(E2)」と、図3に示すような「不使用時位置(E1)」と、を有している。
ここで、「使用時位置(E2)」とは、排出トレイ部50が、送り経路Qと面一になり用紙Pを載置可能な位置であり、「不使用時位置(E1)」とは、排出トレイ部50が、送り経路Qから離間し、例えば、図3に示すような外装面として機能する位置である。
【0052】
また、カバー部40の開閉に伴い生じる動力を排出トレイ部50へ伝達する第2動力伝達手段80としての突片45を備え、突片45は、カバー部40が開いた状態に切り替るとき、カバー部40の変位に伴って排出トレイ部50を「使用時位置(E2)」へ変位させ、カバー部40が閉じた状態に切り替るとき、カバー部40の変位に伴って排出トレイ部50を「不使用時位置(E1)」へ変位させる構成であることを特徴とする。
【0053】
またさらに、本実施形態において、用紙サポート部30には、用紙Pの幅方向Xに変位可能であって用紙Pの側端を揃えるエッジガイド部32、32が設けられており、用紙サポート部30が「収納時ポジション(D1)」から「使用時ポジション(D2)」へ変位することによってエッジガイド部32、32が基体部21より突出する構成であることを特徴とする。
【0054】
また、本実施形態において、カバー部40は、揺動することによって開閉するように設けられており、カバー部40が閉じた状態では、カバー部40の揺動支点を基準とした一端側42が、用紙サポート部30を覆っており、カバー部40が揺動して開いた状態となる際、カバー部40の他端側44が、用紙サポート部30を押し上げて「使用時ポジション(D2)」へ変位させることを特徴とする。
【0055】
またさらに、本実施形態において、送り経路Qの他端側に設けられ、用紙Pを載置する第2トレイ部としての排出トレイ部50をさらに備え、給送前の用紙Pを載置する用紙サポート部30と、給送後の用紙Pを載置する排出トレイ部50とが異なる層を成す位置関係を有する積層構造によって、送り経路QはU字状に形成されており、かつ、用紙サポート部30は排出トレイ部50より積層方向上方(Z軸の矢印方向)であり、カバー部40が開いた状態に切り替るとき、用紙サポート部30が「収納時ポジション(D1)」より積層方向上方である「使用時ポジション(D2)」へ変位することにより、用紙サポート部30の積層方向下方に位置する送り経路Qにおける用紙Pの厚み方向であるZ軸方向の間隔が広くなることを特徴とする。
【符号の説明】
【0056】
1 プリンター複合機、10 プリンター本体部、11 スキャナー部、12 給送部、
13 記録部、14 排出部、20 給送装置、21 基体部、22 案内フレーム部、
23 固定トレイ部、24 凹部、25 段差部、26 規制部、
30 用紙サポート部(第1トレイ部)、31 サポート揺動軸、
32 エッジガイド部、33 給送開口部、40 カバー部、41 カバー軸部、
42 一端側、43 切欠き部、44 他端側、45 突片、
50 排出トレイ部(第2トレイ部)、51 排出トレイ軸部、
52 排出トレイ自由端側、53 排出開口部、60 送りローラー、
70 第1動力伝達手段、80 第2動力伝達手段、D1 収納時ポジション、
D2 使用時ポジション、E1 不使用時位置、E2 使用時位置、P 用紙、
Q 送り経路、X 用紙の幅方向、Z 鉛直方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開平5−14593号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を形成する基体部と、
該基体部内に収容された収納時ポジションと、該収納時ポジションより前記基体部から突出する方向へ変位した使用時ポジションと、を有しており、被送り媒体の送り経路の一端側に設けられ、被送り媒体を載置する第1トレイ部と、
開閉可能に設けられており、閉じた状態のとき、前記収納時ポジションの前記第1トレイ部を覆い、開いた状態のとき、前記第1トレイ部を覆わないカバー部と、
該カバー部の開閉に係る動力を前記第1トレイ部へ伝達する第1動力伝達手段と、を備え、
該第1動力伝達手段は、前記カバー部が開いた状態に切り替るとき、該カバー部の変位に伴って前記第1トレイ部を前記使用時ポジションへ変位させ、
前記カバー部が閉じた状態に切り替るとき、該カバー部の変位に伴って前記第1トレイ部を前記収納時ポジションへ変位させる構成である給送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給送装置において、前記送り経路と面一になる使用時位置と、前記送り経路から離間する不使用時位置と、を有しており、前記送り経路の他端側に設けられ、被送り媒体を載置する第2トレイ部と、
前記カバー部の動力を前記第2トレイ部へ伝達する第2動力伝達手段と、を備え、
該第2動力伝達手段は、前記カバー部が開いた状態に切り替るとき、該カバー部の変位に伴って前記第2トレイ部を前記使用時位置へ変位させ、
前記カバー部が閉じた状態に切り替るとき、該カバー部の変位に伴って前記第2トレイ部を前記不使用時位置へ変位させる構成である給送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給送装置において、前記第1トレイ部には、被送り媒体の幅方向に変位可能であって被送り媒体の側端を揃えるエッジガイド部が設けられており、
前記第1トレイ部が前記収納時ポジションから前記使用時ポジションへ変位することによって前記エッジガイド部が前記基体部より突出する構成である給送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の給送装置において、
前記カバー部は、揺動することによって開閉するように設けられており、
該カバー部が閉じた状態では、前記カバー部の揺動支点を基準とした一端側が、前記第1トレイ部を覆っており、
前記カバー部が揺動して開いた状態となる際、該カバー部の他端側が、前記第1トレイ部を押し上げて前記使用時ポジションへ変位させることを特徴とする給送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の給送装置において、
前記送り経路の他端側に設けられ、被送り媒体を載置する第2トレイ部をさらに備え、
給送前の被送り媒体を載置する前記第1トレイ部と、給送後の被送り媒体を載置する前記第2トレイ部とが異なる層を成す位置関係を有する積層構造によって、前記送り経路はU字状に形成されており、かつ、前記第1トレイ部は前記第2トレイ部より積層方向上方であり、
前記カバー部が開いた状態に切り替るとき、前記第1トレイ部が前記収納時ポジションより積層方向上方である前記使用時ポジションへ変位することにより、該第1トレイ部の積層方向下方に位置する前記送り経路における被送り媒体の厚み方向の間隔が広くなることを特徴とする給送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−245624(P2010−245624A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89259(P2009−89259)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】